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1949-01-29 第4回国会 参議院 法務委員会 閉会後第9号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十四年一月二十九日(土曜日)   —————————————   本日の会議に付した事件檢察及び裁判運営等に関する調査  の件(昭和電工事件に関する件)   —————————————    午前十時五十二分開会
  2. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それではこれより法務委員会を開会いたします。  丹羽五郎さんですね。
  3. 丹羽五郎

    証人丹羽五郎君) はあそうでございます。
  4. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 御証言を願う前に、宣誓書を朗読して宣誓して頂きます。
  5. 丹羽五郎

    証人丹羽五郎君) はあ。    〔総立起立証人は次のように宣誓を行なつた〕    宣誓書  良心に從つて眞実を述べ、何事もかくさず、又、何事もつけ加えないことを誓います。         証人 丹羽 五郎
  6. 伊藤修

    委員長伊藤修君) お年はお幾つですか。
  7. 丹羽五郎

    証人丹羽五郎君) 四十三才でございます。
  8. 伊藤修

    委員長伊藤修君) お住いは呼出しを差上げた所でございますか。
  9. 丹羽五郎

    証人丹羽五郎君) はあ、そうでございます。
  10. 伊藤修

    委員長伊藤修君) お仕事は。
  11. 丹羽五郎

    証人丹羽五郎君) 仕事は瓦を製造しております大和興業という会社の社長をやつております。
  12. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それお一つですか。
  13. 丹羽五郎

    証人丹羽五郎君) そうでございます。
  14. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 御経歴を極く簡單に一つ……。
  15. 丹羽五郎

    証人丹羽五郎君) 経歴終戰までは社会運動をやつておりまして、終戰後はその商賣をやつております。社会的は経歴としては、東京市会議員をやつたことがあります。それから情報局委員などもやつたことがあります。その他の二三の團体関係しておりました。
  16. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 日野原さんとの御交際関係はどういう御交際ですか。日野原節三氏ですね。
  17. 丹羽五郎

    証人丹羽五郎君) はあ。私が意識してお知合になつたのは、一昨年の十一月か十二月だつたと思いますが、私の年少時代からの友人頭山秀三さんという方がおりまして、この人が日野原氏を昔から知つておりまして、この人の紹介で知つたのであります。
  18. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それはどこですか。
  19. 丹羽五郎

    証人丹羽五郎君) 頭山さんの事務所みたいに使つております麹町の永田町の齋藤という家があります。
  20. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 齋藤元方ですね。
  21. 丹羽五郎

    証人丹羽五郎君) はあ、そこでお目にかかつたように記憶しております。
  22. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それから何か事業上のことで御交際になつたのですか。
  23. 丹羽五郎

    証人丹羽五郎君) 事業上の話合は全然ございません。お目にかかつた動機がやはり頭山さんのところで世話しております渡邊幸吉というのがおりまして、それが昭和電工の元秩父工場長つたのでありますが、それから頼まれた用件頭山という人が細かいことが分らんものでありますから、私が頼まれまして、日野原氏と折衝して呉れと頼まれたものでありますから、その関係で最初お目にかかつたのであります。
  24. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 藤井孝さんとは……。
  25. 丹羽五郎

    証人丹羽五郎君) 藤井君とは日野原氏といろいろ主な話をした事務的な問題を二人で処理した関係なんであります。
  26. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 頭山秀三氏とはどういう御関係ですか。
  27. 丹羽五郎

    証人丹羽五郎君) これはもう子供のときから、私が青山で生まれまして、それから秀三氏が渋谷におつたものでありますから、子供のときから友人関係でありまして、それから社会に出てから殆んど一緒行動を共にしております。三十年以上の附合いであります。
  28. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 御承知の通りこの右翼團体相当有力のお方ですね。
  29. 丹羽五郎

    証人丹羽五郎君) はあ。
  30. 伊藤修

    委員長伊藤修君) これ以外にあなたはこの右翼團体の方のお知合いはどういう人がお知合いですか。
  31. 丹羽五郎

    証人丹羽五郎君) 殆んど全部知つております。
  32. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 全部……主だつた人は……。
  33. 丹羽五郎

    証人丹羽五郎君) 主だつた人と言いますと、まあ私も元二月事件ちよつと連累したこともありますし、五・一五関係血盟團関係、その他青年党東方会、皆終戰までは附合つておりました。
  34. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そうすると、いわゆる右翼團体の方は殆んど全部お知合いつた
  35. 丹羽五郎

    証人丹羽五郎君) はあ大概知つております。
  36. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 勿論親密に御交際になつておるわけですな。
  37. 丹羽五郎

    証人丹羽五郎君) 親密の人もいますし、それから一面識の人もいます。
  38. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 齋藤元というのは、これは頭山秀三氏の二号ですか。
  39. 丹羽五郎

    証人丹羽五郎君) そうだと思うのでございますが、私はそういう問題には余りタッチしたくないもんですから……。上海に私あの秀三氏と一緒戰爭中支那行つておりまして、支那事変後重慶と折衝をやつておりました。その上海におりました当時に上海南京路にカフェーがありまして、それを経営していた人なんであります。
  40. 伊藤修

    委員長伊藤修君) この齋藤元という人が……。
  41. 丹羽五郎

    証人丹羽五郎君) はあ。
  42. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 要するに頭山秀三氏の関係者ですね。
  43. 丹羽五郎

    証人丹羽五郎君) そうでございます。
  44. 伊藤修

    委員長伊藤修君) この齋藤元という人の宅を利用していろいろな右翼團体の会合が催されておるようでございますね。
  45. 丹羽五郎

    証人丹羽五郎君) そういうことはございませんです。
  46. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 何かまあそういう関係かどうか存じませんが、昭電関係宴会をここで催されておつたそうでございますね。
  47. 丹羽五郎

    証人丹羽五郎君) 昭電関係宴会というのは私よく知りませんけれども、たまたま齋藤さんのお宅が昭和電工と裏表だつたのです。それから渡邊幸吉君の事件前後からあそこに頭山さんがおるということが分つて日野原氏、それから藤井君も昔頭山さんに非常にお世話になつた。それからちよいちよい出入するようになつている。何か使つてつたかも知れませんが、その間の関係は全然私知りません。
  48. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そこを始終利用させて貰つてつたらしいですね。
  49. 丹羽五郎

    証人丹羽五郎君) 後でそれを聞きました。
  50. 伊藤修

    委員長伊藤修君) お聞きになつたですね。
  51. 丹羽五郎

    証人丹羽五郎君) はあ。
  52. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 勿論あなたもしばしばここへお出になつたですね。
  53. 丹羽五郎

    証人丹羽五郎君) ええ。私頭山さんに会いにはちよいちよい行つております。
  54. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そうすると、昭電問題について御存じになつたのは、直接頭山さんの所で日野原氏に会われたときに御存じになつたのですか。それ以前から御存じつたですか。
  55. 丹羽五郎

    証人丹羽五郎君) 全然私は知りません。
  56. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そのとき初めて知つたんですか。
  57. 丹羽五郎

    証人丹羽五郎君) はあ、それもその渡邊君の事件のときには全然知らなかつた渡邊君が秩父工場長をやつておりましたときに、何かその工場を建設するための金をいろいろ会社につぎ込んだ。それでそれが当時の金で相当の金だつたんです。渡邊君としては最初自分が非常に一生懸命にやつた工場だけに復職させて呉れという意向だつた。その復職交渉を第一といたしまして、若し容れられなければ直接立替えた金を返して貰いたいという希望を頭山のところえ持つて來まして、私が日野原氏にその交渉をしたわけなんです。ところがいろいろな事情から復職は当分できんというわけになつて、それでは金を返してやつたらどうか。金は出せんから品物で出すというわけで、それで藤井君と私が折衝しまして、何か秩父工場にある物資で出すということになつて、それから問題が具体的になつたものでございますから、渡邊君の秩父工場折衝して出したようなわけでございます。その時の電工という会社も、内容も知りませんし、それから日野原藤井という人がどういうことをしておるかということも全然知らないんです。むしろ渡邊君が非常に日野原を恨んでおりました。それも渡邊君と私と折衝ができたものでございますから、渡邊君の方から電工というのは怪しからんぞということをいろいろ聞かされておりました。
  58. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それはいつ頃のことですか。最初渡邊氏からあなたにその話の依頼があつたのは……。
  59. 丹羽五郎

    証人丹羽五郎君) 去年の一月頃でございましような。
  60. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 二十三年の一月ですね。
  61. 丹羽五郎

    証人丹羽五郎君) そうです。
  62. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そうすると、秩父工場摘発されない以前のことですね。
  63. 丹羽五郎

    証人丹羽五郎君) さようでございます。
  64. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そうすると、その話の過程中に摘発されたのですか、それとも話が終つてから摘発されたのですか。秩父工場は……。
  65. 丹羽五郎

    証人丹羽五郎君) 渡邊君の話の問題が済んだ後でございますね。
  66. 伊藤修

    委員長伊藤修君) あなたの話が大体結末がついて後で秩父工場摘発があつたのでございますね。
  67. 丹羽五郎

    証人丹羽五郎君) さようでございます。
  68. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 後列表面化する以前のことですか。
  69. 丹羽五郎

    証人丹羽五郎君) 以前のことでございますね。
  70. 伊藤修

    委員長伊藤修君) つぎ込んだ金というのは何につぎ込んだというのですか、渡邊君は。
  71. 丹羽五郎

    証人丹羽五郎君) 何か工場の施設なんかについていろいろな、又接待費が主じやなかつたかと思うんですが、終戰後のことでございますから。
  72. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 要するに終戰のどさくさに軍の資材を後日何かに利用するためにどんどん買入れた、買入れるために接待したという……。
  73. 丹羽五郎

    証人丹羽五郎君) ということじやないようでございます。そういうことじやないようでございます。渡邊という男の私の見る限りでは幾分ちよつと特異な性格を持つておりますが、非常にまじめな男でございまして、終戰直後でございますね、どうしても日本は肥料の増産をやらなければならん。ついては自分秩父工場肥料に轉換してやるということは非常に國家的意義があるというので、夢中になつてつておりました。そのために或いは役所のいろいろな連絡だとか、いろいろな秩父工場を正しく盛上げるためのいろいろな費用に使つたようでございます。
  74. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 会社経営に対していろいろ各方面の連絡とか、そういうことに、いわゆる運動費に使つた。こういうのですね。
  75. 丹羽五郎

    証人丹羽五郎君) はあ。
  76. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そのときには、終戰当時拂下げを受けたいろいろな資材を獲得しておりまして、それを渡邊君が拂つたというふうに言わなかつたのですか。
  77. 丹羽五郎

    証人丹羽五郎君) そのときの詳しいことは聞いておりません。
  78. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そういうことは言わなかつたのですか。
  79. 丹羽五郎

    証人丹羽五郎君) 本人はそういう拂下げ物資秩父にあるということを言つておりました。
  80. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 自分が金を出して獲得していた。にも拘わらずそれをどんどん処分して使つちやつておる。怪しからん。それならそれで以て金をよこせ。こういうのじやないんですか。
  81. 丹羽五郎

    証人丹羽五郎君) そういうことは私は聞いておりません。私が渡邊君から聞いた範囲のことは、例えば日野原氏の昭電に入つた経緯とか、彼が乘つ取つたというような話を聞かされておる。寮を高い金で買つたとか、いろいろなそういう面のことは聞いておりました。秩父工場に関しては何か言つてつたようです。深く私も氣にも止めておりません。
  82. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 秩父工場はいわゆる物交するために肥料を出して、横流しをして、そうして他の物資の配給を受ける……。
  83. 丹羽五郎

    証人丹羽五郎君) それは米を作るために何かやつて渡邊自身も調べられたことがある、そういうことを聞いておりました。
  84. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それは渡邊自身が調べられたのじやなくして、渡邊自身田上檢事にみずから進んでそれを述べたのじやないのですか。
  85. 丹羽五郎

    証人丹羽五郎君) 渡邊自身もやつたことがあるらしいし、その後の状況を何か調べられたという……どういう檢事か知りませんが、話したことがあつたよう言つておりました。
  86. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 熊谷の田上檢事にみずから進んでこの昭和事件の発端とも言うべきいろいろな内部事情をぶちまけたのじやないのですか。
  87. 丹羽五郎

    証人丹羽五郎君) 私もそういうふうに想像しておりましたけれども……。
  88. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そういうことを知つてつて、一面あなたの手を介して日野原君との交渉を続けておつたのじやないのですか。
  89. 丹羽五郎

    証人丹羽五郎君) そうかも分りません。私は渡邊君の問題を日野原君と藤井君が処理して呉れたために一つの義理があるのです。私は全然知らなかつたのです。頭山なり私の顔を立てて呉れた、率直に言つて日野原藤井君はいろいろ渡邊君がやつておるから出たくないということを言つておりました。
  90. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 出したくない……。
  91. 丹羽五郎

    証人丹羽五郎君) 物資を……あなたの顔を立ててやると言つておりました。私の方はそういうことは困るから、拂うべき性質のものなら拂つたらどうかということを話をしてやつた。その拂うべき性質のものとしても我々が、出たことによつて渡邊が経済的に救われたのでありますから、だからその後渡邊君は我我の顔もあるから、余りあなたの得になることはしない方がいいということを言つたのです。渡邊君はあの一派を恨んでおつたようです。今も私の所に來て言つておりますけれども、その信念は変らんようです。
  92. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 大変恨んでおるようですが、結局渡邊氏の方はどういう解決になつたのですか。
  93. 丹羽五郎

    証人丹羽五郎君) それは何か曹達灰というものを何トンか出して、相当の金額になつたといつて後で礼に來ました。
  94. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 物で交付したわけですね。
  95. 丹羽五郎

    証人丹羽五郎君) はあ。
  96. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 金でなくて……。
  97. 丹羽五郎

    証人丹羽五郎君) 金じやないです。
  98. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それは飽くまで渡邊氏から頼まれたその交渉をしたわけじやないのですか。
  99. 丹羽五郎

    証人丹羽五郎君) そうです。
  100. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 日野原藤井氏から頼まれた、そういうことはないのですね。
  101. 丹羽五郎

    証人丹羽五郎君) はあ。
  102. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 逆なんですね。
  103. 丹羽五郎

    証人丹羽五郎君) はあ。
  104. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それから日野原氏から何かお頼みになられたのですか。
  105. 丹羽五郎

    証人丹羽五郎君) 日野原氏から頼まれません。それは秩父工場摘発された直後……。
  106. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それまでは、今までの話は摘発前の話ですね。
  107. 丹羽五郎

    証人丹羽五郎君) そうです。直後渡邊君があわててやつた來ました。そうして浦和の方に呼ばれた、私も掴まるのじやないか、いや君がやつたのじやないかというので、何しながら聞いたらまあ半分はそうですが、私もやられるかも知れませんと渡邊君はあわてておつた。それは君がやられるということはないだろうから、若しやられたら奥さんでもよこしなさい。君がそういう立場じやないということを説明に行つて上げてもいい。そういう程度渡邊君と別れたのです。その渡邊君は任意出頭の形で調べられた。その前後に藤井君が私に会いたいと言つて來ました。確か仙石山に昭和電工の寮があつて、そこで会つたときに、渡邊君がやつておるのだけれども、何とか抑えて呉れという話があつた渡邊君がそういうふうにあわてておるから、当人自分も引張られるかも知れないから非常にあわてておるけれども、それ程ひどいことはしないだろう、何にもしないだろうから安心なさいということで別れたのです。渡邊君は自分が掴まらなかつたものですから、非常に意気込んでやつて來た。我々の立場があるからそうあくどくやらんで呉れ。無理に止めもしなかつたが、そういう程度のことを言つて置いた。
  108. 伊藤修

    委員長伊藤修君) けれども渡邊かあわてる筈がないでしよう。田上檢事に、君はそうやつて昭電内容を暴露して田上檢事に言う以上は、君もそれは同じことで刑罰を受けるようなことになるかも知れないが、それは覚悟の上か、それは自分覚悟の上だとはつきり渡邊田上檢事に明言しておりますから、して見れば相当の腹を据えてその問題にかかつたわけでしようから、あなたのところにあわてて飛んで來ることはないですね。
  109. 丹羽五郎

    証人丹羽五郎君) 事実飛んで來ました。私の事務所の連中も知つておりますが、当人は材料を提供すれば、自分だけ大目に見て呉れるだろうと思つたが、ところが呼出が來て秩父工場の人は留められたのですね。それで私のところに実際慌てて來ました。
  110. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 心配しておつたのですか。
  111. 丹羽五郎

    証人丹羽五郎君) 心配しておりました。
  112. 伊藤修

    委員長伊藤修君) おかしいですね。
  113. 丹羽五郎

    証人丹羽五郎君) それで行つて見て、非常に和氣靄々と調べられたので安心して、又やりたいと言つておりました。
  114. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それは曹達灰貰つた後のことですね。
  115. 丹羽五郎

    証人丹羽五郎君) はあ。
  116. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それでどうなつたのですか。
  117. 丹羽五郎

    証人丹羽五郎君) その問題はそのまま深くも聞きませんでしたし、渡邊氏には藤井君も心配していたから、我々も立場があるからあなたも余りやらんで呉れ。それから俺のところに余り來るな、そう言つた動機は、私が焚きつけてやらしたような口吻で、最初恨んでおりました。そんな馬鹿なことはないと藤井君も言つておりました。私自身渡邊に、そんなことを言つて、俺の立場も困るから成るべくならやつて貰いたくないし、どうしてもやるならば、我々の立場もあるから、出入りせんでやつて呉れと言つて置いたのですが。
  118. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それでその問題は。
  119. 丹羽五郎

    証人丹羽五郎君) 渡邊君は承諾しませんでした。不服そうな顏をしまして、私の信念だからどうしてもやりたいと思いますと言つておりましたが、それ以上は私も渡邊君を追究しませんでした。
  120. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 渡邊君としても取るものを取つて、一面において又攻撃を開始するというのはちよつと。
  121. 丹羽五郎

    証人丹羽五郎君) ちよつとおかしいのです。そういう性格の男なんですね。
  122. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 渡邊君の関係はそれで終つたのですか。
  123. 丹羽五郎

    証人丹羽五郎君) そうです。
  124. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それから以來は何も関與なさらないのですか。渡邊君の問題ですね。
  125. 丹羽五郎

    証人丹羽五郎君) 渡邊君の問題は関與しておりません。
  126. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それで終つて、それ以來何も言つて來ないのですか。
  127. 丹羽五郎

    証人丹羽五郎君) 渡邊君はその後、そうですね、直接は余り言つて來ませんでした。ほかの用件で私のところに何回か來ましたが。
  128. 伊藤修

    委員長伊藤修君) その問題で。
  129. 丹羽五郎

    証人丹羽五郎君) 問題以外に。
  130. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 問題以外のことには來るけれども、その問題については來ない……。
  131. 丹羽五郎

    証人丹羽五郎君) はあ。
  132. 伊藤修

    委員長伊藤修君) どうなつたかということをお聞きになりませんか。渡邊君に対して、君の方の行動はどうしたと……。
  133. 丹羽五郎

    証人丹羽五郎君) 別に聞きません。渡邊君は何か衆議院の不当財産委員会に呼び出されて、眞相をばら撤いて來ましたが、持株整理委員会の笹山という人に会つて日野原君たちのことを言つたけれども、取上げて呉れん、怪しからん奴だ、そういうふうなことは二、三述懐は聞きました。
  134. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 日野原氏の方から渡邊君は余りびしびし動いちや困るから、どうして呉れという話はなかつたのですか。
  135. 丹羽五郎

    証人丹羽五郎君) それは藤井君と会つたときだけです。
  136. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それ以後はなかつたです。
  137. 丹羽五郎

    証人丹羽五郎君) はあ。
  138. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 日野原氏は放任したわけですね……。
  139. 丹羽五郎

    証人丹羽五郎君) 日野原君は渡邊君の問題に触れておりません。むしろ私の方から渡邊君もああいう特殊な男だが、非常に物に熱し易い男だから、時期を見て復職してやればいいじやないか、というような話をときどき私がしておりましたが、渡邊君の本当の意思昭和電工に帰りたいという意思が一番強い、ですから、向うからは……。
  140. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 要するにあの人は秩父工場責任者となりたいということが大きな目的ですね。
  141. 丹羽五郎

    証人丹羽五郎君) そうらしいです。
  142. 伊藤修

    委員長伊藤修君) ではやはりその金銭の代りに曹達灰を取つたということになるのですか。それは闇價格にしてどのくらいのものですか。
  143. 丹羽五郎

    証人丹羽五郎君) 百七八十万円のものじやないかと思います。それも私は曹達灰というものはどういうものか分りませんし、渡邊君の報告によつて知つたわけです。
  144. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 日野原氏か若しくは藤井氏から、あなたにそれ以外のことについてお頼みになつたことがありますか。
  145. 丹羽五郎

    証人丹羽五郎君) その間の事情は、その後はちよつと中断しておつたのです。仙石山で藤井君に会つた以後。ところがこれは御説明しないと分らないのですが、私の先輩茂木久保という人があるんです。この人は元満洲映画協会をやつてつたのです。で亡くなつた甘粕正彦君と親友で、満洲で特殊な仕事をやつてつたのです。これが非常に日野原氏を世話して、戰爭中満映の事務所なんかに始終日野原藤井行つてつて、まあ今日の基礎を作つた一端茂木氏なんかにあれがあるのです。茂木さんは終戰後会社もなくなつて、非常に困つておられて、日光に引込んで、日光に引込んでおられないで東京に出て來て、今品川に住んでおりまして、私の家の近くで、少し体が惡いから、私の事務所を半分使つて、私がいろいろお世話しておるのです。その人が何かの人の問題で借金をしまして、それで責められて非常に困つて、それが私の所に相談に來られたのです。で日光の別莊を賣るか担保に入れて金を作つて、その借金拂いをしたいという話、それでまあ別莊を賣つてもいいし、借りてもいい、それで或る先輩に私が話に行つたのです。ところがそれがたまたまうまく行かなかつた。時期をはつきり覚えておりませんが、渡邊君が來ておりまして、電工がいろいろ寮を買つておるという話を聞きましたから、それには日光というのは進駐軍が好きで、どうせ金を借りるのじやないから電工に賣つたらどうかという話が出まして、では丹羽行つて來て呉れ、で私が日野原の所に行つて茂木さんの話をした。日野原氏曰く、非常にお世話になつた方で、とにかく会いもしたいが、会社としてそのとき噂が立つておるという話も聞いて、私の会社に対して疑惑を持つておる人もあるから、日野原は買うわけに行かないからというので、茂木さんにそのことを報告したら、弱つちやつたなというので、それからもう一度私が話して見ようというので、それから日野原氏に会つて、あなたもこれだけになつたから個人的の金があるだろう、ついては担保で貸して呉れという話をした。ところが金もなかなかないという話で、けれども何とか考えましよう。そのときの金が四五十万欲しい、差当り三十四万円ばかりの手形を落す金があつて、でその事情を話して、考えて呉れと言つて、あとで返事が來まして、手形の半分だけの金をお立替しましようというわけなんです。それから茂木さんに言いましたら、ないよりいいから借りて來て呉れ、それで十七万円借りて來まして、それで私が早速日光の家の権利書を持つて行つたのです。そのとき藤井君に会いました。これを預けて置くから……そんな水くさいことを言わないでいいでしよう、お世話になつたから、この金も取敢ずこれだけ作つたから、いずれ何とかしますからという話。それじやとにかくお借りして置くというので、権利書を渡さず帰つて、それは電工のことは離れて話したのです。それから日野原藤井と会い出したのです。
  146. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それがいつ頃ですか。
  147. 丹羽五郎

    証人丹羽五郎君) それが三月から四月に掛けてですね。でその前後にそれだけの問題と思つておりましたら、こちらでお分りになつておるかどうか、石井春朗君というのがおつて、あれが陸軍におつた人で、あの人の先輩が私の所に訪ねて來まして、石井がいるから面倒見て呉れという話がありまして、その茂木さんの話が済んで前後から丁度私と茂木さんと、それから石井君の先輩赤松氏。
  148. 伊藤修

  149. 丹羽五郎

    証人丹羽五郎君) それから私の兄貴の親友の岡崎という人がおりまして、それは戰爭中から知り合つております。それが皆パージ組で、みんな食うや食わずで商賣をやつております。ときどき遠山さんの家はそこにあるものですから、月に一回くらい会つて昔の話でもしようじやないかといつて集まつたのです。そこへ石井君の問題なんか起つて來たものですから、何ということなしに、日野原氏がときどき顏を出すようになつた。そうこうしているうちに、何か電工の本社ですか……。警視廳からやられたのですね。そのとき初めていろいろな相談を持つて來ました。
  150. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それまでは具体的な話はなかつたのですか。
  151. 丹羽五郎

    証人丹羽五郎君) 何にもありません。
  152. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 本社の家宅捜索が行われてから初めて具体的に相談して來たのですね。
  153. 丹羽五郎

    証人丹羽五郎君) はい。それまでは何もしてないのですけれども、非常にいぢめられて困るという話は始終しておりました。それから問題の重点としてお考え願いたいのし、最後まで日野原君にしても藤井君にしても、私どもあとで驚いてしまつたのです。ああいういろいろな問題があるということを言つてないのです。それではつきり言つたことは、お世話になつた人の所へ來、味噌、醤油などを届けるとか、或いは御馳走したという程度で、具体的な問題は、商工省の下の役人に僅かの小遣いをやつた程度だという、それ以外のことは決してしてないのだということを最後まで私たちに言切つてつたのです。
  154. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 普通常識で考えられる贈答程度のことをあなたにおつしやつてつたのですね。
  155. 丹羽五郎

    証人丹羽五郎君) そうです。私だけでなくて、遠山なんかにも言つてつたのです。遠山という人は特殊な性格の人で、そんなことを嚴密に言えばいかんかも知れんけれども、世間の常識としてありがちなことだ、それに対していぢめるのはおかしいと同情しておりました。私共も実は同情しておつたのです。それ以上の具体的な事実は何も言つておりません。
  156. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そんな普通常識で考えて、通常あり得べき儀礼的行爲の程度なら、そう日野原氏も心配しなくてもよいのですがね。それ以外に何か事件が伏在しておるのじやないかとお考えにならなかつたのですか。
  157. 丹羽五郎

    証人丹羽五郎君) そういう点で、私は何も関係する氣持もなかつたのです。そんなこと言つたつて何かあるのだろうと言つておりましたが、これはこういうことを言つてよいかどうか分りませんが、対外関係には相当なことをしておると言つておりました。
  158. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 対外とは渉外のことですか。
  159. 丹羽五郎

    証人丹羽五郎君) ええ、だから國内の問題ではないのだと言つておりました。それから私がもう少しあるのだろうと聽きましたら、何か菅原さんと兄弟だと言いますな、その関係で芦田さんの問題などがあるのですが、そういう姻戚関係で以て非常に誤解されておる……。
  160. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 誤解されておると言うのですか。
  161. 丹羽五郎

    証人丹羽五郎君) 世の中の想像が事実のごとく言われておるので困つておるという説明をしておりました。
  162. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そうすると、大体事件の概念としてはそういうふうに御承知だつたのですね。
  163. 丹羽五郎

    証人丹羽五郎君) そうでございます。
  164. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それは石井から赤松貞雄氏を通じてあなたの方へどういうことを結局言つて來たわけになるのですか。
  165. 丹羽五郎

    証人丹羽五郎君) それはどういうことが、赤松の耳にどういう形でお話になつたか知れないが、赤松さんが私のところへ來たのは、私が渡邊君と組んで、表面は日野原藤井とつき合つているのですが、いぢめる側に立つておるということで、赤松さんが來たのですな。それは藤井君と私が会つたときに満足の行くような返事が取られなかつたものですから、そういう点の誤解があつたから……、赤松という人は前の戰爭内閣当時、私がいろいろ喧嘩早いことを知つておるので、今でもそんなことをやつておるのだろうと思つてつたらしいのです。赤松さんが來たものですから、それは事情が違うのだ、むしろ私は中立の立場におるけれども、どつちかというと、そういう義理があるから、抑える側に立つてつておる、そういう誤解はしないでよいという程度のお話はしたのです。
  166. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そうするとそのお話したのは、先程の茂木さんの借款の話が済んだ後のことですか。
  167. 丹羽五郎

    証人丹羽五郎君) 済んだあとだつたと思います。時間的な関係ははつきり覚えておりませんが、確かあとだつたと思います。
  168. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 日野原氏は茂木さんの借款の問題もあるし、或いは渡邊氏のことを解決したこともあるし、あなたのお氣持というのはよく分つておる筈ですが、石井を通じて、あなたを宥める役に赤松を使うということはちよつと不合理でございますね。
  169. 丹羽五郎

    証人丹羽五郎君) ところがですね。私の想像ですが、必ずしもあすこの中のグループは一致していないと思う。それからあの当時、あとでいろいろ承つたのですが、新聞にも出てしまつたのですが、いろいろなところに頼んでおるという噂を聞いたのです。ですからもう自信がないので、何でも頼んだのじやないか。
  170. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 或いはそういう傾向があるかも知れません。そうすると、赤松はむしろ宥めるという形で來たのですか。
  171. 丹羽五郎

    証人丹羽五郎君) 最初宥めるつもりで來たが、私と一度話して安心して帰つて行きました。
  172. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 何か依頼して行かなかつたか。
  173. 丹羽五郎

    証人丹羽五郎君) 何にも依頼しない。
  174. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 結局宥めることになるね。宥め役に來たのですね。
  175. 丹羽五郎

    証人丹羽五郎君) そうです。
  176. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そうすると赤松はあなたの所に金を持つて來ましたか。
  177. 丹羽五郎

    証人丹羽五郎君) 何にも持つて來ません。
  178. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 石井を通じて赤松氏に金が入つておるのは、赤松氏の所に金が止つておるのじやないか。
  179. 丹羽五郎

    証人丹羽五郎君) 入つていないと思いますが。
  180. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 赤松氏から十一万円取つておりますがね。そこで止つておるわけですね。
  181. 丹羽五郎

    証人丹羽五郎君) 全然初耳です。そのことは……。
  182. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 單に宥め役に來ただけであつて……。
  183. 丹羽五郎

    証人丹羽五郎君) そうです。
  184. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それでは藤井か、若しくは日野原……日野原でしようが、あなたにお願いして、今の渡邊に対する問題は片付いた。次に津雲氏の方を通じて、それから田中伊三次氏、元代議士の……この人を通じて警視廳及びあなたから岡崎英城を通じて警視廳、この二つの線を通じて警視廳に何かお話になつたのですね。
  185. 丹羽五郎

    証人丹羽五郎君) それは津雲さんの話は警視廳という話は知りませんが、順席から申上げますと、岡崎さんを紹介して呉れという話があつて……。
  186. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 誰から……。
  187. 丹羽五郎

    証人丹羽五郎君) 日野原氏から……。それで岡崎さんを紹介した。それは齊藤さんのところで、私だけでなく、遠山、茂木共同で紹介した。そのときに、日野原氏がさつき申上げたような順序で……。
  188. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 岡崎を紹介したのは遠山も茂木関係しておるのですね。
  189. 丹羽五郎

    証人丹羽五郎君) そうです。主として私ですが……。
  190. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 立会の上で……。
  191. 丹羽五郎

    証人丹羽五郎君) そのときに、さつきの程度のことなのに、非常に誤解されて困る。私の言う意見はちつとも警察側で聞いて呉れないという話でした。
  192. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 日野原氏がそう言うのですか。
  193. 丹羽五郎

    証人丹羽五郎君) ええ。それで何とか聞いて貰うようにして呉れないかという話があつた。岡崎はふんふんと言つてそのとき聞いておりました。あとで私と二人になつたら、私に、あいつはどうなんだと、こう言うわけです。
  194. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 誰が。
  195. 丹羽五郎

    証人丹羽五郎君) 岡崎さんが……。それから私は念のためにもう一度日野原氏に聞いて見ようというので、確か会つたと思いますが、君に言つたことは間違いないか、絶対間違いありません。そのとき彼のいろいろな理想を聞きましたがね。そのとき私は日野原氏はいい男だと思いました。未だに思つておりますが……。そのとき岡崎さんのそういうあれは事実らしい。それではとにかく誰かに聞いて見よう、こういうわけだつた。そのあとで岡崎が私に会いたいと言うので、会つた。ところがあれは駄目だよと言うのです。あいつの言つておる通りじやない。外にいろいろ問題があるらしいから断ろうと思う。それでは会つてつて呉れと言つて、それで一緒に会いました。
  196. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 岡崎氏と日野原氏とあなたの立会で……。
  197. 丹羽五郎

    証人丹羽五郎君) そうしたら岡崎は、とにかくあなたの言つておる程度ではないらしい。警視廳の方の調べは、外にもいろいろ問題があるらしいから、私としてはどうにもできんということを岡崎氏ははつきり言いました。そこで私ははつきり覚えておることは日野原氏があなたは何とかなりませんかということを言つた。正直なことを言つて私としては警視廳に長くおつたので、昭和電工より警視廳の方が可愛いんだ、具体的に言えば日野原より勝田君の方が可愛いんだ、私はできませんよとはつきり断わりました。
  198. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 藤田氏の名前をはつきり出して断わつたのですか。
  199. 丹羽五郎

    証人丹羽五郎君) 断わりました。
  200. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 岡崎氏は警視廳におつた関係上、藤田氏に依頼された趣旨を話したわけですね。
  201. 丹羽五郎

    証人丹羽五郎君) 藤田さんに話したかどうか私はそのとき聞いておりません。
  202. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 藤田という名前を出す以上、少くとも藤田氏に会つて話したわけでしよう。
  203. 丹羽五郎

    証人丹羽五郎君) 話したかも知れません。いろいろ事情を聞いて、それはなかなか困難だ、日野原氏から聞いた以上の事実が伏在しておる、そのときに岡崎さんが、日野原のいないときに聞いたのですが、すでにいろいろな方面に頼んである、自分の元輩たちに頼んでおる、だから俺がやつたつて駄目なんだとはつきり言つておりました。
  204. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 自分先輩という人たちは結局入江とか水池とかいう人じやないんですか。
  205. 丹羽五郎

    証人丹羽五郎君) 水池さんの名前は聞かなかつたと思います。
  206. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 入江さんという人。
  207. 丹羽五郎

    証人丹羽五郎君) 入江さんという人の名前は聞いた。それから今松とか聞きました。
  208. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 今松。
  209. 丹羽五郎

    証人丹羽五郎君) はあ。
  210. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そうすると岡崎さんとの関係はそれだけですか。
  211. 丹羽五郎

    証人丹羽五郎君) そうです。その後岡崎さんのところへ日野原藤井さんは私を抜いて行つていたということを聞きました。
  212. 伊藤修

    委員長伊藤修君) あなたを経ずして。
  213. 丹羽五郎

    証人丹羽五郎君) はあ。
  214. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それは重ねて頼み行つたのですね。
  215. 丹羽五郎

    証人丹羽五郎君) そうだろうと思います。
  216. 伊藤修

    委員長伊藤修君) その結果は。
  217. 丹羽五郎

    証人丹羽五郎君) その結果はやはり私は撥ねておつたと思うのですがね。それから津雲さんの問題ですが、津雲さんの問題は、そのあとでもう大分切迫したときになつてそれはどつちか覚えておりませんが、日野原さんか藤井さんかどつちか分りませんが、津雲さんが非常に動いておるという話を齊藤さんの家に行つて頭山さんの私のいたところで話した、それであの人が非常に有力な敵方なんだということを。
  218. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 動いておるというのは反対側として動いて。
  219. 丹羽五郎

    証人丹羽五郎君) 反対側として動いておる、僕はそうだと言つたんです。政党的に見ても津雲さんが動いておるとすればそうかも知れない、何だか頭山さんが知つておるから津雲に聞いて見てやろうと言つたんです。それでまあお願いしますと言つた。津雲氏とは非常に古い関係なんですが、丁度津雲さんが來たときに、私は会いませんでしたが、頭山さんが会つたあと、頭山さんが、私が聞いた話によると非常に簡單だつた日野原という奴は俺のところに世話になつておる、なかなか可愛い奴だといつたわけなんです。津雲さんが、あなた知つておるのか、それじや俺は中立だなんと言つてつたそうです。あの連中の話はその程度で片付いておる、私が行つたら、頭山氏は丹羽君よかつたよ、友達というものは非常に有難いものだねと笑つておりました。私は津雲さんのところに挨拶に行つたんです。それで津雲さんがいろいろ反対側に立つている奴を止めるからにはこつちの顔も立てて呉れるだろうというので挨拶に行きましたら、知つておるんじや仕樣がないじやないかと言つておりました。そのときに君たちだけじやない、田中も俺のところに來るからなということを言つておりました。それで津雲さんにいろいろ頼んで呉れということを日野原君から言つておりましたが、そのこともできたらやつてつて呉れといつたところが、俺は追放だから動けないよ、むしろ田中が芦田さんのところへ行つておるから、鉄道工業の関係もあるから田中にやらしたらどうかということで、向うの奴にそう言つたらどうかということを津雲さんが言つておりました。そのことを私は日野原氏と藤井さんのところに傳えてやりました。津雲氏の折衝はその程度です。
  220. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そうすると田中氏には日野原氏が直接頼んだわけですね。
  221. 丹羽五郎

    証人丹羽五郎君) そうだろうと思うですな。
  222. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 津雲氏を通じて。
  223. 丹羽五郎

    証人丹羽五郎君) 通じておりません。
  224. 伊藤修

    委員長伊藤修君) あなたが津雲氏を通ぜずして紹介を得たわけですか。
  225. 丹羽五郎

    証人丹羽五郎君) 紹介というよりむしろ日野原君と田中氏は深い関係です。
  226. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それでそういう名指しを得たものですから、それならば自分知つておるというので、自分で直接田中氏を通じて警視廳へ働きかけたのですか。
  227. 丹羽五郎

    証人丹羽五郎君) その程度内容は知らない。
  228. 伊藤修

    委員長伊藤修君) これは御存じないのですか。どういう程度に働きかけたか。
  229. 丹羽五郎

    証人丹羽五郎君) それは全然聞いておりません。
  230. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 誰かに話したということも聞いておりませんか。
  231. 丹羽五郎

    証人丹羽五郎君) 聞いておりません。
  232. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 少くとも警視廳に話しかけたということは事実でしよう。
  233. 丹羽五郎

    証人丹羽五郎君) だろうと思いますが、私は聞いておりません。
  234. 伊藤修

    委員長伊藤修君) お聞きにならないですか。
  235. 丹羽五郎

    証人丹羽五郎君) 聞きません。
  236. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そつちの方面に頼んだということ聞いておりませんか、岡崎さんを頼んだときに。
  237. 丹羽五郎

    証人丹羽五郎君) 聞きません。
  238. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そうすると、結局津雲氏というものは昭電問題に対しては、昭電摘発という反対側に先にあつたわけですね。
  239. 丹羽五郎

    証人丹羽五郎君) それも私は日野原藤井両君から噂として聞いたのであります。具体的な事実を知つておるわけじやない。
  240. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 何か相当の活動を開始する程度に至つておるじやないですか。
  241. 丹羽五郎

    証人丹羽五郎君) とにかくあの人は政友系の人ですから、どの程度までやつてつたか全然知らんのです。
  242. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 津雲氏を相手にして喧嘩になつてはたまらんというので、あなたなり、頭山氏なりを介して、先ず津雲氏を抑えなければならんというのでそつちに手をかけたのではないですか。
  243. 丹羽五郎

    証人丹羽五郎君) 津雲氏を抑える……。
  244. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そういうのであなた介して津雲氏を抑えにかかつたわけでしよう。
  245. 丹羽五郎

    証人丹羽五郎君) 津雲氏はああいう人ですから、君たちが知つておるんならば止むを得ず中立になろうかといつて……。
  246. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そういうふうにして。
  247. 丹羽五郎

    証人丹羽五郎君) 片がついた。
  248. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 片がついたわけですね。
  249. 丹羽五郎

    証人丹羽五郎君) はあ。
  250. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それから津雲氏は別にはつきり行動は取らなかつたわけですね。
  251. 丹羽五郎

    証人丹羽五郎君) 取らなかつたろうと思うのですがね。
  252. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 少くとも昭電問題に対する左翼團体の方の攻撃というものはここで抑えたわけですね。
  253. 丹羽五郎

    証人丹羽五郎君) 左翼團体というものはないですがね。
  254. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 左翼側ですね。津雲氏は右翼側の一番本源、中心になつておるわけですね。
  255. 丹羽五郎

    証人丹羽五郎君) 津雲さんは私共は右翼とは思つていないです。我々が知つておるのは、昔右翼というカテゴリーに入れられたときに、津雲氏の政党政治を攻撃して知つたわけです。なかなか面白い男と思つて個人的に親しくしておるわけですが、政治的には絶えずやつつけておつたから我々のグループはと思つておりませんですね。
  256. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そうすると津雲氏を抑えるについて何か金をやつたのでね。
  257. 丹羽五郎

    証人丹羽五郎君) やつておりません。
  258. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 日野原氏からどうです。
  259. 丹羽五郎

    証人丹羽五郎君) それは私檢事局で調べられて大分行き違いがあつてつたのですが、金の問題はこういうことです。茂木さんに十万円贈つた。取敢ずというわけで。茂木さんも実際の話困つておる。頭山のところでも余り樂じやない。私自身も私の友人たちも非常に金に困つておる。それから藤井君に会つて、少し金を貸さんかと言つたことがある。いま金はできないというのです。その点で私も少し憤慨しておるのです。あのくらい使つたら貸してもよかつたと思つて藤井氏はお盆の時期が來れば会社でも金が自由になる。
  260. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 昨年のお盆ですね。
  261. 丹羽五郎

    証人丹羽五郎君) ええ。その時に会社でもいろいろ金を使う。贈答品の靴下とか、骨董品を買うという話を聞いております。それで儲けたらどうだ。こういうのですね。それならば自分は総務部長だから扱いいいというので、事実私共事務所の人に聞いたら、私共は靴下とか、そういうものの見本を集めたというのです。お世話になつた人に届けなければならん。藤井はお盆まで待つて呉れと言つた。私は苦しいけれども諦めておつた。諦めておる暫くたつて藤井君のいないときに、日野原氏なんかに会つて飲んだ、齊藤さんの所で。そのときに日野原が私にこういう謎をかけました。世間でいろいろ噂されておるけれども、私は会社の金は一銭も使つておりませんと言い切るんです。それで私は鉄道工業の代表取締をしておる。これは菅原通齋という人が、お父さんが自分の息子の通斎が政治が好きになるというと危險性があるから、お前やれといつて任されたが、自分電工をやるので向うに廻された。鉄道工業の下請の会社が未だに自分を頼つておる。電工に入るときにあれだけの大会社に入るからには一年や二年で押えられるものではない、その間あなたは自分自分の金を使つてはいかんから自分は後援してやる。日野原後援会というものができておる。それで相当の金が來るから私の使える金には心配はないのです。と私は言うのです。それだからお金が要るなら言えというような謎をかけたのです。それですから、その翌日日野原会社に行きまして、金を貸して呉れ、作つて呉れと言うたのです。半分貸して貰うような半分貰うように言いました。そうしたならば何とかしましよう、どの位要るか。というので、百万円要るということを言つたのです。そうすると金額ははつきり言いませんが、何とかしましようと言つて、それから又一日か二日経つて行きました。すると大体お申込の金はできないけれども、或る程度の金は作りましよう、大藏大臣は藤井にやらせるから、藤井に具体的に話して呉れと言うので、私と藤井会つて、どのくらい作るがと言つたところが七十万円できると思うが、一遍にはできませんが、二回か三回に分けてなら作りましよう、こういうわけでした。それで三回に分けて私はそれを受取りました。私はこれを個人的に使つちやつておるのです。それが檢事局に調べられたときに、警視廳の買收費だとか、津雲さんにやつた金だとかになつておるわけです。事実やつておれば……それは調べれば分りますが、何もやつていないのです。
  262. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それで藤井があなたに金は自由にならんのだから、むしろ会社はいろいろ運動をするのに必要な骨董品だとか、或は繊維品だとか、贈答品に使うような品物を買わなければならんから、それをあなたは賣り込んで、それで儲けたらどうだ、それなら自分は総務部長をやつておるので扱いいいというような話があつたとおつしやつたのですが、その方はどうですか。
  263. 丹羽五郎

    証人丹羽五郎君) その方はその前に捕まつてしまつちやつたので……。
  264. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それで実現できなかつたのですね。
  265. 丹羽五郎

    証人丹羽五郎君) 実現できませんでした。これはそういう関係で盆のときに品物を賣つては私は挨拶させようと思つたのです。
  266. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 七十万円の金を……。
  267. 丹羽五郎

    証人丹羽五郎君) 七十万円の金は日野原氏個人の金を私は作つて貰つたと思つておりました。
  268. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 日野原氏には現金を申込み、藤井氏にも申込んだけれども……。
  269. 丹羽五郎

    証人丹羽五郎君) 藤井氏に話したときは四月か五月であつたのですが、盆は七月であつたから盆まで駄目だということであつたのです。で私は金が要るのでしたが、諦めておつたのです。
  270. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 藤井の方は……。
  271. 丹羽五郎

    証人丹羽五郎君) そうです。たまたま日野原氏がそういう謎をかけて呉れましたから……。
  272. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 日野原の方から先に入手することになつたのですか。
  273. 丹羽五郎

    証人丹羽五郎君) 金は藤井に話して二度届けて來ました。そしてそれも皆私の事務所に届けて來ました。
  274. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 両方貰うつもりですか、片方だけですか。
  275. 丹羽五郎

    証人丹羽五郎君) 私ですか、先に私貰いましたから、後の方は貰う氣がないのですよ。ただお世話になつた人に盆には少し御挨拶させようと思つておりました。
  276. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そうすると結局あなたが関與された、渡邊、津雲、田中、岡崎、こういう関係に対してはあなたの方からお金は交付していないのですか。
  277. 丹羽五郎

    証人丹羽五郎君) 一銭も行つておりません。
  278. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 七十万円の中から……。
  279. 丹羽五郎

    証人丹羽五郎君) はあ、私は関係者に渡したのは頭山さん以外茂木さんに届けました。茂木さんは別に……。
  280. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 十七万円の外に……。
  281. 丹羽五郎

    証人丹羽五郎君) はあ。
  282. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 十七万円という以外に届けたのですか……。
  283. 丹羽五郎

    証人丹羽五郎君) はあ。
  284. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 幾らくらい……。
  285. 丹羽五郎

    証人丹羽五郎君) 十万円くらい茂木の所へ届けたと思います。それから後一、二万円届けておる。頭山さんの所は十六、七万円に行つておると思います。
  286. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そうすると、二十六、七万円になるですね。それ以外は……。
  287. 丹羽五郎

    証人丹羽五郎君) 関係者には全然ありません。日ははつきり覚えておりませんが、檢事さんに三千円の金まで細かく申上げております。
  288. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 岡崎英城の方は……。
  289. 丹羽五郎

    証人丹羽五郎君) 一銭も行つておりません。
  290. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 十五万円の金はどこから出たのですか。
  291. 丹羽五郎

    証人丹羽五郎君) それはよく聞いておりません。日野原から出るということを聞きましたが。
  292. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 日野原から直接渡したんですね。
  293. 丹羽五郎

    証人丹羽五郎君) それは私捕まつて……出て來たので分りません。私は檢事さんと喧嘩したのです。岡崎が金を取るということはないと言つて喧嘩して出て來たのです。ところが後で少し貰つたということで、少し氣が拔けたんですが……。
  294. 伊藤修

    委員長伊藤修君) お金を貰つてつて、先程の返事は余り期待に副わないわけですね。
  295. 丹羽五郎

    証人丹羽五郎君) それは後で弁護士の世話くらいをされたんではないですか。
  296. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 先程の第一回のときはそれで断つたが、第二回は日野原と直接話したというお話があるが、このときは持つて行つて重ねて懇願したというわけではないですか。
  297. 丹羽五郎

    証人丹羽五郎君) その間の事情余り知りません。
  298. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 警視廳の連中が……藤田氏も入つておるが、格で以て相当豪遊をしておりますが……。
  299. 丹羽五郎

    証人丹羽五郎君) それも知りません。
  300. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そういうものにはあなたは関係はないのですか。
  301. 丹羽五郎

    証人丹羽五郎君) 檢事局で藤田と親しくしたということを訊かれましたが、岡崎の後輩で非常に立派な人だということを聞いておりますが、藤田という人には去年、一昨年一度会つたきりです。いい感じも惡い感じも持つていない程度です。
  302. 伊藤修

    委員長伊藤修君) だから一度、二度、十数回行つておるらしいですがね。
  303. 丹羽五郎

    証人丹羽五郎君) 私は藤田に一回会しか会つておりません。
  304. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 桂に行つたのではないのですか。
  305. 丹羽五郎

    証人丹羽五郎君) 桂も知りません。
  306. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 桂へ行つて來て、金を持つて來たということは聞かないですか。
  307. 丹羽五郎

    証人丹羽五郎君) 聞きません。
  308. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 警視庁にそういう金がある筈もなし、個人的にそれだけの何十万という……公定價格でしよう。どうせあすこへ行く連中は公定價格で何十万というものだから、闇であれば相当な遊興ですね。個人で拂う筈がないが、結局そちらの方面から出るのではないのですか。
  309. 丹羽五郎

    証人丹羽五郎君) それは私は知りません。桂という所は新聞で見て知つたのですから……。
  310. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そうすると、諄いようですが、津雲氏の方の関係は津雲の反対運動を左右するだけであつて、津雲氏を通じて警視廳の方へ積極的に働きかけるという積極的の意思表示をあなたはしておらないのですか。
  311. 丹羽五郎

    証人丹羽五郎君) しておりません。
  312. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そうすると、したとすれば、日野原氏から田中の方へ直接そういう話があつたというふうに想像されますが。
  313. 丹羽五郎

    証人丹羽五郎君) 大体私共の交際は今の人には分るかどうか知らないが、俺たちの仲間であると言えば、その人の名前が変つても金等で驚くような仲間ではない。お互いに友情を感じておるので、問題を藤井とこせこせいろいろ言つておるが、私は何も先方には傳えておりません。
  314. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 腹で事が処理されると……。
  315. 丹羽五郎

    証人丹羽五郎君) どの程度つたか知りません。津雲氏なんかとは昨日会つたときまで全然会つていません。私檢事に調べられたときも、私を出すときにもいろいろなものと連絡を取つてつたが、私は男であるからと言つて渡邊檢事と喧嘩したが、千円くらいの証人まで呼ばれておつた。そのとき誰とも私会つていません。たまたま昨日ちよつと津雲さんの奥さんが亡くなつて、葬式であつたの行つて、ただ挨拶をして帰つたので何をやたつか分りません。
  316. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 外に何かお尋ねはありませんか。  ではどうも有難うございました。時間が半端になりますから休憩いたします。    午前十一時四十九分休憩    —————・—————    午前一時二十四分開会    〔証人日本原信吾君著席〕
  317. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 午前に引続きまして法務委員を開会いたします。  日野原信吾さんでございますか。
  318. 日野原信吾

    証人日野原信吾君) そうであります。
  319. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 御証言を述べます前に宣誓をお願いいたします。宣誓書は朗読して頂きたいと思います。    〔総員起立、証人は次のように宣誓を行なつた〕    宣 誓 書  良心に從つて眞実を述べ、何事もかくさず、又、何事もつけ加えないことを誓います。         証人 日野原信吾
  320. 伊藤修

    委員長伊藤修君) お年はお幾ですか。
  321. 日野原信吾

    証人日野原信吾君) 三十九になります。
  322. 伊藤修

    委員長伊藤修君) お住いはどちらですか。
  323. 日野原信吾

    証人日野原信吾君) 靜岡縣田方郡凾南村大瀧一八五番地でございます。
  324. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 職業は医者でございますか。
  325. 日野原信吾

    証人日野原信吾君) 医者でございます。
  326. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 昭電の何か社員になつていらつしやいますか。
  327. 日野原信吾

    証人日野原信吾君) いいえ、全然関係ございません。
  328. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 嘱託か何かになつていらつしやいますか。
  329. 日野原信吾

    証人日野原信吾君) いいえ。
  330. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 全然ないですか。
  331. 日野原信吾

    証人日野原信吾君) はい。
  332. 伊藤修

    委員長伊藤修君) あなたは昨年七月の十三、四日頃太田耐造弁護士を銀座七丁目の同氏の事務所に尋ね、兄節三氏の手紙を示して太田氏の意見を求めたことがございますか。
  333. 日野原信吾

    証人日野原信吾君) ございます。
  334. 伊藤修

    委員長伊藤修君) その手紙の趣旨はどういうことなんですか。
  335. 日野原信吾

    証人日野原信吾君) 小菅の拘置所の黒田さんという方と、伊藤さんという方と、野崎さんという方と、三人に金品を贈れという……。
  336. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 金品を……。
  337. 日野原信吾

    証人日野原信吾君) はあ、贈れというので……。
  338. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 贈れと……。
  339. 日野原信吾

    証人日野原信吾君) はあ。
  340. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 金額は。
  341. 日野原信吾

    証人日野原信吾君) 金額は現金三万円でございます。伊藤戒護課長さんに。
  342. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 課長さんに三万円……。
  343. 日野原信吾

    証人日野原信吾君) はあ。それから黒田さんに五千円。
  344. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 御田看守に五千円ですね。
  345. 日野原信吾

    証人日野原信吾君) はあ。野崎医務課長さんにやはり現金三万円。
  346. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 三万円。
  347. 日野原信吾

    証人日野原信吾君) はあ。
  348. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 手続にそういうことが書いてあつたんですか。
  349. 日野原信吾

    証人日野原信吾君) はあ、書いてございました。
  350. 伊藤修

    委員長伊藤修君) その手紙はどうして入つたんです。
  351. 日野原信吾

    証人日野原信吾君) 小菅の黒田さんがお用ちになつたんです。
  352. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 黒田看守が持つて來たんですか。
  353. 日野原信吾

    証人日野原信吾君) そうでございます。
  354. 伊藤修

    委員長伊藤修君) あなたの家へ。
  355. 日野原信吾

    証人日野原信吾君) いいえ、義兄の志摩英一の事務所へ……。志摩英一という義兄がございます。その事務所に持つて参りました。
  356. 伊藤修

    委員長伊藤修君) どこにありますか。
  357. 日野原信吾

    証人日野原信吾君) 日本水素でございます。
  358. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 日本水素の中にあるんですか。
  359. 日野原信吾

    証人日野原信吾君) はあ、東都出張所でございます。
  360. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 日本水素の東京出張所、それはどこですか。
  361. 日野原信吾

    証人日野原信吾君) 鍛冶橋のそば、八重洲口のそばです。
  362. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そこへ持つて來たんですね。
  363. 日野原信吾

    証人日野原信吾君) そうでございます。
  364. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そしてあなたに直接渡したんですか。
  365. 日野原信吾

    証人日野原信吾君) そうです。義兄から私が受取りました。
  366. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そうすると義兄にそれを渡して行つたんですか。
  367. 日野原信吾

    証人日野原信吾君) そうでございます。
  368. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それを、義兄の人からあなたに……。
  369. 日野原信吾

    証人日野原信吾君) そうでございます。
  370. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 靜岡縣の方へ送つてよこしたんですか。
  371. 日野原信吾

    証人日野原信吾君) いいえ、私が当時東京におりましたから、直接義兄から受取りました。
  372. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そうしてその義兄の人と相談したんですか。
  373. 日野原信吾

    証人日野原信吾君) そうでございます。
  374. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それでどういうようになつたんですか、どう言われたんですか。
  375. 日野原信吾

    証人日野原信吾君) どういうふうにしようかという相談をいたしましたが、結局私がやりますから、と言つて私が全部引受けました。
  376. 伊藤修

    委員長伊藤修君) あなたがやりますからと言つて……。
  377. 日野原信吾

    証人日野原信吾君) はあ。
  378. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それはあなたから言われたんですか。
  379. 日野原信吾

    証人日野原信吾君) そうでございます。
  380. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それで太田さんの所へ持つてつたんですね、その足で。
  381. 日野原信吾

    証人日野原信吾君) はあ、そうでございます。
  382. 伊藤修

    委員長伊藤修君) で、太田さんにはその手紙を見せて、どういうことをおつしやつたんですか。太田さんにどういうことをおつしやつたんですか。手紙を見せるだけではない、何か言葉があるでしよう。
  383. 日野原信吾

    証人日野原信吾君) 氣を付けてやるようにとおつしやいました。
  384. 伊藤修

    委員長伊藤修君) いいえ、それは、氣を付けてやれということは向うからおつしやつたんでしよう。その前にあなたから相談をかけることは、どういうことを相談かけたんですか。
  385. 日野原信吾

    証人日野原信吾君) ただ手紙をお見せしました。当時太田先生には何事も相談しておりましたから。
  386. 伊藤修

    委員長伊藤修君) お見せして何かあなたからおつしやつたでしよう。このような手紙が参りましたからと言つてお見せするわけです。どうしたものだろうという相談をかけたんですか。
  387. 日野原信吾

    証人日野原信吾君) 別にどうしたものだろうというようなことは申上げなかつたんですけれど。
  388. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 何かおつしやつたんでしよう。默つてぽつと手紙を置いて來るようなことはないでしよう。
  389. 日野原信吾

    証人日野原信吾君) はあ、でもやるのは私でございますから。
  390. 伊藤修

    委員長伊藤修君) やるのはあなただけれども、手紙を持つて行つて相談をかける以上は何かあなたから意思表示がなくちやならんでしよう。何とおつしやつたんですか。
  391. 日野原信吾

    証人日野原信吾君) このような手紙が來たと言つてお見せしただけだつたと思います。そういうように記憶しております。
  392. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 何にもおつしやらなかつたのですか。
  393. 日野原信吾

    証人日野原信吾君) はい、何にもおつしやらなかつたように記憶しております。
  394. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そうすると、太田さんは何とおつしやつたのですか。
  395. 日野原信吾

    証人日野原信吾君) 氣を付けてやるようにとおつしやつたのです。
  396. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 読んでからね。
  397. 日野原信吾

    証人日野原信吾君) はい。
  398. 伊藤修

    委員長伊藤修君) ただそれだけですか。
  399. 日野原信吾

    証人日野原信吾君) そうでございます。
  400. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 非常に簡單じやないですか。
  401. 日野原信吾

    証人日野原信吾君) ……。
  402. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 太田さんのところにどのくらいの時間みえたのですか。
  403. 日野原信吾

    証人日野原信吾君) そのときですか、お忙しい方ですから、大抵二十分くらいしかお邪魔しておりません。
  404. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 二十分話したのに、それだけじや非常に少な過ぎるじやないですか。
  405. 日野原信吾

    証人日野原信吾君) 外にもいろいろお打合せすることがございましたから。
  406. 伊藤修

    委員長伊藤修君) どういうことをお打合せする……。
  407. 日野原信吾

    証人日野原信吾君) 別にむずかしいことでも何でもないのですけれども、いろいろよそのお話を伺うことも沢山ございましたから。
  408. 伊藤修

    委員長伊藤修君) ですから、どういうことを伺つたのですか。
  409. 日野原信吾

    証人日野原信吾君) そのときでございますか。
  410. 伊藤修

    委員長伊藤修君) ええ。
  411. 日野原信吾

    証人日野原信吾君) はつきり覚えておりませんけれども、兄が小菅に参りましたことは、やはり衝撃を受けておりましたから、どういうふうになつて行くのかということを伺つたと思います。
  412. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 事件の模樣をお聞きになつたのですか。
  413. 日野原信吾

    証人日野原信吾君) いえ、小菅へ行くということはどういうことになるかというようなことです。
  414. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 小菅へ行くということは……。
  415. 日野原信吾

    証人日野原信吾君) 私、自分の実の兄が拘置所に入つたのでございますから、どうなることかと思つておりましたから、ただ事件の成行きでなくて、一体入つてどういうようになるのかというようなことを伺つたと思います。どのような生活をするのか、そのようなことを伺つたと思います。
  416. 伊藤修

    委員長伊藤修君) まあそれをお聞きになることは御尤もでしよう。肝腎の太田耐造さんの所を訪問された用件のことは、余りに簡單じやないですか。そのことについて……。
  417. 日野原信吾

    証人日野原信吾君) 外にいろいろお話を伺つたり、こちらからも申し上げたことはあると思いますけれども、細かいことは覚えておりません。
  418. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それからあなたは、手紙を持つて行つて相談したのは、それをやつたらいいかどうかということを聞きに行つたわけでしよう。
  419. 日野原信吾

    証人日野原信吾君) それは併しはつきり伺つたわけじやなく、ただお見せしたわけでございますから、何でも御相談相手になつて頂いております。
  420. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 御相談相手だから、結局その手紙を見せて、それについてそれを実行した方がいいかということを御相談したのですか。
  421. 日野原信吾

    証人日野原信吾君) それまではつきり先生の念を押したわけではございませんですけれども、お忙しい間に私にお会い下さることですし、いろいろのことを申上げなくてもお互いによく分つておることでございますから。
  422. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それでまあ手紙の趣旨と、お出でになつた訪問の目的が、そこにあるということになれば、その相談かけられた全趣旨が分るわけですね。結局氣を付けてやつたらいいだろうということは、それに同意されたわけですね。
  423. 日野原信吾

    証人日野原信吾君) そういうお話を確かにおつしやつておられました。
  424. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それ以外に言葉のやりとりはないですか。
  425. 日野原信吾

    証人日野原信吾君) いろいろあつたと思いますけれども、よく覚えておりません。拘置所の中で兄がどういうような暮しをして行くのかということをいろいろ伺つたと思いますけれども、大分前のことになりますので、細かい点は覚えておりません。
  426. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それでそれからどうなさいましたか。
  427. 日野原信吾

    証人日野原信吾君) その翌日か翌々日くらいに黒田さんの所をお訪ねしました。
  428. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 黒田さんの自宅ですか。
  429. 日野原信吾

    証人日野原信吾君) そうです。
  430. 伊藤修

    委員長伊藤修君) どこですか。
  431. 日野原信吾

    証人日野原信吾君) 足立区北葛飾町の番地は忘れましたが、大変田舍のような所でした。川を越して……。
  432. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 翌日か、翌々日ですか。
  433. 日野原信吾

    証人日野原信吾君) はい。
  434. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 夜ですか。
  435. 日野原信吾

    証人日野原信吾君) 夜です。
  436. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そうして……。
  437. 日野原信吾

    証人日野原信吾君) 伊藤戒護課長さんと野崎医務課長さんに贈物をすることについて、いろいろお教え頂いたわけです。
  438. 伊藤修

    委員長伊藤修君) どういうことを教えて呉れましたか。
  439. 日野原信吾

    証人日野原信吾君) 全然お目にかかつたことがない方ですから、どういうふうにして贈物をしていいか、樣子を伺つたわけです。
  440. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そうしてどういうことを言つたのです。どういうふうに指図をしたのですか。
  441. 日野原信吾

    証人日野原信吾君) 夜お伺いして贈物だけを置いてきて、翌日御挨拶に上つたらどうかというようなことを……。
  442. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 最初贈物だけを届けて置いて、翌日改めて……。
  443. 日野原信吾

    証人日野原信吾君) はい。それとなく御挨拶に上つたらどうかということで……。
  444. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そういう指図だつたのですね。
  445. 日野原信吾

    証人日野原信吾君) そう言つておられました。
  446. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そのときに贈物をすると、どういうことになるということは言つておられないのですか。
  447. 日野原信吾

    証人日野原信吾君) 別に私の方も……。
  448. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そのことは別に……。
  449. 日野原信吾

    証人日野原信吾君) はい。
  450. 伊藤修

    委員長伊藤修君) どういう便宜があるということも……。
  451. 日野原信吾

    証人日野原信吾君) そのことは別に……。
  452. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それで黒田さんの方はそのとき五千円置いてきたのですか。
  453. 日野原信吾

    証人日野原信吾君) そうでございます。
  454. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 現金で。
  455. 日野原信吾

    証人日野原信吾君) 現金です。
  456. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 御本人に渡したのですね。
  457. 日野原信吾

    証人日野原信吾君) そうでございます。
  458. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それから今の伊藤戒護課長の方にはいつ行つたのですか。
  459. 日野原信吾

    証人日野原信吾君) 黒田さんのお宅へ伺つた翌日の夕方お伺いしました。
  460. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それで……。
  461. 日野原信吾

    証人日野原信吾君) 伊藤さんと野崎さんの両方のお家へ……。
  462. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 翌日の晩……。
  463. 日野原信吾

    証人日野原信吾君) 夕方です。
  464. 伊藤修

    委員長伊藤修君) その日に済ましたのですね。三万円持つて行つたのですね。
  465. 日野原信吾

    証人日野原信吾君) そうでございます。
  466. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それは御本人に渡したのですか。
  467. 日野原信吾

    証人日野原信吾君) 家族の方にお渡して帰りました。
  468. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それは……。
  469. 日野原信吾

    証人日野原信吾君) 両方とも……。
  470. 伊藤修

    委員長伊藤修君) その家族とはどういう……。
  471. 日野原信吾

    証人日野原信吾君) 伊藤さんの方は祖母に当る方で、野崎医務課長の方は奥さんに渡しました。
  472. 伊藤修

    委員長伊藤修君) なんと言つて渡しました。
  473. 日野原信吾

    証人日野原信吾君) 名刺代りと言つて……。
  474. 伊藤修

    委員長伊藤修君) あなたは、日野原氏の弟だと言つて……。
  475. 日野原信吾

    証人日野原信吾君) はい。
  476. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 資格を名乘つて……。
  477. 日野原信吾

    証人日野原信吾君) はい。
  478. 伊藤修

    委員長伊藤修君) よろしくお願いしますと言つたのですか。
  479. 日野原信吾

    証人日野原信吾君) ただ御挨拶に上つたのです。名刺代りに持つて参りましたと言つて……。
  480. 伊藤修

    委員長伊藤修君) でどう言つて……。
  481. 日野原信吾

    証人日野原信吾君) 別にむずかしい條件は申上げませんでした。
  482. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それで黒田氏から教えて頂いた順序で翌日行くことになるわけですね。翌日にですね、行つたのですか。
  483. 日野原信吾

    証人日野原信吾君) 黒田さんの所に伺つた翌日にお伺いしたと思います。
  484. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 最初黒田さんからどういうふうにしてやつたらいいだろうといつてつたら、最初持つて行つて翌日……。
  485. 日野原信吾

    証人日野原信吾君) そうでございます。その翌日拘置所の方へお伺いして御挨拶申し上げようと思つてつたのです。
  486. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 思つてつたのですか。どうして行つたのですか。
  487. 日野原信吾

    証人日野原信吾君) そうすると、伊藤さんの代理の方から、兄の世田谷の自宅に電話がかかつて参りまして、奥さんでもどなたでもいいから是非來て呉れるようにという言傳えがありました。それを私聞きまして夕方直ぐ向うに参りました。
  488. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それで……。
  489. 日野原信吾

    証人日野原信吾君) 伊藤さんの方は御自宅で、伊藤さん自身にお目にかかりました。
  490. 伊藤修

    委員長伊藤修君) どういう用件つたのですか。
  491. 日野原信吾

    証人日野原信吾君) 伊藤さんは贈物をお返しになるとおつしやつたのです。それを是非とお願いして受取つて頂いたのです。
  492. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そうすると、電話をかけたのは返えすためにあなたを呼んだのですね。
  493. 日野原信吾

    証人日野原信吾君) そうです。
  494. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そうすると、重ねてあなたが是非受取つて下さいというので、押返して受取つて呉れということを言つて、結局受取られたのですね。
  495. 日野原信吾

    証人日野原信吾君) 受取りました。
  496. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そのとき何かいろいろお頼みになつたのですか。
  497. 日野原信吾

    証人日野原信吾君) 私が申上げたのは、別に特にこのような詰らないお金を持つて來て……兄が非常に、その前に兄に面会したときに容色が衰えておつたから非常に私共びつくりいたしまして、非常に蒼ざめて元氣がなかつたものですから、どんなことをしても……、生命の危險があるのではないかというような氣がいたしました。それで伊藤戒護課長さんにお願いしたときも、ただこんなつまらない金品を持つて來て、そうして少しばかり便宜を図つて頂くという、そんなけちなつまらない氣持でなく、兄の命を護つて頂くんだからという意味で、私の志として差上げたのであつて、くれぐれもお頼み申上げたのであります。
  498. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 伊藤戒護課長にですね。
  499. 日野原信吾

    証人日野原信吾君) そうでございます。
  500. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それで何かそこで受取書か何か貰つたのですか。
  501. 日野原信吾

    証人日野原信吾君) はあ、それで初めにお返しになつたときに、自分が苦しこのことが表沙汰になつて檢事局なんかに呼ばれたときに申し開きが立たないから受取書を書いてくれと言われたのです。それで私が書いてお渡ししました。
  502. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 受取書というのは……。
  503. 日野原信吾

    証人日野原信吾君) 向うへ送つた金品を今度こちらへ受取つたという受取書でございます。
  504. 伊藤修

    委員長伊藤修君) あなたが改めて又返して貰つたと、それであなたが受取つたという受取書を書いたわけですね。
  505. 日野原信吾

    証人日野原信吾君) そうでございます。
  506. 伊藤修

    委員長伊藤修君) その実はお金は返して貰つていないわけですね。
  507. 日野原信吾

    証人日野原信吾君) いいえ、そのときお返しになつたのでございますけれども、受取書を置いて参りますから、これは受取つて下さいとお願いした次第です。
  508. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 受取書は向うへ渡して、お金はお金で向うへ渡したわけですね。
  509. 日野原信吾

    証人日野原信吾君) 無理に受取つて下さいと……。
  510. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 結局受取書は架空のものでございますね。
  511. 日野原信吾

    証人日野原信吾君) そうでございます。
  512. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 金は受取つているのですから……。
  513. 日野原信吾

    証人日野原信吾君) まあそうでございます。
  514. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そういうことになりますね。
  515. 日野原信吾

    証人日野原信吾君) はあ。
  516. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それとも受取書を一旦出して、金をあなたが一旦返して貰つたということになるのですか。
  517. 日野原信吾

    証人日野原信吾君) はあ、これは返すと言つて、疊の上か机の上にお置きになつておられたのです。受取書を書いてからやはりこれは受取つて頂きますと言つて……返して貰つたというわけではないのです。
  518. 伊藤修

    委員長伊藤修君) これは一旦手に受取つたわけでもないのですね。
  519. 日野原信吾

    証人日野原信吾君) はあ、そうでございます。
  520. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 受取書も渡し、金も渡して來たのですね。
  521. 日野原信吾

    証人日野原信吾君) そうでございます。
  522. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 野崎医師の方は……。
  523. 日野原信吾

    証人日野原信吾君) その翌日から翌々日、向うへ面会に参りまして、野崎医務課長を通じて兄に面会を頼みました。そのときに医務課の事務室の中で皆さんいらつしやるので、お返しになりまして、こういうものを置いておつたけれども受け取るわけに行かないからと言つてお返しになりまして……。
  524. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それは受取つて來たのですか。
  525. 日野原信吾

    証人日野原信吾君) それは、もう皆さんが御覧になつておることですしそのまま受取つてつたのであります。
  526. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それで、それに対しては差上げなかつたのですか。
  527. 日野原信吾

    証人日野原信吾君) はあ、何とかして差上げたいと思つておりましたけれども、あのように事務室の中でお返しになる御様子ではなかなか差上げるのは難かしいと思いまして、その後黒田さんに相談したこともあるのですけれども、結局渡しませんでした。
  528. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 人が沢山おつたのですね。
  529. 日野原信吾

    証人日野原信吾君) そうでございます。
  530. 伊藤修

    委員長伊藤修君) その後、七月の十八、十九日頃、又あなたの兄さん、節三氏から手紙がことずかつて來たことがあるのですね。
  531. 日野原信吾

    証人日野原信吾君) その伊藤戎護課長さんや何かにお送りするという手紙がございますか、それは……。
  532. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それは七月の十三、十四日頃です。そうじやないですか。
  533. 日野原信吾

    証人日野原信吾君) そうでございます。
  534. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それから、そうでなく、その後七月十八、十九日頃、又手紙が來たのじやないですか。
  535. 日野原信吾

    証人日野原信吾君) そうでございます。二度目の手紙が参つたわけでございます。
  536. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それは誰が持つて來たのですか。
  537. 日野原信吾

    証人日野原信吾君) 黒田さん……。
  538. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 今度は直接あなたに持つて來たのですか。
  539. 日野原信吾

    証人日野原信吾君) やはり日本水素の事務所へ持つて参りました。
  540. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 義弟のところへ……。
  541. 日野原信吾

    証人日野原信吾君) そうでございます。
  542. 伊藤修

    委員長伊藤修君) その人から受取つたのですね。
  543. 日野原信吾

    証人日野原信吾君) そうでございます。
  544. 伊藤修

    委員長伊藤修君) その手紙の内容は……。
  545. 日野原信吾

    証人日野原信吾君) 先程私申上げるのを間違えましたが、二度目の手紙が來てから、黒田さんのお宅へ伺つたのです。初めの手紙には黒田さんの自宅へ行けと書いてなかつた。二度目の手紙に黒田さんの自宅へお伺いするようにということずけでございました。
  546. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そうすると二度目の手紙が來てからですか、黒田氏のところへ行つたのは……。
  547. 日野原信吾

    証人日野原信吾君) そうでございます。初めは黒田さんの方からこちらへおいでになつて御案内して下さる筈だつたのです。それが二度目の手紙では、黒田さんの自宅の方へお伺いするようにと変つていたわけです。
  548. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そうすると太田氏のところへ行つたのは二度目の手紙を見てからですか。それともやはり第一の手紙のときですか。
  549. 日野原信吾

    証人日野原信吾君) 二度ともお見せしております。
  550. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そうすると先程お話になつたことはその通り間違いないですね。
  551. 日野原信吾

    証人日野原信吾君) そうでございます。
  552. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そうすると第二の手紙が來て、その手紙も太田さんにお見せしたのですか。
  553. 日野原信吾

    証人日野原信吾君) お見せしました。
  554. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それについてはどうだつたですか。
  555. 日野原信吾

    証人日野原信吾君) やはり氣を付けてやるようにとおつしやつて……。
  556. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 氣を付けてやるようにと……。
  557. 日野原信吾

    証人日野原信吾君) はあ。
  558. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そうすると黒田氏のところへ行つたのは、二度目の手紙が來てから行つたのですね。
  559. 日野原信吾

    証人日野原信吾君) そうでございます。
  560. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そうすると前に行つたというのは、そのことを言うのですね。
  561. 日野原信吾

    証人日野原信吾君) そうでございます。
  562. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それから七月の二十日頃價格五、六百円の何か箱入の品物ですね、乾物ですか。
  563. 日野原信吾

    証人日野原信吾君) そうでございます。
  564. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それとお金三万円を附けて野崎医務課長のところへお持ちになつたのですか。
  565. 日野原信吾

    証人日野原信吾君) はあ、両方へお持ちしたわけでございます。
  566. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 両方とは伊藤戎護課長と……。
  567. 日野原信吾

    証人日野原信吾君) 伊藤さんのところと野崎さんのところと両方へ、ですから先程申上げたのは、二度目の手紙が來てからのことを申上げたのでございます。
  568. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そうするとさつき持つてつたというのは、このことを言うのですか。その二十日ごろの……。
  569. 日野原信吾

    証人日野原信吾君) そうでございます。
  570. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 二度持つてつたわけじやないのですね。
  571. 日野原信吾

    証人日野原信吾君) そうでございます。
  572. 伊藤修

    委員長伊藤修君) その持つてつたということは七月の二十日ごろのことですね。
  573. 日野原信吾

    証人日野原信吾君) そうでございます。日にちの点は余り正確に憶えていませんけれども……。
  574. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 先程おつしやつたことは、今申上げたことですね。
  575. 日野原信吾

    証人日野原信吾君) そうでございます。
  576. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そうすると、伊藤氏の方は先程のいきさつのようにして受取られたし、野崎医師の方は先程のいきさつのようにして返された、こういうことになるのですね。
  577. 日野原信吾

    証人日野原信吾君) そうでございます。
  578. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そうすると野崎氏は品物の方は受取つたのですね。
  579. 日野原信吾

    証人日野原信吾君) いいえ、全部お返しになりました。
  580. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 品物も、お金も……。
  581. 日野原信吾

    証人日野原信吾君) はあ。
  582. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 野崎医師から返されたときに、太田さんに又相談なさつたのですか。
  583. 日野原信吾

    証人日野原信吾君) はあ。
  584. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そうすると太田さんに間髪を容れずもう一遍自宅へ持つてつたらどうだ……。
  585. 日野原信吾

    証人日野原信吾君) それで間を置かずに間髪を容れずにもう一遍自宅へお伺いしなければいけないとおつしやいました。
  586. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そうおつしやつたのですね。
  587. 日野原信吾

    証人日野原信吾君) はあ。
  588. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それであなた行つたのですか。
  589. 日野原信吾

    証人日野原信吾君) それで直ぐその日から翌日自宅の方へお伺いいたしました。
  590. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 野崎さんの……。
  591. 日野原信吾

    証人日野原信吾君) はあ、御主人はクラブか何かへ行かれて御不在で、奥さんにお目にかかつていろいろお願いしたのでございますけれども、到頭受取つて頂けませんでした。
  592. 伊藤修

    委員長伊藤修君) じや失敗だつたのですね。
  593. 日野原信吾

    証人日野原信吾君) はあ。
  594. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それから太田さんに又御相談になつたのですか。
  595. 日野原信吾

    証人日野原信吾君) もうその後は私締めましたから、そのことは太田先生には御相談しておりません。
  596. 伊藤修

    委員長伊藤修君) その後又太田さんのところへ行かれてお話になつたとき、太田さんから野崎は何とかならんか、もう一遍努力して見ろと言われたのじやないのですか。
  597. 日野原信吾

    証人日野原信吾君) それは兄からの言傳があつたと思います。
  598. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 言傳が……。
  599. 日野原信吾

    証人日野原信吾君) 兄からの言傳でございます。それは太田先生を通じて兄からの言傳でございます。
  600. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それじや太田さんが黒田さんの言傳としてあなたに傳えたのですね。
  601. 日野原信吾

    証人日野原信吾君) そうでございます。
  602. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 太田さんからそのことは聞いたのですね。
  603. 日野原信吾

    証人日野原信吾君) そうでございます。その後黒田さんのお家へ又お伺いして、いろいろ様子を伺つたのですけれども、到頭うまく行きませんでした。
  604. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 黒田さんに相談したのですか。
  605. 日野原信吾

    証人日野原信吾君) はあ。
  606. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それから七月の末頃、太田さんからブラツクに連絡して、清田担当にもウヰスキー二本と煙草二、三十箱ぐらい頼むとか、ブラックにはウヰスキーと煙草を適当に贈つたらどうかと言われたのですか。
  607. 日野原信吾

    証人日野原信吾君) 兄からの言傳がございました。
  608. 伊藤修

    委員長伊藤修君) これも兄さんから太田さんを通じてあなたに……、
  609. 日野原信吾

    証人日野原信吾君) そうでございます。
  610. 伊藤修

    委員長伊藤修君) ブラックというのは誰ですか。
  611. 日野原信吾

    証人日野原信吾君) 黒田さんのことです。
  612. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 黒田さんのことをブラックというのですか、成る程。それでこれはいわゆブラックと称する黒田さんに持つてつたわけですか。
  613. 日野原信吾

    証人日野原信吾君) そうでございます。
  614. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 清田担当にはどうですか。
  615. 日野原信吾

    証人日野原信吾君) その日だつたかどうかはつきり覚えませんけれども、黒田さんに案内して頂いて、清田さんの兄さんの家で落ち合つて、そうして品物をお渡ししております。
  616. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 清田担当に……、
  617. 日野原信吾

    証人日野原信吾君) そうでございます。
  618. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 担当というか、看守のことですね。このウヰスキー二本と煙草二、三十箱をお渡しになつたのですね。
  619. 日野原信吾

    証人日野原信吾君) そうです。
  620. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 煙草は何ですか。
  621. 日野原信吾

    証人日野原信吾君) 確かピースか何かだつたと思います。
  622. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 日本の煙草ですね。
  623. 日野原信吾

    証人日野原信吾君) はあ。
  624. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 八月の中旬頃に又太田弁護士からこの清田担当に贈物をしろと言われたのですね。これも中からの言傳ですか。
  625. 日野原信吾

    証人日野原信吾君) そうでございます。そのときに黒田さんに案内して頂いて、今度は清田さんの自宅の方へお伺いしております。
  626. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それで何を贈つたのです。
  627. 日野原信吾

    証人日野原信吾君) ウヰスキーと煙草……。
  628. 伊藤修

    委員長伊藤修君) ウヰスキー一本ですか。
  629. 日野原信吾

    証人日野原信吾君) 確か二本……。
  630. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 二本ですか。
  631. 日野原信吾

    証人日野原信吾君) はい。
  632. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 煙草はどのくらいですか。
  633. 日野原信吾

    証人日野原信吾君) 二、三十個だつたと思います。
  634. 伊藤修

    委員長伊藤修君) その外には両氏に贈つてないのですか。両氏というのは黒田と清田には……。
  635. 日野原信吾

    証人日野原信吾君) 黒田さんのお宅へ伺うときには、何か少しづつ持つております。
  636. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 今までお聽きした以外に……。
  637. 日野原信吾

    証人日野原信吾君) はあ、細かいことは覚えておりませんけれども……。
  638. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 今までお聽きした以外に、黒田氏のところを訪ねるときは何か少しづつ持つて行くのですか。
  639. 日野原信吾

    証人日野原信吾君) はあ。
  640. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 手土産を持つて行くのですね。外には持つて行かないですか。
  641. 日野原信吾

    証人日野原信吾君) ございません。
  642. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 纏まつた物は……。外に又黒田氏の方へお金を持つてつたことはないのですか。
  643. 日野原信吾

    証人日野原信吾君) はあお金を持つてつたことはございません。
  644. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 品物を調達したのは、会社から調達したのですか。あなた個人で調達したのですか。
  645. 日野原信吾

    証人日野原信吾君) 自分で買つて……。
  646. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 御自分のお金で……。
  647. 日野原信吾

    証人日野原信吾君) そうでございます。
  648. 伊藤修

    委員長伊藤修君) お金はどうしたのです。会社から貰つたのですか。
  649. 日野原信吾

    証人日野原信吾君) いいえ、嫂の手許から頂いております。
  650. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 節三氏の奥さんから頂いたのですね。
  651. 日野原信吾

    証人日野原信吾君) そうでございます。
  652. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そうして今の品物を調達したお金も、やはり節三氏の奥さんから出たのですか。
  653. 日野原信吾

    証人日野原信吾君) そうでございます。
  654. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そうすると拘置所関係はそれだけですか。
  655. 日野原信吾

    証人日野原信吾君) はあ、それだけだつたと思います。
  656. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 外におやりになつたことはないのですか。
  657. 日野原信吾

    証人日野原信吾君) なかつたと思います。
  658. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 外にやつたようなことはあるのですか。
  659. 日野原信吾

    証人日野原信吾君) いえ、ございません。
  660. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それは清田という人と黒田という人は、日野原氏の担当だつたのですね。
  661. 日野原信吾

    証人日野原信吾君) 黒田さんは別に南病という病棟についておられる方ではなくて、こちらの檢察廳の方の仮監への護送の方をやつておられた。清田さんというのは、南病という病棟の担当をしておられました。
  662. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 別な担当である黒田さんがよく手紙の連絡がついたわけですね。お聞きにならなかつたですか。
  663. 日野原信吾

    証人日野原信吾君) 別な担当……。
  664. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 病監の担当でない護送の担当の黒田さんが手紙の連絡をどうしてできたか、お聞きにならなかつたですか。
  665. 日野原信吾

    証人日野原信吾君) 清田さんと……。
  666. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 清田さんを通じて……。
  667. 日野原信吾

    証人日野原信吾君) そうでございます。
  668. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 黒田さんがあなたの方に連絡する、こういう順序だつたのですね。
  669. 日野原信吾

    証人日野原信吾君) そうでございます。或いは直接に黒田さんが兄の寝ているところへ行つて話をしたこともある。
  670. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そうですか。
  671. 日野原信吾

    証人日野原信吾君) はあ。
  672. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そういう場合もあるし、清田さんを通じて連絡する場合もある。
  673. 日野原信吾

    証人日野原信吾君) そうでございます。
  674. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 拘置所関係はそれだけだとすると、警視廳の彌富巡査に関係をつけらけたことがありますね。
  675. 日野原信吾

    証人日野原信吾君) はあ。
  676. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それはどういうあれですか。
  677. 日野原信吾

    証人日野原信吾君) 兄がCIDに移りまして、暫くして彌富さんから電話がかかつて來ました。
  678. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 一遍拘置所に入つて、それから今度進駐軍に身柄を取られたことは……。
  679. 日野原信吾

    証人日野原信吾君) 警視廳からCIDの方へ移されましてから暫く後で、彌富さんという方から電話かがかつて來ました。
  680. 伊藤修

    委員長伊藤修君) いつ頃のことですか、それは……。
  681. 日野原信吾

    証人日野原信吾君) 九月の初頃だつたと思います。確かCIDに移りましたのは、八月の二十五日頃と思います。
  682. 伊藤修

    委員長伊藤修君) とにかく電話がかかつて來た。
  683. 日野原信吾

    証人日野原信吾君) 兄の世田谷の自宅へかかつて來ました。
  684. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 兄の節三さんの……。そうしてどういう趣旨だつたのですか。
  685. 日野原信吾

    証人日野原信吾君) どこかで落ち合いたいからというようなことでございました。
  686. 伊藤修

    委員長伊藤修君) あなたにですか、誰に……。
  687. 日野原信吾

    証人日野原信吾君) 誰でもよかつたと思います。向うの意向は……。
  688. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それでどういうことになつたのですか。
  689. 日野原信吾

    証人日野原信吾君) 直ぐそばに九品拂というお寺があつた、兄の直ぐ近くに……、そこで私は落ち合いました。
  690. 伊藤修

    委員長伊藤修君) お寺で……。それはあなたの方で指定したわけですね。
  691. 日野原信吾

    証人日野原信吾君) さようでございます。
  692. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それは翌日ですか。
  693. 日野原信吾

    証人日野原信吾君) 翌日だつたと思います。
  694. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 落ち合つたら、どういうことを言つたのですか。
  695. 日野原信吾

    証人日野原信吾君) いや、兄の健康状態というようなことをお知らせ下さいました。これから後連絡するのにどういうようにするかということも打合せました。
  696. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 先ず向うは節三さんの現状を話してくれたのですね。
  697. 日野原信吾

    証人日野原信吾君) 小菅と違つてCIDでございますから、こちらもその様子が分らないから、内部の様子などいろいろ伺いました。生活状態を詳しく教えてくれました。
  698. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そうして今後の連絡のことも打合せたのですか。
  699. 日野原信吾

    証人日野原信吾君) そうでございます。
  700. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 今後の連絡をどうしろということですか。
  701. 日野原信吾

    証人日野原信吾君) 二、三ヶ所場所を決めて置いて、そうして落ち合うように……。
  702. 伊藤修

    委員長伊藤修君) どことどこですか。
  703. 日野原信吾

    証人日野原信吾君) 大井町の駅とか、品川の駅、或いは九品拂の下とか、そういうような打合せだつたと思います。
  704. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それだけの好意を示してくれた巡査ですから、又何か贈物をしたわけですね。
  705. 日野原信吾

    証人日野原信吾君) そうでございます。
  706. 伊藤修

    委員長伊藤修君) どういうことをしたのですか。
  707. 日野原信吾

    証人日野原信吾君) そのとき、確か私は二千円ぐらい渡したと思います。
  708. 伊藤修

    委員長伊藤修君) お金だけですか。
  709. 日野原信吾

    証人日野原信吾君) お金だけでございます。
  710. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それからそういうお決めになつた打合せ場所で数回お会いになつたのですか。
  711. 日野原信吾

    証人日野原信吾君) 私が会いましたのは、その翌日かなんかに彌富さんが家に見えましたときにお目にかかつて、後はお目にかかつておりません。
  712. 伊藤修

    委員長伊藤修君) その後一回ですか。
  713. 日野原信吾

    証人日野原信吾君) 私が会つたのはその後一回でございます。
  714. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それから外の人は。
  715. 日野原信吾

    証人日野原信吾君) あとは家族のものが連絡行つておりました。
  716. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 指定する所に……。
  717. 日野原信吾

    証人日野原信吾君) そうでございます。そのたびたび電話で連絡をとりまして……。
  718. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 何回ぐらいあつたですか。
  719. 日野原信吾

    証人日野原信吾君) 十五、六回だつたかと思いますのですけれども……。
  720. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そうすると、そのたびたびに連絡して聞いたわけですね。
  721. 日野原信吾

    証人日野原信吾君) は、ですけれども、向うにも勤がございますし、そう毎日というわけじやございませんが。
  722. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 毎日じやないです、相当長い間ですから……。十五、六回連絡があつた……。
  723. 日野原信吾

    証人日野原信吾君) そのくらいだつたと思います。
  724. 伊藤修

    委員長伊藤修君) その都度連絡場所に行つたのですね。
  725. 日野原信吾

    証人日野原信吾君) そうでございます。
  726. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 中の内情を聞いたわけですね。
  727. 日野原信吾

    証人日野原信吾君) そうでございます。
  728. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そうすると、そのくらい連絡して頂いたのだから、二千円じや少いね。
  729. 日野原信吾

    証人日野原信吾君) 家へ翌日参つたときに、私は一千円渡しております。あとは家族のものが会いに行つたときに、適当に渡しておつたと思います。
  730. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 千円以上の金を渡すわけですね。
  731. 日野原信吾

    証人日野原信吾君) そんなに沢山渡しておりません。
  732. 伊藤修

    委員長伊藤修君) どのくらいずつ渡すのですか。
  733. 日野原信吾

    証人日野原信吾君) 五百円くらい。
  734. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 一回ずつ、会うと五百円ぐらいずつ渡すのですか。
  735. 日野原信吾

    証人日野原信吾君) は。
  736. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 大体どのくらい渡すのですか。
  737. 日野原信吾

    証人日野原信吾君) 大体五百円くらい。
  738. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 纏めて渡さないのですね。
  739. 日野原信吾

    証人日野原信吾君) は。
  740. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 会うたびたびにお渡しするのですね。
  741. 日野原信吾

    証人日野原信吾君) そうです。
  742. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 纏めてお礼をしなかつたのですか。
  743. 日野原信吾

    証人日野原信吾君) そのたびたびにお渡しして……。
  744. 伊藤修

    委員長伊藤修君) どうして外の人は纏めてやつて、この人ばかり会うたびにやるのです。
  745. 日野原信吾

    証人日野原信吾君) 足繁く連絡して下つた方は、彌富さんだけでございます。
  746. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 一遍に沢山お礼した方がいいのじやないですか。
  747. 日野原信吾

    証人日野原信吾君) ですけれども、なんとなくそうなつておりました。
  748. 伊藤修

    委員長伊藤修君) なんとなく。
  749. 日野原信吾

    証人日野原信吾君) は。
  750. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 品物は何もお上げしなかつたのですか。
  751. 日野原信吾

    証人日野原信吾君) お金だけです。
  752. 伊藤修

    委員長伊藤修君) お金ばつかですね。
  753. 日野原信吾

    証人日野原信吾君) は。
  754. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 勿論中から手紙も持つて來るのですね。
  755. 日野原信吾

    証人日野原信吾君) 簡單な便りがございます。
  756. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 便りが……。
  757. 日野原信吾

    証人日野原信吾君) は。
  758. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そういう手紙や、中の模様の中に、やはり事件のことにも連絡して來るでしようね。
  759. 日野原信吾

    証人日野原信吾君) 当時はもう余り具体的なことは連絡して参りませんでした。もう御存じのように、急轉回しているときですから。
  760. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 事件に触れていることもあるでしようね。
  761. 日野原信吾

    証人日野原信吾君) 氣持をいろいろ、兄が自分の氣持の変化を話していたことが多かつたと思います。
  762. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 会社の方をこうしろとか、あの人をこうしてくれといつた連絡はなかつたですか。
  763. 日野原信吾

    証人日野原信吾君) そういう難かしい連絡は、もうございませんでした。
  764. 伊藤修

    委員長伊藤修君) あなたは太田耐造さんと、それから兄の節三氏と連絡して、鉄道工業会社社長菅原通齋氏から日野原節三氏個人に、例の一千万円乃至二千万円貸與してくれというような話があつたのですか。
  765. 日野原信吾

    証人日野原信吾君) その工作をいたしました。
  766. 伊藤修

    委員長伊藤修君) はあ……。
  767. 日野原信吾

    証人日野原信吾君) その工作をいたしました。
  768. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それでどういうふうになつたのですか。
  769. 日野原信吾

    証人日野原信吾君) それは結局だめでございました。
  770. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 結局だめというのは。
  771. 日野原信吾

    証人日野原信吾君) 長い間の交渉でございましたけれども、結局それは菅原通齋さんがやつて下さらなかつたわけでございます。
  772. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 貸して呉れなかつたのですか。
  773. 日野原信吾

    証人日野原信吾君) 元より架空の工作でございますから、そういうことはやつて下さらなかつたわけでございます。
  774. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 貸して呉れなかつたのですか。
  775. 日野原信吾

    証人日野原信吾君) いいえ、お金は事実貸して呉れるのじやなくて、貸した形にする工作でございます。
  776. 伊藤修

    委員長伊藤修君) いろいろな資金の出場を作るのですね。
  777. 日野原信吾

    証人日野原信吾君) そうでございます。
  778. 伊藤修

    委員長伊藤修君) いろいろな運動費を使つた、その出場を作るためにですか。
  779. 日野原信吾

    証人日野原信吾君) そうでございます。
  780. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 相当交渉したわけですか。
  781. 日野原信吾

    証人日野原信吾君) そうです。
  782. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そうすると、名義人になつてくれなかつたのですか。菅原さんは……。
  783. 日野原信吾

    証人日野原信吾君) は。
  784. 伊藤修

    委員長伊藤修君) どういうわけでなつてくれないのですか。
  785. 日野原信吾

    証人日野原信吾君) 非常にこれは危險な工作でございますから……。
  786. 伊藤修

    委員長伊藤修君) ばれるといかんから……。それは太田さんとも、兄の節三さんとも、相談してやつたんですか。
  787. 日野原信吾

    証人日野原信吾君) は、何回も何回もお会いいたしましたから……。
  788. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それはどこでそういう連絡はつくんですか。
  789. 日野原信吾

    証人日野原信吾君) 太田先生の事務所でお話を伺つて、それから鉄道工業会の事務所に通齋さんをお訪ねしております。その度に……。
  790. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 太田さんは結局面会に行つて連絡つけるわけですか。
  791. 日野原信吾

    証人日野原信吾君) そうでございます。
  792. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それとも手紙や、さつきの巡査の人……。
  793. 日野原信吾

    証人日野原信吾君) そんなに具体的のところまで行きませんでしたから、ただ口頭で兄かいろいろ聞いて來られますから……。
  794. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 面会の際に口頭で太田耐造氏に兄さんから連絡があつて、それでそういう工作をしたわけですね。
  795. 日野原信吾

    証人日野原信吾君) は、それはずつと後も努力いたしましたが、それが失敗した。
  796. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 太田さんが兄さんから拘置所でそれを聞いて來て、あなたに連絡するわけですね。
  797. 日野原信吾

    証人日野原信吾君) そうでございます。
  798. 伊藤修

    委員長伊藤修君) あなたが菅原さんに話したりなんかして、努力したわけですね。
  799. 日野原信吾

    証人日野原信吾君) は、一番力を入れたんですけれども、到頭だめでございました。
  800. 伊藤修

    委員長伊藤修君) どうしても菅原さんは承知しないのですね。
  801. 日野原信吾

    証人日野原信吾君) そうでございます。
  802. 伊藤修

    委員長伊藤修君) その金の出所が決まれば、すべての問題が相当有利に展開するわけですね。
  803. 日野原信吾

    証人日野原信吾君) 有利というより、一應辻褄が合うわけです。
  804. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 結局有利になるわけですね。
  805. 日野原信吾

    証人日野原信吾君) は。
  806. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 何か、秩父木材工業株式会社、これは工業ですか工産ですか。
  807. 日野原信吾

    証人日野原信吾君) 工業株式会社でございます。
  808. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 工業株式会社の増資株の拂込金四百五十万円を節三氏個人に融通する件、これはどういうのです。
  809. 日野原信吾

    証人日野原信吾君) それは私よく内容が分らないのでございます。当時私は名義上の代表取締役をしておりましたけれども、ただこれは單なる名義でございまして、会社の内情などは全然私は存じませんでございました。
  810. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そうすると、このことについては何も関與していらつしやらない。
  811. 日野原信吾

    証人日野原信吾君) は。
  812. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 日本水素工業株式会社の渉外費とか機密費のことについて御存じないですか。
  813. 日野原信吾

    証人日野原信吾君) そのことは兄の手紙の中に、連絡の中にございましたですけれども、檢察廳のお調べのときもそのことを申上げてあります。併し会社関係のことを私門外漢でございますから、申上げたことが或いは間違つていたかも知れません。
  814. 伊藤修

    委員長伊藤修君) どういうことが……。
  815. 日野原信吾

    証人日野原信吾君) いいえ、前に調書で申上げたことを飜すという意味でなくて、私の思い違いも随分あると思います。全然專門外のことでございますから……。
  816. 伊藤修

    委員長伊藤修君) これは内容をよく御存じないのですか。
  817. 日野原信吾

    証人日野原信吾君) 私にはよく分りません。
  818. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そうすると、先程お伺いした中からの手紙の連絡がありますわね。その手紙にはこういうことも皆書いてあつたわけですね。
  819. 日野原信吾

    証人日野原信吾君) は、手紙に書いてあつたこともありますし、口頭で言つて來たことも……。
  820. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 連絡つた場合がある。
  821. 日野原信吾

    証人日野原信吾君) そうでございます。
  822. 伊藤修

    委員長伊藤修君) やはり事件の主要な点については時々そういう連絡があつたわけですね。
  823. 日野原信吾

    証人日野原信吾君) そうでございます。余りむつかしいことは私には分らないのですが……。
  824. 伊藤修

    委員長伊藤修君) あなたは飛入りで局外だつたから、お分りにならない、そういうことは太田さんや何かに御相談になるのですか。
  825. 日野原信吾

    証人日野原信吾君) ですから、私にはそういう連絡は、直接に私は向けてはなかつたわけでございます。私にできる範囲のことしか伺わなかつのです。
  826. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 併しこういうことも書いて來てはおりますね。
  827. 日野原信吾

    証人日野原信吾君) 書いて來たこともございます。
  828. 伊藤修

    委員長伊藤修君) その処理は誰がするのです。
  829. 日野原信吾

    証人日野原信吾君) 処理でございますか。
  830. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 本人が折角言うて來たことを、誰か処理してやらなければ……。
  831. 日野原信吾

    証人日野原信吾君) それは会社関係のことは主に志摩英一氏が聞くのでございます。
  832. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 日本の水素の……。
  833. 日野原信吾

    証人日野原信吾君) そうでございます。
  834. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 日本水素の何をやつておりますか。
  835. 日野原信吾

    証人日野原信吾君) 常務でございます。
  836. 伊藤修

    委員長伊藤修君) その人が会社関係のことは処理するのですか。
  837. 日野原信吾

    証人日野原信吾君) 私はとにかく、恐らく志摩に皆んな連絡しておつたと思います。私は全然聞いても分らなかつたのですから……。
  838. 伊藤修

    委員長伊藤修君) どういう工作をしたか御存じないですか。
  839. 日野原信吾

    証人日野原信吾君) 私はよく存じません。
  840. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 別に……。
  841. 岡部常

    ○岡部常君 東京拘置所の黒田、清田看守にたびたびウイスキーなど送つておりますが、これは何か兄さんの方に行くようなことでもありますか。
  842. 日野原信吾

    証人日野原信吾君) いいえ。
  843. 岡部常

    ○岡部常君 それは黒田、清田両人に対して……。
  844. 日野原信吾

    証人日野原信吾君) そうでございます。
  845. 岡部常

    ○岡部常君 兄さんの手を経て同じところにおる收容者に、被告人に行くというようなことはありますか。
  846. 日野原信吾

    証人日野原信吾君) そういうことはございません。
  847. 岡部常

    ○岡部常君 ないですか。
  848. 日野原信吾

    証人日野原信吾君) はあ。清田さんと黒田さんにだけ差上げたのでございます。外に貰つておることはないと思います。
  849. 岡部常

    ○岡部常君 随分たびたび重つておるようですね。
  850. 日野原信吾

    証人日野原信吾君) 清田さんに二回です。そう沢山でもなかつたと思います。
  851. 岡部常

    ○岡部常君 本数にして相当になるそうですね。
  852. 日野原信吾

    証人日野原信吾君) 清田さんのところは全部で四本ばかり、二回で二本……。
  853. 岡部常

    ○岡部常君 刑務所の中に入る懸念がありますしね。
  854. 日野原信吾

    証人日野原信吾君) 清田さんの手から外に廻る場合があるかも知れません。
  855. 岡部常

    ○岡部常君 兄さんの手に入るとか……。
  856. 日野原信吾

    証人日野原信吾君) そんなことはなかつたと思います。
  857. 岡部常

    ○岡部常君 それから野崎氏がお金を返されたということですね、その外のものも返されたとさつきおつしやいましたが、その点については檢察廳の方で何か調べがございましたか。
  858. 日野原信吾

    証人日野原信吾君) 調べがあつたときに申上げてあります。
  859. 岡部常

    ○岡部常君 そのときにそういうふうにお答になつておるようですが。
  860. 日野原信吾

    証人日野原信吾君) はあ。
  861. 岡部常

    ○岡部常君 それからもう一つ太田弁護士にいろいろ御相談になつて、つまり贈物については、そういう御相談になつた。これも元は兄さんの指図によつて太田さんがあなたに話されたらしいですが。
  862. 日野原信吾

    証人日野原信吾君) そうでございます。
  863. 岡部常

    ○岡部常君 太田さんがあなたに話されるときに、何かそんなことをしちやいけないのだということを言わなかつたのですか。兄さんから、こうあるのだが兄さんの命令通りやれと言つて指示しましたか、ただそこで忠告めいたことはなかつたか。
  864. 日野原信吾

    証人日野原信吾君) そういうことは私は伺つておりません。
  865. 岡部常

    ○岡部常君 危險だということは伺つたか。
  866. 日野原信吾

    証人日野原信吾君) 兄がこうしろと言えば私も自分のできる範囲のことでありましたならば絶対にやる覚悟でございましたから……。そういう忠告を伺つたことはございません。
  867. 岡部常

    ○岡部常君 太田弁護士がこういうふうにうまく何かやれという方法でも授けましたか。
  868. 日野原信吾

    証人日野原信吾君) 小菅の方の方にですか。
  869. 岡部常

    ○岡部常君 余程注意してやれ、具体的にこういう方法を取れというようなことは言わなかつたのですか。
  870. 日野原信吾

    証人日野原信吾君) そういうことは別におつしやいませんでした。ただ私も不慣れのことでありますし、太田先生もそれまで暫くお付き合いしておりましたから、恐らく慣れていないので非常に氣ずかつておられたと思います。
  871. 岡部常

    ○岡部常君 うまくやれとでも言つておりましたか太田氏……。
  872. 日野原信吾

    証人日野原信吾君) 要領よくやれという意味でなくて、そういうことは生れて初めてのことでございますから、非常に氣ずかつておられたと思います。
  873. 岡部常

    ○岡部常君 氣ずかつたというのはあなたのために……。
  874. 日野原信吾

    証人日野原信吾君) へまをやりはしないか……。赤ん坊にものを頼むように御心配をして下すつたと思います。
  875. 岡部常

    ○岡部常君 手を取つて教えてくれたのですか。
  876. 日野原信吾

    証人日野原信吾君) ああしろ、こうしろとはおつしやいませんでしたが……。
  877. 岡部常

    ○岡部常君 相当なつかしく考えておられたようですね。
  878. 日野原信吾

    証人日野原信吾君) そうでございます。私自身も危なつかしかつたわけでございますから。
  879. 伊藤修

    委員長伊藤修君) もう一つ伺います。彌富と十五、六回会つておられますね。そのときにはあなたか、あなたの家族の人か、兄節三氏の家族の人が日野原氏にアルコール類のものを入れてくれというので、入れてやつたことがありますか。
  880. 日野原信吾

    証人日野原信吾君) ございます。
  881. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それは何ですか。
  882. 日野原信吾

    証人日野原信吾君) やはり拘留期間が長くなりますから非常に陰鬱になつてつたと思います。それで少し元氣付けたいという氣持があつたのじやないかと思います。小菅でもこれは酒という意味でなく、私医者でございますから申上げられると思いますが、患者に葡萄酒を飲ますことがございます。向うでも葡萄酒に相当するものを頂いておつたと思います。こちらに移つてからはやはり晩酌というような不埓な意味でなく、ただ軽い意味で幾らか氣分を明るくするためにアルコールを少し取りたいという氣持になつたじやないかと思います。たしか彌富さんに頼んで中に入れております。
  883. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 本人の飲料に……。
  884. 日野原信吾

    証人日野原信吾君) そうです。
  885. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それは何ですか。
  886. 日野原信吾

    証人日野原信吾君) それは純アルコールだつたと思います。
  887. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 二回ほどやつたのですか。
  888. 日野原信吾

    証人日野原信吾君) たしか二回……。
  889. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 量はどれくらい。
  890. 日野原信吾

    証人日野原信吾君) 藥瓶で一本くらいじやなかつたかと思います。普通二百グラムくらいの、二百か三百くらい。
  891. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 二回やつておりますね。
  892. 日野原信吾

    証人日野原信吾君) そうでございます。
  893. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 節三氏が逮捕される前夜、藤井が節三氏の家に來たときは……。
  894. 日野原信吾

    証人日野原信吾君) その前の晩にお見えになつたそうでございます。
  895. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そのときはあなたはいらつしやらなかつたのですか。
  896. 日野原信吾

    証人日野原信吾君) 私は中におりましたけれども寝ておりましたから。
  897. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そのとき藤井さんが逮捕状が出たといつて、その晩に通達した來たのじやないですか。
  898. 日野原信吾

    証人日野原信吾君) どういうことだつたか私そばに聞いておりませんでしたから、知らないで眠つておりましたからどういう話がありましたか、ただ夜訪ねて來られたということだけは聞きました。
  899. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 何かびつくりしたようなことは、事件で大変なことが起つたというふうにお考えにならなかつたのですか。そういう感じはなかつたですか。それとも兄さんから何か大変だというふうな御相談があつたじやないですか。
  900. 日野原信吾

    証人日野原信吾君) 別に何も私は伺つておりません。兄は何も申しておりませんでしたから。
  901. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そういつたことはあるが、その事情は知らないのです。
  902. 日野原信吾

    証人日野原信吾君) そうでございます。
  903. 岡部常

    ○岡部常君 先程元氣付けるためにアルコール飲料を警視廳におるときに入れたという……。
  904. 日野原信吾

    証人日野原信吾君) そうでございます。
  905. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 後の場合ですか……。
  906. 岡部常

    ○岡部常君 拘置所時代に野崎氏にそういうことをお頼みになりはしませんか。
  907. 日野原信吾

    証人日野原信吾君) アルコールを入れてくれということはお頼みしておりません。
  908. 岡部常

    ○岡部常君 野崎さんに処方の中にアルコールを入れてくれという注文をしましたか。
  909. 日野原信吾

    証人日野原信吾君) 実はそういうことをいろいろお願いしたいところでございましたけれども、変なふうになつてしまいましたので、到頭野崎先生は……。
  910. 岡部常

    ○岡部常君 入れる機会を失した、そういうお心持は持つてつても言えなかつたという……。
  911. 日野原信吾

    証人日野原信吾君) そうでございます。
  912. 大野幸一

    ○大野幸一君 太田耐造さんとあなたとの間に、まあ刑務所関係の指図があつたようですが、それは從たることで、主として弁護に専心立たれておつた、それで太田耐造さんから弁護の時分の活動状況、檢察方面の人に運動しておるというふうなことをあなたに報告されたことがありますか。
  913. 日野原信吾

    証人日野原信吾君) 太田先生から伺つたことがあるかないかということでございますか、それは伺つたことはございません。
  914. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 今お尋ねの趣旨は、太田さんが司法方面のこういう偉い人に頼んでやるとか、こういう方面の運動をしたとかというふうなことをお聞きになつたことはございませんか。
  915. 日野原信吾

    証人日野原信吾君) 私はまだ伺つたことはございません、申上げたいことが一つございますがよろしうございますか。
  916. 伊藤修

    委員長伊藤修君) どうぞ。
  917. 日野原信吾

    証人日野原信吾君) 非常に生意氣にお聞きになるかも知らませんが、眞面目に申上げるのでございます。当時私は、やはり実の兄が勾留されておりまして、今から考えますとやはり普通の精神状態ではなかつたと思います。それで当時の私さえしつかりして、もつと明るいしつかりした人間でしたら、外からどういう連絡がありましようとも、このようなつまらない事件を起して警察廳、檢察廳は勿論のこと、今日この日のようないろいろな御迷惑を掛けることは未然に防げたと思います。悉く私の不徳のいたすところでございます。特に小菅の官吏の方にしても、彌富さんにしても、勿論太田先生にしても、私少しも敵意も何もございません。皆いい方でございます。不徳と責任は悉く私の罪でございます。誠に慚愧に堪えない次第でございます。どうぞお許し下さいませ。
  918. 伊藤修

    委員長伊藤修君) あなたはお兄さんのことをお思いなり過ぎて、お兄さんによかれと思つてなさつたことが、たまたま誤つてつたのですからその御氣持の点は十分了承したします。
  919. 日野原信吾

    証人日野原信吾君) 殊に太田先生のことはこの度のことでいろいろ穩やかならないことになつておりますけれども、ともかくも私は太田先生に心から、前から尊敬しております。現在でも尊敬しております。一生の恩人と思つております。併し私は事実は事実としてありのままに申上げたのであります。その氣持だけはよく分つて下さい。
  920. 伊藤修

    委員長伊藤修君) よく分りました。どうも御迷惑でした。
  921. 日野原信吾

    証人日野原信吾君) どうもありがとうございました。    〔証人太田耐造君著席〕
  922. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 太田耐造さんですか。
  923. 太田耐造

    証人(太田耐造君) さようでございます。
  924. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 御証言を願う前に宣誓一つお願いいたします。    〔総員起立、証人は次のように宣誓を行なつた〕     宣 誓 書  良心に從つて眞実を述べ、何事もかくさず、又、何事もつけ加えないことを誓います。        証人 太田 耐造
  925. 伊藤修

    委員長伊藤修君) お年はお幾つですか。
  926. 太田耐造

    証人(太田耐造君) 四十七才でございます。
  927. 伊藤修

    委員長伊藤修君) お住いは喚出し状を差上げたところでございますか。
  928. 太田耐造

    証人(太田耐造君) そうでございます。
  929. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 現在は弁護士。
  930. 太田耐造

    証人(太田耐造君) そうでございます。
  931. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 略歴を簡單に一つ
  932. 太田耐造

    証人(太田耐造君) 昭和二年に東大の法学部の政治学科を出ました。直ちに司法官試補になりまして、昭和四年の八月に檢事に任官いたしまして、東京区裁判所檢事東京地方裁判所檢事を歴任しまして、昭和十二年の四月から一年間沼津裁判所檢事になりましたが、その後又東京地方裁判所檢事になりまして、昭和十三年八月司法事務官に任ぜられまして、司法省刑事局勤務になりました。その年の暮ぐらいだつたと思うのでございますけれども、刑事局第六課長に任ぜられまして、昭和十七年七月東京控訴院檢事になりまして、数日にして退官をしまして、満川國司法部刑事司長となつて渡満いたしました。昭和二十年一月内内へ帰りまして大審院檢事に任ぜられました。その年の四月だつたと思いますが、司法省官房の会計課長になりまして、二十一年一月再び大審院檢事となり、その年の二十一年の二月甲府地方裁判所檢事正に任ぜられましたが、共産党取締の責任を問われまして、G項該当者として二十一年七月三日追放処分を受けました。翌八月弁護士登録をいたしまして、只今第一東京弁護士会に所属して現在に至つております。
  933. 伊藤修

    委員長伊藤修君) あなたと日野原節三さんとはいつ頃からのお知合いですか。
  934. 太田耐造

    証人(太田耐造君) 日野原君は同じ高等学校の同窓でありますので、高等学校当時から知つております。ただその当時は非常に親しい友人というのでもなく、顔見知りで挨拶するという普通の友人でありましたが、大学を出ましてからは殆んど交際が絶えておりました。昨年四月の末に昭和電工株式会社の顧問弁護士ということになりましたので、再び交際が復活したという状況であります。
  935. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 顧問になられたのは日野原さんの方からお頼みになつたのですか、どなたかの御紹介があつたのですか。
  936. 太田耐造

    証人(太田耐造君) それは私の高等学校の後輩で、私とも懇意であり、日野原君とも附合いをしておる男があるのです。それが昨年の四月の二十日頃だつたと思うのですが、日野原君に会つたところが私に顧問弁護士に來て呉れないかという話があり、どうだというので日野原君に会つたのです。私を顧問弁護士に日野原が考えました理由として私の考えておりますことは、実は私追放処分を受けましてから後、やはり敗戰の責任を負いまして、弁護士とはいいながら謹愼した弁護士生活をすべきものだというふうに私は考えておつたのです。それで裁判所にも檢事局にも特別のとき以外には成るべく出入りしないという方針でやつておりましたので、さようなことを仲介者が日野原に話をしたので、日野原が昔の友人だから会社の顧問弁護士にして置こうという氣持じやなかつたか。と同時にあの会社には民事関係の顧問弁護士は二、三おられましたが、刑事に明るい者がいないので、そういう会社の必要もあつたのではないかと思います。そのときに日野原の私に申しますことは、月に二、三回でいいから会社に顔を出して呉れという程度の話でしたので、むしろ追放になつた昔の友人を救済してやれというような私は氣持じやないかと思つております。
  937. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それはいつ頃のことになるのですか。
  938. 太田耐造

    証人(太田耐造君) それは四月の末だつたと思います。
  939. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 昨年ですか。
  940. 太田耐造

    証人(太田耐造君) そうです。そうして履歴書を出しましたのがたしか昨年の四月三十日附じやなかつたかと思います。
  941. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 顧問料は幾らくらいですか。
  942. 太田耐造

    証人(太田耐造君) 顧問料は月五千円です。
  943. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 事件があれば又別に出すという……。
  944. 太田耐造

    証人(太田耐造君) そうでございます。
  945. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そうすると昨年の四月頃だというとすでに昭電の問題がちらほら耳に入る頃ですね。
  946. 太田耐造

    証人(太田耐造君) はあ。実に私辞めましてから只今思しましたような心境でおりましたので、世間のことに疎くなりまして、昭和電工のことはそういう問題に発展するようには当時考えておらなかつたのです。その頃昭和電工には、後で分つたのですが、警視廳で調べておりました大町工場及び富山工場に絡むカーバイトの横流し事件というのと、それから秩父工場の物價統制令違反というのが二つすでにあつたわけなんです。ところがこの秩父工場の方の事件は当時他の弁護士がそれをやることになつてつたのを、後で知つたのですが、私には全然顧問になつて呉れというときに、その話もありませんでしたし、それから警視廳関係事件もそのときに話がなくて後でそれが日本経済新聞か何かにちよつと出ましたときに、何だ会社にこういう事件があるのかと言つて藤井取締役か何かに聞いたことがありました。ですから最初入りますときにはそんなに深く私に事件を依頼するといいますか、そういうところまで深く考えずに日野原君もいたのじやないかというふうに私は想像しておつたのです。
  947. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 当時すでに刑事事件としては萠しておつたわけですね。大町とか秩父とか……。それを明らかにあなたにおつしやらなかつたわけですね。
  948. 太田耐造

    証人(太田耐造君) 言いませんでした。
  949. 伊藤修

    委員長伊藤修君) あなたにしても御存じなかつたのですか。
  950. 太田耐造

    証人(太田耐造君) 知りませんでした。それでこの今度の昭和電工の本社の大きな事件が問題になりましたのを私が知りましたのは、当時濱松に公判がありまして、濱松へ行つてつたのです。そうしたら会社から急に電話が掛かつて來て、急いで帰つて來て呉れというので帰つて來ましたら、押收捜索があつた翌日帰つて來た。そこで初めて事件になつているということを知つたのです。半面から申しますと、今私想像しておるのですが、今公判になつております重政氏との関係とか、いろいろな関係で、大分日野原君以下は活躍しておつたです。そういうことは私共には何にも話がありません。私は知りませんでした、本当に……。そういうふうな方面のことで或る程度、大きな事件にはならんというふうに会社主脳部は考えておつて、それで私共のような表面に出る弁護士には話さなかつたのではないかというふうに想像しております。
  951. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 刑事事件として問題化して來るというので、予め刑事の御專門のあなたをお願いするというのじやなかつたのですね。
  952. 太田耐造

    証人(太田耐造君) それは或いは会社主脳部はそんなことを肚の中では考えていたかも知れません。私にはそのいう片鱗も示しませんでした。
  953. 伊藤修

    委員長伊藤修君) あなたも御存じなかつたのですね。
  954. 太田耐造

    証人(太田耐造君) 知りませんでした。
  955. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 秩父工場や何かの何係で、あなたはあちらへいらつしやつたことがありますね。
  956. 太田耐造

    証人(太田耐造君) その後……あれは本社の事件の押收捜索があつてからですから、昨年五月二十五日だつたと思います。六月の始め頃になりまして、秩父工場を担当する関係になつている弁護士の間にちよつと感情上の縺れがありまして、その関係から私に、從來の弁護士に人に代つてつて呉れという話がありまして……六月十日前後じやないかと思いますが、その頃にその事件の委任を受けて、現在その事件を引受けてやつております。
  957. 伊藤修

    委員長伊藤修君) その向うの担任弁護士が何かごたごたを起したというのは、事件内容のことについて意見が相違したのですか。それとも感情上の問題ですか。
  958. 太田耐造

    証人(太田耐造君) 感情上の縺れです。
  959. 伊藤修

    委員長伊藤修君) いわゆる大高弁護士と中野弁護士との間でしよう。
  960. 太田耐造

    証人(太田耐造君) そうでございます。中野弁護士と大高弁護士との間の問題ですが、あとで私が聞きますと、酒の上の言葉の行き違いだと思つております。
  961. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それで事件を放棄してしまつたわけですね。
  962. 太田耐造

    証人(太田耐造君) 放棄したよりも、両方で、あれがやるなら俺はやらんというようなことで言い合つているらしく会社側から聞きました。
  963. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そうすると秩父の方の関係では本社の家宅捜索をやつて後、あなたが携わられたわけですか。その前に田上檢事や何かにお会いにならなかつたのですか。
  964. 太田耐造

    証人(太田耐造君) 会つておりません。
  965. 伊藤修

    委員長伊藤修君) その後にお会いになつたわけですね。
  966. 太田耐造

    証人(太田耐造君) その後に檢事局に行きまして、田上檢事に二、三回会つております。
  967. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それはどういう……。事件のことでお出でになつたのですか。
  968. 太田耐造

    証人(太田耐造君) 事件のことで参りました。まあ成るべく御寛大にお取扱い願いたいという陳情に二、三回参つたと思います。
  969. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 弁護士としてなすべきことをやつたわけですか。
  970. 太田耐造

    証人(太田耐造君) そうでございます。
  971. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 別に特段何か懇請するということはなかつたのですね。
  972. 太田耐造

    証人(太田耐造君) ありませんでした。
  973. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そうすると昭電がいわゆる刑事事件に発展して來てから、事件の本体について御相談になつたのはいつということになるわけですか。その家宅捜索があつて、濱松へ出張して……。
  974. 太田耐造

    証人(太田耐造君) 帰つて來ましてからでございますから五月の末でございます。
  975. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それから本調子になつたわけですか。
  976. 太田耐造

    証人(太田耐造君) そうです。
  977. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それはどういうような依頼の趣旨だつたのです。
  978. 太田耐造

    証人(太田耐造君) 五月二十五日には押收捜索と同時に只今述べました警視廳でやつておりました富山工場及び大町工場関係者四名について経済違反で逮捕状が出ました。その事件の処理ということが先ず第一の問題でした。後は普通の刑事事件の担任を受けると同樣なことで……そうしてその頃に世間でいろいろ政治献金とかまあいろいろな話があるものですから、会社首脳部にそういうことを聞き質しまして、事件眞相を先ず知りたいと思いましたが、会社首脳部は、私らには政治的な贈收賄というものは何もない、それは世間の非常なデマだというふうに言われておりまして、当時いわゆるこの昭電弁護團といわれる我々は、絶対にそういうことがないことを確信しておつたのです。
  979. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 最初にあなたを濱松から呼び戻したというか、濱松出張中に御通知になつたのですね。その際お目に掛かつたときに、昭電の、今まで各方面に手が延ばしてありますね。いわゆる情報を取るためにですね。そういうことについてこの方面についてはこういう情報があるとかいうふうなお話がなかつたのですか。
  980. 太田耐造

    証人(太田耐造君) ありませんでした。それはまあ一つには日野原という人の性格の問題になるのですけれども、全部を一人にぶちまけて話をして行くというやり方の性格の人じやなくて、あれは部分部分人にものをやらして行くという性格の人です。それで他の方面で情報を取つているとか又は……今度は実は驚いているのですが、檢事がいろいろ酒席を共にしておつたということも実はちつとも知りませんで、今度問題になつて初めてこれはえらいことをやつてつたのだということを知つたような次第であります。
  981. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 要するに司法部面の情報を取るためには重政或いは松岡、松下とこういう線を辿つているとか、或いは政界方面には重政を通じて大野伴睦とか或いは西尾末廣とかそういう方面から情報を取る、或いは了解運動をする、或いは右翼團体の方には丹羽五郎氏を通じてするとか、或いは言論関係の方は誰を担任にするとか、こういうふうに各方面に手を延ばしてあるのですね。それによつて蒐集し得た情報なり知識というものは、あなたに只今伺つておれば、日にち的に考えますと、すでに日野原氏としては盡く知り得た状態においてあなたに依頼した、こういうような日にちの事情になりますね。
  982. 太田耐造

    証人(太田耐造君) はあ。
  983. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それをあなたにこういう模樣になつているからというようにお話しにならなかつたのですか。
  984. 太田耐造

    証人(太田耐造君) 日野原のやり方は、自分で万事情報を集めておいてその判断の下に人に聞いて貰うというやり方のように私には見受けられるのであります。そうして又こういう情報がこうなつていると言つて私に話しますと、余所の情報が又それによつて左右されるというふうなことを日野原氏としては恐れるのじやないかというふうにも想像できるのでございますけれども、他からどんな情報があつたということを微塵も漏らさないで、ただこちらで以てどう判断するか、あちらに入つた情報はどうかというふうな態度でございました。私は何も聞いておりませんでした。
  985. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 情報網の各方面の連絡というものは、横の連絡というものはないわけですね。全部縦に日野原氏へ入つて來るわけですか。
  986. 太田耐造

    証人(太田耐造君) 日野原氏と藤井取締役がおれば、その辺が中心になつてつていました。
  987. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それによつて得た情報によつて各方面を又督励して行くと、こういうような方策を採つているわけですね。
  988. 太田耐造

    証人(太田耐造君) そうだと思います。それで今度新聞で見まして、檢事局の連中が大分辞めたり迷惑を受けたりしたようでございますが、あの連中も実は私相当懇意にしている人なんかもありまして、あの連中が昭電と結び付いたのには何か太田が裏面にあるだろうというふうな推測或いはデマを受けまして、私も相当に迷惑しておるような状況なんでございますけれども、当時は何も知りませんでした。
  989. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 司法部面にはこういうふうな関係連絡を取つておるということは何か片鱗でも漏らしたことはないでしようか。
  990. 太田耐造

    証人(太田耐造君) 漏らしませんでした。
  991. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 又あなたの方にその線はその線で放つて置いて、あなたを通じて平に奉職しておいでになつたよう関係もありますから、部下の人がお出でになるでしようから、情報を取るというような態度には出なかつたでしようか。
  992. 太田耐造

    証人(太田耐造君) それは私にはそういう依頼はありませんでした。と申しますのは、恐らく私の想像では、私実は最近の檢事がいろいろな席に待るものですから、少しどうかと思つてひやひやしておるのですが、私共の檢事として受けました教育は、むしろ非常に嚴格でありまして、民間の人と酒席を共にすること自体、理由の如何を問わずよくないというふうな教育を受けておりまして、それと同時に今後日本が再建して行く上におきましてはやはり役人を腐敗さしたら國の基本的秩序が危くなるというふうに私判断しておりまして、そういうことをよく人に漏らすことがあるものですから、日野原君と私の間に介在した高等学校の後輩もそういうことを知つておるので、そんな話も日野原君に或いはしてあつたのじやないかということを想像しております。
  993. 伊藤修

    委員長伊藤修君) この弁護團を組織するに当つてどういうような考えから組織されたのでしようね。
  994. 太田耐造

    証人(太田耐造君) これは五月二十五日に本社の押收捜索があつて、四人今の経済関係で逮捕状が出、六月の五日だと思いますが、秘書課長の砂原とそれから商工省の津田技官でございますか、が逮捕されるというような状況になりまして、弁護士というものを少し殖やして活動して貰わなきやならんという状況になつたのでございます。私元檢事でおりました玉澤弁護士及び桃澤弁護士と一緒仕事をしておりますものですから、まあ私が依頼を受けて動き出せば当然に玉澤君、桃澤君にも働いて貰うという関係になつてつた。それで砂原君の檢挙された六月の初め頃まではその程度で私は十分だと思つてつたのですが、段々事件が発展して來る状況が見えて、弁護團をどうするかというお話がちらほら会社首脳部と私共の方に出ておりました。そのときに社長と藤井取締役だつたと思いますが、こういうふうな弁護士の方がいいという話だがどうだろうかという意見がありまして、それは松阪先生、黒川先生がいいと思うがどうかという話がありまして、それから私は実はそのときに少しどうも檢事畑に片寄り過ぎやしないかということを申したのでありますけれども、いろいろな方面のいろいろな話を聞いて見ると、お二人とも非常に手腕もあり、人格も高潔だ、非常に評判がいい方だと聞いておるから、この方々にお願いしたいと思うがどうか……と言いますのは、私と松阪、黒川両先輩との関係日野原或いは会社の重役は知らなかつたと思うのです。それだものですから、調和を害してはいかんというところに頭があつたと思います。私はそれは実は非常にお世話になつた先輩なんで、そういう先輩一緒にやつて頂くことは私としては本望だというふうに申しまして事が決まつたという状況でございます。
  995. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 中野並助さんも入つておるわけですね。
  996. 太田耐造

    証人(太田耐造君) 中野先輩は先程述べました秩父工場の問題がありまして……。
  997. 伊藤修

    委員長伊藤修君) から入つておるのですか。
  998. 太田耐造

    証人(太田耐造君) その関係でやはり直ぐにはちよつと工合が惡かろうということで、会社側で案の中に入つておりませんでした。
  999. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そうすると現在としてはどういう人が。
  1000. 太田耐造

    証人(太田耐造君) 最初は会社側の正当な弁護士と申しますか、それは顧問弁護士の私の外に今の松阪、黒川両先輩、私が動くものですから当然に桃澤、玉澤という人が入りまして、この程度で一應の結成ができたわけです。そうしますと、その頃後で言われてああそうだつたのかそれじや入つて貰いましようと言つてつてつたのに清原弁護士とそれから秋山弁護士とある。これは私より先か後か未だに私は承知しないのですけれども、会社関係者じやない。日野原君の非常に懇意な人が日野原君のためを思うて清原及び秋山両弁護士に頼んでやはりやつて貰つてつた。それで今最初清原弁護士も秋山弁護士の話を私日野原君にしたときに、会社関係じやないという意味だと思うのですが、プライベートの弁護士としてお願いしておつた清原、秋山弁護士というようなことを言いまして、そういう関係事件がこういうことになるから一緒にやつて貰いたいということで、それは結構だと言いつ一緒になつた
  1001. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 偶然か存じませんが、要するに前大官と称せられるような人が弁護團の中枢を成しているわけですが……。
  1002. 太田耐造

    証人(太田耐造君) そうでございます。
  1003. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それは結局現在の檢察廳に対して相当な便宜を得たい、或いは情報も得られる、乃至は又何か頼むことも効果的になるのじやないかというこういう意図の下に、そういう選定が行われておつたのじやないでしようか。
  1004. 太田耐造

    証人(太田耐造君) それは会社首脳部の意図は分りませんが、少くとも私に対しては、そういう意図の下に人選が行われたとか、或いは私が賛成したというようなことはございません。先程も述べましたように、世間で松阪弁護士或いは黒川弁護士が非常に風評もいい、それからその後に島田武夫先輩も入つて頂きましたが、非常に評判のいい方だからそういう方々にお願いしたい、人格のいい方だからそういう方々にお願いしたいということで問題は出発したと思うのです。
  1005. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 何かこういうような前大官の人々から檢事局の捜査方針が情報を聞き得たのじやないでしようか。
  1006. 太田耐造

    証人(太田耐造君) それはその後に專任届を済ませて弁護士として檢察廳にお出でになつて事件の陳情と経いますか上申をされる、そういう際にいろいろな檢事側の話も出ました。そういういわゆる正規の話合いで得た情報はございます。それ以外に裏面的には一つもございません。これは一つ御了解願いたいのでありますけれども、弁護團としまして裏面的な情報蒐集なんということは一つもやつておりません。
  1007. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 勿論弁護團としてはおやりにならんでしようが、特別に日野原氏から懇請されまして、或る特定の檢事を指定して、そこからいわゆる弁護士としてではなく昔の地位を利用して情報を得るというようなことはなかつたのですか。
  1008. 太田耐造

    証人(太田耐造君) まあそれはなんですが……。
  1009. 伊藤修

    委員長伊藤修君) あなたが弁護團でいろいろお話になつている間にそういうようなお話を伺つたことはないですか。
  1010. 太田耐造

    証人(太田耐造君) ございません。それは一つは氣持の問題と思いますけれども、例えば松阪先輩檢事局にお出でになりまして、これは一介の弁護士として行かれたとしても、又御自分も一介の弁護士としてお出でになつたつもりでも檢事の方の受ける印象はこれは又多少そこには違いのあることは、これはあり得ると思います。併しそういう関係を特に從つて松阪先輩が動かれた、黒川先輩が動かれた或いは私が動いたというふうなそういう意識的なものはありません。
  1011. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そうするとまあその弁護團の構成は、あなたの関係のお二人は別問題として、黒川氏なり松阪氏なりが選定したのは、結局あなたの意思じやなくて、日野原氏の意思であつたのですか。
  1012. 太田耐造

    証人(太田耐造君) 日野原藤井会社首脳部、会社の祕書課、総務部というのがあります。
  1013. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 会社側から出たところの……。
  1014. 太田耐造

    証人(太田耐造君) その案について意見を求められて私が賛成したということになります。
  1015. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 弁護人に対する相当多額の費用が会社の経費から支出されておるというデマがありますが、その眞僞はどうですか。
  1016. 太田耐造

    証人(太田耐造君) これは全くのデマで、実に迷惑しておるわけです。どういうところからそのデマが出たかと思いまして、私も多少調べて見てのでございますけれども、まあはつきりは勿論いたしませんが、よくこういうふうな大きな事件になりますと、顧問弁護士に会社側から相当の金を纏めて渡して、そうしてそれによつて弁護團を賄つて呉れというふうな依頼の方式があるそうでございます。それで今度の場合にも、私が一高時代からの日野原氏の知合いだということから、昭電のやり方が相当派手だということもあつたと思いますけれども、数百万円のものを太田に預けて、そうして弁護團の切盛りをやつてつたのではないかという想像が根本じやないかと思うのでございます。まあ弁護團として受取りました金額は、これはお分りかと思うのですけれども、世間で傳わる十分の一くらいのものでありまして、むしろ一般の今日の事件に比べて少いとも多いということはない、そう思つております。
  1017. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 金額はどのくらいですか。
  1018. 太田耐造

    証人(太田耐造君) 私も実は松残先輩や黒川先輩のことは会社から聞いておりましたから知つておりましたが、その他の人に出て行つた金額は、これは知りませんでした。それは最近になつて会社の方に聞いて見ましたところが、総計で五十五万円弁護費用が出ておると言つておりました。
  1019. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それは実費は別ですね。
  1020. 太田耐造

    証人(太田耐造君) いや、その中に弁護士としての実費は皆含めております。
  1021. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 記録とかそういうものは別ですか。
  1022. 太田耐造

    証人(太田耐造君) 又これは別でございます。いわゆる車銭ということになると思います。
  1023. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 弁護團を構成するのに、そういうような前大官のグループがタッチしておつて、外から仮に入ろうとするときにはオミットするというようなふうに思われるのですが、そういうことはどうですか。
  1024. 太田耐造

    証人(太田耐造君) これも先ずこの間も笑い話になつたのですけれども、太田は外から弁護士が入ることを拒否しておる。その理由は、昭電で弁護士費用というトータルが決まつておる。外からいろいろの人が入ると一人頭の金額が減るものだから、あれはセクト的にああいうことをやつておるという話を聞きまして笑つたのでございますけれども、故意に弁護士の附くのを拒否したということはないのです。ただまあ事件全体を見まして、この程度の弁護士の数でよかろうという一つの想定は勿論会社側にも私にもありました。それと同時に個人の弁護士の方或いは仲介に立つて持込む人の意見かも知れないのでございますけれども、いろいろな根拠のないような事実をお土産に持つて來るというような、まあ賣込み弁護士が相当ありまして、そういう人を入れては困るものですから、そういう人のことについてどうだろうという意見を聞かれたことが一、二ありますが、併し大体は会社側で断りたいときに、顧問弁護士に相談したら、それはまあ止めて貰おうと言つたというように、私の名前を使いまして、そうして附いて貰いたくない方をお断りしたことが大分あるんじやないかというふうに思つております。
  1025. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そうするとその弁護費用というのは皆会社から出ておるわけですか。
  1026. 太田耐造

    証人(太田耐造君) 会社から出ております。
  1027. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それ以外に出ていないわけですね。何百万円というのは出ていないわけですね。
  1028. 太田耐造

    証人(太田耐造君) 出ておりません。
  1029. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 日野原個人からも出ていないですか。
  1030. 太田耐造

    証人(太田耐造君) それ以外に日野原個人から三、五万円くらいの小さな金額を出ておるかも知れませんが、何百万というのはどこから出たかと思うくらいで、これは全然出ておりません。
  1031. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 日野原氏が逮捕される前後の模樣を一つお話を願います。
  1032. 太田耐造

    証人(太田耐造君) 承知しました。昨年の六月五日に野見山技官が逮捕されまして、その逮捕された事由は六、七万円で家を修繕してやつたという事実だつたと当時聞いておつたのであります。それが直接日野原社長から家の修繕をして貰つたというので、そのこと自体が日野野原社長に結び付くようなふうに見受けられたのであります。そこで日野原社長がそれによつて直ぐに取調べを受けるだろうかどうだろうかということが、私共弁護士の一つの研究材料……私の判断はその程度のものではあれ程の大きな会社の社長を檢察廳も召嘱して取調べることはない。今後の発展如何によつて召嘱して取調べを受けることがあろうという私の想定だつたのですが、その後に六月中旬に同じ商工省の長田課長が逮捕された。それで私の想定は津田課長から或る程度日野原との結び付く事実が出るとすると、野見山技官の問題と合せて一本で檢察廳で召喚して調べるということになるかも知れんというのが当時の私の想定だつたのです。合せて一本、そういう想定を人に漏らしておつたことがありました。ところが六月二十二日の午後三時頃だつたと思うのでございますけれども、この野見山担当の弁護士が私の事務所に参りまして、野見山が日野原からたしか五万円だと思いますが、五万円收受したという事実を自供したように見受けられるということを言つてつたのであります。それは直接警視廳から、或いは檢察廳からその事実を聞いたのじやなくて、野見山がその五万円を何か知合いの婆さんか何かに託して銀行の銀行員にそれを預けて、月五分ですか一割ですか、何かの利息を取つて運用しておつた。まあそれで小遣に当てておつたと思いますが、その金が使われておつたらしいのです。その婆さんが警視廳に呼ばれて、その金を出せと言われたということが、今の野見山担当の弁護士の耳に入つた。そうするとそのことを野見山が自供したに相違ない。だからその情報を知らせるということでその弁護士が見えた。そこで私が一本で、これは日野原社長が召喚取調べを受けるようなことになるかも知れない、不拘束で取調べを受けるだろう。又二十二日の晩ですから、翌日直ぐ逮捕状が出る、翌日問題になるというふうにも考えませんでおつたのですが、情報が入つたものですから召喚されるかも知れんということを昭電の本社に行つて日野原とたしか藤井取締役がいたと思いますが、そこで話をして、一体眞相はどうなのだということを聞いて見ました。そうすると日野原氏の態度も何か曖昧でおつた、はつきりしませんでしたから、これじや召喚されるかも知れないから、大きな会社肥料増産の上においても社長がいなくちや困るのだから檢察廳にお願いして、この程度のことなら不拘束で取調べて貰うように陳情しようじやないかというふうに私が考えまして、そこでそれじや一つ弁護士の小人数の会議を開いて、その結果で檢察廳にお願いするようにしよう、そういうことになつたのであります。それでその晩に私六時か七時頃だつたと思いますが、麻布の幾羅々々という旅館、そこへ松阪先生、黒川先生にお出で願つて、私も日野原藤井と行きまして、そこで私が今言つたよう事情を話しまして、両先生が檢察廳に行つて、召喚されるのは止むを得んとしても、肥料増産の建前もあるから不拘束で調べて頂くようにお願いしたい、こういうことをお願いしたわけであります。そこで翌日の朝午前中に檢察廳に行つてその話をしようということになつて、その晩両先生は八時か八時半頃にはお帰りになつたと思うのでございます。その後私ちよつと残りまして藤井氏の知合いのあの辺の麻布寮と言つておりますが、そこに行つて又ビールの飲み直しをして、事件のそういう話をしながら、私はそこを十時頃だと思いますが、出て、そうして自宅に帰つて寢てしまつたのでございます。その晩に翌日午前中に松阪先生、黒川先生に檢察廳に行つて貰うので、車の手配をしなければならんので、松阪先生のところには、朝九時頃には車を廻わして、黒川先生には私その朝外の用件で黒川先生に早くお目に掛かりたい要件があつたので、朝早く黒川先生のところに八時半までに行くという話合いにしておつた。それで私はその晩二十二日の晩は自宅に十時半頃帰つてしまつた。そうしますと、翌朝二十三日の朝六時頃だと思いますが、日野原が訪ねて來た。家内が出まして日野原さんが見えたというものですから、痩せた人だろうと言つて、弟さんが見えたと私は思つた。そうじやない。でつぷりした立派な人だ。それじや社長が來たのだ。日野原君が私のところに來たのは、これが最初だと思いますが、そこに出て見ますと、日野原君がおりまして、実は昨晩遅く情報が入つた。今日の午前中が危險だというふうな情報が入つた。そこで朝十時頃に松阪先生、黒川先生が弁護士会館に行つて、檢察廳に行つてあの話をされることになつてつたのでございますが、そういう情報が入つたから、もう少し時間を早めて、八時半頃弁護士会館に落合つて、檢察廳に行つてお話願えないかという依頼に來たのです。それで車も來ておりますから、それじやよいだろうと言つて、私も直ぐ自宅を一緒に出た。甲州街道のところに出ましたときに日野原さんが自分で降りると言つて降りまして、私はその車で黒川さんのところに行きました。黒川さんと他の用件を話しまして、黒川さんと一諸に弁護士会館に行きました。間もなく松阪先生が見えたのです。まだ責任のある檢事が誰も出て來ていなかつたので、二十分くらい彼処に待つたと思います。そこに出射檢事が來られたのです。松阪、黒川両先生が出射檢事の部屋に入るのを見て、私はそのまま本社に行つたのです。本社に行きますと、巡査が張り込んでおるのでございますから、ははあこれは逮捕状が出たのだろうというふうに初めてそのときに的確に知りまして、それから私も会社藤井取締役に会いまして、逮捕状が出たらしいなあ。私はそれじや事務所行つてつておるから、黒川、松阪先生も檢察廳の結果をもたらして私の事務所にお見えになるから、藤井君も來て呉れと言つて事務所に引上げた。そうしますと、十時半か十一時頃だと思いますが、松阪先生、黒川先生が私の事務所に、その前藤井君も來ておりまして、そこで松阪、黒川両先生が逮捕状が出た。これは一刻も早く出頭させなければならん。それで私もそれはそうだ。賛成です。藤井君もそうしましようということになつて、そうして藤井君が日野原君の行きそうな心当りを二、三探した結果、あそこの、重政君のところですか、いるということが分つて早速藤井君が迎えに行つたという状況なんであります。
  1033. 伊藤修

    委員長伊藤修君) その前の晩遅く情報が入つたと本人が言うのですが、それはあなたとしてはそればどういう筋の情報だとお聽きにならなかつたのですか。
  1034. 太田耐造

    証人(太田耐造君) 朝早かつたものですから、そこまでは聽いておりませんが。
  1035. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それによつて、情報によつて確かかどうか判断する一つの資料になりますね。
  1036. 太田耐造

    証人(太田耐造君) はあ。その前からですね。実は我々弁護團の知らないような、関係しない、本來弁護士のやるべきようなことで弁護團が関係していない事実が二、三あつたのです。それは日野原君が逮捕される前に、一遍あれは檢察廳に行つて、これは極祕だと思うのです。私供も知なかつたのですが、檢察廳に行きまして出射檢事だと思うのですが、会つてその政治献金といいますか、そういうことがなかつたという概略的な事件の説明をした……。
  1037. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 誰が。
  1038. 太田耐造

    証人(太田耐造君) 日野原氏ですがね。そういうことをその済んだ後で我々聽きまして、そういうことならやはり弁護士に相談して呉れなければ困るというふうなことを言つたことがあるのです。そうしますとその後に今度藤井君が機密費の説明にやはり檢察廳に行きまして、そうして一應の説明をしたということがあつたのです。それから又まあその後のことになりますが、日野原君が逮捕された後で、日野原君の家族や会社の重役が歎願書を作りまして、そうして説明に裁判所檢察廳に、説明じやない、上申に行つてつたのです。それもまあ私供後で聽いたというふうなことがありまして、そのまあ何といいますか、この我々の関與しない場合によつて、そういうふうな行動会社関係者がすることがあつたものですから、今の場合におきましてもですね。概ねそんなことだろうという程度の判断はしておりましたが、的確にどこから情報が入つたのか、それは私共は知らないわけです。
  1039. 伊藤修

    委員長伊藤修君) その逮捕される前に、日野原がみずから出頭して陳述したということは本当ですか。
  1040. 太田耐造

    証人(太田耐造君) それは私は事実と聞いております。陳述というよりも、一遍檢察廳に行つて事件の概略の説明をしたのじやないかと思うのでございますが、
  1041. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 他の場所で話したということを檢察廳に行つて話したと、こういう意味じやないのですか。
  1042. 太田耐造

    証人(太田耐造君) はあ。
  1043. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 他の場所で、いわゆる檢察廳に行つて話したのじやなくして、他の場所で話したというのじやありませんか。
  1044. 太田耐造

    証人(太田耐造君) いや、他の場所で話したということはこれはありませんでしよう。それが檢察廳であることは間違いないと思います。
  1045. 伊藤修

    委員長伊藤修君) しばしば第一線檢事と酒食を共にして、いわゆる昭電の内情をよくお話して、当局に了解を求めるという方法を取つたのじやないですかね。
  1046. 太田耐造

    証人(太田耐造君) それは弁護團としましては……。
  1047. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 弁護團は御存じないでしようけれども……。
  1048. 太田耐造

    証人(太田耐造君) 弁護團としましても、昭電会社の規模とか肥料増産の重大責務を負うておるとかいうようなことを詳細に上申書にしまして、裁判所、檢事局に提出したというふうな活動はいたしましたが……。
  1049. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そういう公式的なものは別として、日野原個人が……。
  1050. 太田耐造

    証人(太田耐造君) 私的に他の場所で日野原がそういう説明をしたことは私はないと思うのです。
  1051. 伊藤修

    委員長伊藤修君) これは各檢事の人に聽きましてもそういう点が合つておることは事実ですから、そこで又そういう話が出たことも事実ですね。それがどの程度ということは分りませんが、要するに会社立場というものをよく知つて貰うという意味だつたと、こう言つております。
  1052. 太田耐造

    証人(太田耐造君) 私的に会社立場を説明したことがあつたかも知れませんが、それは私も勿論弁護團としても知らない……。
  1053. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 知らなかつた……。
  1054. 太田耐造

    証人(太田耐造君) はあ知りませんでした。
  1055. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 日野原は昨晩電話が掛かつて來たとあなたにおつしやつたが、その昨晩ということはあなたが別れてからの意味ですか。
  1056. 太田耐造

    証人(太田耐造君) だと思います。別れたときには、朝松阪、黒川両先生にたしか九時でしたか、九時半でしたかに弁護士会館で落合つて、そうして檢察廳に行つて話をして貰うという打合せになつて私別れたのでありますが、それを昨夜遅くなつて情報が入つた言つて日野原が來まして逮捕状が出るというのではなくして、今日の午前中が危險だという情報が入つた。これは眞僞は分らない。それで両先輩に陳情して貰う時間を一時間くらい早くして呉れ……。
  1057. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それは先程お話がありました。
  1058. 太田耐造

    証人(太田耐造君) ということを言つておりましたから、私と別れた後の情報ということは間違いないと思います。
  1059. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そうすると、あなたと二次会というのですか、二度目にお酒をちよつとお飲みになつてお別れになつてから藤井君が日野原のところへ行つておるわけですね。
  1060. 太田耐造

    証人(太田耐造君) それは後で聞きました。
  1061. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 行つておりますね。そのときの情報ですね。
  1062. 太田耐造

    証人(太田耐造君) だと思います。
  1063. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そうすると藤井君がもたらしたのですね。
  1064. 太田耐造

    証人(太田耐造君) だと思います。
  1065. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そうすると、藤井君はどこかからその情報を得たわけですね。
  1066. 太田耐造

    証人(太田耐造君) そうだと思います。
  1067. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それは檢察廳の方から漏れておるのじやないですかね。いろいろの事情をずつと総合して來ると、そういうふうにうかがわれるのですがね。
  1068. 太田耐造

    証人(太田耐造君) そういう噂はあるようでございますけれども、的確のことは私存じません。
  1069. 伊藤修

    委員長伊藤修君) あなたとしてはどうです。
  1070. 太田耐造

    証人(太田耐造君) さあ何とも判断できかねますが……。
  1071. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 尚その外に日野原へ直接に三回も他から電話があつて、その情報を報知して來た人があるというのですが、こういうことはお分りになりませんか。
  1072. 太田耐造

    証人(太田耐造君) それは聞いておりません。私が二十二日の午後四時頃と思いますが、先程お話しました会社へ行きまして、合せて一本でこれは召喫されるかも知れんというお話を日野原にしましたときに、日野原社長はちよつと虚を衡かれたような恰好でしたから、事前にそういうことを、召喚されるかも知れんというようなところまでの情報は持つてつたかどうか私実は疑問に思うのです。
  1073. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そうするとあなたがいらつしやつたのは四時頃ですか。
  1074. 太田耐造

    証人(太田耐造君) そうでございます。
  1075. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それからいつ頃その打合会にいらつしやつたのですか。
  1076. 太田耐造

    証人(太田耐造君) いや、一遍帰りまして、三十分くらいいて、その後連絡会社の方へ頼んで事務所へ帰りました。
  1077. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そうするとあなたが会社を辞されたのは四時半頃なんですか。
  1078. 太田耐造

    証人(太田耐造君) 四時半頃だと思います。
  1079. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それから打合会にいらつしやつたのは何時頃ですか。
  1080. 太田耐造

    証人(太田耐造君) 六時半頃事務所を出まして、七時半頃だと思います。
  1081. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 七時半頃いらつしやつたのですか。日野原氏は何時頃來たのですか。その席へ……。
  1082. 太田耐造

    証人(太田耐造君) やはり同じ頃に來ておつたと思います。
  1083. 伊藤修

    委員長伊藤修君) あなたの前ですか、後ですか。
  1084. 太田耐造

    証人(太田耐造君) さあ、あれは日野原が遅れて來ましたかな。
  1085. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そういうようなことを言つておりましたですな。
  1086. 太田耐造

    証人(太田耐造君) 遅れて來ましたかな。どうもはつきりしませんですから、遅れて來たかも知れんです。
  1087. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そうすると、あなたが辞去されてから二時間なり、二時間半というものは日野原会社におつたもんでしような。
  1088. 太田耐造

    証人(太田耐造君) それは私事務所帰つておりましたから分りませんです。
  1089. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そのときにどうでしよう。日野原はその席に來たときに何か憂鬱な顔をしておるとか、或いは困つたような顔をしておるとか、思い余つたような顔をしていなかつたですかな。
  1090. 太田耐造

    証人(太田耐造君) そうですね。そう言われれば、そうとも思えるのですけれども、話しながら一杯飲んでおつたもんですから割合元氣でございました。
  1091. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そのとき或る情報を得て、その席へ臨んで來ておるんじやないですかな。
  1092. 太田耐造

    証人(太田耐造君) そういうことはないと思います。或いは漠然とした情報、私の方で述べたような漠然とした情報は他から得たかも知れません。
  1093. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 日野原はそのときにすでに情報を自分の直接……電話があるそうですね。社長室に……。
  1094. 太田耐造

    証人(太田耐造君) ええ。
  1095. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それで三回入手しておるらしいですね。ですから時間的に考えますと、入手してその席へ臨んでおるわけです。併しその席でまあ皆さんに伺つても別にそういうことは取立てて話はなかつたらしいですね。あなたの出題を中心にして話があつたらしいですね。
  1096. 太田耐造

    証人(太田耐造君) そうなんです。
  1097. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 日野原氏から自分はこういう情報を入手したからという出題はなかつたらしいですね。
  1098. 太田耐造

    証人(太田耐造君) ありませんでした。
  1099. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 日野原自身は或る程度の情報を得て、而してあなたたちの御意見を聞いておつた。こういう態度じやなかつたんですかね。
  1100. 太田耐造

    証人(太田耐造君) それは分りません。分りませんが、その晩の我々の考えはですね。不拘束召喚が数日中にあるかも知れぬという程度の想定の下に話をしておつたと思うんです。
  1101. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そうでなくていわゆる逮捕ということは既定の事実みたいになつて、併し逮捕されれば会社の運営がよろしくない。だから不拘束によつて取調べを続行して貰う。その運動を協議なさつたのじやないですか。
  1102. 太田耐造

    証人(太田耐造君) そうじやないんです。それは召喚ですから、逮捕状が出るかも知れんということは一應想定しなければならん。それですから併しこの程度の問題で檢察廳が逮捕状は出すまい。不拘束の取調べだろう。併し万一のことを考えて、不拘束取調べの懇願を檢察廳にしようじやないかという……まあ不拘束調べだろうという考え方で相談しておつた。それから……。
  1103. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 藤井たちの言葉を藉りれば、在宅調べをあなたたちに懇願して呉れ。そういう方向に運動して貰いたい。これは弁護士は当然のことで、依頼者の趣旨に副うて懇願してやることは当然のことですが、そういうことがその晩の打合会の主題じやなかつたのですか。
  1104. 太田耐造

    証人(太田耐造君) 勿論それが主題なんでございますが……。
  1105. 伊藤修

    委員長伊藤修君) だから既定の事実として、確定ではなかろうけれども、情報関係から言えば逮捕が既定のものである。召喚即ち逮捕とまで言えるか分らんけれども召喚は既定の事実である。召喚された以上は逮捕されるかも知れんから、その場合は在宅調べのように持つて行つて貰いたい。こういうことがその晩の打合会の主題じやなかつたのですか。
  1106. 太田耐造

    証人(太田耐造君) 逮捕されることが何といいますか、確率度が多いといいますか、そういうふうな考え方では実はしてなかつた。と申しますのは、野見山から出たとしましても五万円そこそこの金で……。
  1107. 伊藤修

    委員長伊藤修君) あなたの提供した材料はそうでしようけれども……。
  1108. 太田耐造

    証人(太田耐造君) いや皆そういう空氣でおつたんです。黒川、松阪両先輩も軽く檢察廳へ行つて話してやろうというふうでお引受になつて頂いたろうと思う。
  1109. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 藤井なり或いは日野原は内心的において相当危惧しておる点ですからね。その点をあなたたちに懇請されたのではないですかね。
  1110. 太田耐造

    証人(太田耐造君) 藤井日野原、それは早急に逮捕状が出るかも知れんというふうに考えておつたかも知れませんが、私の判断は逮捕状の出る率を多く見ておりませんが、多分不拘束調べだろうが、念のために話して呉れというくらいに考えておつたのです。
  1111. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そうすると、あなた方の方からその晩電話を掛けたことはないですか。
  1112. 太田耐造

    証人(太田耐造君) ありません。
  1113. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 要するにあなた方の方に檢察方面から情報が入手して、あなたの方からお教えになつたということはないですか。
  1114. 太田耐造

    証人(太田耐造君) ございません。
  1115. 伊藤修

    委員長伊藤修君) その日の、要するにあなたが昭電を辞去されてお宅にお帰りになつた頃に逮捕状が出ておるんですね。
  1116. 太田耐造

    証人(太田耐造君) ああそうですか。
  1117. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それがどうして漏れちやつたわけですかね。何かそういうような耳寄りのお話をどつかから入手なさいませんでしたか。
  1118. 太田耐造

    証人(太田耐造君) 的確には私には分りません。
  1119. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そういうふうな風評でもお聞きになりませんか。どの檢事から漏らしたか。
  1120. 太田耐造

    証人(太田耐造君) 風評は耳にいたしておりますがはつきりいたしません。
  1121. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 御系統は御存じのように私は聞いておりますが……。
  1122. 太田耐造

    証人(太田耐造君) そうでもありません。
  1123. 伊藤修

    委員長伊藤修君) あの檢事から漏らしたという系統をあなた御存じのように聞いておりますが……。
  1124. 太田耐造

    証人(太田耐造君) いやそうでもありません。
  1125. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 漏らした檢事は大体こちらは想像がつきますけれども……それからもう一つ打合会というのはしばしば行われたのですか。その晩に限つて行われましたか。
  1126. 太田耐造

    証人(太田耐造君) いやそうじやありません。その前に幾羅々々で二回ぐらい開いたかと思います。
  1127. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それは予めそういう日を決めるのですか。それとも突然決めるのですか。
  1128. 太田耐造

    証人(太田耐造君) 予め決めまして……。
  1129. 伊藤修

    委員長伊藤修君) いつ何日打合会を開くという……。
  1130. 太田耐造

    証人(太田耐造君) そうでございます。
  1131. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それはあなたが司令をなさるのですか。会社の方から打合会を開いて呉れというのですか。
  1132. 太田耐造

    証人(太田耐造君) 会社と私と相談しまして、そうして開いておりました。
  1133. 伊藤修

    委員長伊藤修君) その最後の逮捕までを標準にいたしますと、最後の打合会ですね、そのときに丸山というのがおつたですね。
  1134. 太田耐造

    証人(太田耐造君) 二十二日の晩でございますか。私は松阪、黒川両先輩が帰られたあとで、五分か十分又幾羅々々でビールを飲んでおつたそのときに丸山君が顔を出したと思うのですが……。
  1135. 伊藤修

    委員長伊藤修君) その前からも來ておるらしいのです。
  1136. 太田耐造

    証人(太田耐造君) その席に現われましたのはそのときです。
  1137. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 打合会にも列席しておるらしいですね。
  1138. 太田耐造

    証人(太田耐造君) そう……。
  1139. 伊藤修

    委員長伊藤修君) こういう関係のない者が弁護團の打合会にどうして出席するのですか。
  1140. 太田耐造

    証人(太田耐造君) それは私も疑問に思つてつたのですが、何か藤井氏、或いは日野原社長と特別の間柄で、やはりいろいろなことに、日野原君、藤井君の相談に乘つておるので、そういう弁護士の打合せなんかについても知識を得たいということで出てるのじやないかというぐらいに考えておりました。
  1141. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 日野原とは余り懇意でないらしいですね。藤井とは多少懇意らしいですが……。事件の本体に余り直接関係のある人じやない、又專門家でもない、又会社の人でもないのです。どうしてそういう重要な会合に列席する資格があるのですか。必要があるのですかね。
  1142. 太田耐造

    証人(太田耐造君) あの人がいろいろな情報を集めておつたのじやないかと思うのでして……。
  1143. 伊藤修

    委員長伊藤修君) だから最初お伺いしたような弁護團に、いわゆる日野原氏の作つておる情報というものを弁護團に持込むのじやないでしようか。
  1144. 太田耐造

    証人(太田耐造君) そうじやなくて、情報を丸山君が集めておつたのじやないかと思いますが、そういう情報を我々にちつとも提供しないで、むしろ我々の会合に出て來て、それを一つの参考情報に聞いておつたのじやないかと考えておりました。
  1145. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 逆にそのときに丸山が要するに危い、こういうことを丸山がその席でも言うたんじやないのですか。或る種の情報を取つて來て。
  1146. 太田耐造

    証人(太田耐造君) 併し丸山君は多分いたと思うのでございますけれども、そうですね、丸山君もそういうことを言つてつたような氣もいたしますがね。
  1147. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それはどこから入手したか勿論お尋ねにならなかつたのですね。
  1148. 太田耐造

    証人(太田耐造君) 分りません。
  1149. 伊藤修

    委員長伊藤修君) あなたと日野原信吾氏との関係、これはお尋ねいたしますと又齟齬いたしますと僞証問題が起りますから、これは差控えて置きます。あなたは、右翼團体の方に交渉なさつたことがあるのですか。
  1150. 太田耐造

    証人(太田耐造君) この昭和電工事件について右翼團体に……。
  1151. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 頭山氏とか丹羽五郎氏とか。
  1152. 太田耐造

    証人(太田耐造君) 全然ございません。
  1153. 伊藤修

    委員長伊藤修君) あなたは田中隆吉氏に会われたのですね。
  1154. 太田耐造

    証人(太田耐造君) 田中隆吉氏には一遍会いました。
  1155. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それはどういう趣旨で会つたのですか。
  1156. 太田耐造

    証人(太田耐造君) 私は実は司法省の思想課長、前に第六課長と言つておりましたが、あれをやつておりましたときに、いろいろの思想事件があつたのですが、そのときに田中隆吉氏が兵器局長をやつておりました。それから警保局長を橋本清吉氏がやつておりまして、右翼、左翼の思想事件の取締りについて、一致の歩調を取りたいということからしばしば会つて話をしておりましたので、田中隆吉氏とも懇意にしておりまして、罷めました後も月に一遍ぐらい田中氏に会つて、いろいろな話を聞いたりなんかしておるような関係であります。それで昭電事件の始まつた後に、あの頃銀座に東洋美術館というのがありまして、そこに田中氏がよく行つておりましたから、そこへ通りがかりに訪ねて行つて、そうして雜談を交したことが一回あると思います。そのときに昭電事件の話も出たと思います。
  1157. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それで何か関係方面の情報を入手されたわけですか。
  1158. 太田耐造

    証人(太田耐造君) そうじやなくて、実はこういうことを耳にしたわけです。今度の乘取り問題が一つの中心テーマになつておりますが、その頃に日野原氏が向う関係の推輓で昭電社長になつたということの眞相を、当時の罷めた森社長側の重役が田中氏のところに調べて呉れといつて頼んで行つたということがあるということを私耳にしておりました。そこでそういうことがあつたのかどうか、そういうことがあつたら、果して調べた結果は日野原の乘取りなのか、或いは向う側のやはり強力な意見でそうなつたのか、その関係を知りたいという氣持もございまして、雜談の際にこのことについて触れたのです。
  1159. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 特に何か田中隆吉氏に懇請したということはないですか。
  1160. 太田耐造

    証人(太田耐造君) ありません。田中氏もそういう森氏から前に調査を依頼を受けたような関係もありますのと、今非常に不明な立場にあの人も立つておるものですから、こういう問題には触れたくないという氣持がありありと見えたものですから、そのままにして帰つて來ました。
  1161. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それはあなた個人の意思ですか。日野原氏か藤井氏から頼まれて……。
  1162. 太田耐造

    証人(太田耐造君) 私個人の意思といいますか、通りがかりに寄つて見たというので、最近或いは藤井氏も日野原氏も、私と田中氏と知り合いだということを知つておるかも知れませんが、当時は全然あの人たちは知らなかつたと思います。
  1163. 伊藤修

    委員長伊藤修君) その結果を藤井氏に御報告したことはありますか。
  1164. 太田耐造

    証人(太田耐造君) その後に雜談的に藤井氏に話したことがあるかも知れません。
  1165. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 日野原氏か藤井氏は丸山四郎氏を通じて、秋永元中將を通じて、田中隆吉氏を通じて、関係方面の情報を取るべく工作したという話ですね。たまたまあなたがそこで田中隆吉氏に面会されて、やはり同様のことをお頼みになつた、若しくはお話になつたというふうに了承できるのですが。
  1166. 太田耐造

    証人(太田耐造君) 田中隆吉氏に私が会いましたのは、六月の末か七月の初め頃で、丸山氏の工作よりもずつと前なのです。だから……。
  1167. 伊藤修

    委員長伊藤修君) だから大田氏からすでにそういう話を聞いておるがという言葉がその時に出たそうですね。
  1168. 太田耐造

    証人(太田耐造君) それはそう出たろうと思います。
  1169. 伊藤修

    委員長伊藤修君) あなたの方が前だつたらしいですね。何かお尋ねがありますか。
  1170. 大野幸一

    ○大野幸一君 あなたは、併せて一本で不拘束の見込みだつたという御趣旨のようですが、野見山に五万円日野原が贈賄したという件も、その中に入つておるわけですね。
  1171. 太田耐造

    証人(太田耐造君) そうでございます。
  1172. 大野幸一

    ○大野幸一君 贈賄者側として、五万円という金を贈賄して、今まで不拘束でそのまま調べられた。そのような不拘束の例がございますか。
  1173. 太田耐造

    証人(太田耐造君) そういう例は知りませんが、当時私の考では、世間では何百万円とか、何千万円とか政治献金があつたり、或いは政治的な贈賄というものをやつておるというのが世間の噂であつたので、その金額に比べますと、非常に小さい金額であるのと、同時に昭和電工というあの大きな会社の社長が、肥料増産の非常に重要な時期であるから、社長を逮捕するのに、五万円と家を修繕してやつたという程度では、非常に事柄が小さ過ぎるというふうに判断した。
  1174. 大野幸一

    ○大野幸一君 大会社の社長だと、寛大にしていたということになるのですか。
  1175. 太田耐造

    証人(太田耐造君) そうじやありませんで、事件全体のまあ、実は五万円くらいの小さなもので、社長を逮捕して、あと大きなものを出そうとすると、相当長期の拘留を必要とするようなことにもなるので、檢察廳もそういうふうな長期の拘留をして調べることもできかねるだろうから、もつと事件の見透しが付いた方で、大きなものを掴んだ上で逮捕するなら逮捕するだろうという想定であつたのです。
  1176. 大野幸一

    ○大野幸一君 併し一面あなたが不拘束でやるという見込を付けた半面に、まあそれは余り惡く解釈するのか知らんが、相当松阪さんの顔がきき、それからあなたの顔や、黒川さんの顔がきいておるという過信はなかつたのですか。
  1177. 太田耐造

    証人(太田耐造君) これは実は、余り内面暴露にもなるだろうと思いますけれども、私共檢察廳へ行きましても、知つてる人なら知つてるだけに、言いたいことも言えないこともございましすし又御承知のような日本の檢事の氣性でございますから、力を以て來たとすると、却つて反撥するという檢事精神といいますか、そういうものがありますので、世間で考えるほど顔というものがきかない社会だと思つておるのでございます。
  1178. 大野幸一

    ○大野幸一君 次に昭和電工は制限会社ということを、顧問で知つておられましたね。
  1179. 太田耐造

    証人(太田耐造君) 知つておりました。
  1180. 大野幸一

    ○大野幸一君 弁護團の費用五十五万円が昭和天工の社金から支出されるということについて、あなたはどうお考えになつておりましたでしようか。
  1181. 太田耐造

    証人(太田耐造君) それは日野原藤井以下電工のために、まあ法に触れたという点が一つと、それからもう一つは、昭和電工株式会社それ自体が問題にされ、起訴されておるという状況から、会社として弁護費用を支出するということは不当じやないというふうに考えたのです。
  1182. 大野幸一

    ○大野幸一君 現在ではどう考えておる……。
  1183. 太田耐造

    証人(太田耐造君) 現在でもそう思つておる。
  1184. 大野幸一

    ○大野幸一君 会社の重役が会社のためを思つてつたことは、犯罪が成立しないというのですか。
  1185. 太田耐造

    証人(太田耐造君) それですけれども、贈賄などやはり会社の成績、業務がよくなり、会社自体が発展するために贈賄をやつた
  1186. 齋武雄

    ○齋武雄君 その場合はよろしいと解釈しますか。
  1187. 太田耐造

    証人(太田耐造君) そればかりでなくて、会社自体が問題にされて起訴されておる事件ですから……。
  1188. 齋武雄

    ○齋武雄君 不当財産委員会で國から補助を受け、國から金を受けておるところの税金から弁護團に金が拂われたということに対して追求されたという記事がありましたが、知つておりますか。
  1189. 太田耐造

    証人(太田耐造君) その後新聞で見ました。
  1190. 齋武雄

    ○齋武雄君 そのことはあなたはそうじやないとお考えになつたか。
  1191. 太田耐造

    証人(太田耐造君) 会社自体が起訴されておる事件であるし、会社のためを思つてつたことだから私は差支ない。実際問題として多くそういう場合会社で負担しておるようです。
  1192. 齋武雄

    ○齋武雄君 だから私は制限会社ということを言つた。どんな場合でも制限会社というのは非常な制限を受けるわけです。
  1193. 太田耐造

    証人(太田耐造君) それはそうですがね。
  1194. 齋武雄

    ○齋武雄君 あなたはそういうことはよいと飽くまでもおつしやるか。それからこれは委員長が聞かれなかつたようですが、我々國民の代表として聞かざるを得ないから聞きますが、先程日野原信吾の証言を聞いておりますと、日野原信吾は勾留中の昭和電工社長から贈賄の連絡、即ち拘置所関係の贈賄、これについて日野原社長から傳言を頼まれて、あなたが事情知つて取次いだということを証言しておつたが、あなたはそういうことについて、ここでお聞きしなくてもよろしいが、日野原信吾の証言を我々は信用してもよいか。
  1195. 太田耐造

    証人(太田耐造君) 私は事実が違うと思つております。それは私も実はよくはつき合いが浅くて知りませんが、日野原信吾という人は、その後いろいろ聞いて見ますと、相当に精神的に欠陷のある人だということも私聞いておるのですがね。大分事情が違うのじやないかと思つておりますが……。
  1196. 齋武雄

    ○齋武雄君 それでは詳しく述べて下さい。どの点が違いますか。
  1197. 太田耐造

    証人(太田耐造君) そういうことについて拘置所で日野原社長からお話がありましたが、私は、そんな必要はないだろう。そういうことをやるべきものじやないと言つて日野原に反対の意見を述べております。その後に信吾氏は、兄貴の命令だから自分はやりたいと言つて、まあ強硬な考え方を以て、これは私の意見を聞くと言うよりは、弁護團ですから、まあそういうこともあるという話に聞いた程度に私考えておりました。そこで兄貴からそういう話もあつたけれども、自分としてはそれは賛成しかねるということを述べて置いたのですが……。
  1198. 齋武雄

    ○齋武雄君 一回や二回でないらしい。例えば野崎氏に持つてつたら、間髪を入れず、もう一遍行つたらどうかということを太田弁護士から言われて、又持つてつた。こういうようなことを言つておるが、これはそうですか、本当ですか。
  1199. 太田耐造

    証人(太田耐造君) それは違うと思つております。それは実はそのときのことを申しますと、野崎ですか、医務課長に行つたら断られたと言つて、本人悄然として入つて來て、もう一遍やり直そうかどうかということを言つておりました。私は何といいますか、やらなくてもよい、危險なことをやるからそういうことになるのだと言つて、むしろたしなめた。そうしたら憤然として帰つて行きました。それから後に私の所に來るのが一遍か二遍來たと思いますが、寄りつかなくなつたという状況です。それで日野原信吾氏に会つた最後が確か八月の末か、九月の初めで、その後さつきあちらで顏を見せたのが初めてです。
  1200. 齋武雄

    ○齋武雄君 それなら却つて証言された方がよかつたと今になつてつております。先程の日野原の証言のそのままで、あなたに聞かないと、あなたが先程の御証言中の立派な教育を受けられたという人に反して、在野となられてからの行動が甚だどうも、贈賄関係などで、やはり調査しなければならんと、こういうふうにとられたから聞いたのです。
  1201. 太田耐造

    証人(太田耐造君) それで私は日野原信吾氏を、さつきもちよつと精神的な問題と申したのですが、これは私は日野原が逮捕されたあと事務所に來るものですから、何回か会つた程度で、本人の昔からの精神上の問題は知りませんでした。併しいろいろ信吾氏と懇意な連中に聞いて見ると、この精神上の非常な欠陷があるということは定評のある事実のように聞いております。
  1202. 齋武雄

    ○齋武雄君 精神上の欠陷というとどういうことですか。
  1203. 太田耐造

    証人(太田耐造君) 何か具体的の症状と申しますと、精神分裂症的な傾向にあるのです。話をしておりますと、一生懸命聞いているようであつて、ぽかつと、今の話は何でしたかというようなことを言うのです。そういうようなことがしばしばありますのと、それから又いろいろ一生懸命話をしておつたのが、翌日になりましてそのことをお話すると、そんな話をしたことがあるかというふうなことに出ることがあつたものですから、それで以て私も実はおかしいのじやないかと思つてつたのです。それからもう一つ、感情が非常に激変する、愛憎の激変を來たす人と言いますか。日野原氏の逮捕されたあと、ただ私の場合でも、逮捕されたあとで、八月の末頃までは毎日のように來ておりました。用事もないのに來る。先生の顏を見ないと淋しいから來ましたというような調子で來ておりました。それが八月の末頃になると、ぽつつと來なくなつて、今度こちらが用事があつて会いたいと言つても顏を出さんというような状況なんです。これは外の人に対してもそんなような状況なんですから、精神状態がノーマルじやないということは定評があるように私聞いておるのです。それと同時に、実は先程も六月二十三日の行動について追及を受けたわけですが、その外に例の弁護團として、殊に私自身が何百万円かの金を取つたのじやないかということが世間に流布される、それが先程お話が出ませんでしたが、追放者の我々が政治的な行動を取つておるのじやないかということで、これも大分世間から非難された、その焦点にいつも私が起たされた、何百万円か金を取つたのじやないかということは、新聞にも実は書かれまして、非常に私迷惑しておるのですが、そういうことが、私は今度の捜査当局の調べは、そういうデマが先入主になつて頭に入つてつたように私は思うのです。そういうことが檢事の頭にありまして、日野原信吾の調べの際に、太田弁護士はどうだ、こうだということが、強く出過ぎた結果があるのだろうと、私は想像しております。
  1204. 齋武雄

    ○齋武雄君 最後に、日野原が出射檢事会つた、而もそれは弁護團の知らないうちに会つた、こういうのですが、誰にも相談しないで行つて檢事局であなた方にむしろ隠してあるというのは、一人の料簡ではなくて、誰かこれに手引をするとか、或いは又その斡旋の労を取つた人がなければならんと思うのだが、心当りはありませんか。
  1205. 太田耐造

    証人(太田耐造君) それが私は今度六月二十三日の問題で得た情報と或いは同じ系統じやないか、そういうふうな弁護團に分らんような行動がしばしばあつたということを申上げたのです。
  1206. 齋武雄

    ○齋武雄君 分りました。
  1207. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 出射檢事会つたというのは逮捕される前どのくらい……。
  1208. 太田耐造

    証人(太田耐造君) 十日くらい前じやないかと思うのですが、これも私最近になつて知つたことです。当時は知りませんでした。
  1209. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それから今一つお尋ねしたいのですが、六月の二十三日にあなたが日野原氏とお別れになつたんですね、その際日野原がこの行先の電話番号を書いてあなたにですか……。
  1210. 太田耐造

    証人(太田耐造君) 藤井です。
  1211. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 藤井に渡してあるんでしよう。
  1212. 太田耐造

    証人(太田耐造君) これは甲州街道に行きましたときに、日野原は大分その晩も寝なかつたらしい。それでくたびれたし、よそでちよつと休んで行きたいそれで自分の居場所は大分こういう所にいるから、こういう所へ電話を掛けて呉れと言つて、紙に電話番号を二つ、三つ書いて置いて行つたんです。
  1213. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それはあなたにされたのですか。
  1214. 太田耐造

    証人(太田耐造君) 私に、それからその後に藤井に見せて、こういう所に電話を掛ければ会えるかも知れないと言つて託したのです。
  1215. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そうすると所在地というものは二つか三つあるということは分つておるのですね。
  1216. 太田耐造

    証人(太田耐造君) 大体その先に電話を掛けて來れば分るということを聞いて置いたんです。
  1217. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そうすると行先はあつちこつち探したと言つておられたが、三ケ所かければ直ぐ分つてつたのですね。
  1218. 太田耐造

    証人(太田耐造君) それによつて藤井氏がかけたのです。
  1219. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 直ぐ分つたんですか。
  1220. 太田耐造

    証人(太田耐造君) じき分つたんです。
  1221. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それが三時までかかつたというのはどういうことですか。
  1222. 太田耐造

    証人(太田耐造君) それは先程ちよつと弁護士團の問題について触れたんですが、プライベートの弁護士というか、弁護團というものがあつたのです。それは後で合流したということを申上げたが、その場合に我々のいわゆる昭電事件の弁護士の意見と、プライベートの弁護士團の意見と多少喰い違つた。それでこれを調整しなければ藤井氏は日野原会つて進言することができないということで、その調整に一二時間かかつたと思います。
  1223. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それはプライベートの弁護士團体には反対であつたんですか。
  1224. 太田耐造

    証人(太田耐造君) 出頭するのは反対じやなかつたと思うんですが、出た後で以てどういうふうな供述を日野原氏がとるかということについて我々の意見と違つてつたと……。
  1225. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 要するに認否について……。
  1226. 太田耐造

    証人(太田耐造君) そうであります。
  1227. 伊藤修

    委員長伊藤修君) あなたたちは……。
  1228. 太田耐造

    証人(太田耐造君) 我々は正木先生が最初に口を切られましたが、出頭した以上は、昭和電工の社長らしく、立派な態度をとつて貰いたい、徒らにこそこそ隠すようなことはやらせないようにしたいという御意見で、私も勿論それに黒川先生も賛成され、我々も賛成しました。
  1229. 伊藤修

    委員長伊藤修君) プライベートの弁護士團の方では、少くともそれに対して賛成しないわけですね。
  1230. 太田耐造

    証人(太田耐造君) それに賛成しない意見が出た。それを一つに纏めようというのです。
  1231. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 幾分は意見は違つてつた
  1232. 太田耐造

    証人(太田耐造君) そうです。それは藤井君が行つたり來たり一二回來て、私にも來て調節して呉れというので、私も出かけて行つて、こちらはこういう意見だということを傳えて來たことがあります。そんなことで……。
  1233. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 供述方針というものを結局確定して出頭したということになるのですね。
  1234. 太田耐造

    証人(太田耐造君) そうであります。供述方針を確定したというよりは、藤井氏が日野原会つて、進言しなければならんのですから、藤井氏の心つもりというか、肚構えを作つたという関係です。
  1235. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 藤井氏が参謀総長か参謀次長という格であらゆる過去におけるところの情報を全部蒐集して知つておる筈ですから、それに基いて土壇場に來たわけですから、今後の態度を決定したわけです。
  1236. 太田耐造

    証人(太田耐造君) そうであります。
  1237. 伊藤修

    委員長伊藤修君) これは先程の出射氏に会つたというのは誰からお聞きになつたのですか、あなたは、日野原自身ですか。
  1238. 太田耐造

    証人(太田耐造君) 藤井氏じやなかつたかと思います。
  1239. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 藤井さんですか。
  1240. 太田耐造

    証人(太田耐造君) はあ。誰から聞いたかはつきりしません。
  1241. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 日野原さんじやないですか。
  1242. 太田耐造

    証人(太田耐造君) 日野原氏からは聞いておりません。
  1243. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それも今度お聞きになつたのですか。
  1244. 太田耐造

    証人(太田耐造君) 藤井氏にですか。
  1245. 伊藤修

    委員長伊藤修君) ええ。
  1246. 太田耐造

    証人(太田耐造君) 最近に聞いたのです。
  1247. 伊藤修

    委員長伊藤修君) どこで聞いたということも分りませんですね。
  1248. 太田耐造

    証人(太田耐造君) どこで聞きましたか、ちよつとはつきりしません。
  1249. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 他に御質問は……。どうもお忙しいところ有難うございました。
  1250. 太田耐造

    証人(太田耐造君) どうも失礼しました。
  1251. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それではお諮りいたしますが、休会中に福島事件を片附けてしまいたいと思いますが、福島事件につきましては、証人が多数ありますが、これから又必要に應じて関連証人を呼ぶ必要を生じて参りますから、出張いたして取調べたいと思います。出張の日時、出張の人員は委員長に御一任を願いたいと思います。御異議ありませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  1252. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それではさよう決定いたします。では本日はこれにて散会いたします。    午後三時五十六分散会  出席者は左の通り。    委員長     伊藤  修君    理事            岡部  常君    委員            大野 幸一君            齋  武雄君           大野木秀次郎君            深川タマヱ君            來馬 琢道君            松村眞一郎君   証人    龍建設工業株式    会社社長    丹羽 五郎君    医師、昭和電工    株式会社員   日野原信吾君    弁  護  士 太田 耐造君