○
政府委員(今井一男君) 申上げます。今回の一般官吏の待遇改善は、最も一般官吏と申しましても、認証官以上は全部特別職にな
つておりますが、認証官以上の分につきましては、二千九百二十円ベースの六割増と、それから、いわゆる認証官以外の一般職につきましては、
只今委員長のお話にありましたような十七割二分という数字が使われております。
政府におきましても、
只今委員長の御指摘になりました第十條の
規定は、勿論十分拜承しておる次第でございまして、從いまして認証官につきましては、
裁判官、
檢察官を通じまして、一般と同様六割増の手段を執
つたのであります。ただ
裁判官の判事以下、
檢察官の檢事以下の方につきましては、一部と申すより或いは大部分かも知れませんが、十七割二分に達しない号俸の部分が出ております。この点が恐らく御指摘の一番中心をなすものであると思います。実はこの前第二
國会で御
審議可決頂きました
裁判官の報酬及び
檢察官の給與に関する
法律案では、当時いわば從來の俸給の刻みの頭をそのまま適用いたしまして、例えば五号俸が一万円であれば、四号俸が一万一千円、一万二千円、一万三千円、こうい
つたように等差級数的に刻んで御決定を願
つたのであります。從來の日本の慣例から申しますれば、これがいわば常識的と認められたのでありますが、ただ理論的に考えますと、千円づつ上るということは、決して公平ではございませんので、やはり今
貰つておる本俸に対して、何割上ると同じように、一割なら一割づつ上る、こうい
つた仕組に、いわば等比級数的に上らないというと、昇給としての、昇格としての意義をなさない。こうい
つたような議論が從來もございましたけれども、私共はその議論よりは、前申上げました立場に從いまして、当初現行法を御制定願
つたのでありますが、今回十一月の初めに人事院から勧告案が
政府に示されました。その際に御存じのように、成人
職員二千四百七十円、最高の一万四千五百円を、等比級数の理想曲線で継ぎまして、そうして從來の一般官吏の号俸の仕組をこうい
つたような形に、等比級数の線によ
つて昇給を考えろとい
つたようなことが、強く要請されるようにな
つたのであります。勿論
裁判官につきましては、これは何と申しましても、特別職でございますので、人事院の直接所管の
範囲外にも属しますので、如何ように俸給の表を作りましても、
差支えないわけでございますが、併し
國会の御
意見に、又一般の常識から申しましても、現在におきましては
裁判官と
檢察官とを少くとも、概ね同等に扱うことが適当であるとい
つた建前が確立されておりまするし、且つ又
檢察官は純然たる一般職という
規定にも相成
つておりますので、今回人事院が示されました参考資料の
法律案によりますというと、
檢察官の特別の單行法を廃めて、一般の号俸の方に入れてしまえとい
つたような建前にな
つておるくらいであります。ただ
政府は人事
委員会の勧告を適当を認めませんで、
政府の原案を
提出したような次第でありますから、そうい
つたことから判事の給與につきましては、一番最高である一号、及び一番最低である判事補の六号、これを押えまして、これを一般官吏と同じ高さだけ上げる、
ところがそれも端数の
関係から、これが仮に六号が三千五百円として、十七割二分掛けますと、六千二十円という数字になりましたので、二十円だけ削る。上の方は一万四千円に十七割二分掛けまして二万四千八十円と出ましたので、八十円という数は從來の
関係上好しくないというので、これを削
つて二万四千円としました。
從つて私共は事を好んで下げようというのではないのですが、ここに若干結果的にはちび
つた結果にな
つておりますが、全くそれは他意がないのでありまして、上下の柱は完全に頭を揃えまして、ただその中間を
只今申上げました線に副いまして、等比級数的に列べる。即ち最初が七百円、九百円、千四百円、こういうふうに上
つて行くように直す。ただこれも純粹の等比級数にいたしますと、もつともつとこれは妙な恰好になるのでありますが、そこに從來の線を成るべく尊重する意味におきまして、
関係方面等の意向も酌みまして、こうい
つた妥協的な線に落着かした次第でございます。從いまして、その精神におきまして、決して判事なり
檢察官なりを一般官吏の待遇と別な待遇をしようという頭ではございませんで、全く技術的の観点から甚だ遺憾でありますが、こうい
つた結果が一部出て参
つた。それ以外の何ものでもございませんので、
委員長御指摘の十條に対する考え方につきましては、是非御諒察を願いたいと存ずる次第でございます。
尚現在一般官吏のベースにつきまして、
改正案が一部進行しておるかのような話を
伺つておるのですが、その見透し等は私共無論分りませんが、万一それが変りました際には、無論十條の精神に從いまして、
裁判官も
檢察官も当然その方が上廻
つておれば、それと権衡を取
つた措置は、
政府の責任において考えなければならんことであることは、これは申上げるまでもない
ところと存じます。