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1949-01-07 第4回国会 参議院 法務委員会 閉会後第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十四年一月七日(金曜日)   —————————————   本日の会議に付した事件檢察及び裁判運営等に関する調査  の件(甲府事件に関する件)   —————————————    午前十一時十五分開会
  2. 伊藤修

    委員長伊藤修君) これより檢察並びに裁判運営に関する委員会を開きます。  いわゆる甲府事件について証人の尋問をいたします。丸山幸右衞門さんですか。
  3. 丸山幸右衞門

    証人丸山幸右衞門君) 私丸山幸右衞門でございます。
  4. 伊藤修

    委員長伊藤修君) では先ず宣誓をして頂きます。    〔総員起立証人は次のように宣誓行つた〕    宣 誓 書  良心に從つて眞実を述べ、何事もかくさず、又、何事もつけ加えないことを誓います。        証人 丸山幸右衞門    〔委員長退席理事岡部常委員長席に著く〕
  5. 岡部常

    理事岡部常君) どうぞお掛け下さい……丸山さんはお所はどこですか。
  6. 丸山幸右衞門

    証人丸山幸右衞門君) 私は山梨縣東八代郡相興村南野呂三百九十三番地に居住いたしております。
  7. 岡部常

    理事岡部常君) 職業は。
  8. 丸山幸右衞門

    証人丸山幸右衞門君) 職業財團法人山梨少年農民道場長として、家庭では農業を営んでおります。
  9. 岡部常

    理事岡部常君) 農業の傍ら何か保護事業をやつておるわけですか。
  10. 丸山幸右衞門

    証人丸山幸右衞門君) さようでございます。
  11. 岡部常

    理事岡部常君) お年は幾つですか。
  12. 丸山幸右衞門

    証人丸山幸右衞門君) 五十歳になります。
  13. 岡部常

    理事岡部常君) 本日もう御承知でもありましようが、甲府檢事正官舍敷地問題、或いは法律專門学校事件、或いは少年の町の問題、いろいろございますが、それに関して証人としてお呼びしたわけであります。先程宣誓をなさいましたが、宣誓の上は、それに違反いたしますと処罰されますから、その点は予め御承知置きを願つて置きます。
  14. 丸山幸右衞門

    証人丸山幸右衞門君) よろしうございます。
  15. 岡部常

    理事岡部常君) お伺いいたしますが、只今甲府檢事正池田九郎氏は御承知でございますね。
  16. 丸山幸右衞門

    証人丸山幸右衞門君) 存じております。
  17. 岡部常

    理事岡部常君) どういう関係でお知り合いでございますか。
  18. 丸山幸右衞門

    証人丸山幸右衞門君) 保護團体法によります犯罪少年委託を受けておりますので、甲府の方へ御赴任なさつた節、私の道場を視察に参りまして、そのときに初めて池田檢事正にお会いいたしました。
  19. 岡部常

    理事岡部常君) 保護事業関係だけのお知り合いでございますか。
  20. 丸山幸右衞門

    証人丸山幸右衞門君) さようでございます。
  21. 岡部常

    理事岡部常君) そうすると、あなたの保護事業をお始めになつたのは余程古いことでございますか。
  22. 丸山幸右衞門

    証人丸山幸右衞門君) はあ。私は昭和十九年に始めました。
  23. 岡部常

    理事岡部常君) それまで何か外の保護事業をやつておられたのですか。
  24. 丸山幸右衞門

    証人丸山幸右衞門君) それ前は少年保護司としまして嘱託を受けまして、観察等をやつておりました。
  25. 岡部常

    理事岡部常君) それは余程長い間でございますか。
  26. 丸山幸右衞門

    証人丸山幸右衞門君) それは長い間ではありませんでございました。
  27. 岡部常

    理事岡部常君) 只今少年保護仕事はどういうふうにしてやつておられますか。
  28. 丸山幸右衞門

    証人丸山幸右衞門君) 只今靜岡少年審判所から委託を受けまして、現在は私の所有にかかる土地等に、日常は生徒の勤労意慾を高揚させるために手傳いをさしております。
  29. 岡部常

    理事岡部常君) 何名ぐらい收容しておられますか。
  30. 丸山幸右衞門

    証人丸山幸右衞門君) 收容人員は五十名ぐらいの程度でございますけれども、戰爭中は沢山の人も参りましたんですが、最近いろいろ何かと手許の都合もありまして、現在は七名おります。
  31. 岡部常

    理事岡部常君) 五十名が收容定員でございますか。
  32. 丸山幸右衞門

    証人丸山幸右衞門君) さようでございます。
  33. 岡部常

    理事岡部常君) それが現在七名おる……。
  34. 丸山幸右衞門

    証人丸山幸右衞門君) はあ。
  35. 岡部常

    理事岡部常君) その少年保護事業連合保護会長ですか、檢事正は今……。
  36. 丸山幸右衞門

    証人丸山幸右衞門君) はあ。
  37. 岡部常

    理事岡部常君) やはりその関係は相当密接なものでございましようね。
  38. 丸山幸右衞門

    証人丸山幸右衞門君) 保護会の方も密接な関係はございます。ございますけれども、私たち保護司の職にある者が、縦の連絡よりかも横連絡図つて、お互い研究し合うというような関係で、山梨縣少年保護司会というものを先年設立いたしまして、專ら保護司の諸氏は保護司会中心活動をいたしておりますので、たまたま私に会長をやれというようなことで、それを引受けております。
  39. 岡部常

    理事岡部常君) 檢事正はそれの何か役員になつておられますか。
  40. 丸山幸右衞門

    証人丸山幸右衞門君) 役員は、顧問というような……。
  41. 岡部常

    理事岡部常君) 顧問ですか。
  42. 丸山幸右衞門

    証人丸山幸右衞門君) はい。
  43. 岡部常

    理事岡部常君) そうすると、こちらの折衝余り繁くないわけですか。
  44. 丸山幸右衞門

    証人丸山幸右衞門君) 繁くはありません。
  45. 岡部常

    理事岡部常君) そうすると、あなたの保護事業関係で、役人との折衝は、一番靜岡審判所ですか。それが主ですね。
  46. 丸山幸右衞門

    証人丸山幸右衞門君) はい。
  47. 岡部常

    理事岡部常君) 檢事正とは先程連合保護会長との関係で、土地が狹いことですから、相当私交上にも御関係になるでしようね。
  48. 丸山幸右衞門

    証人丸山幸右衞門君) さようでございます。私は役所へ参りましても、檢事正はカトリックの信者だというようなことで、私は日本キリストの方の関係で、信仰を持つておりますものですから、信仰上のお話はときどきございます。
  49. 岡部常

    理事岡部常君) そうですか、その方では相当深くお交わりですか。
  50. 丸山幸右衞門

    証人丸山幸右衞門君) 別に深くも……多忙なものですから、折々お行き合いしては短時間お話するような機会はありますのでございます。
  51. 岡部常

    理事岡部常君) 一緒に酒食を共にするというような御交際はありませんか。
  52. 丸山幸右衞門

    証人丸山幸右衞門君) ありません。ただ保護司会の総会とか、或いはお出でになつたときにというような、私のところへは前後三回程参りました。
  53. 岡部常

    理事岡部常君) あなたは酒をお上りになりますか。
  54. 丸山幸右衞門

    証人丸山幸右衞門君) 私は酒はたんと頂けないのでございます。
  55. 岡部常

    理事岡部常君) 宗教関係ですか。
  56. 丸山幸右衞門

    証人丸山幸右衞門君) 宗教関係ばかりではありません。体質の関係ですから。
  57. 岡部常

  58. 丸山幸右衞門

    証人丸山幸右衞門君) 先生もさ程の量はお飲みにならないようです。
  59. 岡部常

    理事岡部常君) 一緒に会食するとかいうようなことは余りないわけですね。
  60. 丸山幸右衞門

    証人丸山幸右衞門君) ええ、ありません。
  61. 岡部常

    理事岡部常君) それでも檢事の仕事などで、何か頼みに行くとかいうようなことは、もうできる間柄でございましようね。
  62. 丸山幸右衞門

    証人丸山幸右衞門君) そういうことは私はいたしませんでございます。
  63. 岡部常

    理事岡部常君) そうですか、併しまあこう言うと語弊がありますけれども、少年を保護しておられれば、或いは犯罪を犯した少年を、いわゆる貰下げといつたようなことも、これはありがちのことなんですか、そういうことはございませんか。
  64. 丸山幸右衞門

    証人丸山幸右衞門君) 私はありません。
  65. 岡部常

    理事岡部常君) 話が変りますが、上村文一君を御承知でございますか。
  66. 丸山幸右衞門

    証人丸山幸右衞門君) はい。存じております。
  67. 岡部常

    理事岡部常君) どういう御関係ですか。
  68. 丸山幸右衞門

    証人丸山幸右衞門君) これは私の親戚に、韮崎町という所がございますが、あすこ叶屋という酒屋がございます。そこの番頭上村はやつておりました。
  69. 岡部常

    理事岡部常君) 上村君の御主筋と御親戚ですね。
  70. 丸山幸右衞門

    証人丸山幸右衞門君) さようでございます。
  71. 岡部常

    理事岡部常君) 上村という人はそこで番頭ですか、丁稚ですかから仕上げた人なんですか。
  72. 丸山幸右衞門

    証人丸山幸右衞門君) さようでございます。
  73. 岡部常

    理事岡部常君) どんな人となりでございますか。
  74. 丸山幸右衞門

    証人丸山幸右衞門君) 商人としてなかなか主人思いでございまして、数ない努力家でもありますし、なかなか商才は持つてつたようでございます。
  75. 岡部常

    理事岡部常君) 今はなかなか成功しておられるそうですが。
  76. 丸山幸右衞門

    証人丸山幸右衞門君) 随分成功いたしたようでございます。
  77. 岡部常

    理事岡部常君) そういう方は、前途有望だと見て、主人の方でも引立てたわけですか。
  78. 丸山幸右衞門

    証人丸山幸右衞門君) さようでございます。
  79. 岡部常

    理事岡部常君) そうすると、性質のいい人なんですね。
  80. 丸山幸右衞門

    証人丸山幸右衞門君) はい本当に。
  81. 岡部常

    理事岡部常君) 商賣人としては立派な人ですか。
  82. 丸山幸右衞門

    証人丸山幸右衞門君) 要するに、氣持は竹を割つたよう氣持で、ざつくばらんです。
  83. 岡部常

    理事岡部常君) それでも上村君は、何か戰爭中ですが、葡萄酒の闇をやつたのは御承知でございますね。
  84. 丸山幸右衞門

    証人丸山幸右衞門君) 葡萄酒の闇は存じております。新聞などで見ましたので、私も関係がありましたから、差入れに一度……。
  85. 岡部常

    理事岡部常君) そうですか、そのとき何か上村さんのためにあなた働いておやりになつたのですか。
  86. 丸山幸右衞門

    証人丸山幸右衞門君) いいえ、上村さんのためには……。
  87. 岡部常

    理事岡部常君) 差入れだけでございますか。
  88. 丸山幸右衞門

    証人丸山幸右衞門君) 差入れだけでございます。
  89. 岡部常

    理事岡部常君) 何か檢事局の方に、本人の人格の証明とかいうふうなことはなされたのですか。
  90. 丸山幸右衞門

    証人丸山幸右衞門君) いいえ、絶対ございません。
  91. 岡部常

    理事岡部常君) 事件内容などには触れてお申出に……。
  92. 丸山幸右衞門

    証人丸山幸右衞門君) 内容は、私の方は、その後出ましたので、君間違つたことをしたじやないか、今後そういうようなことをしちやいかないというようなことを言つて戒めたことがありまして……。
  93. 岡部常

    理事岡部常君) 御承知のように、執行猶予になつておりますね。罰金は十万円でございますけれども、懲役の方は執行猶予になつております。執行猶予になるときには大体保証が要るわけです。そういうようなことはあなたはお立ちになつたというような関係はございませんか。
  94. 丸山幸右衞門

    証人丸山幸右衞門君) ございません。
  95. 岡部常

    理事岡部常君) それでも聞くところによりますと、それから後に上村君を檢事正にあなたは引合せたというようなふうに……。
  96. 丸山幸右衞門

    証人丸山幸右衞門君) はあ引合せましたです。
  97. 岡部常

    理事岡部常君) それはその事件の後でございますか。
  98. 丸山幸右衞門

    証人丸山幸右衞門君) 後でございます。
  99. 岡部常

    理事岡部常君) その執行猶予になつたの機会に引合わされたのですか。
  100. 丸山幸右衞門

    証人丸山幸右衞門君) それは何でございます。私が出甲した際に、上村氏が経営しておる映画館に参りまして、いつもより大分沈んだ氣持で、どうも活動館経営もなかなかえらい、これはどうしたもんか、というような非常に沈んだ態度がありまして、君、経済的にそううまいことばかりあるわけはないので、そんなことを、はたでは映画館なんて大分評判がいいが、併し内容はそんなものかね、入つて見て、はたで見るようなものじやないかね、というようなことを私も話しまして、そのちよつと以前に、上村さんの兄さんという方が、これはまあ上村さんと性質ちよつと違うような、本当に眞面目な方でございまして、穗足村という所でございました。穗足村の草刈場というので以て、農村のことでございますから、山に草刈場というのがありまして、そこへ引揚者ですが、戰災者の何ですか、開墾するというようななんで、縣がその何という山だつたですが、そこにまあ入植するというような……、村の人たち柴刈場に入植されても何だが、村でも極力起そうじやないかというような話ができたので、是非一つ自分たちもここに進出したいので計画しておるが、若し丸山さんのところで少年を、極く手すきのときでいいから五、六名貸して欲しい、そうかね、そういうようなところで君たちも何するならばというので、私の方では少年七名、寢具全部携帯しまして、そうして應援に参りましたのです。一ヶ月ばかりお手傳いをしまして何しましたところが、上村さんの兄さんの方が、私にも話がありませんでしたが、靜岡審判所の方へ連絡しまして、独立したいというお話を先さんへ行つて話を付けたらしいのです。そういうようなことがありまして、ああ独立も結構だろう、君も一つ社会のために盡して呉れないか、私は敢えて何もないから、おやりなさい、こう言つて、その團体の交渉をお始めになつたと思います。それは独立は結構だというお話がありましたので、私の方では七人の少年を引取りまして、寢具から何から持つて帰りましたのです。それで私も開設するときに、田部檢事正の御厄介になりまして、何とか名前を付けて受けたいという話から、田部檢事正がそれでは山梨少年農民道場と付けたらいいだろうというようなことがあつたが、君のところでやるならば、私もそういうようなことがあつたから、池田檢事正名前を付けて受けた。どうだ是非一つ私も知らないけれども、檢事正を紹介して欲しい、こういうようなことで、上村さんの経営をするその保護團体名前を付けて貰うようにというので、上村君を紹介いたしましたのです。
  101. 岡部常

    理事岡部常君) 先程映画館行つたとき、上村さんしよげていたというお話でしたね。
  102. 丸山幸右衞門

    証人丸山幸右衞門君) それで映画館のですね、そのときに二階から、それじやもうお帰りになる頃だから、役所も何だし、紹介するから名前でも付けて受けるようにしたらいいだろう。こんなようなことで……。
  103. 岡部常

    理事岡部常君) それで官舍にでも行かれたのですか。
  104. 丸山幸右衞門

    証人丸山幸右衞門君) はあ官舍に。
  105. 岡部常

    理事岡部常君) 近くだから……。
  106. 丸山幸右衞門

    証人丸山幸右衞門君) はあ。そのときに本当玄関口で紹介して帰つて参りました。
  107. 岡部常

    理事岡部常君) 上村君も映画館なんか面白く行かないと言つてしよげていたので、商賣というものはそう面白いことばかりじやないからというようなことで、あなたは慰めてやつたのですか、そのときに何か上村君も儲けた仕事の話でもありませんでしたか。
  108. 丸山幸右衞門

    証人丸山幸右衞門君) はあありません。その後檢事正と知合りとなつたのは、本当のそのとき初めてなのです。私もまだそのときに檢事正と何しましたのは、三、四回の顔合せのときのものでありますから……。
  109. 岡部常

    理事岡部常君) 檢事正赴任後、そう時が経つていないわけですか。
  110. 丸山幸右衞門

    証人丸山幸右衞門君) 経つていなかつたと思います。まあ記憶しておりませんですが、私が上村氏を紹介いたしましたのは、四月の上旬じやなかつたかと思いますが。
  111. 岡部常

    理事岡部常君) そうすると二十二年ですか。
  112. 丸山幸右衞門

    証人丸山幸右衞門君) はあ二十二年だつたと思いますな。
  113. 岡部常

    理事岡部常君) その当時上村氏が経営しておるオリオンパレスという映画館の直ぐ隣が、今度問題になつておる檢事正官舍敷地ですね。あすこと換えて貰つたらいいのだがという話は出ませんでしたか。
  114. 丸山幸右衞門

    証人丸山幸右衞門君) それは出ません。そんな時間もなかつたものですから。
  115. 岡部常

    理事岡部常君) 何か商賣になるのじやないかという考を先生は持つていたのじやないでしようか。そんな氣配は分りませんか。
  116. 丸山幸右衞門

    証人丸山幸右衞門君) そんな氣配は……私は少しも土地問題というようなことは、上村君がどういうように交渉しましたか、或いはどういうようにお話ができましたか、私には或いは祕密のうちに交されたのじやないかと思つております。
  117. 岡部常

    理事岡部常君) そのときには單に保護会の名称の名付親になつて貰おうというので紹介されたのですね。
  118. 丸山幸右衞門

    証人丸山幸右衞門君) さようでございます。
  119. 岡部常

    理事岡部常君) それから玄関で話されたのは、そんな簡單なことだけですか。
  120. 丸山幸右衞門

    証人丸山幸右衞門君) 簡單なことです。時間もありませんし、本当上村氏の方も事件直後で悲観しておりましたときだつたものですから。
  121. 岡部常

    理事岡部常君) そのとき直ぐ名前を付けたわけですか。
  122. 丸山幸右衞門

    証人丸山幸右衞門君) いえ、檢事正もなかなかしぶしぶしておりまして、そうかねと言うくらいの程度で、私は直ぐ帰りました。
  123. 岡部常

    理事岡部常君) そのときには上村氏と檢事正とは知合いの仲なのですか。
  124. 丸山幸右衞門

    証人丸山幸右衞門君) そのときあなたは上村氏というのは、こういう人間だということは無論紹介されたわけなのでしようが、その中に執行猶予がある、罰金は十万円課せられているのだというようなことも紹介なさつたのですか。
  125. 丸山幸右衞門

    証人丸山幸右衞門君) いえ、上村君とはそういうような話もできませんでございます。ただ單純上村君の兄さんもなかなかしつかり者だし、まあこれから上村君も罪滅ぼしにその方へ入つて少年指導でもやつたらというようなことがありましたので、これは執行猶予なんぼで、罰金どのくらいということはちよつと私も本当に存じておりませんものでして、ひどい目に会つたなと言うくらいの程度でおりまして、その点には少しも触れておらなかつたです。
  126. 岡部常

    理事岡部常君) 檢事正上村氏とはそのとき本当初対面のようでしたか。
  127. 丸山幸右衞門

    証人丸山幸右衞門君) 初対面のようでございます。
  128. 岡部常

    理事岡部常君) まだ外にも檢事正に紹介した人があるように聞いておるのでございますが。
  129. 丸山幸右衞門

    証人丸山幸右衞門君) はあ。
  130. 岡部常

    理事岡部常君) そうするとあなたの紹介が一番初めでございますか。
  131. 丸山幸右衞門

    証人丸山幸右衞門君) 初めてなのです。
  132. 岡部常

    理事岡部常君) そうですか。先程ちよつと触れて置きましたが、檢事正官舎敷地を外の土地と交換した問題が、これは山梨のうちに相当社会問題になつておりますから御承知でしようが、それについては、あなた何か仲に立つたとかいうような御関係はございませんですか。
  133. 丸山幸右衞門

    証人丸山幸右衞門君) 私は紹介しただけで……まあ要するに私には本当祕密らしかつたです。
  134. 岡部常

    理事岡部常君) そうすると、上村氏から頼まれたようなことは全然ないわけですね。
  135. 丸山幸右衞門

    証人丸山幸右衞門君) ありませんです。
  136. 岡部常

    理事岡部常君) 上村さんの兄さん慶一と言いましたか。
  137. 丸山幸右衞門

    証人丸山幸右衞門君) はあ慶一と申します。
  138. 岡部常

    理事岡部常君) 先程、慶一さんのお話もちよつとありましたが、慶一君は嘱託保護司をやつておるわけですね。
  139. 丸山幸右衞門

    証人丸山幸右衞門君) さようでございます。あの方は赴任も遅うございまして……。
  140. 岡部常

    理事岡部常君) その関係であなたのところの少年を連れて行つて働かしておつたのですか。
  141. 丸山幸右衞門

    証人丸山幸右衞門君) さようでございます。
  142. 岡部常

    理事岡部常君) それで今度独立自分保護会をやりたい、弟にやらせようということなのですね。
  143. 丸山幸右衞門

    証人丸山幸右衞門君) はあさようでございます。
  144. 岡部常

    理事岡部常君) 全くその敷地問題にはあなたはお口を……お世話したことはございませんですね。
  145. 丸山幸右衞門

    証人丸山幸右衞門君) はあありません。
  146. 岡部常

    理事岡部常君) 相談も受けたことはないですか。
  147. 丸山幸右衞門

    証人丸山幸右衞門君) 相談も受けませんし、上村君自身も、おれはこういう方法で土地問的を云々なんということは、私にもちよつとも洩らしませんし、私が聞いたのは十一月になりまして山梨靜岡主管者会議を私のところで開きまして、そのときに交換ができたとか、できないとかいうことを外の方からちよつと耳にしたので、ああそうかねくらいのところでおりまして……。
  148. 岡部常

    理事岡部常君) そういう御関係ないとして、今社会耳目を少し動かしておる事件ですが、あなたはどういうふうにお考えでございますか。檢事局、殊に檢事正などが民関係になつて、いろいろ社会耳目を聳動しているのですが、どんなふうにお考えですか、これはあなたのお考え言つて頂けば、実はその外に法律專門学校敷地問題、それから少年の町の問題等がございますが、それに一括してでもいいから、あなたの御感想はどんな工合ですか、世の中の評判と比べまして、あなたはどういうふうにお考えですか。
  149. 丸山幸右衞門

    証人丸山幸右衞門君) 大分評判が立つていたし、新聞紙上で賑わしたものですから、私は結局土地問題というようなことは、たまたまその……上村氏がなかなか敏腕を振つて何した。相手が惡かつたなあと、或いは私が上村を紹介する、しないということは別問題で、そういうようなことは、私は眼中にないわけですけれども、相手が惡かつたと、併し上村にしても、これに対する、相当他の土地が、上村土地であるかなかつたか、それは存じておりませんが、とにかくあの繁華街から、檢事正官舎が閑靜な現在の地に何することは、一方的にはこれは官舎としての適地だと、現在のところは官舎としての適地で、今までのところはどうもうるさい場所で、なかなかえらいだろうけれども、結局それには、官舎としての適地で、却つて面積が廣いのでございますから、あの方が國とすればよかつたじやないか。一方又檢事正努力等によつて、國の方も大変助つて、手数も省け、大変助つてよかつたじやないかなあと、こんなふうに官舎移轉だけは考えておりました。
  150. 岡部常

    理事岡部常君) あれは檢察廳から大分離れているのですか。
  151. 丸山幸右衞門

    証人丸山幸右衞門君) 離れております。
  152. 岡部常

    理事岡部常君) どのくらい離れておりますか。
  153. 丸山幸右衞門

    証人丸山幸右衞門君) さようでございます。歩いて二十分ぐらいはかかるんじやないかと思うのですが。
  154. 岡部常

    理事岡部常君) 刑務所の南になりますか。
  155. 丸山幸右衞門

    証人丸山幸右衞門君) さようでございます。眞南でございます。
  156. 岡部常

    理事岡部常君) どのくらい離れておりますか。
  157. 丸山幸右衞門

    証人丸山幸右衞門君) 刑務所とはほんの僅か、一、二町の程度じやないかと思います。
  158. 岡部常

    理事岡部常君) あたりは屋敷町ですか。
  159. 丸山幸右衞門

    証人丸山幸右衞門君) 屋敷町のような所ではありますけれども、まだ檢事正官舎の隣は前通りの方に何か工場がありますが、そこは空地があるのじやないかと思います。
  160. 岡部常

    理事岡部常君) 將來屋敷町にでもなる得る所ですか。
  161. 丸山幸右衞門

    証人丸山幸右衞門君) はあ。
  162. 岡部常

    理事岡部常君) それから專門学校の問題ですね。法律專門学校。それから少年の町の問題なんかについてはどんなお感じですか。
  163. 丸山幸右衞門

    証人丸山幸右衞門君) 警察学校の方も、檢事正としては……。
  164. 岡部常

    理事岡部常君) 警察学校じやないのですよ。法律專門学校です。
  165. 丸山幸右衞門

    証人丸山幸右衞門君) 法律專門学校ですか。法律專門学校、これは大分檢事正もお考えになつて、とにかく警察官將來養成というようなことで、法律知識等を何することは大変結構なことだと、殊に又六ヶ月や半年で、警察官になるということは、なかなかえらいことだろうが、とにかく法律学校において、相当教養を積んで入ることは、優良な警察官養成ということにおいて、目的はいい目的だと、併しこの設立の動機は非常によろしいとも私たちは思つておりますし、一般も何しておりますが。
  166. 岡部常

    理事岡部常君) 問題は、実は寄附問題ですがね。
  167. 丸山幸右衞門

    証人丸山幸右衞門君) 寄附問題は、私はこういうふうに考えておりました。あれは財團法人設立の手続ですか、認可になりましてですか、とにかくその寄附問題は、大変寄附を出し合つた形にして、結局財團法人というようなことで、趣旨は、寄附行爲による趣旨というようなことで、その形であります。皆理事になつているんじやないでしようか。私の方は存じておりませんが、そういうような意味で、單純営利会社とか、檢事正單独の……これは中心ではございましようが、單独に資本をどうというわけでなく、お互いに寄附行爲によるので、設立なさつたんじやないかと思つておりましたですが。
  168. 岡部常

    理事岡部常君) 要するにお聽きしたいことは、実はその寄附という問題は、どこでもやかましい問題でしてね。殊に今回はそれが相当問題になつている。無理やりに寄附させられたとか、迷惑したというような声などはないですか。
  169. 丸山幸右衞門

    証人丸山幸右衞門君) それは……。
  170. 岡部常

    理事岡部常君) あれは曰く附きの寄附だというような噂がありませんか。
  171. 丸山幸右衞門

    証人丸山幸右衞門君) そういう噂は、私は観念的に違いますから、そんなふうにばかり考えて……そうして有力者をお仲間に入れてしまつたんじやないかと思います。
  172. 岡部常

    理事岡部常君) 現在は、建物なんかはできておりますか。
  173. 丸山幸右衞門

    証人丸山幸右衞門君) 建物なんかもできまして、私は見ませんですけれども、屋根も、甲州なんかは壁塗りなんかも込めて葺きますが、これができて……。
  174. 岡部常

    理事岡部常君) オリオンパレスの方に遡つて、あれはどんなふうですか。
  175. 丸山幸右衞門

    証人丸山幸右衞門君) オリオンパレスの東隣りの、旧官舎の跡は、もう建物は相当できました。
  176. 岡部常

    理事岡部常君) じやあ、もうすつかり地割ができまして……。
  177. 丸山幸右衞門

    証人丸山幸右衞門君) 地割ができまして、もう屋根にかかつております。
  178. 岡部常

    理事岡部常君) それからもう一つの、少年の町の方の評判はどうですか。
  179. 丸山幸右衞門

    証人丸山幸右衞門君) 少年の町は、実は……。
  180. 岡部常

    理事岡部常君) あなたのお近くじやないですか。
  181. 丸山幸右衞門

    証人丸山幸右衞門君) 随分離れております。
  182. 岡部常

    理事岡部常君) 併しまあ方向はそつちの方で……。
  183. 丸山幸右衞門

    証人丸山幸右衞門君) 方向は全然違います。
  184. 岡部常

    理事岡部常君) ああ、そうですか。
  185. 丸山幸右衞門

    証人丸山幸右衞門君) 南と西というようなわけで。
  186. 岡部常

    理事岡部常君) それじや余り御関心もありませんか。
  187. 丸山幸右衞門

    証人丸山幸右衞門君) 少年の町は、大分大きい工事のようでございますけれども、併し実現は、あの山の中でどうかなと、檢事正もまだ官職におられてやつているが、保護事業なんということは、並大抵でできることじやないけれども、なかなかなことだろうと思つております。
  188. 岡部常

    理事岡部常君) その程度ですか。
  189. 丸山幸右衞門

    証人丸山幸右衞門君) はあ。
  190. 岡部常

    理事岡部常君) これについて、寄附金の問題やなんか、噂はありませんか。
  191. 丸山幸右衞門

    証人丸山幸右衞門君) 実は私は、法律学校とその少年の町との寄附というような、よくその分け隔てを存じておりませんし……
  192. 岡部常

    理事岡部常君) これにも上村君がやはり相当巨額の寄附をすることになつておりますか。
  193. 丸山幸右衞門

    証人丸山幸右衞門君) これは上村君の方の方向なんです。
  194. 岡部常

    理事岡部常君) これについて、上村君から何か相談を受けたような……
  195. 丸山幸右衞門

    証人丸山幸右衞門君) 全然、上村君は商賣仇というか、私の方は誠にその……。
  196. 岡部常

    理事岡部常君) そうですか、いや、どうも有難うございました。    〔証人淺川隆治郎君著席〕
  197. 岡部常

    理事岡部常君) 淺川隆治郎君ですね。
  198. 淺川隆治郎

    証人(淺川隆治郎君) はあ。
  199. 岡部常

    理事岡部常君) すでに御承知でありましようが、私共では甲府事件と称しておりますが、甲府の檢察廳に関する事件について、証人として來て頂いたので、先ず宣誓をして頂きたい。    〔総員起立証人は次のように宣誓を行なつた〕    宣誓書  良心に従つて眞実を述べ、何事もかくさず、又、何事もつけ加えないことを誓います。         証人 淺川隆治郎
  200. 岡部常

    理事岡部常君) 御宣誓になりました以上は、それに反しますと法律の制裁がありますから、御承知を願います。お住いはどちらでございますか。
  201. 淺川隆治郎

    証人(淺川隆治郎君) 甲府市二十人町六番地でございます。
  202. 岡部常

    理事岡部常君) 御職業は。
  203. 淺川隆治郎

    証人(淺川隆治郎君) 会社の社長等をやつております。
  204. 岡部常

    理事岡部常君) どういう御事業ですか。
  205. 淺川隆治郎

    証人(淺川隆治郎君) 被服の卸の社長並びに製造の社長、それから協同組合の理事長等をいたしております。
  206. 岡部常

    理事岡部常君) お年は幾つでございますか。
  207. 淺川隆治郎

    証人(淺川隆治郎君) 四十九才でございます。
  208. 岡部常

    理事岡部常君) 何か社会事業でもやつておられるのですか。
  209. 淺川隆治郎

    証人(淺川隆治郎君) 社会事業と申す程でもありませんが、一つ学校を経営しております。
  210. 岡部常

    理事岡部常君) どういう学校ですか。
  211. 淺川隆治郎

    証人(淺川隆治郎君) 女子教育と洋裁の指導というような学校をやつております。
  212. 岡部常

    理事岡部常君) 本日お尋ねいたしたい主たることは、もうすでに御承知でありましようが、甲府市における法律專門学校、今設立中の学校でございますが、それとの関係についてお伺いいたしたいと思います。あの法律專門学校との関係でございますね、どういう御関係がありますか。
  213. 淺川隆治郎

    証人(淺川隆治郎君) 私はその財團法人の学校の理事をいたしております。
  214. 岡部常

    理事岡部常君) それはどういう関係理事に御就任になりましたか。
  215. 淺川隆治郎

    証人(淺川隆治郎君) やはり寄附をした者の中から何名かを選んで理事になつておるのです。
  216. 岡部常

    理事岡部常君) 寄附をなさつたのはどういう形でなさいましたか。
  217. 淺川隆治郎

    証人(淺川隆治郎君) ただお金を出して寄附行爲をしたというのみでございます。
  218. 岡部常

    理事岡部常君) それはどういう動機から金を寄附なさいましたか。
  219. 淺川隆治郎

    証人(淺川隆治郎君) それは法律学校というものを拵えて、それでやはり法律の普及であるとか、或いは社会がこんなに險惡になるというと、或いは集團強盗のごときものが出るというようなことを未然に防ぐという意味にもなり、非常にそういうものができることは甲府のためにもなるし、尚縣のためにもなるというようなことからしまして、率先して寄附を申上げたというような次第であります。
  220. 岡部常

    理事岡部常君) どなたか勧誘されたのでございましようね。
  221. 淺川隆治郎

    証人(淺川隆治郎君) そういう話がたまたま出まして、それから率先してみずから進んで……。
  222. 岡部常

    理事岡部常君) 進んでどなたに申出になりましたか。
  223. 淺川隆治郎

    証人(淺川隆治郎君) 檢事正さんだと思います。
  224. 岡部常

    理事岡部常君) 檢事正は前から御存じでございますか。
  225. 淺川隆治郎

    証人(淺川隆治郎君) 前から知つております。
  226. 岡部常

    理事岡部常君) それはどういう関係で御存じですか。
  227. 淺川隆治郎

    証人(淺川隆治郎君) 何か以徳会でございますとか、私、以徳会の理事をしておりますので、そういうような関係でたまたま会合があつてそういう席上でそんな話が出て、非常にいい構造で、極力一つお力添えをしましよう、こんなことからしまして始会をあそこへ置いたということになつております。
  228. 岡部常

    理事岡部常君) お金は幾ら寄附なさいましたか。
  229. 淺川隆治郎

    証人(淺川隆治郎君) 十万円。
  230. 岡部常

    理事岡部常君) その他に敷地寄附されたのですか。
  231. 淺川隆治郎

    証人(淺川隆治郎君) 敷地寄附してございません。代金を頂いて賣ることになつたのであります。
  232. 岡部常

    理事岡部常君) そうすると、その代金というのは一体どのくらいの代金ですか。
  233. 淺川隆治郎

    証人(淺川隆治郎君) 全部で五十何万円ぐらい頂くことになつておりますが、その内寄附した中から十五万円だけ頂いたのであります。
  234. 岡部常

    理事岡部常君) その地價はどんなふうに……。
  235. 淺川隆治郎

    証人(淺川隆治郎君) 地價は成るべく安くあれしようということからしまして、市價の半分という價格でもありませんが、ややそれに近い價格で以て、私の方の土地も非常に以前の安いものでございますから、こういうことが非常に社会事業でいい、こういうふうに考えましたものですから、高く賣つて利益を得るというようなことよりも、これを設立するのはいい趣旨だから、成るべく安く提供しましよう、こういうような考え方からしまして……。
  236. 岡部常

    理事岡部常君) 坪四、五百円ですか。
  237. 淺川隆治郎

    証人(淺川隆治郎君) 四百円です。
  238. 岡部常

    理事岡部常君) そうすると普通七、八百円の土地ですか。
  239. 淺川隆治郎

    証人(淺川隆治郎君) 七、八百円の値打があると思つております。
  240. 岡部常

    理事岡部常君) そうすると現金十万円と大分寄附されましたね。
  241. 淺川隆治郎

    証人(淺川隆治郎君) それは土地はもともと非常に安く買つてつて、以前から持つておる土地でありますから、それを高く賣つて莫大な利益を得ようという考えもありませんし、趣旨がいい趣旨ですから、それに賛同しまして、もともと原價を高く買つたものじやそう参りませんが、坪二十円か十五円で買つた土地ですから安く差上げた、こういうことになつております。
  242. 岡部常

    理事岡部常君) その法律学校ができるために、その土地というものは繁栄いたしますか。
  243. 淺川隆治郎

    証人(淺川隆治郎君) いたします。
  244. 岡部常

    理事岡部常君) その学校ができたために、それに附属する商賣というものができましたろうか。
  245. 淺川隆治郎

    証人(淺川隆治郎君) それはちよつとむづかしいと思います。
  246. 岡部常

    理事岡部常君) そこまで行きませんか。
  247. 淺川隆治郎

    証人(淺川隆治郎君) できませんけれども、町のたれには非常にいい。
  248. 岡部常

    理事岡部常君) 発展策としていいわけですね。学校がそこに決まつたために、地價も騰つたような傾向もございますか。
  249. 淺川隆治郎

    証人(淺川隆治郎君) そういうことはございません。
  250. 岡部常

    理事岡部常君) それ程辺鄙な所ですか。
  251. 淺川隆治郎

    証人(淺川隆治郎君) ちよつと町外れなものですから、学校とか、工場というところにしか向かないと思います。
  252. 岡部常

    理事岡部常君) それからこれは寄附者が、相当の金が要りましようから、何百万円という問題でございますね、そうすると、あなたの勢力でまだ外に寄附者ができましたか。あなたが勧誘して作つたようなこともありますか。
  253. 淺川隆治郎

    証人(淺川隆治郎君) 私からもいろいろ通知を申上げて寄附された方も中にはございますし、お話を申上げた人も多々あります。
  254. 岡部常

    理事岡部常君) 話は違いますが、あなたの借家に池田次席檢事が入つておられますか。
  255. 淺川隆治郎

    証人(淺川隆治郎君) 入つておられます。
  256. 岡部常

    理事岡部常君) それはどういう関係から池田君が入るようになりましたか。
  257. 淺川隆治郎

    証人(淺川隆治郎君) 池田次席さんは、以前はぼろの家でして、棟割長屋におられまして、檢事さんとしての体面上から、社会的から見ても余りいいことではなく、如何にもあばら屋のお住まいであつたものですから、私の以前持つておる家が幸いにも一昨年でしたか空きまして、どこへ貸しても同じでありますから、よろしければお移り下さい、こう申上げまして、それじや幾らかいいくらいの家ですが、やはり良屋ですから、先よりも幾らかいい程度ですが、貸して貰いましようということで……。
  258. 岡部常

    理事岡部常君) 池田次席檢事さんとはその前からお知合いですか。
  259. 淺川隆治郎

    証人(淺川隆治郎君) やはり以徳会の関係とか、いろいろありましてお知合いになりました。
  260. 岡部常

    理事岡部常君) それは御本人からの申出ですか。
  261. 淺川隆治郎

    証人(淺川隆治郎君) 私から申上げたわけであります。よろしければいらつしやいということを申上げたわけであります。
  262. 岡部常

    理事岡部常君) それは幾間ぐらいの家ですか。
  263. 淺川隆治郎

    証人(淺川隆治郎君) 三間でございます。
  264. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 今の時價では家賃は幾らですか。
  265. 淺川隆治郎

    証人(淺川隆治郎君) 先の家賃が五十円でしたが、池田さんにお貸しするときから百円にして頂きまして、百円ずつ毎月頂いております。
  266. 岡部常

    理事岡部常君) それは敷金も何にもなしで……。
  267. 淺川隆治郎

    証人(淺川隆治郎君) 何にもなしであります。私の持つておる長屋は百円が最高でありまして、あとは二十円とか、十五円、六円というような程度になつております。
  268. 岡部常

    理事岡部常君) そうすると適正の賃貸價格じやないようですね。
  269. 淺川隆治郎

    証人(淺川隆治郎君) 二倍半の申請をしまして、一月から二倍半頂くことになつております。
  270. 岡部常

    理事岡部常君) そうすると幾らになりますか。
  271. 淺川隆治郎

    証人(淺川隆治郎君) 二倍半と申しますと、池田さんのところは二百五十円ぐらい頂けばいいと思います。二十円なら五十円頂くようになると思います。
  272. 岡部常

    理事岡部常君) そうすると今の百円ならば非常に安いというわけではないのですか。
  273. 淺川隆治郎

    証人(淺川隆治郎君) 安いというわけではないのです。ちよつと百円頂くことは心苦しかつたのですけれども、まあ百円取つて貰わなければ困るという御意思で、それじや頂きましようということで……。
  274. 岡部常

    理事岡部常君) それはきちんきちんと入つておりますか。
  275. 淺川隆治郎

    証人(淺川隆治郎君) 入つております。
  276. 岡部常

    理事岡部常君) 今尚住んでおられますか。
  277. 淺川隆治郎

    証人(淺川隆治郎君) 住んでおります。
  278. 岡部常

    理事岡部常君) 何か世間ではあなたの借家に住んでおるというような関係で、何かあなたに事件でもあつたときには、それが役に立つだろうというような、いろいろ付度もするようですが、それよりもあなた自身がいろいろな闇でもやつておるのだろうというような噂を随分立てられておるように思いますが、それについてはどんなふうですか。
  279. 淺川隆治郎

    証人(淺川隆治郎君) 私はそういうことは全然感じておりません。曾つて池田さんがおられた先の長屋にも家主があたつたのですから、借家をするときには家主が付いておるわけですから、私が貸してもそういうことを言われ、他の人が貸してもそういうことは言われると思います。そういうことは歯牙にかけておりません。
  280. 岡部常

    理事岡部常君) 昨年羊毛事件とか何とかいうものが起つたときに、疑いをかけられたことはございませんか。
  281. 淺川隆治郎

    証人(淺川隆治郎君) そんなことがありましたけれども、私は組合の一理事ですから、ただ公平に理事理事としての意見を述べて、その組合の運行をよくするという意味において、常に自分としては正しい意見を述べておる関係上、まあ非常に理事会などでも重要視されておりまして、そうしてその運行をやつておるだけでございまして、外に專務理事がありまして、常にその業務に就いておりますもんですから、私はただ組合の運行だけを皆樣の御相談に與かるということだけございます。
  282. 岡部常

    理事岡部常君) あなたの本來の御家業とは関係ないことですか。
  283. 淺川隆治郎

    証人(淺川隆治郎君) 関係ありません。
  284. 岡部常

    理事岡部常君) 羊毛は織物とは別になつておりますか。
  285. 淺川隆治郎

    証人(淺川隆治郎君) 羊毛は山梨縣で貰いまして、それを織物にしまして、織物、或いは何と言いますか、メリヤス製品にいたしまして、それを販賣するということになつておりまして、組合は運行しております。その織物に織つたものを私たちの縣下に四十何ヶ所紡績工場がございまして、これで加工いたしまして、そうして正常ルートに乘せて流しておる、こういうことになつております。
  286. 岡部常

    理事岡部常君) その間に何か不正のことでもあつて犯罪事件でも起すとかいうことはございませんか。
  287. 淺川隆治郎

    証人(淺川隆治郎君) ございません。
  288. 岡部常

    理事岡部常君) 何かそういうことで嫌疑をかけられて、檢察の手、或いは警察の手が延びたということはございませんか。
  289. 淺川隆治郎

    証人(淺川隆治郎君) ございません。
  290. 岡部常

    理事岡部常君) 世間ではそういう噂をしておるんではありませんか。
  291. 淺川隆治郎

    証人(淺川隆治郎君) そういうことを言われましても、私は問題にしておりません。曾て縣会などで非常に騒ぎましたけれども、私の方で逆襲に出て、終つたようなことになつております。安定本部の方で調査されまして、これは間違いない、むしろ表彰状を出して貰うべきことだということを私は申上げたくらいであります。正しく処理をしております。
  292. 岡部常

    理事岡部常君) 噂が出たときに、何かあなたの方の在庫品か何かの盗難事件が起つたとかいうことを聞いておりますけれども……。
  293. 淺川隆治郎

    証人(淺川隆治郎君) その物とは違いまする物を盗まれた覚えがあります。
  294. 岡部常

    理事岡部常君) あなたが却つて被害者であつたということが証明されたということも聞いておりますが、そうでございますか。
  295. 淺川隆治郎

    証人(淺川隆治郎君) そうでございます。
  296. 岡部常

    理事岡部常君) 檢事正とはよく御交際なさつておりますか。
  297. 淺川隆治郎

    証人(淺川隆治郎君) やはり先程申上げるような、いろいろの会合がございますので、いろいろ席上でお目にかかりまして、よく存じ上げております。
  298. 岡部常

    理事岡部常君) 檢事正関係のいろいろの仕事寄附をなさつておられますか、それら法律学校以外に……。
  299. 淺川隆治郎

    証人(淺川隆治郎君) 法律学校以外には、瑞牆山少年の町というものを拵える。それは寄附はまだどこからも一銭も受けておりません。全部出資になつております。私のみではなく、あと二、三の方が出資されまして……。
  300. 岡部常

    理事岡部常君) あなたも出資者ですか。
  301. 淺川隆治郎

    証人(淺川隆治郎君) 出資者でございます。
  302. 岡部常

    理事岡部常君) 寄附ではありませんか。
  303. 淺川隆治郎

    証人(淺川隆治郎君) 寄附ではありません。
  304. 岡部常

    理事岡部常君) 池田さんは寄附であるように言つておられますが、出資というのは幾らですか。
  305. 淺川隆治郎

    証人(淺川隆治郎君) 私は百五十万円銀行から借りまして、それを貸付けてあるという形になつております。私が土地建物などを担保に入れまして、私が銀行から借りまして、その金を少年の町の方へ貸付けてある。
  306. 岡部常

    理事岡部常君) それは返す見込がありましようか。
  307. 淺川隆治郎

    証人(淺川隆治郎君) あると思います。
  308. 岡部常

    理事岡部常君) 百五十万円でどれくらいの利子ですか、一年に……。
  309. 淺川隆治郎

    証人(淺川隆治郎君) 私は二銭八厘で貸付けてありますから、二銭八厘だけ頂けばいいと思つております。
  310. 岡部常

    理事岡部常君) そうすると幾らになりますか。
  311. 淺川隆治郎

    証人(淺川隆治郎君) 大体計算しまして、一万円くらいの利子になりますか。
  312. 岡部常

    理事岡部常君) 月にですか。
  313. 淺川隆治郎

    証人(淺川隆治郎君) はい。もつとになりますか、一万二、三千円になりますか。
  314. 岡部常

    理事岡部常君) 一年で十二、三万円ですか。
  315. 淺川隆治郎

    証人(淺川隆治郎君) はい。
  316. 岡部常

    理事岡部常君) 三年も四年もかかつたら大変な利子になるでしよう。
  317. 淺川隆治郎

    証人(淺川隆治郎君) そんなに長く掛かるということはないと思います。それを漸次二十万円に減らし十万円に減らして頂くというように、漸次額を低くして頂くように考えております。
  318. 岡部常

    理事岡部常君) あなたのお見込で、少年の町はそんなに收入が上りますか。
  319. 淺川隆治郎

    証人(淺川隆治郎君) 私は上ると思います。
  320. 岡部常

    理事岡部常君) どういう仕事をすれば上るのですか。
  321. 淺川隆治郎

    証人(淺川隆治郎君) 製材とか、木工品を拵えるとか、或いは青果物の栽培、或いは酪農事業、緬羊の飼育というようなことをしますれば、そんなに惡い、損のいつて困るような事業ではないと私は思つております。
  322. 岡部常

    理事岡部常君) あなたは事業をやつておられますから、そういうお見込が付き易いと思いますが、先程外の方から聽いたところによると、どうもお役人仕事で、一体うまく行くかどうかという疑念を持つておられる。
  323. 淺川隆治郎

    証人(淺川隆治郎君) これは私にやれというお話でございましたが、私も非常に忙しい体で、受けてもどうも精神の入らん仕事は駄目だからと言つて、私はお断わりして、まだそのままになつておりますが、どうか私に入つてつて呉れ、淺川、君が一つ理事長になつてつて呉れというお話がありましたけれども、そんな仕事をしましても、どれもこれも半端になりますから……。さもなければ、自分の身代りになる者を入れて呉れ、そうしてあなたの考える通りにこれをして、よく仕上げて呉れというお話がありました。ですけれども、なかなか適任者も見当りませんので、ぐずぐずした形になつております。
  324. 岡部常

    理事岡部常君) 今尚御関係になつておるのですか。
  325. 淺川隆治郎

    証人(淺川隆治郎君) やつております。
  326. 岡部常

    理事岡部常君) 今後も世話して行こうというお考でございますか。
  327. 淺川隆治郎

    証人(淺川隆治郎君) はあ。
  328. 岡部常

    理事岡部常君) あなた、宗教は何をお信じですか。
  329. 淺川隆治郎

    証人(淺川隆治郎君) 私は日蓮宗です。
  330. 岡部常

    理事岡部常君) そうすると、池田さんのカソリックとは大分離れておますね。
  331. 淺川隆治郎

    証人(淺川隆治郎君) カソリックの方も多少本も読んでおりますもんですから、宗従でないというだけで、精神的には多少感ずるところもあります。
  332. 岡部常

    理事岡部常君) 池田さんは大分熱意を入れてやつておるようですか。あなた、どういうようにお感じになつておりますか。
  333. 淺川隆治郎

    証人(淺川隆治郎君) まあいいことですから、できるだけあれをいいものに仕上げて行くことが社会のためにいいと思つております。
  334. 岡部常

    理事岡部常君) 山上に大きな十字架を立つて夜でもよく見えるようにするとか、聖地を選んで自分の墓場を作ろうということも考えておられるそうですが、そんなことは述懷でお聞きになつたことはありますか。
  335. 淺川隆治郎

    証人(淺川隆治郎君) そんなことは聞いておりませんが、大体私の手腕によつて一ついいもんにしろという話も、先程申上げた通りあつたしするもんですから、御自分考えはそうかどうか私は分りませんけれども、私の考えはあれを皆で盛り上げて、いいもんにしようという考えより外に何もないもんですから……。
  336. 岡部常

    理事岡部常君) じや、どうも有難うございました。御苦労さん。    〔証人鈴木壽一君着席〕
  337. 岡部常

    理事岡部常君) 鈴木壽一君さんですか。
  338. 鈴木壽一

    証人(鈴木壽一君) そうです。
  339. 岡部常

    理事岡部常君) 我々のところで、いわゆる甲府事件と称するものを調査するので、証人になつて頂くことになりました。先ず宣誓をして頂きます。    〔総員起立証人は次のように宣誓を行なつた〕    宣誓書  良心に從つて眞実を述べ、何事もかくさず、又何事もつけ加えないことを誓います。         証人 鈴木 壽一
  340. 岡部常

    理事岡部常君) 宣誓なつた上は、それに反しますると、法の制裁を受けますから、予め承知しておられますように……。もう既に御承知でありましようが、甲府の檢察廳に関して、敷地問題とか、或いは法律專門学校の問題、少年の町の問題、こういう三つの事件があるのでありますが、それについてお尋ねしたい、先ず第一に、上村文一君を御承知でございましようか。
  341. 鈴木壽一

    証人(鈴木壽一君) ええ、知つております。
  342. 岡部常

    理事岡部常君) いつ頃から御承知ですか。
  343. 鈴木壽一

    証人(鈴木壽一君) 一昨昨年になりますか、一昨年……ちよつと記憶がなくなりましたが、上村文一事件がありましたその時から。
  344. 岡部常

    理事岡部常君) あなたが甲府地檢の経済係の檢事をやつておられる時からの知合いですか。
  345. 鈴木壽一

    証人(鈴木壽一君) いいえ、そうではありません。私甲府に行つたのは一昨年の一月下旬で、その時は経済係檢事ではないのです。
  346. 岡部常

    理事岡部常君) ではそれは普通の事件を扱つておられたのですか。
  347. 鈴木壽一

    証人(鈴木壽一君) そうです。勿論普通の事件を扱つていても、経済事件は割当てられることがありますから、そういう関係で被疑者として知つたわけです。
  348. 岡部常

    理事岡部常君) その時に経済係の檢事でなくて、経済事犯をお扱いになつたわけですか、実際に。
  349. 鈴木壽一

    証人(鈴木壽一君) ええ、そうです。
  350. 岡部常

    理事岡部常君) その時からの知合いですか。
  351. 鈴木壽一

    証人(鈴木壽一君) ええ、そうです。
  352. 岡部常

    理事岡部常君) その時はどういうふうな事件でしたか。どういうふうに処理されましたか。
  353. 鈴木壽一

    証人(鈴木壽一君) 事件内容葡萄酒の闇事件つたと思います。数量等詳細なことはすでに忘れましたけれども、つまり葡萄酒を高く賣つたという價格違犯だと思います。
  354. 岡部常

    理事岡部常君) それで檢事はどういうふうに求刑をなさいましたか。
  355. 鈴木壽一

    証人(鈴木壽一君) 求刑は懲刑十ヶ月でしたかな。それから罰金十万円でした。罰金十万円の方は覚えておりますが、懲役の方は十ケ月でしたか、八ケ月でしたか、そういう求刑をしました。
  356. 岡部常

    理事岡部常君) はあ、それで判決は。
  357. 鈴木壽一

    証人(鈴木壽一君) 判決は懲役刑の方は求刑の懲役刑の言渡しがあつて、三年間の執行猶予、それから罰金の方はそのまま十万円。
  358. 岡部常

    理事岡部常君) はあそうですか、その罰金はどうなりましたか。
  359. 鈴木壽一

    証人(鈴木壽一君) 罰金は納まつたと思います。
  360. 岡部常

    理事岡部常君) それ以來はどういう関係で交際しておられますか。
  361. 鈴木壽一

    証人(鈴木壽一君) 交際というのは別にないのですけれども。
  362. 岡部常

    理事岡部常君) ございませんか。何でも上村氏は、それから保護事業を始めているようですね。その保護事業を始めたことについては何か御交渉はありませんか。
  363. 鈴木壽一

    証人(鈴木壽一君) 始めたことについては別段知りません。
  364. 岡部常

    理事岡部常君) 何か御相談ありませんか。
  365. 鈴木壽一

    証人(鈴木壽一君) 別にありません。
  366. 岡部常

    理事岡部常君) 保護事業については何か御相談に預かつたようなことはありませんか。
  367. 鈴木壽一

    証人(鈴木壽一君) 別にありません。
  368. 岡部常

    理事岡部常君) そうすると、それ以來はただ顏見知りという程度だけですか。檢察廳には随分出入するのですね。それだけでなく実は甲府檢事正官舎のいわゆる交換問題ということについては、随分檢事局とは密接なる関係に立つているわけですが、その間においてあなたは何か交渉はありませんか。
  369. 鈴木壽一

    証人(鈴木壽一君) 私と直接交渉というのはありません。ただ上村の建てた家に現在住んでいる、建てた官舎に住んでいるという、そういう関係です。
  370. 岡部常

    理事岡部常君) それだけですか。上村氏が保護事業家になり、又更に官舎移轉問題、新築問題等関係するようになつてから、檢察廳とは非常に密接な関係に立つているわけですね。それで現在檢察廳全体、或いは檢事正とはどんなふうな関係になつておりますか。あなたの御覽になつたところで一つ言つて頂きたいと思います。
  371. 鈴木壽一

    証人(鈴木壽一君) 別段どうということもないですね。大体保護事業上村の兄貴がやつてつたと思うのですが、ずつと前から。それで実際の保護事業を弟の文一がやつていた。そんな関係が前からあつたのじやないですかね。それで私が事件を扱つた以前から、上村自分名前ではなくて、兄貴の名前保護事業に從事して実際の仕事をやつていたというふうに記憶していますが。
  372. 岡部常

    理事岡部常君) 先程の檢察廳との関係はそう大して深くないようにおつしやいましたけれども、この官舎問題というものも、相当客観的には大きい問題であるように思います。又法律專門学校の問題、もう一つは少年の町の問題ということも、これは相当地方としては大きい問題ではないかと思います。殊にいろいろ新聞種になつている或いは社会の噂になつているという点から見ると、そう軽視できないように思うのですが、同じ檢察廳内におられて、そういうふうに軽くお考えになつておるのですか、本当に。
  373. 鈴木壽一

    証人(鈴木壽一君) いや、軽く考えておるというわけではありません。併し世間がこれをどういうふうに見ておるかということは、むしろ新聞種になつたがために、その世間の注視の的になつておるというふうに考えられます。
  374. 岡部常

    理事岡部常君) 檢察廳本來の仕事としては当り前のことをやつておられると思いますか。
  375. 鈴木壽一

    証人(鈴木壽一君) 檢察事務そのものは別段何の動搖もしませんし、それから法律專門学校とか、少年の町とか、そういつた問題は実は私は知らないのです。官舎の換地の問題も、これも私は知らないのです。ただ受益者である、受益者と言いますか。とにかくその官舎におるのですから、そういう関係だけで他には何の関係もありません。
  376. 岡部常

    理事岡部常君) 併し世間の噂の中に入つておられるのではないですか、あなたは。
  377. 鈴木壽一

    証人(鈴木壽一君) 私は別段……勿論檢察陣として檢事正がいろいろなことを言われますから、檢察廳全体いろいろなことを言われる、その一人であるということにはなるかも知れません。それはまあ事務官でも同じことだろうと思いますが、特に私がその事件関係したということはないわけです。
  378. 岡部常

    理事岡部常君) その事件に関しては全然無関係でいらつしやるのですか。
  379. 鈴木壽一

    証人(鈴木壽一君) そうです。
  380. 岡部常

    理事岡部常君) 併し問題になると、どうもこれはやり方がまずかつたというようなことはお考えになりますか。
  381. 鈴木壽一

    証人(鈴木壽一君) そのやり方はどういうやり方をしておるかということを私は知りませんから、別段その……いろいろなことを新聞では書いていますが、それに対して又檢察廳としては、書くことは商賣ですから一向差支えないといつたような態度をとつておるわけです。
  382. 岡部常

    理事岡部常君) あなたは檢事を何年おやりになつておりますか。
  383. 鈴木壽一

    証人(鈴木壽一君) 八年ぐらいになりますか。
  384. 岡部常

    理事岡部常君) 從前は檢察廳にはこんな問題はありませんでしたね。
  385. 鈴木壽一

    証人(鈴木壽一君) こういうことを問題にされる事態がなかつたと言う方が、むしろ適当ではないかと思います。
  386. 岡部常

    理事岡部常君) あなたは今までお勤めになつたところで、檢事正なんかがそういう仕事をされたことがありますか。
  387. 鈴木壽一

    証人(鈴木壽一君) 少年の町とか、法律專門学校とかいうようなことはありません。併し保護事業というようなものは大分やつていたようです。そりでまあ保護事業というものは寄附といつたようなものは当然伴なつて來る。だから余り檢事正寄附を集めてはまずいのではないかといつたようなことは、その当時から、つまり戰前から言われていた。併し実際保護事業というものは國家で以て金を出さないのですから、結局篤志家の寄附を仰がなければならないわけで、而もその保護事業はやれというようなことになつておりますから、檢事正の責任においてやらなければならない。そういうことで、まあ差支えないというようなことになつていたようです。そういうことも問題にされなかつた。それが最近になつてとかく問題にされるというのは、結局社会情勢が変つて來たというようなことだろうと思います。やつておること自体は前からやつていたことと同じようなことをしておるというふうに思います。
  388. 岡部常

    理事岡部常君) 敷地の問題のようなものは実は新憲法下において初めて生れる問題なんですね、あなたも御承知でございましようが、檢察廳はそういう会計事務は扱わなかつたわけですね。
  389. 鈴木壽一

    証人(鈴木壽一君) はい。
  390. 岡部常

    理事岡部常君) 裁判所がやつておりましたね、その新らしい問題がここにできて來たわけですね、それについてはどんなふうに思つておりますか、敷地問題ですね、交換するとか、あなたが住まつておられる家を或る個人から寄付させるということから問題が起つておるわけですね。それについてどんなふうにお考えですか。
  391. 鈴木壽一

    証人(鈴木壽一君) それについては私としては非常に有難いということしかないわけです。
  392. 岡部常

    理事岡部常君) それはまあ個人的ですね、併し公にとにかく役人として、又檢察陣営の一人としてどういうふうにお考えになりますか。
  393. 鈴木壽一

    証人(鈴木壽一君) それに絡まつて犯罪があつたとかいつたようなことは、これは別ですけれども、別段の不正がないということならば結構なことだと思います。
  394. 岡部常

    理事岡部常君) それは國有財産法とか或いは会計法とか、或いは罹災土地の特別の法令などがありますね、そういうものをすつかり考慮に入れての話しですか。
  395. 鈴木壽一

    証人(鈴木壽一君) そういう方面がどういうふうになつておりますか。具体的にそういうものをよく知らないものですから、どういうふうに行われたか知りませんから、それは分りませんが、そういう関係が適法に行われておるものなら差支ないことだろうと思います。
  396. 岡部常

    理事岡部常君) そういうふうなことについて、檢察廳の中で何か具体的な問題に触れて御研究にならなかつたでしようか。
  397. 鈴木壽一

    証人(鈴木壽一君) それは、私たちとしては檢事正のやつておることですから、別段私たちが容喙する必要もないし、大体そういう暇がありませんから、檢察事務は実に忙しいですから、現在……。
  398. 岡部常

    理事岡部常君) そんな御相談は全然なかつたのですか。
  399. 鈴木壽一

    証人(鈴木壽一君) 全然ありません、私に対しては……。
  400. 岡部常

    理事岡部常君) まあそういうふうな、いろいろな問題の渦中に長官が投じておるときに、やはり部下におられる方なら心配して助言をされるとか、進言をされるとかいうようなことがあるように思われますが、ありませんか。
  401. 鈴木壽一

    証人(鈴木壽一君) 全然ありません。
  402. 岡部常

    理事岡部常君) あなたなさろうと思わなかつたか、タッチしない方がいいと思われたのですか。
  403. 鈴木壽一

    証人(鈴木壽一君) これは、むしろ檢事正を信用しておりますから、そういう職務はむしろ次席檢事がやるべきであつて、我我まあ平檢事はやらないでもいいというふうな考え方をしておつたわけです。
  404. 岡部常

    理事岡部常君) それで次席檢事とはそういうことでお話なつたことはありませんか。
  405. 鈴木壽一

    証人(鈴木壽一君) ありません。
  406. 岡部常

    理事岡部常君) 遡りますが、その当時の檢事諸君の宿舎は非常にお困りになつてつたようですが、その状況を、実際のあなたの体驗を……。
  407. 鈴木壽一

    証人(鈴木壽一君) 私自身が先程申上げたように、一昨年の一月の下旬に赴任したわけです。その当時は、家が勿論ない。私は甲府から東京へ轉任した人と入れ代つたわけですが、私それまで南方にいたわけです。それでまあ帰つて來て、発令になつて復職したわけです。私の家は東京にあるわけです。ところがそれは非常に手狹までして、親や兄弟がありますから、甲府の人とその家を取換えるということができない、そこでその甲府の人も家族を置いて、單身アパートに住むということになつたわけです。私も結局單身赴任して旅館住いをするということになつたわけです。大体家がないのに、そんな人事をすること自体が馬鹿げておるというふうに私たちは思つたわけですけれども、その行つた当時一ケ月ばかりは旅館に泊つてつて、そうして家を探したわけです。ところが勿論なかなかない。ところがやつと警察の司法主任が探して呉れた、その探して呉れた家というのが、役所から歩いて二十五分くらいの所ですが、先ず一口で言えば場末ですね、長屋なんです。土手下の、風が吹くと土手の砂がぱつとかかつて來るような所でして、低いのです。それで五軒長屋であつて、私が借りることになつたのは一番端つこの家なんですが、隣りは植木屋さん、その次がブリキ屋さんです。その次が駄菓子屋さんです。それから一番向うの端が放送局に勤めているとかいう人です。それでがらつと開けると直ぐ八疊の間がありまして、その向うが四疊で、その向うが台所なんです。それだけの家なんです。そういう……
  408. 岡部常

    理事岡部常君) それは以前からある家ですか。戰爭前から……。
  409. 鈴木壽一

    証人(鈴木壽一君) ええ、戰爭前からです。長屋です、つまり。これは荒川という川の向うにあるものですから焼けなかつたのです。それで、そこをどうだと言われたのですけれども、まあ環境としては非常に惡いわけなんです。勿論こんな時代でなければ檢事の住むような家じやないわけです。併し外にありませんから、しようがないからそれを借りて、まあ女房なんかも連れて來てそこに住まつていたわけです。それから私の経験はそんなものですが……。
  410. 岡部常

    理事岡部常君) 外の方は。
  411. 鈴木壽一

    証人(鈴木壽一君) 後藤檢事というのが又私のあとから赴任しま來ました、これも勿論家がないのです。それで後藤檢事に言わせると……私は実際に見たわけではないのですけれども、傳聞ではありますけれども、厩の二階というのですが、どんな所だか分らないのです。私自身が見たのでありませんから、何でも板の間でもつて、疊が敷いてあるのは端つこの方だけであるというようなことで、寒くてしようがないと言つておりました。これは間もなくそこを引拂つて普通の宿屋に一間を借りて、現在は谷村の方に行つて、谷村の官舎にいますけれども……それから私の前にすでにおつた石川檢事ですね、これはとにかくその当時一軒の家を借りておつたのです。ところが最初のうちは障子だけでもつて、戸がないとかいうのですね。それであそこは泥棒に二回ばかり見舞われております。まあ環境が余りよくない場所であつて、周囲にそういう犯罪者や何かがいた所ですから、そういうことになるのです。
  412. 岡部常

    理事岡部常君) じや檢事諸公皆がお困りだつたわけですね。
  413. 鈴木壽一

    証人(鈴木壽一君) 勿論そうです。
  414. 岡部常

    理事岡部常君) それで一体家賃はどのくらい出しておつたのですか、その当時。
  415. 鈴木壽一

    証人(鈴木壽一君) 私は実は安いのです。停止價格でやつて呉れということで頼みましたから……私自身の家は十円だつたですかなあ。これは余り今の價格としちや安いじやないかと言つたところが、外の隣りなんかも皆そうなんですよということで、その隣りや何かも昔からずつと住んでいる人ですから十円にして貰つていましたけれども……。
  416. 岡部常

    理事岡部常君) 岸川檢事のは一軒の家になつていますから相当高かつたでしよう。どのくらいですか。
  417. 鈴木壽一

    証人(鈴木壽一君) 外の人のはちよつと知りません。
  418. 岡部常

    理事岡部常君) 今の官舎の料金は少しは出しておられるのですか。
  419. 鈴木壽一

    証人(鈴木壽一君) あれはまだ決まつておりません。
  420. 岡部常

    理事岡部常君) 決まらない。義務官舎じやないから金は幾分か出さなければいけないでしようね。
  421. 鈴木壽一

    証人(鈴木壽一君) 出すことになるだろうと思いますが、まだ決まつておりません。
  422. 岡部常

    理事岡部常君) 檢事正官舎は額はどのくらいですか。
  423. 鈴木壽一

    証人(鈴木壽一君) あれは前からあつたのですから……よく知りませんが。
  424. 岡部常

    理事岡部常君) 皆さんお困りになつてる状況は分りました。有難うございました。もう一つ序でですからお伺いします。昨年羊毛事件というのが起つたのですが、これは経済事件で、あなたは御承知ないですか。
  425. 鈴木壽一

    証人(鈴木壽一君) 羊毛事件というのは檢察廳の問題になつたんじやなくて、むしろ縣の……。
  426. 岡部常

    理事岡部常君) 縣の経済……。
  427. 鈴木壽一

    証人(鈴木壽一君) 不当財産取引委員会ですか、あれの問題になつたわけです。
  428. 岡部常

    理事岡部常君) そうですか。檢察の方には無関係ですか。
  429. 鈴木壽一

    証人(鈴木壽一君) 私の方には直接関係ありません。ただ不当財産特別委員会が発足したときに、私も呼ばれました。それで委員会に出席したというか、懇談会に、委員会が終つた後で出席したわけです。そのときに檢察廳の立場として、どう思うかという話があつたのです。私の方としては、特殊財産の処理ということを相当疑問を持つていたものですから、捜査とまで行かないでも、その前提として調査をやりたいという意向は持つていたわけです。ところが非常に外の事件に追われまして、その調査ができないと言つたような状態であつたから、そういうことを不当財産委員会でもつて取上げて調査なされるならば大いに賛成だ、一つやつて下さいというようなことを言つたわけです。
  430. 岡部常

    理事岡部常君) その程度ですか。
  431. 鈴木壽一

    証人(鈴木壽一君) そうです。
  432. 岡部常

    理事岡部常君) その内容余りよく御存じない、又関係者なども御存じないのですか。
  433. 鈴木壽一

    証人(鈴木壽一君) 知りません。いわゆる羊毛事件は……。ただ私の取扱つた事件で羊毛というのがありますが、それはやつぱり特殊物件です。
  434. 岡部常

    理事岡部常君) 羊毛事件について淺川隆治郎氏なんかも関係したもののように世の中に傳わつたらしいのですが、そういうことはお聞きになりませんか。
  435. 鈴木壽一

    証人(鈴木壽一君) 淺川氏もあのときに名前が出たでしようか。
  436. 岡部常

    理事岡部常君) それからもう一つ承わりたいのですが、今まで出ておる檢事、檢察廳関係寄附金の募集、それは実際檢察の運営について妨げになるようなことは、今までのところありませんか。
  437. 鈴木壽一

    証人(鈴木壽一君) 私自身の経驗としてはありません。
  438. 岡部常

    理事岡部常君) 今までの寄附者は、相当いろいろ名前を上げておりますが、相当経済事犯なんかに関係しそうな人の名前が見えますが、將來どうでしようか。
  439. 鈴木壽一

    証人(鈴木壽一君) 今の有力者というような人は皆そうでしようね。
  440. 岡部常

    理事岡部常君) そんな危險まで冒して寄附金を募集するのはどうでしようか。
  441. 鈴木壽一

    証人(鈴木壽一君) 特にそれは危險だというのなら差控えるでしようが、そういうことせなかつたでしよう。
  442. 岡部常

    理事岡部常君) その点は、檢事正の人格をあなたは信頼しておられるというわけですね。
  443. 鈴木壽一

    証人(鈴木壽一君) そうです。
  444. 岡部常

    理事岡部常君) 一般的には、どうも檢察陣営がそういうものに足を踏入れるのはいかんように思いますが、どうでしようか。
  445. 鈴木壽一

    証人(鈴木壽一君) 結局そうすると仕事ができないのじやないでしようか。そういう少年の町を作つて見ようと思つたところで、金の出所がないわけですから……或いはそういう少年の町とか、法律学校とかいう問題でなしに、一般の保護事業といつたようなこと、これは將來は家庭裁判所などが大分関係するんでしようけれども、從來はやれということを言われておつて、而も金はちよつとも呉れないわけですから、結局寄附というようなことになるのは、止むを得ないのじやないかというふうに思います。
  446. 岡部常

    理事岡部常君) 從前あなたは、檢事正がそういうことをやつておられるのは、どこどこで御覽になりました。
  447. 鈴木壽一

    証人(鈴木壽一君) 一番最初問題にしたのは福岡です。これは司法官試補の時代で、昭和十四年頃です。福岡では檢事正がいつもいないで、次席が代つてつてつた檢事正寄附で歩いておる。それはまずいじやないかというようなことを、我々は言つたことがある。
  448. 岡部常

    理事岡部常君) その当時の檢事正はどなたですか。
  449. 鈴木壽一

    証人(鈴木壽一君) あれは何と言いましたかね。岐阜の檢事正などをやつていた人で水田正之さんです。
  450. 岡部常

    理事岡部常君) それから福岡とどこですか。
  451. 鈴木壽一

    証人(鈴木壽一君) あとは余り知りません。そのときに、そういうことをやるのかなあと、私は当時の檢事局関係した一番最初ですから、そういう感じを持ちました。
  452. 岡部常

    理事岡部常君) 若い檢事の方の心持を、この際お伺いして置くのも無駄じやないと思いますので……。
  453. 鈴木壽一

    証人(鈴木壽一君) そのときは司法官試補であつた。その当時はそういうふうに考えたわけです。ところがその後になつて保護事業ちよつとも國家の金が來ないのだというようなことも併せて知つたわけです。それじや仕方がないというふうに考えて、從來いたわけです。
  454. 岡部常

    理事岡部常君) それから福岡から他はどうです。
  455. 鈴木壽一

    証人(鈴木壽一君) 福岡から水戸へ行つて、水戸では龜山愼一、これも保護事業が相当今ならばやはりボスと結託したなどと言われるでしよう。土方、請負師の親分みたいな者から金を集めていましたからね。
  456. 岡部常

    理事岡部常君) 田中氏ですか。
  457. 鈴木壽一

    証人(鈴木壽一君) 名前を覚えていないのですが、勿論その当時下つぱ檢事で、そういうことに直接関係しませんから。
  458. 岡部常

    理事岡部常君) あなた方の関係から行くと、ちよつと行き過ぎだという感じがされるでしようね。
  459. 鈴木壽一

    証人(鈴木壽一君) 私は一概にはそうは考えないのです。
  460. 岡部常

    理事岡部常君) どうも有難うございました。休憩いたします。一時半から再開いたします。    午後零時三十七分休憩    —————・—————     午後一時五十九分開会
  461. 岡部常

    理事岡部常君) 池田さんですか。
  462. 池田貞二

    証人池田貞二君) はい。
  463. 岡部常

    理事岡部常君) 法務委員会証人としてお尋ねいたしますから、先ず宣誓して頂きます。    〔総員起立証人は次のように宣誓を行なつた〕    宣 誓 書  良心に從つて眞実を述べ、何事もかくさず、又、何事もつけ加えないことを誓います。         証人 池田 貞二
  464. 岡部常

    理事岡部常君) 御宣誓の上は、違反いたしますと制裁がありますから御承知を願います。お名前池田貞二さんですね。
  465. 池田貞二

    証人池田貞二君) ええ。
  466. 岡部常

    理事岡部常君) 御職業は。
  467. 池田貞二

    証人池田貞二君) 甲府地方檢察廳次席檢事です。
  468. 岡部常

    理事岡部常君) お年は。
  469. 池田貞二

    証人池田貞二君) 四十三。
  470. 岡部常

    理事岡部常君) お住居は官舎でございますか。
  471. 池田貞二

    証人池田貞二君) 甲府市穴切町七百七十五。
  472. 岡部常

    理事岡部常君) 借家でございますね。借家をしておられる。
  473. 池田貞二

    証人池田貞二君) そうです。
  474. 岡部常

    理事岡部常君) 今までの御経歴の概略を一つ。学校は。
  475. 池田貞二

    証人池田貞二君) 昭和五年に日本大学を卒業しました。それから昭和七年に司法官試補、それから判事、一遍やつて暫く台湾で檢察官をやりました。それからちよつと一年程弁護士を、一年足らずでしたけれども、それからすぐ又檢事に、内地に復職して……。
  476. 岡部常

    理事岡部常君) 内地にいつから。
  477. 池田貞二

    証人池田貞二君) 昭和十七年です。
  478. 岡部常

    理事岡部常君) 戰爭途中ですね。
  479. 池田貞二

    証人池田貞二君) そうです。
  480. 岡部常

    理事岡部常君) 台湾をお辞めになつたのは戰爭後ですか、前ですか。
  481. 池田貞二

    証人池田貞二君) 戰爭前です。
  482. 岡部常

    理事岡部常君) ああそうですか。それからずつと檢事をやつておられる。檢事の歴任地はどこですか。
  483. 池田貞二

    証人池田貞二君) 北海道の小樽、それから宇都宮。
  484. 岡部常

    理事岡部常君) 宇都宮。
  485. 池田貞二

    証人池田貞二君) それから甲府
  486. 岡部常

    理事岡部常君) 甲府はいつからですか。
  487. 池田貞二

    証人池田貞二君) 甲府昭和二十年です。二十年の八月です。
  488. 岡部常

    理事岡部常君) 八月。戰爭前ですか、後ですか。
  489. 池田貞二

    証人池田貞二君) まだ終戰になりません。まだ終戰になる前。
  490. 岡部常

    理事岡部常君) 甲府は燒けておりましたですか……それ以來の甲府ですね。それでは相当長いことですね、檢事としては……。
  491. 池田貞二

    証人池田貞二君) そうです。
  492. 岡部常

    理事岡部常君) 初めから次席ですか。
  493. 池田貞二

    証人池田貞二君) 初めは経済檢事。
  494. 岡部常

    理事岡部常君) 次席になられたのはいつ頃から。
  495. 池田貞二

    証人池田貞二君) 今月の一月ですか、去年の……。
  496. 岡部常

    理事岡部常君) 二十三年の一月でしよう。
  497. 池田貞二

    証人池田貞二君) そうです。
  498. 岡部常

    理事岡部常君) ああそうですか。そうすると檢察廳の事務はすつかり御承知ですね、次席という立場から。
  499. 池田貞二

    証人池田貞二君) 分つております。
  500. 岡部常

    理事岡部常君) すべて檢事正のところへ出るものは、あなたの目を経て出るわけでございましようね。実は御承知のような事件でお尋ねするのですが、この問題の渦中の今上村文一、御承知でございますね。
  501. 池田貞二

    証人池田貞二君) ええ。
  502. 岡部常

    理事岡部常君) それはどういうところからお知合いになりましたか。
  503. 池田貞二

    証人池田貞二君) 上村氏は、前に縣会議長の篠原という人がおりましたですが、その人から……。
  504. 岡部常

    理事岡部常君) その紹介ですか。
  505. 池田貞二

    証人池田貞二君) そうです。そういうわけです。
  506. 岡部常

    理事岡部常君) 紹介でお知合いになつた。その前に事件関係で、あなたは名前を知つておられるわけでございますね。
  507. 池田貞二

    証人池田貞二君) そういう………全然ありません。
  508. 岡部常

    理事岡部常君) 事件はその前にはないのですか。
  509. 池田貞二

    証人池田貞二君) ありません。
  510. 岡部常

    理事岡部常君) ああそうですか。
  511. 池田貞二

    証人池田貞二君) 私が知つたときは全然ないです。
  512. 岡部常

    理事岡部常君) その前に葡萄酒の闇事件がありますね。その前に篠原氏から紹介されたわけですか。
  513. 池田貞二

    証人池田貞二君) その前です。
  514. 岡部常

    理事岡部常君) ああそうですか。お知合いになつてから上村氏の葡萄酒の闇事件というものが出たわけですね。この闇事件ですね。これは檢察廳の方ではどういうふうにお扱いになつたのですか。その経緯のあらましを聽かして頂きたい。
  515. 池田貞二

    証人池田貞二君) ちよつと私は直接扱いませんから……。
  516. 岡部常

    理事岡部常君) 経済檢事をやつておられたが、係でなかつた
  517. 池田貞二

    証人池田貞二君) それは私、上村氏を知つておりましたから、そんなことで……。
  518. 岡部常

    理事岡部常君) 避けた。
  519. 池田貞二

    証人池田貞二君) 避けました、やらなかつたのであります。
  520. 岡部常

    理事岡部常君) その事件はどなたが……鈴木さんでもやつたのですか。
  521. 池田貞二

    証人池田貞二君) ええ、鈴木君がやたつわけであります。
  522. 岡部常

    理事岡部常君) そのときあなたは外から見ていて、外部から見ていて、第三者の立場で見て、どんなふにお感じになりましたか。上村氏の葡萄酒の闇事件を。
  523. 池田貞二

    証人池田貞二君) それは直接あれしませんから、全然関係しませんから。
  524. 岡部常

    理事岡部常君) 併し同じ檢察廳の中で、それから又、新聞にも出るようなことで……。
  525. 池田貞二

    証人池田貞二君) 併しそれはやはり当時次席檢事もおられたり、檢事正もおられたから、私は全然関係しません。
  526. 岡部常

    理事岡部常君) 関心を持たなかつたのですか。併しちよつと知つてる人のことならば……。
  527. 池田貞二

    証人池田貞二君) 関心を持たないというわけじやありませんが。
  528. 岡部常

    理事岡部常君) その当時外にもそういう闇がございましたか。葡萄酒の闇が。
  529. 池田貞二

    証人池田貞二君) ええ。
  530. 岡部常

    理事岡部常君) 一斉檢挙でもやつたわけですか。
  531. 池田貞二

    証人池田貞二君) その点どうでしたか、そのために上つたかどうか知りません。
  532. 岡部常

    理事岡部常君) あなたが事件を回避されたのは、上村氏との知合いで、若し外にあれば、どうしても事件がありとすれば、あなたがやるわけですね。経済檢事として。
  533. 池田貞二

    証人池田貞二君) 併し全部が全部経済檢事がやるというわけでありません。外の人に分担します。
  534. 岡部常

    理事岡部常君) 東京あたりと違つて、截然職務の範囲が決つておるわけじやありませんね。お互いに補助し合うわけですね。
  535. 池田貞二

    証人池田貞二君) お互いが補助し合うといつても大体決つておりまい相当事件がありますから、人数が少いのに相当事件がありますから。
  536. 岡部常

    理事岡部常君) その当時の判決を覚えておられますか。
  537. 池田貞二

    証人池田貞二君) 記憶ありませんです。
  538. 岡部常

    理事岡部常君) その当時檢察廳内では、執行猶予になつておりますが、檢事控訴をするとかいう問題はなかつたどしようか。
  539. 池田貞二

    証人池田貞二君) はつきり聞いておりませんですな。
  540. 岡部常

    理事岡部常君) そんなにも檢事、檢察陣というものが無関心ですか。外の仕事は……檢事一体という方から言つて
  541. 池田貞二

    証人池田貞二君) その点或いは話があつたかも知りませんですが。
  542. 岡部常

    理事岡部常君) 要するに大した問題ではなかつたわけですか。檢察陣の見方としては。
  543. 池田貞二

    証人池田貞二君) いや相当の闇事件
  544. 岡部常

    理事岡部常君) 相当の……。
  545. 池田貞二

    証人池田貞二君) ええ。
  546. 岡部常

    理事岡部常君) どれくらいの事件ですか、金にして。
  547. 池田貞二

    証人池田貞二君) 覚えておりません。直接あれしませんでしたから。
  548. 岡部常

    理事岡部常君) 上村氏とは篠原氏の紹介であなたお知合いになつたそうですが、それから今日までのところで、上村氏というものはどういう人間だと評價しておられますか。
  549. 池田貞二

    証人池田貞二君) そうですな……。
  550. 岡部常

    理事岡部常君) まあ。ここ限りのことにして、新聞記者諸君もおるが、そんなことは余り書かないようにして貰うことにして……。
  551. 池田貞二

    証人池田貞二君) 分りませんな、はつきりしたことは。
  552. 岡部常

    理事岡部常君) 商賣人として機敏な方ですか、いい商價人ですか。
  553. 池田貞二

    証人池田貞二君) そうですね。若し割合によく活動的な男のようですね。
  554. 岡部常

    理事岡部常君) 殊にそれ以上に、先生は司法保護事業なんかをやつてるわけですね。そういうと、あなた方の平素のお仕事を大部関係が深いわけであります。殊に少年の保護をやらしておる以上は、どういう人物だということは、次席檢事としてはよく御承知の筈だと思いますね。
  555. 池田貞二

    証人池田貞二君) 併しそれは殆んど私たちタッチしませんから。
  556. 岡部常

    理事岡部常君) 併し今タッチしないわけにいかんじやありませんか。
  557. 池田貞二

    証人池田貞二君) ええ。
  558. 岡部常

    理事岡部常君) 信頼するに足る人間でなければ、少年を保護させるわけに行かんわけですね。
  559. 池田貞二

    証人池田貞二君) それはそういうわけですね。
  560. 岡部常

    理事岡部常君) ですから、そういう方面のあなたの観察を一つ……。
  561. 池田貞二

    証人池田貞二君) 併し少年保護檢事正が大体おやりになられておられますから、実際私ちたは事件の方を主にやりますけれども、ちよつとそういつた方面は余り司法保護ですね。そういう方面は余り次席檢事でやりませんからね。事実上殆んどあれは檢事正、事務局といつた方面の仕事ですから。
  562. 岡部常

    理事岡部常君) 理事か何か役員はいておられるのでしよう。
  563. 池田貞二

    証人池田貞二君) ええ。
  564. 岡部常

    理事岡部常君) 連合保護会関係……。
  565. 池田貞二

    証人池田貞二君) その方は次席檢事になつておりますね。
  566. 岡部常

    理事岡部常君) そのくらいの程度ですか。
  567. 池田貞二

    証人池田貞二君) その程度ですね。事実殆んどあれしませんから……。
  568. 岡部常

    理事岡部常君) じや、話を変えまして、問題になつております檢事正官舎敷地問題、これが問題になつておるわけですが、あれを今の官舎敷地「あさけ」町と言いますか。「あけき」町ですか。
  569. 池田貞二

    証人池田貞二君) 「あさけ」町です。
  570. 岡部常

    理事岡部常君) あれの土地の交換問題が起つた。これが相当社会耳目を聳動しておるというと大袈裟かも知れんが、問題になつておる。それについて何かあなたは予め承知しておられましたか。
  571. 池田貞二

    証人池田貞二君) 分りません。全然……。
  572. 岡部常

    理事岡部常君) 檢事正から何か御相談があつたのじやありませんか。
  573. 池田貞二

    証人池田貞二君) ありませんね。
  574. 岡部常

    理事岡部常君) 上村氏から御相談があつたのじやありませんか。
  575. 岡部常

    理事岡部常君) 全然なかつたのですまか。
  576. 池田貞二

    証人池田貞二君) 特別に相談は……ただそういつた、もう随分前からのことですから……。
  577. 岡部常

    理事岡部常君) 話の起りはね。併し新聞種にもなりましたし、実を言えば投書などがありまして、こちらにもありましたし、これは軍政部にも恐らくあつたろうと思います。恐らく法務廳方面にもあつたのじやないかと思いますが、とにかく相当問題になつて、これが同じ檢察廳の中のこととして話題に上らんということはちよつと想像できないのですが、何かそういうことは聞きませんか。
  578. 池田貞二

    証人池田貞二君) 一番最初……。
  579. 岡部常

    理事岡部常君) いや最初から今までの経過において、とにかく世間の問題になつておる。それが同じ檢察廳におられる人人の間の話題にならんということはちよつと言えないと思います。
  580. 池田貞二

    証人池田貞二君) 話題にならないというと……
  581. 岡部常

    理事岡部常君) 問題にならないのですか。檢察廳の中で……。
  582. 池田貞二

    証人池田貞二君) 官舎のことですか。
  583. 岡部常

    理事岡部常君) ええ、敷地問題ですね。
  584. 池田貞二

    証人池田貞二君) ですから、そういう敷地を交換するとか、そういつたことに関しては多少檢事正から話があつたりするというようなことで、どういうふうにしてどんなふうになつておるかということは分らない。そういうわけです。
  585. 岡部常

    理事岡部常君) 併し新聞種にでもなれば、同じ役所のことならば心配して、あれは一体どういうことになつておるのですかといつて相談するのが本当だと思いますが、そういうことはある……。
  586. 池田貞二

    証人池田貞二君) 併しそれは余程前ではね。前にそういつたようなことは本省の了解を得て、官舎のそういう敷地の交換ですか。そういつたようなことは決めたものだと思つておりますけれども……。
  587. 岡部常

    理事岡部常君) そうすると、いろいろ新聞なんかに出ることもなさそうなものですが、新聞なんかにはたびたび出ておりますね。
  588. 池田貞二

    証人池田貞二君) ですからその……。
  589. 岡部常

    理事岡部常君) こちらにまあ投書なども來ておりますし、新聞に出たものも、少くとも十月以降には出ております。
  590. 池田貞二

    証人池田貞二君) それはよく分つております。
  591. 岡部常

    理事岡部常君) それから後のところでも、あなたのお考を聽きたいのですが。
  592. 池田貞二

    証人池田貞二君) その官舍のことですか。それは新聞に出ていても、それはまあ檢事正が本省、或いは高等檢察廳ですか。そういつたようなことでよく話合つてやられておることだろうと思つておりますが、それ以上は……。
  593. 岡部常

    理事岡部常君) それ以上は関心を持たれなかつのですか。
  594. 池田貞二

    証人池田貞二君) 関心を持たないというのではないですけれども、それ以上その……。
  595. 岡部常

    理事岡部常君) そうすると次席の立場から言えば、相談相手に頼まれるのが本当じやないのですか。
  596. 池田貞二

    証人池田貞二君) 併しそれは今言つたように、最初から檢事正がよくお話されてやつたものだと思つておりますから……。
  597. 岡部常

    理事岡部常君) ですが、事実はそうでなく未だに残つておるんです。問題は……まだ交換はできないのです。まだあれは途中なんです。そういうようなことは御承知ないわけはないと思います。
  598. 池田貞二

    証人池田貞二君) それは何でも評價委員なんかが結末を付けるという……。
  599. 岡部常

    理事岡部常君) 付けるところまで來ておるけれども、まだそこまで行かない筈です。そういうようなことで同じ檢察廳のことなら御心配になるのが本当だと私は思うのですが。
  600. 池田貞二

    証人池田貞二君) それはまあ……。
  601. 岡部常

    理事岡部常君) これは会計法から言いましても、國有財産法といろいろな問題があるのです。ですから行政官廳の間の問題は私は相当複雜なもんがありそうなものに思うのです。
  602. 池田貞二

    証人池田貞二君) 併しそれはこの間本省の会計課の山田事務官が來たときに、大体の、大体というか、そう詳しい話もしませんが、まだ決らないから、そう大した具体的な話もありませんでした。
  603. 岡部常

    理事岡部常君) 一体、これは伺いたいのですが、檢事の方はそういうふうな行政部面にはタッチしないというのが建前なんですか。
  604. 池田貞二

    証人池田貞二君) そうですね。その官舍の問題は……。
  605. 岡部常

    理事岡部常君) いわゆるもう純粹な檢察だけに沒頭されるわけですかね。
  606. 池田貞二

    証人池田貞二君) それは次席檢事としては必ずしもそうじやないのですけれども、その官舍問題はもうずつと前から檢事正がおやりになつておるもんですから、それで私たちはもう余りそれは……。
  607. 岡部常

    理事岡部常君) お任せしてしまう……。
  608. 池田貞二

    証人池田貞二君) 前からまあお話があつたかも知れませんけれども、私は途中ですし、そんなことでしたから……檢事正もそう言われておりましたから別に……そういつて了解して、そうしてやつたことであると言われておりましたから……普通でしたら私たちの立場としてはずつとあれするわけですが、そんなことでしたから……その当時檢事正の言うことでもあり、別に……。
  609. 岡部常

    理事岡部常君) 尤も檢察廳がそういうふうな余計のことなどに関與したのはこの頃で、お馳れにならないというようなところもあるだろうと思いますが、そんなことは、余り嘴を容れん方がいいというようなお考えがあるのですか。
  610. 池田貞二

    証人池田貞二君) そういうことはないのですけれども……。
  611. 岡部常

    理事岡部常君) そこまではないのですね。
  612. 池田貞二

    証人池田貞二君) はあ、そういうことはありません。
  613. 岡部常

    理事岡部常君) そうすると池田檢事正に万事信頼したと……。
  614. 池田貞二

    証人池田貞二君) 官舍問題ですか。
  615. 岡部常

    理事岡部常君) ええ。
  616. 池田貞二

    証人池田貞二君) そうです。
  617. 岡部常

    理事岡部常君) その当時皆さんは官舍に、官舍というか住宅にお困りだつたそうですね。あなたもやはりそうですか。
  618. 池田貞二

    証人池田貞二君) 私は借りておりましたですから別に……大体外の人たちはもう借りておつたのですけれども、非常にもう同居しておりましたり、そんなことで非常に困つておる事情もありました。
  619. 岡部常

    理事岡部常君) あなたは今は淺川氏の家を借りておられますですね。
  620. 池田貞二

    証人池田貞二君) ええ。
  621. 岡部常

    理事岡部常君) その外の檢事の方は余程困つておられたように聞いておりましたが、そうですか。
  622. 池田貞二

    証人池田貞二君) ええ。非常に遠かつたり、間借りしておつたり、一つの家を二人で借りておつたり、そういうようなことで非常に困つておられた。
  623. 岡部常

    理事岡部常君) それで上村氏の提案の檢事正官舍移轉する、それから檢事の官舍を建てるというような話は非常に好意的に感じて歓迎したわけですね。檢察廳としては……。
  624. 池田貞二

    証人池田貞二君) はあ。それは檢察官としては家が建ちますから……今まで檢察正だけの奴があつて、檢事の奴も建てると、こういうわけですから。
  625. 岡部常

    理事岡部常君) そのことについて上村氏があなたに何か御相談でもありましたか。
  626. 池田貞二

    証人池田貞二君) ありません。
  627. 岡部常

    理事岡部常君) 全然ない。
  628. 池田貞二

    証人池田貞二君) ええ。
  629. 岡部常

    理事岡部常君) 何か交換について盡力して呉れというようなことは頼まれたことはありませんでしたか。
  630. 池田貞二

    証人池田貞二君) ありません。そういうことは全然私にはありません。
  631. 岡部常

    理事岡部常君) 一体官舍を建てると幾らかかるとかいうようなことは話はありませんでしたか。
  632. 池田貞二

    証人池田貞二君) ありません。
  633. 岡部常

    理事岡部常君) 檢事正関係されて少年の町を建設しようということだそうですが、あれは何かあなたは御承知ですね。
  634. 池田貞二

    証人池田貞二君) そうですね。最初からの、いつからそういう話が出ましたか、ちよつとはつきりした記憶はありませんが、少年の町を瑞牆山に作るというような話はありました。
  635. 岡部常

    理事岡部常君) その提唱者と言いますか、初めて考えた人は誰ですか。
  636. 池田貞二

    証人池田貞二君) それは檢事正だろうと思いますな。
  637. 岡部常

    理事岡部常君) あなたも一緒にお考えになつたのではないですか。
  638. 池田貞二

    証人池田貞二君) 私は余りあれですから別に考えたわけじやありません。檢事正はそういつた非常に宗教とか、教育、そんなことに非常に関心を持つておられますから。
  639. 岡部常

    理事岡部常君) 檢事正がカトリック信者としての立場から考えられた……。
  640. 池田貞二

    証人池田貞二君) そうだろうと思います。
  641. 岡部常

    理事岡部常君) フラナガン神父の來た時に考えて……。
  642. 池田貞二

    証人池田貞二君) その頃だろうと思います。
  643. 岡部常

    理事岡部常君) これは大体大きい仕事のようですが、寄附金を一般から募つたりされたようですが、寄附金募集などについてはあなたは御関係じやないですか。
  644. 池田貞二

    証人池田貞二君) あれは寄附金でなくて、出資か何かでやると、こんなことで私は寄附金の方のことについては別に関係しません。
  645. 岡部常

    理事岡部常君) 全部が出資ですか。
  646. 池田貞二

    証人池田貞二君) 出資だろうと思いますが、全部……。
  647. 岡部常

    理事岡部常君) 何百万という……要る金は……。
  648. 池田貞二

    証人池田貞二君) それは実際にやるには大変だろうと思います。
  649. 岡部常

    理事岡部常君) あなたは瑞牆山は御承知ですか。
  650. 池田貞二

    証人池田貞二君) 一度だけ行きました。
  651. 岡部常

    理事岡部常君) 地理的な條件なんかで、そういうものの経営は……。
  652. 池田貞二

    証人池田貞二君) そうですね。とにかく山の中ですから、大体一度くらい行つておりますが、ちよつと遠いという感じが、場所が遠いんじやないか………。
  653. 岡部常

    理事岡部常君) 收支が償うようになるかどうか、そんなことについては、あなたのお考えはどうでしたか。
  654. 池田貞二

    証人池田貞二君) 私は余りそういう点は深く考えないのです。とにかく容易じやないということを、檢事正は何か非常に宗教的なそういう信念があるもんですから、私たちにはちよつとはつきり本当のところを言うとむずかしく、困難じやないかと思つております。
  655. 岡部常

    理事岡部常君) 殊に寄附金によらず、出資によるということになりますれば、これは算盤でも相当彈けなければ危險なわけですね。
  656. 池田貞二

    証人池田貞二君) そういうわけです。
  657. 岡部常

    理事岡部常君) そういうことについて、何かそのときあなたは檢事正に申言したというようなことはございませんか。あれは危いですねというようなことを言つてもよさそうじやないですか。
  658. 池田貞二

    証人池田貞二君) それは座談的にはそれは相当話もすることもありますが、併し檢事正檢事正の見解を持つておられますから、これに対するですね。ですから相当外の人からも多少いろいろそういつた知識も得ておるんじやないですか。いろいろそういつたようなことで、全く計画性がなくてやつておるのじやないかと思います。
  659. 岡部常

    理事岡部常君) そういうふうな助言者とか、企画に当る人はどんな人ですか。檢事正に介添役は……。
  660. 池田貞二

    証人池田貞二君) そうですね。まあ併し何といつても出資しておる人ですな。
  661. 岡部常

    理事岡部常君) 主だつた人はどんな人ですか。
  662. 池田貞二

    証人池田貞二君) あれは、千葉かどつかに一人女の人が、カトリックの信者がおられます。そういう人とか、或いは上村氏、淺川さん、そういつた、それから縣廳あたりの人からもいろいろ一應山のことですから助言を得ておるのじやないかと思います。
  663. 岡部常

    理事岡部常君) 名取氏などもやはりそれに参画しておる、これは本当の事務関係などをやつておるのは名取君ですか。
  664. 池田貞二

    証人池田貞二君) 名取君も上村氏の関係でこれに一緒に協力をしておる。
  665. 岡部常

    理事岡部常君) 先程寄附のことなどは、あなたは御関係がないようにおつしやつておりましたが、あれだけの寄附なり出資なんかが纏まるということは容易なことじやないように思いますが、それについては警察とか、警察を使うとか、檢察廳みずからがどこか目星しを付けて、出資者なり寄附者なりを求めたいというようなことがあるのではありませんか。
  666. 池田貞二

    証人池田貞二君) そういうことはありません。
  667. 岡部常

    理事岡部常君) ありませんか。
  668. 池田貞二

    証人池田貞二君) ええ。
  669. 岡部常

    理事岡部常君) 世間ではそういうふうなことを考えるのじやないかと思います。そういうことはやはり次席檢事としては傍で御心配になつたのじやないですか。
  670. 池田貞二

    証人池田貞二君) その檢事の立場ですが、そういつたようなことを何ですか利用するというのですか、そういつたような立場で寄附をされるというようなことは、私たちも毛頭考えておりません。そうまでしてやるというようなことは、ちよつとこれは問題にならんのじやないかと思います。
  671. 岡部常

    理事岡部常君) ところが実際に寄附者なり出資者が、いろいろそんな問題の火中に投ぜられる虞れがある人などがありやしないのですか。
  672. 池田貞二

    証人池田貞二君) 大体そういつたような者はないですね。ないというか、そんな者は成るべく避ける、そういうようなことから……。
  673. 岡部常

    理事岡部常君) 併しまあこれは潔癖過ぎるかも知れないが、上村氏はとにかく檢察の厄介になり、裁判の厄介になつた人ですね。というような者が一人ありますね。それから淺川氏なども事件関係されたことはないということでありますが、世間ではとかくの評があるのじやないですか。
  674. 池田貞二

    証人池田貞二君) 併し、それはその人のあれにもよるんじやないですか、その人の見方にも……。
  675. 岡部常

    理事岡部常君) 世間はどういうふうに見ておるでしよう。これは新聞など御覧になつていていろいろ評判を知つておられるのじやありませんか。それから、これについては檢察廳あたりに投書なんかありませんか。
  676. 池田貞二

    証人池田貞二君) 檢察廳に投書はありませんです。
  677. 岡部常

    理事岡部常君) ありませんか。
  678. 池田貞二

    証人池田貞二君) ええ。
  679. 岡部常

    理事岡部常君) 甲府法律專門学校を建てるという計画もあられたそうですが、これもやはり檢事正関係しておられるそうですが、その元は誰がそういう計画をしたか。そんなこと御承知ですか。
  680. 池田貞二

    証人池田貞二君) これはまあ警察が非常の戰後治安が乱れて、警察官という者も相当向上しなければいかん。そういうようなことから、そういう法律の素養、法律を教えて、そういつたようなところから警察官を採用する。私たちの檢察事務官あたりにしても、或いはそういうことがいいのですないか。或いは又会社にしても或いは地方事務所とか、そういうようなところでもまあ一般的にそういうことを少し教えてやるのはいいじやないか。根本は警察のことですけれども、そういうところの学校を作りやいいじやないかといつたようなことを大体檢事正がお考えになられて、それからそういう趣旨から出発したのです。
  681. 岡部常

    理事岡部常君) やはり檢事正が元ですね。
  682. 池田貞二

    証人池田貞二君) そうですね。その考えですね。
  683. 岡部常

    理事岡部常君) それから警察部の人などもそれに協力したわけですか。
  684. 池田貞二

    証人池田貞二君) 檢事正考えは、市長とか、今の知事とか、それからそういう相当の人たちで……。
  685. 岡部常

    理事岡部常君) あなたも関係されておるのでしようね。
  686. 池田貞二

    証人池田貞二君) ええ。裁判所の所長とか、そういつたよう人たちもいろいろ、それから有力者人たちにも話されて…。
  687. 岡部常

    理事岡部常君) この資金の問題はどんなふうですか。
  688. 池田貞二

    証人池田貞二君) 資金は、これは一般の相当そういう理解のある、教育の理解というか、そういつた文化的な仕事に協力して貰うというような人の寄附に仰ぐ。
  689. 岡部常

    理事岡部常君) その寄附者はどんな方面に求めようかというようなことについて、あなた方が御協議になりましたか。
  690. 池田貞二

    証人池田貞二君) それは大体がまあ有力な人たちで、誰をどうこうするというふうに特別に協議したわけではありませんけれども……。
  691. 岡部常

    理事岡部常君) それは誰か推薦者がいなければ寄附なんという仕事は進みませんか。
  692. 岡部常

    理事岡部常君) ですから大体……。
  693. 岡部常

    理事岡部常君) それは主として檢事局でやつたのではないのでありますか。檢事局が推進者になつたのではありませんか。
  694. 池田貞二

    証人池田貞二君) そんなことはありません。
  695. 岡部常

    理事岡部常君) それでも檢事正、あなたなどが陣頭の立つて寄附金募集に働いたのではないのでありますか。
  696. 池田貞二

    証人池田貞二君) それは学校を立つて山梨縣のために、今言つたようなことをやるために学校を作るということは非常に結構なことという趣旨で、そういつたようなことを話して、そういう協力を求めるということはありますけれども、別にこつちの方で特別にその寄附の申込みを取つたり、そういつたようなことは檢察廳はいたしておりません。
  697. 岡部常

    理事岡部常君) 寄附者はとにかく相当金を持つた人に目星を付けたのでありましようが、危い刑事事件を起すような人は避けたわけでしようね。
  698. 池田貞二

    証人池田貞二君) そうです。
  699. 岡部常

    理事岡部常君) ここに主な寄附者の名前がずつと上つておるのでありますが、その中の一番大きいのは山梨製絲協会百二十四万円となつておる。これなんかどういう関係でこんなに沢山出したのでありますか。
  700. 池田貞二

    証人池田貞二君) それは輸出の製絲屋さんで、主にそこの会長さんですか、今の市の警察の公安委員をやつておる。
  701. 岡部常

    理事岡部常君) 中村源太郎。
  702. 池田貞二

    証人池田貞二君) 中村源太郎さんが大体やつて、それだけの金を大体集めて下すつたわけなんです。
  703. 岡部常

    理事岡部常君) そうすると、この寄附者の勧誘というものは檢事以外の方もやつておられるわけですか。
  704. 池田貞二

    証人池田貞二君) それはもう檢事、今言つた淺川さんとか、中村さんとか、それから淺川彦六縣会議員、川口莊二郎さん、そういう或る程度の区域を設けて、そういう人たちが主になつてつて呉れた。
  705. 岡部常

    理事岡部常君) そうすると、ここに挙げられた一々名前を挙げませんが、あなた御承知だと思いますが、檢察事務に何か関連を持つような人はいないわけですか、少くとも事件なんか從來持つたようなことは……。
  706. 池田貞二

    証人池田貞二君) おらないと思いますが、
  707. 岡部常

    理事岡部常君) ないですか。
  708. 池田貞二

    証人池田貞二君) それは非常に奇麗な氣持で私たちやりました。その寄附のあれは大体そういつたような人は避けようということで……。
  709. 岡部常

    理事岡部常君) それでも淺川氏というような、相当世の中では評判されておるのじやないのでありますか。何かありそうだと……。
  710. 池田貞二

    証人池田貞二君) そうですね。私共よく本当のことは分りませんけれども、一般には相当金を持つたり何かしておれば、そう誰でも言われるのじやないかと思います。実際のところは分りません。
  711. 岡部常

    理事岡部常君) 淺川氏は金を十万円寄附して、自分土地を安く賣つたのでありましよう。
  712. 池田貞二

    証人池田貞二君) それは、あれは最初は敷地は全く外の場所で、最初それがなかなか縣の農地委員会なんかでできなかつた。そんなことで段々場所がなくなつて、そういうようなことをして淺川さんとこをお願いしたのでありますけれども、そんなに安いかどうかちよつと……。
  713. 岡部常

    理事岡部常君) 半分ぐらいであつた
  714. 池田貞二

    証人池田貞二君) そんなことは私ないと思いますけれども、淺川さん自体も元々そんなに大して入手した土地ではないと思うのであります。そうして値段も、そう普通の相場ですね。儲けて賣るというような観点からするならば、それは相当高く賣れるのでありましようけれども、ああいう学校の公共事業的にやるというならば、あの程度の相場が普通じやないかと私は思つておりますけりども……。
  715. 岡部常

    理事岡部常君) あなたは淺川氏の借家に入つておられますね。
  716. 池田貞二

    証人池田貞二君) はい。
  717. 岡部常

    理事岡部常君) それはどういう関係でお入りになつておりますか。
  718. 池田貞二

    証人池田貞二君) それは私の前入つた家はひどい出家でして、長屋で全くひどい家に淺川さんが余りひどいなあと言つて、そうして淺川さんの家を借りるようになりました。
  719. 岡部常

    理事岡部常君) 何かあなたが借家に住んでおられるし、又寄附なんか相談したので、淺川氏が寄附したり何かして、それで檢察廳と連絡が付くとか、殊に次席と密接な関係が立つから、先生の何か経済事件なんか揉み消されるだろうというようなことを世間で考えるようですが。
  720. 池田貞二

    証人池田貞二君) それはどうも……。
  721. 岡部常

    理事岡部常君) そんな疑いの全然ない人ですか。
  722. 池田貞二

    証人池田貞二君) ないと思いますですね。私つき合つた範囲では……。
  723. 岡部常

    理事岡部常君) 特にあなたは上村氏とは私のつき合はどんなですか。
  724. 池田貞二

    証人池田貞二君) つき合はあせません。
  725. 岡部常

    理事岡部常君) 上村氏は何か精米所か何かやつておるそうですね。
  726. 池田貞二

    証人池田貞二君) はい。
  727. 岡部常

    理事岡部常君) そんなことで檢察廳の方が大分便宜を得ておられやしませんか。
  728. 池田貞二

    証人池田貞二君) そんなことはないと思いますね。
  729. 岡部常

    理事岡部常君) 何か米を運ぶとか、いろいろ噂があるようですが。
  730. 池田貞二

    証人池田貞二君) そんなことはないと思いますね。
  731. 岡部常

    理事岡部常君) あなたは御承知がなくても、御家庭が潤つておることはありませんか。
  732. 池田貞二

    証人池田貞二君) 私の家が一遍そういうことがありました。何か米五、六升持つて來てですが、そのとき私非常に檢察事務官、誰でしたか覚えておりませんですけれども、怒つて、事務官を呼び付けて返してやつたことがありました。
  733. 岡部常

    理事岡部常君) 餅を二回持つて來たというようなことを言つておる人がありますが。
  734. 池田貞二

    証人池田貞二君) 一度御歳暮ですか、そのときもやはり事務官に言つて役所から呼び出したのだと思いますが、それで返してやりました。そういうことがあります。何か私そんなことをやるので、袋なんか調べたり何かして……。
  735. 岡部常

    理事岡部常君) 使の者なんか呼ばれたことがありますか。上村氏自身が持つて行かないでしようが、使用人か何か持つて來たとか……。
  736. 池田貞二

    証人池田貞二君) 私自分でやるのは厭ですから、事務官にやらしてですね。
  737. 岡部常

    理事岡部常君) それで餅を二回持つて行つたというようなことを言つておりますがね。一回米で怒られたら、二回も三回も餅を持つて行かない筈だけれども……。
  738. 池田貞二

    証人池田貞二君) 年末に二度だけ、それも私がいなくて、家内もいなかつた。誰か子供か何かおつたのでしよう。
  739. 岡部常

    理事岡部常君) 最後に三つの事件があつて檢事正が渦中に投じ、あなた方も巻き添えを食つたような恰好になつておりますが、一体これで世間がどういうふうに見ておられるでしようか。甲府では……。
  740. 池田貞二

    証人池田貞二君) そうですね。それは分りません。
  741. 岡部常

    理事岡部常君) 根本問題として、檢察廳が寄附なんか募つておられますね。これは保護事業なんかやつておるようですが、それに関してどんなふうにお考えですか。
  742. 池田貞二

    証人池田貞二君) 実際のところ、例えば今廳筈を作るにしたとこで、政府の予算が非常に少くて、或る程度寄附を募るとか、簡易裁判所を作るにしても、私共の官舎を作るときも、これもやはり或る程度寄附を募るとか、いろいろ保護をやる場合でも、そういうことで、どうもそういうことは誰かに余り感心したことじやないのですが、実情はどうも止む得ないのじやないかといつたよう氣持がいたします。
  743. 岡部常

    理事岡部常君) 今までの、どこか外の御任地でそういうふうな御経驗がありましようか。これはいけないなと思つたり、こういうふうにやればいいなと思つた、その両方の例がありましようか。
  744. 池田貞二

    証人池田貞二君) 今まではありません。
  745. 岡部常

    理事岡部常君) ございませんか。併しそういうふうな、好ましくないなと思つても、やらなければならんというようなときに田余程愼重にお考えになる筈ですね。その考慮を、どうでしよう今度の事件についてよく拂われたでしようか。
  746. 池田貞二

    証人池田貞二君) 相当拂つてつた積りですが。
  747. 岡部常

    理事岡部常君) ではどうも有難うございました。    〔証人上村文一君着席〕
  748. 岡部常

    理事岡部常君) 上村文一さんですね。
  749. 上村文一

    証人上村文一君) そうであります。
  750. 岡部常

    理事岡部常君) 法務委員会甲府事件につきまして、あなたに証人として伺いたいことがありますが、先ず宣誓を願います。    〔総員起立証人は次のように宣誓を行なつた〕    宣 誓 書  良心に從つて眞実を述べ、何事もかくさず、又、何事もつけ加えないことを誓います。         証人 上村 文一
  751. 岡部常

    理事岡部常君) 只今宣誓になりました通りに、これをよく守つて頂きます。それに若し違反いたしますと、法の制裁を受けますから、予め御承知願います。どうぞお掛け下さい。  名前上村文一さん、お年は。
  752. 上村文一

    証人上村文一君) 三十七年であります。
  753. 岡部常

    理事岡部常君) 職業は。
  754. 上村文一

    証人上村文一君) 職業は製材業、精米業、それから映画館の社長をやつております。
  755. 岡部常

    理事岡部常君) 何か社会事業をやつておりますね。
  756. 上村文一

    証人上村文一君) 少年の保警團体をやつております。
  757. 岡部常

    理事岡部常君) 保護司になつておりますか。
  758. 上村文一

    証人上村文一君) 私は保護司でございません。
  759. 岡部常

    理事岡部常君) お住居は。
  760. 上村文一

    証人上村文一君) 住居は甲府市百石町二百八十二番地であります。
  761. 岡部常

    理事岡部常君) それはオリオンパレスとは違うところですか。
  762. 上村文一

    証人上村文一君) 違うところでございます。
  763. 岡部常

    理事岡部常君) こちらで調べたいと思いますことは、檢事正官舎敷地の問題、それから外に專門学校少年の町、これに関連してお伺いしたいのです。先ず甲府地方檢察廳の池田檢事正とお知り合ですね。
  764. 上村文一

    証人上村文一君) はい。
  765. 岡部常

    理事岡部常君) どういう関係でお知り合いになりましたか。
  766. 上村文一

    証人上村文一君) 申上げます。私は一昨年、一月頃だと記憶しますが、相興村に司法少年保警團体をやつております丸山幸右衞門さんという方がございまして、その方は私の本店が韮崎町の酒屋でございまして、親戚関係にありますから、そこで丸山さんのお宅に遊びに行つたときに、そこで少年寮をやつておるということを兄さんが聞いて帰つて來ました。それでどうだ家でもやつたらということを言われました。それから兄さんは、私に相談しまして、家でも丸山さんのように寮でもやつて、食糧事情もよくないことだから、開墾でもしたらどうかと言われました。それから手続の方法とかいろいろのことを知らなかつたし、丸山さんのところでは五十人も申請して收容しているが、家では五十人も收容できないから、君の方を保警所の支所というふうにしたらどうかというふうに言つて下さいました。一月頃は支所という名前でやつておりました。たまたまその頃私は経済違犯の事件を起しまして刑を受けまして、そうして出て來まして、事件が済んだ直ぐ直後に丸山幸右衞門さんがお見えになつて、今度は君ひどい目に会つていろいろしたけれども、社会事業にでも轉身した方がよいぞ、私の秘書というようか、正規の手続をして、そうして個人の独立團体にした方がよいからというようなお話を頂きました。是非できることでしたら、私も秘書ということでなしに、自分独立團体にしたいというふうに思いましたから、では先生一つそういうふうに手続や何かお願いしますと申上げたら、丸山先生が、それには処遇規程というような規定があつて、大体寮の名前も塩川工業少年保護寮ではまずいから、何とか付けたらどうかと言われましたので、よい名前先生付けて下さいと言つたら、檢事正がカトリツクの信者だし、そういうことに熱心だから、長官に付けて貰つたらどうかと言われたので、それではそういうふうにお願いします。私は事件を起した後でありますし、長官もよく知らないからということで、それでは私が案内して上げよう、そういうことが初めで、長官官舎に伺いまして長官を知りました。
  767. 岡部常

    理事岡部常君) それは丸山氏が連れて行つたのですか。
  768. 上村文一

    証人上村文一君) そうです。
  769. 岡部常

    理事岡部常君) それはいつ頃ですか。
  770. 上村文一

    証人上村文一君) 相当暖かくなつてから、まだおこたがあつたように記憶します。日附の点は知りません。
  771. 岡部常

    理事岡部常君) 檢事正とはどこで……。
  772. 上村文一

    証人上村文一君) 官舎で会いました。
  773. 岡部常

    理事岡部常君) 官舎のどこで……。
  774. 上村文一

    証人上村文一君) 横の入口から入つたおこたの間です。
  775. 岡部常

    理事岡部常君) 玄関ではないのですね。
  776. 上村文一

    証人上村文一君) 玄関ではありません。
  777. 岡部常

    理事岡部常君) そこで名前を付けて貰つたのですか。
  778. 上村文一

    証人上村文一君) そこでは付けて頂きません。そういうことでやるから、よい名前を勘案して下さいと丸山先生が頼みました。私も頭を下げてお願いしますと言いました。
  779. 岡部常

    理事岡部常君) 何分くらい。
  780. 上村文一

    証人上村文一君) お茶を一つ出して頂きましたが、私は手を着けなくて帰りました。
  781. 岡部常

    理事岡部常君) そうすると、余り長い時間ではなかつたですね。
  782. 上村文一

    証人上村文一君) 長くて五分くらい。
  783. 岡部常

    理事岡部常君) そのとき檢事正は名付け親になることを快諾して下さいましたか。
  784. 上村文一

    証人上村文一君) 何とかして考えて下さるとおしやいました。
  785. 岡部常

    理事岡部常君) それが初対面ですか。
  786. 上村文一

    証人上村文一君) そうであります。
  787. 岡部常

    理事岡部常君) そうですがね。先程丸山氏は玄関で会つただけだと言つておりましたが。
  788. 上村文一

    証人上村文一君) 前の官舍のそこの玄関と申しますのは、表から自動車が入れるようになつておるのが玄関でありまして、私が申上げるのは横に横門がございます。横門の上つたところでございます。玄関と言えば、そちらも玄関になりますが、おこたの間でございます。
  789. 岡部常

    理事岡部常君) 立話というようなお話でありましたが。
  790. 上村文一

    証人上村文一君) 立話のようなものでございます。私は遠慮して、丸山さんからお蒲團を頂きまして、そこでお茶を一つ頂きました。
  791. 岡部常

    理事岡部常君) それでよく覚えておりますか、その時の状況を。
  792. 上村文一

    証人上村文一君) 私ははつきり覚えております。
  793. 岡部常

    理事岡部常君) そうすると丸山氏の記憶違いですかね。あなたの言う方が本当ですか。記憶違いかも知れませんね。
  794. 上村文一

    証人上村文一君) 私の方がよく覚えているつもりでございます。横の、何と申しますか、勝手の、本当ならば入口というような横口であります。そこから入りまして、丸山先生が上げて頂けということで、私上げさせて頂きまして、これは私正面に坐りましてお茶を頂きましたけれども、手を着けなくて帰りました。
  795. 岡部常

    理事岡部常君) あなたはその前に葡萄酒の闇事件事件を起しましたね。それは前ですかね。
  796. 上村文一

    証人上村文一君) その前でございます。
  797. 岡部常

    理事岡部常君) それでそれは猶行猶予になつて罰金十万円を受けられたのですね。
  798. 上村文一

    証人上村文一君) はい。
  799. 岡部常

    理事岡部常君) 罰金は納められたのですね。
  800. 上村文一

    証人上村文一君) 納めました。
  801. 岡部常

    理事岡部常君) その執行猶予なつたときに檢察廳に挨拶に行きましたか。
  802. 上村文一

    証人上村文一君) 参りません。
  803. 岡部常

    理事岡部常君) そのために檢事正に挨拶に行つたということもないのですね。
  804. 上村文一

    証人上村文一君) ございません。
  805. 岡部常

    理事岡部常君) それでそのままにして、丸山氏が紹介するまで知らなかつたのですね。
  806. 上村文一

    証人上村文一君) 知りません。
  807. 岡部常

    理事岡部常君) 外の檢事は知つておられますか。
  808. 上村文一

    証人上村文一君) 外の檢事さんも知りません。そのときまでは。
  809. 岡部常

    理事岡部常君) 池田次席は知つておるでしよう。
  810. 上村文一

    証人上村文一君) 顔だけは知つておりますけれども、言葉を交したことはありません。
  811. 岡部常

    理事岡部常君) 顔だけ。
  812. 上村文一

    証人上村文一君) はい。言葉を交したことはその頃まだありません。
  813. 岡部常

    理事岡部常君) あなたを調べた檢事は誰ですか。
  814. 上村文一

    証人上村文一君) 鈴木檢事さんです。
  815. 岡部常

    理事岡部常君) そのときの経済檢事は池田さんなんですね。
  816. 上村文一

    証人上村文一君) そういうことは私には……。
  817. 岡部常

    理事岡部常君) 分らない。
  818. 上村文一

    証人上村文一君) 分りません。
  819. 岡部常

    理事岡部常君) 先程の池田さんのお話だと、わざと避けたのだということを言われたが、それから見るとその前から知つておられたのではないですか。
  820. 上村文一

    証人上村文一君) 私は知りません。
  821. 岡部常

    理事岡部常君) 知らない。
  822. 上村文一

    証人上村文一君) ただ顔だけは合せたことがございますが、知りません。
  823. 岡部常

    理事岡部常君) それはどういう関係で合せたのですか。池田さんと。
  824. 上村文一

    証人上村文一君) 確か亡くなりました篠原という縣会議長がありまして、映画館を……物を言つたことが一度だけありますが、映画館のそのときに物を言いました。
  825. 岡部常

    理事岡部常君) 篠原さんが池田檢事さんに紹介して呉れたのですね。
  826. 上村文一

    証人上村文一君) はい。紹介して頂きました。
  827. 岡部常

    理事岡部常君) 池田檢事さんと知合いになつたのは篠原さんの紹介ですか。
  828. 上村文一

    証人上村文一君) そうであります。
  829. 岡部常

    理事岡部常君) そういう関係池田さんは避けたというわけですか。
  830. 上村文一

    証人上村文一君) それは池田さんの方のことで、私はそのことは知りません。
  831. 岡部常

    理事岡部常君) あなたの方は知らない。
  832. 上村文一

    証人上村文一君) はい。
  833. 岡部常

    理事岡部常君) 檢事正官舍に初めて訪ねて、それから後名前を付けて頂いたのですね。それからずつと保護事業家としての折衝があるわけですね。
  834. 上村文一

    証人上村文一君) それから保護事業家としての折衝少年審判所関係でございますから、ありませんでした。
  835. 岡部常

    理事岡部常君) 連合保護会長としての檢事正の下ですからね。それは御承知でしよう。
  836. 上村文一

    証人上村文一君) それは承知しております。
  837. 岡部常

    理事岡部常君) それからその関係会長ですから折衝があるわけじやないですか。
  838. 上村文一

    証人上村文一君) 折衝ということは、僕らの事業では少年審判所の仲介だけで、お名前だけで、そういう方面のお話も伺つたこともございませんでした。
  839. 岡部常

    理事岡部常君) 併し実際は檢事正と密接な関係に立つておられますね、今。
  840. 上村文一

    証人上村文一君) はい、立つております。
  841. 岡部常

    理事岡部常君) それはどういうことから知つたのですか。
  842. 上村文一

    証人上村文一君) 檢事正との関係でありますか。それは只今申上げた、その名前を付けて頂きましたときに、新生寮という名前を付けて頂きました。そうしてそのお名前を頂いたときに処遇規程を全部作りまして役所に私をお持ちして、そうしてお名前だけ入れればいいからということで、長官のところに行きまして、それで確か二回ぐらいは私尚つたと思います。
  843. 岡部常

    理事岡部常君) それは役所の方に……。
  844. 上村文一

    証人上村文一君) はい、伺いました。
  845. 岡部常

    理事岡部常君) それから官舎には余り出入りしないのですか。
  846. 上村文一

    証人上村文一君) 直接、それが終る前から、少年の町の山の踏査というようなことが始まつて参りまして、それで私も保護事業をやるのだし、私の小さい考えでありますが、大体檢事正少年の町という大きな町を建ててしまへ、私共が少年審判所に三十名收容の申請をしましても、只今まで一番多く入れましても十七名で、三十名というのはありませんでした。そこで長官が、そういうことをなされば勢い少年もそつちへ來るじやないかという考えもありまして、大体小さな團体は止めてしまわなければならないだろうというふうのお話でありまして、たまたま少年法の改正が七月幾日でしたかございました。それで折角付けて頂いた名前も処遇規程も全部却下になつてしまいました。そういう関係で私共の方では折角事業を始めたのに、少年が入るというようなことがなくい困るということから、長官がそれをなさるというから、瑞牆山に少年の町をやるんだ、構想はカトリツクを中心にしたもので、國際的なものにするというお話を頂きまして、私も非常にいいことだから、是非そうして貰いたいというふうに思いまして、山の踏査をそのときから始めまして、私はこれは憶えておりませんが、五月ぐらいずつ何回か山に上りまして調査いたしました。その報告とか、出発のときとかいう時には、長官の官舎中心に出入りしたものでありますから……。
  847. 岡部常

    理事岡部常君) 大分親しくなりましたね。
  848. 上村文一

    証人上村文一君) はい。
  849. 岡部常

    理事岡部常君) お互いに往き來するような程度になりましたか。
  850. 上村文一

    証人上村文一君) お互いに往き來すると言いましても、私共は伺いましても、長官は來るようなことはありませんでした。ですから進駐軍の保護係の隊長さんを御案内下すつたときに一度家へお寄り下すつただけであります。
  851. 岡部常

    理事岡部常君) それは随分長い間今まで池田檢事正とのつき合いですね。殊に瑞牆山のことなんかについても非常に同じような考えで、大分出資をされておるけれども、大分お親しいようですが、檢事正はどんなふうに見ておられますか。立派な人ですか。
  852. 上村文一

    証人上村文一君) 私の見るところでしたら最高の人格者と信じております。
  853. 岡部常

    理事岡部常君) あなたは宗教は何ですか。
  854. 上村文一

    証人上村文一君) 家の宗教は。
  855. 上村文一

    証人上村文一君) 佛教でございます。
  856. 岡部常

    理事岡部常君) 佛教。
  857. 上村文一

    証人上村文一君) そうでございます。信仰上の結び付きではございません。私は事業だけの関係からの結び付きであります。
  858. 岡部常

    理事岡部常君) 檢事正との関係は今まで承わりましたが、その外に旧檢事正官舎敷地問題、これは一番あなたと密接な結び付きだと思うのですが、その敷地問題についての初めからの経緯を述べて頂きたい。いつ敷地を朝氣町の所に替えようという計画でありましたか。
  859. 上村文一

    証人上村文一君) いつということですか。
  860. 岡部常

    理事岡部常君) いつ頃から。
  861. 上村文一

    証人上村文一君) それが丁度只今申上げた瑞牆山の調査を始めております頃でありまして、たまたまそこで瑞牆山のことで参りますというと、長官の言葉で、この官舎の道路を引揚者か何かが開放しろなんと言つて來ておるというお話を聞きまして、それはどういう方がやつたということは知りませんが、その直ぐ直後に檢事正が私のことを、お前のところのスピーカーは非常にやかましくて、二階では僕のところの街燈が丸見えだし、向うの方にスピーカーを廻して呉れないかということでありました。私は十字路に向つて客を呼ぶ商賣でありますから、これをやめることも、小さくすることもできませんということを笑い話でしました。たまたまそのときから紅梅町の町内会の皆樣なんかも、あすこを換地を見付けて、そうしてどこかへ移轉して、商店街か何かにした方がいいという運動を起したことを開きました。そんな話を聞きまして……これはそうでありません。長官からこういうふうに言われました。こんなことを言われておるのだけれども、君はどうだ、ここを開放して一つ映画館にしたらどうですかというようなお話がありましたので、本当ですか、本当でしたら是非私の館も小さいしするから、映画館でもこちらに移轉して、大きいものにしたいと思う。私の映画館の周りも地所が狭くて困りますから、是非できましたら、そういうふうにさせて頂きたいということを話しました。そうしましたらそのままでいましたら、今度は町内会の人たちが私たちのところへ、社長、判こを押して呉れないかということを言つて來ました。で、何ですかと言つたら、町内会の陳情書だという、陳情書だと言つても、私は判を押さんと言つて、私は慌てて役所へ行きまして、長官こんなことを言いますけれども、若し解放しせるということであつたならば、是非私は半解放したいと思いますが、館のためにもなるし街のためにも立派な名物を作るから一つお願いいたしますと言つて、お願いいたしましたら、それは一存には行かない。これは國有財産であるから、だから上司に聽いて見なければ分らんというふうにお話でありました。ですから私は是非それはお伺いして頂きたいというふうの話をしまして、それから聞いて下さいましたか、聞いて下さいましたかというふうに、私は何回か伺つたつもりであります。そうしていました矢先に、とにかく君場所がなければ駄目じやないかということで、場所はということで、私は場所を選択して、物色して、それは一番先はあすこの地所は六百坪ですから、私は六百坪のものを見付ければいいと思つて、六百坪ばかりを分譲で買つて置こうと思つたんでありますが、たまたま若し買つても、これは上司に聞いたら駄目ということで、駄目にせられたら困るという考えで私はいましたので、ですからその後よくはつきりしてからでなければ困るからというので又行きました。そうしたらそれでは場所はどこだということであつて、皆な書類を作つてつて見ようじやないかということの話でありましたので、是非お願いしますということで、結局それからは本当に眞劍にそれをやり始めまして、地價が何ぼくらい、向うは何ぼ、こつちは何ぼというので、当時長官は價格が三千円くらい、私は二千円くらいですと、なぜ私が二千円くらいだと申上げた理由は、直ぐ前に甲斐物産というのがございまして、あのお宅の地所は二千五百円で賣買された直後であります。それで私も自分映画館を買つた直後でありましたので、通りは三千円しましようけれども、その奥の方は二千円と見て、平均で二千五百円くらいになると、こういうことから價格の査定をして、えらい儲けもある。土地ももつと沢山買つたらどうかということで、それでは、どうせそこに空いておる地所がありますので、千二百坪に、倍にしましよう。倍にしてもまだ賃貸價格の差も大変あるので、それでは君、檢事も今困つておるので、檢事官舎でも建つたらどうか。計算したら幾棟建てられると長官に言われました。で私はもう自分が儲けるつもりの計算でありますから、最低の線で、自分の方の地價を最高の價格に、又それから買う方の價格を二千五百円にして、その價格の差を一坪一万円と、こういうふうに見まして、これだけで概算が出ますといつてつて行つたところが、長官の考えで皆さんが寄りまして、それで君地價が違い過ぎる、それでは君が儲け過ぎるので、今一棟の官舎を建つたらどうかと言われました。私は工事を自分でやるつもりでありましたから、木材は持つておるという関係で、是非それはいいと、私はあすこ自分のものにしよう、幾らにしても金を儲けることができると思いまして、とつさにいいですと答えまして、今の姿でやるようになつたんです。
  862. 岡部常

    理事岡部常君) 今まで承わつたところでは檢事正が働きかけたようですね。
  863. 上村文一

    証人上村文一君) 檢事正さんが今のような話を……あつちこつちから言つて來ますので、どうせこれは開放しなければならん。
  864. 岡部常

    理事岡部常君) 甲府では目拔きの地帶で、あなたもあすこ映画館を持つておるという関係からして、よく土地の條件というものは分りますね。
  865. 上村文一

    証人上村文一君) 分ります。
  866. 岡部常

    理事岡部常君) 町内会の人が連名で、あすこを開放した呉れということで運動があつたことは、あなたもよく承知でしようね。そのときあなたが出し拔いて、いいうまい汁を吸おうということになつたわけですね。
  867. 上村文一

    証人上村文一君) 出し拔くということではありませんが。
  868. 岡部常

    理事岡部常君) そうなると、いろいろ反対が起つたり何かするということは直ぐ想像が付くのですが、それをあなたが押切つてやろうとしたのですね。
  869. 上村文一

    証人上村文一君) 反対もありますけれども、どこにも金はないということは私にも分りましたし、一番初めは映画館を建て変えて、観光ホテルが甲府に一つもないので、株を募つてあすこに大きなものを建てるというような一番初めの計画でした。たまたま映画館で相当の株を募つても、現在のインフレ状態からして、出資の金の部面においても大変支障を來しますので、これは商店が一番いいというふうに変つたのでございます。
  870. 岡部常

    理事岡部常君) まあとにかく、あなたの手が入つて、あなたのものになろうとしておるわけですね。筋が……。
  871. 上村文一

    証人上村文一君) はい。
  872. 岡部常

    理事岡部常君) そのために一緒仕事をしようと思つてつた人が皆目算が外ずれたわけですね。
  873. 上村文一

    証人上村文一君) そういうことがあると思います。
  874. 岡部常

    理事岡部常君) それであなたにいろいろ談判して來る人があろうと思いますが、どうですか。
  875. 上村文一

    証人上村文一君) 今まで談判して來た者は中上さんという方が一人あつただけで、僕らが運動して、こういう形ができ上つたから、君の計画の中に入れようということは中上さん一人だけです。
  876. 岡部常

    理事岡部常君) それで結果がこういう委員会が働かなければならなくなつたのですが、こちらにもいろいろな方面に投資した人があつた。沢山の方々を向うに廻したわけですね。それについてあなたはどう思つておりますか。
  877. 上村文一

    証人上村文一君) 私の考えでは、先程申上げましたように、六百坪の地所を、こちらも六百坪でやるから、向うも六百坪の地所で、あれだけの檢事正官舎をそのままそつくり入れたら、何の関係もなくそれが入る。そうしてとにかく、而もその計算において最高の負担をしまして、坪、当時私の計算でやりますと、一万円という價格は本当の時價でございます。その最高の釣合いを取れるまでの計算をしてやつたのだから、それだけにしなかつたら、儲けるという基準が付かなかつたら、誰もやらないではないか。私はあすこ名前を残す。館を優勢にするという、それだけの考えでやつたのでございまして……。
  878. 岡部常

    理事岡部常君) もともとあれですね。意地惡な言い方かも知れないが、もともとあなたが映画館経営しておるから、檢事正官舎に目を付けて、何とかしてあれをものにしてやろうという考えを持つてつたのではありませんか。
  879. 上村文一

    証人上村文一君) 全然そういうことはございません。
  880. 岡部常

    理事岡部常君) それでは檢事正に近付こうと思つたのではありませんか。
  881. 上村文一

    証人上村文一君) とんでもございません。私は全然そういうことはございません。皆さんが側から働きかけたことを聞きまして、檢事正から聞きましたり、町内の人からそう言われまして、初めて自分考えたのでございます。
  882. 岡部常

    理事岡部常君) それではそのときの計算と実際とはどんなふうですか。
  883. 上村文一

    証人上村文一君) 実際の現在の計算でやりましたら、当時の計画より三段階にこの計画を変更されております。第一段階におきましては、できるだけ小さく割つて、数多くの人を入れて、マーケツト式のものにしよう。一人から沢山の、例えば二十坪のものを一つやつて二十万円貰うよりか、十坪のものをその倍やつた方が金を出すにも、人を入れるにも好都合だという意見がありまして、そういうふうに割ろうというので割つたのでございます。それで中上さんという人の案が出まして、共同経営ということで、土地將來永久に上村のもので、土地の権利金を取つて、そうして毎日の賣上歩合金を取る。こうした方があなたはいいだろうと言われました。私も考えまして、自分の得になるというので、あなたの計画通りというので書類を作つて貰いまして、その通りで皆さんに働きかけましたが、誰も飛付いてやろうという人がなくて、人は一杯來ましたけれども、條件を聞いて帰つてしまいました。たまたまそのときには、私は官舎の工事をやつておりまして、工事費は、金は寄附して貰うという状態でありまして、こんなことでは駄目だというので、土地を付けて、土地を讓渡するという形態に変えたのでございます。それを変えましたけれども、変えても表の道路に面した部分だけは、どんどん金になつたのでございますが、今度は中の方がどうしても金にならない、それで輿石太郎という事業界では経驗者でございますが、お話し申上げましたところが、上村君、ただ道路を丁の字に付けるなんて、とても君駄目だよ、川の中でも魚は淀みがなくては棲まんということから、これはロータリイか何か変つたことをしなければ駄目だというふうな意見を承わりましたので、そのロータリイをした部分だけは、後で金を掛ければいい、そういうふうになさいということで、そこで又計画を変えまして、今度は丁の字に道路を入れ、ロータリイを四十坪取り、そうして後の残つた所をみんなそれだけの地價を上げまして、やつてつたのでありますが、相当そのときロータリイを取りますことになりまして、工事を、檢察廳の工事の方も、物價が非常に上つて参りましたし、自分でやろうと思いました工事を人に受渡しをしまして、その受渡工事がちよつと倍額にもなるような金額になつて参りました。そうして而も中に道路の犠牲を拂い、そして家と背中合せでよいと思うし、建築の設計をしましたが、いよいよ建てる段階になりますと、二軒背中合せにして、間に御不浄なんかを取るだけの場所がない、そのためにはどうしても眞ん中を三尺か五尺あけなければならんというようなことが出て來まして、土地本当に少くなつて参りました。それで私は、この官舎の工事にかかる金と釣合せまして、同じ價格にはどうしても上らん、損になつて困るということで、地價を段々上げて参つたわけでございます。現在の姿では、私の方でむしろ道路の舗装とか、共同便所を百貨店の中に入れるというふうな負担を見ますれば、むしろ計算上では損をしておるという形になつております。
  884. 岡部常

    理事岡部常君) それでも今大部分できておりますか。
  885. 上村文一

    証人上村文一君) 相当七分通り完成しております。
  886. 岡部常

    理事岡部常君) そしてその土地の所有権の関係はどういうことになつておりますか。
  887. 上村文一

    証人上村文一君) 所有権関係は、私が讓渡するときには、上村文一の名義になつたときに、貴殿の名前に分讓するということを條件に分讓いたしました。
  888. 岡部常

    理事岡部常君) それでもう全体の五百何坪の土地はあなたの所有になつているのですか。
  889. 上村文一

    証人上村文一君) なつていません。
  890. 岡部常

    理事岡部常君) どういう関係になつていますか。
  891. 上村文一

    証人上村文一君) どういうといつて……。
  892. 岡部常

    理事岡部常君) 罹災地の特別の法令がありますがね。何か……。
  893. 上村文一

    証人上村文一君) 官地でございますか。
  894. 岡部常

    理事岡部常君) 官地のあれはまだ評價できない。
  895. 上村文一

    証人上村文一君) 價格の評價は官地の命令がありまして、價格の評價がございません。
  896. 岡部常

    理事岡部常君) 評價だけが残つておる、完結しないと完全なものにならんわけですね。
  897. 上村文一

    証人上村文一君) そうでございます。
  898. 岡部常

    理事岡部常君) そして朝氣町の方の土地、家屋はどうなつておりますか。
  899. 上村文一

    証人上村文一君) 家屋もそのままになつております。
  900. 岡部常

    理事岡部常君) そのままというのは誰の所有ですか。
  901. 上村文一

    証人上村文一君) 誰の所有ということにも現在はなつていません。
  902. 岡部常

    理事岡部常君) 登記なんかも全然ないんですか。
  903. 上村文一

    証人上村文一君) まだできておりません。
  904. 岡部常

    理事岡部常君) 保存登記も何もないのですか。
  905. 上村文一

    証人上村文一君) はい、現在まで出ておりません。
  906. 岡部常

    理事岡部常君) 税金なんかは……。
  907. 上村文一

    証人上村文一君) 税金関係のことも出ておりません。
  908. 岡部常

    理事岡部常君) 法務廳のものにもなつていないのですね。
  909. 上村文一

    証人上村文一君) はい、まだなつていません。
  910. 岡部常

    理事岡部常君) 宙ぶらりんですか。
  911. 上村文一

    証人上村文一君) 現在はこの問題が出まして、宙ぶらりんになつております。
  912. 岡部常

    理事岡部常君) 保險なんかどうなつているのですか。
  913. 上村文一

    証人上村文一君) 掛けておりません。
  914. 岡部常

    理事岡部常君) それは結局どうするつもりですか。
  915. 上村文一

    証人上村文一君) 私にどうすると聞かれましても、私はそういうことでいいから工事をせよと言われまして、工事をしたのでございまして、私はこの町会や皆さんを信じて、あの人の言うことですからやつてもいいのだということでありますから……。
  916. 岡部常

    理事岡部常君) 旧檢事正官舎土地から出る地代とか権利とか、そういうものはあなたが取つておるのですか。
  917. 上村文一

    証人上村文一君) そうでございます。
  918. 岡部常

    理事岡部常君) それはどこからもやかましいことを言われないのですか。
  919. 上村文一

    証人上村文一君) 事実上そういうふうにやつてよろしいということで、私は自分がやるということは、長官官舎移轉を終りましたし、檢事の官舎の約束のものも履行して建つてしまつたのであります。又当然私は自分のものだと自分では思つておるのでありますが。
  920. 岡部常

    理事岡部常君) 先程からお話の、初めは六百坪なら六百坪買える。それが駄目になつた。それで千二百坪買つたわけですね。それで換えようと思つたけれども、それもうまく行かないので、それでまあ今羅災地の特別な法律の、何と言いますか、官地指定ですか。
  921. 上村文一

    証人上村文一君) そうでございます。
  922. 岡部常

    理事岡部常君) その手続の途中なんですね。
  923. 上村文一

    証人上村文一君) そうでございます。
  924. 岡部常

    理事岡部常君) その官地交換のためのいろいろな手続はあなたが考えたのですか。
  925. 上村文一

    証人上村文一君) いいえ、私は全然知りません。書類上や役所のことは知りません。
  926. 岡部常

    理事岡部常君) どこの考えですか。
  927. 上村文一

    証人上村文一君) それは檢察廳の方でやつて下さつたと思います。
  928. 岡部常

    理事岡部常君) すべて交換の條件がいろいろ変つて來たのは皆檢察廳の方で考えて呉れたのですか。
  929. 上村文一

    証人上村文一君) そうでございます。
  930. 岡部常

    理事岡部常君) そのときに法務廳の会計課長が行つたり、法務廳関係の方が行つておりますが。
  931. 上村文一

    証人上村文一君) それは私お出でになつたことは全然知りません。
  932. 岡部常

    理事岡部常君) それから大藏省関係の方も行つておりますね。
  933. 上村文一

    証人上村文一君) はい。
  934. 岡部常

    理事岡部常君) それはあなた自分では関係しなかつたのですか。
  935. 上村文一

    証人上村文一君) お目にかかつたことありません。
  936. 岡部常

    理事岡部常君) 一緒なつたことありませんか。
  937. 上村文一

    証人上村文一君) ございません。
  938. 岡部常

    理事岡部常君) 東京から、こういうお客さんが來たからというので会つているんですが。
  939. 上村文一

    証人上村文一君) 全然会つたことありません。私は、ですからその方たちが皆行つて、現地を見聞すればいいというお話で帰つて來て、見てやつてもいいと言つたんです。だから君やつて見ろと、こう言われたから始めたのであります。私はその席にも、お客さんの皆さんにも顔を合わしたことはございません。
  940. 岡部常

    理事岡部常君) それでも法務廳の事務官が行つたときに、あなたと一緒に飲食店、宿屋なんかで飯を食つておる。
  941. 上村文一

    証人上村文一君) それは関係の違う役所の方じやないかと思います。
  942. 岡部常

    理事岡部常君) 違うというと大藏省の方ですか。
  943. 上村文一

    証人上村文一君) 大藏省というのは全然知りません。
  944. 岡部常

    理事岡部常君) 檢事の官舎を建てるために、法務廳から資材の配給を受けておりますね。
  945. 上村文一

    証人上村文一君) 檢事の官舎を建てるために頂きません。
  946. 岡部常

    理事岡部常君) そうですか、配給申請もされなかつたですか。
  947. 上村文一

    証人上村文一君) いたしません。
  948. 岡部常

    理事岡部常君) あなたの保護事業のためですか。
  949. 上村文一

    証人上村文一君) そうでございます。
  950. 岡部常

    理事岡部常君) 配給の申請だけしたのですね。
  951. 上村文一

    証人上村文一君) 保護事業の方の申請をいたしました。
  952. 岡部常

    理事岡部常君) 官舎の方は……。
  953. 上村文一

    証人上村文一君) いたしません。官舎の建築の許可は縣の方でやりました。
  954. 岡部常

    理事岡部常君) 何でもしたということを聞いておるのですが。
  955. 上村文一

    証人上村文一君) 私の方ではやつておりません。
  956. 岡部常

    理事岡部常君) ああそう、したけれども許されなかつたのじやないかと思うのです。あなたの知つておる限りでは保護事業の方だけですか。
  957. 上村文一

    証人上村文一君) そうでございます。
  958. 岡部常

    理事岡部常君) それは正式の手続で相当なものが行つておるわけですね。
  959. 上村文一

    証人上村文一君) 頂いております。
  960. 岡部常

    理事岡部常君) それは全部使われましたか。
  961. 上村文一

    証人上村文一君) 使つたものと残つておるものとございます。
  962. 岡部常

    理事岡部常君) それはどうして残したのですか。今資材の少ないときで誰でも飛び付いて、配給があれば欲しいところじやないですか。
  963. 上村文一

    証人上村文一君) 配給の欲しいというようなものもございますし、それから配給を頂きましても、チケツトがなかなか現物に変らないものが相当に沢山ございます。同時に自分たち不必要なものも入つて参ります。不必要なものは無効にしてしまいましたし、それから幾らこつちで必要のものでも、お願いしてもまだチケツトが現物化さないものもございます。自分の工事に使いますのに外から見付けて、チケツトを使わなくてやつた部面も沢山ございます。
  964. 岡部常

    理事岡部常君) 実際上は、その配給を受けたもので檢事官舎の方なんかの建築は新築したのでしようね。
  965. 上村文一

    証人上村文一君) そうではございません。
  966. 岡部常

    理事岡部常君) そうでない、全然別ですか。
  967. 上村文一

    証人上村文一君) 全部河野工務所に託してしまつてあるのであります。
  968. 岡部常

    理事岡部常君) 請負ですか。
  969. 上村文一

    証人上村文一君) 請負でやつたものですから。
  970. 岡部常

    理事岡部常君) そうすると配給を受けたものと、官舎とは全然別問題になりますか。
  971. 上村文一

    証人上村文一君) 全然やつているものが違います。私はその官舎の方はただ幾らという金額でお渡ししただけでありまして、それから官舎は縣から頂きましたもののチケツトをそのまま工務所に渡しまして、それでやつたものでありますから、足りても、足なりくても構わないという状態でやつたものであります。
  972. 岡部常

    理事岡部常君) それじや、その保護会関係のことだけでよろしゆうございますが、何でもセメントを大分沢山配給を受けておると……。
  973. 上村文一

    証人上村文一君) はい、頂載いたしました。
  974. 岡部常

    理事岡部常君) それをどこかへ流用されたということ。
  975. 上村文一

    証人上村文一君) 全部うちで、もう大体使いました。
  976. 岡部常

    理事岡部常君) その配給のときに法務廳の事務官か誰か行つているでしよう。
  977. 上村文一

    証人上村文一君) その配給のときでございません。この少年團体関係の、少年保護関係の事務官でございます。
  978. 岡部常

    理事岡部常君) それでやはり配給のことを掌つているのでしよう。
  979. 上村文一

    証人上村文一君) そうでございます。配給の申請をいたしました。そうして実際にどこへどういうものを建てるかということの調査のためにお越しになつた方であります。それから又團体はどういう團体であるかということのために月に一度くらい、それから本省からも月に一度でありますが、審判所あたりでは月三回くらいは、その團体を廻つて少年の状況やなんかの視察をいたします。
  980. 岡部常

    理事岡部常君) それから次に塩川少年補導所ですか、あなたのは。
  981. 上村文一

    証人上村文一君) はい。
  982. 岡部常

    理事岡部常君) 塩川というのが本当ですかね。
  983. 上村文一

    証人上村文一君) はい。
  984. 岡部常

    理事岡部常君) それはどういうふうにしておられますか。
  985. 上村文一

    証人上村文一君) 塩川少年補導所は、私が少年補導部の主管者でございまして、そうして先程申上げましたように、事件を起した者は罪滅しで、お前がやれということから始まつたのでありますが、たまたま書類を受けて行きますときに、これは保護司になつてというようなお話がありましたが、前があるから、だから保護司にはなれないというようなことを審判所長さんに言われました。それでそれじや保護司は兄さんにやつて頂いて、私は主管者ということで、手続を出しまして、そうして認可になつたのでございます。
  986. 岡部常

    理事岡部常君) それで今までどれくらい補導されたですか。
  987. 上村文一

    証人上村文一君) 全部今いる子供、出た子供全部で六十名ぐらいだと思います。
  988. 岡部常

    理事岡部常君) それから先程お話なつ少年の町ができれば、それと連繋して続けて行こうと、こういうお考えですか。
  989. 上村文一

    証人上村文一君) はい、そうでございます。
  990. 岡部常

    理事岡部常君) それで今までの成績としてはいい方ですか。
  991. 上村文一

    証人上村文一君) 自分では成績というようなことは分りませんけれども、でもまあ有名の家庭の子弟を審判所長の命で預りまして、その後出た子供が又私のところへ帰つて來て働いていますのもありますし、それから帰りました子供の家庭からもちよちよい私のところへも出て参りますし、つい一昨日も靜岡の神田代議士のお坊つちやんなんか御年始に出て來て呉れますし、自分たちでは熱意を持つて一生懸命やつているつもりでおります。
  992. 岡部常

    理事岡部常君) あの池田檢事正が計画しておられます少年の町ですね。あれは初めの計画はあなたが参画していますか。
  993. 上村文一

    証人上村文一君) 初めの計画は知りませんです。私がもう少年の町の山の調査を始めました頃は、七八月頃から山へ行くようになつたのでありまして、それまでにその山の設定とか、それからどういう形態でお越しになるとかいうことは、大体もうでき上つてつたようでありました。
  994. 岡部常

    理事岡部常君) これは池田檢事正考えでしようね。主として。
  995. 上村文一

    証人上村文一君) そうだと思います。
  996. 岡部常

    理事岡部常君) あなたも役員になつておるのですね。
  997. 上村文一

    証人上村文一君) 役員になつております。
  998. 岡部常

    理事岡部常君) それはどういう関係からですか。
  999. 上村文一

    証人上村文一君) 山を一番先にやりました。山の調査をしますときに、結局道路もありませんし、それから又第一番が建設の事業でありますから、建設するまで君のように若い奴が第一線に立つてつて呉れ、増富の瑞牆山の隣り山でありますから、地形に慣れておりますから、而も少年團体をやつておるから、君が第一線を建設までやつて呉れんかというような話でありまして、それから私がやつて参りました。
  1000. 岡部常

    理事岡部常君) あなたはその瑞牆山の方に百万円寄附するということは、寄附したのですか。
  1001. 上村文一

    証人上村文一君) まだ百万円いたしませんが。
  1002. 岡部常

    理事岡部常君) 寄附ですか、出資ですか。
  1003. 上村文一

    証人上村文一君) 寄附じやない、全部理事者の思い思いの出資でございます。
  1004. 岡部常

    理事岡部常君) 寄附と出資ということは大部違うようですが、それが出資するのに何か目処がありましたか。成功の見込みが十分当つておりますか。
  1005. 上村文一

    証人上村文一君) 自分では大体……私には外の事業形態のことは分りませんが、木材業を営んでおります関係上、あそこには推測百十万石の木材がある。あれを木工、或いはいろいろの事業の形態に変えて行けば、必らず少年收容所にしても、罹災者を入れましても、大きな事業として、事業形態でやつて行けるという自信がございます。
  1006. 岡部常

    理事岡部常君) 山林なんかは縣のか、國有材かどつちかを拂下げたのですか。
  1007. 上村文一

    証人上村文一君) 恩賜林です。
  1008. 岡部常

    理事岡部常君) 無償ですか。
  1009. 上村文一

    証人上村文一君) 有償の拂下を順次年間計画で下げるようにお願いしてあるのです。
  1010. 岡部常

    理事岡部常君) それはあなたの実業家の見立で見れば採算は採れるのですか。
  1011. 上村文一

    証人上村文一君) 採れると思います。
  1012. 岡部常

    理事岡部常君) 丸山氏なんか危なかしがつておるようですが。
  1013. 上村文一

    証人上村文一君) ですからこの行き方も私の考では、あの檢事正のお考えのようなままで行きますと駄目だと思います。私は自分たち考えのように、荒武者的にどんどん開拓するという、事業をしながら開拓するということであればできると思います。考え方によつて成功と不成功と出ると思います。
  1014. 岡部常

    理事岡部常君) それでうまく運営ができるようになつたら、そのために少年保護事業が完成するという樂しみもあなたは見ているわけですか。
  1015. 上村文一

    証人上村文一君) そうでございます。
  1016. 岡部常

    理事岡部常君) 一肌脱いてその中に入ろうという氣持なつたんですか。
  1017. 上村文一

    証人上村文一君) 一番先に私が山の調査を始める頃は、非常にそういうふうな、而も修道院とお御堂と学校でもできてしまえば、カトリツクが入つて來る。カトリツクの一つの團体としての行き方で行けば、これは資本力においてもいいということで、一應でき上るまで何とかこれを何して行こうというつもりで、当時の考えでは自分の資産を捨てても、どこまでもやつて見たい。こういうふうに考えたのです。
  1018. 岡部常

    理事岡部常君) 成る程それで百万円の出資を約束されましたね。それはあなたからですか、或いは檢事正から求められたのですか。
  1019. 上村文一

    証人上村文一君) これはずつともう私がそれを始めたのは一昨年でありますから、一昨年の大体七八月頃から私が山に入りましたから、それから直ぐ金がカトリツクの方から寄附でも、援助の金でも來るというような氣がしておりました。ところがなかなか参りません。ところが新聞では報道し、世間の人はいつできるか、どうするのだということを言われまして、まあ役員とか、理事者とか、先立つ人は困つて來たわけでありまして、どうせやるのであるから、皆で山に登つてみようというので、おのおの山に入り込みました。どうせやるなら自分たちで金を出してやつてしまおうじやないか、こういうことで、あなたどのくらい出せ、あなたはどのくらい出せということを今日決めようじやないかということでありまして、私はそこで考えまして、百万円すると申上げたのは、第一線をやると世間の人は山に木があるから、上村の奴はいいことをやるに違いないと言われるから、それで私が出資しなければ皆さんにも出して頂けないだろうと考えました。それで百万円する。そういうふうに私が申上げた。事実やるつもりでおります。
  1020. 岡部常

    理事岡部常君) 外の理事者も同じような氣持でしようか。
  1021. 上村文一

    証人上村文一君) 全部同じだと思います。出資する方は……。
  1022. 岡部常

    理事岡部常君) そこに営利を営むとか、私利を営むという考えはないでしようね。
  1023. 上村文一

    証人上村文一君) そんなことは、まだ営利どころでございませんから、まだ事務所と、それから少年の寮舎と、電氣工事が終つたばかりでありまして、これから道路の建設とか、まだまだとても大変の仕事が残つておりますから。
  1024. 岡部常

    理事岡部常君) これはあなたが商賣人とか事業家としての建前でなく、社会事業家としての建前でやつたんですか。
  1025. 上村文一

    証人上村文一君) そうでございます。
  1026. 岡部常

    理事岡部常君) その前の耕地の問題とは違いますか。
  1027. 上村文一

    証人上村文一君) 違います。
  1028. 岡部常

    理事岡部常君) 併しそう言つちや甚だ言いにくいのだけれども、前にいろいろ事件を起したりした関係から、やはり檢事正関係しておる仕事に出資して置くと、何かいいことがあるのじやないかというようなことでも考えたんじやないですか。
  1029. 上村文一

    証人上村文一君) そんなことは全然考えません。
  1030. 岡部常

    理事岡部常君) 執行猶予なつたお礼だとかいうような氣持もあなたはあつたんじやないのですか。
  1031. 上村文一

    証人上村文一君) そんな氣持はありません。
  1032. 岡部常

    理事岡部常君) いろいろな檢察廳との関係を仲立つておるのは名取君が中に立つておるんですね。
  1033. 上村文一

    証人上村文一君) はい、私のところへ來ますまでは、名取さんが大体そういう事業をやつておりました。
  1034. 岡部常

    理事岡部常君) あなたのところに今働いておるわけですね。
  1035. 上村文一

    証人上村文一君) そうでございます。
  1036. 岡部常

    理事岡部常君) そうするとやはり檢察廳との連絡は、常に名取君がやつておるわけですね。
  1037. 上村文一

    証人上村文一君) 檢察廳との連絡というようなことは、現在ではございませんけれども、当時は名取さんがやつて呉れました。
  1038. 岡部常

    理事岡部常君) 名取君とはどういう関係ですか。
  1039. 上村文一

    証人上村文一君) 名取さんとは、申上げますと、只今少年の町をやつて行きます行程の中に、たまたま名取さんが追放になつたということで、名取さんとしては、それまでは知らなかつたのでありますけれども、追放になるというときに、檢事正から少年の町の仕事をさせるなら、名取が追放になるのでけれども、どこか職を見付けなければならんけれども、少年の町をやるのに、よそへ行つてしまうと仕事ができんから、君のところでどうですか。あの人がどこかへ行つてしまつて、山を折角この形態にまでなりつつあるものを、全然知らない人にこの山を委ねて行くことは困る。それじや私がとにかく月給を出しましようということで、私が月給を出しまして、本当は私のところへ來ておるという名前ですから、本当はやつて貰わなければなりませんから、当時の山の拂下げの金とか、増富村の土地の開放とかいうようなことで、一生懸命取引をやつて呉れまして、私の仕事はそんなにして呉れなかつたのであります。それでたまたま長官から月給が安過ぎるとか何とかいうことを言いましたけれども、私は少年の町から貰いなさいというようなことを申したのですけれども、この仕事に投資しておる金もありませんし、そのままでいいということでずるずるやつておる間に、結局繋がつて自分のところに來て、追放でよそへどく人もあるということで、私が月給を出しましよう。少年の町を一緒に倒れるまでやりましようなんといつて、我々はどこにも行かんで、全部私のものになりなさいということになりまして、私のところに入つて参りました。
  1040. 岡部常

    理事岡部常君) 月給五千円出しておるとかいうのですが、そのくらいですか。
  1041. 上村文一

    証人上村文一君) 現在まだ五千円でございます。
  1042. 岡部常

    理事岡部常君) ところが先生は、あなたから家を建てて貰つておるということです。
  1043. 上村文一

    証人上村文一君) 建ててやつております。
  1044. 岡部常

    理事岡部常君) あなたはそれは土地ぐるみ本人にやつたんですか。
  1045. 上村文一

    証人上村文一君) そうでございます。
  1046. 岡部常

    理事岡部常君) ずい分大変な金ですね、
  1047. 上村文一

    証人上村文一君) 大変でございます。大変でございますが、私も小僧から番頭で育つて來まして、人に使われたこともございますし、從業員も大勢使つております。大体使うとか使われるというようなことは、眞の自分の生きる最終点まで見ないと人は働きません。ですから名取さんに働いて頂くには、どうしても本人の最後まで考えてやらなければ働きません。それで最初私はこういう話をしました。私は名前は忘れましたが、何とかいう人たちは、家を建ててやるから、うちの工場へ來て呉れないかと言われるけれども、不思議な縁であなたのところへ來たというので、私でも家くらい建ててあげますと申上げました。そんなに早く建てるつもりはなかつたのですけれども、ところが名取さんのお孃さんがお婿さんを貰うので、実は婿を取るのだけれども、人の家にいて、そうして建てて貰えるなら早くやつて貰いたいというので、少し待つて呉れということを何回も申上げたのでありますけれども、名取さんができるなら早くやつて貰いたいというようなことで、名取さんに攻められて、それじやしようがない、やりましようということで、建ててやることになりました。建ててやりますと、今度は名取さんは自分のことでありますから、今日は何がない、これがないということで結局どんどん名取さんの方は私の家よりも早くできた。
  1048. 岡部常

    理事岡部常君) 一体土地と家屋でどのくらいですか。
  1049. 上村文一

    証人上村文一君) 土地は若松町に八十五坪五合という土地がありまして、それは調停裁判で爭つておりました。だけれども爭いが一年半くらい続いておりまして、結局私が爭いでは敗けてその家に人を入れるようになりました。だから名取さんその地所はあなたに上げます。それは当時金額にしまして一万二三千円でございます。今度建てます家は工務所へ渡しました金額は十四万五千円で渡しました。それから自分の家にあります古い疊とか、それから瓦とかいうようなものを渡しましたから全部では二十四、五万円になつております。
  1050. 岡部常

    理事岡部常君) 土地はいろいろ文句が付いているまま渡したのですか。
  1051. 上村文一

    証人上村文一君) それは自分で家に住んだわけです。
  1052. 岡部常

    理事岡部常君) 併し相当なものですね。
  1053. 上村文一

    証人上村文一君) 現在の時價から言いましたら相当になります。
  1054. 岡部常

    理事岡部常君) それは今後あなたの仕事の上で使うとしても、世間普通の雇傭関係だけれども、そんな金を出すところはどこにも日本國中ないですね、おかしいな。
  1055. 上村文一

    証人上村文一君) おかしくないです。私の考えでは、私のところには雨宮という從業員は、田舎の方で家を建つてやりますし、そのくらいにしなかつたら眞に働く者はございませんと思います。
  1056. 岡部常

    理事岡部常君) それは官舎以上ですね。
  1057. 上村文一

    証人上村文一君) はい。
  1058. 岡部常

    理事岡部常君) だからそこに何か一物ありそうに考えられるのも無理はないじやないですか。
  1059. 上村文一

    証人上村文一君) 本当にお氣の毒なところはあります。つい先日まで経営主で車で歩いていたのに、夜九時前に帰ることはない。自轉車に鞄を付けて遅くまで働いておりますし、ああいうところを見ますと、金銭ずくではない。建つてやらなければいけないと思いました。
  1060. 岡部常

    理事岡部常君) 一般普通の考えからいうと、何かそこに土地の交換問題に特に絡んでおると思いますね。
  1061. 上村文一

    証人上村文一君) 交換問題には名取さんは加わつておりません。
  1062. 岡部常

    理事岡部常君) そうですか。
  1063. 上村文一

    証人上村文一君) はい。
  1064. 岡部常

    理事岡部常君) 名取はその当時事務官じやなかつたのですか。
  1065. 上村文一

    証人上村文一君) 事務官でございました。
  1066. 岡部常

    理事岡部常君) だから一番働いていたのじやないですか。そういうところを見込んでやつていたのじやないですか。
  1067. 上村文一

    証人上村文一君) 全然そういうことはありません。ここでそういうふうなことを申上げるのはどうかと思いますが、私も眞にそういうふうにするつもりじやなかつたのですけれども、少年の町の経営の行き方の中に、檢事正と私と名取さんという三人の軋轢の問題が出ました。何となれば、名取さんを役員にしますときにも、いよいよ出資をして事務所をやり、お前は山に行つて調査をしろというようなことで、私も金を投げ出したりする矢先に、私も妻を山に連れて行きましたり、自分の從業員を総動員しまして山にやつたのでありますが、たまたま山から帰つて來ましたら、檢事正から理事に君たちをしても、君は前科もあるし、名取は追放だし、こういう保護事業にはどうかなあと言いましたので、名取さんと自分は泣きました。こんなことでいつ拾てられるか分らん。自分は非常に残念だというようなことで、折角これまで來たし、世間体もあるから、人目もあるから附いて行こうというようなところで、私は、名取さんがどこか就職してでも行くという話もありましたけれども、まあまあそんなことを言つて人目が惡いし、北巨摩の人の物笑いになつて行くよりも、今一應張り切つて行こうじやありませんかということで、又人足の賃金問題で、山で拂うお金が二百五十円増富村の青年に拂つたのです。檢事正が日本の経済を知つておるか、お前の自由にどんどんやるというような事業形態では保護事業はできない。日本の労働基準法によると金額は百四十何円だ。それを二百円も出したら何ぼ金があつても足りない。お前は駄目だと言われて私もうんと叱られました。それで私も淋しい氣持になりましたから、何ぼ一生懸命にやつても、こんなことを言われるのではというので、名取さんに檢事正が何ぼ用を言付けてもちつともはかが行かん、名取さんのお考えでは、私の用もありますし、長官が役所に行きましても、長官方が役所にお越しになれば直ぐ書類を作つたり急いで下さいますけれども、順序を待つたりしますと遅くなります。そうすると遅過ぎる、あいつは役に立たんということを言われます。それで今度は俺たちは俺たちで、自分たち二人で立上ろうと……。
  1068. 岡部常

    理事岡部常君) 二人でやつて行こうということになつたわけですね。
  1069. 上村文一

    証人上村文一君) そういうことでございます。
  1070. 岡部常

    理事岡部常君) ときに法律專門学校設立のことも聞いておられますが、あれは寄附金を求められたようなことはありませんか。
  1071. 上村文一

    証人上村文一君) あれは私は学校の方のことは全然関係はありません。
  1072. 岡部常

    理事岡部常君) ありませんか。
  1073. 上村文一

    証人上村文一君) はい。
  1074. 岡部常

    理事岡部常君) 相談を受けたこともないですか。
  1075. 上村文一

    証人上村文一君) 受けたこともございません。
  1076. 岡部常

    理事岡部常君) ときに檢事正官舎などにあなたの工場ですか、精米所などから物を持つて行つたりなんかしたようなことはないですか。
  1077. 上村文一

    証人上村文一君) そういうことはございません。
  1078. 岡部常

    理事岡部常君) お米なんか余裕があつて、そういうものを持つてつたのじやないですか。
  1079. 上村文一

    証人上村文一君) お米の余裕なんかあつたことはございません。とにかく瑞牆山へ十何回か行つておりますから、行くたびに私のお米を持つて行きました。長官官舎へ、お宅へ差上げるなんということは全然ございません。瑞牆山の調査に行くのに使うだけでも相当数量でございまして……。
  1080. 岡部常

    理事岡部常君) 池田檢事のところへあなた届けて突つ返されたということがあるそうですが、どうですか。
  1081. 上村文一

    証人上村文一君) あります。
  1082. 岡部常

    理事岡部常君) 本当に返されたのですか。
  1083. 上村文一

    証人上村文一君) そうです。
  1084. 岡部常

    理事岡部常君) その流儀でやはり檢事正のところへ持つてつたのじやないですか。
  1085. 上村文一

    証人上村文一君) 持つて行きません。
  1086. 岡部常

    理事岡部常君) そういうあれがあるのでしようね、実は……。
  1087. 上村文一

    証人上村文一君) 長官官舎へ持つてつて差上げたものは全然ございません。
  1088. 岡部常

    理事岡部常君) あなたも大きい商賣人の主人だから、知らない間に持つて行くというようなこともあるのじやないですか。
  1089. 上村文一

    証人上村文一君) 知らない間に持つて行くというようなことはございません。官舎とか、少年の町に使えというような場合には私は持つてつて、長官官舎中心に山の事業の檢査などに行きますときに、例えば東京からお客さんが來て山の調査に行くというようなときには、酒とか、米とか、魚とかいうようなものは私は届けて置きまして、そこから車で持つて行つたことは何回かございますけれども、お宅へ差上げたというようなことはございません。
  1090. 岡部常

    理事岡部常君) それじやどうも有難う、御苦労さんでした。    〔証人名取忠雄君著席〕
  1091. 岡部常

    理事岡部常君) 名取忠雄君ですね。
  1092. 名取忠雄

    証人(名取忠雄君) そうであります。
  1093. 岡部常

    理事岡部常君) 当法務委員会甲府事件について証人としてお尋ねいたしたいことがあります。予め宣誓をして頂きたいと思います。    〔総員起立証人は次のように宣誓を行なつた〕    宣 誓 書  良心に從つて眞実を述べ、何事もかくさず、又、何事もつけ加えないことを誓います。        証人 名取 忠雄君
  1094. 岡部常

    理事岡部常君) 御宣誓の上は、法律で制裁が決まつておりますから、その点予め御承知願います。それに反しないように……。
  1095. 名取忠雄

    証人(名取忠雄君) 承知しました。
  1096. 岡部常

    理事岡部常君) お年は。
  1097. 名取忠雄

    証人(名取忠雄君) 四十六才です。
  1098. 岡部常

    理事岡部常君) お住居はどこですか。
  1099. 名取忠雄

    証人(名取忠雄君) 甲府市疊町十二番地の二です。
  1100. 岡部常

    理事岡部常君) 職業は。
  1101. 名取忠雄

    証人(名取忠雄君) 職業は会社員でございます。
  1102. 岡部常

    理事岡部常君) どういう会社ですか。
  1103. 名取忠雄

    証人(名取忠雄君) 山梨被服工業株式会社。
  1104. 岡部常

    理事岡部常君) それだけですか。
  1105. 名取忠雄

    証人(名取忠雄君) その專務取締役をやつております。
  1106. 岡部常

    理事岡部常君) それだけですか、外に何か事業はありませんか。
  1107. 名取忠雄

    証人(名取忠雄君) 檢事正のやつております財團法人瑞牆山國際少年の町の理事ということになつております。
  1108. 岡部常

    理事岡部常君) それだけですね。外に社会事業など関係しておられないのですか。
  1109. 名取忠雄

    証人(名取忠雄君) 外にはありません。
  1110. 岡部常

    理事岡部常君) ありませんね。
  1111. 名取忠雄

    証人(名取忠雄君) はあ。
  1112. 岡部常

    理事岡部常君) 経歴のあらましをおつしやつて下さい。
  1113. 名取忠雄

    証人(名取忠雄君) 経歴の大要を申上げますと……。
  1114. 岡部常

    理事岡部常君) 元警察官をやつておられたそうですね。
  1115. 名取忠雄

    証人(名取忠雄君) そうであります。
  1116. 岡部常

    理事岡部常君) それから。
  1117. 名取忠雄

    証人(名取忠雄君) 警察官をやつておりまして、日下部の警察署長から、檢察廳の檢察事務官に入つて参りました。
  1118. 岡部常

    理事岡部常君) それから檢察事務官はいつですか。
  1119. 名取忠雄

    証人(名取忠雄君) 二十二年の二月からでございます。
  1120. 岡部常

    理事岡部常君) それから武徳会関係でご追放されたのですね。
  1121. 名取忠雄

    証人(名取忠雄君) そうであります。
  1122. 岡部常

    理事岡部常君) それまでおられた。
  1123. 名取忠雄

    証人(名取忠雄君) はあ。
  1124. 岡部常

    理事岡部常君) それはいつです。
  1125. 名取忠雄

    証人(名取忠雄君) それは二十三年の八月の二十日頃追放になりました。
  1126. 岡部常

    理事岡部常君) それから今の仕事に從事しているのですね。
  1127. 名取忠雄

    証人(名取忠雄君) そうであります。
  1128. 岡部常

    理事岡部常君) そのときには主に瑞牆山の方ですか。
  1129. 名取忠雄

    証人(名取忠雄君) 塩川工業という上村文一氏のやつておりますその関係仕事と、それと兼ねまして、そうして少年の町の仕事をやつておりました。
  1130. 岡部常

    理事岡部常君) 今でも上村氏とは関係がありますか。
  1131. 名取忠雄

    証人(名取忠雄君) 関係があります。
  1132. 岡部常

    理事岡部常君) それは先程の理事長ですか。協会の方の関係ですか。
  1133. 名取忠雄

    証人(名取忠雄君) 何でございますか。
  1134. 岡部常

    理事岡部常君) 協会の理事長とかおつしやつておられましたが、上村氏の会社の仕事をやつておられるわけですね。
  1135. 名取忠雄

    証人(名取忠雄君) そうであります。
  1136. 岡部常

    理事岡部常君) 檢察廳におられたときは、どういう仕事をしておられたのですか。
  1137. 名取忠雄

    証人(名取忠雄君) 檢察事務を全般的にやつておりまして、事件の割当などがずつとありまして、それで捜査……。
  1138. 岡部常

    理事岡部常君) 檢察事務というのは庶務ですね。
  1139. 名取忠雄

    証人(名取忠雄君) 庶務じやありません。檢察事務官として事件の捜査、事件の檢挙、そういう点をやつておりました。
  1140. 岡部常

    理事岡部常君) そうすると次席檢事と同じようなことをやつてつたのですね。
  1141. 名取忠雄

    証人(名取忠雄君) 同じことじやありませんが、それは檢察事務官として、二級の檢察事務官であつたものですから、庶民的の面も一應事務官としてはやつてつたわけです。
  1142. 岡部常

    理事岡部常君) 庶務をやつて……。
  1143. 名取忠雄

    証人(名取忠雄君) はあ。
  1144. 岡部常

    理事岡部常君) それから純粹の檢察事務は次席檢察と同じようなことをやる。振当てとか何とか……あれ全般をやりますと、檢事正か次席のように感じられるが、そういう意味じやないですか。
  1145. 名取忠雄

    証人(名取忠雄君) それは割当を受けまして、そうしてやつておりました。
  1146. 岡部常

    理事岡部常君) 割当の範囲の一般の……。
  1147. 名取忠雄

    証人(名取忠雄君) そうであります。
  1148. 岡部常

    理事岡部常君) そうするとやつぱり被疑者の調べなんかもやりましたか。
  1149. 名取忠雄

    証人(名取忠雄君) やりました。
  1150. 岡部常

    理事岡部常君) 主としてそつちですか、或いは庶務の方ですか。檢事正の秘書みたいな恰好じやないのですか。
  1151. 名取忠雄

    証人(名取忠雄君) そうじやありません。
  1152. 岡部常

    理事岡部常君) そのときに上村文一氏と知合いになつたのは、どういう関係で……。
  1153. 名取忠雄

    証人(名取忠雄君) それは私が追放になりまして、職業に困つたもんですから、そこで檢察廳でも、檢事正を初め、各檢事も心配して呉れましたし、外部でも心配を願いまして、それで結局檢事正少年の町をやるがために、是非一度は一肌脱がんか、こういう話がありまして、檢事正仕事をすると同時に、上村文一氏の仕事の方も手傳つて貰いたい、こういう話がありまして……。
  1154. 岡部常

    理事岡部常君) そのとき初めて上村氏と会つたのですか。
  1155. 名取忠雄

    証人(名取忠雄君) そうであります。
  1156. 岡部常

    理事岡部常君) それでそのときの條件で結局五千円とかいうことになつたのですか。今でも五千円ですか。
  1157. 名取忠雄

    証人(名取忠雄君) 今でもそうです。
  1158. 岡部常

    理事岡部常君) その外に何か上村氏から受けておりますか。
  1159. 名取忠雄

    証人(名取忠雄君) おりません。
  1160. 岡部常

    理事岡部常君) 家を貰つたというじやありませんか。
  1161. 名取忠雄

    証人(名取忠雄君) 家は貰いました。
  1162. 岡部常

    理事岡部常君) それは大変なものじやないですか。受けている一番大きなものじやないですか。
  1163. 名取忠雄

    証人(名取忠雄君) 住居の関係がありませんから。
  1164. 岡部常

    理事岡部常君) 住居の関係は皆困つておるのは日本中誰でもそうです。それが何十万円という價格のある家を貰うというのはこれは大きなものじやないですか。どのくらいの家ですか。
  1165. 名取忠雄

    証人(名取忠雄君) 十七坪五合くらいの家です。
  1166. 岡部常

    理事岡部常君) 時價にするとどのくらいですか。
  1167. 名取忠雄

    証人(名取忠雄君) 時價にしたらどのくらいか換算して見たことはありませんが。
  1168. 岡部常

    理事岡部常君) まさか一万円ではできないでしよう、坪一万円では……。
  1169. 名取忠雄

    証人(名取忠雄君) ただ上村氏が自分に財があり、そういうような関係で割合に安く上つたのじやないかと思います。
  1170. 岡部常

    理事岡部常君) それでもまあ時價に換算するのが人情じやないですかね。土地も付いているそうですが、八十三坪付いておるとか……。
  1171. 名取忠雄

    証人(名取忠雄君) 八十坪程付いております。
  1172. 岡部常

    理事岡部常君) 甲府つて八十坪の土地がそんなに目くされ金で買えないでしよう。それは大したものじやないですか。家と地所と大体幾らだつたか、時價に換算して分るでしよう。
  1173. 名取忠雄

    証人(名取忠雄君) まあ一万円ぐらいするかも知れませんな。
  1174. 岡部常

    理事岡部常君) たつたそんなものですか。それから家は……。
  1175. 名取忠雄

    証人(名取忠雄君) 家がです。
  1176. 岡部常

    理事岡部常君) それは坪ですか。
  1177. 名取忠雄

    証人(名取忠雄君) 坪です。
  1178. 岡部常

    理事岡部常君) そうするともうそれだけで十八万円、土地は幾らですか。
  1179. 名取忠雄

    証人(名取忠雄君) 土地はあれでどのくらいしますか、五、六万円するかも知れません、五万円ぐらいするのじやないかと思います。
  1180. 岡部常

    理事岡部常君) そうすると随分大きい金じやないですか、如何にインフレの時でも、それだけ貰うというのはどういう因縁から貰えるのですか。
  1181. 名取忠雄

    証人(名取忠雄君) それは最初の約束が住居を心配しよう、住居の関係は心配しよう、それからサラリーは五千円出そう、こういう話から始まつたのです。
  1182. 岡部常

    理事岡部常君) 一回役人を辞めた人が、そういう好條件で傭われるということが、甲府あたりじや当り前のことでしようか。
  1183. 名取忠雄

    証人(名取忠雄君) まあそういう類例は知りませんが、私の場合には外の事例もありましたから、私は住居の関係と、少なくともまあ五千円ぐらいのサラリーは貰つても差支えないと、こう考えたのであります。
  1184. 岡部常

    理事岡部常君) そうすると今後の働きによつてそれを償おう、こういうわけですか。
  1185. 名取忠雄

    証人(名取忠雄君) そうであります。
  1186. 岡部常

    理事岡部常君) 今まではあなたはそれを受ける関係はないのですね。今までの関係においては、それを有難く貰うという関係はないのですね。
  1187. 名取忠雄

    証人(名取忠雄君) ありません。
  1188. 岡部常

    理事岡部常君) そうすると今後のあなたの働きに期待しているのですね、向うは……。
  1189. 名取忠雄

    証人(名取忠雄君) そうだろうと思います。
  1190. 岡部常

    理事岡部常君) 今までどんなことをやつておりますか。これからどういうふうに……現在まで上村氏にどれだけの勤めをしておりますか。又今後どういうふうにして行かれるのですか。
  1191. 名取忠雄

    証人(名取忠雄君) 上村氏と最初会いまして、面白い人物だというような考えが浮び、それから塩川工業という仕事の面でできる限り働いてやろう、こういうことで大体庶務的な役割をやつて参りました。
  1192. 岡部常

    理事岡部常君) その庶務的役割という中に、この甲府檢事正官舎敷地の交換問題、そんなふうなものも含まれておるのじやないのですか。
  1193. 名取忠雄

    証人(名取忠雄君) それは含まれておりません。
  1194. 岡部常

    理事岡部常君) 含まれておらない。何か他に例があるようにおつしやいましたが、そんなやはり沢山のものを人から貰つて、家を貰つて、そこへ行つて勤めておるというような例があるのですか、甲府に……。
  1195. 名取忠雄

    証人(名取忠雄君) 私がそういう條件が外にもありまして、そうして上村文一とそういう関係になる前に、曾つての同志というか、そういう関係であなたがおいでになつて一緒に事業するのであれば、家の心配もしましよう、サラリーも食えるだけやりましようという話がありまして、それで私はその方も一應話を聽いて見たり、両方の関係を檢討して見たのです。ところが檢事正社会事業というのは、精神的な要素というものが多分にあるから、同じなんであれば、檢事正仕事上村氏の仕事を兼ねてやる方が、社会的にもいい、こう思つて上村氏の方に走つたわけであります。
  1196. 岡部常

    理事岡部常君) 上村氏とは私的には余程懇意になつてつたのですか。
  1197. 名取忠雄

    証人(名取忠雄君) 爾來懇意になつております。関係を結んでから懇意になつております。
  1198. 岡部常

    理事岡部常君) それはいわゆる刎頸の交というようなところまで行つておりますか。
  1199. 名取忠雄

    証人(名取忠雄君) そこまで行つておると思います。
  1200. 岡部常

    理事岡部常君) 親戚ずき合いですか。
  1201. 名取忠雄

    証人(名取忠雄君) はあ。
  1202. 岡部常

    理事岡部常君) 檢事正とはどうですか。
  1203. 名取忠雄

    証人(名取忠雄君) 檢事正とは前に使われた関係があり、それから現在少年の町の関係を担当しておる関係がありまして、從來通りになつております。
  1204. 岡部常

    理事岡部常君) 辞められて上村氏のところに行つたときに五千円で、今も五千円とおつしやいましたね。
  1205. 名取忠雄

    証人(名取忠雄君) そうであります。
  1206. 岡部常

    理事岡部常君) それについてはどう思つておられますか。檢事の方のはずつとそのままに据置になつておるのですね。
  1207. 名取忠雄

    証人(名取忠雄君) それはとても五千円ではやり切れませんから、檢事正に対して今年の八月か、九月頃、何とかして貰えませんかということをお願いしたことがあります。
  1208. 岡部常

    理事岡部常君) それは上村氏に直接言つてもいいのじやないですか。
  1209. 名取忠雄

    証人(名取忠雄君) 併しそれは上村氏の方は五千円でも差支ありませんが、家を造つてつたという関係もありますから、少年の町の方から…。
  1210. 岡部常

    理事岡部常君) 少年の町の方から出して貰いたいというのですか。少年の町の方から直接貰つていないでしよう。
  1211. 名取忠雄

    証人(名取忠雄君) 貰つておりませんが、何とか考えて貰わなければ生活がとても立ち行かんという関係から、お願いをしますということでお願いをしましたのですが、少年の町としては経費がないということで継わられました。そこで仕方がないから、それでは上村氏の経営しておる山梨被服という会社の專務をやたつらどうかということで、十月の月末からその会社の專務取締役をやつております。
  1212. 岡部常

    理事岡部常君) じやその方で生活は安八するわけですね。
  1213. 名取忠雄

    証人(名取忠雄君) そうであります。
  1214. 岡部常

    理事岡部常君) 五千円以上に何かあるわけですね。重役としての手当があるわけですね。
  1215. 名取忠雄

    証人(名取忠雄君) そうであります。
  1216. 岡部常

    理事岡部常君) その瑞牆山のこともありますが、法律專門学校ですね。あれは檢事正が大変働いてやつておられた。あの計画にもあなたは大分参與しておられますか。
  1217. 名取忠雄

    証人(名取忠雄君) 最初のうちは参與しておりました。
  1218. 岡部常

    理事岡部常君) あれは誰の発起ですか、初めの発起は……。
  1219. 名取忠雄

    証人(名取忠雄君) あれは檢事正だろうと思います。丁度私が去年の元日からちよつと体を患いまして一ヶ月程寝ました。そのときに檢事正が大体まあ大綱を作りまして、これでやりたいと思うというような話があつたのです。
  1220. 岡部常

    理事岡部常君) それからあなたはどんなふうに手傳いをされましたか。
  1221. 名取忠雄

    証人(名取忠雄君) 私の関係は一應学校の設立の許可願を出し、縣知事から許可を貰うまでの関係をやりました。
  1222. 岡部常

    理事岡部常君) 寄附の問題など、どうですか。
  1223. 名取忠雄

    証人(名取忠雄君) 寄附の問題は一應話を四、五ヶ所したという程度であります。
  1224. 岡部常

    理事岡部常君) 何か前に警察に関係もあるし、檢事正、檢察廳に行つておるし、いろいろなあれを知つておるでしよう、穴を……そういうところをあなたは專ら担当したのじやないですか、そういうところに目星を付けた。
  1225. 名取忠雄

    証人(名取忠雄君) 知つてはおりましたが、今になつて逃げるわけではありませんが、追放該当者が寄附を貰いに歩くというようなことであれば、追放該当者の救済運動のような印象を與えることは自分には困るというわけで、一應お継わり申したことがある。そこで君らだけじや困る。それでは次席檢事も一緒にどうだとういうこで、二、三話に会いに行つたことがあります。
  1226. 岡部常

    理事岡部常君) あなた一人では行けないんですか。
  1227. 名取忠雄

    証人(名取忠雄君) 一人だけと私は御免蒙むりたい。
  1228. 岡部常

    理事岡部常君) 次席と一緒に運動したことがあるんですね。
  1229. 名取忠雄

    証人(名取忠雄君) 最初のうちですね。
  1230. 岡部常

    理事岡部常君) この学校ができたら、あなたはやはり理事者にでもなるつもりだつたんですか。
  1231. 名取忠雄

    証人(名取忠雄君) 最初はそう思つていたんです。ところが学校の設立の許可書が参りまして、引続いてこれを人の関係を明白にしなければならん。そこで財團法人設立の願書を一應原稿を作つたんであります。そこで縣の教育部に参りまして、いろいろ樣子を聽いて見ましたところが、資格審査を必要だという話がありまして、これは七月頃だと思います。そこで資格審査はどういうふうに出すでしよう、こう言いましたところが、理事長も出さなければならんし、理事も出す、それから教授も必要になる、更に書記までも資格審査の申請を出さなければならん。こういう話を受けまして、それでは追放該当者である私はどうだろうと相談しましたら、あなたは工合が惡いという話がありまして、爾來そちらの方は手を引いて、今日に至つております。
  1232. 岡部常

    理事岡部常君) 学校ができたら校長なんかには誰がなるんです。
  1233. 名取忠雄

    証人(名取忠雄君) 校長には檢事正がなるか、然るべき適当な者、まあ大物でもあればその人がなるんではないか……。
  1234. 岡部常

    理事岡部常君) 何かそういう下話がありましたか。誰がなるかという下馬評なり、或いは計画なり……。
  1235. 名取忠雄

    証人(名取忠雄君) 檢事正理事長ですから、檢事正の推薦する立派な人があれば、檢事正がなるか、又は然るべき人があればするべきものだと、私は考えておりました。
  1236. 岡部常

    理事岡部常君) 寄附金のことを伺つた序に、瑞牆山の方ですが、あれの資金はどういうのですか。これは随分金の要る問題だと思いますが……。
  1237. 名取忠雄

    証人(名取忠雄君) あれの問題は出資金で賄いを付けようということになつたんです。
  1238. 岡部常

    理事岡部常君) 一体あなたの見込みでは、そういうふうな事業経営が成立ちますか、收支計算が成立ちますか。
  1239. 名取忠雄

    証人(名取忠雄君) 運営の如何によれば十分成立つと思います。
  1240. 岡部常

    理事岡部常君) 随分地理的に條件が惡いそうではありませんか。
  1241. 名取忠雄

    証人(名取忠雄君) 状況が惡いと言つても、道路の関係がありますから、道路関係でも解決しますれば、いいと思つております。
  1242. 岡部常

    理事岡部常君) 出資金と言いますけれども、出資金なら返さなければならんでしようね。
  1243. 名取忠雄

    証人(名取忠雄君) そうです。
  1244. 岡部常

    理事岡部常君) 営利でないから、そんな利益が上るということも見込めないでしようが、そんな計算は立つておるんですか。
  1245. 名取忠雄

    証人(名取忠雄君) 一應檢事正の構想によつて、收支の計算がこれなら行くだろうということで出発したわけです。
  1246. 岡部常

    理事岡部常君) あの中には、出資というのは五万、十万ならいいけれども、随分大きな金の出資があるではありませんか。あれはどういうのでしよう。
  1247. 名取忠雄

    証人(名取忠雄君) あれはそれぞれの力に應じて、淺川隆治郎氏とか、或いは川口莊二郎とか、米山泉とか、それぞれ……。
  1248. 岡部常

    理事岡部常君) 一番大きいのは誰ですか、塩川ですか。
  1249. 名取忠雄

    証人(名取忠雄君) 淺川だろうと思います。
  1250. 岡部常

    理事岡部常君) 百五十万円。
  1251. 名取忠雄

    証人(名取忠雄君) そうであります。
  1252. 岡部常

    理事岡部常君) あれは本当の出資ですか、寄附ですか、あなた知つておられるですか。
  1253. 名取忠雄

    証人(名取忠雄君) あれは出資です。
  1254. 岡部常

    理事岡部常君) 何でも御本人の言うところでは、家屋敷を抵当に入れて、日歩二銭三厘とかで借りて、それで出した。だから計事計画がうまく行つて收益が上るようになつたら返して貰う。それまでは自分は利子を寄附するんだ。利拂をしながらそれを寄附したつもりでやつておるんだと言つておられますが、その通りですか。
  1255. 名取忠雄

    証人(名取忠雄君) その通りであります。
  1256. 岡部常

    理事岡部常君) 随分これも大きなもんですね。
  1257. 名取忠雄

    証人(名取忠雄君) 大きなもんです。
  1258. 岡部常

    理事岡部常君) だが、それはまあ本当の計画が立たなければ出さないわけでないですかね。そういうことはあなたも実際そういう事務の方の方として相当考えておられるでしよう。
  1259. 名取忠雄

    証人(名取忠雄君) 恐らくあれは瑞牆山というのは相当有名な山でもあるし、あれを今後キリスト教團というものが本当に力を入れまして、寄附金が集まり、又運営する人を得れば、十分將來発展性があると思います。
  1260. 岡部常

    理事岡部常君) 先程実は上村さんと話したんだが、上村さんとあなたが非常に仲よくなつたという。檢事正と何か考え方が変つて來たんですか。
  1261. 名取忠雄

    証人(名取忠雄君) 若干変つて來ました。
  1262. 岡部常

    理事岡部常君) どんなふうに変つたんです。
  1263. 名取忠雄

    証人(名取忠雄君) それは何と言いますか、実際面の仕事檢事正はやつておりませんから、第一線の仕事をやる私にしてもも、上村氏にしても、具体的の問題になると、どうしても意見が纏まらんような関係が出て参りまして……。
  1264. 岡部常

    理事岡部常君) それでまあ檢事正とは意見が対立しちやつたんですか。
  1265. 名取忠雄

    証人(名取忠雄君) まあ対立というか、根本的のもんでないにしても、常に対立しております。事ごとに……それで私が「はい」と言つて受けてしまえば、これは責任がありますから、一々何か計画する場合には、自分の意見はこういう意見である、夢のような意見じや困るというようなことで、一言意見を言つておりますから。
  1266. 岡部常

    理事岡部常君) それでも今後ずつと引続いて同じ仕事をやつて行かれる決心ですか。
  1267. 名取忠雄

    証人(名取忠雄君) 行きたいと考えております。ただ併し自分としては、生活の拠りどころと言いますか、そういうものがありませんから、少年の町の仕事は勢い第二義的になると考えております。現在やつております被服工業に先ず重点を置きまして、少年の町の経営をやる場合には、まあ予備と言いますか、後備と言いますか、第一線を退いて、必要の都度会議に出席し、或いは折衝等に臨むということになると思います。
  1268. 岡部常

    理事岡部常君) 次に檢事正官舎の換地問題ですね。あれは初めからあなた御関係でしよう。
  1269. 名取忠雄

    証人(名取忠雄君) 最初からというのですか、私は檢察事務官を奉職しております当時に話を伺いました。
  1270. 岡部常

    理事岡部常君) その当時のことを伺いたいのです。その当時上村氏からいろいろ頼まれて、ああいうことをやられたんでありませんか。
  1271. 名取忠雄

    証人(名取忠雄君) そんなことはありません。
  1272. 岡部常

    理事岡部常君) そうすると、檢察廳の方の働きかけですか。
  1273. 名取忠雄

    証人(名取忠雄君) 檢察廳の……私の関與した範囲においては、檢事正の命令によりまして、私は檢察事察官としての換地関係の当面の文書の処理とかいうようなことをやりました。
  1274. 岡部常

    理事岡部常君) あれは法務廳とはよく折衝して進められたんですか。
  1275. 名取忠雄

    証人(名取忠雄君) そうらしいですが、下話と言いますか、法務廳の上の方の話は、檢事正が会計課長と会い、或いはその他の関係を纏めまして、ただ事務的の処理を、名取事務官行つて來いということで、一、二回法務廳へも参つたことがあります。
  1276. 岡部常

    理事岡部常君) あれは会計上相当問題になると思いますがね。國有財産法の問題にもなる。そういうことの研究はあなたがなさつたのですか。
  1277. 名取忠雄

    証人(名取忠雄君) 一應私もやるし、檢事正も研究されたと思いますが。
  1278. 岡部常

    理事岡部常君) 外に会計の專門家はおりましたか。
  1279. 名取忠雄

    証人(名取忠雄君) おりません。
  1280. 岡部常

    理事岡部常君) おらないのですか。そうするとあなたは警察の経驗、行政の経驗があるというのでそれを担当したような形になりますね。
  1281. 名取忠雄

    証人(名取忠雄君) 法務廳の方へ伺を立てたり何かしまして、それで当然本來の檢察廳としてのあれは事務になりますから、次席檢事に伺を立てるとか、或いは檢事正の命令によつてこうしろと言つた場合に、具体的な、要するに労務に從事したと言いますか、そういう関係であります。
  1282. 岡部常

    理事岡部常君) 併し会計法上或いは國有財産法の関係は、檢事正なり次席では分らないのが本当だと思うのですがね。
  1283. 名取忠雄

    証人(名取忠雄君) そうです。
  1284. 岡部常

    理事岡部常君) あなたの方が一番詳しいのです。
  1285. 名取忠雄

    証人(名取忠雄君) 一應研究して見ましたが、これは難解な規則でありまして、なかなか了解しずらい点がある。
  1286. 岡部常

    理事岡部常君) そうすると財務局の方に聽くとか、いろいろな方法を盡しておらなければならないが、それはやつておりますか。
  1287. 名取忠雄

    証人(名取忠雄君) 財務局へも行つたけれども、甲府の財政局と言いますか、東京の財務局の山梨地方何と言いますか、そういう方面へも行きましたが、はつきりした回答を得ませんでした。税務署もその通り。
  1288. 岡部常

    理事岡部常君) そうですか。法務廳の方へは出ませんでしたか。
  1289. 名取忠雄

    証人(名取忠雄君) 法務廳の方へも出まして、係の方にいろいろお伺いいたしました。
  1290. 岡部常

    理事岡部常君) これは併し分るでしよう。
  1291. 名取忠雄

    証人(名取忠雄君) ええ、分つております。
  1292. 岡部常

    理事岡部常君) これは相当例があるでしよう。併しそういう換地の場合、從前の例で言うと、ああいう個人と書いている場合は少いのじやないかと思います。
  1293. 名取忠雄

    証人(名取忠雄君) 例が余りないようですね。
  1294. 岡部常

    理事岡部常君) そこで当事者としては、これは無理だということをお考えにならなかつたのですか。無理があるのじやないかということを考えなかつたでしようか。
  1295. 名取忠雄

    証人(名取忠雄君) 無理と言いますか……。
  1296. 岡部常

    理事岡部常君) とにかく世の中からいろいろ批判される、少くとも非難を受け易いのじやないかと、こういうふうに考えるのが常識じやないかと思いますがね。結果においては事実そうなつているのですから、それは共願者、願う人間が何人かいるのです。それを押しのけれ或る個人がそつちへ行つた考えられては、これは問題が起きるのは当り前だ。結局においてはそうなつている。そこを役人としてのあなた方が十分に考えておられたかどうかということ。殊に相手が前に事件を起して、執行猶予になつているというようなことから考えると、これは世の中で非難するのも無理はないのじやないか。これは愼しまなければならんと考えるのが常識じやないかと思う。役人の……そこまで考えませんでしたか。
  1297. 名取忠雄

    証人(名取忠雄君) 私としましては、大体檢察廳の空氣が檢事の官舎がない。馬小屋の二階にいるということを申され、今度はよかつた上村氏が義侠的にあれしたがために檢事が官舎に入れるというようなことを言つておりまして、そんな関係からそう奥深く今日の將來まで考えて私はやつたわけじやなしに、ただ命令によつて動いておりましたから、そこまで自分檢事正のような立場で今日を見透して考えておつたわけじやありません。
  1298. 岡部常

    理事岡部常君) ところがあなたは非常に檢事正から信頼されて、或る言い方から言えば腹心じやないかと思うのです。そういう人がそんな好い加減なことじや心細い。
  1299. 名取忠雄

    証人(名取忠雄君) 心細くともその当時の情勢というか、私の氣持としては、檢事正の命令だから、而もあの当時私は一介の檢察事務官でありまして、檢事の、勿論権限もございませんし、命令一下やつてつたという情勢でございます。
  1300. 岡部常

    理事岡部常君) ですから檢察の本当の事務ならよいが、そうでなく机の上のそういう事務の仕事ならば、むしろあなたが主でなければならないと私は見ております。それにしてはちよつと駄目の押し方が足りないように感じますが。
  1301. 名取忠雄

    証人(名取忠雄君) まあ、どう御判断になつても、これは私の不明のいたすところでいたし方ないと思います。
  1302. 岡部常

    理事岡部常君) 今あれですね。上村氏のパレス何とか、オリオンパレスですか、あれはまだ本当の所有権関係などから言えば宙ぶらりんのところがあるようですね。必ずしも確定しておりませんね。而も世の中から騒がれておるというようなこと、又一方檢察廳も批判の的になつておる。そういういろいろのことを考え合せて、あなたはどういうふうにこの事件を見ておられますか。あなたも渦中の人だから聽くのもおかしいかも知れないが、冷靜な頭でどういうふうに考えておられますか。
  1303. 名取忠雄

    証人(名取忠雄君) ただ私の当時の考え方としては、信頼をする檢事正が法務廳、大藏省方面と折衝の上、既成事実を作つてもよろしいというようなお話があつてつたということですから、そのまま実は機械的に今日まで來てしまいました。只今言うように深い考察の下にやつたわけではありません。
  1304. 伊藤修

    伊藤修君 あなたは上村氏とは、家を貰う話があつたその以前に、外にもそういう話があつたのですね、その外の人の名前は。
  1305. 名取忠雄

    証人(名取忠雄君) 申上げます。それは南巨摩郡の富河村という村があります。そこの山本菊五郎という人がありました。それであなたは辞めたら、そこに厖大な森林地帶がありまして、そこで木材業をやつておる、一緒にやらないか、やろうという話がありました。それでまあ警察でも退職したら、先ず氣候もよいし、それから山林資源もありますし、お互いやろうというような約束がありました。
  1306. 伊藤修

    伊藤修君 それは木材業ですか。
  1307. 名取忠雄

    証人(名取忠雄君) そうです。
  1308. 伊藤修

    伊藤修君 甲府からどのくらいありますか。
  1309. 名取忠雄

    証人(名取忠雄君) 甲府から六、七里離れております。
  1310. 伊藤修

    伊藤修君 只今のお住居は甲府でしよう。
  1311. 名取忠雄

    証人(名取忠雄君) 現在甲府です。
  1312. 伊藤修

    伊藤修君 その当時、辞められた当時は甲府ですね。
  1313. 名取忠雄

    証人(名取忠雄君) その当時私は南部というところの警察署長をやつておりました。そんな関係でよく知つております。
  1314. 伊藤修

    伊藤修君 その話の当時はお住居は。
  1315. 名取忠雄

    証人(名取忠雄君) それは甲府です。
  1316. 伊藤修

    伊藤修君 そういう場合には、甲府に住まつていらつしやる人が、そういう辺鄙な所に新らしく就職する場合には住居を上げよう。上げようということは住居を提供しようという意味ですね。住居を只で呉れてやろうという意味じやないですか。
  1317. 名取忠雄

    証人(名取忠雄君) いやそうではありません。それは同志的な結合で山本君とは心安かつたもので……。
  1318. 伊藤修

    伊藤修君 仮にあなたのおつしやるように住居を呉れてやろうというようなことにしても、新らしい辺鄙な所に事業を開始するには当然住居というものが問題になつて來る。そういう場合には住居を提供するとか、或いは呉れるという問題も考えられますけれども、同じ甲府に住まうような場合、就職するような場合に、家を探して、住まうところを見付けてやるというようなことはあるかも知れませんが、家を一氣に呉れるということは常識的に考えられないでしよう。日本中を歩いたところが、そういう好條件であなたを迎えなければならんという何か必要性がありますか、特段のあなたに技能がありますか、失礼ですが。
  1319. 名取忠雄

    証人(名取忠雄君) 技能と言いますか、私には大体そう申しては何ですが、働かせる力のある人が働かせて呉れれば十分働き得ると思います。
  1320. 伊藤修

    伊藤修君 何人でも、どんな事業家でも人を傭う場合には、全的にその人の能力を会社を提供して貰いたい、こう希望して雇い入れることは当り前のことですが、あたなもやはり同じことですから、あなたが体を賣つたわけでもないし、命を捧げたわけでもないし、あなたの頭脳全体を全的に提供するという約束の下に入つたのですから、それ以上のものは何もない筈です。にも拘わらず普通常識的に考えて異例な、さような多額な財産を事前に提供するということには何か原因がなくちやならん。將來じやなくして、過去におけるところのあなたの功績に対して報いるということが多くあるのじやないですか。
  1321. 名取忠雄

    証人(名取忠雄君) 普通常識的にはそう考えられます。
  1322. 伊藤修

    伊藤修君 だからあなたが檢察廳にお勤めになつたときに、檢事正の懐をじやなくて、拂下問題、交換問題について御盡力になつた、その御功績に対して報いるという点も含まれておるのではないですか。
  1323. 名取忠雄

    証人(名取忠雄君) そんなことはありません。
  1324. 伊藤修

    伊藤修君 何と言つたつて原因がないじやありませんか。
  1325. 名取忠雄

    証人(名取忠雄君) 私は……。
  1326. 伊藤修

    伊藤修君 呉れる原因がどこにあるんですか。
  1327. 名取忠雄

    証人(名取忠雄君) 私は飽くまで上村氏との関係は、上村氏の雇傭人ですから。
  1328. 伊藤修

    伊藤修君 雇傭人なら、雇傭人に二十何万円という品物を提供するということは考えられませんよ、常識的に。あなたが東京に出て來ても、或いはその他でもそう簡單に家を呉れる人がありますかね、就職する場合に……何か因緑がなくちやならんし思うのですが、それが……。
  1329. 名取忠雄

    証人(名取忠雄君) それは……。
  1330. 伊藤修

    伊藤修君 涜職とか、涜職ではないという問題は別問題として、泉なくともあなたのお働きに対する好意が含まれているのではないかという……。
  1331. 名取忠雄

    証人(名取忠雄君) そういうふうに巻込んでの話というものは私は承認できないのです。
  1332. 伊藤修

    伊藤修君 できなければいいのですが。
  1333. 名取忠雄

    証人(名取忠雄君) はあ。
  1334. 伊藤修

    伊藤修君 何か原因がなくちやならんと思うわけですが。
  1335. 名取忠雄

    証人(名取忠雄君) 官舎問題を有利に展開するというような私には権限もなのですが。
  1336. 伊藤修

    伊藤修君 権限の有無は別ですが、権限がなくても檢事正の権限を笠に着て仕事ができるのですから、あなたに権限がなかろうと、あなたの仕事檢事正の範囲外においてなしたのであるから、権限を今申上げたわけではないのです。あなたが貰う理由がどこにあるということを、はつきり我々に背けるようにおつしやつて頂きたい。ただ將來の働きから家を呉れるとか、それは普通常識的に考えられないのです。
  1337. 名取忠雄

    証人(名取忠雄君) ところが……。
  1338. 伊藤修

    伊藤修君 さつきの場合とは事情が違います。それは七理も八理も山奥に行つて仕事をする場合だとか、その場合には家を提供するという話はあり得るのです。けれども今あなたの勤めていらつしやる上村君の事業場の甲府にあつて、敢てあなたに家を提供しなくちや仕事が全的に発揮できないという事情はないというのです。
  1339. 名取忠雄

    証人(名取忠雄君) 私の場合には、これは言葉を返して失礼のようですが、山本という男の関係と、上村氏の関係を私は一應檢討して見ました。そうして上村という人は全然それまで知らなかつたのです。
  1340. 伊藤修

    伊藤修君 知らる人が尚更呉れるということはおかしいじやないですか。
  1341. 名取忠雄

    証人(名取忠雄君) まあ暫く、私が申上げますが、そんな関係で、上村という人が人間的にどんな人であろうというわけで私が会つて見たところが、非常に情熱に燃えたような放胆家のような、非常に闘志満々というような男で、これは面白い男だ、それでこれなら一緒仕事をやつて見ても異議ないという感じがしたのです。そこで山本君の方に行こうか、上村氏の方に行こうかということで私は迷つておりましたが、ああ上村という人物も面白い人物だ、これと一働きして見たいなという慾望が出て参りました。そうして二人が連絡を取りながら今日までやつて來たという現状であります。今後においても上村氏の爲ならば十分私は力のあらん限り働きたい……。
  1342. 伊藤修

    伊藤修君 その氣持はよく分かつております。先程からあなたが諄々とお述べとなつたからそのことはよく分ります。だからそういう域に入る直前において、まだ何らの交渉関係ができないのに、何故いきなり家を呉れたのです。その理由はどこにあるのだ。こう聽くのです。ただ將來のことを慮つて呉れたというのでは、そこらのことが大まかというか、でたらめというか、原因が薄弱過すぎるのじやないか。何かそこに呉れなければならない理由があるのじやないですかと、こう言うのです。
  1343. 名取忠雄

    証人(名取忠雄君) 別に交換の條件というのはございません。
  1344. 伊藤修

    伊藤修君 ただ漫然と呉れたのですね。
  1345. 名取忠雄

    証人(名取忠雄君) 漫然か何か、とにかく上村氏が呉れたのです。
  1346. 岡部常

    理事岡部常君) 私、それに関連して伺いますが、上村氏のところへあなたが行つて働くために五千円、それから住宅問題、こういう両條件であなたは上村氏と縁を結んだわけですね。その條件は誰が付けたのです。あなたが付けたのですか。
  1347. 名取忠雄

    証人(名取忠雄君) それは上村氏が……。
  1348. 岡部常

    理事岡部常君) 檢事正が中に立つて呉れたのですか。
  1349. 名取忠雄

    証人(名取忠雄君) そうじやありません。
  1350. 岡部常

    理事岡部常君) あなたと二人の話ですか。
  1351. 名取忠雄

    証人(名取忠雄君) そうです。それは上村氏が、あなたは刑事課長までやつておるし、それからまあ署長もやつておるし、自分としては、一介の青年が甲府へ進出して今後やろうという矢先だから、知合いは少ないし、あなたのような人が來て呉れたのは実に感激に堪えないというわけで、進んで上村氏がそういう話を持つて來たのです。
  1352. 岡部常

    理事岡部常君) 上村氏はただそれは檢事正と交渉して決めたように言つておるのです。そこはあなたは御承知ない。
  1353. 名取忠雄

    証人(名取忠雄君) それは上村氏が檢事正と交渉されたか否かは知りませんが、私としては、上村氏がそういう話を持つて参りましたから、そこで承諾したのです。
  1354. 岡部常

    理事岡部常君) あなたは直接の條件だと思つておられるわけですね。
  1355. 名取忠雄

    証人(名取忠雄君) そうです。
  1356. 岡部常

    理事岡部常君) それでは御苦労樣でした。    〔証人池田九郎君著席〕
  1357. 岡部常

    理事岡部常君) 池田九郎さんですね。
  1358. 池田九郎

    証人池田九郎君) そうです。
  1359. 岡部常

    理事岡部常君) 法務委員会証人としてお尋ねいたしたいと思います。先ず宣誓をして頂きます。    〔総員起立証人は次のように宣誓を行なつた〕    宣 誓 書  良心に從つて眞実を述べ、何事もかくさず、又、何事もつけ加えないことを誓います。         証人 池田 九郎
  1360. 岡部常

    理事岡部常君) 御宣誓になりました以上は、それに從つて頂きませんと、僞証の規定がございますから、どうぞ御承知を願いたい。お年はお幾つでございますか。
  1361. 池田九郎

    証人池田九郎君) 五十八です。
  1362. 岡部常

    理事岡部常君) 現在のお住居は。
  1363. 池田九郎

    証人池田九郎君) 朝氣町二十一番地でございます。
  1364. 岡部常

    理事岡部常君) それは官舎でございますか。
  1365. 池田九郎

    証人池田九郎君) そうです。
  1366. 岡部常

    理事岡部常君) 御職業甲府檢事正ですね。
  1367. 池田九郎

    証人池田九郎君) そうです。
  1368. 岡部常

    理事岡部常君) 御経歴の大体をちよつとおつしやつて下さい。
  1369. 池田九郎

    証人池田九郎君) 京都帝國大学独法科を卒業しまして……。
  1370. 岡部常

    理事岡部常君) それは大正何年でございますか。
  1371. 池田九郎

    証人池田九郎君) 大正五年です。
  1372. 岡部常

    理事岡部常君) それからずつと司法部に入つておられた。
  1373. 池田九郎

    証人池田九郎君) いや、それから三年間弁護士をやりました。それから司法部に入りました。
  1374. 岡部常

    理事岡部常君) ずつと内地に御勤務ですか。
  1375. 池田九郎

    証人池田九郎君) そうです。内地ですが、沖繩に。
  1376. 岡部常

    理事岡部常君) 檢事正は沖繩で初めて。
  1377. 池田九郎

    証人池田九郎君) そうです。
  1378. 岡部常

    理事岡部常君) それから甲府ですか。
  1379. 池田九郎

    証人池田九郎君) そうです。
  1380. 岡部常

    理事岡部常君) 甲府はいつからですか。
  1381. 池田九郎

    証人池田九郎君) 甲府昭和二十一年の七月。
  1382. 岡部常

    理事岡部常君) それから現在まで続いておられるのですか。
  1383. 池田九郎

    証人池田九郎君) そうです。
  1384. 岡部常

    理事岡部常君) そうすると、檢事の生活も随分長いことになりますね。
  1385. 池田九郎

    証人池田九郎君) 二十八年。
  1386. 岡部常

    理事岡部常君) それから信仰生活はどんなふうでございましたか。カトリック信者でおるということをお聞しておりますが。いつ頃からですか。
  1387. 池田九郎

    証人池田九郎君) 信仰生活は随分長いのです。高等学校時代からずつと臨済宗の禪をやつておりました。それから檢事になつて北海道に行つて、中川檢事長の下におつたのです。それから先ずそのときに松島瑞嚴寺の和尚さんから提唱を聽いておつた
  1388. 岡部常

    理事岡部常君) それは宮城ですか、北海道ですか。
  1389. 池田九郎

    証人池田九郎君) 北海道です。
  1390. 岡部常

    理事岡部常君) 北海道で、松島に見えておられるのですか。
  1391. 池田九郎

    証人池田九郎君) 時々見えて檢事長と一緒に……。
  1392. 岡部常

    理事岡部常君) 和尚さんの方が北海道に來て……。
  1393. 池田九郎

    証人池田九郎君) そうです。お出でになつて坐禪をやつておりました。ところが檢事長いろいろのことから自殺なすつたのです。そのときに、私が本当に禪天魔だという感じがして、禪から離れる動機になりました。それから熊本に行きまして、前に私の妻が女学校時代にバイブル・クラスにおりまして、そのときに当時の宣教師を訪ねて行つたのです。ところがアメリカに帰國しておりまして、日本の牧師がおりまして、私の家も尋ねて來るようになつて、二十四年前です。その牧師といろいろ話をするうちに、バプテストの洗礼を受けることになりました。それが沖繩の檢事正時代まで、ずつとバプテストの信仰をやつておりました。それから戰爭になつてつて参りましてから、二十一年三月に帰つて來て、カトリックの……。
  1394. 岡部常

    理事岡部常君) それからですか、カトリックは。
  1395. 池田九郎

    証人池田九郎君) ええ、カトリックは極く新らしいのです。
  1396. 岡部常

    理事岡部常君) 分りました。実はこの甲府の檢察廳を中心とするか、あなたを中心とするか、問題にはなりますが、その中で檢事正官舎敷地の、いわゆる交換問題とでも言いますか。それについてお尋ねしたいのですが、あれは一体どういうところから交換というような問題が起つたのでございますか。
  1397. 池田九郎

    証人池田九郎君) これはいろいろ理由があるのですが、直接の原因は部下の檢事が住宅に非常に困つてつた。鈴木君は長屋の極く汚ない家に住んでおつた。而も道路より低いところに家が建つてつて、自動車なんかが來ても塵を被るようなところです。そうして雨漏りがしても、屋根を直して呉れないようなところにいたのです。
  1398. 岡部常

    理事岡部常君) 馬屋の二階におつた方もおつたそうですが、皆さん非常に家でお困りだつたということは十分今まで伺つておりますが。
  1399. 池田九郎

    証人池田九郎君) それで何とかして住宅がなくてはいかん。どうも、威信にも関するというような考えでおつた。たまたま当時引揚者連盟の人々が檢事正官舎を二間引込めて、その前をずつと市場を作るから引込んで貰いたい。そういうので陳情に來ました。併しただ引つ込むというわけにもいかん。
  1400. 岡部常

    理事岡部常君) それから地元の方からも、何か開放して呉れという運動も起つてつたのじやありませんか。
  1401. 池田九郎

    証人池田九郎君) そうです。紅梅町の町民が目拔きの場所に檢事正官舎ひとりが厖大な邸宅を構えておるということは、繁栄のために好くないから退いて貰いたいというので、町民全体から連判状を取つて陳情に來ました。
  1402. 岡部常

    理事岡部常君) それからその当時は甲府市では、その旧官舎敷地に対して何か都市計画で、計画でも決まつておりましたのですか。
  1403. 池田九郎

    証人池田九郎君) その点は、その当時まだやつていなかつた
  1404. 岡部常

    理事岡部常君) それから市から、何か積極的な希望を申出たということもございませんか。
  1405. 池田九郎

    証人池田九郎君) ええ、そうです。
  1406. 岡部常

    理事岡部常君) そうすると引揚者團体から一部の開放を迫られたのも、一つの動機になつたわけですか。
  1407. 池田九郎

    証人池田九郎君) そうです。
  1408. 岡部常

    理事岡部常君) それと檢事の住宅難ということと、こう両々相俟つて何とかしなければならん、こうお考えになつたのですね。
  1409. 池田九郎

    証人池田九郎君) そうです。
  1410. 岡部常

    理事岡部常君) どうちが主ですか。
  1411. 池田九郎

    証人池田九郎君) まあ両方共ですね。
  1412. 岡部常

    理事岡部常君) そこに上村氏が現われたわけですか。
  1413. 池田九郎

    証人池田九郎君) そうです。
  1414. 岡部常

    理事岡部常君) 上村氏が現われたのはいつ頃でございますか。
  1415. 池田九郎

    証人池田九郎君) 日にちは、はつきり分らないのですが、上村が経済事件を起して後と思うのです。
  1416. 岡部常

    理事岡部常君) その前は、上村を御承知なかつたわけですね。
  1417. 池田九郎

    証人池田九郎君) 全然知らなかつた
  1418. 岡部常

    理事岡部常君) 経済事件執行猶予の判決を受けて、決まつてから間もなく参りましたのですか。
  1419. 池田九郎

    証人池田九郎君) それからずつと後です。
  1420. 岡部常

    理事岡部常君) 誰が紹介いたしましたか。
  1421. 池田九郎

    証人池田九郎君) 丸山氏が紹介してその後……。
  1422. 岡部常

    理事岡部常君) 他の人の紹介はございませんか。
  1423. 池田九郎

    証人池田九郎君) 縣会議長の篠原氏もやはり紹介した。
  1424. 岡部常

    理事岡部常君) 一番初め引き合わしたのは、丸山氏でございますね。
  1425. 池田九郎

    証人池田九郎君) そうです。
  1426. 岡部常

    理事岡部常君) それはどういうときに……。
  1427. 池田九郎

    証人池田九郎君) これは私の前に、上村氏が映画館を持つており、近所であるし、そして経済事件を起して処罰を受けた。今後一つ生れ変つたようにしてやつて行きたいから、よろしくお願いしたい。こう言つて紹介して來たのです。
  1428. 岡部常

    理事岡部常君) 何をやるからです。少年保護事業ですか。
  1429. 池田九郎

    証人池田九郎君) いえいえ、今後上村氏がいろいろな仕事をしておるから、どうぞよろしくお願いします、まあ近所附き合い……。
  1430. 岡部常

    理事岡部常君) 実業の方面で……。
  1431. 池田九郎

    証人池田九郎君) そうです。
  1432. 岡部常

    理事岡部常君) 少年保護事業について、何か命名して貰いたいというのが丸山氏の紹介の目的つたように聞いておりますが、そうじやないのですか。
  1433. 池田九郎

    証人池田九郎君) それもあるのです。それも前だつたか、そのときだつたか、その後だつたかよく分りませんが、刑務所を出て、自分が感ずるところがあつて、虞犯少年の指導を、自分も改心して立派な者になるために、その懺悔の奉仕として少年保護事業をするため、名前を付けて貰いたい、こういうので、よろしい、考えて置こうというので……。
  1434. 岡部常

    理事岡部常君) その方が先ですね。それが一番初めでしよう。
  1435. 池田九郎

    証人池田九郎君) それは後です。
  1436. 岡部常

    理事岡部常君) そうですか。その前に今後よろしく頼と言つて來たのですか。
  1437. 池田九郎

    証人池田九郎君) ええ、そうです。
  1438. 岡部常

    理事岡部常君) 今まで私が聽いたところによりますと、一番初めは丸山氏があなたの官舎に連れて行つて、そうして引き合わせた。それで保護会の命名をあなたにお願いをした、こう言つておりますが。
  1439. 池田九郎

    証人池田九郎君) それは後です、その保護会の話は。最初連れて來たのは、近所だつたので、そういう事件も起して、私も眞ん前ですから、今後よろしくお指導を願いたい。
  1440. 岡部常

    理事岡部常君) そのときは篠原氏も連れて行つたのですか。
  1441. 池田九郎

    証人池田九郎君) いえ、別です。篠原氏はただ自分で私の所に來て……。
  1442. 岡部常

    理事岡部常君) 引き合わせがなく、ただ言葉で、こういう人間だというのですね。
  1443. 池田九郎

    証人池田九郎君) そうです。今後はあなたよく見てやつて呉れ、自分が使つている、これはよく働ける男だから、ああいう間違いを起したから、今度は間違いを起すと、どうしても刑務所に入らなくちやならないようになるのだから、一つよく保護してやつて呉れと、こう言つて紹介されたのです。
  1444. 岡部常

    理事岡部常君) それでどつちが先であるか、これははつきりしておりますか。
  1445. 池田九郎

    証人池田九郎君) はつきりしております。
  1446. 岡部常

    理事岡部常君) 丸山氏から聞かれたのが一番初めですか。
  1447. 池田九郎

    証人池田九郎君) そうです。
  1448. 岡部常

    理事岡部常君) そのときに無論葡萄酒の闇の事件を挙げた。こういう事件関係した人間だと言つて、こういう話をしたのですね。
  1449. 池田九郎

    証人池田九郎君) ええ、そうです。
  1450. 岡部常

    理事岡部常君) そうすると、後で丸山氏が連れた來たときはよく御承知ですね。
  1451. 池田九郎

    証人池田九郎君) よく知つております。
  1452. 岡部常

    理事岡部常君) そのときはどこでお会いでしたか。
  1453. 池田九郎

    証人池田九郎君) 官舎です。
  1454. 岡部常

    理事岡部常君) 官舎のどこです。
  1455. 池田九郎

    証人池田九郎君) 官舎の上り口の座敷だと思いますね。
  1456. 岡部常

    理事岡部常君) やはり座敷に上つたのですか、座敷に上つたとか、上らんとか二つになつておりましたから、ちよつと確かめて……。
  1457. 池田九郎

    証人池田九郎君) 多分座敷に上つたと思います。
  1458. 岡部常

    理事岡部常君) 何か、炬燵のあるような時期ですね。まだ寒かつたとか、それは枝葉の問題で何でもありませんけれども。それであなたのところに來たときには、その保護会の命名が主たる要件でしたろうが、何か事件が案外軽く済んだからというようなお礼心もあつて來たのじやないですか。
  1459. 池田九郎

    証人池田九郎君) いえ、そうじやない。刑務所に入つて自分も余程考えて、自分も更生して今後間違いがないようにしたいと、その懺悔のために少年の補導を引受けることになつたのです。一つ名前を付けて貰いたい、こういつたことがあるのですが、それは丸山君と一緒に來たときじやないと思うのです。その後だと思うのです。考えて置こうというので、バイブルから、ヨハネ傳の中から新生の言葉を取つて新生寮と付けて、君も新生しよう。
  1460. 岡部常

    理事岡部常君) そのときの態度は立派な態度ですか。
  1461. 池田九郎

    証人池田九郎君) そうです。それはなかなか間違つたけれども、今度は本当の人間になつて行くだろうと、こう思いまして、新生という名前を付けてやつたのです。
  1462. 岡部常

    理事岡部常君) それから後にたまたま敷地問題なんというものが起つて來たのですから、何か初めから計画的にあなたに近付いて、敷地問題なんか有利に自分に持運ぼうといつたようなことはありませんでしたか。
  1463. 池田九郎

    証人池田九郎君) 本人の考えは初めから計画的であつたかどうか分りませんけれども、初めはそういう話はなかつたのです。ただ紅梅町の町民の方が移轉して呉れという條件が、多分愛宕山だつたと思います。
  1464. 岡部常

    理事岡部常君) 愛宕町。
  1465. 池田九郎

    証人池田九郎君) 愛宕山の方に檢事正官舎を作つて、そのまま移築するのだと、こういう話だつたのです。それは困るじやないか、ここを変つても同じことになるのじや何にもならないじやないかと言つてつたときに、上村の方で檢事官舎を拵えますから、檢事正官舎は移築して檢事正官舎を拵えるから一つ借りて貰いたいと、こういう話が出て來たのです。
  1466. 岡部常

    理事岡部常君) 愛宕山ですか、愛宕町ですか、その方はただ檢事正官舎を持つてつて交換するという話だつたのですね。それは地元町民の企てですか。
  1467. 池田九郎

    証人池田九郎君) そうです。
  1468. 岡部常

    理事岡部常君) それでは面白くないからと考えているところに、たまたま丸山氏が話を持つて來たというわけですか。
  1469. 池田九郎

    証人池田九郎君) そうです。
  1470. 岡部常

    理事岡部常君) そういう交換問題ということは、そうするとあなたの方から持ちかけられたわけですか。上村からですか。
  1471. 池田九郎

    証人池田九郎君) 上村からです。上村もやはり紅梅町の町民ですから、移築問題についての町民の連判状には上村も捺印しているのです。それで紅梅町の條件というのが、檢事正官舎だけを移築してやるということは、上村はよく知つているのです。それじや檢事正承知しないから、檢事官舎を皆作つてつたらどうですかというので、それならいいだろうということで話を進めたのです。
  1472. 岡部常

    理事岡部常君) 愛宕山問題があるから、それを元にしてそれに檢事正官舎を附加えたということになるのですね。そういう條件を附加えて持つて來たわけですね。あなたの方でなく上村の方から……。
  1473. 池田九郎

    証人池田九郎君) そうです。
  1474. 岡部常

    理事岡部常君) それは全くあなたの発案じやないのですか、上村の発案ですか。上村が檢事官舎を持つて行つた檢事正も聞くだろう、こう考え上村が実際考えたのですか。
  1475. 池田九郎

    証人池田九郎君) 上村も発案し、私も発案したわけです。
  1476. 岡部常

    理事岡部常君) どつちが主ですか。
  1477. 池田九郎

    証人池田九郎君) 私としては檢事官舎を作つてやりたいという考えは常にあつたのですね。そこへ上村もそういう考えを持つて來たから。
  1478. 岡部常

    理事岡部常君) 一致したというわけですか。
  1479. 池田九郎

    証人池田九郎君) つまり両方の考えが一致したから話が進んで行つたのです。
  1480. 岡部常

    理事岡部常君) その当時そういう官舎を附加えるというようなこと、それから両方の土地の廣さとか、或いは値段とかいろいろ違いがありますね。それの計算なんか十分に考えておやりになりましたか。
  1481. 池田九郎

    証人池田九郎君) 十分考えましたです。
  1482. 岡部常

    理事岡部常君) そのときにはそれで計算が立つたのですか。
  1483. 池田九郎

    証人池田九郎君) そのときの計算はあれを交換して丁度いいように、まあどちらも損得はない程度に計算が立つてつたのです。
  1484. 岡部常

    理事岡部常君) その基礎調査はどこでされましたか、値段なんか。
  1485. 池田九郎

    証人池田九郎君) それは税務署の賃貸借價格を標準にやつたのと、それからその当時の附近の地價を参酌して計算したのです。
  1486. 岡部常

    理事岡部常君) それは登記所かなんかの評價ですか、地價などは。
  1487. 池田九郎

    証人池田九郎君) それはいろいろな方法で調査したのですがね。
  1488. 岡部常

    理事岡部常君) それは主にどういう人に調査させられましたか。調査を命じたのはどういう人にですか。名取氏ですか。
  1489. 池田九郎

    証人池田九郎君) 名取君やそれから事務局長ですね。それから澤登、今副檢事になつておりますね、そういうふうなのに調査をさせたですね。
  1490. 岡部常

    理事岡部常君) そのことについては予め法務廳などには御相談にならなかつたのですか。
  1491. 池田九郎

    証人池田九郎君) 相談しました。
  1492. 岡部常

    理事岡部常君) 法務廳の会計などには相談しなかつたですか。
  1493. 池田九郎

    証人池田九郎君) 相談しました。
  1494. 岡部常

    理事岡部常君) なさつたのですね。
  1495. 池田九郎

    証人池田九郎君) 相談した上で上申の書類を作つたのです。
  1496. 岡部常

    理事岡部常君) そのときに法務廳の方などには上村という人の身分などがよく分つておりましたろうか、上村執行猶予を受けた人間であるというようなこと、分つておりましたか。
  1497. 池田九郎

    証人池田九郎君) そうですね、それはどうか、法務廳の方が知つておるか知らないかよく分らないですが。
  1498. 岡部常

    理事岡部常君) あなたはおつしやらなかつたのですか、どういう人間だということを……。
  1499. 池田九郎

    証人池田九郎君) それは経済事件があつて罰金になつておるということを話したと思うのです。
  1500. 岡部常

    理事岡部常君) そうですか。それから外に共願者がある、あの土地を開放して呉れというのが外にもあるというようなことを……。
  1501. 池田九郎

    証人池田九郎君) 皆話しておるのです。共願者の方は報告したと思うのですが、書面で報告しなければ口頭で話をしておると思うのです。
  1502. 岡部常

    理事岡部常君) 共願者の方も單に檢察廳だけでなく法務廳の方にも願い出ておりましようね。それは御承知ありませんか。
  1503. 池田九郎

    証人池田九郎君) それは分らないですね、法務廳から聞きません。
  1504. 岡部常

    理事岡部常君) その当時とにかくまあバランスは取れたことになつておりましようか。何か上村氏の方に將來これは非常に有利になるというようなことを考えてやつておるのだ、そういうふうにはお感じにならなかつたのですか、將來この土地が発展したら大儲けするんだというようなことはお考えにならなかつたですか。
  1505. 池田九郎

    証人池田九郎君) 上村考えがどういう考えかよく私は分らないですね。
  1506. 岡部常

    理事岡部常君) そういうところまで……。
  1507. 池田九郎

    証人池田九郎君) 商賣人ですから、えらい損するつもりはないだろうと思うのですね。
  1508. 岡部常

    理事岡部常君) もつと上村以上の條件でやつて呉れるような人もあつたんじやないですか。
  1509. 池田九郎

    証人池田九郎君) そんな人はないです。あればその人にお願いするのです。
  1510. 岡部常

    理事岡部常君) そういう人を求める方法などは構ぜられなかつたのですか、これは一番ぼろいと思つたのですか、一番いいと思つたのですか。
  1511. 池田九郎

    証人池田九郎君) 私はえらいいいことだと思つたのですね。こういう犠牲的にやつて呉れるような人はどこを尋ねてもないと思うのです。
  1512. 岡部常

    理事岡部常君) それだからそこに何かあると、こう思われなければならないのですが、そんなうまいことはちよつとなさそうに思いますから……。
  1513. 池田九郎

    証人池田九郎君) 何かあるというのは何があるのです。
  1514. 岡部常

    理事岡部常君) あなたのお考えは、これは一番いいと思われた、それならそこに尚裏に何か考えがある、將來において何か利益が非常に多いんじやないか、そういう人に交換でもすれば又後で問題が起るんじやないか、こういうふうにお考えにならなかつたですか。
  1515. 池田九郎

    証人池田九郎君) そういう考えをする余地はないのです。むしろ上村がああいうふうに言つて改悛して、これから眞面目にやろうと、こう言つておるのでしよう、だから私は上村が……。
  1516. 岡部常

    理事岡部常君) 罪滅ぼしに……。
  1517. 池田九郎

    証人池田九郎君) 罪滅ぼしに、懺悔の、償いのためにでも、いくらか檢察廳の檢事官舎を建てて奉仕して呉れるんだと思つたのです。
  1518. 岡部常

    理事岡部常君) まだ同じような闇事件でもやるときに手心して貰うのだ、こういうふうに感じなかつたのですか。
  1519. 池田九郎

    証人池田九郎君) 上村がどんなことを思つておるか分らなかつたのです。
  1520. 岡部常

    理事岡部常君) 本当の懺悔だと思われたのですか。
  1521. 池田九郎

    証人池田九郎君) そうです。
  1522. 岡部常

    理事岡部常君) 上村が併し随分熱意を以ていろいろ動いたようですが、どうお感じですか、それは……。
  1523. 池田九郎

    証人池田九郎君) 熱意を以て動くというのはどういうのですか、熱心ですよ、すべてのことに、何するんでもなかなか寝食を忘れて自分仕事でもやる、一体熱の人ですね。
  1524. 岡部常

    理事岡部常君) 少し熱心過ぎるとでもお感じになるということはなかつたですか。
  1525. 池田九郎

    証人池田九郎君) 過ぎるというのは……よいことならば熱心過ぎるということはない筈だと思います。よいことならばどんな熱心だつていいと思います。
  1526. 岡部常

    理事岡部常君) 法務廳に対するいろいろ報告とか、事前の打合とか、先程もちよつと触れて置きましたが、これはまあ本筋ではないかも知れませんが、檢事長に下相談をしたということはなさいませんでしたか。
  1527. 池田九郎

    証人池田九郎君) 法務廳に行くときには檢事長にも話します。檢事長の場合は法務廳に行つて話するのです。大概……。
  1528. 岡部常

    理事岡部常君) 檢事長が駄目を押されるとか、注意してやれとか、それは面白くないというようなお話はありませんでしたか。
  1529. 池田九郎

    証人池田九郎君) 檢事長は非常にお喜びでして、ほほう、それはいいことじやと言つて、えらい褒めておられました。
  1530. 岡部常

    理事岡部常君) 交換相的が誰だということを御注意にならなかつたですか。
  1531. 池田九郎

    証人池田九郎君) そんなことは檢事長にも話してある筈ですが。
  1532. 岡部常

    理事岡部常君) 勿論法務廳では会計課長、その他の事務官等につていもいろいろお話なつただろうと思いますが、田中会計課長なんかにはよく渡りを付けられましたか。
  1533. 池田九郎

    証人池田九郎君) 付けた筈です。來て見て視察して下さい。ここと旧官舎と換える、この土地を一つ見て下さい。これでいいですかと言つて見に來て貰つたのです。
  1534. 岡部常

    理事岡部常君) 田中氏には上村の前科のことなどはおつしやいましたですか。
  1535. 池田九郎

    証人池田九郎君) 話したと思いますね。
  1536. 岡部常

    理事岡部常君) どうも田中氏にはそれをおつしやらなかつたというふうに言つておられるようですね。そういう問題があるならば考えるのが普通じやないかと思いますが、少くとも駄目を押さなければならんところじやないかと思いますね。
  1537. 池田九郎

    証人池田九郎君) 今になつて、今の会計課長なんか、どうも前科のある奴と取引したのは怪しからんという話をせられるのですが。
  1538. 岡部常

    理事岡部常君) 今の会計課長が。
  1539. 池田九郎

    証人池田九郎君) ええ。それは私は解せんと思つております。今の会計課長はその当時の、私が話した当時おられなかつたですから、そういうことが言えるかも知れませんですけれども、從來は法務廳にしても、高檢にしても、上村が前科があるということは分つておる筈です。
  1540. 岡部常

    理事岡部常君) 時に檢事正は、檢事だけで判事はおやりにならなかつたですね。裁判所長はおやりになりませんでしたね。
  1541. 池田九郎

    証人池田九郎君) ええ。
  1542. 岡部常

    理事岡部常君) 外の行政官廳にも御経驗ありませんね。
  1543. 池田九郎

    証人池田九郎君) ございません。
  1544. 岡部常

    理事岡部常君) そうすると、こういうような会計事務については初めてですね。
  1545. 池田九郎

    証人池田九郎君) よく分らんです。手続は……。
  1546. 岡部常

    理事岡部常君) それだけに、こういうことをやられるのは余程愼重を期せなければならんというのが常識だと思いますね。
  1547. 池田九郎

    証人池田九郎君) そうです。
  1548. 岡部常

    理事岡部常君) その点で何か同僚に聽くとか、そういう経驗者に聽くとかいうようなことで、法務廳以外にお尋ねになつたことはありませんか。
  1549. 池田九郎

    証人池田九郎君) 会えばどの檢事正にも話しておると思います。
  1550. 岡部常

    理事岡部常君) 檢事正ではその方の経驗がない。だから外の方面に当られるのが本当じやないかと思いますね。
  1551. 池田九郎

    証人池田九郎君) 外の方面というのはどの方面ですか。
  1552. 岡部常

    理事岡部常君) 経驗のある方面。
  1553. 池田九郎

    証人池田九郎君) 銀行の頭取やなんか……。
  1554. 岡部常

    理事岡部常君) そういう方面でなく行政官廳方面、これは今では御承知でしようが、会計法上、國有財産法上から申しましても、又実際行政の方面から言つても、相当面倒な問題だと思いますけれども……。
  1555. 池田九郎

    証人池田九郎君) 私はこういう面倒な問題になるとは思わなかつたのです。自分としては非常に愼重にやつたつもりです。
  1556. 岡部常

    理事岡部常君) それだから私はそこでもつと愼重にやられる必要はなかつたかというのです。
  1557. 池田九郎

    証人池田九郎君) この上どういう愼重なことをやるのですか。
  1558. 岡部常

    理事岡部常君) 私はあなたが十分おやりになつたかどうかを伺つておるのです。
  1559. 池田九郎

    証人池田九郎君) 私は十分ベストを畫したつもりです。
  1560. 岡部常

    理事岡部常君) ベストだと思われる。併し結果については世の中から疑惑を受けたり、新聞種なんかになつたり、投書が來たり、我々の方面だけではなく、外の方面にも投書が來ておる。そういつた方面にぬかりがあつたから來たのじやないですか。
  1561. 池田九郎

    証人池田九郎君) 投書があつたから、ぬかりがあつたのじやないかというのはおかしいじやないですか。
  1562. 岡部常

    理事岡部常君) そこに何か疑惑があつたからじやないですか。
  1563. 池田九郎

    証人池田九郎君) それは正しい人でも惡口を言われる人があると同じように、投書があつたからといつて直ぐに……。
  1564. 岡部常

    理事岡部常君) だからそこのお考を伺つておるのです。十分にベストを畫したと思われるのですか。
  1565. 池田九郎

    証人池田九郎君) 私は十分ベストを畫したと思います。
  1566. 岡部常

    理事岡部常君) 法務廳或いは高等檢察廳に交渉されるときに、もつとこういう点は調査しろとか、考え物じやないかというような意見はなかつた、全然なかつたのですか。
  1567. 池田九郎

    証人池田九郎君) 法務廳から來ましたです。こういう点、こういう点を調べろという何か通知が來ておるのです。
  1568. 岡部常

    理事岡部常君) それはもうずつと、ぬかりなくおやりになつたのですか。
  1569. 池田九郎

    証人池田九郎君) ええやりましたです。そうして報告したですよ。
  1570. 岡部常

    理事岡部常君) この事件について法務廳からも出張され、それから大藏事務官も行つておりますね。
  1571. 池田九郎

    証人池田九郎君) ええ、そうです。
  1572. 岡部常

    理事岡部常君) あれはやはりあなたの方から御要求になつて出張しておつたのですか。
  1573. 池田九郎

    証人池田九郎君) あれは前に法務廳の方へ行つてですね。こういう調査をして、こういうことになつてやろうと、こう言つたところが、これは大藏省の所管だから大藏省に渡りを付けて、法務廳と両方で行かせるからということで、法務廳から行かしたのです。
  1574. 岡部常

    理事岡部常君) あなたは特にそれは法務廳と大藏省と一緒に來て調べて呉れ、で早くこれは片付けて呉れとおつしやつたのじやないのですか。
  1575. 池田九郎

    証人池田九郎君) 私の方からですか。
  1576. 岡部常

    理事岡部常君) ええ、特にそれを要請した、強く要請したというのじやないのですか。
  1577. 池田九郎

    証人池田九郎君) こつちが大藏省の役人に來て呉れということは、初めはそういうことは考え付いておらなかつたのです。
  1578. 岡部常

    理事岡部常君) 法務廳の方の注意ですか。
  1579. 池田九郎

    証人池田九郎君) ええ。
  1580. 岡部常

    理事岡部常君) そのときに何か関係官吏を向うで御馳走したとかいうようなことはございませんか。
  1581. 池田九郎

    証人池田九郎君) 誰ですか。
  1582. 岡部常

    理事岡部常君) その大藏省と法務廳関係の人を御馳走したということは……。
  1583. 池田九郎

    証人池田九郎君) そんなことはないです。
  1584. 岡部常

    理事岡部常君) あるようですがね。
  1585. 池田九郎

    証人池田九郎君) 私はおりはせんです。そういう御馳走したところへ……知らないです。
  1586. 岡部常

    理事岡部常君) あなたは御承知ないかも知れないが……。
  1587. 池田九郎

    証人池田九郎君) それは次席なり、あの当時の次席は三堀檢事ですが、次席やなんかが普通の、この本廳あたりから來る事務官に対する普通の儀礼上のことはしたかも知れんが、殊更に御馳走するなんということは知らんです。
  1588. 岡部常

    理事岡部常君) その程度じやないのですがね。御馳走するという程度ですかね。普通の接待をやつたのですね。
  1589. 池田九郎

    証人池田九郎君) 普通の接待はやつたろうと思いますね。
  1590. 岡部常

    理事岡部常君) あなたはその席にはおらんのですか。
  1591. 池田九郎

    証人池田九郎君) おらんです。
  1592. 岡部常

    理事岡部常君) いつでもそういう地方から見えると……。
  1593. 池田九郎

    証人池田九郎君) 普通の儀礼はするです。させます。私はおらんでも、普通の儀礼はしなければならんから、それは次席の方で心得て任意やるです。
  1594. 岡部常

    理事岡部常君) そのとき加藤という事務官が行つたのですか。大藏省の……。
  1595. 池田九郎

    証人池田九郎君) 五人程來たのですがね。名前を覚えておりません。
  1596. 岡部常

    理事岡部常君) そういうときは檢察廳の方じやどういう人が接待に出るんですか。事務局長級の人だけですか。檢事の人なんか出られないですか。
  1597. 池田九郎

    証人池田九郎君) まあ檢事級の者が來けば檢事が出ますし、それから事務官級の者が來れば事務局長が然るべくやるですね。
  1598. 岡部常

    理事岡部常君) 分りました。初めこの敷地の交換という問題が出たんでございますね。その交換問題はどういうふうになりましたですか。できたんですか。交換は……朝氣町の土地の交換というものはできましたんですか。
  1599. 池田九郎

    証人池田九郎君) それは甲府市で都市計画に入つてから交換するということになつておるのです。併し價格の査定委員会はまだかかつていないですから、清算はできていないです。
  1600. 岡部常

    理事岡部常君) それでもあれは四百何十坪ある。元の方は……。
  1601. 池田九郎

    証人池田九郎君) ええ。
  1602. 岡部常

    理事岡部常君) 片つ方は千二百坪。
  1603. 池田九郎

    証人池田九郎君) ええ。
  1604. 岡部常

    理事岡部常君) 大体の目安は。
  1605. 池田九郎

    証人池田九郎君) 目安は付けたです。
  1606. 岡部常

    理事岡部常君) それでいいわけですかね。それで片つ方に新らしい家を建て、片つ方はもう地割をして新らしいオリオン街を作ると、そういうことをやつてつたわけですか。
  1607. 池田九郎

    証人池田九郎君) その当時はその目安でやつたんですが、それから日が経つに從つて、片つ方は繁華街ですから地價が段々上つて行きますし、それから新官舎の方は少し田舎の方ですから、その値上りが少いわけです。だからその当時は丁度工合よく目安をやつてつたわけですけれども、今なら少し違うと思います。それは市の査定委員会で適正に決めて呉れるだろうと思うのです。
  1608. 岡部常

    理事岡部常君) この前いろいろ交渉の経過のうち、旧官舎敷地を半分と、それからこの敷地ですね、土地の交換というようなことも考えられたことがあるようでございますね。
  1609. 池田九郎

    証人池田九郎君) さようでございます。
  1610. 岡部常

    理事岡部常君) それは誰が考えたのですか。
  1611. 池田九郎

    証人池田九郎君) それは法務廳に行つて、この何ですね、全部賃貸價格から押して、そのままこう新旧官舎土地を交換することが賃貸價格の面からできないからということがあつたから、できるだけの土地をやつて残りの分は……。
  1612. 岡部常

    理事岡部常君) はあ、別処分にして……。
  1613. 岡部常

    理事岡部常君) それは法務廳の方の会計の智慧であつたんですか。
  1614. 池田九郎

    証人池田九郎君) それは打合せして……。
  1615. 岡部常

    理事岡部常君) あなたのお考えじやないですか。
  1616. 池田九郎

    証人池田九郎君) 私はそれ以外の手続は知らないので、多分会計へ行つて、そうして話を聞いて、そういうような計算を立てた。
  1617. 岡部常

    理事岡部常君) それから後の戰災地特別都市計画に入れて、今はそれでやつておるわけですか。
  1618. 池田九郎

    証人池田九郎君) ええ。
  1619. 岡部常

    理事岡部常君) それは誰が発案したのですか。
  1620. 池田九郎

    証人池田九郎君) それは大藏省の……。
  1621. 岡部常

    理事岡部常君) それは加藤さんですか。
  1622. 池田九郎

    証人池田九郎君) 名前ちよつと……。
  1623. 岡部常

    理事岡部常君) 加藤事務官ですか。
  1624. 池田九郎

    証人池田九郎君) 名前ちよつと……どういう人でしたか。とにかく五人程來た中の一番上の人です。
  1625. 岡部常

    理事岡部常君) 來た中の……。
  1626. 池田九郎

    証人池田九郎君) 指導してやつてつた
  1627. 岡部常

    理事岡部常君) 加藤氏が進んでそういう計画を立てて呉れたのですか。どうですか。そのときの経緯は……。
  1628. 池田九郎

    証人池田九郎君) 覚えておりませんが、あの当時は名取君が事務官でしたから、名取君とそれから事務局長に折衝さしてやつて、結局都市計画の中へ……。
  1629. 岡部常

    理事岡部常君) そういうことは名取氏がよく御承知なんですね。あなたは任しておられた。
  1630. 池田九郎

    証人池田九郎君) 任すというわけじやないですが、事務局長と話をして……。
  1631. 岡部常

    理事岡部常君) 下の折衝は名取氏がやつて、そして後はあなたが承認を求めるんですね。その当時この甲府市の都市計画というものは、もうすでにその時に確立しておつたんですか。
  1632. 池田九郎

    証人池田九郎君) それは都市計画課長と会つたときに、両方都市計画に入つておるという……。
  1633. 岡部常

    理事岡部常君) 入つておるということは言つておりましたか。
  1634. 池田九郎

    証人池田九郎君) ええ。
  1635. 岡部常

    理事岡部常君) 或いはこれがきつかけになつて、早くさせるというようなことでもあつたんじやないかと思うのですが、そんなことはございませんか。もうすでに決つてつたようですが。
  1636. 池田九郎

    証人池田九郎君) 自然決つてつたと思うのですがね。ずつと前から官舎のところは都市計画の道路がずつと付くので、官舎も二間くらい下らなくちやならんという話は前から聞いておつたんです。
  1637. 岡部常

    理事岡部常君) 甲府市としては、特にあの繁華街を市自身として何かに利用するという意向はなかつたのですか。
  1638. 池田九郎

    証人池田九郎君) そういう意向は聞いていません。
  1639. 岡部常

    理事岡部常君) そういう空氣もございませんでしたか、こちらの計画はよいことだからというので、直ぐ承認して呉れたわけでございますか。
  1640. 池田九郎

    証人池田九郎君) 初めから甲府市は、この道路に幾分か何か要るんですからね。甲府市は勿論この何が自分で進んでもそれを成立さしたい考えがあるだろうと思うのです。
  1641. 岡部常

    理事岡部常君) 道路の方からは……市自身がそこに何か公共の物を建てるとかいうようなお考えはなかつたのですか。
  1642. 池田九郎

    証人池田九郎君) そういうことは聞いておりません。
  1643. 岡部常

    理事岡部常君) 都市計画でどういう地区にするという確定案はなかつたわけですね。だから道路敷くらいのものでございますか。そこまで分らんかも知りませんが、何かそんなお話はなかつたんですか。
  1644. 池田九郎

    証人池田九郎君) 内容は分りませんが、少なくとも道路だけは、官舎の表と横は買收しなければならんということは前から聞いたが、市自身としては、あすこ繁華街中心地に接近しておるものですから、檢事正官舎あすこにあるのは邪魔になつてしようがないというのは、市の輿論であつたのです。
  1645. 岡部常

    理事岡部常君) それから実際お住いになつて、非常に惡い店はどういう点にございますか。
  1646. 池田九郎

    証人池田九郎君) これはですね。子供が困るです。勉強ができんので、じやんじやん拡声機でやるし、前と横が映画館ですからね。やかましくてしようがないところに、あすこは非常に人通りが、川に水が流れるように流れておるんですから……。
  1647. 岡部常

    理事岡部常君) 昔からの敷地ですね。
  1648. 池田九郎

    証人池田九郎君) そうです。
  1649. 岡部常

    理事岡部常君) 前から問題はあつたんですか。
  1650. 池田九郎

    証人池田九郎君) 前はあすこ繁華街じやなかつたんですが、前は住宅地としてはよかつたのですが、段々あつちの方へ映画館ができたもんですから繁華になつちやたんです。
  1651. 岡部常

    理事岡部常君) それで今のその官舎は戰災後できた官舎じやないんですか。
  1652. 池田九郎

    証人池田九郎君) そうです。
  1653. 岡部常

    理事岡部常君) 映画街というものも戰災後にできたわけでございますか。
  1654. 池田九郎

    証人池田九郎君) そうです。
  1655. 岡部常

    理事岡部常君) それまでは靜かなとこであつたんですね。
  1656. 池田九郎

    証人池田九郎君) 靜かなところだつたらしいです。
  1657. 岡部常

    理事岡部常君) 次に少年の町のことについてお伺いしたいのですが、それより前に司法保護事業でございますね。殊に少年保護事業については今でも御職掌柄御関係があるわけですね。
  1658. 池田九郎

    証人池田九郎君) そうです。
  1659. 岡部常

    理事岡部常君) 御経驗はどのくらいございますか、司法保護事業については。
  1660. 池田九郎

    証人池田九郎君) 司法保護事業は何ですね。熊本の地方檢察廳に上席檢事として行つてから、主として司法保護事業の担任をして関係しておりました。二十四、五年やつております。
  1661. 岡部常

    理事岡部常君) 少年保護のこともそのときからやつておるのですか。
  1662. 池田九郎

    証人池田九郎君) そうです。
  1663. 岡部常

    理事岡部常君) 保護檢事か何かやつてつたことがありますか。
  1664. 池田九郎

    証人池田九郎君) 保護檢事もやつておりますし、担当檢事なつても、保護については昔は大変激励されてやつたものです。
  1665. 岡部常

    理事岡部常君) 少年保護事業將來の見透しなどはどんなものですか、あなた樣のお考えは。
  1666. 池田九郎

    証人池田九郎君) 見透しと言いますと……。
  1667. 岡部常

    理事岡部常君) 將來どうしたらいいという……現在はどうでございますか。
  1668. 池田九郎

    証人池田九郎君) 現在の保護事業はなつてないと思います。
  1669. 岡部常

    理事岡部常君) そうですか。それに関連して少年の町などの設立ということをお考えになつたのですか。
  1670. 池田九郎

    証人池田九郎君) それもあるのですが、これは私に個人的な経驗からも一つは理由が出ておるのです。私沖繩にいましたときに、御承知のように戰爭になりまして、そうして丁度アメリカ軍が上陸して、逃げ廻つて幾度か爆撃か艦砲で以て命が無くなりかけたことがあるのです。もう到底生きる望みがなかつたのです。尤も奇蹟的なときが……艦砲が來て丁度話をしておる相手の人が破片で死んで、私は吹き飛んでしまつたことがある。そのときにも傷一つ負わなかつた。それから署長と一緒と馬小屋に逃げて行つたときに、馬小屋が潰れて隣りの百姓連中が十人ばかり死んでしまつたが、私は生きておる。それからそこを出てから砲兵隊に出遭つたのです。もう閣下駄目です。ここでもう玉碎しましようと言われて、そうして何ですね。そのとき砲二門を持つてつた。閣下何処にいらつしやる、行く所がないのだ、うろうろしているのだ。じやあなたのおる所を拵えてあげましようと言つて蛸壺を拵えて呉れたのです。蛸壺に入つて二十一人兵がおつて皆兵が死んでしまつた。私一人残つて、一人でうろうろしてしまつた。そういうような調子で、まあ逃げ場が無くなつちやつて身体きわまつて、そこで眞壁の谷に行つたときに、百姓家の、百姓連中が石を積んだ防空壕見たいなものに入つて、点々とこうやつておる、そこへ入れて貰つたのです。一つの壕に……そうすると海岸から狙い撃ちに一つ一つやられて死んでしもう。ここにおつてもしようがないというので、今度海岸の方へ逃げて行かなければならんというのですが、それで百姓連中と一緒に逃げたのですが、途中で以てもう峠を越すのに五十人ぐらいばたばた死んで行くのです。こつちにおつても魔の谷見たいに死ぬし、こちら逃げようと思えば、どんどん死んで行く。身体きわまつたんです。そのときに私は何ですね。初めてこの天命を知つたのですね。五十にして天命を知るという話があるのですがね。初めて天命というものを、実際自分がこうやつて生かされておるのは一つの私には使命があるのだ。用がなければ死んで……殺されるのだということをつくづく感じまして、それから、これから後は天命に從つて、いわゆる神の命に從つて一つ生きなくちやならん。そういう使命が負わされるのだということを感じて、それをただ一つのおみやげに内地に帰つて來たのです。それで神戸に來てそういうつもりで勤務しておつたのですが、瑞牆の事業というものが自分のやはり天から授けられた使命だとこう感じまして……。
  1671. 岡部常

    理事岡部常君) そうすると、もう全くあなたの御提案ですね、この少年の町設立は……。
  1672. 池田九郎

    証人池田九郎君) そうです。
  1673. 岡部常

    理事岡部常君) お考えは分りましたが、これの企画に参画した人というのはどんな人々ですか、誰々ですか。
  1674. 池田九郎

    証人池田九郎君) これはです。初めカトリック文化協会がこれを経営したいという、こういう話で、文化協会の小松神父と……。
  1675. 岡部常

    理事岡部常君) それはフラナガン神父が來られる前からですか。
  1676. 池田九郎

    証人池田九郎君) 前からです。それで文化協会で一つ引受けて貰つて、そうしてカトリック側からの資金でやつたらいいだろう、こういうつもりで始めたんです。ところがカトリックの文化協会の内部の事情は分りませんが、何か分裂して……。
  1677. 岡部常

    理事岡部常君) 何かそういうことがありましたね。
  1678. 池田九郎

    証人池田九郎君) それで大体イエス会がこれを受持つてやる考えであつたらしいのです。小松神父の話によるというと、それがいつの間にか文化協会も分裂して、而もなくなつたのです。それで私に相談もせずに、この事業を横浜教区に移しちやつた、で協田司教の管下に入つてやることになつたのです。そして私はそのつもりで縣の方には交渉して、こちらに文化施設をやるということで縣の承認を経たんですね。ところがカトリック教会の方では、一向これをやらない、やらないから田中耕太郎先生なんかも來て貰つたりして相談しておる、それでどうもカトリックが無責任極まるじやないか、こういうので田中先生のところに行つてですね。そうして、横浜の司教に会つて、そうして話しをして貰つた。田中先生は、檢事正の方でそうやつておるのに、教会側の方で余り積極的にやられんということはよくないということで司教に勧告されたと思うのです。
  1679. 岡部常

    理事岡部常君) それで結局まああなたが中心になつてやられたわけですね。
  1680. 池田九郎

    証人池田九郎君) そうです。
  1681. 岡部常

    理事岡部常君) それからこれはまあ相当大きな仕事のようですが、資金関係というのは、これは重大問題だと思いますが、現在までに集まつておる寄附金というのはどのくらいありますか。
  1682. 池田九郎

    証人池田九郎君) 現在会計帳簿を見ないとよく分りませんが。
  1683. 岡部常

    理事岡部常君) 大体でよろしうございます。
  1684. 池田九郎

    証人池田九郎君) 大体浅川さんの百五十万円、それから……。
  1685. 岡部常

    理事岡部常君) あとは十万円、五万円の口ですね。
  1686. 池田九郎

    証人池田九郎君) それから川口さんが五十万円のうち三十万円ですね、あとはまあ小さい。
  1687. 岡部常

    理事岡部常君) 上村君も百万円とか……。
  1688. 池田九郎

    証人池田九郎君) 百万円出すということになつておるのですが、まだ出さないのです。それでまだ精算はしていない。大体上村君も熱心家ですから、自分で資金を出してどんどん山の調査をしたりなんかしておるのですから、上村君の資金の精算はまだできていない。
  1689. 岡部常

    理事岡部常君) この中には問題になるような人、前科者、或いは闇商人、或いは闇成金とかいうように、檢察当局に後ろ暗い人はいないのでありますね。
  1690. 池田九郎

    証人池田九郎君) いない。
  1691. 岡部常

    理事岡部常君) そういう人は避けられたのでありますか。
  1692. 池田九郎

    証人池田九郎君) 勿論避けたのであります。苟も公共的な……。
  1693. 岡部常

    理事岡部常君) 上村氏は別ですね。
  1694. 池田九郎

    証人池田九郎君) 上村も同じことです。
  1695. 岡部常

    理事岡部常君) 上村も前科がありますね。
  1696. 池田九郎

    証人池田九郎君) 前科は、あれは改心して、そうして自分から保護收容所を拵えてやろうと言つておるのですからね。上村だけは前科であつても別だというのではないのです。人間として私は正しい人間を関係さしてやろうと思つておるのであります。
  1697. 岡部常

    理事岡部常君) 外にはそういう人がございますか。前惡くつても良くなつた人で、これはと思うような人格の高い人の寄附というのは、特にそういうことはございませんか。
  1698. 池田九郎

    証人池田九郎君) 前惡かつたというのはどういうことですか。
  1699. 岡部常

    理事岡部常君) 前科とか、考え方の惡い人を、そういう……。
  1700. 池田九郎

    証人池田九郎君) 考え方は、惡いと言えば人間は全部考え方の惡い人もあると思います。神様でない以外にはいいこともあるし、惡いこともあると思います。
  1701. 岡部常

    理事岡部常君) 我々外部の者から見ますと、あなたがやはり寄附の方をいろいろ勧誘せられたものと思うのでありますが、そういうことは檢察陣の方としてやらするのは……。
  1702. 池田九郎

    証人池田九郎君) 僕が寄附を勧誘したと言われると、甚だどうも私の氣持にぴつたりせんと思うのでありますが、將來瑞牆にボーイスタゥンを作つて甲府に一人も犯罪人をないようにしよう、それがためには一つ立派な收容所を作ろうじやないか、そうして仕事をしてやろうじやないかと、こういう計画の話をすれば、私はそれじやこれだけ出したいと、こう來らわけなんでありまして、お前はこれだけ寄附をせいという寄附を勧誘したのではありません。
  1703. 岡部常

    理事岡部常君) それは全然ないのでありますか。
  1704. 池田九郎

    証人池田九郎君) 檢事正寄附を勧誘したとこう言われれば、形の上ではそういうことはやれるかも知れないけれども……。
  1705. 岡部常

    理事岡部常君) それはそういう氣持ではなかつたというわけですね。
  1706. 池田九郎

    証人池田九郎君) そういう金を集めて、そうしてこれをこうしようというのでなしに、お前らこういう仕事をやつたらどうだと、こういうように話して、この瑞牆の事業というものができておる。
  1707. 岡部常

    理事岡部常君) そうすると、あとでお伺いいたしますが、法律專門学校の資金なんかもやはり同様ですか。
  1708. 池田九郎

    証人池田九郎君) 法律学校は違うです。
  1709. 岡部常

    理事岡部常君) 違うですか、これはみずから、檢察廳みずからが働きかけて寄附を求めたのですか。
  1710. 池田九郎

    証人池田九郎君) これもそう言われると……。
  1711. 岡部常

    理事岡部常君) やはり同じようですか。
  1712. 池田九郎

    証人池田九郎君) 私の氣持にぴつたり合わんです。そういうただ大掴みにそういわれると、これは法律学校の成り立ちから、法律学校のときには私御説明いたしたいと思うのですけれども、これは何ですね。私が來た当時に巡査の養成をするのに三ヶ月警察学校へ入れておるわけです。ところが部屋がなかつたり、教授する者が少なかつたり、経費の関係で一ヶ月ぐらいで巡査にした。だから巡査になつた人間を見ても、三ヶ月ぐらいで法律もろくたま知らんものが巡査として行動を取つておるのは非常に不便なんです。書類を見ても実際なつていないような書類が作られておる。これはどうしても巡査の教育をせなければいかんと、こういうので巡査になる人間の講習なり、或いは教養をする施設をしたいということで、私が提唱したのであります。
  1713. 岡部常

    理事岡部常君) 話が出ましたから序でに、法律專門学校設立のお氣持がそれに現われますがね、土地の人の法律知識を高揚するとか、そういうことはないのですね。主として警察官だけですか。
  1714. 池田九郎

    証人池田九郎君) 巡査を養成するということが一番初めの主眼点だつた、動機であつたのです。
  1715. 岡部常

    理事岡部常君) それから裁判所の事務官とか、刑務所の看守とか、そういう者も無論考えに入れておられたのでしようね。法律学校の方は……。
  1716. 池田九郎

    証人池田九郎君) 一番最初は巡査だけが私の頭にあつたのです。そうしてその施設をしたい、こう言つて理事者に話したところが、そんなちつぽけなことよりか、判檢事が教えて呉れるなら、一般に拡げたらどうですか、こういう今度理事者側の要求があつたので、それはそれだけの施設ができるなら、それは結構だから、それはやつてもよい、こういうので大きくなつたのです。
  1717. 岡部常

    理事岡部常君) それで今はやはり官吏養成ですね。主として……一般の法律知識というあれではないですね。程度專門学校言つても低い程度ですね。
  1718. 池田九郎

    証人池田九郎君) そうです。
  1719. 岡部常

    理事岡部常君) そうするとやはり看守とか、巡査とか、或いは裁判所の書記とか、そういうような程度の人が目的ですね。
  1720. 池田九郎

    証人池田九郎君) そういう……又一般の人も、これから法律を知らなければ生活ができないと思うのです。一般の人も……。
  1721. 岡部常

    理事岡部常君) 希望も入れて……。
  1722. 池田九郎

    証人池田九郎君) 中学卒業程度の学力を持つておる者は入れて……。
  1723. 岡部常

    理事岡部常君) それで一年でございましたね。一年というのは学級も一つでやるのですか。
  1724. 池田九郎

    証人池田九郎君) 一学級で……。
  1725. 岡部常

    理事岡部常君) 途中で入れないのですね。途中入れて、リレー式にやるのじやないですね。
  1726. 池田九郎

    証人池田九郎君) 途中で入れてもよいのです。
  1727. 岡部常

    理事岡部常君) 何学級か入れて続けてやるのですね。どのくらい收容するのですか、收容定員は……。
  1728. 池田九郎

    証人池田九郎君) 私の考えでは三百人くらい。
  1729. 岡部常

    理事岡部常君) いつ頃から開校ですか。大分進んでおりますか。
  1730. 池田九郎

    証人池田九郎君) 漸く家ができたくらいです。これから四月から始めたい。その間、家ができたですから、勿体ないから、成人教育か、講習会かやつたらよいと思つております。
  1731. 岡部常

    理事岡部常君) それでは又元の少年の町に移りますが、こういう非常に結構な設備だと思いますが、世の中の人はいろいろ批判もいたしますが、この少年の町の設立をあなたが御計画になつたのは、老後の事業として経営に当ろうということを考えたので、池田はやつておるのだという、こういうようなことを言つておる人があるようですが、そんな考えもございましたか。
  1732. 池田九郎

    証人池田九郎君) それは老後の事業になるかも知れんし、どうなるか、私は自分のことを考えてやつておるわけではない。將來私が役を辞めれば、どうせ私は年寄ですから、もう四、五年したら死ぬるでしようが、年寄がそういう仕事をやることになるかも知れない。
  1733. 岡部常

    理事岡部常君) そのためにやられたわけではないのですね。
  1734. 池田九郎

    証人池田九郎君) そのためではないですね。一般の山梨縣の教化事業のために起したので、自分なんかどつちどうでも、沖繩の戰争以來私は神樣に捧げておる身体ですから、老後がどうのこうのということは、そんなことは考えていません。
  1735. 岡部常

    理事岡部常君) いろいろ言う人もあるし、投書もあるから伺つたのです。
  1736. 池田九郎

    証人池田九郎君) 人間ですから、食うことは当然考えるでしよう。
  1737. 岡部常

    理事岡部常君) それから瑞牆の山丸上に大きな十字架を立てる御計画になつておるのですか。
  1738. 池田九郎

    証人池田九郎君) 立てる計画をしておるのです。
  1739. 岡部常

    理事岡部常君) それから何か御自分で墓地まで選ばれたということもありますですが。
  1740. 池田九郎

    証人池田九郎君) これは瑞牆に自分の一生を捧げて、そういう少年の指導に当りたいという、全國から何十人か、私の方に志願者がおるのです。そういう人間のためには、これを生死の場所としてやるのだから、墓場は丁寧に奇麗に拵えなければならんと言つておる。自分が死ぬための墓場じやない。瑞牆のために一生を捧げたいという人のために奇麗な……。
  1741. 岡部常

    理事岡部常君) 聖地を開いてやろう……。
  1742. 池田九郎

    証人池田九郎君) その墓場を立てて、一番奇麗な墓場を立ててやろうと言つておる。若し私がそこで死ぬるなら、その墓場の中に入るかも知れない。
  1743. 岡部常

    理事岡部常君) いや分りました。それで法律学校の、これは設立準備として、理事なんという者を作られたですが、それはどういうふうな人々ですか。理事長はあなたがおやりになつておるのですか。
  1744. 池田九郎

    証人池田九郎君) そうです。
  1745. 岡部常

    理事岡部常君) そうしてその設立準備に当るという理事者はどういう人ですか。
  1746. 池田九郎

    証人池田九郎君) 淺川隆治郎、淺川彦六、川口莊二郎、大島利元、中村……。
  1747. 岡部常

    理事岡部常君) それは精神的方面の人でしようね。
  1748. 池田九郎

    証人池田九郎君) これは皆実事家です。中村何とか言うのです。これは皆実業家で金持です。それから僕と次席檢事と、これだけが。
  1749. 岡部常

    理事岡部常君) そういう人の人選は、十分御注意になつておるのですね。
  1750. 池田九郎

    証人池田九郎君) そうです。皆立派な人です。
  1751. 岡部常

    理事岡部常君) このことについても檢事長にはお話しになつておるのですか。
  1752. 池田九郎

    証人池田九郎君) 勿論やつておるのです。
  1753. 岡部常

    理事岡部常君) それでそのことについては、檢事長から何か御注意があつたのじやないですか。
  1754. 池田九郎

    証人池田九郎君) ありませんですね。それは結構なこつちやあという話だつたんですね。
  1755. 岡部常

    理事岡部常君) 併しまあ何か專門学校とか大学にするには、資格審査とか。いろいろ面倒があるとかいうようなお話などもされたことがあるらしいですね。
  1756. 池田九郎

    証人池田九郎君) 資格審査、皆やつておるです。
  1757. 岡部常

    理事岡部常君) でも格を上にするとなかなかむずかしい。それから教室の設備なんかはなかなか厄介ですね。大学では……。
  1758. 池田九郎

    証人池田九郎君) そういう話は聽きましたです。いろいろな御注意を受けておるのです。そういう檢事長自身も学校の理事をしておられるですから、その経驗からいろいろな御注意を受けております。
  1759. 岡部常

    理事岡部常君) 今まで寄附金はどのくらい集つておりますか、学校の寄附金。
  1760. 池田九郎

    証人池田九郎君) 泉さんが見えたときに出しておられるのですが、三百何万少し、三百二十何万ぐらいですね。
  1761. 岡部常

    理事岡部常君) その寄附金のことについて何も檢事長から質問されたことはありませんか。
  1762. 池田九郎

    証人池田九郎君) ないですね。
  1763. 岡部常

    理事岡部常君) そうですか、檢事長が少し心配して、檢察陣営の方が陣頭に立つて募金なんかに廻つては困るというようなことを言われてはおりませんか。そういう噂を聽いたら、あなたから、いや、そんなことはないと答えた。
  1764. 池田九郎

    証人池田九郎君) それは昨日か、一昨日か、雪下檢事が來て、檢事正が檢事室へ持つてつて寄附者を集めて、お前幾ら寄附せい、お前幾ら寄附せいと言つて割当したろう、どうもそれじや面白くないじやないかと言つて心配しておられたということを雪下檢事から聽いたものですから、飛んでもない話だ、そんなことはありはしない、誰がそんなことを言つておるのかと言つて、雪下檢事に私は詰問したことがあるのです。
  1765. 岡部常

    理事岡部常君) その前にあなたは檢長の前では、檢察陣営がそんな募金なんかの運動をしない、こう言われた。そこへまあ誰かが行つて、どうも檢察陣営が直接やつておるようだと言つたら、それは大変だということになつたらしいですが、そんなことは雪下さん話しませんでしたか。
  1766. 池田九郎

    証人池田九郎君) 雪下さんが話したのは、今のような話をしたら、そんなことは絶対にないのだ。
  1767. 岡部常

    理事岡部常君) それは檢事正室に呼んで割当てたというその質問ですか。
  1768. 池田九郎

    証人池田九郎君) ええ、だからそんな馬鹿な話はないと言つて、私は雪下檢事に強く話したことがあるのです。
  1769. 岡部常

    理事岡部常君) そうですか、分りました。それからあなたは今理事長をやつておられますが、將來校長を設けるときは、どういう人を校長に当てられるつもりですか、御自身おなりなりますか。
  1770. 池田九郎

    証人池田九郎君) これについては、私は非常に考えておるんです。この間、ずつと前からですが、どうしても教育ということと宗教ということを結び付けなければいけないと、こう思つておるですが、それから官立の学校では宗教教育をするということについてはいけないことになつております。私立だつたらいいと思うのです。それでカトリックの方から應援して貰つて、そうして人間の人格の陶治、養成なんという方面に主として力を入れて貰いたい、こういうことでチマチ博士を学校の校長になつてつたらどうか、そうして倫理学なり、聖書なり或いは英語なりを外人の方から一つ受持つて貰いたい、こういうことを今折衝して、大体の内諾は得ておるのです。その條件についてどういう條件を要求するのか、それを一應聽きまして……。
  1771. 岡部常

    理事岡部常君) そうすると巷間で噂しておる、あなたが初代の校長におなりになるという、そんな計画はないわけですね。むしろ反対ですね。外の方を引張つて來ようとされておるわけですね。
  1772. 池田九郎

    証人池田九郎君) 私はチマチ博士を校長にしたいと思つておるのです。校長になる人が、形式的に申請をするときに校長になる人の埋合せがつかんから、私が校長になることになつておるのです。予定では……。
  1773. 岡部常

    理事岡部常君) 予定には。そのためにあなたは何でも轉任の交渉を受けてもそれを拒絶しておるというような噂が立つておるのですが、そんなことはないのですか。
  1774. 池田九郎

    証人池田九郎君) そんなことはありません。轉任の交渉を受けたことは一遍もありません。
  1775. 岡部常

    理事岡部常君) あなた自身はこの学校問題もあるし、少年の町の問題もあるし、轉任は嫌なんですか。
  1776. 池田九郎

    証人池田九郎君) あまり希望しないですね。
  1777. 岡部常

    理事岡部常君) そういう意思表示をされたことはありませんか。
  1778. 池田九郎

    証人池田九郎君) あります。
  1779. 岡部常

    理事岡部常君) それはどういう機会にですか。
  1780. 池田九郎

    証人池田九郎君) 高檢の次席檢事と、宴会の席上酒を飲んで、これは瑞牆の仕事も、法律学校も今できておるから、今轉仕することは余り好まん。こういうことは窪谷檢事にも話をしたことがあるのです。
  1781. 岡部常

    理事岡部常君) それは酒席ですか。
  1782. 池田九郎

    証人池田九郎君) 酒席です。
  1783. 岡部常

    理事岡部常君) お酒をお飲みになるのですか。
  1784. 池田九郎

    証人池田九郎君) 飲みます。
  1785. 岡部常

    理事岡部常君) クリスチヤンの方でも差支ないのですか。
  1786. 池田九郎

    証人池田九郎君) これは新教のプロテスタントは大体酒を飲まないのです。私も酒を飲まんために、十三年一滴も飲まないために、えらい目に遭つたのです。次席檢事なども飲み、上席の檢事が酒を飲まんで貴樣一体何の仕事ができるか。宮城長五郎氏が大臣のとき、貴樣酒を飲まんそうじやなと、三、四回は酒を飲まんというてやかましく叱られた。そうですかな、それなら私もちと酒を飲まなければ出世しないのなら勝手にしなさいというので、上に酒を飲む檢事正の下に附いて行つてから覚えが惡くて、対馬に流されたことがあるのですが、それで酒を飲まんで苦しんだ。
  1787. 岡部常

    理事岡部常君) 分りました。それは脇道ですから、その程度にして下さい。ちよつと承わつて置きたいのは、名取忠雄氏ですか、あの関係はどういう御関係ですか。
  1788. 池田九郎

    証人池田九郎君) 名取君ですか。あれは非常に警察署長として、私が巡視したり何かして親しく見たところが非常に立派な署長だと思つたのです。それで二級事務官を取るのに名取君を……。
  1789. 岡部常

    理事岡部常君) 引き拔いたわけですか。
  1790. 池田九郎

    証人池田九郎君) 引つこ拔いたわけです。
  1791. 岡部常

    理事岡部常君) そうすると使つておる間に武徳会関係で追放されて、それで上村氏の方に何をなさつた。それで引つこ拔いて辞めたものですから、食うに困つちやつた。それからどこか私も世話しなければならんというので、あちこち世話をしたのです。そのうちに上村氏が相当俸給を出すと言うから、上村氏に……。
  1792. 岡部常

    理事岡部常君) その俸給というのは五千円と聞いておりますが、その外にも家をやるという條件をお付けになつた。それはあなたがお付けになつたのですか。
  1793. 池田九郎

    証人池田九郎君) そんな條件ではないです。五千円ぽつきりです。
  1794. 岡部常

    理事岡部常君) 住居を保障してやる。住居だけじやない。住居というのは借りてもいい。大体貸してやるというのが普通の例ですが、それ以上にあれは何十万、三十万円に値いするような家屋敷を貰つてでございますね。それは御承知でございましようね。
  1795. 池田九郎

    証人池田九郎君) それが……。
  1796. 岡部常

    理事岡部常君) それはやはりあなたがお付けになつたじやないでしようか。
  1797. 池田九郎

    証人池田九郎君) 私は條件を付けやしません。私の家へ上村氏を呼んで、最後の決定をした。私はあり当時の價格から、四千円くらいが適当だと思つたのです。ところが名取君は五千円くらいなければ困る。家族もおるし、それから今までの俸給から見て、五千円くらいであつたらいいと言つた。ところが上村承知しないかと思つたところが、ようございます。五千円で一つ引受けましようということで……。
  1798. 岡部常

    理事岡部常君) その当時は家屋敷の問題はなかつたですか。
  1799. 池田九郎

    証人池田九郎君) なかつたです。その後……。
  1800. 岡部常

    理事岡部常君) その後……。
  1801. 池田九郎

    証人池田九郎君) その後名取君と上村君との間に今の家は借家だし、退かなければならんからというので、家を建てて欲しいという話もあつて、そうして上村氏が、それじや建ててやろうという話ができたと思うのです。ですから今度の家を作るときも、私はどんな契約でいつ家ができたんやら、いつあすこへ引つ越したのやら知らないです。
  1802. 岡部常

    理事岡部常君) それをお知りになつてどういうふうにお考えになりましたか。そういうあなたの御紹介で、五千円だけでもうこれは十分だと思つて紹介された人が、実際向うに行つて大体三十万円くらいと見積つて、三十万円くらいの家屋敷を貰つた。これはどうもちよつと私は常識で考えて、どうしても判断できないですが、あなたとどういうふうに考えになりました。そういうあなたの御紹介で、五千円だけでもうこれは十分だと思つて紹介された人が、実際向うに行つて大体三十万円くらいと見積つて、三十万円くらいの家屋敷を貰つた。これはどうもちよつと私は常識で考えて、どうしても判断できないですが、あなたはどういうふうにお考えになりましたか。
  1803. 池田九郎

    証人池田九郎君) えらい思い切つたことをするもんだなと思つたです。
  1804. 岡部常

    理事岡部常君) 思い切つただけでなく、何かそこがあつたじやないですか。あなたに対して大いに報いるとか、間接にするとか、或いはそこに中間に何かあつたというようなことはちよつと考えられませんですが、如何ですか。何も理由がなしに、ただ今までの関係でそんな莫大なものが贈與できるものでしようか。常識的に考えて、どうも納得行かないですが……。
  1805. 池田九郎

    証人池田九郎君) 常識的に考えれば、それくらいのことはしてもいいと思うですね、それは上村氏は学問もなしですね、そうして名取君が上村氏の家老格ですがね。すべて上村の事業の働きをやつておるですからね。大体立派な大名なら自分の地位の半分をやつてでも、いいさむらいを抱えるようなもんで……。
  1806. 岡部常

    理事岡部常君) それは昔のことであつて、今もありましようかね。
  1807. 池田九郎

    証人池田九郎君) だから私は上村氏も思い切つたことをするなといつて感心しておるのです。
  1808. 岡部常

    理事岡部常君) 私がちよつと調べたときには、そのときにそれは條件が付せられておるように思うのですが、あなたは御関係になつておるじやないですか。
  1809. 池田九郎

    証人池田九郎君) 私は関係しないです。それは上村氏のところに附いておれば、ああいう活氣のある実業家だから、將來伸びるぞというて私は襃めたのです。名取君をですね。
  1810. 岡部常

    理事岡部常君) 今あなたは常識でそれは考えられるとおつしやつたけれども、我々の常識と大分かけ離れて、我々がどうかしておるかも知れない。
  1811. 池田九郎

    証人池田九郎君) 上村氏の事業をあなたはよく知られると、いろいろな事業をやつておるのに、いい番頭がおらなければ、それは事業もうまく行かないと思うのです。
  1812. 岡部常

    理事岡部常君) それ程の腕くらいで、それ程社会的にも價値付けられる人ですかね。
  1813. 池田九郎

    証人池田九郎君) 名取君ですか。
  1814. 岡部常

    理事岡部常君) ええ。
  1815. 池田九郎

    証人池田九郎君) それはあれだけの人間はないですね。そのくらいのことをしても私は十分價値があると思うですね。
  1816. 岡部常

    理事岡部常君) そうですか。
  1817. 池田九郎

    証人池田九郎君) 今の被服工業株式会社……。
  1818. 岡部常

    理事岡部常君) それはあなたが御承知ですか、御本人上村が知つておるんですか。
  1819. 池田九郎

    証人池田九郎君) 上村自分が使つておりますので知つております。
  1820. 岡部常

    理事岡部常君) いや初めて雇うときに……。
  1821. 池田九郎

    証人池田九郎君) 雇うときですか。
  1822. 岡部常

    理事岡部常君) ええ。
  1823. 池田九郎

    証人池田九郎君) 上村はよく知つております。
  1824. 岡部常

    理事岡部常君)  あなたは御承知なくても、それは御本人の問には……あなたは御承知だと思いますが、それはないとして、御本人同志約束をしておる。使つて見てそれは百万症の値打のある人もあるでしようが、使わないで、何十万円の値打ということは何か認められませんでしようが。
  1825. 池田九郎

    証人池田九郎君) それは名取署長と言えば、山梨縣の警察界でも有名な人物です。望して同じ北巨摩ですからね。
  1826. 岡部常

    理事岡部常君) 警察署長という者はそんなに偉い者ですかね。社会最にそんなに買われるものですか。
  1827. 池田九郎

    証人池田九郎君) それは人物次第ですがね。警察署長だから特に偉いということはないでしよう。人物としてはあれは非難のない眞つ直ぐのいい男です。
  1828. 岡部常

    理事岡部常君) それは見解の相違です。幾らやつても片が付きませんでしようから、それぐらいにして、その結論的に、この今いろいろこの材料で私は申上げたんですが、忌憚なく申上げたんですが、その材料の主たるものは、主として新聞とか、投書とか、投書も各方面に対する投書はありますが、とにかくこういうふうな参議院の委員会の問題にまでなつて、結果においては相当社会耳目を衝動したというと大袈裟になるが、騒がしておるわけです。これについての御感想はどんなふうですか。こういう事態に立ち至つた今日になつてですね。どういうふうにお考えですか。
  1829. 池田九郎

    証人池田九郎君) 感想ですか、遠慮なく言わさせて貰えばですね。自分の個人的な考えから言えばですね。こうやつて大体國会も見たこともない、來たこともないとき、こういう事件のためにこうして見物をせて頂いて、又いろいろな非難を受けたり何かして、ここまで呼出されていろいろな経驗をしたことは、個人的に大変いいことですね。個人的にはいいことであるけれども、この法律学校なり、或いは瑞牆の事業を進行する上においては、非常に困つて非常に遺憾千万なんです。これは私としては参議院から表彰でも受けてもいいくらいに考えておる事柄ですね。こんなに、そんな何だか檢事正は不正をしたような疑いで調べられるというようなことを、世間で考えさせられるようなことになつておるということは非常に遺憾千万なんです。大体自分としては山梨文化のために貢献したい。而も一身を捧げて眞劍にすべてのことをやろうという考えであるのに、如何にも私情で以てこんなことをやつておるように世間に思わせるような噂が立つということは非常に遺憾と思うのです。これがためにこういうことがまあ仮にできて、参議院の方で実際檢事正は不正なことがないんだと、そうしてやることは非常に立派なことをやつたんだという結論になつて発表して頂くなら、この事件は非常にいいことだと思うのです。
  1830. 岡部常

    理事岡部常君) まあそういう決定は我々委員だけでやるわけでもありません。まあどうしろ、こうしろという権限もないわけですが、まあこういう事態を惹起したことは、法務廳在いは檢察事務関係が、結果においてどういうふうに感ぜられますか。世間から見てどういうふうに感ぜられておりますか。
  1831. 池田九郎

    証人池田九郎君) 結果において新聞あたりを見ると、檢事正が何か惡いことをしておるように……。
  1832. 岡部常

    理事岡部常君) 必ずしもそうじやないですがね。
  1833. 池田九郎

    証人池田九郎君) ようようには思えないのです。甚だ心外千万だと思つておる。併しどうも神樣のやることだから、神樣が何かの計画で、こういうようなコースを取つて行かせて下さるのだから、この結果はよくなつて行かなければならんと思いますね。だからこういうことをやるときに、いろいろなそういう面倒なことが起つても、愛なる神のやられることですから、きつといい結果が起るだろうと思うのですね。
  1834. 岡部常

    理事岡部常君) この問題を別にいたしまして、一体檢察廳がいろいろな寄附問題に関係されまして、殊に保護事業関係で大分そういうふうに義務付けられるというふうな、あれについてはどうお考えになりますか。
  1835. 池田九郎

    証人池田九郎君) どうも日本人は、もう少し金持は寄附して、社会事業に多く金を投げ出さなければいかんと思いますね。だから金持が寄附せなければいかんと思います。外國あたりの金持は随分寄附するのですけれども、日本人はですね。
  1836. 岡部常

    理事岡部常君) その出し澁つておる日本人に対して、そういう寄附の勧請なんかをやられる檢事正、連合会同などをやつておられる檢事正がどういうふうにお考えになつておられますか。
  1837. 池田九郎

    証人池田九郎君) 寄附は、大いに寄附した方がいいと思います。
  1838. 岡部常

    理事岡部常君) 実際おやりになるのにどうですか。非常に困るのですか。御迷惑になりますか。
  1839. 池田九郎

    証人池田九郎君) 困らんですね。寄附寄附ですからね。淨財ですからね。
  1840. 岡部常

    理事岡部常君) ですから淨財まではいいですけれども、それがややもすると間違いのもとになるではないですか。世間の非難を受ける、少くとも誤解を受けると……。
  1841. 池田九郎

    証人池田九郎君) 世間がいいことを惡口言うのは勝手ですからね。
  1842. 岡部常

    理事岡部常君) 勝手ですけれども、誤解されては実際事を運ぶに困りませんか。
  1843. 池田九郎

    証人池田九郎君) 困りません。実際いいことをするのに惡口するのは止めるわけに行きません。
  1844. 岡部常

    理事岡部常君) 何かそれを止める方法がありませんか。
  1845. 池田九郎

    証人池田九郎君) それはいろいろな方法はあるでしよう。あるでしようが、今お問いになつておるのは寄附することがいいか惡いか……。
  1846. 岡部常

    理事岡部常君) いや、寄附を勧請するのですね。寄附を求められることが檢察人としてどうですか。檢察の仕事をやつておられる方が、そういうことをやらなければならんのはどうですか。お困りではないでしようかというのです。保護事業のために淨財ではありましようが、寄附を求められておりますね。この問題ではなく一般的にですね。それであなた方のお立場はどうでしよう。序でにお伺いいたします。
  1847. 池田九郎

    証人池田九郎君) 立場と言つて、立場は檢事正の立場です。
  1848. 岡部常

    理事岡部常君) 何かそれには差障りはありませんか。
  1849. 池田九郎

    証人池田九郎君) ありませんね。惡いことをしたら糺彈します。いいことは褒めます、これははつきりしておるのです。
  1850. 岡部常

    理事岡部常君) それはもうずつとの檢事は皆そういうお考えでやつておられるのですか。
  1851. 池田九郎

    証人池田九郎君) そうです。
  1852. 岡部常

    理事岡部常君) それは結構です。
  1853. 池田九郎

    証人池田九郎君) 大体私の考えでは、檢事も檢事正もですが、大体檢事というのは人の犯罪をただ縛るだけが能ではないと思います。犯罪をなくするように、あらゆる社会活動をするのが檢事の仕事だと思うのです。強いて人の誤解を受けるようなことをする必要はないですけれどもね。
  1854. 岡部常

    理事岡部常君) それは御尢もですね、そちらはよろしうございますか……それではどうも長い間遅くまで御苦労さまでございました。明日は午前十時から開会いたします。    午後六時一分散会  出席者は左の通り。    委員長     伊藤  修君    理事            鬼丸 義齊君            岡部  常君    委員      齋  武雄君            遠山 丙市君            深川タマヱ君            松村眞一郎君            星野 芳樹君   証人    甲府地方檢察廳    檢事正     池田 九郎君    甲府地方檢察廳    次席檢事    池田 貞二君    甲府地方檢察廳    経済係檢事   鈴木 壽一君    オリオンパレス    映画館社長   上村 文一君    被服製造会社社    長       淺川隆治郎君    山梨少年農民道    場長     丸山幸右衞門君    会  社  員 名取 忠雄君