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政府委員(今井一男君) お答えになるかどうか分りませんが、私共としてとにかく呑み込み難い、或いは現在の我が國の状態から見てまだ適当しないのではなかろうかという、そうい
つた点は多々ございます。主な点を一、二申上げますと、先ず一番基礎にな
つております
政府職員の二千四百七十円を基礎に
計算される
方法は、確かに
一つの新らしい行き方として、私共も衷心から敬意を表しておるのでありますが、ただこれが厚生省の栄養
調査を基礎としておられますだけに、現在の
日本の食糧に関する
國民の消費水準がその基礎に
なつたように見受けられるのであります。從いましてこれを以て直ちに最低の
生活であるということに結び付けるところに私共疑点を持ちます。尢も食費以外のものにつきましては密度のもつと高いところを使
つておりますので、この点は或る
程度緩和されますが、それにいたしましてもこれを以て最低
生活につきましては疑問がございます。それからそれにいたしましても下の二千四百七十円は
生活の上から
計算し、上の一万五千円は民間賃金から
計算して両者の結び付きということについても、
政府として非常に疑問を持つのであります。若しも本人の
生活だけを見るという考え方で本俸を考えるのでありますならば、むしろ
日本の現在の
國民の消費水準からいたしまして、憲法の精神等を参酌して、一番下の許される最低限、又
日本の國内事情からして、これ以上の
生活は本人一人
当りとしては相成らんぞ、そうい
つた線から結び付いて來るという考え方であればそういう考え方になりますし、又両者とも民間賃金或いは
能率價置から行
つた線から結び付いたこれも
一つの考え方でありますが、両者の全然違
つた線から見たものを結んでおられるとい
つたところに、私共は基本的な疑問を持つわけであります。それから更にこれを等比級数線で結んでおられる点からいたしましても、技術的に若干の疑問を持ちます。又民間に一万五千円というものが時間と比較する場合に適当な食費であるかどうかということにつきましても、これも非常に疑問であるわけであります。
それから最も大きな問題であります
家族手当の点でございますが、
家族手言が本人給は一切本人だけをカバーする、その他の
家族は別に考える。これも確かに
一つの考え方に違いありませんが、併しながら確か
家族給というものは現在のCPSの
計算によりますと逓減しておることは明瞭に実績が出ております。こうい
つた官公吏のような極めて複雑な
家族構成を持
つております、即ち何百万という
職員に当嵌める際に單なる二人目は夫婦、三人目はどうという
一定の構想の下に出しましたものを、そのまま当嵌めることは私共の
実情に副わないと思います。のみならず現在のこの臨時的な
給與体系は、結局はいずれ近い將來におきまして全面的に本格的な職階級に切替わるべきことは申すまでもございませんが、この臨時的な
家族手当はやはり成るべく早く止めるという考え方をいたしますことを、組合側も望み、経営者側を望んでおる。本人給への統合という一線は、方向としては誤
つておらないのみならず、結局その方がより本格的な職階級を早く我が國に確立する途であろう。大きな
金額を外に出して置きますと、結局それを急に切落すことはできませんから、結局において廻り途になりはせんか。
のみならず現在の職階級は、無論非常に未熟な不完全なるものでございますので、
日本の從來からございます勤續級的な、いわゆる意味のない昇給法、勤續年数に應ずる昇給が多分に採入れられております。その点は勿論議論の余地は私は多いと思います。今の行き方が正しいものとは決して考えておりませんが、とにもかくにも現在は現実との妥協から
労働價値が余り上りませんでも、或る
程度の昇給ということを現実に認めております。これは官民共にそういう方向に走
つております。
從つていわゆる終身職、一生
一つの職種に從事いたします場合においても、やはり初任給に比べまして、二倍とか三倍に必ず上げるような仕組みにな
つております。のみならずここに今のやり方として、本人給の中に
家族級が含まれておるという建前が採られたわけであります。從いましてそれを全部止めまして、本人給は本人だけということになるのも確かに考え方でありますが、そういうしますれば本人給を全部やり直して、今の職階制度を基本的に格付けを仕直さないとできないのでございます。そういたしますと、これは半歳以上の日数を要しましようし、且つ又恐らく組合とも間にも非常な摩擦を生ずるだろうと思います。
のみならずこの
家族手当というものは民間
給與との権衡を取ることは私は
一つの重点だろうと考えます。民間におきましても
家族手当が大体今日の
政府案の線に來ておることは事実であります。やはり優秀なる人を官界に入れる本旨から申しましても、やはり民間の
家族手当というものも或る
程度頭にありませんと、本俸だけが民間とバランスがとれましても、
家族手当の方が非常に役人に方が多ければ、結局
家族持ちが官界に來て、若い者が民間に行く、こういうような
恰好に相成るようにも考えられます。この点から申しましても私共として納得し難い点であります。尚
地域差につきましては、
計算の基礎がいわゆる
生活水準の差を全然調整しません。現在に必要だ
つた金だけを基礎にしてや
つておられますので、この点も私共として適当と考えられません。のみならず全官公といたしましてはどの町村にも必ず
職員がおりますので、道
一つ、川
一つ隔てまして四割も変わるような制度は、私共の体驗からいたしまして実施は不可能かと考えます。
尚以上の体系に関する
意見につきましては
人事院のこちらに発表のあと、
政府部内の
関係、
労働省、安本、
大藏省等の事務局が集まりまして協議いたしました結果、すべてが一致しました
意見がございます。ただ
ベースにつきましては、その間三者の間に
相当の
意見があ
つたことは率直に申上げます。その点はいろいろと見方がございまして、民間の
労働者に全部引写しに行くべし、実質賃金維持の線に行くべし、或いは官公吏は特殊な立場をとるべし、こうい
つたようなことから三者の
意見は、率直に申しまして一致しませんでした。結局最終の
予算が決る際に閣議におきまして決定されたような次第でございます。