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木下源吾君 私は反対します。その
理由は、成る程現在の三名は
臨時人事委員がとして今までや
つて來たのですが、これは飽くまでも
臨時の処置と私は考えております。今回
公務員法が通過いたしまして、この
内容を檢討いたしますと、
人事官というものの
責任、そうしてやられることは非常に重大である。で、これらの
選考については、もつと私は廣い視野に立
つて、そうして愼重に
政府が
選考しなければならんものと、かように考えております。そこで現在の諸君はどうかというと、普通の人としては何ら欠点もなし、むしろ優れておると考えまするが、
人事行政に関する今日までの知識、
経驗というものについては全く未知数と言わざるを得ない、かように考える者であります。殊に或る一部においては、
公務員法に明記せられるいる
政党的色彩というようなことについても、多少疑わしい点もある。尚又一部には、先般私は
思想傾向をお伺いしたところ、資料を出して
貰つたのでありますが、こういうことを書いているのがあります。全体
主義というものは
民主主義と対立するものではない、反対するものではない、反
民主主義じやない、こういうようなことを書いております。これは全体を通じて精読したわけでありませんけれども、全体
主義はただ
個人主義と対立するものである。
民主主義とは反するものではない。こういうように書いている一節があるのであります。この一点を見ましても、その
思想の大体が分かると思うのであります。御案内の
通り全体
主義と一口に今日言われているのは、ファシズムでありまして、少数の
独裁者が、全体の利益のためにやるのだという、このことが決して今日のいわゆる
民主主義には当てはまらないということを我々は考えている。然るにこの著書に現われている彼の
説明においては、そういうように
民主主義を解釈している。なぜ私はそういう
思想を重要視するかというと、例えば
公務員が
能率を上げなければならないということが、今度の
最大眼目でありますが、
能率を上げるということは、言うまでもなく、ただ
個人がやたらに働くということで、
能率が上るものではないことは御承知の
通りであります。今日
能率を上げる上においては、それは全く
科学的見地に立
つて、そうして綜合的な面から
能率を上げるという方向でなければ、私は
能率が上らないものであると考えております。卑近に言いまするというと、今日までの状態では、
日本は
足し算の五と五を足せば十である程度の
日本であ
つたのでありますが、
敗戰後の
日本の
能率を上げるということは、單なる
足し算ではなくして、五と五を掛合せて二十五になるというような方式でなければ、私は飛躍的に
能率は上がらない、かように考えておるのであります。そういう観点からいたしましても、
只今いう全体
主義が
民主主義であるというような
考え方では、これは決して
足し算の域を脱しない
考え方である、そういう
思想より持
つていない、こういうふうに私は断ぜざるを得ないのであります。かくのごとき
思想を以て、そうして今三百万の
公務員の一切の権限を持つ
といつても過言でない程の重大な力を持
つて、そうして他面においては、これらの
公務員の
能率を本当に新らしい時代において、新らしき基盤としては
能率を上げるということには私は不適当である、かように考えるのであります。更に
政府はこの三人を推薦して、全く
政府はこれを信頼しておる、こういうふうに言
つておりますけれども、
現実にこれらの
人々が新
給與に対して六千三百七円
ベースを
政府に勧告しておるのでありますが、而もその勧告は決られらた
調査の方法によ
つて、そうして
日本の
経済力、財政の面、或いは
一般民間労働者の
生活、又
國民全体の
消費生活、そういういろいろの面から六千三百七円という
ベースを決めて
政府に勧告しておるのでありますが、
政府はこれに対して今これに
從わずして、而も明確なこれに
理由を附加えることなく、五千三百円という
予算案をこの
國会に提出しておるのであります。このような実際を私は見ましても
政府は口では信頼しておると言うが、決して私はこれを
現実には信頼しておるものではない、こう断ぜざるを得ないのであります。で
政府は独自の見解に立
つて、本当に自分の
責任において、
日本の
公務員のためによき
人事官を
選考し任命するという、こういう誠実が
政府に私は認められない。この点は私は非常に遺憾に考える者であります。で私は今ここに反対するということについては、ここに挙げられておる
個人を、私はかれこれ言うのではありません。眞に我が國の
公務員が
國民の期待に副うような、そうして
國民の全体の
奉仕者として、
最大の効果を挙げること、そのことが今
國家の要請であるのであ
つて、その
人々の一切を握るところの
人事官として私は適任ではない、かように申上げるのであります。
以上の二、三の例を申上げまして、私は
政府の提案になりました今回の
人事官任命に対しては、遺憾ながら反対せざるを得ないのであります。