○
事務局員(
林朝門君) アメリカの現行の
社会保障のことにつきまして簡單に申上げます。刷物がお
手許にあります。第四号に
なつております。アメリカの御
説明を申上げまする前に、我々として念頭に置いてかからなければならないことは、向うは御
承知の通り非常に物資が豊富である、そうして財力が豊かである、そうして各自の勤労所得というものは非常に豊かであるために、各國が用いております
社会保障制度によるいわゆる隣保事業で救う、あらゆる危險な人生における生活環境から、これらのいわゆる
社会保障という名にふさわしい
保險で以て救われねばならないという立場が、割合にアメリカにおいては少いというようなことを、持てる國の
社会保障ということを、大まかに念頭に置いて進めなければならない。かように思
つております。
先ずアメリカにおきましては、御
承知の通り一九二九年、昭和四年
世界的に襲いました経済恐慌は、御地聞に漏れずアメリカにも襲
つて参りました。すでにアメリカには、その頃までも多少は柏本主義國の工業國であります
関係上、
只今私達が考えております、又
日本に
実施されております
社会保險というようなものも行われてお
つたのでありますが、この一九二九年から始ま
つた世界的恐慌によりまして非常な
失業群が出て來たのであります。
失業群で出て來ますれば、必然的にそれに失職というものを念頭に置かなければならん。これが非常に厖大な過剩人口が出て來ましたので、アメリカといたしましては、何らかここに手を打たなければならない。これが資本家側においてもこれを考えなければならない。又この
失業群の救済、それからそれらの多くの危險なもの、厖大な人口を擁するということになりますれば、必然的に今まで働いてお
つたところの産業群の人たちに影響を及ぼす。そう
なつて來れば必然的にアメリカの持
つておりますところの、備えておりますところの資本主義というものが、このままで行くならば、或いは崩壞するかも知れないというような、後のことを爲政者はお考えになりましたから、ここで何とか
社会的にすべての人たちが救われる
保險的なことを合理的に考えなければならんという議が非常に起
つて参
つたのであります。勿論
從來アメリカという國は御存じの通り、州の寄合世帶でありますから、各州各州で独自な立場で、これらの
保險的なことはや
つておりましたけれども、各州まちまちであ
つて、
國家として統一されたものはなか
つたのであります。それが先程から申上げましたような、國の情勢、
世界的情勢になりましたので、アメリカとして、いわゆるアメリカ連邦法として、確立した
保險制度を作らなければならない、こういうことが非常に問題になりまして、輿論が
政府の目指すところと合致しましたので、ここに初めてアメリカは
社会保障という立場に立
つて確立した
保險制度を、全般的に取纏めようというような議が決定したのであります。一番最初、一九三四年昭和九年にこれらの観念に基きまして、第一歩を踏んだのは、ときの大統領のルーズヴェルトがこの
社会保障制度に関する取纏めの
意見を提出したのであります。そうしてこれを立派なアメリカとしての
社会保障の
制度を作るために、
一つの
委員会を設けて、その
委員会によ
つて、
社会保障制度の立案を提唱したのであります。この
委員会は、経済安定
委員会と申します。この
委員会の構成は、
労働相を
委員長として、農相、藏相、檢事総長、それから緊急救済長官というような方や、
政府の要路の方が
委員に
なつております。この
委員会は更に
政府の部内から二十名の技術的な方で以て、技術
委員会を
組織いたします。それと一方において、一般の民間から労務の
関係者、又傭主というような方からの代表者二十三名を以て、勧告
委員会を作
つた。この技術
委員会と、勧告
委員会を
組織して、以てルーズヴェルトは
社会保障制度の勧告案を作成して、
議会に上程して、これを完全なものにしようという
一つの理想を立てたのであります。そうしてそれらの理想が今申上げました
委員会で立案され、勧告されまして、一九三五年(昭和十年)に初めて上程されまして、同年の八月十四日にアメリカは
社会保障法として
一つの
單行法を作りまして、
國家全般に臨んだのであります。当時どこの國にもまだできないうちに、アメリカは率先して立派な法を作
つたのでありまするが、後で申しまするごとく、それを
実施しまして着々と時代の趨勢と國情の移り変りによりまして、不備な点も出て來ましたので、
実施しましてから四ケ年後の一九三九年に更にこれを全面的に改正いたしまして、今日アメリカが独自の立場で
社会保障法という
一つの立派な
法律の下に
社会保障制度を布いて、
世界に臨んでおるのは、これから後の一九三九年の改正法によるのであります。私たちは
研究の
対象としては一九三九年のアメリカの
社会保障法を
対象としておるのであります。勿論傳え聞くところによりますと、その後二三、一九四六年にも多少の改正はありまするが、
骨子はただ條文が変更した程度でありまして、依然として一九三九年の
法律が我々の
対象とし、又アメリカの現行法として殆ど姿を変えずに生きておるわけであります。
順序として一九三五年に初めて制定されました
制度の大体の内訳を申上げます。三頁に書いてあるその通りでございまして、その
法律は、第一章は州に対する養老扶助補助金、第二章は連邦養老
給付金、第三章は州に対する
失業保障法施行費補助金、第四章は州に対する扶養者なき兒童扶助補助金、第五章は州に対する母子福祉
制度補助金、第六章は州に対する公共
保健事業補助金、第七章は
社会保障局、第八章は雇傭に関する税、第九章は八人以上を有する雇傭主に対する税、第十章は州に対する
盲人扶助金、第十一章は総括規定ということに
なつております。御
承知と思いますが、アメリカは飽くまでも民主的な立場におきまして、
政府自体が直轄的に手を附ける
制度というものは、た
つた一つしか持
つていない。あとは殆ど扶助金、補助金というような
制度におきまして、
政府自体が考える理想に基いて、各州が独自の立場でその線に副うて計画を立て
実施させる。それに対して
政府は補助金なり扶助金をや
つて、これを発展、拡張、促進させるというような
方法を採
つておるのであります。アメリカ
政府自体というものはこの養老の
給付金だけをや
つておるのであります。今申上げました十一章のうち第七章から第九章までの三章及び第十一章の四章を除いた残りの七章が、アメリカの
社会保障の実際計画でありますが、あとは
一つのお役所的なもの、或いは
説明的なもの、或いはいわゆる本当の
法律そのものの形でありまして、今申上げましたのが
社会保障の実際に行われる計画というふうに解釈してよろしいと思います。そこで、このアメリカの
保障法を類別すると、三
種類に我々は分けることができる。
社会保障の部類のものと
社会救済の部類のもの、或いは
保健福祉の公共事業というようなものに分けることができるのでありまして、この書いてありますものは、この
三つの部類に分けたものを順序を追うて概略を書いた次第であります。
ここで章を改めまして、第三章の
社会保障局と申しますのは、一九三九年の
法律が改正になりましてから、この一九三五年のそのままの形で現在に及んでおるのでありまして、これはアメリカが
社会保障制度を徹底的に進めます上の
一つの全部を取纏めたお役所でありますので、ここですべてのアメリカの
保障制度というものを切り盛りするわけでございます。そこでその
内容を
ちよつと申上げますと、(1)としまして、この
社会保障局はどういう義務を法的に持
つておるか。
社会保障法の運営並びに
研究をいたしまして、必要に際してはこの法の改正勧告を行う。そして
社会保障制度の何と申しますか、経済情勢の変化に應じて、とにかく強力な実行を以て各州に臨んでおるのであります。先程申しました一九三九年の改正も、この
社会保障局の勧告によ
つて改正したものであります。それから現在はこの
社会保障局というものの活動を箇條書にしますれば、
社会保障というもののいろいろな政策の立案、
組織や一般的な手續の決定、諸規定のいろんな公に発表すること、各州に対する補助金、それから先程申しました養老
保險金についての要求の確定であります。ここにお読みになりますのは養老遺族
保險金とありまして、私は今、養老という
言葉だけ申上げましたが、これが一九三九年の改正の中に、養老という
言葉の次に更に遺族という
言葉を付け加えて、養老遺族
保險金ということに
なつておるのであります。それをあとの方を先へ持
つて來て申上げた次第であります。さてその
保障局の構成でありますが、構成は三名の主なる
委員が大統領によ
つて任命されるのであります。た
つた三人の人が大統領に任命されて而もこれを
保障局と申しますのは、我々
日本のお役所の観念だと多少ぴんと來ない点があります。ですから飜訳をする方はた
つた三人の
委員でありますので、
保障局とはせずに、ただ
委員会と訳しておる方もありますが、一般には権威ある方の飜訳したのを見ると皆いずれも局と名を付けておりますので、た
つた三人の
委員ではありますが、
社会保障局というふうに用いさせて頂きたいと思います。それから第二がこの三人の
委員のうち二名以上が同一の政党から出ることはできないのであります。共和党から二名或いは他の党から二名出るということはできないのであります。
一つの党から二人以上は出ることができないで三人を以
つて構成することに
なつております。三人の
委員中一名を大統領は
委員長に任命して、この
委員長というのが
社会保障局の局長になるということに
なつております。この局の三人の
委員の方の任期は六ケ年に
なつております。これが
社会保障局の事務機構でありますが、それはその裏の頁に図解しておきましたから御覧を願いたいと思います。大体この中に訳しております
言葉が局と
なつたり部と
なつたりしておりますが、これは何んと申しますか、原語をそのまま書くとよろしいのでございますが、人によりましては全部局と訳しておる方もあるのでありますが、或いは公報課というふうに課の字を付けておる方もありますが、私の方ではすべて局と地方の事務所というような
言葉に訳しておきました。これは他の
参考書類を御覧あそばしましたときでも或いは課に
なつておる、或いは部に
なつておる或いは局に
なつておるというので非常に違いがあるかも知れませんが、一應こちらの
資料といたしましては、局の名称を付けておきました。勿論地方に機関を設けております。地方は
社会保障局の本局との連絡や調整を図る、或いは先程申しましたように
社会保障局は養老遺族の
保險をただ
一つ取扱
つておりますので、それを更に徹底するために地方と中央の連絡を專門的に司どる地方機関を設けております。それからこの
社会保障局では
社会保障上の定期刊行物を出しておるのであります。こういうような
社会保障局は機構を持
つております。勿論
社会保障局はここに
委員の中からいろいろな方もおられまするが、他の
労働省、或いは大藏省というようなものと緊密な連絡を取
つて運行して行くことは今更申すまでもないのであります。
さて一九三九年の改正
社会保障法、これによりまして、大体にアメリカの現行
社会保障制度の個々の概略は御理解願えるものと思いまして、一應箇條的に御
説明申上げます。その前にこのアメリカの改正
社会保障法を考えまするときに、そこに書いておきました通り、その全文が千二百一條という相当厖大なものでありまして、この
法律の條項は一々克明によく分りやすく厖大なものに出來上
つております。併しこの改正法の根本の狙いと申しますのは、個人及び家族を貧乏から免れさして、それらの家族を一緒に生活させ、そうして子供には自分の生れた家庭でできるだけ生長させる
機会を與えようというのが、このアメリカの
保障法の全般を通しての狙いなのでございます。それでこの
制度の運用につきましては、他の諸國で見られるように、
社会保障は全
國民を
対象としたものでなければならないという点から考えますと、アメリカは全体を
対象としてはおるとはいうものの、或る
意味におきましては全般的にそうでもない点があります。これはそうでもない点と申しますと、初に申上げました通りアメリカは非常に持てる國である、そうして各労務者にしましても、勤労所得者が人数が非常に多いために、何から何まで
政府のお蔭を蒙らなければならんというような階級が全般にはないのであります。私共
日本人の立場におきましてはすべてを何から何まで、現在の経済状態、
收入状態から見ますとやつと現在の生活だけはできるが、將來のことや家族のことや或いは自分の健康の不慮病氣ということまで、いろいろ当局の配慮を願わなければならんというようなことを考えないでもよいほど、アメリカでは十分な
收入を持
つておる階級が相当あります。そういう点から行きますと、全般の人を
対象としておるとはいうものの、やはりそこには別にこれを全部含まないでもいいというような動きも多少あるやに考えます。そういたしますと
社会保障という
言葉の本來の
概念から申しますと、或いは我我としてはアメリカの
社会保障というのは、
保障制度としては当らないじやないかという向もありますが、併し実際にアメリカが行
なつております
現状の
制度としましては非常に立派なものでありますし、又大いに
参考にいなければならない。又アメリカ自体としては
社会保障制度という
一つの立派な
法律まで設けております
関係上、やはり我々はアメリカの
社会保障法というものを
一つのモデルとして
研究する必要がある、かように考えております。さて先程申しました通りアメリカの
社会保障制度というものは、
政府はた
つた一つの実行力だけを持
つて、殆ど他を各州に與えておりますということまでも、我々はアメリカの
社会保障制度を見ます上に
研究する必要があると思います。どこまでもアメリカは各州自体の独自の立場というものを尊重して、そうしてそれをより以上発展させるために應援をするという態度を取
つておるのがアメリカの
社会保障制度であります。話は横に行きましたけれども、この一九三九年のアメリカの改正法も一九三五年のものを全部打壊してしま
つたものではありません。一九三五年に作られた
法律の三
原則とでも申しますか、
三つの
骨子というものがございます。それは單に個人ばかりでなく、
社会を保護しなければならん。第二番目は
費用の分担は傭主も被傭者もお互いに分担する。三番目は
給付は
保險受益者以外に、賃金喪失によ
つて非常に苦しんでいる人達(その家族、妻なり子供なりを指す)にも及ぶべきことという、この
三つは依然として変
つていないのであります。ただ変
つている主なものと申しますと、第二章のところの今まで先程申上げましたごとく、養老
保險給付というところが養老遺族
保險給付という工合に変
つているのであります。遺族というものが
一つ殖えたのであります。その目指す趣旨というものは、さつき
ちよつと
法律の構成のところで申上げました個人及び家族を窮乏から逃れしめる、家族と一緒に生活させる、子供たちに自分の生れた家庭で生長させる
機会をできるだけ與えようという法の精神から生れたものでございます。アメリカがこの改正をいたしましたその中でも、初め一九三五年に養老
給付の
保險だけをや
つていまして、今申上げましたごとくに遺族が付いたということはアメリカとしては非常な、何と申しますか劃期的な
一つの大きい
保險制度として見ているわけでありますが、これが一九三九年の最も大きい
一つの改革だと思います。更に一九三九年の改正された
法律の主な点を概略的に申上げますと、第一は
社会保障掛金率(老齢遺族
保險の)を漸次高めて行くことを止めて、傭主及び被傭者共に一%ずつ計二%としたこと。第二は第二次
大戰從軍死亡者に対する
給付を充実したこと。第三は新たに第十三章を設けまして、これに海上労務者のための
失業保險制度を設けたこと。これが主なものであります。第二次
大戰の從軍死亡者に
給付を充実したこと。これはここに箇條書として書いてありますけれども、私共としてはこの
資料が十分
手許にございませんので、不日これをよく
研究してみたいと思
つております。
この改正法の主な
内容を大体このパンフレットに從いまして申上げますが、第一部は先程申上げました通り、このアメリカの
社会保障法というものは
社会保險関係、救済
関係、それから福祉
関係と
三つに分れていると申しましたが、第一の
社会保障関係から入
つて行きます。十一頁を御参照願いたいと思います。第一部は
社会保險関係であります。
失業保險制度は各州の
失業保險の運営につきまして
國庫補助をしているのであります。それで飽くまでもアメリカは連邦
政府自体と州の
政府自体というものとを結び合せまして、できるだけ州のものを各州各州を独立させて應援するという立場をと
つておりますので、この
社会保險やこれから申上げますいろいろな
保險を御
研究頂きます場合、又お調べ願います場合には、殆どこの州というものの独立した過去の法令を又知らなければならんのでございますが、私たちの
手許にはアメリカの合衆國の各州の
制度というものの
資料が、殆ど
一つもないと申上げてもいいのでありまして、できるだけ先ず各州のものを
研究すれば、更に我我の得るところがあると思いますが、併し大体どこの州も、例えば
給付の額が違
つたり、
掛金の額が違
つたり、
年齢が違
つたり、或いは程度の
相違があるという程度で、その
骨子、或いは狙いどころ、或いは又共通点は沢山ありますので、各州はそうどこの州とも、例えばミシガン州とオレゴン州とが大変な違いがあるというわけはないのでございます。ですから纏めまして共通点を次々と
資料によりまして拾
つたのでありますが、附加えまして申上げたいと思います。大体これを読みながら御
説明申上げたいと思います。
連邦
政府の
制度、各州の
失業保險の運営につきましては
國庫補助金を交付する。この交付は
社会保障局を通じまして大藏省から交付されるのでありますが、その使い途に当りましては
失業給付以外の使用は絶対に認められていないのであります。これは非常に嚴密に
なつております。そうして連邦
政府は
失業保險の適用を受ける八人以方の從業員を持つ工場、事業場の雇主に対しまして連邦
失業会計に納入すべきことを命じているのであります。この税金は連邦
政府としては大藏省が取
つておるのであります。更に州の
制度にどう
なつておりますか。各州は州自体の
失業保險法を持
つております。特別州基金から
給付を行
なつておるのであります。この
失業基金は
社会保障法が要求していますように、大藏省に州の預金として先ず預けて、そうして州はいつでもその
失業信託基金勘定を引出すことができるのであります。各州の
制度には多少、今申上げました通り、
相違はありますけれども、大体次の條項が共通しております。公共の
職業紹介所に労務届出をし、そうしてその
給付請求権を登録しておかなければならない。第二は、州法の適用ある
仕事に予め就いたことがなければならない。三番目は
一定額の賃貸クレヂットを持
つていなければならない。この賃金クレヂットというものは、労務者がその
仕事をなくするか、或いは長い休職をさせられる前に一年又は二年間その州の法の適用のある
仕事に從
つてお
つて一定の給料を貰
つた者でなければならない、ということをこの賃金群クレヂットは
意味しておるわけでございます。第四番目は、
仕事をする能力がなければならない。病氣のために
仕事から離れているか、又は他の理由で
仕事ができない場合には
失業給付は受けられないのでございます。第五番目は、
労働に間に合う者でなければならない。お前はこの
仕事をせいと言うたときに、いつでもはいと言
つて喜んで
仕事をするような立場を持
つていなければならない。俺は嫌だからしないというようなことであ
つてはならない。この五つのことは大体どこの州でも共通しておるようであります。それからその
失業保險の
給付高、それはそのとき受けてお
つた被
保險者の週給の約半額ということに
なつております。但し受ける
給付の最高額は週十五ドルから二十八ドルでありますけれども、大体十三州では週十五ドル又は十六ドルであります。
最低額は週三ドルから十ドルでありますけれども、大体の州では週五ドル以上ということに
なつておる。こういうことに
なつておりますので、これは多少各州におきまして違うのでございます。それから先程澁江さんからも言われましたようにイギリス
制度にもありますが、それは大体
世界各國でも労務者は
給付を受けるときには、
一定の
期間があるということは、これは後で御
説明申上げますが、各國どこの
保險制度を見ましても
一定の
期間があることはどこでも同じでありますが、アメリカでも勿論
一定の
給付の
期間というものを付けておりますが、その
一定の
期間内に特にこちらでは審査の請求をする権利を持
つておる。若し労務者からその請求権についての決定が、これはどうも正しくないと感じたときには、これではどうも間違いがあるのじやないか、もう一度審査して貰いたい、私の受ける
給付額はこれはとうも適当ではないように思うというようなことを、事務所に申出て審査を受けることができるのであります。これは後で
ちよつと申上げますが、これは特に民主的な立場でアメリカでは飽くまでも個人の権利、個人の受けるべきものに対して保護を受けておるので、上からただあてがい扶持的にお行の
給付はこれだけだからこれだけ取
つて置けというのではなくて、渡して置いて更に当人が受取
つた給付額というものは、これは妥当なりや否や、自分が働いて今まで來た給料等から算出すると、多少狂いがある。何かこれは間違いがあるのではないかということを、審査を請求しますれば、
政府は特殊の機関を通じまして、どこどこまでもそれを
研究し、そうしてその被
保險者に納得の行くように
調査をするという、非常に丁寧な機関を持
つておることは、この國の特徴とも言うべきだと思います。それからその次には……。