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1949-02-07 第4回国会 参議院 厚生委員会 閉会後第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十四年二月七日(月曜日)   ―――――――――――――   本日の会議に付した事件 ○社会保障制度に関する調査の件   ―――――――――――――    午前十時四十二分開会
  2. 塚本重藏

    委員長塚本重藏君) それではこれより委員会開会いたします。先ず最初に第四回國会で皆樣の御了解を得ておきました、社会保障制度調査に関しまする事務局員として、新に数名の人を採用することに御了解を得ておきました、その経過を一應御説明いたしますが、そのとき御了解を得ておきました三人の中で一人は事情があつて採用するに至りませんでしたが、二人の方は昨年の十二月二十四日に採用の発令がありまして、爾來事務局員としていろいろな調査事務に携つて頂いております。御両者を紹介いたします。澁江新一君。その次に林朝門君。  委員会をその後開く機会がありませんでしたが、大体お手許に差上げておきました資料外國立法例及び事例調査といたしまして、予定されておりました第一類、一から第八までに至りまする調査をやつて参りました。そのうち第一から第五までプリントができ上りまして、皆さんのお手許に配布した次第であります。六、七、八は不日でき上りますが、お手許に配布することができようかと思います。それから國内の部につきましては、関係諸法令を取纏めてお手許に届けておきました。第一類として各國立法例及び事例の部では、第一として英國社会保障制度に関する資料のうち、その一としてビヴァリッヂ委員会報告書内容要旨、その二といたしまして現行英國社会保障制度概要、第三、ニュージーランド社会保障法概要、第四、アメリカ社会保障法概要、第五、ソ連邦社会保障、第六がデンマークの社会保障、それから第七のスウェーデンの社会保障、第八のフランスの社会保障、第九のベルギーの社会保障は一両日の間にできる予定であります。  それから國内の資料といたしまして、第一に改正健康保險法規、第二、國民健康保險関係法規集、第三、船員保險法規、第四、改正厚生年金保險法規、第五、失業保險法関係法令及び失業保險事業概況、第六、労働者災害補償保險法関係法令集附録労働者災害補償保險のあらまし、第七に國家公務員共済組合法、第八、未復員者給與法、第九、米國社会保障趣旨普及パンフレツト、第十、英國社会保障、第十一、米國医師会調査團報告書厚生行政法規総覧、以上お手許に配付しております。  それからこれから先の調査の進め方について御相談申上げたいのでありますが、大体專門員室において計画しておりまするものを一應專門員から御報告願いたいと思います。
  3. 草間弘司

    專門員草間弘司君) 本日はこの後でできまするならば、外國事例につきましてこちらで取纏めましたものを御説明申上げたいと思います。それから明日は諸外國におきまする社会保障制度研究家でありまする厚生省内野仙一郎君にお願いいたしまして、外國事例について御説明を頂きたいと思います。尚その御説明が一日で終りません場合には、その翌日まで二日間に亘つて説明を願いたいと思つております。それからその後の問題でありまするが、それは國内の社会保險現況というものにつきまして、厚生省担当課長説明を求めることにいたしたらどうかと思います。その外社会福祉事業現況につきましても、厚生省関係局長の御説明を求めます。尚医療衞生現況につきましても、こういう社会保障制度関係ありまする点について、その方面関係局長に御説明願いたいと思います。それから更に米國におきまする社会保障制度調査團報告書がございます。その説明保險局長にお願いいたしたらばどうかと思います。その外労働省等から関係事項説明を求める。必要に應じましては、又專門家その他関係者を招じまして意見の聽取をするというような方向で進めて行つたらばどうかと思います。尚只今こちらで調査中のものは、國民生活保障に関しまする最低基準を考査する上に必要な資料というものについて調査を進めております。それからやはり社会保障制度に対しまする既に発表されておりまする諸家の意見、そういうようなものも一應纏め資料として出したいと思つております。  大体以上のような方向で進めて頂きたいと思います。
  4. 塚本重藏

    委員長塚本重藏君) 今報告のありましたような、大体順序で進めて行きたいと思いますが、皆さんの御意見は……。
  5. 中平常太郎

    中平常太郎君 いいでしよう。
  6. 谷口弥三郎

    谷口弥三郎君 ちよつと只今のこの三日間におけるいろいろの説明をお聞きしましたが、その次はいつおやりになる予定でしようか。やはり今度の國会開会後に、議会では三月の五日頃始めるとかいう予定ですが、その後におやりになるわけなんでしようか。
  7. 塚本重藏

    委員長塚本重藏君) これは少し委員の方がお揃いの上で皆さんの御都合をお聞きいたしまして、大体新聞に傳うるところでは十三、四日を以て一應休会に入るというような予定のようでありますが、その休会中に引續いて委員会を開くか、或いは再開を待つてやるかということは、もう少しお揃いなつた上で皆さんの御都合を聞いて決めたいとこう思つております。皆さん揃いになれば又いろいろ御意見も出て來ようかと思いますが、本日のところ今專門員から申上げました通り進めて御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  8. 塚本重藏

    委員長塚本重藏君) 御異議ないものと認めます。それでは取敢ずお手許に差上げました外國資料について、プリント説明事務局の者からさして頂きます。
  9. 草間弘司

    專門員草間弘司君) この外國資料につきましては主として、澁江、林両君が担当されまして、各方面資料から概要作つて頂いておりますから、両君からそれぞれ分担されたものにつきまして御説明をさして頂きたいと思います。
  10. 塚本重藏

    委員長塚本重藏君) それでは第一部の英國社会保障制度に関する資料のうと、ビヴァリッヂ委員会報告書内容を澁江君からお話願います。
  11. 澁江新一

    事務局員澁江新一君) 御説明申上げます。我々も実は着任早々のことでありまして、十分に檢討することはできなかつたのでありますが、大体外國資料を一覧いたしますと、今までの社会保險制度というものが、第二次世界大戰機会にいたしまして、全部各國が社会保障制度に切替えられておるようであります。日本現状としましても、諸外國社会保障制度に関する資料は一應出盡しておるような観があります。又それに対する批判等も一應第一期としてはなされたような観がありましたので、早速これについて林君と調査を進めました。調査に対する態度としましては、御承知のように大体資本主義社会中心としまする社会保障制度と、社会主義制度中心としますところの社会保障制度と、この二つの國家群に分れて、はつきり認めることができます。それから尚形式としましては、社会保障という法律單行法一つをもつてつておる國家、それから社会保障法という特別の單行法がありませんけれども各一番総合性のあるところの個々の單行法で、一つ社会保障制度というものを形成しておる國家群もあつたような次第であります。同じ社会保障法という單行法でやつておりましたところでも、一本の法律で全部支配しておるところと、それから一本の法律で各種の分割された、地方に委せてあるというようなところもあります。大体これらの特色を取りまして、適当なる、代表的なものを選び挙げましたものが、我々の研究対象になりました。  一番先に纏めましたのは英國ビヴァリッヂ委員会報告書にあります、お手許に差上げてあります、社会保障制度調査資料第一号と称するものでございます。この社会保障を我々が纏め上げますについては、大体社会保障制度の及んでおる國民範囲対象と、給付種類給付に対する條件、それから給付に対する規模これらのものを檢討することによつて、その國の社会保障制度の大きいか小さいか、強いか弱いかというようなものを見ることができますので、大体これを目標に編纂いたしました。いろいろ細かい問題は今後檢討いたすことにいたしまして、大体その國が如何なる組織、如何なる運用方法を以てやつておるかという、極く概念的な骨子をここにまとめ上げました。  世界で一番新らしい社会保障制度は、御承知のように英國で昨年の七月の七日から実施されたのであります。これは世界でも最も新しい、最も近代國家としての構想に富んだ保障制度でありますが、この保障制度基礎なつておりますのは、いわゆるビヴァリッヂ報告書として知られておるものであります。これは英國が非常に独軍に襲われて危急存亡にあるときに、すでに第一次大戰後経驗に鑑みまして、どうしても第二次大戰後には、こういう制度をやらなくちやならんというような輿論に基きまして、英國無任所大臣が主になりまして、社会保險及類系施設省間委員会というようなものを作りまして、この委員長ウイリアム・ビヴァリッヂ卿を推しまして、ここでいろいろ各國の社会保障制度、或いは英國にあります社会保障制度的な過去の單行法をまとめまして、これに対する一つの大きな構想を以ちまして、委員長名前をとりまして、ビヴァリッヂ報告書し名付けて、これを國会報告いたしました。これが英國の新らしい社会保障制度思想となり、根本となつておるものであります。このビヴァリッヂ報告書といいますものは、原文は非常に廣大な、あらゆる面に亘つて檢討されたものでありますけれども、大体においてその骨子とするところは、基本的に必要な社会保障の問題、それから特別な場合には、社会保障制度の及ばない國家救済、第三にはそれを補充する意味において、任意保險制度、この三つ方法でやつて保こう。それに対しては、第二次大戰のような革命的な瞬間においては、從來のような彌縫策をとつてはいけない。この際一切新たにやり返さなくちやいけないということ。國民を全部これに網羅しなければならないということ。收入に対しては、國民自身もみずから協力すると同時に、國庫も亦この收入保障には努力してやらなければならない。國民がやる場合には任意保險、或いは貯金というような制度も付けておいてやらなくちやならないという方法、この三つの指導原理を立てまして、それから大体六項に亘りますところの基本項目というものを立てまして、それはここに店一則、第二則、第三則と並べてありますように、同額の最低生活費を與える。これは、國民が営むところの最低生活というものはあらゆる人間に対して同じでなければならないという思想から出ておるのであります。その醵出も貧富を問わずに同じように出すということ。第三則としては、行政上のいろいろな矛盾、撞着というようなものをなくし、経費を節約しなくちやならない。第四則としましては、最低生活保障するに足るだけの給付をしなければならない。第五則としましては、適用範囲廣汎に、総括的なものにして、身分だとか收入というようなものに制限されてはならない。それについては被保險者國民の層を、最も適当な分類方法をとらなければならないということを主張いたしまして、國民の層を大体六種類に分割いたしました。その給付内容といたしましては、ここに表を掲げた一覧に供してあります。医療給付葬儀給付隠退年金障害手当失業手当傳職手当産業災害年金その他の支給産業災害年金というのは、私共が勝手に付けた名前で、原文の方は、産業年金若しくは工業年金という名前なつております。これはちよつと日本人の場合ぴんと來ませんので、その実体を調べて見ますと、大体産業傷害を被むつて不具癈疾になつた者に対する年金制度でありますので、ここに産業災害年金という便宜的な言葉を使いまして、普通の隠退年金などと分り易いように区別したつものであります。その外盲人手当とか、主婦活動障害中の家事手傳人の派遣、こういうようなものもありますけれども、これはまだそう大して強く主張されておるところではありませんで、ただ参考のために後ろに附記いたしました。ただこの保險計画を通じて考えられることは、医療給付の問題であります。この点はちよつと日本人に理解ができない主張がありますので、おしまいの方に持つて來まして〔註〕としまして、御参考までに書入れて置きました。それは、英國では元來医療というものは國家本質的義務としてやるべきものであつて、これを國民保險或い社会保險のようなものの対象にするようなものではないというような彼らの社会通念がありますので、これがちよつと我々の考えておりまする医療と少し違つておる点なのでございまして、ここに書いてありますのを読上げますと、社会保險國民扶助任意保險を含む全社会保障社会保障省所管であり、金銭給付を主とするものであります。從たる現物給付医療公衆保健省所管ということになつております。英國では、國民医療とか公衆衞生病院施設等は、元來國費及び寄附金等で運営せらるべきが彼らの通念でありまして、ビヴァリッヂは、保健及び再起更生施設を目的とする費用に対し、対償給付としての掛金支拂を特に主張するということは、日本的には普通なのでありますけれども、英國概念としては、非常に費い考えであります。大体ビヴァリッヂはこういうような基本的な原則を掲げまして、全部総括されたところの社会保障法というものを作れということを、英國議会に提案したのでありますけれども、この案につきましては、保險業者とか、或いはいろいろな業界の者の反対がありまして、一時非常に揉めたのでありますけれども、結局政府ではこれを採用して、その原案骨子というものを継承して、今日世界に誇るところの英國社会保障制度というものが完成されたのであります。  第二章以下には、このビヴァリッヂ計画が、大体英國において実施されていたところの過去のいろいろの分類された社会保障的制度と、どういうような相違があるか、つまり旧制度に対する新らしい案の改正点をここに二十三程掲げました。それは、單一掛金によつて給付を受けるようにしろと、これは日本現状から見ますと、失業保險掛金とか、健康保險掛金とか、掛金が非常にばらばらになつておりますが、これは一つにしろと、これは英國の過去もそうであつたように思います。それから、これをやるために社会保障法というものを作れということを主張いたしました。これは後で英國のところでお話しすることにいたします。平等掛金に対し不平等給付公認組合制度を廃止することは、これは組合というものはいろいろ自主的に任されておりますので、組合々々によつて給付内容が非常に異なつておるのでありまして、これを止めさせようというのであります。第四は労働者賠償制度を止めて産業傷害及び職業病総合的社会保險制度に包括するということであります。第五は医療給付を分離せしめて廣汎医療サービスを設定して保健省の管掌にしたこと。これは全國民が只で医療を受けられるようにする、そうしてその他の社会保障制度の本質とするものは、全部金銭給付とするというのであります。第六は働く人人の特殊保險の等級として「主婦」なるものを認め必要に應じ諸給付をなすこと。大体今までの社会保險というものは労働者とか勤人を相手にしたものでありますけれども、家庭の主婦というものをやはり被保險者の強い対象層として取扱えていう主張であります。第七は有給就職延期障害及び有償の別なき労働年齢者に対して隱退年齢金を拡大支給すること。第八はすべて從前の家計方途失つた者に対して轉職手当支給すること。第九は失業及び障害並びに隱退についての手当及び年金の率を均等にした。これは産業傷害職業病に困るものを除くというような主張であります。十は失業及び産業傷害乃至職業病による傷害含み受給條件をその待期に関し均等ならしめたこと。待期というのは大体保險給付が起りまして保險給付が始まるときに、この間に一定の一週間乃至十日の期間を待ちます。この間は給付を受けないことになつております。第十一は失業及び産業傷害乃至職業病を除き障害手当掛金條件を均等ならしめたこと。第十二、失業後の要請労務又は訓線センターにおいて出勤率に從い期間関係なく失業手当最高率としたこと。これは要請労務ということは、実をいいますと失業した者が職業紹介所に登録するという制度なつております。その場合は職業紹介所では本人の希望でないところの仕事を與えて参ります。これを便宜上要請労務という言葉に各方面では訳されておるようであります。訓練センターというのはその登録期間に次の職業を得るまでに一定訓練を受けます。その当時の出勤率というものが非常に重大視されて、失業手当金の額を上げたり下げたりするという主張であります。十三、特別行爲條件の賦課に從い障害手当期間関係なき最高率としたこと。特別行爲というのは、雇傭関係の場合において特に雇われたときの條件以外の特殊な仕事をなす場合であります。十四は産業災害年金以外の諸年金は隱退條件に從い、又隱退最低年齢(男六十五歳、女六十歳)以上に達した後の継續掛金高に從い漸高支給のこと。これは隱退年齢に達しましてもまだ掛金を續けておるというような場合には、その金額を將來増すことができるというような主張であります。十五は農業、銀行業金融業保險業についての特別失業保險一般制度に統合したこと。これは從來英國では農業関係銀行関係金融関係保險業関係社会保險から除外されておつたものであります。それで任意にやつておりました制度であります。これをやはり一本に入れようという主張であります。十六は保險より除外されておる特殊職業及び非筋肉労働者をも包括したこと、これは範囲を拡大した結果として、こういうものが入るということは当然のことであります。十七は寡婦に等級付けられた必要に適合する給與、(一時的寡婦手当、轉業手当保護者手当等)を支給すること。英國では寡婦の問題は非常に重視しまして、これを失業労働者並にやはり一つ社会保障制度の大きな対象として取上げております。十八は、強制保險普遍的葬儀給付を包含せしめたこと。十九、法定制度的性質を有する治療及びサービス以外の公共扶助を、社会保障省に移管したこと、二十、盲人生計維持並びに福祉増進の新制度社会保障省に移管したこと。これは盲人という一つの層をやはり被保險者一つ対象としまして大きく取上げたものであります。二十一、すべての種類金銭給付実施に関する各省の仕事社会保障省に移管したこと。二十二、「失業保險法定委員会」に代り拡大権能を賦與したところの「社会保險法定委員会」を設けたこと。これは從來英國失業保險法安委員会というものは、大分活躍していた模樣でありますけれども解消しまして、更に社会保險法定委員会というものを作つて大きな権限を與えております。二十三、産業保障仕事公的サービスに変革したこと。これらのことは大体今まで英國に行われておりました制度変つた主張であります。  第三章においては、ビヴァリッヂが、過去の蓄積された経驗をも、若しよいところがあつたならば、それを残して置かなければならないという主張がありますので、そのうちにここに載つております五点が過去の制度として優秀なものだ、今後もこれを継續すべきであるというようなことを主張して採入れた点であります。第一は社会保障費用を被保險者、雇主及び國に醵出分担せしめること。これは長く行われておりましたけれども、今後も續けろという主張であります。第二は強制保險一定基調掛金に対して一定基調率による給付支給すること。この意味掛金というものは金持であろうがなかろうが、或いは労働種類が違おうが、そういうものによつて区別してはならない。それからその最低保障額であるところの給付額は、これもいろいろの資格とか收入というものによつて区別さるべきものではない。飽くまでも掛金は全部一定し、給付額最低額という一つの基準について一定しろという主張でありまして。これはビヴァリッヂ案を引継ぎまして非常に強い主張なつております。第三の掛金醵出最適法として保險証及び保險スタンプ制を採用すること。これは英國では可なり古くから行われておりまして、保險料の拂込の場合には丁度日本の印紙のようなものを自分で買しまして、これを貼付けて、そうして関係役所スタンプを押して貰う、これによつて保險料拂つたというような形式を採用しております。この方法は非常に英國においても、日本のような保險料掛金ごとにごたごた問題が起らんように非常に簡易で手軽でよい結果を挙げておりますので、これだけは存置しようという主張であります。第四の從來の全國的施行経驗基礎の上に新制度を組立てたこと。これは今まで英國に行われておりましたところのいろいろの制度の細かい部分を、非常にこの計画書は採つておりましたので、その採つておる理由としてこういうことをビヴァリッヂ主張しております。第五の「友愛組合」と國民健康保險の結合を新基礎の上に存置したこと。友愛組合というのは任意保險組合のようになりまして、英國にも所々方々にあります日本でいいますと國民健康保險組合のようなものであります。これは潰さないで今後の制度へ入れてそうして同じような運営方法をとつて行く、これらのビヴァリッヂ主張に対しまして政府ビヴァリッヂの今度主張されました原則というものを承継いたしまして、新らしく英國社会保障制度というものを作りましたのですけれども、その点において多少英國政府ビヴァリッヂの案を訂正した点があるのであります。  その訂正したうちの一番大きいのはここに第四章としてビヴァリッヂ案との相違点というようなことで八点程挙げて置いたのであります。その第一としましては、失業及疾病給付は大体両案同一でありますけれども、公認職業訓練課程を修めた失業労働者は、失業給付金より高額の授産手当を受けるべく修正されたというような末梢的の問題でありますが、第二は退職手当というものは政府案では実施当初において夫婦共に多いのでありますけれども、それから年限を増しますとビヴァリッヂの計算で行きまはと段々額が上つて行くというようなことになつております。第三、家族手当ビヴァリッヂの案より少額でありますけれども、政府案は全兒童に給食制を実施することになつております。これはビヴァリッヂ案になかつたものであります。第四、ビヴァリッヂ案にありました結婚手当政府案ではありません。第五、五十歳以上で子供のない寡婦に対する支給規定ビヴァリッヂ案にはなかつたのでありますが政府修正案にはこれをつけることにいたしました。第六、孤兒及び老齢寡婦には政府案の方が厚く取扱われております。そうしてビヴァリッヂ案に比して年少者よりも年長者に厚くなつております。第七といたしましては、失業及び疾病給付金支給に期限がなかつたのでありますが、政府案には失業に三十週間、疾病には三年というような制限をされております。第八、保險料政府案では成年男子被傭者ビヴァリッヂ案に対してやや安くなつております。これが大体相違点であります。  次に申上げたいことは、このビヴァリッヂ案原則に基きまして、英國社会保障制度というものが確立されたことであります。これは御承知のように、ビヴァリッヂの総合的な一本の組織で行けという主張に対して英國は総合的な一本の法律を作りませんので、いろいろ細かい法律、言い換えれば家族手当等とか或いは國民保險法とかいろいろ各單行法を作りまして、これが一つ社会保障制度という概念向つた一連性のある法律集合体であるのであります。御承知のように、英國エリザベス時代から救貧問題ということについては関心を持ちまして、これを中心に発展して來ましたところのいろいろの單行法を沢山持つているところの國柄であります。これを整理しただけでも大体社会保障制度のようなものが確立されて行くのじやないかと思われます。  第二章のところへ持つて來まして、英國社会保障の特徴としまして、英國が特に外の國と比べてこの社会保障制度を作るについて変つた点がありますのでこれを七点程挙げて置きました。第一はビヴァリッヂ報告書というものは、英國独軍に攻め立てられまして全く孤立化しまして、戰局が最も暗黒になつたときに、英國民の輿論というものが、社会保障制度というものに対して関心を持ちまして、そうして戰が漸く上昇期になつたとき、初めて発表されたという特徴があります。第二として、過去数十年にわたりまして、いろいろ救貧制度その他の社会保險的な組織というものが、英國に非常に発達して存在しておつたのであります。第三は、全國民対象とした総合的な組織を作り上げる、これは除外されている例というのは殆んどありません。第四は、金銭給付一本で行きまして医療給付の方は從属制としまして、健康保險社会保障制度に関する限りは、國営にするという案を作りました。大体開業医制度というのが向うにあるのでありますけれども、それが社会保障制度に参画する限り、この部分については英國はこの制度を取つておるのであります。第五、戰爭遂行に個人的な犠牲を拂つた労働階級の発言権を大ならしめた。第六、社会保險発達史上に於ける英國的な漸進主義的革命であつた。第四、戰後の國民生活の保障に関して、多数國民が漠然と抱いたいた熱烈な要望を、明確に具体化したものに過ぎない。こういうような特徴があります。  只今話しましたように、英國社会保障制度というものは、ただそれが一つ制度として流されるだけでありまして、社会保障法という單行法はないのであります。その社会保障制度の中に入つておりますところの法律は、第一部に家族手当法、これは一九四五年の六月の成立しまして、その趣旨としますところは、單に多くの子供を持つておるところの家族の兒童養育の責任完遂のために、國家がただ一般的に援助を與えるということが、この家族手当法の目的であります。その対象としましたものは、十五歳以下の二人以上の兒童を有する全家族であります。給付としましては現金給付であります。そうしてその子供に別に教育法という法律がありまして、学校では全部給食を無償でするということになつております。條件としましては、第一子を除く。又外の制度によつてそれが保護されている場合については重複をやらない。そうしてこれは租税によつて國家が全額を負担するのであります。英國社会保障制度に関する各法規を見てみますと、第一子を除くということが出ておりますので、ここに註としましてその理由を書いて置きました。それは通常の場合において、一家の收入というものは、夫婦は一人の兒童を養育し得るものと認められておりますので、これを補助すべきところの原因であるところの貧困というものは、大体二人以上の兒童家庭に限られておるということと、國家財政の軽減というような目的から、大部分は大抵第二子以上の子供の場合に給付対象として取上げられておるのであります。  その次の産業災害國民保險法はやはり一九四六年に成立しまして、昨年の七月五日から実施になつておるのであります。これは傭主の一時負担によるところの労働者保障というものを、傭主の責任ということよりも社会全般の責任としてこれを取扱うということになつておるのでありまして、從來からも大体これに似たものは傭主と被傭者との関係において行われておつたものであります。これは所得額に拘わらず被傭者の産業傷害及び疾病に適用する、そうして英國に間々見られますところの、保險料の拂込回数によつて給付の額を殖やしたり減らしたりすることがありますけれども、これは保險料の拂込回数の不足の場合でも、法定の給付を増すということになつております。その給付内容を見ますと、第一が傷害給付であります。これは成人一人当りには、大体週四十五シリングの基本額を就業不能の時から百五十六日間給付いたします。これは扶養家族(妻、成年扶翼者及び第一子)には追加手当支給しております。次に不具給付というものがあります。これは災害給付期間後に傷害給付を受けましたけれども、その給付期間、つまり百五十六日を過ぎましても、労働能力を回復しないというような場合には、その程度に應じて給付するということになつております。第三は死亡給付であります。死亡した場合に、自活不能の寡婦、寡夫、妻に別れた夫、兒童、或いは年をとつた親というような者に、年金、又は賜金をやるようになつております。これの保險料は大体各産業別に分れておりますけれども、全部均等になつております。雇主と労働者の均等負担金及び國庫補助金は、産業災害中央基金というものに積立てられております。これが支給されるわけであります。ここに註とつけてありますのは、英國にはこの外に任意保險制度を認めているということであります。これは本法による給付を補足するために、労働組合とか、或いは共済組合、その他の團体が、本法と別に或いは本法に附随して、任意保險制度を設けていろいろな給付をなす。その場合においては政府がその事務を処理してやる。これは産業災害対策の補足計画と対照してやられているものでありますから、ここに註釈をつけておいた次第であります。  第三は國民保險法であります。これはやはり一九四六年に成立しましたけれども、去年の七月五日から施行されるようになつた。その趣旨とするところは、旧制度のいろいろなものを取入れまして、ビヴァリッヂ及び自書というものは、政府の修正意見書であります。これはいろいろの特長を取りまして、社会保險の全分野を單一組織に纏めまして、それを全部包括的ならしめ得るように拡張されたものであります。これは英國にもこれに似たものがありましたけれども、ただこれを制度化したものであります。これの対象としたものは、英國労働年齢と称する十六歳から六十五歳までの、引退金を受ける年齢にある者をすべてこの保險に加入させる。ビヴァリッヂ國民の階層、被保險者を被傭者、自営者、及び無業者の三階級に分けまして、保險料及び給付種目はその階級によつてなつております。その給付は大体七種類が掲げられております。第一は失業給付、第二が疾病給付、第三が出産給付、この中には出産補助金、この出産補助金はお産に使うところの金であります。この出産手当というものはお産のために休んだような場合に、その收入の一部を貰うわけであります。附添手当というものは、附添人に使つたところの費用であります。第四は寡婦給付、これは寡婦手当寡婦母親手当寡婦年金三つに分れております。寡婦母親手当というのは、子供に付く手当であります。五は後見人手当、これは保護者手当というのであります。六は引退年金。七は死亡補助金、被傭者は全給付を、自営者は失業給付を除き、無業者は失業疾病及び出産手当を除いたものすべてが適用されます。この七つの給付は、先程申上げました三つ種類に分れた者に適用されることになつております。  あとこの給付の大体概略を説明することにします。失業給付というものは、大体保險加入以來二十六回以上、前年度平均五十回以上の保險料を拂つた者にこれを適用する、期間は七ケ月、但し保險料の非常に拂込の成績の良い者、或いは裁判所の勧告によりましたものは、更の期間を延ばすことができる。ただ特長としては、労働爭議にこれは適用されない。それから職務に反したような行動によつて失業した場合、それから一定職業を與えられているに拘わらず、これを拒否した者は、大体六週間以下の給付を停止するというようなことになつております。疾病給付、資格は失業保險と同じように、拂込回数に制限を置きまは。期間は、大体三ケ年、及び百五十六回以上の拂込者は無期限、百五十六回以下は一ケ年間、同一比率で支給します。それでやはり自分の責任に帰するような行爲によつて受けた疾病、或いは診療の拒否、或いは規則の違反は、やはり給付を停止されております。出産給付というものは、先程申しましたように、出産補助金と、出産手当、附添手当、こういうようになつております。寡婦給付は、寡婦手当は、三ケ年間保險料を拂込んだ者の六十歳以下の妻は、死亡直後十三週間、学齢兒童は追加給付を受ける。寡婦母親手当は、寡婦手当支給期間後、一人又は二人以上の学齢兒童は終学するまで支給される。寡婦年金は、寡婦母親手当打切後の寡婦及び学齢兒童のないところの寡婦は、寡婦手当打切後に年金を受るけことになつております。後見人手当というものは、死亡した両親の一人が被保險者であれば、拂込日数に関係なく孤兒引取者に支給される。引退年金というものは、引退年齢まで百五十六回、年平均五十回以上拂込んだ者は、男は六十五歳、女は六十歳後に引退すれば、毎週支給される。ただ引退年金を受領する事になつても、尚働いておりました者は、先に加算されるというようなことがあります。引退年金を受取つた者は、寡婦給付失業及び疾病給付という從來の受けておりましたものは、給付を受けられないことになります。死亡補助金というものは、これもやはり死亡に際して、年齢別の一時金を支給する方法であります。これは先程申しましたように、労働組合乃至共済組合その他の團体が、これと別個に任意保險制度を設けてやつた場合には、國家が事務を処理してやるというような規定があります。  第四には、國民健康業務法、これは一九四六年に認可になりまして、昨年の七月五日から施行されたものであります。これは趣旨としましては、医療國営を実現したしまして、学校衞生(文部省関係)、産業保健労働関係)、刑務所医療(内務省関係)、軍関係(軍医務部の関係)、これを除外しまして一般に適用する。大体これはどういうふうな形でやられておるかということは、ここに第一から第十三までいろいろな特徴を掲げて置きました。要するに全國民はいつでも無料でどの医者をも選でかかれるという制度であります。それで保健医の取扱うところの業務というものは包括的なものでありまして、病院関係或いは專門医に診療、或いは診療所におけるもの、或いは一般診療、藥剤、助産婦、家庭の育兒、歯料治療及び医療器具の貸與にまで及ぶということになつております。  第五部としては國家扶助法、これは一九四七年に成立いたしまして、やはり昨年の七月五日から実施されたものであります。これは大体エリザベス時代から英國が持つておりますところの救貧法というものを基礎にしましたものですけれども、元來國家の恩惠によるところの救貧法というものを根柢的に覆しまして、一つのこれは國民の受ける権利であるというようなふうに解釈したしまして、大体今までの四つの法令によつて規定されたものでもどうしても、抜けるものがありますので、その抜ける網に洩れた部分を全部カバーして、そうして社会保障のギャップを補填しようというので、この國家扶助法というのは最後の網になります。これは全額國庫負担によつて行われるものであります。大体対象となる者は十六歳以上の困窮状態にあるすべての者及びその扶養家族、主として居宅老人、不具者、病弱者等を原則としますけれども、外の今までの四つの法令によつて給付を受けておるにも拘わらず、尚それだけの給付では到底やつて行けないというような者にも適用されるという特徴があります。必要に應じて現金又は現物によつて給付いたします。條件といたしましては、所得や資産等に関して一定條件の具備を必要といたしますけれども、通常労働可能なる者又は労働爭議に関係しておる者は除外されて参ります。その外地方官廳の厚生業務、これは地方においてもやはりこの制度を地方独得の形でやつております。それは宿舍の施設と不具者に対するところの厚生業務というようなものを地方が地方の財源と國庫の補助によつてやるということになります。  大体これらが英國が昨年から行なつた方式でありますけれども、その結果については一、二新聞報道があります。うまく行つているところもあるようでありますけれども、又余りうまく行つていないようなところもあります。恐らくまだ一、二年これを実施して行かないと、その結果が分らないと思うのでありますけれども、世界において一番新らしい纏つた構想であるということだけは、識者が認めております。  制度の運営に関しましては、社会保險省というものを新らしく作りまして、一般社会保險の外に産業災害保險家族手当國家扶助制度、すべてのものを管轄させまして、ただ健康保險の運営につきましては、保健省というような別のものがこれをやるというようなことになつております。その外、教育法によつて兒童に給食するというようなことは文部省、或いはスコットランド教育局がやつております。社会保險相の下にはいろいろな各諮問機関がありまして、これが運営をしております。それから疾病の方につきましては、地方病院局というようなものがありまして、いろいろこれを運営しておるようであります。國庫補助金は保險料に対する直接補助と保險経費に対するところの毎年の補助と、二つになつております。社会保險省の下には中央基金というものが設けられまして、これがいろいろ被保險者や何かの保險料の積立を行なつて、これが必要な財源となつております。大体これが英國で実施されておる形であります。
  12. 塚本重藏

    委員長塚本重藏君) それです質問などは後に廻しまして、次に第三号の説明を願うべきですが、澁江君は少し疲れたと思いますので、第三号を後に廻しまして第四号を林朝門君から……。
  13. 林朝門

    事務局員林朝門君) アメリカの現行の社会保障のことにつきまして簡單に申上げます。刷物がお手許にあります。第四号になつております。アメリカの御説明を申上げまする前に、我々として念頭に置いてかからなければならないことは、向うは御承知の通り非常に物資が豊富である、そうして財力が豊かである、そうして各自の勤労所得というものは非常に豊かであるために、各國が用いております社会保障制度によるいわゆる隣保事業で救う、あらゆる危險な人生における生活環境から、これらのいわゆる社会保障という名にふさわしい保險で以て救われねばならないという立場が、割合にアメリカにおいては少いというようなことを、持てる國の社会保障ということを、大まかに念頭に置いて進めなければならない。かように思つております。  先ずアメリカにおきましては、御承知の通り一九二九年、昭和四年世界的に襲いました経済恐慌は、御地聞に漏れずアメリカにも襲つて参りました。すでにアメリカには、その頃までも多少は柏本主義國の工業國であります関係上、只今私達が考えております、又日本実施されております社会保險というようなものも行われておつたのでありますが、この一九二九年から始まつた世界的恐慌によりまして非常な失業群が出て來たのであります。失業群で出て來ますれば、必然的にそれに失職というものを念頭に置かなければならん。これが非常に厖大な過剩人口が出て來ましたので、アメリカといたしましては、何らかここに手を打たなければならない。これが資本家側においてもこれを考えなければならない。又この失業群の救済、それからそれらの多くの危險なもの、厖大な人口を擁するということになりますれば、必然的に今まで働いておつたところの産業群の人たちに影響を及ぼす。そうなつて來れば必然的にアメリカの持つておりますところの、備えておりますところの資本主義というものが、このままで行くならば、或いは崩壞するかも知れないというような、後のことを爲政者はお考えになりましたから、ここで何とか社会的にすべての人たちが救われる保險的なことを合理的に考えなければならんという議が非常に起つてつたのであります。勿論從來アメリカという國は御存じの通り、州の寄合世帶でありますから、各州各州で独自な立場で、これらの保險的なことはやつておりましたけれども、各州まちまちであつて國家として統一されたものはなかつたのであります。それが先程から申上げましたような、國の情勢、世界的情勢になりましたので、アメリカとして、いわゆるアメリカ連邦法として、確立した保險制度を作らなければならない、こういうことが非常に問題になりまして、輿論が政府の目指すところと合致しましたので、ここに初めてアメリカは社会保障という立場に立つて確立した保險制度を、全般的に取纏めようというような議が決定したのであります。一番最初、一九三四年昭和九年にこれらの観念に基きまして、第一歩を踏んだのは、ときの大統領のルーズヴェルトがこの社会保障制度に関する取纏めの意見を提出したのであります。そうしてこれを立派なアメリカとしての社会保障制度を作るために、一つ委員会を設けて、その委員会によつて社会保障制度の立案を提唱したのであります。この委員会は、経済安定委員会と申します。この委員会の構成は、労働相を委員長として、農相、藏相、檢事総長、それから緊急救済長官というような方や、政府の要路の方が委員なつております。この委員会は更に政府の部内から二十名の技術的な方で以て、技術委員会組織いたします。それと一方において、一般の民間から労務の関係者、又傭主というような方からの代表者二十三名を以て、勧告委員会を作つた。この技術委員会と、勧告委員会組織して、以てルーズヴェルトは社会保障制度の勧告案を作成して、議会に上程して、これを完全なものにしようという一つの理想を立てたのであります。そうしてそれらの理想が今申上げました委員会で立案され、勧告されまして、一九三五年(昭和十年)に初めて上程されまして、同年の八月十四日にアメリカは社会保障法として一つ單行法を作りまして、國家全般に臨んだのであります。当時どこの國にもまだできないうちに、アメリカは率先して立派な法を作つたのでありまするが、後で申しまするごとく、それを実施しまして着々と時代の趨勢と國情の移り変りによりまして、不備な点も出て來ましたので、実施しましてから四ケ年後の一九三九年に更にこれを全面的に改正いたしまして、今日アメリカが独自の立場で社会保障法という一つの立派な法律の下に社会保障制度を布いて、世界に臨んでおるのは、これから後の一九三九年の改正法によるのであります。私たちは研究対象としては一九三九年のアメリカの社会保障法対象としておるのであります。勿論傳え聞くところによりますと、その後二三、一九四六年にも多少の改正はありまするが、骨子はただ條文が変更した程度でありまして、依然として一九三九年の法律が我々の対象とし、又アメリカの現行法として殆ど姿を変えずに生きておるわけであります。  順序として一九三五年に初めて制定されました制度の大体の内訳を申上げます。三頁に書いてあるその通りでございまして、その法律は、第一章は州に対する養老扶助補助金、第二章は連邦養老給付金、第三章は州に対する失業保障法施行費補助金、第四章は州に対する扶養者なき兒童扶助補助金、第五章は州に対する母子福祉制度補助金、第六章は州に対する公共保健事業補助金、第七章は社会保障局、第八章は雇傭に関する税、第九章は八人以上を有する雇傭主に対する税、第十章は州に対する盲人扶助金、第十一章は総括規定ということになつております。御承知と思いますが、アメリカは飽くまでも民主的な立場におきまして、政府自体が直轄的に手を附ける制度というものは、たつた一つしか持つていない。あとは殆ど扶助金、補助金というような制度におきまして、政府自体が考える理想に基いて、各州が独自の立場でその線に副うて計画を立て実施させる。それに対して政府は補助金なり扶助金をやつて、これを発展、拡張、促進させるというような方法を採つておるのであります。アメリカ政府自体というものはこの養老の給付金だけをやつておるのであります。今申上げました十一章のうち第七章から第九章までの三章及び第十一章の四章を除いた残りの七章が、アメリカの社会保障の実際計画でありますが、あとは一つのお役所的なもの、或いは説明的なもの、或いはいわゆる本当の法律そのものの形でありまして、今申上げましたのが社会保障の実際に行われる計画というふうに解釈してよろしいと思います。そこで、このアメリカの保障法を類別すると、三種類に我々は分けることができる。社会保障の部類のものと社会救済の部類のもの、或いは保健福祉の公共事業というようなものに分けることができるのでありまして、この書いてありますものは、この三つの部類に分けたものを順序を追うて概略を書いた次第であります。  ここで章を改めまして、第三章の社会保障局と申しますのは、一九三九年の法律が改正になりましてから、この一九三五年のそのままの形で現在に及んでおるのでありまして、これはアメリカが社会保障制度を徹底的に進めます上の一つの全部を取纏めたお役所でありますので、ここですべてのアメリカの保障制度というものを切り盛りするわけでございます。そこでその内容ちよつと申上げますと、(1)としまして、この社会保障局はどういう義務を法的に持つておるか。社会保障法の運営並びに研究をいたしまして、必要に際してはこの法の改正勧告を行う。そして社会保障制度の何と申しますか、経済情勢の変化に應じて、とにかく強力な実行を以て各州に臨んでおるのであります。先程申しました一九三九年の改正も、この社会保障局の勧告によつて改正したものであります。それから現在はこの社会保障局というものの活動を箇條書にしますれば、社会保障というもののいろいろな政策の立案、組織や一般的な手續の決定、諸規定のいろんな公に発表すること、各州に対する補助金、それから先程申しました養老保險金についての要求の確定であります。ここにお読みになりますのは養老遺族保險金とありまして、私は今、養老という言葉だけ申上げましたが、これが一九三九年の改正の中に、養老という言葉の次に更に遺族という言葉を付け加えて、養老遺族保險金ということになつておるのであります。それをあとの方を先へ持つて來て申上げた次第であります。さてその保障局の構成でありますが、構成は三名の主なる委員が大統領によつて任命されるのであります。たつた三人の人が大統領に任命されて而もこれを保障局と申しますのは、我々日本のお役所の観念だと多少ぴんと來ない点があります。ですから飜訳をする方はたつた三人の委員でありますので、保障局とはせずに、ただ委員会と訳しておる方もありますが、一般には権威ある方の飜訳したのを見ると皆いずれも局と名を付けておりますので、たつた三人の委員ではありますが、社会保障局というふうに用いさせて頂きたいと思います。それから第二がこの三人の委員のうち二名以上が同一の政党から出ることはできないのであります。共和党から二名或いは他の党から二名出るということはできないのであります。一つの党から二人以上は出ることができないで三人を以つて構成することになつております。三人の委員中一名を大統領は委員長に任命して、この委員長というのが社会保障局の局長になるということになつております。この局の三人の委員の方の任期は六ケ年になつております。これが社会保障局の事務機構でありますが、それはその裏の頁に図解しておきましたから御覧を願いたいと思います。大体この中に訳しております言葉が局となつたり部となつたりしておりますが、これは何んと申しますか、原語をそのまま書くとよろしいのでございますが、人によりましては全部局と訳しておる方もあるのでありますが、或いは公報課というふうに課の字を付けておる方もありますが、私の方ではすべて局と地方の事務所というような言葉に訳しておきました。これは他の参考書類を御覧あそばしましたときでも或いは課になつておる、或いは部になつておる或いは局になつておるというので非常に違いがあるかも知れませんが、一應こちらの資料といたしましては、局の名称を付けておきました。勿論地方に機関を設けております。地方は社会保障局の本局との連絡や調整を図る、或いは先程申しましたように社会保障局は養老遺族の保險をただ一つ取扱つておりますので、それを更に徹底するために地方と中央の連絡を專門的に司どる地方機関を設けております。それからこの社会保障局では社会保障上の定期刊行物を出しておるのであります。こういうような社会保障局は機構を持つております。勿論社会保障局はここに委員の中からいろいろな方もおられまするが、他の労働省、或いは大藏省というようなものと緊密な連絡を取つて運行して行くことは今更申すまでもないのであります。  さて一九三九年の改正社会保障法、これによりまして、大体にアメリカの現行社会保障制度の個々の概略は御理解願えるものと思いまして、一應箇條的に御説明申上げます。その前にこのアメリカの改正社会保障法を考えまするときに、そこに書いておきました通り、その全文が千二百一條という相当厖大なものでありまして、この法律の條項は一々克明によく分りやすく厖大なものに出來上つております。併しこの改正法の根本の狙いと申しますのは、個人及び家族を貧乏から免れさして、それらの家族を一緒に生活させ、そうして子供には自分の生れた家庭でできるだけ生長させる機会を與えようというのが、このアメリカの保障法の全般を通しての狙いなのでございます。それでこの制度の運用につきましては、他の諸國で見られるように、社会保障は全國民対象としたものでなければならないという点から考えますと、アメリカは全体を対象としてはおるとはいうものの、或る意味におきましては全般的にそうでもない点があります。これはそうでもない点と申しますと、初に申上げました通りアメリカは非常に持てる國である、そうして各労務者にしましても、勤労所得者が人数が非常に多いために、何から何まで政府のお蔭を蒙らなければならんというような階級が全般にはないのであります。私共日本人の立場におきましてはすべてを何から何まで、現在の経済状態、收入状態から見ますとやつと現在の生活だけはできるが、將來のことや家族のことや或いは自分の健康の不慮病氣ということまで、いろいろ当局の配慮を願わなければならんというようなことを考えないでもよいほど、アメリカでは十分な收入を持つておる階級が相当あります。そういう点から行きますと、全般の人を対象としておるとはいうものの、やはりそこには別にこれを全部含まないでもいいというような動きも多少あるやに考えます。そういたしますと社会保障という言葉の本來の概念から申しますと、或いは我我としてはアメリカの社会保障というのは、保障制度としては当らないじやないかという向もありますが、併し実際にアメリカが行なつております現状制度としましては非常に立派なものでありますし、又大いに参考にいなければならない。又アメリカ自体としては社会保障制度という一つの立派な法律まで設けております関係上、やはり我々はアメリカの社会保障法というものを一つのモデルとして研究する必要がある、かように考えております。さて先程申しました通りアメリカの社会保障制度というものは、政府はたつた一つの実行力だけを持つて、殆ど他を各州に與えておりますということまでも、我々はアメリカの社会保障制度を見ます上に研究する必要があると思います。どこまでもアメリカは各州自体の独自の立場というものを尊重して、そうしてそれをより以上発展させるために應援をするという態度を取つておるのがアメリカの社会保障制度であります。話は横に行きましたけれども、この一九三九年のアメリカの改正法も一九三五年のものを全部打壊してしまつたものではありません。一九三五年に作られた法律の三原則とでも申しますか、三つ骨子というものがございます。それは單に個人ばかりでなく、社会を保護しなければならん。第二番目は費用の分担は傭主も被傭者もお互いに分担する。三番目は給付保險受益者以外に、賃金喪失によつて非常に苦しんでいる人達(その家族、妻なり子供なりを指す)にも及ぶべきことという、この三つは依然として変つていないのであります。ただ変つている主なものと申しますと、第二章のところの今まで先程申上げましたごとく、養老保險給付というところが養老遺族保險給付という工合に変つているのであります。遺族というものが一つ殖えたのであります。その目指す趣旨というものは、さつきちよつと法律の構成のところで申上げました個人及び家族を窮乏から逃れしめる、家族と一緒に生活させる、子供たちに自分の生れた家庭で生長させる機会をできるだけ與えようという法の精神から生れたものでございます。アメリカがこの改正をいたしましたその中でも、初め一九三五年に養老給付保險だけをやつていまして、今申上げましたごとくに遺族が付いたということはアメリカとしては非常な、何と申しますか劃期的な一つの大きい保險制度として見ているわけでありますが、これが一九三九年の最も大きい一つの改革だと思います。更に一九三九年の改正された法律の主な点を概略的に申上げますと、第一は社会保障掛金率(老齢遺族保險の)を漸次高めて行くことを止めて、傭主及び被傭者共に一%ずつ計二%としたこと。第二は第二次大戰從軍死亡者に対する給付を充実したこと。第三は新たに第十三章を設けまして、これに海上労務者のための失業保險制度を設けたこと。これが主なものであります。第二次大戰の從軍死亡者に給付を充実したこと。これはここに箇條書として書いてありますけれども、私共としてはこの資料が十分手許にございませんので、不日これをよく研究してみたいと思つております。  この改正法の主な内容を大体このパンフレットに從いまして申上げますが、第一部は先程申上げました通り、このアメリカの社会保障法というものは社会保險関係、救済関係、それから福祉関係三つに分れていると申しましたが、第一の社会保障関係から入つて行きます。十一頁を御参照願いたいと思います。第一部は社会保險関係であります。失業保險制度は各州の失業保險の運営につきまして國庫補助をしているのであります。それで飽くまでもアメリカは連邦政府自体と州の政府自体というものとを結び合せまして、できるだけ州のものを各州各州を独立させて應援するという立場をとつておりますので、この社会保險やこれから申上げますいろいろな保險を御研究頂きます場合、又お調べ願います場合には、殆どこの州というものの独立した過去の法令を又知らなければならんのでございますが、私たちの手許にはアメリカの合衆國の各州の制度というものの資料が、殆ど一つもないと申上げてもいいのでありまして、できるだけ先ず各州のものを研究すれば、更に我我の得るところがあると思いますが、併し大体どこの州も、例えば給付の額が違つたり、掛金の額が違つたり、年齢が違つたり、或いは程度の相違があるという程度で、その骨子、或いは狙いどころ、或いは又共通点は沢山ありますので、各州はそうどこの州とも、例えばミシガン州とオレゴン州とが大変な違いがあるというわけはないのでございます。ですから纏めまして共通点を次々と資料によりまして拾つたのでありますが、附加えまして申上げたいと思います。大体これを読みながら御説明申上げたいと思います。  連邦政府制度、各州の失業保險の運営につきましては國庫補助金を交付する。この交付は社会保障局を通じまして大藏省から交付されるのでありますが、その使い途に当りましては失業給付以外の使用は絶対に認められていないのであります。これは非常に嚴密になつております。そうして連邦政府失業保險の適用を受ける八人以方の從業員を持つ工場、事業場の雇主に対しまして連邦失業会計に納入すべきことを命じているのであります。この税金は連邦政府としては大藏省が取つておるのであります。更に州の制度にどうなつておりますか。各州は州自体の失業保險法を持つております。特別州基金から給付を行なつておるのであります。この失業基金は社会保障法が要求していますように、大藏省に州の預金として先ず預けて、そうして州はいつでもその失業信託基金勘定を引出すことができるのであります。各州の制度には多少、今申上げました通り、相違はありますけれども、大体次の條項が共通しております。公共の職業紹介所に労務届出をし、そうしてその給付請求権を登録しておかなければならない。第二は、州法の適用ある仕事に予め就いたことがなければならない。三番目は一定額の賃貸クレヂットを持つていなければならない。この賃金クレヂットというものは、労務者がその仕事をなくするか、或いは長い休職をさせられる前に一年又は二年間その州の法の適用のある仕事に從つてつて一定の給料を貰つた者でなければならない、ということをこの賃金群クレヂットは意味しておるわけでございます。第四番目は、仕事をする能力がなければならない。病氣のために仕事から離れているか、又は他の理由で仕事ができない場合には失業給付は受けられないのでございます。第五番目は、労働に間に合う者でなければならない。お前はこの仕事をせいと言うたときに、いつでもはいと言つて喜んで仕事をするような立場を持つていなければならない。俺は嫌だからしないというようなことであつてはならない。この五つのことは大体どこの州でも共通しておるようであります。それからその失業保險給付高、それはそのとき受けておつた保險者の週給の約半額ということになつております。但し受ける給付の最高額は週十五ドルから二十八ドルでありますけれども、大体十三州では週十五ドル又は十六ドルであります。最低額は週三ドルから十ドルでありますけれども、大体の州では週五ドル以上ということになつておる。こういうことになつておりますので、これは多少各州におきまして違うのでございます。それから先程澁江さんからも言われましたようにイギリス制度にもありますが、それは大体世界各國でも労務者は給付を受けるときには、一定期間があるということは、これは後で御説明申上げますが、各國どこの保險制度を見ましても一定期間があることはどこでも同じでありますが、アメリカでも勿論一定給付期間というものを付けておりますが、その一定期間内に特にこちらでは審査の請求をする権利を持つておる。若し労務者からその請求権についての決定が、これはどうも正しくないと感じたときには、これではどうも間違いがあるのじやないか、もう一度審査して貰いたい、私の受ける給付額はこれはとうも適当ではないように思うというようなことを、事務所に申出て審査を受けることができるのであります。これは後でちよつと申上げますが、これは特に民主的な立場でアメリカでは飽くまでも個人の権利、個人の受けるべきものに対して保護を受けておるので、上からただあてがい扶持的にお行の給付はこれだけだからこれだけ取つて置けというのではなくて、渡して置いて更に当人が受取つた給付額というものは、これは妥当なりや否や、自分が働いて今まで來た給料等から算出すると、多少狂いがある。何かこれは間違いがあるのではないかということを、審査を請求しますれば、政府は特殊の機関を通じまして、どこどこまでもそれを研究し、そうしてその被保險者に納得の行くように調査をするという、非常に丁寧な機関を持つておることは、この國の特徴とも言うべきだと思います。それからその次には……。
  14. 塚本重藏

    委員長塚本重藏君) 皆さんお諮りいたしますが、午後續行することに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  15. 塚本重藏

    委員長塚本重藏君) 御異議なければこの程度で一應休憩したらどうかと思います。それでは暫時休憩いたします。    午後零時二十二分休憩    ―――――・―――――    午後一時四十八分開会
  16. 塚本重藏

    委員長塚本重藏君) それでは午前に引續き再開いたします。引續きアメリカの社会保障法概要について林君から説明を續けて貰います。
  17. 林朝門

    事務局員林朝門君) 午前に續いて社会保險関係を續けます。十三頁の二の老齢、遺族の保險制度説明いたします。老齢、遺族の保險制度は掻い摘んで申上げますれば、被保險者並びにその家族に対して行われるのでありまして、この被保險者たる賃金の取得者が年を取つて職をやめるか、或いは死んだときに効生を発生するのであります。その條件としまして被保險者は必ず工場、仕事場、鉱山、製粉所、商店、事務所、銀行、それから建築の組合、それからアメリカの船舶等に從つておる賃金取得者のみに限られておるのであります。その給付高は賃金取得者が常に元金被保險者なつていなければならない。この完全被保險者なつた被保險者及びその妻、子供、両親に対して各一定條件の下に保險金が給付せられ、その家族の保險金を取り得ることのできる條件としましては、先ず一番先に家族の條件は十六歳未満の子女であること、但しその十六歳未満にならない者で学校へ行つておる者は十八歳まで受けられる。二番目はこの給付を受ける資格のある者は(一)の條件と同じ條件を持つている寡婦、それから第三番目は六十五歳に達した寡婦、それから第四番目は被保險者が子供も寡婦も残さないで死んだ場合の両親がおる場合があります。こういう四つが條件なつておりますが、給付の実際の算定は賃金労働者が以前受けておつた平均月酬が基準なつております。それからこの遺族が給付を受けておる賃金労働者が、法律に定めた職業一定額以上の金額を稼いだ場合には受けられないことになつておりますけれども、六十五歳を過ぎましても、それから家族の者につきましては、今まて寡婦であつたけれども今度結婚して更に收入のある夫を持つたというときにはこれが停止されるということはここに書いてある通りであります。それから子供が十六歳を超えてしまつたということは一人前で当然社会的に働いて給料を取る年齢に達したのでありますから、これは給付を停止せられるということになつております。その給付の基金でありまするが、この保險支給基金は特別に「連邦老年遺族保險信託基金」となつておりますが、賃金労働者及びその雇主の両者の掛金がこれに当てられております。この信託基金は大藏長官、労働省の長官、それから社会保障局の長官から成つておりますところの保管委員会でこの基金が管理されておる、こういうことになつております。ここでも先程の項で申上げました通りに、失業保險の場合に申上げました通りに、やはりこの保險給付の請求ということができると同時に給付の審査の請求ということができるのでありまして、この審査のことにつきましては特に後で申上げますが、アメリカではどの保險にも拘わらず、保險給付を請求すると同時に先程申し上げました審査の要求というものは必ず当然の権利としてできることになつております。  次にはこの社会救済関係のことを申上げます。これは主として貧乏な人ですが貧困な人ばかりを対象にして持つておる項目をここに挙げておりますが、勿論救済でありますので、生活状態の困つておる人だけを対象としております。  先ず最初には老齢者の扶助制度であります。給付を受ける條件としましては(一)が六十五歳以上の貧困の男女であるべきこと。第二番目は給付を受けようとする州に少くとも五年間住んでいること。これが條件であります。そしてその給付高は、その州は被保險者の、受給者の貧困の度合によつていろいろ州によつて法律がありまして決めてありますが、大体連邦政府は各件ごとに四十ドルの額の半額を補助することになつておるのであります。例えて見れば一人の人間について二十ドル出せば、連邦政府も二十ドル出す、但しその制度は四十ドルまでである。  第二番目は兒童の扶助制度、これは主として兒童をその両親なり、或いは肉親者なり、或いは親戚の者と一緒にできるだけ暮して行けるように補助してやるというのが目的なんであります。その條件といたしまして、これ又各州はいろいろ法規は持つておりますが、扶養の要ある十六歳まで、但し学校へ行つておる者は十八歳まで受けることができる、これはどこの州でも共通した一つ條件なつております。その給付の高は勿論その貧困の度合によつて決めてあるのでありまするが、連邦政府は州の與えるところの給付の半額を補助しておる。但し一人の子供の場合にはできるだけ十八ドルまでは出せるけれども、二人以上のものは一人について最高が十二ドルまでいいということになつております。  次は盲人の扶助制度、これも各州で法規は持つておりますが、大体におきまして次の三つが、これはどの州でも共通しておる点であります。先ずその程度の度合でありますが、全然目が見えない、それから又次は働くに差障る程の盲のように低下しておる者、だから全然見えないのじやないけれども、それだけの視力では到底生活の資力を取ることができないという程度の盲、次は成年に達しておる者、この三つが各州で設けておりますところの共通した点で、これに大体共通するところのものが補助を受けるのであります。その給付の高は前の制度と同じに貧困の度合によつておりますが、連邦は一件ごとに月四十ドルまでの額の半額を補助してやる、やはりこれにも限度を設けておるのであります。この救済制度関係は主なものはそれだけであります。  次にはこの保健福祉の公共事業関係、いわゆる社会事業的な関係のものでありますが、これはアメリカでは特に労働省の兒童局が全般的に各州の仕事に対して責任を以てこれを拡充発展させ、そうしてこれに対する各補助をなしておるのでありますが、この際も勿論兒童局は社会保障局、並びに大藏省を通じて経理関係を行なつておるのであります。次に分掌関係を見ますと、労働省の兒童局で全般的に福祉事業を分担しておるのであります。その事業といたしましてはいろいろありますが、その前に各州がいろいろ計画を立てます。そうすると連邦政府の方におきましてもその目標とするところの何といいますか、指示を持つておるのでありますが、その指示を線に副いまして各州が独自の立場でこれを実施して行くのでありますが、当初その各州が自分のところではこういう計画をやりたいときに一應児童局の局長の承認を得まして、そうしてこれを実行しておるのであります。その先ず初めに婦女の保健事業、ここにちよつと申上げて置きますが、他の方を見ましてもいろいろサービスという言葉日本語に直さずにサービスサービスという言葉をよく使つてありますが、普通サービスという言葉はイギリスのこの保障制度にもサービスを使つております。ここにもサービスというそのまま使つてありますので、この際日本言葉に訳したならばどういう工合に訳したらいいのかちよつと当嵌る言葉がありませんので、通常サービスという言葉が國語になつておる形でありますが、私はいろいろの立場から又御指導を仰がなければいかんと思いますが、施設、制度と訳すわけなんですが、施設という言葉をあちらこちらで使つておりますが、これはサービスという意味でありますので、さよう御承知を願いたいと思います。一應ここに母子保健事業、括孤して母子保健サービスというようにそのまま書いておりますが、サービスという言葉はあちらこちらに出ておりますので、一應書いて置きました。  この母子保健事業はどういうことをやるかと申しますと、普通母子の保健でありますので、診療所を設けて妊産婦の保健指導をしたり、或いは通学しておる子供に対する保健施設や、或いは家庭や学校に対する公衆保健のことや、看護の施設というような、要するに保健事業に関するあらゆるものを施設しております。又施設のみならず啓蒙という意味で通信講習とでも申しますか、そういう学問的な、常識的なものを一般兒童、母子、それから家庭に普及させるために印刷物というようなものも発行いたしまして、実際に行いつつ更にこれを知識的にも教養を高めさして行くというような指導面にも、大いに力を注いでこれの施設を拡張利用するということに意を盡しておる。これは書き現わせませんが、いろいろな資料を見て見ますと、保健福祉の公共事業に対しまして、アメリカでは非常な金を掛けて、非常な努力を以て実施しておるようでございます。この事業の経費は州の健康機関、いろいろな州に属しておる母子の保健機関がありますが、その州々で必要に應じて独自の立場で計画を立てて、これに先程申しました通り、これが計画を連邦の承認を受けまして、連邦の承認と申しますのは、この兒童局の承認を意味しておるのであります。そうして連邦政府はこの施設を、いわゆるサービスを運営する上に必要な金を、その度合に應じて支出しておるのでありますが、ただここにちよつと書いてありまするが、例えば州の方で、この仕事をするのに百万円要るというならば、連邦の方では更に全部が全部でありますけれども、連邦が補助する場合には十分な経費、切り詰めたぎりぎり一杯の経費でなく、より以上に活動できる範囲のものを多少見て、十分余裕のあるように金をやつておるようであります。この点は普通の法理的に決まつた法定價格とでも申しますか、法定で決めた保健金で何円何十何銭ときちつと出すのと違つてこの事業関係については政府は余裕のある金高を補助しておるというようなところに長所があると思います。  それから次は不具の兒童の保護事業でありますが、これは州の方の抱えて世話する機関はできるだけ不具兒童を積極的に見付け出す、申出た者に対しての救済だけでなく、みずから進んで不具兒童を発見して行く。そうして或いは又將來放つて置けば不具になるかも知れんというような兒童までも発見して、これに必要な医療を施し、或いは治療を施し、或いは又更に入院させて懇切丁寧にこれをできるだけ一人前にする、一人前にするのみならずこれが出て場合に、これが今後社会にどういうふうに処さして行くかというところまで世話する、サービスをやつております。その経費は先に申しました母子の保健事業と同じやり方であります。  次は兒童の福祉事業、兒童に対するサービスでありますが、この兒童福祉機関は学校や警察や或いは少年審判所や、或いは家族や、或いは子供の住んでいる近所の人々から頼まれた子供でありまして、その子供たちは家がない或いは浮浪者とでも申しますか、或いは將來このまま放つて置けば非常な犯罪者になるというような虞れのある子供に対して、この福祉事業というものがなされておるのであります。これが家族も勿論協力をするのでありますが、兒童保護團体の協力によりまして、これら福祉に邁進しておるのであります。これが経費は先程申しました母子保健事業や不具兒童保護事業の場合の経費と同じに相当余裕のある金を政府から受けてやつておるということは同じであります。先程來から給付に進する請求、或いはその受けた給付に対する審査の要求ということを申しましたが、更にここに簡單に審査の請求という、飽くまでもアメリカ式な民主的な立場に立つて、徹底的に個人の権利を認めて、そうしてその個人々々が自分が受けておる給付に満足して頂戴できるというように、納得して貰う制度を立てておりますので、これが自分が受けたのをそのままそれを頂戴するというのではなく、自分は当然これだけは受けられるのだ、これに対して今自分の受けているものはこれでいいのかどうか、少し不審があるから調べたいという希望に対しましては、十分な機関を通して、これに満足できるように、いわゆる保險金を受ける十分な権利というものを保護しておるわけであります。  その順序としまして、先ず審査の要求をしますと、そこに審査官というものがおりまして、その審査官の面前で、自分が受けておるものはこれだけであるのに、これだけしか來ないというような一つの申立をする。これは通常あとから出て來ます各要求のときでもそうでありますが、殆んど書類形式というものを廃めまして、直接にその係官の前で当人から口頭で以て申立て、口頭で回答をするというのが理想的な建前であります。ここに書いてあります通り「審査官の面前における聽聞」と申しますのは、その審査官の前で当人が実際に聽いてそこで処理して行く、こういうやり方であります。  それからそれで事が鳧がつかなかつたならば、更に第二番には審査委員会での審査、一段上のところへ到達して更に審査を受けて貰う。三番目は金銭給付につきまして、又はその他一般法規関係を含む不服につきましては最後は通常裁判所まで提訴してやるという工合に、第一番目の段階で鳧がつかなければ、第二段階、第二段階で鳧がつかなければ第三段階まで行くというようなな工合にその順序もありますが、どこまでも当人の納得の行くように鳧をつけてやるということになつております。  この審査を要求しましたときの運営の仕方は、そこに書いてあります通りでありますが、一應読みます。  給付の受給資格者が給付の請求をしますと、決定の通知が來ます。この決定通知書の決定に不服のある場合には審査請求書を社会保障局の地方事務所に提出するのであります。そうすると審査官はこの請求書に基きまして請求者と対面をする、先程申しました通り直接面談をします。主として口頭審査を行うのであります。その場所は、ここもちよつと御注意願いたいのでありますが、普通ならばどこどこの区役所へ出て來て、そこで型のごとくやるのでありますが、アメリカではこの請求書に基いていよいよ審査をするときには、請求書にできるだけ便宜を図らつてその請求書の家に行つて審査官が審査をするということが建前になつておりますので、審査官は或る資料を見ていつでも審査の請求のあつたときには、その当人の家へ出掛けて行くのでありますので、お役所の自分の席が温まらないのが常であるという工合に、請求者の権利を尊重して請求者の家へまで行つて事の解決を図るというのが通例になつておるようであります。第二番目にこの審査官の判決に不服のある場合には更に審査委員会が再審査を行うことになつておるのであります。審査委員会事務局には十二名の地方聽聞審査委員と、それから本部であるワシントン駐在の三名の聽聞委員から成り立つてつて審査委員会の行うところの第二審とでも申しますか、第二審的の審査がこのワシントンにおる委員によつて行われる。この場合も原則として口頭審査の樣式が採られる。この通りに穴くまでも書式形式でなく口頭で実際に当人の口から聞き実際にこの当人の言うところを筆や紙に現わしますととかく杓子定規に流れますので……そういう建前になつて最後の決定は法律に規定されておるように裁判所における法律手續による。殆んどここまで行かないのでありますが、ちよつと言い忘れましたが、昨年であつたか一昨年であつたか裁判所まで行つてつたのはほんの三十件かそこらくらいであつて大低はもう第一審査第二審査で殆んど済むという工合に聞いております。  大体非常にお粗末でありますが、アメリカのこの保障制度というのは掻い摘んで申上げますと、社会保險社会事業とを引つ括めて社会保障制度というものを現在作つております。その対象としては一般の國民対象としておりますけれども、再三申上げた通り何樣持てる國の國民相手であるのでどこまでも貧乏な者のみを対象としての社会保障という立場から申しますと、本当の意味社会保障と我々が考えておるような理念の社会保障ということにアメリカの制度は当らないかも知れませんが、併しこの國はこの國としての一つの意義ある、そうして十分徹低した一つ制度として運営されておる以上、やはりこれはアメリカとしての社会保障制度としては、立派な一つ制度として、これは研究して行かなければならんと思うのであります。  ただここに一つ御不審にお思いになりますのは、他の國には皆健康保險、或いは國民健康保險というふうなものが画然と法律で決まつており、制度として確立しておりますが、アメリカではこの社会保障制度そのものの中には健康保險というようなものは含まれていないのでありますが、勿論ないんではない。これはアメリカでは組合組織によつて任意に行われておるのであります。と申しますのは、アメリカでは十分なる給料を貰つておる、十分なる生活費を持つておるのでお医者やお藥のお世話はみずから各自分々々でやはり十分な給料が与えてある筈であるというような建前になつておるのでありますが、そのようにアメリカでは健康関係のものはおのおの自分で組合を利用してやつておるのでありまして、制度として、國全般が面倒を見ておるというものはないのであります。勿論それが確立しなかつた一つの大きな原因としてはこのアメリカにおける医師会が非常に反対をして事ここに至らなかつたという一つの理由を見受けられますが、これはそういうこともあろうと思います。併し全然ないのではありません。これは組合的にやつております。制度としてはまだ確立していないのであります。それからもう一つ、私外の國のことは不幸にしてよく存じませんが、アメリカはこの社会保障制度というものを各國民層に徹底させる意味におきまして、誰が読んでも分りいいような宣傳、普及徹底を図る趣旨を印刷したものとか、それからこれを普及させる手段を非常に金を掛けて一般労務者に徹底をさしておる。その印刷物がここにありますが、非常に綺麗なものもでき上つております。でこれはちよつと余談でありまするが、ここに國会図書館の方に何か参考になるものはないかといろいろ引つくり返して相当具体的なものを見ました中に、二、三ここに拾つて來ましたけれども、これは図らずもこの間厚生省で作りましたアメリカの社会保障制度の中に引用してありましたが、これをおとりになつたらしいですが、非常に綺麗な、誰が読んでも分るような、支も物語り式に、例えばここに「ソーシアル・セキューリティ・フオア・ザ・ジヨンソン」というのがありますが、これはビル・ジヨンソンという家庭の御主人なり、奧さんなり、子供なりについて非常に物語り式に書いておる。ビル・ジヨンソンというのはどこそこで働いておる。一番上の息子は軍隊に出ておる。我々は生活する人にどういう安定が與えられておるかというようなことを面白く物語り式に書いてあります。これは労働者が読んでも誰が読んでも分りいいようなパンフレットが沢山できておる。これは日本に來ておるかも知れませんが、私の手許に二、三拜借しまして、ちよつと見ますと、非常に分り易く簡單の出ております。これはお手許参考資料として配付されまして、ここにアメリカのこういうパンフレットの見本が出ておる。これを私は拜借しましたが、これに出ております。こういう体裁の本であることをお見せして置きます。非常に綺麗に読み易くできております。こういう工合に宣傳とか、普及徹底をアメリカは社会保障制度に非常に力を注いでおるということが我々の参考になるのではないかというように考えております。非常に簡略でありましたが、これを以て私の御説明を終ります。
  18. 塚本重藏

    委員長塚本重藏君) それでは引續いて資料の第三号、ニュージーランドの社会保障法概要を澁江さんに御説明を願います。
  19. 澁江新一

    事務局員澁江新一君) 御説明をいたします。パンフレットの「ニュージーランドの社会保障法」の上に、「其の三」という工合に印刷してありますけれども、これは恐らく英國の方の制度で、ビヴァリッヂのというものが「其の一」英國の本國の方が「其の二」にできました関係上、これはニュージーランドでなく、英國自治領という意味で間違つて其の三と印刷したのかと思うのでありますけれども、パンフレットとしては其の三を消して頂いた方がよろしいのではないかと思います。只今まで社会保障法という法律によつて運営されておるアメリカの状況と、それから社会保障法という單行法ではありませんけれども、個々の統合された法律を運用して社会保障制度を確立する英國との二つの例が出ましたのですけれども、ニュージーランドはやはりアメリカと同じように社会保障法という法律を発布してやつております。これはアメリカと違うところは、ただアメリカは各州の自治においてその法律範囲内においての活動を自由にやらせておる傾向がありますが、ニュージーランドは一本の法律を以て統轄して運営しております。ニュージーランドの特徴としますところは、この國は社会保障制度ということについては古くから目覚めておりまして、そうしてこれを纏めたことにおいて最も古い國であります。而もその状況が我が國の状況に非常に似通つておりまするので各方面からこのニュージーランドの社会制度方法を詳しく研究されておるものもあります。ニュージーランドは非常に古い時からすでに國立生命保險会社というようなものを拵えまして、それからいろいろな厚生制度が運用されております。それから一九三八年になりまして從來國民養老年金法というものを大体中心にしまして、散らばつておりますところの老齢扶助、寡婦、廃疾、孤兒年金、鉱夫及び廃兵年金失業救済及び家族手当というような一連性の諸給與法律としまして、これに更に一般退職手当、一般医療給付、入院手当、助産手当及び入院中の給付というものを追加いたしまして一つの総合された保障法を完成したものであります。これは当時書面にも書いておきました通りに、國際労働機関の事務局の專務理事が國民全部に対して、養老、癈疾、疾病失業及び一家の稼ぎ手を失つたことに原因して生活の資料を絶たれた者に対して、最低生活標準を維持し得る給付支給し得るということにした全世界の最初の法律であるというふうに心得えておるのであります。ニュージーランド社会保障法は、「社会が賄うべき社会的義務」というようなことを定義して、これを実施いたしまして先のビヴァリッチ計画に対して多くの示唆を與えておる事実があります。この國のいろいろの特長を持つておりますが、大体ここに六つの点をニュージーランド英國自治領の特徴として掲げて置きました。  その第一は土地の面積が大体我が國と大差はありませんで、ただ人口が百数十万に過ぎませんから我が國よりずつと人口は少いわけです。それから昔から余りに貧富の階級的懸隔がない。いわゆる貧民窟というものは余り見られないのであります。乳幼兒死亡率の非常に低いことは世界第一となつております。從來いろいろ医療関係制度から見まして、古くから入院費の三分の二は國庫が負担するというような傳統的習慣がある國であります。養老年金寡婦年金、鉱夫結核、戰時年金等に対するところの古くから存在しております法律は、何回となく改正されたり統合されたりということが、しばしば繰返されております。ただ面白いのはニュージーランド社会保障法は外の社会保障法が大抵被傭者とか事業主というような言葉を盛んに使つておりますけれども、ニュージーランド社会保障法は全部を通じて見ても被傭者とか事業主とかいう区別は全然つけておりませんです。それからもう一つ保險給付の場合におきましても、他の社会保障法或いは社会保險関係は、保險料の拂込みがどうだとか、拂込み回数がどうだとかいうことが保險給付條件なつておりますけれども、ニュージーランドにおいては、そういうふうなことは一切問題にいたしません。ただこの人間がその國に何年住んでおつたか、或いは給付を受ける人間は懶惰の性質があるか、何か欠格者でないかというようなことが給付條件として取り入れられておることが諸々方々に見られることが特徴のようになつております。  大体ニュージーランドのやり方を見ますと、金銭給付現物給付、これを健康給付と称しておりますが、この二本建になつております。金銭給付は外の國と同じように、社会保障局というようなものを拵えまして、これが一切やつております。健康給付保健局が主管するようになつております。ただこの國の特長としましては、労働者災害補償に関する点は強制を基礎としない個人的な雇主と雇われる者との任意的な責任の解決というような原則は未だに維持されております関係上、これは強制保險としての社会保障法から別に取扱われておるのであります。その内容日本の労災と同じような内容であります。六十五歳に達した時から無條件支給を受ける制度であります。  老齢給付というものはやはり同じような條件ですけれども、六十歳から男女全部に毎月支給されるものであります。ただ老衰給付と老齢給付との違いは、老齢給付は本人の收入とか、或いは社会的ないろいろの資格というようなものを條件として給付いたしますけれども、老衰給付というものはこういうような條件を一切考慮しませんで、六十五歳に達した時より老衰者に支給するいわば扶助的な支給なつております。  次に寡婦給付というものは、十六歳未満の子供を擁する者、或いは扶養兒童がなき者、或いは遺棄された妻、それから精神病を療養患者の妻、こういうような者が給付対象となるのであります。  孤大給付というものは、本國で生れた子供とか、或いは両親のいずれかが死亡直前に三年間本國に住居していたという事実がありますと、この孤子に対して收入、資産というものを特別考慮した上で、社会保障委員会というものがその支給額を決定することになつております。これは子供が十六歳若しくは学校に入つておりますうちは十八歳まででありますけれども、その子供の外から受ける收入を考慮して支給されます。か家族の給付というものは、兒童を有する母、又は社会保障委員会が特に認めた父親或いはその保護者というような者が、道徳的な資格を持つている者或いはその申請前に十二ケ月間國内におつたというようなことを條件として支給されます。子供は大体生れた時から十六歳まででありますが、これは大体学校を卒業するまで支給される建前になつております。子供がやはり身体的にも精神的にも生活能力がないというような場合とか、或いは特別のそういうような事由から支給しなければならんというような場合には制限なく給付されることになつております。  癈疾給付というものは、自分の責任に帰せないような災害、疾病又は生來の欠陷による永久的に労働能力を失つた者とか、又は全部両眼が潰れた盲、これはやはり國内に十年間おつたということで、その資産、收入、道徳的人格というようなものを考慮して支給されます。ただ盲の者や、又は常時看護人が傍に附いていなければならないという者は、算定の基礎の上に多少特例が設けられておりますが、その癈疾者たちは六十歳に達しますというと、老齡給付に切替えられて行くことになつております。  第七番目の鉱夫給付というのは、鉱夫の結核がこの國には非常に多いようでありまして、これが相当今まで問題になりまして、そのために鉱夫結核法という法律まであつたようでありますが、これを取上げまして、本國の鉱夫として二年半以上、而もその申請直前五年間に妻子を遺棄したことのないという鉱夫に対しては永久的な又重大な労働不能となつた場合、その場合にはそういう收入とかその資産には関係なく、本人と妻に同額の給付が與えられまして、死亡に対しては勿論葬祭費まで支拂われるというような項を特別に入れております。  疾病給付は傷病手当金の形において行われます。これは一年以上本國におりました十六歳以上のつまり稼働年齡者というものは一時的に労働不能になりましたときに、俸給や賃金その他の取得、例えば自営者が自分が病氣で休んで、代りに人を雇つてそれに賃金を出して、その店を営んでいたような場合、当然取得すべきものがなくなつたというような場合、これも含めまして、そうしてそれだけの額を治るまで支給するというようなことになつております。ただ妻へ支給します場合においては、特に夫が扶養できないというようなことを社会保障委員会が認定する必要があるとされております。  第九番目の失業給付は、本國に一年以上おりましたところの十六歳以上の者は、大体七日間の待期を以ちまして、その失業期間支給されます。妻に対する支給疾病給付の場合と同じように、やはり夫がそれを食べさして行けないというようなことを社会保險委員会が認めた場合に、これを給付するという形になつております。これは失業者が疾病給付又は老齡給付を受けておる場合には、失業給付というものは受けられないことになつております。  この外緊急給付というものがありまして、これは年齡、肉体的或いは精神的並びに廃疾等によりまして、或いは家庭事情から家計を維持し得ない、或いは本法以外には助けて貰う手段がないというような者に対しましては、社会保障委員会が認定いたしまして、これを全部助けるというような最後の網を張つてあります。以上で大体金銭給付の形体は終えるのであります。  次は現物給付、これは本國におりまするところの全國民給付されるものでありますけれども、大体社会保險基金というものがありまして、これが直接に病院にその報酬を支拂つたり、或いは患者が医者から診療の受取りを貰いまして、これを送つてやりますというとそれに対して拂戻金があるという、こういうような制度なつております。從つて國民支給はされますけれども、医療とか入院、藥剤、治療というようなものに対して受給されるという手續の完了した者でなければ、言い換えれば補償の方途によつて費用を回復する資格があるというような場合にだけ限られておるようであります。  その第一は精神病院給付でありますけれども、この國は幸いなことに私立の精神病院が一ケ所で、あとは全部國立の精神病院になつておりますから、これは無料で國庫負担でやるということが可能であります。  分娩給付は産科病院に入りまして、或いは助産婦の家庭附添というような場合に、陣痛日及分娩後十四日間、医師によるそういつた分娩処置を受けます。分娩処置は大体報酬規定というものがありまして、それに基いて社会保障基金からその費用が支拂われることになつております。それでは陣痛前、或いは分娩後十四日間の問題はどうなるかということは、次の病院給付というものによつて受けるのであります。病院給付というものは、期限はありませんです。公立或いは公認施設、それから私立と、そういうようなところで受けるのでありますが、これが手續がこの三つによつてそれぞれ異つて手續があります。公立病院の方の外來患者は歯科、藥剤及び治療材料支給、エツキス線診断等を除きまして、社会保障基金から支拂われることになつております。これは、この除かれたものは、患者の、いわゆる返還制度によつてこれが支拂われるのであります。  次の第四の医療給付の問題でございますけれども、これは非常にこの國のは混み入つておりまして、容易に分りにくいのでありますけれども、大体よく調べて見ますというと、開業医を利用してやる場合が最後に残るわけでございますけれども、これを一般医療サービスというような工合に名付けております。これは大体二つの方法があるのであります。その第一は、初めは保健大臣が医者と個人契約をしまして、いろいろ診療と報酬を定めるというような形式をこの國で採つておりましたけれども、この社会保障制度は、こういう方法を止めまして、患者が病氣になりましたときに、最寄の郵便局若しくは社会保障関係の出張所へ行きますというと、手續の紙があります、その紙を持つて医者のところへ行きますというと、その紙の裏には、いろいろ診療の契約の内容のようなことが書いてあります。それを医者が見た場合に、自分がそれに同意したならば、その患者を自分の患者名簿に登録する。それに同意しなかつた場合には、その患者を外へ廻してやる、こういう方式があります。これは主にその登録された患者の人頭式によつてその医者に支拂がなされるのであります。もう一つ方法は、医者にかかりました場合に、領收書を貰います、患者がそれを社会保障基金の方へ送つてやりますというと、患者がそれに対して定められたところの償還を受けます定額式報酬制度、この二つから成り立つております。登録した患者というものは、次に出て参りますけれども、緊急止むを得ざる場合の外医者を変えることができない、後の定額式報酬制度の場合には、どの医者でもいいということになつております。その外に專門医サービスというものがありまして、これは一般医療サービスから除外されておりますところの高度の技術又は経驗を要するような給付が專門医サービスというものによつて行われております。これは特にその費用の一部償還制度というものが作られております。  この外に、一般医療サービスをやる医者には、保健大臣が俸給で雇入れたところの医師を各所に配置しまして、これがやはり一般の開業医と同じように、一般医療サービスを担当しておるというような状態になります。  第五の医藥品給付、これは先程申しましたように、患者が医者に登録した場合には、その登録した医者から処方箋を受けまして、そうして保健大臣の認定しました藥剤師又は公立病院へそれを持つて行きますというと、藥剤を無料で支給されるのであります。大体保健大臣の藥價表というようなものを定めてあつて社会保障基金からそれぞれ支拂われるようになつておりますが、大体公定價格の、安いのは二・五乃至一〇%割引というようなことになつております。  第六番目には、エツキス線給付というものがあります。これはエツキス線診断サービスと言われるものでありまして、公立病院における外來患者、及び入院患者、或いは保健大臣から認定されましたところの一般公認技術者、勿論個人医師もこの中に含まれるわけであります、によつて補足的に給付を受ける者であります。公立病院の外來患者の場合のようなときは保障基金から支拂われまして、外の入院患者、及び一般公認技術者によつてやるような場合には、料金に從つて貰うということになります。  第七番目は、マツサージを給付しております。これはやはり医者の診断書に基きまして、四週間以内を限度としまして、やはり保健大臣の公認してマツサージ術師によつてやられます。マツサージ術師には社会保障基金から定額式の報酬が支拂われるのであります。その次に地方看護婦給付というものがあります。これは公立病院や、その他の國庫の補助金のある組合で看護婦を雇います。この看護婦は、公認看護婦、見習看護婦、産婆又は助産看護婦というような者が雇われと働くのがありますが、その費用は大体サービスに直接必要なすべての費用を含みます。この報酬は雇主であるところの公立病院、或いは國庫補助金のある組合に支拂われることになつております。家族扶助給付、これは非常に貧乏している者、又その他の事由からどうしても家事の切り盛りができないというような母親の手傳いのために、家事手傳人というものが派遣されます。これは、このサービス目的を持つておりますところの公認團体ならば、どの團体も社会保障基金から補助金を受けるということになつております。  大体給付内容は、このような趣旨によつて行われております。この事業は先程申しましたように、保健局と社会保障局の二つでやつております。  社会保障局の方には社会保障委員会があります。その委員会がいろいろの審査、諮問、そういうような仕事の取扱います。事務的には局の下に、全國に十九人の記録官というものを置きまして、その記録官は更に二十八の町村に地方機関というものを持ちまして、そうして金銭給付に対するすべての申請調査の決定というようなものを委員会に提出しまして、その決定を俟つて活動するようになつております。  保健局の方には地方病院局というものがありまして、その監督の下に全國を四十二に分けた病院地区というものを持ちまして、保健医療官というものがそれに所属して活動しております。大体英國医師協会のニユージーランド支部又はいろいろ個々別々に保健大臣の契約によつて、この現物給付であるところの医療給付が行われておることであります。大体これに要しまするところの財源は、どういうふうになつているかと言いますと、社会保障基金という特別会計を設けております。國庫補助金の外に準税金式のものが掛けられております。この税金の対しては、非常に苛烈でありまして、これを納めない者は、國外の旅行券をも下附されない。賃金の一部を制限するというぐらい強力な方法で、その準税金式の社会保障掛金というものを掛けております。これは第一は、内地と同じように、すべての俸給、賃金その他の收入について一定率の掛金を計算されております。その次は会社は株主配当に先立つて一定率を利益配当金から差引いて納入することになつております。第三は社会保障基金の目的のために議会によつて適当に割当てられたその他の金、又は社会保障基金に対する何らかの法的根拠の下に支拂われる金であります。この三種類によつて運営されております。  大体これによりまして英國米國、ニユージーランドの形が、各近代國の社会保障制度を代表して述べられて参りましたので、大体これによつて世界社会保障制度の運営の状況がお分りになるのではないかと思います。ただ、今我々の興味を引いておりますものは、今までの資本主義國家における社会保障制度に対しまして、一つの経済機構を異にするところの社会主義的な社会保障制度の國であります。それは社会保障制度調査資料第五号のソ連邦の社会保障としまして作り上げたものであります。
  20. 塚本重藏

    委員長塚本重藏君) それでは引續いてソ連邦の社会保障説明を願います。
  21. 澁江新一

    事務局員澁江新一君) 先ずソ連という國がその経済機構を異にしております関係上、いろいろなことを了解するにむずかしい点が非常に多いことだと思います。第一は資料が十分に公開されて我々の手許にも出ておらないというようなことで非常に困難を感じたものであります。序言の中には大体この社会保障制度に対する見方というものをちよつと参考のために書きしるして置きました。ただソ連邦には社会保障法という法律はありませんです。併し社会保障に関する規則というようなものがたびたび発布されまして、又ソ連自体も社会保障というような文字を頻りに使つております。これはソ連が社会保障という文字を解釈するに当つて二つの意議があるということを後程御説明申上げます。併し大体の経過を辿つて見ますというと、一九一七年の十月革命から始つております。これは諸種の労働保護方策及び社会保障実施ということは、現政権の主体である共産党が在野時代に國民全般に対して與えた公約でありまする関係と、もう一つは農民労働者、こういう者との手の繋りを早く取ろうというようなことなどがあるのだろうと思いますが、とにかく革命直後事業主負担の一切の雇傭労働者及び貧困者に対する社会保險制度というものをいちはやく実施したということになります。それからいろいろ改変がありましたけれども、一九二二年の十一月にいよゆる五ケ年計画というようないろいろな新経済政策というようなものが樹立されまして、労働法典というような大きな法律実施されまして、それはすべての身体上の事故を包括し、且つ一九三〇年まで失業に対する保險をも包含するという大きな社会保障制度を確立したわけであります。失業保險はソ連においては失業というものはありませんものですから、今日、一九三〇年以後は失業保險というものの制度は全然なくなつております。ただこの当時はまだそういうような状態がありましたので、これに対する対策として一時的に失業保險というものが存在したのであります。一九三六年は初めてスターリン憲法というものが作られました。これは丁度我が國の憲法二十五條のような國民の基本権利としまして、「ソ連邦の國民は老齢並びに疾病及び労働能力喪失の場合に物質的保障を受ける権利を有する。この権利は國家の負担による労働者及び勤労者の社会保險廣汎な発展、勤労者への無料医療給與並びに勤労者の利用に供せられる廣汎な療養地網によつて保障せられる」というように憲法百二十條は規定いたしてありまして、ソ連の社会保障制度というものはこれからいろいろな施策があつて発展して行くのであります。その後いろいろ部分的には変遷を経ておるようでありますが、殊に大戰以後の政策は非常に強化されて社会保險の上にも多くの制限が加えられたと思います。大体私共の取りました資料というものは極く最近まで一九四五、六年頃まで訂正されましたものをよく整理いたしまして大体内容を整備したのがこのプリントになるのであります。  大体それを見て見ますと、ソ連の社会保障というものは社会保險の形態を通じて実際作られているということが強く認められております。併しながらソ連で社会保障と言いますものは、廣義に解釈しますと、即ちソ連が社会保障とみずから言つておりますものは、現政権が革命後から現在に至るまでに実施したところの労働保護及び社会保障的な諸方策のすべての網羅したものが社会保障であるというふうにとつております。併しながら狹義に解釈いたしますと、それは社会保障人民委員の管轄に属しておりまして、專ら社会保險の適用外にある者、即ち雇傭労働に從事せざる者に対する必要な保險給付意味しておりまして、丁度それは社会保障の一要素であるところの社会秩序と言つていますが、社会扶助に相当する部門であります。その内容は主に廃兵、或いは戰歿軍人の遺族とか、それから盲人聾唖者に対する扶助、或いは生業助成及び年金交付等の保障手段であります。  ソ連の社会保障は最初先ず第一にやりましたときには全部の労働者対象といたしまして、凡そ生計の資料を自己の労働によつて求めるすべての勤労大衆、雇傭されていようと、独立労働であろうと全部これを包含して社会保障対象にするわけになつたのでございます。同時に事業主の掛金というものを全廃いたしまして、國家がこれを負担することになりました。それは大工業の企業が國有化してその他の全般的な戰時体制によりまして、雇主の負担するところの保險料制度というような意味を壊わすくらいな強力なものを実施したためであります。併しながらその後一九二一年の新経済政策実施以後になりますと、從來労働者なら誰でもいいというのを改正いたしまして、雇傭労働に從事している労働者、勤労者ということに限定しまして、その後は僅か從來筋肉労働者にだけしか過用のなかつた養老年金が俸給生活者にも適用されるというように今日のソ連の社会保障制度というものは雇傭労働者対象なつております。保險料はその後やはり事業主が負担するというようにこれも訂正いたしました。それは支拂労働を雇うところの一切の企業施設及び事業というものは、國有の資産である。從つて雇主が保險料を負担することは即ち國家がこれを負担することであるというような意味合いから事業主負担ということが認められました。ただ社会保險に使うところの費用の半ばを國家が直接にこれを負担しておるという点が特徴になつております。これはどういうふうに運営されておるかと言いますと、大体一九三三年以降は社会保險に関する経営管理の一切が、全連邦労働組合中央評議会というものに一切委されまして、そうしてその下に産業別の労働組合の中央委員会というものがありまして、又その最下部には各工場委員会及び地方委員会というような組織的連鎖が枢軸となりまして、そうして社会保險労働者みずからの手によつて行われておるというような形になつております。  それでソ連の社会保障は大体如何なることを給付対象とするかというと、現在、割合最近までやつておるという事実が認められまするのは、一時的労働能力の喪失者に対するものと、それから育兒に対するものと、それから埋葬関係に対するものと、養老、廃疾、遺族扶助、それから勤續年金及び功労年金、それから医療援助というこういうような大体六つに分けることができます。  一時的労働能力の喪失というのは傷病手当金、妊娠及び出産、家族の看護、檢疫、隔離、こういうふうに四つに分れておるのでありまして、大体勤續年限を重視しまして一〇〇%乃至三〇%の賃金補償が行われております。第一の傷病手当金は労働規律の違反、犯罪によつて解雇された者、依願退職者、そういう者は次の就業先で六ケ月を経過したときに初めて受領の資格を得るというふうに規定されております。そのうち傷痍軍人は勤續年限に拘わらず、賃金の一〇〇%を支給する。妊娠及び出産、これは産前産後の休暇を強制的に與えるということで、これは当該企業に三ケ月おれば、産前三十五日、産後五十六日合計九十一日の休暇を貰えるという制度であります。家族の看護は外に看護に当るような者がないような場合に限られております。原則的には大体三日間であとは看護組合によつて派遣されるようになつております。檢疫、隔離、これの期間保險機関が決定するわけであります。  第二の育兒手当、これは二人以上の子供を持つている母親とか、内緑関係の母親、夫を失つた母親たちに物質上の援助を與えるようになつております。毎日の手当は一歳から五歳までの子供に対して支拂われますが、殊に夫のない母親には別に子供が生れたときから十二歳に達するまで年が経つて行くと金額が増加して行くような累進的追加手当というものが支拂われております。又婦人労働者労働者の妻には子供が生れる度に子供の衣食費として社会保險基金から一定額が支拂われます。これは一時金であります。又子供に対しましては保育園とか子供の家、兒童診療所少年團、キヤンプというような施設が設けられておりますから、母親は誰でも自分の子供をそこに預け又利用させることができます。保育園、幼稚園に預ける場合には、そこの養育費は全額乃至一部分を國家が負担することになつております。  埋葬手当金は、労働者、從業員及びその扶養下にある家族が死んだ場合に、都市と農村とに分けて、それぞれ一定額を手当金として支給しております。  養老年金、廃疾年金、遺族扶助料、これは大体受ける者を第一級、第二級、第三級に分類しておりまして、これによつて給付額が違うのであります。第一級は、地下作業及び有害作業に從事しておる者、第二級は、重要産業に從事しておる者、第三級は、その他の職業に從事しておる者、この三つに分けまして、大体金額をかけております。先ず第一の養老年金は、男子は満六十歳になりまして、而も労働年限が二十五年になつた者、女子は満五十五歳になりまして、労働年限二十年になつたというような場合は、最後の年の一年間の平均月收を基準として、第一級を六〇%、第二級を五五%、第三級は五〇%というような工合に支拂われております。年齢に達してまだ継續して働いておるというような場合は、又更に余計に支給されるようになつております。廃疾年金は、作業上の負傷又は職業病による場合と、そうでない場合と二つに分けられまして、そうしてこれもそれぞれ第一種、第二種、第三種というようなふうに分けまして、第一種は、完全に労働不能にして、而も自由を弁じ得ない者、第二種は、完全な労働不能、第三種は、部分的な労働不能というように分けまして、これを最前の職業の第一種、第二種、第三種とうまく組み合せまして、それぞれ年金支給するようになつております。  遺族扶助料は、被保險者の死亡が作業上の事項又は職業病による場合、或いは年金受領者の場合は、労働年限その他に関係なく遺族に支拂われます。その他の場合には、前の大体廃疾年金の場合に必要とされたような條件がいろいろ考慮されております。  受領資格者は、一、二、三、四とこの四つの分類に分れておりまして、一、は十六歳未満の子女、兄弟、姉妹。二は、十六歳以上の者で、満十六歳以上に達するまでに労働能力を喪失せる労働不能の子女、兄弟及び姉妹。第三は労働不能なのか、又は男子六十歳、女子五十五歳に達した両親及び配偶者。  第四は死亡扶養者の八歳未満の子女、兄弟及び姉妹を扶育する必要ある場合、年齢及び労働能力の如何を問わず、両親若しくは配偶者中の一人。これは大体この資格の順序によりまして、或いはその受領資格者の数に應じまして、大体被保險者の経歴とか、職別、賃金、死亡、原因等を斟酌いたしまして決定するようになつております。  第五の勤續年金及び功労年金でありますが、これは元來社会保障というのには少しおかしいのでありますが、大体勤續又は功労に対する恩給とか賞勲のような意味を有しておる制度でありますけれども、ただこの特徴といたしますものは、社会保險の機関を通じてこれらが支拂われております以上は、やはりこれはソ連の社会保障制度が、あらゆる社会保險機関を通じて実施されておるという建前をとりまして、一應ここに掲載して置いたものであります。  第六番目の医療援助というのは、應急手当所、診療所、病院、社会関係の特殊病院及び療養所、サナトリユーム、或いは温泉、保養地のいろいろの施設、藥品その他医療品の支給によつて行われるものでありますけれども、これは被保險者及び家族が無條件社会保險機関の経営する施設から無料で診療を受ける、藥剤を受領するというようなことになつております。  以上が大体極く最近のソ連の状況でありますけれども、極く最近のものは資料揃いませんので、ただこれが非常に強化されて來ておるということだけは、いろいろな書物にも出ておりますから、それは事実だろうと思います。大体骨子となるような点は、以上御説明申上けたようなものでございますけれども、尚又調査いたしまして御参考に供することになつております。以上を以ちまして御説明を終ります。
  22. 塚本重藏

    委員長塚本重藏君) 大体以上を以て今までプリントのできておりまする外國社会保障制度に関しまする一應調査の結果の報告を求めた次第であります。何かこれに関して簡單に質問して置くようなことはありませんか。ただ質問します場合に、この澁江君にいたしましても、林君にいたしましても、極く短時日の間にこれだけの関係書類をあさつてプリントにして呉れたのでありますから、十分な説明をすることのできないことがあるだろうと思いますが、一應問題となるような点を質問して貰えば、お互いに勉強になると思います。
  23. 中平常太郎

    中平常太郎君 ちよつとお尋ねいたします。澁江君にお尋ねいたしますが、ニユージーランドの第一章のところに、「一八九八年の無拠出制度による國民養老年金法を基軸として、」とありますね。それで私共も初めニユージーランドは大部分無拠出制度によつてつてつたように思つたのですが、ずつと読んで行きましても、やはり大体これは無拠出と解釈してよろしいものもあるようですが、財源はよく分つておりますが、その財源以外の方法で直接に雇傭者から取つて被傭者に渡すというようなことはないのでございますか。
  24. 澁江新一

    事務局員澁江新一君) そうでございます。
  25. 中平常太郎

    中平常太郎君 ニユージーランドは殆んど全部國営になつておりますね。
  26. 澁江新一

    事務局員澁江新一君) 大体はつきりした財源で賄つております。
  27. 中平常太郎

    中平常太郎君 それから九頁の公定價格のところですが、「薬剤の範囲、薬剤價及び報酬高の規定があり、大体公定價の二・五%乃至一〇%割引で算定される。」とありますから、公定價よりも安く出すわけでありますね。
  28. 澁江新一

    事務局員澁江新一君) そうでございます。
  29. 中平常太郎

    中平常太郎君 まだお尋ねしたいこともありますけれども、よく読みまして又改めて質問いたします。
  30. 塚本重藏

    委員長塚本重藏君) ちよつと聞いておつて不審に思われたようなことがありますね。第一号で何かありませんか。
  31. 井上なつゑ

    ○井上なつゑ君 第一号の友愛組合とかいうのがありましたが、これは原語が分つておりましたらちよつと教えて頂きたいと思ます。
  32. 澁江新一

    事務局員澁江新一君) お答えいたします。この友愛組合というようのは、実は私共今これを調査中なのでございまして、所々にこの言葉ちよちよいと出て來るのでございます。一体実体は何だろうかということを調べましたのですけれども、現在までのところ、今これを專門に調べる余裕もありませんので、又同時にこの本体を説明したような資料ちよつと手に入りませんのでございまして、いろいろ文学を総合して見ますと、何か日本國民健康保險組合のような、各職種のものを纏めまして、それが大体任意的な、非常にゆとりのある保險制度をやつているようなもののように思われるのですが、いずれこれはよく調べました上で御報告いたします。
  33. 塚本重藏

    委員長塚本重藏君) 何か原語に何かあれば、井上さんが言われた外、心当りはありますか。
  34. 澁江新一

    事務局員澁江新一君) このまま、友愛組合というような文字が使つてあるのでございます。
  35. 井上なつゑ

    ○井上なつゑ君 この英國法律の原書はございませんか、原語で書いたの。
  36. 澁江新一

    事務局員澁江新一君) それは只今手許ちよつとありませんです。
  37. 井上なつゑ

    ○井上なつゑ君 恐れ入りますが、若し原語がお分りになつたらちよつとお教えを。
  38. 澁江新一

    事務局員澁江新一君) 承知いたしました。
  39. 中平常太郎

    中平常太郎君 今議題になさつておられるのは第一号だけですか。
  40. 塚本重藏

    委員長塚本重藏君) 第一号です。順々に行きましようか。第一号はこの程度でよろしうございますか。第二号。ではよく読んで頂いて後で又お聞きすることにします。ただほんの今お氣付きの点がありましたら……では次に第三号。先に中平君の質問があつた外に……。
  41. 井上なつゑ

    ○井上なつゑ君 お伺いしたいのですが、第二章の「社会保障法による給付種類」のところの、老齢給付と老衰給付の区別でございますけれども、これは老齢給付が、六十歳に達したら必ず老齢給付に移管されるという意味じやないのでありましようか。そこのところをちよつと私分らなかつたのですが。
  42. 澁江新一

    事務局員澁江新一君) これはよく調べて見ましたところが、老衰給付というのは、扶助的な、恩惠的な給付形態のものであります。そのために、これに対しては、六十五歳に達したということで、無條件でこれを給付してやるという救済的な意味のものでございます。老齢給付の方は、やはり事前調査というようなものが行われまして、これが六十歳に達しますと、その本人の收入とか資産というようなもの、或いは本人の酒を飲む癖があるとか、家族を遺棄するとか、金使いが非常に荒いというようなことを査定いたしまして、そうして給付を與える。この方が社会保障法の本筋の方でありまして、老衰の方は社会救済的な意味を持つているようなものに承知いたしました。大体この二本あることは正確でございまして、ただこの給付は一人で二つの給付を受けられないということだけははつきり謳つてあるわけでございます。大体の例から見ますというと、大体六十歳で老齢給付が始まるのでありますから恐らく老齢給付に入れた者で、非常に高齢に達した者は、六十五歳に達した者がこちらの老衰給付を受けるのではないかと思われます。
  43. 井上なつゑ

    ○井上なつゑ君 よく分りました。
  44. 中平常太郎

    中平常太郎君 ニユージーランドにあきましては、給付を受ける條件の中に、大部分一年以上本國に居住しておつたという條件であつたようになつておりますが、そして年齢その他については適格でありながら、一年以上の居住をしなかつたらいけないということになつておりますが、ああいうのは一年未満というのは、どういうふうな、別な救助方法がどつかに出ておりますか。一年未満のものは、どこまでもやらないという立場か。それ程無慈悲なものでないと思いますが、本國にいながら、一年未満は一切恩惠に預からないというわけでありますか。
  45. 澁江新一

    事務局員澁江新一君) ちよつとお答えいたしますが、その点は、実は我我の資料にはその点に触れたものはないのであります。
  46. 中平常太郎

    中平常太郎君 もう一つお尋ねいたします。最後に、その財源を負担しない、義務を履行しない者は國外への旅行券を受けることができないとありますが、國外への旅行券はないというだけであつて、國外へ旅行しない者はどういうような……。
  47. 澁江新一

    事務局員澁江新一君) 正確なことは分りませんけれども、何か居住権にも制限しているようなことがあるようであります。これは、國外旅行を禁止するということは、はつきり書いてありましたから、この点だけを取入れました。
  48. 中平常太郎

    中平常太郎君 それから續いてお尋ねいたします。今のところの第三ですが、財源を出さない者について、社会保障基金の目的のために、議会によつて適当に割当てられたその他の金、これはよく分るのでありますが、「又は」から分らないんです。「又は社会保障基金に対し法的根拠の下に支拂われる金」これはどういう意味でありますか。逆に支拂われることになつておりますから、その意味を……。
  49. 澁江新一

    事務局員澁江新一君) これは、社会保障基金に対して、何か支拂うような法規があるんじやないかと思われますけれども……。
  50. 中平常太郎

    中平常太郎君 私がちよつと考えますには、社会保障基金に対して、國民全体から、いわゆる指定給付を受れらるにようなことがあるのじやないかと思つておりますが、それが書いてなくして、給付を受けるのでなくして、「法的根拠の下に支拂われる金」と強くなつているのがどうも……。
  51. 澁江新一

    事務局員澁江新一君) 例えば何かひういうことが想像されます。何か外の法律で、罰金のようなもの、或いは過料のようなものは、そのものの性質によつては、社会保障基金に支拂うべしというような規定があるのではないかと思われます。
  52. 中平常太郎

    中平常太郎君 それは一つ考えられますね。
  53. 澁江新一

    事務局員澁江新一君) それはただ一つの想像でありますけれども、
  54. 谷口弥三郎

    谷口弥三郎君 このビヴアリツヂの案を見ましても、全体に、例えば引退年金あたりをつけましても、いわゆる社会的恥辱又は経済的恥辱にならないように、言い換えれば、いろいろの議員とかにも出られるとかいうように、全部法律的の恥辱が全然ないようなふうに、英國なつておるようですが、アメリカの方はどういうようになつておりますか。
  55. 林朝門

    事務局員林朝門君) アメリカは全然ありません。
  56. 澁江新一

    事務局員澁江新一君) これは、社会保障制度というものは、從來社会救済のような一つの恩惠ではなく、保險料その他の義務を履行する代償として、給付の補償としての権利を保障するとなつておるものですから……。
  57. 谷口弥三郎

    谷口弥三郎君 それはよく分つております。例えばニユージーランドあたりは外國に行ける権利を與えるなんということがそこがちよつと……。
  58. 澁江新一

    事務局員澁江新一君) それは金を納めないで義務を履行しないと、ニユージーランドだけにこういうことがありました。非常に強制的に割当したものになつております。その外の國にはそういうのは見当りません。
  59. 塚本重藏

    委員長塚本重藏君) もう一つ四ページの金銭給付の第一の老衰給付のところですが「十年間國内に留り且つ引續き社会保障基金への義務を履行するものは、」とありますが、六十五歳になつて尚且つ引續き社会保障基金への義務を履行するもの、この社会保障基金への義務というのはどういうことですか、この場合に……。
  60. 澁江新一

    事務局員澁江新一君) この場合の義務というのは、やはり支拂義務のような意味じやないかと思うのですが……。
  61. 塚本重藏

    委員長塚本重藏君) 老衰給付を受けつつ支拂いの義務があるのですか。もうそういう義務はなくなつている筈じやないですか。
  62. 中平常太郎

    中平常太郎君 義務を履行するものは六十八歳に達しましたら……。
  63. 塚本重藏

    委員長塚本重藏君) だから何か義務がなければならん。
  64. 澁江新一

    事務局員澁江新一君) 老衰給付を受けてもやはりお終いの方の財源になるようなことは履行しなければならない。
  65. 塚本重藏

    委員長塚本重藏君) 外の國ではこういう給付を受ける場合に大体掛金を免除されておる。
  66. 澁江新一

    事務局員澁江新一君) 免除されるようになつておりますが、これは原文にもはつきり出ておつたものであります。
  67. 小杉イ子

    ○小杉イ子君 第三号の三ページの二でございますが、ニユージーランドは貧富の階級的懸隔がない、いわゆる貧民窟層がない、そうして乳兒の死亡率は低いことは世界一である。こういうような國では入院費の三分の二は國庫負担となつていますが、こうしないでできることはないでしようか、やはりしなければいかんのでしようか。
  68. 澁江新一

    事務局員澁江新一君) この國の医療制度の過去を調べますと、入院した場合にはその費用の三分の二は必らず國家が支拂つていたという事実がずつと継續しておつたのであります。
  69. 中平常太郎

    中平常太郎君 今は全額になつております。
  70. 小杉イ子

    ○小杉イ子君 今は全額負担しているのですか。
  71. 澁江新一

    事務局員澁江新一君) 今は全額負担になりますけれども、この社会保障制度ができるまで……ニユージーランドの英國自治領の特色として挙げましたのは社会保障法ができるまでニユージーランドとして行なつていたいろいろの特徴というものをここに收録して見たのであります。
  72. 塚本重藏

    委員長塚本重藏君) この程度で……。第四号について何かお尋ねございませんか。
  73. 中平常太郎

    中平常太郎君 第四号の十六頁イの通学中のものは十八歳までのものが條件に入るのでありますが、外のソ連にもありましたような十八歳以上の学生に対しては給付の途はないのですか、それは学費は十八歳で終るのじやないのですか、その点はどういうふうになつておるのですか、アルバイトでもやるのですか。
  74. 林朝門

    事務局員林朝門君) アメリカで十八歳でやるのはこれは、我々の確定したお答えとは思いませんが、大体一人前の給料取りの成年に達したものと見ておるようであります。
  75. 中平常太郎

    中平常太郎君 今のところは兒童扶助制度であるから、十八歳までで制限されたのは当然でありますが、兒童扶助制度のところにありますが……ところが十八歳が学生、それから上の者は社会救済機関にはないのでしようか。学校へ行くために自分の收入を得られないという者に対して……。
  76. 林朝門

    事務局員林朝門君) ちよつと調べてからお答えいたします。
  77. 中平常太郎

    中平常太郎君 十三頁の二の老令、遺族保險制度の中の、給付への條件でありますが、この條件はかなり入つておるようでありますが、雇われた者以外にはないようですが、つまり個人で活業しておるような者、つまり雇われていない者はここには入りません。遺族としては入らないのですが、無業者或いはどこへも雇われていないところの家庭、そういうところの遺族の保險はどうなつておるのですか。
  78. 林朝門

    事務局員林朝門君) これは大体向うのを見ますと、この文章にあります通りこれらに関係しておる賃金取得者のみにこれは限られておるという原文そのままをこれに書いてあります。自営者は方は別に認めてない。入つてないように思います。
  79. 井上なつゑ

    ○井上なつゑ君 この所でございますけれども、いつか新聞を見たときに、アメリカでは男の人が六十五歳、女の人が六十歳になれば失業保險を掛けて置けば、毎日幾らかの保險金が入るというようなことが書いてございましたけれども、これはここにはございませんのですか。これは失業社会保險の中に、第一部の社会保險の中には額だけのことしか書いてございませんけれども、六十五歳に達した方は、いつか社会保障のことが出たときにそういうことが新聞に謳つてございましたけれども……。
  80. 澁江新一

    事務局員澁江新一君) 何処ですか。
  81. 井上なつゑ

    ○井上なつゑ君 只今の中平委員のお尋ねになつたところに関係しておる。十三頁の老齢のところに関係しておる。老齢、遺族保險制度のところの老齢のところをちよつと伺いたいのでございますが、遺族給付のことが詳しく書いてございますが、老齢給付のことが分らないのでございますけれども……。
  82. 中平常太郎

    中平常太郎君 どうしても老齢のことはそこにないね。六十表以上ということがない。六十五歳に達した寡婦というのがございます。
  83. 井上なつゑ

    ○井上なつゑ君 寡婦だけしかない。
  84. 塚本重藏

    委員長塚本重藏君) もう一度念のために調べて貰いたい。
  85. 中平常太郎

    中平常太郎君 どうしも一定の年になつたら全部養老年金は渡る筈だ。
  86. 塚本重藏

    委員長塚本重藏君) 冒頭にも書いてありませんね。被保險労務者に対しと書いてあるから……。
  87. 塚本重藏

    委員長塚本重藏君) 外にありませんか……。それではこの程度にしまして、第五号に移りたいと思います。
  88. 中平常太郎

    中平常太郎君 第四頁のしまいから五行目のところに「即ち、支拂労働を雇り一切の企業、施設及事業が國有の財産であり、從つて、雇主が保險料を負担することは仍ち國家がこれを負担することである。のみならず、社会保險費の半ばに近いものを直接國家の一般財政から支出するという形に於て行われるようになつたことが特徴となつた。」こうありますが、企業は國家が全部やつておるのでありまして、ここに支拂う企業体は國家以外にない筈ですが、特に社会保險費の半ば近いものを直接國家が拂うというて、あとは誰が拂うのですか。國家の企業体に拂わすわけですか。
  89. 澁江新一

    事務局員澁江新一君) この経過は一番最初は、企業体が保險料を支拂つてつたのがこの制度の初めでありました。ところが共産党はこの保險料支拂の義務を止めさせました。その理由としましては、企業体というものはもう全部國有になつてしまつたのだから、企業体が保險料を支拂うというのはおかしい、國家がこれを全部支拂うのだというようなことを主張いたしまして、その当時は勤労階級でありさえすれば、雇われておる者であろうと、或いは自分で働いておる者であろうと、すべてをこの保險対象に取入れたときでありました。ところがそれから僅か一、二年も経たないうちにがらつと政策が変りまして、被保險者は雇われておる労働者だけに限るのだ、外の者にはこれを適用しないということと、もう一つは、企業体が保險料を支拂えということになりました。この企業体が支拂えという弁解をここに載せたつもりでおります。これは企業体というものは國有の財産であるから、その國有の財産から支拂われるものは、國家がこれを負担するのと何ら変りはないのだというこれは弁解なんであります。
  90. 中平常太郎

    中平常太郎君 それは分るのですが、「社会保險費の半ばに近いものを直接國家の一般財政から支出する」ということは……。
  91. 澁江新一

    事務局員澁江新一君) ところがそれは賃金に比例してこれを支拂うことになつておりますから、それだけでは足らないのでございます。それで全体社会保險として使われる金の大半とは行きませんけれども、半ばに近いものだけは大体直接に國家の方の予算面から支出しておるということが一つの特徴になつておるように思つております。
  92. 中平常太郎

    中平常太郎君 これは沿革ですね。
  93. 澁江新一

    事務局員澁江新一君) そうでございます。
  94. 中平常太郎

    中平常太郎君 現在ではないのですね。現在は全部國費でやつておるのだから、半ばに近いも何もない筈だ。
  95. 澁江新一

    事務局員澁江新一君) ただ金の徴收方法がこういう形になつておるようであります。つまり片つ方は國家の組んだ予算面から少し出して、片つ方はこつちの方から出すというように組立てられおるのであります。
  96. 中平常太郎

    中平常太郎君 やはり企業体から出しておるのですね。
  97. 澁江新一

    事務局員澁江新一君) そうでございます。
  98. 小杉イ子

    ○小杉イ子君 第三章の「保險給付種類」というところでございますが、ソ連ではこういうものを拵えて保險金を支拂うという條項がありますが、実際これをやつておるのでしようか。やつて來たのでございましようか。よく聞きますと、大分教育などは行き届いていないと伺いますが、これは実際やつておるのでしようか、やつて來たのでございましようか。
  99. 澁江新一

    事務局員澁江新一君) これは実は我々の手許に入つております資料は、大体外務省から出た資料が多いのでございます。それによりますと、いずれも非常に成功しておることばかり書いてあります。併しながら実際よく調べて見ますと、毎年変つておるのでございます。只今私が御説明申上げましたように、保險料の問題についても、被保險者範囲についても、一年か二年でがらりがらり変るのでございます。それで最初の方に書いて置きましたいわゆる変遷とか変貌とかいう文字を使つて説明申上げたのでございます。ただ資料によりますと、いずれも大成功のうちに終つておるようなことばかりが報告されてま凍ことが、我々の今回取りました材料になつております。まだ眞相を調べるというところまで行つておりません。
  100. 塚本重藏

    委員長塚本重藏君) 一應質疑をこの程度に止めて置きまして、本日はこれを以て散会いたしたいと思います。明日は先に申上げましたように、諸外國における社会保障制定の現況只今我々の方で調べて貰つたものについて一應説明を聽きましたが、更にこれらの問題についての権威者である厚生省内野仙一郎さんに來て頂いてお話を聽くことにいたしたいと思います。明日は午前十時として本日はこれで散会いたします。    午後三智四十一分散会  出席者は左の通り。    委員長     塚本 重藏君    理事            今泉 政喜君            谷口弥三郎君    委員            中平常太郎君            中山 壽彦君            紅露 みつ君            井上なつゑ君            小杉 イ子君            穗積眞六郎君    常任委員会專門    員       草間 弘司君   事務局側    部     員 澁江 新一君    部     員 林  朝門君