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1948-12-06 第4回国会 衆議院 予算委員会公聴会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十三年十二月六日(月曜日)     午前十時四十二分開議  出席委員    委員長 上林山榮吉君    理事 苫米地英俊君 理事 宮幡  靖君    理事 竹谷源太郎君 理事 田中源三郎君    理事 今井  耕君 理事 大原 博夫君       大内 一郎君    尾崎 末吉君       仲内 憲治君    西村 久之君       平島 良一君    本間 俊一君       松浦  榮君    森  直次君       勝間田清一君    川島 金次君       田中織之進君    松永 義雄君       松原喜之次君    山崎 道子君       川崎 秀二君    後藤 悦治君       中曽根康弘君   長野右ヱ門君       長野 長廣君    小枝 一雄君       叶   凸君    黒田 寿男君       世耕 弘一君    高倉 定助君       野坂 參三君  出席公述人       清水 愼三君    加藤 閲男君       南  磐男君    高見 重義君       吉阪 俊藏君  委員外出席者         專  門  員 芹澤 彪衞君         專  門  員 小竹 豊治君     ————————————— 本日の公聽会意見を聞いた事件  昭和二十三年度追加予算について     —————————————
  2. 上林山榮吉

    ○上林山委員長 これより予算委員会公聽会を開会いたします。  さき公述人の選定に関しては委員長に御一任を願つておりましたが、理事諸君とも御協議の上公述人を選定いたしました。ここに公述人諸君を御披露いたします。まず学識経驗者として慶應大学講師永田清君、民間労組として総同盟清水愼三君官業労組のうち、現業は國鉄加藤閲男君、非現業は全官公労の南磐男君、商工業代表として三樹樹三君、経営者代表として高見重義君、以上六名を御紹介申し上げます。  この際公述人諸君にごあいさつを申し上げます。本日は御多用中のところ当委員会公聽会に御出席くださいまして、委員長として厚くお礼を申し上げます。御承知の通り、ただいま本委員会において審査中の追加予算は、官公吏給與改善費災害復旧費等、現下における緊急の費目を含んでおります予算でありまして、今次國会における最も重要なる案件であります。公述人各位におかれては、おのおのその立場より、腹藏なく御意見の開陳を願いたいと思います。公述の時間は一人三十分程度とし、公述の後に委員諸君より質疑があることと思いますが、これに対しても忌憚なくお答え願いたいと思います。  なお念のために申し上げますが、衆議院規則の定めるところによりまして、公述人発言しようとするときは、委員長の許可を得ることになつております。  次に公述人発言は、その意見を聞こうとする事件範囲を越えてはならないのであります。また委員公述人に対して質疑をすることはできますが、公述人委員質疑することはできません。以上お含み置きを願います。  次に公述人諸君にお願いいたしますが、発言劈頭に職業または所属團体並びに御氏名を言つていただきます。  それではこれより委員会において定めました順序によりまして、清水愼三君より御意見発表を願います。公述人清水愼三君
  3. 清水愼三

    清水公述人 私は労働組合同盟清水愼三であります。  第四國会に提出されましたこの昭和二十三年度追加予算に対しましては、労働組合同盟といたしましては、結論としてこのような予算は即刻これを返上申し上げ、ただちに根本的に編成し直して、全勤労大衆の前に國会を通じて再提出されんことを要求いたしたいのであります。  その理由は、第一に國家公務員法によりまして官公廳從業員諸君からは、團体交渉権爭議権は剥奪されました。しかもこの予算では、官公吏諸君の生活を保障するどころか、五千三百三十円ベースという、食えない賃金を投げ與えておるからであります。  第二は、このことはマツカーサー元帥の書簡に対する政府のサボタージユとも考えられるからであります。元帥政府に対しまして、政府職員の福祉並びに利益のために、十分な保護の手段を講じなければならないことを指摘されておるのであります。民間産業労働者給與が、九月の総理廳統計から見ましても、すでに六千五百七十円の平均を示し、しかもこれでなお家計赤字は解消していないという実情でありますのに、公務員法の制約を受ける官公吏諸君が、五千三百三十円ベースを十一月前から與えられるというのでは、元帥の言われるように、官公吏威嚴と、権威と、永続性などを示すわけには参らないのであります。  第三に財政收入の面におきまして、結局勤労大衆負担過重となることが見え透いておるからであります。つまり官公吏給與や、重要産業労働者給與をほんの申訳程度に上げるため、一般勤労大衆から直接税の形でしぼり上げようとしておるからであります。  第四に経済原則をたてに、低賃金政策を強行し、勤労大衆の徹底的な犧牲の上に、資本再建を急ごうとする底意が見え透いておるからであります。しかもなお反対金融資本に対しましては、軍事公債利拂いが、今なお予算面を徘徊しておる事実を見せつけられるからであります。私はこれらの諸点を追加予算收支両面にわたりまして若干具体的に指摘して行きたいと思います。  まず官公吏給與ベースの問題であります。われわれ労働組合同盟といたしましては、かねてから官公廳從業員諸君給與に対しましては、一貫した主張を堅持して参つているのであります。それは官公吏の全國平均給與は、民間の全産業平均賃金から、特殊な鉱山関係坑内夫の全國平均賃金を差引いたものを基礎として決定さるべきであるという主張であります。つまり官公廳民間を通じ、同一價値労働、同一賃金原則を立てて行きたいという主張であります。この主張から官公吏の十一月分の平均給與を算定いたしますと、七千二百六十円となります。從つて追加予算の單價としては、七千三百円ベース要求したいのであります。七月以降の差額についても同じようなアイデアで算定しまして、予算に計上されることを期待しているものであります。しかしながらわれわれの手許では、残念ながらこれを予算化して、確実な財源大衆課税とならない方法で算定し得る段階にまだ至つてはおりません。從つてこの國会では、十二月中に、しかもできるだけ早い時期に、われわれの希望に一番近い予算收支の案が提出されるならば、われわれは附帶條件附で、つまり年が明けたらさらに追加予算を出してもらうということで、賛意を表するほかはないと考えております。今われわれが知らされている範囲では、政府の五千三百三十円案、人事院の六千三百七円案、社会党の六千六百円案などがあります、これらに対して、六千六百円案なら不満はあるにしても、これに賛成いたします。六千三百七円ベースの場合も、官公廳從業員諸君が年の暮を送れないという差迫つた現状から見まして、とりあえず暫定的に、附帶條件をつけて賛成いたしたいと思います。政府案に至りましては、とうていわれわれはこれをのむわけには参りません。政府財源がないと言つていますが、われわれは六千六百円案でも財源は何とか捻出できると聞かされています。経済安定本部は、今年度の國民所得を二兆三千九百三十億と推定しておりますが、そのうち九千三百億が課税対象とされて、あとは放任されているという事実、しかも勤労大衆給與所得は、完全無欠に捕捉されているという事実からみまして、われわれは政府財源がないという逃げ口上を、そのまま承認するというわけには絶対に参らないのであります。またこの政府案では、五千三百三十円ベースを十一月から実施することとして、七月以降の家計赤字についてはこれを無視いたしているのであります。しかもまたその乏しい給與ベースから、給與所得税については、その基礎控除額を引き上げることなく、乏しい中から遠慮なく巻き上げようといたしているのであります。ここにおいてわれわれは政府の五千三百三十円ベースこそ、公務員法によつて團体交渉権爭議権を剥奪された官公吏諸君に、とうてい食えない低賃金を押しつけ、これを橋頭堡として低賃金政策を全経済分野に押し廣げ勤労大衆犠牲の上に、資本家的再建方式を押し進めんとする階級的な底意が、現政府によつて端的に表現されたものと解せざるを得ません。この意味において私どもは、この給與予算に対して断然反対いたすものであります。  次に、その他の歳出面に移ります。價格調整費につきましては、経済原則の問題と関連いたします関係上、最後に触れることといたしまして、そのほかの歳出面に移ります。その他の歳出面として何よりも感心できないのは、國債費二十四億であります。軍事公債の問題は、終戰以來たびたび言い古されております。從つて今ここであれこれを議論する必要はなく、労働者階級はすでに三年前からその打切りを主張して参つたのであります。現在懸案中の各種重要産業賃金問題のうち、幾つかが十億内外の補給金をめぐつて團体交渉に乘り得るかどうかの問題に立つていることを思うとき、國債費二十四億はわれわれとしてとうてい看過し得ないものを感ぜざるを得ないのであります。災害復旧費につきましては、われわれもその重要性を十分に認識するものでありまして、当初百億と傳えられたこの費用が、六十億となつて予算面に現われておりますが、一体これでいいのかどうかを迷う次第であります。しかしわれわれは百億とか、六十億とか、そのトータルしか知らされておりません。その仕事の内容、資材の裏づけ、それらを知つて復旧事業の量と質を知らなければ賛否は決せられないのでありますが、この点は政府なり、國会の良心的な措置がこれに加えられることを希望いたすほかはないと思います。  次に歳入面に移ります。この追加予算歳入計画特徴は、財源主要部分大衆課税によつて、そしてそれを直接税の形でしぼり上げようといたしていることであります。租税自然増收歳入全体の六割に達しており、租税收入全体は四百八十億を超えて、全体の七割近くに相なつております。私どもはその総額に別に驚くわけではありません。問題はその内容であります。租税收入のうち、所得税の水増しが庄倒的に多く、その中で賃金所得俸給所得等給與所得にかかるものが六二・五%を占めております。この比率さきに引用いたしました経済安定本部発表の、二十三年度國民所得推計の二兆三千九百三十億の中に占める勤労所得比率三二%と対照いたしてみるとき、労働者関係がいかに大きな犠牲を、支配階級政府から強要されているか、われわれは義憤のほかないのであります。その上に今日までの徴税実績を見ますと、われわれの給與所得税は確実にとられているのに対して、徴税実績は、はなはだ芳ばしくない模樣でありまして、このまま推移するならば、申告納税巨額の未徴收分が予想せられ、それは財政赤字となり、インフレ激化と相なりまして、労働者は重税とインフレの両面から、ますます家計赤字を増すか、それとも労働力の再生産を不可能とするか、いずれかに押しつめられるに違いないのであります。それならば、これから申告納税分に、うんと徴税を強化したらいいということになるでしようが、これも過去の実績から判断いたしますならば、おそらくまじめな農民中小企業者に無茶な重圧を加え、零細な勤労農民をして再生産不能に陷れられ、中小企業の倒産を累増せしめ、失業者を増大させる傾向が大きいと言わなければなりません。私はそこで租税自然増收については、実際の所得に應じて、累進的に確実にとり、大口所得者追求に重点を置き、四百十億の総額は必ず確保していただくこと、次に給與ベースの増加について所得税をかけるときは、勤労所得基礎控除を大幅に上げて、國民所得の実態に應じた課税とすること、第三に、歳入歳出の時期的な調整をとつてインフレの進行を食い止めることを特に要求いたしたいと思います。大口やみ所得の捕捉につきましては、現在通貨措置をとりうる段階でない以上、あまりはでな手段もなかろうと思いますが、徴税機構改善強化徴税技術進歩改良等、地味なことではありましようが、執拗に積み重ねて行けば、必ずや相当成果をあげ得るのではないかと思います。  最後に、價格調整費に関連いたしまして、経済原則の問題に言及いたしたいと思います。この予算では百十億の調整費が計上されており、そのうち労務費にまわる分が四十五億程度と承つております。船舶運営会補助費もこのような性格を持つているのでありますが、この程度では、現在の炭坑労働者、電産、纖維、金属鉱山鉄鋼等方面に現在起つております賃金鬪爭の解決には、はなはだ困難なものがあるのであります。  経済原則の持つ内容につきましては、その原則自体を理論的に見まするならば、資本主義経済である限り、当然な要求と言えましよう。われわれは日本経済の置かれている國際的環境、國内的な諸條件から、今ただちに社会主義を完全に採択せよと主張するものではなく、社会主義への展望もみずからつくりあげながら、目下のところ、資本主義のわくをかけられたまま、経済安定への道をたどろうといたしておるのであります。從つて原則内容自体に正面から激突をはかろうといたしておるのではありません。われわれ労働組合同盟といたしましては、先月の末、内閣官房長官の佐藤さんに会いまして、三原則に関する態度につきまして吉田総理あての申入れを行いました。その内容二つ條件からなるものでありまして、その第一は、三原則を即時に全面的に実施することを避け、三原則完全実施をいつから始めるか、その目標期間を定め、それまでの間、総合的な経済再建計画の線に沿つて傾斜的措置を講じ、必要なる企業は計画的に助成すること。その第二は、これらの措置につきましては、從來のように、官僚及び金融機関から企業経営者の手にゆだねて、放任してしまうことなく、その使途、実施状況、並びに成果を逐一監査するための特殊の機関を設けまして、労働者代表を加え、重要産業別に設置するという二箇條であります。これに対しまして、官房長官個人意見を閣議に持ち出された結果においても、われわれの要求した第一條件は了解するが、第二條件は承認できないということでありました。われわれは政府のその回答を聞きまして、資本家階級利益と合致する点だけは賛成だが、労働者の権利を伸張するおそれのあるようなことは、かりに建設的な協力といえども、ごめんだという意味だと解しまして、吉田内閣性格のことゆえ、その程度のことだろうと思つて帰つたわけでありますが、われわれといたしまして、われわれの態度を放棄したのではありません。生産の実力的な担当者としての労働者階級の建設的な能力の組織化をはかり、その上に第二段の対策を考究しようと考えておるのであります。  インフレーシヨン過小生産と、この二つ交互作用という敗戰後経済特徴はいまだ解消するに至つておりません。戰爭と敗戰による経済物的基盤の破壊、損耗も回復せず、今後の経済構造産業バランス基礎も確立せられていない現在、三原則を嚴重に実施するならば、それは安定恐慌激化を導き、資本陣営をも傷つけ、労働者階級に決定的な犠牲を強要することになるばかりではなく、生産資本の蓄積がなお行われていない現在では、民族経済の自主的な再建にも多大の困難を來すものと考えられるのであります。  私どもは三原則が完全に実施される時期と、インフレーシヨン最終点の時期と、経済再建が本格的な軌道に乘る時期を一致せしめたいと考えております。それまでは赤字金融も、赤字補填も、総合計画の一環として、段階的に減少させて行くという方策がとられることを期待いたします。予算面におきましても、そういう意味のものとして、全般計画との関連を明らかにして、討議されることを切望する次第であります。  私共は三原則を良心的に取扱つて参りました。一般に言われておりますように、賃金統制方式を行政的、立法的に強行し得なかつたことから、金融面から押しつけるのだという構想では、しよせん日本経済は買弁的な性格資本主義となるほかはなく、そのような意味資本彈圧方式としての三原則ならば、われわれはまつこうから反対し、激突するほかはありません。おそらく組織大衆は、自然発生的にもそうなる可能性を持つているものと思います。價格調整費の出し方が、この追加予算のようにまつたくの場当りで、この程度賃金要求にまわすからがまんしろとか、それ以上は都合のいい財源がないというような形で提出されましたならば、私どもはまじめに論議するわけには参らないのであります。  以上私どもはこの追加予算全体の性格に対して賛成できない旨を申し上げまして、私の公述を終りたいと思います。
  4. 上林山榮吉

    ○上林山委員長 この際御質疑はございませんか。
  5. 田中織之進

    田中(織)委員 公述人にお伺いしたいと思いますが、本予算に盛られた給與ベースの五千三百三十円に絶対反対だという総同盟立場は了解したのであります。かりにまた社会党の六千六百円案については、確実なる財源を持つておるという意味において、最低線としてこれを支持するという御発言も、われわれ非常に心強く思うのでございますが、現実の問題といたしまして、給與ベースの問題について、政府の本予算盛つた五千三百三十円と、公務員法の改正と不可分の関係において、人事委員会が勧告いたしております六千三百七円案と二つが対立しておる現状におきまして、政府のとり得る最低線といたしまして、六千三百七円の人事委員会案予算化につきまして、総同盟立場において公述人清水君はどういうお考えを持つておるか、伺つておきたいと思います。
  6. 清水愼三

    清水公述人 お答えいたします。ただいま政府の五千三百三十円案と人事院の六千三百七円案と二つが、現実の問題として論議されている状態でありますが、この六千三百七円案に対してこの予算化をどうするか、そういう御質問内容つたと思います。私がさきに申し上げました点では、六千六百円案につきましても財源の見通しがあるということを、社会党方面から伺つていたのであります。從つて六千三百七円案の予算化をどうしたらいいか、そういうような問題につきましては、六千六百円案でしても、十一円から、これを実行して七円に遡及できるという社会党側の御説明でありますならば、六千三百七円案の予算化ということは、これは難事ではないものと、そういうように私ども考えて参りました。六千三百七円案でどの財源をどうふやすか。その具体的なやり方を御質問なさるのでありましたら、私どもといたしましては、これを具体的な計数で今ここではつきり指摘するのには、いささかその用意を欠いているのでありますが、先ほど私が申し上げました、抽象的ではありますが、特に大口所得追求の面におきまして、六千三百七円案くらいの予算化は当然できるものと考えております。具体的な予算化の数字はただいま残念ながら用意いたして來てはおりません。
  7. 尾崎末吉

    尾崎(末)委員 今の問題に関連して清水さんにお伺いいたしたいのであります。この問題はおつしやる通りきわめて重大な問題であります。從つて六千三百七円案、五千三百円案、あるいはお説の通り社会党あたりで六千六百円案、これが可能であるという場合には非常に響きが大きいのであります。かりにそうした優良な案が社会党なりその他にあるといたしましても、一体財源をどこからどういうふうにして求めるのか。そこまで突き詰めてお調べになつていないと、あなた方総同盟のような有力な團体で、さつきお述べになつたような趣旨を述べることは、非常に響きが大きいのではないか。從つてそれに対する責任上、今言つたような財源をどうするか。もつとさかのぼつて申しますと、古いことを攻撃するわけではないが、すでに二月、わずかの財源を得ることにも行き詰まつてしまつて社会党内閣がつぶれた例もあります。こういう問題についてはきわめて的確な財源、その他の方法をお調べになつておくことが必要だと思う。その点について何か、ごく概略でも財源等についてお調べなつたことがあるか。あればざつとしたものでけつこうでありますから伺いたい。
  8. 清水愼三

    清水公述人 六千六百円案に対しては、財源はよく突き詰めておるか、そういう御質問だと思います。それに付随しまして、この前の〇・八月分のときの問題と合せて指摘されたものと思いますが、〇・八月分のときに、芦田内閣ができましたら予算面手続によつて簡單にああいうような結果に終りました。われわれはあれを見ましたときに、財源程度次第では政府の腹のきめ方、財務当局の督励の仕方で百億くらいのことは何とかなるような印象を受けて参つたのであります。そういう点から見まして、自分たち考えているものと、それから社会党発表されたものとの間の財源の差、そういうようなもので非常に巨額の差がありましたならば、その点を当然考えるべきだと思いますが、少々のことでありましたならば、そういう腹構えの問題で相当のところは解決つくものだ、そのくらいの考えは持つております。なおうんと財源がいる問題については、当然相当用意をなさなければなりません。私が最初に、総同盟といたしましては、給與自体として見るならば、七千三百円ベースは妥当だ、こう申しましたが、私どもは良心的に財源の問題を考えて見まして、その予算化につきましてなお自信を持つに至らないのでありまして、そのことをはつきり公述の際にも申し上げまして、その自分自身給與ベース自体に対する建前予算化する実際の実力をわれわれが持つていないという点をはつきりここで申し上げまして、それならばわれわれの考え給與ベースに最も近いものを満たしてくれる具体案があるならば、それにとりあえず賛成いたしますという趣旨を申し述べたのであります。その点でわれわれの主張に一番近い六千六百円案というものが出ておりますから、これならばけつこうだ、そういう建前公述いたしたわけであります。
  9. 尾崎末吉

    尾崎(末)委員 わかりました。
  10. 西村久之

    西村(久)委員 簡單にお尋ねいたします。先ほど前の議会に問題になりました軍事公債利拂いの問題の御意見が出たのでありますが、それは法律がないのでここに軍事公債の利子を拂つて行くという形になつておると思いますが、この点どういうふうな御見解で御反対を述べられたのか、その点を伺いたいと思います。
  11. 清水愼三

    清水公述人 労働組合といたしまして、軍公利拂い問題に対しての態度は、敗戰以來一貫した態度を持つておるのでありますが、ただいまの御質問は、そういう法規的な取扱いを軍公利拂い停止の手続が完了していないから予算に出したのだ、それがなぜ惡いか、そういう御趣旨のように感じたわけであります。私どもがこの予算に対して意見を申し述べますときに、手続上こうなつておるから出しておるのだ、そういうような御意見をそのまま肯定して、ここで考えを申し述べるのでありましたならば、われわれの持つ基本的な要求というものは、ほとんど申し述べる機会もなかろうかと思います。軍事公債利拂い問題に対しまして、われわれが原則的にこのようなものは認めないという態度を、予算委員会公述の席で申したからと言いまして、これがそういう手続関係を知らない言い方だ、そういうような攻撃をなさることは、労働者階級発言に対しまして、はなはだかけひき的なストツプをかけるような感じを持たざるを得ないのであります。私ども國会のかけひきではしろうとであり、無知識でありまして、そのような質疑應答にはあまり大まじめで言う必要はない、そう思うわけであります。
  12. 上林山榮吉

    ○上林山委員長 それではけつこうです。次に公述人高見重義君の公述をお願いいたします。
  13. 高見重義

    高見公述人 経済同友会の幹事をやつております。また貿易委員会委員長をやつておりまして、本職は江商株式会社常務取締役、ほとんど貿易関係の方に実は関係しております。本日の公聽会としてもあるいは私の話がふに落ちないことがあるかとも思うのでありますが、どうかそのおつもりでお聞き願いたい。この予算については実は現内閣の具体的な政策をはつきり承つておりませんし、去る四日の本会議におきますところの総理大臣並びに安本長官の演説を新聞記事で拜承したのでありますが、この面においても実ははつきりした具体的な施策が示されなかつたために、本予算問題を論議するについても、十分私の意見を申し述べられない点がありますが、きよう実は申し述べたいことは、ただこの予算において大体の概略的な意見を申し上げまして、議員諸子の御参考に供したい、こう思うのであります。  まず第一に本追加予算は、予算委員会におきますところの大藏大臣の説明中にもありましたごとく、官公吏の待遇が主軸をなしておる、それにその他の費用を取込んでありますが、要は公務員の給與水準を引上げる点にありますから、一言この点について私見を申し上げたいと思います。現在の官公吏給與というものがきわめて低いということはわれわれ自体としても、おそらく國民全体としても知つておるのでありますが、その低いと同時に、きわめて質が低下しておるということをわれわれは認めておるのであります。事実われわれが官廳へ來ましても、いろいろの点においてきわめてひまな人が多いとか、忙しいときは非常に忙しいのでありますが、有閑人が多分に見受けられる。全体としての機能というものがはつきりとこの面に現われて参らない、いわゆる能率というものが相当局部的に偏在しておるのではなかろうかということを申し上げたい。こう思うのであります。この官公吏給與水準を上げるということは、いわゆる官公吏の失業救済ではないのでありまして、要は官公吏の能率というものをここではつきりとしていただくと同時に、またその生活を保障するということにあるのでありまして、こういう観点から、実は予算をもう少し眞劍に檢討した方がよいのではないかと思うのであります。しかも給與水準の引上げに伴いまして、その他の給與関係予算が、多分にこれに附随して來ることを私は感じたのでありますが、それと言いますのも、現在の官公吏の人員の増加に基因しているのでありまして、できるだけ人的組織というものをはつきりと議員諸君に認識を深めていただいたらどうかということを感ずるのであります。先般の吉田さんの御説明には、行政整理を非常にやかましく言うておるのでありますが、一体行政整理は給與水準と相まつてどういう方向でおやりになるのか、われわれとしましても、この給與水準の増加とともに、はつきりやつていただきたい。どこまで水準を高め、そしてどの点まで行政整理をなさるのか。この行政整理の程度給與水準の増加ということは、実は非常に関連性が強いのでありまして、この点を私は承りたい。この予算審議におきましては議員諸君におかれましても、十分眞劍な御考慮を拂つていただきたいということを、はつきり申し上げておきたいのであります。  それから第二として、給與水準において人事委員会におきましては六千三百七円、政府側におかれましては五千三百三十円というように、いろいろ異なつた論拠に計算されているのでありますが、現在の生活費におきましたならば、おそらく六千三百七円も不足であろうとわれわれは感ずるのであります。ただその額をどういうふうに捻出するかということになるために、やむなく五千三百円ベース政府側は企図されたと思うのでありますが、ただわれわれとして一言この点について申し上げたいことは、もう少し個々の給與について何かくふうがないものか。全般的な五千三百円ベースをすべての者にあてはめるということ以外に、いわゆる能率的な、あるいは個々の面において訂正する要はなかろうか。たとえて申しますならば、將來非常な行政整理をおやりになるというような面におきましては、増加された給與水準も一應保留をするとか、また何かの方式でひとつこれを將來行政整理に充てる意味において御考慮願いたいということを感ずるのであります。全面的な給與水準の増加ということは、將來また行政整理におきまして非常に摩擦を起すのではないだろうか、何がしかそういう面において行政整理また給與水準を庄縮されるということをお考えなつたらいかがかと私は感ずるのであります。それから両者とも同じでありますが、この基準案の根拠に今日まで家族給與を加えるという建前があるのでありまして、これはいわゆる國家の公務員の給與体制としては、あるいはやむを得ないかとも存ぜられる節がないではないのでありますが、これは民間賃金にきわめて大きな影響を及ぼして來るということを私としましては申し上げたいのであります。この家族手当というものを給與の本給の中に繰入れますと、能率というものが相当無視されるということを、はつきり申し上げたい。その人の能率によつてきめて行かずに、扶養家族の数に應じて本給を決定されるということは、國家の今後の経営におきましても、また民間業者の企業の能率においても、相当ハンデイがつくということを私は申し上げたいのであります。この賃金体系は、要は生活の保障と能率の向上という二点にあるのでありまして、單なる生活の基準から見ました本給増加ということだけでは、私としてはこの給與水準については一應考慮の余地がある、もう少し能率を加味された本給を考えていただきたいということをお願い申し上げる次第であります。どうか扶養手当を本給に繰入れることにつきましてはいかに民間企業に影響するかということを考慮せられて、議員諸子におかれましては御審議願いたいということを再三繰返したいのであります。  それから三番目は政府が今回追加予算を計上されるにあたりまして、いわゆる莫大なる財源を要するとき、その調達としまして運賃とか通信料金とかの値上げをせず、また物價改訂などによる自然増收にもよらず、また赤字公債によらないで、大部分を一般物價並びに生計費に應じた範囲内における租税自然増收というところに眼をつけられたことは、われわれ民間人としましてもまた経営者團体としても、ほんとうにいい方法であるということを考えまして、今回の予算追加については、全面的に御賛成申し上げたいと思うのであります。ただ一言租税自然増收につきましては、おそらく議員諸子も十分御承知のことと思うのですが、この自然増收の調達は、適宜にまた嚴格にやつていただきたい。政府所得税の申告とかあるいは法人税の重課ということに重きを置いておられるのですが、單なる所得税とか法人税ということでなしに、またその他におきましても、できるだけいわゆる正直者がばかを見ないように極力操作されまして、最も公平な、また最も的確な徴税方法考えていただきたいということを申し上げるのであります。徴税方法としまして、今年の一月から三月までにおけるいわゆる徴税強行の経驗から考えましても、その間に金融が非常に引締つておる。日本の経済インフレの高進とともに、さらに日銀の金融を引締める点において、実は相当な金詰まりになつた。この給與水準の増加と相まちまして、徴税の強行とかいろいろの面におきまして、相当私としましては金詰まりが強度に來るのではなかろうかということを憂うるものであります。これがために生産の増強はもちろん、あるいはまた最も現在の國家経済復興に関係を持つておる輸出というものに対して、相当な重圧を加えておるのではなかろうかと、私は非常に心配しておるのであります。今回の追加予算に賛成するにあたりまして、十分その点に責任を持つていただかなければ、單なる予算通過のためのいろいろな御説明があり、いろんな参考資料をいただきましても、かえつてあぶはちとらずになる。せつかく追加予算を増加しても日本の生産は増強されず、また最も大きなところの輸出が減退いたすことになると、日本の將來はまことに案ぜられることになるのでありまして、議員諸子におかれましては、この点十分御参考になつて、この予算を審議していただきたいと思うのであります。  なおここに一言金融面の政策について御参考に申し上げたいと思うのであります。現在國内の行政面においては相当眞劍にやつていらつしやいますが、金融政策というものがきわめて遅々として進まず、最も的確なるべき金融政策があるいは非常に間違つた方向に行つているのではなかろうか。そこに現在の復興産業あるいは輸出産業というものについて、現在の議会がもう少し強力に御配慮願いたい、こういうことを申し上げたいと思うのであります。この点については、われわれ輸出業者あるいは國内産業業者は十分御説明申し上げたい。また御説明申し上げるところの資料もありますので、この点については眞劍に諸氏を説得することもできると思うのであります。支拂うだけは簡單に支拂つて行くのみでなく、跡始末による金融の不足というものを十分御研究になつていただきまして、万全の策をもつて國家の経済を運用していただきたいと思うのであります。  それから追加といたしまして申し上げたいのでありますが、この給與基準の改訂とともに、経済安定政策というものを早急に実施して行かなければならぬと思います。物價の高騰によるはね上りを受けて、またすぐに給與水準の改訂を要するということになりまして、だれしも言うところの物價と賃金のリレー競爭を繰返しておりましたならば、何回給與水準を増加いたしましても役に立たない。しかも近く総選挙は予定されておるのでありまするが、これはひとつじつくり考えてからやろうじやないかということでは、またただちに物價と賃金の競爭が出て來る。だから給與水準の改訂とともに、経済安定というものを同時にやつて行かないといけないので、一應給與水準を上げたが、安定政策は議会を解散して、また新しい國会になつてからボツボツやろうじやないかということになつて來ますと、時間的ずれのために、物價高騰やいろいろのことで摩擦ができて來ますので、早く安定政策というものを実施していただきたいということをお願い申すのであります。大体以上をもつて私のお話を終りたいと思います。
  14. 上林山榮吉

    ○上林山委員長 高見公述人に御質疑はありませんか。
  15. 勝間田清一

    ○勝間田委員 一つだけお尋ねをいたしたいのであります。高見さんのお話を聞いておりますると、官吏の行政整理をかなり御希望されておられるようであります。なお現在の給與の問題と結びつけて、現在の給與には能率給の面がはつきり取入れられておらない、その点をぜひやつてほしいというお話のように承つたのでありますが、現在の政府の出しておる給與案、人事院の出しておる給與案を見ますと、御存じの通りに、東京都の栄養量の調査からしまして、それを現在実際に購入する價格として二千四百七十円というものを出しておる。それを出すのに、いわゆる生活水準としてどうしてもこれだけはなければならないというものを若干それに加えております。それになお税金と共済関係の金を加えたものが、この数字になつておるようであります。これを見ますと、現在の最低の生活基準、これも私は必ずしも承知はできないのでありますけれども、この中を見ますると、ほとんど絶対必要量というものが加わつておるわけであります。しかも扶養家族の方の給與を見ますと、同じようにやはり現在配給せられる栄養量というものを確保するために、早く言えば配給の物をもらうに必要な費用というものだけが加わつておるわけであります。そうしてあるものは六千三百七円、あるものは五千三百円という形になつておるのでありまするから、この中にいわゆる能率給というものを取入れることができるとお考えになつておるかどうか。早くいえば、この給與は能率給を取入れる可能性を持つた給料であると考えられるか。能率給をもし取入れるとすれば、この上に若干プラスをしなければ能率給の思想というものは生れて來ないのではないか。この点どうお考えになりますか、御質問いたしたいのであります。
  16. 高見重義

    高見公述人 実は最低生活の保障というものは、おそらくマル公によつて保障されることを私は意味すると思うのでありますが、現在の給與ではマル公生活ができない。また先ほどあなたがおつしやつたように、今の賃金水準におきましては、その最低生活すらも保障し得ない。そこに能率給を加味する余地があるかということの御質問であろうと思うのでありますが、これはちようど鶏と卵のようなケースになるのではないかと思います。能率を認めない、單なる生活だけを認めた給與水準を置きますると、どんな働きをしても、またどんな怠慢をしても、何らそこに自分に対する罰則もなければ、あるいは自分に対する報酬もないというような考えになつて來るのは、私は人情であろうと思うのであります。ただそのために金を出すというようなことは、一應現在の國家財政から見まして、むずかしかろうと思いますけれども、われわれとしましては、極力そういう面を加味した賃金ベースをつくつて行かなければならぬのではなかろうかということを感ずるのであります。だから今の五千三百円台がどうしても能率給を加味しないというようなことでありますならば、いわゆる國家支出の範囲内において、能率給を加味された賃金ベースをつくつて行かれたらどうかということを感ずるのであります。
  17. 勝間田清一

    ○勝間田委員 これ以上少しふやしてもよろしいとおつしやるのですか。
  18. 高見重義

    高見公述人 われわれとしましてはそうです。しかし最低ベース以外にできないということであれば、もう少し最低ベース考える余地がなかろうかということを、私は申し上げたいと思います。
  19. 上林山榮吉

    ○上林山委員長 けつこうです。次は公述人加藤閲男君公述をお願いいたします。
  20. 加藤閲男

    加藤公述人 國鉄労働組合中央執行委員長加藤でございます。御指名によりまして、ただいまから今次議会におきまして御決定をいただくことになつております追加予算案のうち、私は主として公務員の給與ベースにつきまして、國鉄労働組合を代表いたしまして意見を申し述べることにいたします。実は今朝出勤いたしましたところが、机の上に、この公聽会に出るようにというようなことが書いてございまして、初めて承知いたしましたような次第でございますので、満足な公述ができるかどうか、すこぶる疑問に思うものでございますが、一應考えておりますことを発表さしていただきます。  私ども官公廳労働組合の組合員二百六十万は一致いたしまして、四月以降の給與ベースを働けるだけの賃金として、手取り五千二百円を要求いたしました。そうしてそれが実質賃金であるために、六條件をつけたのでございます。ところが時の芦田内閣が、その條件は政治問題であるとしてその撤回を迫り、一方的に六月に物價改訂を断行いたしました。そこで私どもはこの物價改訂に対應するわれわれの賃金はいかにあるべきかと、さらに檢討いたしました結果、七月以降の賃金は手取り七千三百円、税込みで八千三百円であるべし、かように考えまして、なお四月以降の賃金不足のため、生活補給金として二・八箇月分をあわせて要求いたしたのでございます。この生活補給金は、十二月まで生活費の赤字を引延ばして参りますと、三千七百円ベースの八・五箇月分と相なるのでございます。しかるに政府は、六月以降官公吏給與ベースを一方的に二千九百二十円から三千七百円に修正いたしました以外は、今日まで何らの措置をいたしておりません。このことは私どもはなはだ了解に苦しむところでございます。國鉄労働組合におきましては、政府のこの怠慢について言いようのない憤激を感じたのでございまするが、わが國経済再建の動脈である國鉄の輸送の重要性を考慮いたしまするがゆえに、あえて矯激な行為に出ることを避け、平和裡に問題の解決をはかるため、可能なる限りの努力を続けて参りました。この間のいろいろの事情につきましては、長くなりまするので省略いたしまして、僭越ではございまするが、私ども労働組合として、関係方面との折衝の結論を二、三申し上げておきたいのでございます。  マツカーサー元帥に対しまして、七千三百円及び二・八箇月の生活補給金政府要求すると同時に、これが実現について助力を與えられるよう懇請書を提出いたしました。元帥からは、諸君の提出せられた賃金は、司令部の賃金策定にあたつて、重要な参考資料となつた。要求の線に沿つて十分努力を続けるであろう。今後もかかる資料の提出を希望する、かような回答をいただいております。また公務員制度課長のブレーン・フーヴアー氏からは公務員法によつて諸君は十分な保護を受けらるることになろう。かように九月末同氏が帰米前に言明をいたしております。また金融統制課長のリード氏からは十一月五日に、今回の賃金ベースは十一月八日に発表することになろう。政府はそのベースによつてただちに支給することができる、こういうふうに言つておるから、諸君はそこからただちに支給を受けられたらよろしかろう、かように言われておるのであります。このとき北海道地方の石炭代及び寒冷地方の特別手当も十分考慮せらるるとの確言を得ておつたのでございます。私ども國会におきまする皆樣方の御審議が、当然公務員法とともに臨時國会においてベースを決定していただけるものと、実は確信しておつたのでありまするが、臨時國会においては、ついに公務員法のみの審議に終了いたしました。しかもこれを私どもから申しまするならば、党利党略のための應酬がきわめて多かつたやに見受けられることは、はなはだ残念でございます。しかしながら私どもは過去の皆樣方に御注文を申し上げても詮のないことと存じまするので、申し上げませんが、私どもはこの國家公務員法を通過せしめられました皆樣方の責任において、私ども給與ベースを、ただちにわれわれの納得の行くように決定していただいて、二百六十万組合員の要望にこたえていただきたい、かように希望するものでございます。私はフーヴアー氏並びにリード氏の言によりまして、今日人事院と内閣との間におよそ一千円程度の差異のある賃金ベースが出されるであろうというような想像をいたしたこともございます。しかしながら私どもは、そのいずれにも不満なのであります。それは私どもの眞摯な要求でありますところの七千三百円ベースにつきまして、人事院、内閣ともに何ら一考をしておられないということを指摘したいのであります。  次に今回の予算案の内容につきまして、一、二檢討をいたしてみたいと思います。  まず本給問題について意見を申し述べます。人事院も内閣もともに、七月における本給につきましては、二千四百七十円をもつて独身者成年男子の最低基準といたしております。特に申し上げたいのは、職階の四級一号の相当職というのは、高小卒業後六年、中学卒業後五年、專門学校卒業後一年以上の経驗者でなければならないということになるのでございます。七月現在の乙地におけるCPSの独身者一人の生活費換算であつても三千円以上となつております。これで食える賃金と言えるでありましようか。かかる算定の基礎に立つております六千三百七円でありますがゆえに、私どもといたしましてはこれに承服いたしかねるのであります。政府は強く財源難を主張しておられるようでありますが、資本家並びにやみ利得を擁護せんとするから財源難に陷るのでありまして、これらの面における徴税方法を改善する一方、取引高税にかわる酒税、あるいは不正物資の摘発、あるいは綿布税等、小なりといえども財源國会議員の賢明なる皆樣方によつて発見していただけるのではないか。私どもはかように考えております。  次に家族手当について申し上げます。今回人事院案は、本人給は平均三〇%の引上げにとどめまして、家族給を大幅に引上げております。現在のわが國の経済事情としては一應やむを得ないと考えられる節もありますが、このことは一見家族持ちの労働者を救うやに見せておるのでありますが、実は低賃金政策ということが言えるのであります。平均以下の家族を有する者及び独身者の勤労意欲を低下することとなりまして、先ほど御指摘のございましたように、私も賛成することはできません。私家族手当についての制度を若干調べてみましたが、特に英國の経済学者のリチヤードソン氏が言つておりますことに非常な共鳴を感じたのでございます。同氏は資本家的な経済学者であると聞いておりますが、家族手当制度を採用しても、賃金支拂いの総額の全体の上では何ら変化することなく、單に再分配が行われるだけである。それによれば平均以上の家族を有する労働者の生活源泉が、平均以下の家族を有する労働者の負担において増進されるのである。しかるに家族手当制度は、往々にして実質賃金の減少低下に対する手段として採用されておる。かかる場合においては、配分方法の変化は、賃金の減少を被扶養者の少い労働者に集中することによつて、実質賃金低下の惡影響を緩和するのに役立つものである。かように最低賃金論において申し述べております。すなわち家族手当制度は、はなはだしく低賃金の場合に、本人給のみではその家族の扶養ができないので、実は独身者の上前をはね、その分を家族持ちにまわして、基本的な低賃金制度の矛盾を合理化しようとする制度であります。表現をかえれば、社会的に見て平均的な労働力の價値を、價値以下に引下げてかような措置をとつたものであると言えるのであります。從つてわれわれは、当然本人給のみによつて生活ができる賃金要求することを建前といたします。また能率低下防止のためにも、人事院案の家族手当をある程度減じ、これを下級職員の給與の引上げのために割り振られることを希望するものであります。  次に地域給について意見を申し述べます。特地五割、甲地一割ときめた人事院案よりも、政府側の四割を最高とし、五分刻みにした九分類の方をとるものであります。この理由は、後者が曲りなりにも組合側の持たれました地域給審議会の今日までの希望をいれましてその答申を尊重しておるからでございます。参考のために、現行地域区分によりますれば官吏——これは地方公務員を除いております——の分布状態を私ども調べたところによりますと、特地におる官吏が約二十五万人で全体の一六%に当ります。甲地におる者が約二十二万人で全体の一四%に当つております。乙地におる者が約六十三万人で全体の四一%になつております。丙地におる者が約四十四万人で二・八五%になつております。人事院のいうがごとく乙地域の地域給を撤廃いたしますれば、官吏の四一%が実質的に一割の賃金引下げとなるということが言えると思うのでございます。  以上いろいろ申し上げましたが、最惡の場合におきましても、次の点は確保していただくことを特にお願い申し上げる次第でございます。第一、ベースはやむを得ざる場合は人事院の勧告した六千三百円案をとること。第二、家族給は人事院案と内閣案との中間程度とし、妻及び長子は同一額とし、多数逓減とする方向をとること。第三、地域給についてはおおむね現行程度とすること。第四、家族給及び地域給の減額によつて生じた金額は、下級從業員の本俸の増加に振り向けること。第五、実施を十一月とせず、算定が七月でございますので、当然七月に遡及して支給していただきたいということ。第六、北海道石炭代及び寒冷地給はわく外とし、前内閣時代に立案した法律案をすみやかに通過の上支拂いするように措置していただきたいこと。第七、本ベース改訂によつて首切り行政整理を行わないこと。第八、このベースによる差額の支給は十二月十五日までに行つていただきたいこと。第九、勤労所得税の免税点を大幅に引上げること。これは昨年この措置がなされなかつたために非常に困つた実例もございますので、特にお願いをしたいと考えております。第十、税金の年末調整は明年三月三十一日までに終了するよう分割拂いの措置を講じていただきたいこと。  以上きわめて大ざつぱに申し述べましたが、何とぞ働く者のために十分御考慮くださいまして御審議いただきますようお願い申し上げまして、私の公述を終らしていただきます。
  21. 上林山榮吉

    ○上林山委員長 加藤公述人に対して御質疑はございませんか。
  22. 田中源三郎

    田中(源)委員 加藤さん、これはあなたにお願いするのですが、今の御意見よくわかりました。それでなしに人事委員会の六千三百七円のベースと、現在の政府がここに提出しておる五千三百三十円というベースの、あなた個人的でよろしい、執行委員長という立場でなくて、個人的で結構ですから、この二つの率直なるあなたの批判をここでしてもらいたい。私はそれをひとつあなたにお願いしたいと思います。
  23. 加藤閲男

    加藤公述人 個人的にというお話でございましたので申し上げますが、人事委員会の六千三百七円ベースを策定いたしましたのは、人事委員会の俸給課長の蓮見君であろうと考えます。蓮見君と私とは本年一月二千九百二十円策定の際に、ともに給與委員としてこの立案にあずかりました。その当時の考え方といたしまして、人事委員会が今回大幅に家族給を引上げましたということについては、俸給課長はやむを得ざる措置である。これをくずす場合にはこの体系がくずれるという主張はまつたく了解せられるのでございまするが、一月に家族給をきめます場合には、本俸の割合に家族給、地域給はふやさない、本俸をできるだけふやすということが賃金の本來の姿であろうということをお互いに話合いました。その人事委員会が今回地域給、家族給に大幅に重点を置いて來られたという傾向は、私ども賛成をいたしかねる。從いまして先ほど申し上げました——詳しくは申し上げませんでしたが、本俸の二千四百七十円が最低給であるといたしましたのに対して、大藏省の今井給與局長がこれに若干の水増しをつけまして、二千八百三十円かにいたしておりますが、この最低給の考え方につきましては、内閣側の意見に賛成をするものでございます。しかしながらベースそのもの自体には両者に承服できない。從いまして私どもといたしましては独身者が——ことに國鉄のように独身者が多数おりまして低賃金にあります場合には、その犧牲において世帶持ちを救うという、先ほども公述いたしました観念では、非常に若い者の勤労意欲がなくなるという点から反対をしております。しかしながら人事委員会の案は一貫した科学的調査に基く最低賃金制でございまするので、これはむげには反対はできない。しかし本法の考え方につきましては内閣側をとり、でき得れば私どもは本法については内閣側に賛成し、人事委員会の案のごとく引下げるということは思つておりませんので、家族給と同樣な方法で本俸を引上げる措置をお願いしておるのでございまして、やむを得ざる場合には家族給を減額して、これを本俸にまわしていただきたいというふうに考えておるのでございます。それから地域給につきましては特地五割、甲地一割と、一應人事委員会考えておりまするが、おそらく法律案といたしましては当面は現行の、特地については三割、甲地について一割を支給し、これは地域給審議会の答申をまつて、勧告の線に沿つてつてもらいたい、こういう御主張の法律案と相なるのじやないかと考えておりまするが、この行政区画による地域区分という場合には、きわめてデリケートな問題もございます。私ども國鉄、日教組、全逓のように地方にたくさん——先ほども比率をあげましたが、乙地四〇%あるいは両地に三〇%近い率を持つておりますところでは、特、甲地に地域給が集まるということにつきまして、ただいまの物價指数が特地がおおむね安定——とは申しませんが、一定の水準になつておりまして、乙、丙地がこれに追從して上つて來るという傾向から言つて、必ずしも五割、一割は妥当ではなかろう、かように考えておるものでございます。
  24. 本間俊一

    ○本間委員 具体的なお話を承つてたいへん参考になつたのですが、これは質問というかた苦しいことでもないのですか、加藤さんにちよつとお伺いいたしたいのです。人事委員会給與準則というようなものを見ますと、官給品について何かとりきめのようなものがあるようですが、あの関係ではどうなつておるのですか、その点もし人事委員会の方と御交渉なすつたり、あるいは話題になつたことがありますれば、その点を御説明願いたいと思います。
  25. 加藤閲男

    加藤公述人 今の御質問には、遺憾ながらお答えする材料を持つておりません。人事委員会が、実質賃金であるから、実物給與の面におきましてはこれを引くということが建前だというような説明をいたしておるようでございますけれども、実はそれが金銭に換算いたしまして、われわれ官吏はいかほどの実物給與を受けておるか、勘定いたしたこともございませんし、実質的にはそう他からいろいろ非難されるほどいただいてもおりません。実は作業用の軍手であるとか、あるいはせつけんであるとかいうような物は、私ども汚損職におります者は、今でもきわめて微々たるものがございます。御承知のごとく國鉄のせつけんよこせ、手袋よこせという運動が主とした地方に行われる状態から、これらについて人事委員会とお話合いをしたことはございません。
  26. 野坂參三

    ○野坂委員 二、三お伺いしたいと思いますが、第一は行政整理の問題ですけれども、これは加藤公述人自身の経驗でよいと思いますが、正確な統計とか、そういう技術はおそらく困難と思いますが、今政府でも行政整理といいますけれども國鉄関係で見て行政整理の余地がどのくらいあるか、行政整理という意味は、私の言うのはつまり人員淘汰という意味でありますが、これについて簡單にお伺いします。
  27. 加藤閲男

    加藤公述人 國鉄につきましては、常に人員整理の余地があるかのごとく皆樣方お考えであるかもしれませんけれども、これはしばしば私どもが申し上げておりまする通り、人員整理の余地は毛頭ないものと考えております。戰前の人員二十万に比べまして、現行人員が六十万であることが御納得行きかねるというような点があるかと思いまするけれども、実はこの六十万の人員につきまして詳しく調べて見ますと、占領軍関係の業務に從事いたしております者が五万人ほどでございます。それから社会情勢を反映いたしまして、鉄道公安官というものが一万五千人、これらは戰前には全然なかつた職名でございます。それから工機部、線路その他の補修関係の職員が約二十万程度ふえております。これは御案内の通り資材がございませんために、たとえば昔でございましたならば、一つの線路のくぎを打つにいたしましても、新品を持つて來て打つ。從いましてその所要人員は一名で足りたのでございますけれども、ただいまはくぎを拔いて、これを鍛冶屋にまわして直して打つ。この間の経費は三倍程度になるのは当然でございます。そういう面におきまして、戰災復興を考えて行きます場合には、人員整理の余地は全然ないと考えるのでございます。ただ今野坂委員から御質問を受けました、目下人員整理が若干行われておるではないかという御疑念につきましては、高齡者の中で、どうしても老齡その職に耐えないから退職をしたいという希望者がございましても、退職金制度が老後を安定するだけのものがございませんので、退職もできずに困つておられた方が若干ございました。これについて本年度特別措置をいたしましてはなはだ微弱なものではございましたが、この際退職する者については、おおむね月收の三箇月程度を平常の退職金よりもふやして渡す、これはあくまで希望退職に限定をいたしまして、若干退職された方があるのは事実でございまするが、これは御本人自体の意思によるものでございまして、行政整理ということではない。特に私どもが第七項に入れました理由は、今次吉田内閣性格から考えまして、当然世間にも若干の官公吏の出血が流布されておりまするので、これらについて一應の組合側の所信を申し述べたわけでございます。
  28. 野坂參三

    ○野坂委員 全官公としては給與ベースの七千三百円、人事院の方では六千三百円、政府としては五千三百三十円、こうなつておりますが、政府の今日までの意向では、この五千三百三十円を固持しておられるようにわれわれも見ておるし、予算もそういうふうに組んであると思いますが、そうなりますと、國鉄としてはもしどうしても少くとも六千三百円さえできないとすれば、どういうふうな見通しをもつて今後運動をおやりになるか、これは私は何も加藤公述人國鉄委員長という資格で言つてもらわなくてもよいと思います。
  29. 加藤閲男

    加藤公述人 非常に重大な御質問を受けたと思うのでございますが、組合員の声といたしまして、先ほども申し上げました通り、一銭でも多く、一日でも早くという希望が非常に強いのでございます。しかしながら私ども今日議会の性格その他から考えまして、われわれの七千三百円要求については、かなりほど遠い賃金をおきめになるのではないかと心配をいたしております。しかしながらこれが組合側は不満であるから、この予算は返上して、解散後において再檢討をするというようなことになりましては、これは吉田内閣の生活補給金を出して解散をするということにとりあえず賛成をする結果になりますので、この点はわれわれとしては十分警戒をしております。しかしながらベースがいかほどにきまつたらどうするかということにつきましては、非常に組合側の重大な問題でございますので、ここで答弁を差控えさしていただきたい。かように考えております。
  30. 川島金次

    ○川島委員 簡單に二言だけお伺いしてみます。先ほど加藤さんは、家族手当の問題については人事院案と政府案との中間をとつて、妻と長子、他の家族に対しては多数逓減の法則でよろしい、こういうことを言われたように記憶いたすのでありますが、この多数逓減でよろしいということになつ基礎の見解を伺いたい。もう一つは免税点の引上げの問題については、どの程度だという具体的な案ができておりましたならば、それをお聞かせおきを願いたい。
  31. 加藤閲男

    加藤公述人 第一点につきましては、妻及び長子を同一額として、おおむねその額は七百五十円見当というようなことを申し上げました。これはまつたく私一人の個人の金額を申し上げたのでございます。この千二百五十円が必要であるということは、人事委員会が科学的に算定せられたのでございますから、われわれはこれが必要であるということを否定して、七百五十円あるいは九百円に減額しようとするものではありません。千二百五十円を基本賃金の中に入れていただきたいということが本心であるということを、まずお考えを願いたいのでございます。それから多数逓減ということにつきましては、あくまで本俸をふやしていただきたいがためにこういうことを申し上げたのでございまして、これをいかなる比率をもつて下げるかということにつきましては、具体的の案は持ち合せておりません。  第二は勤労所得税の免税点を何ほどにという御質問であつたと思いまするが、この件につきましては、賃金ベースが何ほどに決定いたしますかきまりませんので、五千三百円になつたらいくら、六千三百円になつたらいくら、七千三百円になつたらいくらということを申し上げる段階ではないと考えます。少くとも現下官公吏給與、本俸に対する税金と同じ程度のものでやつていただきたい。こういうつつましやかな要求をいたしておるつもりでございます。
  32. 宮幡靖

    宮幡委員 委員長にこの際ひとつお願いがございます。ただいま加藤公述人の最惡の場合という御要求事項は、きわめて具体的のもので、当委員会の参考資料になると思います。それでわが党といたしましては、すでに世論の上からも、かような問題について冷淡なように解釈されております。事実は非常に心配しておるわけであります。この際党議にかけまして、御要求の十項目を綿密に檢討してみたいと思います。ただいまの御要求事項は、もちろん速記に載るわけでありますが、配布が遅れますので、これをプリントとして委員長のおとりはからいで配布をお願いしたいと思います。
  33. 上林山榮吉

    ○上林山委員長 この席から加藤公述人委員長として希望申し上げますが、ただいま宮幡委員の御要求通り、適当なる資料であると考えますので、御協力を願いたいと思います。どうも御苦労さんでございました。  次は公述人南磐男君の公述をお願いいたします。
  34. 南磐男

    ○南公述人 全官労の事務局長をしております南でございます。所属は会計檢査院でございます。  この補正予算は、この前の國会で可決されました本予算を合せますと、一般、特別両会計の純計歳入歳出ともに一兆六百億を上まわる厖大予算であります。政府は健全財政をとなえながら、なおインフレをあおるこの予算を提出しておるのであります。大藏大臣の本会議並びに予算委員会の説明によりますと、この補正予算の重点は、官公吏の新賃金ベースの改訂と、災害復旧費の支出のためになされたとしておりますが、もつぱら土建業者をうるほす終戰処理費の百二十億並びに廃兵器処理費の七億円、それに軍公利拂いを含む國債費の二十四億円、なお刑務收容費の六億七千万円、價格調整費の百十億円等計三百二十八億すなわちこの補正予算総額の四割七分、約半分をこの便乘的な予算にさいておるのであります。從つて政府官公吏給與災害復旧費と言つておりますが、その実はこの予算の半分にしか当らないのであります。  なおこの予算は、予算として提出されるまでの経緯をわれわれは新聞紙上で見ただけでございますが、新聞紙上に見られただけでも、たとえば十月二十七日の新聞によりますと、石炭手当及び寒冷地手当十億円、なお超過勤務手当二十億、また生活保護費を四十億としておりますが、このたびは十八億に削つております。なお電産、石炭の労働者へ與えなければならない價格補給金四十億を削り、また災害復旧費が初め百十億と予定されておつたのに、これを六十億に削つております。かように要するに待遇改善費とか人民の生活保護費とかいつたような人民的な経費を抑えて、初めに予定されていた終戰処理費の三十億円をその四倍の百二十億円にふやしたということは、この内閣がいかにこの予算を通じて反人民的な、そして反動的な金融資本擁護の内閣であるという性格を暴露しておるのであります。  なお官公吏の待遇改善費については、あとで給與法案と関連して述べるつもりでありますが、この官公吏給與予算は、人件費節約額の七十七億七千万円というものが節約費として立てられております。しかも官吏のみの所得税の増加四十七億円というものを考えるときに、政府官公吏の待遇改善費として二百六十億円を支出すると言つておりますが、これはまつ赤なうそであつて、その実体は百三十六億でしかないのであります。政府はまたこの歳出財源をもつぱら租税自然増收官公吏所得税の増加、各種の消費税の増加等、すべて大衆課税に求めておるのであります。すなわちこの歳入総額の七割五分を大衆課税に求め、また一割二分に当る七十七億を官公吏支拂い賃金の節約額に負わせておるのであります。今や勤労階級はその最低の生活費すら割る毎月の源泉課税に苛斂誅求され、その上に年末調整をやられ、われら官公吏の生活は、十二月においては、政府みずからが認めているように、月並の收入の三分の一しかない状態であります。また中小商工業者、農漁民その他医師に至るまでの勤労階級は、もとよりこれらの下層の階級に対する大衆課税によつて、完全に現在の官僚機構の税制のもと、なお惡税法案のもとに苦しめられておるのであります。しかるにこれ以上に租税自然増收として一般勤労者より百八十四億をとり、官公吏より四十七億を水増しするということは、実質賃金を増加せしめるという大藏大臣の説明に反して、まさに反対の方向であつて、この自然増收として考えられるもののうちの六三%は勤労者より、なお三七%は中小企業者に負担させるという結論が出て來るのであります。  なお全財職組の研究によりますと、政府発表された六月物價水準の二十三年度における國民所得は、一兆九千億と発表されておるのでありますが、これからして個人業種所得の限度を一兆千五百三十億程度にして見積らなければならないのに、大藏当局は六千七百五億としてしか、課税所得を見積つていないのであります。從つて約六千億の課税対象を見のがしている。かりにこの六千億に五〇%の税金をかけたとしても、三千億の税收が捕捉されていないということが、この政府発表した國民所得の金額から割り出されるのであります。すなわち土建業者だとかやみ成金からの税把握というものがなされていないというこの現状は、財源問題とからんで政府の今の性格を暴露している一つではないかと考えられるのであります。もちろん現在のような官僚的な税務機構というものを、ほんとうに人民的な管理に移して、現在の天くだり的な税金の割当、いわゆる頭割の水増し税をかけるということではなくて、これを民主的な決定の方法に切りかえなければ、この大衆課税的な税制そのものを改革することはできないと考えるのであります。  なお今更正決定で中小工業者、勤労階級は年末調整等で非常に苦んでおりますが、來年の二月、三月に第二次の更正決定、第三次の年末調整というようなものが、もしかりに、かりにではなくて、現実にこの予算によつて行われるならば、いかなる事態が生ずるかということは容易に想像され得ることではないかと思います。  最後にこの補正予算の重点であるところの官吏の待遇改善費に関連しまして、全官公及び勤労階級を代表しまして一言述べさしていただきたいと思います。今加藤公述人からも御説明があつたように、われわれとしましては四月手取り、六條件づきの五千二百円、これを八月手取りに直しまして七千三百円、われわれは最低賃金制の確立を要求して、その具体的な標準としてこの七千三百円を要求したのでありまして、これには物價改訂をしないこと、首切りをやらないこと、大衆課税をしないというような六條件をつけて、全人民的な要求としてこれを政府に提出したのであります。ときたまときたま國家公務員法の改惡という、まつた労働者の基本的労働権を無視し、新憲法違反の世界的惡法を提出し、反人民的な議会勢力の関係から押し切つてきまつたのでありますが、振り返つて國家公務員法が制定されるまでに出されたマ書簡並びに通過後の十二月一日に出された第二次のマ書簡においても、はつきりと官公吏に対しては、他の地位にあるすべての日本國民に対してよりも、大きな保障が與えられねばならぬといつたようなことが書いてあります。しかしながら今回提出された予算案に盛られております五千三百円ベースは、私の計算によりますれば、電産、石炭の調停賃金よりも下まわり、また毎月の勤労統計よりもずつと下まわるものであると言わなければなりません。從つて逆にこの場合は、官公吏に特別の冷遇を押しつけたものということになるのであつて、これは明らかにマ書簡の精神にも反し、現実にわれわれの勤労階級を、このベースにまで下げて來るという低賃金政策の一環をなすものであると考えられるのであります。なお政府人事院の六千三百円ベースという勧告を無視して、五千三百三十円という何ら根拠のないでたらめな、いわゆる食うとか食えぬとかいつたそういう計算を無視して、予算案並びに給與法律案をこの國会に提出しておるのであります。大藏大臣の一昨日の本会議における説明によりますれば、勤労者の生活安定、特に実質賃金の確保をはかるために努力したいというようなことを言つておられるのでありますが、この五千三百円ベースなるものは戰前の約十二円にしか当らないというような餓死的の低賃金であります。なお戰前に比して安本の生産統計によりますれば、生産は十月現在で戰前の六〇%にまで回復しておるにかかわらず、賃金は三%以下であるから、これは戰前よりも勤労者は特にひどく收奪されておるということを証明しておるのであります。なお政府は同じく税込みという形でこれを持ち出して來ておるのでありますが、この十一月手取りを換算すれば、四千九百九十三円になります。これを私ども要求しております。八月手取りの七千三百円というものを十一月手取りに換算しますと、一万一千三百円くらいになると思うのでありますが、これを対比すると、四千円、すなわち五割の差があるということがはつきりしておるのであります。なおこれは單にベースベースを合わせただけの量的の違いだけではなく、われわれとしては首切りをしないということ、大衆課税をやらないということ、最低賃金制を確立するといつたような、六條件のついたものとしての賃金要求でありますから、本質的に異つたものと考えなければならないのであります。さらに新聞紙上の発表するところによりますれば、これまでの官公吏の労働時間が大体三十五時間でありました。ところがこれを四十四時間に延長するということを言つておる。なお先ほど質問にも出ました國鉄その他における現物給與すらこの賃金から差引くということを言つております。労働時間の変更とか、労働條件の低下というものは、労働基準法第二條によつても明らかに労働者と協議しなければならないのにかかわらず、政府公務員法の施行を理由にして、この天くだり的の改惡條件を押しつけようとするのは、まさに戰時中の東條内閣の労働政策と同じものと考えなければならないと思います。これは公務員法改惡という仕事をやつた吉田内閣性格が、まさに労働條件の低下を通じてフアシズムに通ずるものであるということを発見するのであります。政府はなお五千三百三十円と称しておりますが、これまでオーバー・タイムがわく外にあつたのをわく内に入れて、なおわく外であつたところの寒冷地手当とか、石炭手当とかいつたものを地域給の方へ入れますと、約二百円というものがここで差引かれなければならないし、なお政府計算によつても、ベースは明らかに五千百三十円ということになり、また前に述べましたごとく、二千九百二十円の職階級施行の際、並びに三千七百九十一円ベースに切りかえるときに、当然われわれに支拂済みにならなければならない金額を歳入財源に入れているのでありますから、この三千七百九十一円というものが完全に支拂われないということを証明しておるのであり、組合側の計算によりますと、政府が本俸分として計算している三千八百七十五円は三千七百七十五円であり、この差額約百円がごまかされているということであります。從つて結論から申し上げますと、五千三百三十円の実体は、時間延長を含めたる税込み五千円という数字になるのであります。手取りがこれで四千七百円ということが明白になるのであります。政府は五千三百円という数字を言つておりますが、これは決して五千三百円ではなく、五千円だということがはつきりしておるのであります。  また物件費としてこれまで計上せられておつた終戰処理費関係の人件費の三十億円というものを、官公吏の待遇改善費の中に持つて來たということであります。これは一種の予算の魔術でありますが、われわれとしまして考えることは、この首切り、行政整理の問題であります。政府は過般の人事労働委員会において、増田労働大臣は予算定員の三割程度を行政整理することを言明しておりますが、この予算の算定基礎は二百九十九万と称せられております。これは終戰処理費の三十八万を入れて計算されておりますから、実際には約一割三分を計算上切つております。從つて予算と定員の差を現在一割と考えてみても、この予算から十万人のほんとうの血の出る首切りが予定されるということが推察されるのであります。要するにこの予算に盛られておる五千円ベースなるものは、餓死的なベースであるとともに、首切りの賃金であるということがはつきりわかるのであります。なお政府は五千円ベースが、賃金政策の三原則立場からして、電産や石炭の調停賃金と同計数のものであると言つておりますが、これは政府部内でもいろいろ見解の相違するところでありまして、たとえばこれは議員諸公が官僚に御質問していただけばわかると思いますが、労働省、人事院では、人事院で出された六千三百円ベースは電産、石炭と同じ水準であるということを言つておるのであります。一例をあげますと、電産が四千四百三十一円のときに、官公吏は三千七百九十一円でありまして、その差が一二・三%であつたのであります。これはおのおの手取りに換算して直した差でありますが、これによつて、このたび電産の調停案として出されました七千六百五円から算出してみますと、全官は当然六千六百三十二円という数字が出て來るのであります。すなわちこの人事院の六千三百円案を上まわる六千六百円というものが、電産に示された賃金と同じで、あの電産が爭議をかけて反対している賃金ですら、官公吏に直せば、六千六百円だということを証明しているのであります。なお毎月勤労統計を、二千九百二十円のときの政府的な算出方法によつてすれば、十一月で六千八百三十三円となるのであります。すなわちいかにわれわれが計算しても、政府的な非常に低賃金政策的な建前から計算をやつてみても、五千三百円、実質的には五千円という数字は、どこをどう押しても出て來ないのであります。さらにこの五千円というベース官公吏に押しつけて、それにくぎづけにしておいて、他の労働者をここまで持つて來るということが、これはやはり現内閣の反人民的な労働政策の行き方だといわざるを得ないのであります。なお石炭手当とか寒冷地手当すら出ないところの北海道、東北地方では、すでに吹雪がさんさんと降つている状況で、今年の年末調整によつて、この十二月の後半にもらうところのベース差というようなものは、今加藤氏の説明によつても明らかなるごとく、ほとんど全部が税金として徴收されるような状態でありますから、このまま放置するならば、いかなる事態が起きるかということは想像にがたくないものと思われるのであります。  以上のごとく歳入大衆課税に求め、餓死的なベースを全勤労階級に押しつけようとするこの反人民的な予算に対して、全國的に反対の意を表するものであります。  なおただちに組合の要求である七千三百円、並びに寒冷地手当、二・八箇月の生活補給金等を計上した、私の計算によると一千二百二十四億の待遇改善費に切りかえて、この財源大衆課税以外の、すなわち三千億の脱漏があるあのやみ成金とか、土建業者とか、金融資本とかいうものにこの税を求め、なお價格差補給金といつたようなものについても、相当まだ徴收の余祐があると思われますが、こういつたものから財源を求めて、予算をただちに編成がえして提出されんことを、なお國会としては議員提案なり何らかの形によつて、この予算を全面的に切りかえて、一日も早くそういつた予算を通過されんことをお願いする次第であります。
  35. 上林山榮吉

    ○上林山委員長 南公述人に対して御質問がありますか。
  36. 田中源三郎

    田中(源)委員 さつきあなたがおつしやつた三百円減るという給與の問題……。二百円ともう一つ百円と、結局五千三百円が五千円になるという説明が出ておりましたが、その点だけもう一ぺん説明して下さい。
  37. 南磐男

    ○南公述人 これは寒冷地手当とか、今の石炭手当とかいうものはこれまでわく外であつたのであります。このわく外を地域給のわく内に入れて——なおこれは非常にわれわれのところで問題となつておりますが、三千七百九十一円といつても、実際は三千七百九十一円が完全に支拂われてないのです。本俸については、給與局から出した二千九百二十円のときの本俸相当部分が二千円だと言つておりますが、この二千円から計算して行くと、いわゆる百円の不拂い賃金が、本俸においてあるということが発見できるのであります。そういう関係からして、これは議員諸公としては、大藏当局なり、特に給與局などについてお調べ願えれば判明することと思いますが、その詳細な説明は、いずれ私の方でも資料にして差上げたいと思つております。
  38. 竹谷源太郎

    ○竹谷委員 南公述人と、加藤公述人からも御答弁願いたい。ただいま南公述人から、二百六十二億の給與改善費歳出費として見積られておるが、歳入において給與に伴う自然増加四十七億、それから歳出節約額のうち、人件費を節約する七十八億、こういうものを差引けば、実際百三十七億しか給與改善に充てられない、こういう話があつた。私は大体それに近いものだろうと、同感でありまするが、ただ歳出節約額の七十八億という金額は、一應政府においては実現員現給と、予算定員に基く増額、その差額がこれだけあるという見積りから、こうした歳出節約額を出して來たものと思うのであります。現実の問題として、全官公全体の問題は、南さんではわからぬと思いますが、少くとも会計檢査院の実情は、実際そうした節約ができるか、それを出した結果、結論において給與予算が年度末に拂えなくなるということがないかどうか。同樣の問題は國鉄にもあろうと思いまするから、これについて加藤公述人からも事情を御答弁願いたい。
  39. 南磐男

    ○南公述人 要するに私が今まで申し上げましたように、この歳出不用額の中には、予算定員と実員との差も相当あると思いますが、なお私が言つたように、不拂い賃金というものがはつきりあります。もちろんこの給與局の予算その他では、明細が出ておりませんのでわかりませんが、われわれの官廳としても、昇給原資というようなものを相当見積らなければ、予算は組めないのでありまして、年に二回ないし四回の昇給、下の方が四回、上の方が二回昇給しておりますが、この昇給原資を相当見積つておらなければ、予算が組めないのであります。從つて現在の実員通りにかりに予算を組んで、余つたもの全部をこういうふうに不用に出しますと、全然今年度中は昇給もやれなければ、新規採用もできないような、みじめな状態に置かれるので、これは実際問題として不可能ではないかと考えるのであります。
  40. 加藤閲男

    加藤公述人 國鉄の場合を申し上げます。私直接聞いたのではございませんけれども、この既定経費の節約に相当する額として、特別会計においては三十五億を年度末までに節約せよというような指令があつたやに聞きます。その三十五億を節約するために、当局側は——私ども現実に即しまして、今給與について法律で認められた苦情処理委員会を通じて二千九百二十円の苦情処理に当つております。この苦情処理の問題も取上げることが不可能になつた。なお超過勤務手当、すなわち時間外の勤務もしてはいけないというような、そういう面で三十五億の節約を企図しておるやに聞いておりますけれども、この点はわれわれとしても今後の事務遂行上きわめて重大な段階になるであろう。從いまして國鉄に割当てられたという三十五億の経費の節約のごときは、事務を放棄して定時退廳をしない限りは行われない。かように考えておるのであります。
  41. 竹谷源太郎

    ○竹谷委員 ただいま南公述人から不拂い額もあるという話でありましたが、それはありましよう。また一面において加藤公述人の話のように、超過勤務手当、あるいは特別の何かの特殊勤務手当等によつて相当これはすでに予算を食い込んでおるだろうと私は思う。だから現実に現なまはないのだ。そういうことになると、結局この七十八億を節約額として見積つたことは、これだけ実際において給與改善はしないという結論になり、結果において二百六十幾億を新給與の改善費として見積つておりながら、実際はその半額くらいしか給與改善に充てられないということになつて、結局南公述人の言うような結論になりやしないかということをおそれるのでありますが、なおひとつ労働組合側において資料等あれば、研究して提出してもらいたいと思います。
  42. 小枝一雄

    ○小枝委員 南公述人にお尋ねしたい。先ほどお話の中に、炭鉱労働者は、現在の官公労働者よりも賃金が高いというお話であります。それはその通りだと思う。ただこれは事務局長としてでなくても、個人のお考えけつこうですが、炭鉱労働者等と官公労働者との間に、賃金の差異をお認めになつておるのであるかないか。もしお認めになるとすれば、どういうふうにお考えになつておるかということを聞かしていただきたい。
  43. 南磐男

    ○南公述人 われわれの最低賃金制の建前から行きましても、炭鉱の労働者はわれわれ事務労働者國鉄の場合は別ですが、非現業の事務労働者よりは、カロリーが非常にいるということは常識だろうと思う。從つて危險手当等を含めたカロリー計算から行きましても、ある程度の差異が当然あるものと思いますけれども、それが現在のように大幅であり、なおまたそれがどのくらいの率になるということは、計算しないとちよつと出て來ないと思いますが、ただいまわれわれ労働組合としてはまだ計算しておりません。
  44. 松原喜之次

    ○松原(喜)委員 二点南公述人にお尋ね申し上げたいと思います。第一は、一兆九千億の國民所得を計算されております。その同一の資料によつてわれわれが調べたところによりますと、業種所得の五十万円以上の所得だけについて見ると、大藏省の徴税のためにするところの計算による所得額との差が、大体において七百億くらいになつておるのであります。五十万円以上の所得者について、國民所得計算における数字と、大藏省の徴税のための所得の計算との間に、そういう差額があるのであります。從つてこの大所得者の脱税額が、初め六千億と言われ、あとで三千億と言われましたが、これはかなりお思い違いの点があるのではないかと思うております。その根本の趣旨において、高額所得者から大いに徴税を強化しなければならないという点は、われわれもかねてより強調しておる点でございまするけれども、その間三千億とか六千億とかいうふうな基本数字はないということを私ども調べておるのでありまするが、その点について御所感をお伺いしたい。  第二の点は、それらの徴税強化のためには、どうしても徴税機構の強化、改善をしなければならないということを、われわれ大いに痛感し、強調しておるのであります。南公述人の言われるような、非常に有力な妙手があれば、われわれこれを採用する、いな政府をして採用せしむべく、できるだけの努力をしたいと思うのでありまするが、南公述人のおつしやるには、それは人民的徴税法をとればそれでよろしいということでありますが、それに対する具体的な案をひとつお示し願いたいと存ずるのであります。
  45. 南磐男

    ○南公述人 最初の点でありますが、これは國民所得というものの計算が、たとえば安本でやる場合と、大藏省でやる場合とでは、半分ほどの開きがあるということ、なおこれが見積りであつて非常に実際に即してないということがあるのですが、われわれから言えば、政府の統計によつても六千億の脱税が——いわゆる課税対象になつていない國民所得があることが判明するということを言つただけで、第一点についてはそれ以外にお答えする方法がないと思うのです。第二点は、労働組合としても、個人としても、もちろんその点については基本的には考えますが、具体的にどうするかの問題は、政務調査会なり各政党で十分御研究願つた方がいいのではないかと考えております。
  46. 上林山榮吉

    ○上林山委員長 休憩いたしまして、午後公述人が見えればまた続行いたしますが、なお委員諸君の御了解を得まして、場合によつて委員会も継続したいと思いますから、あらかじめ御了承を願います。午後は二時から開会いたします。これをもつて休憩いたします。     午後一時四分休憩      ━━━━◇━━━━━     午後二時四十分開議
  47. 上林山榮吉

    ○上林山委員長 休憩前に引続き公聽会を開会いたします。  商工代表として三樹樹三君を選定いたしてありましたが、都合により吉阪俊藏君がかわられて出席されましたので、御了承願います。それでは吉阪公述人に御意見発表を願います。
  48. 吉阪俊藏

    吉阪公述人 私は東京商工会議所專務理事吉阪俊藏であります。先ほど急にこの公聽会に出席をするようにお話がございました。まだ十分に説明書も読んでおりませず、はなはだ不十分でございますが、お召しによりまして私の意見を申し上げたいと存じます。  この予算につきまして、私がまず第一に申し上げたいと思いますことは、いい新聞の記事をつくりますにはカツトをしなければならぬ、あるいは沒が行われるということ、カツトや沒によつてよい新聞記事ができる。映画についても同じようなことを聞いております。予算についてもよい予算をつくろうとすれば、どうしてもカツトを加えなければならぬと思うのであります。それからもう一つ申し上げたいと思いますことは、これは商業上の原則でございますが、一つの單價を上げまして、そうしてこれによつて全体の利益を上げるということは原則であります。しかしこれは第一原則ということだけであります。個々の單價を引下げまして全体の利益を上げるということもあるわけであります。これは御承知の通り有名なアメリカの自動車王フオードが行つたことであります。たとえて申しますと、ピースの値段を六十円に引上げたためにかえつて賣れなくなつた。これを五十円に下げる、あるいは四十円にするということによつて、賣れ高をうんとふやすということができるのではないかと思うのであります。商賣にはいろいろな原則が行われておるのでありますから、こういうような点も御考慮の中に加えていただきたいと思うのであります。  今回の追加予算七百三億の中で一番問題になりますのは、申すまでもなく歳出方面においては新給與費の二百六十二億という問題と、歳入の点におきましては租税の四百十億という点ではないかと思います。この新給與につきましては五千三百円が十分であるかと申すと、これについてはもちろん議論があり得ると思います。またこれでもつてこのインフレの今日、將來までも保障することができるかと申せば、あるいはそれはできないかもしれません。何とも言えないのでありますが、しかしながらない袖は振れないということが現実のことでございまして、財源とにらみ合して行わなければならないのであります。私どもから申しますと、公務員の地位、職員に対しましては財源範囲内において、できるだけ十分なことを期するということに、なるのではないかと思うのであります。人事委員会の案と比較しまして申すならば、人事委員会予算の点におきまして十分の考慮を拂わないでやつたといたしますれば、それは今日の現実給與の問題としては、考え方が不十分なのではないかと思うのであります。特に人事委員会給與には、家族手当の非常な増加があるわけであります。この家族手当というものは、家族の生活を十分に保障するというのではなしに、むしろ本來の性質は、生活費の補助ではないかと思うのであります。補助というものは何割というものであるべきであつて、全額の補助ということではあり得ないと思うのであります。また一千二百五十円というような家族手当を出すことは、世界中にも例がないではないかと思います。元來働いて食えるようになつて結婚をし、またするのでありまして、結婚をしてから食うというものではなかろうと思うのであります。家族手当という制度は、あるいは結婚奬励あるいは人口政策の上から意味があり、生れて來たであろうと思うのでありますけれども、今日の日本といたしましては、すでに過剩人口であります。過剩人口のために非常に苦しんでおるのであります。この際人口奬励策というような家族手当制度ということは、むしろこれに対する危險を誘致するものである、増大するものであるというようなことも、あるいは言い得るのではないかと思うのであります。こういう点について考える必要があろうかと思います。  それから歳入租税の四百十億というものは、非常に問題になると思うのであります。すでにわが國では一人当りの租税の負担額から申しましても、また國民所得に対する租税の割合から申しましても、今日はもう未曽有の高額に達しておるのであります。もはやぎりぎりの限界点に達しておるのであります。さらにこれを上げるということはどうであろうか。特に問題になりますのは申告課税所得税百三十九億の予算でございます。本年の所得税更正決定のときに、すでに各地において不当課税である、即時改正の必要があるというような要求が勃然と起つた。また今日も引続き諸方でいろいろと問題を起しておるのであります。本年の七月所得税の予定申告の際には、まず昨年度の確定額の二倍ないし三倍ぐらいであろう。またそういうような申告をすることが希望されたのでありますが、現実におきましては、昨年度の三倍ないし四倍、はなはだしきものは五倍あるいはそれ以上に及んでおるのであります。またそのきめ方におきましても、納税者の一々について調査が行われたというわけでなく、むしろ一方的に徴税官署において、独断的にきめられたという場合が多いのであります。そのために現に御承知の通り、いろいろ家庭悲劇が起り、氣が狂つたり、自殺する人まで出たり、企業意欲を沮喪させておる点は非常に大きいのであります。更正決定においてすらすでにこういう状態になつておるのでありまして、これがさらにふえる。そして今年度内に千九百億の租税收入を確保するということになると、どういう事態が起るかということについては、非常な不安を感ずるわけであります。経済原則というものは、原則としてはまことにそうあらねばならず、けつこうなことであると思うのですが、しかしながら世の中にはいわゆる逆效果を起すような場合が少くないのであります。企業の合理化を目的とし、あるいは國民生活の安定を目的としながら、その結果においてはかえつて企業が不合理化され、規則的なやり方でやつてつてはできないから、不規則な行為に出ようというようなことになれば、生活が安定しないで、かえつて社会不安のために、いろいろ犯罪その他の行為のために、生活が脅かされるという結果にならぬとも限らないのでありまして、こういう点については大いに考えなければならぬと思うのであります。そうすれば一体どうすればいいかということになるわけでありますが、また政府におかれましても、もしも千九百億の租税が入らない場合においてはどうするか。これは百パーセント入ることは考えにくいのではなかろうかと思うのでありますが、そういう場合には一体どうするかということが、問題になるだろうと思うのであります。私は予算を編成する場合においては、追加予算であるといないとを問わず、常に國民負担をできるだけ軽減するということを、考えなければならないのではないかと思う。戰勝國ならば國民負担を軽減する、敗戰國であるからこのくらいのことはがまんをしなければならぬというりくつは立たないので、むしろ敗戰をしたのも、財力その他民力において欠けるところがあればこそ破れたのでありますから、戰敗國は一層民力を休養させ、減税をするように持つて行かなければならぬのではないかと思うのであります。イギリスやアメリカの例を取上げるまでもなく、できるだけ國民負担の軽減をはかるようにやつていただきたいと思うわけであります。  それから行政整理の問題でございますが、この点につきましては、現に統制の機関が非常にたくさんあるのでありますが、できるだけこれを整理しまた緩和することによつて相当の行政整理ができるのではないか。あるいは各省の出先官憲と地方の部局と重複している場合が、非常にたくさんあるのであります。私どもが先般調べましたのでも、小さな二十坪足らずの建物にしても、建築の届出をすると、五十人の役人の手を経て九箇月もかかつて、やつと認可を得たという例があるのでありますが、こういう点もさつそくに改正することができるのではないかと思います。それから準官廳とも申すべき公團の方面の整理も促進していただけば、政府の負担を軽減することもできるのではないかと思います。  もう一つは國有財産の拂下及び官業の拂下、官業を民営に移すという問題であります。これらにつきましては、あらかじめ政府においてもそれぞれ研究をしてその順位を設け、予算についても租税によらないで國民の負担を軽減しながら、しかも役人の給與を上げて行くということが、考え得られるのではないかと思うのであります。官業の中で一例を申しますと電話でありますが、長距離はともかくといたしまして、短距離電話というものは民営を認めるということによつて、場合によつては外資を導入して通信機関を拡充し、再建を促進するということもできるのではないかと思うのであります。  簡單でありますが、私の意見を申し上げまして御参考に供した次第であります。
  49. 上林山榮吉

    ○上林山委員長 吉阪公述人に対して御質疑はございませんか。  それではこれにて公聽会は終了いたしました。散会いたします。     午後二時五十六分散会