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1948-12-09 第4回国会 衆議院 予算委員会 第7号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十三年十二月九日(木曜日)     午前十一時四十分開議  出席委員    委員長 上林山榮吉君    理事 苫米地英俊君 理事 森  直次君    理事 稻村 順三君 理事 竹谷源太郎君    理事 今井  耕君 理事 大原 博夫君       淺利 三朗君    大内 一郎君       尾崎 末吉君   小野瀬忠兵衞君       鈴木 明良君    田口助太郎君       仲内 憲治君    田村 久之君       平島 良一君    本間 俊一君       前田  郁君    松浦  榮君       勝間田清一君    川島 金次君       菊川 忠雄君    鈴木茂三郎君       田中織之進君    林  大作君       松永 義雄君    松原喜之次君      青木清左ヱ門君    押川 定秋君       川崎 秀二君    後藤 悦治君       中曽根康弘君   長野右ヱ門君       長野 長廣君    井出一太郎君       河野 金昇君    小枝 一雄君       叶   凸君    岡田 春夫君       世耕 弘一君    高倉 定助君       織田 正信君    野坂 參三君  出席國務大臣         大 藏 大 臣 泉山 三六君         國 務 大 臣 殖田 俊吉君         文 部 大 臣 下條 康麿君         厚 生 大 臣 林  讓治君         農 林 大 臣 周東 英雄君         商 工 大 臣 大屋 晋三君         運 輸 大 臣 小澤佐重喜君         労 働 大 臣 増田甲子七君         建 設 大 臣 益谷 秀次君  出席政府委員         総理廳事務官  森永貞一郎君         大藏政務次官  塚田十一郎君         大藏事務官   河野 一之君         大藏事務官   阪田 泰二君  委員外出席者         農林事務官   奧原日出男君         專  門  員 芹澤 彪衞君         專  門  員 小竹 豊治君     ————————————— 本日の会議に付した事件  昭和二十三年度一般会計予算補正(第二号)  昭和二十三年度特別会計予算補正(特第二号)     —————————————
  2. 上林山榮吉

    ○上林山委員長 会議を開きます。  質疑を続行いたします。
  3. 中曽根康弘

    中曽根委員 労働大臣おいでですから労働大臣に若干お伺いいたします。私が質問いたしたいと思うことは、公共企業体労働関係法に関するものでありますが、この点については前の議会増田労働大臣にお尋ねしたことがあるのでありますが、会期も違いますし、もう一回重ねて労働大臣の確答を御要求いたす次第であります。問題は公共企業体経営権と、それから労働者労働権と、國家の有する監督権の問題であります。御存じのように公共企業体労働関係法八條においては、團体交渉範囲を明確に規定してあります。その中で第八條は、公共企業体管理及び運営に関する事項は、團体交渉から除かなければならないと書いてある。しかるに第二項において、次のことは労働協約を締結することができるとあつて、第五号に「懲戒規則並びに昇職降職、轉職、免職休停職及び先任権基準に関する規則」という條文がございます。私らの解釈及び見解によると、第五号のことは経営管理に属することではないか。そうなると普通では團体交渉範囲から除かれるような性格を持つておるんじやないか、その点に関する増田労働大臣一般的なお考えを御返答願いたいと思います。
  4. 増田甲子七

    増田國務大臣 中曽根さんの御質問お答え申し上げます。この前の議会における労働委員会においてたしか申し上げたと思いますが、あの第八條團体協約対象としては経営管理は除かれておる。ただし第二項の第五号においては懲戒あるいは昇職降職その他の基準に関する事項労働協約対象になつておる。その間の相互の関係から見ると、第五号はむしろ経営管理に属しはせぬかという御質問でございます。私どもは経営管理というものは、その日その日の事務運営であるというふうに見ておる次第でございまして、第五号に明らかに書いてございます通り、これこれこれこれの基準に関する事項と、こうあるのでありまして、公共企業体職員は今や公務員ではなくなりましたけれども、公務員に準ずるものになつた次第でありまして、公務員に関する服務紀律的なものを團体協約規定して置く、こういうことを予想してありまして、すなわち團体協約があの範囲においては実質上公務員に準ずる職員の服務紀律的なものになる。もちろん協約として締結したその協約の中に服務紀律的なものが書かれておる。こういうふうにわれわれは考えております。從つてあくまでも基準的なものであつて、その日その日の事務運営をいつも協約対象として、相談して行かなければやつて行けないというようなことは、公共企業体特殊性にかんがみて、おもしろくないと考える次第であります。
  5. 中曽根康弘

    中曽根委員 そこで問題になりますのは、先任権その他の基準に関する規則という意味でありますが、具体的な例をもつて質問いたしたいと思うのですが、公共企業体で、たとえば鉄道が一千人首にしなくちやいかぬ、そうしないと経営が合理的に行かぬ、こういう問題が起きた場合に、これは團体協約範囲外にあるのか、あるいは範囲内にあるのか、この点をまず具体的に御返答願いたい。
  6. 増田甲子七

    増田國務大臣 お答え申し上げます。これは法律論でございまするが、私は一千人この際首を切るというようなことは、團体協約範囲外であると思つております。但し事務の必要上産業合理化を行う場合には、整理することあるべしといつたようなことを團体協約規定することは、これは基準に関することである、スタンダードに関することであるから、規定対象たり得ると考えております。その基準を働かして、この際一千人を首切るというようなことは、もう團体協約規定外であるからして、適当にその際一千人なら一千人を合理化対象として整理をするということは、團体協約によらずして整理をなし得る、こう考えております。
  7. 中曽根康弘

    中曽根委員 そうしますと、公共企業体というようなものをわざわざつくつて國家公務員とは違う待遇を與えて保護してやるというような趣旨が非常にぼやけて來るじやないかと思うのでありますが、たとえば企業合理化のためには整理することあるべし、こういう條項をかりにきめるといたしますと、それ以外のことは一切政府が大権を握つてつて何でもできる、特に労働者の首というような問題は生存に関する問題であつて、そういうことになると、軽々に團体協約を結べないということにもなるのであろうし、労働者一つ基本的人権というようなものまでも、侵害されるような憂いがあるのじやないかと思うのです。そうなると國家公務員法公共企業体労働関係法というものは実質的には同じである。もちろん爭議権もないし、交渉権もほとんどないといつてもいいじやないか、休日、休暇、就業規則というような点を認めるという点については多少色はあるようでありますが、一番大事な就業権という問題について、そのような権力を業態によつてふるまわれるようでは実質的には意味がない。それでは公共企業体という一つのものを特に設けた意味がないと思うのでありますが、その点は労働大臣はいかにお考えになりますか。
  8. 増田甲子七

    増田國務大臣 今の團体交渉権がある程度制約を受けておるということは私はつきりと認めております。しかしながら今中曽根さんがおつしやつておることは非常に法律論としてもデリケートの問題でありまして、第二項の第五号に該当するか、あるいは第一項に該当するかというような場合をきわめてこまかにわけて質問されておるくらいで、法律論としてはごくデリケートの問題であります。そういうデリケートの法律論をなさる中曽根さんにしては、いやしくも團体交渉権がある程度制約を受けているならば、團体交渉権はなきにひとしいという論理は、飛躍というか暴論であつて、頭のよい中曽根さんにしては、似合わない議論であると私は考える。ある程度の制約を受けた團体交渉権である、そういうように御承知を願いたい。
  9. 中曽根康弘

    中曽根委員 大分痛み入つたお言葉でありますか、私は非常に労働者に御理解のある、また本会議においてはほかの大臣とは格段と違つたお答えをしておられる増田労働大臣のお言葉としては受取れない。公共企業体というものをなぜ設けたかということを考えると、公共福祉関係のある、一般企業と違うものについて特定の段階を設けよう、こういう考え國家公務員法とは切り離してやつたことに意味があるのであろう。その趣旨は何であるかというと、一般公務員違つて、こういう企業に参加している労働者労働権守つてやろう、そういう明確な一線があるだろうと思う。その労働権の一番根本的なものは何であるかというと、私は就業権であると思う。これがそういうような制約を受けている限りは、公共企業体を設けた意味がない。政府産業合理化をやることあるべしということをきめておいて、片はしから十万人、二十万人でも首にして行くということになると思う。ことに國有鉄道法案を読んで見ると、二十九條には、職員は次の場合には首にすることができるという規定がある。それは何であるかというと、「業務量の減少その他経営上やむを得ない事由を生じた場合」とある。そうすると経営上やむを得ないという言葉で片はしから首にすることができる、こういうことが起り得るのであります。私は二十九條を今出しましたから御質問するのでありますが、かりにそれじや労働協約経営合理化をやるために整理をすることあるべし、そういう規定がない場合に、二十九條に基いて総裁從業員を首にすることができるかどうか。その点をまずお伺いしたい。
  10. 増田甲子七

    増田國務大臣 二十九條によつて経営者整理をなし得るわけでありまして、産業合理化の線に沿うて整理をなすことあるべしと規定しておりましても、二十九條違反のような整理はなし得ないわけであります。でありますから必ず二十九條の制約は受ける、こういうことに相なるのでありまして、決してみだりに首を切る、大なたを振うということはあり得ないし、またなし得ないと思つております。
  11. 中曽根康弘

    中曽根委員 私がお尋ねいたしましたことは、労働協約に、合理化に関する規定がない場合、企業体経営者である総裁は二十九條四号をたてにして、一齊馘首やあるいは馘首ということができるかどうか。その解釈を承りたいのであります。
  12. 増田甲子七

    増田國務大臣 労働協約対象に今のような規定がなくても、二十九條によつて経営者整理をなし得ると思うのであります。但し二十九條があるからといつて、むやみに首を切るというようなことがあるならば、二十九條の濫用でありまして、法の濫用はやはりなし得ない。だから二十九條はどこどこまでもその精神を活用すべきものであると思つております。
  13. 中曽根康弘

    中曽根委員 これはまたたいへんなことを承つたものと思うのであります。そうすると公共企業体の方の第八條第二項第五号で、首やその他に関する基準團体協約でやらなくちやいかぬというふうに書いてあるのにもかかわらず、政府は二十九條でやるということは、労働者労働権あるいは交渉権、そういうようなものを根本的に侵害するのであつて公共企業体労働関係法を設けた意味がない。私はますますそういう感を深くするのであります。この第五号と國有鉄道法第二十九條との関係をもう少し私は労働大臣からお伺いしたいと思います。
  14. 増田甲子七

    増田國務大臣 今手元にテキストがなくて空で論じておつてたいへん恐縮でありますが、第八條というものは個人個人をとらえた意味でありまして、ちようど官吏あるいは公務員がみだりに、正当な理由なくして首を切られたり、あるいは轉職させられたり、あるいは昇職したり降職したりすることはないということを、労働協約で締結する趣旨でありまして、事務の性質上二十九條該当の場合に整理をするというようなこととは、そう矛盾しないと心得ておる次第であります。
  15. 中曽根康弘

    中曽根委員 しかし労働大臣がさきにお答えになりましたように、経営合理化をやるというような双方の約束がなくて、ただ二十九條だけをたてにしてやるというような事柄は、私どもちよつと常識的に考えられないし、この第八條を設けた意味もないと思うのであります。労働大臣最初の御答弁では、経驗合理化をやるという條文労働協約にあつた場合にやれるのだ。そういうことをおつしやつた。ところがあとの御返答によると、二十九條で單独にできるのだ。こういうことをおつしやつている。私はその間の労働大臣の御眞意がまだわかりかねるのでありますが、頭が惡いのでもう少しわかるように御説明願いたいと思います。
  16. 増田甲子七

    増田國務大臣 お答え申し上げます。團体協約対象として第八條第二項の第五号としては、主として私は個人個人公務員的な從業員の身分を保障する趣旨から、團体協約対象としてその基準を書いておくことを予想しておるということを申し上げましたが、しかし一面において産業合理化、その他必要上整理をすることあるべしというような規定をつくつてもあえてさしつかえない、團体協約対象たり得るということを申し上げた次第でありまして、二十九條によつて経営者整理なら整理をする場合には、必ず第八條第二項第五号の團体協約対象として、そういうようなことまで基準として書いておかなくちやならぬ、こういう趣旨ではございません。多くそういうことは書きましよう。書くと私は予想しております。團体協約対象としては、やはり一般整理標準等一つ基準でありますから、書くとは予想しておりますけれども、必ずしも必要事項ではない。こういうふうに考えておる次第であります。從つて私が先ほど申した通り、二十九條によつて経営者整理等を行い得るということを申し上げた次第であります。
  17. 中曽根康弘

    中曽根委員 その場合に第五号によつて免職その他の基準をつくつて企業合理化をやる、そういうような抽象的なものをきめた場合といえども、公共企業体総裁はその協約を無視して、單独で二十九條第四号によつて馘首をやれるのかどうか、この点をお伺いしたい。
  18. 増田甲子七

    増田國務大臣 第八條第二項第五号によつて團体協約対象として今のような基準規定する場合でありましても、二十九條によつて與えられた権限——と言うと少し語弊があるかもしれませんが、経営者側が與えられた権限を拘束するような團体協約は締結できないと思う次第でありまして、むしろ第二十九條によつて授権をされておる経営者が、整理をする際の細目というような基準規定するのだと、私はこう思つております。どこどこまでも二十九條の範囲内において、産業合理化の場合における整理の條件というようなものを二十九條の細目としてお互いの間の約束としておく、こういうように私は予想しております。
  19. 中曽根康弘

    中曽根委員 この点については私はまだ非常な疑問がありますので、質問を留保しておきますが、今の増田労働大臣の一連のお答えを承りますと、たとえば日本國有鉄道法案において、政府あるいは公共企業体の役員に與えられた権限というものはかなり嚴格な強いものである。労働協約の内容を破壞する程度の力すら持つておるのだ、こういうような印象を受けるのであります。そうなると先ほど申し上げましたように、公共企業体というものを國家公務員から切り離してつくつたという意味が全然抹殺されてしまう、こういう感じを受けるのであります。そこで今度は政府監督権について承りたいのでありますが、五十四條によつて運輸大臣は、公共福祉を増進するため特に必要があると認めるときは、日本國有鉄道に対し監督上必要な命令をすることができる。」という規定がある。そうすると労働大臣最初お答えなつたような考えでやると、この第五十四條によつて、今まで締結したほかの就業規則やその他に関する團体協約すらも、運輸大臣命令監督上これを破壞することができるのかどうか。今までのお答えでは破壞できるような印象を受けるのでありますが、その点はどういうふうにお考えになつておりますか。
  20. 増田甲子七

    増田國務大臣 これは運輸大臣からもお答えを補足されることと思いますが、運輸大臣公共企業体監督するゆえんのものは、公共企業体使用者側從業員側との團体協約を締結するに際しましても、あるいはその他の行動をとるに際しましても、適正なる契約をする、適正なる運営をする、適正なる就業をするということを監督するのが運輸大臣の職責でございますから、契約という法律行為をした場合におきましても、すなわちこの際の契約團体協約だが、その團体契約につきましても、はなはだしく不適当と認め、あるいは公益を害すると認めた場合は、もちろん監督命令を発し得る、こう思う次第でございます。
  21. 小澤佐重喜

    小澤國務大臣 ただいまの問題は労働大臣と同じ考えであります。
  22. 中曽根康弘

    中曽根委員 そういうお答えでありますと、ますますもつて八條によつて團体協約あるいは交渉権ということを認めたのが意味がないということになります。まつたく公共企業体從業員國家公務員と何らかわるところがないのだ、この第五十四條によつて監督上必要なる命令というものはどんなにでも出せば出せます。そしてこれが法律規定によつてやるのだということになると反抗することができない、五十四條違反に対してはぶち込まれるという危險すら五十五條に書いてあります。そうなるとまつたくこの公共企業体というものをつくつた意味がないのでありまして、政府の意思のままに公共企業体從業員は生活を送らなければならぬ、こういうことになるのであります。私はこういうような公共企業体労働関係法なんというものはそういう意味でつくる必要がない。たとえば今申し上げましたような企業整理という問題以外でも、いろいろな就業規則やその他の勤務條件についても、せつかくつくつたものを打ちこわされてしまう。こういうのであつては、まつたく労働者地位というものは不安な地位にあるものであり、かつまた労働協約自体が猜疑と不信の対象になつてしまつて、これを締結する誠意すら両方になくなつてしまうのじやないか。どうせつくつても打ちこわされるのだというのでは、むしろつくらない方がいい。こうなると公共企業体労働関係法というものは、一種の羊頭を掲げて狗肉を賣るものであつて國家公務員法に入れておいては反対があるから、こういうものをつくつたのだと言つてごまかして、この当場を切り拔けようというような印象を持つのでありますが、私の見解に対して労働大臣はいかにお考えでありますか。
  23. 増田甲子七

    増田國務大臣 平素非常に論理の階段をこまかに運ばれる中曽根さんにしては、非常に飛躍した論理を今日は展開されているのでありまして、私はどうもおかしいと思うのであります。まつたく政府のほしいままというようなことをおつしやいますが、政府が何かする場合にはたいてい不法や不当な行動をとるという前提があるならば、あなたの論理は正確でございます。しかしながらたとえば一般労資関係で締結する労働協約ですら、不法な労働協約を締結したという場合には、政府はやはり労働者その他の立場に立つて監督するということが必要になつて來ていることは、中曽根さんの御承知通りであります。五十四條といえども、私は政府國鉄なり專賣公社監督するという立場からして、必要と認める妥当な監督をするという前提で、どうかものをお考え願いたいと存ずる次第でございます。
  24. 中曽根康弘

    中曽根委員 政府とわれわれの立場とは見解が違うのでありますが、必要と認めるということは、政府が必要と認めるのであつて労働者が必要と認め、あるいは一般の輿論が必要と認めるということは考えていない。政府がこれを利用して何でもできるということに、條文から解釈すればできるわけであります。そういう立場でこの法案を認めていいかどうかということを私は問題にしているのであります。  この問題は見解が違うから一應質問を留保いたしますが、最後に一点お伺いいたしておきたいことは、公共企業体の定義に関して、前に労働大臣にお伺いしたのでありますが、それによると、國家が自分でやる仕事に近い性格を持つているものであつて公共福祉に関する企業である。そうして公法人として特段の取扱いをする必要がある企業である。こういうようなことをおつしやつております。そこで私は問題にいたしたいのでありますが、この公共企業体というものをつくつて、そういう特別の取扱いをする企業というものはほかにもあると思うのであります。前にも申し上げました通り、たとえば地方公共團体がやつている公益事業がある。こういうものは一体どういうふうに取扱うのか。この法を制定した趣旨から見ると、地方的に公共的な利害関係があるものは、地方條例をもつてこの関係法のような法律をつくることも、論理から言えば当然だろうと思うのであります。從つてたとえば東京都の都営事業——あるいはふろ場であるとか、あるいは質屋であるとか、あるいは運輸関係事業、あるいは地方縣営事業、あるいは都市の公共團体のやつている公益事業、こういうようなものについては、それぞれ地方團体自治立法権をもつて、たとえば條例をもつて、これと同じような規定を制定することができるかどうか、この点に関する大臣の御見解を承りたいと思います。
  25. 小澤佐重喜

    小澤國務大臣 ただいまのことはできないと思います。なぜかと申し上げますれば、ただいまのは労働組合法その他の労働三法除外例規定公共企業体労働関係法でありますから、地方條例でこの法律を左右する力はないと思います。從つて新たにそういう立法が起れば別でありますけれども、地方條例ではできないと思います。
  26. 中曽根康弘

    中曽根委員 これは重大なことをお聞きしたのであります。実はこの前の議会労働委員会において、増田労働大臣はできるというお答えであつたというのは、地方自治法精神規定から見て、そういうことは論理的にもできるのである。こういう明確な御答弁をしております。これは速記を調べて見ればわかります。どうしてそこにおいでになる二人の大臣が、同じ内閣のもとにあつて見解が違うのか、その点を私はもう一回承りたい。
  27. 増田甲子七

    増田國務大臣 そのお答えをする前に、前のお答えを少し補足しておきます。要するに政府のほしいままに労働協約その他が左右されるものというようなお話がございましたが、政府監督する場合には、どこまでも客観的妥当性という見地に立つて監督するわけでございます。それから運輸大臣が五十四條でたとえば労働協約についてかれこれ言う場合におきましても、労働者の保護という見地から、労働省といたしましては、横からこれを見ている、こういう立場に立つておりまするから、中曽根さんの論理は少し飛躍し過ぎる論理であると思います。  それからその次に公共企業体について、たとえば地方公共團体事業を営んでいる、そのそれぞれの事業を分離独立させまして公共企業体というものをつくつて、それに対する公共企業体労働調整法というものを予想し得るかどうかという御質問でございます。今小澤さんもお答えになりましたが、私は労働委員会において條例でできるとは申しておりません。今のところどうなるかというと、今のところは御承知のごとく、たとえば東京都の経営している質屋営業に從事する公務員についても、ポツダム政令が適用されております。そのポツダム政令がいつ撤廃されるかと言いますと、地方公務員法が制定されたあかつきには撤廃されることになります。そこでその地方公務員法をつくる際に、もし政府國家、その他皆さんがつくりたければ、地方公共團体の営んでいるところの公共事業をまた分離独立させまして、地方公共企業体といつたようなものをつくることができる。その地方公共企業体に從事する職員労働関係について、労働三法よりも別個の法規をつくりたければ、これもまたつくり得るということは申し上げたのであります。しかしいずれも法律によらなければならぬ次第でございます。
  28. 中曽根康弘

    中曽根委員 違います。労働大臣の返事は、この前の労働委員会ではそういう返事をしていない。私はそれでは午後速記録を持つて來て、あなたにお見せします。私があなたに御質問いたしましたことは、地方公共團体條例をもつてこれと同じような立法をすることができるか、こういう質問に対して、できると思う、できる、とおつしやつております。この点は私は労働大臣運輸大臣答弁違つているということをはつきりここで申し上げます。
  29. 増田甲子七

    増田國務大臣 私は当時そういう意味で申し上げたつもりでございまするが、もし地方自治法に基く條例でできるというようなことを申したとすれば、それは間違いであります。いやしくも労働三法というものは法律である。その法律特殊性條例でただちにつくり得るといつたような論理の飛躍を私がしたとすれば、非常に頭が惡くてそういうお答えをしたと、今日訂正をしておきます。
  30. 中曽根康弘

    中曽根委員 わかりました。一應打切ります。
  31. 上林山榮吉

  32. 松原喜之次

    ○松原(喜)委員 私は今回の予算の中心をなしておりまするところの給與ベースの問題について、政府の根本的な態度に関しましては、吉田首相から明確な御答弁を得たいと望んでおるのでございまするが、ただ一、二労働大臣に対して、労働大臣としてどういうお考えを持つていられるかという点をお伺いしたいと存ずるのであります。まず初めに、御承知のごとく今回の予算の基本になつておりまするところの給與ベースの算定基礎でありまするが、人事委員会案によりましても、あるいはまたその後明らかにせられました政府提案の給與ベースにいたしましても、一つは民間の賃金であり、一つは國民の生計費であるのでありますが、そのうちの民間賃金につきましては、政府案及び人事委員会案ともに七月のベースをとつておられるのであります。ところがすでに周知のごとく、七月の全國工業平均賃金から九月まで、すなわち七、八、九と、この三月の間にこれが二十%の上昇を見ておるのでありまして、その後の数字は明らかにされておりませんけれども、十一月となりますれば、おそらく二十数%の上昇になつておると推定せられるのであります。從つて民間賃金を基準にしておらるるところの両案の基礎がすでにくずれておると言わなければなりません。言うまでもなく、公務員の給與が民間給與よりも劣つておるという状態は、これはマツカーサー元帥の書簡によるもまた政府のその後に明らかにせられておる方針から申しましても、これは許さるべからざることであると私は考えるのであります。從つて労働大臣といたされましては、労働者のサービス省として労働者の最も理解ある味方として、こういうふうな根底においてくずれたところの賃金ベースをそのまま出されるというがごときことがはたして正しいとお思いになられるかどうか、この点をまずお伺いしたいのであります。
  33. 増田甲子七

    増田國務大臣 松原さんの御質問お答え申し上げます。私はあの基準を必ずしも満足するものではございません。從いましてあの数字ができるまでにつきましても、他の閣僚諸公においても必ずしも意見はあれに同意いたしませんでしたが、財政の関係上ああなるのやむなきに至つた、こういうわけでございまするから、その点御了承願いたいと存じます。しかしあれも理由がないわけではございません。しかも実質賃金から見ますと、六千三百七円を、たとえば官給品を金額に直しまして、そうしてこれを控除する。あるいは地域給の関係が非常に非常識的にできておる。そういうような見地を一應考慮に入れますと、実質賃金においてはそう大して径庭がないという確信のもとに、あの数字をわれわれは了承しておる次第でございまして、從つて政府案としては、あの点が妥当と認めて提案した次第でございます。
  34. 松原喜之次

    ○松原(喜)委員 必ずしも満足すべきものではないという御意見でございまするが、私が今申した問題は、七月にこの給與ベースの根底となつておる数字が、十一月に至りましてはすでに大きくくずれておる。從つてこれに対してむしろ計算の修正をしなければならないのではないか、そういうふうに思うのであります。從つて労働大臣のおつしやるところの、必ずしもその実質賃金が惡くないというようなことは、数字上絶対に考えられないのでありまして、むしろこれはその給與ベースをきめるときの基本的観念から申しても、十一月から実施するのであるならば、まさに修正せらるべきものであると思うのでありまするが、この点についてひとつ明らかに御意見を承りたいのであります。  それからついででありまするが、次に給與ベースの柱であるところの生活費の問題であります。人事院の案によりますると、小都市におけるところの青年男子独身者の生活費が一千百二十八円になつておる。從つて東京になりますると、これが五割増しの一千六百九十二円ということになるのでありまするが、今日学生の東京における学費について考えてみましても、大体專門学校、大学の学生は、一箇月五千円程度以上の学費を使つておるのでありまして、しかもその大部分は食費に充てておるのであります。これが世間の常識であります。いかなる計算基礎によつてこの千百二十八円が算出せられたのであるかの詳しい事情は明らかにされておりませんけれども、われわれがきわめて常識的に考えてみましても、かようにこの賃金ベースの根底となつておりますところの生活費なるものが非常に低いものである。すなわち最低生活のものであるということは明らかであるし、あるいはまたその最低生活すらも維持するに足りないのではないかというのが、社会通念における感覚であろうと思うのであります。かような低い生活水準を基礎としたところのこの給與ベースをもつて、いわゆる公務員法によつて基本的人権に対する大幅な制約を受けた反面における公務員に対する保護措置とし、その生活を保障するために十分な給與であるかどうかということは、申すまでもなく、いなと言わなければならないと思うのでありまするが、かような点に対して、労働大臣としておそらくは御不満なことであろうと想像するのでありまするが、その点については率直に労働大臣として御答弁をお願いいたしたいのであります。
  35. 増田甲子七

    増田國務大臣 七月基準生計費のCPS、CPIを計算したとおつしやいまするが、われわれといたしましては十一月までを見ております。ことに松原君御承知通り、十一月の生計費物價指数は幾分下り氣味でございます。それらの調査も考慮に入れて五千三百三十円ときめた次第でございます。賃金の決定等につきましては種々意見もございましたが、われわれは今のところ、五千三百三十円を妥当と認めて提案しておる次第でございます。こまかい点は給與局長から補足的に説明を申し上げます。
  36. 松原喜之次

    ○松原(喜)委員 こまかい答弁はまた後の機会に承るといたしまして、時間の節約の意味で、労働大臣直接の御答弁を得たい点について先に質問いたします。政府の提案しておられますところの五千三百三十円ベースは適当であると考えて提案したのであるという御答弁でありまするが、なるほど政府としてはさような答弁をされるのが当然であるかもしれません。しかしながらほんとうに労働大臣としてはまじめに労働者の味方とし、率直に自分の感じを御答弁されることを私は期待いたしておるのでありまして、政府立場は了といたしますけれども、だれが何と申しましても、七月の生計費を基準としたところの人事院案及び政府案は、多少のC・P・S等の値上りを見ていることは私も存じております。しかしながら全体として政府の案は、人事院案よりも千円少いということは明らかなことでありまして、部分的にいかように弁解をなされようとも、部分的にいかなる理論を振りまわされようとも、全体としてその待遇が人事委員会案よりも低いことは明らかなことであります。從つてかりに人事委員会案を基礎として論ずるにしても、あるいは政府案を基礎として論ずるにしても、大して径庭のないものであると私は存じておるのであります。結局政府案も人事院案も、七月の消費者の生計費を基本として考えられておりますがゆえに、たとえ政府案において多少の値上りを考えておろうとも、それは部分的な問題でありまして、むしろ人事委員会案のより優遇された案について議論を進める方が正しいのではないか、こういうふうに考えております。しかし結局人事委員会案ですら、全体としては七月の計数を基礎として算出して、それが六千三百七円ベースを定めた算定基礎になつております。從つて結論的に言えば、六千三百七円の人事委員会案は、すでに七月の算定基礎がくずれているのであるから、これを修正しなければならぬことはもとよりであり、そうすれば今日出されております予算の計算よりも、さらにふえなければならないのであつて、そのふえた計数を基本として、さらに政府が五千三百三十円案で考えられているようなところを修正して、それによりよくすべき点をつけ加えてやらるべきではないか、こういうふうに考えるのであります。そういうふうな考え方を基本として、結局算定基礎はくずれているのだからもつと修正し、もつと予算の金額をふやさなければならないということが一つ。  第二には先ほども申し上げたように、その算定基礎は詳しくはわかりませんけれども、常識的にはどうしても最低生活すら維持するに足りない。こういう生計費の計算をもつて、それを基礎として出されたところの政府案なり、人事委員会案なりの、この二つの案に対しては、だれが考えてみても満足な給與ベースとは考えられないのであります。労働者の味方であるべきところの労働大臣としては、これに対して必ずや自分の素志と違うという点があるだろうと思うのであります。そういう点について率直にひとつ労働大臣の御感想を承りたいのであります。
  37. 増田甲子七

    増田國務大臣 重ねての御質問お答えいたします。先ほども申し上げました通り、実質賃金から見ますと、いわゆる五千三百三十円案と六千三百七円案とにはあえて径庭がない、こう信じている次第であります。また予算審議の経過のことは、あまり申しても何でございますが、経過においては各種の意見がございましたけれども、今私はもちろん、大藏大臣を含めた政府全体としては、決して意思の分裂がない次第でございます。この五千三百三十円が妥当である、こう認めまして提案いたしております。のみならず、松原さんも御研究の結果おわかりでございますが、松原さんが七千三百円についてかれこれ御主張なさるのでしたらこれは別でございますが、人事院のあの勧告案の六千三百七円案は妥当という見地から出発なさるならば、むしろ勤務時間の延長、あるいは実物給與を金額に換算してこれを差引く、そういう二條件を考慮に入れますと、かえつて実質賃金は下つておるというようなことにも相なつております。殊に地域給のごときは、五割、一割、ゼロという三段階を設けるのにすぎないというのでは、困るということを公務員勤労大衆がわれわれのところへほうはいとして申し出ておる次第でありまして、われわれの地域給は非常に妥当であるというふうに公務員大衆は今言つておるのであります。それから扶養手当の方も、なるほど千二百五十円という金額は大きい金額ではございますけれども、私どもといたしましては、一般産業労働賃金との振り合いを見なければならないのでありまして、調和ある賃金体系を得るということが必要でございます。そういう見地から見ますと、松原さんも御承知通り一般産業労働者の扶養手当というものは五、六百円見当でございます。その五、六百円見当というところが、われわれはやはり常識的に見ましても、賃金安定という見地から見ましても、妥当であるというふうに考えまして、扶養手当を設定した次第でございます。金額はなるほど六千三百七円と申せば大きくはございますが、一番大きくなつた理由といたしましては千二百五十円という金額が結局本法に加わつて参りますから、大きくなつただけでございます。実質賃金はかえつてわれわれの提案の方がよろしいという確信のもとに提案しておる次第でございます。
  38. 松原喜之次

    ○松原(喜)委員 私は労働大臣に向つて賃金の詳しい議論を申し上げようとは存じません。しかし政府案が実質的に時間あるいは家族手当等の問題を考慮に入れると、人事院案よりもまさつておるという説でありますけれども、なるほどそういう点は私も認めるのであります。すなわち扶養家族手当の問題におきましても、計算上一千二百円以上にあるべきであろうけれども、今労働大臣のおつしやるように、家族手当を大きくすることによつて、全体のベースを高いというふうに見せかけるということは、結局において家族数の少いもの及び独身者の犠牲において家族数の多いものを養う、こういうふうな結果になるのでありまするから、家族給を余計與えて、それでもつてベースを高く見せかけて、そうして家族数の少い者及び独身者の給料を低く保つというその方針に対しては私は反対であり、その意味であれば、労働大臣と同じ意見を持つのであります。また地域給におきましても五〇%、一〇%、ゼロというようなものは現在の実情に合わない、私は労働大臣と同意見を持つております。但し地域給が完全なものであるとは考えておりませんので、今後もつと徹底的に、根本的に、研究して、地域給の合理化をはからなければならない。その合理化をはかるまでは、とりあえず人事院案による地域給よりは現状の方がまだましだ、こういうふうに考えておるのであります。しかしながら政府案によりますれば、家族の多い人たちに家族が生活するに足らないような家族給を與えて、それから出て來たところの金高でもつて、家族数の少い人及び独身者の給料を幾分か増すという程度になつておるのでありまして、これはとうていわれわれの承服できないところであります。その意味で独身者及び小家族の人がよいから、それで賃金全体としてよいのだという結論にはならないのであると思うのでありまして、これはどうしても全体としての賃金ベースをさらに考え直さなければならない。その一つの根底といたしまして、この小都市青年独身者の生活費が二千四百何がしかになつておりまするが、これがはたしてほんとうにこの青年独身者の生活を維持できるものであるかということをさらに檢討し、あるいはまた檢討するまでもなく、先ほどから再三申し上げておるように、常識的に見て、これは最低生活すら維持することができないものであるとわれわれは考えるのであります。從つてそれがために賃金ベース全体が家族給、地域給においては、人事院案よりも政府案がまさつておるといえども、全体として非常に不満足なというよりは、むしろ非常に不合理な低い給料になつておる、かように私は考えて、これに対する労働大臣のお考えを聞きたいと思つておるのでありまするが、ただ妥当だと考えたという御答弁だけでありまして、ほんとうにこういう給與ベースでもつて勤労者あるいは公務員が、その公務員たるの体面を保つに足るところの給料であるとはつきりと労働大臣考えておられるのでありまするか、さらに重ねてお伺いしたいのであります。
  39. 増田甲子七

    増田國務大臣 お答え申し上げます。私は抽象的に妥当であるとばかり申しておるわけではありません。数字を明瞭に提示いたしまして、妥当であるという結論を得ておるということを申し上げておる次第でございまして、今松原さんのおつしやつた小都市の独身青年公務員は二千四百七十円である、これでは食えないというお話でございまするが、その二千四百七十円の数字は人事委員会の勧告案の数字でございまして、われわれは小都市独身青年公務員は二千八百三十円という基準にいたしております。すなわち約四百円高いところに基準を置いておる次第でございまして、この見地から見ましても、われわれの設定した方が実質賃金においてむしろ高い、あえて径庭がないというのは多少謙遜した表現でございまして、実質賃金はむしろ高い。ただ実質賃金が人事委員会の勧告案より低くなつておるのは、多数の家族持ちが予期したほどはもらえなくなつた。たとえば小使さんなんかで七人の家族がございまするならば、二万円近くになるのでございましようが、それほどにはならなかつた、こういうだけでございます。
  40. 松原喜之次

    ○松原(喜)委員 そうなれば重ねて確かめておきまするが、労働大臣におかれましては、家族給を減してこの基本給をわずか四百円くらい——標準と申しますか、小都市青年独身者の生計費においてわずか四百円くらいの増額、それでもつて公務員の体面を保つに足るところの、十分なる給料と考えておられるのであるかどうか。
  41. 増田甲子七

    増田國務大臣 たつた四百円とおつしやいましたけれども、私は決して四百円ではございませんで、人事委員会の提案が小都市の独身青年公務員が二千四百七十円になつておる。これではよろしくないというので、二千八百三十円、すなわち約四百円上げた、こういうことを申し上げた次第でございまして、現在の基準は松原さんとくと御承知通り千九百五十円であります。この千九百五十円ではとても食えないということで人事委員会は二千四百七十円といたされたけれども、それではわれわれはとても食えないというので二千八百三十円にいたした次第でございまして、約千円上つておる次第でございます。
  42. 松原喜之次

    ○松原(喜)委員 重ねてお伺いしますが、人事院案よりも四百円上つたということは私もよく承知をいたしております。しかしその二千八百三十円でもつて公務員として衣食住すべての生活費において、その公務員たるの体面を保ち、そうして今世の中で言われておりまするように、公務員の給料が安いから、それで公務員が腐敗するのであるというこの常識でありますが、この常識に対しては、官界、財界、政界の淨化を唱えられますところの現内閣といたしまして、十分にこの世間の世評に対してこたえなければならない。すなわち公務員に対しては十分なる保護を與えて、そうしてその正常化をはかり、いやしくも世の中の誘惑に陷らざるような待遇を與えなければならない。從つて言葉をかえて言えば、公務員たるところの衣食住の体面が保てる程度のりつぱな生活ができなければならないというのが、本來の給與の性格でなければならないのであります。増田労働大臣は、最後に一つ明らかにしていただきたいのでありますが、あなたは常識でもつて、この給料でほんとうにそういう公務員が安んじてその職に精進し得るような給與であると考えておられるのであるかどうかを承りたいのであります。
  43. 増田甲子七

    増田國務大臣 お答え申し上げます。これら新賃金水準をもつて公務員が品位を保つことができるかどうかという点につきましては、私といたしましては返答することはなかなか困難な問題であると思つておりますが、御承知のごとく、昭和四年ないし八年に比べまして、一般の実質賃金というものは四〇%ないし五〇%に下つております。これは公務員の賃金のみならず、一般産業労働賃金すべてこれしかりでございますが、また富も生産力もやはり四、五十%に下つておる、こういう関係上やむを得ない。お互い敗戰後國民全体がこうやつて苦悶の中に懊悩しておる次第でございまして、これをもつてただちに昔のような実質賃金に返ることはできない。昔の実質賃金であるならば、公務員公務員としての生活もできましたのでありましようし、また品位も保つことができたのでありましよう。早い話が私は学校を卒業した当時七十五円いただきましたが、必ずそれで洋服二着買えた。今の賃金をもつてしては、私衆議院議員としても洋服一着程度も買えない、こういうことになつておるのでありまして、はたして体面を保ち得るかどうかということにつきましては、私はなかなか御返答申し上げかねると思いますが、これは敗戰後お互いに一種の苦難に際会して、そうして懊悩しておるこの現状をどうかお互い御認識願つて、ともども苦難に耐えて行きたい、こう存ずる次第であります。
  44. 松原喜之次

    ○松原(喜)委員 増田労働大臣が、この給與によつて公務員の体面を保つに足る給料であるかどうかについては、はなはだ疑問を抱いておられるような率直な御答弁でございましたので、私もその点は了とするのであります。さてそこで公務員のみならず民間賃金の問題、これに対する労働大臣としての心構えの問題が出て参るのであります。すなわちただいま労働大臣も生産が戰前に比べて非常に低くなつておる。從つて実質賃金も低くなつておるのだ、こういうふうにおつしやつておられますが、昭和十二年を一〇〇としますと、生産指数はたしか九月四〇%ちよつと余りだつたと思うのであります。それから実質賃金は三〇%を超さないのであります。また昨年の賃金に比べて本年の賃金は、全体といたしまして実質賃金の上昇を見ておるということを各方面で言われておるのでありまして、私もそれを認めるのでありますけれども、しかしながらこれを生産指数の上昇にさらに價格の上昇を積算いたしますと、賃金の値上りよりは、むしろ生産物の全体の價格の上昇の方がはるかに多いという結論になつておるのであります。昨年よりも少くとも本年の方が賃金支拂能力がふえておるというのが実情である。こういう際におきまして、そうしてまた一面労働者の賃金が全体に比べて、実質的には非常な低位にあるという実情を加えて考えまするときに、政府におかれましては賃金をなるべく低い線にくぎづけにしようというような考え方は、非常な問違つた考え方でありまして、やはり賃金の眞の安定というものは、賃金の支拂能力も考えなければならない。しかしながら生活自身、実質賃金自身の向上も考えて、初めてほんとうの賃金の安定があるのだという考え方に立ちますと、どうしても賃金は物價なり生産なりとともに、こういう実情のもとにおいてスライドして、できるだけ上げて行かなければならないというのが、これが眞の賃金安定の方策であり、また労働省としてはそういう方針をもつてひとつ鬪つてもらわなければ、労働省存在の意義がないと私は考えるのでありますが、賃金安定に対する考え方、ことに低い賃金をできるだけくぎづけにしようという考え方に対しまして、労働大臣はいかなる考え方をしておられるか明らかにしていただきたいのであります。
  45. 増田甲子七

    増田國務大臣 政府は決して低賃金政策をとつておるわけではございません。要するに賃金と物價の惡循環を断つために、賃金安定策を経済十原則の一つとして示された以上は、できるだけ早く実現いたしたい。但しこれを実現するにあたりましても、一般産業労働賃金、公務員の賃金、すべて産業別、事業別でそれぞれ賃金の個性はありますけれども、調和のとれた賃金体系を得まして、そのときに安定策を講じたい、こう思つておる次第でございます。それから生産力の発展のぐあいと、賃金のぐあいとの指数の差異のお話がございましたが、実効價格と実質賃金を比べてみますと、実効價格の値上りよりも賃金の値上りの方が多くなつております。それからS・P・Sの実質生計費の上り高よりも実質賃金の上り高の方が、去年の二月の一〇〇といたしますと、S・P・S関係は三五〇くらい、実質賃金は五〇〇くらいに相なつておる次第でございまして、決してこれは私の内閣だけを言うわけでございませんが、吉田内閣のときにおきましても、また片山、芦田両内閣のときにおきましても、低賃金政策をとつておつたのではないということをこの際言明いたしておきます。
  46. 松原喜之次

    ○松原(喜)委員 労働大臣が低賃金政策をとる意思はないと言明くだすつたので、私はなはだうれしく思うのでありますが、その反面において労働省としては高賃金政策をとつて行かれる御方針であろうと考えるのでありますが、はたしてそうでありますかどうか。たとえば民自党で唱えておられるように、高能率高賃金はなるほど理想としてはそれでけつこうでありますけれども、今最低生活さへ保障されていない、不満足な生活賃金が一般に普及実行されておる時代におきまして、ごく一部の例外を除いて、高能率高賃金政策などというものは、実際的には行われない実情にあるのであります。從つて最低生活すら維持されないような低い生活賃金をできるだけ上げるという方針をとつて從つてこの賃金安定方策に対しては労働省として高賃金、しかもそれは生活賃金における高賃金政策のために、十分に御努力くださるように私は希望したいと思うのであります。
  47. 増田甲子七

    増田國務大臣 御希望のようでございますからお答え申し上げる必要はないと思いますが、十分御希望を取入れたいと思つております。但し高賃金と申しましても、賃金と物價の惡循環などかまわない、どんどん上げるという趣旨ではございませんで、私は能率を上げれば賃金を上げるという賃金政策をとつておる次第でございます。
  48. 松原喜之次

    ○松原(喜)委員 労働大臣の御答弁によりますと、あまり明確ではありませんけれども、大体において現在の賃金は低い、從つて公務員の給料もまた低いというふうなお考えであろうと思うのでありますが、その反面においてできるだけ高賃金に持つて行かなければならないというお考えのようであります。從つてそれと今回の公務員給與のベースの問題と結びつけまして、労働大臣としてはいろいろ財政上その他いわゆる諸般の事情によつて、わずか五千三百三十円ベースをもつて適当なものなどというふうな苦しい御答弁をなさらなければならないようなことに相なつておるのであります。私は今日人事委員会が出したところの給與ベースにも満足するものではありませんし、もとより政府案には反対をいたしたいものでありますが、労働大臣といたされましてはこの給與を定めるにあたつてはまず給與自体としてよく考えて、諸般の事情のあるものはできるだけこれを克服するという態度によつて、できるだけ給與ベース自体として考えられたものを実現するように努力するのが、これが政府の義務であると私どもは考えるのでありますが、労働大臣はどういうふうにお考えでありますか。その点について御意見を承りたいのであります。
  49. 増田甲子七

    増田國務大臣 給與予算なり賃金設定の際における心構えについてのお尋ねであります。給與はかくあるべし、あるべき給與というような見地から一應考えろというお話でありますが、そういうことにいたしますと、これは水準の立て方でございますが、たいへんなことにならぬとも限らぬと思います。と言うのは、松原さん御承知通り昭和四年ないし八年に比べまして、あの当時の実質賃金を一〇〇といたしますと、今日はまだ四〇という程度でありますが、もしあるべき賃金が一〇〇といたしますと、これはたいへんなことになりますし、現在の日本の生産力なり、現在における國民の消費生活における指数、すなわちCPIならCPIという見地から算定し、それから過去における三千七百九十一円なら三千七百九十一円というものをやはり算定の基礎として、そうして総合勘案すべきものというふうに考えております。
  50. 中曽根康弘

    中曽根委員 私は農林大臣に簡單にお伺いいたしたいのであります。まず第一は農業関係の税金の問題でありますが、昨昭和二十二年度の税金の問題を檢討してみますと、大体農業関係の所得税の課税が約四百億円に上つております。農業所得はどれくらいかというと、これは勧銀や安本や農林省の統計ではそれぞれ違つておりますが、大体一千四百億円程度に算定されておる。そうすると農業所得税は大体三割強になつておるようであります。そのほか地方税を合せると、農業関係に來た課税は実に六百四十七億程度でありまして、國家財政のうち約四割七分くらいを農村が負担しておる実情になります。これを群馬縣の例で見ますと、租税膨脹率は昭和八年、十年を一〇〇とすると昭和二十二年においては國税において驚くなかれ千八百倍というくらいに上つております。縣税において二千八百倍、市町村税において二千倍、こういうふうに上つております。國民経済全体の負担を見ると、昨年くらいまでは農業がある程度負担することも可能であると思うのでありますが、しかしこれでも相当過重である。そのために農村においては供出と税金の過重のために耕作放棄が方々に起つておるのでありますが、本年度の課税も去年と同じ程度の心構えでやるのかどうか、この点をまず一般的にお伺いいたしたいと思います。
  51. 周東英雄

    ○周東國務大臣 お答えいたします。中曽根さん御指摘のように、今日までの税金の負担割合において、農村がかなり大きな負担をして來たということはお話の通りであります。終戰後今回まで比較的に災害をこうむることの少かつた農村に、生産から、供出から、課税にまで、國家財政の上からかなり大きな負担が課せられたことは事実であります。今後はたしてこれと同じような形で行き得るかどうかということについては、多分に私も疑問を持ちます。そこでただいま私どもの方で研究いたしておりますのは、農村課税のあり方についていかにすべきかということについて研究もし、財政当局と折衝をいたしておるのでありまして、要するに農業所得の算定の方法について改善してもらいたいということが一つと、もう一つは、何と申しましても、御承知のように申告課税になつておりますが、その申告課税について今日までは一方的に財務当局等の方がやつておりますが、これらにつきましては、もう少しいわゆる民主的にと申しますか、地方の農民代表等を参加せしめて諮問する。それらをして内面指導をせしめるというような方向に持つて行くことがよろしくはないか。こういうふうないろいろな面からいたしまして、目下いろいろと折衝をいたしておる最中でございます。
  52. 中曽根康弘

    中曽根委員 農林大臣の御努力を私も非常にありがたく思うのでありますが、今まで各大臣はいずれもそういうような御答弁をなさつておるのであります。そして事態は依然として改善されないのですが、大藏当局に対して、農林省として具体的にどういう対策をとつておられるのか、もう少し具体的に私はお伺いしたい。
  53. 周東英雄

    ○周東國務大臣 今いろいろな項目について折衝をいたしております。たとえば所得額決定の中の一つとして、農村の中間生産物、自給肥料というようなものにつきまして、その收支の計算上の仕方において、支出の場合には前收穫期が押えられておる。收入の場合には供出時期が押えられておるという時間的ずれがあるというところにも、矛盾というか不公平が生ずる場合がある。米價決定についても同樣であります。そういうような事柄からして、所得額の決定等に対する基準改正というものの一つの例を申し上げたのでありますが、まだいろいろと折衝中でありますから、このくらいの事例で御了承願いたいと思います。
  54. 中曽根康弘

    中曽根委員 次に、今度の追加予算に盛られました租税の自然増の中で、申告課税が約百三十九億でありましたか、載つておるようであります。現に中小企業については、十月十五日付をもつて更正決定が來て、これが税金の大旋風を巻き起しているのでありますが、いずれ農業については來年一月ごろ來るという話であります。その際にこれらの予算がもし通過すると、それもひつかぶつて出て來るだろうと思うのでありますが、これは農村に対してまた非常な過重な負担を與えることになるだろうと思う。そこでこの百三十何億かの申告課税のうち何%を農村に振り向けるつもりか、この点をお伺いいたしたいと思います。
  55. 周東英雄

    ○周東國務大臣 ただいまの御質問に対してはまだ大藏当局と話合つておりませんが、これは私どもの方としてはでき得る限り農村に対する所得の嚴正な判定のもとに課税を進めて参りたい、こういう交渉はいたしております。  私先ほどちよつと申し落しましたが、これは一面政府にいろいろなことを要求するとともに、できれば今のような申告課税に対して、これが正しいあり方であるということを証明するがために、むずかしいことでありますが、農家を指導して、今日の供出制度の上から考えて收入、支出を明細にする、そうすればこれだけ正しかつたという主張ができるのであります。それらも一ぺん相互の関係において考慮すべき点だ、かように考えております。
  56. 中曽根康弘

    中曽根委員 この際農林大臣にお願いいたしますが、戰爭前と戰爭後における農村課税に関する一つの資料を御配付願いたいと思うのであります。農林省においてもどうせ大藏省に折衝する場合の資料として、お取寄せになつておるだろうと思いますので、全國平均して見て、農家がどのくらいの國税及び地方税を負担して來て、それが戰爭前とくらべてどういう状態になつておるか、この資料を一つお願いいたしたいと思うのです。  もう一つ、私は今の大臣の御答弁を承りまして、今度の追加予算に盛られた所得税の農業関係の負担について、まだ御存じになつておらないようでありますが、これは農民にとつては一番重大な関心事なのであります。大藏省がこの原案をつくるに際しても、当然農林省と折衝してせられており、農林省もある程度内閣の一員として許諾を與えてこれを出されておるのだろうと思います。從つて当然知らなければいかぬ問題であろうと思うのでありますが、この内訳について農林省にその資料がなければ、大藏省に話でもしてもらつて、農業所得をどのくらいこの中からとるか、その大藏省の基礎資料をいただきたいと思うのであります。  それからもう一つは、今度の予算折衝について、特に課税関係につきまして、農林省の方で大藏省に対して折衝した場合のいろいろな御主張があるだろうと思うのであります。その関係資料もあわせて御配付を願いたいと思うのであります。  その資料をまずお願いいたしまして、その次にお伺いいたしたいことは、農林金融問題であります。御存じのように前の内閣のときに、農村金融を打解しなければいかぬというので、特別の措置をとつたはずでありますが、あの当時は月五億円でありました。これについて現内閣は今どういう措置をおとりになつておるか、またおとりになるお心組であるか、お伺いいたします。
  57. 周東英雄

    ○周東國務大臣 ただいまお話の資料につきましては、でき上つておるものがあれば至急にお目にかけます。  それから第二の前議会の終りに決定いたしました月額平均五億、八箇月分四十億の農業復興資金の問題につきましては、実は組閣早々でありましたが、そのうち半分の二十億を至急にこの十二月までに出すように一應決定を見、それぞれ今関係の方面に分割融通の方法をとらしております。
  58. 中曽根康弘

    中曽根委員 前内閣がきめましたそれを御踏襲なすつておるのはあたりまえのことでありますが、現内閣として特に農林金融に重点を入れて、これを打解するという方途を講ぜられないものでありましようか。また過去今までの経過において、この前の内閣の決定によつてどのくらいの金が農村へ融資されておるか、その点をお伺いいたしたいと思います。
  59. 周東英雄

    ○周東國務大臣 お答えいたします。今の決定された四十億は最近まで一つも出ておりません。それで至急に実は十一月になりまして、二十億を十一、十二月のうちに出すように処置をいたしたのでありますが、お話のようにこれだけで実は足りるものとも思つておりません。これは農林、漁業各般を通じての長期資金、施設に対する資金であるのでありますが、これが月五億平均じやとても足りませんので、これを行く行く増額し、これを恒久化していただくように努力中でありますとともに、これは長期資金であります。一体営農資金あるいは農業等に着業する資金としては、中期、短期の資金が要るものと思います。こういう面については現在の段階において中央金庫等を通じて、農業関係においては農業協同組合を通じてこれを組合員に出させる方途を講ずるということが、一番いいのではないかと思つておりますし、これは中曽根さん御承知通り、農漁業に対して今日短期、中期あるいは長期を問わず、終戰後あまり政府がめんどうを見ておらないのであります。こういう点についてはすでに前内閣当時に四十億が出ましたが、これらの面について増額をいたしたいということで、これを恒久化したいということと、並びに中期、短期に関する中心は協同組合が農漁業について動きますが、しかしこれらに対して政府資金の裏づけがなければ、今日なかなか自己資金だけでは足らぬのでございます。そういう面について中央金庫を活用して行くことがよろしいのではないか。ことにこれは特別金融機関の組織の問題については、別途研究いたしておりますが、應急の措置としては、何といたしましても中央金庫等を通じて企業資金を流し、これを協同組合を通じて動かすということが行き方でないかと思つております。
  60. 中曽根康弘

    中曽根委員 その中央金庫を通じて流す中期あるいは短期の資金については、どういうふうな方面で調達いたすのであるか、その点をお伺いいたします。
  61. 周東英雄

    ○周東國務大臣 これはできれば復金に融資すると同じような立場において、直接政府が考慮して行くのがよろしかろうと思いますが、それらについては目下折衝中であります。ただいまの災害に対する應急資金として、復金を通じ、あるいは預金部の資金が出ましたのも、一部は中金から出て、それがあるいは営農資金あるいは炭がま建設資金等になつて出ております。この制度も活用すれば、復金等から中金に流して行つておりますが、いずれにいたしましても、政府が何か資金のあんばいをしなければならぬと考えております。
  62. 中曽根康弘

    中曽根委員 もう一つ、税金についてお伺いいたしますが、前内閣当時において、超過供出については半分免税する、こういうような閣議決定をやる段階になつておつたはずでありますが、現内閣の追加予算案を見ますと、そういう措置がしておらないようであります。もちろん前内閣のときといえども、これは行政措置をもつてあんばいするというようなことを聞いておつたのですが、あの超過供出の税金を半分免除するという点について、現内閣はどういう措置をとるか、この点をお伺いいたします。
  63. 周東英雄

    ○周東國務大臣 中曽根さんのお話でありますが、前内閣のときに、もしあれが免税ができるものならば、最後の閣議ででも決定になつたはずであります。これはまあいろいろ御承知だと思いますが、いろいろな事情でこれができなかつた。前内閣の当時お考えなつたような行き方で、農民に対してあとから税金をとることはなるたけ避けたいということで努力いたしましたが、どうしてもそれが目的を達成できません。今明日中におそらく発表になると思いますが、どこまでも收入ある者に対しては課税をするという方針が堅持されております。いろいろこれは特別な関係だからと思いまして、私も努力いたしましたが、いけません。結局超過供出等をなし得る農家は、それだけの生産の増加に対して施肥あるいは労力等をよけいかけているだろう。それだけ必要経費が普通の農家よりも増額している。これらはその意味においてこれを收入金額から差引いて、課税の対象としない。こういう方向で進んで行くことに決定をいたしているわけであります。
  64. 中曽根康弘

    中曽根委員 今の超過供出については、その分については特別に費用がかかつているであろうから、その点について必要経費の面で味をつける、これは閣議決定ですか、それとも大藏省、農林省の間の協定でもできたのですか、その点をお伺いします。
  65. 周東英雄

    ○周東國務大臣 これは今明日中に一應閣議で決定して、そのうち発表するようになると思います。
  66. 上林山榮吉

    ○上林山委員長 速記をとめて下さい。
  67. 上林山榮吉

    ○上林山委員長 速記を始めて下さい。
  68. 中曽根康弘

    中曽根委員 次に最近追加予算が出まして、政府の案によると五千三百三十円ベース、こういうものが提出されておるのでありますが、これに伴つて前に決定されました米價は当然改訂されるか、あるいは特別の措置がとられなければならないと思うのであります。前にいろいろ言われました返還金であるとか、そういう措置を一應考えなければならぬと思うのでありますが、五千三百三十円ベースに関連して、米價についてどういう措置をおとりになるか、農林大臣の御所見を承りたい。
  69. 周東英雄

    ○周東國務大臣 一應ごもつともでございますが、賃金水準の増加によつてそれが物價に響いて來、パリテイー計算の場合に用いられた農家生活必需物品項目の物價に影響して來るということになりますれば、その際におのずから米價の変更ということが起るかもしれないと思つておりますが、ただいまのところ、ただちに変更することは考えておりません。
  70. 中曽根康弘

    中曽根委員 しかし基本賃金が三千七百円から五千三百円にかりに上つたとすれば、千数百円というものが上つておるわけでありまして、それが当然諸般の物價に響いて來ることは明らかな事実であります。それが米價に響き、農業関係の生産費に響かぬということは絶対にないのでありまして、具体的に考えてみても、たとえば農家が使ういろいろな配給品やその他やみで買うものの價格は、マル公を上げないにしても当然これは上つて來る問題です。一般物價に相應して上つて來るわけです。そうすると農業の再生産は現実にはできない。それに加えて農業課税でしぼられるということになると、農村はまつたく立ち行かぬ状態になります。それに対して当分お考えになつておらないということは私は納得が行かないし、農家を見殺しにするような考え方であつて、農林大臣のお立場としてはどうかと思いますが、これに対して依然としてそういうお考えをお持ちでありますか、伺いたいと思います。
  71. 周東英雄

    ○周東國務大臣 ごもつともなお話でありますが、米價決定に関してパリテイー計算に用いられるものの價格というようなものは、大体公定價格の上において決定されておるものであります。從つて賃金ベース引上げに伴うて諸物價改訂ということが行われますれば、それと関連して考えらるべきものでありますが、御承知のように今のままで、そういうことがない場合におきましても、いろいろな意味において物價高騰によつて米價が変動するということがあれば、通常の状態においては來年——いつも六、七月ごろですが変更が起り、それによつて農家に対しては追加拂いをするというようなことになると思います。諸般の事情によつて他の物價の改訂が起れば、それと関連して当然考えらるべき問題であります。
  72. 中曽根康弘

    中曽根委員 政府の方は物價改訂をやらないとおつしやつておりますが、これは内閣全体として來年の二、三月ごろぐらいまで依然としておやりにならないお考えであるか、これを私は米價の問題に関連して確答をお願いいたしたい。
  73. 周東英雄

    ○周東國務大臣 これは泉山安定本部長官から演説をいたしました通り、諸般の事情全体を考えて、やるとすれば來年になつてからということを申し上げておるのでありまして、ここ当分の間、物價改訂については今問題にしておらないのであります。
  74. 中曽根康弘

    中曽根委員 最後に農村工業についてお伺いいたしますが、御存じのように税金に苦しめられ、供出に苦しめられた農村の行方は、どうしても農村工業振興によつて打開しなければいけないと思うのであります。その農村工業の振興については、内閣の政策の一つとして取上げられておりますが、具体的にどういう方面で、どういう方法でこの振興をおはかりになるのかお伺いいたします。
  75. 周東英雄

    ○周東國務大臣 農村工業の奬励ということが、農家経済の安定の上から、ことに農家経営の多角経営化に即應しての必要な問題であることは、御指摘の通りであります。これに対しては農業協同組合等を主体として農村工業をやる場合、あるいはその他の團体においてこれをやる場合等を問わず、通じてこれに対して必要な資金の融通ということについてまず第一に考えているわけであります。これに対しましては、今日一億五、六千万円の融資のわくがきめられておりますが、今後はさらに農村工業として認むべきもの——いろいろなものが出ておりますが、その間に優先順位をつけつつ拡大して、そしてこれに対して融資の金額のわくをもう少し増額いたしたい、かように考えております。さらにこの農村工業に対しましては技術的な指導について、ものによりましては、國がその試驗所等を設けましてやつておりますが、これも拡大して行きたい、かように考えております。
  76. 中曽根康弘

    中曽根委員 もう一つ簡單に伺いますが、現実問題として地方の農村において困つているのは、農村工業を興したいけれども、この場所で何を興したらいいかということがわからないことと、それからその金をどういうふうにして調達したらいいのか、それが地方の農民にはわからないので、それを指導してやることが一番大事だろうと思うのであります。そういう意味において都道府縣において、農村工業振興委員会というような委員会をつくるとか、あるいは農務課でそういうようなめんどうを特に見てやつて、それを農民によく知らせてやるとか、そういう措置が必要であると思うのでありますが、この点について大臣の御所見を承りたい。
  77. 周東英雄

    ○周東國務大臣 その点は中曽根さんの御指摘の通りでありまして、実は私就任して驚いたことは、縣廳あたりでもよく徹底してわかつていない、むしろ民間の方から農林省の係に頼みに來る、それなら縣廳を経由しなければいかぬと言うと、縣廳は知らないと言う。そういうような縣が——名前を上げてはいけないが二、三あるのでありまして、御指摘の通り、せつかくやろうとしている事柄が、下部に浸透しておらないうらみがあるのであります。これは行政機構上の浸透とともに、今お話になつた技術、あるいはどういう品目をやつたらよろしいかということについて、御指摘のような点を考慮してみたいと思います。ただ昨日本会議でも申しましたが、科学技術浸透の面に関連して、経済研究部というものが今度農業改良局にできております。これらは農業経営に関連しての、今の農村工業を、どういう品目を、どういう地方には何を進めたらいいかというようなことも研究いたしております。つまり地方々々における農業者、專門家というものを加えた專門委員のようなものを、普及員につけて地方に設置してありますから、そういう面とも連絡し、かつ地方の意見を聞いて進めて行きたい、かように考えます。
  78. 中曽根康弘

    中曽根委員 よくわかりましたが、特に私が大臣にお伺いいたしたいことは、都道府縣において農村工業を振興する機関がはつきりしていない、また農民がどこへたよつたらいいかということがわかつていないそのことであります。これは縣廳の農務課がやるなら農務課でもよろしい、あるいは特別に農村工業振興委員会というものをつくるならそれでもよろしいが、どちらかで、どういう方法でやるかということを、私は明確にお聞きしたいと思います。
  79. 周東英雄

    ○周東國務大臣 今ここでどの部でどの課でということはちよつとお答えしかねますが、今の都道府縣等に振興委員会等を設置することについての御意見は十分参酌し、かつ各府縣における所属部課というものについてひとつ研究をして行きたいと思います。実はほかの場所でも進んで農村工業局というようなものを農林省に設置する意思はないかというような御意見もありましたが、ちようど中曽根さんと同じ心配から出ておるので、農村工業の振興の立場から御意見を尊重してよく考えてみたいと思います。
  80. 上林山榮吉

  81. 井出一太郎

    ○井出委員 昨晩に引続いて農林大臣に若干お尋ねをいたします。本委員会は晝飯も拔きで非常な精励でありますが、委員席はどうも寥々たるもので、この点は私も若干文句があるのでありますけれども、ともかくできるだけ簡潔に委員長の御趣旨に從いまして質問を続行します。  最初に農村恐慌の問題について御所見を承りたいのでありますが、今日農村恐慌という言葉は何かしら幽霊におびえるがごとく農村に彌漫をしております。一時食糧の絶対量の不足から起つた非常に現象的な農村好景氣、こういつたものは今日跡を絶ちまして、一部の蔬菜作地帶、あるいは果実園藝地帶等を除きましては、農村は再びかつての恐慌が近づいておるのではないかという不安にかられておるようであります。これは將來起るであろうところの國際農業の脅威、こういうような問題は、貿易が連合軍の管理下に置かれておる今日、まだ若干將來の問題に属すると思いますが、しかし國内だけの問題を考えてみましても、農村で賣る物は非常に安い。しかもこれは供出制度を通じまして、供出の時期、数量あるいは價格いずれもがんじがらめになつた嚴格な統制のもとに置かれております。けれども、逆に農家の買うところの必需品は、日本工業が極度の破壞を受けております関係から、生産コストが非常に高くつく。從つて農村経済というものは賣る物は割り損であり、買う物は割り高い。この面からいわゆるシエーレの拡大となつて、農村はこのままでは立ち行かなくなる。從いまして、國際農業の脅威を受ける前に、國内にかような現象が始まつておるのでありますが、まずこれに対して周東さんはその道の御專門であられますし、周東農政という言葉も世上ぼつぼつ出て参りますから、周東農政の骨子とでもいうような点に触れて、恐慌対策を一應承りたいのであります。
  82. 周東英雄

    ○周東國務大臣 お答えします。井出さんの御指摘の農業恐慌についての今後の見通しでありますが、おそらくお話のようにここ当分農産物の過剰から來る恐慌ということは起らないのでありましようし、またそれがありましても、それは政府が少い場合に備えて、買上げの処置をとるということによつて、農産物價の維持ということもできるのであり、また過去においてもその例は試驗済みでありますが、ただ問題は御指摘のように、農産物價格と工業生産品價格、すなわち農業者の必需物資、農業用資材並びに生活必需物資との價格の差、すなわちシエーレの幅の大きくなるに從つて、これが強化して農家経済を圧迫するということは、これはよほど注意しないと來るのであり、すでに一部はその兆候を表わしておるのではないか、かように私も考えるのであります。これについては何と申しましても、一面農家に対して農産物、食糧等の生産をお願いしている立場から言いますと、どうしてもその必需物資の價格について、政府は処置すべき必要があると思う。それにつきましては、何と申しましても、これは國全体の協力を得て、工業生産品の原料資材等の施設に関してその増加をはかり、ことにそれに対しまして、外國に依存しなければならぬ部面については、大きく外國の輸入を懇請することによつて生産量を増す。一面今日いろいろ問題になつておりますそれらの生産工場の健全化、合理化ということが実行されなければ、数量がふえましても、稼働率以上の從業員を抱いて生産コストがより以上高くなると、結局その生産品の價格は高くつくわけであり、それが農家に影響を及ぼしまして、農家経済を圧迫することになると私は思うのであります。もしどうしても工業生産品の價格を下げないとすると、それに應じてやはり農産物價、ことに米價等の引上げをなすことがやむを得ない結果として起るのではないか、かように私は思います。それらを通じてながめたときに、農産物價と工業生産物價との均衡を得せしめるということが、さしあたつてまのあたり起り、また起らんとしつつある恐慌に対する処置だと考えます。
  83. 井出一太郎

    ○井出委員 工業生産物との対比において農家経済が圧迫されるおそれを、今農相のおつしやるような方法において防衞されようという御見解には同感であります。ただ今のお話の中にありました日本の農業は、食糧の絶対不足というこの段階に立ちまして、おそらく当分の間は強い國家統制というものが加わるに違いないと思うのであります。その際に民自党の政策の中で、何かしら自由経済的なにおいを発散させながら、自由に対する農民諸君のほのかなるあこがれとでも申しましようか、そういうものに誘いの手を向けていらつしやるような政策がまま現われている。この間米の供出完遂後の自由販賣という問題について、本委員会においても農相大分苦しいところへ追い込まれていたような問答を私伺つたのでありますが、この段階においては、どうも失礼ながら民自党のとつておられる自由をにおわせたような農業政策は、ちよつと無理ではないかと思いますが、この点ひとつ御見解を伺いたいのであります。
  84. 周東英雄

    ○周東國務大臣 御意見でございますが、これは結局私は食糧問題等に関しまして、でき上つたものの分配問題についていろいろ議論されているのですが、ほんとうを言うと、農業生産それ自体を高めるためにも、ある種の供出後における自由処分ということが、一定制限の中に徐々に考えられて行くことが、生産増加にもなるじやないかというのが、われわれの一つ考え方であります。われわれは單に政党の意識からということよりも、國民全体の考え方から言えば、農民の生産意欲を向上しつつ全体的に数量を多くするということが、究極するところ、國民全体の利益になるのではないかということからその考えが出ているのであります。自由経済とかいうことが惡夢のように考えられておる面がありますが、これは結局人間本來の姿に返る時期を考えているだけでありまして、その意味から言うと、眞劍に私は考えてみる必要があると思うのであります。ただその時期というものはお話のように限られたものではありますが、常にわれわれは考えて行かなければならぬ。これは戰前の姿にすべての経済機構が返るものとも考えませんけれども、しかし少くとも戰前における姿というものは、あらゆる面において自由があつたと思う。その通りに返るとは思いませんけれども、戰時中の経済の行き方が、戰爭の済んだ後における経済社会の状態をどつちにもどして行くかということになれば、私はやはりそこに基礎を置いて行くのが正しいのだ。ここにおいて私どもの党と——社会党の諸君がここにおられますが、まじめに考え違つておる点がある。社会党の諸君の議論に私は必ずしも反対しないのでありますが、この根本の基礎は常に統制経済というものが究極の理想であつて、いかなる場合にもそれがよろしいというお考えと、われわれは究極の理想は自由経済、しかしその経済に返る段階においては、経過的に一つの統制経済もやむを得ないとすることが根本に違つておるのであつて、その点は私ども常に現在の各種の情勢を頭に置き、そして漸進的にこれを考えたいと思うのであります。
  85. 井出一太郎

    ○井出委員 この点は意見になりまするので、私もそう深く掘り下げることはやめておきたいと思いますが、日本の農業経済の基本構造が自作農を中心とする一つの独立小経営という形でありまする以上は、農林大臣のお考え方も一應は理由があると思います。しかしながら私どもは常々この農業というものを、一つの協同主義的な方向に指導をいたしたいと思つておるのでありますけれども、まま自由経済的な誘いの水が、ことさらに農家をかたいからにとざして、自分だけの個人的な経済がよければいいのだという方向に持つて行きやすいのではないか。民主自由党の政策などがこの点に拍車をかけておる懸念があるのではないかという感じを持つのでありますが、この問題はもうこれ以上は意見になりますので差控えておきたいと思うのであります。  そこで先ほど中曽根君の質問中にもありました通り、賃金ベースが上ることによつて、これが米價にどの程度に影響があるか。大臣は農家の必需購入品目に値上りがない以上は、米價を改訂する必要がないというような御見解でありまするけれども、これはやはりパリテイー計算自体にも相当に影響があるものと思うのでありまして、單に名目的な、公定價格の面に現われた農家購入資材というものは、これはあるいは國家統制によつてくぎづけになつておるかもしれません。けれども一般的な賃金の値上り傾向というものは、当然一つの潜在的な物價高というものを呼び起し、やみ物價というふうなものはそれによつてつて來るのはあたりまえであります。從つて農家の購入物資がことごとく公定で入るならばよろしい。その多くの部分がもしやみでなければ買えないとするならば、あるいはまたパリテイー計算において基準年次として選んだところの当時の品物と、今日の品物と、品質において差があるというならば、これまたパリテイー計算自体に相当問題がある。こういうふうな意味合いにおきまして、現行のパリテイー計算制度というものについて、これを何らかの方向に是正をするお考えはないか、この点を承つておきたいと思います。
  86. 周東英雄

    ○周東國務大臣 お話の点はまことに同感であります。米價の決定に対してパリテイー計算が行われておりまするが、それにしても去年とことしとはまた大分かわつて参りました。私どもは常にパリテイー計算方式によるとしても、その中にとらるべき品目並びにその品目中に加えらるべきウエートの置き方ということについて、絶えず改善をして行きたいと努力をいたしておりますると同時に、実際問題といたしましては、これだけで考えるほかに、ある程度のやみの品物が使われているということは公然の事実であるとすれば、生産費というものに対して再生産費というものを参考にしてもらいたい。こういう氣持を持つて、今日考慮研究を続けている次第であります。
  87. 井出一太郎

    ○井出委員 ただいまのお言葉の中に、農業の再生産費を考慮されるという御言明は、私は非常に意を強ういたすのでありますが、ともかく單なるパリテイー計算のほかに生産費の面を考慮することは、機械的でなくてほんとうに実質的な農業再生産を確保するためには当然だ。こういうふうな考えを私の党などは常に抱いているのでありまするが、どうかさような意味で農林大臣も生産費計算というものにもう少しウエートを置かれた御研究をぜひお願いしたい。このように考えるのであります。そこでもう一つお伺いしたい点は、日本農業が非常に零細経営であり、しかも一朝恐慌という場合には、企業の面においてこれを受止めるのではなくして、生活の面を切り詰めて人間以下の生活をすることによつて、これを耐えて來たというのが過去の実例だろうと思うのであります。そこで何とか日本農業をもつと高度化しなければいかぬ、合理化しなければいかぬ。そのためにはそれは多角経営的なあるいは酪農を含めて、あるいは果樹園経営等をミツクスした農業というものがいろいろ言われておりまするが、同時にいわゆる機械化と申しましようか、今のような零細な耕地ではいけない、相当に大きな耕地の上に立つた大農経営的な機械力、電力等を相当に織り込んだ農業というものも、巷間においては無條件でこれを是認するというふうな意見もあるかのようであります。けれども水田農業というものに根幹を置いた日本農業というものが、はたして單純に機械化がそこへ及び得るかどうか、こういうふうな点も考えあわせますときに、日本農業の將來というものは非常にむずかしく相なるわけであります。かようなことは專門家でありまする農林大臣には釈迦に説法の感がございまするが、ともかくいわゆる合理化、高度化、機械化、こういうふうなことによつて、さもなくも過剩である農村人口というものが、他にはけ口がない限りは、これは事態がさような進歩的な経過をはばむことに相なつて來るだろうと思うのであります。この進歩的な方向へ合理化するために、そこから一歩出て参るところの農村人口のはけ口を、何らか雇用のチヤンスというものをあわせ考えなければ、農業政策は成立たぬであろうと思うのであります。この点についての大臣の所見を伺いたい。
  88. 周東英雄

    ○周東國務大臣 お答えしますが、ただいまの御意見私も大体賛成であります。農業の機械化、動力化ということを言われますが、これは御指摘のように、水田経営を主としておる内地においては、それほど大きな農業経営自体においての機械化、水田経営自体においての機械化ということは困難ではないかと思います。ただ北海道のような比較的畑地農業の多い所では、一部これができる部面もありまするが、この点はお話の通り大体同感であります。ただ今後における生産したものの加工工業、あるいは生産したものについてのもみすり、脱穀調整というような方面に、電力化というようなことが相当大きく考えられる問題はあると思います。これは電力化問題については、進んで行けば私は今のような買電をやつてはだめだと思う。どうしても小規模でもよろしい、町村あるいは農業協同組合が主体となつて、自家用発電をやりつつこれを電力化するということになれば、相当に大きな面において農家の労力を助け、その労力を助けた余剩の力をもつて、農村工業等への方向に向けて行くということができるのじやないか。もちろんお話のように、あまりに機械化に対して多くは期待はできませんけれども、一部電力化への方面からいたしまして、節約し得る労力をもつて農家の收入増加のため多角経営の方面に向ける。その間における農村の生産物を中心としてなす農村工業、並びに都会地からの部分品を受けて、これを組み立てる農村工業、いろいろな面がありますが、そういう面へ節約された労力を向けつつ農家の收入増加をはかり、経営を安定せしめるということが必要であろうかと思いますので、御指定の多角経営をなす面につきましても、やはり動力あるいは電力化ということは考えられると思います。  さらに過剩な人口についてどうするかということは、ただいま申しました一部は工業地帶の再編成というか、これがやはり大きく考えられて行き、そこへ農村の過剩の人間を吸收するということが一つの方面でありましようし、さらに適地に向つては開田ということで徐々に開拓して行くこともよろしかろうと思います。これらについては十分な予算、十分な施策を講じつつ開拓を進めて行つて、そこへ余剩人口を吸收するということが一つの問題であろうと思います。終局においてはこれは講和会議後において考えるべき大きな問題が残つておると私は考えます。
  89. 井出一太郎

    ○井出委員 御意見は私も同感でありますし、なかなかこういう問題に対しては、奇想天外な名案は生れて來ないものでありましよう。さような意味で了承をいたしますが、ただいまの御答弁から出て参る問題は、結局農村工業というようなものをどうするかという命題が生れて参るでありましよう。これについては先ほど中曽根君がすでに質問をされておりますので、これ以上は申し上げませんが、ただ中曽根君も指摘しました通り、今日各府縣においては農村工業をいかなるシステムにおいて盛り上げて行くかというふうなことについて、明確な線がまだ出て來ておらない。この点につきましては、どうか農林当局においても急速にこれを盛り上げる御努力を拂つていただきたいと思うのであります。  さらにまた農村を高度化する、あるいは機械化するという意味においても、今日の農村の資金の欠乏の面からいたしまして、なかなか手が届かないという段階にございます。さもなくとも戰爭中を通してわれわれはこういつた農林漁業というふうな原始産業面においても非常に多くの資本の喪失を來しております。たとえば濫伐過伐の結果山が荒れておる。年々洪水となつて大きな災害の発生を見ておる。こういうふうなことはやはり一つの資本の喪失が原因しておると見てもよろしい。あるいは農業水利というようなものをとつてみましても、ほとんど荒廃に帰しておる。なかなか補修ができておらぬ。こういうふうな場合に、やはりこれは農民がこれから原始的な資本蓄積をして行くという——もちろんそれも本筋の道ではありましようけれども、なかなかこれは前途遼遠である。やはり國家資金とでもいうべきものが相当に農村に入つて來なければ、これはなかなか容易にできるものではないのであります。先ほど農相のお答えの中にもありましたが、確かに終戰後の日本の資金配分といいましようか、これが農村に対して手薄である、先ほど農林漁業復興金融四十億の問題が出ましたが、片方いわゆる傾斜生産、超重点産業という美名のもとに隠れて千三百五十億という巨額なる復金融資が用意されておる。それに対して農林漁業方面ではわずかに四十億という状況をもつて見てもわかるのであります。どうしてもこれは國家資本を大きく導入しなければ、日本農業の健全性というものは打立てられないと思うのであります。さような意味合いにおきまして、先ほど中曽根君がすでに触れた農業資金の問題でございますが、せつかく四十億というものが計上をされておりましても、まだこれはさつぱり実際に利用されておらない。これは手続が煩瑣であるせいもありましようし、あるいは金利が相当に高い、九分、一割という金利は今日一般商業金利としては普通でありましようが、こういつた原始産業方面においてはどうしても低利な、しかも長期の資金でなければならぬのでありますが、この資金の問題がもう少しなめらかに打通をしていただかなければ、せつかくこしらえました復興金融が何にもならぬのでありますが、この利率の問題あるいは手続の問題等、この際お答えをいただきたいと思います。
  90. 周東英雄

    ○周東國務大臣 今の復興金庫から出る金の問題でありますが、これは実は割当がごく最近きまつたようなわけでありまして、今までその手続がとられなかつたのであります。從つて今その手続をとつておる最中ですから、それに関連して金利その他についてはよく考究をいたしたいと思います。
  91. 井出一太郎

    ○井出委員 なおまたこの金融資金は私どもの聞いております範囲では、災害復旧というようなものにより多く向けられておるようでありまして、本來この資金を力説いたしましたわれわれとしては、そういつた災害の面と当然別な措置において國家資金を出すべきであつて、われわれの考え方は、この四十億を生産金融に使うべきである、こう考えておつたものが途中でゆがめられて、何か財政資金を出すべきところをこの金融資金でもつてすりかえられてしまつたという感じがあるのでありますが、この点はいかがでありますか。
  92. 周東英雄

    ○周東國務大臣 その点はお話と違つておりまして、一部にはこれを流用したらという意見もありましたが、この金は全部施設資金でありまして、復旧資金には使つておりません。
  93. 井出一太郎

    ○井出委員 なおまた現在この制度はいわば一種の暫定措置でありまして、法的基礎を欠いておるのであります。われわれが前内閣当時主張いたしましたのは、農林復興金融金庫とでもいうべき恒久的な機関であることを要望いたしたのでありまするが、今日そういう方向へこれを立法化することは可能であるかどうか、またこれに対して農林当局の絶大な御努力を願いたいと思うのであります。この点を伺つておきます。
  94. 周東英雄

    ○周東國務大臣 御指摘の点については、ただいま農林当局としては非常な努力をいたしておる最中であります。いろいろ金融委員会制度とにらみ合せつつ、御意見のような方へ実は努力しておることをお答えいたしておきます。
  95. 井出一太郎

    ○井出委員 もう一点金融の問題に関連して、これは昨日農地問題についての御質問中申し上げることを落したのでありますが、農地証券なるものが土地買上げの結果、從來の地主に交付されるわけでありましようけれども、これを何とか資金化する道をお考えになつておられるかどうか。從來の地主はともすると持てる者であるがゆえに、犠牲を拂わしてかまわないのだというような考え方から、かつての農村の指導的立場におつた地主が、今日ではまつたく氣息奄々として、農村の片すみに窒息状態に相なつておるとも見えるのであります。しかしながらこういつたことは非常に大きなロスであると私は考える。この地主が持つておる農地証券というようなものを、もう少し資金化する道が講じられるならば、こういうところから農村工業というようなものが活発に生れて來る可能性があると思うのでありますが、この点承つておきたいのであります。
  96. 周東英雄

    ○周東國務大臣 まことにごもつともな御意見でありまして、私ども在野時代から、この点非常に心配しておる点であります。なるほど農地証券で地主が金をもらつたことになつておりますが、現金は千円未満しか交付されない。あとは証券で交付されて、非常に苦しんでおるという事柄に対しましては、何とかこれを資金化する道を考えたいと今研究中であります。これらは農地改革の途上における一つの社会的不合理であると、私も考えております。
  97. 井出一太郎

    ○井出委員 まだ残余の質問が大分あるのでありますが、大体もうこの程度で打切りたいと思います。最後に、先ほども治山治水という問題で、山林が荒廃しておるというふうな事柄に関連いたしまして、こういつた問題を若干続行することをお許し願いたいと思います。  農林大臣が、御就任の当初発表せられました農林政策の中で特に治山治水という問題が力説せられておつたことを私は了承いたしておるものであります。これはもう私が申し上げるまでもなく、戰時中の濫伐、過伐、その結果はあらゆる面に植伐の不均衡を來しておる。しかも戰後木材需要というもの、あるいは薪炭の需要というものは急激に増加しておりまして、このままで参りまするならば、まつたく山林はSOSを発する以外に手がない状態でございます。國有林の問題はしばらくおきまして、特に民有林において、その荒廃がはなはだしい。わが國の民有林は、全林野面積の約三分の二を占めておる。しかもその多くは外山である。こういうふうな観点から、從來の林野局行政は、ともすると國有林行政に墮したきらいがあるのであります。今後國有林以上に、民有林に力を注がなければならぬと考えるが、まずこの点御意見を伺いたいのであります。
  98. 周東英雄

    ○周東國務大臣 お答えします。御指摘の点につきましては、私も同感であります。治山治水のやかましいときにおきまして、最も多くの面積を占める民有林に対する施設が行われなければ、実際上の効果をあげ得ないと思うのでありまして、これに関しましては、まず民有林の経営安定、林業経営の安定という立場から、ある程度は國家がこれに助成を加えるとともに、一面におきましては、森林組合等を強化いたしまして、その施業に基いて、植伐を計画するという方向に進めることによつて、この民有林の経営を安定し、植林を進め、治水治山事業に協力をさせたい、かように考えております。
  99. 井出一太郎

    ○井出委員 民林に対して特に力をお入れになるという御意見には、まつたく共鳴いたすものであります。そこで今お答えのうちに、森林組合というお話が出て参りましたが、由來わが國の森林組合制度は、戰爭中に生れ、しかも非常に畸型兒的な発達をいたして参りました。戰時木材事業の末端機関というふうな形で、ただ切ることさえやればよいのだというふうな使命を負わされて参つたのであります。從つて今日、まだ森林組合機構というものが十分強力になつておるとは申されません。しかし林業に関する限りは、この團体は基本團体である。この機構を通して民林の緑化をはかる以外にないと私は考えます。そこで森林組合の將來について、私は次のような点を若干懸念いたしておるものでございます。ということは、森林組合は一つの強制加入というふうな形をとつておる。またその議決権というものは、必すしも平等ではありません。近時協同組合思想というふうなものから、その議決権が不平等であり、強制加入というふうなことがおもしろくないという考え方も一部にはあるようでありますけれども、しかし非常に零細な日本の森林というものは、これはやはりある意味の強制力を持つた結合体をつくりまして、ただいまもお話があつた施業案の編成をする。そうしてその施業案に強力な裏づけをする意味において、ある程度の強制的な色彩というものも私はやむを得ないものであろう、このように考えておるのでありまするが、この点の御所見を伺いたいのであります。
  100. 周東英雄

    ○周東國務大臣 私も、先ほど申しましたように、民有林の経営を安定させるために、一部は國の助成を考えつつ、片一方森林組合等を強化いたしまして、その森林組合が立つる施業案に基いて植林並びに伐採等を進めて行くことが、最も國家のためによろしいと思つております。それにつきましては、御指摘のように、森林組合の内容につきまして、いろいろ改正すべき点があろうと思いまして、目下森林組合法等の改正について、いろいろ研究をいたさせておる最中であります。
  101. 井出一太郎

    ○井出委員 私の質問に対する明確な御答弁とは受取れませんが、ともかく森林組合に非常な関心をお持ちになるという点で、一應了承をいたしたいと思うのであります。今朝の新聞あたりを拜見いたしますると、治山五箇年計画というものを農林省はお持合せであるかのようであります。そして昭和二十八年度までにこの計画を実施されまして、五箇年間で三百八十五億円というふうな厖大なる予算を計上されておるのであります。これは從來の林野行政の立場からいたしますると、なかなか思い切つた案である。このように思いまするが、ともすると今までは林業関係が、あるいは政治力が弱かつたと言いましようか、どうもこう言つた机上プランだけはいつでも立てる。それにもかかわらず実際これが実施面になりますると、予算その他の関係で大藏省に押されてしまう。ついに絵に描いた餅になり終るということが從來しばしばあつたのでありますが、今度はこの五箇年計画に対して、農林大臣としてはいかようなお心構えで臨まれるか、この点を伺つておきたいのであります。
  102. 周東英雄

    ○周東國務大臣 私は予算の問題につきましてはあまり八方美人の、帶に短かしたすきに長しということがありますが、帶に長したすきに短かしという形にならぬように、重点的に必要な面に経費を使つて行く方法を考えております。從つて、そのうちで、ことに治山治水等につきましては、國土の保全上、また森林資源の保持上、あらゆる面から見まして、これは最も優先的に考えるものである、かように考えておりますので、今後とも努力いたしたい、かように思つております。
  103. 井出一太郎

    ○井出委員 森林資源造成法というものがございまするが、これは最初に半額の積立金をいたしまして、しかる後造林にかかるという制度に相なつておりまする関係上、造林家としましては一五〇%の資金がとりあえず所要に相なつて來る。しかも今のようにインフレの時期にありましては、造林が終つてから後に証券引きかえに政府から金をもらうというのでは、貨幣價値の関係等からいたしまして、どうもあまり歓迎されない。こういうことから一時は森林資源造成法があまり人氣がないようでもあつたのでありますけれども、しかしこれに対しまして農林中央金庫が金融的措置において非常に便益を提供いたしまして以來、この証券造林のやり方が非常に計画的に確実に造林が行えるということから、最近また再認識されて來たようでありますが、この森林資源造成法につきましてこれを存続されるのであるかどうか、農相の御見解を承りたいと思います。
  104. 周東英雄

    ○周東國務大臣 御指摘の森林資源造成法につきましては、いろいろの観点からただいま檢討をしておる最中であります。
  105. 井出一太郎

    ○井出委員 どうも少し物足らないのでありますが、その程度以上は御言明はいただかれませんか——そこであと問題はわずかになりましたが、昨日の問答の中で、農林大臣は農地改革の精神と開拓の関係のアイデアとは別にして考えるべきものであるという意味の御発言があつたのでありますが、私はこれをさらに敷衍して私なりに了解をいたしまするならば、いわゆる開拓と、しかもその前段階としての未墾地買收という問題は、農地立法とは別個な見解で行くべきものである。ただ單に農地法の精神を山林におしはめて、山林も開放させる、あるいは分割するのだ、こういうことが山林所有者を非常に脅威しまして、それが造林意欲の減退となり、あるいは老齡林の伐採という事実になつて現われておるわけですが、そういう考え方は必ずしも未墾地買收には適用されないのだ、未墾地買收はたとえば食糧増産の建前から、あるいは失業救済の建前から、國土を惜しみなく残りなく利用するという意味において、もしも開拓地に適した場所があるならば、これはよろしく提供すべきものである。單にイデオロギーに立脚した所有を分割するのだというものとは異なるのだ、大体このように昨日の御言明を了解したのでありますが、その点もう一度念を押してお伺いしておくわけであります。
  106. 周東英雄

    ○周東國務大臣 大体お話の通り御了解をいただいてけつこうであります。
  107. 井出一太郎

    ○井出委員 最後にもう一点お伺いしておきます。先ほど來森林組合の強化を非常に力説されて大いに意を強うしておりまするが、森林組合の最も基本的な前線において仕事をしておる者は技術員であります。森林の経営も科学的な技術を施すか施さないかによつて能率が上る、上らないという差ができて参るのであつて、今日この前線で深山幽谷を跋渉して、黙々として営林の仕事に從事しておる林業技術員は、民間の関係でも大体五、六千名はあるはずと思つております。ところがこれに対して從來は半額の國庫補助金が交付されておつたのでありまするが、私の仄聞するところによりますると、何やらこういうものが打切られる氣配にあるようにも聞くわけであります。農林大臣その点を御承知かどうか存じませんが、もしもさようなことに相なる場合には、これは治山治水という大きな眼目からいたしましても、また所管大臣である立場からいたしましても、かようなことのないように十分御努力を願いたい。この点最後に申し上げて私の質問を終ります。
  108. 周東英雄

    ○周東國務大臣 政府委員から答えさせます。
  109. 奧原日出男

    ○奧原説明員 地方財政法ができましてから、國庫から地方に対して交付いたしまする補助金につきましては、その事業の性質について、たとえば農地調整のごとき、純然たる國家的な目的のためにやりますものについては全額國庫負担をもつてやり、あるいは食糧の配給のごとき、國家的目的と地方的目的と合せて具備しておりますものについては、國と地方との間で経費を分担する。その他一般官業につきましては、これはおおむね地方ごとの経費をもつて実施する。こういう建前になつておるのでありまするが、いずれ明年度予算編成の際におきましては、この建前によりまして、現在計上しておる國庫補助金は、再檢討されることに相なろうかと存ずるのであります。
  110. 井出一太郎

    ○井出委員 ただいま説明員の御説明で、地方財政法の建前から從來の機構が若干かわつて來たように伺つたのであります。その場合に國家的な目的を持つておる仕事に対しては、全額國庫でこれを負担するということでありますが、今の日本の山に対しては、治山治水が声を大にして叫ばれている今日、これこそ全國的な視野において國が全額を負担すべきものであるとさえ考えるものであります。どうもその他というようなCクラスあたりにこの山林関係の費用が押込められたのでは、はなはだわが意を得ないのであります。この点お伺いしたい。
  111. 周東英雄

    ○周東國務大臣 今説明員から申し上げましたよう事情でありまするが、治山治水の重要性からかんがみまして、來年度予算編成に際しましては、十分御趣旨をくんで財政問題について考えてみたいと思います。
  112. 上林山榮吉

  113. 勝間田清一

    ○勝間田委員 安本長官である大藏大臣最初質問いたしたいと思うのであります。安本長官は、この前の経済演説におきまして、物價が横ばいの状態であるのにかかわらず、賃金のみがひとり先走りをしておる。そうしてその結論としては、労働者の協力を得なければならないというように、協力という言葉で結んでおるように聞いたのであります。なおこの前本間委員に対して、賃金の統制は必要であるが、今研究中であるというようにお話を聞いたのでありまするけれども、安本長官といたしましては、賃金の統制について、どう考えておられるか、基本的な点をまず第一にお伺いいたします。
  114. 泉山三六

    ○泉山國務大臣 賃金の統制につきまして、これが必要である、かようのことではなしに、賃金安定政策は、今日の経済問題の結論的要素を含むものである、かように申し上げたのであります。しかしながら、ただいまのお尋ねにお答えいたしまするが、最近の経済事情を見まするのに、消費者の実効物價は停頓傾向にあるにかかわらず、名目賃金は依然として上昇の傾向にある。これはただいま御指摘の通りであります。從つて勤労者の実質賃金は相当に向上しておる現状であります。最近のかかる経済情勢を背景といたしまして、経済安定方策の一環として、賃金安定方策を講ずる必要があるのでございまして、実質賃金の充実した機会に、一層賃金の安定化をはからなければならないと考えまするが、政府といたしましては、賃金安定方策は、もとよりまじめに働いてくださる勤労者の方々の納得するものでなければならない、かように考えまして、ただいまでもその研究に着手はいたしておる次第であります。
  115. 上林山榮吉

    ○上林山委員長 大藏大臣、できるだけ簡單に御答弁を願います。
  116. 勝間田清一

    ○勝間田委員 それではよくわかりませんが、賃金の安定政策ということは、具体的に言いますると、どういうことになるでありましようか、その点をお伺いいたします。
  117. 泉山三六

    ○泉山國務大臣 お答え申し上げます。ただいまお答え申し上げました通り、鋭意研究をいたしておる、かようのことでございます。
  118. 勝間田清一

    ○勝間田委員 私は、非常にこの問題は基本的でありますと同時に、経済三原則の問題とも考えあわせますると、今後の労働者の生活に非常に大きな影響を持つものだと思いますので、さらにつつ込んでひとつこの点をお尋ね申したいと思うのでありますが、なるほど消費者の実効價格指数に対して、賃金指数が上つておる。從つて実質賃金はそれだけ増大をいたしておる。実際に昭和二十二年の一——三月を一〇〇といたしますと、実質賃金は確かに一五九になつておるわけであります。ところが今までの政府の説明を聞いてみますると、この面だけを考えておつて企業の面についてさらに考えていないということが、私は見受けられるのであります。それで実際に現在の企業の方を考えてみますると、昨年の一——三月に対して、本年の七、八の生産指数は三百十幾つになつておりますが、約三倍近いところの指数を持つており、これに対して雇用量というものを見てみますると、労働者の從事しておる量は、昨年も本年も同じであります。從つて生産物の一單位当りの賃金にこれを直してみますると、昨年の一——三月に対して七割程度の値上りにすぎない。ところが生産物の方の実効價格指数を見ますると、これは三一三ということになつておる。そうすると私の考えによりますれば、労働者の賃金よりも、少くとも生産物の実効價格指数の方が、むしろ先走りしておる。すなわち企業の採算性というものは確かに向上しておる。この点を私は認めなければならぬのではないかと思うのでありますが、いわゆる消費者の実効價格指数と賃金の面だけを見て、経営の実態の方を見て行かない考え方は、誤りであるだろうか、ないだろうか、安本長官はどうお考えになりましよう。
  119. 泉山三六

    ○泉山國務大臣 お答えを申し上げます。ただいま御指摘の通りだろうと考えます。
  120. 勝間田清一

    ○勝間田委員 そうしますると、いわゆる賃金が物價よりも先走つておるから、この前本間委員に対して、企業が非常に困難を來しておるということは誤りであつて企業の方の採算性は増大し、いわゆるそれも程度問題でありまするけれども、改善され、生産物の実効價格指数よりも、賃金の方が立ち遅れておるということを、それではお認めになつたと思いまするが、いかがでございましようか。
  121. 泉山三六

    ○泉山國務大臣 お答えを申し上げます。私がただいま申し上げましたのは、勝間田さんの先刻の御質問の、その結論について御同感を申し上げたのであります。すなわち企業にしてその利益が相当増進をいたし、経済性の向上見るべきものあるにおいては、その何ほどかを勤労者にわかつ、もとより当然のことであります。從いまして、当然のお答えを申し上げたのであります。しかるにただいまのお話では、私の答弁をもつて、あたかも今日の実情におきまして、企業の面におきまする利益の向上、経済性の充実が、相当程度実現せられておるやの御発言でありまするが、これはしいるもはなはだしいものと考えるのであります。
  122. 勝間田清一

    ○勝間田委員 先ほどの私の論に対してお認めになつたにかかわらず、その結論に対して、これをお認めにならなかつたというということは、私は安本長官の論理を疑うものであります。しかしこれ以上それを御質問しようとは思いませんけれども、そういう面から考えてみますると、賃金の安定政策といつて、賃金を押えつけて行こうとする政策は、私は一つの大きな矛盾を持つておるだけでなしに、從來賃金と物價の惡循環があるという思想をもつて労働者に低賃金を押しつけようとする考え方に対しては、私は非常に間違いであるということを考えるのであります。特に今大藏大臣はそれで企業がよくなつておるということを考えるのは、しいるもはなはだしいということを言われましたけれども、なるほど鉄であるとか、特に石炭と電力の面においては價格が低くて、賃金の面を抑圧する傾向もあるし、賃金がまた上まわることが、これらの價格に及ぼす影響のあることは、私も十分承知しておりますけれども、それは結局價格のでこぼこの問題であつて、日本の経済全体の生産企業から見ますれば、私は確かに企業の方の採算は有利になつて、賃金の支拂い能力というものは増大していると考えます。  次に安本長官のやはり基本的な態度に関する問題でありますからお尋ねいたしますけれども、賃金の安定が必要であるということは、おそらく賃金の統制を直接、間接にして行こうとする考えであると思うのでありますが、その点は研究中なのでしようか、あるいは実行しようと考えて研究を進めて行こうとするのでありますか、目下の進捗状態をお尋ねいたしたいのであります。
  123. 泉山三六

    ○泉山國務大臣 お答えいたします。賃金の安定政策につきましては目下研究を急いでおります。從いましてその実施の必要のある段階においては、ただちにこれを展開するということは当然であります。
  124. 勝間田清一

    ○勝間田委員 現在経済三原則というものが示されているわけでありますが、特に経團連の方からこれに対する意見というものが、われわれ委員の方にも届いておるのであります。それらの案を見ますと、直接統制ということが強力に主張されております。また行政整理ということも極度に主張されております。これらの点から考えてみて、この経済の三原則というものを実施して行く上において、賃金政策とどういう関係をもつて調節されて行かれるのでありますか、そのお考えをお聞かせ願いたいと思います。
  125. 泉山三六

    ○泉山國務大臣 ただいまのお尋ねははつきりしない点がありますので、明瞭にさしていただいた上にお答え申し上げたいと思います。
  126. 上林山榮吉

    ○上林山委員長 大藏大臣に御注意申し上げます。質問者の要旨を明確にお聞き願います。
  127. 勝間田清一

    ○勝間田委員 経済三原則は物價を上げず、補償金を出さず、赤字融資をしないということが、三原則のように私は見ておりますが、これを実際に貫徹して行くためには、賃金に対する確固たる方針のない限り、私はよほどむずかしいのではないかと考えるのでありまして、三原則というものと賃金政策というものを、どう関連づけられて政府は今後やつて行かれるお考えであるか、この点をお尋ね申し上げたいのであります。
  128. 泉山三六

    ○泉山國務大臣 経済三原則は、從來たびたび申し上げました通り、その示すところは三原則にありますけれども、その目的といたしますところは、もとより生産の増強、経済の復興にあるのであります。從いましておのずからその線に沿います賃金問題の構想は、経済の復興、産業の経済性高揚、かような点にあることをお答え申し上げます。
  129. 勝間田清一

    ○勝間田委員 私は今の安本長官の答弁からは、何ものをも理解することができないことを非常に遺憾に思うのでありますが、時間もたちますので、なお論理を追いながらその点を將來はつきりさせて行きたいと思います。  先ほど賃金と物價の惡循環の問題について私はいろいろお尋ねいたしたのでありますが、私のこの点についての論理については実は御承認を願つたと思うのでありますけれども、さらにもう一つ私は、安本長官に基本的の一つの認識の前提としてお尋ね申したいのであります。現在実質賃金はなるほど一五七というふうに向上されておりますけれども、安本の調査によりましても昭和九年、十一年の、すなわち戰前の実質賃金に対しましてはわずかに三八%にすぎない。この事実を安本長官はお認めになると思いますが、いかがでございましようか。
  130. 泉山三六

    ○泉山國務大臣 今日におきまして賃金の基礎が戰前に比較いたしまして、まことに低いものである、かような事実につきましては政府といえども、深く認識いたしておるのであります。しかしながらただいま勝間田さんから御指摘の通り、その再建におきまして実質賃金の相当の向上の事実もまたこれを御認識願いたい、かようにお願いいたします。
  131. 勝間田清一

    ○勝間田委員 安本長官のおつしやいますように、向上しておることは十分私も認めるものでありますが、まだわずかに三八%にすぎない、これは事実だと思うのであります。次に家計費の方を考えてみますと、これも安本の調査によりますれば、今年の七月、九月で四・二人世帶でなるほど暮しは二百九十三円ふえておりますけれども、その内容を見てみますと、内職の收入が四百二十四円、勤労外の收入、たけのこ收入というものが千百三十三円を占めておるのであります。すなわち家計の中は依然としてアルバイト、たけのこでこれはやつておるのであります。そうしてこの家計費は、これも実質的に計算をしてみますと、やはり安本の資料によりますれば、昭和九年、十一年に対して四六%を占めておるのであります。何ゆえ家計費が戰前の四六%を占めておるか、別な言葉で逆に言うならば、実質賃金がわずかに三八%であるにかかわらず、家計費が四六%であるというこの開きは、どこから出て來るとお考えになりますか、その点をお尋ね申します。
  132. 泉山三六

    ○泉山國務大臣 その点はいずれ取調べまして政府委員よりお答え申し上げます。
  133. 勝間田清一

    ○勝間田委員 そうしますと、これは後ほどお取調べを願いたいと存じますけれども、安定本部の調査でありますから、これは確実なものだと私は存じますけれども、この二つの開きがあるという事柄は、安本長官のおつしやる通りに、現在実質賃金は向上はしておるけれども、三八%の実質賃金はその度合においては食つて行けない、生活して行けないからたけのこをしたり、アルバイトをしたりして家計費の方をむりしても食つて行くものだけは買わなければならない。着るものだけは買わなければならない。そういう意欲が現在勤労大衆にあるのだ、早く言えば実質賃金の向上はあるけれども、食えないからむりやりに家計費を現在維持しておるということを、事実私は示すものだと思いますけれども、これに対する安本長官の感想はいかがでございましようか。
  134. 泉山三六

    ○泉山國務大臣 お答えを申し上げます。私が経済安定本部総務長官といたしまして、経済財政方針を演説いたしました中にも、私は最近におきまして勤労者諸君の生活の向上の事実はこれを認めまするが、その反面におきまして、決して生計が樂になつたものである、赤字が解消したものである、かようの考えは持つておらないことをはつきりいたしておるのでございます。
  135. 勝間田清一

    ○勝間田委員 私は現状の認識をお願いする意味において、もう一つつけ加えさしていただきたいと思います。そういつた苦しい家計費を労働者は経驗しておるのでありまするけれども、その家計費の中で飲食費はどの程度を占めておるかといいますると、これも安本の調査によれば六五・七%を占めておる。エンゲル係数を見ますと五三%でありまするから、これから考えてみると現在のそういう家計費であつても、なおかつ奴隸的な家計費である、こういうことがはつきり言い得るのではないかと私は思いますが、この点に関する安本長官のお考えをお伺いいたしたいのであります。
  136. 泉山三六

    ○泉山國務大臣 いろいろ勝間田さんには安本の数字についてお詳しいので敬意を表する次第でございまするが、奴隸的のものとは考えておりません。
  137. 上林山榮吉

    ○上林山委員長 勝間田君におはかりいたしますが、大藏大臣は本会議に呼ばれておりますので、後刻質疑を続行願いたいと思います。
  138. 勝間田清一

    ○勝間田委員 もう一つ最後の問題の結論について……。
  139. 上林山榮吉

    ○上林山委員長 本会議優先の原則に從つて議長から申出がありますので、その点御了承の上、本日は相当長時間にわたつて審議を進めたいと思いますから、そういう意味合いでひとつ御協力を願いたいと思います。
  140. 勝間田清一

    ○勝間田委員 了承します。
  141. 上林山榮吉

    ○上林山委員長 建設大臣に質疑を続行願います。織田正信君。
  142. 織田正信

    ○織田委員 國土計画の問題につきまして治山治水の確立の問題、それからダムの建設、道路建設、いろいろ國土計画の問題が國家再建の基礎的な問題としてあげられておりますが、都市の人口問題と工場の分散につきまして、都会においても失業者がふえようとしております。また農村におきましても、農村の経済が歴史始まつて以來の経済状態がよかつたという関係から、今まで潜在失業者として農村におりました人口が、だんだん顯在化の傾向にあるということ、また次男坊、三男坊の問題が多く取上げられておりまするが、この人口問題につきまして、農村人口を都市へ集中せしめようとするのか、また都市の失業人口が起きて参りますのを農村工業の振興、あるいは國土計画に基く農村の開発ということをやつて、農村に人口吸收をはかろうとするのか、この人口分散の問題と工業立地の問題について御答弁を願いたいと思います。
  143. 益谷秀次

    益谷國務大臣 昭和二十一年度におきまして國土計画要綱を規定いたしました。これのねらいどころは、御承知通り、人口の完全收容というところが主たるねらいどころであつたのであります。しかしてさらに二十二年度からこの計画に相当の修正を加えまして、各都道府縣に対しまして都道府縣の地方計画というものの樹立を慫慂して参つたのであります。そうして今日地方計画として計画を策定いたしました縣は、大体十数縣あるのであります。しかしてこれはただ計画を策定するにとどまらず、各府縣の政治の上にも反映せしむるように進めて参つたのであります。しかして本年度からはさらに一歩を進めまして、各府縣において総合的の資源開発計画を進めて参つたのであります。そうして各府縣がこれに基いて府縣の資源開発に対する総合計画を立てて参つておるのであります。そうして昭和二十四年度、すなわち來年度において全國各都道府縣の計画が策定せられるものと考えております。かくのごとくいたしまして、現行の建設事業及びすべての事業を円滑に進行せしめて参りたいと思うのであります。しかしてこれは各地の資源開発計画と申しまするか、総合開発計画に対しては、各都道府縣においては熱心にこれを希望しておられるのでありますが、何分今日の國の財政の上から、國土全般にわたつて総合開発計画をただちに実行することが遺憾ながらできないのであります。そこで政府といたしましては、計画を立てられたうち、重要な地域をきめて、これまで各省各局にわたつておのおの單独に実行いたして参りました仕事を、総合的、統一的にやつて行きたいのであります。そうしてなるべく軽少な金で、なるたけ多くの効果をあげようといたしておるのであります。そういう訳合いでありますから、総合開発計画を実行いたすということになりますれば、都会へのみ人口を集中するという考えはないのであります。各都道府縣においておのおの計画を立てて、それ相当の仕事をいたして参りますれば、そこに産業の分布、人口の分布ということも期することができるというのが、政府のねらいどころであります。すなわち政府は都会へ人口を集中する考えか、あるいは地方の農村、漁村、山村等に人口を集中する考えであるかという御質問のようでありますが、政府は人口の分布、産業の分布、こういうところをねらいといたしておりますから、これまでのごとく、都会に人口を集中いたそうという考えは毛頭持つておらないのであります。
  144. 織田正信

    ○織田委員 ただいまの御答弁で大体わかりましたが、しかし現実においては、終戰当時から続々都会へ人口集中の傾向を示しておるのでありまして、これをこのまま現在のような建設省の重点の置き方程度であつては、むしろ自然の勢いの方が強く、國家の政策の方がこの自然の勢いに負けて、都市集中の傾向は免れないと思うのであります。都市集中に対して、ただ單に人口を制限するとか何とかいう表面的なことでなく、基礎的に地方産業を興す。地方産業を興すためには、交通、通信機関の整備も、この産業の分布という観点からやつて行かなければならぬ。こういう方面に積極的にやつていただきたいと思うのですが、この自然に都市集中を今始めておる姿を防ぐ方法として、どういうような具体的方法を考えているか、お尋ねいたしたいと思います。
  145. 益谷秀次

    益谷國務大臣 私の所管といたしましては建設省でありまして、建設の仕事をいたしておるのであります。そうしてただいま御説明申し上げました地方の総合的開発計画は、御承知のごとく水産、あるいは林産、また地下資源というような方面を十分に調査し、その計画を立てて、これの開発を期するのであります。そして必要な方面においては林道を設けますとか、あるいは漁港をつくるとか、もしくは道路をつくるとかいうようなことをいたしたいと思うのであります。しかして各農村における工事とか産業ということは、開発計画の一環としておのおの各省連絡をとつて参りますが、主としてこれは農林省とか商工省の所管に属しておるのであります。私どものねらいは、前段御説明申し上げました通り、人口の妥当な分布と生産の分布というところにねらいを置いておるのであります。今日御指摘のごとく、だんだん都会に人口が集まる傾向があるのでありますから、一層この実情にかんがみて、地方開発に対して一段の力を入れて行きたいと存ずるのであります。
  146. 織田正信

    ○織田委員 ただいまのお話に賛成なのですが、その地方の綜合開発計画をやる上において、どれだけ積極的に予算において具体化しようとしておるか、その点についてお伺いいたします。
  147. 益谷秀次

    益谷國務大臣 お答えいたします。これはひとり私の所管のみではないのであります。先般経済安定本部から発表いたしました経済復興五箇年計画というものがありますが、これは必ずしも現内閣といたして全部そのまま支持をいたすわけではありませんが、少くともある一定の期間を置いて、根本的にしつかりした計画を立ててみなければならぬと考えておるのであります。大体私どもの総合開発計画においては、やはり大体五箇年計画という年限をきめて、そうして計画を実行に移して参りたいという所存であります。しかしてただいま申しました通り、來年度昭和二十四年度で、大体全國の総合開発計画が策定せらるるものと見ております。そうしてその中から重点的に地域を指定いたして——國土全般にわたつて開発計画をいたすということは実行不可能であります。從つて重点的に地域をきめまして、そこに相当の國家財政の許す限りの費用を投じて、開発をいたして参りたいと思うのであります。從つて今日はいまだ重点的に開発をいたす地域を決定いたしておりません。これから十分に政府内における各所管の方面と緊密な連絡をとつて國家の財政等もにらみ合せて参りたいと思うのであります。從つて今日ただいまはまだどれだけの費用をこの方面に投ずるかということは決定いたしておりませんが、これも今日産業の復興、経済の再建のためにはゆるがせにすることのできない重要事と私は存じておりますから、でき得る限りの費用を投じて、開発に着手いたそうと存じております。
  148. 織田正信

    ○織田委員 そうすると重点的に指定をしようとするその指定が決定するのは、大体二十四年度ではなくて、二十五年度ぐらいになるのですか。
  149. 益谷秀次

    益谷國務大臣 來年度からきめまして、実行いたしたいという考えでございます。すでに総合開発計画がきまつて、建設省並びに安定本部の方へまわつておる縣も数縣あるのであります。從つて來年昭和二十四年度からその中の一部を実行いたして参りたいと思うのであります。先ほど申し上げましたのは、昭和二十四年度、すなわち來年度で全國の各都道府縣の計画が策定せられるということを申し上げたのであります。今日すでに計画ができた縣も相当あるのであります。その中から若干のものを選定いたして実行いたして参りたいと思うのであります。
  150. 織田正信

    ○織田委員 その数縣はすでに計画が樹立できているということになれば、二十四年度から実行できると思うのですが、二十四年度から実行できるとすれば、その二十四年度の予算にこれが計上されて來なければならないと思います。そうしてこの問題は、今の日本の政治が、具体的な表面に現われて來ている問題ばかりあとからあとから追つかけていつて、災害になるまでは山をほつたらかしておくというようなかつこうですが、今の日本の政治はむしろ根本をつかなければならぬ。その根本はまさに國土計画にあると考えているのです。その國土計画が完成し、國土計画が強力に推進されることによつて、失業問題にしても、人口問題にしても、都市と農村の問題にしても、あらゆる問題が徐々に解決されて來るのではないかという考え方をもつておりますが、すでに地方の熱心なる縣においては、もうできておる。できておるのであれば二十四年度からぜひ予算化していただきたい。また予算化するについては、政府としてはどういう方式においてこの計画の実現の援助をしようとしておるのか。またこれをやつて行く上においては、むしろ農林省とか、商工省とかいう面と非常に密接なる関係が持たれて來ると思うのですが、そういう方面と建設省との有機的な連絡をとるようにやつて行こうとしておるのか。まさに私は今後の日本の將來を考えてみましたときに、地方総合開発計画というものを強力に推進するということが、焦眉の急務と考えておるのでありますが、ただいまのお話によると、二十四年度にはまだ予算化しないというようなお話でありましたが、ぜひこの点予算化していただきたいと思います。
  151. 益谷秀次

    益谷國務大臣 二十四年度から相当の経費を投じて開発計画を実行に移したいと考えております。しこうして予算の点は、私の方ではいろいろ計画の上に予算を要求すべく準備はいたしております。いたしておりますが、今ここでどれだけの費用を予算化してやるということを申し上げ得る段階になつていない。やるのは來年度からやりたいという考えで計画を進めておるのであります。
  152. 河野金昇

    河野委員 私は厚生大臣に若干質問をしたいと思います。  去る第三國会に衆議院も参議院も満場一致で引揚げ促進の決議案が可決になつておるのでありますけれども、あの決議案の趣旨は、厚生大臣承知通り、冬季の間も引揚げを続行してもらいたいという強い希望が盛られていたと思いますが、われわれももちろん議員として、それぞれ関係方面に手は盡したのでありますけれども、あの決議案に基いて、政府は何か関係方面に手を打つてくださつたのでございましようか。
  153. 林讓治

    ○林國務大臣 ただいま御質問になりました引揚げの問題につきましては、政府としては、その筋に対しまして要望いたしまして、ちようど私が厚生大臣として就任いたしましたときに、その筋のジー・スリーというところへ参りまして、そのときは、今までソ連の方からとしては、天候の関係が惡かつたという場合、すなわち冬の寒いときにできないようなことがあるかもしれないというような場合には、引揚げすることができないかもしれないという話であるけれども、自分の方ではもしそういうような時があつたという場合においては、碎氷船をも、準備をして、決してそういうことのないように、そういう口実を設けしめないように、自分たちの方でもとりはからつておるから、というお話でありまして、すでに書類ができておつて、二、三日のうちにはこれが発表になるという非常にうれしいお話を伺つたわけでありました。新聞でも御承知通りにそれが発表になりまして、先般までは若干の引揚げがありまして、政府としては絶えず外務省を通じまして、その筋に交渉いたしております。ところで昨日でありましたか本日でありましたか、新聞にありました情報としては、私の方の耳に入つておりまして、天候のぐあいによつて、この引揚げは不可能であるということを向うから言つて來た。それに対しましては、こちらから碎氷船をやる。いつでも受入れ態勢ができるように準備をしておる。こういうような話もしたそうでありますけれども、この冬季、今後においては天候の理由に基いて引揚げせしめないのではないか。こういうように一つの情報としては耳に入つております。また厚生省の方としては、何らかの通知があつたかは存じませんけれども、私の耳には正式にこの冬のうちにおいては引揚げせしめないのだということの通知はまだ受けておりませんけれども、逐時これは引揚げができますように、こちらとしては今日まで努力いたしております。
  154. 河野金昇

    河野委員 政府の努力を多といたしまするが、昨年もちようど十二月の十二日に引揚げを中止して來ておるのであります。今年も先月でありましたか、引揚げの費用を日本が負担しろ、こういうようなことを言つて來ておるのでありますが、こういうようなことは、やはり引揚げを中止させるのにからましての一つの口実でなかろうかと思うのですが、引揚げ費用の問題について、やはり問係方面と何か御折衝くださつたようなことがございましようか。
  155. 林讓治

    ○林國務大臣 引揚げの費用につきましては、本年中に全部の者が引揚げ得られるだけの予算をとつております。しかしながら引揚げた数が少いものですから、費用の問題につきましては、何ら憂いのないように政府としてはできております。ただ私どもの知つております。範囲内においては、向うにおける費用は、こちらの方では負担をする必要がない。そうして船に入つてから後の費用に対しては、こちらが負担をしなければならぬ。その問題については、ただいま申し上げました通りに、予算といたしましては、非常にたくさん余つているという形になつておりますから、費用についての問題は憂えることのないように準備を整えておるわけでございます。
  156. 河野金昇

    河野委員 ちよつと厚生大臣は私の質問をお考え違いになつているのじやないかと思うのですが、私もその通り、船に乘つてからの費用の問題を実は聞いているのではないのでありまして、それを政府が引揚げて來るものとして、船に乘つてからの引揚げの費用全部を計上してくださつておることは了承しておりまするが、おそらく先般ソ連が言つて來たのはその費用のことではなしに、向うの費用までも分担しろというような意味じやないかと思うのですが、そういうことに対しては何か関係筋を通じて政府の方へ話のあつたようなことはありませんか。
  157. 林讓治

    ○林國務大臣 ただいまのところ、別にそういうことを私の方ではまだ承つておりません。それで向うにおけるところのものは、こちらに対しては責任はないものだと私ども心得ております。
  158. 河野金昇

    河野委員 これも実は先議会からこの持ち越しの問題でございまするが、未復員者救護法の一部改正を前議会に厚生大臣は上程したいというお氣持のあつたことを承つておつたのでありまするが、不幸にして前國会には、これが上程になりませんでした。本國会も解散とか何とかいうことを言われておつて、余すところ日がないようでありまするけれども、この未復員者救護法の一部改正と申しまするか、こういうものを今議会はお出しになりますか、それとも結局出す準備がまだ整つておらないのか、承りたいと思います。
  159. 林讓治

    ○林國務大臣 ただいま未復員者の保護に対しましては、まことにお氣の毒な実情にあると考えておりまして、何とか大藏省などと折衝いたしましてやりたいと考えております。今のところ今度の追加予算の中には、よう手を加えなかつたのではないかと思いますが、あまりこの点については確たることをよう申し上げられませんので、あるいは予備金などにおいて若干のものを入れていただいておるかもしれませんが、その点私耳にいたしておりませんから、ちよつとお待ちになつていただいて、後にお答えいたすことにいたします。
  160. 河野金昇

    河野委員 こまかいことですから、いろいろ大臣にお聞きしてもあるいはわからないかもわかりませんが、もしわからなかつたら、あとでお聞かせ願つてもいいと思います。今の未復員者給與法案でありまするが、もし改正案が出るとすれば、それは給與ベースとおそらく関係があると思うのであります。これは林さんの御責任ではありませんけれども、前内閣時代にも、官公吏の給與ベースなんかと関連がある。現在支給されておるものは、おそらく二千九百円ベースのときのものだつたと思いますが、もし改正案をお出しくださるとすれば、現在行われておる三千七百九十一円ベースにのつとつたものか、それとも今度政府がこの追加予算にお盛りになつておるところの五千三百三十円ベースによつて改正をしようとしておられますか、この点承りたいと存じます。
  161. 林讓治

    ○林國務大臣 ただいまお話の問題は、私まだ詳しく承知いたしておりませんが、私どもといたしましては、同じ改正をするという場合においては、五千三百三十円になぞらつてこれを改正すべきものであろうと考えております。今私はその点どういうふうに行つておりますか、まだ詳しく存じておりませんから、またあとにでも調べてお答えすることにいたします。
  162. 河野金昇

    河野委員 それではお調べくださるついでに、今のは未復員者の問題でありますが、ソ連等には兵隊でなかつた者、一般邦人も相当連れて行かれておることだと思うのでありますが、こういう軍人でない、一般邦人の未帰還者に対しても、同樣の手当と申しますか、給與をやるべきであると思いますから、もし立案される場合には、このことも考慮に入れておいていただきたいと思います。そうして戰爭が終つてから今日まで、ソ連なり中共地区なりに捕虜となり、作業に從事しておる途中において、負傷したり死亡したりする者も相当出て來ておる現状でありますが、こういう人たちに対して、労働基準法なんかは、そのものは適用できないかもしれませんけれども、こういう者に対して、やはり特別な何か考慮をしていただかなければならぬと思います。その金額とか、どうするとかいうこまかい点につきましては必要ありませんが、こういう点に対して、厚生大臣としてどういうお考えであるか、その見解を承つておきたいと思います。
  163. 林讓治

    ○林國務大臣 その問題につきましては、まことに御同情申し上げなければならぬわけでありますけれども、特に未復員者などといつて、特殊の名目のもとに支給することは、今日種々なる関係によつて非常に困難、むしろ不可能とも申し上げてもいいのではなかろうかと思います。しかしながら政府におきましては、何とかして別途の方法によると申しましようか、何かそれに対するところの方法を今後講じなければならないのではなかろうか、またそういう方面に対しましては、できるだけ微力を盡してみたいと考えております。
  164. 河野金昇

    河野委員 もう一つ希望を申し上げたいと存じます。今年全部帰れるものとして、政府もいろいろ予算的措置などもとつておられたのでありまするが、幸い冬季の間引揚げが継続されたといたしましても、今年の五月からの実績を見ると、どうしてもまだ來年一年はかかるのであります。そうするとその帰りを待つておる家族の中には、非常に困つておる者が出て來ておるのであります。名前はどうであろうともかまいませんけれども、未復員家族の困つておる者に対して、何か國はあたたかい手を差延べなければならぬと思いまするが、こういうことに対して、厚生大臣としてお考えがあれば承つておきたいと存じます。
  165. 林讓治

    ○林國務大臣 ただいま申し上げました通り、まことに御同情申し上げるべき実情になつております。從いまして、これは一般の生活保護法などに基きました救助の道を、当面として必ずそれによつてとるということでなければしかたがあるまい、さらにもちろん満足の行くべき状態とも考えられませんが、関係方面などとも折衝いたしまして、何か別個にできる方法があれば、厚生省としては別個の方法でもつてしても、御家族に対して報ゆるべき方法を考えたい、こういうふうに考えております。
  166. 河野金昇

    河野委員 この引揚げの問題は、いろいろ國際関係や何かがありまするから、私もあまりつつ込んだ質問をすることは差控えたいと思いまするが、もう一点だけ、たとえば満州なり、朝鮮なり、中國なり、そういう方面から引揚げて來た人々が、ちようどあの混乱時期に、大使館なり領事館なりが金がないために、邦人から、日本へ帰れば返すという約束で、相当金を集めてそれを使つているのでありますが、依然としてその問題が解決しておりません。引揚げて來た人々の中には、それを唯一のたよりにして、何とか更生しよう、何とか生きて行こうとしておられるのでありますが、全然目鼻がつかないというようなことで、非常に問題になりつつあるようであります。これは個人が貸借したとか何とかいう問題は別でありまするが、そういつた政府の出先機関が借りたものに対して、一体政府はどういう処置をおとりになるおつもりであるか、承りたいと存じます。
  167. 林讓治

    ○林國務大臣 ただいまの問題は、私が今どういうような方向に向つているのだということを申し上げるだけの材料がございませんことをはなはだ遺憾に思いますが、政府としては、今後において十分考慮して解決をつけなければならぬ、こういう考えを持つておりますけれども、今具体的にどういうようなぐあいに行くべきものであるかということに進んでおりませんことを遺憾に思うわけであります。
  168. 河野金昇

    河野委員 すでに終戰後四年になろうとしているのに、どうしたらよいかという考えもないということは、これは非常に遺憾な問題である。これは何も林厚生大臣を責めるわけではなく、前から引続いた問題ではありまするけれども、この問題と取組まなければならない地位にある厚生大臣が、ひとつ積極的にこの問題に対して善処していただくことを希望いたしまして、質問を打切ります。
  169. 上林山榮吉

    ○上林山委員長 この際田中織之進君に、厚生大臣に簡單に御質疑を願います。
  170. 田中織之進

    ○田中(織)委員 私は厚生大臣に一点だけお伺いいたします。それは憲法の第十四條によりまして、「すべて國民は、法の下に平等であつて、人種、信條、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。」ということが明記されておるのでございまするが、今日全國におきましてなお三百万に上ると言われるいわゆる部落民が存在するのであります。私がなぜに新憲法下において、この部落民の問題について厚生大臣の所信を伺いたいかと申しますると、この民主主義革命の途上においてまことに遺憾なことでございまするが、最近全國にひんぴんとしていわゆる差別事件が起つておるのであります。ことに九月における廣島縣の高須村におきまする差別事件のごときは、何らのいわれもなきにかかわらず、二十数名の暴力團が差別的言辞を弄しながら、部落民に対しまして殺戮を加えておる事件があるのであります。また十月十五日には愛媛縣の宇和島市におきまして、同市の八幡神社の祭礼にからみまして、町の横山組という不良が、部落の関係の——向うの言葉でよいさと言いまするが、それはみこしにおともをする、いろいろな樂器を持つた一種のだしのようなものであります。この部落の人たちが率いるよいさを破壞いたしましたのみならず、このよいさ組に対しまして、これまた聞くにたえない差別的な言辞を弄して、部落民の憤激を挑発いたしました。部落民が自重して相手にならないと、これにからだをすりつけて來るというようなことから、たまりかねた青年と組打ちになりました。そのときに、組み敷かれた差別をした側の横山組の不良の一人が、道路の石で頭にかすり傷を負うたということが発端になりまして、二十数名の町の暴力團が、手にあるいは棍棒、拳銃、あるいはドス、まさかり等の凶器を持つて、このよいさ組の部落民に対し襲撃を加えまして、そのために部落側から二名の死者と一名のけが人を出した。当時宇和島における事件は二つの問題が含まれておるのでありまして、第一回のいざこざが起つたときに、宇和島の警察から署長以下十数名の警察官が参りまして、一應不良を追つ拂つたわけであります。引続き一定の場所に集合いたしまして、再度の襲撃を企てておることを察知いたしましたので、警察署長に対して保護を要求したのでございますが、警察署長は責任をもつて保護するということを確約しながら、旅所で休憩をして晝飯を食つておる部落民に対しまして、再度凶器を持つて二十数名の者が襲撃した場合には、その附近にあつて警戒しておつた警察官は、暴力團の襲撃とともにいち早く遁走いたしまして、そのために今申しました二名の死者と一名のけが人を出したのであります。保護を約束しておつた警察側が逃げてしまつた。仲間の二名が即死する状態を見かねまして、附近にあつた棒くいを引拔きまして、やむを得ず部落民側が正当防衞に立ち向つたのでありますが、そのために暴力團側に二名の死者を出したという事件なのであります。これだけの問題を考えてみまするならば、発端になりました差別的な言動だけが問題でありまするが、その後の警察並びに檢察廳の取扱いにおきましても、私らの観点からいたしますならば、明らかに差別的な取扱いがなされておるのであります。そのために五十数名にわたりますところの部落民を十日間以上も警察側が勾留をいたしまして、現在部落側からは十名の者が共同正犯による殺人並びに数人傷害として起訴、拘禁をせられておるのであります。一方暴力團側からも十名が同じく共同正犯によるところの殺人並びに殺人傷害として起訴せられておるのでございますが、正当防衞——たとい多少の過剰防衞であつたといたしましても、この事態を考えてみまする場合には、当然部落民側、被害者側におきましては、いわゆる共同謀議による殺人の正犯というような関係が成立しないことは、われわれのごとく法律についての專門的な知識のない者でも明らかなところでありますが、警察並びに檢察廳におきましては、この暴力團に対する取締りを放任したのみならず、そのために被害を受けた部落民をそういうように彈圧しておる事実があるのであります。この事件のために、私の所属しておりまする部落解放全國委員会から人を派遣して実情を調査しておる間に、同じ愛媛縣下におきまして警察官の差別問題が起つておるような始末でありまして、こうした暴力事件は、前申しましたように九月における廣島の高須村の事件といい、たび重なつておるわけでございます。そのほか全國の各府縣におきまして、なおこの封建的な誤れる身分観念から來るところの差別事件がひんぴんとして起つておるのでありますが、私は、われわれが敗戰によるとは言え、民主化の一途に向つて驀進しておる折柄、こうした問題が起るということはきわめて遺憾であります。この問題は同時に憲法第十四條において保障せられました人権を侵害する問題であると考えるのでありますが、厚生大臣としてこれらのいわゆる部落民の差別問題あるいは部落民の経済的あるいは社会的地位の向上等の諸問題につきまして、いかなる所信を持つておられるか、またこれらの問題につきまして、厚生省として特にどういう対策をもつて臨まれようとするか、その点について厚生大臣の御所見を伺つておきたいと思うのであります。
  171. 林讓治

    ○林國務大臣 ただいま田中議員からのお話の趣は私初めて伺います問題でありまして、今日におきましては、もはやそういうような心持は私どものところなどにおきましては、ほとんど考えておらぬ点ではなかろうか、はなはだ遺憾ながら、ただいま御指摘のような状況があつたといたしまするならば、まことに遺憾なことと考えます。また檢察廳並びに警察あたりにおいてそういうことがあつたものといたしましたならば、政府としては今後かくのごときことのないよう十分警告を與えまして、再びそういうことのないようにせしめたいと考えております。厚生省におきましても、部落問題などにつきましてどういう政策をとらしめるかというようなことにつきましては、私は今日そういうような問題が起つておることを初めて伺つたわけでありまするし、厚生省といたしましては特にその問題について、どうこうということの政策と申しましようか、計画がないように私ども考えておりますので、もしそういうことが今後起きそうでありまするならば、別途方法を考えまして、再びそういうことのないようなぐあいに努力いたしてみたいと考えております。ただいま具体的にどうするかという問題につきましては、私ども全然そういうことがないものと考えておるわけですから、具体的な政策について申し上げるだけの案のないことをお話申し上げまして、はなはだあいまいな答弁でありまするけれども、事件の内容につきましてなお調べさせまして、今後再びそういうことのないように注意させたいと考えます。
  172. 田中織之進

    ○田中(織)委員 厚生大臣はもちろんこうした事件などが今日起ろうはずがないというようにお考えになつておられることは、ごもつともなことだと思うのでございますが、現実の問題といたしまして、こういう問題がなお潜在的にかなり多数あるという事実を十分御認識を願いたいと思うのであります。ことに現在厚生次官の葛西君が、多年社会局長といたしましてこうした問題についても、十分の御認識と御理解を持つておられることと思いますので、われわれも数年來葛西君の社会局長時代から、これらの問題についていろいろ御相談申し上げておることもあるわけでございますが、厚生省として、特にこうした問題が起りますのは、やはり物的な條件と申しますか、これらの部落民が從來職業の面、あるいは住居の面におきましても、いろいろ制約をされておりました関係から、今日経済的にはなお惠まれないものが多いという点に物的な條件があるとわれわれは考えますので、今申しました具体的な事件につきましては、特に檢察上の取扱いの問題で、きわめて重要な問題でありまするので、後ほど法務総裁からも所見を伺つておきたいと思うのでございますが、この問題から宇和島市におきましては、市長並びに市会のリコールの問題がすでに発生いたしまして、大きな問題になつておるわけでございます。われわれとしては、こうした問題がかなり全國的に、われわれの委員会に報告のありますことによりますと、相当な件数に上つておりますので、特にこうしたことは新憲法下において断じて許さるべきことでないと思いますので、ただ單に法文の上で平等ということが確保されただけでは意味をなさない。その実質的な裏づけについて、特に現内閣において特段の御考慮と対策をお立てくださることを切に希望いたしまして、厚生大臣に対する質疑を終る次第であります。
  173. 上林山榮吉

    ○上林山委員長 この際厚生大臣質問を求められておる世耕弘一君に質疑を願います。
  174. 世耕弘一

    世耕委員 厚生大臣に簡單に数点お尋ねいたしたい。最近私は時々病氣をいたしますが、どうもろくでもない藥が市中に販賣されておつて、私は幸い命を落すということはなかつたが、そのためにかえつて多数の生命を奪われた実例を二、三目撃するのであります。こういう点に関して何か檢査方法等に関して、新しい対策をお立てになつておるかどうか。たとえば最近の賣藥から見ましても、処方の内容を表に記入さして、そうして質の良否、ごまかし等の弊害をなくすることも一つの方法でありますが、ところがこれが実行されておらない。こういうような具体的な問題について何か新しい方法を考えてもらえないか。最近における不良製藥に対する対策いかん。  もう一つは國民健康保險の補助金の問題であります。過般他の席において三億五千万円ほど予備費から支出するということを言明があつたようでありますが、まだ納得の行きにくい点がありますので、予算面からはたしてこれが実行できるのかどうかということを、この際お尋ねしておきたいと思うのであります。
  175. 林讓治

    ○林國務大臣 不良の藥に対する対策の問題でありますが、ただいまのところ製剤をいたしました場合において、嚴重な檢査をやつておるにすぎないと考えます。なおそういうようなことに拔かつておる点がありますならば、一段とこれを強化いたしまして、かかる不良藥品の出ないように努めたいと考えます。それからただいま國民健康保險の金は追加予算に出ております。ただその点につきましてわれわれの要求いたしておりますのは、相当要求いたしておりますけれども、今日の場合、財政上なかなか困難なようでもありますので、ただいま三億とか五億とかいうことをまだ私どもで明言をいたしかねるので、大藏省あたりとも折衝いたしまして、できるだけ多くのものをとつてこの補助に充てたいと考えておるわけであります。出ておることだけは間違いありません。
  176. 世耕弘一

    世耕委員 これは吉田内閣ばかりでなく、歴代の内閣にもそういう弊害があつたが、たとえば藥のマル公を決定する場合でも、價格の決定は非常に合理的にされるのであるが、その價格の決定としたいわゆる内容というものに対して少しも監督をしてくれぬ。たとえば藥のような問題でもそうです。一びん百円なら百円という價格を決定しながら、どういう質量のものを販賣されるかという最終の監督ということができていないから、今日多くの不良品が出て來て、あるいは最近地方で起つたワクチンの問題のごとく、数百名の生命にも危險を及ぼすような重大事件が出て來たのであります。これはぜひ嚴重なお取調べを願つて、今後そういう危險性のないように十分お取調べを願いたいということをお願いする次第であります。  次に日本にない藥品があります。その日本にない藥品のないために非常に患者が困つておる。そのために生命を落す場合がある。非常な苦痛をなめなければならぬ。かような例は藥の名前をあげればいくらでもありますが、一般生活必需品の輸入を今日許可されておる場合でありますから、できたらこの医藥品の輸入をもう少し促進させるお考えがないか、もしあればその手続等はどういうふうにおとりになつておるかということも、この際承つておきたいと思います。
  177. 林讓治

    ○林國務大臣 ただいまのように國内においてない藥品があるといたしますならば、今後できるだけ多くのものを入れるように努力いたしたいと思いますが、この際ちよつと申し上げますと、この間結核に対するところのストレプトマイシンという藥なども、先般サムス代將がアメリカに帰られまして、その菌をこちらによこしてもらつて、ペニシリンと同じようなぐあいにつくらせるというような計画も立てられておるのでありますから、そういうふうに今後ぜひ必要なものがあるといたしましたならば、できるだけ多く輸入さしていただけるようにその筋とも折衝いたしたいと考えております。
  178. 世耕弘一

    世耕委員 もう二点ばかりお尋ねいたしたいと思います。これははなはだとつぴなような質問かと思いますが、重大な問題でありまして、特に厚生大臣にお尋ねしておくのであります。人類社会の基本的なものは何かと言えば、いわゆる性、衣、食、住、私は四つを掲げたいと思います。その中で衣食住の三点はよく論議されるのでありますが、日本國内においては性という問題について、眞劍に考えられておる傾向が少いようであります。たまたま性の問題が取上げられる場合は、むしろ下品な野卑な見地からこの問題を取上げて、雜誌新聞等にも記載されておるが、私はもつと文化人として一歩進めて、性行為はすなわちわれわれの優良民族を保存するためであり、また祖先から傳つて來たところの血統の大切な保存行為である。こういう建前から今後大衆指導の面に性教育というものを起して行かなければならぬものじやないかと私は考えるのであります。その意味において、最近集團見合結婚というものが流行して、世間にいろいろな話題を投げかけて來ておりますが、こういう点に関してもつと科学的に、あるいは優生学的な見地から、何か厚生省にお考えがあるかどうか。ことに人情に富み、常識に深い、種々なお考えをお持ちになつておる厚生大臣は何かお考えがおありになろうと思いますから、この点ひとつ伺つておきたいと思います。
  179. 林讓治

    ○林國務大臣 ただいまの性に関係いたしました問題につきましては、世耕君とまつたく同感であります。しかしながらこれらに対するところの問題につきましては、きわめて私ども厚生上における知識がございませんので、ただいまのところ私は厚生省にどういう方針があるということを申し上げることのできませんことをはなはだ遺憾に考えますけれども、私正直のところを申し上げて、その点についてはきわめて知識の持合せがございませんから、ひとつお許しを願いたいと思います。
  180. 世耕弘一

    世耕委員 ただいま厚生大臣から、同感ではあるが、今のところ知識の持合せがないからという謙遜なお答えでありましたから、こまかいことを申し上げることを避けておきますが、実際これは重大な問題であります。ぜひこれは厚生省で具体的な案を立てていただきたい。同時にこれは文部大臣おいでなつたら文部大臣にもお聞きしようと思うのですが、非常に大切なことだから、それぞれ專門家が寄つて具体的な案を立てていただきたいということをお願いしてやまない次第であります。  次に建設大臣に一点だけお尋ねいたしたいのですが、日本水力電氣開発というものは、いろいろな事情から諸外國の例を見ましても非常に遅れております。今後日本の採炭もあと三十年そこそこ、あるいは二十年で終りを告げるのではないかという專門家の言を聞くのであります。のみならず科学の急速な進歩は、石炭のごとき貴重なものは單純な燃料とするよりも、將來はむしろ化学原料として保存しなければならぬという説が有力になつて來たのでありますから、今後文化的、科学的に日本が発展して行くのには、その動力源たる、天然資源である水力電氣開発よりほかにないと思うのでありますが、これについて何か具体的な御意見、御計画があればこの際承つておきたいと思います。
  181. 益谷秀次

    益谷國務大臣 水力電氣開発ということは直接私の所管ではないのでありますが、建設省といたしましては近來の水害の頻発という点から考えまして、治水の根本対策を確立して、これを実行いたして参らなければならぬのであります。そういう意味合いから利水調査会を設けまして、五箇年計画を立てて根本的に利水政策を立案しつつあるのであります。その方面から洪水調節のためのいわゆる貯水池でありますとか、ダムといいますか、それを計画いたしておるのであります。これはただちに利水の計画になるのであまりす。治水の方面から洪水調節のダムをつくる、これを利水の方面に使つて参りますれば、すなわち灌漑用水にもなります。また水力電氣の開発にもなるのであります。こういう方面から日本の治水事業を完成すると同時に、日本産業開発、経済復興の建前から水力電氣の開発をいたしたいと存じてこの計画を進めております。また一面先ほどもお答え申し上げたのでありますが、國土計画の一環として地方産業開発計画を樹立いたし、そうしてこれを総合的に実行いたそうと存じておるのであります。その総合的産業開発の一つ事業といたして、あるいは水産、あるいは林産、あるいは地下の資源を開発いたして参りますと同時に、やはり水力電氣事業ということも地方開発の最も重要なる点でありますから、そういう國土計画、地方開発の点からと治水、すなわち利水という方面からと、両方面からにらみ合せて水力電氣の開発をいたしたい、かように考えておるのであります。從つてこれを実行いたしますのには、政府においては各省局と緊密な連絡をとつて参らなければならないのであります。現在のところにおいては私の方はただいま申し上げましたように、とりあえず洪水調節のダムを建設いたそうということで、これに対する研究をいたし、さつそく來年度からでも重要な地点を選んで実行いたしたいという計画を進めておる次第であります。
  182. 世耕弘一

    世耕委員 御説の通りだと、自然建設土木事業というものが附随して來るものと思うのですが、失業対策の面から見て、また今後の日本の國土建設の建前から見て、いわゆる建設土木事業ということが相当大規模に計画されなくちやならぬと思うが、その点についての御構想を承つておけばけつこうだと思います。
  183. 益谷秀次

    益谷國務大臣 御説のごとく、相当大規模の計画を立てて参らなければなりません。從つてこれに対しては政府においては十分に対策を講じて、財政の許す限り失業対策の方面、また産業開発の方面、また人口收容の増大というあらゆる方面に重大なる関係のある事柄でありますから、思い切つた計画を立てて、思い切つた事業を実行いたさなければならぬと思つておるのであります。從つて私どもの所管におきましても相当思い切つた計画を立てております。しかしながらこれも今日の國家財政の制約を受けておりますから、非常に困難な事業とは存じておりますが、この困難を克服して参りたいと念願しておる次第であります。
  184. 上林山榮吉

    ○上林山委員長 田中織之進君。
  185. 田中織之進

    ○田中(織)委員 私は建設大臣に災害復旧の予算に関連いたしまして、二三の点について質問いたしたいと思うのであります。今回本委員会で審議をいたしております追加予算に、災害対策復旧費といたしまして公共事業費において六十億計上せられておるのでございますが、その六十億のあらましの内訳については、先般資料をいただいておるのでございますが、私は建設大臣にお伺いしたいのは、この六十億は予算が通過いたしますならば、そのまま新規事業として着手できるものかどうかという点をただしたいと思うのであります。なぜこの点を伺うかと申しますなれば、先般の大藏大臣の本委員会における説明によりますと、災害対策に関する緊急融資とか、あるいは預金部の資金、または農林中金の資金、復金の資金等かれこれ七十数億円のものがすでに融資せられておる、こういう御説明があつたのでございますが、これらの災害復旧に関する緊急の融資は当然國庫における災害対策の予算の前提といたしまして、それのつなぎ資金という形において從來融資されておると思うのであります。そういたしますならば、この予算が通過いたしました後において、当然六十億の中からこの予算を前提としての融資の分が差引かれる勘定になると思うのであります。融資総額七十二億であつたと思いますが、それを全額返還しなければならぬということにいたしますならば、新規の災害復旧事業というものが全然行われないような結果になると思うのでありますけれども、この点はどういう関係になつておるのですか。融資の細目についても伺つておきたいとともに、この六十億の追加予算では二十三年度に発生いたしました災害の應急の復旧工事もできないと思うのであります。その点は各省からの要求が二百六十三億になつておるということからも推し知られるのでありますが、さらに本年度中に災害に関する追加予算を出す御計画が建設省におありであるかどうか、もしも追加予算をさらに出すことが不可能な状態でありますならば、すでに何らかの処置を講じてくれるものという大きな期待のもとに、各方面で工事等に着手しておる関係に対しましては、融資等の問題について何か具体的な対策をお持ちになつておるか、この点をまずお伺いしたいと思うのであります。
  186. 益谷秀次

    益谷國務大臣 今回補正予算として提出いたしまして御審議を願つておるのは、災害復旧について六十億であります。これが全部そのまま今年の災害に充てることになつております。建設省といたしましてはそのうち三十八億六千七百万かと存じております。これは六十億すべてを今回の災害の費用に充てることになつております。なお地方に対する融資の関係を御質問のようでありますが、この点についても私どもの省といたしましては、預金部等に対し、地方に対してできるだけ多く融資をやつてもらいたいということを交渉いたしているのであります。先般大藏大臣も申されました通り、まだ予算外國庫の負担の契約の残が約二十億あるそうであります。これを今後十分に災害復旧に活用するということを言明いたされております。これとただいま御審議を願つておりまする六十億とで、緊急地点の復旧をいたしたい。建設省といたしましては大体明年の七月を出水期と目標を立てて、それまでに緊急を要する箇所は復旧をいたして参りたい、かように考えておるのでありますから、國家の財政の許す限り、経済復興のため、産業開発のため、どうしても一日もすみやかに復旧をいたしたいと思つておるのであります。さように御承知を願います。
  187. 田中織之進

    ○田中(織)委員 建設大臣のただいまの御答弁によりますと、もちろんこの六十億の國の予算に対しまして、地方負担がかりに三十億といたしますならば、九十億の復旧の事業がやれるということになるのでありまして、その三十億の地方負担に対しましては、今日の地方財政の困窮状態から融資を願わなければならないことは当然のことなのであります。私はこの六十億の予算が、もちろん現内閣によつて最後の総額が決定されたものでございますが、本年度のいろいろな風水害が発生いたしました時間的な経過から見ましても、前内閣時代からも計画しておつたものが最終的にこの予算となつて現われたと思うのでありまして、当然こうした予算が組まれるということを前提といたしまして、預金部からつなぎ資金が相当出ておると思う。それはこの予算が通過いたしましたならば、当然預金部の方へそれらのつなぎ資金は差引いて行く勘定になると思うのでありますが、はたしてこの六十億の中で預金部からすでにつなぎ資金として出ているものを差引いたならば、どれだけ残るかという点を、これは建設大臣がもしそういう詳細な点まで御承知ないとすれば、主計局長からでもその点をただしたいと思うのであります。どうも私らの感じからいたしますと、現内閣は災害対策の問題について、院議等の決定もありまして、きわめて熱心にやつておられるということ、ことに建設大臣が非常に御努力されておるということにつきましては、われわれ敬意を拂つておるものでございますが、この予算だけの面を見ますと、率直に申しまして、これが新しくこれだけの——今までこの予算の前提として融資等がなされておる関係を度外視いたしまして、一般國民は現内閣の施策として六十億の追加予算が盛られたというふうにとるのでありますが、私はそういう点は、もちろん現内閣による努力を認めないわけではございませんけれども、そういう関係において新しく着手し得る部分が、この六十億の中にどれだけ含まれておるかという点を明確にしておきたいと思うのでございますが、その点について重ねて建設大臣からお伺いするわけに行きませんか。
  188. 益谷秀次

    益谷國務大臣 私は六十億は災害復旧の補助金でありますから、これをこのまま今回の災害に充てるものと思つております。なお予算のこまかい、配分その他詳細なことについては、安定本部その他と今交渉いたしておりますが、私といたしましては本年の災害に今回御審議を願つておりまする六十億をすべて補助費として地方に出すというように考えておるのであります。なお大藏省の政府委員もおりますから、この点を確かめていただきたいと思います。
  189. 阪田泰二

    ○阪田政府委員 お答え申し上げます。現在六十億の災害復旧費予算が出ておるわけでありますが、預金部からこの災害復旧のための予算を引当てにいたしまして、お話のように前貸しと申しますか、つなぎを出しておりますものが約三十八億ございます。この三十八億のうち國庫負担と地方負担とにわかれますものが、大体二対一とお考え願えばいいわけでありまして、そういたしますと、三十八億のうちの三分の二、約二十六、七億になりますが、二十六、七億程度が七十億の予算を引当てに出ておる金と大体御了解いただけばいいわけであります。從いまして六十億のうち二十六、七億にあたりますものは、そのまま振りかわる、こういうことになるわけであります。残りの三分の一にあたります十三、四億のものにつきましては將來起債にかわります。地方の起債になりますので、地方の起債といたしましては、今建設大臣からもお話がありましたように、六十億全体に対しまして、その約半額三十数億になりますが、三十数億というものが起債になるわけであります。この地方起債につきましては、預金部といたしまして、ただいま申し上げました十三、四億のものも含めて三十三、四億になりますが、これにつきましては何らかの方法で預金部で引受けることを努力いたしております。なお災害関係の資金につきましては、そのほかに——これも建設大臣からお話のありました通り、予算外契約といたしまして大体二十億というものがまだ未使用になつておりますので、必要に應じましてこれを活用して参る。ただこれは実際問題といたしまして、國庫の現実の資金の支出は本年度中にはなかなか困難な点がございます。從いまして本年度中におきましては、この予算外契約を活用いたしますといたしましても、何らか預金部その他の金融上のつなぎをつけて参らなければならぬ、こういうことに相なりますので、預金部の金繰りその他の点から見まして、それが全部完全に消化できるような状態にあるかどうか。現在のところははつきりしたことを申し上げる段階に至つておりませんが、資金の許します限りにおいて、これらの点も必要に應じて考えて参りたい、かように現在のところ考えております。
  190. 田中織之進

    ○田中(織)委員 大体この六十億と融資の関係についての事情が判明したのでありますが、そういたしますと、やはりわれわれが理解いたしまするように、現内閣がこの六十億の災害に関する追加予算は、率直に申しまして現内閣以後の功績というふうに宣傳するに当らない、きわめて貧弱なものであるという結論をわれわれは下さざるを得ないのであります。この点につきましては、予算の面でさらに追加することが不可能な情勢にありまするならば、これが金融的な処置について、格段の努力をされることを要望するものであります。  次に建設大臣にもう一点お伺いいたしておきたいのは、私の出身の和歌山縣を初めといたしまして、四國あるいは兵庫縣、三重縣等にまたがる問題でございまするが、一昨年の南海大地震から引続きまして、これら紀伊半島、四國の海岸線全般にわたりまして、地盤の沈下という現象が現われて参つておるのであります。これが今日まで継続的に起つておる現象でございまして、和歌山縣のごときは、最もはなはだしいところは三メートルもすでに沈下いたしております。そのために半年前、一年前にりつぱな道路があつたところが、すでに海中に沒しており、海岸線の漁港その他におきまして、船揚場あるいは網干場でありましたものが、まつたくなくなつておる。海岸にありますところの倉庫が、今日床上まで浸水いたしまして、使用に耐えないというような実情があり、さらに農作地の関係におきましては、そのために塩水が浸入いたしまして、農作物の收穫がまつたく皆無になるというような現象が現われておるのであります。またこの地盤沈下とどういう関係があるかわからないのでありまするが、本年の八月、九月に入りまして、いわゆる高潮のために、この沈下いたしましたところの海岸線にわたりまして、相当の塩害が起つておるというような実情があるのであります。この問題につきましては、建設省、安本、農林省等の技術官等がすでに現地を詳細に調査せられまして、いろいろ現地の情勢に應じて、それぞれ対策についてもすでに御決定になつており、要はこの計画をいかにして予算化するかという最後的な段階に到達しておると思うのであります。詳細な数字がまだ手元に参つておりませんのでわかりませんが、今回の追加予算に現われました災害復旧費の中に、これらの震災あるいは地盤沈下による高潮、その他に対する対策については、ほとんど経費が計上されておらないやに見受けるのでありますが、こうした現になお継続しておる災害でございまして、和歌山縣の例をとつてみましても、つい半年前までは有田郡以東でありましたものが、半年以後の今日におきましては、海草郡、和歌山市等の北部にまで延びて來ておるというような実情でございます。これは、たとえばアイオン台風のように、そのとき來て大きな災害を残して行くものとは違いまして、現在こういうようにお話申し上げている間にも、刻々に地殻の変動から、こうした災害が起りつつあるのでありまして、沿岸の住民といたしましては、実に戰々競々たる状態にあるのであります。從つてこうしたものは、当然緊急なる災害対策の問題として取上げていただかなければならないと思うのでありまするが、こうした問題に対しまして、建設大臣としてはどういうお考えを持つておられるか。今回の予算にほとんどそれらしい経費が見当らないのでありますが、この問題は関係する地域が相当廣大にわたつておりまして、食糧生産あるいは水産業上の問題となつておりまするので、この点についての積極的な施策を要求いたしたいのでありますが、建設大臣の御所信を承りたいと思います。
  191. 益谷秀次

    益谷國務大臣 この点については、先般長野委員の御質問に対して、比較的詳細にお答えいたしたはずであります。和歌山縣のみならず、中國、四國各方面に、南海震災以來地盤の自然沈下があるのであります。これに対しては八億三千万円かと記憶いたしておりますが、それだけの費用を出してこれに対する対策を講ずるということになりましたが、本年は御承知通り、すでにそのうち三億円出してこれに対する対策を講じておるのであります。その後ただいま御質問のように、和歌山縣その他から日々沈下するという報告も受け、またあらゆる陳情も受けて、まことに御同情にたえないのであります。しかしながらこれは、目下御承知通り係官が出張いたしまして、沈下をしたという方面を綿密に調査をいたいておりますので、調査ができ上りました結果、あらためて予算化して、それに対する対策を講じたいと思うのであります。ここでお断り申しておきたいのは、地震以來地盤が沈下するという訴えでありまするが、私の役所の地質調査所で調査をいたしておりますのでは、これは天体の変動による潮位の変化ではなかろうかということを申しております。根本的の原因は今調査しておりますので、原因が奈辺にあるかによつて、それぞれ対策が異なると思うのでありますが、大体潮位の変化ではなかろうかと見ておるのであります。地方民の生活安定のために、また産業復興のために、一日もすみやかにこれに対する対策を講じたいと存じております。
  192. 上林山榮吉

    ○上林山委員長 この際田中君にお諮りしますが、法務総裁が見えておりますので、できるなら質問を続行願います。
  193. 田中織之進

    ○田中(織)委員 それでは法務総裁に二点ほどお伺いいたしたいと思います。まず第一点は、先ほど厚生大臣に別の角度から御所信を承つたのでございまするが、実は本年の十月十五日に、愛媛縣の宇和島市におきまして、八幡神社の祭礼のみこしの行列の問題にからみまして、いまわしい差別事件が起つたのであります。この差別事件がきつかけになりまして、町の暴力團がこのみこしの行列に参加いたしておりましたところの部落民に対しまして、二十数名が二回にわたつて集團的な暴力を加えたのであります。第一回のもんちやくが終りまして、これは宇和島の警察署長以下の警察官がかけつけまして、とにかく事件をとりしずめたのでありまするが、さらにその暴力團の者が拳銃、どす、まさかり等の凶器を持ちまして、二回目の襲撃を部落民に加えまして、そのために部落側から二名の死者、一名の重傷者を出したのであります。当時第一回のもんちやくのときにかけつけました警察署長に対しまして、みこしの行列に参加いたしておりました部落民の方が保護を要求いたしたのであります。それで最初の襲撃に対しまして、みこしの行列に参加しておる連中でありますために、何らの防禦手段がないものでありますから、付近から棒ぎれ等を集めて、これで対抗しようとしておつたのでありまするが、警察署長が君たちの生命については十分責任を持つ。こういう言質を與えましたので、そういう防戰用として集めました棍棒等を全部警察へ引渡しまして、みこしの行列が進みまして社務所で休憩をしておりまして、晝食中に再び暴力團の最後の襲撃がありまして、そのときには暴力團側が拳銃、どす、あるいはまさかり等の凶器を手に手に二十数名の者が持つて襲撃いたしましたために、遂に二名の死者を出すような結果になつたのでありまするが、この再度の暴力團の襲撃に対しまして、警戒の任に当つておりました警察署長以下の警察官が、暴力團の襲來と同時に四散いたしまして、全然無警察状態になりましたために、遂にこうした被害者を出したわけであります。警察官が逃げてしまうし、仲間の中からの二名の死者を目の前にいたしまして、部落の人たちがやむを得ず付近にありました社務所の境界の棒ぐいを拔いて防戰に当りました。そのために襲撃いたしました暴力團側からも二名の死者を出した事件なのであります。この事件に対しまして、その後檢察廳の方では部落一戸一名ぐらいを警察へ拘引をいたしまして、約十日近く取調べを行いまして、現在部落側から十名が共同正犯による殺人あるいは殺人傷害として起訴されておるのであります。もちろん暴力團側は計画的な襲撃でありまするので、共同正犯として暴力團側からも十名の起訴者を出しております。殺人あるいは殺人傷害並びに凶器等の所持取締りに関する法律違反として起訴せられておるようでありまするが、私らの方に現地の部落会から連絡がありまして、委員を派遣いたしまして、実情を調査いたしましたところによりますると、これは明らかに差別事件に端を発する計画的な暴力事件でありまして、部落民の行つた行為はあくまでも正当防衞であるということが、現地の軍政部の関係においてもそういう点についての見解がほぼわれわれと一致しておるような段階でございます。それにもかかわらず檢察廳側が共同正犯による殺人並びに殺人傷害として十名を起訴しておるという問題がありまして、本日から三日間宇和島で裁判が行われることになつておるのでありまするが、私はこれはあくまで部落側は正当防衞であると思います。死者を出したという点につきましては、あるいは一部分過剩防衞という問題もあると思いまするが、しかも十名につきましてはとつさの暴力團の襲撃に対應する場合に、共同謀議等の時間的な余裕もないということは、常識的にも判断できると思うのであります。それにもかかわらずこれを共同正犯として起訴したというところに、私はどうも檢察廳の方において、きわめて偏頗な取扱いをしておるのではないかという疑いを多分に持つものであります。しかもこの事件の発生にあたりまして、今申しましたように警察官が参りまして、第一回のもんちやくをとりしずめる際に、明らかに生命の保護を警察官として約束しておきながら、再度の凶器を持つた暴力團の襲撃に対して、その任務を放擲いたしまして無警察状態に陷れておいて、そこに発生した問題について、しかもそれを共同正犯による殺人事件として起訴するような態度は、まつたく私は不可解であると思うのであります。從つてこの問題に対しましては、私の方から正式に法務廳並びに檢察廳に対して嚴重なる抗議をいたす所存でありまするが、この問題に対す法務総裁の所見を伺いまするとともに、この檢察廳の取扱いに対しまして、いかなる対策を講ぜられるかをまずお伺いしたいのであります。
  194. 殖田俊吉

    ○殖田國務大臣 ただいまのお話を伺いますと、まことに嘆かわしい事件だと存じます。警察の取扱いにつきまして、私がかれこれ申す筋合いでもございませんので、差控えますが、檢察の方は先ほどお話に出たことを伺いましたので、調べましたのでございますが、ごくアウトラインの報告だけしか参つておりませんので、詳しい事情は私の方でわかりかねておりますので、さつそく取調べまして善処いたしたいと思います。もし非違がありますならば、十分訂正をいたしたい。ただいまのところそういう成行きになつておりまするならば、裁判が多分公正な裁判を下すと思いまするが、裁判の結果いかんに関しませず、よく取調べまして、適当な対策を講じたいと思います。まだ報告が参つておりませんので、はなはだ残念でありますが、詳しいことは申し上げかねます。惡しからず。
  195. 田中織之進

    ○田中(織)委員 事件の内容が、まだ法務総裁の方で詳細にわからないので、十分取調べて処置をされるということはむりもないと思いますが、この種の暴力事件は再三從來もあつたのであります。その場合にこの差別問題に対しての考えというものが、部落民と一般の人たちの間に大きな隔たり、部落民にとりまして今日憲法において法の前に平等であるということが明らかに保障せられておるにもかかわらず、こうした誤れる差別をされるということは、まさに死に値する重大な問題である。そこに当然そうした死に値するところの侮辱を與えられたものとして発生せるところの事件の結果のみを取上げまして、その問題に対しましての処置をされるということは、私は重大な誤りだと考えるのでありまして、問題がどうして発生したかという原因につきまして、十分調査をせられまして、留意せられた上で、この種の問題に対する檢察当局の取扱いについてあくまでその公正を期するとともに、嚴粛なる態度をもつて臨んでもらいたいということを、この機会に強く要望しておくものであります。  それからもう一点、これは別の問題で法務総裁にお伺いしておきたいのでございますが。農地改革に関連した問題で、茨城縣の筑波郡大穗村に起つた事件でございますが、この大穗村の農地委員会の委員長は地主側の委員であつたのであります。ところが一昨年から農地委員会が仕事を始めておるにもかかわらず、この地主側委員長が一向に農地委員会を開かないために、村の農民は再三農地委員会の開催を要求いたしました。それにもかかわらず開催をいたさないために、村民大会を——農民が集まつて即時農地委員会の開催を要求し、地主のところに参りまして、村の駐在巡査が立会いのもとに夜おそくまで、たしかこれは徹宵交渉したと聞いておりますが、それに対して檢察当局の方では不当にも、警察官が立会いの上で夜を徹して交渉するということはどうかと思いますけれども、警察官立会いの上で秩序正しく地主と折衝したにもかかわらず、農民組合の指導者を住居侵入暴力行為として起訴し、これに対して一審の判決はきわめて不当なもので、現にその判決が決定いたしましたために、これは現に控訴審で爭つておる問題でございますが、われわれの調べたところによりますと、たまたま土浦檢察廳の係檢事はその地主委員の親類のものである。そのためにその地主の方と連絡をとつて、農民側に対して不当の彈圧を加えたという事実が明白になつておるのでございますが、とかく農地改革の問題に対して檢察廳並びに裁判所側は、これが農調法違反の問題でありますならば当然檢挙し、またこれを有罪としなければならないにもかかわらず、從來の取扱いが、たとえば民法の土地の賃貸借契約というような考え方にこだわつて、きわめて偏頗なものがあつたのであります。前内閣時代われわれはこの点に対して法務廳に抗議を申し込みまして、法務廳から各檢察当局並びに裁判所に対して、農地調整法の精神に照して、違反者は嚴重にこれを檢挙するとともに、これを処罰することが通達せられたはずであると思うのでありますが、最近われわれの農民組合の本部に連絡のあつたところによりますと、茨城縣土浦の檢察廳においてこうした問題が起つておる。現に土地取上げ問題等も多数起つておりまして、それらの問題に対する檢察当局の取扱いにおいて公正を欠く点が多々見受けられますので、この点に対して法務総裁はいかなるお考えを持つておりますか、この機会にただしておきたいと思うのであります。
  196. 殖田俊吉

    ○殖田國務大臣 初めの問題につきまして、部落民の差別待遇と申しますことは、新憲法のもとにおいてはもとよりでございますが、すでに明治維新以來差別待遇は撤廃されておるのであります。それが今日までその思想が残つておりますことは、まことに遺憾でありまして、あらゆる手段によつてこれは是正しなければならぬと考えております。從つてただいまのお話のごとく、檢察の面においてさような根跡が残つておりましたら、これは嚴に戒飭を加えなければならぬことと思います。その辺をよく調べまして、私はただいまのような考えで、これを善処いたしたいと思つております。ことに部落民の問題につきましては、私はやはり同情をもつて、今のお話のごとき歴史的の点にまで深く省察いたしまして、これを処置すべきものと考えております。  それからただいま茨城縣のことを伺いましたが、私は檢務長官から聞きましたことで、一向報告は受けておりません。檢務長官にもただしましたが、檢務長官もまだその報告を得ておらぬようであります。これもさつそく調べなければならぬ問題でありますが、お話の通りとすれば、むろんはなはだ不都合でありまして、あるいはまたそういう所が所々方々にあるかもしれません。私の及ぶ限り十分に報告も徴し、また調べもいたしまして、あやまちなきを期したいと思います。むろん法の精神をよく翫味いたしまして、そうしていつの場合でも同情のある合理的な処置をとりまして、嚴正公平に扱いたいと思つております。ただ私不敏にして、十分にその理想が行われますかどうかわかりませんが、一生懸命やるつもりであります。
  197. 上林山榮吉

    ○上林山委員長 この際世耕弘一君、法務総裁に御質疑を願います。
  198. 世耕弘一

    世耕委員 簡單に一、二点法務総裁にお尋ねいたしたいと思います。それは最近檢察当局に対するいろいろな批評が起つておるのでありまして、その一つを御紹介申しますれば、檢察当局のフアシヨ化、こういうことが言われており、ある一つは人権蹂躙がはなはだしい例をあげて、非難ごうごうたりものがあるのであります。われわれが新憲法の施行された後において、かくのごときことはあり得ることではないと思うのでありますが、世間にさような説が傳えられる以上、必ずそこに何かの原因が伏在しておると思うのであります。願わくは賢明なる法務総裁によつて、かくのごとき禍根を一日も早く断つていただくように御努力が願いたい。二、三の実例を申し上げますならば、われわれの同僚が被疑事件で拘置された場合に、二箇月あるいは三箇月拘置されたまま、ほとんど取調べを受けないでおる。かような事実でありますが、かようなことは結果において人権蹂躙と目される結果となるのであります。私の察するところによりますと、かような事態が発生するということも、時代に逆行した事実が発生するということも、これは檢察廳の手が足りないのではないか。あるいはさような檢察人としての活動し得る機能が十分整つておらぬのではないか、かように私は考える。もしさような、私がただいま指摘したような事実があるとすれば、大いに予算を増額して、いやしくも新憲法下人権蹂躙とか檢察廳のフアシヨ化などということを一刻も早く拂拭すべきじやないか、かように考えるのでありますが、これについての御所信を承つておきたいと思うのであります。
  199. 殖田俊吉

    ○殖田國務大臣 御承知のように、戰後世の中が非常に乱れまして、從つて犯罪も非常に増加して、そのために檢察当局の手も十分にまわりませんというようなことで、あるいは扱いが届かないというようなことがたびたびあるのではないかと想像しております。そのためにフアシヨというようなことも出たのではないかと思います。それから私はあまりくろうとでございませんが、檢事の勾留というのは十日までだそうで、あとは裁判所が裁判の都合で長く引きとめて置くことがこのごろ多いのだそうです。これもやはり手不足ということから生じておるのではないかと思う。しかしながら手不足でありましても、そのために大事な人権を蹂躙することは、はなはだ不都合なことでありまするから、これはいかなることがありましても尊重しなければならぬと思います。いろいろな事情もございましようと思いますが、それらの点もよく考察いたしまして、あるいは予算が足りないというようなことであれば、予算の増額を強く請求いたしまして万遺憾なきを期したいと思います。御精神におきましてはまつたく同感でありまして、私は全力をあげて努力をいたしたいと思います。
  200. 世耕弘一

    世耕委員 もう一点念のために伺つておきますが、大体法務総裁の御説明で了解を得たのでありますが、こういう傾向がないかと言うのです、手が足りないから十分迅速な取調べができぬ、しかしながら犯罪捜査の上にぜひ必要だからまずつかまえておけ、ぶち込んでおけという便宜論が結局人権蹂躙をする機会が非常に多くなつたのじやないか、さような場合、もし手が足りないで取調べが迅速に行えない場合には、最も人権を尊重しなくてはならぬ今日の時代に、拘置とか留置とかいうことは、緊急やむを得ない限り差控えべきものじやないか、この点については十分な考慮を拂つてもらいたい、今日綱紀粛正がやかましく叫ばれ、國民もまたこれに期待するところが多い場合に、あえてわれわれは綱紀の粛正に対してとやかく言う者ではありませんけれども、綱紀粛正に熱心のあまり人権を蹂躙するような傾向のないよう、もしさような事実があるとするならば、それは文化人としての恥だということを十分お考えおきを願いたい。先ほどの質問にもう一ぺんもどりますが、結局手が足りない結果が人権蹂躙問題が自然起るのです。この点はぜひ法務総裁として、手の足りないところはふやす方法、それについては予算、設備等の関係もありましようから、この点について十分お力添え願いたい。私は機会があれば大藏大臣、総理大臣にもこの点は質問をしたいと思つていますが、特に責任者である法務総裁にこの点をお願いいたしたいと思います。  もう一点は司法関係、檢察関係同樣でありますが、待遇の改善をどうするか、相当激務であろうと思うのであります。これがまた往々にして人権蹂躙に結びつけられる機会がある、最近の実情を調べてみますると、必ずしも待遇が上と言うわけに行かない、この点について何か新たな手をお打ちになつておられるか、かような手薄な上に待遇が思わしくない、十分な手当も出ないということから、人間の感情その他の関係から、自然に思わしからざる事件が発生して、人権蹂躙まで及ぶ、その非難が結局檢察陣のフアシヨとまで攻撃されるような不愉快なことになるのであります。かようなことのないように、まずわれわれは根本的に解決して行こうじやないか、かように思うのであります。それについて何か新しい御成案があるかどうか、御説明を承れればけつこうだと思います。
  201. 殖田俊吉

    ○殖田國務大臣 人権蹂躙の問題でありますが、檢察当局が仕事に熱心のあまり、あるいはさような誤解を招くがごときことがないとも私は限らないと思います。もちろん人権蹂躙というような問題を軽視いたしまして、おろそかなる仕事をいたしたのは論外でありますが、まじめにやりましたものでも、あるいはそういう非難をこうむるようなことがないとも限りません。十分今後注意いたしたい。お話のごとく設備等は非常に不十分でありまして、從來すらも不十分でありましたのが、戰災で損傷を受けまして、のみならず最近また犯罪者が非常にふえております。どうも設備と犯罪とが相應しない、距離がひどくなつて参りましてまことに憂えておるのであります。その予算を熱心に請求しておりますが、現下の財政状態で思わしい予算をもらえない。この上ともに特別な努力をいたしたいと思つております。また御承知のように刑事訴訟法が改正されまして、新しい刑事訴訟法が施行されることになりますれば、ただいまのような人権蹂躙等の問題も、その方の面からよほど軽減されはしないかと考えております。但しそれに非常に金がかかりますので、予算の面において、また刑事訴訟法の施行が理想的に参らない点がございますので、ただいま非常に心配をいたしまして、予算面につきまして努力をいたしておるのでございます。  それから檢察官の待遇の問題でありますが、これは十分に待遇いたしませんければ、お話のごとき結果を生ずること明らかでありますので、從來と違いまして、判檢事の待遇は行政官よりもよくするということになつておりまして、判事も檢事も行政官よりかなり上位の待遇を受けておるのであります。今度公務員法が改正されまして、一般行政官の給與がずつと改善されて参ります。それに準じまして判事も檢事もまた待遇を改めて行きたいと思いまして、すでに法律案にいたしておる次第でございます。十分とは言えないかもしれませんが、とにかく行政官より下位ではない。少くとも行政官より相当程度上位に置くということだけのことはいたしております。その点におきましても今後また十分注意をいたしたいと思います。それから人間の不足、これは実際今困つており、非常に努力いたしておるのでありますが、どういうものですか、適当な人が十分に得られないという悩みがございます。今後一層努力いたすつもりであります。
  202. 稻村順三

    ○稻村委員 関連して法務総裁にちよつとお尋ねしたい。手が足りない足りないと言いながら、軽い犯罪を案外重く見て檢挙する。しかも政治的重要の場合に檢挙するという場合がある。新潟縣の三條市の市長のリコール問題、このリコール問題のもとは、間仕切りをして補助金をもらつて入れるというはずなのが——間仕切りして補助金をもらつて人を入れると言いながら、実を言うと人を入れずにやつたということから、市長の彈劾でリコール問題が起つた。そしてそのときに市民の代表が市会を傍聽に行つてやじつたところが、その間仕切りで、人を入れずに補助金をもらつた人間に対して何ら手をつけずに、やじつた人間を、暴力によつて会議員を威喝したという名目で、実を言うと一人を檢挙し、延人員にして三百何十名というものを檢察廳へ呼んで調べております。いなかの議会におきましては、傍聽者がやじるなどということはあたりまえのことです。それをわざわざ代表者を一人檢挙して、しかも三日間とめた。それも放つておいたのを私が行つて、こういうばかなことはないではないかと抗議を申し込んだら、三十分以内に釈放したのです。こういう実例が新潟縣の地方檢察廳にあつたのでありますが、こういう報告が参らないとすれば、十分調べる必要がありますから調べていただきたい、かように考えるのでありますが、その点に関する御答弁をいただきたいと思います。
  203. 殖田俊吉

    ○殖田國務大臣 その報告も來ておるかもわかりませんが、まだ私のところでただいまはわかりかねます。よく調べましてその点についても善処いたしたいと思いますが、もしそういう間違いがありましたならば、これははなはだ相済まぬことであります。今後は十分注意をいたしまして、そういう間違いのないようにいたしたいと思います。
  204. 上林山榮吉

    ○上林山委員長 林大作君、建設大臣に御質疑を願います。
  205. 林大作

    ○林(大)委員 先ほど同僚の田中君からお尋ねいたしました例の災害予算六十億の件でありまするが、これは大藏大臣の先日の報告にありましたように、融資によつてすでに金が出ておりまするものが七十四億五千万円あるわけであります。これが大体において中央と地方で一対二で使われておるといたしましても、私はここにおいてこうした融資というものは、政府があつせんをいたしまして金を先に出すのでありまするから、憲法第八十五條にいうところの國が債務を負うというものになると思うのであります。いわば予備金の支出と相似通つた性質のものを、予算面でなくて金融面の臨時的処置でもつて処理して行くというわけでありまして、ほんとうから言うと、この國費を支出し、もしくは國が債務を負担する行為は、國会の議決を経なければならないというものに、これは実質的には牴触するものであると私は思うのであります。これは緊急の場合であつて、かりにこれが牴触の問題を一歩讓るといたしましても、少くとも次の通常國会におきましては、この全部の融資をカバーするだけの金額を予算に組んで、そしてこれを清算しておくということは当然であると私は思うのであります。しかるにこれは大藏当局の詳細なる説明及び数字の内容をもつと承りませんと、多少建設大臣と私との問答では片づかないかもしれませんが、かりにこの七十四億五千万円が全部すでに支出されたものといたしましたならば、六十億そこに新しい予算を組みましても、なおかつ十四億五千万円足りない。それから地方起債の三十億というものを加えましても、それでは残りは十五億しかないではないか、こういう問題に相なりまして、つまり古い借金を返すというだけで、何ら新しい事業をここにすることにならないのであります。そこで先ほど來承つておりますように、建設大臣がここで新しい仕事に充てるつもりだという話を先ほどしておられましたが、新しい事業を六十億なさるつもりならば、七十四億五千万円の借金を済まして、その上になさるべきであつて、すなわちそれを合計した少くとも百三十五億からの予算を組まなければ、新しい事業はできないことになるのであります。そこで今度の予算に関して、建設費については國民から見てはもつともらしく聞えて、その実は非常なインチキであるというような結論に相なりまするので、その点についての御見解とそれから借金を済ましただけで何もなさらないつもりなのかどうか、予算の面を私が言うようにお直しになるつもりはないか、どうか、その点をはつきりと承りたいのであります。
  206. 益谷秀次

    益谷國務大臣 私は決してインチキであるとは思つておりません。私は六十億の歳出中、建設省に配付になる分は本年の災害復旧にそれぞれ使用して行きたいと思つておるのでございます。全部の六十億の予算について、また融資の問題について御質問がございましたが、幸い政府委員がおりまするから、政府委員より詳細のことを答弁いたしました方が、御質問趣旨にも沿うことになると思います。
  207. 河野一之

    河野(一)政府委員 お答え申し上げます。まず第一点の國費を支出するについて國会の議決を経ないではないかとおつしやいまする点でございますが、この点は災害の土木費につきましては、國庫から三分の二を補助する、こういう法律があるのでございます。從いましてその法律によりまして、災害がありますれば國が三分の二を補助するという建前になつておりまして、あらかじめ國会の方の法律によつて承認を得ておる、こういう関係になつております。  それから融資と今回の公共事業費との関係でありますが、先ほどおつしやいました七十四億と申しますのは、一般の災害土木費のほかに農林漁業でありますとか、中小企業でありますとか、そういつたものを含せての問題でありまして、いわゆる災害土木費は大体三十億くらいであつたかと存じます。從いましてこの三十八億というものはつなぎの資金ではございますが、事業費の全額でございまして、國として出しまする六十億の金はその三分の二の補助に相当する金でありますので、仕事としては九十億程度のものができるということに相なりまするから、この六十億を支出することによりまして、さらに今やつている仕事以上に相当な仕事ができる、こういうふうに考えております。
  208. 林大作

    ○林(大)委員 ただいまの御説明では実は不満足なのでありまするが、まず第一に三分の二を國庫から補助するという法律があるから、これはいわゆる憲法なり財政法なりの精神にそむかないという御答弁でありますが、私はそういうふうには思わないのであります。財政法なり憲法なりで定めておりますこの國庫負担というものは、金額と使途を明らかに示して議決さるべきものでありまして、單に三分の二を補助するのだから、その法律によつて免責されるということは私はあり得ないと思います。それから今の御説明ですと、地方起債を合せて六十億からのものが行われることになるのでありまして、七十四億五千万円でまだ余裕がずいぶんある。建設省だけではなく全体の問題だと御回答のようでありますが、はたしてそうならばわずかに十五億五千万円の新規の支出しかできないことになりまして、三月末までに十五億五千万円だけで、はたして復旧が思うように行くかどうか、その心配もあるのであります。なおかつその上に先ほどの財政法の精神から申しまして、使つただけのものはこの際予算に十分出して、カバーして行くことがどうしても必要である。その三点について再びお尋ねをいたす次第であります。
  209. 河野一之

    河野(一)政府委員 お答え申し上げます。私が申しました意味は、災害土木費國庫補助法及びそれに関係の法令によりまして、こういう土木費については國がその三分の二を負担するという法律があるのでありまして、いわば義務費のようなものであります。從つて國といたしましては予算をとつてこれを補助する義務がある。こういう意味でありまして、どうせもらえる補助金である、從つて公共團体の方では当然もらえるのでありますから、つなぎの融資で、予算がとれるまでの間一時しのいで行くというのが最近の実情なのであります。もちろん國としては補助しなければならない性質のものでもありますし、またその予算というものは、その法律がかわらない限り、一應予算として議決せられるのが普通の考え方だろうと思う次第であります。その意味で申し上げましたので、財政法との関係はそういつた意味であります。  それからあとの少いではないかとおつしやる点につきましては、先ほど申し上げました通り七十四億の融資が、いわゆる災害土木費以外の融資、たとえば中小企業であるとか、農林漁業復興資金、あるいは住宅、そういつた公共事業以外の應急的な資金が相当あるのであります。災害土木費、いわゆる土木工事関係の資金としてはその一部でありまして、それは事業費の全額を融資するかつこうになつておりますので、國としての仕事をする場合には六十億が九十億に活用される。從つて仕事としては相当のものができる。それで十分であるかどうかということは第二の問題になりますが、私どもの考えでは春水までの間は、その程度で大体十分目的を達し得るのではないかと考えております。
  210. 林大作

    ○林(大)委員 今の説明を聞きまして私はますます不可解になつたのでありますが、この席上で前に大藏大臣は明らかに災害復旧融資額の内訳を御説明になつたのであります。その合計が七十四億五千万円になつているのであります。今の説明によりますと、それは中小復興企業の振興費まで含んで七十五億五千万円になると言われますが、一体この数字はどこから出たものであるか、はつきりこの内訳を聞きたいのであります。  それからもう一点、三分の二國庫で負担するという法律があるから、それですべてが免責されるようなことを言われますが、私の言うのは、その三分の二はかりに讓るといたしましても全額についてこれは國会が当然議決をしなければならないわけであります。無限のものに対して三分の二というようなべらぼうな法律があろうはずはないのであります。その点について政府委員は非常に強弁を弄しておられると思うのであります。もつとその点を率直に答弁をしていただきたいと思います。
  211. 河野一之

    河野(一)政府委員 お答え申し上げます。災害復旧に対する融資の状況でありますが、これは復興金融金庫と預金部と農林中金とそのほか融資あつせんをしたもの等ございまして、復金から出しておりますものが北陸関係で十五億七千万円、アイオン台風関係で六億円、合計二十一億七千万円。預金部につきましては北陸関係で十一億二千万円、佐賀、長崎で一億円、アイオン台風で二十六億円、合計三十八億二千万円。このほかに農林中金としまして北陸に対して農林漁業復興資金として四億円、アイオン台風の関係で農林漁業復興資金で一億三千万円、一般の長期資金として四億円、合計九億三千万円。それから融資あつせんとしまして北陸においてつなぎ資金として二億五千万円、アイオン台風関係のつなぎ資金として一億円、合計三億五千万円、以上すべてを合計いたしまして七十四億五千万円、こういう数字になるのであります。  それからお話のありました災害土木費國庫補助の金額がないではないかということでありますが、これは御趣旨のように、そういうものについて金額を書くのがほんとうは正当であろうと思います。しかし必ずしも前例のないことではないのでありまして、ほかにもいろいろ法律もございますが、災害土木費についての定義がはつきり書いてございまして、こういうものは災害土木費である。こういうものは災害土木費としてとらぬ。あるいは一箇所千円以下の工事はとらぬとか、あるいは道路の上流れとか港湾の埋塞とかいうものはとらぬとか、こまかくはつきり規定があるのであります。かつ元よりかえてはいかぬ、原形復旧にとどめるということが詳しく書いてあります。從つて災害土木費の範囲というものがはつきりわかるのであります、そういう意味において金額的には限度がありませんけれども、法律的にはこれも緊急やむを得ざるものでありますから、ある程度の限度があつて、かつやむを得ないものであるという観念で、具体的の金額が入つておらぬ次第であります。ただこれを何年にやるかということになりますと、いろいろその年として問題があるわけでありますが、少くとも総額の問題につきましては、ある程度の補助をせねばならぬ、こういう建前になつております。これは河川関係及び道路港湾等がそうでありますが、農林関係になりますと、必ずしもそういうことには法律的のものはないのであります。從つておつしやつたような議論がある程度はまるかと思います。しかもこれも長年の慣例でありまして、一種の先例みたいなものになつておりまして、耕地の復旧とか荒廃林地の復旧とかいうことになりますと、從來から一定率の補助率があつて、そういう災害があつた以上、ある程度補助するものであるというような慣例によつて、それを処理しているようなわけであります。実情は大体以上の通りであります。
  212. 林大作

    ○林(大)委員 今のお話でありますと、慣例だから限度なしに認めて、ある程度行かなければならないということでありますが、もしそういう惡い慣例があるならば、新しい時代だからそれは改めるべきであつて、やはりこれは國会の議決を経て、もしくは次の國会においてそれが解除されるような予算をすぐとつて、これを解除して行くべきであると思います。その点はひとつ慣例を改めていただかなければならぬと思うのであります。  それから先ほど早口にお読みになつてわかりませんから七十四億五千万円の中でどれだけが災害復旧費であつて、中央で使うものはどれだけで、地方でどれだけのものを使い、結局新しく支出して事業費に使える分がどれだけあるか、これをひとつプリントにして出していただきたいと思います。  その次に私は建設大臣にお尋ねしたいのは、第一点は今のお話の中で六十億円が中央の災害復旧費であり、三十億円が地方起債でありますが、今の地方の財政経済状態で、はたしてこの三十億がうまく消化し得るものであるかどうか。この点の見通しを大臣に伺いたいのであります。それからもう一つついでに、ちよつとこれは別な問題でありますが、道路に関することであります。アメリカでは御承知のように、荷物は汽車に積むもの、人間は自動車に乘るものということに大体きまつております。日本におきましても、非常に大きく今までとは違つた面において道路の開発利用ということが、これから起つて來るのであります。この道路の建設に関して、自動車とそれから特にガソリンなどとの関係について、目的税的な考えとか、ないしは輸入面における資材との関連、それから日本における大体の計画というようなものを、大ざつぱでよろしゆうございますが、お持ちでございましたらぜひこの際伺つておきたい。この二点であります。
  213. 益谷秀次

    益谷國務大臣 御説のごとく、道路は政治、経済、文化あらゆる方面の基盤と称せられております。一日も早くりつぱな道路をつくるということは理想であります。しかしながらこれもたびたび申し上げます通り、資材難、財政難というようなもので、非常に制約いたされなければならぬのであります。そこで産業の開発とかあるいは地方資源の開発とか、あらゆる施策とにらみ合せて、道路をつくり、あるいは橋梁をかけることについては、愼重に地点を選ばなければならぬのであります。しかしながら國といたしましては、必要最小限度の道路網を完成して参らなければなりません。こういう建前から建設省といたしましては、道路改良について相当調査研究をいたしておるのであります。これも財政の許す限り、資材の許す限り、やつて行かなければならぬと思うのであります。これは改良の方面でありますが、本年は改良費についてはようやく十九億五千万円の予算が協賛を経て出たのであります。道路改良は非常に費用のかさむものでありますから、十九億五千万円では思つた十分の一も百分の一もできないのであります。しかるに今回十一月二十二日付で連合軍司令部から道路、街路網に対する維持修繕についてのメモランダムが参りました。これは本年度から昭和二十七年度まで五箇年計画を立てて——もう少し綿密に申し上げますと、本年度二十三年度の計画は、今月の二十二日までに改良、維持、修繕すべきものを立てて提出するのであります。來年度二十四年度分は一月の二十二日までに提出いたさなければなりません。二十七年度までのものはさらに來年の五月の二十二日までに計画を立てて出さなければならぬ。從つて第四・四半期分といたしましては、道路改良費がまだ四億五千万円残つております。これはでき得る限り道路改良の既定計画を遂行いたして参るその費用に充当いたしたいと思うのでありますが、ただいま申しましたようなメモランダムが参りましたので、そのうち相当金額をやはり維持修繕方面に使わなければなりません。來年度からは十分な計画を立てて改良の仕事もむろんいたさなければなりませんが、メモランダムにありますように維持と修繕の方面に力を注いで参らなければなりません。これに対しては相当の予算がいることと覚悟はいたしております。輸送の上から、産業の上から見て、長年の戰爭のために酷使せられた道路、非常に損傷を受けた道路は、どうしても修繕をいたさなければなりません。幸いにいたしまして連合軍におきましては、これに対する必要の資材、特にアスフアルトのようなものは輸入をしてくれるということであります。五箇年計画が完了いたしますと、道路が修繕せられまして、自動車道の交通にも非常に便利になると存じておるのであります。しかしながら改良についてもやはり並行して進んで参らなければならぬと思つております。  それから三十億の地方債が負担にたえ得るかどうか。いかに考えておるかというお話でありました。もとより今日國家も財政上非常に難儀をいたしておりますと同時に、地方におきましても、極度の財政上の行き詰まりのために、困憊をいたしておることは承知をいたしておりますが、各地方から陳情その他に参ります状況から見ましても、災害復旧に対しては、その地方民は熱烈なる要望をいたしております。從つて三十億の災害復旧の費用については、困難ではありますが、負担にたえ得るものと存じております。
  214. 世耕弘一

    世耕委員 文部大臣に簡單に二点ばかりお尋ねいたしたいと思います。それは將來の日本の教育方針の大本を、この機会に簡單に御説明を承れればけつこうだと思います。  なおその点に関しまして二、三私の見解を述べてみたいと思うのでありますが、日本は敗戰の結果、道義頽廃して今日の現状を呈したのでありますが、結局の問題は、敗戰の大きな原因を持つとは言いながら、日本の道徳がいかにもろく破れて行つたか、その原因を追究してみると、結局日本の教育に徹底した倫理観がなかつたということ、もう一つは、日本の道徳を裏づけるべき宗教観というものが確立されてなかつたという、この二点に私は原因をなしているものだと思うのであります。もし今後日本の新しい教育方針が確立されるとするならば、教育の中にどの程度まで進んだ宗教教育、すなわち宗教情操教育というものが加味されるか、ということが大きな問題になるであろうと思うのであります。この点について文部大臣の御所感を承つておきたい。  もう一点は先ほど厚生大臣にもお尋ねいたしましたが、人類の生活樣式の中で性食衣住というこの四つが数えられるのであります。その四つの中で衣食住ということは、過去においても現在においても重く取扱われて來たのでありますが、残念ながら性という問題については、多くはただ單なる衞生的見地から性問題を取扱つておられる傾向であつて、すなわちわれわれの優秀な民族保存のための性問題、あるいは種族保存のための性問題というような、血統保存の建前からする性というものに対しての考えが、現代の日本人には非常に欠けておるのではないか、こういうような関係から、いろいろな下品な社会問題が至るところに起る。卑近な例から申しますと、大切であるべき結婚問題が集團見合のごとき粗雜な形式において行われるというようなことは、とりもなおさず性生活そのものがいかに種族保存、血統保存のために、重大な意味があるかということの見解が淺い結果であろうと私は考えるのであります。この点について文部大臣にどういうお考えがあるか、この二点をまず最初にお尋ねいたしたいと思います。
  215. 下條康麿

    ○下條國務大臣 世耕委員のお尋ねにお答えいたします。第一点は教育に適当な倫理観、あるいは宗教観を裏づけする必要はないかというお尋ねかと思います。お話の通り終戰後の事態から見ますと、わが國の道徳とか倫理観というものがいかに薄弱であつたかということが、立証せられたことをまことに遺憾とするのであります。このことにつきましては、文部当局といたしまして、すみやかに適当な教育の内容自体におきまして、倫理観の確立、宗教的情操のゆたかなものを取入れるということにつきまして、目下非常に苦心をいたして、あるいは教科書の面において、あるいは現実の指導の面において、いろいろただいま苦心をいたしておるのでございます。御趣旨の点につきましては、まことに同感であるということを申し上げたいと思います。  第二点は性に関する國民の考え方につきましての御質問考えます。これは私の所管かどうか疑問でありますが、今申し上げましたような終戰後の事態から推しますと、かような点についてもはなはだ認識が十分でないということを認めざるを得ないのであります。いわゆる性教育に関する点についてもいろいろ目下研究いたしております。御指摘のような忌まわしいことのないように、國民が自覚して、そして適当なこの方面の改革ができるようにいたしたいと念願いたしております。
  216. 世耕弘一

    世耕委員 最後にもう一点お尋ねいたしますが、新制大学に対する文部大臣の御方針、並びに今後の見通し、予算面から見た実施の時期等について御説明願いたいと思います。
  217. 下條康麿

    ○下條國務大臣 新制大学につきましては、昭和二十四年度から実施いたしたいという心組をもちまして、ただいま大学設置委員会において調査をいたしております。昇格切りかえ等の大学が二百以上の数に上りますので、その審査のために手間どつております。あるいは一月ごろまでその委員会の調査がかかるのじやないかと思います。しかしできる限りこの面を促進いたしたいと存じまして、実は本日文部省に大学設置促進本部というものをつくりまして、文部省の職員を総動員して、この新しい大学制度の確立のために努力いたしたい、かように考えておる次第であります。すべて昭和二十四年度から実施いたしたいと考えております。
  218. 世耕弘一

    世耕委員 よくわかりました。なおもう一点ついでに承つておきたいと思いますことは、今後の私学の発展ということについて、経済面その他の社会面から見て、いろいろな難点が発生すると思いますが、私学の振興の意味からどういう御熱意を持つてこの私学振興にお当りになるおつもりであるか、新しい御計画でもあれば承つておきたいと思います。
  219. 下條康麿

    ○下條國務大臣 私学が國立、公立と相まつて、わが國教育の上に大きな任務を達成しておりますことは認めるのであります。從つて現在私学に対する戰災等の復旧に関する経費の補助、経費に対する貸付金あるいは経営に対する貸付金というものがありますが、これがきわめて少額でありました。各校によりますと金額がきわめてわずかなところがございますが、これらを増額したいということが第一、それから私学の経費につきまして、專門にいろいろ援助するような教育金庫のようなものができればいいと思いまして、ただいまそれらの点につきましては調査いたしております。もし具体案ができましたならば提案して御協賛を得たいと思つております。
  220. 世耕弘一

    世耕委員 農林大臣に簡單に三点ばかりお尋ねいたします。農地委員会の経費の追加の件についてお尋ねいたしますが、雜件費から相当額支出するようなお答えが他の会であつたように聞いたのですが、なおこの際明確な数字を承ることができたら承つておきたい。  次にもう一つは、戰爭中の濫伐の結果相当数のはげ山ができておるわけでありますが、これについて植林計画に対してどういう計画を持つておられるか、御就任早々で詳しい数字をいただくことは不可能と思いますが、御計画の一端でも漏らしていただけばけつこうだと思うのであります。
  221. 周東英雄

    ○周東國務大臣 お答えいたします。農地委員会の経費の予算につきましては、大体ただいまのところ專任職員につきましては例の一般の水準が五千三百円に上げられますに應じまして、人件費補助についてそれに應じた額を考えておりますのと、それから事務費の一部の増加ということを考えておりますが、金額については後ほど申し上げます。  それから今の植林計画の問題でありますが、これにつきましては昨年度から立てました五箇年計画によりまして、大体五箇年後に二百八十五万町歩の植林をいたす計画になつております。これには官行造林も補助造林もともに含めての計画であります。  なお今日の事態からいたしまして、産業復興五箇年計画等の計画が確定いたしますれば、またその線に沿うて、でき得る限りこの計画をも増大いたしたいと考えておりますが、ただいま計画いたしております五箇年計画は以上のようであります。
  222. 世耕弘一

    世耕委員 なおもう一点お尋ねいたしたいと思いますことは、農林省が食糧増配に熱心のあまり妙な食糧を國民に配給して、そのために配給を受けた者が受取りに躊躇するというような品物が出ておることを、われわれは目撃するのであります。その一例を申しますと大豆の配給、とうもろこしの配給を受けた先で見ますと、食えば下痢をする。そのために健康を非常に害した例が幾多各地に起つておるのであります。もう一つの例はどうかというと、エジプト米であります。エジプト米の内容については詳しく申しませんが、エジプト米にぬかがたくさんついておるから、これはいいぬかだからと言つて、とつておいて鷄に食わしたところ、鷄がみんな死んでしまつた。こういう例がある。ぬかも食えば栄養になるからと思つて、それを大事にとつておいて、家でだんごをこしらえて死にそこないが起る現状が実はあつたのであります。もう一つはキユーバから來た砂糖には虫が入つている。われわれ経驗のあまりないことであります。かような食糧はできるだけ國民の衞生を考えて、ただ量さえやれば、配給すればよかろうというような意味でなしに、質の面からも考え、衞生的方面からも考えて、ひとつ配給面に御留意願いたい。こういう点について何か檢査等の方法がおありになると思います。こういうことは初耳か、この際お聞きしておきたいと思います。
  223. 周東英雄

    ○周東國務大臣 お答えしますが、いろいろ過去において輸入食糧等の取扱いの不備等のために、配給後中毒したということがあることを聞きます。從いまして、今後におきましては、一面連合國側の好意によりまして入ります食糧につきまして、そういうことがないように万全の処置をいたしたいと思いますし、食糧の檢査につきましては、厚生省の援助を受けまして、公衆衞生試驗所等の力によつてこれを檢査するように今いたしております。たとえば砂糖のごときは、輸入の場合においては港において、その後倉庫においては二箇月ごとにこれを檢査するというような方法をとつて、過去におけるようなことが起らないように処置いたしたいと思つております。
  224. 世耕弘一

    世耕委員 根本的な問題としてもう一言お尋ねいたしておきたいと思うことは、日本人の今日の食糧政策というものは原始的である。將來の文化國家としての日本人のとるべき食糧政策というものは、粒食から粉末食糧、そして立体食糧といつたように進歩的な過程をとらなくてはならない。いわば科学的な食糧政策をとらなくてはならない。それというのは、林産物並びに農産物その他の点について科学的操作が相当熱心に行われなければならないと思うが、この点について農林省は何か新しい御計画があるかどうかについて一点だけ伺つておきたいと思います。
  225. 周東英雄

    ○周東國務大臣 お答えいたします。御意見はまことにごもつともでありまして、今後における日本の食糧政策については、從來のごとき米、麦、かんしよ、ばれいしよというような澱粉質食糧にのみ偏重した食糧政策でもいけませんし、またその攝取方法といたしましても、粒食ばかりが今後の食糧を解決するものでなく、粉食の問題についても御意見の通りであります。同時に私どもとしては、粉食の研究につきましては、農林省の食糧研究所でやつておりますが、さらに私どもの考えといたしましては、日本民族の特別な特殊性もございますが、外國人及び中華民國人等の食糧を見ましても、そこに澱粉質食糧に偏せざる蛋白脂肪をまじえた総合食糧計画のもとに、これを進めて行くことが必要であろう、その意味において蛋白脂肪の給源である水産畜産の増殖等をもあわせ考えつつ、一面農家の負担を軽減しつつ、完全な食糧行政を進めたいと考えております。
  226. 林大作

    ○林(大)委員 農林大臣にお尋ねしたいのでありますが、農林省の食糧の地方割当は、大体において全國的に一應公平なバランスを得て來たようであります。しかるに來年の事前割当のことでありますが作報調査所というのが各縣にありますが、あの作報調査所とそれから農林省の資材調整事務所というようなところ、並びに本省との連絡がどうなつているかしれませんが、今年あたりはたとえば例を愛知縣にとつて見ますと、米において三千町歩、かんしよにおいて同じく三千町歩というような、隠された調査上の面積があると推定されて、ぶつかけられて來ているのでありますが、全國には一体どれだけのものをこうした方法によつてぶつかけられているかをまず伺いたいのと、それから作報調査所とそれから資材調整事務所と農林省とは一体よく連絡をとつておられるのかどうか、こういう点も承りたいのであります。なお愛知縣のごときは、このぶつかけられました米三千町歩、かんしよ三千町歩というもののやり場に困りまして、村長がすでに二十六人も辞表を出しまして、とてもこれを割当てるべき方法がないということを申しております。なおかつ実際農家において調べてみますと、飯食の保有米に不足を來すような供出割当の量でございまして、これだけのものをぶつかけられましては、その中間にはさまれた自治体の役人の方々も困りますし、農家の連中もまつたくこれはとほうに暮れるという事態が、全國的に生じていると私は思うのであります。そして埼玉縣のごときでも、今年くらいとられると、供出量の方が收穫量よりも多いということまで言うている百姓があるのであります。こういう点について、全体的にどういう考えであるか。また現実にこうした愛知縣のごとくぶつかけられて來たものを一体村長として、また農民としてはどうしたらいいかお知らせ願いたいと思います。
  227. 周東英雄

    ○周東國務大臣 供出の事前割当に関しまして、ただいまの御質問でございますが、その地方における地方あるいは面積等と比較いたしまして、過当な割当が行われることは嚴に戒めねばならぬことであります。御指摘の愛知縣の実情につきましては、ただいま調査をいたさせておりませんし、ことに割当の決定はまだいたしておらないので、今折衝中でありますから、それらの御意見は十分参酌いたしまして、実際と合わないような割当は是正いたしたいと私は考えるものであります。
  228. 林大作

    ○林(大)委員 そこで特にお尋ねしたいのは、先ほど申し上げましたように、作報調査資料を集めております役所と農林省との関係を特にお尋ねしたいのであります。これがはつきりいたしますと、どういう理由によつてこれだけぶつかけたかということがわかりますから、縣知事としても村長の所に持つて行きようがありまするし、村長もまたそれを分配する方法もございますから、その点を重ねてお尋ねいたします。
  229. 周東英雄

    ○周東國務大臣 作報調査所の調査は、その完璧を期するよういろいろ人員等も充員することになつておりますが、ただいままで農林省は作報とは密接なる連絡をとつてつておるわけであります。その調査方法等において誤りがあれば修正をいたさなければならぬと思つております。
  230. 林大作

    ○林(大)委員 それほど連絡がうまくとれておるといたしますれば、この農林省の資材調整事務所と別にこの資料調査所をお置きになるということも、出先官廳の数をふやすことになるわけでありまして、なるべく早くこれは合一して、そうしてなるべく早く國民の負担を軽くしていただきたい、かように考えるのであります。  次にもう一つお尋ねいたしたいのは、ただいまのごとく米の供出量が多くなつて参りますと、收穫量から保有米を差引きましたものが、ややもすれば供出量の方が多いというような事態が全國的に生じております。そうしますと米の供出した余りのものを自由販賣するとか何とかいうことは夢になりまして、そうじやなくて自由販賣する範囲がもうほとんどない。もしくは飯米に食い込むという事態に相なるように、私は少くとも來年からはそうなると思いまするが、そうなりますると、口に自由販賣などを唱えましても、その実は收穫と供出とのうまいからくりから、事実上米は一つの間接的な、いわゆる專賣制度に入つてしまうのであります。こういう点については率直に農林大臣におかれましても、その間接的專賣制度というような考えをよくかみしめていただきましたならば、米の自由販賣などということを表に高らかに叫んで行かれるということは、日本の農家の実情を、ことに來年の事前割当というものをごらんになつた農林大臣としてはいかがであろうか。この点についての忌憚のない御意見をひとつ伺わしていただきたい、かように考える次第であります。
  231. 周東英雄

    ○周東國務大臣 事前における供出割当のやり方の不適当であるために、お示しのように間接的に專賣になるようなことになるのではないか。かくすれば供出後自由販賣をなす余地はなくなるじやないかという御意見でありますが、この事前割当の不適当であるために、間接的なというお言葉でありますが、專賣制のようなかつこうになる、そのこと事態におきましても、よほどそのことがよいか惡いかということは檢討せられなければならぬと思う。これは林さんも御承知のように、戰前においていろいろ米の問題がやかましくなつたときに、專賣制云々ということがございましたが、これは一面に農家が專賣制のもとに俸給生活といいますか、一定の報酬のもとに全部國家のためにつくるということ自体が実際に合わないということで、なかなか專賣もむずかしかつた実情は今日も残つておると思います。これは余談でありまするが、從つてその事前割当の不適当なるために、起る間接專賣制というものについては、別に批判されてしかるべきであつて、そういうことが起らないように、適正な事前割当をなすべきだと思います。從つてまた供出後の米の販賣を自由にするかどうかという問題につきましては、再三この席でも申しましたように、愼重にその方法と時期を考えなくちやならぬと思つております。
  232. 林大作

    ○林(大)委員 ただいまのお言葉で私の申し上げる米は、間接的に言えば自由販賣制度に入りつつあるということを半ばお認めになつておられるのでありますから、自然米の自由販賣という面は、多分に廣告的な、つまり宣傳であるというように私はこの際とつておきたいのであります。  その次に私のお尋ねいたしたいことは、農業恐慌ということでございますが、きようこの席で農業恐慌について中曽根委員といろいろお話がございましたが、その話を聞いておりまして、やや私は不足な感じをいたしましたので、重ねてお尋ねいたします。私の見解では日本の農業恐慌が、工業生産品と農業生産品との鋏状價格差でもつてつて來るようにばかり、今日においてとることはいかがかと思うのであります。日本の過去の歴史を考えてみますと、食糧につきましては朝鮮米、台湾米を初めといたしまして、世界各地からずいぶんたくさんの食糧を年々輸入いたしておつたのであります。それが最近外國から補給されますところの食糧の送付というものが、いわば進駐軍一本になりまして、しかもそれもごく近くの朝鮮米や台湾米などが來るのでなくて、アメリカ側の御都合のよいようなものをまず先に與えられる。しかもこの値段などとはあまり無とんちやくに與えられるということになつておりまするが、これが貿易がもう少し正常な状態に入つて参りますと、日本は今でこそ変態的為替の状態にありまするから、日本の農業生産品が、ややもすれば高くなつておりまするが、今までの長い世界の経済の歴史から言つて、日本の農業生産品は海外よりも安いのがあたりまえであります。從つて今われわれが農業恐慌というものに襲われている夢を見ていると申しますか、半ば以上のものは外國からそうした物がどんどん入つて來るというようなことが大きな原因になつておると思うのであります。從つてわれわれが農業恐慌を身に感じてこれに処置するためには、先ほどの他の同僚に対するお答えのほかに、私の今申し上げるような別な面から、さだめし農林大臣におかれては十分な御意見があろうと思いますので、その点をひとつ伺つておきたい。かように存じます。
  233. 周東英雄

    ○周東國務大臣 お答え申します。農業恐慌に関する御意見でありますが、けさですか、中曽根さんにお答えをいたしたかと思いますが、そのときも私は前提を置いております。現在の状況においてはということを申し上げて、かつそのときも、もし日本の國と外國との間に貿易が自由な形になつて、過剩な物がたくさん入り、また内地においても生産されるということになつたら、それらの過剩な場合に対する措置は、過去においても歴史的に政府がこれらのものを相当買いとつて、一定の價格以下には下げないような形をとつた歴史があり、経驗済みであるから、これは措置ができるであろう。從つて今日の場合においては、むしろ先ほど申しましたように、主として農産物價格と工業生産品價格とのシエーレの幅の増大によつて、農業恐慌の起りやすい、また起りつつある現状である。それに対して意見を申し上げたわけであります。從つて今林さんのお話のように、將來日本の貿易がノルマルな形になつて、相当自由に貿易ができるようなことになつたといたしますと、これは國際貿易憲章のもとに一緒にやつて行くことになります。その場合においてお示しのように、日本の周囲はほとんど農業國であり、タイ、拂印、濠州等における米、小麦等の生産、あるいは支那、満州におけるその他農産物の豊饒な生産から來るダンピング等の場合を仮定としての御議論でありますが、そういう場合においてはいろいろ措置があろうと思います。おそらく國際貿易に加入したときにおいて、どれだけ関税政策等によつてこの輸入を制約できるかということがやはり問題になつて参ります。そういう場合においても國内におけるある程度の不当なダンピングによつて、外國の國内状況を乱すようなことに対しては、ある程度関税によつて押えられるのじやないかと思います。また一面必要な場合、入つたものに対しましては、先ほど申しましたように、政府がある程度の資金をもつて必要な農産物を買い上げて、貯藏して、これによつて價格を維持するという方法もあると思います。しかし大体が関税の問題に関係すると思います。
  234. 林大作

    ○林(大)委員 それでは輸入の問題にもどりますが、現在輸入されておるところの食糧は、一体輸入為替はどのくらいの率になつてつておりますか。そうしてもしこれが予定もしくは想像されますところの一本為替になります場合に、かりに四百円なら四百円という為替になつたといたしましたならば、そのときにべらぼうに高い値段になりますが、その差額というものはどういうように処理されるつもりであるか。どのくらいの差額が予定されるか。はたして日本の財政がこれに耐え得るかどうか。こういう点を伺いますとともに、そういうことを考えますれば、ますますもつて現在の日本の米價と、將來の海外からの食糧とのバランスをとつて配給しなければならないという面で、ますます統制を強化しなければならない、自由販賣どころではないということを私は確信するのであります。それらの点についての御所見を承りたいと思います。
  235. 周東英雄

    ○周東國務大臣 これは林さんは御承知だと私は思うのですが、今、日本の方に入れてもらつている食糧はガリオア・フアンドで入つておりまして、アメリカの方の予算負担によつて入れられておりますので、それに対しては貿易資金特別会計において措置しておるわけであります。これらの影響は直接國内の農産物に響かぬようにやつておるわけであります。
  236. 林大作

    ○林(大)委員 今のガリオア・フアンドで入つているから、これは影響ないのだというお話ではちよつと納得ができません。一本為替を來年の春なり何なりにつくろうという場合に、これは救済資金だから関係はないのだというのでは、日本はいつになつても自立できません。食糧を買うだけのものを日本は輸出しなければならない。その入れた食糧は内地の平均價格でこれを配給しなければならない今において、今私がお尋ねいたしますような方面について、おそらくしつかりしたお考えを持つておられると思います。その点もう少し、できるだけお漏らしを願いたいと思うのであります。
  237. 周東英雄

    ○周東國務大臣 ごもつともの御質問でありますが、これは為替レートがかりにいろいろな事情からいたしまして、一本建になるといたしましても、その一本建にする場合における率というものをどうするかということによつて、いろいろな影響が出るわけであります。その率がまだきまつておらぬときに、仮定の上に議論は差控えたいと思います。
  238. 林大作

    ○林(大)委員 今仮定だから言えないとおつしやいますが、これはわれわれが計算すれば実はできることでありまして、今輸入されておる食糧が大体において百三十円で入つておるそうであります。それを今度一本為替にいたしました場合に、これは当然三百円なり、四百円というように相なりますと、そこに大きな差が出て参ります。その差をこの單純なる米の自由販賣というようなことにおいては、とうていこれを埋め得ないということをはつきりと申し上げまして、この点を私は一應終りまして、次にもう一つだけお尋ねいたします。それは米價についてであります。
  239. 上林山榮吉

    ○上林山委員長 ちよつと御相談がありますが、できるだけ重複を避けて質問願いたいのです。大体あなたのは重複しておる点が相当あるようですから、よほど注意するようにお願いします。
  240. 林大作

    ○林(大)委員 米價について私が触れなかつたことについてお尋ねいたします。  米價につきましては、前内閣の時代に三千六百円をきめましたときに、できるならば四千円以上にきめたいという農民の希望を退けて、三千六百円にきめました。そのときにはこれは物價にスライドして必ずあとから上げるからという條件付で実はわれわれは同意したのであります。しかるに先ほどの御答弁を聞いておりますと、そういうことはお忘れになつてしまつたような御答弁を私のおりますときに聞いたのでありますが、物價を改訂するときには必ず上げるということになりますと、今度いつ物價がかわりますかしりませんが、当然そのときにこれはかわつて行くべきものであると思うのであります。ところが今度の五千三百三十円ベースの予算を賃金について出しておられる。この五千三百三十円の根底になつておる物價は何であるかと申しますと、御説明にありましたように、今年の七月から十一月までは八%上るという條件のもとに、また十一月から三月までは五%物價が上るという想定のもとにこの五千三百三十円を出しておられるわけであります。そうしますと私が見るところでは、すでにここでこれだけの物價の値上げを想定して五千三百三十円を出されます以上、三千六百円の米價というものは、正直に言つたら、これだけのものはすぐ上げて、新米からどんどんお拂いになるのが良心のあるやり方である、かように思うのであります。それが第一点。  それからもう一つは、委員長にしかられますから一緒に言つておきますが、農村工業について先ほど議論を私は聞いておりましたが、農林大臣の意見には、農村工業について方向を示しておられないと思うのであります。委員会をつくつてやるのだとか、金を出せばいいのだとかいう議論のように私は伺いました。それでは私はいけないと思います。どうしても農村工業を輸出の面に向けるのであるとか、ないしは日用品の生産に向けるのであるとか、こういうように大体品種と方向をはつきり示して指導されませんと、各縣、各町村とも何しろ農村工業というものを興さなければいかぬそうだが、一体おれたちはどうしたらいいのでしようかということに迷つておるのであります。この点について十分なる腹案がおありになると思います。これについて伺いたいと思います。
  241. 周東英雄

    ○周東國務大臣 お答えしますが、米價の問題については、私の表現の仕方がまずかつたと思いますが、今スライド制の問題を頭に置いてお答えしておるのであります。賃金の値上げに伴うて、將來物價等の変動が起れば、その際に米價をかえるが、そのときにさかのぼつて追加拂いをいたしますということを実はお答えいたしました。それは御指摘のように、物價の変動に伴つてスライドにこれをかえるというこの前の閣議決定は、そのまま私ども踏襲しておるということを重ねて申し上げておきます。  それから農村工業についてのお話でありますが、これも言葉が少し足りませんでしたが、今朝お話申し上げましたのは、大体農産加工、それから他から原料をもらつての加工、こういう面について指導しておるということをお答えいたしましたが、重ねて申し上げますならば、やはり農産物加工あるいは酪農加工と申しますか、輸出品工業等についての工業という方面を大体とつておりますけれども、しかしこれは地方々々によつていろいろ違いますが、地方における特産物を生かしつつ輸出向きになるものはこれを農村工業として取入れますし、あるいは内地向けに農産物の加工としてやつた方がよろしい地方においては、そういう方に指導しておるということを申し上げておきます。
  242. 林大作

    ○林(大)委員 現在不耕作地主の保有しておりますものが、平均一町歩ぐらいございまするが、これは小作の方でも自分の土地でないというので身が入りません。地主の方の一反歩三十円にしかならないというので、土地の改良などについての相談にも應じないという状態であります。両面からいつて、こんなばかなものをいつまでも守つて行くということは、國家全体からいつて非常な不利益だと私は思うのであります。この際農林大臣はこれは一挙に開放して、自作農をつくり、そうして地主の方の税金も助けてやるというお考えはないかどうか、この点が一つであります。  それから今のお答えの中で、物價がかわれば米價をかえるのだというのならば、先ほど私が指摘しましたような、すなわち五千三百三十円のベースにおいて物價をかえた想定のもとに立つておられるなら、実際は今どんどん拂つておりますから、今のうちに氣前よくその分だけでもお拂いになつたらどうか、かように私は考えるのであります。
  243. 周東英雄

    ○周東國務大臣 お答えいたします。今の物價の値上りが八%云々という先ほどのお話、これはその想定のもとに考えられておりますが、それに基いて変更する時期はおのずから時期がある。從つてその変更した時期において追加拂いをするということで行けば私はよろしいと思います。  それから不耕作地主についての御議論でございます。これはいろいろ御議論はあると思いまするが、私どもは農地改革によつて——小作人に非常な影響力を持つてつて、いわゆる非民主的であつたという地主は大地主であります。これらに対して大体その土地を買上げて小作農にこれを賣り渡す。その目的の大半が達せられている今日におきまして、一町歩未満の小地主の土地を今日ただいま取上げるということはまだ考えておりません。これはいろいろ愼重に研究すべき問題であると私は思う。御指摘のように地主が持つてつても、小作料等は非常に安いじやないかという御指摘等は、あまりにも小作料等について農地改革の途上において不合理な点の一つではないかと私は思います。小作農に土地を持たせて自作自営農家をつくる、大地主の土地を買い上げて小作農に渡す。この根本目的については賛成であります。しかしその途上において、地主等に対する残された小作料等について今日のインフレーシヨンのもとにおいて、あまりにも実際に合わざる小作料がきめられておるというような点は、やはり根本の改革において賛成であり、よいといたしましても、それに伴う不合理な点は是正して行くのがよい行き方ではないか。從つてそういうのをあわせていろいろと愼重に考慮すべきであつて、今日全部それを開放するということがほんとうに農地改革の正しい行き方かどうかという点については、もう少し研究の余地があると考えます。
  244. 上林山榮吉

    ○上林山委員長 関連質問として簡單な質問だそうでありますから、中曽根君に質疑を願います。
  245. 中曽根康弘

    中曽根委員 簡單に農林大臣に、それから最初質問は二つお聞きしようと思うのですが、大藏大臣にも関連があります。  それは御存じのように、財政法第三條によると、「法律上又は事実上國の独占に属する事業における專賣價格若しくは事業料金については、すべて法律又は國会の議決に基いて定めなければならない。」こういう規定があります。これは非常に根本的な重大な産業に関するもので、しかも國の独占的なものについては、法律または國会の賛意をもつてやれ、こういう意味だろうと思うのであります。その点からすると、この米價という問題は、私はあらゆる計算の基礎になつておるのであつて、これは解釈上からも当然第三條に入れていい問題だろうと思う。從つて過般主張がありましたように、米價決定に関しては、政府が独断でやらないで、これは通信料金や運賃よりさらに重大な問題であるから、國会がこれを決定する、こういうふうにするのが当然なことであると思うのでありまするが、そういうふうにする意思があるかどうか、これを大藏大臣と農林大臣にひとつお伺いしたい。  もう一つは、最近新聞で、フランスからカリが十万トン來年の二月までに入るというような記事がありました。これは農民に非常な朗報を與えるものであると思いますが、その詳細について農林大臣よりお伺いしたいと思います。この二点であります。
  246. 周東英雄

    ○周東國務大臣 米價の決定に関して、國会がこれを行うことがよいのではないかという御意見については、承つておきます。ただいまのところ、これについてはいろいろ問題はありまするが、やはり國会の意見を尊重して政府が決定し、その決定の過程において、もう少し農民あるいは消費者の代表等を入れた審議会でもつくつて、これに諮問しつつ決定の方法をとるということがよいのではないか、かように目下のところ考えておる次第であります。  それからただいまのカリ肥料等についての輸入につきまして、今十万トンぐらい輸入されるであろうという見込みは立つておりますけれども、これはまだ確定いたしておりませんから、その点は御了承願います。
  247. 上林山榮吉

    ○上林山委員長 この際、勝間田君及び中曽根君に御希望申し上げますが、大藏大臣に対する質疑を続行願います。
  248. 勝間田清一

    ○勝間田委員 先ほど賃金の問題について基本的な態度をお尋ねしたのでありますが、その前に一つお尋ねしておきたいと思うことは、今度の追加予算でかなりまだ入つていない項目があると実は聞いておるのでありまして、たとえば鉄道の赤字であるとか、あるいはまた公團関係あるいは進駐軍の占領費用その他いろいろのものが相当あると考えておるのでありますが、本年度中に追加予算をもう一度出すことになるのか、ならないのか。もし出す意向であるならば、それはいつごろ出すのか。その金額は一体どの程度になるのか。この点をお尋ね申し上げます。
  249. 泉山三六

    ○泉山國務大臣 お答えいたします。ただいま御指摘のような予算上の欠陷は、これを全部補正いたすことにしたのが本追加予算であります。從いましてさようのものを今後計上する考えはないのであります。
  250. 勝間田清一

    ○勝間田委員 そうしますと、こういつた鉄道の赤字のようなもの、あるいは公團であるとか、進駐軍占領費用等は追加予算には計上せずに行く、それを一般会計で二十年度について見るのか、あるいはこれを切捨ててしまうのか、その点の方針を伺いたいのであります。
  251. 泉山三六

    ○泉山國務大臣 これは本追加予算に計上いたしました分で十分かつ適当なものであります。
  252. 勝間田清一

    ○勝間田委員 そうすると鉄道の赤字はどうして克服されることになりましようか。
  253. 泉山三六

    ○泉山國務大臣 お答えいたします。鉄道の赤字というお話がございましたが、何かさようなものがございましようか。
  254. 勝間田清一

    ○勝間田委員 鉄道の赤字など、あるいは通信料金、あるいは專賣益金等々の赤字の面を実際に埋めて行くことができるのか、できないのか。
  255. 泉山三六

    ○泉山國務大臣 それはただいままでのところによりますと、たとえば專賣益金、鉄道のごときもの若干その予算の上に見込み額までは立至らぬ点もあるのでありまするが、しかしながら今後專賣のごとき、また鉄道のごとも年度内には十分これをカバーし得るものと、かようのことになつておりますから、以上御了承願います。
  256. 勝間田清一

    ○勝間田委員 なお今度の予算を提出する場合において、これは完全に関係方面の了解があつて、これだけのものを計上すればいいのであるというように考えていいのでありまするか、あるいは一應そこにまだ組みかえの余地があると考えておられるのであるか、この点をお尋ね申したいと思います。
  257. 泉山三六

    ○泉山國務大臣 本追加予算はお尋ねの関係方面との関係におきましては完全に意見の一致を見た次第であります。
  258. 勝間田清一

    ○勝間田委員 その問題はまだ後に財政関係の問題として留保いたしまして、次に緊急に御質問いたしたいと思いますのは、最近地方に帰りますと、年度末における中小工業に対する融資を行うということが地方に傳わりまして、それは二十五億だということなのでありますが、もしその融資が行われる場合においては、これに対してわく外鬪爭として賃金要求をして行こうというような傾向がはつきり見えたのでありますが、中小企業に対するこういつた融資をなさることになつておりますか、その点をお尋ね申したいと思います。
  259. 泉山三六

    ○泉山國務大臣 お答えをいたします。中小企業に対しましてはその金融の実情にかんがみまして、いろいろ政策を展開いたしておるのであります。そこでお尋ねの計数の問題でありまするが、私は通算はいたしておりませんが、まずいろいろ申し上げたいと思うのであります。一つには復金の中小企業金融應急措置といたしまして、その中小企業金融特別措置中代貸しにつきましては、各四半期に五億五千万円を予定いたしておりましたが、第三・四半期におきましては中小企業の年末金融の状況等を考慮いたし、これを三億円増加して八億五千万円、かようにいたしたのであります。次は日銀の中小企業特別融資の増額、日銀は中小企業の金融を円滑にするために、現在勧銀に二億円、興銀及び商工中金に各一億五千万円の資金を特別に融通しておりますが、これら三金融機関に対する右中小企業金融資金融通額をばおおむね二億円程度増額いたすことといたしたのであります。なお預金部の地方資金特別短期融通、かようの点にも各般のものがありますが、いろいろ措置をいたしたのであります。なおまた今日市中銀行におきまして、その融資上のわくといたしましてそれぞれきゆうくつに感じておりますいわゆる融資準則の規定につきましては、從來のランクを相当程度引上げましたものがあるのでございまして、およそ百九十四業種にわかつてこれを一段階ずつ引上げたのであります。なおまた丙種運轉資金につきまして從來これは一件金額三十万円未満、かようの定めでありましたが、爾來これを五十万円未満、さように増額をいたしたのであります。なおまた歳末金融の円滑を期するため、金融機関に集まります手元資金につきまして、累月その三五%を國債その他の資金に充当せしめておつたのでございますが、特に年末に限りましてこれを三〇%に引下げたのであります。以上各般の措置をいたしておるような次第であります。
  260. 勝間田清一

    ○勝間田委員 それで次にわが党といたしましては、今度の予算はやはり賃金の予算であるという関係から、賃金の問題について、さらに前会に引続いていろいろ御質問を申し上げてみたいのでありますが、先ほどのようにいわゆる現在の実質賃金の値上りだけを考えて行きましても、その実質賃金というものは非常に低いものである。それを労働者は耐え切れないから、たけのこその他をやつて家計費をまかなおうとしておるけれども、これもまことに低いものである。しかもいわゆる家計費の中においては主食費が相当の部分を占めておる。こういう事態を一面に持ちながら、他面においては企業の労働の生産性は上つておるし、それからまた生産物の実効價格も上つておる。こういう両面の事実を考えてみますると、賃金を安定せしめて行こうとする考え方、特に賃金を統制しようとする考え方は、事実を歪曲した考え方であつて、私は非常に不満であると思うのでありますが、これらのものに次いで、さらに今度の経済三原則というものが出て來る。この経済三原則が出て來ると、さらに一層低賃金と首切りが出て來るのではないかという考えを持つのでありまして、この首切りや低賃金政策ということを、おそらくおとりになるという懸念を私ども持つのでありますが、三原則を貫徹して行く上において、賃金政策をどうおとりになるか、この点もう一ぺんはつきりお尋ね申したいのであります。
  261. 泉山三六

    ○泉山國務大臣 お答えいたします。ただいま本内閣におきまして、首切り政策とか、あるいは低賃金政策、さようのお話がございましたが、さようの考えはないのであります。行政整理にはおのずから別途の方策を準備いたしまして、これをいたしますことはたびたび声明いたしたのでございますが、なお三原則と賃金政策との問題、かようのことでございましたが、三原則に示されました通り、それは要するに企業の合理性と、從いまして生産増強、企業の経済性の向上、かようの点に目標があるのでありまして、ただちにこれによつて賃金そのものを統制せんとする意図に出ておるのではないのであります。從いましてただいまのお尋ねの意味合いは、私にははつきりいたさないのでありますが、これによつて賃金そのものが不当に押えられる、かようには理解いたしておらないのであります。
  262. 勝間田清一

    ○勝間田委員 最近外電などを通じまして、盛んに傳わつて來る事柄は、いわゆる為替レートの一本建の問題が早急に來るであろうということであり、また安本長官も、一本為替レートの設定の時期も次第に迫りつつあるということをはつきり申されておるのでありますが、その時期についてどうお考えになつておられるか、この点をお伺い申したいと思います。
  263. 泉山三六

    ○泉山國務大臣 お答えを申し上げます。一本為替の問題は次第に迫りつつあるのは事実であります。しかしながら問題が重大であればあるほど、今日この先行きの見通しにつきまして、これをはつきりここで申し上げることはむしろ適当ではない、かように考える次第であります。
  264. 勝間田清一

    ○勝間田委員 次第に迫りつつある為替レート一本建の、日本経済に及ぼす影響は非常に大きいと思いますが、当局としてはそれに対する対策、特に準備工作ということを考えずして、これは過せない重大な問題だと実は私は考えるのであります。從つて為替レートの問題が迫りつつあることに対して、いかなる準備を現在用意されつつあるか、この点をお尋ね申したいと思います。
  265. 泉山三六

    ○泉山國務大臣 お答えいたします。一本為替の問題が次第に迫りつつある、かようの段階におきまして、各般の準備研究を進めておりますることは事実であります。しかしながらその具体的な方策につきましては、これまた今日これを申し上げる段階には至つておらないのであります。
  266. 勝間田清一

    ○勝間田委員 段階になつていないということは、案ができていないという意味でありまするか、それは案はできているけれども、まだ発表の時期でないというのでありまするか、その点はどちらでありますか。
  267. 泉山三六

    ○泉山國務大臣 お答えを申し上げます。案のできておるものも、できておらないものもあるのであります。
  268. 勝間田清一

    ○勝間田委員 そのできている案は、きよう発表はできないでしようか、その点をお尋ねします。
  269. 泉山三六

    ○泉山國務大臣 お答え申し上げます。申し上げるほどのものは持合せはないのであります。
  270. 勝間田清一

    ○勝間田委員 しかしこれほど迫りつつあると本会議で述べられたことに対して、まだ述べるほどに準備ができていないということは、私は非常に怠慢ではないかという感じがいたします。しかしそれもできていないという言明であれば、これ以上質問する内容はないわけでありますから、残念でありますがこの程度にいたしますが、ただこういうことだけはきまつておるではないかという感じがいたします。それは、為替レートが一本建になる場合の管理の機構、いわゆる為替レートの管理機構というものはどうされるか、この点について案がありますれば、お示し願いたいのであります。
  271. 泉山三六

    ○泉山國務大臣 お答え申し上げます。先ほど來勝間田さんの為替に関しましての再々のお尋ねを私回顧いたしますのに、どうも迫りつつある、かようの私のお答えを、今にもやつて來るかのごときさようの構想の上に立つてのお尋ねに拜承いたしたのでありますが、政府におきましてはさように差迫つた問題とは考えておらないのでありまして、その前提の上に立ちまして申し上げたいのであります。ただいまお尋ねの為替管理機構につきましては、私から申し上げるまでもなく、今日わが國の置かれておりまする環境、さようの点にもかんがみまして、われわれが自主的にこれをやる、かようの段階までにはまだ立ち至つておらないのでありまして、かれこれ勘案いたしまして、十分善処いたしたいと思う次第であります。
  272. 勝間田清一

    ○勝間田委員 しかし今度のいわゆる安本長官の演説を見てみますると、そのことが一つ前提になつて、そうして企業みずからの自覚と努力、生産技術の向上、経理の健全化、労働効率の引上げ、企業合理化等々の方針がこれを進めて行くというようにすでに書かれ、また言われておるわけでありまして、一本為替レートに関する具体的な管理機構なり、あるいは案なりがきまつておらないにいたしましても、どの筋で行かれるかについては、もう少し具体的におわかりになるはずだと私は思うのでありまして、この点についてもさらにお答えができない実情であるかどうか、基本方針をお示しを願いたいと思います。
  273. 泉山三六

    ○泉山國務大臣 お答えを申し上げます。一本為替レートの設定が次第に迫りつつある、その前提におきまして、國民の前にこれを示し、その企業合理化、経済自主性の回復、かようのことを國民の前に要望いたし、國家のために奮起を求めるのは、これ政府の責任であります。今日このときただちに参りまするならば、それは國民として準備も何もできないのでありまして、その間の時間を持つてこそ初めてかようの心組みと、その準備と実行とにとりかかることができるのであります。かようの意味合いにおきまして、政府においてこれを掲げたのであります。なお為替管理機構の問題につきましていろいろお話がございましたが、今日におきましてはこれを具体的に申し上げる段階ではない、かようにたびたび申し上げる次第であります。
  274. 勝間田清一

    ○勝間田委員 たいへん執拗で申訳ないと思いまするけれども、もう少しこの点を明確にしていただきたいと思います。先ほど為替一本レートの問題については、自主性がないということをおつしやつておられたようでありますけれども、為替一本レートの問題に対して、この設定については運命的に扱つて行くのであるか。たとえば設定の時期については、なるべくこれを延ばして、その間に日本の産業の態勢を整えて行くとか、あるいはどうとかいう設定の時期とか方法について、日本の発言権がないというところのお考えでありましようか。私はやはり現在の政府といたしましては、こうしてほしいという希望はあり得ると思うのでありますが、そういうことは発表できないにいたしましても、その点についてもう一度お尋ね申し上げたいと思います。
  275. 泉山三六

    ○泉山國務大臣 一本為替レートの設定の問題につきまして、その実施の時期につきましては、おのずから適当な時期と見通しは一應あり得ると思うのでありまして、その前提の上に立ちまして、関係方面との間に緊密に連絡し、その実現に向つて努力をいたすはもとより当然のことでございます。さように御了承願いたいと思うのであります。
  276. 勝間田清一

    ○勝間田委員 もう一つお尋ねを申しておきたいと思いますることは、先ほど復金の融資のいろいろな問題が実はあつたのでありますが、私はこの復金の融資の問題については、かなり世論も紛糾をして、もう何らかの意味において現在の復金機構というものを、改革しなければならぬという時期に到達しておると思うのでありますが、この復金機構についての改革の意思があるか、あるとすればその方法をお示し願いたいと思うのであります。
  277. 泉山三六

    ○泉山國務大臣 復興金融金庫の改組の問題につきましては、私過日の経済財政方針の演説におきまして申し述べました通り、どうしてもこれは相当根本から構想を加えまして、これを改組すべきものであると考えるのであります。しかしながらその復金本來の使命はここにむしろ再確認すべきものでございまして、その線に沿いましてその改組に当る考えでございます。
  278. 勝間田清一

    ○勝間田委員 その具体案はまだできておらないのでありますか。できておるわけでありましようか。
  279. 泉山三六

    ○泉山國務大臣 一日もすみやかに具体的の結論を得べく、目下鋭意努力中でございます。
  280. 勝間田清一

    ○勝間田委員 その具体的な研究について、安本長官はいわゆる個人的でも、抱負があられると思いますけれども、その抱負でもお聞かせ願えませんでしようか。
  281. 泉山三六

    ○泉山國務大臣 ただいま私は抱負の一端を申し述べた次第でありまするが、なおさらにこれにつけ加えますなれば、とにかくこれまで復金機構におきまして思わしからざるものがありとすれば、その点を深く掘り下げて、何らか責任体制にこれを組みかえることができはしないか、さようの構想のもとに、今日せつかく立案中でございます。
  282. 勝間田清一

    ○勝間田委員 次に私は賃金の問題について入り込んで行きたいと思うのでありますが、まず第一にお尋ねしたいことは、今度の政府案において、いわゆる基本給を本給に、それから同時にこれに物價の値上りを——いわゆる八%、五%を加えて、それ以外に共済の保險金の加算をいたしておるのでありますが、すでに物價の値上りをここに加味していることについては私は賛意を表するものであります。しかし私が一番疑問に思いますることは、そういう物價の値上りを考慮し、すでに三千七百九十一円の賃金が食つて行けない賃金であることを政府が認めておきながら、何ゆえに十一月から支給をして、十一月以前を支給しないか。この点をお尋ね申したいと思うのであります。
  283. 泉山三六

    ○泉山國務大臣 新給與ベースにつきましては、その算定上十一月から支給する、かようの建前の上に立つておるものであることを深く御了承願いたいと思うのであります。
  284. 勝間田清一

    ○勝間田委員 深く了承すると申しましても、とにかく日本にはいわゆる数百万人の人たちがその日の生活をして行かなければならぬのであります。そうしますると、十月以前の給料も上げたいのであるけれども、上げられないのだ、こういう意味でありますか。この点をお尋ね申したい。
  285. 泉山三六

    ○泉山國務大臣 前内閣当時におきまして、決定せられました官公吏諸君の賃金ベース三千七百九十一円が、その根本において誤謬があると、かようのことならば別ですが、とにかくそのベースに從つて賃金が定められておりまして、その前提の上に立ちまして、さらに先ほど御答弁申し上げました通り、新給與ベースの設定に当りましては、十一月からこれを支給する、かようのことを、その三千七百九十一円ベース設定以來の推移とも見合せまして決定いたした次第であります。
  286. 勝間田清一

    ○勝間田委員 そういたしますと、十月以前は三千七百九十一円の賃金でいいのであつて、財源があるにしろ、ないにしろ、とにかく十一月からきめていくというようにお考えになつているのか。すなわち財政的な意味ではなくて、三千七百九十一円がいいからそういうふうになつているのでしようか。私ども社会党は三千七百九十一円の場合において、これではとても食つて行けない、けれども予算を精査する意味において、暫定的予算單價としてのみこれを認めて、追加予算をただちに要求するという附帶條件をつけてわれわれはこれに賛成いたしておるのであります。その意味において三千七百九十一円で十月まで食つて行けたのか、いわゆる財政的意味において十一月からやむを得ず組まざるを得なくなつたのか、どちらの立場をおとりになつたか、この点をお尋ねいたしたいのであります。
  287. 泉山三六

    ○泉山國務大臣 重ねてお答えを申し上げます。十一月から新ベースに切りかえる、かようの構想のうちには、先ほども申し上げました通り、十月までの分も含まれておると御理解願いたいのであります。
  288. 勝間田清一

    ○勝間田委員 そうしますと、もし五千三百三十円の予算がたとえ政府案の希望通りにきまつたにいたしましても、十月以前はいかなる財源があつてもこれを支給しないということできめられておるのか、その点をお尋ね申します。
  289. 泉山三六

    ○泉山國務大臣 お答えいたします。政府が提案いたしました官公吏諸君の新給與ベース五千三百三十円の建前は、たびたび申し上げます通り、まず國民の消費水準あるいは賃金水準をいろいろ勘案いたしたのでありまするが、またその反面國家財政の現状に即應して、もつてその結論を得た次第でありまして、さようの意味合いにおきまして、ただいま勝間田さん御指摘の通り、幸いに財源が一層惠まれた場合におきましては、五千三百三十円もあるいは多少の変更のことも考慮いたされないわけではないのでありますが、しかしながら、今日におきましては、財政の実情においてはその限界にある。なおまた他の一面におきまして、経済、物價、さようの点と今日のこの段階におきましてはまことに均衡の保たれたものである、かようの点を御留意願いたいと思うのであります。
  290. 勝間田清一

    ○勝間田委員 今の大藏大臣答弁の中に非常に重要な問題が一つあつたと思うのです。物價、消費水準というものを考えて、いわゆる賃金をきめて行くということについての点は了解できるのでありますが、財源がもしあるならば五千三百三十円の改訂はあるいは行われるかもわからないということを申されました。もし財源があるならば、今の御方針に從つても五千三百三十円必ずしも固執するものでない、かように理解してよろしゆうございましようか。
  291. 泉山三六

    ○泉山國務大臣 お答えいたします。ただいまのお尋ねには私は承服いたしかねるのであります。なんとなれば、今日の窮迫いたしました財政の現状において、財源はむしろ枯渇をいたしているのでありまして、その間にもなお努力を重ねましたその結論といたしまして、われわれは五千三百三十円の結論を得た次第であります。
  292. 勝間田清一

    ○勝間田委員 それで一昨々日でありましたか、國務大臣の御答弁の中に三月一日から取引高税を廃止する、その財源も持つておる、こういうことをお話になつた。今までは財源がないからこれだけの賃金しかやれないと言つておきながら、党利党略とは申しませんけれども、取引高税は三月一日から廃止をするという立場であるとすると、私としては給與に対するほんとうの熱意を疑わざるを得ないのであります。今度の予算は給與予算である。それなるがゆえに政府も御熱意をもつて今度予算を編成されたものだと思います。しかしいろいろの党の政策を実行するために、財源をあとから出して來るということをこの前答弁されておりますが、それではとても現在食えない労働者に対して、納得の行ける賃金を政府が組んでいるものとは考えられないのでありまして、いわゆる取引高税の財源の問題をこの際はつきりお示しを願つて、そして何ゆえに五千三百三十円を財源の面で押えられたか、この間の関連を明確にしていただきたいと思います。
  293. 泉山三六

    ○泉山國務大臣 勝間田さんの御指摘の点はおよそ矛盾に富むものと考えるのであります。何となれば五千三百三十円が單純に財政の限界においてこれが抑止せられたがごとき表現をせられましたのは、政府としてまことに遺憾であります。何となれば、今日におきまして五千三百三十円こそ適当なる賃金であるという信念の上に立つものでございまして、それがただいま御指摘の通り、とうてい食えない賃金であるということは、他の物價水準、消費水準、いわんや実質賃金の一七%以上の向上の事実にこれを徴しまして、事実をしているもはなはだしきものと言わなければならないと思うのであります。かような意味におきまして、この五千三百三十円こそ、今日におきまして官公吏諸君においてはむしろ適当である、かようの御理解を賜わりたいと切に思う次第であります。もしこの点に関連いたしまして、ただいま御指摘のように、いろいろ各般の財源をこの方面にまわすということになります場合には、必ずや物價の高騰を來しまして、その物價の高騰はただちに勤労者階級の上にこれが降りかかるのでございまして、名目賃金の過当なる引上げは断じて勤労者のためではない、かような信念の上に立つものであることを深く御了承願いたいと思うのであります。
  294. 勝間田清一

    ○勝間田委員 それで私の從來の考え方が誤解であつたことがはつきりわかつたのでありますが、その点はいわゆる國民の負担能力からいつて五千三百三十円というものが考えられておる。日本の現在の財政事情が非常に困難であるから、この程度で勤労階級の協力を得たいのだ、こういう熱意に私は解釈しておりましたところが、本日の大藏大臣の話によりますると、十月以前の賃金も財政的意味ではない、五千三百三十円も財政的意味ではない、適当なる賃金であるという結論を下されたことを、私はある意味においては自信を持つた賃金政策であるということに対して敬意を表するものでありますけれども、それならば五千三百三十円の内容について、これから安本長官と議論をしなければならぬと私は思うのでありまして、その点において以下質問を申し上げたいと思います。はたしてほんとうの意味において妥当なる賃金であるかどうか、この点をお伺い申したいと思います。それでまず第一に五千三百三十円の内容になつている本給についてお尋ねしたい。政府案は本給について人事院案の二千四百七十円を尊重してこれをとつたのであると申されておりますが、それは事実でありますか。
  295. 泉山三六

    ○泉山國務大臣 お答え申し上げます。その前にきわめて重大なる御発言がありましたので、私は遺憾の意を表せんとするものであります。何となれば、あたかも財政上の問題を、單に國家に金がないからというような表現で勝間田さんがなされましたことは、この際はなはだ遺憾とするところであります。何となれば、今日國家経済上においての比重を、財政こそ最も重大なる要素でございまして、いまさら申し上げるまでもないのであります。從いましてその財政の面におきまして過度の重圧を加えます場合におきましては、それこそただちに物價の面に影響いたすのでございまして、かようの点を深く留意いたしたのであります。財政上金がなくてやむを得ないからと、かようの構想だけにこれを表現せられますことは、國民の前にはなはだ遺憾であるとかようの表明をいたさんとするものであります。  なお次に新給與ベースにつきまして、基本給については人事委員会の勧告を尊重する。かようのお話でございました。なおおむねさようの結果に相なつておるのであります。
  296. 勝間田清一

    ○勝間田委員 二千四百七十円というものが東京都の栄養量の調査から行つておるということを、はつきり人事院もこれを主張いたしておるのでありますが、これは本來なら人事院に直接お聞きすべきであろうと思いますけれども、それを採用せられておる政府としても当然御存じであると思いますが、この二千四百七十円の中の栄養量はどういうように計算されておりますか、その点を明瞭にしていただきたい。
  297. 泉山三六

    ○泉山國務大臣 お答え申し上げます。私はただいまこれを人事院の勧告の基本賃金に対しましてこれを尊重した結果に相なつたことを申し上げたのでありまして、そのままこれをとつた、かようのことは申し上げたことはないのであります。政府におきましての五千三百三十円の計算の基礎につきましては、かねてお手元に詳しい資料を差上げてあります通りであります。
  298. 勝間田清一

    ○勝間田委員 それならば別途の構想を持つておつたのであるけれども、たまたま人事院の栄養量の調査の結果と一致したんだ、考え方は別なんだ、こういう考えでありましようか、もう一度伺いたいと思います。
  299. 泉山三六

    ○泉山國務大臣 ただいまのお尋ねは人事院の算出方法についてこれを認めるものであるかどうか。かようのことかと承るのでありますが、それを否定するものではないのであります。
  300. 勝間田清一

    ○勝間田委員 政府考え方はそうしますと、人事院の二千四百七十円という栄養量の調査から來た結果を尊重して來て、しかし同時に自分の考え方は別個にあるんだ。それはこの説明書にもあります通りに、工業の平均賃金というものをとつて、それに対する物價の値上げ率というものをかけて行つて、本給を出して來たということに私は内容はなるかと思うのでありますが、そうしますと、私はこの際はつきりとしておきたいことは、最低賃金制というものを政府はもうとる意思はないと見てよろしゆうございましようか。その点をお尋ねいたしたいと思います。
  301. 泉山三六

    ○泉山國務大臣 お答え申し上げます。政府におきましては最低賃金、かようの固定した考え方はとらなかつたのであります。
  302. 勝間田清一

    ○勝間田委員 そうしますと、最低賃金の考え方はとらずに、固定した考え方をとらずに行くということでありますが、現在の本給に対して政府は家族給を低く見てすなわち本俸の中へそれが繰込まれているという立場をとつて、比較的本俸というものを重く見て行こうという考え方に対しましては、私は賛成であります。ただその基礎に最低生活の確保という立場がとられていない点においては、人事院案に対して政府案は劣るものであると思うのであります。それで現在の政府の示されたいわゆる本俸なるものを、現在のいわゆるCPSというものと比較いたしてみますると、とてもこれでは足らない、こういう私は数字にはつきり政府の数字でもなつておると思うのであります。そこでこのいわゆる政府の二千八百六十円でしたが、この金で最低生活が確保して行かれる、生計が保つて行ける。こういう自信に立つて立案されておりますか、その点は大藏大臣はどう思われますか。
  303. 泉山三六

    ○泉山國務大臣 はなはだこまかいお尋ねのようですから、政府委員をして詳しくお答えを申し上げます。
  304. 河野一之

    河野(一)政府委員 今回の五千三百三十円ベースについては、この前資料を差上げて詳しく御説明申し上げたのでありますが、最低生活が確保できるかどうかという問題でありますが、これはいろいろな生活のしようで、どの程度が最低のものであるか、それでは奴隸的生活であるか、あるいは文化的生活であるか、いろいろ議論のあるところでありますが、政府といたしましては、現在人事院が出されました、すなわち二千二百カロリーを攝取するに必要な二千四百七十円というものを尊重して、そのラインに從つてやつたわけでありまして、もちろん勤労者の生活というものは大部分は勤労收入によるわけでありますが、そればかりでもない実情でありまして、そういつた事情もかれこれ勘案いたしまして、この程度で十分その生活を維持するに足る、こういうように認めた次第であります。
  305. 勝間田清一

    ○勝間田委員 今政府委員もこの程度では若干勤労外の收入もやむを得ないというような意味のことを申されておつたのでありますが、私どもの党といたしましては、いわゆる家計の赤字を克服するということ、家計内容を健全化するということを主張いたしておるのであります。そうしますと、この形ではまだたけのこだ、それから同時にアルバイトをやつて行かなければ最低生活は営めない、こういう本給であるということを御承認になりますかどうか。
  306. 河野一之

    河野(一)政府委員 勤労者の生活の実態はいろいろあるのでありますが、最近における東京都その他の調査によりますると、大体勤労收入によつてその大部分をまかなうて來ておる。その実情はだんだんとよくなつておるというような状況であります。これをもつて最低生活が維持せられるかどうかという点のお尋ねでありますが、先ほど申したことを繰返し申すのでありますが、最低生活というものは絶対的な物理的なものでないと考えるのでありまして、今の日本の置かれておる國民生活の状況等から見まして、この程度の生活ということが勤労の再生産に十分である。こう考えてこのベース標準を出した次第であります。
  307. 勝間田清一

    ○勝間田委員 いろいろ政府委員の方と討議しても切りがないのでありますから切り上げますけれども、依然としておつしやつた数字をもつてしても、なお七%のいわゆるたけのこを必要としておるというのが、八月の生計費、しかも安本から示されました費用であります。こういう数字をいわゆる生活水準とか文化水準とかいう言葉でごまかすにはあまりに現在は深刻である。こういうように御解釈をぜひ願いたいのであります。こういう意味において、もつと賃金に対して眞劍に取組んでいただくことを私はお願い申し上げたいのであります。次に私は勤労者が現在一番悩んでおりますのは、やはり十二月の租税の調整の問題であります。これについて政府はどういう処置をとつて行かれますか。現在のものでは、ほとんど給料をこつちから全部拂い出しても、まだ足りないというような状態にあるものが相当あるようでありますが、この年末調整の点をどうされますか、その点をお答え願います。
  308. 泉山三六

    ○泉山國務大臣 お答えいたします。何のお話かちよつとはつきりしませんので、政府委員をして答弁いたさせます。
  309. 上林山榮吉

    ○上林山委員長 大藏大臣、再答弁を願います。
  310. 泉山三六

    ○泉山國務大臣 勝間田さんの御質問お答えを申し上げます。年末調整の問題は、おそらく税金の納めるものを年末にまとめて納める分があります、その分だろうと思うのでありますが、事いろいろ込み入つておりますので、これは政府委員の方が適当である、かようの考えで申し上げたのであります。
  311. 河野一之

    河野(一)政府委員 お答え申し上げます。年末調整の問題は、これは非常に重大な問題でありまして、勝間田さんのお話のごとく、これによつてかえつてマイナスになるということはないのでありますが、年末に際して相当重大な問題であることは、おつしやる通りであります、この問題をどういたしますか、政府部内においていろいろ研究はいたしておりますが、まだ成案を得ておるわけでございません。民間の関係もございますし、この場でとかくのことを申し上げることを差控えさせていただきたいと思います。
  312. 勝間田清一

    ○勝間田委員 年末調整という言葉を使つたということで、何のことかわからぬという態度は、はなはだ私は遺憾に思うものでありますが、しかし今の政府委員の答弁によりますれば、現在まだその方針がきまつておらないということでありますが、これはおよそいつごろまでにきまる予定でありますか、その点を承りたいと思います。
  313. 河野一之

    河野(一)政府委員 目下いろいろ研究をいたしておりますが、いつこれを決定するか、鋭意研究はいたしておるのでありますが、いつまでにこれを決定するということは、ちよつと申し上げかねるような段階にあります。
  314. 勝間田清一

    ○勝間田委員 年末調整の問題がいつきまるかわからぬという実情にあつて、私は五千三百三十円の賃金というものを審議することは、非常にむずかしいと考えるものでありますが、それに対する御見解はどうでありますか。
  315. 泉山三六

    ○泉山國務大臣 お答えをいたします。ただいまの勝間田さんの御見解は、御見解として承つておきますが、その問題と新賃金ベースの問題とは、緊密な関係もありまするが、またおのずから二つの問題であるのでございます。
  316. 勝間田清一

    ○勝間田委員 私はこの際特に申し上げておきたいと思うのでありますけれども、今度の賃金の問題については、これは政府も十分御認識のことと思います。いつから支給するかということ、寒冷地の手当をやるかやらないかということ、どういう賃金の体系がきまるかということ、年度末の調整をどうするかということ、これらは相関的に重大な関連を持つものであります。それは二にして一ならずということを申しますけれども、われわれとしては、これは重大な関連性があるものと実は思うのであります。その意味で、どうか大藏大臣も十分これは熱意をもつて考えを願いたいのであります。引離してものを考えて行けば、私はなかなかこの問題は解決がつかぬという感じを濃厚に持つものであります。  それから次にお尋ねいたしたいと思うのでありますが、寒冷地と石炭の手当の問題については、いろいろ祕密会までもいたしまして、そうして御苦心の点も十分わかるのでありますけれども、現在やはり寒冷地の人たちが、あるいは石炭代、そういうものについて非常な熱意を持つておるのであります。これを何らかの意味において処置されるということにいたしましても、その処置の方法いかんによりましては、これは重大な結果を來しまするし、特にそんなような金を、もし首切りや行政整理の面からそれを持つて來られるようなことであれば、それはたいへんなことになるわけであります。これらの問題については、祕密会でもけつこうでありますけれども、はつきりとわれわれに内示していただける方法があるかどうか、その点をお尋ね申したいと思うのであります。
  317. 泉山三六

    ○泉山國務大臣 お答えを申し上げます。
  318. 上林山榮吉

    ○上林山委員長 要点だけ願います。
  319. 泉山三六

    ○泉山國務大臣 申し上ぐべき時期になりましたら、はつきり申し上げたい、かように考えております。
  320. 勝間田清一

    ○勝間田委員 たいへん御好意ある答弁で、その点は感謝いたしますが、時期が参りましたならば、必ずひとつお示しを願いたいと思うのであります。  それから今度政府の案によりますれば、物價の八%、あるいは將來の五%というものを見積つて、これを考えていらつしやるのでありますが、これは從來しばしば労働者の方々は、物價が幾らに上つても、今度のように、十一月以前はもう支給しないのだという思想で、いつも切り捨てられてしまう。これは非常に私どもはお氣の毒に考えるのであります。それで將來こういつた実効價格指数に対しましても、あるいはその他の指数に対しましても、スライドさせて行く氣持を持つておりますか、どうですか。その思想がこの中に含まれておるかどうか、この点をはつきりお聞きしたいのであります。
  321. 泉山三六

    ○泉山國務大臣 お答えを申し上げます。そのスライド制に関しまして、インフレーシヨンの進行過程におきまして、勤労者の生活不安を解決いたしますためには、実質賃金を維持する方策が必要であると考うるのであります。このためには生活必需物資の公價配給をでき得る限り拡大いたしまして、これを確保するか、または端的には、一定期間ごとに消費者実効價格に賃金をスライドさせることが考えられるのでありますが、御承知通り、現在としましては、電産とか石炭等につきまして、一定の期間ごとのスライドが実施せられておるのでございまして、政府といたしまして、今ただちにこのスライドを制度化することは考えておらないのでありまするが、労資間におきまして、スライドの協定が成立いたしました場合におきましては、これが賃金支拂い給源を政府が補給することはいたしませず、いわゆる経済三原則のわく内におきまして、企業がみずからの責任と努力とによつて、これをまかなうことを期待しておる次第でございます。
  322. 勝間田清一

    ○勝間田委員 そうしますと、その企業の内部においていわゆるスライドの協定ができるならば、それを政府としては許して行く。こういう考えだと私は思うのであります。その点で一つお尋ねしたいのでありますが、その場合に三箇月スライドでも六箇月スライドでも、いわゆる期間の問題を政府はやはり問わないということになりまするか。その点はいかがでございましよう。
  323. 森永貞一郎

    ○森永政府委員 お答えいたします。ただいまお尋ねのスライド制の問題でございますが、電産、石炭等につきましては、たとえば電産は三箇月、石炭は六箇月というような期間がとられておるようでございます。その他の民間の例では一月ごとのスライドということもございまして、まあいろいろございますが、また利害得失もいろいろございまして、われわれもせつかく研究いたしておる次第でございます。一般的に申し上げますと、あまりスライドの期間が短かいと、いろいろ問題も起るようでございまして、やはり相当の期間が必要ではないか。それがまたあまり長くなりますと、その間勤労者に犠牲をしいるということになりますので、そう長い期間ということにはならないかと思いますが、まあ六箇月かなんかというところが適当ではないか、民間の実例に徴しますと、大体そういう見解であります。
  324. 勝間田清一

    ○勝間田委員 民間に対してそういう態度をとつていらつしやる。そうして民間の給與に——特に実質賃金に対照して官吏の給與をきめるという御方針でもあることを承つておるのでございまするが、官吏の給與については、スライド制というものはやはり現在考えていないのでございますか。その点もお尋ね申したいと思います。
  325. 泉山三六

    ○泉山國務大臣 ただいまのところさように考えておりません。
  326. 勝間田清一

    ○勝間田委員 それで人事院の方はいわゆる物價が五%程度の変動があつた場合には勧告する義務があるということになつておりまするが、これと政府との関係はどうなつておりますか、その点をお尋ねしたいと思います。
  327. 泉山三六

    ○泉山國務大臣 お答え申し上げます。勧告のございましたときに適当に考慮をいたすのが一つ。なおまた政府みずからの責任において、またその構想においてこれをなすことも、もとよりあるのでございます。
  328. 勝間田清一

    ○勝間田委員 なお地域給についてお尋ねをしたいと思います。地域給は現行法といたしましては、特地も甲地も乙地もその幅が廣過ぎる。最低と最高との幅が廣過ぎる。たとえば同じ甲地の場合においても、甲地の最低というものと乙地の最高というものとはほとんどダブつておるという関係になつておるので、地域給というものをこの際合理化して行くということは、非常に私は賛成でありまするけれども、九段階にわけて行く考え方は少しむりではないか、この点についていかにお考えになつておりますか、この点をお伺い申し上げたい。
  329. 泉山三六

    ○泉山國務大臣 ただいまのお尋ねに対しましては政府委員をして答弁いたさせます。
  330. 河野一之

    河野(一)政府委員 お答え申し上げます。地域給の幅が少しこまか過ぎるというお話なのでありますが、これは地域給審議会におきましていろいろ調査いたしまして出しました結論によりますると、現在の地域給の幅は各地の生活状況から見て、少し荒いのではないかというのが、大体の結論のように思われますので、かたがたそういつた委員会の意向その他を参酌いたして、こういうふうなこまかい刻み方をしたという実情でございます。
  331. 勝間田清一

    ○勝間田委員 政府は提案されたのでありますから、まさかそれを否定するわけにも参らぬと私は思うのでありますけれども、実際に私どもが調べてみた結果からいたしますと、これを九区分するだけの價値はないと私は思います。私はこういつた地域給というものは漸次なくして行く方向に向うのが、健全な賃金体系だと思つております。そこで政府は今度家族給というものを比較的本給に持つて行くという思想を持つておることについては私は賛成でありまするけれども、この地域給についても同じような考え方を持つて、漸次これを減らして行くべきであります。なるべく段階もこれを簡素にして行くべきものであると私は思いまするけれども、この見解についてはいかがでありますか。
  332. 泉山三六

    ○泉山國務大臣 お答え申し上げます。地域給につきましては、今日大都市と小都市と中都市、その間におきます生活費の相違、この現実に即應いたしまして、やむを得ずいたしておるのでございまして、その間の差異が幅が狭くなるとか、また幸いに廃止をせられるあかつきにおきましては、ただいま勝間田さんの御質疑及び御要望の通り、これは本給に当然吸收せらるべきものと考えております。
  333. 勝間田清一

    ○勝間田委員 先ほど來から政府考えておられます内容について御質問を申し上げて参つたのでありますが、結局総合してみまして、やはり私は本俸が低いという結論を持つものでありまして、その点についてはしかしこれ以上御質問をすることを避けたいと存じます。  次に、これはいろいろ前の方からも質問があつたと思いまするから、そういう点は省いてお聞きしたいと思いますが、財源について少し質問さしていただきたいと思います。この前いわゆる政府の行政整理の案のときに、当時の國務大臣は現在三割の人件費を節減いたしましても、実員数と予算人員とが開いておるので、出血するような行政整理にはならないということを発表せられておつたのでありまするけれども、今度の大藏省の統計によりますれば、ほとんど実員数と予算人員との間に開きが見られない。どうしてこう前者と後者との違いが出て來たのであるか、この点をもう一ぺん明確にしていただきたいと思います。
  334. 河野一之

    河野(一)政府委員 この予算定員の考え方でございまするが、当初予算、すなわち本予算におきましては、四十七万人の予算定員に対しまして、大体三割程度の欠員があつたかと思うのであります。しかし本予算において、当時の予算の財源といたしまして欠員の整理をすることになりまして、一律に人件費の一割五分を節約したわけでございます。その際におきましては予算の定員をいじつておりません。ただ一率に一割五分を整理したわけであります。從いまして定員はあるけれども、俸給の予算は一割五分そこで減らされておる。こういうことになつておりまして、それをそのままにして人をふやして行くと、俸給が足りなくなるものでありますから、その後におきましてこれを調整するために欠員の整理をやりました。それは現在おる欠員の九割を整理する、それから新規に入れた人員の二割を節約する。こういうことによりまして欠員の整理をいたしました。從つて現在では四十五万人の予算定員に整理せられておるわけであります。欠員は大体七%程度に現在のところ推定されております。そういう事情に相なつております。
  335. 勝間田清一

    ○勝間田委員 それから今度いわゆる税の自然増收として四百十億ほど見積つておられるようでありますけれども、特に五十万円以上の高額所得者に対する税の捕捉率を強めることによつて、われわれはかなりの財源が得られると思う。もしそういう立場に立つならば、私は税の自然増收も考えてよいけれども、一率に自然増收を考えて行くと、おそらく大衆課税であり、同時に水増し予算であるという感じを当然持つのであります。從來までの経過から見まして、こういつた高額の脱税捕捉の点についての成績はいかがなものでありましようか、今までの成績についてお話を願いたいと思います。
  336. 河野一之

    河野(一)政府委員 國税査察部というようなものをつくりまして、また第三者通報というような制度を開きまして相当成績は上つております。その結果につきましては、書面をもつて御報告申し上げることになつておりますし、ただいま資料を持つておりませんが、非常に成績は上つております。またこれに対して体刑も科するという非常に峻嚴なる態度をもつてやるようになりまして、大口所得者の捕捉は從來に比較して非常によくなつたように思われております。
  337. 勝間田清一

    ○勝間田委員 それからいわゆる免税点の引上げということが重大な関係に將來なつて行くと思いますが、これを急速度に実施しようということはなかなか行われないと思うのであります。またそれは財政上のそれこそいわゆる負担上の問題が相当からんで來るので、にわかにこれを実施することもなかなか政府も困難であろうと思いますけれども、免税点の引上げということについて、どうお考えになつていらつしやるか、この点をお尋ね申したいと思います。
  338. 泉山三六

    ○泉山國務大臣 お答えを申し上げます。免税点の引上げにつきましては、ただいま勝間田さんからも御指摘のございました通り、いろいろむずかしい事情がございますのが一つ。また他の反面におきまして、今回の國家公務員諸君の新給與につきましては、実質賃金におきまして相当の引上げとも相なります。この点に留意いたしまして、國家財政の現状から、理解ある御協力を賜わりたい、かように念願しておる次第であります。
  339. 勝間田清一

    ○勝間田委員 最後に御質問をいたして私の質問を打切りたいと思いますが、今まで安本長官の御答弁は、結局実質賃金の向上ということを特に主張されておる点では、これはよく理解ができるのでありますが、その裏づけになる消費財の配給、これは今後どのようにふやされるか、いわゆる主食の点に改善の面もありましようし、あるいは資材の配給の面もありましようし、いろいろインフレの面もあると思いますが、この配給物資の改善の見通しについて、特に数字的にこれをお示し願いたい。
  340. 森永貞一郎

    ○森永政府委員 お答えいたします。ただいまその方面の担当の政府委員が参つておりませんので、ごく大ざつぱなことだけしか申し上げられないのでありますが、あらかじめ御了承願いたいと思います。主食につきましては去る十月を期しまして、労務加配の増加、また十一月には一般主食の増配ということが行われまして、実質賃金に相当の貢献をいたしておることは御承知通りであります。お尋ねの面につきまして、たとえば纖維が一つの問題でございますが、申しますと、本年度の計画といたしましては、年初國民一人当り一・八ポンドぐらいの配給を計画しておつたのでございますが、その後の推移に顧みますと、電力事情あるいは原料関係等の事情もございまして、遺憾ながら当初の計画までには行かないようであります。大体一・六ポンドぐらいのところが予定されておるのでございますが、これをなお今後においていろいろ努力をいたしまして、若干でも増加できるようにというので、せつかく努力をいたしておる次第でございますが、そう多くは望めない実情ではないか、長い將來にわたつて考えますれば、だんだん増加して参る計画になろうかと存じまして、五箇年計画等の策定に伴いまして、漸次將來の計画もはつきりいたして來ると思いますが、今日まだ具体的な資料をここで申し上げる段階でないことを御了承願いたいと思います。その他の面につきましても、目下せつかく明年度の計画を策定中でございます。詳細なる数字はまだわかつておりませんが、たとえば若干でも向上ができて行くのではないかという機会はあろうと思つておる次第であります。なお詳細なることは担当の政務次官から、他日もし要すれば御答弁申し上げることにいたしたいと思います。
  341. 勝間田清一

    ○勝間田委員 それでは今の点は、これは前もつてお願いをしておつたものが届かないのでありますから、なおこれらの数字的な基礎をぜひお願い申し上げたいと思います。なお若干の質問の点もございますけれども、後ほど御相談申し上げまして、きようはこれで打切ります。
  342. 上林山榮吉

    ○上林山委員長 先ほどの勝間田君の質問の際、大藏大臣答弁の中に不適当な言辞があつたと思いますので、この際、大藏大臣の善処をお願いいたしたいと思います。何らかの形で御答弁を願います。
  343. 泉山三六

    ○泉山國務大臣 お答え申し上げます。勝間田さんのお尋ねは、年末調整の問題、かようのことでありましたので、年末調整は税金を年末に調整する。かようの法律の定めに相なつておるのでありまして、それをどうするか。かようのお尋ねと承つておつたのであります。從いまして私はちよつと理解に苦しんだ次第であります。しかしてその後におきまして、政府委員をして答弁いたさせましたところ、了承せられた次第でございまして、何らさようの考えは私においてないのであります。
  344. 上林山榮吉

    ○上林山委員長 大藏大臣に重ねてもう一ぺん委員長として発言申し上げますが、勝間田君の御質問に対して不適当な言葉があつたと、委員長としてもこれを認めておるのでありますから、お取消になるなり、何らかの方法で善処を要望いたしたいと思います。
  345. 泉山三六

    ○泉山國務大臣 ただいま委員長のお言葉でありましたが、どの点か、はつきりいたしませんので、私はわからぬことはわからぬと申し上げたのでありましたが、いかなる点のお話でしようか、重ねてお尋ね申し上げます。
  346. 稻村順三

    ○稻村委員 議事進行について……。
  347. 上林山榮吉

    ○上林山委員長 稻村順造君。
  348. 稻村順三

    ○稻村委員 委員長の大分かんで含めるように、またよく氣がつくようにというような暗示があつたにもかかわらず、大藏大臣はそれに対して何にもお氣づきにならぬようですから、そこで私はやむなく議事進行について、大藏大臣答弁に関して発言せねばならなくなつたわけであります。大よそ衆議院議員が予算委員会におきまして大藏大臣質問するときに、何のことやらわかりませんと言うのでは、聞いていたのやら聞いていないのやら、ちつともわからぬというような氣持さえ起させるのであります。何のことやらわかりませんから政府委員に答弁させます、これは実に議員を侮辱した態度と私は思う。ですからしてその点は、遠まわしに委員長がそういう言葉を取消せということをはつきりと大藏大臣に言つておるのだろうと思います。それを取消すことができないということであれば、われわれは大藏大臣に対して、今後の議事進行その他に関しても、こういう問題を起したのは大藏大臣の責任だというふうにとりまして、決意を固めなければならぬ、こう思つておる。その点大藏大臣は潔くこの際それを取消すなり、遺憾の意を表するなりするのが当然だと私は思う。それができないような大藏大臣ならば、議会主義というものを知らない大藏大臣である。そんな者が大体議員として当選したり、また大臣なつたりしたらふしぎであると思う。今まで私は予算委員をほとんど三年勤めておりますけれども、そういう答弁をした大藏大臣は一人もおりません。その点大藏大臣からもう一度、はつきりした御返答を願いたいと思います。
  349. 泉山三六

    ○泉山國務大臣 お答え申し上げます。ただいま稻村さんから御懇切なるお話、まことに恐縮にたえない次第であります。私はわからぬことはわからぬと申し上げました。なるほど何にもわからぬと申し上げたかもしれませんので、さようのことであれば——ただいまのお言葉の点でははなはだ不適当と、かようのお話のように承るのでございまして、さようの意味合いなれば、私はただいま記憶を呼び起しました次第でありまして、遺憾の意はその意味におきまして表する次第であります。
  350. 上林山榮吉

    ○上林山委員長 明日は午前十時より理事会を開きます。十時半より委員会を開催いたします。本日はこれにて散会いたします。     午後七時二十六分散会