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1948-12-08 第4回国会 衆議院 予算委員会 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十三年十二月八日(水曜日)     午前十一時八分開議  出席委員    委員長 上林山榮吉君    理事 苫米地英俊君 理事 森  直次君    理事 稻村 順三君 理事 竹谷源太郎君    理事 小坂善太郎君 理事 田中源三郎君    理事 今井  耕君 理事 大原 博夫君       淺利 三朗君    尾崎 末吉君      小野瀬忠兵衞君    鈴木 明良君       西村 久之君    仲内 憲治君       平島 良一君    本間 俊一君       前田  郁君    松浦  榮君       宮幡  靖君    勝間田清一君       川島 金次君    鈴木茂三郎君       田中織之進君    野上 健次君       林  大作君    松永 義雄君       松原喜之次君   青木清左ヱ門君       押川 定秋君    川崎 秀二君       中曽根康弘君    長野 長廣君       井出一太郎君    河野 金昇君       小枝 一雄君    叶   凸君       世耕 弘一君    織田 正信君  出席國務大臣         内閣総理大臣  吉田  茂君         大 藏 大 臣 泉山 三六君         農 林 大 臣 周東 英雄君         商 工 大 臣 大屋 晋三君         運 輸 大 臣 小澤佐重喜君         労 働 大 臣 増田甲子七君         建 設 大 臣 益谷 秀次君         國 務 大 臣 岩本 信行君  出席政府委員         総理廳事務官  内田 常雄君         大藏政務次官  塚田十一郎君         大藏事務官   河野 一之君         大藏事務官   阪田 泰二君         運輸事務官   岡田 修一君  委員外出席者         商工事務官   平塚  明君         專  門  員 芹澤 彪衞君         專  門  員 小竹 豊治君 十二月七日  委員山崎道子辞任につき、その補欠として森  戸辰男君が議長指名委員に選任された。 十二月八日  委員黒田寿男辞任につき、その補欠として岡  田春夫君が議長指名委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した事件  昭和二十三年度一般会計予算補正(第二号)  昭和二十三年度特別会計予算補正(特第二号)     —————————————
  2. 上林山榮吉

    ○上林山委員長 会議を開きます。質疑に入ります。
  3. 竹谷源太郎

    竹谷委員 それでは一、二建設大臣にお伺いいたします。戰前の半分近くに減つた領土の中で、八千万の國民を養わなければならぬ。それにはどうしてもわれわれのこの國土を徹底的に利用しなければならぬと思うのであります。從いまして狹くはあるがまだ未開発資源が相当あり、また人口の再配分なり、あるいは文化産業の再配置を考える。外資導入とかいうような他力本願は第二といたしまして、第一にわれわれの力で國家を再建しなければならぬと思うのでありますが、その趣旨からこの際総合的な、計画的な國土編成計画を進める必要があると痛感をいたすのであります。今建設省はさような全体的な、総合的な職務上の権限を持つておりませんが、そのイニシアチーブをとるべきものは無論建設省であろうと思うのであります。これにつきまして建設大臣將來抱負経綸、またこうした問題に関しましてどの程度研究が進められておるか、伺つておきたいと思うのであります。
  4. 益谷秀次

    益谷國務大臣 昭和二十一年度から御承知通り復興國土計画要綱というものを規定いたしまして、人口完全收容ということを目標といたして参つたのであります。そうしてこれは五箇年計画であつたのでありまするが、昭和二十二年度からそれに対して修正を加えまして、國土計画の一環として、各都道府縣に対して、地方計画を樹立するように勧奬いたして参つたのであります。しかして昭和二十二年度におきましては、全國大体十六府縣と記憶いたしております府縣から、國土計画を作成して提出いたして参つたのであります。しかして政府におきまして、本年度においてさらに各府縣に対して、総合的の開発計画を立てるように指導いたして参つたのであります。そうしてこの計画は、大体來年度、二十四年度までに全國計画が完了すると見込んでおります。そうして今日御承知通り、この計画に基いて計画を立てて参りました各府縣においては、熱心に開発を要望いたして参つております。しかしながら資材あるいは財政関係から、國土全般にわたつて産業開発計画を実行いたして参ることはできないのであります。從つて政府におきましては、全國の中から重点的に地域を指定いたしまして、從來御承知通り各省各局においておのおのの立場から單独にいたして参りました施策を、総合的、統一的にやつて、そうして産業開発人口配置というものをいたして参りたいと思つて、着々その計画を進めておるのであります。
  5. 竹谷源太郎

    竹谷委員 從來都市計画、それに加えて新たにただいま企画中の地方計画、それらの総合としての全國的な國土編成計画を遅まきながら、そうしてまだ徹定的ではありませんが、計画を立てられておるということは、まことに喜ばしい次第であります。しかしながら從來産業開発計画産業國土計画について考えてみましても、從來のこの計画はいわゆる資本家本位であつて、営利的な事業家がもうかるような、そういう産業開発ということを土台として考えられて來たうらみがあるのであります。そのためにいわゆるもうかる所では仕事をするけれども、もうからぬ所では仕事をしない。仕事をしない所では永久にその地方産業開発しなければ、その地方民の福祉も増進せられない。資源はいたずらに眠つておる。こういう状態でありまして、特に産業開発に関しましては、こうした自由主義的な、資本家性計画ではなしに、眞に國民全体の産業の水準を上げるという方針から起案せられなければならないと思うのであります。特に私が考えますのは、実は私は東北地方の出身でありまするが、最近災害が毎年続いて、非常に地方民が困つておる。政府はこれがために莫大なる災害復旧費を支出しなければならない。しかしてその災害復旧費はほんの九牛の一毛であつて、翌年の生産にさしつかえるという状態でありまするが、こうした問題の起きた原因をたずねてみますると、明治政府以來國費をもつて治水費、すなわち砂防工事費あるいは河川費というような、直接水害予防のために支出されるその治山治水費というものの國費支出総額を調べてみましたところ、ほとんど全國的に支出される治山治水費のうちの、少い年は六%、多い年でも九%ぐらいしか東北六縣に対しては支出されておらぬ。ただ昨年大災害を受けましたので、やつと一八・五%支出されております。本年は幾ばくになりますか、とにかく昨年のように東北六縣が全体的に非常な災害を受けた年において、初めて災害復旧費及び治山治水費が一八・五%支出された。しかるに東北地方日本全國の約二十%を面積において占めており、そうして寒暖の差あるいは降雪のために特に災害を多く受けやすい、またいろいろ工事施設等が破損しやすいのでありまして、よそに比べてより多くの金額が支出されなければならないのに、全國の二〇%の面積を占めながら、わずかに六%から九%程度國庫支出金額にとどまる。このことが何十年と続いた結果、あらゆる河川は洪水する、砂防工事はほつたらかしにして、そうして昨年及び今年のような水害がありますと、必要以上の災害地方民にもたらされる。こういう結果に相なつたと私は確信をいたすのであります。これはとりもなおさず東北地方における政治力も少かつたでありましようが、何と言つても富が東京以西日本においては偏在しておる。そのために、この資本主義経済から言えば、当然金持を保護しければならぬ。從つて東北の貧乏な百姓などは顧みられなかつた。こういう結果であろうと思うのでありますが、建設大臣はほんとうの日本國土計画を考え、そうして日本全体の産業開発しようという観点からいたしますならば、今日本に取残された資源というものは東北、北海道、九州の一部、こういう所であろうと思う。こういうところの河川が改修せられ、あるいは交通が完備いたしますならば、今いたずらに眠つている資源が、日本再建のために大いに活用されることを私は確信するのであります。そこで建設省所管関係につきましても、從來東北地方に対する冷遇、虐待した國家のやり方というものを今後よく御檢討になつて、そうして本年度災害復旧費配当及び今年における治山治水を初めとして、道路、港湾、各種の建設事業について、東北地方に対して重点的に施策を施して、そうして眠つている産業開発し、日本復興に寄與する。こういうふうに持つて行かなければならないと思いますが、建設大臣のこの東北地方に対する今後の方針施策についてお伺いしたい。また災害復旧費配当等に対しましても、いかようにこれを配当せられようとするか、伺つておきたいと思うのであります。
  6. 益谷秀次

    益谷國務大臣 東北地方産業開発の遅れておつたことはお説の通りでありまして、まことに遺憾に存ずる次第であります。政府の今回の地方産業開発総合計画のねらいといたしておりますのは、申すまでもなく、水産あるいは林産、地下の埋藏物その他水力電氣、あらゆる産業総合計画でありまして、從つてそれに沿うてあるいは漁港をつくりますとか、あるいは林道をつくりますとか、もしくは道路を改良するというような建設事業がこれに伴つて参るのであります。從つて資本主義であるとか、自由主義であるというような観点から、この開発をいたそうというのではありません。その地方、ひいては全國國民が、その産業開発によつて、ともに恩典に浴するという建前から総合計画を立てて、開発に努めようといたしておるのであります。  さらに東北方面に対するお説でありますが、これも竹谷君の仰せのごとく、從來はあるいはややともすると、他の地方よりは施設が遅れたというきらいはあつたと存ずるのであります。しかしながら今回の水害に対しましても、また將來に対する治水の問題にいたしましても、政府といたしましては、その被害状況、あるいはその他あらゆる事情を勘案いたしまして、緊急を要する方面から復旧に努め、あるいは治水根本政策を立てて参りたいと存じておるのであります。特に東北地方を顧みないというようなことは断じてありません。
  7. 竹谷源太郎

    竹谷委員 次に災害復旧のことをもう少しお伺いいたしますが、本年度國庫補助を受けんとする災害復旧申請額総額約八百五十億ぐらい地方團体から申請があると聞いておるのであります。むろんこの中には多少査定を要するものもありましようから、かりにこれを二割ぐらい査定をするとしても、七百億ぐらいの災害復旧費が必要であろうと思うのであります。それに加えて、國庫補助を受ける災害復旧事業のほかに、縣なり市町村單独災害のために復旧をしなければならぬような單独事業が相当にある。これは從來慣例から行くと、國庫補助事業の大体一割ぐらいと見られております。從つて八十億ないし百億ぐらいの、市町村もしくは縣の單独事業が行われなければならないような状態でありますが、今回追加予算に提案された災害復旧國庫補助費はわずかに六十億であります。これは地方財政法によつて災害復旧費の三分の二を國庫が負担するという建前になつておりますから、地方費で三十億持ち、九十億の災害復旧事業が行われるにすぎない。そうすると必要なる災害復旧費のわずか一割だけ本年度内において執行されるにとどまるのであります。從來災害復旧事業は、初年度に大体三割ぐらいを執行して、次年度に五割ぐらい、第三年度に二割ぐらいを執行してこれを完了するというのが慣例でありましたが、それが必要な災害復旧のわずか一割ぐらいしか本年度内に完成できないということになりますと、來年生産に直接影響を來すということに相なるのでありますが、一体そのわずか九十億ばかりの金で、また地方財政の逼迫の折から、單独事業に関しまして、地方では一般財源ではどうしてもまかなえません。從つて起債をするとか、その他いろいろな手段を講じなければならぬ。その起債についてはまた嚴重制限を受ける。しかも地方財政委員会で、災害復旧のための起債として四十億だけとつておりましたが、すでに八億ばかりは福井縣の震災のために支出せられ、その他三十億ばかり残つております。これが今度の國庫補助事業の六十億をそれに加えて、地方費負担の三十億を合せて九十億の中に入りますと、もはや起債制限は一ぱいになつている、こういう状態でありますが、かような状態明年度の再生産にさしつかえないと建設大臣は考えられるかどうか、御意見を承りたいのであります。
  8. 益谷秀次

    益谷國務大臣 本年の災害復旧補助金額各省にまたがつておりますから、今明確なる数字を記憶しておりません。私の所管の部分についてはいまだ査定を完了いたしておりませんが、大体三百四、五十億になるかと計算をいたしておるのであります。しかしながらこれも今日はまだ明確な数字とは申し上げることはできないのであります。從つて政府はそれに対する補助をいたして、それだけの補助金をもつて復旧をいたして参らなければならぬのでありますが、今日までは御承知通り、とりあえず一般公共事業費から、私の所管といたしましては河川方面だけで十億以上出しております。そのほか地方に対しては金融の面から二十五億五千万円のものをあつせんいたして出しているのであります。しかして今回の六十億の予算中、建設省に割振られる金額は、大体三十八億六千七百万円かと存じております。これでもとより十分であるとは申し上げることはできません。私といたしましては御承知通り、これ以上の要求をいたしたのでありますが、遺憾ながら今日の財政の窮迫いたしております現状において、これ以上要求するということはできなかつたのであります。從つてこの費用は最も有効に経済的に使用いたしたいと存じているのであります。しかして本年のごとく雪解けの被害もあります。そういう方面も勘案いたし、大体出水期を七月と見て、本年はとりあえず緊急を要する地点に対する應急の措置を進めて参りたいと思うのであります。しかして國家財政が許す限りにおいて増額を要求いたし、増額をいたして一日もすみやかにこの復旧を完成いたしたいと思うのであります。昨日も申し上げました通り、この災害復旧に対しては、昭和二十年からの計算をいたしますと、二十年と二十一年と、それから南海の大震災に対する補助は、四年度にまたがつて、すなわち本年度内においてようやく補助が完了するのであります。昭和二十二年の災害に対しては、まだ六割以上の補助費不足を告げている状態であります。從つて現在の國家財政方面からにらみ合せて見ますと、なかなか至難でありますが、とりあえず緊急を要する地点復旧をそれでどうにかまかなつて、ただいま申しました通り來年の七月を目標といたして、でき得る限りこの補助額の増加をはかりたいと存じておる次第であります。
  9. 上林山榮吉

    ○上林山委員長 この際竹谷君の御了解を得まして、建設大臣に対する他の委員からの発言を許可したいと思います。井出委員
  10. 井出一太郎

    井出委員 私も質問の順序を総理から始まつて應システムを組んで参つたのでありますが、どうも大臣諸公がそろいませんので、つなぎの質問というふうなかつこうになつて、この点は少しやりにくいのですが、幸い建設大臣がお見えですから、一、二点お伺いいたします。  住宅対策でありますが、これはおそらく建設省所管になるわけでありましよう。衣食住というこの三つの問題のうち、住宅がどうも少しく閑却され過ぎておりはせんかという感じを抱くのは、私のみではないと思うのです。今日戰災その他による燒失家屋は、およそ四百万戸ということを聞いている。また戰災地における住宅問題に端を発した家庭的ないろいろなトラブルでありますとか、わずか四疊半の室に数人の家族がごつちやに住むことによつて、そこから生れて來る非常な惡影響を考えますときに、実に慄然たるものを覚えるのであります。この点に関しましてとりあえず大臣から住宅施策の根本的な御方針を承りまして、なおそれに関連して質問を続行いたしたいと思います。
  11. 益谷秀次

    益谷國務大臣 昨日も本会議で問題になつたのでありますが、住宅問題は今日まことに重要なる問題であります。しかして特に都市における勤労者階層の人が、今日最も住宅難に苦しんでおるのであります。本年九月までの住宅建設の実績を見ますと、建築総数に対する都市におけるものが、大体総計の四六%になつております。その他の五四%は全部郡部であります。從つて今日は都市における住宅問題を最も重要に考えて、解決いたさなければならないのであります。これも昨日本会議で申しました通り、今日は約三百八十万戸の住宅不足計算いたしております。これに対して本年は資材等をにらみ合はせまして、四十万戸の予定を立てたのであります。しかしてこれは本年内においては順調に進んでおりますから、大体四十万戸の新築は可能、いなむしろ上まわるものと計算いたしております。住宅の量的問題については、幸いに資材の配給がだんだんよくなりますので、戸数総数においてはだんだんふやすことができると思うのでありますが、最も重要な点は、都市における住宅問題であります。しかもこの都市住宅は御承知通り戰爭以前は約七割が貸家でありました。そして貸家企業によつて経営されて参つたのでありますが、今日は貸家企業というものは、全然復興いたしておりません。從つて都市勤労者階層住宅は、ひとえに國庫補助によるところの公営住宅あるのみであります。しかも公営住宅は、御承知通り國家が半額の補助をいたして、地方公共團体がこれを管理経営いたして参るのであります。從つてこれに対する戸数というものも、財政の上からの制約を受けて、多くを望むことができないのであります。本年は四月以降半額國庫補助公営住宅は四万二千戸であります。來年はこの数をもう少し増したいと思うのであります。とにもかくにも戸数はただいま申しました財政上の制約を受けて、非常に困難であります。そうしますと、結局財政以外の方面から住宅建設資金を仰がなければならぬという結論に到達いたすのであります。そこで住宅の性質上から、長期、しかも低利資金をたくさん供給いたさなければ、庶民向け住宅というものをつくることができないのであります。そこで政府は昨日も申しました通り長期低利資金を供給することのでき得るところの住宅專門金融機関を設置いたして、そうしてこの住宅難を解決いたそうとし、この点について愼重なる研究を今日進めておる次第であります。
  12. 井出一太郎

    井出委員 大体の全貌はただいま承りました。そこで建築制限令が現在強く住宅建設をはばんでいるというふうな感じを持つのであります。この際このわくをもう少し緩和されまして、といつて、自由にできる者が勝手次第に大きな住宅に住み得るということであつてはもちろんなりません。もう少し簡易に、手続その他においても、家を建てることが樂にできるという態勢をつくられまして、そうしてある程度余力のある者が住宅をつくることによつて、それだけ制限以上に緩和ができるというふうな施策をお考えくださることが、特に民自党とされては、さような方面に若干自由の限度を拡大する御方針が、党の根本方針ではないかというふうな感じがいたしますが、こういう点ひとつ建築制限令緩和、その他に関する御所見を伺つておきます。
  13. 益谷秀次

    益谷國務大臣 昨年二月八日から建築制限をいたして参つておるのであります。これは目的を少しお話申し上げますと、十分御了解になるかと存じますので、この制限目的を簡單に申し上げてみたいと存ずるのであります。  経済再建のために必要欠くべからざるところの、たとえば木材であるとか、鋼材であるとか、鉄鋼の二次製品であるとか、あるいはガラスであるとか、こういう経済再建のために欠くべからざる重要資材を、最も産業開発に必要な方面に充当することをねらつて、そうしてまた一面御承知通り建築物並び附帶施設というものは、この重要な物資を最も多く使用するのであります。そこで需要方面の用途に充てるということと、必要な方面へ最も多く使う、不要不急方面に使わないという建前許可制をとつておるのであります。また一面住宅の問題は重く取上げなければなりませんから、一度許可を與えたものについてはその所要の資金を割当てまして、比較的たやすく公價で入手できるような処置をとつて來ておるのであります。これが建築制限のねらいどころであります。そうして今日、ただいま申し上げたような重要資材需給状況を見ますと、彼の物資需給調整法並びにこれに基くところの指定生産資材割当規則というものをただちに廃しまして、統制を撤廃するということが、遺憾ながら今日は主要資材需給状況から見てできないのであります。從つて、今日ただちに無條件建築制限を撤廃いたすということは、非常に困難ではなかろうかと存ずるのであります。しかしながら政府としては不必要な統制を固執するものではありません。事情の許す限りにおいてこの運用をなめらかにいたしまして、國民の不便を緩和いたして参りたいと存じておるのであります。しこうして本年の九月一日から地方の知事に対して大幅に建築許可権限を委任いたして、また一面わずかな資材を使うところの建築、もしくは災害等によつて減失いたしましたところの建築に対しては許可制を廃しまして、相当緩和をいたして参つたつもりであります。しこうしてこの建物の坪数についても、御承知通り十二坪から十五坪というように緩和をいたして参りました。今後も資材等を勘案いたしまして、できるだけこれを緩和いたして参りたいと存ずるのであります。  最後に手続のことについてのお尋ねでありますが、從來出願をいたしましても非常な長い日数を要したという非難があるのであります。これにかんがみまして、政府としては建設大臣許可権限に属するものは二箇月、それから地方廳知事許可権に属するものは一箇月という期間を定めるということを決意いたしまして、今各方面と交渉中であります。
  14. 井出一太郎

    井出委員 建築資材その他重要物資が、当分の間は統制をすることのやむない今日の段階において、今にわかにわくを撤廃するというわけに参らないことは私もその通りだろうと思うのであります。ただ、ただいまとられておる方針、つまり統制嚴重にするが、許可をした者に対しては資材が必ず切符の裏づけによつて、いやしくも不渡りなどということがないような配慮をされておると思いますが、実際問題としては、なかなかこれが円滑に行われておらぬきらいがあるようであります。こういう点はどうかできるだけ御注意を願つて、さようなことのないように御配慮を願いたいと思います。もう一つそれと関連いたしまして、日本建築の場合にはおそらく木造建築が主体に相なりましよう。また現在手取り早く手に入る資材はやはり木材であります。しかし今日の日本林産資源というものは、戰爭以來の濫伐過伐の結果、植伐の不均衡を來しておりまして、年々成長量需要量をまかなつておれない状態であるしかも木造建築は今回の戰災経驗からしましても、非常に火災その他に抵抗力がないのであります。一面燒野原となつ日本都市を再建する場合に從來のような脆弱なる建築物でなくして、もう少し耐久的な方向を考えて、新しい住宅建設という方面にどれだけの御配慮を用いられているか、こういう点についてお伺いしたい。
  15. 益谷秀次

    益谷國務大臣 御趣旨まことにごもつともであります。先ほどお答え申しました通り本年國庫補助住宅四万二千戸計画いたして参つたと申しました、その中に木造は約三万二千戸と記憶いたしております。その他は鉄筋コンクリート、それに類似する建築物であります。鉄筋のアパートとかいろいろ含んでいるのであります。都市においては御承知のごとく、防災等の建前からつとめて木造を廃して、堅牢なる建築物をつくりたいというのが、政府の念願するところであります。しかしながら、今日最もこの資材方面に苦しんでいるのは御承知通り鋼材であります。これの供給量は最も少量であります。建設省全体として災害とかあるいは住宅方面においてよけいに鋼材を必要とするのでありますが、この需要と供給の関係はまことになめらかに参つておりません。セメントの方面においても、いささかゆとりができて参りましたが、これも十分とは申すことができないのであります。從つて堅牢なる建物をつくるという方面は意のごとく参らないのであります。しかしながら去る十一月一日に省令を出しまして、六大都市等の重要なる地区に対して、建築制限をいたして参つているのであります。從つて着々御趣旨に沿うようにいたしたいと存じている次第であります。
  16. 井出一太郎

    井出委員 先ほど御答弁の中に、住宅の建設を容易ならしめる意味において、資金的な措置をおとりになる、そのために何か特殊の金融機関をおこしらえになるように伺つたのでありますが、たとえばこれは住宅復興金融金庫というようなもののように了解をしてよろしゆうございますかどうか。また金庫をみだりにつくるということに、関係方面等においてなかなか了解を得られないことのようにも聞いております。その辺の見通しもあわせて伺いたいのであります。なおまた私どもは住宅協同組合というようなものを法的にこしらえまして、協同組合の力によつて、積極的に自主的に住宅建設を促進すべきであるというふうな考を持つているのであります。かような点についても、ひとつ具体的な御所見を承りたい。なおまた住宅問題はこの程度に切り上げますが、最後に遊休住宅といいましようか、未だ相当に開放すべき余地のある住宅に対して手をつけて、こういう方面からできるだけゆとりを出すようにという施策を、これはすでに前内閣でもおやりになつたと思いますが、実はこれまで大した効果が上つておらぬようであります。かようなものに対して、もう少し積極的に強力な措置をお講じになる御意思があるかどうか、かような点をお伺いしたいと思います。
  17. 益谷秀次

    益谷國務大臣 お話の通り住宅專門金融機関を設定することについて愼重に研究をいたしております。これは非常に困難な問題でありますが、先般御承知通り、連合軍司令部から金融機関に関する指針が出たのであります。すなわち金融機構の根本的と申しまするか、改革に対する指針であります。從つてこういう線に沿うて参りますならば、長期低利資金を要するところの住宅建設に対しては、何かそれにふさわしい機関ができるだろうというような見通しのもとに、今愼重に研究をいたしておるのであります。また住宅協同組合というお話でありましたが、これも結局組合ができましても、建築の隘路は主として資金の問題であります。ただ金のある人が集まつて協同組合を組織して住宅をつくるというならば、きわめて簡單でありますが、協同の力をもつて資金を仰ごうというねらいであるといたしますならば、住宅の性質上やはり比較的長期金融を仰がなければなりません。これなどもやはり資金面の問題に帰すると存ずるのであります。最後の遊休住宅については、これは遊休住宅を改造いたしまして、やはり住宅建設の一端といたして奬励いたして参つておるのであります。各地方におきましても、この十月末から十一月にかけて、相当数の遊休住宅庶民向け住宅に改裝いたしておるという報告を受けて、非常に喜んでおるのであります。今後といえども各地方を督励いたしまして、御趣旨に沿うようにいたしたいと存じておる次第であります。
  18. 林大作

    ○林(大)委員 住宅問題について関連的な質問を申し上げます。現在までに住宅営團が持つておりました住宅が全國で六万二千百十七戸ございます。御参考までに内訳をちよつと申し上げておきますと、東京が二万三百十五戸、横浜が七千八百四十五戸、名古屋が七千三百九十六戸、靜岡が七百四十九戸、大阪が三千九百五十七戸、神戸地区が二千六十九戸、仙台地区が三千七百八十二戸、廣島が五千四百三十六戸、四國が千八百二十二戸、九州が八千七百四十六戸こういう戸数になつておるのであります。この住宅営團の財産は、現在閉鎖機関に移管されまして目下整理中であります。ところがこの中に住んでおります人たちはどういう人たちであるかというと、この大部分が戰時中に強制的に雇用されまして、軍需工場に勤めておつたような労務者が大部分であります。これらの地区にそうした戰時徴用をいたしまして、それに伴つて職をかえてその土地に移り住んで参りまして、終戰と同時に職がなくなつたような連中がほとんど大部分であります。ところが閉鎖機関の方針といたしまして、これを賣り拂わなければならないという事態になつておるのであります。私の今まで聞きましたところによりますと、約半数くらいしか買う力がないのであります。ところが進駐軍の方の関係もありまして、相当これが強力に立ちのきを命ぜられておるのであります。そうしてこれらの住宅は私もずいぶん見ましたが、大部分が八疊に六疊もしくは六疊に四疊半くらいの小さいものばかりで、その價格といたしましても、大体一万五千円ないし二万五千円くらいのものばかりの長屋でありまするが、それらの金にいたしましても、それらの人たちに今すぐにこれを買えということは、非常に氣の毒なことであつてできないことであります。そこで私は閉鎖機関の問題は、日本政府の方と今直接関係を持ち得ないという考えで、これを等閑視しておくことは許されないと思うのであります。適当な方法で建設省あたりが中にお入りになつて起債の方法なり——これが何か起債の方法も許されるようでありますから、中にお入りになつて、これらのおそらく二十万ほどの中に住んでおる人たちのために、方法を今講じていただくことがどうしても必要だと思うのであります。それらについてどういう考えを持つておられるか伺いたいのであります。
  19. 益谷秀次

    益谷國務大臣 率直に申しますると、先般そういう相談を省内で受けたのであります。私それまでその点は知らなかつたのであります。省内で相談を受けまして、省で今これに対する処置を一生懸命に講じさせております。比較的今日の建築から見て、新しくつくるものから見ますると、非常に安いそうでありますが、中に入つておる人たちは、その安は家屋を買うことはできないという事情であつて、非常にお氣の毒だと存じております。しかしながらこれはいろいろ各方面との関係もありまするので、ここで私の考えを申し上げることは、今日の時期においては適当でないと存じております。十分に研究してみたいと存じて、今指図をいたして研究させております。
  20. 林大作

    ○林(大)委員 もう一つ裕福な人たちの大きな住宅、特に私の目につきますのは寺院、この寺院の中でも成田山であるとか、それから豊川稻荷であるとか、こういうつまり投機者流によつて信仰されておつた寺院に参りますと、りつぱに数千疊の住宅になるものが、実はあいてがらんとしております。そうしてこれに対して政府は何ら手が打てない。行つて参りますとまことに寒寒いたすのであります。何とかこれに対してひとつ積極的な利用方法というようなものをお持合せになりませんか、お伺いいたす次第であります。
  21. 益谷秀次

    益谷國務大臣 お答えいたします。寺院のただいまの御質問のことはまだ考えておりません。
  22. 井出一太郎

    井出委員 災害の問題に関連いたしまして、少し建設大臣にお伺いをいたします。これは農林関係のものもございますが、それは後ほど農林大臣にお伺いをすることといたして留保さしていただきます。先ごろ災害対策を予算化するという意味における決議案が全会一致で可決せられまして、政府においても今回の追加予算に六十億を計上いたした。もちろんこれは九牛の一毛であるかもしれませんが、われわれといたしましては解散前に追加予算を出す。給與対策と災害対策はどうでもこれを予算化しなければならぬ。こういうことを叫んで参りました関係から、たとえ六十億でも政府がここへ計上せられたということに対しては、了承をいたしておるのであります。その決議案の提案の説明をいたしました際に、私申し上げたところでありますが、日本の氣候、風土というふうなものにおいては、災害が單なる偶発的なものではない、ほとんどこれは恒常的に毎年々々來るものであるというふうな心構えで施策をしなければならぬと思うのであります。從いましてたとえば、河川の問題を取上げてみましても、昨年のカザリン台風による被害が非常に甚大であつて、しかもそれが予算その他で制約を受けまして、きわめて不徹底な復旧しかできなかつたところへ、今年アイオン台風でさらに大きな災害をこうむつた。こういうふうなことではさいの河原に石を積むにひとしいのでありまして、もう少し腹をすえて、災害というものと取組まなければならぬ段階ではないか、このように考えておるのであります。本年建設省関係で報告されておりまする災害数字というものは、大体五百十七億というふうに伺つておりまするが、これに対して六十億、しかしその中には農林省関係その他も含んでおるのでありまするから、きわめて微々たるものに相なると思いまするが、この程度をもつてしてはたして國土保安が保障せられ、民生がそれによつて安定するものとお考えになりますかどうか、まずその辺からひとつお伺いしたいと思います。
  23. 益谷秀次

    益谷國務大臣 先ほどお答え申し上げました通り、私所管災害に対する補助額は大体三百四、五十億と推定いたしておるのであります。しかしてこれに対しては建設省河川関係方面だけで、今日まで一般公共事業費中から十億以上の金を支出いたしております。さらに短期の金融方面をあつせんいたしまして、二十五億五千万の金を地方に融通いたしておるのでありまして、それで應急の措置をとつて参りました。しかして今回の六十億の災害復旧費のうち、建設省関係の費用は三十八億六十七万円あるのであります。これはもとより補助費としては十分ではございませんが、今日の財政状況から見まして、これ以上補助費増額いたすということはできないのであります。そこで年度内は御承知通り、もう來年の一月から三月までの三月であります。この期間等をにらみ合せまして、最も急ぐべきところの緊急地点復旧に努めたいと存じておるのであります。そうして雪解けを除いて、大体出水期を七月に目標を置いておりまするから、七月の出水期までには、どうにもして國家財政の許す限度において、補助額増額して復旧に努めたいと思うのであります。申すまでもなく六十億の予算では、しかも建設省に割当てられまするところの三十八億六千七百万円では、十分とは申し上げることはできませんが、緊急の地点に対する復旧をこれで努めたいと念願しておる次第であります。
  24. 井出一太郎

    井出委員 砂防の問題について一点お伺いいたします。治山治水と一口に申しまするけれども、從來ともすれば治水という面に重点が置かれて、治山という点がどうも閑却されたのではないかと思うのであります。水を治めまする以上、その源泉でありまする山というものを閑却するわけには行かぬのでありまして、先日來の御答弁の中の、当然山にも重点を置くという大臣の御意見は私もこれを了承しておるのでありますけれども、砂防の問題に関連して從來林野砂防といいますか、この関係は農林省の所管に属しておつたわけであります。一方河川砂防ないしは溪流砂防は建設省所管であるわけでありまするが、砂防の一元化というようなことが近時叫ばれまして、建設省へ一元的に砂防行政を持つて行くというようなことを仄聞しておるのであります。この点私は單に堤防工事をすれば、それで水が治まるのだというような感覚をもつてして、はたしてよろしいものであるかどうか、もつと塞源的に日本の山を青くし、水源を涵養するように、根本施策が打立てられなければならぬと思うのでありまして、この点については、私はやはり林野砂防は從來通り農林省がやるべきものだ、このように考えるのでありますが、ひとつ建設大臣のこの点に関する御所見を伺いたい。
  25. 益谷秀次

    益谷國務大臣 お説のごとく、山を治めて川を治めなければなりません。從つて治山治水とも完全にいたさなければ、防災の目的を達することができないのであります。しかして今月は建設省といたしましては、いわゆる溪流砂防をいたしまして、農林省は傾斜砂防と申しますか、そういう方面のことをいたしておるのであります。國会におきましてもいろいろのお説があるように聞いておりますが、すなわち本年の七月でありますか、建設省の官制案が出た際に、砂防などのことは一元的に建設省において取扱うべきものであるという意見もあつたように拜承いたしております。私といたしましては、建設行政は建設行政で一元化しなければならぬと思うのであります。思いますが、從來いろいろのこれまでの経過があります。從つて私だけの考えではどうすることもできないのであります。私の考えでは、國会において適正に判断せられて、どうしたら最も國家の行政をなめらかに運行して行けるかという建前から、國会が主として決定せらるべきではなかろうかと思うのであります。もとより政府といたしましても、なわ張りというような考えを離れて、國家再建のためにどうすればよいかということは、今後の問題として取扱いたいと存ずるのであります。
  26. 井出一太郎

    井出委員 砂防一元化の問題に対しまして、大臣は國会へ責任轉嫁をされたと言いましようか、たくみにお逃げになつたように思うのであります。私はこの際、大臣御自身の御意見というものを伺つておきたいのであります。
  27. 益谷秀次

    益谷國務大臣 私は國会に責任を轉嫁したという意味は毛頭ございません。建設省の官制案が審議せられた際に、いろいろ建設行政に対しては一元化ということが問題になつたというように聞いておるのであります。從つて國会のお考えはどこまでも尊重いたして参らなければならぬのであります。從つて國会の方面においても、十分に國家再建のためにどうすればよいかということを、お考えになつておると私は信じておりますと同時に、私ども政府といたしましても、なわ張り爭いというようなちつぽけな感情を離れて、どうすれば國政をなめらかに運行することができるかという建前から、十分に研究いたしたいと考えておるのであります。かような意味でお答え申し上げた次第であります。私個人といたしましての意見はどうかと仰せになつたのでありますが、砂防というような專門のことは、私あまり承知いたしておらないのであります。大づかみに國家の行政とかいう方面研究いたしますが、砂防の実際のことはまだよくわかりません。しかしてどうすればよいか、農林省がやるべきか、建設省從來のようにやるべきかということは、まだ私自身、個人の意見が決定しておりません。
  28. 井出一太郎

    井出委員 それではもうこれ以上は追究申し上げません。  そこで災害の問題が出ましたので、ちようど運輸大臣がいらつしやいますので、お伺いします。國鉄等においても、本年の災害は相当な額に上つていると思うのでありますが、そのおおよその輪郭をお示し願いたい。同時に運輸省の独立採算制でありますが、その範囲でもつて、一般会計の方へは累を及ぼさないで復旧が可能でありますかどうか、かような点をひとつお伺いいたしたいのであります。
  29. 小澤佐重喜

    ○小澤國務大臣 井出さんにお答えします。本年の運輸省関係における災害は全國的に非常に多数に上つたのであります。これに対するいわゆる仮工事的な復旧というものは、ほとんど全線終りましたが、現在未完了になつているのは岩手縣の山田線だけが未開通になつております。その他の部分はいずれも仮工事が完了いたしまして、平常通り列車を運轉いたしているような次第であります。この仮工事の費用は國庫の予備金でいたしておるのでありますが、これが根本的な復旧ということになりますと、約十九億余りの予算がいるのであります。御承知通り、鉄道の損益勘定におきましては、すでに一般会計から二百九十何億の繰入れを願い、ことに今度の五千三百何円というベースに基く増加額も、やはり一般会計の財源でこれを補うことになつておりますので、当然ただいまの災害復旧を根本的にやる財源というものは、一般会計でお願いするよりほかないのでありますが、本予算にはこの十九億というものは計上されておりません。おりませんが、予備金の余り等におきまして、この仮工事から本工事に移る部分は、資材資金等の面から申し上げましても、大体今年度では一億円程度の工事しか進行できないのでありまして、この一億円程度で工事を進めますれば、ほとんど本年度中には現在の資材資金面から照し合せますと、その程度仕事しかできないという見通しであります。從つて現在御審議中の予算には計上しておりませんけれども、計上していないからといつて復旧が遅れるというような実情になつておらぬことを御了承願います。
  30. 宮幡靖

    宮幡委員 私のお伺いいたしたい諸点については、総理大臣の御出席をぜひとも求めたいのでありますが、本日お見えになりませんから、これを保留いたしまして、おもに御出席の大臣、また大臣のお見えにならない場合は、政府委員からでけつこうであります。きわめて短かい時間をかりて質問さしていただきたいと思います。  まず第一にインフレを克服するという問題につきましては、歴代の内閣がこれを実施面に移したといなとにかかわらず、努力を重ねて参りましたことは、一應は認めなければならないと思うのであります。ただいまの実情を見ますると、御承知のような金詰まりという面が大きく浮び上つて参りました。これを結果から考えてみますと、インフレの克服がひとり通貨面にのみ打たれて來たのではないか、かようなことが思い浮ぶわけでありますが、われわれの考えといたしましては、インフレの克服はあくまでも生産第一主義でなければならない。もつとこれを極論いたしますならば、通貨の増発というものは必ずしもインフレを意味するものではない、こういう考えさえ持つております。増発せられました通貨がやみ市場に流れました場合は、それは恐るべき結果をもたらすことは明らかな事実でありますが、幸いにいたしまして、これが生産市場に流れました場合には、生産を促進いたしまして、インフレを克服いたします原動力となることもまた確信いたしておるものであります。かような意味におきまして、まずもつてやみ市場へ流れる資金を抑圧します第一の工作は、統制を撤廃し——統制がなければやみはないのであります。統制があるがゆえに生ずるやみ、せつかく生産資金として國家が放出します通貨が、やみ市場に流れてインフレを促進する。これを恐れて通貨面に手を打つ、かようなことになりますと、現在のような金詰まりが現われて來るのではなかろうかと存じます。現政府はつとに生産第一主義を発表しておりますが、通貨政策に対しまするところの今後の御施策について、抱懐せられまする御施策をお示し願いたいと思います。  これに関連いたしまして、しからば通貨をむやみに増発して、しかもそれでインフレが高進しない、かように考える行き過ぎを是正することもまた必要だと考えます。あらゆる國営事業の民営化、これを主題に取上げまして、しばしば檢討してみましたところ、まず前國会におきまして通過いたしました日本國有鉄道法、かようなものにおきまして行政と企業の切離しは一應できたわけでありますが、われわれの待望いたします民営化には一歩も進んでおりません。もし企業と行政を切り離しまして、眞に民主的な鉄道の運営をいたしますとするならば、この資本構成におきまして、まず第一番に民間資本を取入れることが必要であろうと存じます。具体的に申すならば、日本國有鉄道に持込みました國有財産の半額くらいを株式化し、民間に放出いたしまして、あらゆる階層にこれを保有せしめまして、しかも一人の資本家が多数を占めて、企業の経営権を独占するという弊害を押えるために、一人の保有株は一千株を越えない、かような制限をもつて、しかもその株式は無決議権株といたしまして、これに対しまする配当は時の市場金利を見きわめまして、毎年審議会等におきまして決定し優先配当政府財政に余裕を生じました場合は、これを買入償却をするというようなあらゆる方法を講じまして、その上にこの日本國有鉄道の運営は、半分は民選されましたところの委員によつて、管理、経営されるようにいたしまして、その民選さるべき委員は、まず國民代表あるいは業者代表あるいはその他の專門代表等を取入れまして、政府の機関とともに審議決定し、運営の万全を期する、かような方向に参りますると、まず國有財産を放出いたしまして得ましたところの資金というものは、これはあらためて財政還流を起しません。具体的に申せばこれを日本銀行で燒き捨ててさしつかえない札になるのでありまして、通貨の膨脹はおのずから縮減せられて参りまして、われわれの年來考えておりまするインフレ克服が、生産第一主義であるということとあわせて、通貨の面にも積極的な收拾策が講ぜられるように考えられますが、この点につきましての所管大臣の御答弁を伺いたいと思います。
  31. 塚田十一郎

    ○塚田政府委員 お答え申し上げます。宮幡委員の御質疑の中で、大藏省に関係いたしましての部分だけ、大藏省の立場について簡單にお答えいたしたいと思います。  生産第一主義の行き方と、金詰まりをどういうぐあいに打開するかという御質問であると存ずるのでありますが、御指摘のように、金詰まりが今日のように非常にきゆうくつになつて参りましたのでは、この生産第一主義が十分に実行されないということを私どもよく考えております。從つて何とかして金融の面をできるだけ打開して、梗塞をゆるめて行きたいという考え方は、内閣成立以來、いろいろな機会に大藏大臣から言明申し上げておる通りであります、ただこれをゆるめます場合に、この方法が非常に困難なのでありまして、ただいま宮幡委員からやみに金を出さなければいいじやないかというようなお話であつたのでありますが、私どもは必ずしもそうとは思つておらぬのでありまして、結局統制経済というものがなくなりまして、やみというものがないということになりましても、金の出し方次第でこれが思惑資金などにまわるということになると、やはりインフレに非常に惡い影響を與える。そこで出しましたものが、ほんとうの生産に役立つということに見通しを十分つけてから金を出すのでなければ、どうしても金融をゆるめることによつてつて來る利益よりも、弊害がよけい出て來るということで、この出し方も健全な産業に健全に使われるような見通しをつけた場合のみに金を十分に出して行く、こういうぐあいになるべくやつて行きたいと考えておる次第であります。ことにこの金の出ます場合に、私どもが幾らか金をゆるめたいと考えておりますもう一つの考え方に、御承知のように金が出ます場合に、財政資金の場合で非常に出ますものと、産業資金の場合で非常に出ますものと道が二通りある。そこでインフレに惡く影響しますのは、これはむしろ財政資金の面から出るものに強い惡い影響があるように考えられます。この二つの点をあわせ考えまして、財政資金の面はなるべく時期的に支拂い超過の起らないようにいろいろくふうして、そうして余りましたものをできるだけ多く産業資金の面にまわし、そうして産業資金にまわされる資金は今申し上げましたように、その使われる方向を誤らないようにということで金融をゆるめますことが、そのまま生産第一主義に直結するようにということを一生懸命考えて、施策をいたしておる次第であります。
  32. 小澤佐重喜

    ○小澤國務大臣 日本國有鉄道を民営にすることがどうかというような御意見のようでありまするが、申すまでもなく、官営と民営との事業上のいわゆる巧拙というようなものは、いろいろな意味において考えられますが、私どもといたしましては、現在の日本の官業営業というものは非常にむだが多いと思う。そういう意味で現在のような欠損続きの、すなわち換言いたしますれば、独立採算制のとれないような國有鉄道は、その点だけを考えますると、まず民営に行くことが至当ではないかと考えておるのであります。しかしながら日本國有鉄道の古い歴史あるいは使命というものは、ただ経営の合理化あるいは独立採算制という点だけではなくいたしまして、たとえば日本産業開発のため、ある場合においてはマイナスの経営でありましても、これを將來開発という意味で、これに投資をして開発するというような大きな使命も持つて來ておるのであります。ことにそうした線から五十数年間の國営という大きな歴史もありまするので、根本的な考え方といたしましては、ただいま申し上げました通り、民営の方がむだがなくてよいと考えますけれども、日本國有鉄道の特異性あるいは長い歴史等の特徴というものも考えながら、そうしたいわゆる経営に非常なプラスになる運営方法を考えて行きたいと思つております。
  33. 宮幡靖

    宮幡委員 ただいまの大藏政務次官並びに運輸大臣の御答弁にきわめて満足するものであります。続いて一点伺いますが、本日の新聞紙上を見ますと、安本の内田財政金融局長の名におきまして、税の負担力に余裕ありと書いてあります。この点につきまして眞劍にひとつお伺いしたいと思います。内田局長の話されましたことは、私予算委員の一員といたしましてここで伺つております。新聞に書かれた通りであるとは思つておりません。しかしながらもし記者團に発表いたしましたことがさような話し方であるならば、これは重大なことであろうと考えるのであります。ただいま上程されております補正予算におきまして、税の自然増收が四百十億くらい見積られておるのでありますが、この四百十億の見積り方につきましてはいろいろ見解を異にいたしまして、先般來御質問がありました同僚委員の方々は、これは水増しだと言つております。しかし私どもはこの見積り方が自然に対してあまりに少いのじやないかと思つております。なぜならば、昨年片山内閣当時の追加予算にあたりまして、日本財政史始まつて以來だと、私は当時財政及び金融委員会において大藏大臣質問いたしたのでありますが、四百六十億六千万円という税の自然増收を計上して予算を組んで、しかも決算の結論といたしましては、三月三十一日に上程し、四月三十日までに納付されたものにおいても百八億の自然増收がまだあつたのであります。かような意味におきまして、現在の政府はあまりにも税の自然増收ということについて、外部からの水増しであろうというような声に押されまして、臆病に考えておるのではなかろうか。特に私どもは取引高税の撤廃ということは常に國民に訴えて参り、ただいま取引高税を廃止するところの財源の三十億や五十億というものになんで苦しむのかとさへ言わざるを得ないような実情にあるのでありまして、取引高税等を廃しましても、あえて前内閣がやりました、あるいは前々内閣のやりましたような苛斂誅求、苛酷な方法でなくとも、税は当然入つて來ると私は考えておる。それでありますから財源に苦しんで取引高税の撤廃を延ばすというようなことはおやめを願いたい。ぜひともこの際断固一月一日から廃止するのだということを具体的に言明をしていただきたいと思う、大体税の負担力に余裕ありなどという考えは私は疑わざるを得ない。なるほど税は利益があればかくべきものであります。しかし利益の中には名目利益と実質利益とあるのであります。これを國民生活に密着して考えてみますれば、理想から申せば名目利益に課税すべからざるものであります。しかし國家財政の見地からいえば、実質利益のみに課税するということはとうてい不可能なことであります。われわれは名目利益に課税することさへ忍んでおる。われわれのみでなく、國民が忍んでおるのであります。この点についてまだ國民に負担力があるかというなら、われわれは租税に対する國民の負担力は限界を超えておると思う。どうしてもこの際國民負担の軽減をはからなければならぬということを前々議会以來叫び、國民大衆に公約して参つたのであります。しかるにまだ余裕があるなどという見解のもとに國民に対せられますことは、われわれは國民の代表といたしまして、とうてい納得が行きません。何がゆえにさような余裕があるのだ、この点特に安本長官の確固たる御回答を得たいのでありますが、本日御出席がありませんから、政府委員からでけつこうでありますが、ぜひともこの点を明らかにしていただきたい。このいわゆる名目課税ということについて、もう少し眞劍に考えていただきたい。百円の原料を仕入れてこれを百五十円に賣つて、五十円の利益があつたと仮定して、今度仕入れるとき百八十円なら、三十円の赤字です。しかし税の上でこの五十円に課税しなければならぬというのが現在の実相であります。われわれは税が勤労者に重く、農業者に重く、商業者に軽いというようなことを言うのではなく、國民全体の生活を考える。先日の公聽会において、立場は全官労の事務局長でありますが、御勤務は会計檢査院、しかも國家予算の締め括りの立場にあります会計檢査院に奉職なさつておられる南君は何と言つたか。まだ捕捉できないところの所得が六千億あると言いました。なんのうわ言かと私は言わなければならない。かように國民の膏血を絞つて國家の再建がありましようか。芦田内閣総理大臣でさえ、資本の蓄積がなければ日本の再建はできないと言つた、資本の蓄積の定義はどこにあるか。私は実にこの新聞を見、またわれわれの國民に公約して参りました立場から、この点はぜひとも本委員会において、明らかに廣く天下に政府の考えておるところをお示し願いたいと思います。
  34. 塚田十一郎

    ○塚田政府委員 お答え申し上げます。國民の負担に余力があるかないか、その問題と関連いたしまして、今度の追加予算に組まれました税の自然増收というものは、はたして適当であるかどうかということの質問のように思うのでありますが、私どもは結論から申し上げまして、今度の追加予算に組みました自然増收というものは、当然あれだけのものは予算に計上し得る性質のものである、從つてあれを組みましたがゆえに、決して水増し、それがまた納税義務者の側から申しますならば、所得のない所に税がかかつて行くというような結果になるとは、毛頭考えておらないのであります。御承知のように、今度の追加予算の自然増收の内訳をごらんくださればわかりますように、源泉の分につきましては、給與その他の上りが当然あれだけの増收になるという見通しであります。なお企業所得の面におきましては、多少考え方が違う必要があるのではないかと存じておりますが、本年度の景氣の動きのぐあいから見ますと、はたして昨年度に比較して、企業所得の上に相当所得の増加があるかどうかということは、これは私も御指摘の通り疑問があると思つております。ただ企業所得の場合には、ここに先ほど御指摘のように、まだ所得に税をのがれておる部分があるのではないかという疑点がひとつあるわけであります。そこで結論的にこの点も申し上げまして、捕捉されない所得があるだろうということ、それが先ほど御指摘のように六千億というような数字であるかどうか私も承知いたしませんが、相当程度捕捉されない所得があるだろうということは、私どもも漠然とではあるが考えております。そうしてそういうものがあるということは、実態的に申し上げますならば、これは税務機構の弱体ということが原因しておりまして、十分つかまえるべきものをつかまえられないでおるということになつておるわけであります。從つて今度の企業所得面の申告におきまして、見込んでおります税收の増加というものは、政府といたしましては主としてこういう今まで捕捉されておらない部分について一層税務機構の充実と、それから査察制度の活用などによりましてこれを捕捉して、これを予算に一ぱいの額まではぜひ取上げたい、そういうふうに考えておるわけであります。そこで繰返して申し上げたいと存ずるのでありますが、今度のあの追加予算におきましても、自然増收の計上によりまして、絶対に國民の皆さん方に、所得のない所へ税をかぶせるというような考えは毛頭持つておらぬのであります。從つてもしも第一線の税務の実務の運用上、そういうような実例が起つたといたしましたならば、法の許しておりますいろいろな救済手段、たとえば再審査の申請を積極果敢にお出し願つて、それに対しまして第一線当局にも十分注意して、親切にそれらの御異議を取上げる、そうして納得の行く線において納税を決定するようにして、そういうあやまちのないように是正して参りたいと考えております。  次に名目所得に対して税をかけるのはけしからぬじやないかという御指摘のようでありますが、これは御説にまつたく同感であります。私も野党時代からそういう主張を強くいたしておりまして、これは何とかいたさなければならない。これが強くなりますと、だんだん企業者に対しましては結局企業の基礎を傷つけ、それがやがて國家財政の基本をくずすということになりますから、これは何とかしなければならない。このことは二十四年度の新しい予算を組みますときは、必ず取上げなければならない問題の重要な一つであると考えておりますが、ただいままでのところ、今日のような税制でやつて参りました行きがかりもありまして、これは今度の追加予算の段階、それからして來年三月までの運用におきましては、運用の点に相当留意をいたしまして、なるべくそういうような弊害の起きないように、何とかとりはからつて行きたいと、かように考えている次第であります。
  35. 内田常雄

    ○内田政府委員 ただいま宮幡委員からお話のございました財政金融局長の内田でありますが、その新聞を私見ておりませんし、また宮幡さんのお言葉の中にも、新聞の通りお前がしやべつたとも思わないと言われましたから、安心をいたしました。昨日川島議員から今度の追加予算に盛られている四百八十七億という税金は一体どこからとるか、とれる余地があるかどうかという大藏省に対しまして鋭い質問がありましたが、私は大藏省の税をとる立場ではなしに、安定本部が國民所得の総合計算を最近新しくしてみた上からお答えをいたすのでありまして、簡單にもう一度申し上げますと、今回十一月の物價、賃金ベースで國民の全所得を計算すると二兆三千九百億ある。ところが今度の四百八十七億の税金を加えた今年の予算における税金総額は三千百六十億くらいでありまして、これの課税所得を換算してみますと、それが大体九千億あまりである。もつともこの所得は基礎控除とか、免税点とかを落してしまつた直接の課税標準所得であるけれども、國民所得の全般から見ると、さような所得金があるのだということである。なお今回の十一月の物價、賃金ベースで計算をいたしました國民所得に対する國税の割合は十三、二%である。しかるに六月の物價賃金ベースで算定をいたしたところの國民所得と、当初予算における租税の二千六百七十七億とを対比した割合は十四%であつて、十一月の物價賃金ベースにおいて、物價も賃金も高くなつているということから行くと、今度の補正予算における税金を含んでも、むしろこの税金は下つている。このところから見ると必ずしもとれない税金ではない。むしろ國民所得から見ると、そこにとれる余地があるものと数字上の大局判断から考えられるわけでありまして、むりをとつているかどうかということについては、さような意味で申し上げましたことなので、何とぞ御了解を願いたいと思います。
  36. 小澤佐重喜

    ○小澤國務大臣 今宮幡君の御質問中、取引高税の問題があつたのであります。これは私の所管ではありませんけれども、國務大臣といたしまして関係しましたから、その知る範囲においてお答えをしたいと思うのであります。ただいまのこの取引高税の廃止ということは、民自党の公約であることは皆さん御承知通りであります。從つてこの政府が成立いたしましてから、党の方からあらためてこれを廃止するような要求があり、ことに話がだんだん進みまして、党側から政府に対しまして、法案は議員提出法律案として一月一日から廃止する法案を國会に提案をするから、政府はぜひ財源を見つけてくれというお話があつたのであります。その線に沿いまして、政府としてはいろいろ財源の捻出方法を檢討しました結果、どうにも一月一日ということになりますと、ちようど三月だけの歳入減になりますから、最後の線で三月一日からこれを廃止する。すなわち一箇月分の財源だけを捻出いたしたのであります。從つてもしこの民自党提案になりました議員提出法律案が國会で審議されることになりますれば、政府はこの一月一日から施行ということには困りますけれども、三月一日から廃止するという案でありますれば、同意をいたす用意ができておるのであります。しかしこれは第三國会の当初の問題でありまして、すでに会期が終了いたしましたから、一旦それは廃案になつておると思うのであります。もし本國会にもそういう提案がございまして、この國会でその法案が審議されるような事情になりますれば、いつでも政府は三月一日から廃止する財源は用意がございますから、どうぞ党提出の法律案を具体的に審議にはいられるように御盡力を願いたいと思います。
  37. 上林山榮吉

    ○上林山委員長 この際、昨日竹谷委員より船員ストに関し質疑があつたわけでありますが、政府委員の答弁を保留してありましたから答弁を求めます。岡田海運局長。
  38. 岡田修一

    ○岡田政府委員 海員のストライキの影響につきましてお答えいたします。海員の第一次ストライキは、十一月二十九日の零時から三十日の二十四時まで四十八時間ストを実施したのであります。そのストライキ実施中にとまつた船がありまして、夜の荷役を拒否した船が六十隻、出港を拒否した船が九十隻、合計百五十隻であります。これによる海上輸送の影響は北海道炭の四万トン、九州炭の三万トン、その他合せまして八万トンであります。次に第二次ストといたしまして、四日の零時から本日の二十四時までの五日間のストにはいつております。このストによる夜間荷役の拒否権が九十一隻、出港を拒否した船が百八隻であります。これによりまして推定されまする輸送の影響は約二十万トンであります。現在までに判明いたしておりまする各産業への影響は、硫化鉱の輸送がとまりましたがために、関西以西の肥料工場が相当程度操業を短縮しなければならぬ状態にあるようであります。それから京浜地区の主要工場でありまする東京瓦斯、日本鋼管、日本発送電、秩父セメント、昭和電工、これらの工場の石炭量を見ますると、相当きゆうくつなる状況にありまして、今後これが継続いたしますると、遺憾な事態になるのではないかと考えるのであります。名古屋以西の石炭事情は今のところそう惡いとは言われません。ただ鉄道用炭の船川方面、伏木方面が若干きゆうくつになつておるようであります。これらに対しましては運輸省といたしまして、一部陸送によりまするとともに、また機帆船輸送に振替えまして、事態の切拔けに努めておる次第であります。なお今後の見通しといたしましては、このストライキが一週間以上も継続するようなことになりますると、大多数の船が港湾にくぎづけになりまして、その影響が相当大きくなるのではないか。ことに第二次ストにおきまして、港に入つておる船で荷役中のものは、荷役を継続しておつたのでありまするが、最近になつてバースで荷役が済んで、その船をシフトする場合に、シフトを拒否する傾向が出ております。從いましてあとから入つた船をバースにつけることができないで、荷役が停止するというふうな状況になりまして、ストの傾向が漸次深刻な形になつてつておる次第でございます。
  39. 上林山榮吉

    ○上林山委員長 これで休憩いたしますが、一時半より理事会を開催いたしたいと思います。委員会は二時から開きます。     午後零時四十九分休憩      ━━━━◇━━━━━     午後二時十七分開議
  40. 上林山榮吉

    ○上林山委員長 休憩前に引続き会議を開きます。  質疑に入ります。宮幡君。
  41. 宮幡靖

    宮幡委員 先に御質問申し上げまして、まだ御回答が確定しないうちにちようど休憩になつたわけであります。今度は大藏大臣が御出席であります。前回の質問と関連があるかどうかと実は心配しておるわけでありますが、同時にわれわれといたしましては、大藏大臣、安本長官、その他主務大臣に対して大勢の質問があるわけでございます。他党の方の御質問との関連あるものはこれを省略しまして、午前中の質問で、まだ結論に達してない部分だけを、きわめて短かい時間にお尋ねいたしたいと存じます。午前におきまして税の負担力に余裕があるという問題と、安本の内田財政金融局長が新聞紙上に発表されたことについておただしいたしまして、若干御回答があつたのでありますが、この点についてはまだ満足な答弁を聞かないわけです。しかしこれは保留といたしまして、次に簡單なことでありまするが、大藏大臣に一言お尋ねいたします。  先ほどは名目利益に対する課税と、実質利益に対する課税についてのお尋ねをいたしました。塚田大藏政務次官から適切な御回答をいただいたわけでありますが、もしわが党の生産第一主義の政策が進行して参りますと、おそらくデフレ傾向が生ずる。その場合におきまして、課税の利益は捕捉できても、実際において税金が納められない、滯納続出の状態が生れて來るものと想像されます。そこで大藏当局といたしましては、かかる場合におきましては、一般の税に対し、ことに所得税、法人税等に対しまして物納を認める用意があるかないか、この点をお伺いいたしたいと思います。おそらく物はあるが札がないという事態が來るのではなかろうか。すでに大藏委員会で資料を要求いたしまして調査いたしましても、滯納額は金詰まりによつて非常に増加して行く傾向があります。これに対処いたしますのには、どうしても物納という制度を開く以外に道がないように考えられておるわけであります。この点について、泉山大藏大臣の御所見を伺いたいと思います。
  42. 泉山三六

    ○泉山國務大臣 お答えいたします。ただいまのお話はなるほど現在におきまして、さようの要望のあります向きは多々あるやに考えられるのでありますが、今日といたしましては、税の物納、かようのことはまだその段階にまで達しておらないのであります。がなおただいまの御質問もありましたので、よく研究してみたいと考える次第であります。
  43. 宮幡靖

    宮幡委員 それでは最後に集約して一点だけお伺いいたしますが、われわれの考えておりまする行政整理ということは、日本の再建上欠くべからざる一つの政策であります。これを断行する方法と時期につきましては、もちろんいろいろと議論もありましようけれども、やらねばならない。かようなことは現実でありまして、すでにこの点もわれわれは國民大衆に公約いたしておるわけであります。そこでその行政整理の裏づけをなすものは、失業対策でありまして、この失業対策なるものは一面におきましては、公共土木事業等に吸收するという手もありましようし、またその他いろいろの構想がございましようが、われわれが第一番に期待しておりますのは、生産の起ることによりまして、淘汰されました労力をその方面に吸收し得る。これは失業対策の根本的のものであろうと考えております。しかしながら行政整理を行つて生産が起つて來て、その過剩労力を吸收し得る事態までには相当の時間的のずれがある。あるいはそこに間隔と申しますか、とにかくやめて生産がすぐ起るという事態は予想されないのでありますが、さりとて行政整理を便々と引延ばすことはできないのでありまして、そこで考えられますことは、この際一應私どもの考えておる面におきますると——その割合は申し上げることは差控えまするが、ある程度の行政整理を行いまして、そうして失業保險の範囲内において生活を保障できるとは考えておりませんので、これに対しまして適切な、少くとも一箇年あるいは一箇年半の最低生活を保障できる退職手当を支給する。その財源につきましては、もちろんただいまの日本財政事情といたしましては、われわれ單独の考えをもつて行うことができません。遺憾ながらその方面の御了解を願うことでありましようが、整理公債というようなものを発行いたしまして、しかもこれを短期三箇年くらいの整理公債を発行いたしまして、そのうち半額は退職手当として一年半くらいの生活を保障する。三箇年間にこの過剩財源をもちまして、これを償還し得る方法によりまして、行政整理を断行することが適切ではなかろうか、かように考えております。この点につきましての大藏大臣財政的見地からの御所見を伺いたいと思います。
  44. 泉山三六

    ○泉山國務大臣 お答え申し上げます。行政整理の問題は、ただいま宮幡さん御指摘の通り、今日財政上におきましても、最も重要なる課題の一つであります。これが断行は今日の問題として、これを取上げるべき要請に迫られておるのでありまするが、ただいまも御指摘の通り、その裏づけといたしまして、失業対策もしくはこれに準ずべき適切なる方策を裏づけせざる限りにおいて、軽々にこれを行うことは許されないのは、これまた当然であるのであります。そこで問題はただいま御指摘の通り生産第一主義の要請から、その面に過剩労働力の吸收、かようの構想のもとにその失業対策も展開する。かように政府においても考えてはおるのでありまするが、ただいまも御指摘の通り、その間の時間のずれと申しましようか。さようの点に深く留意いたしまして政府におきましては目下行政整理の具体案につきまして、鋭意研究を重ねておる次第であります。その結論はいまだこれを得ておらないのでありまするが、ただいま御指摘の通り、一應失業者がやむを得ず出て來る。少くともさようの形に相なる場合には、その退職手当につきまして、これまた政府におきまして十分考慮を用いまして、あるいはそのためにはその名目のいかんにかかわらず、あるいは整理公債という構想も当然生れて参るかと思うのでございます。以上お答え申し上げます。
  45. 宮幡靖

    宮幡委員 それでは他の質問は全部差控えまして、ただ一点希望を申し上げておきます。海外同胞の引揚げ促進の対策につきましては、わが党といわず、われわれ非常な関心を持つて從來努力して参つたのでありますが、聞くところによりますと、ただいま就職しております三十二はいの引揚船、これがソ連の現地の方に参りまして、帰還者を乘せて來る場合において、一方では五千人を引揚げさせようとする場合に、日本の方の準備の食糧は二千五百人分くらいをかないために、二千五百人を残留せしめたというような事実のあることを聞き及んでおります。これは直接聞いておるのであります。かような引揚げ促進対策とまつたく相反するようなことのないように、この点適切に解決をしていただきたいことを希望いたしまして、私の全部の質問を省略して、これで終ることにいたします。
  46. 上林山榮吉

  47. 竹谷源太郎

    竹谷委員 私は昨日大藏大臣に少しく質問したのでありますが、具体的な問題を聞いておるのに、時間的、空間的において十分考慮するとか、あいまい模糊として捕捉すべからざる御答弁であつたことを、はなはだ遺憾に存ずるのであります。そこでいろいろむずかしい問題は端折りまして、私はどうしても大藏大臣にただしておかなければならぬ二、三の点だけ質問を続行したいと思います。  一つはまず官廳職員の待遇費の財源となつておる問題でありますが、予算に現われた歳出節約額約百十億円が計上されておりますが、この内容を見ますと、そのうち七十八億円だけは人件費の節約額であります。この節約が可能であるかいなかということについては、先般の公聽会の席上、加藤閲男君並びに南磐男君に対してただしておいたのでありますがやはりこれらの人々もそのような節約は不可能であろうというような大体の結論の意見の発表があつたのであります。そうなつて來ますと、このほかに表面は二百六十二億円の給與改善費が計上されておるが、そのうち七十八億円はほとんど節約不可能の問題であるということになつて、これは除外しなければならぬ。それからまた地方財政において二百六十二億円の中には地方職員の待遇改善費も含まれておるのであるが、これに対して地方の人件費から約四十三億円ばかりの人件費の節約を計上しなければならぬ計算に相なつておる。そうするとこの七十八億円に四十三億円、そのほかに給與改善に伴う所得税の増加四十七億円、こういうものを差引いて見ますと、結局残るところは二百六十二億円の待遇改善費と称しながら、実際は百五億円くらいしかない計算に相なつて來るのであります。そうするとそれを割当てて見ますと、結局一千五、六百円の待遇改善費と称しながら、実際は八、九百円の待遇改善にしかならない。五千三百円ベースと称しながら、実際は四千六、七百円にしかならないということになりまして、いわゆる羊頭を掲げて狗肉を賣るのでありまして、まつたく実際問題として、昭和二十三年度の決算に現われる結果としては、結局年度末においては最後の一、二箇月分の俸給が拂えないことになりやしないかということを非常におそれるものであります。これは決して架空な抽象論ではなくて、現実の問題であるので、大藏大臣はこの点愼重に答弁をしてもらいたいと思います。現実の問題として、とうてい今日の三千七百九十一円では食えません。どこの官廳でもそれぞれなるべく可能な範囲内において、職員がどうにかやつて行けるように、できるだけ考慮を拂つておるということも知つておる。またそれが親心として当然であると思う。そのためにあるいはいろいろな名目において、人件費をまかなう支出に対して相当の支拂いをしておる。すでに相当予算に食い込んでおる。すでに十二月中に本年度予算を食い込んでしまうような官廳のあることも私は耳にしておる。たとえば大藏省のごときは最近に二号俸上げておる。そうして四月から増俸することにしておる。そういうことによつて何とか食えるようにしなければならぬ。これは実情が食えないのでありますから……。それからまた特別時間外超過勤務手当あるいは特殊勤務手当あるいは特殊勤務手当の問題につきましても、ほとんど出拂つて、今後超過勤務をいたしましても一文も支拂えない。こういうことで労働搾取が行われるというような情勢であります。こういうことを考えてみますと、五千三百円ベースの問題は、わずかにその半額ぐらいしか実際に職員の待遇改善にならぬという結論に到達すると私は思うのであります。まずこの点について大藏大臣の所見を承つておきたいと思います。
  48. 泉山三六

    ○泉山國務大臣 お答えを申し上げます。まず第一に、人件費節約についてでありますが、これは今日三千七百九十一円ベースに対しまして、地方におきましては、事実上相当の開きのあるところがあるのでございまして、その向きに対しまして、今回國家公務員法の趣旨に基きまして、それを全國一律にある新しい基準にもどした、かようなことであるのでありまして、実行上にさしたる支障を來すものとは考えておらないのであります。何もこれまで給與いたしたものを取上げるというようなことではないのであります。從いましてただいま竹谷さんの御質疑の点は、決して七十幾億か減るものではない、さように御了承願いたいのであります。  なお給與のはね返りの税金につきましては、一應それだけのものを取上げるという形にはなつておりますけれども、他面におきまして新給與によつては実質賃金の上に相当の向上のある点を御考慮願いましたら、新しい五千三百三十円の新ベースは適切なものである、かような結論に相なることを御了承願いたいと思うのであります。
  49. 竹谷源太郎

    竹谷委員 私の聞いておりますのは、そうではなくて、政府、職員において七十八億円の人件費節約額を計上してあるが、実際七十八億円の節約ができるような予算の余裕があるかという具体的な問題であります。  それからもう一つ今答弁のあつた地方財政でまかなうべきところの地方職員の節約額四十三億円の問題でありますが、これは実際問題としては必要なだけ上つておる俸給を今度は減俸をする、今まで出しておつた分を吐き出させなければならぬという実情も、地方職員についてはあるのであります。それから政府職員については、いわゆる七十八億という実人員と予算定員の開きの予算額は、すでに残つておらない。残つておらないから、そういうものを見込んでも、実際の待遇改善にはならぬ、こういう話でありまして、大分的はずれであります。その点御了解が行かなければ政府委員から答弁してもらつてもいいのであります。大藏大臣がこれ以上具体的な内容がわからぬとすれば、政府委員から御答弁を願います。  なお今岩本國務大臣が見えておりまするから、地方財政のことを両方から聞きたいと思うのであります。今回この予算において、配付税として百一億計上されておる。この配付税というものは國家の税金を特に地方にわけ與えてやるという恩惠的な税金であると大藏当局は考えておるのじやないか。これはさような性質ではなくして、いわゆる所得税の二十幾%という一定の法律に基く比率によりまして、これは当然に所得税、法人税及び入場税、こういうような税金のパーセンテージに從いまして、地方自治團体の税金をかわつて國家が徴收するにすぎない。そういう性質である配付税が百一億円、それに対しまして地方では恩給の増額とかその他所要の経費が二十億以上ある。これは大藏当局もすでに認めておるところであります。それからまた地方職員の改善のために七十六億円というものが必要である。これも大藏省で承認しているところであります。ところがそのほかに今回の財源に、地方團体から三十五億円の償還をさせるという償還金の歳入が見積られているのでありますが、この償還金は昨年の給與改善にあたりまして、五十幾億円の金を政府が本來ならば、補助金として支出すべきものを貸付金として地方團体に貸付をした。その五十幾億円のうち十八億円ばかりは本年度において償還するのでありますが、あとの三十五億円を昭和二十四年度並びに二十五年度の二箇年において償還するという契約で政府から地方團体が借り受けている。この三十五億円、すなわち來年及び再來年において返すべき金を、今年の予算で返させるということは、政府地方團体とがいわゆる契約を結んでいるのでありまして、政府が一方的に返せと言つても、片方は來年もしくは再來年までに履行すればいい債務でありますから、地方團体としてはこの三十五億円を償還する義務はない。地方團体が拒否すれば、一文も政府收入になつて來ないという金である。とにかく給與引上げのために七十五億円、償還金として三十五億円、そのほかに当然必要なる法律上の義務とも称すべき二十一億円、これを合計すると約百三十一億円になります。この百三十一億円に対して配付税が百一億円しか行かないから、すでに地方團体としては財源が二十億円だけ足りない。それに対しまして政府地方團体の人件費の給與節約額として四十二億五千万円を見積つているのでありますが、これは大藏大臣が先ほど問わず語りにおいて、私から地方職員のことは一つも質問しておらぬのに、地方職員にすでに拂つた金を返せという意味ではないということを答弁している通り、この地方團体職員の給與節約額四十二億五千万円というものは、すでにそれぞれその必要によつて支給されてあるものであつて、もしこれを強硬にやるということであれば、この四月以降地方團体職員に支給したる給與を返させなければならぬということに相なつて來るのである。なぜかと申しますと、地方財政でまかなうべきところの人件費は、御承知通り警察官、あるいは中等学校その他の教員の給與があります。これはおのずから他の地方職員とは待遇が違うのでありまして、警察官においては大体三割一般職員よりも給與が多い。それからまた中等学校の教師などはずつと高い。それにもかかわらず、同じ三千七百円ベースということで行つておりますから、当然これはまかなえないのがあたりまえであつて、当然の必要からこれを支給しておる。それをいまさら三千七百円ベースのときにそれより高かつたからといつて、それを削つて返さして節約に充てるというようなやり方は、事実まつたく不可能だと思う。そうなつて來れば、この四十二億五千万円というものは、見込みをいたしましてもこの節約は全然不可能だということになりますと、この政府に償還する二十五億円というようなものは、償還不能に陷りはしないか。從つて今回提出された補正予算はきわめて杜撰きわまるものだ、まるでうそ、でたらめをもつてこの予算編成された、こうわれわれは断ぜざるを得ないのでありまして、この点に関しまして、大藏大臣と岩本國務大臣と双方からの御答弁を承りたいと思うのであります。
  50. 泉山三六

    ○泉山國務大臣 お答え申し上げます。まず先ほど來お尋ねの人件費七十八億円の節約につきまして、いろいろ承れば地方財源におきまして同額の節約を必要とするかのごときお話でございましたが、それは多少的はずれのように思うのであります。つまり新しきベースになりますと……かようのことでございまして、古い賃金を削る、さようのお言葉がありましたが、さようのものではないのであります。以上御了承を願いたいと思います。  なお地方の貸付金の回收につきましては、いろいろ地方に対しまして、今回中央よりの財政的な援助が與えられる結果に相なります。のみならず國庫財政におきまして、竹谷さん御承知通り、今日なかなか容易ならざる段階にありますので、その貸付金の本來の趣旨から見まして、当年度におきましてこれを返していただくのがまことに適当である、かようのわけで計上いたした次第であります。
  51. 岩本信行

    ○岩本國務大臣 お答えをいたします。ただいま大藏大臣の答弁にありましたように、すでに支給済みのものを取上げるという趣旨ではない、こういうことでありますから御了承を願います。  それから貸付金の問題でもありますが、仰せの通り二十四年、五年にまたがつておる分がここに現われておるようであります。竹谷君の御意見のごとく、地方財政委員長の立場からすれば、それは償還年次が來ておらぬものをとる、こういうことは地方團体としては非常に困ることであると思います。しかして地方財政委員会といたしましては、ただいま地方財政の実態調査を遂げつつありまして、中に余裕のある地帶が発見できれば、借りたものを返すように努めることもけつこうであろうと存じます。しかしながらその結果を見てから、私は地方財政委員長の立場において、大藏大臣の弁をも信用し、あわせ考えて、その他の点においては政治的に與う限り善処したい、かように存じておる次第であります。
  52. 上林山榮吉

    ○上林山委員長 ちよつと竹谷君にお諮りいたしますが、長野君とあなたと二人で総理大臣質問願いたいのですが、まず長野君から……。
  53. 長野長廣

    ○長野(長)委員 総理大臣にお伺いしたいと思います。現今世相を見ますと、矯激と頽廃の思想にあらゆる階級に瀰漫せんといたしておりまして、それが自暴自棄的な凶惡犯罪のごときものさえその数を増加する状態であります。これは都会のみでなく農村におきましても、往々にして淳朴敦厚の理想農村とまで言われた郷土さえ矯激な思想の温床たらんとしておるものがあるのであります。まことに憂慮にたえないところであります。この際すみやかに拔本塞源の方策を樹立実行する必要があると存じます。閣僚を率いられてこの難局に立たれております総理大臣とせられましては、政府の根本の大方針をいかなる点に置かれておりますか、これをお伺いいたしたいと思います。
  54. 吉田茂

    ○吉田國務大臣 これは私の施政の方針でこの間申し述べた通りに、まず民主政治の確立と、よつてつて民主國の多くは連合國でありますから、その民主連合國の信頼を得ることが第一。第二は今問題になつております疑獄事件その他を國民の納得の行くような公平な処置をするということによつて道義を維持し、また外國の信用をも高める。第三には生活安定のためにインフレーシヨンを防止するということを内閣としてはあくまでも努めなければならぬ。こういう三つの考え方を持つております。
  55. 長野長廣

    ○長野(長)委員 御方針については一應認めます。私はこの際特に國民の生活に直接しております衣食往の問題、つまり主婦の現に叫んでおる現実の問題を、直接的に特に解決をして行くような施政が必要と思いますが、この点はいかがでありますか。
  56. 吉田茂

    ○吉田國務大臣 これはただいま申したインフレーシヨンの問題のごときはそのおもなる問題の一つではないか、こう考えて、この施策のためには日夜苦慮しておるような状態でございます。
  57. 長野長廣

    ○長野(長)委員 現在の閣僚諸君の昨日來の御答弁によりましても、住宅問題、それから災害地に関する対策の問題、それから衣食の問題、これらの問題に対して、單にインフレ問題以外に特に差急いだ施策をする必要があるということを認められておるのであります。もちろん概括的な御答弁によつて大体は了承はできると思いますけれども、実際問題としましては、安本長官あるいは大藏大臣の特別なる協力を得なければできないことが多いと思うのであります。これに対しまして、総理大臣におかれましては特に関係閣僚を鞭撻せられたい、同時にこの際大藏大臣は以上の問題についてきわめて積極的にもう少し御奮発ができるのではないか、御抱負をお伺いしたいと思います。
  58. 泉山三六

    ○泉山國務大臣 長野さんにお答えを申し上げます。ただいまお示しの点は内閣におきましても熱情を傾けてこれに当つておるのでありまして、その成果といたしまして追加予算にこれを計上いたすことができたことは、長野さん先般御承知通りであります。しかしながらなおこれをもつて満足するものではない、かようなことを申し添えたいと思うのであります。
  59. 長野長廣

    ○長野(長)委員 現今社会の問題に対処せられまして、疑獄問題その他にお力を注がれておるということは、ごもつともと存じます。しかるに政治の面について考えますれば、單に罰するということのみが良道ではないと思います。つまり信賞必罰——信賞ということがこれに伴う必要がありはしないか。そこで今までの制度をながめてみますと、かの文化勳章であるとか、あるいは藝術院賞の選択であるとか、ともかく文化の建設、その他社会各方面のことに貢献をしました人々に対する表彰の問題であります。これはややもすれば、藝術方面におきましても文化方面におきましても、学者とか藝術家とか、あるいはまた勳何等、何位というような、さような方面に傾きまして、眞に一國の藝術の振興に盡したとか、あるいは科学、出版方面に貢献をしたとかいうような、つまり人類の福祉に貢献するというような、これから特に注目すべき、重視すべき問題に功績のあるような人は、往々にして見のがされて行く傾向がありはしないかと考えるのであります。つきましては、文化の向上その他に向つて貢献のあつた人士を、國家として表彰する制度に改革を加えまして、またその運用にいま少しく幅を持たせまして、この賞の方面から國家の興隆、社会の進化に貢献せしむるような方策をとられることが必要と思うのでございます。総理大臣はいかなるお考えでございましようか。
  60. 吉田茂

    ○吉田國務大臣 御趣意はまことにごもつともでございます。現在栄典授與ということは、一般的には一時関係方面の考えもあつて停止しておりますけれども、御承知通り、過般文化勳章を藝術家その他に授與するということもありましたし、学士院の会員に推薦するとか、その他学術奬励のために奬励金を出すとかいうことはいたしておりますが、しかしこれをもつて足れりとするのではないので、なおお考えがありましたならば十分研究をいたします。
  61. 竹谷源太郎

    竹谷委員 私は総理大臣に対して三つの問題についてごく簡潔に質問をいたしたいと思います。第一は、対日講和問題でありますが、講和会議の時期その他の見通しにつきましては、わが党の川島金次君から本委員会において質問があり、これに対して相当親切な答弁があつたのを了承しておりますが、しかしながら英國の政府なり、民間なり、あるいはオーストラリアの政府において、あるいは民間の大部分において、その他米國の民間等において、この対日講和問題を早急に解決すべきであるという意見並びに輿論が非常に高いのであります。それにもかかわらず、ソ連が四箇國外相会議による條約起草という特殊な方式をとなえましたために、昨年以來停頓いたしておることはまことに残念に思うのであります。しかしながらさようなふうにわが國に対する講和問題に対しては、政府並びに民間としてこれを待望する國々も少くないのであります、こうした場合におきまして、それら対日講和をやつてもよろしいという意見のある國と個別的條約を結び、それらをたくさん集めて、すなわち多辺的講和方式といいますか、なるべくすみやかにわが國が世界における独立國家として進めるように、さような方式で行く可能性がないかどうか、総理大臣の見解を承りたいのであります。
  62. 吉田茂

    ○吉田國務大臣 御意見はごもつともでありますが、ただいまのところは、総司令部を通じてでなければ外交活動ができないことになつておりますから、御希望のところはごもつともでありまするが、実際問題としてはなはだ困難に感ずると思います。
  63. 竹谷源太郎

    竹谷委員 次は賠償問題と日本産業の水準の問題についてお尋ねしたいと思います。賠償問題は日本にとつて経済再建のためにぜひ必要なことで、これがなければ経済再建目標もはつきりいたしません。なおまた経済復興もその軌道に乘ることができないのでありまして、重大問題であります。しかしながら、これは同時に日本経済復興に伴つて、お互いに助け合うところの東亞諸國の問題でもあり、また連合各國にとつてもきわめて大きい関心事であるということは、言うをまたないと思うのであります。さきに一九四五年にポーレー大使以下が日本にやつて來て、いろいろ調査をして報告書を提出されておりまするし、その後一九四七年には、アメリカ政府の依頼によつて対外調査相談所がいわゆるストライク委員会を日本に派遣をして、相当精密なる報告書を提出しておるのでありますが、なおまた陸軍次官のドレーパーを使節團長として、日本の工業能力、今後における日本産業水準、賠償の程度、そういうような点について、いわゆるジヨンストン報告書を提出してあるのでありますが、この問題はその後どういうふうになつているか、われわれははつきり聞くことを得ないのでありますけれども、この三つの報告書、すなわちポーレー案、次はストライク案、次はジヨンストン報告書、このいずれが採用せられるようになるであろうか、第一点。次は一体どこで日本の賠償標準というものを決定するのであるか。極東委員会で決定するとも言われているが、さようなことであるかどうか。第三は、この賠償水準がどの程度において決定せられるようになるのであるか、この点われわれよりもはるかにたくさんの情報を持つ首相の見通し並びに判断を承つておきたい。重ねて申し上げまするが、第一は、この三つの報告のうち、どの程度のものが採用せられるようになる見込みであるか。またいかなる機関で、どの程度に、いつこの賠償水準が決定せられるか、この賠償問題について、三点をお伺いしたいのであります。
  64. 吉田茂

    ○吉田國務大臣 ━━━━    ━━━━━━━━━━━━━━━━━
  65. 上林山榮吉

    ○上林山委員長 本会議関係がありますので、簡潔に願います。
  66. 竹谷源太郎

    竹谷委員 次に、日本産業水準に関する問題でありまするが、賠償問題が決定せられれば、一應産業水準というものは決定せられると思うのであります。聞くところによると、日本産業水準の解釈につきまして、二つ説がある。一つは日本に設定するところの産業水準というものは、單に賠償決定のためのものであつて日本経済自立のため必要である場合には、この産業水準を越えてもさしつかえない、こういう考え方がある。産業水準を一應決定するのは、賠償額の決定の標準のためであつて日本経済自立のためには、それを越えてもさしつかえない、こういう解釈をとる説と、もう一つは、いや、その賠償のための産業水準というものは、これは日本産業水準の最高であつて、これを越してはならないのである、こういう説と、二つあつて、それらが極東委員会でありまするか、あるいは國務省、陸軍省において鬪わされておるとか、そういう説があるということでありますが、これは一体いずれになる模様であるか、おわかりになれば御答弁を願いたいと思います。
  67. 吉田茂

    ○吉田國務大臣 これも日本産業の水準を、一九三三年でありますか、四年でありますか、ちよつと忘れましたが、一應三三年とか、三四年とかにとつたのが、その後三五年ですか、変更をされたということは承知いたしておりますが、しかしどの年の水準をもつて目標とするかということについては、まだきまつておらないのがほんとうではないかと思います。というのは、この間ドレーパー・ミツシヨン等について來られたホフマンとか、ちよつと名前は忘れましたが、そういう人の話を聞いてみますと、だんだん緩和するものだ、緩和させたいと思つておる、日本復興するということは、結局極東の安定を持ち來すゆえんであるから、なるべく水準は緩和したいと考えておる——考えておるという程度で、どこの点に水準を置くとか、あるいはどこで——國務省とか、あるいは陸軍省とかがその決定権を持つておるのかということについては、ホフマンの話なんか聞いてみても、実は明瞭でないのであります。どうも今申しましたように、協議してきめるというのがほんとうではないか、そうしてその協議がいつまとまるかということについても、これは多少大統領選挙等の何があつたかとも思いますけれども、いまだ決定しておらないということが事実ではないか、こういうことは、これも想像でありますけれども、私の感じではそういうような感じがいたします。
  68. 竹谷源太郎

    竹谷委員 これは最後の問題です。これ以上はお聞きしません。しかしながら親切に御答弁を聞きたいが、解散に関する問題です。解散に関する憲法の解釈について尋ねるのでありますが、いろいろ政治上のことは拔きにして、ごく要点だけ申し上げます。先般來衆議院の解散に関する解釈については、院の内外において盛んなる論議が展開された。新憲法の正しい運営を守る立場から、私はここで、政治的ではなくて、政府の見解をただしておきたいのであります。と申しますのは、政府はさきに憲法六十九條以外の場合においても、自由に衆議院を解散することができるという見解を表明しておる。なお民自党の憲法の番人と自任せられるところの齋藤隆夫君は、憲法七條によつて政府は当然に、いかなる機関にも拘束せられることなく自由無制限に解散の権がある、これは立法論は別であり、解釈論としては憲法七條によつて政府は自由に解散をする権能を持つておるということは、きわめて明々白々であるというような印刷物まで配つて、われわれ見せられたのでありますが、この点につきましては、私は意見が違う。憲法の第四條及び第七條の精神から見まして、第七條の第三号に、天皇が解散をする手続きがきめてありまするが、これは單に天皇の象徴的地位にふさわしい國事として、制限的に、儀礼的ビジネスとして行うべき事項を規定したのであつて、決してこれでもつて政治上の権能が生れて來るものではない。解散すべきかいなやという重要な國政に関する判断の権能は、天皇というものにはない。さようなことは内閣においてでなければ絶対にできない。天皇はその内閣の判断に基いて、單に手続を行われる、こういうものにとどまると思うのであります。しこうして召集等に関しましては、あるいは臨時会の召集、通常会の召集、そうして特別会の召集と、はつきり召集すべき場合を書いてある。これ以外には召集することができない。はつきりしておる。憲法につきましても、六十九條において議会が不信任を決議した、あるいは信任案を否決した、そういう場合に初めて解散の権能があるのであつて、その他の場合にみだりに第七條に基いて政府に解散権能ありというような解釈を下すことは、非立憲もはなはだしい。非民主的な憲法の解釈であつて、これは新しい憲法の精神から見て、絶対に許されるところではないと私は思う。ただ政治上解散を必要とする場合は二つあると思うのであります。一つは憲法第六十九條におけるように、内閣と衆議院とが正面衝突をして、不信任案をたたきつける、あるいは信任案を否決する、かような場合には六十九條によつて内閣は解散権がありますけれども、もう一つの場合のすなわち衆議院が國民の代表機関として正しく國民の輿論を代表しておるかどうか、こういうことが疑わしいような場合、あるいは特に憲法制定のために衆議院を新たに編成する必要がある、こういうような特殊目的の場合、すなわち衆議院が正当に國民の輿論を代表しておるやいなやについて疑わしい場合に解散の必要がある、こういうことが政治上起つて來るだろうと思います。こういう場合にしからばだれがその認定をするか、衆議院が正しく國民の輿論を代表しておるかいなか疑わしいということを、だれが認定するということになつたときに、それを総理大臣一個の権能をもつて、この四百六十六名の、八千万の國民を代表する者を、全部これを首切りにしてしまうというような絶大な権力を一総理大臣に與えるということは、これは非常にフアシヨ的な日本を招來する危險を包藏するものであつて、絶対に許されない。かような場合において衆議院が、四百六十六名が全部総辞職するという意味合いにおいて、解散の決議をしたときに、初めてその衆議院の決議に基いて内閣は解散という單にビジネスをやる、解散の権能ではなくて解散の手続をするということにおいて初めて行われる。從つて新憲法の解釈としては、憲法六十九條の場合、及び衆議院が解散の決議をした場合、この二つに限られると私は考えるのであるが、政府は相かわらず憲法七條によつて政府が自由に衆議院を解散できる、六十九條以外の場合にも解散ができると解釈するのか、しからずしてわれわれが考えるごとく、六十九條の場合及び衆議院がみずから総辞職の意味において解散決議をした場合、その場合に限るかどうか、端的に政府の所見を伺いたい。これは党利党略あるいは政治上のかけひきで尋ねるのではなく、新しい民主的の憲法の正しい解釈をつくつて置く必要があると考えるがゆえに、法律論の解釈をお伺いする次第であります。
  69. 吉田茂

    ○吉田國務大臣 法律上の解釈の問題については、政府としてはしばらく答弁を留保いたしますが、実際問題としては、この間私が議会において申した通り不信任案が出て、その不信任案の結果、解散をするという四党協定ができておりますので、その協定に基いて解散をいたす、こういうつもりでおります。
  70. 上林山榮吉

    ○上林山委員長 先ほど総理の発言中賠償問題に関する点はいろいろ影響するところがあるから速記録から削除していただきたいという要求がありますから、御了承を願います。  なお本会議の都合がありますので十分間休憩いたします。     午後三時十三分休憩      ━━━━◇━━━━━     午後三時二十七分開議
  71. 上林山榮吉

    ○上林山委員長 休憩前に引続き会議を開きます。  竹谷源太郎君、商工大臣に御質疑を願います。
  72. 竹谷源太郎

    竹谷委員 商工大臣に二、三点についてお伺いしますが、第一は貿易の問題であります。先日総理大臣が本委員会において、また安本長官の演説の中でも、輸出の振興によつて日本経済復興したい、こういうことを述べておりますが、昨年の輸出の状況を見ますと、輸入が五億二千五百万ドルぐらいあるに対して、輸出はわずかに一億七千三百万ドルぐらいにすぎない。輸出は輸入のわずかに三割程度でありますが、本年に入つて一月から六月までの上半期における計画は、一億五千万ドルぐらいあつたようでありますが、実際は八千万ドルか七千七百万ドルぐらいしかなかつたという実績であります。こんなことでは輸出入の関係が相かわらず非常な入超で、日本の貿易状況がどうにもならぬということをおそれるのであります。昨日かの新聞によると、その後一月から十月までの実績は非常に伸びて、輸出が一億八千万ドルぐらいになつたという新聞記事を見たのでありますが、最近までの輸出の状況はどうなつておるか、その数字があればお聞かせ願いたい。同時に輸入はいかほどになつておるか、現在までの貿易上の数字をお聞かせ願いたいのであります。なお今年中における十二月までの貿易状況の見通しをまず承つておきたいと思います。
  73. 大屋晋三

    ○大屋國務大臣 ただいまの竹谷君の御質問にお答えいたします。御承知のように、本年の上期の輸出は昨年よりも一割ほど下まわつておりまして、実績にはるかに及ばなかつた点はまことに遺憾なのでありますが、その後、下期に至りましては、徐々にこれが改善を見ておる次第であります。数字については、今年の実績は上期だけが発表できることになつておりますので、その実績を申し上げます。本年上期におきましては、輸入は昨年同期の七割増しであります。すなわち昨年同期が約二億ドルでありまして、本年上期はその七割増しの、金額にして三億四千万ドルとなつております。その後引続きまして順調でありますので、本年一ぱいにおきましては、昨年よりも大幅に増加するものと期待しておるのであります。次に輸出の方は、ただいま申しました通り、本年の上期は昨年同期に比較いたしまして減少を見ておりますが、ただいま竹谷君もお述べになりました通り、本年の上期は七千八百万ドル昨年の同期は八千四百万ドルになつておりますので、これだけの減少を見ておるのであります。その理由は主として海外のドルの不足が原因しておるものと考えられるのでありますけれども、その後スターリング地域を初めといたしまして、各國との間に支拂い協定、ないし貿易協定が成立いたしまして、下半期に入りまして、下半期に入りましてからは契約も相当に増加しております関係から、本年一ぱいには昨年よりもある程度増加する見込みを持つております。これが大体の数字と簡單な見通しであります。さらに詳しくはまだ資料はありますが、大体大まかに申し上げればかような程度でありますが、もしもう少し詳しく、どういう品目に対しておよそどれくらいの数量が輸入され、あるいは輸出されたかという資料を持つておりますから、御希望でありましたら申し上げます。
  74. 竹谷源太郎

    竹谷委員 貿易が輸入も輸出も相当順調に伸びておることは慶賀にたえないのでありますが、いずれにいたしましてもこれは厖大な人超でありまして、借前が非常に多い。この借前の処理は、あるいは占領地救済資金、あるいは回轉金その他によつて米國から借りて行くようになるだろうと思いますが、將來の処理はどういうことになるのであるか。また現在までのものをいかに処理して行かれるか。こういうことを伺いたいと思います。
  75. 大屋晋三

    ○大屋國務大臣 御承知通り、ただいまはガリオア・フアンド、ないしエロア・フアンドによります輸入が、輸出よりもはるかに多いという状態でございますが、この状態ではいけないのでありまして、政府といたしましては、関係筋の強力なる慫慂もありますかたがた、なるべくすみやかに輸入いたしました原材料、資材をもつて内地におきまして加工いたし、これをさらに再輸出をいたしまして、とんとんにカバーできるような意図をもちまして、内地の産業政策の面で、それに相應する政策を考えておりますので、現在は石炭、電力、その他の基礎原料につきましても、もつぱら輸出産業に重点を置きまして、すべての産業を指導いたして参る方針をとつておる次第であります。
  76. 竹谷源太郎

    竹谷委員 本日の新聞でも、極東委員会が日本の輸出増大を大いに慫慂するということでありますが、それにつきましても為替レートの設定が非常に急務であろうと思う。これについては單一為替レートの設定について政府はいろいろ準備を進めているということでありますが、單一為替レートを設定いたしますと、現在の輸出價格ではとうてい採算がとれぬ、破滅するほかないという産業が相当たくさんに上るだろうと思う。これにつきましてはそれぞれ適当な対策を講じなければならぬと思うのでありますが、その対策についていかような準備が進められているか、それを伺いたい。それからなおそこに資料があれば——、なければあとでいいのでありますが、現在の輸出價格を標準として破滅を予想せられるところの産業はいかなる種類のものであり、またどの程度のものがあるか。またいかなる方法によつてこれを將來生きさせ得るかというような調べがあれば、それをあとで提出してもらいたい。なおその産業のうちでは他に轉換させた方が適当なものもあろうかと思います。そういうものについてどういうものをどんな方向に轉換させるかという対策があれば承つておきたいと思います。
  77. 大屋晋三

    ○大屋國務大臣 為替一本レートが設定せられました場合におきまして、わが國の産業といたしまして、それの重大な影響をこうむつて、現在のままにおいては輸出が不能になる、すなわちその産業が成立たないというような産業はいかような産業であるか、またそれが対策に対してはどういう考えを持つているかというお尋ねでございますが、それに対しまして少しく詳しく申し上げますと、為替一本レートが設定せられました場合に、國内の産業がどういう影響を受けるかという事柄は、言うまでもなく、円対ドルの関係が幾らにきまるかという問題によつて決するのでございますが、かりにここに仮定を立てまして三百円にきまつた場合を想定して申し上げてみますならば、現在のわが國の各種の商品の生産費の点から考えまして、三百円になつた場合には約六割のものが輸出不能になる勘定になつております。もしレートが三百五十円にきまつたといたしますならば、産業の約四割が輸出不能のおそれがあると考えられるのでございます。從いまして政府といたしましては、これら産業はその一本レートを目標に掲げまして、そういうようなレートがきまつた場合にもその経営が成立まちすように、特別に技術、経営その他適切な手段を講じて、生産費が下るように政府といたしましても、十分に指導援助いたしたいという方針を堅持いたしている次第であります。  次にわが國は御承知のように現在主食を初めといたしまして、綿花その他纖維の原料であるとか、鉄鉱石であるとか、あるいは粘結炭等の復興用の原料を多量に輸入しているのであります。これらの國内賣渡し價格は一ドルが現在平均約百三十円となつているのでございますから、かりにレートが三百円ときまりました場合には、相当に國内の物價に影響を與えるものと考えられる次第であります。從いましてさような場合におきましては、これらのものに限りましてある暫定の期間を区切りまして、國内物價にある種の補助を與えまして、それを調整をする必要があろうかと考えている次第でございます。
  78. 竹谷源太郎

    竹谷委員 次に地下資源のことをお尋ねいたしますが、資料をまず要求しておきます。各種の鉱物についてその埋藏量、採掘可能量、それから將來日本産業水準として認めらるべき戰前における産業水準によつていかほど必要であるか、そしていかほど不足であるか、その一覧表をお願いしたいのであります。日本における鉱物資源が非常に貧弱であることはいまさら申し上げるまでもありませんが、鉱物の探鉱が今まで非常に不十分でなかつたかと思います。先般ラジオの放送で聞いたのでありますが、GHQの天然資源関係の人の話によりますと、日本の中央部に莫大な鉱物資源が埋藏されているということであります。中央部というのはどこかわかりませんが、日本アルプスの辺かもしれませんけれども、こうした問題について大きな埋藏量のある地点があるのであるか、その鉱物の種類はどんなものであるか、商工大臣が御承知であればお話を願いたい。なお私の知つている範囲では、私かつて富山縣におつたことがありますが、あそこには、立山、劔というような一万尺の山々がたくさんございます。あの辺は昔から鉄とか銅とか、あるいは亞鉛とか鉛、モリブデン、水銀というような非鉄金属類も豊富に埋藏されております。しかしながらそこは非常に高山地帶であり、しかも交通が非常に不便でありまして、これが開発は現在の金で何十億何百億を要するだろうと思いますが、あの辺の鉱物関係の探鉱が非常に不十分であると思います。今商工省においてはいかなる地下資源研究機関を持ち、またそれがどんな調査をなしつつあるか。先ほどの話でも外國から原料を輸入して、それを加工して賣つて、八千万國民の食糧なりその他必需品を買わなければならぬのでありますから、その重圧は必然的に労働者にかかつて來る。そうして日本の労働者を苦しめて、飢餓輸出をして食つて行かなければならぬことになるのでありますから、國内において利用し得る資源はできるだけこれを活用しなければならぬ。その意味合いにおきましても、不足だとは言つておりますが、相当種類の多い鉱物が日本には散在している。これに対する採鉱冶金の技術が進歩いたしますれば、相当日本の需要を満たし得るのではないか。聞くところによると、アメリカ等では、優秀な鉄鉱石は使わないで残しておいて、そうして貧鉱を採鉱、冶金、精製して、各種の製品にするまでの技術あるいは経営の優秀さによつて十分まかなつて、結局安い製品をたくさん出しておるということであります。これらについて政府はいかなる施策を持ち、また今後日本経済自立のために、いかなる努力をこの地下資源について拂つているか承つておきたいのであります。
  79. 大屋晋三

    ○大屋國務大臣 ただいまのお尋ねの第一問の、わが國における地下資源の鉱物の埋藏量はどういうふうになつているかという点について申し上げます。まず石炭の埋藏量でありますが、現存の炭量が約六十億トン、推定の炭量が約四十億トン、埋藏の炭量が約六十億トン、合計して百六十億トンになつております。これを地域的に区分いたしますと、北海道が八十億、東北が十一億、西部が九億、九州が六十億、合計百六十億に相なつておるのであります。右のうち、採炭が可能であると考えられます量は、現存の炭量の約七割、これが約四十二億トンに相なります。それから推定の炭量のうち約五割六分、これが約二十二億トン、両者合計いたしまして六十四億トンが採掘可能と信じられておるのであります。申し遅れましたが、この調べは昭和七年の調べであるので、相当古いのでありますが、その後昭和七年以後の調査の結果は、埋藏量の増加は相当に見込めるのでございますが、一面におきまして昭和七年以降にすでに採掘した量かございますので、その埋藏量の増加のプラスと、すでに採掘いたしましたマイナスとは、大方相殺して考えてよろしかろうというふうに考えておる次第であります。なおその前の調査——明治四十四年に調査いたした数字は、前記百六十億に該当いたします分が、約八十八億トンと相なつておるのでございます。  次に一般の鉱物の埋藏量を申し上げますと、金が八十四トン、銅が六十九万三千八百トン、鉛が二十万二千四百トン、亞鉛が百二万一千六百トン、鉄が千五百万トン硫化鉱が一億二千九百十万トンと相なつておる次第であります。  次に第二回の、このわが國の鉱物資源を探鉱し、あるいはこれを採掘いたします採鉱及び冶金の技術を改善し、あるいはこれを研究する機関、あるいはこの將來方針をいかように考えておるかという御質問でございますが、ただいま実はこの前段の鉱物の採掘機関は、今鉱業課長が参つておりますから、政府委員にお答えをいたさせますが、後段の問題といたしまして、將來のいわゆる金属行政、石炭行政の面につきましては、石炭の採掘の面におきましても、御承知通りわが國には現在四十六万人の採炭夫を使用いたしておりまして、わずか三千六百万トンを採掘するのに汲々といたしておるのでありますが、アメリカにおきましては採炭夫の数は四十六万内外で、日本とほとんどひとしい採炭夫が從事いたしまして、年に六億トンもの採掘をいたしておるというようなぐあいであります。その他一般の金属方面のいわゆる採鉱冶金の技術ないし設備の方面におきましても、わが國は戰爭中に非常に劣りまして、設備も腐朽頽廃いたし、技術も非常に低下を來しておりますので、今後はこれらの点を改善いたすべく、技術の面におきましても、あるいはこの設備の復旧の面におきましても、十分にこれが補修並びに改善を遂げて、わが國の持ちます最も限られたる資源は、この地下埋藏物と厖大なる八千万の人口の労働力よりないのでありますから、この厖大な人口、また企業の合理化という方面からはみ出して参ります失業群という將來予想されるものを、これらのいわゆる地下資源開発というような方面に、有力に活用いたしたいと考えている次第であります。
  80. 平塚明

    ○平塚説明員 ただいま御質問がございました地下資源につきましては、御指摘のように、わが國は資源的に見て、比較的鉱種の面におきましては非常に数が多いのでございますが、量的に見て遺憾ながら十分にわが國の需要をまかなうだけのものを持つておりません。ただいま大臣から御答弁がございましたように、一應現在われわれは即知の鉱量というものをつかんでおりますが、しかし先ほど御指摘のございましたように、またわが國には中部地区、立山付近、さらに北日本、新潟縣から青森縣にかける地帶、さらに北海道地区に十分な資源を持つていると考えられますので、これらにつきましては、御承知のように政府機関といたしまして地下資源調査所がございます。これを中心といたしまして、資源的な調査をいたして、さらに各大学の研究機関、これらを利用いたしまして、極力新資源の発見に努力いたしている次第であります。さらにこれら開発方針につきましては、商工省にありまする地質調査所が中心となりまして、また採鉱冶金の面に対しては鉱業研究所、さらに民間の技術関係研究所、さらに鉱業協会、これらの技術陣を動員いたしまして、採鉱冶金の技術の進歩に努力いたすつもりでございます。  なお先ほど具体的に御指摘がございました立山地区の資源につきましては、これは戰爭中もしばしばとなえられたことでありまして、具体的にモリブデン、鉛、亞鉛の資源開発に当時かかつたのであります。遺憾ながらその後資材面において、あるいは資金面において十分な余裕がないために、今日これが放棄の状態にございますが、これにつきましては現在もうすでに雪がございまして、かような高山地区の開発に対して今すぐ調査ができかねますが、明年春になりましたら、できるだけ早い機会においてこれらの資源の再調査をいたしたい、こう考えている次第でございます。
  81. 上林山榮吉

  82. 田中源三郎

    ○田中(源)委員 商工大臣にお伺いいたしますが、かつて第一次吉田内閣当時において、時の大藏大臣石橋君が藏相に就任する前に、わが國の今後の生産増強と並びにインフレを阻止するためには、何といたしてもフル・エンプロイメントで行かなければならぬということを言われた。当時そのことはおそらく当席におられる同僚の苫米地君も御了承しておられることと思う。ところが終戰当時はわが國のストツクもある程度ありましたろうが、これを食いつぶしてしまつて、その後日本の現在において、いわゆる生産第一主義が民主党の政策にも掲げられておりますが、はたしてどういうふうにこの生産第一主義を持つて行かれるのであるか、これに対して商工大臣は現在のわが國の企業というものを、どういうふうに企業政策をとつて、そうしてわが國の生産増強を高められて行くのか。申すまでもなく、今お話のあつた石炭の地下資源において百六十万トンと称えられておりまするが、最近の調査によるところによれば、推定量総合計は二百億万トン、これは石炭増産協力会においてもその通り述べられておる。また亞炭の埋藏量においても百億万トンというのは推定量として、あるいは多少かさがかかつておるかしれませんがある。しかしその石炭はなかなか予定通りの石炭の採掘が伴つて來ない。私どもが石炭増産協力会をつくりまして、そして朝野をあげてこの増産に邁進をいたしておつても、今日また十分の予定量の出炭をしないという実態、しかもわが國の電力というものは、実に今後相当開発さるべく予定されているところの水力電氣においても、これを開発して行く上において相当の機械並びに資材、資力というものが伴つて行くのであります。かような貧弱なわが國の地下埋藏資源のみをもつて生産第一主義によつて今後日本が中間工業國として立つて行くところの商工行政、鉱業行政は一体どういうふうにして商工大臣はおとりになるのであるか、生産そして同時に現在のごときいわゆる傾斜生産をやつた後において、ある程度の戰前に対する工業力の回復はいたしております。約五十パーセントほどの回復をいたしておりまするが、消費資材というものは非常に枯渇しておる。從つて消費資材生産が、いわゆる重要企業との間において並行した生産を押えられて、今日上つて來ていないということは、國民生活の上においても重大なる影響を及ぼし、これが勤労階級に今日大きな問題を投げかけておるのであります。從つて今後において生産資材についていかにくふうをなさつて、あるいは今お話のエロア・フアンドあるいはガリオア・フアンドをもつて、どうして今後に日本生産力を高めて行かれますか。または消費資材生産をどういうふうに高めて行かれますか。この構想をまず承りたいと思うのであります。
  83. 大屋晋三

    ○大屋國務大臣 ただいま田中君の御質問は、非常に基本的のわが國の産業の建直しに関しまする最も重要なる問題なのでありまして、私がここで短時間に完全なるお答えをいたすことは非常に困難であるのでありまして、またこれが有力なる構想並びに実施の点につきましては、相当の時間がいる。かつまた関係方面とも時々刻々に協議をして返事を受けなければならぬ問題であることは言うまでもないのでありますが、私の構想をごく概略御答弁申し上げますると、まず第一に御承知のように、戰爭直後にありました相当のストツクは、すでに食いつぶしをしてしまいまして、もはや何物もほとんど残つておらない状態でありまして、わが國の産業の基礎原料、資材というものの供給先は、一にかかつてアメリカからのいわゆるガリオア・フアンドによりまして、食糧の輸入を仰ぎ、石油の輸入を仰ぎ、肥料の輸入を仰ぎ、医藥品の輸入を仰いでおるわけであります。エロア・フアンドによりましては、これは御承知復興用の原材料の供給を受けている次第であります。その他にいわゆるレヴオルヴイング・フアンド——回轉基金というものがございまするし、その他に棉花のクレジツトというものがございます。これがすでに現在活躍をいたしております原材料の供給源なのでございます。これを元といたしまして、過去三年の間わが國は既存のストツクの食いつぶしと、これらによる新供給を唯一の原料にいたしまして、また國内の既存の地下資源というようなものをあわせ用いまして、辛うじてただいま田中君御指摘の通り、五十%ほどの生産力を回復いたしたのでありまするが、もちろんこれはいまだとうてい輸入の厖大なる支拂い勘定を十分内地の生産量でカバーするわけには参りませんし、また一方におきまして、わが國の國民生活の消費面におきまする生活の水準というものも、まだとうてい低くて、これも十分考慮をせねばならぬ状態にあるのであります。この点に関しましては、片山、芦田両内閣とも、それぞれこれらに対しまして、いわゆるわが國の産業の五箇年計画というようなものを樹立し、また関係筋におきましても、これらの日本経済復興に対しまして、いろいろ基本的の立案をされておるのでありますが、私の根本の考えといたしましては、やはりこの重要産業でございますところの石炭鉱業であるとか、あるいは製鉄工業であるとか、あるいは肥料工業であるとかいうような重化学工業、いわゆるマイニング・アンド・インダストリーの、このもつぱら重要なる工業の方面におきましては、やはり相当程度の傾斜生産方式を採用して行かなければ相ならぬと考えておるのでありまするが、從來は田中君御指摘の通り、その傾斜生産、重点産業、基礎産業に重きを置きます関係が、非常に強く朝野に印象されております関係で、この消費財生産の必要の程度が、少し軽視されている面があるということは田中君と同感であります。もちろん現在の日本状態は、傾斜生産方式に重点を置きまして、あるいは飢餓輸出というような点で、八千万國民がともに耐乏生活に耐えて、わが國が一本立ちになるまでは、なるべくアメリカの好意、税を拂うタツクス・ペイヤーに御迷惑をかけぬという方針で行かなければならぬのでありますが、その間におきましても、やはり明日の労働の再生産の強力なる手段といたしましては、ただいまの程度よりも、もう少し消費財の生産の面に力を注ぐ必要は私も同感いたしておる次第であります。いわゆる経済復興五箇年計画におきまして司令部の計画日本援助、日本産業の自主的方向、あるいはわれわれのいわゆるペーパー・プランでありますが、五年計画はあらかたただいま申し上げた線に從つて、だれが考えてもやはりそういう線に從つて考えるだけだと思うのでありますが、さてそれを実施の面においてはどういう手を打つかと申しますならば、私はこれに対してこの要素が二つあると思うのであります。何を申しましても産業を再建し、改善して行くということは人間が扱うのでありまして、この人間はいわゆる数百万の勤労者の諸君と経営に從事する諸君の人的方面、それからもう一つはつまり経営技術の面における二点であると考えておるのであります。  人的の面におきまして、私はいわゆる終戰直後の日本産業の姿、つまり勤労者、労働の不安定、今日もむろん安定とは申されない、はなはだ不安定の状況があるのでございますか、このいわゆる労働生産力を高め、労働の安定感を強固にして、労資がともに、いわゆる昔流の陳腐な労資協定というような考え方にあらずして、一本と一本、五分と五分の立場において創意を働かして、労資が氣持よく働けるような政策を、政府においてとるということがまず根本的に必要であると思うのでありまして、この面においては、いわゆる國民生活、食糧の面におきまして、あるいは日常の生活の面におきまして、不必要な統制というようなものがありますならば、さようなもの、あるいは統制があつてもなくてもよろしいというようなものがございますならば、統制というような面に対しましても、大幅な改善を加えて行かなければならぬと考えております。  次に第二のいわゆる技術経営の面におきまする観点から申すならば、何といたしましても、いわゆる企業の自主性をここに確立して行く、そのためには現在終戰以來の惡い習慣がありまして、その企業自体が成立つて行かぬにもかかわらず、いろいろな不合理矛盾が包藏されておる企業が数限りなくございます。もつともこれはいわゆる賠償問題の解決、あるいは独占禁止法案、あるいは集中排除法案というような一連の産業界に非常な影響を及ぼすところの法制的の問題もまだ解決いたしておりません関係上、また講和條約がまだ締結しておりませんので、日本人の技術者が先進國に行つて技術を修得するとか、あるいは向うの進歩した機械をこちらに輸入するとかいうような面に、まだ打通の道が講ぜられておりませんから、十分とは言えませんが、何にいたしましても、いわゆる企業の合理化、産業の自主性を確立するという面に対しまして、強力なる合理的なる手段を施す、すなわちいわゆる勤労者と経営者が十分に働ける環境をつくり出す一連の政策、企業自体におきましては、企業の合理化を促す。しこうしてこの結果いわゆる輸出の促進政策をここに強力に進めて行く、その間におきましては、為替のレートを早くきめるというような事柄、労働安定を早くいたすというような事柄、その他必要な政策はすべて、これに付随する。これらのものを巧みに組合せまして、やつて行くよりほか方法ないと思うのであります。田中君も御承知通り、企業なり産業というものは、一夜づくりでこれが振興をはかることは困難なのでありまして、いろいろな要素を巧みに組合せまして、そこに相当の時間を與えて行かなければならないかと私は考えておるのでございます。はなはだ雜駁な御答弁でございまするが、さような氣持をもちまして、これから私たちは諸君の御協力を得まして、一日も早く日本産業復興をいたしたいと考えておる次第であります。
  84. 田中源三郎

    ○田中(源)委員 商工大臣のオリジナルな御意見についてはある程度私は了承いたしました。現段階におきまするわが國のいろいろな諸情勢における政策について多々の批評もあると存じますけれども、今お答えになりました点の中で、私は技術と人的の処置についての御意見は了承いたしました。しからばわが國の今後におきまするところの企業三原則をとられて、今後の生産力増強に対しては、いかなる金融政策を企業面に持つて行かれまするか。いわゆる商工金融に対する御所見はどうであるか。同時にこの金融トータルというものが今日のように不安定であつてはならぬ。先ほど竹谷君からお話のあつた通りに、今日においては、すべて企業におけるところの合理化という面から相当の企業の破綻が生れ、整理が行われて行くだろうと私は思う。現に阪神間地方においても大屋さん御承知通りに、税と資本とのために企業が倒れつつある実態をわれわれは見ておるのであります。これらについてのいわゆる商工金融行政に対する今後のあなたのおとりになるところの御所見を承りたい。同時に日本の企業に対しまして傾斜生産——いわゆるマイニング・インダストリーという方面について、私は賠償問題と相当不可分の問題が起きて來るのじやないか。先ごろ日本に來朝された各種のミツシヨン等においていろいろのことを述べておる。同時にまたいろいろ新聞に掲げてある外電もあります。また他の外國の新聞なり雜誌を読みましても、いろいろなことが掲げられておりまするが、私は必ずしも日本の今日の情勢は、惡い方面に進んでは行かぬとは想像しまするけれども國民が期待するがごとき方向には進まぬと思うのであります。フイリピンにおいても、あるいはオーストラリアにおいても、支那においても——今後の支那はどうなるかわかりませんが、あるいはニユージーランドにおいても、いわゆる東亞のわれわれの貿易圏内にあるすべての國民感情といいますか、あるいは外交政策、その國のいわゆる商業政策というものは、今の段階と今の感情とを総合してみると、私は必ずしも樂観的な考えは起きて來ないのであります。そこでこの賠償問題というものがどう取扱われて行くか。これは今後行政の面において大きな影響を與えて來るだろうと思う。これは総理からお伺いするつもりでありましたが、あなた方は、日本の今後の企業の面において賠償問題をどういうふうに考えて、どういうふうにその筋との交渉をなさつておられるか、これが非常に大きな問題であると思う。纖維の問題にしても四百万錘のものが今日まだでき上つておらぬ。われわれの要望するところは六百万錘、七百万錘である。対外貿易をやるというふうな面で日本が航行権を獲得しなければだめだ。そうして船の面においてもまだ何らの解決策をとられておらぬ。百六十万トンや百七十万トンのこの戰標船をもつて、今後わが國の対外貿易ということはとうていでき得られない。どうしてもわれわれが航行権を認めてもらうとともに、四百万トン近い船を今後わが國が自國船舶によつて貿易を開始するというような段階に、これは了解を得て行かなければならぬ。そういう面から考えてみまして、私は賠償問題との一連性が非常に大きな問題だと考えております。今これは外務大臣兼務の総理並びに当面の担当者でありまする、あなた方がこれに対してどういう手段をおとりになつておられるか、またどういう方法をもつてその筋と御交渉になつておられるか、現在とられておるところの政府の処置もお述べくださいまして、今後とられんとするところの賠償問題とわが國の企業に対するどれほどの機械力、工業力をここに維持するかということについて御所見を承りたいと思います。
  85. 大屋晋三

    ○大屋國務大臣 ただいまの御質問の前段の商工金融の面に関する考え方はどうかという問題でございますが、私の産業運営に関します根本的の思想は、ある一定の限度に関する示唆を産業界に與えておきまして、またそれに適切なるあらゆる方策を付與いたしまして、みずからの産業はみずからの手でやつて行くという、いわゆる自主経営を尊重するという、これはほんとうの率直な意味の自由主義を信念といたしておるのでありまして、簡單に申すならば、いかようにせわをやいても育つ見込みのない産業はつぶれてもらう、しかもこの行き方は強圧をもつてつぶすというのではなくて、ある一定の時間的あるいはある一定の経済法則に準拠いたしましたいろいろな手当を講じてやつて、どうしても延びないものは、つぶれもし、つぶれてもらうという考え方をいたしておるのであります。從いましてただいまの観点からいたしますならば、まず第一に為替の一本レート設定というような問題がある。まだそこまでの段階には実は多少練れておらぬのであります。もつともこの為替の問題は、ひとり日本政府ばかりでできないことは万々御承知通りでありますが、ある一定の目標、たとえば為替のレートを三百円から四百円までの間にきめるのだという目標を與えて、これに向つて耐え得られるように産業の経営を産業人みずからの力で労資ともにやつていただく、その間にある一定の時間を與えてどうしてもその期限到來のときにできないものはつぶしてしまう、あるいはつぶれてもらうというような考え方をいたしております関係上、この資金金融の面においても、一口にあるいは緩漫政策であるとか緊縮政策であるというような抽象論でなくして、産業個々を吟味いたしまして、その個々の特質に從いまして、育つものは育つもののように、それに從つて十分なる手当をいたすという考え方をいたしておるのであります。またわが國の中小企業というものも日本再建の面において、ただいま申し上げました観点において自主的の、自動的の整理を続々一面促すと同時に、一面においては強力なる金融の手段を幇助してやるというような考え方をいたして行きたいと思います。産業資金金融政策は簡單にもつとゆるめたらどうか、あるいはゆるめてはわが國のインフレをますます助長せしめるものだというような議論が坊間あるのでありますが、私のはさような抽象的な考えでなくして、個々の産業の実態に應じた金融をいたして行く。田中さんも御承知通りただいまはたくさん金がいるが、やがて時間が來れば、つぎ込んだ金が非常な勢で力を発揮するということは産業金融の法則でありまして、ただいたずらにきんちやくのひもを締めるばかりが能ではないので、その意味から申すならば、よいと思う産業にはどんどん金融するが、惡いと思う産業には政治的とか義理人情は無視をして金融しない、あるいは金融を引締めるというような考え方をいたして行きたいと私は考えております。  次に賠償の問題とわが國の経済復興並びに貿易の振興という問題は、御指摘の通り実に重大なる関係がございますのであります。田中さんのただいまの御質問は、政府といたしましてはこれが賠償の実施、経緯に関しまして関係筋といかような交渉をし、いかような構想で政府は進んでいるかということでございましたが、この点は実は私の直接の所管でございませんので、本日はそれに対しまして具体的に申し上げる準備がございませんが、この点もまた異なる機会におきまして、十分お答え申し上げたいと思つております。
  86. 田中源三郎

    ○田中(源)委員 商工大臣のアイデアからと民自党の政策から申せば、この内閣の性格から言えば、あなたの考えは自主的企業のあらゆる手段をつくしても、いけなければ自然淘汰にまつ、いわゆる自由主義資本主義経済というもののアイデアと私は思う。しかし今日は十九世紀から來た資本主義、あるいは古くさい資本主義、そういつたことではとてもやつて行ける時代ではないと私は考えます。しかも日本の置かれたる、いわゆる資源人口、領土というものから考えて行つた場合に、不必要なる統制を撤廃するというくらいのことは一つの小さな手段である。大きな日本の面から考えて行きますときにおいては、私はまだまだここ早々に日本というものが、自由主義経済の野放しで行ける段階であるとは考えておらぬ。いかなる人がお考えになつても、どの政府ができましても、日本の國の今日の実態から考えて、さようなことで日本の國が自立するという考え方は、非常に私は危險であり、甘い見方であると言わなければならぬと思う。おそらく商工大臣はさような意味で申されておるんではあるまいとは思いますが、しからばあなたの今お答えになつた線でお伺いいたしますとするならば、日本の電力政策はどうとつて行くか、日本のいわゆるマイニング・インダストリーというもののおもなるものを十ばかり列挙いたしましても、それをどういうふうにおとりになつて行くか、日本の纖維工業をどういうふうにして行くか、これは今日はリミツトされている、リミツトされているからして思い通りに行かないと言つても、そのわくをどう伸ばして行つてそれがどう安定して行くか、ステツプ・バイ・ステツプでどう行くか。そしてそのマイニング・インダストリーばかりでなくして、消費部面の生産がマツチして上つて來なかつたならば國民の生活は安定しません。これと並行して行かなければならぬと私は思うのであります。その個々を分類して、個々に許される範囲内において、商工大臣の政策を具体的に一つずつお示しを願いたいと私は思う。重化学工業ならば石炭政策はどうとつて行くか、電力政策はどうとるか、纖維工業はどうとつて行くか、わが國の陶磁器はどうするか、國内の資源でまかなえるものはその資源をどう生かして、どういうような企業政策をとるか、インポートされたところの原料によつてやるところのものはどういうふうに置いて行こう。これによつて先ほどあなたはいわゆる経済五箇年復興計画というものを仰せられましたが、しからばそれで野放しをしてどれだけが生きて行き、どれだけが生きて行かないか。為替の問題は急にきまりますまい、かりに三百円できめても四百円できめても、それによつてエツクスポートできるものは生きて行きます。できないものはどんどん倒れると言うが、そうはいかない。そこで、一方においては日銀の発行限度をインフレのために押えて金融操作が行われている、資金梗塞がついて來る、資金梗塞が片方について行くし、片方には資材が乏しい。そうして自主的にやつて行くということについては、あなたは一定の基本を示唆するということを仰せられたのであります。その基本的示唆というものはどういう示唆であるか、各業種別にどういう示唆を與えて、それが縱と横との面にどう流れて、これに対して日本政府のとる金融政策がどういうふうに流れて行つて、そこに持つところの資源がマツチして、どういうふうに上つて行くかということを考えて行かなければならぬと私は思う。ただ抽象的に漠然と基本的な示唆を與えて、そうしてわれわれの考え方は自由主義である——自由主義もけつこうでしよう。しかし今日の段階において私はそれは許されぬと思う。一定のある大幅の統制資源において、しかなかつたならば、それがレギユラーな生産力を高めて行くということは私は決してでき得ないと考える。この点について、いま一段と具体的なあなたのお考えを承つておきたいと存じます。
  87. 大屋晋三

    ○大屋國務大臣 ただいま御指摘の、私のいわゆる自由主義なるものは、十九世紀流の何もかも自由に、個人の意思によつて経済行動が、天馬空を行くがごとくにできるという意味の自由経済ではむろんないのでありまして、ある要所々々には区切りをつけたいわゆる自由主義的の考えでありまして、おそらくあなたのお考えになつている考えと私の考えは大差はないものと考えております。  次に、あらゆる日本の電氣事業あるいはマイニング・インダストリー、あるいは纖維工業、造船工業その他に対して、基本的に一々どういうふうに具体的に考えているかという問題でございますが、もちろんわが國の経済再建の問題を考えまするときには、個々の産業に対しまして、ただいま田中君の仰せられたように一々具体的の生産計画を、しかも現在の制約された日本の実情とにらみ合せて、一々それをペーパー・プランと実施との両案、できるような案を持たなければならないことは言うまでもないことであります。これにつきましては、前内閣当時にスタートされましたいわゆる経済五箇年計画という機関がございまして、各方面の朝野のエキスパートが集まつて経済五箇年計画というものを立案しておりまして、大体においてそれの成案ができているのであります。しかしながらこれは本年の初めからスタートをいたしまして、現在の刻々に変化して参る経済のスタンデイングにおいては、はなはだ十分でないという成案でございます。たとえば田中さんも御承知通り從來日本の工業が関係筋から許された範囲は、日本のあらゆる工業水準を昭和五年から九年までの平均点に持つて参る、また國民消費生活はある一定の限度で耐乏をしてもらうというような、基本的観念が関係方面からも示唆をされ、また経済復興五箇年計画を樹立いたしまするエキスパートの諸君もそういうような線に從い、また考えられる食糧の輸入、復興資材の輸入、また考えられる地下資源、たとえば石炭あるいは動力の供給量というものをにらみ合せて、一應の計画のアウト・ラインは現在案が復興五箇年計画でできておりまするが、現内閣としては、私もお説の通り各種の産業に対しまして、あらゆる観点から、これの総合的または部分的の計画をそれぞれの環境に應じて樹立して行きたいと思うのでありまするが、本日ははなはだ残念ながら、その数字と資料を持つてつておりませんので、これはいつかの機会に、あるいはもし御要求なら、ごくアウト・ラインはあると思いまするから、お目にかけてもよろしいかと考えております。
  88. 田中源三郎

    ○田中(源)委員 私はつとめて要点だけを商工大臣に伺つておるつもりであります。あなたも御就任早々で、まだ十分に自分の経綸抱負を実際面に運用される時間もなかつたことであろうと思います。しかしながら大臣として就任されまする以上は、一定の方針はお持ちになつていることと考えまして、私はお尋ねいたしたのであります。そこで私はごく打ち割つてあなたのお考えをお聞かせ願いたいと思いますが、いわゆる年末から來年度にかけて——二十三年度の年末から二十四年度の中小工業者に対する金融をどういうふうにおとりになつていくか、これをひとつ詳細にお示しを願いたいと思う。現在は本予算を見ましても——大藏大臣に私は十分に意見を聞いてからお話をお願いしたいと思つてつた。また総理の御意見を伺つてからいろいろあなたの御意見を伺いたいと思つてつたのでありまするが、この予算の歳入面を見ましても、四百十億というものは過般來から安定本部の内田君なり、大藏省の主計局から数字的にわたつて御説明がございまするけれども、われわれは納得ができないのであります。こういう予算の組み方をするのであるならば、だれでもできます。結局一言にして言えば水増しです。しかも現在は企業資金は梗塞されて、かつ原料も物によつては非常に高くなつておる。物によつてはあるいは公定價格を割つておるものもございますけれども、他面また法人税なり所得の申告によります面から見まして、今日課税面が企業面を非常に圧迫いたしておりますることは事実でございます。京阪神間におきまするところの最近の中小工業者は、これがために倒産をし、あるいは会社が解散をしなければならぬ、また破産の実態に陷りつつあるものも見受けられるのであります。あなたのいわゆる企業の自主性に基いて行かれまするならば、そのオリジナルを早くお示しになつて、そしてその要不要をはつきりとされた資金面の融通が行われなかつたならば、生きかえるべき企業も倒れるのじやないかという憂いを私は持つているのであります。これらのものが今後わが國の対外貿易におきまして、過去といわず、今後におきまして、相当重要なる役割を占めると思つているのであります。私はいたずらに企業三原則に反して赤字金融をせよと申しているのではございません。また金融を緩漫にせよと申しているのではありません。現実をどういうふうにお扱いになりまするか、また來年金融政策、商工金融に対するあなたの御抱負が、わが國の今後におきまする中小企業者に対して大きな影響を與えると思うのであります。この点をひとつ率直に私はあなたからお示しをお願いいたしたいと思います。
  89. 大屋晋三

    ○大屋國務大臣 ただいまの御質問通り産業が課税の面から非常なる圧迫を受けているという事実は、遺憾ながら私も同感でございますし、また一面わが國の税源がほとんどあさり盡されているような感がございますので、この際産業の自由なる活動並びに國民負担の公正を期し、しかも財政の所期の目的を達成いたすという考えにおきましては、よほど思い切つた拔本塞源的の税制の改革をいたさねばならぬ。さように考えておるわけでございまして、この点は現吉田内閣におきましても十分にさような線に向いまして、鋭意努力し、実現を期したいと考えておる次第であります。  次にお尋ねのこの年末から來春にかけての中小企業に対する金融の面はいかように考えておるかという御質問でございますが、この点に関しましてはいわゆる特別措置といたしまして復興金融金庫の資金放出の実情を申し上げます。実は在來各四半期ごとに五億五千万円の資金を自由代理貸しの制度におきまして放出しておつたのでございますが、この五億五千万円ではどうしてもその金額が十分でございませんので、本年の第三・四半期におきましては、これを三億円増加いたしまして、八億五千万円を代理貸しに使用放出いたすことにした次第であります。すなわち興業銀行、勧業銀行、中央金庫、北海道拓殖銀行の四行をしてこの八億五千万円の金を代理貸し制度のもとに融資をいたすということにいたしております。なおまたこの損失補償制度という方式によりまして、一億五千万円の資金を放出いたすことに決定しております。これは申すまでもなく、各市中の銀行から中小工業者に対しまして貸付をいたします金額に、もし損失がその融資において生じました場合には、三割をこの一億五千万をもつて補償するという制度でございますので、結局一億五千万円が五億円にまわるという実効に相なる次第でございます。なおまた日本銀行の中小工業方面におきます貸付のわくを、在來は四億円この方面に使用いたしておつたのでございますが、この暮にかけまして中小工業方面金融の面を特に考慮いたしまして、これを約七億円増加いたしまして、このわくが大体十一億という金額をこの方式によりまして、中小工業方面に融資いたすことに相なつております。なおまた各都道府縣、市というような方面におきまして、信用保証協会の設立を促進いたしまして、これが活動によりまして中小工業方面金融をいたしております。その他二、三の特別の措置も目下考慮いたしておる次第でございます。かれこれこれらの諸政策を合算いたしますと、二十億ないし二十五億見当の金が十分ではございませんが、この第三・四半期に放出が可能であるというようなあんばいになつております。なおまたこれが放出につきましても、いわゆる京阪神地方でありまするとか、あるいは名古屋方面、または産業の盛んでありまする福岡方面に、日本の中小企業者の相当の部分がこれらの限られた地域に限定されておりまする実情にかんがみまして、これらのものに対しては、特にこれらの金融方面におきましても重点を置くというような措置を、それぞれ中小企業廳からそれぞれのその地方の官廳に傳達いたさせまして、万遺憾なきを期しているような次第でございます。
  90. 田中源三郎

    ○田中(源)委員 纖維局長、石炭局の長官がお見えになつておりませんから、おそらく商工大臣が御了知になつておるのかどうか、御存じの程度お答弁願えば、あとはあとから別の機会に御答弁願つてけつこうです。現在の出炭量と今後におきまする予定出炭、それと同時に石炭におきまする企業資金はどういうようにせられますか、この見通しの御説明を願いたい。それからいま一点は綿花の回轉基金による回轉状況はどうであるか、同時に日本の紡績に現在予定されております四百万錘は年内に可能であるか、あるいは來春いつごろにこれができるか、その後におけるいわゆる紡錘の増織問題についての関係筋との御交渉はどういうふうになつておるか、この点の御説明を願いたい。
  91. 大屋晋三

    ○大屋國務大臣 ただいまの二点につきましては、完璧を期する意味において、石炭廳関係政府委員並びに纖維局長をしまして数字をもちまして後ほど説明させることに御了承願いたい。
  92. 田中源三郎

    ○田中(源)委員 商工大臣にお伺いいたすべきものがまだ多々ありまするが、時間の関係もございまするので、一、二点総理の意見と大藏大臣の意見を聞いた上で、別の機会に伺いたい。今日は私はこの程度で、御両者の御意見を聞かぬと、商工大臣にお尋ねすることができないので保留いたしまして、私の質問を打切ります。
  93. 森直次

    ○森(直)委員長代理 松原議員の御発言を願います。
  94. 松原喜之次

    ○松原(喜)委員 時間もたいへん行つておりますので、ごく簡單に商工大臣に一、二の質問を申し上げたいと存じます。  まず第一にお伺いいたしたいことは商工大臣のみならず、民自党の諸君は口を開けば自由経済主義を唱えられまする、從つて商工大臣も常にそのいわゆる自由経済主義を唱えておられるのでありますが、先ほども承つておりますると、日本経済復興のためには、かねて安定本部を中心として立てられておりますところの経済五箇年復興計画を基本とし、あるいは少くともそれの訂正案をもつて基本といたして、日本経済復興を進めて行くというようなお考えのように承ります。從つてこの経済復興のために必要とするところの金融政策、あるいは事業の政策、あるいは輸入設備、技術等の問題、あらゆる面において國家がこれを統制せんとしておることは明かなるところでありまして、從つて日本経済復興せんがためには、いかにしても計画経済をもつてこれに当らなければならないということは、商工大臣もみずから認めておられるやに考えてよいと思うのであります。でありますがゆえに、商工大臣從來唱えられておる自由経済主義というものは、一体どこへ行くのかということを実は承りたい。それはなぜそう申すかと言いますれば、つまり現実に必要とするところの経済上の計画というものを率直に認めて、そうしてその線に沿つて、すべての施策が行われなければならないという態度を明らかにせられないで、いたずらに自由主義を唱えられるがゆえに、その立てられた計画を混乱せしめるおそれがあり、ことに國民をいたずらに昏迷に陷れるという弊害があるからであります。この点をひとつ明確にお答え願いたい。
  95. 大屋晋三

    ○大屋國務大臣 松原君のただいまの御質問は、基本的の問題であり、かつまた程度の問題でございまして、ただいまも私が申し上げました通り、いわゆる十九世紀式の自由経済というものを——今日の極限された日本一國はもちろん、國際経済が相関連性を持つておりますし、また戰後いろいろな障害が惹起しております現状において、いわゆる手放しの自由経済を振りまわすという意思ば毛頭ないのでありまして、私どものいわゆる自由経済と言いまするものは、むろんある一定の前提を置いての自由経済であります。しかしながら時間がたつならば、行く行くの理想としては、できるなら障害のない、制約のない自由経済経済の実体である、本則である、人間の本能的心理であるという点につきましては、松原君はどうお考えになるかしりませんが、私はさようにかたく信じております。しからばお前はどういうことで自由経済を振りまわすかというならば、たとえば現在のわが國の貿易の面を考える、あるいは日常生活の大小の統制の面を考えてみますならば、あなたも十分御納得の行くところと思うのでありますが、今まで日本の貿易はいわゆる政府政府の貿易であつたのでありますが、だんだん日本経済の安定整備の度合いに應じまして民間の貿易を許す、いわゆる統制経済から自由経済に移行する、これが一つの形なのであります。政府の貿易ではいわゆるうまみが少いし、それに從事いたしまする人々の企業欲をそそらないということが、すべての経済原則として、どなたにも十分認識されることと思うのであります。また日常の経済の面においても、たとえば俗にしよつちゆう言われております生鮮魚介類の統制の問題でありますが、なるほど物資の非常に欠乏し、経済機構が紊乱いたしております場合において、いわゆる需給の関係、輸送の関係が紊乱いたし、アンバランスの場合には、これらのものを統制いたしてもよろしいのでありますが、もはや需給の面におきましても、配給の面におきましても、それらの懸念がなくなつたものは、公定價格をはずしまして自由自在に商品をつくり、何人もこれを自由に買えるような行き方をするという観点におきまして、私は統制経済にあらずに自由経済を叫ぶのであります。何もかも一から十まで百般の経済事象に対して、日本の今日の事情におきまして自由経済を振りまわすのでございませんから、その点は御安心を願いまして、私どもの今後の経済政策に対して御信頼、御協力を願いたい、かように考えておる次第であります。
  96. 松原喜之次

    ○松原(喜)委員 この問題につきましては、ただいま商工大臣がおつしやいましたように、自由党とし、またその一員である商工大臣として、將來は自由経済を理想としておる、しかし現在の日本経済は根本的に計画経済でなければ、これを実行することができないのだという、この大きな基本的な立場を國民に知らせ、誤りなきような態度に出られんことを、私は心から念願しお願いするものであります。  次に中小商工業の問題でございますが、まずこれに対する政府方針を具体的にお伺いしたいと存じます。さらに中小工業に対する金融の問題は、先ほどの田中委員に対するお答えで大体明らかになつたのでありますけれども、資材の面については何ら問題にならなかつたようでありますから、あわせて資材の問題についてどういうお考えであるかということを具体的にお示しが願いたいのであります。
  97. 大屋晋三

    ○大屋國務大臣 資材の面も金融の面とひとしく、中小工業振興のために重大なる問題なる問題でありますが、この面に関しては資材割当審議会というようなものができておりまして、この審議会にかけて適切な資材を敏速に適時に配給をするという面につきまして、從來よりも一層これを励行しなければならないと考えておる次第でございます。こまかい手続上の問題はいろいろ規定したものがございますが、大まかに申すならば、たとえば第二・四半期に資材を請求いたしておりましたものが、第三・四半期過ぎましてもこれが入手できないというような例がしばしばございますので、かような例のないように、敏速にその資材が中小工業の方面にまわるということを十分に徹底させるために、適切なるそれぞれの事務的方法を促進いたすというような考え方と、それからやはり中小工業の資材配分、割当、配給の点に関しましても、日本経済再建に貢献する順位の重きに從つてこれを行うというような大きな観点をとつておる次第であります。これを具体的に申すならば、輸出向産業資材は何ものより優先をいたしまして、適品を適時に、しかも敏速に配給するというような大きな考え方をもつてつておるような次第でございます。  中小工業の育成振興の眼点は、世間に言われまする中小企業の保護救済というような意味は私はとりたくないと思つておるのであります。もちろん御承知のように、中小工業と申しますると、非常に日本産業面におきまして重要なる地位を占めておるのであります。申すまでもなく、その工場の数におきましては、勤労者を十人以上二百人までの中に工業の工場の数は、全日本において九十パーセントぐらいになつておりまするし、労働者の数も中小工業が五十六パーセントを占めておる。大産業は四十四パーセント程度に相なつておるかと思うのであります。また生産いたされる物資にいたしましても、中小工業の生産量は金額といたしまして、日本の全産業の四十六、七パーセントを占めており、いかにも重大なものでございますので、私はこれが指導育成の方針といたしましては、大工業にとかく中小工業は圧迫される形で、しかもチヤンスを大工業のために奪われ、どうしても中小工業は第二次的に扱われておつた。これを原料をまず第一にまわして中小工業にベター・チヤンスを與えるという点に、私は第一の眼点を置いて行きたいと思つております。第二の眼点は、中小工業が公正なる競爭に耐え得る。しこうして單に日本國内だけでなしに、國際的の商品市場に向つて、採算がとれて、十分商賣が成立つて行くという点に眼点を置きまして、これを第二点といたして育成して行きたいと思うのであります。第三点は、かような意味におきまして、ある一定の示唆を與える。すなわち私の最も端的に考えておりまするところは、中小工業は御承知通り、ほとんど大部分が國内の消費資材生産から輸出の雜貨、いわゆる纖維業におきまする織物関係、機業関係におきましてもほとんど中小工業でありまするし、また炭鉱におきまするいろいろな必要なる機械器具の製作、修理というものも中小工業でございまするし、また陶器の工業、雜貨の工業というものは全部中小工業でありますので、先ほどの田中さんの御質問にもお答えいたしたのでありまするが、まずある一定の為替レートはおよそこれこれの程度にとにかくきめるのであるというような、たとえば目標を示しまして、ここまでおいでおいて、ここまで來られない者はもはや産業として成立たぬのであるというふうなぐあいに、中小工業者に自主的に、おれはあそこまで生産費を低減して行かなければとても存立しないのであるというような方向を示しまして、自主的にそこまで持つて行かせる。それを政府の方からある一定の点に限界を引きまして、これ以下のものはつぶすのだというような、戰時中にありましたいわゆる企業整備というような眼点でなくして、みずからがこの程度まで自分の仕事を改善して、自分の生産費を切下げて行かなければ、自分の仕事は存立の意味がないのだということを自覚させまして、そこでいわゆる自然淘汰をさせ、自分で納得ずくで、自分の仕事が継続もし、あるいはどうも見込みがないという区切りをつけさして行くような行き方が第三点であります。この一、二、三の大方針をもちまして中小工業の整備をやつて行きたいと考えている次第でございます。
  98. 松原喜之次

    ○松原(喜)委員 大屋商工大臣の御答弁を聞きますと、大体從來商工省で持つてつた方針で、從つて芦田内閣を通じて行われた方針がほぼそのまま踏襲されるものであるにすぎないというふうに考えられるのであります。それに対して必ずしも私どもは反対の意見を持つているわけではありませんが、しかしながらたとえば中小工業に対する資材の問題でございますが、一般に從來完成工業というものに重きを置きまして、それがゆえにその完成工業の下請をやつております中小工業が常に資材資金面において冷遇されている。完成工場すなわち親工場で必要な資材として割当てられているにもかかわらず、その下請をしている、実際使つている中小工業がその資材を受けていない。少くともそういう形のために、下請工業が不当な庄迫を受けているというような状態があるのであります。從つてわれわれは中小企業廳が出発するに際しまして、民自党をも加えて超党派的に、中小工業の資材資金については特別なるわくをとつて、これに特別な、公正なる待遇を與えなければならないということを主張したのでありますが、こういう点について將來は相当考えていただかなければならないと思うのであります。  さらにまた整備の問題でございますけれども、一定の示唆を與えて、そしてそれに近づくように自主的に努力して、その自主的努力にまつて、その上で倒れるものは倒れる、また存続するものは存続するというような考え方では、ほんとうに中小工業の生産力を維持することはできないのではないかと思うのであります。それはなぜかと申しますれば、何と申しましても、戰後中小工業における技術設備等が相当低下いたしているわけでありますから、これに対して相当な保護の手段、助成の手段を講じてやらなければ本來持つておりますその力を発揮できないというような事情のものも相当にあるのであります。從つてこれに対しては、大屋商工大臣の最もきらわれる言葉であるかもしれませんが、やはり一定の社会政策的な方針を加味し、しいて言えば、それがやがて日本産業復興方針ではありますが、しかしながら見たところ、表面的には社会政策的な分子も加味しながらやつて行かないというとなかなか目的は達しない。すなわち整備が日本生産力を不測に低下せしめるおそれがあるというふうに考えるのでありますが、この二点についてお考えをお聞かせ願いたいのであります。
  99. 大屋晋三

    ○大屋國務大臣 松原君はただいま私の中小工業政策は芦田内閣の政策とかわりはないと仰せられましたが、同じ物をつくります上におきましても、やはり職人が違いますと、そこに大分その製品のぐあいが違いますので、その点は自信のある製品を私はつくるつもりでありますから、ひとつ御信頼願いたいのであります。  なお末端に対して資材の配給が、從來はなはだ不十分であつたという御意見でございまするが、これはまつたくさような弊害が從來ございましたので、これに対しましては十分疏通をはかるべく努力いたす考えでございます。  さらに最後の点につきましては、私は企業に対しては社会政策的指導方針は、原則としては不適当であると考えておるのでありまするが、松原君の仰せのように、ある種のものに対しましては、單に経済の原則のみにあらずして、多少のさような観点を加えるところのものもむろんあろうかと思いますので、この点はかれこれ斟酌をいたしまして、御希望に沿うべく考えておる次第でございます。
  100. 上林山榮吉

    ○上林山委員長 この際田中源三郎君に対して運輸大臣に対する御質疑をお願いしたいと思います。
  101. 田中源三郎

    ○田中(源)委員 私はかぜを引いておるし、医者にも行かなければならぬから、あしたに延ばしてください。
  102. 上林山榮吉

    ○上林山委員長 それでは農林大臣に対する御質疑を継続願います。井出一太郎君。
  103. 井出一太郎

    井出委員 私はその前に議事進行に関連して発言をお許し願いたいと思います。もう遅いし、きようはこれで打切つて散会していただきたいと思います。
  104. 上林山榮吉

    ○上林山委員長 審議時間もないわけでありますから、再三御協力をお願いしておる通り、一時間や二時間くらいひとつがまんしていただけませんか……。
  105. 井出一太郎

    井出委員 それではただいま本会議で農林大臣の御答弁中にありました問題あたりからひとつお尋ねいたしたいと思います。  先ほど苫米地さんの質問に対して、日本農業における科学技術の問題、狹められた國土の中からできるだけの増産を期待しなければならぬ。日本農業のあらゆる科学技術を動員しなければならぬ。さような御答弁があつたわけでありますが、私はいわゆる民間技術とでも申しましようか、巷間いろいろな農法が行われておるのを承知いたしておるのであります。たとえば酵素肥料というふうなものについて、ないしは栄養周期学説等々ずいぶんいろいろな民間技術なるものがあるのであります。しかるにこれが巷間行われておりまする実情を見ますと、必ずしも科学技術にのつとつて、合理的な方法を採用しておらない場合も多々あるようであります。そうしてこれらの農法を信奉する諸君は、おおむね篤農家、精農家の人たちでありまして、非常なる熱意をこれに示しておる現状にあるのです。けれども一方オーソドツクスの立場にあります大学の試驗場とか、そういう立場ではこれを無視して行こうとしておる。私はこの二つの線がどつちかにクロスする場所がありはしないか。從つて大学試驗場等も、民間技術を率直に、虚心坦懷に受入れて、それから科学的な実驗成績を出して、その上に立脚した方策を打ち立てまして、いたずらにそういつた篤農家、精農家が單に精神的に誤つて信奉することのないように、もしとつてつて用いるべきものがあるならば、これを合理的に確立する必要があるのではないか、こういうことを痛感しておるのであります。とりあえずひとつこんな問題から御意見を伺いたいと思います。
  106. 周東英雄

    ○周東國務大臣 お答え申し上げます。まことに御意見ごもつともでありまして、私も多分に同感の意を表するものであります。從來ややもすると、地方には体驗に基いて実驗的によいとされておる農法、技術を篤農家あるいは精農家がやつておるというのに対して、いたずらに役所の方の試驗場あるいは学者等がこれを排斥しているというようなことは、今日最も除いて行かなければならぬ点だと思います。私どもは今日、お話のように地方の篤農家、精農家が学理的説明はできぬにしても、体驗上でき上つた一つのよき技術は、これに大学なり役所の方の試驗場等が科学的裏づけ理論づけをしてやる方向へこれを持つてつて、ともにともに持久度を高め、農法の改正をするようにいたしたいと、かように考えております。
  107. 井出一太郎

    井出委員 大臣がさようなお考えで御指導をなさるという点を伺いまして、大いに意を強うするわけであります。そこで私は日本の農政問題全般を見渡しましたときに、今までは片方に農地改革という問題が強く取上げられ、一方これに配するに農業協同組合を組織する。この二つがあたかも車の両輪のごとき状態において、終戰後における日本農政のほとんどすべてであつたかのごとき観を呈しておつたと思うのであります。そこでこの第三次農地改革につきましては——第二次を完遂し、第三次については、政府はこれを行わないということが先だつての安本長官の御演説でも明瞭に相なつたわけでありまするが、この第三次農地改革の内容、これを政府はどのようにおとりになつていらつしやるか。これをまず明確にしておいていただきたいと思います。
  108. 周東英雄

    ○周東國務大臣 四日の日でありますが、安本長官の演説の中で、現内閣は第三次農地改革は行わずと言いました趣旨は、巷間いろいろ内容についてまちまちでありまするが、言われておるところの第三次農地改革につきましては、なお地主として残つておる、すなわち一町歩未満の地主として残つておる者の土地までことごとく取上げよう、かくしなければ農村の民主化は行われずという主張に立つての第三次農地改革と考えておるのであります。わが内閣といたしましては、この意味においてはこれを行う必要はないということを申し上げておるわけであります。これは今日まで小作農家に非常に影響を與え、いわゆる封建的な影響力を持つてつたと言われるものはかくのごとき小地主ではなくて、大きな地主の問題であります。これらにつきましては、井出さん御承知通り、すでに大体今年末をもつて大地主の土地が政府に買い上げられ、これを小作農家に移して、土地所有権の移動の面から申しますと、一つの小作農家の自作自営農家にかわる仕事ができ上つて來るわけであります。むしろ今後におきまして、せつかくできた自作自営農家を中心にし、日本の健全な、そうして平和な農村を建設する上において農家経営も成立ち、農業の生産向上も成立つ方向へ、新しい農業政策の出発がなければならぬと思います。そういう意味においての農地改革、農業改革はやらなければならぬ。私どもが今考えておりますのは、でき得るならばこの大変動期において日本の土地の調査をし、そこに林野、牧野、耕地あるいはその他の土地等に対して総合的利用計画を立てて、その立地に基いていかなる農業を行わしめるかということが、農家経営の上から見ても、また日本が貿易依存体系をとつておる今日、農業の受持つ割合というものは大きなものがあると思う。こういう面から見て、新しい農地対策を立てて行かなければならぬ。いつまでも小兒病的に小さい地主をなくさなければ、農村の民主化ができないということに対しては、われわれはこれに反対するものであります。
  109. 井出一太郎

    井出委員 一町歩の保有地というふうなものについては、ただいまの大臣のお考え、よく了承をいたします。但しこの農地立法ができました当座を顧みましたときに、当時の農林大臣は、この一町歩というふうなものは將來のいわば緩衝地帶とでも言いましようか、農家の構成がどうなつて行くかもわかぬというような状態に即應するために、この程度のものは残しておく方がよりいいのではないかというふうな考え方に伺つたのでありますが、大体今日といえども、そのように了承をいたしてよろしいでございましようか。
  110. 周東英雄

    ○周東國務大臣 大体その線でけつこうだと思います。私は現在残つたものの中でも、不合理なものについてはこれを改革することはさしつかえありませんが、將來問題になりますのは、せつかくできた自作自営農家が土地を所有いたしましても、個々の面で將來働き手を失つて、小さな子供ばかりのときに直接耕作ができぬということが起る。そういう場合にどうするか。はたして耕作しないものを取上げるかというような面を考えるときに、実際問題として非常に不幸な面が起る。こういう面を考えあわせまして、必ずしも全部を取上げなければならぬとは考えておらないのであります。
  111. 井出一太郎

    井出委員 この農地改革を施行いたします場合に、基準となるべき時期は、たしか昭和二十年の十一月二十三日であつたと思います。その後において、わが國の農家の構成というものは大分変化があつたかと思うのであります。たとえば次男、三男のようなものが國へ帰つたという例もありましよう、あるいは引揚者の家族を收容しておるという農家もありましよう。そういつた意味で、一農家の内部における農業労働力というものが大分変化をしておる。ないしは、たとえば大家畜というようなものもその当時はなかつたが、今日は保有したという農家もある。さような意味から、かつて行われた第二次農地改革が私どもは農地所有という面に重心を置いてなされたものであると了解いたしますならば、農家の経営という面において、当時は配慮するところが非常に薄かつたのではないかと思う。從つてもしも今後——これは第三次農地改革と呼び得るかどうかは問題でありますが、いわば経営の面から再編成をするという意味で、もう一ぺん農地の関係を調整するというふうなことをお考えになつておらるるかどうか。この点をひとつ承りたい。
  112. 周東英雄

    ○周東國務大臣 お答えします。井出さんのお話のように、第二次農地改革までは、ともかくも小作農家に対して地主から土地を買い上げて、これを與えるという方面に主力を置かれた。言いかえれば、土地の所有権の移轉というものについてのみ主力が置かれまして、その後における経営の面からわれわれが考えておらなかつたことは事実であります。内から行われた農地改革ではなくして、ある意味では、他動的に行われた農地改革の結果でもあつた。その点につきましては、將來農地改革の根本、すなわち小作農家をして自作自営農家にするという根本には賛成であつても、この改革の途上においてできたいろいろな不合理な点については、是正を要するものと私は考えます。
  113. 井出一太郎

    井出委員 ただいま内地において約一町歩程度の地主に保有を許された部分につきまして、今日まだその土地をめぐつて若干の不安が残されておると思います。本年一ぱいぐらいで大体買收賣渡しが完了するといたしますれば、今後における農地の不安というものを解消せしむる方策を講じておかなければならぬのでありまするが、これにつきましても、残つた小作地に対する小作料の問題、石当り七十五円という数字では、これはあまりにもこつけいなほど、今日の一般物價その他から申しまして、お話にならぬものがくぎづけになつておる。こういうことでは社会的のバランスから見ましても、非常に不公正でありますし、また現実に小作地というものを許しておきながら、これが全然均衡を失した小作料にすえ置かれておるということによつて、それくらいならば自分で耕す方がいいとかいうふうなトラブルが、その安い小作料というものに端を発しておるという例が相当あるのじやないか、こう思うのでありますが、これに対する大臣のお考えないしはこれを是正するという方向が出て來ておるかどうか。かような点を承りたいと思います。
  114. 周東英雄

    ○周東國務大臣 お答えいたします。ただいま御質問なつた点等は、先ほど申しました農地改革の途上における不合理な点の一つであります。インフレのはなはだしくなつておる今日、今お示しのような小作料の價格というものが、いかに不合理であるかということは申すまでもないのであります。これをいかに是正するかというようなことにつきましては、目下愼重に考慮いたしております。
  115. 井出一太郎

    井出委員 先ほど御答弁の中に、山林、原野という問題が出て参りました。おそらく國土の一割六、七分しか耕地がないという日本において、耕作限界をさらに拡張して行くという場合には、國土の六、七割を占めておる林地へこれは食い込んで行くということはやむを得ないところであろうと思うのであります。けれども林地にはおよそ絶対的の林地と相対的の林地とがある。しかるにこの未懇地買收というような問題が若干行き過ぎまして、ただ單に、五万分の一の地図を廣げて、その中で傾斜度をはかつて、十五度以下の傾斜の部分は、これをことごとく開拓地として指定をするというふうな現象が、現に各方面に現われておるわけであります。そういつた報告は、おそらく大臣のお手元へも到達いたしておるのでありましようし、幾多のトラブルも御承知であろうと思うのであります。これに対して十月一日でございましたか、農林次官通牒として林地と開拓地との適正な調整をするという意味の通牒がたしか出ておると思います。しかしながら実際問題といたしましては、この通牒は一片の通牒にとどまる單なる行政措置でありまして、法的な基礎を持つておらない。從つて地方の農地委員会、あるいは府縣廳の農地部というような部面におきましては、ややともすると農地法の方が法的基礎を持つておる。開拓の方が強力なんだ。またこれこそ今、無上命法的な國策にのつとつておるのだ。こういうような点から、この次官通牒がほとんど顧みられておらないような面があるのであります。この問題について御所見を承つておきたいと思います。
  116. 周東英雄

    ○周東國務大臣 未懇地開懇の問題に対しましては、その途上において御指摘のような行き過ぎた点がたくさんあり、治山、治水のやかましい今日、いたずらに机上の計画に基いて林地が開拓されようとしておる事柄につきましては、根本的に再檢討を要するものと私は考えておるのであります。お話のようにこの点については、各地方で問題がありましたので、前内閣当時、十月二日でありましたか、すでにこの次官通牒を出されたのでありますが、お話のようにまだ十分に末端まで浸透しておらないうらみがあります。私ども重ねてこれに対しまして警告を発し、実行上再檢討を強くやつて行きたいと思つております。今中央におきましても、農林省におきましても、林野局、それから耕地課といいますか、それから開拓の方と関係して、委員会をつくつて審査しております。しかして地方においても同樣の趣旨のもとにこれを縣において実行さす。さらに村の方に至りまして、同じような趣旨のもとに委員会等をつくらせてやらせるということを考えておりますが、これはお話のように、もう少し強く檢討して行きたいと思つております。
  117. 井出一太郎

    井出委員 もう少し強くこれを檢討されるという御答弁でありますが、先ほども申しましたように、これが單なる通牒というだけでは、どうしてもバツク・グラウンドがないのでありまして、一つの單行法に持つて参るか、あるいは農地法の修正というふうな建前で参るか。とにかく何らかの立法措置を講じていただかないと、なかなか末端まで浸透しないと思いますが、この点について法の改正等の御用意がありますかどうか、この点をお伺いいたします。
  118. 周東英雄

    ○周東國務大臣 お話の点はごもつともであります。私は実は農地改革と未墾地開墾というものは、一應切り離して行くべきものであると思います。私は今日の農地改革の末端の協力をしております農地委員会等が、この未墾地開墾についての委員会等に参加することは少し無理ではないかと思う。つまり適任者がおらないのであります。こういう面から言いますと、これを一應切り離して農地改革は農地改革で進めて、そうして未墾地開墾につきましては、別個に進む方がよろしいと私は考えておりますが、それに関連して自作農臨時措置法の関係でやられておりますが、御意見もありますので、研究をしてみたいと思います。
  119. 井出一太郎

    井出委員 農地改革の進捗の度合でありますが、買收ないしは賣渡し、これが現在ごく最近のもので、農林省の手元にはどんな数字になつて現われておるでしようか。これは資料でもありますか。
  120. 周東英雄

    ○周東國務大臣 正確な数字は記憶しませんが、もし間違つたらあとで申し上げることにしまして、大体十月末でございますかにおいて、政府の買い上げた土地は約百六十万町歩、それに税の物納で收納したものが約十七万町歩、それからその他いろいろな関係政府の方に入つたものが四万町歩くらいになつており、合せて約百八十万町歩くらいになつてつたと思います。政府買收及び政府所有になつたものが同月同日の状態において賣渡しが決定しておりますものは百五十七万町歩であつたと思います。
  121. 井出一太郎

    井出委員 農地改革の問題はただいま伺つた数字で、これはよく進捗をしておると思うのでありますが、まだまだほんとうにこれが確定的に買收、賣渡しが済んで、一切の登記までことごとく完了し、しかも交換分合の問題等まで完遂をして、眞に農地改革の目的を——たとえば農村民主化、あるいは農業生産力の増大というような基本的な目的を達成して、日本の農村に民主化の傳統が打立てられるというのには、相当前途遼遠なものがあろうと思うのであります。從つてこの間における農地委員会の持つ職責というものは、相当に重大であると言わなければならぬのであります。聞くところによりますと、農地委員会の費用というものが、すでに農地改革は完了したのだというふうな考えのもとであるかどうかは存じませんが、著しくこれが閑却せられている。今回の予算措置にも、さような意味で農地委員会の経費というふうなものが、所期の目的を達成するほどに計上されておらぬという事実に対しましてはどのようにお考えでございますか。
  122. 周東英雄

    ○周東國務大臣 お話のように、農地改革も土地の移轉等の関係においては、ただいま申しましたような範囲に大体進んでおりますが、これとてもまだ代金の受取り、決済等、あるいは登記事務等が相当残つておるのであります。まだ年末以後相当続くものと思います。のみならず先ほど申し上げましたような意味において、農地改革の仕事もいろいろありますので、別に農地委員会の経費を軽視したというわけではございません。農林省としてもいろいろ要求したのでありまして、さしあたつて追加予算については遺憾ながら要求通りには計上できませんでしたけれども、なお今後二十四年度予算等については、ただいま申したような趣旨において、適当に増額等についても考えたいと思います。
  123. 井出一太郎

    井出委員 その問題については、先ごろ全國農地委員会の委員の大会が東京にございました。おそらくその決議等は大臣のお手元へも届いておると思うのでありますが、そのときの空氣等から申しますと、もしも予算半減というようなことがあれば、農地改革の事業が一頓挫をするのではないか、一種のデモンストレーシヨンでもあつたかと思いますけれども、こういう点については心配はないものであるか、その点をお伺いします。
  124. 周東英雄

    ○周東國務大臣 大体地方からいろいろ要望の金額はありましたが、それに対し農林省として、今日の事態を基にして考えて、これだけはという必要な経費の要求は大藏省に出し、大体相当額を認めてもらうようにお願いしておりますが、これが認められれば、一應今日の段階は切拔けて行ける、かように考えております。
  125. 井出一太郎

    井出委員 農地改革に関する問題は一應この程度にいたしまして、先ほど私は農地改革とあわせて農業協同組合の問題が、戰後農政の一つの大きな眼目であつたと申し上げましたが、本年春以來、全國にわたつて農業協同組合が着々と設立いたされまして、しかもそれは單に農業会の看板塗りかえではなく、眞に自主的に発足をした、しかも單なる流通面だけでなく、生産面に大きな意義を持つた組合として発足をしておるようであります。ただこれが各都道府縣における連合体として結成されまする場合に、農協法の上から申しますと、金融だけは別個といたしましても、他の事業体はこれを総合的に一つの連合体にすることが許されておるはずであります。けれどもその後当局の指導は事業面ごとにこれを分割いたしまして、幾つかの連合体ができたはずであります。しかるにまた最近その指導方針によりがもどつたのかどうか、どうやらその方向はまた元へもどつて総合的の連合体をこさえてもよいというような御指示があつたかのように聞いておるのであります。これは関係方面などの考え方ももちろんありましようけれども、せつかく芽生えて來たところの協同組合の指導にあたる——指導ということが本來あり得べきでないのでありますが、どうも協同組合を構成しておる人たちを非常に迷わせておるかのように思いますが、この際これを的確にどの線で進むべきかを明確に承つておきたいのであります。
  126. 上林山榮吉

    ○上林山委員長 ちよつと速記をやめて……。
  127. 上林山榮吉

    ○上林山委員長 速記を始めてください。
  128. 井出一太郎

    井出委員 ただいまの御答弁、これはまあ日本の現状として非常にむずかしい当局の御苦心のほどもあると存じまして、これ以上は追究いたしません。  なお今まではほんの序論でありまして、もう少しあるのでありますが、一應ここで打切つて、明日に保留をお願いいたします。
  129. 上林山榮吉

    ○上林山委員長 それでは明日は午前十時から会議を開きますから、御協力をお願いいたします。  本日はこれで散会いたします。     午後五時四十八分散会