○田中織之進君(続)
政府が買い上げました土地を農民に賣り渡すときには、農民は一時現金で支拂うのであります。買い上げた地主に対しては、御承知のように土地証券が交付せられるのでありますが、農民が、現在までの農地改革の進行につれまして、一時拂いの現金として
政府に納めたのは、五十八億円に達すると聞いておるのでありまするが、はたしてこの五十八億円の金がいかに運用せられておりますか、私は、この点を明確にいたしておきたいと思うのであります。
次に私は、供出問題についてお伺いいたしたいのでございます。供出割当の問題に関しましては、依然として農民は割り切れない氣持を持
つておることは事実でありまするが、
現下の
日本の食糧事情から見まするならば、一應この供出制度の必要を是認することは、やむを得ないと考えるのであります。しかしながら、その割当
内容がいかにも民主的にできておらないということが議会が開かれるたびに論議せられることによ
つても明らかであります。第一回
國会におきましては、院議をも
つて供出制度の民主化に関する
方針を決定いたしました。前
内閣は、完全ではありませんが、一應この割当に際しまして
実態調査を行う方法をと
つたのであります。しかしながら、この
実態調査は官僚によ
つて行われる結果、きわめて不公平な欠陷が現われておる。今回の事前割当にあたりましても、幾多の紛争が起
つていることも痛感せられるのであります、先日民自党の諸君も、この割当につきましては、きわめて非民主的な点があることを指摘せられた
通り、確かに問題は残
つておる。この残
つておる問題を、現
内閣はどういうように解決するかということを、私は伺いたいのであります。この
実態調査にあたりましては、農民組合等の民主團体を参加せしめることが絶対に必要であると考えるのでありますが、
政府として、その点について用意があるかどうかを伺いたいのであります。(
拍手)
次に、二十三
年度の産米の補正問題についてお伺いいたしたいのでありますが、御承知のように、本
年度の割当が決定いたしました以後におきまして、全國各地に災害が相次いで起りまして、そのために相当の減収を来しておるのであります。都道府懸知事から中央に要請いたしておりますところの減収は七百八十一万石、農林省自体の調査によりましても六百万石という数字が現われておるのであります。それにもかかわらず、最終決定は、中央補正において百六十五万石、地方補正七十四万石、合計二百四十万石にすぎないのであります。そのために、和歌山縣その他災害の最も深刻でありましたところの地方では、この
政府が決定いたしました補正では、どうしてもや
つて行かれない、供出を完了するわけには行かないというところから、強い再補正の要求が出ておりますが、はたして農林
当局は、この点についてどういう対策をも
つて臨まれようとするか。
私が、なぜにこの点を伺うかと申しまするならば、農林省
関係の災害による減収調査が、食糧
管理局自体におきましても三つにも四つにもわかれている。食糧事務所の方では全國で六百万石という、作物
報告事務所の
報告を集計すると二百五十万石、農林省の指導官が実地に各地を調査した数量が三百六十五万石、こういうふうに、農林省自体においても食い違
つているのでありますから、私は、二百四十万石の補正では不十分であると考えるのでありますが、再補正についてどういう対策をとられるか、この機会に明確にしていただきたいと思うのであります。
農民の、自然的な條件、災害等に対する闘争を通じまして、たゆまざる
努力によりまして、今年の十一月から一般配給が二合七勺に増配せられ、また十月から、労務加配があるいは範囲拡大され、また増量されているのであります。しかしながら、この食糧の
生産に従事するところの農民に対する四合の保有の問題は、再補正の問題が実現しないとするならば、この四合の保有を切
つて供出しなければならないという
事態が起るのであります。ただ單に轉落農家の飯米問題ではなく、供出するときから保有米を持たない農民がいるという事実を十分認識せられまして、補正について積極的な
努力を要求いたしたいのであります。同時に私は、供出農民に対する保有四合を引上げることが必要であると考えるのでありますが、農林
当局はどういう考えを持
つているか。この保有米の引上げについても、明確なる
方針を承
つておきたいのであります。
第三に、私は農産
物價格の問題について伺いたいと思うのであります。昨年十二月十日の第一回の
物價改訂にあたりまして、御承知のように昭和九年、十年、十一年の三年を基準といたしまして、一般
物價はこの基準年次に対して六十五倍、農産物は六十二・五倍に決定せられましたことは、当時民自党の諸君が大いに攻撃したところであります。かくのごとく、新
物價体系におきましても、工産品と農産物との間には大きな價格差があり、負担はすべて農民に轉嫁せられておるのであります。しかしながら、二十三
年度の産米の買上げ價格の決定にあたりまして、
政府は、われわれ
日本社会党並びに農民党、あるいは協同組合方面を代表いたしまするところの
國民協同党、農村
関係の
議員が一致して要求いたしましたところの四千二百円の要求に対しまして、はるかにこれを下まわるところの三千五百九十五円に決定をいたしたのであります。これは、昭和九年、十年、十一年を基準といたしまする指数から申しまするならば、一般工業品に対する百十倍に対して、米價は百三十二倍と、確かに指数の上では有利にな
つておるのでございますが、私は、それでもなお工業
物價と農産
物價との間には大きな價格差があると信ずるのであります。何となれば、基準年次の昭和九年、十年、十一年は、
日本の農村にとりまして不況のどん底であ
つたのであります。当時、農産
物價格はきわめて低價格であつたというこの價格差を、そのまま今日の米價決定にあた
つて、これを再現しておるというような米價決定の方式に対しましては、われわれは納得することができないのであります。(
拍手)
あるいは農林大臣は、この米價は前
内閣当時にあらかた決定いたしたものを、現
内閣の成立によ
つて引継いで、何らの檢討を加えずに決定したものであると、お答えになるかもしれません。それはまた事実であろう。しかしながら私は、もしも現
内閣あるいは民自党の諸君も認めるように、現在の三千五百九十五円が不当であるということを考えたならば、これを勇敢に四千二百円に引上げるところの処置を講ずべきであると考えるのでありまするが、米價を四千二百円に改訂する
意思ありやいなや、明確に伺いたいのであります。(発言する者あり)君たちも反対しておつたという事情は、ぼくは率直に認めて、現
内閣においてこれを改めてもらうことを要求しておるのである。
政府は、今回
提出いたしました予算において、石炭その他のいわゆる安定帶物資に、なけなしの
財源の中から百十億というところの價格調整金を計上しておるではありませんか。私は、米價そのものの改訂が不可能だといたしましても、少くとも價格差
補給金の形において農民の損失を補填してやることが必要であると考えるのでありますが、これら
補給金対策についても何らか用意があるかどうか、明確にしておいていただきたいと思うのであります。また米價の決定にあたりまして、第二回
國会に院議をも
つて決定いたしましたにもかかわらず、依然として、農林
当局が
物價廳と相談をいたしまして、か
つてに米價を決定しておる。私は、
財政法第三條を改正いたしまして、米價の決定にあたりましては必ず
國会の
審議にかけるという
原則を確立してもらいたいと思うのでありまするが、米價その他の農産
物價格決定にあたりまして、
財政法第三條に基いて
國会にかける用意があるかどうか、このこともあわせて伺いたいのであります。
農産
物價格の実情を静かに考えてみまするならば、私は、農民が損をすれば泣寝入り、一般工業資本家が赤字が出れば
補給金という形において、まさに泣きもうけであるといわざるを得ないのであります。一体、こういうような不公平な
政治が
現実に行われて、はたしていいものでありましようか。この点は、農林大臣でなくても、総理大臣からでも明確にお答え願いたいのである。
この農産
物價格の問題と関連いたしまして、米の消費者價格が五千百五十円に決定された。この間、
生産者に拂うところの三千五百九十五円との間に約千五百円の開きがある。一体、この消費者價格と
生産者價格との開きは、いかなる根拠から出ておるものか、はたしてこの金はどこに使われておるか、明確にしてもらいたいと思うのであります。あるいは行政費の問題、あるいは
公團の手数料、あるいは、ただいま民自党の諸君が主張せられておるように、いろいろ問題がある。残
つておる問題を、現
内閣は勇敢に解決すればいいじやないか。
公團の問題につきましても、いろいろの問題が起
つておる。あるいは不正事実がほとんど全國にわた
つて報ぜられておる実情にあたりまして、これらの
公團の経理の監査等に対しましても、現
内閣としていかなる対策を持
つておるか、あわせて伺
つておきたいと思うのであります。
第四に、私は農業課税についてお伺いをいたしたいと思うのであります。農民は、御承知のように一定の面積を耕作して
生産物を出しておる。從
つて、その
生産物の量は、今日のように供出制度が行われでおる以上、明確につかまれておるのであります。しかしながら、工業
生産品にいたしまするならば、まず第一に規格が統一されておらない。また現在の機構と官僚の能力では、これらの
生産量を的確に押えることは不可能であると私は考えるのであります。そこに、いわば工業経営には彈力性がある。また
経済の動きに従
つて、不利益であれば、いつでもほかに轉換できるが、農業には、御承知のようにそういう幅はないのであります。米價が引合わないから
といつて、農民は別の仕事に轉換することはできない実情にあるのであります。それにもかかわらず、現在の農業課税の
実態を考えてみまするならば、営業あるいは事業と同一の感覚をも
つて、これに対して課税をいたしておる。
また、昨
年度の税金の実績を考えてみまするならば、農民はやみをしておるということを前提として、二割も三割もよけいにぶつかけるような始末をしでかしておるのであります。この点に対しましては、盛んに現在の與党の諸君からも攻撃されたところでありますが、現
内閣は、これらの問題に対して、改めようとはしておらない。現に、この
國会に
提出いたしました追加予算におきまして、農業所得税に対する
水増しを相当見込んでおるという事実を、私は指摘しなければならないのであります。やれ
官公吏の給與である、やれ災害対策の経費であると、涙ばかりの予算を計上しておるけれども、その
財源として四百億からの税金の
水増しをいたしまして、農村所得の問題につきましても、先般の予算
委員会において明らかにされておりますように、平均いたしまして約六万六千円の所得という算定のもとにこれらの追加予算を
編成しておる
態度は、納得が行かないのであります。農業所得の算定にあたりまして、いわゆる必要経費の中に、農民の自家
労働を一銭も必要経費として認めてや
つておらないという事実を、われわれは見のがすわけには行かない。従
つて、農業所得税に関する税法の根本的改正と、農業所得税の課税に対する思い切つた軽減をはか
つていただきたいと考えるのでありますが、この点に対して、農林大臣としてはたして用意があるかどうか。また大藏大臣は、この
財政遂行の見地から、農業課税に対して、もつと思いやりのある
態度をとらなければならないと思うのであるが、ただ事務
当局から借りて来たものを読み上げるのではなく、泉山三六君自身の
信念のあるところの答弁を煩わしたいのであります。
私は、農業課税の問題につきましては、同時にわが党が主張しております、農民が要望いたしておりますように、早場米奨励金、あるいは超過供出に対する全面的な免税を要求いたしたいのであります。超過供出の問題につきまして、超過供出をすることによ
つて責任供出量を果すことによりまして、農民が借金を負わなければならないというような実情は、かえ
つて供出を阻害するものだと考えるのであります。この際、超過供出に対しましては免税するのであるという明確なる
方針を、この議場を通じて明らかにすることによ
つて、超過供出をさらに達成するような方向に向
つて進んでいただきたいと思うのであります。
またこの機会に、私は、民自党が
在野時代から唱えております供出完了後の米の自由販賣の問題につきまして、やれ時期と方法を研究しておるというような無責任な答弁をせずに、できないならできないということをはつきり答えていただきたい。何となれば、超過供出で行くのか、三倍の價格で買い上げるのか、あるいは自由販賣で行くのかが明確でないために、超過供出が足踏み状態にあるという事実をわれわれは見のがすわけには行かないのでありまして……。
〔発言する者多し〕