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山下春江君
昨晩本
会議で私が
一身上の
弁明をいたしました
泉山大藏大臣の、あえて暴行と申しますか、その
事件に関しまして、
お尋ねにお答えをいたしながら
眞相を発表いたしたいと思います。
昨晩六時半ごろと思いますが、私
ども大藏委員会の
委員全体は
泉山大藏大臣の
招宴のため、
参議院の
食堂に
参つたのであります。しばらく待
つておりましたが、
泉山大藏大臣は遅刻をいたされる由でありましたので、
塚田政務次官があいさつされて、
懇談会は先に開かれました。しばらくして
泉山大藏大臣は來られたのでありますが、何でも二、三ばいお酒を飲まれたと思うころ、そこに給仕に参りました
食堂の女中を、首の所を何か抱きかかえた
ようなかつこうをして、これは私のたいへん
好き——と言いましたか、愛しておると
言つたか、何でもそういう
婦人だから御紹介いたしますということを申しておりました。ずいぶんこの方は、こういう所に來れば豪胆な
行動をする人だなと私はその時感じたのであります。私は、
泉山大藏大臣だけではないのですが、
泉山大藏大臣に向
つては、たしか二回ぐらい杯の献酬をした記憶があります。その後
泉山さんは席を立
つて、
自分でずつと
テーブルを酌をしてまわ
つておられた
ようであります。そうして
テーブルの突当りに腰をかけて、そこにまた前の
婦人が料理か何か運びましたのをつかまえて、しばらくそこでふざけて飲んでお
つたことを私は目撃いたしました。そうして大体一周されて、その間に、十四、五人あ
つたと思いますから、そのくらいの杯の應酬を経て、その時には私の隣席にすわ
つていた
塚田政務次官が席を立
つておられましたので、これも酌にまわ
つておられたと思います。その私の隣の席が空席にな
つてお
つたので、
泉山さんはそこに腰をかけました。その腰をかけてから後の
泉山さんの
態度は実に不都合な
態度でありましたけれ
ども、
酒席というものは、あまり固苦しいことを
言つては、かえ
つてお酒を召し上る
皆さんにも感じが
惡いし、私もさ
ようなやぼを言う
人間でもございませんので、がまんのしづらいところをがまんしておりましたが、そのうちに
泉山さんはもうこんな所はつまらないからほかへ行こう、こうい
つて私の右腕をつかんで立たせ
ようとしました。私が立たなか
つたために、いすが横になりまして倒れそうにな
つたので、私は立ちました。立
つたとたんに彼は非常な力を出して私を
廊下の方へ連れ出したのであります。それに反抗したのですが、
かなり力のある人で
廊下のまが
つたところの階段におりるまん中辺まで來て、何をするんですかと
言つたところが、やかましいことを言わないでも、ここにはだれもいないよ、こういうことでした。私もはたを見ましたところが、なるほどだれもいないことに初めて氣がつきました。けれ
ども、
泉山さんの力は
かなり強いのと、その
言動、
行動が非常に狂暴なものがありまして、しかも私は
日本の
大臣がこういう行いをなすであろうかということを想像されない
ような、まことにここで発表することは
泉山さんの
人格の上からも、私自身も口にいたしたくない
ような
行動を彼はとりました。そこで私はやむを得ず、彼の力まかせに抱きしめておる中ですから、あちらこちら頭を振りまわしておる間に、私の
左あごのところに今傷がついておりますが、彼が多分私の皮膚が切れたのではないかと思うほど非常にひどくかみつきましたので、思わず私は右の手で彼をなぐりつけました。それでやや手がゆるみましたので、私は抱きかかえておる手の下をもぐ
つて、私はもとの
参議院へ帰
つて行きました。
事件といえばそれだけでありますけれ
ども、彼はその間に、どうするんだ、そもそもあなたは今晩醉いどれていられる
立場の方ではないじやないですかと言いましたところが、なに、
予算なんか、酒飲んでそんなことを
考えるものじやない、今からどつかへ行こうや、こういうことを
言つておりました。いずれにしましても、その
言動、
行動は、私は
日本の
大臣で
かくのごとき下等な品位の人がおるということを
昨晩初めて目撃いたしました。
泉山大藏大臣には
大藏委員会において私はた
つた一回
質問したことがあります。
大藏委員会には絶対
出席しない人でありますが、たまたま一回出て來たときに、私は
專賣公社法案のことについて
質問したことがあります。そのときと
昨晩と二回きり、私は
泉山大藏大臣とは口をきいたことも、
廊下ですれ
合つて話をしたことも何にもない、縁もゆかりもない
人間なのであります。
從つて私に、君が好きだという
ようなことを一方的に言いましても、そんなことは私とは何ら
関係のないことであ
つて、そういうことのために彼が言いのがれんとすることは私は断じて許しませんのみならず、いくら
政治家のはしくれであ
つても、私も一個の
國会議員であります。彼
大藏大臣といえ
ども、私は彼にさ
ような
侮辱を受ける覚えは毛頭ありません。しかも新憲法のもと私
ども四千万の
女性の中からた
つた十五人選ばれておるその一人が
かくのごとき
侮辱を受けるのであるならば、
日本の多くの
女性たちの中で、
かくのごとき封建的な
かくのごとき凶暴な品性下等な
男子の
暴力に泣かされておる
婦人が幾人あるかいうことを思いめぐらしますときに、私は一身を犧性にしても
日本の
女性たちを正しく守らねばならないために、とことんまで鬪いたいと存じます。あるいは
酒席のことですから、私も醉
つていたのではないかというお疑いがあるかもしれません。しかしこの
事件直後に本
会議において私は
一身上の
弁明をいたしております。その
一身上の
弁明の
速記録を私まだ読んでおりませんけれ
ども、それが醉つ
ぱらいの言つたことで論旨不徹底な点があるならば、それは醉つぱらいと御推察いただいても差支えありませんけれ
ども、私は醉
つていなか
つたということを附言いたしまして、
昨晩の情景をこれで終る次第であります。