○
今井政府委員 午前中の
大臣の
説明に補足いたしまして、若干技術的な点、ないし事務的な点を御
説明申し上げます。お手許に
資料を差上げたと存じますが、その中の
給與関係経済指標一覧表というのがございますが、これをごらんくださるとはつきりいたします
ように、
民間賃金は一月が税込みが二千九百五十一円、これが漸次上りまして九月が五千八百四十一円に相
なつております。これを指数で現わしますと、一月を一〇〇として九月が一九七・九に相なります。なお一番上の覧にあります消費者
物價指数、いわゆる俗に申すCPI、これは一月の二八六・五が九月は四一七・八、一月を一〇〇としまして九月が一四五・八、すなわちCPIの足取りより、
賃金の足取りの方が高い、こういつたことが本年の特徴に相
なつているわけであります。申し添えますが、昨年は九月に
ちようどCPIが倍額に増加いたしましたが、本年はそれが半分以下にとどま
つているということが、本年の経済の特徴に相
なつております。なおその次の欄にあります消費者價格調査
生計費、一世帶当りの毎月いくらかかるか、この数字が、一月が六千四百九十七円でありましたが九月に九千二百十円に相
なつております。この実際にかかつた
生計費を
物價の上つた割合で割りますと、そこに
消費水準というものが出て参るわけでありますが、それが下から三つ目の欄にございます。これを指数で現わしますと、一月を一〇〇とした場合に九月が一〇〇・四、鉛筆で直してありますのは、これは実は日数が月によ
つて違いますので、それを
調整したものであります。すなわち
國民の
消費水準は一月以降はほとんど動いておらない。実に落ち着いておるということがはつきりわかるわけであります。そこで
官公吏の
給與をどこにおくかという問題でございますが、
官公吏ももちろん
労働者でございますので、この勤労統計に現われました実質
賃金の向上というものを
考えなければならぬことは申すまでもありませんが、同時にまた
國民の
消費水準も考慮する必要があろう。特に
官公吏はその仕事の性質上、物の増産とか、あるいは利益とかというものと見合いませんので、
民間の
賃金が非常に上る場合にも、それに必ずしも比例すべきでないのではなかろうか。また一面
民間の
賃金が反対にいろいろな
関係から非常に下ります場合にも、また別の角度で動くべき性質をも
つておりはしないか。こういつたことが今回の
政府案の
考え方の骨子に
なつております。
民間の実質
賃金は、その一番下の欄にございます
ように、税込みにしまして一月から九月までの間に一三五、税引きにしまして一四三、非常な向上を示しておるのでありますが、さらにこれを十一月に延ばしますと、これが一五〇以上に
なつておろうかと推定されるのであります。これを一月に対しまして、大体三割の増を押えましたものが、今回の五千三百円の
基礎に相
なつております。ただか
ように申し上げましても、これは單に
國民の
消費水準の價格と実質
賃金の價格とが、一月以降どう動いておるかということを立証しただけでございますので、さらに勤労者の実際の
生活水準が、絶対額におきまして、
一般國民の
消費水準とバランスがとれておるかどうか、こういつた問題が当然起
つて参るわけであります。その点は御
承知の総理廳統計局でCPSと兼ねまして、七月以降の
國民の、いわゆる勤労者の收入調査をいたしました。俗にこれをFISと呼んでおりますが、このFISに現われました勤労者の七、八、九におきましての
生活費は、七月が八千九百四十一円、八月が九千九百二十三円、九月が一万二百八十八円、か
ように相
なつております。達観いたしまして、
國民の
消費水準と勤労者の
水準はおおむねバランスがとれておると、か
ようにも
考えられるのではなかろうかと存じておる次第であります。
そこで具体的な問題に入るのでありますが、今回の
政府案は、
人事委員会の
勧告を極力尊重する建前と、なお
人事委員会の
勧告の
内容がわかりましてから初めて作業いたしました点等もございますので、基本的な
考え方は
人事委員会の
考え方を
基礎にして出発しております。
人事委員会の今回の案の骨子は、成人
職員のいわゆる乙地における七月の
生活費を二千四百七十円、こういうふうに押えておるのであります。この二千四百七十円から税金と共済組合の納付金とを控除しまして、手取り二千二百四十円というものが、七月における必要な経費、か
ような
考え方から出発しております。そこで
政府におきましても、この二千二百四十円は長い間かかられての
人事委員会の御
研究の結果でもありますので、これを
基礎にして
考えたのでございます。ところがこの二千二百四十円は、申すまでもなく七月の数字でございます。七月のCPIはそこにもございます
ように三九四でございます。八月には若干上
つて四二〇になりました。九月には下りまして四一七と相
なつております。十月はさらに下りまして四〇七、か
ように
なつております。われわれはこれが十一月には四二六に相なるものと、か
ように推定をしてそれだけ二千二百四十円をふくらましました。さらにこの四二六が明年三月までにはさらにもう一割上るであろう。從いましてその一割の上り方を中位を取りまして、五%だけの余裕をその上に加えたのであります。そういたしますと、手取りにしまして二千五百四十二円——二千二百四十円という
人事委員会の七月の数字は、二千五百四十二円にならなければならぬ。か
ような
結論が出て参つたわけであります。この二千五百四十二円に税金と國庫納金、共済組合納付金、この共済組合納付金は実は
職員の性質によりまして、これだけ要らないものもあるのでありますけれども、今一番多いグループを取りまして、両者を加えますと、二千八百三十円に相なります。この二千八百三十円は乙地の成人
職員の
生活費でございますので、これを例の地域給の率を使いまして、それから一割引きますと、二千五百七十二円という数字が出て参ります。裸の数字でございます。この二千五百七十二円に当りますものは、技術的に申しまして、ただいまの職階制では四級一号ということに相
なつております。
人事委員会の
勧告もさ
ように指定して参
つております。それを採用いたしますと、現在そこに当る人は千九百五十円の本俸でございますので、千九百五十円の本俸の人が二千五百七十三円にならなければならない。
從つてこれを割りますと、そこに三割二分という数字が出て参ります。三割二分だけ現在の三千七百九十一円
ベースの本俸をふやす必要がある。か
ような
考え方に基きまして、むろんただいまの職階制を檢討いたしますと、この増俸割合につきましては、いろいろ議論も出て参ろうかと思うのでありますが、何分にも急ぎました
関係、切りかえの便宜等もございますので、この三割二分を一齊に上から下まで均一に乘じました。そうして本俸の差額を出す。か
ような
考え方に相
なつております。
それから次には、順序は悪うございますが、地域給の問題でございます。地域給の点は、現在全官公廳におきまして、一番厄介な、一番解決の困難な問題でございますが、これにつきましては、去る第二
國会におきまして御議決になりました
法律第四十六号の規定に基きまして、
政府におきましては地域給
審議会を設けまして、全官公廳の各組合から一名ずつの
委員の御参加を願いまして、約四箇月にわたり議論を重ねたのであります。これの最もむずかしい点は、
生活水準の違
つているものを、どういうふうに
調整するかという点でありました。長い
審議、いろいろの
資料をお互いに持ち寄りました結果、結局四割を最高にしまして、五分刻みで行うことが、この際としては適当である。日教組の一
委員だけが、これに対して
少数意見として現状維持ということを言われましたほかは、絶対多数をも
つてこの案に決定をしたのでございます。そうして
政府の方に答申が出て参りました
從來の
関係もございますので、
政府としてはこの案を採用することがこの時代に最も適当である、か
ように
考えまして、地域給はこの案を採用する建前に
なつて参ります。
それから次に家族給でございますが、今回の
人事委員会の案は、家族
手当で家族の
生活費を全部まかなうという建前に
なつておるのでありますが、現在の本俸の支給の仕方には、理論的には議論の余地があるかもしれませんが、本俸の中に勤続によ
つて昇給して行くという部分、すなわち、家族の
生活費をカバーする部分を含んでおりまするし、またそういうふうにいたしまして、だんだん家族
手当は減らして
行つて、平時経済に
なつたならば、全部本俸一本にするということは正しい道の
ように認められまするし、さらに一昨年來わが國に参りました米國の労働
事情調査團の報告書の中にも、この点ははつきりうたわれてもおりますので、家族の
生活費全額を
政府が持つという
考え方は、
民間の
給與の実態その他から
考えましても適当でない。
民間の実態からいたしますと、おおむねただいま
月收の一〇%ないし一五%
程度に相
なつている
ように見受けます。今回の
人事委員会の
給與に対する
勧告は、これが約三〇%に相なるのでありますが、
政府といたしましては、
民間の家族
手当の
現状等からいたしまして、妻を六百円、家族を四百円といたしたのであります。なおこれと合せて申し上げますと、先ほど申しましたFISの
資料によりますれば、世帶收入の中で、世帶主が勤労によ
つて得ます部分は約八〇%という調査結果が出ております。すなわち家族の中にも收入を得る人があるということが、
資料的にも現われている点をここに考慮いたしました。なおもう一言申し上げておきたい点は、すなわちこれが
生活費をどのくらいカバーするかという問題でございます。これにつきましては一枚目の表の次の欄にございます
ように、この問題はやり方が非常にむずかしいのでありますが、われわれの方では便宜本年一月の臨時
給與委員会でやりました方式そのままを採用いたしました。すなわち
平均家族数を一・五人であるといたしまして、乙地におけるCPS、これの九月は七千八百五十三円でありますが、これを二・五人の家族数に引き直す場合には、昨年以來六一・二五%という数字が普通使われておりますので、その数字を採用いたしますと四千八百十円という数字になります。この四千八百十円は五千三百三十円
ベースの税引である四千九百五十七円に比べますと、そこに若干の余裕がございます。一月の臨時
給與委員会では、乙地のCPSの九〇%をカバーするという目標で
結論が出されたのでありますが、それに比べますれば同じ方式でやりますと、このくらい上つた数字が出て参ります。
数字的な
説明はそのくらいにいたしまして、以下
法律の條文につきましてごく
簡單に申し上げておきます。今回の
法律案は建前といたしまして、去る第二
國会を御通過願いました
法律である俗に申します二千九百二十円の
法律を、そのまま延長するという
考え方でできあが
つております。從いまして、きわめて
簡單な書き方をしてございます。必要な数字以外には全然手を触れないという
考え方でございます。すなわち第一條はこの適用者の
範囲を、
從來の例によりましてきめたものでございます。第二條は
法律第四十六号を使うということを單にうたつたものであります。第三條は本俸の表を三割二分の
方法で全部増しているということの
説明だけでございます。このうちの三号に少しむずかしいことが書いてございますが、この三号の文句は、職階制をとりまして以來、その
俸給の幅の外に出ている人間が暫定的に出て参つたわけでございます。この
関係はこの前の
國会でも問題になりましたが、去る四月の
政府対全官公の妥結の際に、例の十六割を確保するという約束がございましたので、職階制の本來から申せば、そのわくの最高を超える
俸給は受けられないわけでありますが、それを当分の間十六割をかけて、その額は確保し
ようという、ああいう約束から出て参つた例外者が若干あるのでございます。その人
たちも同じ
ように三割二分の増俸を受けるということを規定したものでございまして、その意味から言いますと問題を含まない規定かと存じます。四号、五号につきましては、これは俗に申します最低年齡保証給という規定でございまして、これは昨年の二・一ストの解決のために設けられました全官公のインフレ対策
改善委員会の席上におきまして、一定の年齡ごとに、いかなる職種に從事するとを問わず、ある
程度の金額はこれを保証するという約束がございましたが、その約束をそのまま活かしまして、
ベースの上つた割合だけふやして行くという意味のものがこの規定に
なつております。第四條は
扶養手当の月額の変更がうた
つてあります。なお
地域手当につきましては現在の
法律四十六号は割合を明示してございません。この割合は別に定めることに
なつておりますので、この点は
法律の改正は要しませんので、
予算はさ
ような見地で見積
つてございますが、
法律の條文は落してございます。附則につきましては特に申し上げる点もないかと存じます。ただ第七條は、法四十六号の有効期間を一箇年延長する。むろん
人事院規則が出ましてストツプする場合は別でありますが、一箇年延長するという規定でございます。これは
人事院の
勧告にもございました線を、そのまま採用いたした次第でございます。