運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1948-12-06 第4回国会 衆議院 外務委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十三年十二月六日(月曜日)     午後二時十五分開議  出席委員    委員長 生越 三郎君    理事 和田 敏明君       幣原喜重郎君    竹尾  弌君       加藤シヅエ君    竹内 克巳君       戸叶 里子君    馬場 秀夫君       細川 隆元君    園田  直君       並木 芳雄君    松本 眞一君       野坂 參三君  出席國務大臣         外 務 大 臣 吉田  茂君  出席政府委員          外務政務次官 近藤 鶴代君           外務事務官 大野 勝巳君  委員外出席者         專  門  員 佐藤 敏人君         專  門  員 村瀬 忠夫君 十二月六日  委員山口靜江君辞任につき、その補欠として戸  叶里子君が議長の指名で委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した事件  平和会議促進懇請等に関する説明聽取     —————————————
  2. 生越三郎

    生越委員長 これより会議を開きます。  本日は平和会議促進懇請その他に関しまして、特に和田委員より発言の通告が参つておりますので、これを許可いたします。和田委員
  3. 和田敏明

    和田委員 私は第一には、一昨日の新聞に出ていた、天皇アメリカ大統領に対するメツセージの問題について御質問申し上げます。  連合軍占領下において、いまだ政府外交権は復活されていないのでありますが、突如としてああいうことが新聞に出たことは、きわめて驚くべきことであり、またわれわれとしては実に奇異の感に打たれたのであります。外務省もまた外交委員会も、われわれが外交権を持つていないというがゆえに、相当愼重な態度をとつておるのに、天皇のみがあたかも一つ特権を持つておるかのごとく、日米関係緊密化に努力するとか、あるいは立憲的な君主として日本民主化のために努力するとか、またはなはだおかしいのは、日本参議院アメリカの上院と同様のものにしたいといつたふうな事政務にわたるところの発言天皇がしているのであります。まずこの点について、こういつた重要なメツセージ、そのメツセージはいかなる形で行われたにせよ、一体外務大臣はこれを関知していたのかどうか。その間の事情をまずお伺いしたいのであります。
  4. 吉田茂

    吉田國務大臣 お答えしますが、今日天皇陛下とトルーマンとの間に、キーナンに託してどういうお話があつたか、私は全然存じないのでありますが、しかし今お話通りに、今日日本外交関係は開かれておらないのでありますから、元首から元首への公の資格においてのお話があつたとしたところが、それは事実なかつたろうと思います。また國務に関することであれば、陛下は必ず外務大臣を通じ、もしくは外務大臣の助言を求められるはずであり、また從來そうであつたのでありますが、國務関係しないからこそ、何のお話もなかつたのだろうと思う。それからはたして新聞にあるがごときお話があつたかどうか、これも私は知らないが、しかしかりにあつたところが、それは陛下のいわゆる私のお話であつて外務大臣は関知すべきところでもなし、また陛下からお話もないであろうと私は思います。
  5. 和田敏明

    和田委員 私は土曜日に特に外務大臣出席を要求してお聞きしようとしたのでありますから、土曜日から今日までの間において、そういつたことがあつたのかどうか、外務当局をして調べさせておくのが私は当然だと思う。今ここに出て來られて、私はそういうことがあつたかどうか知らないということは、実はわれわれとしてははなはだ遺憾なのです。今外務大臣個人としてとおつしやいましたが、これは書記長個人としてというかつての例もあるように、天皇個人としてということはもちろんあるでしよう。天皇も人間でありますから、個人ということもあるだろうが、しかし新聞にもああいうふうに出ると、日本外交権が停止されておるにもかかわらず、天皇のみがあたかも特権を持つておる。しかもあの新聞を頒布することによつて國民には依然として天皇が相当政治上の権限を持つておるという印象を與える点が、私は非常に重大だと思うのです。それが大臣を特にお呼びして、緊急に質問する必要があると思つてお聞きした理由なのです。あなたは今あまり政治的な問題はないとおつしやいますが、しかしあの中には相当政務にわたる重要な発言があると思うのです。日米関係緊密化するとか、あるいは日本國内政治において民主政治を十分にやつて行くために、自分立権君主として云々といつたようなこと、あるいはさつき申した参議院の問題などは相当政治にわたるあれであつて、やはりこういうことはかりにあつたとしたら、政府としてはやはり天皇に警告すべき案件だと思うのです。その点どうお考えですか。
  6. 吉田茂

    吉田國務大臣 キーナンが承つたということでありますから、マツカーサーに直属しておるキーナンにそういうお話があれば、まず第一にマツカーサーから抗議が出て來るはずだと思います。出て來ておらないところを見れば、事実そういうことはなかつたのであり、また新聞に出たからといつて一つ一つ陛下が御責任をおとりになりますまいし、外務大臣としても新聞に出たからといつて、ことごとく責任をとるわけには行きません。
  7. 和田敏明

    和田委員 それはもちろんそうですが、しかし私はやはり現在の段階から言つて重要なことであり、わざわざこのことについてあなたに質問を通告して案件を明示しておる以上、もう少し眞相をお調べなつたらどうですか。そしてまた事実そういうことが起つたとしたら、天皇に私は警告すべきだと思うのです。天皇は相当今すべての政務に関する権限を奪われて、そういうことをなすべき地位にある方じやないのだ。この際あなたは天皇に嚴重に警告する責任があると思うが、どうお考えですか。
  8. 吉田茂

    吉田國務大臣 これに対して、私は言明の限りでないと思います。
  9. 和田敏明

    和田委員 言明の限りでないという意味は、どうもはなはだ人を食つたあれですが、どういう意味ですか。こういうことを外務大臣が関知していない間に天皇にどんどんやられたのでは、依然として天皇の昔の言葉で言えば外交大権というものがあるというふうな印象國民に與えておる。この政治的な責任外務大臣として、とうてい免れることはできないと思うが、その点どうですか。
  10. 吉田茂

    吉田國務大臣 事実がないことだから、國民が何と疑惑をされようが、私は國民がさほどばかでないと考えますから、そういう事実はないと、こうお答えいたします。
  11. 和田敏明

    和田委員 事実がないというのは、天皇がそういうことを言つた事実はないということをあなたはお調べになつたのですか、どうですか。この点はどうなのですか。
  12. 吉田茂

    吉田國務大臣 調べる必要がない、こういうのです。
  13. 和田敏明

    和田委員 調べる必要がない。そう言うことは、この問題の重要性をあなたが認識されていないというのなら、何をか言わんやです。われわれとしては、ああいうふうに大きく天皇のみが依然として特権を持つておるような行為をする。ことに今日日本立場としては、何も日米関係のみの緊密化をはかるのが日本立場でなく、日本としてはあらゆる隣邦、たとえばソビエトとも中國とも大いに親善関係を結ばなければならない際に、日米関係緊密化に努めるといつたような天皇の独断的な外交観と申しますか、そういうものが発表されたことをわれわれはきわめて重視しております。あなたはそういうものを重視していないと言うならば、これ以上質問の要はないのですが、これを最後としてもう一度お伺いしたい。
  14. 吉田茂

    吉田國務大臣 事実がないから重要視しない。こういうわけです。
  15. 野坂參三

    野坂委員 今の問題はわれわれとしては、まず第一に眞相がはつきりしないのです。新聞にああして発表されていることしかわれわれは知つていないので、もしあの通りだとすれば、事態は國際的にも國内的にも相当重要な問題を持つている。それで私はこの委員会動議を出したいと思う。それはこの眞相政府の方において責任をもつて調査していただき、そうしてここに報告していただくこと。それはつまりあれに関連して内容の問題が一つ、それから手続上の問題があると思います。だからこれを動議として提出いたします。
  16. 生越三郎

    生越委員長 ただいま野坂委員より、政府の方において調査してこの委員会に報告してもらうようにという動議が提出されましたが、御異議ありませんか。
  17. 生越三郎

    生越委員長 しからばそのように政府に通告いたします。
  18. 和田敏明

    和田委員 この際ぜひともそういうふうに眞相を調査して、すみやかに——実はもう本日あたりは眞相を調査された上で、政府委員の方もたくさん出て來ておられるから、われわれに報告があるということを期待しておつた。それがなかつたことははなはだ遺憾ですが、十分な調査を遂げてわれわれに報告していただきたい。  この際なお講和会議の問題についてお尋ねしたいのであります。先般第三國会においても決議案通り、またそれに対しこの間の施政方針演説でも、総理考え方が披瀝されていたのでありますが、どうもあの演説を聞いていると、日本民主政治が確立されなければいかぬとか、あるいは生産の復興をしなければいかぬというような、三つばかりの條件をあげておられましたが、あれを伺つてみると、結局そういつたことが前提であつて、その上で講和会議が持たるべきであるというような結論が出て來るのです。われわれはそういつたことを進める上においてこそ即時に講和会議講和條約ができなければいかぬ。三年半も半独立的な状態におかれていたことは、世界歴史にかつて例がないと思います。日本がああいつた、あなたがおつしやるような國内的態勢を整えるためにこそ、平和條約が必要である。すなわち日本國家としての独立権、あるいは民族としての自主権というものが必要なんです。今日國民の間には、遺憾ながら外國の力に依存するといつた風潮がきわめて強いのですが、まず國内の態勢ができないことには、講和会議は開かれないのだというふうな吉田さんの考え方には、われわれは徹底的に反対せざるを得ない。その点依然としてああいうお考えであるか、ないしはもつと具体的な方法をもつて講和会議開催促進して行く考えを持つておられるのか、その点をまずお伺いしたい。
  19. 吉田茂

    吉田國務大臣 私がこの間言つたのは、民主化が遂げられなければ、講和会議ができないというのではなくて、民主化を徹底せしむることが、講和会議促進するゆえんである、こう申したのであります。  それから前例がないと言いますが、現に対独條約はまだできておらないのであります。ドイツは一九四五年の四月か五月に降服したにもかかわらず、まだ対独講和條約はできておらないのであつて、今日の講和條約は連合國その他の國際関係が微妙であるためにできないのであつて終戰後歴代の内閣は、講和條約の促進に努めておつたのでありますが、國際情勢がそこに至らないというために、いまだにできないことははなはだわれわれの遺憾に思つているところです。
  20. 和田敏明

    和田委員 ドイツはまさにその通りでありますが、私の言うのは日独を含めた意味講和條約であつて、今までかつて歴史上に、三年三箇月も半独立的な状態に放置されたことはないという意味なんで、その点はドイツがそうだから日本もそうであつていいという議論にならないことは、あなたもおわかりだろうと思うのです。ところがあなたが今おつしやるように、國際関係が微妙だからできない。そんなことを言つておるのでは、これは何年待つたらできるのか、まるで期待は持てないのです。われわれから見れば、あなたのおつしやる國際関係はもちろん米ソを中心としたいろいろな対立でありましようが、そういつた対立戰勝國間の対立であつて、われわれとしては関知しないのです。関知しないというよりは、むしろこの弱少國に轉落した日本としては、そういつたものに対しては何ら発言権がないのであつて、われわれから率直に言わしめるならば、戰勝國自分の間でそういつた対立の問題を片づけなければならないと思う。われわれとしてはあくまで平和会議は一日も早く締結すべきであるという主張を、もう少し何か具体的な方法連合軍に要請する立場がとられなくてはならないと思うのです。その点について、いや御説ごもつともであるということはどの政府も言い、どの政府施政方針言つておりますが、具体的には一体どうすればいいのかということを、もう少し考えなくてはならないと思うのです。國際関係が微妙だからとてもできないといつたあきらめの心は、日本人にはきわめて通常考え方ではあるが、私はそれではいけないと思う。やはり場合によつては弱少民族あるいは敗戰民族独立獲得の構想といつた考え方で、一日も早く講和條約を鬪いとるという決意をしなくては、何年たつて講和條約は與えられないと思うのですが、重ねてあなたの御意見をお伺いします。
  21. 吉田茂

    吉田國務大臣 それは今日までといえども、手をこまねいて講和條約の成立を待つておるわけではありません。また日本ばかりでなく、イギリスにしてもアメリカにしても、ことにアメリカとしては、講和條約をなるべく早く締結して、世界通常状態に返したい、こう考えておることは明らかであります。明らかであるが、しかしながら客観情勢なるものがいまだにこれを許さない。許さないとすればいたし方がないのであります。しからばどういうふうな手段を盡したか、こう申したところが、これは政府がこうしたああしたと言つて、一々相手國もあることでありますから、ここで披瀝することはできないのであります。御了承を願います。
  22. 和田敏明

    和田委員 そういう國際情勢が微妙だから結べないといつたような政府が言うようでは困る。講和條約がなくてもいいんだ、今のままでいいんじやないか。一部の特殊な人はアメリカにも行けるのだし、貿易も変則ながら開かれておる。妙な二、三の條約には参加が許される、講和條約のない平和でもいいといつたような議論が國内にも相当あるのです。またそれに乘つかつて、そういつた講和條約のない平和状態に便乘して利益を受けておる階級も日本にはあるのです。しかしながら國民の大多数は、講和條約は一日も早く締結されなくてはいかぬ。現に公務員法の問題についても、あるいはその他いろいろの國内の困難な問題は、多くその前提平和條約ができていない、日本が半独立的な状態にあるというために起つておる、國家の諸困難のありさまなんです。私は國際関係に逃げ道を求めて行く、そういつた政府考え方ではどうしても列國がなかなか平和條約締結に熱意を示さないと思うのです。今もあなたがおつしやつたように、アメリカその他の國もなるべく早く平和條約をつくつて世界を平常の状態にもどしたい希望を持つていると言われましたが、私は必ずしもそうは思わない。このままの方がいいと考えている國家が、世界の國の中にないとは言えないと私は思うのです。その点はやはり日本民族としては、独立を獲得する鬪いであるといつたふうな考え方から相当強くがんばらなければ、とうていわれわれの目的は達成されないと思うのですが、その点についてもう一回お尋ねしたいのであります。
  23. 吉田茂

    吉田國務大臣 政府も決して講和條約がない方がいいと考えたこともなければ、促進することについて努力を拂つていることはしばしば申した通りであります。また連合國の中に、日本との関係を普通の状態に返したいということは、貿易その他から考えて見て、一日も早からんことを希望するということは明瞭であります。これは私が責任をもつてお答えします。
  24. 和田敏明

    和田委員 あなたがそう責任をもつてほかの國の意見を代表されても、実は納得しないのであつて、われわれとしてはあなたと非常に考え方が違うのを遺憾とします。しかしこれはいくら議論していてもはてしがないわけだから、打切ります。  第三に通告しておいた中國の問題、ことに中共の問題についてお尋ねしたいのであります。われわれは隣國中國との友好関係ということは長い間の傳統的な問題であり、今後特に日華間の問題を友好的な基礎によつて解決して行かなくてはならぬと思うのです。実はこの前の外務委員会においても、外務当局から中共軍の問題についていろいろと調査されていることを聞いたのでありますが、あなたがやはりそれだけの準備外務当局にさせていることは、まさに機宜を得た処置だと思うのです。しかしながら今の中國の状態は、昔のようないわゆる國民政府の威令の行われている地域は非常に狹められて來た。ことに日華関係においてわれわれが最も重視しなくてはいけない満州方面、あるいは北支方面が完全に中共軍の支配するところとなつておる今日、われわれは單にいつまでも蒋介石政権のみを相手として日華間の問題を処理して行くわけには行かないと思う。これは実は外交権のない日本政府としては、なかなかデリケートな問題かもしれないが、私の個人的な考えとすると、一年くらい前からこの中國の状態を見ていて、中共團体は一日も早く交戰團体として承認するような措置が、かりに日本外交権が許されているとしたら、とるべきじやないかと考えていた一人でありますが、ともかくこの中共の現在の動きに対して、あなたはどういうふうなお考えを持つているか、まずお伺いしたいのであります。
  25. 吉田茂

    吉田國務大臣 御承知の通り今日日本外交権がなく、外國との交渉は断たれているのでありますから、私としてはそれに対して意見は述べかねます。
  26. 和田敏明

    和田委員 そう言われてしまうと、これはそれきりですが、しかし國会外交委員会が持たれ、やはりあなたもここへ出て來ていろいろわれわれと話をしなくてはならない立場にあるのですが、これは公開の席上だつたらいろいろ言えないことがあるのでしようが、お互い隣國中國との問題は、ことにあなたがおつしやるように、平和條約の見通しがいつになるかわからぬような状態においては、お互い腹構えとしては、やはり相当研究して置かなくてはならぬ問題だと思うが、どうでしようか。公開ということがはばかるなら、少し公開でないような状態においてでもこれ以上お話することはできないですか。委員長からそれをお尋ね願いたい。
  27. 生越三郎

    生越委員長 ただいま外務大臣より、外務大臣として和田委員のお尋ねに対してお答えすることができないということであります。
  28. 和田敏明

    和田委員 委員長としてどうですか。私は前からこの外務委員会あり方というか、使命について聞いたのですが、單に外國情報くらい聞いているばかりではだめであつて、その情報に基いて、いかに日本外交を今後持つて行かなければならぬかということを今から準備するのでなくては、とうていこの弱國日本としての正しい外交方向というものは規定されないと思うのです。そこできようはいい機会ですから、祕密会か何かによつて、もう少しわれわれ自身のいろいろの考え方政府に傳えておく必要があると思うが、その点委員長はどう考えておりますか。
  29. 生越三郎

    生越委員長 委員長としてお答えいたします。和田委員の言われることにつきましては肯定する点もあると思うのでありますが、本日は各委員が多数出ておられませんので、日を改めまして、理事会を開いてその上でこれを決定して、政府に申し入れるようにしたいと思います。御了承願いたいと思います。
  30. 和田敏明

    和田委員 了承いたしました。
  31. 野坂參三

    野坂委員 関連しまして……。もしそのような会が將來開かれるならば、今和田委員の方では大体中國問題が主でしたね。同時に私たちの希望としては、やはり講和促進ということが最大のただいま問題にしなければならぬことと思つている。そこで今まで政府としては、これについて具体的にどういうようにおやりになつたか。それから第二には、この促進について今後どういうような見通しをもつて、どういう準備でやられているか。こういう点もその会でお聞きしたいと思いますから、その準備をお願いしたいと思います。
  32. 生越三郎

    生越委員長 野坂委員の御意見に沿うようにいたしたいと思います。
  33. 馬場秀夫

    馬場委員 外務大臣に二点お伺いしたいと思います。  第一は、われわれは今日の日本再建にあたりましては、まず諸外國の信を獲得することが一番必要である、これを基底にしなければならぬ、かように考えておるのであります。総理大臣も本会議において、國会にさような方向で協力を求められた点から見て、同感であると思うのであります。しかしながら組閣後諸外國から起りました評判がきわめて惡いことは御了承と思う。そうして國民の中の心ある人は、この評判が惡いということを聞いて非常に心配しておるのでありますが、はたしてどのくらい、どういうことが評判が惡いのかという眞相をよく知らないために、なお心配しておる、このように考えるのです。外務大臣である吉田さんは、この評判がはたしてどういうものであるか、その眞相を確かめ、眞相を究明されたでありましようかどうか。同時に國民の杞憂を解かんとして何事か手を打たれようとしたか、あるいは打つたかどうか。第三には、もしも総理大臣評判が惡ければ、それにかわつて外國信頼を獲得し得る、信頼し得る外務大臣を早急に任命する御用意がございますかどうか。これをまずお伺いしたい。
  34. 吉田茂

    吉田國務大臣 しきりに評判が惡い評判が惡いということを聞きますけれども、本人はさほどに感じておりません。それからまた外國日本におる新聞記者——アメリカ新聞記者等と話合つてみても、また最近の海外に打たれた電報等ごらんになればわかりますが、あなた方がおつしやるほどわれわれは惡いつもりでおりません。眞相については今なお調べております。
  35. 馬場秀夫

    馬場委員 別にわれわれが申し上げるのではありませんで、海外から傳わつて來ておるのがそのまま傳わつておるのであつて、それに対して心配しておるのは、われわれよりも、國民の心ある人が心配しておる。從つて外務大臣としては、あるいは総理大臣として、吉田さんは非常に軽くあしらつておりますが、日本再建のほんとうのあり方考えて見る場合において、外國信頼を獲得するのだ、外國の信がなければこの道が開けないという今日の立場において、そういうような無責任言葉國民に訴えられますと、國民はさような人は総理大臣をやめてもらつたらいいじやないか、こう申されると思うのであります。その点はひとつそう簡單に、無責任にあしらわないで、惡いところは惡い、いいところはいいと、こう國民にお訴えになる方が民主政治あり方ではないか、かように思うのでありますが、いかがでありますか。
  36. 吉田茂

    吉田國務大臣 同じようなことを繰返しますが、私の感じとしては、評判が必ずしも惡いと考えないのみならず、東京におる外國新聞記者等についても、特にこれがいけない、あそこがいけないということを言われたことはないのであります。のみならず、注文は受けても排斥を受けたことはないのである。また國民信頼はどうでありますか、あるいはまたはたして外國新聞がどれだけ私に対する惡評の発表が傳わつておるか、あなたは御存じであるかもしれぬが、われわれはこれが惡い、あれが惡いといつて指摘されたものを見ましても、私にはさほどには感じないのであります。のみならずロンドン・タイムスなども近ごろ大分評判がかわつておりますから、ごらんなつたらよろしいだろうと思います。
  37. 馬場秀夫

    馬場委員 これも水かけ論ですから、その点で一應打切りますが、第二の問題は、外資導入の問題、現在の状態においての外資導入あり方、これを一應御説明願いたい。
  38. 吉田茂

    吉田國務大臣 外資導入については、まず日本受入れ態勢がどうであるかということがいつも外國人から聞かれることであります。たとえば日本の税制はあまりにひどいじやないか、利潤追求利益はことごとく税にしてしまう。それならば外國から税を納めに投資するようなやつはないから、結局できないということになりはしないか。第二は投資安全性がない。いわゆる日本の今日資源と見るべきものは労働力なんだ、その労働が不安である以上は、労働問題が解決されない限りは、投資の安全ということ、あるいは利益の安全ということは保障されないというような、いろいろな点を指摘されますが、同時にそれは投資したいから指摘するのであつて投資したいという意向は相当あるのみならず、私も投資したいという人の三、四に会つております。これは一つには為替レートの問題もあるだろうと思います。それからまた日本のインフレーシヨンがどこで停止せられるか。日本の財政が均衡を得るか得ないかというような諸條件考えて、そうして投資するためにはどうしたらいいかということを投資家の方でも研究しております。また最近、元日本に大使をしておつたある人、共和党の一員であつて、何の何がしという人が日本外資援助について、ワシントンにおいて相当の條件のもとに努力したいと思うがと言つて、私のところに手紙をよこした人もあるのです。でありますから投資をしたい。投資をするのは何も利益ばかりではないので、極東におけるインフレーシヨンを防止するためには、これは日本ばかりではなく、支那、シヤムその他の國にインフレーシヨンが相当極度に激化している。このインフレーシヨンがとまらない限りは極東の共産化ということも免れないから、世界の平和のために、あるいはまた繁栄のために、日本をして極東に必要なる製品綿糸布その他の製造品を供給させるということによつて、極東のインフレーシヨンがとまるということにならないかというようなことを、相当具体的に考えておりますから、投資ということについては相当熱意が相手方にもある。あとは日本としては受入れ方を研究するということが必要であろうと思います。
  39. 馬場秀夫

    馬場委員 現在までに入つておりまする外資の中で、いわゆる民間外資が入つておりまするか、入つておりましたならばどのくらいか。大ざつぱでけつこうでございまするから承りたい。
  40. 吉田茂

    吉田國務大臣 調べた上でお答えいたします。
  41. 馬場秀夫

    馬場委員 最近の毎日新聞の特電だつたと思いまするが、ストライク氏の話の中で、平和会議が済まなければ民間外資は入りにくい。こういうことが出ておりましたが、そういう点からも平和会議がわれわれにとつて外資の必要を痛感すればするほど重要になつて來るので、平和会議になればいろいろ解決されるのであります。この前の委員会つたと思いますが、ストライク氏の話された大きな問題の一つとして、日本は今準禁治産者的な立場だ、平和会議が済んで一本立ちになれば、いわゆる平和会議締結前のいろいろな契約は、あるいは無効を宣言されれば無効になるかもしれない、こういうようなことが懸念されておる一つだ。こういうようにわれわれは研究したのでありますが、こういうようなものは、平和会議が済まないでも何かほかの手があるのかどうかを承りたい。
  42. 吉田茂

    吉田國務大臣 アメリカその他でも、あまり講和会議が遅れると、第一かつてつてつた英米の資産の保護とか何とかというような関係もありまして、どうしても何かの便法を講じなければならぬ。いろいろな問題——今の投資の話も一つでありますが、暫定的な処置、暫定條約でもこしらえて行つて、事実講和條約にかわり得るようなものをつくつて行くという順序になるだろうと私は思います。
  43. 馬場秀夫

    馬場委員 今の暫定條約は向う側だけでありますか。あるいは投資する國と日本との暫定條約という意味でありますか。
  44. 吉田茂

    吉田國務大臣 これは投資についてのお話でありましたから投資と申したのでありますが、問題は投資の問題だけではありません。いろいろな問題があります。その問題がきまらないために相互に困つている問題がたくさんある。たとえば日本國民の在外資産とか、あるいは逆に、在留外國人の資産の処置とか、いろいろな問題がありますので、そういうようないろいろな案件を含めた暫定処置が自然できる。またこしらえたいものと思つております。
  45. 馬場秀夫

    馬場委員 今のようなことはお考え中でありまするか、あるいは進行中でありまするか。
  46. 吉田茂

    吉田國務大臣 この点はちよつと申しにくうございまするから、保留いたします。
  47. 馬場秀夫

    馬場委員 最後に、お答えがなかつたのですが、外務大臣の任命のお考えはいかがでありますか。
  48. 吉田茂

    吉田國務大臣 私が一番適当だと思いますから、当分任命いたしません。
  49. 並木芳雄

    ○並木委員 私も外務大臣に二、三お尋ねいたします。  まず第一に何といいましても私たち國民が知りたいのは、一体いつごろになつたら講和会議ができるだろう、平和会議ができるだろうということであろうと思います。しかしこれは先ほど來のお話通り、なかなか國際関係もありまして予見することはむずかしいと思いますが、少くとも外務大臣とされて、主観的にいつごろまでにはやりたいものだという点は出て來ていいと思うのであります。アメリカの方の報道によりますと、來年中には講和会議もやろうというようなことも新聞に出ておるほどでありますので、どうかこの機会に、できるならばいつごろまでにやりたいものだという外務大臣の御意思を承りたいと思います。
  50. 吉田茂

    吉田國務大臣 申せば明日からでもいいのであります。なるべく早い方がいいのであります。先ほど貴族院でも説明したのでありますが、一昨年三、四月ごろと思いますが、その当時は一昨年の秋ごろにはできやしないかという話まであつて、非常に望みを嘱しておつたのであります。その後國際関係が微妙になつたがために、遷延されて今日になつております。しかしながら國際関係というものはどう急変するかもわからないものでありますから、予想がつかないとともに、またいつまでもこのままにうつちやつておくということは、いろいろの関係から考えてみて、單に日本利益ばかりでなく、相手方から考えてみても、うつちやつておけない状態でありまするから、思いのほか早くなるかも知れず、その点は私がここでもつて天氣予報みたいな予報を出してみたところが、私としても責任が持てませんが、なるべく早く締結できるようにということは、内外ともに——政治的の問題は別としまして、実際の経済情勢その他から申して、世界の繁栄なり商賣なりというものを一日も早く普通の状態、戰前の状態に帰したいということは、これはだれも考えておることでありますから、政治上のある難関がいくらか緩和せられるならば、この講和條約の問題は自然起つて來るであろう。これは多少希望を加えての考え方でありますけれども、勢いはそうであるべきだ、今日の自然の情勢はそうであるべきものだ。今日の情勢講和條——これは單に日本ばかりではありません。ドイツに対しても、なるべく早くヨーロッパの状態を回復したい。極東の状態を回復したいということは、内外人とも、ともに望むところでありますから、存外早くその時期が來やしないか。來ることを切に希望しております。
  51. 並木芳雄

    ○並木委員 次にお尋ねいたします。外資の問題で、暫定契約というようなもののお話が出ましたが、これはまことにけつこうだと思いますので、ぜひこの暫定契約は早く結ばれるように希望いたします。それにつきまして巷間、しばしば政府國家の鉄道だとか、電氣事業だとか、そういうものを抵当に入れてもいいのだ、あるいはまた民間の投資において、株式の保有なども五一%以上過半数を與えてもいいのだ、それだけの用意がある、またありそうだということが言い傳えられておるのであります。これはもちろん誤傳であろうとは思いますけれども、いい機会でございますので、もしそういう点につきまして外務大臣としての、いわゆる外資導入日本の植民地化あるいは奴隸化、こういうようなことに対する御所見、あるいは対策をお聞かせ願いたいと思います。
  52. 吉田茂

    吉田國務大臣 これは抽象論で、今のところは具体的にどうこういうことではありませんが、抽象的に考えてみて、今日われわれの要するところのものは外資であり、また外國の資材であります。この資材を取入れるためにも、また外資導入せしむるためにも、日本における事業はなるべくこれを民営にして、そして民営によつて外國との間の投資関係が生ずるならば、日本の経済復興にもいいだろう。これは抽象論であります。事実こうしたらよかろうとか、ああしたらよかろうという具体的な案はありません。しかしながら外資導入せしむるためには、日本の企業に外國の資本家をして参與せしむるということが緊要であると思います。今お話の、日本をして植民地化するということを言われるが、私は始終言うのでありますけれども、アメリカはイギリスの植民地であつて、それが今日イギリス以上に繁栄しているということをお考えなつたならば、いわゆる植民地化といつて、さして心配をせられることはないと私は思います。
  53. 並木芳雄

    ○並木委員 ちよつとくどくなりますが、そうすると外務大臣としては、民間の投資の場合に、株式の保有を過半数以上を許すというお考えは私はないと思いますけれども、この点いかがでございましようか。
  54. 吉田茂

    吉田國務大臣 私は極端に言えば、何も五一%持たなければならぬとは思いません。一に日本國民の頭の働き方で、五一%以上持たしたところが、事業を管理し得るかどうかということは一に日本人の腕次第であり能力次第であつて、必ずしも過半数をということは、支那における合弁事業ならば別でありますけれども、私は日本國民の能力から言つてみて、五一%以上を持たしたところが、その仕事が全部外國人にさらわれて行き、またさらつて行くことが得か損かという問題もありまして、さほど心配するに足りないのではないか、こう私は考えます。これは個人意見で、いまだ政府としてこういう五一%持たせるという案がきまつておるわけでもなんでもありませんから、さほどにおそれるに足りないと思います。
  55. 並木芳雄

    ○並木委員 もう一つ簡單にお尋ねします。最近の内閣の組閣に際して、日本にはまだ右翼の團体とか、祕密結社とか、あるいは地下政府、こういつたものがあるのじやないかということを耳にすることがありましたので、これもこの機会に外務大臣から疑問を一掃していただきたいと思います。地下政府ということは、片山内閣の時にも問題になつたのでありますが、現在もちろんこんなものが日本にあろうとは思いませんけれども、外務大臣の明確なる御答弁をお願いいたします。
  56. 吉田茂

    吉田國務大臣 私は政府としては、地下政府のあることを何ら形跡を存じておりません。でありますからないことと確信いたします。
  57. 並木芳雄

    ○並木委員 最後にもう一つだけお尋ねいたします。海外渡航者の問題ですが、これは私たち非常に喜んでおるのであります。しかしながら円をドルにかえることはまだできない。と申しますと、外國に外貨を持つておる者だけが今渡航を許される状態であるというふうに了解しておるのですが、さようでございましようか。もしそうだとすると、ごく特殊な一部の人しかこの恩典にあずからないわけでございまして、優秀なる学生とか、あるいはまたわれわれ國会議員もそうでありまするが、あらゆる方面において早く外國へ行つて知識を廣め、民主化に貢献したいという人が多いと思います。もしそうだとしますならば、政府としてはぜひこの際外貨というものを立てかえるとか、何らか將來われわれが支拂うことによつて、こういうものの奬励をはかるということをしていただきたいのでありまするが、現状及び外務大臣の対策はどうなつておられるでしようか。
  58. 吉田茂

    吉田國務大臣 これは逆に申すと、日本に來ておる外國人が、日本の円を得ることができないために困つておるのであります。日本人はドルを得ることができない、これなどもやはり暫定とりきめ措置の一つの問題になる問題と考えております。
  59. 加藤シヅエ

    ○加藤(シ)委員 先ほどから吉田外務大臣の御答弁を伺つておりますと、そのお言葉の中に、私ちよつと氣がつきましたのでございますが、中華民國のことは支那と仰せられておりますし、それからマッカーサー元帥のことはマッカーサー、キーナン檢事のことはキーナンというふうに呼び捨てになさつていらつしやる。そうして自分の國の天皇のことだけは、非常な特別の敬語をお使いになつて答弁をしておられる。それから参議院を貴族院と仰せになつた。これはちよつとお忘れになつたのだと思いますけれども、前の点は、いやしくも外務大臣の公式の席上の発言としては、これは非常に問題になる点があるのじやないかと思いますので、ちよつとその点説明していただきたいと思います。
  60. 吉田茂

    吉田國務大臣 御注意ありがとうございます。支那は中華民國と改めます。マッカーサーはマッカーサー元帥と改めます。キーナンキーナン檢事ですか、これは官名を申し上げます。これは落したので改めて置きます。
  61. 生越三郎

    生越委員長 本会議がありますので、本日はこれにて散会いたします。     午後三時五分散会