○山田節男君 吉田
内閣が成立いたしまして、本院におきましては最初にこうして
総理大臣以下閣僚がお並びにな
つたのでありますが、どうも今朝來の空氣を見ますと、開店早々とは言いながら、極めて不統一且つ又極めて不鮮明であります。これは私は決して吉田総理以下各閣僚の誠意を疑うわけじやございませんが少くとも私の
質問に対しましては誠意ある又明快なる御回答を煩わしたいと存じます。
一昨八日参議院におきまして常任
委員長並びに
議院運営委員会の懇談会がございました。その席上で吉田総理は佐藤官房長官を同道されまして、そうしての御挨拶には、この第三
國会においては会期を十日にしたい、而もこの十日間において
國家公務員法の一部
改正に関する
法律案を、これを
審議通過せしめて貰いたい、こういう御挨拶でございました。これは私共といたしましては、先程も吉田総理が本
國会は
國家公務員法の一部を
改正いたしまする
法律案の
審議のための
國会である、これは受け入れるといたしましても、この國勢
公務員法の
改正問題、御
承知のように去る七月二十二日の
マツカーサー元帥の
書簡に基きまして、七月三十一日に出ました政令第二百一号によ
つて、爾來約三百万に余りますところの全官公の官職におきまする從業員というものは、暫定処置とは言いながら、
憲法で保障されておりますところの
労働の基本権が、全く停止されているのでございます。(「その
通り」と呼ぶ者あり)而もこの三ケ月間におきまして、
政府は
臨時人事委員会を中心といたしまして、この
改正法案についていろいろと
審議をいたしたのであります。併しながら、これは総司令部からも発表があつたと記憶いたしまするが、この
公務員法の
改正につきましては、これは挙げて
國会が
責任を執
つてやるべきだ、こういうことにな
つているのであります。然るにです。この吉田総理は参議院にお出でになりましての御挨拶、僅か十日間で以て
國家公務員法の
改正に関する
審議を終了してくれと、こういう御挨拶であります。私はこれが他の閣僚であつた場合には敢てこういうことを申しません。吉田総理は曾ての総理であられた時に、
日本の
労働運動者の指導者に対しまして、有名な、世界的に有名にな
つておりまする例の不逞の輩という言葉をお使いにな
つておるのであります。(「その
通り」と呼ぶ者あり)その点からいたしまして、私はこの十日間で、三百万に余りまするところの官公廳從業員の
労働基本権に重大なる影響を帶びまするにつきまして、かくのごとき御挨拶をなさつたということは、その魂胆はどこにあるかということを私はお伺いしたいのであります。先程來、
高瀬議員並びに門屋議員からも御
質問がございましたが、この一昨日の参議院におきまする常任
委員長並びに議院
運営の合同
委員会におきまして、
公務員法の
改正は十日間に完了して貰いたいということをおつしやいましたけれども、この
改正をいたしますると同時に、一体この三百万に余りまするところの官公廳從業員に対しまする
給與その他福利厚生に関しては何ら一言も触れられなか
つたのであります。
只今の吉田総理からの御挨拶では、ただ
國家公務員法の
改正案を通せばいい、通せばいいということだけをおつしやるのであります。それを裏付けるべきところの、門屋議員も申されましたが、
生活の安定を保障するところの……
國家公務員法を
改正しまするならばです。
給與を
考えなくちやならん。この裏付けのことについては何ら言及しておられない。先程
泉山大藏大臣の御答弁では、何が何やらさつぱり分りません。(「その
通り」と呼ぶ者あり)御
承知のように、今朝の新聞を見ますると、昨日、淺井
臨時人事委員長は、六千三百七円というベースを発表いたしております。そうしてこれ又今朝の新聞で見たのでありまするが、この六千三百七円のベースを、これを
政府は一体どうするのか、先程申上げましたように、
公務員法改正をいたしまするならば、それが裏付けとなる
給與の問題を
解決しなくちやならん。これに対して一体
政府はどういう
考えを持
つておるか、これは吉田総理としまして、
改正を強行されるならば、併せて
給與の問題を
解決しなくちやいかん。これに対しまして、はつきりと私は先の門屋議員の御
質問と併せまして吉田総理の明快なる御回答を煩わしたいのであります。尚又この六千三百七円のベースを、
財源からいたしまして求められんということになりますならば、これは一体これを発表しましたところの
臨時人事委員会の
淺井委員長は、一体これをどうするのか、この点につきまして
淺井委員長の御回答を煩わしたいのであります。これは私はこういう御
質問を申上げることは甚だ失礼かも存じませんが、吉田総理は、先程申上げました
通りに、先の
総理大臣の時におきましても、
労働攻勢におきまして、
労働攻勢によりまして、いろいろと苦い経驗をおやりにな
つております。併しながら今回吉田総理が御就任になりまするや、私の見ました世界各國のニユースを見ますと、吉田総理が
日本の政権を取つたということは、これは
日本の民主化に逆行するものだということを申しておるのであります。(「ノーノー」「ヒヤヒヤ」「本当だ」と呼ぶ者あり)のみならず、吉田
内閣が現われたということは、準戰犯者であり、或いは追放にかか
つておるような、そういう反動勢力が、最後の拠点として吉田
内閣を出現せしめたのだということまで申しております。(「芦田だよ」と呼ぶ者あり)私はそういう
意味からいたしまして、吉田総理の人格は、もとより私としては尊敬いたしまするけれども、世界はそういうふうに見ておるのだ、(「宣傳だ」と呼ぶ者あり)そういう
意味からいたしまして、今後のこの吉田総理のう吉田
内閣の
労働対策に当りまして、曾て
労働運動の指導者を不逞の輩というような、そういう信念を持
つて今後の
労働政策をお執りになるのか、その心境を私ははつきりして頂きたいのであります。(「宣傳だよ」と呼ぶ者あり)これは私は決して重厚のためとかに私は申上げておるのでありません。私が先程申上げましたように世界の新聞に出ておる。そういう
意味合におきまして、私は殊にこの
國家公務員法を
改正されるということを、重大なる……(「
質問をしろ、
質問を」と呼ぶ者あり)ちよつと待
つて、
質問をしております。この基本問題でありますところの吉田総理の率直なる御信念をお伺いしたいのでございます。これで
質問を止めます。(
拍手)
〔
國務大臣吉田茂君
登壇口〕