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1948-11-26 第3回国会 参議院 法務委員会 第9号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十三年十一月二十六日(金曜 日)   —————————————   本日の会議に付した事件檢察及び裁判運営等に関する調査  の件  (浦和充子事件に関し証言あり) ○訴訟費用等臨時措置法の一部を改正  する法律案内閣提出、衆議院送  付) ○罹災都市借地借家臨時処理法第二十  五條の二の災害及び同條の規定を適  用する地区を定める法律案内閣提  出、衆議院送付)   —————————————    午後二時二分開会
  2. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それではこれより法務委員会の検察及び裁判運営に関する調査会を開会いたします。  本日は浦和充子事件に関し調査をいたしたいと存じます。浦和さん、今日証人として御出頭願いましたのですが、これからあなたにお聴きすることについて嘘、偽りを言わないという誓をして、それを読んで下さい。    〔総員起立証人は次のように宣誓を行なつた〕   宣誓書 良心に從つて眞実を述べ、何事もかくさず、又何事もつけ加えないことを誓います。         証人 浦和 充子
  3. 伊藤修

    委員長伊藤修君) これから述べることについて、あなたは嘘を言つたり隠したりしてお話しになりますと、僞証罪の罪で重い処罰を受けますから注意してお述べ下さい。
  4. 浦和充子

    証人浦和充子君) はい。
  5. 伊藤修

    委員長伊藤修君) あなたは今何処においでになりますか。
  6. 浦和充子

    証人浦和充子君) 茨城縣多賀磯原町上相田柳生策助方、そこのお家の中に勝間宇之助という方が疏開していまして、そこへお世話になつております。
  7. 伊藤修

    委員長伊藤修君) あなたは学校はどこまでいらつしやつたのですか。
  8. 浦和充子

    証人浦和充子君) 高等科まで参りました。
  9. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それから……。
  10. 浦和充子

    証人浦和充子君) それからは親戚手傳をしたり奉公したり、それで二十二のときに浦和語助一緒になりました。
  11. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 今の御主人結婚される前にどこか喫茶店かどこかにおいでになつておりましたですか。
  12. 浦和充子

    証人浦和充子君) おりました。
  13. 伊藤修

    委員長伊藤修君) どのくらい勤めていたのですか。
  14. 浦和充子

    証人浦和充子君) 六ケ月くらい……何だかよく忘れちやつて……。
  15. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 結婚されたのは六月の二十三日とか。
  16. 浦和充子

    証人浦和充子君) そうなんです。
  17. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 何年の。
  18. 浦和充子

    証人浦和充子君) 昭和十五年。
  19. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それはどういう動機結婚されたのです。
  20. 浦和充子

    証人浦和充子君) 動機ということは……。
  21. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 喫茶店遊びに來られて知合になつたのですか。
  22. 浦和充子

    証人浦和充子君) はあ。
  23. 伊藤修

    委員長伊藤修君) どのくらい遊びに見えたのですか。
  24. 浦和充子

    証人浦和充子君) 浦和が來てから十五日しかおりませんでした。
  25. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 十五日くらいで一緒になつたのですね。
  26. 浦和充子

    証人浦和充子君) はあ。
  27. 伊藤修

    委員長伊藤修君) あなたの浦和語助さんに対する考えは、そのときにどういう考え結婚爲されたのですか。
  28. 浦和充子

    証人浦和充子君) 私はお店の仕事が嫌でしたから、早く堅くなりたいと思つて、そうして浦和も、こういうところにいるのはよくないから、お互にここで一つこの仕事を足を洗つて、それで俺も裸だしお前も裸だからどこからも苦情はないのだから二人で築こうと言つて一緒になつて、それで世帯を持つたのです。
  29. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それで浦和さんに対するあなたの感想、この人は頼もしい人だとか、或いは男振りが好いとかという感想を持つておりましたか。
  30. 浦和充子

    証人浦和充子君) それははなから全然なかつたのです、私に……。浦和の方だけが夢中になつて來ておつて……。
  31. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 一口に言うと、あなたが浦和語助さんを愛して結婚の道に入つたかどうかということを聴くのです。
  32. 浦和充子

    証人浦和充子君) その点はないのです。私の方は止めたいという氣持だけで……。
  33. 伊藤修

    委員長伊藤修君) ただその当時の仕事を早く止めて堅氣になりたいという氣持からですか。その以外にないのですか。
  34. 浦和充子

    証人浦和充子君) はい。
  35. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 語助さんと一緒になれば生活の安定はつくと確信したのですか。その当時は……。
  36. 浦和充子

    証人浦和充子君) その頃はまだ私からつきし子供でしたから、生活苦とか、生活難とか、お金ということには余り拘わつていなかつたのです。
  37. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 家庭を持てば生活が当然できると思つたのですか。
  38. 浦和充子

    証人浦和充子君) はい。
  39. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それでその時にどういう仕事をやるという話合をしたのですか。結婚前に……。
  40. 浦和充子

    証人浦和充子君) 自分は十五の時から印刷の方の仕事で年期をこめたが、現在は袋物仕事をしておつて、その方が大分成功しておるからそれを続けたいと言つておりました。
  41. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 袋物と皮製品ですね。
  42. 浦和充子

    証人浦和充子君) はい。
  43. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 印刷もやつたのですね。
  44. 浦和充子

    証人浦和充子君) 両方やりました。
  45. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 結婚して直ぐ両方とも始めましたか。
  46. 浦和充子

    証人浦和充子君) 一緒になつた時には袋物の方だけだつたのです。
  47. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 袋物は後に止めてしまつたのですか。
  48. 浦和充子

    証人浦和充子君) ずつと兵隊行つてつた留守空襲で焼けるまでやつておりました。
  49. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 印刷の方は……。
  50. 浦和充子

    証人浦和充子君) 印刷の方は弟にさせておりました。
  51. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 店の工場の権利はあなたの方で持つてつたのですか。
  52. 浦和充子

    証人浦和充子君) はい。
  53. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 二つの商賣をやつて相当財産があつたのですか。
  54. 浦和充子

    証人浦和充子君) ありました。
  55. 伊藤修

    委員長伊藤修君) どの位その当時ありましたか。
  56. 浦和充子

    証人浦和充子君) あの頃で、お金は皮やなんかを買つたり、動かしたりするので、始終出廻つておるので、金の金額と申しますとはつきり……。
  57. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 相当自分のところで十万円あるとか、百万円あるとか、いろいろお考えになるでしようが、どの位家にあつた思つたですか。正確のことでなくてもよい、大凡の話でよいです。分らないならば分らないでよいです。
  58. 浦和充子

    証人浦和充子君) 忘れちやいました。
  59. 伊藤修

    委員長伊藤修君) その当時は少くとも生活にに苦まなかつたのですね。
  60. 浦和充子

    証人浦和充子君) はい。ずつと兵脇にばかり採られたのですけれども結構やつて行きました。
  61. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それであなたの家庭生活は仕合せだつたのですか。
  62. 浦和充子

    証人浦和充子君) 私の身は平凡だつたのですけれども、女としては仕合せだつたと思います。
  63. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 御主人はそのときは應召した、三度したとかいうのですね。
  64. 浦和充子

    証人浦和充子君) はあ。
  65. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 殆んど結婚されてから……。
  66. 浦和充子

    証人浦和充子君) 家におりませんでした。
  67. 伊藤修

    委員長伊藤修君) いないという状態ですね。
  68. 浦和充子

    証人浦和充子君) はあ。
  69. 伊藤修

    委員長伊藤修君) その時分には語助さんは何か道樂はあつたのですか。
  70. 浦和充子

    証人浦和充子君) 道樂といつて博打が好きだつたのですから。
  71. 伊藤修

    委員長伊藤修君) すでにそのころから博打をやるのですか。
  72. 浦和充子

    証人浦和充子君) はあ、時々は隠れてやつたのを私知つているのです。
  73. 伊藤修

    委員長伊藤修君) あなたと家庭を持たれてから。
  74. 浦和充子

    証人浦和充子君) ええ、それで博打に手を出すことだけは止めて呉れ、それでなければ別れるという問題まで起りましたのです。それで本人が一生断つと言つてそれつ切りやらないのは、やらなかつたのであります。
  75. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 博打はどういう種類の博打をやるのですか、いろいろありますね。
  76. 浦和充子

    証人浦和充子君) あの花札ですね。
  77. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それは博打打ちのところに行つてやるのですか。
  78. 浦和充子

    証人浦和充子君) はあ、博打打ちのところに行つて
  79. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 本職のところに行つて
  80. 浦和充子

    証人浦和充子君) はあ。
  81. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 素人同士樂しみにやるというのじやないのですね。
  82. 浦和充子

    証人浦和充子君) はあ。
  83. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そうすれば博打の手元を店の上つた利益とか、資本金を持ち出すというようなことはなかつたですか、その時分は。
  84. 浦和充子

    証人浦和充子君) 浦和兵隊行つている留守を私がやりましたけれども、本人がいますときは、たとえ一年いたときでも、自分でやつていたものですから分らないです。
  85. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 分らない。けれども店の商賣に差支える程度の道樂はやらなかつたのですね。
  86. 浦和充子

    証人浦和充子君) そんなことはありませんでした。
  87. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 空襲にあつてから、あなたの御在所の方に疏開されたらしいですね。
  88. 浦和充子

    証人浦和充子君) はあ。
  89. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それは御在所の方はどなたがいるのですか。
  90. 浦和充子

    証人浦和充子君) 私の父親がおります。
  91. 伊藤修

    委員長伊藤修君) だけですか。
  92. 浦和充子

    証人浦和充子君) それから兄さんとお嫁さんと、それだけです。
  93. 伊藤修

    委員長伊藤修君) おとうさんは幾つぐらいですか。
  94. 浦和充子

    証人浦和充子君) 七十今年四になりました。
  95. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そうすると家はその相続人がやつているのですね。
  96. 浦和充子

    証人浦和充子君) はあ。
  97. 伊藤修

    委員長伊藤修君) おとうさんは隠居されているのですね。
  98. 浦和充子

    証人浦和充子君) はあ。
  99. 伊藤修

    委員長伊藤修君) あなたの御在所は相当やつているのですか。
  100. 浦和充子

    証人浦和充子君) はあ……。
  101. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 相当な暮しをされているのですか。
  102. 浦和充子

    証人浦和充子君) 実家は微祿しちやつておりますから、現在は樂じやありません。
  103. 伊藤修

    委員長伊藤修君) お百姓ですか。
  104. 浦和充子

    証人浦和充子君) いいえ自轉車屋なんです。
  105. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 家や土地は持つていらつしやいますか。
  106. 浦和充子

    証人浦和充子君) 家は自分の家なんです。
  107. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そこに家を買つて疏開されたのですね。
  108. 浦和充子

    証人浦和充子君) ……。
  109. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そのお金はどこから出たのですか。
  110. 浦和充子

    証人浦和充子君) それは東京にいましたとき、袋物をしている頃に残した金をしまつておいたので買つたのです。
  111. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 六千円とか、五千円とか……。
  112. 浦和充子

    証人浦和充子君) そうなんです、六千円です。
  113. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 復員して見てから一緒にそこで同棲して見たのですね。
  114. 浦和充子

    証人浦和充子君) そうなんです。
  115. 伊藤修

    委員長伊藤修君) その間に御主人はなぜ商買をしなかつたのですか。
  116. 浦和充子

    証人浦和充子君) 私それで随分喧嘩したりあれした。復員して帰つて來てから、こんな御時勢に、何をやつてもとても食べて行くような仕事はないと言うから、元の印刷の方を始めなさいと言つたのです。併し機械を燒いてしまつて、新たに機械を買うまでお金がなかつたのです。そのために、俺は闇だとか、ああいうことは絶対しないと頑張つてそれでお魚、側に川がありましてその川から「うなぎ」やなんか取れましてね、それを賣つて暮したこともあるのです。ですけどその暇々に遊び行つてお酒を飲んだ揚句に博打場に入るようになつちやつたのです。
  117. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そうすると、あなたの疏開先の生活お金が要りますね。
  118. 浦和充子

    証人浦和充子君) はあ。
  119. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 漁をしてお魚を取つてつたお金暮しておりましたのですか。
  120. 浦和充子

    証人浦和充子君) 暮しました。
  121. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それとも持ち金を使つてつたのですか。博打の……。
  122. 浦和充子

    証人浦和充子君) 家を買つた残りで暫く暮して、それからお金がなくなつてしまうから、本当考えて呉れなければ困るという話をしてから魚取りを始めたのであります。
  123. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 博打で儲けて來るのですか。
  124. 浦和充子

    証人浦和充子君) いいえ、いつでも……。
  125. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 取られる方ですか。
  126. 浦和充子

    証人浦和充子君) そうです。
  127. 伊藤修

    委員長伊藤修君) その博打元手はあなたから絞ぼるのですか。
  128. 浦和充子

    証人浦和充子君) 自分で全部握つておりますから。
  129. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 会計は御主人委せですか。
  130. 浦和充子

    証人浦和充子君) はあ。
  131. 伊藤修

    委員長伊藤修君) あなたはやつたことがないのですか。
  132. 浦和充子

    証人浦和充子君) 兵隊行つてるときはやつたが、帰つて來ると皆自分で掴んで……。
  133. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それで御主人がなんか惡いことをやられたですね、間違つたことをせられたですね。
  134. 浦和充子

    証人浦和充子君) やりました。
  135. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それはどういうわけです。博打元手が欲しいためですか。
  136. 浦和充子

    証人浦和充子君) そのときには、私が何しろ生活して行く物資というものが、お醤油にしろ、お米にしろ、味噌にしろ、塩にしろ恐らく一切合切闇で買うのだから、少しは闇しなくちや生活できないと言つたのです。それで、野田町の藤井兼とか、何とかいう人が、炭をですね、トラツク一台持つて來て賣ると幾ら幾ら儲かるから、浦和さん、お金を出さないかと家を訪ねたことがある。そのとき家では余り飲んだり、博打をするのでお金がなくなつてしまつてつて資本金がなかつた。それでその資本金を作るので、親戚の野口とかいう家に行つたのだそうですけれども、そこの家に行つて幾ら幾ら金貸して呉れないかと言つたら、浦和博打を打つて、私が暮しに困つてるというのをやはりそれとなく聞えたのですね、実家の方へ……。それで親戚としても、結局やつて博打で消えてしもうのだからと言つて断わられた、断わられて、醉つ拂つてつたものですから、向つ腹立つて親戚の者に金貸して呉れないという法はないというので牛を引ツ張り出して、その牛をどうという当てがなくて引つ張つて歩いていたのだそうです。後で本人がそれを言つておりました。お金を借りに行つたら貸して呉れないから牛を引つ張り出しちやつた
  137. 伊藤修

    委員長伊藤修君) その牛を賣らなかつたのですね。
  138. 浦和充子

    証人浦和充子君) 賣るところまでは行かなかつたのです。引つ張り出したのだけれども……、何しろ大きい品物ですから(笑声)どうしていいか分らなくてまごまごしていたのだそうです。
  139. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それでつかまつたのですね。
  140. 浦和充子

    証人浦和充子君) はあ。
  141. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そのときにお金相当使つたのですか、その裁判のために。
  142. 浦和充子

    証人浦和充子君) 裁判のときに弁護士さんに拂うお金が私なくて、借りて、それで一時出してやつたのです。
  143. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 結局いろいろなことでお金詰つて家を賣るようなことになつたのですね。
  144. 浦和充子

    証人浦和充子君) はあ。
  145. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 家を五万幾らで賣つたのですね。
  146. 浦和充子

    証人浦和充子君) 五万五千円で賣つたのです。
  147. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そのお金はどういうことに使つたのですか。
  148. 浦和充子

    証人浦和充子君) そのお金は、家を賣られてしまつてから、子供三人抱えておりますから、負ぶつたり、抱いたりして私の母の生れた家まで行つたのですが、秩父なんです。そこまで行つて、叔父さんの家に置いて貰おうと思つたが今度養子が入つちやつたりしていて、子供三人も連れていたのじやなと言われた。仕様がないから家まで來て、主人実家の世話になる間に二千円、三千円と細く八千円貰いました。その後は浦和が皆掴んでいたのですけれども、やはりなくしちやつたのです。
  149. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 八千円貰うたのは、あなたの秩父の家に行くまでに貰つたのですか。
  150. 浦和充子

    証人浦和充子君) 行くときに三千円貰つたのです。
  151. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 秩父へ行くとき……。
  152. 浦和充子

    証人浦和充子君) はあ。子供洋服買つてつたり、着るものを買つて、それで眞ん中の子に着せてやつて、それで連れて行つたのです。行つて帰つて來たらお金がなかつたのです。
  153. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 秩父から帰つて來たら。
  154. 浦和充子

    証人浦和充子君) はあ。
  155. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それであなたの御主人兄さんの家へ三月の十四日ですか……、行つたのですね。
  156. 浦和充子

    証人浦和充子君) そうなんです。
  157. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それまでに幾ら貰つたのです。
  158. 浦和充子

    証人浦和充子君) 高須賀へ行くときにも三千円貰いました。
  159. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そうすると、最初に家を賣つたときに三千円貰つて、それで今の語助さんの兄さんの家へ行くときに又三千円貰つたわけですか。
  160. 浦和充子

    証人浦和充子君) そうなんです。
  161. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それで三千円は着物を買つちやつたのですね。
  162. 浦和充子

    証人浦和充子君) それは眞ん中の子に洋服買つてつて……。
  163. 伊藤修

    委員長伊藤修君) あとの三千円は生活費に使つたわけですね。
  164. 浦和充子

    証人浦和充子君) 生活費に使いました。
  165. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それから四月の五日までの間に幾ら金貰つたのですか。
  166. 浦和充子

    証人浦和充子君) 野田町へ行くときに二千円お金を受取りまして、その金で……。
  167. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 金を畿ら貰つたかということを聞いているのです。
  168. 浦和充子

    証人浦和充子君) 八千円です、全部で……。
  169. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 全部とは……。
  170. 浦和充子

    証人浦和充子君) 私が受取りましたのは八千円……。
  171. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 最初の三千円も入れて……。
  172. 浦和充子

    証人浦和充子君) はあ、最初から子供洋服買つてつたお金から全部です。
  173. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そうすると、三千円、三千円、二千円と貰つたのですか。そうして二千円は四月二日に野田町へ行つたときに二千円貰つておるのですね。
  174. 浦和充子

    証人浦和充子君) そうです。
  175. 伊藤修

    委員長伊藤修君) その間に貰わないのですか。
  176. 浦和充子

    証人浦和充子君) 貰わないです。四月の五日に受取つたのです。
  177. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 四月の五日に二千円受取つたのと、家を賣つたときに三千円貰つたのと、その間で秩父から帰つたときに三千円貰つたのですね。秩父行つたのは十一日ですか……、十一日から四月の五日までの間に野田町へ行つたときに、語助さんがあなたに金を渡したのではないですか。
  178. 浦和充子

    証人浦和充子君) 三回切りしか受け取っておりません。
  179. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そうですか。それで野田町へは何回くらい行つたのですか。いわゆる清作さんの家へ行つてから、三月の十四日から四月の五日までの間に何回くらい行つたのですか。
  180. 浦和充子

    証人浦和充子君) 四回です。
  181. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そうすると五日の分を入れて四回ですか。
  182. 浦和充子

    証人浦和充子君) そうなんです。
  183. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そうすると、あと三回は手ぶらで帰つて來たわけですね。そのときはただ話だけで帰つて來たわけですか。
  184. 浦和充子

    証人浦和充子君) はあ、話だけで……。
  185. 伊藤修

    委員長伊藤修君) その度びに、今の清作さんの家に帰つて來るようにあなた言つたのですか。
  186. 浦和充子

    証人浦和充子君) 言つたのです。私が野田町へ行くよりも、兄さんが呼んで來いと言つてきかなかつたのです。
  187. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それで言う度びにどう言うのですか。
  188. 浦和充子

    証人浦和充子君) どうつて……、私のことてんで馬鹿にしてしまつて、何も採り上げて呉れないのです。
  189. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 馬鹿にしているといつても、あなたは子供三人抱えているから必死じやないですか。
  190. 浦和充子

    証人浦和充子君) 向うで採上げて呉れないのです。浦和の方で、俺にも考があるのだから、あるのだから、それを繰返しておるだけです。自分としては家を賣るまでになつたの間違つたのだから、それじやこれから先お前はこうして呉れ、俺はこうするからという口をなぜきかないと、私言うのですけれども、お前が口で言うように、俺はこうするから、お前はこうしているというはつきりしたことは言えないというのです。
  191. 伊藤修

    委員長伊藤修君) だからあなたは兄さんの家へ預けて置いて、自分ひとり勝手なことをやつてつて、そうすると理窟に合わないのじやないですか。
  192. 浦和充子

    証人浦和充子君) それで、兄さんとしては、語助博打を打つようになつたのは私のせいだなんて言うのです。
  193. 伊藤修

    委員長伊藤修君) あなたは、どんな努力を費しても語助さんを兄さんの家へ連れて來なくちや、何じやないですか。
  194. 浦和充子

    証人浦和充子君) それが子供でしたらあれですけれども……。どう言つてだましても行くと言わないのです。
  195. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それで四月の五日の日に、あなたは、最後に行つたときに、二女の圭子というか、その子と町の眞ん中で、香取神社の近所で語助さんが歩いていたのを子供に追つ駆けさして、語助さんに連れさしたというのですが、本当ですか。
  196. 浦和充子

    証人浦和充子君) 本当です。
  197. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それで又あなたがおばさんの家へ厄介になつた時に連れて戻つて來た……。
  198. 浦和充子

    証人浦和充子君) 圭子を連れて戻つて来た。置いて行つてしまつたのです。
  199. 伊藤修

    委員長伊藤修君) なぜ一番語助さんを慕つておる圭子さんをそのまま預けて置かなかつたのですか、置いて行つてまつたというのは、あなたがそうやつて連れさしてやろうと思つて子供を追わしてやつたのに……。
  200. 浦和充子

    証人浦和充子君) 野田おばさんも三人ではとても働けるわけはないよ、一人背負つて一人膝へ置いては内職したつて食べられないから圭子ちやんだけは浦和さんに押付けて、上の子に赤ん坊のお守りをさせれば働けるからそうしなと言われて、私は圭子だけは浦和に余りなつくので浦和に渡したかつたのです。
  201. 伊藤修

    委員長伊藤修君) その考えが一番よい考えですが、なぜそれを実行しなかつたのですか、連れて帰るということは……そのまま預けておいてもよかつたじやありませんか、それに子供さんもお父さんになついておるから……。
  202. 浦和充子

    証人浦和充子君) 恐らく幾らなついても男親の面倒は永続きしませんから……。
  203. 伊藤修

    委員長伊藤修君) しても、せんでも、そうしなくちや、あなたは生きて行かれないのだから……、あなたはそういうふうに考えたのじやないですか。
  204. 浦和充子

    証人浦和充子君) いろいろ考えましたけれども、やはり子供が可愛そうですから、自分の傍から離したくなかつたのです。(証人泣く)
  205. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それでおばさんの所を出てからあなたは活動常設館の前でお魚を三枚買いましたね。薬を買つてから……。
  206. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そうすると殺そうという考えは、おばさんの所におるうちにそういうことを考えたのですか。
  207. 浦和充子

    証人浦和充子君) いいえ、前々から考えておりました。
  208. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 前々から……。
  209. 浦和充子

    証人浦和充子君) 殺そうというよりは、子供をやつて、私ばかり残れないから、私も一緒に死のうと言つたのを、上の子供が、本当にかあちやん詰らないから本当に死んじやおうと言つたのが始まりです。
  210. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 前々からということはいつ頃ですか。
  211. 浦和充子

    証人浦和充子君) 丁度家を賣られた頃からです。
  212. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 何とかすれば死ななくてもよいという……子供の仕合わせということを考えたら、あなたが先つき考えたように中の子を御主人に預けて、そうして上の子が末の子を守りしてそうしてあなたが働くという考え方をそのまま進めた方がよいと思いますが……。
  213. 浦和充子

    証人浦和充子君) それができれば仕合せだつたのですが、浦和性質が……あの男の性質から、子供をみて行かれないのです。ふだんが……。一日や二日はよいですけれども、子供に対して……私をはたくと同じような力で子供たちをいじめたんですから、私としては……。
  214. 伊藤修

    委員長伊藤修君) いや分りました。それでね。あなたはそこでお魚を三切買つたんですか。あなたが自分も死ぬというのなら、四切要るじやありませんか。
  215. 浦和充子

    証人浦和充子君) 赤ん坊は食べませんから。
  216. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 赤ん坊をどうして殺すつもりだつたんです。
  217. 浦和充子

    証人浦和充子君) 赤ん坊圭子と半々くらいしかいらないと思つたんです。
  218. 伊藤修

    委員長伊藤修君) では一人で食べたんですね。
  219. 浦和充子

    証人浦和充子君) ええ。
  220. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 実際は赤ん坊に三分の一くらいやつたんですね。結局あなたは三分の二しか食べないで、大人が一番少ないというわけですね。
  221. 浦和充子

    証人浦和充子君) 私の分を圭子がよこせと言うて食べたんです。
  222. 伊藤修

    委員長伊藤修君) だから赤ん坊に食わしたら、始からあなたが死のうと言うのなら四つ要るじやありませんか。
  223. 浦和充子

    証人浦和充子君) そのときはそうは考えなかたつたのです。
  224. 伊藤修

    委員長伊藤修君) あなたの分を幾分か赤ん坊にやれば、死ぬもんだと思えたのですね。
  225. 浦和充子

    証人浦和充子君) そうです。
  226. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 猫いらずは今買うのにね、印が要るんですがね。
  227. 浦和充子

    証人浦和充子君) 私知らないのです、印が要るということは。
  228. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 本当の猫いらずを買う場合は、印が要るんです。名前も処も言つて、そうでなければ賣らないですからね。
  229. 浦和充子

    証人浦和充子君) 私まさか心中するんだからとは言えませんから、「鼠を殺す藥がありますか」、と聞いたら、「この猫いらず利きますよ」と言われて、私それを買つて來たんです。
  230. 伊藤修

    委員長伊藤修君) だから印も処も名前も言わずして、買える藥だということは、毒にも藥にもならんというのであるから、それでは死ねないのですね。まして又人の命を取るような藥は、そういう堅い手続を取らなければ賣れないのです。そういう手続をせずして、賣藥みたいに直ぐ賣つて呉れるというのは、死ねないのですね、あなたはそれを知らないのですか。
  231. 浦和充子

    証人浦和充子君) 今まで藥というものを余り詳しく知らないのです。本当に鼠に利くから使つてみなさいと言われましたので。一袋で四人では少ないかなと思つて、二袋買つたのです。
  232. 伊藤修

    委員長伊藤修君) あなたの可愛い子供の仕合せのために、殺すというのは、あなたの考え方とすれば……。
  233. 浦和充子

    証人浦和充子君) 子供が死に損つたら余計可哀そうですから、私締めちやつたんです。苦しむと思つて……。私だつてまさか自分一人で、こんな思いをして、一生するとも思つていなかつたし、今だつて本当に希望も張り合も本当になくて、ただ毎日土方仕事に出てるだけなんです。
  234. 伊藤修

    委員長伊藤修君) ではそれでね。
  235. 浦和充子

    証人浦和充子君) はい。
  236. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そういう買物をして帰えられた途中でね、子供の欲しがるものを沢山買つたようですね。
  237. 浦和充子

    証人浦和充子君) みんな子供がふだん買つて呉れというのを、お金がないからというので、怒り付けでいたものを、皆んな買つてつたんです。
  238. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 何を買つてつたんです。
  239. 浦和充子

    証人浦和充子君) 玩具だの食べ物です
  240. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 余り沢山玩具は残つていなかつたようですが。
  241. 浦和充子

    証人浦和充子君) 風船やなんか、ぷうつと膨らませますと、ばちんと破れてしまいます。あれを買つたんです。
  242. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 枕許にありませんでしたね。
  243. 浦和充子

    証人浦和充子君) ええ。
  244. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 千円ばかし使つたんですね。
  245. 浦和充子

    証人浦和充子君) 千円ばかり使いました。
  246. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 千三百円ばかり野田から……、それで残つた金は三百三十円ばかり残つておりましたね。
  247. 浦和充子

    証人浦和充子君) 残つておりました。
  248. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そのときにね、あなたは、子供の仕合せとおつしやるならば、それで結局あなたとしては、どういう考えつたんです。子供の仕合せという考えは……。
  249. 浦和充子

    証人浦和充子君) 私の身になれば、子供が満足に育てて行ければそれが一番いいのですけれども、あの状態を続けたら、恐らく私三人抱えて乞食でもしなければならないし、それぢや私はいいけれど学校に行つている初枝が可哀そうですから。
  250. 伊藤修

    委員長伊藤修君) けれどもね。あなたがね。今の清作さんの家に居候してから、先つきあなたがおつしやつたように、最初の三千円は着物を買つたのでしようけれども、あとの五千円という金を貰つておりますね。そうして僅か三月一つぱいとしたところが十七、八日分、四月五日までとしたところで二十幾日分、その間五千円の金があるから生活はあなたできるじやありませんか。
  251. 浦和充子

    証人浦和充子君) その生活はそのときはできます。そうだけれども恐らくそれから、あれからの夏のことを考えますと……、先きのことばかり考えるものだから。
  252. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それは将來のことだから。
  253. 浦和充子

    証人浦和充子君) 恐らく家を賣つた金がなくなつてしまつたら一銭も入らないのですから。
  254. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 入らないのはあなたの思い過しで、清作さんは男の甲斐性でお金を作るからと言つたのでしよう。
  255. 浦和充子

    証人浦和充子君) はあ。
  256. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 男の甲斐性で金を作るのではありませんか。その問題にぶつかつて來てから又何とか考えたらいいではないですか。
  257. 浦和充子

    証人浦和充子君) 村に居りましたときはお米を買う金もなければ、配給を受ける金もありませんかち、いけないのは知つておりますけれども、どぶろくを賣つて私配給を受けたんです。
  258. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それは又あなたのおつしやるように、語助さんが頼りにならんとすればね。あなたの実家の方でも相当に暮しているのだから、なぜ相談しなかつたのです。
  259. 浦和充子

    証人浦和充子君) おぢいさんの所に相談しても、お嫁さんがきつくて、そうして浦和のことでも悪く言つておるから、向うで受付けないのです。
  260. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 話をしたのですか。
  261. 浦和充子

    証人浦和充子君) もう疎開をしているときに揉めちやつたもんですから……。
  262. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そういうふうにあなたが思い詰めて、子供のためだから生きる、子供のためですから相談すべきものじやないですか。
  263. 浦和充子

    証人浦和充子君) 誰にも相談しないのです。
  264. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それがだ。なぜ相談しなかつたというのです。
  265. 浦和充子

    証人浦和充子君) 恐らく相談しても、物事が起きてしまつてから馬鹿な充ちやんだ、こうしてやれるのに、ああしてやれるのにと随分言いました。けれど人が困つて子供を頼んでも、相談には乗つて呉れませんから。
  266. 伊藤修

    委員長伊藤修君) けれども、あなたが相談しなければ、向うは分りませんが、相談をあなたはしたかと聞いたのです。
  267. 浦和充子

    証人浦和充子君) 聞いたことはありません。
  268. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それではあなたの独断じやありませんか。相談して断わられたら、それこそ考え直したらいいではありませんか。
  269. 浦和充子

    証人浦和充子君) けれど、私の実家では、恐らく子供は預かることも何もかも不可能なんです。
  270. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 清作さんに、頼んだことはありますか。
  271. 浦和充子

    証人浦和充子君) 高須賀の兄さんですか。
  272. 伊藤修

    委員長伊藤修君) ええ。
  273. 浦和充子

    証人浦和充子君) 言いました。
  274. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 何と言うた。
  275. 浦和充子

    証人浦和充子君) そうしたら一番上の初枝は、二年生になつたくらいですから、子守もするし、あれしろこれしろと言えば、御飯も炊くし何でもするから、あの子なら家に貰うけれども、小さいのじや困るというのです。
  276. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 一番長女ですね
  277. 浦和充子

    証人浦和充子君) はい。
  278. 伊藤修

    委員長伊藤修君) じや初枝さんは始末が付くじやありませんか、あと二人じやありませんか。
  279. 浦和充子

    証人浦和充子君) そうして浦和の姉さんが里に居ますから、その姉さんに長いことじやありませんが、二月か三月ぐらいでいいかち、赤ん坊を育てて呉れないかと言うと、やはり初枝ならいい。下の子はあなたが手がなくてできないと同じようにどこで預かつても手が食うのだから、預かる人はいないと言いました。
  280. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 野田の所で預かつて呉れませんか。
  281. 浦和充子

    証人浦和充子君) 預かつて呉れません。私としては知合いの範囲では、子供を一人でも離したいと思つて頼んだのですけれども……。
  282. 伊藤修

    委員長伊藤修君) どことどことに話したのですか。
  283. 浦和充子

    証人浦和充子君) 野田町のおばさんにもお産婆さんにも全部当つたのです。
  284. 伊藤修

    委員長伊藤修君) あとの二人は始末が付かなかつたのですね。
  285. 浦和充子

    証人浦和充子君) はあ。
  286. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 浦和が同意かどうか知りませんが、あちらに子供を預けるところがあるのでしよう。
  287. 浦和充子

    証人浦和充子君) どこにですか。
  288. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 子供を預ける託兒所というものはあるのじやないですか。
  289. 浦和充子

    証人浦和充子君) 埼玉縣にですか。
  290. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そうです。
  291. 浦和充子

    証人浦和充子君) 知らないのです。
  292. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そういうものがあるということは知らないですか。
  293. 浦和充子

    証人浦和充子君) ええ。
  294. 伊藤修

    委員長伊藤修君) あなたは東京に住つてつたんだから……、東京にもありますね、子供を預つてつて、夕方まで預つてつて、あなたが仕事をして帰つて來てから又子供を引取つて暮して行く、ということも考えられるのじやないですか。
  295. 浦和充子

    証人浦和充子君) 今まで私、あんなに極端に起つて來てからのあれですから……。
  296. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そういうことは知らなかつたですか。
  297. 浦和充子

    証人浦和充子君) 知らなかつたです。
  298. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そういう設備はあるわけですよ。何故そういうことを知らなかつたのですか。
  299. 浦和充子

    証人浦和充子君) 古澤さんに後で聞いて泣いちやつたんです。そういうところがあつたのなら子供があんな思いもしないし、私も苦しみはしなかつたのですけれども……。
  300. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そういうことは考え付くことがなかつたわけですか。
  301. 浦和充子

    証人浦和充子君) その託兒所というものは考えたことがないのです。
  302. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それから生活に困れば一人千何百円とか二千円とか生活補給金というものが政府から貰えるのですがね。只貰えるのですよ。
  303. 浦和充子

    証人浦和充子君) そういうことも知らないのです。
  304. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 村の人とかに相談しなかつたのですか。
  305. 浦和充子

    証人浦和充子君) 誰にも相談いたしません。
  306. 伊藤修

    委員長伊藤修君) あなたは人の親だから子供を三人これからどうするということを考えた場合には、そういうところへ行つて聞いてみるとか、相談するとかいう考えを何故起さなかつたのですか。
  307. 浦和充子

    証人浦和充子君) でも恐らく杉戸署でも医者に掛けられたら……、越谷から送られて來ました際に、小田部長さんがお前そんな薬飲んじやつた後で警察に来て願出るのなら何故その前に言つて來なかつたかとおつしやいましたけれども、その前に私は自分の亭主がこういうわけで子供も不憫ですからとどういうふうにかお願いした場合には恐らく夫語助なら語助を呼び出して、「お前はこういう思いをさせないで子供の親としたらもう少しまともな人間になれ。」くらいの意見はして下さいますね。して下さいますけれども、今度は夫の方の身になりますと、「何だつててめえは俺のことを告げて警察に喚び出しやがつてとあれ以上の人になりますから……。浦和も今の心境もこんなことになつてしまつてから、今までの私に対して苦労を掛けて済まなかつた子供に対しても俺はもう少し愛情があればよかつたと言つていますけれども、物事が起えてしまはないと誰にも分らないのです。
  308. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 起きる前に……いいかね、起きる前にいろいろ手を盡して考えるということが……、あなたも子供じやないのだから、すでに三十になつているのだからそういうことは考え付きそうなものだと思うのだがね。
  309. 浦和充子

    証人浦和充子君) 私も手を下すまでには随分眠れないで毎晩考えました。
  310. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 警察にも相談しなかつたのですね。
  311. 浦和充子

    証人浦和充子君) 全然しません。ただ野田町の警察へは浦和が余りよそ様の自轉車を……、何だか着物なんか賣りに行つたの、瀕りに物がなくなつたとか……。賣込みをやりましたから、その品物というのはどこの誰それのを受取つて頼まれて賣つたのか、自分でものにして賣つたのだが、それを野田町の警察に聞きに行つたことがあるのですが……。
  312. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 何だな、あなたの話を聞いてみますと、自分ひとりで独り決めをしていますからね。世の中は廣いのですから、もう少し人に相談してものを運ぶと間違いはなかつたのですが、自分ひとで独り決めをして……おつたようですね。
  313. 浦和充子

    証人浦和充子君) 確かにそうです。
  314. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 確かにそうですね、間違いの因はそこにあるのですね。
  315. 浦和充子

    証人浦和充子君) それにもう少し親が、相談を掛けても相談相手になつて呉れるというような親ならいいんですけれども……。
  316. 伊藤修

    委員長伊藤修君) どつちの親が……。
  317. 浦和充子

    証人浦和充子君) 私の親です……。
  318. 伊藤修

    委員長伊藤修君) あなたの親があなたの相談に乘つて呉れないのですか。
  319. 浦和充子

    証人浦和充子君) 呉れないのです。自分自分の眞実の総領息子に対して頭が上らないくらいですから、家庭の中がとてもうまく行かないので、そこに私が子供を頼むなんと言つたらおぢいさんが余計泣かなくちやならないのです。先のない親を泣かせるのも不憫だと思つて……。
  320. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 家に帰られてですね。四月六日に家に帰られて……。
  321. 浦和充子

    証人浦和充子君) 帰りました。
  322. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 子供に魚を煮て、今の猫いらずを入れて煮て食わしたわけですね。
  323. 浦和充子

    証人浦和充子君) そうです。
  324. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そこのところがどうも……。三切で子供を三人殺すことはいいが一切どうも足らないので、あなたが死ぬ氣じやないように思われるがね。
  325. 浦和充子

    証人浦和充子君) そんな感じがありますね。私の頭は赤ん坊がいくらも食べないから、私が分けてやればいいと思つたのです。どつちみち藥がおつゆに入つていますから、私はそのおつゆを自分で掛けて飲めばそれでいいと思いました。
  326. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 見たところが八時頃になつても一向模様が変らないから……、それで姉の子の方の初枝さんが足を投げ出して顔色が変つて来た。苦しむといけないから絞殺した……。
  327. 浦和充子

    証人浦和充子君) そうです。暴れると困ると思つたんです。苦しいだろうし。
  328. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それなら何故足を投げ出して顔色が変つた子を先にしなかつたか。圭子さんから先に殺しておりますね。
  329. 浦和充子

    証人浦和充子君) そうです。
  330. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 暴れる人を先に殺さなかつたか……。
  331. 浦和充子

    証人浦和充子君) 蒲團を敷いて、それで一旦初枝の床とを先に敷直した蒲團の方に寝かしたのです。
  332. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それで、苦しみが早く廻つて子供が苦しみそうになるのをあなたが観察しているのだから、初枝さんですか、初枝さんから手を掛けそうに思えるがね。すやすや眠つている何も異常のない圭子さんを先に手を掛けたというのは考えられないのかね。どうしてそういう順序を間違えたのかね。
  333. 浦和充子

    証人浦和充子君) 私は落付いて自分何事もやつているつもりなんですけれども、その事が皆ちぐはぐになってしまって……。
  334. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そのときに顔色が変わつておりはしなかつたのではありませんか。
  335. 浦和充子

    証人浦和充子君) 別に……。
  336. 伊藤修

    委員長伊藤修君) あなたは御存じないかも知れませんが、解剖した結果は、胃の中に猫いらずの燐というものが少しもなかつたのですね、いわゆる毒物が少しもない、毒にもならなかつた、顔色が変わるということはなかつたのではありませんか。
  337. 浦和充子

    証人浦和充子君) 解剖してね、お医者さんの鑑定した結果は、胃の中に、毒を飲んだときには燐が残つているのですが、それがちつともない。本当の少しでもないのですよ、何にもない、痕跡もないというのですからね。
  338. 浦和充子

    証人浦和充子君) お魚を煮たおつゆの残りを私が御飯に掛けて、朝食べましたときに溶けきれないで、薬がさらさらしたままお鍋に一ぱいあつたのを掛けて食べるときに、こう砂を混ぜて食べてるような感じがしたのです。
  339. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そうでしよう、いい加減な藥だから……。あなたは砂かなんか分らないが……。
  340. 浦和充子

    証人浦和充子君) あの薬は利かなかつたのですね。
  341. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 利かない。警察で足がふらふらして、喉が乾わいたから、水を貰つて飲んだというが、それは藥が利いたのではなくて、辛いおつゆを出掛けに飲んだから、喉が乾わいたのですよ。藥が利いたのではないのですよ。
  342. 浦和充子

    証人浦和充子君) 猫いらずというのはどういうのが本物なんですか。
  343. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それは本物は別にあるのですけれどもね。あなたの買われたのは、人を殺すような猫いらずじやなかつたのですね。だから私達考えますと、子供がすやすや可愛い顏をして寝ておるのですから、あなたが毒を飲ましても、そのまま寝ている子供を何故締めて殺さなくちやならん気持になつて來たのですか、ただ暴れるといかんというのですね。
  344. 浦和充子

    証人浦和充子君) 暴れる中に藥が廻つて苦しいだろうと思つて……。
  345. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 苦しんではいないのですよ、足を伸ばしたままですから苦しんでいるということにはなつていないですから、生活を先馳けにしてあなたが殺してしまつたのですから、苦しい場合だから子供が可愛そうで見るに見かねて殺すという氣持は察せられますけれども、まだそこまで行つていないのです。若しそういうあなたの氣持だとすれば、一番初めに初枝さんから殺さなければならない、こういうように考えられるわけですよ。だからあなたがそのとき氣持の移り変わりはどうも納得が行かないのですが、そう思つたのですね。
  346. 浦和充子

    証人浦和充子君) いろいろに裁判所でも私言われたのですけれども、お前が圭子さんが親に対して、一番とうちやんとうちやんと氣持を寄せるのが憎くつて先にやつたのじやないかと言われるけれども、自分子供ですからこつちが憎い、こつちが可愛いというわけはないのです、みんな同じです、ただ考えが浅かつたのは、私浅かつたと思いますけれども、現在でも恐らく私には自分で土方に出て働いてでも親に幾らかでも送つてやりたいと思つて食べるのに一杯なんです、それを子供三人抱えた私が働いたつて、恐らく子供達はお粥も飲ませられないのですから、そんな不憫なことをさして育てられない、それで私は何故自分で内職だのして働いて……、子供というのは浦和のことをたよる頭がなかつたのです
  347. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それは先つき言つた通りであつて、方法はまだ幾らでもあるように思えるのですがそうでしよう、あなたが今、今日お考えになつても、そういういろいろな方法があると……手が盡せるとお思いにはならんですか。
  348. 浦和充子

    証人浦和充子君) それは考えませんでした。
  349. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それであなたは結局生活が苦しい、生活苦から子供を殺したということになるんですか。
  350. 浦和充子

    証人浦和充子君) いえ苦しくなつてからいじめるのはいやだつたのです、それは、余りのお米が五合しかない、お金もないので、上の子供もしよつちゆうそれを聞かされているものですから、御飯を食べるときにかあちやん後があるのと言われるとひやひやしたのです。
  351. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 現実に、今日こう米がなくては三日も四日もひもじい思いをして子供の窶れ果てた姿を見ては親としてもたまらんから、その場合はそういう氣持を起すことも考えられるけれども、又将來のことであつて今日の生活に困つていないのに……。
  352. 浦和充子

    証人浦和充子君) あの事件のときの立場でしたらまだ一と月はゆつくりやつて行けます。
  353. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 一と月も取り越苦労して先に子供を送つてしまうという手はないでしよう。
  354. 浦和充子

    証人浦和充子君) だけれども私の立場にならないと分からないのです。
  355. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 誰の立場に立つて見ても一と月の生活の余裕があるならば一と月の先きの生活苦を見越して可愛い子供を殺してしまうという手はないのですけれども……。
  356. 浦和充子

    証人浦和充子君) 高須賀の兄さん子供によくして呉れませんでしたから……。
  357. 伊藤修

    委員長伊藤修君) よくして呉れなかつたというけれども、あなたという立派なおかあさんがあるのに……、子供は丸々と太つているじやないですか。
  358. 浦和充子

    証人浦和充子君) 子供は育つていました。
  359. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 可愛い子供を一と月も先に見越して殺すという手はないでしよう。
  360. 浦和充子

    証人浦和充子君) 私としても殺したくありません。八年も骨折つて育てて……。だからはたの人の考えでは私が一人になつて樂をしたいからというふうにとられるらしいのです。
  361. 伊藤修

    委員長伊藤修君) どうもそういうふうにも考えられるですよ、あなたが子供を殺した氣持のことについてもあなたの言うことは違つているですね、今まで言つておることがね。一番初めにあなたのおつしやつたときはこういうことを言つているですよ、「夫は賭博をやつたり牛泥棒をしておりますので何とかして眞人聞にしてやる考えからこんな心を起してしまつたのです。」これは一番初めですよ、これは四月の日ですね、四月の七日の日の朝の話です。これが一番先にあなたの言うた言葉です。その次にあなたの言うておることは「子供三人いたんでは生活ができないので惡い氣持ちを起こしたのであります。」こういうことを言つているのですね、それから又檢事局で言うておる理由は又違つて來ますね。
  362. 浦和充子

    証人浦和充子君) その度に質問が違つてしまうのですけれども……。
  363. 伊藤修

    委員長伊藤修君) しまうけれどもあなたは子供をいじらしいから殺すというあなたの理由ですね、どうして殺さなくちやならなかつたかその理由は一つでしよう。
  364. 浦和充子

    証人浦和充子君) それは生活苦です。
  365. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 生活苦ですけれども、一番初めはそんなことは言つていない。
  366. 浦和充子

    証人浦和充子君) それからあのときには頭の痛いときで、執拗に責められていた日で自轉車で押して呉れるから、誰か黙つてつて行つてしまうから……。
  367. 伊藤修

    委員長伊藤修君) その問題はこの問題に関係ないことですね。あなたが大切な子供を殺した大きな問題ですからね。その原因がどこにあつたかということはあなたが言うときに一々違つて來るというのは変じやないですか。
  368. 浦和充子

    証人浦和充子君) 私の立場では生活のことといろいろの裏がありましたそのことが原因なんです。
  369. 伊藤修

    委員長伊藤修君) で、警察に勾留されていたときに語助は來なかつたのですか。
  370. 浦和充子

    証人浦和充子君) 全然來ません。
  371. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それから差入れもしなかつたのですね。
  372. 浦和充子

    証人浦和充子君) しません。
  373. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それから弁護士のあれは誰が出したのです。語助さんですか。
  374. 浦和充子

    証人浦和充子君) あれは古澤さんがお世話して下さつたのですけれどもあとで聞きましたら高須賀の兄さんから取つてつたという話だつたのです。
  375. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 古澤さんからですね。
  376. 浦和充子

    証人浦和充子君) ええ、古澤さんから……、私は何もそんな弁護士を掛けて罪を軽くしてもらうという氣持がなかつた。弁護士も要らないと言つたのです。
  377. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 要らなくても法律上では弁護士を付けなくちやいけないのですからね。あなたの立場では、それで執行猶余で家へ行つて誰に引取られたのですか。
  378. 浦和充子

    証人浦和充子君) 古澤さんです。
  379. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そこで世話になつたのですか。
  380. 浦和充子

    証人浦和充子君) 古澤さんが七月の四日に釈放されまして、その日に新宿の藤井先生のところに連れて行つて下すつたのです。そこへ行つて三日目だつたと思いますけれども、浦和が訪ねて來ました何としても会わせろ。それで藤井先生も考えて一應それから向うで立会うというのでどんな要件だか本人に話があつたらするようにと言つて会わしたのです。併しながら自分としては別れる頭がないから戻つて呉れと浦和言つたのです。ですけれども私としては戻れないですから……。
  381. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それで……。
  382. 浦和充子

    証人浦和充子君) それで藤井先生に私、尼さんに入つて子供のことだけで暮したいというのをまあもう少し考え直して見なさいと藤井先生に言われたのですけれども、やはり私、社会にいるより静かなところへ入つていた方がいいと言つたのです。そうしたら、先生もそれも結構ですというわけで、お寺へ行くように古澤さんが連絡をとつて下すつたのです。ところが浦和が今度はお寺までどうしても送ると言つて聞かないのです。
  383. 伊藤修

    委員長伊藤修君) どこのお寺ですか。
  384. 浦和充子

    証人浦和充子君) 信州です。
  385. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 信州の……。
  386. 浦和充子

    証人浦和充子君) 威光院です。
  387. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そこへ行つたのですか。
  388. 浦和充子

    証人浦和充子君) そこへ古澤さんが連絡して下すつたのですが、向うでも待つているから……。
  389. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それで出掛けたのですか。
  390. 浦和充子

    証人浦和充子君) 出掛けないのです。
  391. 伊藤修

    委員長伊藤修君) どうしたのですか。
  392. 浦和充子

    証人浦和充子君) 私、浦和にどこまでも附かれるのが嫌だつたものですから。
  393. 伊藤修

    委員長伊藤修君) どうしたのですか、それから……。
  394. 浦和充子

    証人浦和充子君) それで古澤さんの親戚の家でお百姓さんを手傳つておりました。
  395. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それから……。
  396. 浦和充子

    証人浦和充子君) それから後は私がどこへ古澤さんの世話で出て行つて浦和が訪ねて來て脅かすので、私古澤さんの家へ又戻つて來てそれで十日ばかりおりました。
  397. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それからどうしたのですか。
  398. 浦和充子

    証人浦和充子君) それで夜晝訪ねて來て……。
  399. 伊藤修

    委員長伊藤修君) ずつとそれから今日までのことをおつしやつて下さい。
  400. 浦和充子

    証人浦和充子君) それで夜晝訪ねて來て、古澤さんのおかあさんも古澤さんも持て余してしまつた、あまりしつこいので……、三時間も四時間もいますから……。それで私としてもよそ様にこうして私がいなければ來ないけれども、いるから來るのだ、一時本人仕事か何かに落着かせて、それで私その後にきちつとなりたいと思つて、勝間さんに通つて行つたのです。何か仕事はないでしようか、こういう事情にあるので、困るのですけれどもと言つたら、ここは炭坑だから坑内でも岡場でも仕事があるから、じや浦和さんを寄越すようにというので、それで浦和を連れて行つて。置いて來たのです置いて來たら直ぐ又駅へ追つ駆けて來て、俺一人置かないで一緒になつて呉れなくてもいいから、近所でもいいからいて呉れと言つて聞かないのです。それで又勝間さんの家へ戻つて相談したのです。そうしたら勝間さんが折角浦和君も今度は眞面目になると言つているのだから、もう一回見てやれというわけです。その代り私絶対に浦和一緒にはならないと言つたのです。ただ世間態として三十にもなる男が女房もいないと信用がないから、働くにも信用が大事だから、名義だけでいいというわけで、今のところ別々に働いております。
  401. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それで一緒に住まつているのですか。
  402. 浦和充子

    証人浦和充子君) いいえ、一緒に住まつていません。私は勝間さんの方にいます。浦和は柳生策之助の物置を借りています。
  403. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 別々に暮していますか。
  404. 浦和充子

    証人浦和充子君) 別々なんです。
  405. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そのことは藤井惠照というのですか、藤井さんは知つているのですか。
  406. 浦和充子

    証人浦和充子君) 古澤さんによく書いて送りました。
  407. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 結局藤井さんに相談せずに一緒になつたのですか。
  408. 浦和充子

    証人浦和充子君) 藤井先生には相談しません。
  409. 伊藤修

    委員長伊藤修君) しないのですか。それで藤井さんが身元を引受けて……。
  410. 浦和充子

    証人浦和充子君) 古澤さんが引受けて……。
  411. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 引受けてそれから藤井先生のところに引取られて、お寺へ行くという話になつたわけでしよう。それから再三あなたを追つ駆けて歩いている。それを断つて相当の日にち断つてつたんだから、結局は一緒の地方におるのだから、そういうことになつたことについて藤井先生に相談しなかつたのですか。
  412. 浦和充子

    証人浦和充子君) 浦和が八月の半ば頃でした。いろいろすつたもんだいろいろな話のときに、じや、俺もちやんと諦めると一回言つたことがあるのです。それで、じや私のあとを追わないね、私も仕事をしてどういうふうにかやつて行くから、だから浦和浦和で立直つて行つて、それでちやんとお嫁さんを持つて、世の中を持ち直して呉れと言つて浦和氣持よくそのときは承知して、お酒を一杯買つて來て古澤さんと三人で飲んだのです、奇麗になるつもりで……。
  413. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それにもかかわらず、あとを又追つ駆けて來て……。
  414. 浦和充子

    証人浦和充子君) あと次の日から駄目だつたのです。
  415. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 先程からのお話によると、あなたとしては子供を殺さんならん程のたよりのない人と又ぞろ一緒になるということは、どういうお考えかというようなことを聽いておるわけです。
  416. 浦和充子

    証人浦和充子君) 一緒になる頭はありません。
  417. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 同じ地方に住まつておるのでしよう。
  418. 浦和充子

    証人浦和充子君) 同じところに住んでおります。
  419. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 世間には一緒におると見られますね。
  420. 浦和充子

    証人浦和充子君) そうです。
  421. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それが、一緒になることがいい悪いは別問題として、あなたがこれだけの大きな過失を犯して、その人と又一緒になるということは、而もそれが原因じやないですか。
  422. 浦和充子

    証人浦和充子君) 原因です。
  423. 伊藤修

    委員長伊藤修君) たよりにならんから子供を殺したと強く言つておる、その人と今日一緒になつておるということが、私には分らん。
  424. 浦和充子

    証人浦和充子君) それで私は親にも手紙が出せないでおるのです。
  425. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 一体あなたは自分子供自分勝手に殺す、人の子供なら殺しもしまいが、自分子供だから殺す、あなたが勝手に子供の命を取つてしまう、そういう考え方はどうですか。
  426. 浦和充子

    証人浦和充子君) それはどう考えつて、愛情がなくて薄情な親になりますね。
  427. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 薄情どころではないね。人の子供なら大変な問題ですね。
  428. 浦和充子

    証人浦和充子君) 人の子供ならどんなことがあつてもできません。
  429. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それと同様に、自分子供を……、子供はあなたの私有物でないのだから……。そうでしよう。
  430. 浦和充子

    証人浦和充子君) でも私は極端に自分子供だからと思つておりましたから……。
  431. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 自分子供だから殺そうが生かそうが勝手だという考えですか。
  432. 浦和充子

    証人浦和充子君) いえ、そうではないのです。
  433. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それなら人の子供も大事だと同様に自分子供も大切でしよう。
  434. 浦和充子

    証人浦和充子君) 大切です。
  435. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 自分子供だからと言つて殺してしまうという考え方は……。
  436. 浦和充子

    証人浦和充子君) 今でも殺したいという氣持はないのです。
  437. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 殺す必要性がないでしよう、あなたの今までの話を聞いて見ると……。
  438. 浦和充子

    証人浦和充子君) 先行きが思われて、苦労させたくない、それだけです。
  439. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 何かお尋ねになることがありますか。
  440. 宮城タマヨ

    ○宮城タマヨ君 あなたは藤井惠照さんに両全会でお世話になつていらつしやつたのですか。
  441. 浦和充子

    証人浦和充子君) 出所しましてから古澤さんという方が引受人になつて、それで僕のところは夫の浦和語助というものと一里くらいしかはなれていない……。
  442. 宮城タマヨ

    ○宮城タマヨ君 両全会と関係ないのね。
  443. 浦和充子

    証人浦和充子君) はい。
  444. 宮城タマヨ

    ○宮城タマヨ君 それじやよろしうございます。少し私伺いたいのですが、あなたは、あなたの初枝さんだの、圭子さんぐらいの小さいときに、あなたのおかあさんがあなたを可愛がりましたか。
  445. 浦和充子

    証人浦和充子君) 丁度私が初枝ぐらいのときには、私の母親は何か精神が少し異常と申しましましようか、母親の愛情というものは、私は全然知りませんでした。
  446. 宮城タマヨ

    ○宮城タマヨ君 知らない……。
  447. 浦和充子

    証人浦和充子君) はい。
  448. 宮城タマヨ

    ○宮城タマヨ君 それであなたは少し時々変になるようなことはないのね。お母さんのようなことはありませんか、考えてみたら……。
  449. 浦和充子

    証人浦和充子君) 自分で親の姿をずつと初枝ぐらいのときから十三になるまで見ていたから、私としても若しかあちやんの血筋を私が引いたならば困ると思つて、世帯を持つてから喧嘩したり、又自分でむらむらとこうなつて行く氣が起るのが自分で分るのです。そのときに成るたけ私はかあちやんがああだから自分も氣を附けなければならいなと思つて、その点は考えました。
  450. 宮城タマヨ

    ○宮城タマヨ君 あなた、子供さんをひどく叱つたときははたきますか。
  451. 浦和充子

    証人浦和充子君) はたきます。
  452. 宮城タマヨ

    ○宮城タマヨ君 はたくそのときには憎くてはたくの。
  453. 浦和充子

    証人浦和充子君) 憎くはないです。
  454. 宮城タマヨ

    ○宮城タマヨ君 こうしなければ躾ができんというように考え子供をはたきますか。
  455. 浦和充子

    証人浦和充子君) はたきます。
  456. 宮城タマヨ

    ○宮城タマヨ君 それでも初枝さんぐらいになつたらはたかなくても話せばよく分るでしよう。
  457. 浦和充子

    証人浦和充子君) ところがやはり悪い血を引くと見えまして、初枝それをやつてはとうちやんに叱かられるからそれをやるなと言つても、うんと言つて止めればいいけれども、返事をしないで、又極端にいけないと言つたことを繰返えす、それを一度やつたことを二回やるとお終いには手を挙げてはたいたことがあります。
  458. 宮城タマヨ

    ○宮城タマヨ君 そんなことはしよつ中ありますか。
  459. 浦和充子

    証人浦和充子君) ありました。
  460. 宮城タマヨ

    ○宮城タマヨ君 はたくよりひどいことはしたことはないですね、例えば首を絞めるとか、蒲團の中に入れて抑えるとかいうことはないのね。
  461. 浦和充子

    証人浦和充子君) わたし、それはできないのです。
  462. 宮城タマヨ

    ○宮城タマヨ君 あなた学校に行くようになつてから先生に可愛がられましたか、学校ではよい子供つたのね。
  463. 浦和充子

    証人浦和充子君) 学校に行つておりましたときは、案外可愛がられました。
  464. 宮城タマヨ

    ○宮城タマヨ君 とすればよくできた方ですか、成績はよかつたんですね。
  465. 浦和充子

    証人浦和充子君) 学問の方ですか、学問の方は六十人の中で十四番ぐらいでした。
  466. 宮城タマヨ

    ○宮城タマヨ君 身体は丈夫だつたのね。
  467. 浦和充子

    証人浦和充子君) 身体は丈夫でした。
  468. 宮城タマヨ

    ○宮城タマヨ君 月経はいつからありましたか。
  469. 浦和充子

    証人浦和充子君) 十六の七月頃でした。
  470. 宮城タマヨ

    ○宮城タマヨ君 順調でしたか。
  471. 浦和充子

    証人浦和充子君) 順調ではありません。
  472. 宮城タマヨ

    ○宮城タマヨ君 どういうふうに、何か具合が惡いようなことがあつたらちよつと話をしてみて下さい。
  473. 浦和充子

    証人浦和充子君) 身体はどこも悪いところがないのですけれども毎月決まらなくて、十七のときには年に三回しかなかつたこともあるのです。それで私、こうときどきのぼせるようなあれがあるのかしらと思うことがあるのですけれども……。
  474. 宮城タマヨ

    ○宮城タマヨ君 あなた月経のときにお腹が痛いとか、頭が痛いとか何かふらふらしたか、そのとき特別腹が立つたというようなことはありませんか。
  475. 浦和充子

    証人浦和充子君) お腹はとても痛みます。
  476. 宮城タマヨ

    ○宮城タマヨ君 寝なければならないということはないのね。
  477. 浦和充子

    証人浦和充子君) 寝ることはありません。
  478. 宮城タマヨ

    ○宮城タマヨ君 氣分はどうですか。
  479. 浦和充子

    証人浦和充子君) 氣分は、大して強くない方ですから何んともないのです。
  480. 宮城タマヨ

    ○宮城タマヨ君 何日ぐらいあるの。
  481. 浦和充子

    証人浦和充子君) 上るまでに四日ぐらい掛かります。
  482. 宮城タマヨ

    ○宮城タマヨ君 四日、そのときには子供のすることなんかで腹が立つようなことはありませんか、子供がふだんのときでしたらそんなに氣に掛からないことでも月経時には特別に子供のすることなんかに腹が立つというようなことはありませんか。
  483. 浦和充子

    証人浦和充子君) そういうことはありません。別にメンス中だからのぼせるとか肝が煮えるというようなことはないのです。
  484. 宮城タマヨ

    ○宮城タマヨ君 あなたは本が好きですか。
  485. 浦和充子

    証人浦和充子君) 大好きです。
  486. 宮城タマヨ

    ○宮城タマヨ君 何を読みましたか。
  487. 浦和充子

    証人浦和充子君) まあ一通り聖書やなんか読みました。
  488. 宮城タマヨ

    ○宮城タマヨ君 あなたはクリスチヤンですか。
  489. 浦和充子

    証人浦和充子君) 私の母親がそうだつたのです。
  490. 宮城タマヨ

    ○宮城タマヨ君 あなた何か信仰を持つておりますか。神様を信じているの。
  491. 浦和充子

    証人浦和充子君) 現在は私何も考えておりません。
  492. 宮城タマヨ

    ○宮城タマヨ君 でも聖書を読んで神様のことを考えたことはあるのですか。
  493. 浦和充子

    証人浦和充子君) あります。
  494. 宮城タマヨ

    ○宮城タマヨ君 いつ頃。
  495. 浦和充子

    証人浦和充子君) 十二頃です。
  496. 宮城タマヨ

    ○宮城タマヨ君 いつまで。
  497. 浦和充子

    証人浦和充子君) お店に入るようになつてからは家へ置きつ放しにして全然見ないのですから。
  498. 宮城タマヨ

    ○宮城タマヨ君 それから映画は好きですか。
  499. 浦和充子

    証人浦和充子君) 嫌いです。映画はお嫁に行つてから二、三回切り行つておりません。
  500. 宮城タマヨ

    ○宮城タマヨ君 そんなに好きではないのね。あなたは先生とか近所の方との……。先生はなんですが、近所の方とのお附き合いは円満に行きましようか。
  501. 浦和充子

    証人浦和充子君) よそ様とは争つたことは一回もありません。
  502. 宮城タマヨ

    ○宮城タマヨ君 あなたがそんなに貧乏しているのに、誰かが民政委員というものがあつて、こういうような手続をすればお金が貰えるのですよということをどうして教えて呉れなかつたのでしよう。
  503. 浦和充子

    証人浦和充子君) それはどつちみち浦和という人間が生れた土地に疎開して、そうしてそこの土地の中でまで恐喝をやるために、誰も相手にして呉れなくなつちやつたんです。
  504. 宮城タマヨ

    ○宮城タマヨ君 それで隣近所との附き合いもないのね。
  505. 浦和充子

    証人浦和充子君) 全然ありません。最初は、浦和兵隊から帰つて來ない頃は皆んな出入りしたのです。それが浦和が帰つてから性質が極端に悪いので、お客様が來ても今喧嘩したというようなそぶりを、來たお客様の前でもそんな感じを與えるようなふうですから受けが悪くて。
  506. 宮城タマヨ

    ○宮城タマヨ君 初枝さん学校に行つてからお友達に虐められるようなことがありましたか。
  507. 浦和充子

    証人浦和充子君) 浦和があれをやりましてからありました。初枝の父ちやんは牛を盗んで警察に挙がつているのだといわれて、それで初枝が泣いて帰つて來て、かあちや本当かと聞くので嘘だと言つた。かあちや本当に嘘か、それじやとうちやんどこにいるのだと言うので、東京に働きに行つているのだと言つた。そうすると翌日、今度初枝は親が嘘だと言つたから嘘だと言つたら友達なんかに否定されたのです。そうして今度ははたかれて來たのです。それでかあちやんおれもう学校に行かないと言うのです。
  508. 宮城タマヨ

    ○宮城タマヨ君 あなた先程家を賣る頃から貧乏になるだろうと思つたとか……。
  509. 浦和充子

    証人浦和充子君) いいえ貧乏になるだろうというのじやないのです。浦和の態度から推して、とてもこれから先やつて行けないと思つたのです。
  510. 宮城タマヨ

    ○宮城タマヨ君 それじや、その頃から子供を殺そうということを考えたと先つきおつしやいましたね。
  511. 浦和充子

    証人浦和充子君) 考えましたね。
  512. 宮城タマヨ

    ○宮城タマヨ君 それから後子供さんの着物なんか買つておりますがどういう氣持でしよう。
  513. 浦和充子

    証人浦和充子君) はあそれはやつぱり可愛いから、その時期のものを着せたいので一枚圭子買つてつたのです。
  514. 宮城タマヨ

    ○宮城タマヨ君 あなた今浦和さんはもう嫌いで仕方がないでしようけれども浦和さんよりももつと好きな男の人はないのね。或いは若しかしたら結婚でもしてみようというような人はいないの。
  515. 浦和充子

    証人浦和充子君) 私結婚というよりも男というものはもう絶対にいやです。
  516. 宮城タマヨ

    ○宮城タマヨ君 もう懲りごりなの。それからあなたはどういう時に一番亡くした子供のことを考えますか。
  517. 浦和充子

    証人浦和充子君) 仕事に朝七時半に行つて夕方四時に帰るのですけれども、丁度その往復が、子供が学校に行く時間なんです。それで何時も泣いて歩いているのです。それから御飯を食べる時、それから近所の子供が訪ねて來た時など。
  518. 宮城タマヨ

    ○宮城タマヨ君 乞食をするより死ぬ方がよいとあなたは考えたというけれども……。
  519. 浦和充子

    証人浦和充子君) はあ。
  520. 宮城タマヨ

    ○宮城タマヨ君 人から考えれば今乞食をさしてもいいから先になつたら樂になるかも知れないという望がありそうに思いますが。
  521. 浦和充子

    証人浦和充子君) 私はそれができない。乞食までさせてみじめな思いをさせるんだつたら死んじやつた方がいいと思つております。
  522. 宮城タマヨ

    ○宮城タマヨ君 あなたは本氣でそう思うの。
  523. 宮城タマヨ

    ○宮城タマヨ君 それじや今子供さんを殺したことについてあまり後悔はしないのですね。どうせこれから貧乏して乞食になるのだから。
  524. 浦和充子

    証人浦和充子君) 死んだ方がいいというのでなく、みじめな思をさせたくないのです。どちらかというと私の性質が少しお高いのかも知れないですね。だけれども私は本当に今まで中ぐらいの生活をして來ていまして、極端に今度お金もない、それこそ五十銭札一枚ない、米もない。子供が学校に行くのに、今日はお米がないから初枝学校をやすめと随分言つたのです。ああいうことを子供に聞かせたくないのです可哀そうで。
  525. 宮城タマヨ

    ○宮城タマヨ君 だけどそのことより子供を絞殺す方が樂なの。
  526. 浦和充子

    証人浦和充子君) 長い苦しみをして自分が暮せなくなつて一番困つた時に、人へ子供を離して育てるのだつたら殺した方がいいです。
  527. 大野幸一

    ○大野幸一君 あなたが一番上の人を絞めたのですか。
  528. 浦和充子

    証人浦和充子君) 全部です。
  529. 大野幸一

    ○大野幸一君 自分が生残つたというところは私聞かないが、それはどうなつたか。
  530. 浦和充子

    証人浦和充子君) それは藥を飲んで自分で体がかつたるいのです、一面に。それでお水を随分飲んで、それからお水を飲んでも体がかつたるいだけで、胸が痛いとか、腰が痛いとか、痛みというものは來ない、それから、私、ただこうしているよりも、自分でもやつたことはやつたと告げないと、誰も、物置におりましたから、物置の二階ですから、自分が、告げなくては、何にもわからないと、自分があすこで死んだ場合に、自分の体は一体何処へ埋めて貰えるか、それもわからないのですからそれで、私警察へ行つたのです。子供らも無縁佛にならないように、又自分も死んだ時にやたらなところへ埋められるのがつらいですから……。
  531. 大野幸一

    ○大野幸一君 警察へ行つてそれでどうしたのですか。
  532. 浦和充子

    証人浦和充子君) 警察へ行つて事情を話して、話しているうちに、お前、何か食べたかなというので、お汁を掛けた御飯を食べたと言つたら、お医者に掛けられたのです。お医者に掛けられて……。
  533. 大野幸一

    ○大野幸一君 分りました。それから檢事さんが、あなたにどんな求刑をしたのですか。檢事さんは、あなたに対して……。
  534. 浦和充子

    証人浦和充子君) 何をですか。
  535. 大野幸一

    ○大野幸一君 裁判所で公判の時に、檢事さんは、どんなふうに求刑をしたのですか。懲役何年とか言つたのでしよう、檢事さんが……。
  536. 浦和充子

    証人浦和充子君) 求刑の時は三年です。
  537. 大野幸一

    ○大野幸一君 三年と聞いた時に、どういう感じをしたのですか。
  538. 浦和充子

    証人浦和充子君) 私は三年では軽いと思いました。
  539. 大野幸一

    ○大野幸一君 何年くらいと思つていましたか。
  540. 浦和充子

    証人浦和充子君) 何年と年数はあれですけれども、恐らく三人もの子供ですから、三年ぐらいではたとい懲役を自分で、勤めるにしても、あまり軽いと思われました、年数は分らないのですが。
  541. 大野幸一

    ○大野幸一君 それで先つき、あなたは、聖言を読んだというのですが、聖書の中に、子供は神の子なりと書いてあることを知つていますか。
  542. 浦和充子

    証人浦和充子君) ええ。
  543. 大野幸一

    ○大野幸一君 そうすると自分子供でも神様の子だという考えは、そのときにちつともなかつたのですか。
  544. 浦和充子

    証人浦和充子君) 考えませんでした。
  545. 大野幸一

    ○大野幸一君 聖書を読んで、聖書を外で実行したことがあるのですか。
  546. 浦和充子

    証人浦和充子君) 聖書を読んだのは子供の頃でして、大きくなつてからは聖書の中の文句も、讃美歌のあれも知つておるけれども、それを物事に対して当て嵌めて考えたことはないのです。
  547. 大野幸一

    ○大野幸一君 あなたの生れた、おとうさんたちは佛教ですか、キリスト教ですか。
  548. 浦和充子

    証人浦和充子君) そうではありません。
  549. 大野幸一

    ○大野幸一君 お寺へお参りするということもない、お説教を聞いたこともない。
  550. 浦和充子

    証人浦和充子君) お説教はありません。
  551. 大野幸一

    ○大野幸一君 どうも有難う。
  552. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 先つき本を読まれるといつたが、小説は読むのですか。
  553. 浦和充子

    証人浦和充子君) 小説は余り好かないです。
  554. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 読んだことがない。
  555. 浦和充子

    証人浦和充子君) 読むのは読みますけれども……。
  556. 伊藤修

    委員長伊藤修君) どういう小説を読みますか。今までに、記憶のある小説はどんなものですか。
  557. 浦和充子

    証人浦和充子君) 記憶のあると言つてもながいものばかり……。
  558. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 新らしい小説ですか、或いは講談本みたいなものが好きですか。
  559. 浦和充子

    証人浦和充子君) 講談物は好きです。
  560. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 講談物で博打打ちの、股旅ものとか、人情物だとか、どちらが好きですか、どつちを読んだのですか。
  561. 浦和充子

    証人浦和充子君) 読むのは両方読みました。
  562. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 子供など殺したりする小説がありますね。そういうものを読んだことがありますか。
  563. 浦和充子

    証人浦和充子君) 子供を殺したりなんかというものは思い当たりません。
  564. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 芝居は見ますか。
  565. 浦和充子

    証人浦和充子君) 芝居も活動も行かないのです。
  566. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 活動は二、三回行つたが、お芝居は見たことがない……。
  567. 浦和充子

    証人浦和充子君) 見たことがありません。子供の頃は見ました。
  568. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 子供の頃はどんな芝居を見たのですか。
  569. 浦和充子

    証人浦和充子君) 内容ははつきり覚えませんけれども……。
  570. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 阿波の鳴門とか寺小屋とか、ああいうものを見たことがあるのですか。
  571. 浦和充子

    証人浦和充子君) あれは見たことがありません。
  572. 伊藤修

    委員長伊藤修君) あなたは、浦和語助さんは今どこにおりますか。
  573. 浦和充子

    証人浦和充子君) 柳生策之助さんの物置におります。
  574. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 先つきあなたのおつしやつたところですね、同じ所ですね。
  575. 浦和充子

    証人浦和充子君) 同じところです。
  576. 伊藤修

    委員長伊藤修君) あなたが今住まつておるところと同じですね。
  577. 浦和充子

    証人浦和充子君) 場所は同じです。ただ家の中で分れているだけです。
  578. 宮城タマヨ

    ○宮城タマヨ君 あなたはお酒が好きですか。飲みますか。
  579. 浦和充子

    証人浦和充子君) 若い頃やつぱり商賣で飲みました。
  580. 宮城タマヨ

    ○宮城タマヨ君 近頃は飲みませんか。
  581. 浦和充子

    証人浦和充子君) 世帯を持つてからは全然飲みません。
  582. 宮城タマヨ

    ○宮城タマヨ君 煙草は吸いますか
  583. 浦和充子

    証人浦和充子君) 飲みます。
  584. 宮城タマヨ

    ○宮城タマヨ君 一日にどれくらい吸いますか。
  585. 浦和充子

    証人浦和充子君) 一日に約十本ぐらい吸います。
  586. 宮城タマヨ

    ○宮城タマヨ君 そのくらいですか。あなたは三人の子供さんを産んだそうですね。外にないのですか。
  587. 浦和充子

    証人浦和充子君) 三人だけです。育てました。
  588. 宮城タマヨ

    ○宮城タマヨ君 お産は異常でなかつたのですね。
  589. 浦和充子

    証人浦和充子君) お産は、ちよつと赤ん坊が出ないのです。
  590. 宮城タマヨ

    ○宮城タマヨ君 それで苦労しましたか。
  591. 浦和充子

    証人浦和充子君) 苦労しました。
  592. 宮城タマヨ

    ○宮城タマヨ君 何日ぐらい。
  593. 浦和充子

    証人浦和充子君) 陣痛がありましてから、朝の八時頃あつてから生まれるのが二時半頃、そのくらい時間が掛かる。
  594. 宮城タマヨ

    ○宮城タマヨ君 その間精神が朦朧としたようなことはありませんでしたか。
  595. 浦和充子

    証人浦和充子君) 生み上げて、お産婆さんが子供にお湯を使わして寝かす。皆はつきりしています。
  596. 宮城タマヨ

    ○宮城タマヨ君 そうしたら最後ですけれども、三人も子供を殺して、そうしてそのときはあなたも死のうと思つて、猫いらずを飲みましたのでしよう。今死にそこなつて、そうなつてつて子供のところへ死んで行きたいという氣持になることはありませんか。
  597. 浦和充子

    証人浦和充子君) 私は子供のところへ極端に行きたかつたのは未決にいた頃です。そこで未決から出る頃には、自分子供のところへ行くというよりも、子供の供養をしてやりたかつたのです。だから今も働いて成るだけ金を溜めて、とても來年はできないでしようから、三年忌には、三年間掛かればお金幾らかできると思つて、供養してからでないと、とても死ぬ氣になれないのです今は……。
  598. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 別にお尋ねはありませんか……。では御苦労様でした。    〔証人柴崎四郎君着席〕
  599. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 大変お待たせしました。今日は証人として御出頭を願いましたのですから、法律によりまして、供述の前に宣誓をお願いいたします。宣誓書は朗読して頂きたいと思います。    〔総員起立、承認は次のように宣誓を行なつた〕   宣誓書  良心に從つて眞実を述べ、何事もかくさず、又何事もつけ加えないことを誓います。
  600. 伊藤修

    委員長伊藤修君) どうぞお掛け下さい。申すまでもありませんが、宣誓の上は嘘、偽りがありますと処罰されますから、一應御注意いたします。  今日御出頭願いましたのは、あなたが御担任になりました浦和充子の殺人事件について、少しくお尋ねしたいと思つて御足労願つた次第ですが、浦和充子の殺人事件をお取扱いになるときの基本観念として、どういうお氣持でこの事件に対処されましたですか。
  601. 柴崎四郎

    証人(柴崎四郎君) 基本観念と言いますか、親が頑ぜない子供自分考えだけで殺した事件でありますので、相当問題になる事件じやないかと考えてやつたのですか。
  602. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 私のお尋ねいたしたいと思うことは、結局事件そのものに考えを集中なさいましたか、或いは一般的に客観的の情勢、或いは國内情勢とか、日本の今日の立場とかいうことをお考えになられましたかどうか、その当時はですね。後日のことは別問題として。
  603. 柴崎四郎

    証人(柴崎四郎君) その当時は事件そのものだけを考えました。
  604. 伊藤修

    委員長伊藤修君) その当時は。
  605. 柴崎四郎

    証人(柴崎四郎君) はあ。
  606. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それで起訴なさいました重点はどこに置かれたのですか。
  607. 柴崎四郎

    証人(柴崎四郎君) 先程も申しましたように、結局頑ぜない子供を親の考えだけでやつた事犯でありますから、その意味で事情の点におきましては相当同情すべき事情もあつたのでありますが、一應殺人罪の最低の刑ぐらい必要があると思料しましたので、起訴した次第であります。
  608. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そうすると勿論犯罪の事実は明らかですが、主点は犯罪の動機の方に置かれなくちやならんと思うのですが、その点お調べになつたのですか。
  609. 柴崎四郎

    証人(柴崎四郎君) はあ、調べました。
  610. 伊藤修

    委員長伊藤修君) どういうふうにですか。
  611. 柴崎四郎

    証人(柴崎四郎君) 動機は結局、夫の語助一緒になりまして、三人の子供がありますのですが、その語助が最近賭博に耽りまして、全然被告を顧みないような事情であつたのであります。それで被告としましても三人の子供を抱えまして、他に働くこともできませんので、結局切羽詰まつてあのような犯罪を犯すような結果になつた考えたのであります。
  612. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そうすると一言にして盡すと、生活苦ということになるのですか。
  613. 柴崎四郎

    証人(柴崎四郎君) さようなことになります。
  614. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そうするとそれの一つの動機ですか、その事犯を釀した。
  615. 柴崎四郎

    証人(柴崎四郎君) 結局それが突き詰めた動機だと思つております。
  616. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 要するにあなたが起訴なさいましてから、公訴を維持されたお氣持ですね。論告は携つていらつしやいませんけれども、少くとも公訴を維持されました検察官としてのお氣持はどういう点を御支持になつたか。
  617. 柴崎四郎

    証人(柴崎四郎君) 結局生活苦で、三人の子供を抱えておりましては生きる途があの被告にはなかつたのじやないかと考えておるのであります。
  618. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そうすると生活苦に対して何かお調べになりましたですか。
  619. 柴崎四郎

    証人(柴崎四郎君) 外には被告から聞きました後は、警察の調を参酌しましてやつた次第であります。
  620. 伊藤修

    委員長伊藤修君) この事犯といたしましては、御承知の通り殺人事犯で、而も本人が自首しておりますから、事件の形態は争えないでしようが、公訴を維持なさる上におきましては、原因が問題になることは何人も予想できるわけですね。その原因について果して殺人するところの原因があつたや否やということはお取調になる必要があると思いますがね。ただ被告の供述だけでは物足らぬことになりはしませんか。
  621. 柴崎四郎

    証人(柴崎四郎君) そうですね。私といたしましては外の概況、警察の調べなどをいろいろ参酌いたしまして、尚被告の供述を聞きまして、そういう事情と認めた次第であります。
  622. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 問題はそこに重点が來るのですが、果して生活苦によつて殺したのやら、或いは自分の我が儘な生活がしたいために殺したのか、痴情の結果殺したのか、これによつて量刑において、大きな相違がある筈だと思いますが、從つてその点は公訴を維持なさるあなたとしては明らかにする必要があるじやないでしようかね。ただ警察の調べと本人の供述及びあなたの取調べられた供述だけではちよつと物足らんと思いますがね。
  623. 柴崎四郎

    証人(柴崎四郎君) 迂闊だつたかも知れませんが、私はその程度でその事犯を見通しを付けた次第であります。
  624. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 見通しだけれども、それで問題になるのですからね。それによつて十年になるか死刑になるか、そこが重点になるのですから。
  625. 柴崎四郎

    証人(柴崎四郎君) 私、捜査官で疑念を持ちますればそこを突つ込む……。
  626. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 疑念を持たなくては、刑の量刑に大きな基礎をなすものですから、当然疑念を持たなくちやならんのじやないですか。
  627. 柴崎四郎

    証人(柴崎四郎君) 疑念が被告の供述と概況から私には持てなかつたわけです。
  628. 伊藤修

    委員長伊藤修君) けれども私拝見いたしましても、本人の供述に二回違つておりますがね。原因が違つておりますが、最初本人は夫の心を直す若しくは引戻したいと顧慮したのだ、次には生活苦だと言い、生活苦だというならば果して生活の苦があつたかどうかということを本人の供述以外に証拠をお求めになることが正しいやり方でしような。例えば本人実家にそれを頼んだかどうかと本人実家がそれを断わつたかどうか、実家にそれを聞き入れるだけの生活の余裕があるかどうかという点もお調べになる必要もありますでしようし、又清作自身にも、本人は話したとかと言つておるから、警察に対するお取調べがその点あつて然るべきだと思うのですね。或いは野田おばさんと称する、これらにも相談したというのですから、それ程子供を殺さなくちやならんという突き詰めた必然性が、そこから生まれるかどうかということを明かにして置く必要があるのじやないでしようか。
  629. 柴崎四郎

    証人(柴崎四郎君) それは仰せの通りでありますが、私といたしましては、今まで警察で調べた関係の調書を見まして、大体事情が分つたものですから……。
  630. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 殺した事情は分るのですけれども、殺した原因が……、殺した事実というものははつきりしておるのですが、殺した原因が奈辺にあつたかということをお調べになるのは当然のことじやないですか。殊に本人が、いわゆる語助から、数回に亘つて八千円程の金を貰つて、今日の生活には苦しんでいない筈ですがね。本人の供述を聞いても、少くもまだ一ケ月の余裕はあると、こう言つておるのですが、ただ將來を慮つて殺したいというのですが、そこに必然性を認めることができないじやないですか。殺すに至る動機という大きな原因をなすとは考えられないと思いますが、その点について御考慮になつて然るべきじやないですか。
  631. 柴崎四郎

    証人(柴崎四郎君) 当時持つておりました金は、それ程なかつたと私は思いますが……。
  632. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それは現実には、死んで行くのだからと言つて使い果して、三百三十円程しか残つておりませんが、それまでに、生活は、僅か十七、八日の間に八千円という金を持つているのですから、うち三千円ばかりは衣料に使つたが、又將來においても貰える期待権もあつたわけですから……。今日の生活に逼迫しておらんという本人の自供から推しても考えられることであつて、少くもそういう必然性があつたかどうかということをお取調べになつて、その点を明かにして頂かなくちやならんですがね。
  633. 柴崎四郎

    証人(柴崎四郎君) 度々申上げるように、外の被告の供述を信用しましたし、概況によつてそれらの原因があつたと認めたものですから……。
  634. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 少くとも、その点は当然重要なる事項ですからお調べになつてよいですがね。公判廷において、いわゆる判事さんがどのくらいの時間でやつたか知れませんけれども、一括して警察の調書の通りの應答をしたというだけの記載ですが、そういう点については触れなかつたのですね。漫然看過したわけですね。
  635. 柴崎四郎

    証人(柴崎四郎君) 公判には私は立会わなかつたのですが、相当お調べになつたと私は思つておるのですが……。
  636. 伊藤修

    委員長伊藤修君) もしお調べになつたとすれば、その点に対して立会檢事として、その点を立証される必要があるのじやないですか。刑の量刑は重大なる影響を及ぼす原因ですから……、どうもこの事件を簡單にお考えになりまして、重大な事項について看過されておるように我々見受けられるにですが……。
  637. 柴崎四郎

    証人(柴崎四郎君) 簡單に考えたわけじやなかつたのですが……。
  638. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 少くも、その点については、本人がそれだけ生活苦のために殺さなくちやならん必然性があるかどうかという原因を御追求になる必要は十分あり得るものと考えられますな。
  639. 柴崎四郎

    証人(柴崎四郎君) 原因は、外の警察の調べによりまして、私は相当な原因があつたと認めたものですから、一應……。
  640. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それは本人の言葉だけですね。
  641. 柴崎四郎

    証人(柴崎四郎君) はあ。
  642. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 本人の言葉でもつと追求なされば、少くとも一ケ月以上の生活の余裕があつたということは、十分あなたたちの心証が得られる筈だつたのですがね。その点も我々として、御訊問の形式として、自首したといつて軽くお考えになつたらしいですね。
  643. 柴崎四郎

    証人(柴崎四郎君) 私は、最初は、現場を見に行つているのですが、殺人の現場を……。そうして子供三人のむごたらしい跡を見まして、大分憤激して最初は被告に当つてわけなんですが、いろいろ事情を聞きましたら、成る程と思いまして……。
  644. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 警察も裁判所も感傷的になられて、どうも事件の中心をお掴みになる点に殺人という事実だけをお捉えになつて、漫然事件を処理なさつたように見られますがね。一体この事件に対しましては一般予防ということはお考えにならなかつたのですか。
  645. 柴崎四郎

    証人(柴崎四郎君) それは考えております。
  646. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 一般予防の点から考えますれば、少くともこの事案に対して、立会檢事の……あなたはお立会にならなかつたかも知れんが……求刑は軽きに失するのじやありませんか。
  647. 柴崎四郎

    証人(柴崎四郎君) 一般予防と申しましても、被告を教育するに足る程度の刑を科しまして、一般予防は附随的効果と考えておりますので、別に一般予防のために刑を重くして……。
  648. 伊藤修

    委員長伊藤修君) だけれども、殺人罪のごときはいわゆる特別予防より一般予防に主点を置くべきじやないですか。
  649. 柴崎四郎

    証人(柴崎四郎君) 主点と申しますが……。
  650. 伊藤修

    委員長伊藤修君) その言葉が惡ければ重きを置くべきじやないですか。
  651. 柴崎四郎

    証人(柴崎四郎君) 一般予防の点は、これは私だけの考えですが、被告に相当の刑を科しまして、一般予防は附随的効果としか考えておりません。一般予防のために被告に相当以上の刑を科することはどうかと考えております。
  652. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 例えば具体的に事件がありまして、三人の大人の生命を断つた者があるとしますれば、あなたはどんな考えを持ちますか。
  653. 柴崎四郎

    証人(柴崎四郎君) 動機が同じような事件で……。
  654. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 仮に動機がこれと一緒だとしたらどうですか。相当重く求刑なさるでしよう。
  655. 柴崎四郎

    証人(柴崎四郎君) 質問のあれが分かりませんが……。
  656. 伊藤修

    委員長伊藤修君) ただ年齢の相違で以て、普通の人が、平たく言えば大人の三名の生命を断つた人がある、これと同じ形態の事案があつたといたしますれば、あなたのお考えとしては相当重くお考えになりはしませんか。
  657. 柴崎四郎

    証人(柴崎四郎君) 事情が違えばそうなります。が……。
  658. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 要するに子供だから軽く考えたのですか、子供の生命だから軽く考えたのですか。
  659. 柴崎四郎

    証人(柴崎四郎君) そんなことは考えておりません。若し同じような事情で大人を殺した場合でも同じじやないかと考えております。
  660. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そうですがね、大人三人殺した場合でも……。
  661. 柴崎四郎

    証人(柴崎四郎君) そんなことはあり得ないと思いますが……。
  662. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 生活苦のために爺さんが自分の息子なり、娘を……成年に達した子供を三人殺したという場合において、果してそれは執行猶予に値するですか、我々常識的に考えて……。
  663. 柴崎四郎

    証人(柴崎四郎君) 生活苦でそれより外に生きる途がなくて働けない、そういう事情のときは、同じように同情するあればあるのじやないかと考えております。
  664. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そういう場合にもそうお考えになりますか。
  665. 柴崎四郎

    証人(柴崎四郎君) はあ。
  666. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そうするとこの求刑は適切なものとお考えになりますか。
  667. 柴崎四郎

    証人(柴崎四郎君) はあ、私としては……。
  668. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そうすると今日新憲法で保護されておる基本的人権というものをどのくらいお考えになりますか、それ程尊重しなくてもよいという……。
  669. 柴崎四郎

    証人(柴崎四郎君) 別に尊重しないとは……。
  670. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 軽々しくお考えに……。
  671. 柴崎四郎

    証人(柴崎四郎君) 私としては軽々しく考えたつもりはないのですが。
  672. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それじやも一つお尋ねしますが、子供の生命というものと大人の生命とは、同様にお考えになりませんですか。基本的人権としてですね。
  673. 柴崎四郎

    証人(柴崎四郎君) それは同一に考えます。
  674. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 人を三人も殺した場合において、三年の御求刑ということは足りないですね。どうしても納得ゆきませんですね。
  675. 柴崎四郎

    証人(柴崎四郎君) 結果はそうかも知れませんが、現われた結果だけをお考えになりますと……。
  676. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 原因においてもあなたのおつしやる原因とは相違しておりますね。而もそれをあなたは御探求になつていないのです。御捜査になつていないのです。あなたが被告の供述そのものを信用されまして、捜査をその点についてなさつていないですから、あなたのお考えとして基本的な筋に誤りがあると思いますが、基本的の理由を別問題といたしましても、一体子供の基本人権を御尊重になるお考えで、控訴権を維持なさつたかどうかを疑われるのですがね。
  677. 柴崎四郎

    証人(柴崎四郎君) それは尊重しておりますが。
  678. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 尊重した場合に、さような御求刑というものは、我々は常識的には考えられませんですね。一体日本ではともすると子供の生命というものは、非常に軽く考える傾向があるんじやないですか。
  679. 柴崎四郎

    証人(柴崎四郎君) それは或いはそうかも知れません。
  680. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 從つてその職務にあらせられるあなたさんたちにおいても、そういう思想が禍いしているんじやありませんか。
  681. 柴崎四郎

    証人(柴崎四郎君) 私としては特に子供だからどうだという考えは持つていないつもりであります。
  682. 伊藤修

    委員長伊藤修君) これは執行猶予、あなたの求刑は三年ですが、執行猶予になりましたですね。それに対してどうしてあなたは不服をなさらなかつたのですか。
  683. 柴崎四郎

    証人(柴崎四郎君) 一應考えたんですが、私その当時も執行猶予になるのではないかというようなことを、考えておりましたので、丁度保護事業に携わつております方が、私のところに見えて、何とかして引取つてやるということで、丁度世話を頼みました。
  684. 伊藤修

    委員長伊藤修君) ところがその保護事業において、世話するという人が世話してなくて、本人は又そこら中轉々として、今度も警視廳の捜査課を煩わして本人を捜しております。生活の基礎も分らん。住所も分らんというならば、引取つた人も責任がありませんね。
  685. 柴崎四郎

    証人(柴崎四郎君) ……。
  686. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 無責任だと思いますね。そういうことを基本にいたしまして、控訴権を放棄したということは不可解ですね。この控訴は三日に言渡しになつて、四日にあなたは放棄なさつておられますが、積極的に放棄なさつておるという理由をお伺いしたいですね。
  687. 柴崎四郎

    証人(柴崎四郎君) 事情が先程申上げましたような事情でありますから、裁判所で判決になりまして、被告が更正を誓つておるのでありますから、そういうふうに更正されたがいいと考えまして……。
  688. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 翌日直ぐ放棄なさつたわけですね。
  689. 柴崎四郎

    証人(柴崎四郎君) さようでございます。
  690. 大野幸一

    ○大野幸一君 この問題が、浦和事件が檢察廳に、こういうことが世の中の問題のなつたとき、檢察廳内部でも、今あなたの考えと同じような何ですか空気ですが、別にこれに対して何かありませんか。
  691. 柴崎四郎

    証人(柴崎四郎君) 別にその判決を翻えますように考えた人はないようです。
  692. 大野幸一

    ○大野幸一君 一般に司法官ですね。新憲法をよく考えて今までの憲法とここが違うのだというような研究をなされたようなことが、実際問題としてありませんか、憲法に対して……。
  693. 柴崎四郎

    証人(柴崎四郎君) 憲法に対して……。
  694. 大野幸一

    ○大野幸一君 お忙しいから……、憲法がどういうふうに変つたかということを研究されたことはありませんか。
  695. 柴崎四郎

    証人(柴崎四郎君) すべて研究したことはございません。
  696. 大野幸一

    ○大野幸一君 ありませんですね。
  697. 柴崎四郎

    証人(柴崎四郎君) はあ。
  698. 宮城タマヨ

    ○宮城タマヨ君 御当局では、少し精神に異状があるのではないかという御懸念はありませんか。
  699. 柴崎四郎

    証人(柴崎四郎君) 考えました。
  700. 宮城タマヨ

    ○宮城タマヨ君 お調べになりましたか。
  701. 柴崎四郎

    証人(柴崎四郎君) 調べはしませんでしたが、被告のやつた行動から考えました。
  702. 宮城タマヨ

    ○宮城タマヨ君 行動からですか。
  703. 柴崎四郎

    証人(柴崎四郎君) はあ。
  704. 宮城タマヨ

    ○宮城タマヨ君 未決に入つております間にも、何も変わつたことはありませんか。
  705. 柴崎四郎

    証人(柴崎四郎君) 変わつたことはないですが、ただちよつとこのようなことを聞いたのですが。それは警察に入つておりまして、私が調べに行つたときに、看手が独房の中でよく唄を歌うというようなことを申しますので、私もよく被告に会いまして、そのことを聞いて見たのです。ところが何か氣持が淋しくて居たまれないというようなことを申して、唄を歌つていないと氣が紛れないからというので、迂闊に唄を歌つてはいけないということを申しました。併し唄を歌つても氣を紛らすことはできなかつた。その外別に大したことは氣が附きませんでした。
  706. 宮城タマヨ

    ○宮城タマヨ君 それから浦和語助をお調べになりましたか。
  707. 柴崎四郎

    証人(柴崎四郎君) 語助は私は調べなかつたと思います。ただ公判廷で書面で調べただけです。
  708. 宮城タマヨ

    ○宮城タマヨ君 公判廷で原因はどこにあるだろうというようなことを申しておりませんか。
  709. 柴崎四郎

    証人(柴崎四郎君) 公判廷で………。
  710. 宮城タマヨ

    ○宮城タマヨ君 証人としてですね。
  711. 柴崎四郎

    証人(柴崎四郎君) 私は公判には立会いません外の檢事が立会いまして……。
  712. 宮城タマヨ

    ○宮城タマヨ君 警察に自首して出ましたときに、どうした様子だつたでしようか、そのことは御存じありませんか。
  713. 柴崎四郎

    証人(柴崎四郎君) 何もちよつと聞いておりませんですが。
  714. 宮城タマヨ

    ○宮城タマヨ君 ちよつと話振りなんか聞きますと、ちよつと好意の持てるようなはきはきした、ちよつとインテリらしい匂いのする女性ですから、皆さんにいい感じを與えておるのではありませんか。特別に。
  715. 柴崎四郎

    証人(柴崎四郎君) 別にいい感じを蒙つたことはありませんですね。
  716. 宮城タマヨ

    ○宮城タマヨ君 何かごまかしているような感じがしますけれども、もつと突く所が突いていないように考えますがね。
  717. 柴崎四郎

    証人(柴崎四郎君) そんなことから、私も精神がおかしい点があるのではないかと考えましたのですが、ちよつと笑うような顔かたちをする場合があるのです。
  718. 宮城タマヨ

    ○宮城タマヨ君 この事件が起きる前のふだんのことなんか、少し詳しくお調べ頂いたら、その辺のことは分るじやないかと思います。母親は少し氣が変だと本人が言うておりますから。
  719. 柴崎四郎

    証人(柴崎四郎君) その点は調べが十分でなかつたと思います。
  720. 宮城タマヨ

    ○宮城タマヨ君 もう少し突つ込んで。いまここへ帰りましたら、私の所に通知がありまして、もうあつちへ帰りたくないから、何かここで仕事を探して呉れないかということを申込むあたりは、私はどうしても常態ではないと思います。
  721. 柴崎四郎

    証人(柴崎四郎君) ……。
  722. 大野幸一

    ○大野幸一君 若しこれが家庭の事情が変つて、貰い子であつたら、検察廳の考えも違うだろうし、裁判所の判決も違うだろうと思います。
  723. 柴崎四郎

    証人(柴崎四郎君) ……。
  724. 大野幸一

    ○大野幸一君 そうするとやはり自分子供自分で処理してもいいというような潜在意識が全部にあるのではないでしようか、その意味じやないでしようね。
  725. 柴崎四郎

    証人(柴崎四郎君) その辺はちよつと私としては持てませんです。
  726. 大野幸一

    ○大野幸一君 貰い子なら。
  727. 柴崎四郎

    証人(柴崎四郎君) 自分の子だから。
  728. 大野幸一

    ○大野幸一君 自分の子だから、自分の生んだ子でないからというので変つて來るのではありませんか。
  729. 柴崎四郎

    証人(柴崎四郎君) 愛情の問題ではないかと思います。余り変つた場合は、愛情のために進んで殺すような氣持が起るのは当然ではないかと思います。
  730. 大野幸一

    ○大野幸一君 ああ、その方面でね。——これはちよつと何ですが、憲法ははですね。御参考までに。十三條に「すべて國民は、個人として尊重される。」と言われております。これは親と子供の間でも個人として尊重される、自分の生んだ子供でも個人として尊重されなければならない、御承知のように特に憲法が変つて來たことについて、從來の思想ですね、自分子供自分で処分していいというような考えがこれはあつてはいかんと、こういうようなことに対して一般警戒をここでしなければいかんというような、先程委員長がとられた……、一般警戒の方に考慮……、実際はまだ裁判所としては、檢察廳としても実際問題としてこれは現われていないのじやないですか、あなたはどう考えますか、今になつて話合つてみてですね。
  731. 柴崎四郎

    証人(柴崎四郎君) 思想でそんなことを考えたとすれば考えなくちやいけないと思いますが、殺すような場合には思想ではないと私は考えます。結局愛情とかそういうふうな母としての氣持でやるのじやないかと思います。思想でやるような場合ではないのじやないかと思います。
  732. 大野幸一

    ○大野幸一君 それではそれで結構です。
  733. 伊藤修

    委員長伊藤修君) あとは議論になりますから……、私からもう一つお尋ねして置きますが、この求刑について檢事正かなんかが御相談になるのでしようね。
  734. 柴崎四郎

    証人(柴崎四郎君) 大概事実は檢事正に相談しましてやつておりますが……。
  735. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 本件については……。
  736. 柴崎四郎

    証人(柴崎四郎君) 次席には相談したかと思いますが……。
  737. 伊藤修

    委員長伊藤修君) あなたがしたのですか。
  738. 柴崎四郎

    証人(柴崎四郎君) 起訴檢事か私が……。
  739. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 次席もやはりそういう意見だつたのですね。
  740. 柴崎四郎

    証人(柴崎四郎君) はつきり記憶しておりませんが、そのように憶えております。
  741. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 勿論反対の結果はないでしようから。三年ということは、あなたの御意見ですか。次席の方の御意見ですか。
  742. 柴崎四郎

    証人(柴崎四郎君) 私の意見だつたと思います。
  743. 伊藤修

    委員長伊藤修君) あなたに同意したのですか、次席は……。檢事正は関與していないのですか。
  744. 柴崎四郎

    証人(柴崎四郎君) 檢事正には御相談しなかつたと思いますが……。
  745. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 後の報告だけですか。
  746. 柴崎四郎

    証人(柴崎四郎君) はあ。
  747. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 執行猶予になつたときに、やはりそういうことを御相談になるでしよう。
  748. 柴崎四郎

    証人(柴崎四郎君) 次席に相談しました。
  749. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 次席は控訴権抛棄に……。
  750. 柴崎四郎

    証人(柴崎四郎君) 私が事情を申上げましたから、私を通して……。
  751. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 控訴権抛棄の大きな理由は藤井という人が引取るということが大きな理由なんですね。
  752. 柴崎四郎

    証人(柴崎四郎君) それもありますが、今までの事情を考えておりましたから、当時におきましても、或いは執行猶予になるのではないかというような考えを持つておりました。裁判所もその事情を見て執行猶予にしたと思います。
  753. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 最後に伺いますが、関係方面に本件についてお出でになつたことがありますか。
  754. 柴崎四郎

    証人(柴崎四郎君) 関係方面……。何かちよつと質問が……。
  755. 伊藤修

    委員長伊藤修君) GHQの関係方面についてですね……。
  756. 柴崎四郎

    証人(柴崎四郎君) 私は参りません。判事が参つたようなことを伺つております。
  757. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 裁判所は後でいらつしやつたのですか。
  758. 柴崎四郎

    証人(柴崎四郎君) はあ。
  759. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 檢事局は誰も……。
  760. 柴崎四郎

    証人(柴崎四郎君) 私は参りません。外の者も参つておらないと聞きました。
  761. 伊藤修

    委員長伊藤修君) どうもお忙しいところを有難とうございました。本日喚問しておりました浦和語助は出頭いたしませんから、更に出頭させて調査することにいたします。調査事件はこれを以て終了することにいたします。本日の分だけ審議することにいたします。これから休憩いたします。    午後四時五分休憩    —————・—————    午後四時二十五分開会
  762. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それじや休憩前に引続きまして、法務委員会を開会いたします。「訴訟費用等臨時措置法の一部を改正する法律案」を議題に供します。前回に引続いて質疑を継続いたします——。別に御質疑がなければ、質疑は終結することに、御異議はありませんですか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  763. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それではさよう決定いたします。  討論はこれを省略いたしまして、直ちに採決することに御異議ありませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  764. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それではさよう決定いたします。  それでは本法案を全部問題に供します。議案に賛成の方の御起立を願います。    〔総員起立
  765. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 全会一致、原案通り可決すべきものと決定いたします。  尚本会議における委員長の口頭報告の内容については、予め御了承願うことに、御異議ありませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  766. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 多数御意見者の御署名をお願いいたします。   多数意見者署名     齋  武雄  大野 幸一     星野 芳樹  宮城タマヨ     鈴木 安孝  松村眞一郎     岡部 常
  767. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 次に「罹災都市借地借家臨時処理法第二十五條の二の災害及び同條の規定を適用する地区を定める法律案」を議題に供します。これも前会に引続きまして質疑を継続いたします。
  768. 松村眞一郎

    ○松村眞一郎君 この第二十五條の二の規定を適用いたすところの法律がここに出ておるのでありますが、これは第二十五條の二の規定そのものを入れますときにも、相当前の司法委員会において議論があつたのであります。元來法律それ自身が戰災のための臨時的の法律であつて、それが法律施行の日から一年以内に限つて適用するような、極く短い期間に効力を失うような法律で初めできておつたのであります。それに二十五條の二というものを附加えまして、この二十五條の規定の関係でいつまでも法律が効力を続けるような関係になつた條文ができたのでありまして、元來法律そのものが戰災と関係のある極く一時的のものであるに拘わらず、二十五條の二の規定のためにいつまでもこれが存続して行くというような、極めて変態的な立法でありますから、この法文を読みまする人にとりましても非常に難解に考えられるような形になつておりますから、今日までの経驗によりまして、水害などのあつた場合にやはりかくのごとき規定に基いて臨時的の措置をしなければならないということが平常的に必要であるという見通しがつくならば、むしろこの問題については全般的に考慮されて新らしく立法するのが適当でないかと思いますから、この法律の改正はこの程度に認めてもいいかと思いますが、苦し続いて何か同様な問題についての必要が生じた場合におきましては、新らしい立法として提案されることを要望いたすのであります。政府においてもそういう考の下に調査を進めて頂きたいと思います。そういう希望を附けまして、本案成立に賛成いたします。
  769. 野木新一

    ○政府委員(野木新一君) お答えいたします。この罹災都市借地借家臨時処理法の第二十五條の二の災害及び適用地区を決めるに当りましては、事、借地借家問題につきましては非常に大きな影響を與えるものであります。今後不幸にして水害が復た起りました時に、その適用地区を決める時には十分愼重を期して参りたいと思います。尚又この罹災都市借地借家臨時処理法が主として戰災によつてつた借地借家問題を心中に規定されておるものであることは御指摘の通りであります。將來起る災害或いはその他のいろいろな借地借家問題につきましても十分建設省その他とも協議いたしまして、將來立法化できますかどうか、又どういうように立法すべきものであるかどうか、さような点につきまして十分考慮して参りたいと思います。
  770. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 質疑にこれを以て終結することに御異議ありませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  771. 伊藤修

    委員長伊藤修君) さよう決定いたします。  次に本案に対する討論はこれを省略いたしまして、直ちに採決することに御異議ありませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  772. 伊藤修

    委員長伊藤修君) さよう決定いたします。  では本案全部問題に供します。本案全部に対し御賛成の方は御起立願います。    〔総員起立
  773. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 全会一致、原案通り可決すべきものと決定いたします。尚本会議における委員長の口頭報告につきましては予め御了承願いたいと思います。  尚多数意見者の御署名をお願いいたします。   多数意見者署名     齋  武雄  大野 幸一     鈴木 安孝  星野 芳樹     宮城タマヨ  松村眞一郎     岡部  常
  774. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 本日はこれを以て散会いたします。    午後四時三十分散会  出席者は左の通り。    委員長     伊藤  修君    理事            岡部  常君            宮城タマヨ君    委員            大野 幸一君            齋  武雄君            鈴木 安孝君            松村眞一郎君            星野 芳樹君   政府委員    法務廳事務官    (檢務局総務課    長)      野木 新一君   証人            浦和 充子君    浦和地方檢察廳    檢事      柴崎 四郎君