○
政府委員(
野木新一君) それでは今の御質問に対するお答を兼ねて
逐條毎に
概略の御
説明を加えて行きたいと存じます。
先ず総括的に申しまして、第一審における第一回の
公判期日が開かれたかどう
かによ
つて事件の
処理を区別することにした
理由でございますが、この点は
訴訟法の
経過規定を
考えます上におきまして最も重要な点でありまして、いろいろ
議論を重ねたところであります。先ず
考え方といたしましては
公訴提起の有無による、即ち
公訴提起の
事件については大体
從前の
手続によ
つて行く、又
公訴提起のないものにつきましては新らしい
手続によ
つて行くという
考え方が
一つと、それからこの案にとりましたような、第一審における第一回の
公判期日が開かれているかいない
かによ
つて取扱いを異にする、この
二つの
考えが大体立案のときに
議論に上りまして、今までの
経過法の編み方から申しますと、寧ろ最初に申上げました方のが
通常のやり方であると存ぜられるわけでありますが、いろいろ
議論を重ねまして、成るべく廣く
新法によらした方がよいではないかという
議論が非常に強くて、その中には例えば今第一審のことを重に申しましたが、
控訴審におきましても、この
公判が開かれているかいない
かによ
つて開かれていないものについては
新法の
控訴審の
規定を
適用して行
つたらどうかという
議論までも非常に強く唱えられたことがありまして、結局いろいろ
議論しておる中に両方が歩み寄
つて、第一回
公判期日が開かれたかどうかということで、
事件を区分けして行こうということに
なつた次第であります。実際問題としてどこに一番大きく影響して來るかと申しますと、
只今御指摘になりましたように、
裁判所が第一回
公判期日を
指定して、その日に
公判廷を開くか否
かによ
つて、
裁判所の処分のようなものによりまして、
新法によるか、
旧法によるか、
事件が分れる。こういうことになる
嫌いがありますが、これは又
公訴提起のときを
標準としても、檢事の
起訴か否
かによ
つて新法旧法が分れるということになりまして、或いは見方によ
つては、五十歩百歩ではないかという
議論にもなると存ぜられるわけでありまして、ただこの組立てのように第一回
公判期日の開かれたか否
かによ
つて、区別いたしまして、第一回
公判期日が開かれたものにつきましては、
旧法によるとしますと、結局
起訴から第一回
公判期日が開かれる日数だけの範囲、
新法の実施が実質的に延期になるか早くなるかという点が
一つ問題であります。それから第二の実際問題といたしましては、第一回
公判期日が開かれた前後によ
つて区別いたしますと、
本法の九條に出て来るような相当ややこしい問題が起るという点が、
手続上煩雑になる
嫌いがあるわけであります。併しながら
新法が出た以上成るべく廣く
新法のよい精神によらした方がよいのじやないかというところがこの
考えの根本的の
考え方にな
つておるわけであります。区分けにつきましては、
只今申上げた程度にしまして、以下
逐條について御
説明を申上げる度に、それに触れて行くことにいたします。
先ず第
一條でありますが、これは御覧の
通り施行法に出て來ます
法律について、簡単な略称を決めるいわば
定義的規定でございます。
第
二條でございますが、これがいわゆる第四條と照應いたしまして、
一つの
原則的規定にな
つておるわけでございます。
新法施行前に第一審における第一回の
公判期日が開かれた
事件につきましては、
新法施行後も尚
旧法及び
應急措置法即ち
從前の例によ
つて行く、そういうことにな
つておるわけであります。ここに第一審における第一回の
公判期日とありますから、すでに
控訴審、
上告審の継続しておる
事件につきまして、すでに当然第一審における第一回
公判が開かれておる
事件でありますから、これは当然
從前の
規定によ
つて処理されて行くことになります。次に第一回の
公判期日が開かれた
事件と申しますのは、今度の
裁判所法の一部
改正法案の第十
一條第一項に、「第一審の第一回の
公判が開かれた
刑事事件の
訴訟について」
云々という言葉炉あります。この第一回の
公判が開かれたというのと全く同義でありまして、
期日の
指定があ
つただけでは駄目でありまして、現実に第一回
公判期日が開かれたそういう
事件のことを
考えておるのであります。次に
事件についてはというこの
事件でございますが、これは、一應
公判の対象になる
本案の
事件を基準として
考えておるわけであります。而して
事件についてという「ついて」という点につきまして、
本案の
事件が第一回の
公判期日に開かれておれば、それに関した
附随事件についても、全部
旧法で行くというようにここでは
考えておるわけであります。尚「第一審における第一回の
公判の
期日が開かれた
事件については、」ということにおきまして、その
事件について
苟くも第一回の
公判期日が開かれた以上は、先程申上げた
通りその
事件の
控訴、
上告は固より、差戻しに
なつた後、或いはその
事件が一旦
終つて、更に
再審、
非常上告に
なつた場合におきましても全部
從前の
規定で行く、そういうふうな
考えの下に立案しております。後の
再審、
非常上告事件については、やや読みにくいじやないかという御
議論も出ておるのでありますが、それは第三條の
規定と対照して
考えて頂ければ、第三條から裏からそういうことを言い表わしてお
つて、そういう
解釈論がはつきり出て來ると存ずる次第であります。
次に第三條の
規定でありますが、第三條はいわば第
二條の
例外規定のような形にな
つておるわけであります。即ち第一審における第一回の
公判期日が
新法施行前開かれておる
事件、これを
簡單に第
二條の
事件と申しますと、この第
二條の
事件につきましては、全部
從前の
規定によることになるわけでありますから、その
確定記録などにつきましても、
新法の五十三條の「何人も、
被告事件の終結後、
訴訟記録を
閲覧することができる。」
云々、あの
條文は
適用ないことになるわけであります。
從つて若し第三條の
規定がありませんと、第
二條の
事件については
確定訴訟記録の
公開ということは出て來ないわけでありますが、それでは
新法第五十三條の
趣旨が非常に没却されることになりますので、第
二條のような
原則として
旧法及び
應急措置法による、
從前の
規定によるという
事件につきましても、
確定訴訟記録の
公開についてだけは、
新法に一應よらせようというのが、第三條の
本文の
規定でございます。併しながら今までの
確定記録というものは、非常に厖大な量に上り、而もそれが直ぐ
閲覧などに供するような
状態に必ずしも準備されておりませんので、
但書を置きまして、
新法施行前に終結した
被告事件の
訴訟記録につきましては、その
保存状態、
閲覧のための設備その他の
事情によ
つて、これを
閲覧させることが著しく困難なときは、
新法施行後六ケ月間に限り、その
閲覽を許さないことができる、こういう
但書を置いて、その間の調整を図
つたわけであります。この
但書は
新法施行前に終結した
被告事件の
訴訟記録でありまするから、
新法施行後終結する
被告事件の
訴訟記録については、この
但書は
適用ないわけであります。
新法施行後終結する
訴訟事件については、第
二條の
事件と、それから初めから全然
新法によ
つた事件とあるわけでありますが、ここでは第
二條の
旧法による
事件の中で、而も
新法施行前に終結した
被告事件の
訴訟記録は
但書を被
つて來るわけであります。逆に申しますと、第
二條の
事件の中でも
新法施行後逐次終結するものにつきましては、この第三條の
本文が
適用になるわけであります。而して第
二條の
事件でない
事件、即ち
新法施行の際に第一審における第一回の
公判期日がまだ開かれていない
事件、即ち第四條の、
新法による
事件につきましては、勿論第三條の
規定と
関係なく、裸のままで
新法の五十三條が
適用されるようにな
つて來るわけであります。そういう
事件につきましても、五十三條の一項
但書で「
訴訟記録の
保存又は
裁判所若しくは
檢察廳の事務に支障のあるときは、この限りでない。」ということで、この
但書の
規定によ
つて、場合によ
つては
閲覽の許されない場合もあり得る、そういうことになるわけであります。尚この際
確定訴訟記録の
保存関係でございますが、これはこの
法律によりまして、
新法の五十三條の末項にありまして、「
訴訟記録の
保管及びその
閲覧の
手数料については、別に
法律でこれを定める。」ということにな
つておりまして、
訴訟記録の
保管の最終的のことは、別に
法律でこれを定めることにな
つているわけでありますが、実は
最高裁判所側、
法務廳並びに検察廳側で多少まだ意見の纏まらない点もありますので、この
保管に関する確定的の
保管者に関する
法律は次の
國会までに準備したい、差当
つてそれまでは現在のままで一應進んで行くことになるものと思われる次第であります。現在のままといいますと、現在は
檢察廳側で一
應確定記録は
保管しておりますので、その
法律ができますまで、暫く
檢察廳測で
保管の
責任を一應と
つて行く、そういう形になるわけであります。
次に第四條でございますが、第四條は第
二條に対される
原則規定でありまして、「
新法施行の際まだ第一審における第一回の
公判期日が開かれていない
事件については、
新法を
適用する。」という
新法主義の
原則を掲げているのであります。これは現在の
刑事訴訟法の
経過規定の第六百十六條にある
書き方と略々同じ
書き方にな
つているわけであります。
新法施行の際
起訴にな
つていても、まだ第一回の
公判期日が開かれていない
事件、又は
起訴にな
つていない
捜査中の
事件、そういうものはすべて
新法を
適用する、併し
新法施行前に
從前の
規定によ
つて訴訟行爲がなされ、すでに或る
効力を生じているものは、その
効力は妨げない、そうして第二項で、そういう
効力の
新法への
結付きを
規定しているわけであります。第
五條以下にこの第四條の
新法主義に対する一種の
例外乃至補正的の
規定がずつと置かれているわけであります。
第
五條の御
説明に入りますと、
新法二百八十九條によりますと、「死刑又は無期若しくは
長期三年を超える懲役若しくは禁錮にあたる
事件を審理する場合には、
弁護人がなければ開廷することはできない。」こういう
趣旨のいわゆる
必要的弁護の
規定にな
つているわけであります。
長期三年を超えるということになりますと、
窃盗それから大半のいわゆる
統制配給とか、そういうような
経済犯罪もこれになりますので、一時にこのまま
適用いたしましては、多少混乱を招きはしないかという心配もありますので、この第
五條の
経過規定を置きまして、こういうような
必要的弁護に当る
事件につきましても、
條件を
二つ附けまして、その第
一條件としましては
被告人から事前に書面で
弁護人を必要としない旨申出があ
つたとき、第
二條件といたしまして
簡易裁判所においては、という
條件、それに
新法施行の日から一年間という
新期的制限を掲げまして、こういう時間
的制限の下においては
必要的弁護でなくする、そういう
趣旨であります。
從つて簡易裁判所におきまして
窃盗などが審理される場合におきまして、
新法の
眞正面の
規定から行きますと、全部
弁護人を要することになりますが、この一年間だけは
経過的に第
五條の
條件の下におきまして
弁護人がなくても開廷できる、そういうことにいたして、
経過を円滑ならしめた次第であります。
次に第六條の
規定でございますが、第六條の
規定は
新法施行前から
進行を始めた
法定の
期間、こういうものにつきましては、
新法施行後も尚
從前の
旧法及び
應急措置法による、そういうことにしたわけであります。いわゆる
法定の
期間と申しますと、
法律で一定の
期間を定めたものでありまして、
旧法及び
應急措置法の下におきましても沢山あるわけでありますが、併し段々
考えて來て見ますと、この六條で実際に問題となりますのは、第一審の第一回
公判期日が開かれない前の
事件であ
つて、而もその
期間が
進行を始めておる、
期間が
旧法から
新法へとまたが
つておるのが問題になるわけでありまするから、実際問題としてはここで問題になるのは、一例を挙げて申しますと、
勾引状を執行して來て留置して置く
期間、これが
旧法では四十八時間であ
つたわけでありますが、
新法では二十四時間になりました。それから
逮捕によ
つて留置して置ける
期間、これが
從前の場合には四十八時間、二十四時間であるわけでありますが、
新法におきましては
逮捕のときから四十八時間若しくは二十四時間、通じて七十二時間を超えてはならない、こういうことになりました。尤も
應急措置法も大体これと同じでありますが、具体的にはこれはどつちによ
つても大体同じになるわけであります。それから
公訴の
時効期間、これが
新法におきまして
賭博罪とそれから
拘留科料の刑に当る
事件につきまして
時効の
期間が延びましたのでありますが、これも
旧法と違う点であります。こういう点はいずれも今挙げましたような例によりますと、
新法の方が
逮捕については時間が短くな
つておる、
時効につきましては
期間が長くな
つておるわけでありまして、或るときには
被告人側に
利益に或るものは
不利益に働くわけでありますが、いずれにせよこういうものは
形式的なものでありますから、尚
從前の
規定に拠
つて行こうというのが第六條の
規定であります。尚重ねて申上げますが第六條は
旧法から
新法に移り替りの際に、すでに
進行を始めておる
期間でありますが、その以後
進行を始めておる
期間は問題がなくなるわけであります。
從つて第六條におきましては
公訴一審の第一回
公判期日の開かれない
事件についての問題でありますが、
上訴期間と
かについて、ここでは全然問題にな
つて來る余地がないわけであります。
次に第
七條でありますが、「第四條の
事件について、
新法施行前に
旧法により
過料に処すべき
行爲をした者の
処罰については、
新法施行後も、なお
旧法による。」とあるわけであります。ここで問題になりますのは大体
証人、
鑑定人、通事、
翻訳人などが召喚を受けながら、正当な
理由がなくて出頭しない場合、これは
旧法におきまして百九十條で
過料五十円、これらの者が正当な
理由なくて
宣誓又は
証言を拒んだ場合、これは
旧法二百十
條過料百円、三番目に
証人が
虚僞の
宣誓をした場合は
旧法二百十條で
過料百円であります。この中で
新法に残
つておりますのは初めの
二つでありまして、正当な
理由がなく出頭しない場合、正当な
理由がなくて
宣誓又は
証言を拒んだ者は、これが大体
旧法と同じように
新法にも
過料の制度が残
つておるわけであります。
新法の百六十條でありますが、金額が五千円にな
つておるわけであります。三番目の
証人が
虚僞の
宣誓をした場合は、これは
新法では
廃止にな
つております。この三つがここで問題になるわけであります。これが
新法が
施行前に、
旧法時代にすでにこういう
行爲があ
つた者につきましては、その
処罰につきましては
旧法の
規定によるということにしたわけであります。尚こういう者につきましては、こういう者と申しますのは、正当な
理由がなくて出頭しない者、或いは正当な
理由がなく
宣誓、
証言を拒否した場合、こういう者につきましては、
新法におきましては
刑罰の
規定が新たに加えられるわけであります。この
刑罰の
規定は勿論
刑罰不遡及の大
原則によりまして、
新法施行後、そういう事由が発生する場合だけ
刑罰を処せられるわけでありまして、この点にはここには直接
関係がないわけであります。
次に第
八條の
関係でございますが、第
八條以下暫くが第四條の
事件で、その次の
新法施行前
公訴の
提起があ
つた者については、こういう
條件が加わ
つて來るわけであります。第五、第六、
七條では第四條の
事件についてだけでありまして、「
公訴の
提起があ
つたものについては、」という
條件がなか
つたわけでありますが、第
八條以下暫くは「
公訴の
提起があ
つたものについては、」という
條件が加わ
つて來るわけであります。これは要するに
新法が
施行の際先ず第一審の
新法の
施行の際にすでに
起訴にな
つておる
事件であ
つて、而も尚第一審における
公判の
期日が開かれない、こういうものが差当
つて問題にな
つて来るわけであります。第
八條は
時効の
関係であります。
新法施行前に
公訴の
提起があ
つた事件につきましては、例えばその
公訴の
提起があ
つたときに、
旧法の
規定によ
つて一應
時効が中断した形になるわけでありますが、又
新法を
押進めて行きますと遡及されて行く方から申しますと、
公訴のあ
つた時から
時効が停止するという形になるわけであります。いずれにせよそういう形になりますと、停止させることにしますと、
被告人の
不利益にもなりますし、第
八條の
規定におきましてはそういう
公訴の
提起というところまで
考えないで、
新法施行の時からその
新法に乗り移らせよう、そういう考で
公訴の
時効が
新法の
施行の時からその
進行を停止して、
管轄違、又は
公訴棄却の
裁判が確定した時から
進行を始める、要するに
起訴の時というのは
新法の時ということに読み換えたような形にして、その時から
新法の
施行については乗り移らせて行こうというのが第
八條の一項、二項の
考え方であります。三項も同じ
趣旨であります。全部
公訴提起というのは
新法施行の時と置き換えて
考えて行こうというのが第
八條の
趣旨であります。
次に第九條でありますが、これも前條第一項の
事件についてということでありまして、第四條の
事件で
新法施行の時に
公訴の
提起があ
つた事件、こういう
関係についてであります。そういう
事件につきましては即ちいわゆる
旧法の
適用によ
つて起訴にな
つておるという
事件であります。それは現在と同じように
起訴状に
捜査記録が全部附けて一件
記録とな
つて裁判所に提出されておるわけであります。そうしてそれに写された
証拠物なども全部
裁判所に出て來ておるわけであります。これを第四條の
原則の
適用との
関係上どういうように調整しようかというのが九條の
規定でありまして、ここが実際問題として一番問題になる点であります。この案の
考え方といたしましては、先ず第九條の一項によりまして
旧法時代に
起訴にな
つて、まだ第一回
公判の開かれていない
事件につきましては、その
起訴状に附いて來ておる、例えば
檢察官の聽取書とか、
檢察官から提出したいろいろな
証拠物件そういうものは速
かにこれを
提出者、
原則として実際の場合は多くは、
檢察官ということになるわけでありますが、その
提出者に返還しなければならないということに、先ず第一になるわけであります。ここで
新法の
起訴状一本
主義というのが形の上で調子が合わされて來るわけであります。第二項におきまして
旧法時代の
起訴状でありますから、それは
新法の二百五十六條の
規定に従
つて附けられていないわけでありますから、これを全部二百五十六條の
規定に
従つて訴因や
罰條を明示してやる。そういう全部二百五十六條の二項から四項までの
形式、こういう
形式に訂正することになるわけであります。一番ここで問題になりますのは、先ず
旧法時代の
起訴状でありますと、
罰條などは書いてありませんので、
罰條はどうしても書き入れなければならん。それから
公訴事実の
書き方につきましてもいろいろと纏綿する
事情なども縷々書いてあるのがありますが、そういうものは簡潔な
訴因という形に一應書き変える、そういうことになるわけであります。それから第九條第三項の
関係でありますが、
旧法時代に
起訴にな
つた事件につきましては、
起訴状の送達ということは
旧法時代にはなか
つたわけであります。ところが
新法におきましては、
起訴状はすべて送達しろということになりましたので、その
関係の調整を第三項で
規定しておるわけであります。即ち
只今申上げましたように、
旧法時代に
起訴にな
つて、まだ第一回の
公判期日の開かれていない
事件につきましては、
捜査記録を返し、
起訴状を訂正し、そうして訂正した
起訴状は第三項の
規定によ
つて、
新法施行の日から三ケ月以内にこれを被告に送達しなければならない、即ちこの
法律が明年一月一日から
施行になりますと、一月一日から三ケ月以内にとにかく訂正した
起訴状の謄本を被告に送達すると、そういう
関係にな
つて來るわけであります。先程からしばしば問題になりました第一回の
公判期日の開始によ
つて事件の
処理を決めるという点が、
裁判所なり、
檢察廳なりの実務に対する影響面としてはこの第九條の
規定が一番大きいわけであります。
次に第十條でございますが、これも第
八條第一項の
事件でありまして、即ち
新法施行前に
公訴の
提起があり、而もまだ
新法施行の際に第一回
公判期日が開かれていない
事件、これにつきましては
旧法第三百五十六條の
規定は、尚その
効力を有するといたしましたわけでありますが、
旧法の三百五十六條の
規定と申しますのは、「地方
裁判所ハ其ノ管内ニ在ル区
裁判所」これは
簡易裁判所と読み替えられておるわけでありますが、「
簡易裁判所ノ管轄二属スル
事件ニ付
管轄違ノ言渡ヲ爲スコトヲ得ス」こういう
規定であるわけであります。
新法にはこの
規定が省かれておるわけであります。従いまして
旧法時代に
起訴にな
つた事件についてだけ、尚この三百五十六條の
規定がないと、この
管轄違ということになることになりますので、この十條の
規定によりまして、そういう
事件についてだけ三百五十六條の
規定を尚存置して、
管轄違の言渡をしないで、地方
裁判所でそのまま審理判決をすることができるようにしようというのがこの第十條の
規定であります。
次に第十
一條の
規定でありますが、「
新法施行前に告訴又は請求の取消があ
つたものについては、
旧法三百六十四條第五号の
規定は、
新法施行後も、なおその
効力を有する。」というのでありまして、
旧法三百六十四條第五号と申しますのは、「告訴又ハ請求ヲ待チテ受理スヘキ
事件ニ付告訴又ハ請求ノ取消アリタルトキ」は「判決ヲ以テ
公訴ヲ棄却スベシ」と、こういう
規定であります。ところが
新法におきましては告訴又は請求は
公訴提起があ
つた後にはこれを取消すことができないという形に
なつたのと照應いたしまして三百六十四條第五号のような
規定はなくな
つてしまいましたので、
旧法時代のこの第十
一條に掲げるような
事件、例えば
新法施行前に、
旧法時代に告訴の取消があ
つた。
公訴提起に告訴の取消があ
つた。併しながら判決は
新法施行後するという場合、第十
一條に
規定がないと判決のしようがなくなるという
関係になりますので、この三百六十四條第五号の
規定を置きまして、そういうものについては
公訴棄却をしろと、そういうことにいたしておるわけであります。
それから第十
二條。この
新法三百四十條と申しますのは、「
公訴の取消による
公訴棄却の決定が確定したときは、
公訴の取消後犯罪事実につきあらたに重要な証拠を発見した場合に限り、同一
事件について更に
公訴を
提起することができる。」という
規定でありまして、これは
旧法になか
つた新らしい
規定であります。
旧法時代ならば、こういう
新法の三百四十條のような
規定がありませんので、
旧法時代に
公訴の取消に
なつたものにつきましては、同一、
事件について更に
公訴を
提起することができなか
つたわけであります。そういうような
被告人側の
利益を尚そのまま保持させてやろうというのが第十
二條の
趣旨であります。ただ「この場合には、」という後段の方でございますが、この後段の
規定は
旧法三百六十四條第三号、それは「
公訴ノ取消ニ因リ
公訴棄却ノ決定アリタル
事件ニ付更ニ
公訴ヲ
提起シタルトキ」、こういう場合には「判決ヲ以テ
公訴ヲ棄却スベシ」という
規定でありますが、この
規定も
新法には落ちておりまするので、今言
つたように
旧法時代に
公訴を取消した
事件について更に
公訴、
旧法時代公訴の取消があ
つて公訴棄却の決定があ
つた、そういう
事件につきまして何か間違
つて又
公訴をして来たという場合に
新法に三百六十四條第三号に相当する
規定がありませんので、その
処理に困りますので、そういう
関係におきまして三百六十四條第三号の
規定を活かして置いて、その
処理、結末を付けようというのが第十
二條の後段の
規定の
趣旨であります。
第十三條これは「
新法施行前に略式命令の請求があ
つた事件の略式
手続については、
新法施行後も、なお
旧法による。」といたしたわけであります。これは
新法によりますと略式命令につきましては、
旧法時代はいろいろ金額の制限とか、
被告人の同意とか、いろいろな点が
違つて來ておりますが、これも
経過的には
新法施行前に略式命令の請求があ
つた事件については、略式命令の略式
手続、これは正式
裁判と
なつた場合は別でありますが、その略式
手続についてだけは尚
旧法の略式
手続によ
つて処理しようというのが第十三條の
趣旨であります。
それから十四條、これはいわゆる二百五十
五條の強制処分の
規定でありますが、
旧法時代に二百五十
五條の
規定によ
つて裁判官に強制処分を命じ、そうしてその強制処分の請求によ
つて裁判官が鑑定を命じた、併しながらまだその鑑定が
旧法時代に全部でき上
つてなか
つた、
新法時代まで持越されるという場合に或いはどうなるか、この
旧法二百五十
五條に相当するような
規定が
新法にありませんので、その結末を図るためにこの十四條の
規定をおいたわけでありまして、そういうような
旧法時代に二百五十
五條の
規定による、檢事の強制処分の請求により
裁判官の命じた鑑定は依然として二百五十
五條の
規定によ
つて完結する、そういう趣、旨を現わしたのが十四條の
規定であります。
それから第十
五條でありますが、いわゆる人権蹂躙
事件に関連する事柄でありますが、新
刑事訴訟法におきまして、いわゆる人権蹂躙
事件につきましては、檢事の
起訴処分に不満のあるものはその
起訴の通知を受けた日から七日以内に
裁判所にその
公訴を
提起しない処分をした
檢察官を経由してその
事件の
公判に付する処分を求めることができる、というのが二百六十
二條以下の一連の
規定であります。
第二百六十
二條第一項におきますると「刑法第百九十三條乃至第百九十六條の罪について告訴又は告発をした者は、
檢察官の
公訴を
提起しない処分に不服があるときは、その
檢察官所属の
檢察廳の所在地を管轄する地方
裁判所に
事件を
裁判所の審判に付することを請求することができる。」これは新らしい制度であります。
旧法時代になか
つた制度であります。こういうようなこの請求はこの二百六十條によ
つて公訴を
提起しない処分をしたとそういう通知を受け取
つた日から七日以内に請求書を出すという
規定にな
つておるわけであります。それで七日というのはい
かにも
新法移り替わりのときに慌しい
関係にありますので、この十
五條の
規定におきまして、この
新法施行前に
公訴を
提起しない処分をしてしま
つた、そういう
事件につきましては、この
新法の二百六十
二條の制度を働かせて行こうという
一つを入れまして、その働かせるにつきましては、二項の七日では短いから「
新法施行の日から一箇月以内に、」と読み替えて
適用して行こうとそういう
考えであります。即ちこの二百六十
二條の二の人権蹂躙問題に関する
檢察官の不正処分について
裁判所の、審判に付することを請求する
手続というのは好ましい
手続であるので、一應既往の
手続についても恩典に浴せしめようという
趣旨であります。
從つてこの一ケ月來年の一月中であるならば、例えば一年前に不
起訴処分に
なつたものにつきましても、この二百六十條以降の
規定が
適用にな
つて來るということになるわけであります。結局
時効の完成があればその実益がなくなるわけでありますが、
時効の完成がない限りは一月以内ならば二百六十
二條以下の制度に乗
つて來るとそういう
関係にな
つておるわけであります。
次に第十六條でありますが、この第十六條と第十
七條とは今までの申上げた
関係のとちよつと角度が違う
規定にな
つております。第十六條の方は
新法第四十六條によりまして、「
被告人その他
訴訟関係人は、自己の費用で、
裁判書又は
裁判を記載した調書の謄本又は抄本の交付を請求することができる。」こういう
規定にな
つておるわけでありますが、この
手数料等につきましては、
旧法時代におきましても
新法四十六條に相当する
規定があ
つたわけでありますが、その
手数料はずつと古いお手許に差上げてあります参考
條文の中に載
つており、尚この
法律の終まいの方の第二十三條の「
裁判言渡の謄本等を求むる者費用上納額(明治十四年司法省布達甲第七号)は、
廃止する。」と、これでありますが、この
規定によりまして、「
裁判言渡ノ謄本又ハ其ノ拔書を求ムル者ハ其ノ用紙一枚金三銭ノ費用ヲ上納スル儀ト可心得事」この
條文によ
つて一枚三銭ということにな
つてお
つたのでありますが、この三銭では如何にもその後の物償の値上り、その他これに類似の民事の
処理の諾費用などに比較いたしまして、如何にも低過ぎますので、この
施行法におきまして、当分の間その謄本又は抄本の用紙一枚につき五円とする。こういうことにいたしたのであります。それで第
二條の
事件につきましては、全部
旧法が
適用にな
つて來るわけでありまして、従
つて旧法五十三條、これは
新法の十六條と同じ
規定でありますが、その
規定によ
つて調書の謄本などを請求することができるわけであります。その場合も又同じように用紙一枚について五円とすることにいたしたわけであります。今度の民事
関係の
訴訟費用は、臨時
措置法の
改正によりまして、民事
関係の
処理の講費用につきましては半枚三円五十銭ということにな
つておりまして、明治三十三年頃です
かにおきましては、民事の
処理の費用額は半枚二銭五厘であ
つたのであります。それに比べますと百四十倍くらいにな
つておるわけであります。この刑事の方の調書の謄本又は抄本の請求する費用につきましても大体民事の
只今申上げました
処理の諸費用などの値上りも参酌いたしまして、丁度よい金額の五円ということで一應切
つたわけであります。
次に第十
七條の
規定でありますが、これは先程申上げましたように
確定訴訟記録の
閲覽を請求する場合の
手数料であります。この
関係につきましては、第五十三條におきまして
訴訟記録閲覽の
手数料については、別に
法律でこれを定めるということになります。この
閲覽の
手数料についてはこれを別に
法律で定めるというこの
法律の一種の暫定的
規定という形で、当分の間、一回につき十円にするという
規定を定めたのであります。これも戸籍その他の書類の
閲覽料とか何とかというようなものも比較対照いたしまして、取敢えず「一件につき一回十円」そういうふうに定めた次第であります。
第十
八條は、これも亦今まで御
説明したのとちよつと変
つて來まして、いわゆる附帶私訴の
処理に関する
規定であります。即ち
新法施行の際、
公訴に附帶して私訴が
提起されてお
つてそれが
裁判所に係属しておる。そういう
事件をどう
処理するか、
新法におきましては附帶私訴という制度を
廃止いたしましたので、現に係属しておる附帶私訴はどうするかという問題も起るわけでありますが、これはこの
規定によ
つて民事
訴訟法を
適用するということにいたしまして、
原則として
通常の
民事訴訟手続によ
つてこれを完結する。そういうことに相成るわけであります。
從つて刑事部で審理しておるものは民事部ヘこれで移される。そうして普通の民事部の民事
裁判によ
つて完結される。そういう形になるわけであります。
次に第十九條でありますが、これは何分
新法は
旧法と非常に変りまして、
経過規定なども永年の中にはいろいろと細かい点で問題の点が生じ、一律に決めた方がよい場合も生じ得るのではないか。そういう場合を予想いたしまして、第十九條でこの
法律に決めたもの以外には
新法施行の際現に
裁判所に係属している
事件の
処理に関し必要な
事項は、
裁判所の規則の定めるところによる、こういうことにいたしたわけであります。現在差当
つて是非定めなければならないというものは、余り
考えられないわけであります。強いて
考えれば、第十
八條などには、民事
訴訟法に移す場合の
手続をどうするかというような非常に細かいことも
考えられますが、これは必ずしもルールを
規定しなくても、実際の
処理としてできるのではないかと思
つておるわけであります。次にこの第十九條までが、いわゆる本來の
刑事訴訟法、今までの
刑事訴訟法に属した
事項についての一應の
経過規定などに関連するものであります。
二十條以下が他の
法律の
関係のものであります。御承知のように、この衆議院議員選挙法や、それを準用し、或いはその例によ
つた参議院議員選挙法、地方自治法、政治資金規正法等などにおきまして、当然無効の
訴訟などにつきまして、
刑事訴訟法中の私訴に関する
規定を準用しておるわけであります。これは私訴の
規定を準用し、又はその私訴の
規定によ
つておるわけでありますが、これはいわゆる民事
訴訟法上の私訴と多少性質を異にいたしまして、今直ちにこれを
廃止するということは非常に問題でありますのみならず、而も刑訴の私訴の
規定を
廃止しつ放なしにして置いて……、これは
規定について何か手当をして置かなければ、差障りも生じますので、そういう
規定に、こういう
法律の
適用につきましては、
旧法中私訴に関する
規定は
新法施行後も尚その
効力を有する。一應こうして活かして置きまして、これらは選挙
関係の
法律を將來
改正する際に、そこで十分
考えて行こうというのがこの第二十條の建前であります。
第二十
一條、これは
刑事訴訟費用法の一部
改正に関するものでありますが、ここでは新
刑事訴訟法と旧
刑事訴訟法とで用語の差異ができましたので、その用語を合せたということが
一つと、それからその外に実績のものといたしましては第
七條であります「
刑事訴訟法第三十
八條ノ
規定ニ依リ
弁護人ニ給スヘキ日当、旅費及
宿泊料ニ付テハ第三條乃至前條ノ
規定ヲ準用ス但シ
弁護人カ
期日ニ出頭シ又ハ取調若ハ処分ニ立会ヒタル場合二限ル」こういたしました。この「
刑事訴訟法第三十
八條ノ
規定ニ依リ」と言いますのは、いわゆる
國選弁護人は、旅費、日当及び
宿泊料を請求することができる、こういう
規定にな
つて居るのであります。この
國選弁護人に給すべき日当、旅費及
宿泊料、こういうものについては、第三條乃至前條の
規定を準用するということになりまして、この実績を申上げますと、
関係人に給する旅費、日当及び
宿泊料はその
規定を準用しておるわけであります。
從つて尚言葉を
簡單に申上げますと、
國選弁護人には
関係人と同樣な旅費、日当及び
宿泊料を給する、そういうことになるわけであります。「但シ
弁護人が
期日ニ出頭シ又ハ取調若ハ処分ニ立会ヒタル場合ニ限ル」ということにいたしまして、例えば
弁護人が
公判期日に出頭したとか、或いは証拠調に立会
つたとか、そういう場合に限
つてこの旅費、日当、
宿泊料などを給する、從いまして
弁護人が刑務所におる被告に面会に行くというような場合の旅費、日当、
宿泊料などは差当
つて第
七條の條項は問題にならないわけであります。そういう場合には旅費、日当、
宿泊料を給しない。こういう
関係にな
つております。但し第二項がありまして、「同法第三十
八條ノ
規定ニヨリ
弁護人ニ給スベキ報酬ノ額ハ
裁判所ノ相当ト認ムル所ニ依ル」とな
つておりまして、
只今申上げました刑務所におる
被告人に面会に行
つた費用或いは
記録の謄写に要した費用、そういうものはこの「報酬ノ額」の方で
一つ裁判所が全般的に見て
弁護人の努力、それに要した費用などを参酌して、これで調整してやれというのがこの第
七條の
規定の立て方にな
つております。それはこうしないと、例えば
弁護人の中にはこの
規定を濫用して、必要もないのに方々に出張したり何かして、その旅費、日当などを請求して負担するというようなことがあ
つては差当
つて困るという問題もありまして、現在の立前としては一應これで行
つたらよかろうということにな
つてこの法案ができたわけであります。それから今
一つこの点に関連しまして問題になるのは、
弁護人に給した旅費、日当、
宿泊料などはこの刑事訴訴費用法の他の
條文の
関係においてこれが
訴訟費用になる、そうして
被告人が有罪の言渡を受けた場合には、
刑事訴訟法の
規定によりまして、第百八十
一條に、刑の言渡をなした時には、
被告人にその
訴訟費用の全部又は一部を負担させなければならないという
規定がありまして、一應
被告人の負担になる立前にな
つております。それがここで注意する第二点であります。注意すべき第三点といたしましては、折角
國選弁護人を國家でつけてやるならば、その費用を
被告人に負担させるというのは、矛盾しないかという理論になりますが、その理論の解決策といたしまして、
新法五百條により「
訴訟費用の負担を命ぜられた者は、貧困のため、これを完納することができないときは、
訴訟費用の負担を命ずる
裁判を言い渡した
裁判所に、
訴訟費用の全部又は一部について、その
裁判の執行の免除の申立をすることができる。
前項の申立は
訴訟費用の負担を命ずる
裁判が確定した後十日以内にこれをしなければならない。」こういう
規定を置きまして、その間の調整を図
つておるわけであります。なぜこういう出方にいたしたかというと、これはむしろ新
刑事訴訟法の立案のときの問題になりますが、丁度新慣例でして來ましたので、一言その立前に触れますと、新
刑事訴訟法の立前におきましては三十六條で、「
被告人が貧困その他の事由により
弁護人を選任することができないときは、
裁判所は、その請求により、裁告人のため
弁護人を附しなければならない。」という立前にな
つておりますので、実際問題としては、貧困の場合が一番問題になると思いますが、
弁護人を附するか附さないかを決めるには、貧困であるかどうかを確めなければならないわけでありますが、事前にそれを確めるということになりますと、勢い
國選弁護人を附けることが少くなりはせんか、とにかく一應附けて置きます。後で執行段階にな
つてよく調べてみて、貧困であるならばその執行を免除する。
裁判所の
裁判でそれを免除するということにした方がより一層スムースに
國選弁護人を附けることになるのではないかという
考えから、
只今申上げたような組立にな
つておるわけであります。尚この旅費、日当、
宿泊料などは、今度の
國会に出ております別の
訴訟費用等臨時措置法の一部を
改正する
法律案で、額については大分高くな
つて來ておることを申添えておきます。
それから第二十
二條でありますが、これは全く整理的のものでありまして、特に申上げるまでのことはございません。
それから第二十三條でありますが、この後段の方は、先程御
説明申上げましたように、
本案の第十六條の
規定ができた以上は不必要でありますので、
廃止するわけであります。それから第二十三條の前段の方の
規定は、これは御手許に差上げました資料の中に載せてありますように、大分古いものでありまして、明治十四年司法省布達甲第五号というのは、「
新法実施後ハ司法警察事務上時宜ニ依リ巡査ヲシテ警部ノ代理ヲ爲サシムル儀モ可有之候条此旨布達候事」これがありまして、新憲法
施行後も尚活きておるという解釈の下におきまして実際が動いて來ておるわけでありますが、この新
刑事訴訟法になりますと、この第百八十九條によりまして、「警察官及び警察吏員は、それぞれ、他の
法律又は國家公安
委員会、都道府縣公安
委員会、市町村公安
委員会若しくは特別区公安
委員会の定めるところにより、司法警察職員として職務を行う。」こういう
規定ができまして、誰を司法警察人とし、誰を司法警察吏員とするかというようなこと、殊にこの明治十四年司法省布達第五号に相当するようなことは、むしろこの公安
委員会などの定めるところによるべきものである。それが新憲法の精神でありますので、それとの
関係上
只今申上げました明治十四年司法省布達甲第五号は、これを
廃止する。こういうことにいたした次第であります。 附則につきましては、別段御
説明することもございませんから以上を以て
簡單に
逐條的の御
説明を終ることにいたします。
委員長のお許しを頂きまして速記を止めて頂きとう存じます。
附則につきましては、別段御
説明することもございませんから以上を以て
簡單に
逐條的の御
説明を終ることにいたします。
委員長のお許しを頂きまして速記を止めて頂きとう存じます。