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公述人(土橋一吉君) 全逓労働
組合土橋一吉であります。本日は
労働委員の各位の御高配によりまして、ここに私が國家
公務員に関する
公述をさして頂くことにつきまして、深く感謝の意を表する者であります。
私は本
法案が
國会へ上程されまするこの
法案の
内容について全面的に
反対の
意見を表明する者であります。本
法案の本質的な
理由、或いはこれが國際的な
関係、並びに國内的な
関係及び
憲法法規に照し合せまして、我々が容認のできない、さような
政策的な面を持
つておりますので、それを逐次申上げることによ
つて反対の
理由としたいのであります。我が國の現在の経済態勢は、國際的金融資本を
中心とするその反動的な
勢力と相合致をいたしまして、現在
日本の國家再建の方式が考えられておるのでありまするが、かような考え方につきましては根本的に私は
反対をする者であります。それが
現下の通貨の膨脹過程を見ましても、現在の生産の萎縮しておる過程を見ましても、亦
一般勤労大衆の勤労意欲が上昇されていないというような
関係から見ましても、かような
法案が只今の時期において
國会へ上程されることは全く遺憾であると思うのであります。特に私の承知しておりまする
範囲においては、この原案でありまするところの元の昨年十月二十一日公布せられました
法律第百二十号の
国家公務員法そのものが根本的な誤りを持
つておるのであります。と申上げることはすでに御承知のように、
アメリカにおきまして一八二九年アンドリユージヤクソンが大統領に就任いたしまして以来、
政党政治のその弊害が
アメリカの
公務員をして極度に達せしめられたのであります。
從つてアメリカにおける國家
公務員制定の由來というものは、丁度英國におきましてあの立憲政体の基礎を作りました
憲法制定と同じように、これは私が申上げるまでもなく人民の
権利、解放のための誓約が
憲法の基本であつたと思うのであります。ところが我が國の明治三十年の
憲法はこの人民の
権利を確保する誓約を逆に取りまして、天皇制の権力を強くするために作られた欽定
憲法であつたのであります。これと同じように今申上げた
アメリカにおける
國家公務員法は明らかに
政党政治の誤れる民主主義のために、全
國民諸君が
官僚の一方的な
政策によるところの
行政措置を行う、この弊害を是正するために
國家公務員法が
制定せられました沿革を持
つておるのであります。ところが我が國の現状を見ますると、終戦以來民主主義の原則によりまして、成る程
一般勤労
官吏にも
労働者としての正当な
権利が認められつつあつたのでありまするが、この間において尚現在の戰犯、或いは公職追放等の諸君の中には高級
官僚を含んでいないのであります。この高級
官僚が如何に我が國の機構
制度の本質を誤らしめ特に
委員諸君のいろいろなご配慮なり、或いは各
政党の
政策というものについても、この高級
官僚が如何に誤つた政治の方針を各
責任者に誘導しておつたかということは明瞭であります。こういう戰犯的な或る高級
官僚が尚各省に跋扈いたしまして、彼らは学閥を
中心として下級勤労
官吏を非常な窮地に陷し入れたのであります。こういう國情下において
國家公務員法が
制定せられるということは明らかにこれは
アメリカの場合とは立場を異にしまして、この
國家公務員法が先ず
規定ししておりまする
官職の中の第二章にありまする、
職階制というようなものを通じまして、飽くまでも
給與の面におきましても、その
権限の行使の面におきましても、上には厚く下には薄いというような、極めて我々労働
組合員には了解のできない本質を先ずこの
法律第百二十号が持
つておるのであります。
從つて我々はこの
國家公務員法そのものが我々労働階級の
権利を剥奪をし、正当なる
基本的人権を阻害する悪法であることは、この前の
委員会等においても我々が縷々申上げたゆえんでありまするので、まず
法律第百二十号の
國家公務員法そのものが根本的に我々
労働者としての
権利を剥奪し、これを制限し、更に
日本の全官公吏諸君の勤労意欲を阻害するものであることを明確に申上げたいと思うのであります。
從つてこの
法律百二十号の修正的な本案については根本的に
反対の
意見を表明する結論を持
つておるのであります。
何故ならば、私はここに
皆さんに特にお話を申上げたい点は、この
國家公務員法が
憲法七十三條第四項の
規定によりまして、別に定める基準に
從つて官吏に関する事務を掌理すると、かように
憲法の七十三條は
規定しておるはずであります。この
規定と、
憲法第二十八條が
規定しておりまする勤労者の基本的な
権利でありまするところの
團結権、罷業権、
團体交渉権というものとどういう
関係があるかということであります。そこで私は
憲法七十三條第四項が
規定しておりまする、この
官吏に関する事務を掌理する
規定を別に
法律を以て定めるということは、これは明らかに国家公務を担当するところの
公務員の事務面におけるところの
規定を
規定する誓約であろうと思うのであります。若しこの
規定が勤労者の基本的な
権利に関する
規定と相関連をするならば
憲法七十三條四項の
規定は明らかにこれは違法であります。でありまするから相関連をしないという建前を若し取られるならば、当然にこれを勤労者としての二十八條の
規定、或いは遡りまして
憲法第十一條が
規定しておりまするように、この
憲法が保障する
基本的人権は侵すことのできない永久の
権利であると、かように
憲法が明記しておりまするが、この
規定の
精神から見ましても、又
憲法が第九十七條において
規定しておりまするが、更に加えて侵すことのできない永久の
権利であると、かように
規定しております。
尚
憲法九十八條の
規定を見ますと、
憲法の最高法規を如実に謳いまして、この
憲法の條項に違反をする
法律、命令、認勅その他いかなる
行政行爲であ
つても、その全部又は一部が無効であると、かように
憲法は明記しておるのであります。次に九十九條には、これは天皇であろうと、摂政であろうと、
國会議員であろうと、
裁判官であろうとこの
憲法の
規定に準拠して
立法、
司法、
行政を担当しなければならんということを
憲法が明示しておるのであります。こういう
規定から考えまして、私は当然勤労者の
権利であるところのまず罷業権、
團体交渉権、更に
團結権を侵すような一切の
法律は
政府の名において
制定せらるべきではないということを確信を持
つておるのであります。若しかような
法律を作るならば、
憲法七十四條第一項を御覧になりますると、
内閣は
法律を誠実に執行する
責任を持
つておるのであります。
從つて法律の表、表街道から見ましても、かような紛らわしい
官吏のいわゆる
身分、率直に申上げるならば、
官吏の
採用、或いは
試験、或いは
給與、或いは能率、或いは分限令の問題、保障の問題、更に服務の問題というようなものによ
つて、労働
組合員としての正当な
権利を阻害するような
立法を作るということは、明らかに現
政府の反動性を如実に示しているものであります。
でありまするから、如何なる理窟をつけましようとも、
憲法第七十三條、第四項の
規定によ
つて「
官吏に関する事務を掌理する」という
規定のこの表街道から申しましても、かような基本的な人権、勤労者としての当然な
権利を収奪し、これを抑えるような
立法は、断じてできないのであります。若しかような
立法がこの
國会において認められるとするならば、我が國の
國会の権威と我が國の將來の
基本的人権に対するところの尊重の観念を麻痺せしめるものであります。でありまするから、私は根本的にかような
法案を提案する現
政府は、
憲法第七十三條第一項の
規定から見ましても、当然國家
公務員として、彼らは寧ろ
一般國会議員の
皆さんに対して、正当なる
権利の行使を妨げるような
立法、起案をするというようなことについては、寧ろ國家
公務員としての
責任を私は追求したいと考えておるのであります。この点がまず根本的に私は
反対の
理由とする
法律的な見解であるのであります。
次は経済的な
理由でありますが、経済的な
理由については、先程もいろいろ御発言もあつたようでありますが、我々全官公吏が労働爭議に関しまして行き過ぎをしておるというような悪い宣傳を誰がしておつたか。現在までの保守反動的な
政党、或いは
政府、或いは現在の
日本の資本家階級の諸君が、かような悪宣傳をしておつたのであります。我々は飽くまで労働法に認められた正当な
権利、労働基準法は
我我根本的に
反対でありましたが、尚その基準法の
規定に
從つて中央
労働委員会が出しました
勧告の
精神に、我々は十分その
趣旨を汲み、尚且つ労調法が認めております
期間を経過すること、例えば二・一のストライキの場合にも、二ケ月を経過したのであります。今年三月の鬪爭におきましても調停
委員会が
勧告或いは調停案を出しましてから、約三ケ月間を経過してストライキが行われておるわけであります。かように我々は突如として
一般國民、
日本の法規に矛盾をしてストライキなり、爭議行為を断行した覚えはただの一回もないのであります。常に我が國の
法律の
規定に準拠し、而も我々は不満でありますが、労働
関係調整法の
規定を遵奉いたしまして、尚且つ
國民諸君に警告を発し、
政府にも努めて團体
交渉を展開して、そうして
政府の
政策的な誤り、
政府の團体
交渉、或いは
我我組合の正当な
権利を無規しておる、この使用者としての十分な務めをいたさないゆえんを徹底的に追求いたしまして、我々は爭議行為に入
つておるのであります。でありまするから、若し全
官公廳が行き過ぎをしておるとか、或いは罷業権を行うべきでないというような見解を持
つておられる方がおられるならば、概念を是正して頂きたいと思うのであります。何故かならば、凡そ勤労階級が
自分の待遇改善のために相集りまして、
自分の要求を取り纏めて、その使用者側であるところの
政府、会批側、こういうような諸君に團体
交渉をする
権利は、当然の天賦の人権であるのであります。かような
権利まで妨げるがごときことは、明らかに
憲法の本質を蹂躙するところの考え方であろうと思うのであります。
次に我々が罷業権を持
つている、
我我が完全に爭議行為を展開するという
権利を保有せられて、初めて民主國家としての正当な
権利の尊重と、
政府の誤れる
政策に対するところの覚醒を断行し得るところの基礎を持
つているのであります。若しかような
法案が通過いたしまして、全
官公廳二百六十万の正当な
権利が抑えられ、これが没却せられ、これが圧殺せられるような、かような我が國の政治形態と國家形態を若し招來するならば、
日本は再び第二次欧州大戰のような、極めて遺憾な現象を露呈する分岐点となるのであります。飽くまでも勤労者の
権利を擁護しなければならんと私共は主張したいのであります。この
観点から先ず現在の
政府原案は返上して然るべきである、こういう見解を持
つておるのであります。
次は私が承知しております
範囲におきましては、凡そ外國の各代表部の
皆さんの御
意見を聞きましても、例えば八月二十八日の対日理事会において開催をせられました、あのシーボルト議長の御発言になりました第一項から第十三項までの、あの御説明に対するソ同盟のキスレンコ少将のあの論駁、或いは特に英連邦代表のパトリック・シヨー氏のあのお言葉、例えば簡單に申し上げるならば、パトリック・シヨー氏は、少くとも
人事委員会というようなもので、そういうもので官公吏の紛爭状態を、
政府の
機関である
人事委員会、或いは
人事院が裁くというような、そんな馬鹿な話はどこにあるかという御
意見を発表されておるのであります。又
政府の
職員が、不平と不満となくして、
責任を持
つて公務を遂行するというような
規定を作ることが、民主國家の基本的な
態度ではないか。少くとも國家の
機関として使われる
公務員が、不平と不満と、その待遇面において悶々の情を持
つて、そうして
政府の処置に対して遺憾の意を表明ておるというような状態で果して國政の妥当な運用ができるかどうかというような点を発言されておるのであります。更にシーボルト議長の話は、これは
勧告と言わんよりは示唆であるということを仰せに
なつたが、これでシーボルトとしては安心した、これで、
日本の
國会が自主的に
立法するということを
裏付けせられた。この発言に対しては感謝の意を表する者であるということを、シーボルト議長が仰せにな
つておるのであります。
以上のような
関係を見ましても、私一はこの
國会におかれまして、勤労階級の
権利を尊重することが、我が國の再建の基本である、少くとも我が國は労働階級、勤労階級の
生活の保障をして、初めて我が國の産業の興隆があるというようなことが、單に口先だけの表看板でさようなことを言われるのでは、非常に迷惑千万である。飽くまでも勤労者の基本的な人権を尊重し、勤労者の基本的な待遇改善を十分にするという信念を持たれる賢明な
委員諸君におかれましては、当然かような
法案に御
賛成下さるというようなことは、私には了解はできませんが、恐らく
委員の各位は、この
法案については、直ちに
政府返上の一点において
意見を取纏め下さるように、切に私は希望したいと思うのであります。
次は個々の
條文に至りまして、簡単に私の
意見を述べさして頂きたいと思いまするが、これは先刻來の口述人のお話によりまして、殆んど明瞭にな
つておりまするが、先ず
立法の原則から申しまして、この
國会においてすべての
権利義務に関するところの問題は可決、決定せられるのが至当であります。特別に技術的な問題、特別に手続上の問題、特別に些細な問題に関しましては、
法律にその
立法を委任をせしめそうしてその
機関がこの政令、或いはその他のものを出すということが
憲法の原則であります。例えば
憲法第四十一條を御覧になりますと、我が國の國権の最高
機関は
國会であります。そうして
國会が唯一の
立法機関であることを、
憲法は明言しておりまするので、如何なる
法律の
内容でありましても、この
法律自身の中に、他の
機関へ重大なる
権利義務を付與する、これを制限するというような
法律を委任することは、極めて危險でありまするので、どこまでも
憲法第四十一條の
規定に従いまして、この
公務員の
身分に関する問題、苦情処理に関する問題、或いは紛争状態に関する問題、或いは退職の問題、或いは服務に関するようなものは、明確に
規定をして頂くということが第一点。ところがこの
人事委員会のこの原案を見ますと、
人事委員が勝手に
人事院規則を作つたり、勝手に
人事院の指令を発するというようなことが、第一條の冒頭に謳われております。こういうような廣汎な委任を
人事委員に委せるような、こういう
立法措置をするということは、明らかにこれは
憲法の本質的なものの矛盾でありまするので、こういう点をまず
委員の
皆様が、十分お認め下さるようにお願いしたいと思う。
第二点は、この
人事院の
権限でありますが、五名の
人事官が、現在各省におきまして二百七十万諸君の
試験から
採用から、或いは昇給から、或いは退職から紛爭状態から、全部のものをや
つても両手不足であります。ところが三名の
委員を
中心とするそういう
人事委員会において、二百六十万、更にこの法の
精神から見るならば、
公團関係或いは進駐軍労組というようなものまで含んでおるやに言われておりまするが、そういう厖大な人間の一切の待遇改善の措置が、果して理論通りにできるかというならば、断じてできないのであります。現在の逓信省におきましても、運輸省におきましても、非常にこの問題はただ本省の問題だけでなくして、
鉄道局も逓信局も或いはあらゆる他の末端の
機関におかれましても、非常に頭痛の種であります。そういうようなものが
人事委員会がどういう構成か知りませんがこの
法律が予定しておるような限度においては、断じて不可能であります、できません。そういうものをこの
法律でできるように書いておるところに先ず矛盾があること、
従つて人事委員の
権限は少くともこういう大幅な
権限を持つことなくして、従來の基準を決め、各省において断行せしめるということが、最も事実に即應して正しいと思うのであります。
次は
給與の点でありますが、第四節の
給與の点を見ますると、
給與に関する限りにおきましては、これは労働
條件と密接不離の
関係にありますので、この
給與に関する問題が、國家
公務員は全体の
奉仕者であるというような文句で、ここにトリツクがあるのであります。この
法律技術におけるトリツクがある。これを作つた法制局の
責任者は追求さるべきであると思う。即ち
給與に関する限りは勤労者としての勤労
條件の基本的な問題である。これが七十三條の
官吏に関する事務の管掌というような漠然とした
内容において、勤労者の基本的な
権利を侵奪する、ここに
法律のトリツクがあるわけであります。でありますから、私はこういうまやかしものの
法律は絶対
反対である。飽くまでも勤労者の
給與に関する問題は、勤労者としての人権の問題に入れなければならない問題でありますので、この支給、支拂の方法に関しては、これはよろしい。併し
給與そのものに関する問題を論ずるがごときことは、明らかに國家
公務員という範疇から考えても、越権行爲である。こういう
立法を、措置をこの
法律に入れて置くということは、明らかに矛盾をしております。
次は服務に関する問題でありますが、例えば現在におきましても、
官吏服務規律という明治二十年來の
法律が現在なお現存しております。
従つて服務に関する問題で特に九十八條が先程から問題にな
つておりますが、これは明らかに
公務員としての事務に関する問題を超えまして、労働運動彈圧の明確なる牙城を示しておる。なぜかならば、あの第九十八條を
皆さんが通覧して分るように
公務員としての事務を管掌する
範囲を逸脱しておるのであります。あの
規定は、特に罰則に当りましては、体刑を科するがごときことは以ての外である。なぜかならば、少くとも
公務員に関する不都合な問題があつた場合、それは懲戒、始末書なり、警告というようなことで今日までも来ておるのである。ところが國家
公務員の範疇を超えたと言
つて、直ちに体刑を以て科するというようなことは、明らかに労働運動に対する断崖を示したものであります。でありますから、國家
公務員としての職責不十分である、
権利を濫用しておる、逸脱をしておるというような場合においては、懲戒の
規定或いは免官の
規定を以て十分で、それを罰則を附して体刑を科ずるということは、明らかに國家
公務員という範疇の枠を超えて、労働運動を断圧する十分な
内容を持
つておることを証明するものであります。
従つてこういうように個々の
條文を見ましても、その法規の仕組みを見ましても、明らかにこの
国家公務員法によ
つて、
日本の勤労者の、
憲法第一條から
規定しておりまするところの基本的な人権或いは罷業権、
團体交渉権、
團結権というようなものを阻害しておることは明瞭でありまするので、本原案は直ちに撤回して然るべきであるという、こういう
法律的な根拠を持
つておる次第でございます。
なお私は
皆様にお話し申上げて置きたいことは、例えば
憲法学者、公法学者が今までいろいろお話になりましたが、私をして言わしめるならば、臆病である、
法律の
解釈について自信を持
つていない。というのは、この労働法規に関する問題と現在の國家
行政に関する公法の問題というものをごつちやにしておる。彼らの
解釈は、私の見るところでは、この資本主義経済に対する勤労者階級の不平不満というもの及びその者の
権利伸張に関する労働
立法というものは、現在の公法
関係の
解釈を以てしては
解釈のできない分野を持
つておるのであります。ところが彼らの
解釈によりますと、この労働
立法に関する法規をも從來の資本的な公法の
関係で制約をしよう、抑えようというような考えを持
つておりまするから、本日までの
公述人の話を聞きましても、我々労働運動を担当するものとしては、全く
法律根拠の理論がな
つていない、こういう論拠に
皆さんが惑わされないように、十分にお考を願いたい。その
意味は、北澤先生がおつしやつたと思いますが、こんな女に誰がしたというお言葉がありましたが、現在の労働運動に現在のような戰術を展開するようにせしめた張本人は、今までの歴代の
内閣であつた、歴代の反動的な支配階級の諸君であつたということを、
委員の諸君は明確に御承知であろうと思う。特にストライキを行い或はサボタージユをやるという
権利を國家が容認し、これを法規通りに認めておれば、ああいうような戦法や戦術が生れて來るものでは断じてありません。飽くまでも國家は正当なる立場において、
労働者の争議行爲を保護しなければならない。ところが今までの
政府は、從來の天皇制の観念と、種々の因襲と悪法に囚われまして、争議行爲は何か悪い行爲をする、何か企みをする、何か國家に害悪を與えるというような観念でこれを抑えることに終始しておつた。そうして
自分の権力形体擁護のために万全を盡しておつたというところに、根本の誤りを持
つておるのである。労働階級が團結し、
自分の待遇改善擁護のためにする罷業権を持つことは、最も正しい理念であり、國家はこれを擁護する態勢を取らなければ、如何に
法律を作りましても、どんな理窟をつけましても、それは砂上の樓閣であるということを申上げておきたいと思うのである。
以上の
観点で、私はかような
法案が、少くとも
責任ある
政府において
國会へ上程せられたということは、
政府自身に重大なる
責任を追求する必要がある、かような
政府は少くとも反人民的で、反
労働者的で、反祖國的で、而も
日本の再建を妨げる
立法であるということを、明確に申上げたい。以上。