○
羽仁五郎君 國会
公務員法改正の
審議を進める上に、
政府の行政面の最高の
責任者のお
考えを伺いたいという私の希望に、総理
大臣が應えて下す
つたことを感謝いたします。成るべく簡單にお尋ねをしたいと思うのですが、いろいろの問題があるので、十分に討議を許されたいと思うのです。(「無論」と呼ぶ者あり)ここは特に参議院でありますし、我々がこの
國家公務員法改正を賛成するにしましても、或いは
反対するにしましても、或いは修正するにしましても、その理論的な
理由はやはり
國民の行に明らかにするということが愛々の義務である。又参議院の権威に関することでもあると思いますので、根本的な点からお
考えを伺いたいと思います。
私は極く最近東京國際裁判においての判決文の中に、ウェツプ裁判長が、
日本の戰爭
責任者たちがごまかしと言逃れとに終始しておるということを言われたことは、実に非痛の感に堪えないのであります。これはどういうところから來ているかというと、私はあの方たちのしても、必らずしも意図としてごまかしをし、言逃れをされたとは私は
考えない。やはり理論的にはつきりしていない、それが結局言逃れとなり、ごまかしとな
つたことはあるのであります。そういう
意味でどうか理論的に我々はつきりさせて頂きたいと思うのであります。
第一に伺いたいのは
一般的な問題でありまして主に、四つの点につきまして、この
國家公務員法の
改正ということについて、言うまでもなく、首相は立法権は國会にあるというふうに御理解にな
つていると存じますが、如何でございましようか。從
つてこの
國家公務員法を通過し、或いはこれを否決する、或いはこれを修正するかということは、一に全く國会に属するものであるということを十分お
考えにな
つていると存じます。で、決して
政府提出の修正案原案というものに固執せられるものではないというふうに固く信じております。
それから第二にはつきり伺
つておきたいと思いますことは、この
改正は先程からも言われますように、いわゆる連合軍最高司令官の
書簡に基くものであるというふうに言われますが、その点について伺いたいことは、連合軍の最高司令官の
書簡は命令であるか、そうでないかということであります。この点についても前内閣はこれを命令と解釈されてお
つたようでありますが、併し八月二十八日の対日理事会において、議長は明瞭にこれが命令ではないということを
言つておられます。で、我々はそういうふうに理解しておりますが、恐らく首相はさよう了解されておると思いますが、どうですか。
それから第三に伺いたいことはやや重大な問題でありますが、これは我々がこの被占領
國民として、占領政策を忠実に守らなければならないということは、私も固くそれを信じております。併しながら、ここで
考えなければならないことは、これは主として軍事的及び政治的な
意味において正にそのその
通りであるのであります。併しながら、人間には軍事的、政治的のものの奥に、人間として何物も侵すことのできないところのヒユーマニズムといいますか、人間の貴重なものがあると思うのであります。これまでもたやすく蹂躙するというようなことは道理に反することでありますし、又如何なる占領政策に合致するゆえんでもないのであります。占領政計の根本はどこにあるかと言えば、これはやはりポツダム宣言、なかんずくこの
労働組合に関しては、極東
委員会の十六原則というものにその根本があるのでありまして、從
つて絶えずこの根本を眼目に置いて、この
マツカーサー書簡というものを正しく解釈しなければならないと
考えます。この際特に注意を喚起したいと思いますことは、占領されておる
國民が、占領軍に対して守るべき最高の私は節操というものがあると思います。これは我々が被占領
國民として今日、或いは憲法或いは
國家公務員法の
改正というものを
作つておりますものは、これは飽くまでも平時法というか、ピース・タイム・レジスレイシヨンである。これに戰時法というかウォアー・タイム・レジスレイシヨンといいますか、そういうような色彩が加わ
つて來るということは、被占領
國民として我々は節操を以て、これを防がなければならないことだと私は
考えます。これは古來の歴史に鑑みましても又最近の
日本が犯したいろいろな犯罪からみずから反省しましても、この点は被占領
國民というものは、ポツダム宣言で保障されておりますように、我我は奴隷にされることが
目的ではないのでありますから、この我々の
作つております平時法の中に、若しも戰時法的な、色彩が入
つて來ると、これは
日本を
民主化するという占領政策の根本
方針に一致しないことになるのでありますから、我々としては、殊に國会としては、この平時法の立法についてのみ全
責任を負うておる國会としては、この点を十分に氣を付けなければならないことであろうというふうに
考えます。この点、首相はどうお
考えになりますか。
次に第四の点でありますが、これはやはり同樣に根本的な問題でありますが、現行の
國家公務員法第三十八條などに現われております
考え方です。言うまでもなく、第三十八條の、暴力によ
つて、現在の民主憲法が成立した以後の
政府、或いはその憲法を覆がえそうとういことを主張する政党に参加し或いはそれを結成しておる者は官吏になることはできないという條文です。これは非常に重大な問題を含んでおります。極く簡單にその点を申上げますが、社会主義或いは共産主義ということに賛成するか、
反対するかということは、これはそれぞれの人々の
考えに基ずくところであります。併しながらその社会主義或いは共産主義、或いは暴力というものに
反対するということが、何らかのエゴイズムの手段とな
つてはならない。他のエゴイズムの口実とな
つてはならないということであります。第二には、昨日の
日本の新聞にも連合軍の労働顧問のダウテイ氏が共産主義に対する最も正しい
方法は、積極的な
経済政策を行うにあるのであるということを
言つておられますように、共産主義の問題を解決する唯一の
方法は、民主主義を実現して行くより外にないと確信するのであります。その外の
方法は必らず悲惨に導くだけであ
つて、決して正しい
方法ではないのであります。それに続いて暴力の点でありますが、これは首相御
自身が、或いは首相の父君が
経驗されたように、明治維新というような事義を、若し暴力が全然完全に否定せられたならば、我々は今日でも封建時代に住んでおるのであります。明治維新において、徳川幕府、或いは徳川慶喜というような
方々は、やはり立場の上からは飽くまで幕府を倒すという
運動に
反対であ
つたに相違ない。その立場において飽くまで
反対であ
つても、併し歴史の動きがすでに幕府は倒れる。そうして明治維新にならなければならないということを感ぜられた場合に、ステーツマンとしてこれに從われたのであろうと思います。これは俗には、いわゆる天皇に政権を帰し奉るという
意味から賛成したということが從來からの説明でありますが、それはもはやこの最近の國際裁判の判決を見たる我々として、そう簡單に
考えられるのでなく、やはり明治維新は
民主化に向
つての
一つの革命であ
つたのです。そういう
意味で暴力ということが普通の
意味で、極く卑俗な
意味で使われる場合と、
法律の上に、或いは学問上、理論上用いられなければならないそういう政治的な力という場合とは、はつきり区別しなければならない問題があると思うのです。そういう
意味で、この
法律の上に、こういうような
誤解を招き易い言葉を用うる、從
つてこれが歴史の進歩に逆行するような動きを招く虞れがあ
つた場合には、これはやはり國会としても十分の
責任を感知しなければならないのです。若しも
國家公務員法を
改正せられるならば、やはり
改正は進歩的な
方向に向
つてのみ
法律というものは
改正できるものであるのであります。むしろこういう問題を問題にして頂きたいと
考える。先ずこれらの
一般的な問題について御所見を伺いたいと思います。次に今度は個々の点について御
意見を伺いたいと思いますが、一應以上の点についてお
考えを承りたい。