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1948-11-25 第3回国会 衆議院 労働委員会 第8号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十三年十一月二十五日(木曜日)     午前十一時二十八分開議  出席委員    委員長 綱島 正興君    理事 尾崎 末吉君 理事 山花 秀雄君    理事 川崎 秀二君 理事 中原 健次君       倉石 忠雄君    亘  四郎君       久保田鶴松君    辻井民之助君       師岡 榮一君    安平 鹿一君       中曽根康弘君    大島 多藏君       赤松 明勅君  出席國務大臣         労 働 大 臣 増田甲子七君  出席政府委員         法 制 長 官 佐藤 達夫君         労働政務次官  鈴木 正文君         労働事務官   齋藤 邦吉君  委員外出席者         專  門  員 濱口金一郎君 十一月二十五日  委員山下榮二君辞任につき、その補欠として師  岡榮二君が議長の指名で委員に選任された。 同日  理事山下榮二君の補欠として山花秀雄君が理事  に当選した。     ————————————— 本日の会議に付した事件  理事補欠選任  合同審査会開会に関する件  公共企業体労働関係法案内閣提出第一三号)  職業安定法第十二條第十一項の規定に基き、職  業安定委員会委員旅費支給額改訂に関し議決  を求めるの件(内閣提出議決第一号)     —————————————
  2. 綱島正興

    綱島委員長 これより会議を開きます。会議に入るに先だつてちよつとお諮りいたしますが、理事山下榮二君が委員を辞任いたしましたので、理事が一名欠員になりました。この際理事補欠選挙を行わなければなりませんか、理事補欠選挙につきましては委員長に御一任願いたいと思いますが、御異議はございませんでしようか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 綱島正興

    綱島委員長 御異議力なきものと認めまして、それでは山花秀雄君を理事に指名いたします。
  4. 綱島正興

    綱島委員長 それではこれより職業安定法第十二條第十一項の規定に基き、職業安定委員会委員旅費支給額改訂に関し議決を求めるの件を議題といたしまして、審査に入ります。まず政府側より提案理由説明を求めます。
  5. 鈴木正文

    鈴木(正)政府委員 職業安定委員会委員旅費支給額改訂案を議せられるにあたり、本案提案理由を御説明申し上げます。  第二回國会提案しました職業安定委員会委員旅費支給額に、本年六月三十日議決を得ましてただちにこれを実施しておりましたが、最近の経済事情、特に現有進行中の物價改訂等による影響によつて、はなはだしく低額に失するに上りましたので、これが支給額改訂につきましては、職業安定法第十二條規定に基いて、これを両議院労働委員会合同審査会の議を経て、國会議決を得なければたりないことになつておりますのでここに提案する次第であります。本案目的とするところは、職業安定委員会委員委員会出席する場合、または実情調査等、公務のために本邦内を旅行する場合において、それに要する鉄道賃、船賃、車馬賃日当宿泊料等旅費を支給するのでありまして、この支給額は一應官吏旅費額を基準として定めましたことは、弟二回國会提案致しましたときに御説明申し上げた通りであります。すなわち今回、官吏旅費支給額が暫定的な改訂が行われましたので、職業安定委員会委員に対する支給額も、それに準して改訂しようとするものでありまして、その増加額は、一律に官吏相当職増加額と同等に増加した次第であります。  以上本案の趣旨及びの内容の大体について御説明申し上げたのありますが、何とぞ御審議の上、すみやかに議決せられんことをお願い申し上げます。
  6. 齋藤邦吉

    齋藤(邦)政府委員 私から、お願いしてありまするこの改訂案につきまして、その内容簡單に御説明申上げます。  お手元にお配りいたしてありまする「職業安定委員会委員旅費支給額改訂に関する件」、これの一枚目の裏の別表というのか、この職業安定委員会委員改訂旅費額に相なつておるわけでございます。二枚目の裏にはその提案理由説明を書いてあるわけでございますが、どういうふうに改訂になるかと申しますると、お手元にお配りしてあります資料の四枚目の裏ページにございます。職業安定委員会は第二回國会にお話申し上げましたように、中央職業安定委員会と、地方または特別地区委員会と、地区職業安定委員会と三つあるのでございまして、裏ページにありまするように中央委員会の例を引いて申し上げますれば、車馬賃一キロにつきまして、会長の例でありますると、それが一円八十銭であるのでありますが、それを今回四円八十銭に改訂していただきたい。すなわち増加額は三円の増加をお願いいたしたい。かように考えておるわけでございます。日当につきましても中央委員会会長の例をとりますると、先般おきめいただきましたのが七十二円でありましたのを、百大十二円に改訂していただきたい。こういうふうな案になつておるわけでございます。この改訂内容官吏相当職増加額と同率でその旅費額改訂しよう、こういうことに相なつておるわけでございます。  なお中央地方地区と三つありますが、これにつきましては、この四枚目の裏ページにありまするような額に改訂をお願いいたしたい。こういうふうに考えておる次第であります。はなはだ簡單でございますが、以上をもちまして内容の御説明といたします。
  7. 綱島正興

    綱島委員長 御質疑はありませんか。——質疑がなければ、お諮りいたしますか、職業安定法に、職業安定委員会委員の「旅費日当及び宿泊科金額は、両議院労働委員会合同審査会の議を経て、國会議決を得なければならない。その金額を変更するときも同様とする。」と規定されておりますので、この際合同審査会を開くことが緊急の要務であると思いますから合同審査会を開きたいと思いますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  8. 綱島正興

    綱島委員長 御異議なしと認めまして、さよう決定いたします。それでは本日午後一時より参議院の第二号室で、本件に関して両院労働委員会合同審査会を開会いたします。実は御承知通り両院労働委員会合審査会においては、定足数を必要といたしますので、ぜひとも定刻には皆様出席くださいますよう、お願い申し上げます。
  9. 綱島正興

    綱島委員長 次に公共企業体労働関係法案議題といたしまして、逐條審議に入ります。
  10. 安平鹿一

    安平委員 実は逐條審議に入る前に、一般的なものも大分残つているので、はなはだ申訳ないのですが、一般的なものをもう少しお伺いしてみたいと思います。それにつきましては、大臣に御出席を願いたいのですが、一時から両院合同審査会があるとすると、大臣が來られても、わずかの時間ですから、この程度で休憩してもらつたらどうです。
  11. 綱島正興

    綱島委員長 中曽根さん、政務次官及び労政局長かおられますが、ただいまの状態でよろしかつたら……。
  12. 中曽根康弘

    中曽根委員 私もやはり安平さんと同じように、また一般的な問題が残つておりますので、大臣の御出席をお願いしたいと思います。
  13. 綱島正興

    綱島委員長 それではこれで休憩いたしまして、両院、同審査会の直後再開いたします。     午前十一時三十八分休憩      ————◇—————     午後一時五十四分開議
  14. 綱島正興

    綱島委員長 休憩前に引続いて会議を開きます。  ただいま合同審査会におきまして、職業安定法第十二條第十一項の規定に基き、職業安定委員会委員旅費支給額改訂に関し議決を求めるの件は、原案通り可決いたされましたが、本委員会におきましても、これを採決いたすのが妥当であると考えますので、これより採決に入ります。  本件に関して原案通り可決するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  15. 綱島正興

    綱島委員長 御異議がなければ、本件原案通り可決いたされました。なお報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと思いますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  16. 綱島正興

    綱島委員長 御異議なしと認めまして、さようとりはからいます。     —————————————
  17. 綱島正興

    綱島委員長 引続き公共企業体労働関係法案質疑を継続いたします。
  18. 安平鹿一

    安平委員 労働大臣にお伺いしたいと思いますが、この公共企業体労働関係法公務員法関係は、非常に密接不可分なものでありまして、從つて公務員法が決定されて、その後にこの企業体労働関係法が問題になつて來ると思うのであります。從いましてこの公共介業体労働関係法審議するにあたりましても、鉄道、專賣等に從事する労働者福祉の点が重要なポイントになると思うのであります。福祉の中心になりますものは、何と申しましても生活でありまして、從いまして給與の点がまず明確にならなければならないと思いますが、鉄道従業員並びに專賣局関係従業員に対する給與関係はどういうふうな——これは取扱いと申しまするか、政府予算関係と密接な関係に置かれておりまするが、この点についてどういう進行状態に置かれておるかを説明願いたいと思つております。
  19. 増田甲子七

    増田國務大臣 安平さんの御質問にお答え申し上げます。公共企業体というものが皆様の協賛を得て設定されました場合に、公共企業体從業員についての給與も、一般國家公務員その他の公務員と同様に、政府としては配慮すべきものであるという御意見について、全然同感でございます。そこで公共企業体はしからばいつ設定されるかという問題になりますが、御承知通り今回この法規ができますと、これはたしか明会計年度から実施される、設定されるということになると思います。しかし、明会計年度におきましての措置はしばらくおきまして、今回は給與については一般國家公務員と全部同様な扱いをするというわけで、せつかく予算措置を急いでおる次第でございます。
  20. 安平鹿一

    安平委員 そうすると、やはり國家公務員法給與問題と同様に、せつかくその成案を急いでおられるということでありまするが、新聞紙上等で見ますると私の察知でき得る範囲内におきましては、なかなか実際問題としては出て來ないというのか実情だと思うのですけれども、これを一日延ばしにしておくことは、なおさらこれらの從業員生活不安がますます深刻になつて來ると思うのです。政府はこれらに対するる給與の見通しについて、これは大蔵大臣の方が適当だと思いますが、労働大臣の知つている範囲でけつこうですから、いつまでくらいに目鼻がつくか、また何日くらいまでには提案ができるかということも、あわせてお聞かせ願いたいと思います。
  21. 増田甲子七

    増田國務大臣 ちよつと速記をおとめ願います。     〔速記中止
  22. 安平鹿一

    安平委員 労働大臣政府側の諸君か非常に苦慮されておることも、十分承知しております。しかし先般も人事委員会で申しましたように、一つ法律をつくつても、それのみによつて目的の成果は得られないのでありまして、どうしても生活の安定なしには、法の全きを期するわけには参らぬと思うのです。從いまして、從業員給與を先決にしたければ、本法の精神も十分に生かすことができないということは、いうまでもないと思うのでありまするが、その点で具体的な問題に入つてみまして、人事委員会は六千三百七円、その案に対しまして、新聞によりますと、労働大臣は五千八百円ということでありますし、さらに大蔵大臣は五千二百円でとめたいというような意見が出ているようであります。少くとも社会党は、人事委員会の六千三百七円を認めたというわけではないが、今政府側から出ております給與の額といたしましては、社会党案に近いものとして、人事委員会案を認めておるわけです。その人事委員会から出ておる案に比較しまして、労働大臣の案は相当開きがあると思われるのです。これは新聞ですから、労働大臣が強い根拠の上に立たれて出されたわけではないかもしれません。けれども少くとも新聞紙上にそういう数字的なものが出ておるのであります。これを見のがすわけには参らないので、一應お尋ねしたいと思いますが、この人事院の六千三百七円と、労働大臣のお考えになつている五千八百円の差異根拠かとこにあるか。こういう点をお尋ねしておきたいと思います。
  23. 増田甲子七

    増田國務大臣 予算審議の経過の内容については、実はあまり申し上げにくいのでございますが、私が他の機会においても申し上げました通り、また総理も同様の意見であるということを先ほど付言して申し上げました通り委員会の勧告は理由がある。これを予算の上に具体化すべきものであるという意味合いで、せつかく総理とともに努力いたしております。その他のいろいろな数が出まして、これはどうか新聞の報道であるというふうに御承知願いたいと思つております。ただしかし新聞も何ら根拠のないことを書いてあるわけではございませんし、五千三百円という主張が一面あるというのも、これもまた一つ根拠から出ておる意見でございます。そこで実は理由というようなものは、どういう数についても、ある程度首肯し得る理由は出て來るものでありまするが、われわれは五千三百円ではとても問題にならぬから、せめてできるだけ努力しようということを極力主張しておる。その間においていろいろの数が現われたものと御承知願いたいと思います。
  24. 安平鹿一

    安平委員 そうすると労働大臣は、五千八百円では今の労働者か食えないということは御承知の上で、人事委員会の六千三百七円に近づけるためにせつかく努力しておるのだというように解釈してよろしゆうございますか。
  25. 増田甲子七

    増田國務大臣 さようでございます。
  26. 安平鹿一

    安平委員 次に予算案を早く出してもらわなければわれわれといたしましても、國家公務員法と同様に、本案審議する上に非常に困難を來すのでございますから、具体的に給與予算を一日早く提示をお願いしたい。その上で、私はこの公共企業体労働関係法についても、十分それとにらみ合せながら、審議を続けたいと思つております。  次に第十七條の罷業の禁止をしておる点であります。この公共企業体労働関係法が、公務員法と切り離されたという理由は、公務員として取扱うことにふさわしくないから、これが切り離されたのだというように考えております。せんだつて運輸大臣の御答弁によりましても、國家公務員法を適用することは無理だと思うから、切り離すのだというように御答弁なつたと記憶しておりまするが、少くとも現業関係に置かれている國鉄及び專賣局関係の労務者に、せつかく國家公務員法から切り離して、いわばかごの鳥を離して、さらに本公共企業体労働関係法の十七條において爭議権を否認するということは、結局労働者——労働者というより、むしろ人民としての基本的権利を奪うものだというふうに私は解釈しておるのでありまするか、この点についての労働大臣のお考えをお聞きしておきたいと思います。
  27. 増田甲子七

    増田國務大臣 これはちよつと速記をやめていただきたいと思います。
  28. 綱島正興

    綱島委員長 ちよつと速記をとめてください。     〔速記中止
  29. 綱島正興

    綱島委員長 それでは速記を始めてください。
  30. 中曽根康弘

    中曽根委員 労働大臣にお尋ねいたしたいと思います。ます第一にこの公共企業体という概念を御説明願いたいと思います。
  31. 増田甲子七

    増田國務大臣 公共企業体それ自身の説明は、公共企業体をつくつた運輸大臣なり、つくろうとする大蔵大臣なりの御説明の方が妥当であると私は思つておりまするが、法制長官もここにいらつしやいますから、私の御答弁の間違いは是正してもらえる、こういう前提で申し上げたいと思います。今度のマツカーサー書簡が出たときに、実は私は原文を自分でも翻訳してみたのですが、その中にパブリツク・コーポレーシヨンというものがございます。昔の公團というものは、中曽根君も御存じの通りガバメント・コーポレシヨンと書いてあります。これは初め公廳と訳しておりました。ほんとうは私はあの字に公廳と訳した方がいいと思いますが、それが公團というような、普通のガバメント・コーポレーシヨンというものとは多少縁が隔たつたような感じがする日本語になつております。これはそういう日本語にした方が民主的に感ずるから、そういうふうにしたのでありましようが、今回のパブリツク・コーポレーシヨンというものはどのくらいのものかというと、われわれ当時野党でありまして、むしろ中曽根さんの方が相当当局と折衝されたでありましようが、まずわれわれの研究した範囲においては、ガバメントよりはパブリツクという方が少しニユアンス官廳的性質が薄いのじやないか、まあガバメント・コーポレーシヨンというのは、ほんとう公廳と訳す方がいいのです。何しろガバメント・コーポレーシヨンで、パブリツク・コーポレーシヨンでないのですから……。ところがこれを公共企業体というふうに訳しましたが、これは日本語でも多少そういうような隔たりがあると私は感じております。というのは、公團は今度は國家公務員になつておりますが、公共企業体從業員公務員ではない。そこに多少の差異があるということは御了解願えると思つております。まず公法上の法人であるというふうに言われておりますが、その言葉——一体これは問いに対して問いをもつてしたような返答になつてしまうかもしれませんが、中曽根君は行政法も専攻されましたし、よくおわかりと思いますけれども、公法上の法人である。こういう御回答を申し上げる以外にはちよつとできない次第であります。
  32. 中曽根康弘

    中曽根委員 私はどうも不敏でありまして、公共企業体というような言葉が今まで日本の字引にありませんので、公共企業体労働関係法という法律責任者である労働大臣にお聞きしたのでありますが、ほかのものと比べてガバメントが、パブリツクになるというニユアンスの差はあるが、実質的にどういうものを公共企業体というか。これはなぜ私が質問申し上げるかというと、それに從事している者の身分がそれによつて違つてくるという國民権利義務に相当大きな変化を與えるという影響かあるからであります。実質的に公共企業体というものはどういうふうに定義したらよいのかということをお教え願いたいと思います。
  33. 増田甲子七

    増田國務大臣 大分專門にわたつた御質問でございまして、私も行政法の学者でもありませんし、適切な御答弁かできかねるのでありますが、実質的に申して、その身分を法上どういうふうに扱つたらよいかという見地からの御質問、これはごもつともと思つております。公共企業体性質がわからないと、公共企業体從業員の法上の取扱いが明確を欠くからというわけで、御心配なさることはごもつともと思つておりますが、公共企業体というものは、今私が申し上げましたような公法上の法人として企業をするところの主体である。これは自己流の定義ではございましようが、公法上の法人であつて、エンタープライズする企業主体であるというように考えております。從つてプライベート・エンタープライズではないということになりますと、そこに從業している者はやはり國家公務員ではないし、地方公務員でもないけれども、しかし公法的の性質を持つた從業員である、こういう観点に立つものと私は思つております。
  34. 中曽根康弘

    中曽根委員 ややわかつ参りましたが、しからば十何條でございましたか、公共企業体に対して爭議行為を禁止している條文がございます。何ゆえ公共企業体については爭議行為を禁止するか、その関連をひとつお伺いしておきたい。
  35. 増田甲子七

    増田國務大臣 そういう御質問になりますと、大分樂になるのでございますが、今の私の答弁は、法制局長にコンフアームしたところが、大体それでよろしいということであります。そこで公法的の性質公共企業体從業員が持つておるということになりますと、その公共企業体從業員の爭議というものは、公共利益至大影響を持つことになります。從いまして理論的にも、またマツカーサー書簡から見ても、どちらから見ましても、爭議行為を許すことになりますと、公共利益至大の悪影響を來しますから、そこで制約を受ける、こういうことになると思つております。
  36. 中曽根康弘

    中曽根委員 世の中の企業を見てみますと、たとえば都営のバスであるとか、あるいは都営ふろ屋であるとか、同じような性格を持つているものか非常に多いといます。つまり公共企業体というのは、今までの御解釈を拝聽しますと、要するに公共福祉影響のある、しかも公法人である企業主体である、こういうふうに受取れるのですが、そういう公共福祉影響のあるという実質的の点から考えますと、地方公共團体のやつている、たとえば運輸事業だとか、あるいは保健衞生事業、これらはすべて同じような性格を持つておるものだろうと思います。しかるにそれらものに対して爭議楯を禁止していて、同じような性格を持つている國有鉄あるいは專賣公社だけに爭議権を特にこの法文をもつて禁止するということは、私はちよつと片手落ちの感がするのですが、何ゆえそういうような措置をなさるのか伺いたい。
  37. 増田甲子七

    増田國務大臣 私にまたその点勉強が不足かもしれませんが、地方公共團体從業員というものは、やはり地方公務員でございますから、政令に支配されている。そこで地方團体企業的のことをする場合もありますし、普通の事務的の行政面だけをする場合もある。その行政面に從事する事務員と、企業方面に從事する、たとえば富山縣電氣局、こういつた電氣局員というような者もやはり地方公務員になるのじやないか。そこでポツダム政令に今のところ支配されている。こういうふうに私は解釈しておりますが、いかがでございましようか。
  38. 中曽根康弘

    中曽根委員 私の御質問申し上げたのは、仕事の実質から見て同じようなものを、片方は國の関係を有するから、片方地方であるからといつて、制限する、しないといのは不思議じやないか、こいう御質問なのであります。もしそういうことを申しますと、片方國家的に影響が大きいものだから、これは法律をもつてやるのだという御返答があるかもしれませんが、しからば同じような考えで、縣に影響のある、あるいは市に影響のある公共企業体的企業体に対しては、條例をもつてこれを同じように制限することができるかどうか。その点を私はお伺いいたしたい。
  39. 増田甲子七

    増田國務大臣 中曽根さんの御質問のうち、その企業体を経済的に監察して、その企業を経営するものが私法人である、あるいは私人である、また同様の種類の同様の性質企業を、公共團体——これは市町村にいたしましても、あるいはその他の公法人でも、あるいは國が経営した場合でも、これを禁止することはおかしくはないかというような御質問でしたら、私は一理あると思つておりますが、先ほどの設例としてあなたが提示されましたうち、都の質屋だとか、都の浴場だとかいうものは、これは地方公務員になりますので、マツカーサー・レターに基いて、七月三十日に発せられましたポツダム政令が支配いたしてておりますからして、都の浴場、都の質屋営業等に從事している地方公務員は、ストライキはなし得ない。もつとも地方公務員に関するこういう法典的なものはできておりませんが、あの政令に支配されている。こういいわけでございます。それから一方に國家あるいは公法人、あるいは公共團体で経営すると同様の性質企業——まあ質屋ふろ屋は、これはほんとうは例としては不可思議な例として提示されてよろしいと私は思つておりますが、それか私人か、あるいは私法への私企業として営む場合は、爭議権は完全に許されている、これはおかしくないかという御質問は、私はごもつともだと思つております。そこで業態からは、結局一方を禁止し、一方を禁止すべからずという結論は出て來ないのでありまして、やはり企業團体國家であり、あるいは公法人であり、あるいは公共團体である場合は、その公共團体、あるいは公法人、あるは國家事務に從事しているところ公務員は、勤労の対象か公共である。資本化とか、あるいは企業主とかいう私人ではございませんので、結局公共全体の福祉を侵害することになるから、これに憲法十八條に許された各種の團体行動も制約されなければならぬという、あのマツカーサー書簡がやはり意義を持つて來る。こういうふうに御了解願いたいと存じます。
  40. 中曽根康弘

    中曽根委員 國家的な公法人については、この法律でそういうような制限か明文をもつてみなされるのですが、地方的な同じような、たとえば縣営のバスであるとか、市営のバスであるとか、こういう運輸事業については、この法律は適用されないようであります。しかしポツダム政令のあの二百一号による制限はあるようでありますが、それと同じ類推解釈で、地方條例をもつて、これと同じようなものを、地方公共團体の同じような仕事の從業員に対して適用せしむることは、これは可能であるか、不可能であるか、やつていいのか、やつて悪いのか、この点を大臣にお伺いしたい。
  41. 増田甲子七

    増田國務大臣 國家鉄道営業をしているとか、あるいは專賣事業をしているとか、こういうようなものが今度公共企業体になるのでありまして、つまり官廳的色彩はよほど薄くなりますが、今のところ公共團体が経営している企業は、官廳と申しますか、あるいは公共的の色彩かまた全然薄くなつておりません。その点は中曽根さんは議論の前提として一應お考え願いたいのであります。そこで今度は地方公務員に対しては、つまり公共團体が経営している公益質屋のごときものに対しましては、地方公務員法というようなものが、必ずや來議会には提出されるのでありましようから、その際に、國家にいてさえタバコやあるいは鉄道は除外した。そこで都やあるいは縣、市の経営しているところの浴場だとか、あるいは公益質屋等は、地方的の公共企業体作といつたような観念に入るべきものではないかというような一つの論理が出て來る。私はこう思つております。そのときにその論理に從つて解決されればよろしいのではないか、こう思つております。
  42. 中曽根康弘

    中曽根委員 今のお答えは、つまり地方的なそういう質屋であるとか、あるいはふろ屋であるとか、あるいは運輸事業というようなものは、その單位の公共團体條例をもつて、これと同じような立法をやつてよろしいと解釈していいのですか。
  43. 増田甲子七

    増田國務大臣 條例というものを地方では設定することを許されておりますが、地方公共團体というものが、かりに地方條例でできるか、法律でできるかわかりませんが、法の精神を害さない限りにおいては私は可能ではないか、ことに授権があつならばなお可能ではないかと思いますが、地方條例というものは地方自治法その他によつて設定することを許されてはおりますけれども、今のような企業体の設定というようなことまで、地方自治法が授権しておるかどうかということについては、私まだ今のところ研究ができていないので、ここでは即答いたしかねます。研究して御回答申し上げますが、今のところでは私はそこまで地方條例でできるように、地方自治法という法律が包括的な運用をしていないのではないか、こう思つております。
  44. 中曽根康弘

    中曽根委員 その点は一應打切りまして、その次にお伺いしたいのですが、この公共企業体をつくることによつて運輸省であるとか、あるいは大蔵省の機能は大分さかれます。從つて大分仕事の手明きができて來ると思うのですが、それに伴つて運輸省の機構改革、あるいは大蔵省の機構改革、こういうことが現実的に行われるものであるかどうか、この点をお伺いいたします。
  45. 増田甲子七

    増田國務大臣 大分ほかの大臣のことまで御質問でございますか、それでは私國務大臣としてお答え申し上げます。この公共企業体が設定されますと、必ず行政機構の改革はこれに伴つてあるべきはずのものであると思つております。
  46. 中曽根康弘

    中曽根委員 その際、運輸省の大部分の仕事は鉄道であつたのですが、そのほかに船舶の関係、海運もありますけれども、運輸省を画期的に統合整理して、もつとほかの小さいものにつくり上げて、ほかのものへくつつけて、そういうような監督行政だけやるのでありますから、そういうものをまとめて一つの省をつくるというような構想はございませんか。
  47. 増田甲子七

    増田國務大臣 元來公共企業体ができなくとも、中曽根さんのおつしやるような説は実はあつたわけでありまして、運輸省が一面において私鉄その他の電気軌道だと、あるいは自動車会社だとか、そういうものと競合しながら、一面においてまた監督行政をするというようなことは、よくないからして、よろしくこういうような公共企業は他の主体をつくつて、それに運営せしめて、運輸省自身は監督省の立場を持つべきである。これはマツカーサー・レターか出る前から、私が昔運輸省にいた当時から——あるいはもつと以前からそういうような議論はございました。私は今度公共企業体かできますれば、あなたのおつしやる本質論か、結局行政機構に具体化されるのに非常によろしいことになると考えております。
  48. 中曽根康弘

    中曽根委員 先ほど一つお尋ね漏れがございますが、その公共企業体というような考え方からして、公團というようなもの、たとえば食糧公團というようなものを公共企業体の中に含ましめるのが私は適当と思うのですが、何ゆえこれに包含せしめなかつたか、またこれを修正して包含せしむる御意思があるか、その点をお伺いいたします。
  49. 増田甲子七

    増田國務大臣 これは性質論といたしてみまして、今の食糧配給公團だとか、あるいは酒類配給公團だとか、そういうようなものは國家の行つておる統制経済の実施部面に当る役人である。こういうような考え方で、私は行政法上はそれでよろしいと思うのであります。從つてこれはガバーメント・コーポレーシヨンである。だからこれは國家公務員であり、從つてパブリツクとは違つて性質かよほど官職的色彩が強いというように考えてよろしいのではないかと思つております。しかしこれは行政法上の理論でありまして、今実際酒類配給公團だとか、あるいは食糧配給公團に從事しておる從業員は、その実際を見ますと、沿革から見ましても、昔の商業をなすつていらしつた方がこういう配給事務に從事しておるわけでありまして、これにただちに一般職として公務員法を全面的に適用するということは酷ではないかという議論が相当ございまするが、これはまた一面理由があると私は思つております。ただしかし行政法上の理論といたしましては、公團的なものをすぐ公共企業体にすべきものであるという点については、理論といたしましては、何も統制経済による営業に從事しておるわけではございませんで、國家の行う統制経済を実施する部面に從事しておる公務員である。こういう解釈で私はよろしいと思つております。
  50. 中曽根康弘

    中曽根委員 公團がやつておる仕事を実質的に調べてみますと昔米屋をやつておつたものがそのままやつておるのでありまして、何も公権力をもつて割当をするとか何とかいうことはやつておらないのです。たとえば大体登録店は、普通の割当規則でありますとか、指定生産資材割当規則、指定配給物資配給手続規程というもので、登録店の仕事を実はやつておるにほかならないと思うのであります。從つて何もそういう官廳的なにおいは実際はないのでありまして、実際の実務の上から見て、私は当然、これは公共企業体に入るべきものであると思うが、もう一回この点を伺いたい。
  51. 増田甲子七

    ○増田国務大臣 性質論から申しますと、公共企業体というものは何も事業主体ではございません。自己の企業としてやつておるというふうには私は考えません。やはりそれは一つの独立会計ではございますけれども、しかし商賣でやつておるというようには考えないわけでございまして、統制経済の実施部面を担当しておる、もつとも衣料その他の関係は普通の店でやつているではないかとおつしやいますけれども、やはりその上の方は商工省が直接実施に当つておる。また中間のところは地方商工局が実施に当つておる。これをごらんくださいましても、あとのことはあまり末端までお役人を置くわけに行かないから——理論的に私は今申しておるわけでありますから、その点を前提としてお考え願いたいのでありますが、とにかく行政法上の理論としては、私は官職的な業務であると、こう思つております。ただ実際を見ますと、いかにも前は米屋さんである。官職服務紀律などということを言つてもわけがわからないし、その他公務員法を全面的に適用することは非常にむりであるという感じはいたしております。そこで今度一般職になりましても、さらに人事院規則等が設けられましても、相当の條文をもつて適用外に置く、こういうことになるのではないかと思つております。
  52. 中曽根康弘

    中曽根委員 よくわかりました。次にお尋ねしたいのですが、総括的に見て公共企業体の大きな問題は、國の有する公共企業体に対する監督権、公共企業体自体か持つている経営権それから從業員の持つている労働権、その三つの関係公共企業体というものの一番重大な問題であろうと思う。あとでこまかい質問を申し上げたいと思いますが、この関係をいかに調節をとつてこの法案をつくつたか、また運用についてどういうふうにやりたいか、一般的な御見解をまず承りたい。
  53. 増田甲子七

    増田國務大臣 大分中曽根君御研究なすつたらしくて、むずかしい御質問で痛み入る次第でございますが、私は監督というものはまず運輸省の関係から見ますと——專賣局はしばらくおくといたしまして、運輸省はほかの鉄道、軌道を監督もいたしておりますから、監督行政には由來慣れておるという立場で、りつぱな監督がでるということを予想いたしております。具体的の問題としてお答え申し上げるわけであります。  そこで今度は経営の問題でございまするが、経営に、元來國有國営というようなことはわれわれは実は反対しておる次第でございますが、しかし日本の鉄道というものは沿革もございまするし、なかなか業績も上つております。あれがもう少し合理的な経営をするということになればよろしい。どうかできるだけ能率を上げた合理的の経営をしてほしい、そういう方向で、あなたのおつしやる三権の公明なる運営としての監督権を運輸省は発動して、そうして経営をりつぱにさすべきものであると思つております。  また労働権のことについて申し上げまするば、労働につきましては今回新たにこの労働関係法ができたわけでございます。相当の制約は受けておりますけれども元來公共企業体從業員のつくつた労働組合なり、あるいはその労働組合の活動する国体交渉その他の團体行動というものは、本質的には一般の労働組合と同じであるべきだという意味合いでわれわれは進んでおります。どこまでもこれら從業員の労働條件の維持改善については、熱意を傾倒してわれわれも心配させていただかなくてはならぬと思つておる次第でございます。
  54. 中曽根康弘

    中曽根委員 私の御質問の趣旨がはつきりわからなかつたようでございますが、それでは具体的に御質問申し上げたいと思います。公共企業体労働関係法の第八條の第一項に「公共企業体の管理及び運営に関する事項は、團体交渉の対象とすることができきない。」こういう條文がございます。ところが第二項に次のことは「労働協約を締結することを妨げない。」とあつて、第五号に「懲戒規則並びに昇職、降職、轉職、免職、休停職及び先任権の基準に関する規則」とあります。これは労働協約の対象になりますし、これらの内容を見てみると、これは一つの管理運営に包含されていることではないか。その点に関する大臣の御見解をまず承りたいと思います。
  55. 増田甲子七

    増田國務大臣 ごもつともな御質問てございますけれども、管理運営と申しますと、そのときどきの段階においていかなる運営をし、いかたる管理をするかということにまで、一々労働協約で團体協約をするということになるのであります。ここでは就業規則なり、あるいは懲戒規則その他につきましても、一般的の一つの方針を、労働協約で協約の対象として締結してよろしいというふうに考えておる次第でございます。管理運営についてというと、一々のマネージメントになりますから、そういうようなことにまで一々労働協約を締結しなくてはならぬということになりますと、これは公共企業体の、公共利益至大なる影響あるにかんがみというあのお手紙の趣旨にもかんがみまして、おもしろくないというわけで除いてある次第であります。
  56. 中曽根康弘

    中曽根委員 そうしますと、たとえば第五号で、國鉄従業員を一千名首にしようという管理運営上の事項が出て來るだろうと思います。團体協約ではそこまでは具体的に書いていない。これははたしてどちらに入るのか。管理運営に入つてつて、爭議の対象にならぬものであるかどうか、あるいは入るんだ、こういうようなことは起ると思うのですが、具体的な首にするという問題を例にして、御見解を伺いたいと思います。
  57. 増田甲子七

    増田國務大臣 弘は、これはどこまてもスタンダードであり、基準でありまして、今回何割首を切るというようなことまでは、私は入らぬと思つております。しかしながら國鉄という公共企業体は、將來は産業合理化をして——およそ現在考えておるところでは、一割くらいの行政整理をした方がよろしいんだとか、あるいは三割ぐらいの行政整理をした方がよろしいと思うというようなふうに、そういう見地から考えますと、これはやはり基準になります。しかも実際の行政整理によほど直接の影響も持つて來ることになりますか、その問の区別ということは、きわめて微妙になつて來ますけれども、こういう方針でやるんだというようなことになりますと、基準になりますし、今日三割首を切れというようなことは、お互いに協約しなければ白を切れないということでは、私はないと思う。結局この國有鉄道は産業合理化なり、能率増進の見地から見て、およそ三割の首切りを妥当とするというような一つの方針を設定するということになれば、これはスタンダードになる。これは見方の相違で非常に微妙なものになると思つています。
  58. 中曽根康弘

    中曽根委員 そこが一番重大な場面でありまして、そこをはつきりしておかぬと、この法案というものは非常に信頼が置けない問題だろうと思うのであります。そこで大臣のお言葉を承つておりますと、具体的な首切りという問題は團体協約の対象にはならぬ。そうすると、官聴が勝手にやつていい。しかし一割なら一割、三割なら三割整理をするという方針をきめて、それを協約の内容に含めた場合には、これはできる。協約の内容としてやるべき問題だというように伺うのでありますが、どうもその辺がはつきりしない。たとえば國有鉄道法案を見てみますと、第二十九條において「職員は、左の各号の一に該当する場合を除き、その意に反して、降職され、又は免職されることがない。」云々とあつて、第四号に「業務量の減少その他経営やむを得ない事由が生じた場合」という規定がある。あるいは三十一條においては、免職、停職、減給その他のことが書いてあります。これらはこの内容から見ると、管理運営に属することである、経営権に属することであるというように解釈される。ところがこちらの方では第五号に團体協約の内容になつているというのであつて、この点政府が詳細に、きわめて明確に、この間の見解をお示しくださらぬと、私らはこの審議に対して相当決意を新たにしなくちやならぬと思います。ひとつ御合弁をお願いいたします。
  59. 増田甲子七

    増田國務大臣 中曽根さんの御質問は非常に微妙な法律問題であると私は思つておりますが、そこで私は法律問題の一應ごくアンビキユアスな議論か起きる点まで立ち入つて、実は御親切に御答弁申し上げたわけであります。それか逆襲を受けたのでありまするか、どこまでもスタンダードをきめる意味におきましては、産業合理化なり、能率増進という見地から、数割の白を切ることあるべしということには、これが基準になると思う。ところが今あなたのおつしやる通り、業務量の減少、あるいは経営上やむを得ない理由を生じた場合ということで、そういうことか書いてあつてもなくても、これは馘首はできるわけでございます。むしろ私が申したのは、労資と言つちやぐあいか悪いのでございますが、とにかく使用者側と從業員側とか、協力して、そうしてその企業体の産業合理化の実を達成しよう、こういうような心持が労働協約締結当時すでにあるならば、これも一つの基準として掲げた方がデモクラチツクでもある。また労資が協力して産業復興に役立つようになるということは、これは非常に美しいことでもありますし、そういう意味が基準にもなるのでありますから、書いてあえてさあしつかえない、こういうように思う次第であります。
  60. 中曽根康弘

    中曽根委員 これは重大な問題であります。そうなるというと、國有鉄道あるいは専買公社法案の條文二十九條その他によつて、たいていの場合は官廳が一齊首切りをやれる。つまり業務量の減少という名前でやれる、あるいは経営上やむを行ない理由が生じたのだ、こういうことでやれるのでありまして、実質において團体協約というものが無視され、蹂躙される可能性は非常に多いと思う。ここに私は労働権の侵害という問題があると思うのですが、馘首ということをそう軽々に官廳が独断でもつてやれるかどうか、相当の議論があると思う。私らにやはり國体協約ということを公共企業体の労務者に認めた以上は、それを生かさなければ、ならぬ。その見解に対して私は否定的な考えを持つておるのですが、この点について大臣はいかにお考えになつておるか。
  61. 増田甲子七

    増田國務大臣 私が先ほど御親切に申し上げたというのは、その法律の解釈の見解にまで実は立ち入つて、そういうときに否定し得るということを申し上げたわけであります。この第八條の第五号は、あなたか虚心垣懐にお読みになるとわかりますが、大体において特定の個人々々の從業員が、御承知通りに免職されたり、懲戒されたりすることがない身分保障の規定であります。特定の個人々々を指していつたもので、その特定の個人々々、昔でいつたならば官吏でありますか、官吏については服務紀律とか、公務員法というようなものがございますが、今度は労働法の中に服務紀律的のものがあるわけであります。それが團体協約の規定の対象になる、これが服務紀律的のものになるわけでありまして、御承知通りに大量の産業合理化ということは、これは協約の外に置かれるとしても、個人々々が悪いこともしないで、懲戒をされたり、免職をされたり、あるいは職階を下げられたりする、そういうようなことはない。ある基準によつてその特定の甲なら甲という人が職階が上つたリ下がつたり、あるいは停職されたり、あるいは徴戒されたりするのである。こういうことを協約に書いておくことによつて、服務紀律同様の目的を達成しよう。こういう趣旨でございます。しかしながら、私が今親切に申し上げたいうのは、一般に合理化によつて何割首を切ることあるべしというようなことを書いても、一つのサタンダードと解釈される場合はさしつかえない、こう言つただけてありまして、あなたの見地から見れば、あるいは使用者側の独断に失するとお考えになるかもしれませんが、法律の解釈といたしましては、産業合理化とか、あるいけ能率増進だとか、あるいは経営の合理化というような見地から、相当の整理をするということは協約の外に占める。つまり経営権の中にある。こういうふうに考えておるのであります。ただしかし、経営者側が労働者と協約をつくりまして、將來産業合理化をする場合には数割の何々することあるべしというとを書いてもさしつかえない。こういうふうに私は考える次第でありまして、書かなければいけないというふうには考えていないのであります。というのは、どこまでもこの五号というのは、特定の個人々々に対する、昔の言葉でいつたならば、官吏服務紀律的の身分保障的の事項を協約の対象としておるからでございます。
  62. 中曽根康弘

    中曽根委員 そうしますと、少くとも労働者身分保障関係におきましては、公共企業体從業員は、実は國家公務員とほとんどかわらないということになるのではないかと思います。しかし私は、公共企業体の新しい立法をした精神は、やはり國家公務員とは違うのだ、國家の公権力の支配を受ける程度が低いのだ、こういう趣旨でわざわざつくつたのだろうと思う。その一番重要な点は身分保障とい問題だろうと思います。そうなると、いかなる法律をつくつても、これは実際羊頭狗肉であつて意味がないと思う。私は立法の精神と大分違う考え大臣はお持ちになつておるのではないかと思うのですが、その点はいかがでございますか。
  63. 増田甲子七

    増田國務大臣 お答え申し上げます。これはやはり公法上の法人といいますが、公法人的の性質を持つた企業体である。でございますから、私企業とは相当隔たりがある、從つて企業の場合における労働協和よりも、労働協約の対象が限局されておる。こういうふうに考える次第であります。
  64. 中曽根康弘

    中曽根委員 もう一つお伺いしますが、そうしますと、團体協約を結ぶときに、たとえばこういうような條文を入れたい、組合に無断で、二十九條によつて業務量の減少その他やむを得ない事由が生じた場合、こういう理由で馘首したい、こういうことを團体協約の中に入れることは可能である。あるいは公共介業体の役員その他の方だけ、それは團体協約の範囲でないからといつて、これを断つて拒否することができるか。その点を伺います。
  65. 増田甲子七

    増田國務大臣 もちろん拒否できると思います。
  66. 中曽根康弘

    中曽根委員 そうなると私は、ますますもつてこの公共企業体從業員身分保障はできないし、こうう法律をつくつても何ら恩恵にあずからないと思うのです。この点は私は、先ほど申し上げましたように、立法の精神とは違うのではないか、こういうふうに考えます。この点はあとでまた質問したいと思つて留保しますが、今度は監督権の問題であります。この國有鉄道法案の五十四條によりますと、「運輸大臣は、公共福祉を増進するため特に必要があると認めるときは、日本國有鉄道に対し監督條必要な命令をすることができる。」こういう條文が出ています。これは相当重大な條文だろうと思うのでありますが、この「監督條必要な命令」というものは、團体協約を破壊する命令まで入るのか入らないのか。この点をまずお伺いします。
  67. 増田甲子七

    増田國務大臣 大分むずかしい御質問で、いろいろ研究されておつて、その研究には、深く敬意を表します。そこでこの五十四條の命令が團体協約まで破壊できるかどうかという点についてお答え申し上げますが、やはり五十四條によつて、監督上團体協約を含めた全体の経営について監督権は私はあると思つておりますから、この團体協約はどうか直してほしいというようなこともあり得ると思つております。非常に團体協約が経営上あるいは監督上の見地から見ておもしろくない、こういうふうに思われた場合は、命令をなし得ると思つてております。
  68. 中曽根康弘

    中曽根委員 その命令は、團体協約をやつた使用者側、つまり公共企業体の役員、これに対してなし得るのであつて、團体協約自体には直接影響を及ぼし得ないのじやないかと思いますが、その点はいかがですか。
  69. 増田甲子七

    ○増田国務大臣 もちろんそうでございまして、團体協約という一つの團体の双務契約でありますから、その双務契約の両当事者に対して、契約の一部改訂を命令するといつたような意味だと私は思つております。
  70. 中曽根康弘

    中曽根委員 それで改訂を命じたところが、組合が強硬であつて應じない。その場合には、これは役員に対して第六章の罰則の規定によつて罰を適用することができると思うのですが、その場合には團体協約自体はどういことになりますか。以前として有効で残つておると私は思いますが、いかがでありますか。
  71. 増田甲子七

    増田國務大臣 これは裁判所ではございませんから、はつきり申し上げられませんが、かりに私か裁判所と仮定して議論いたしますと、これはとにかく團体協約の対象となるべき事項というものは限局されておる。その限局されておる事項以外に團体協約を締結したといたします。その場合に監督権の発動があつて命令が下つた場合にはどうなるかといいますと、これは法上当然その範囲内においてはその労働協約は効力を発生しない。それが形式的に効力を発生しておるものがありますれば、これはいわゆる法の無効というものだろうと思います。ところが無効力有効力の爭いというものは、裁判所で爭うということになるのかどうか、その点まではまだ研究いたしておりませんがとにかく当然には労働協約は命令力があつたからといつて、すぐ無効になるというふうには解し得ないと思つております。もつともこれについては法制局長から敷衍して答弁を願いたいと思います。
  72. 佐藤達夫

    ○佐藤(達)政府委員 ただいま労働大臣が答えられましたところで盡きておると思います。なお御質問がございましたら申上げます。
  73. 中曽根康弘

    中曽根委員 一應これで私はやめます。
  74. 綱島正興

    綱島委員長 辻月君。
  75. 辻井民之助

    ○辻井委員 私は最初に一般的なことについて、これは人事委員長にお尋ねする方が本筋かと思いますが、御出席が困難だそうでありますから、労働大臣にお尋ねしたいと思います。中曽根さんから先ほどその点に触れられましたが、あの政令二百一号によつて地方教職員であるとか、あるいは地方における公共團体に属している多くの労働者、職員に至るまで、廣汎に一括して縛られてしまつているのでありますが、今度ご提案になつています公共企業体労働関係法案によりまして、そのうちの鉄道ならびに專賣局の企業体に從事している者だけが、これが通りますと政令から解かれる。ところがそのあとにまた國の使用人のうちにも相当官吏でない職員、労働者が残つているわけです。また地方にもうんと残つておる。こういう人たちに対して今後どういう扱いをされて行くのであるかという点について、まずお尋ねしたいのであります。
  76. 増田甲子七

    ○増田国務大臣 辻君 辻井さんにお答え申ヒし上げます。今度は間に合いませんでしたが、現に法案の作成は急いでおります。できるだけ早い機会において、教職員たる公務員、それから地方公務員等に対するものも引続いて提案いたしたいつもりで、せつかく準備中であります。
  77. 辻井民之助

    ○辻井委員 それは、いろいろな説が傳えられておるのでありますが、現在政府の方針が大体きまつている点を具体的にお答えを願いたいと思うのです。たとえば教員の公務員法であるとか、地方公務員法というものをお出しになるよりに承つていましたら、その後変更なつて、何か基準のものだけを地方に出されるのだということも承つておるのでありますが、具体的にどういう御方針になつているのか、承りたいと思います。
  78. 増田甲子七

    増田國務大臣 実はこれは人事委員会で準備中でございまして、私どもあまりよく拜見しておりませんが、ただこういうふうに伺つております。教職員はその任務の特殊性にかんがみまして、一般の国家公務員法を全面的に適用しがたい部分がある。それは要するに聖職といわれる教職員は、一種の職務の独立ということもなくてはいけませんし、聖職に甘んじて没頭し得るというような見地から、ピラミツド型の官職と違いまして、個々の先生が自己の思慮と分別と、判断と良識のもとに生徒を訓育しなくてはならぬ、そういう訓育をりつぱになし遂げ得るように保障した特殊公務員法ができる、こういうふうにお聞きしております。それから地方公務員法というものは、これはその性質にかんがみて、國家公務員法は全部適用しにくい点があるわけでございまして、そういうような特殊の條件を除けばあとは大体において國家公務員法を適用するとか準用するとか、これは立法技術の問題ですが、とにかく一般論といたしましては、地方公務員國家公務員と異なる特殊性だけは、せひ特殊の法律を置かなくてはならぬ。教職員についてもまたしかり、こういうふうに御了承願いたいと存じます。
  79. 辻井民之助

    ○辻井委員 そうしますと、具体的に、教職員、あるいは地方公務員に対しての法律政府でおつくりになるというふうに解釈してよろしいですか。
  80. 増田甲子七

    増田國務大臣 さようでございます。
  81. 辻井民之助

    ○辻井委員 次に、現在の政令で束縛されておりますものは、これも中曽根さんから御質問がありましたようにたとえば公團であるとかあるいは船舶運営会であるとか、地方におきましても、公益質屋とか消費組合とか、民間企業と全然かわりがない、今度の國有鉄道あるいは專賣公社に働いている人たちよりも、一層民間企業に近いようなものがうんと政令で束縛されているわけであります。この政令に対しては、御承知のように、單に官公廳関係の組合だけではなしに、全労働組合が猛烈に反対している。いまさら私は憲法違反とか何とかいう問題には触れないのでありますが、こういうふうに、すべてが一色に縛られてしまつたという点には、非常なむりがあるということは、これは何人も認めないわけに行かぬと思います。從つてわれわれとしては、今回の臨時國会公務員法を改正して、そうしてこういうむりのある政令は、この臨時國会を機会に廃止してしまうべきだ、またそのための臨時國会のようにわれわれは考えておつたのであります。ところが今の御答弁を承りますと、また容易にそういう措置がとられない。そうなりますと、依然としてこれらの公務員政令で縛つて行く御方針のようでありますがそうとつてよろしいでしようか。
  82. 増田甲子七

    増田國務大臣 先ほど私が申し上げました通りこれは政府——と申しましても、政府の一部であるところの人事委員会関係筋とで、草案を今練つてくだすつておる途中でございまして、そういう意味のことを申し上げた次第であります。間に合えばもちろん政府といたしましても、地方公務員法、教職員公務員法といつたようなものを同時に提案いたしまして、お説の通り七月三十日制定にかかるポツダム政令は廃止いたしたい、こう存しておる次第でございまするが、遺憾ながら間に合わなかつたのでございます。でありますからよろしいとは考えておりませんが、遺憾ではございますが、教職員と地方公務員につきましては、ポツダム政令が引続いて効力がある。こういうことになつておる次第でございます。
  83. 辻井民之助

    ○辻井委員 地方公務員あるいは教職員など、全体に対する立法の措置が遅れているのも、これも私はやむを得ぬ事情があることは認めます。そのために、この臨時國会政令の廃止ができないということでありまするならば、ここでもつと最小限度に——どうしても全面的に元通り自由を與えることができないという事情があるのでありましたならば、最小限度に——現在非常なむりがあるのでありまするから、こういう單純労務者であるとか、あるいは現業に從事している労働者、こういう労働者に対しては、最小限度に組合運動の制限をするというような、暫定的な立法の措置をとつて政令はやはりこの臨時國会を機会に廃止されることがほんとではないかと思いますが、どういうふうにこの点お考えになつておりますか。
  84. 増田甲子七

    増田國務大臣 お説の通りいたしたいということは、政府考えないのではないのでございます。しかしあのポツダム政令を全面的にこの機会において廃止いたしまして、暫定的に何か設けるということでこざいするが、暫定的に何か設けるにいたしましても、法律でないと民主主義的でないとわれわれは考えておる次第でございまして、結局しばらくの間あの政令が続くことは、ごがまん願いたい。こう思つておる次第であります。そこで、今御指摘の地方全共国体の從業員のうち單純労務に従事する者はどうなるか、これは氣の毒ではないかという御質問、これはごもつともでございます。そこで国家公務員法におきましても、單純なる労務に雇用せられたる者は、一般職に今度なつてしまいましたが、事情がやはり気の毒でございますから、あとで人事院規則を設けまして、法の適用を相当除くということは、もとより考慮いたしておる次第であります。地方公共團体で使われておるところの公務員につきましても、單純なる労務に從事するというような者は、やはり同様な扱いを受けるのではないかと私は思つております。ただ問題は、先ほど中曽根君の指摘されました地方公共團体で、國の今度公社になりました鉄道というようなものを経営しているものもないではございません。ことに電車鉄道などを経営しておりますから、そういようなものは、同様のものに同一に取扱という一つの法則によりまして、やはり地方公共企業体といつたようなものが考慮さるべきではないか。これは今のところ私の私見でございますか、そうあるべきのであるというふに、私に考えております。
  85. 辻井民之助

    ○辻井委員 それから少し具体的な点に入つて行きたいと思いますが、中曽根さんに対するさつきの労働大臣の御答弁では、公共企業体関係法案によりますと、結局團体協約を結んでも、政府がこれを解除するように命令ができる。それからまた賃金なんかの問題も、國で決定するというようなことで個々に内容を検討しましても、幾らでもそういう点が出て來ますか、まつたく一般の公務員と何らかわりかないというふうに考えられるのであります。それから今の單純労務や何かのものは、一應公務員法で縛つて、そうして特別な措置をとるというようなお考えがあつて——まつたく憲法では團結権、罷業権を基本人権として認めている、從つてこれをいわゆる公共福祉のために制限しなければならぬとしても、憲法で認めている以上は、軽々しくそれを制限すべきではもちろんないと思います。そういう見地に立ちまするならば、これは公共福祉のためとか、あるいは全体のためとかいうようななわで、何でもかんでも縛つて行くというようなことは、明らかに憲法の精神に反している行き方ではないか。そういうふうに公務員法の改正にしても、公共企業体関係の法案を見ても見えるのですが、私が考えるような方針から行けば、とうしてもやむを得ない——國家権力の一部として職務を執行して行くために、争議権、罷業権を與えることかできないというような、やむを得ない最小限度の、そういう地位にいる人だけには、爭議権、罷業権を取上げることも、これはやむを得ないかもしれませんけれども、それと同様に、ほとんど一般の企業に從事しておる労働者と同じ者に至るまでを、同一扱いをする、あとで多少のそれに対する措置を講ずるというような行き方は、根本的に私は憲法に反したものではないかというように考えますが、こういう原則的なお考えについての、労働大臣の御意見を承りたいと思います。
  86. 増田甲子七

    増田國務大臣 辻井さんの御意見一應ごもつともでございます。しかしやはり今回つくられまする公共企業体公共福祉至大なる影響がある。そこでマツカーサー・レターにも書かれておりまする通り、かかるパブリツクコーポレーシヨンというものは、その業務の運営か、公共利益に悪影響を與えないように、運営されるよう考慮されねばならない。こういう條項にのつとつてこの八條なり、その他團体交渉の制約なんかが置かれた。また爭議権の制約というものが置かれた次第でございます。
  87. 辻井民之助

    ○辻井委員 これはもう何でもかんでもこの項だけでこじつけて、公共利益のため、というようにせられているとしか考えられないのでありますが、もし公共利益のためとかいうことになりまするならば、電産か短時間の停電ストをやる、これも公共利益のためにどれだけ大きな支障を與えているかわからない。こういうふうにだんだん押し進めて行きますると、現在ほとんど無用の生産、無用の労働をやつているものは何もないので、みんなか公共のために働いているのでありますから、結局こういう法律ができれば、もうだんだんこれが拡大されて行く。いわゆる資本攻勢が盛んに行われて行く。何でもかんでもがこういう観念によつて、ようやく幾らか自由な労働法規ができたものが、今後だんだん改悪の方向に向う。さらにまた資本家側の態度もこれにならうて、そういう方向に進んで行くというふうにわれわれは考えるのであります。  それからもい一つ具体的に言えば、この鉄道あるいは專賣事業公共企業体として解除されるに至つたのはこれに先ほど労働大臣からお話があつたように、元來鉄道省は企業もやれば、監督行政もやる、それではまずいというような意見が從來からあつたにしても、少くとも今度これが改組されるに至つたのは、結局、労働問題から改組されるに至つたことは明らかであります。要するになるべくこの企業に從事しておる労働者の、労働者としての基本的な人権を認めるためには、これは國の企業から引離さなければならぬという立場から引離された。しかるにその結果といえば、やはり公共利益のためにという理由で、一般の公務員とほとんどかわらぬ扱いを受けてるということになるのであつて、これはまつたくこの企業を切離す基本的な精神にも反しておるのではないか。こうして切離した以上は、独立会計を持たして、そうしてある範囲内において能率が上れば給與もよくする、待遇もよくする。そのかわりに成績が上らなければ、採算が合わない場合は、一般よりも賃金水準が下つてもやむを得ないというような、独立性を持たすことが当然である。それに賃金の点から、あるいは産業合理化のために、大量馘首をすることまでも相かわらず國が支配をするというようなことでは、独立の根本的な精神に全然反しておるのでないかと思いますが、この点どうお考えになりますか。
  88. 増田甲子七

    増田國務大臣 お設はごもつともの点が多々ございますけれども、しかしまたこの法案が提案されるに至つたゆえんのものは、やはり実情に即して提案されておるのであります。実情関係はあとで申し上げますが、一應あなたは、あらゆる産業というものは、いやしくも國家公共利益のない産業はないのである、そこで公共利益に藉口して、團体交渉なり、あるいは團体行動なりを制約するということになれば、一般の公益的産業についても、いろいろな処置をとるというような考え方になるのではないか、もつともそれはよろしくないという見地から御質問されたのてございますが、そういう御質問に対して私はお答え申し上げます。  これはやはりマツカーサー・レターにのつとつて出された法案でありまして、あのレターか出たというのも、公共企業に從事しておる從業員諸君の、従来の労働運動その他の関係にかかんがみて入れたというふうに私は拜承いたしておりますが、とにかく法律論的に見ますと、あのレターの中にこういうことが書いてあります。とにかく公務員の勤労の対象は普通の資本家という関係ではない、労資対等の権利に立つという、そういう関係ではないのである。結局國民全体に奉仕するものである。だから労資対等の関係ではない。從來の労資対等の関係は、この公務員についてに完全に是されなくてはならない。こういうふうに書いてある次第であります。そこで國家公務員法と国家との関係はわかつたけれども、公共企業体公務員的な從業員とはやや性質が違うのではないかというような御質問がさらに起きると思うのでありますが、この公共企業体につきましても、公共企業体從業員の勤労の対象というものは、やはり國家全体である、あるいは公共國体全体である。結局私企業の経営者ではない次第でございまして、法的に見まして直接に公共利益影響——よい影響も悪い影響も、與える、こういうことになるからして、その業務の運営については、公共利益が悪影響を受けないように方法が講ぜられなくてはならない、こういう御所見は私はごもつともである、こう思うのであります。結局マツカーサー・レターというものは現段階の必要性から生まれたものだとは思いますが、それに基いて法律論の状態からいたしますと、公共事業全体についてそうやるべきではないか。辻井さんはやるべきではないという議論から出ておりますが、まあやむを得ざる全部の公共事業にやるべきではないかという議論に一應はなるかと思いますけれども、やはりそこに法的に非常に性質が違う。労資関係に立つものと、権力服從関係と申しますか、あるいはそれに類似した関係に立つものとは性質が違つて來る。こういうふうにどうかお考えを願いたいと存ずる次第であります。從つて一般の公益事業について、しからばこれと同等の措置に出るかどうかということについては、われわれはまだ何にも考えていないのでございまして、將來の客観情勢いかんで、政府としても、あるいは公党であるところの各政党の諸君にも、お願いしなければならないと思いますが、現在のところ私どもは考えておりません。
  89. 辻井民之助

    ○辻井委員 もう二点、お尋ねしたいと思います。マツカーサー書簡によつて鉄道、專賣事業を切り離すということは、労働者としての基本的人権を最大限度にできる限り認めるべきであるという見地からなされておる。必ずしもこれに罷業権を與えてならぬというようなことは指示されておらない。それでなるべく公務員に一般の労働者に近い自由を與えるということになりまするならば、爭議権を認めることが当てあつて爭議権を持つておるから公益に反する、国民全体の福祉に反するということは絶対に考えられないことであります。爭議権を與えましてもさらに愼重を期するために、労働関係調整法によつて、公益事業に対しては三十日間の爭議に対する余裕期間が置かれてありまするから、同様な制限さえしまするならば、いわゆる抜打ち爭議、無分別なストをやるということはできなくなるわけであります。こうして三十日、あるいは期間がどれだけでありましても、一定の期間を置くことになりまするならば、もし爭議をやろうとしておる労働者側の行き方が不当でありまするならば、輿論が反省を促す。現に組合は反省期に入つておることは御承知通りであります。さらにまた経営者側が國でありましても、必ずしもいつも正しいとは限つておらないので、ずいぶんむりのあることもある。ことに今の給與ベースの問題なんか、組合か要求を出してから六箇月にもなつておる。これでは何か労働者側に最後の武器がなければ、いつ解決するかわからない。そこで一月もぼんやりしておつて、ストライキが起きるということになれば、やむを得ず使用者側は大いにこれの解決に努力しなければならぬというふうになりまして、いわば使用側に対してその責任と義務をも迫るための武器であるということもできるのであります。こういう見地から、公共事業として独立さす以上は、当然罷業権を與えるべきであると思いますが、こういう点に対しても一應承りたいと思います。
  90. 増田甲子七

    増田國務大臣 爭議権を與うべきかどうかという御質問はどうか先刻安平さんにお答えした点で御了承願いたいと存じます。それから一般論といたしましての御議論としましては、私はあなたのお説に賛成でございます。とにかく労働という商品をできるだけ高價に買わせるという意味におきましては、労働者が團結の威力をもつて資本家に迫るということは当然、與えられた権利である。またそういうことをしなかつたならば、賃金労働者生活は安定し向上しないというふうに考えております。
  91. 辻井民之助

    ○辻井委員 もう一つお尋ねしたい点は、公共企業体労働関係法案は、要するに一般の公務員よりも、少しでも労働者としての労働運動に対する自由を認めようという根本精神から、立案されておるものと考えますが、内容は別に検討するといたしまして、そういうふうに考えております。この精神から行けば、この両企業体從業員は、一般の公務員よりも労働運動に対しての自由が拡大されると見てさしつかえないと思うのでありますが、そういうことになりますと、公團は別といたしましても、そのほか公益質屋であるとか、あるいは人葬場であるとか、土木であるとか、あるいは下水の処理であるとか、この二つの企業より、一層民間事業に近いような、独立の、何ら行政に関係のないような仕事に從事しておる者が、中央にも地方にもうんとあるわけであります。これを公務員法で縛つて行くことはもちろん不当である。そこでそれにならえば、町村においても消費組合に從事している者は特別の公共企業体とするとか、または條例をつくつて公務員から解除するとかする。一々そういうことになるとすれば、たいへんなことになるのであつて、これはとてもできそうもないと思うのであります。それよりも私が初めに申し上げたように、國家権力の一部として行政、司法の職務に從事している者、あるは地方自治体の行政の衝に当るやむを得ぬ地位にいる者と、そうでない者とを切り離して、公営企業とか單純労務に從事している者は除外して労働三法を適用するか、やむを得なければ、それに共通した何か適当な立法を行うというようにするのがほんとうではないか。アメリカなどにおきまして、やはり國家企業の間において爭議権を認められている事実もあるのでありまして、國民のための奉仕者であるからというので、國あるいは自治体の使用人が政府と團体交渉ができない、協約が結べないという狭い解釈をしなければならぬとは、私は必ずしも考えないのであります。その例はアメリカにさえあるのであります。そういうとは私が初めに申し上げましたが、純然たる官公吏とその他の者とは、全然、区別をする建前に立たなければ、今申し上げた地方のごみを焼いている者や、消費組合で働いている者までも、その権利を縛るという非常に不合理な結果を來すと思うのでありますが、この点どうお考えになるか。一々こういうものに独立企業体を設けて行くというようなことをすることは、とてもできないと思いますが、しからばそれを公務員法で縛つて行くということは非常に不合理なことになると思います。その点どうお考えになりますか。
  92. 増田甲子七

    増田國務大臣 国家とその国家に使用される公務員との間で、團体協約をつくつてもさしつかえないではないかという御意見は、この段階においては政府といたしましてはできかねると思つております。外國におきましては、御承知通り政府の使用人に爭議権のある國もありまするし、ない國もございまして、さまざまでございまするが。われわれの置かれた立場というものは、公務員は團体協約はできないという立場で臨んでおることのやむを得ないことは御了承くださつていると思つております。それから一般の地方公共團体の單純労務に從事するような公務員を、地方公務員法で縛ることはどうかと思う、さらばといつて、それぞれの企業について地方公共企業体をつくれば、何十、何百とできて來はせぬかという御質問はごもつともと思つております。しかしながら、これは私がかりに設例して申し上げただけでありまして、たとえて言つたならば、富山縣の電氣事業というものがもし地方公共企業体ということになるならば、一應公共企業体と平仄が合うのではないかと申し上げただけでありまして、たくさん公共企業体が水道にでき、ガスにでき、あるいは質屋にできたにいたしましても、今でも特別会計でやつておりますが、これは特別会計みたいなものである。しかも公共企業体ができれば、辻井さんの御心配は一應解消されるわけであります。地方公務員法を一般の單純なる労務に雇用される者に適用するということではむりなことになりますが、もし煩をいとわずに、地方公共企業体というものができたとしますと、これは労働法関係が一般の地方公務員法とは違つて來ますから、すなわち使用者たる公共團体、被使用者たる地方公務員という両者の関係ではやれなくなる、多少性質がかわるという意味で、あなたのおつしやるような目的は達する方向に近づいて來ると思つております。地方公共企業体というものをたくさんつくることは、非常に煩にたえない。そこで特別の労働法規をつくつたらどうかというお話でございますが、そこは国家の單純たる労務に從事する者についても同様でございまして、人事院規則等で、單純なる労務に雇用された者については、一應國家公務員法の適用があるけれど、またさらに除外せられまして、具体的妥当性を得ることに努めつつある次第でございます。
  93. 辻井民之助

    ○辻井委員 私はこれで一應打切りまして、逐條に対して、また人事委員長に対しての質問は保留したいと思います。
  94. 山花秀雄

    山花委員 きようはこの程度で質疑をやめて、散会していただきたいと思います。
  95. 綱島正興

    綱島委員長 ただいま山花さんからのお申出がありますし、本会議から出席するようにということも來ておりますから、本日はこれにて散会することにしまして、次会は明二十六日午前正十一時より開会いたします。  本日はこれにて散会いたします。     午後三時三十三分散会