○中原健次君 私は、ただいま上程に相なりました
平和会議促進懇請に関する
決議案に対しまして、
労働者農民党を代表して
賛成の意を
表明いたすものであります。
ここに私は、一應
思いを過去に及ぼすものでありまするが、こののろうべき
戰爭の惨禍をもたらしましたその原因は、
昭和二年のころに、これをまず求めなければならぬのであります。
昭和二年当時、わが
日本の状態は、金融資本がその独裁への過程を急速に進める様相を呈して参りまして、金融資本の独裁体制を確立するためのまず最初の糸口が、このころに始ま
つたのであります。その金融寡頭支配の確立は、同時に海外に対する侵略への体制をまたとり始めたのでございまして、かかる体制を進めて参りまするために、國内的には、あらゆる
進歩的な
民主主義的な動きに対しまして、時の支配階級は決定的な迫害を加えることをも
つて、その体制強化への一つの方法といたしたのであります。すなわち、
昭和二年以來相次いで起りました現象は、まず学園に対する不当なる干渉、教育に対するさまざまなる迫害、あるいは
労働運動に対し、農民運動に対し、あるいは
民主主義自由
政治運動に対して、すなわち無産階級の解放運動の万般に対して、ありとあらゆる迫害の手を推し伸べて参りました。さらにそのことは、
言論、結社、出版、集会の自由を決定的に抑圧する方式をと
つて参つたのであります。
かくの如き体制の中に、國家
主義的な勢力が、そうしてまた國家
主義的な動きが、だんだん活発にな
つて参りました。
これらを通じて次に現われて参りました、各種の惨をきわめた全
國民大衆に対する迫害は、もはやここに私が数え立てて申し述ぶることすら、みずから耐えがたく感ずる次第なのであります。このような一つのフアシズム的な反動体制の強化を通じて、いよいよ海外に対する侵略の様相を明確に強固に固めるに至
つたのでございまして、遂にこのようなことを通じまして、右翼的反動勢力の活発化は、同時に國粋的、
軍國主義的、軍事的行動の高揚とな
つて現われ、今回の、決定的に批判を要する、あののろうべきさきの
戰爭とな
つて参つたのでありまするが、まずわれわれは、この過去の批判を通じて、
平和会議の
促進懇請へのわれわれの心構えをきめなければならぬと考えるのであります。
ここに、わが
日本は、
敗戰後、いわゆる平和國家の建設に向い、
戰爭放棄の体制を整えることを、すでに内外に宣言をいたしました。その線に向
つて、ひた進みに進みつつある現在であることは、私もまた、これを否定するものではございません。しかしながら、そのような
敗戰後の平和希求の諸体制をしり目にかけて、今や官界、財界、政界、これらの部面においては、見苦しくも相次ぐ醜状を暴露いたしまして、
國際信用を傷つけるのおそれなしとせざる状態を、遺憾ながら露呈いたしたのであります。(
拍手)われわれは、このような國内の諸
情勢をも
つてして、はたしてよくこの
平和会議促進懇請のわれわれの要請を達成するために、万滞りなきを期することができるであろうか。ここに大なる
反省を、われわれはともにしなければならないと考えるものであります。(
拍手)
われわれは、このような國内の諸
情勢と同時に、もう一つの見のがすことのできがたき
傾向を指摘しなければならないことを悲しむものであります。それは、さきにも指摘いたしましたように、あののろうべき大東亜帝國
主義侵略
戰爭のその準備時代におけるわが
日本の國内の様相、
民主主義的な諸勢力の動き、あるいは出版、集会、結社等々の自由を剥奪して、その間に國粹的な、あるいは國家
主義的な、右翼的な反動勢力の台頭を生みましたその様相に似通
つた動きが、現実に皆無と断言することができるであろうか、どうであろうか。(
拍手)
われわれは、各種の
民主主義運動の中に、そうでないことを遺憾ながら指摘しなければならないような、不当な官憲の弾圧迫害、そうしてまた、全
國民大衆の
生活権防衛に対する各種の動きに対しまして、許すべからざる支配的迫害をも
つて臨み、はなはだしきは集会を蹂躙し、あるいは
言論を拘束し、あらゆる場面に
國民の自由を拘束づけようとする
傾向が、最近顕著に現われつつあることを、見のがすことができないのであります。(
拍手)ことに、現吉田
内閣が第三
國会に
提案いたしておりまする法律案のそれぞれの面に、はなはだ遺憾なる点の散見されることを、われわれは見のがすわけに参らぬのであります。(
拍手)このような動きをも
つてして、はたして、わが
日本の國内の
民主主義体制が確立され得ると断言し得るかどうか、私はこの点に対して、お互いが眞実に國を愛し、
民族を憂うるの立場から、顧みなければならないものと考えるものであります。(
拍手)
しこうして、われわれは、
ポツダム宣言に指摘されておりますように、
日本國民の間における
民主主義的
傾向の
復活強化に対する一切の障害を除去し、
言論、宗教及び
思想の自由並びに
基本的人権の確立に向
つて万全の
努力を傾倒し、も
つて平和会議促進の
懇請の願いを一日も早くわれわれは達成し盡さなければならないと考えるのであります。
從つて、われわれは、その
平和会議の
促進を可能ならしむるための
國際的な信用を、これらの諸点を通じて確保するために
努力しなければならない、このように念願してやまざる次第でございます。
以上の点を述べまして、
労働者農民党を代表して本案に
賛成する次第であります。(
拍手)