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徳田球一君
吉田内閣は、現在のこの経済の破綻
状態に対しまして、すべてをあげて貿易によらなければならない、また外資の導入を
基礎にしない限り、一切この
復興はできないという主張をしておるのである。この点は、民自党の
政策もそうでありますが、これまで首相の言われておる片言隻句からも十分うかがわれるところである。しかるに、事実この貿易によ
つて、はたして生産ができるかいなか、この点につきまして、私は全力をあげて
質問をしたいと思う次第であります。
第一、この終戰以來の輸入は、今年六月までに、実に総額十一億六千万ドルにな
つているのである。しかるに、輸出は毎々減りまして、この結果、入超が六月までに七億八千万ドルという、驚くべき額にな
つているのである。これを一ドル三百円に換算いたしますと、実に二千三百四十億円という厖大な負債を生じておるのである。
この負債がいかなるものによ
つて構成せられているかと言いますと、大体
日本の船舶は輸送をいたしませんので、外國船の運賃が大体三億ドルである。さらに外國における独占價格の操作のために失
つておるところの損失が二億五千万ドルと推算される。さらに
日本から輸出しますところの
物價が低
物價であるために、六千万ドルを喪失しておるのである。これを合せますと、六億二千万ドルという驚くべき損失をしておる。これは実際上の物におきましては、わずかに一億六千万ドルしか入超できないのである。かかる不公正な貿易をしておる結果、この大部分が、われわれの血を外國資本にささげなければならない
状態に陷
つておるのである。
これをやや具体的に申しますれば、鉄鉱石の米國産は、山元における價格わずかに一トン六ドルであるにかかわらず、
日本の港で渡すときには二十ドルにな
つておるのである。石炭におきましては、アメリカの山元では五ドル半でありますのに、
日本の港で渡すときには二十九ドルである。しかるに、この鉄と石炭とを輸入しまして、
日本で生産し、これを外國に輸出しますところの亞鉛引きの薄鋼板の輸出は、バイヤーすなわち外國商人の買います値段は一トン百七十ドルであるのに、これをフイリツピンでかれらの賣る値段は、実に三百二十五ドルという驚くべき價格である。それゆえに、この差は百四十八ドルというのである。これがバイヤーの利益にな
つておるのである。こういうやり方で行きますと、百二十万トンの鉄鋼の生産によりまして、いかなる
財政負担をしなければならないかと申しますと、四百二十五億円という
財政負担をわれわれはしなければならぬ、こういうみじめな
状態である。
さらに、外國からの輸入と
日本における生産とがいかに不均等であるかという例を示すために、昭和四年一九二九年、世界恐慌の
最後に起つた前の年でありますが、このときの一に対しまして、今年の八月は、綿織物が実に二千六百九十二倍に達している。しかるに、國内の石炭は百八十八倍。いかに
相違しているか。問題になります米におきましては、わずかに百四倍である。さらに一般男子の工場
労働者の実收
賃金は、七十一倍にすぎないのである。かかるごとき不均等な
状態が、この貿易の上においていかなる結果を來すか、驚くべきものであることは明々白々たる事実ではないか。
さらに今度は、輸出におきまして、いかなる生産を高めておるか。この輸出を見たならば、すべて損して賣
つておるという事実を、ここに明らかにする。紡績機械におきましては、一錘当り二十八ドルでバイヤーが買
つて行
つているのに、これと同様のものが、米國市場においては五十ないし六十ドルで賣買されておるのである。光学器械で、小西六のコニカという写眞機でありますが、これが十五ドルでバイヤーが買
つているのに、アメリカ市場においては、驚くべき價格、七十五ドルという價格で賣られておる。双眼鏡の十七倍物十六ドル四十セントであるものが、米國市場で百七十ドルで賣られているのである。貿易をすればするほど、われわれの血がかれて行くという
状態になるのである。
さらに、
日本から輸出する最も重大なる輸出物生糸においていかん。生糸において、昭和二十一年の七月一日におきましては、ニユーヨークにおける生糸の一俵の價格は八ドル十八セントである。しかるに、翌二十二年の二月八日におきましては、四ドル四十セントにな
つておる。先の年のものを一〇〇といたしますれば五・七、約半分にな
つておる。今年はどうだ。今年におきましては、二ドル五十五セントでありまして、前々の年に比較しますと三一・二、すなわち三分の一以下に下
つておるのである。かくのごとくして、
日本の
物價は上り、
賃金は上るのに、この生糸は三分の一以下でダンピングしておるという驚くべき事実が存在するのである。
この相場の実に残酷であるという点を示すために、もう
一つ比較を示してみたいのである。アメリカ相場にしますると、生糸俵で小麦が四・五トン買えるのである。しかるに、國内の相場で行きますれば、國内の公定價格の小麦の相場では八トン買える。だから、いかにアメリカでの賣り方が非常に安いものであるかが、よくわかる。これをさらにアメリカの輸入小麦の横浜着の値段で行きますと、二・六トンしか買えないのである。行き帰りで実にみじめな
状態にな
つていることが、明らかにここに立証されている。しかるに、戰前の値段で行きますと、小麦九トン買えたのである。
こういう不等價な
状態で貿易をしますということは、みずからの首を絞めると同様である。それに対しまして、
政府はかかる
政策をいつまで続けるつもりであるか。今後どういう貿易
政策をと
つて、そうしてこの貿易によ
つて日本の経済を
復興するつもりか。これは非常に重大な問題である。さらに為替レートを單一化すると申しますが、この為替レートを單化して、もと一ドル三百円程度にでもしますと、
日本の産業というものは、非常に
保護されている綿産業だとか、石炭だとか、鉄鋼だとかいう以外のものは、全部倒壊せざるを得ない。一体このような貿易におきまして、為替レートをどういうふうに單一化するか、どう
決定するか、非常に重大な問題であると思う次第である。この点につきまして、
大藏大臣兼
安本長官であられまする
泉山三六君に御
答弁をお願いしたい次第である。
第二の問題は、外資の導入が実際行われまするとしますと、今のような貿易
政策ならば、
日本の企業は全面的に外國資本の下請作業にならざるを得ないのである。すなわち、原料を外國から持
つて來まして、これを
日本につくらして、そうして賣るときには、外國の資本、すなわちバイヤーがこれをやるということになりますれば、
日本の工業というものは、すべてこの外國資本の材料を供給され、彼らをもうけさせるための下請作業にすぎない、小さい工場と同様な結果になるのである。現に八幡製鉄所もそうであります。東京芝浦電気の
状態もこうである。こういうように、全面的に下請作業に墜落して行く。
しかるに、この時に際しまして、この大企業が下請作業にな
つているのに、
政府並びに金融資本は、計画的にこの下請作業である大資本に対しまして資材と資金を供給することに集中し、その他
日本において実際働き、
日本人民の
生活のために非常に有用である中小企業家に対しましては、資金も資材もこれをほとんど締め出すという
状態にな
つておるのである。こうなりますると、どうです。
日本の産業は壊滅してしまい、すべての
日本の
労働力は外國のために下げられるという、実に悲しむべき
状態になるではないか。事実、中小企業におきましては
賃金は遅滞する。不拂いがたくさん積る。労働は強化せられる。実際悲惨この上ないところである。なおかつ、こういう貿易
政策をも
つて日本の生産が
復興せらるると
考えらるるかいなか。事実、大企業に対しまする資金と資材との集中は何をもたらしたか。非常な不正と腐敗とをもたらしたのである。昭和電工
事件はその一端でありまして、幾多の企業の中に、この復金を通じ、もしくは
政府の直接の援助を仰いでおるもの、すべてこれが不正と腐敗の元にな
つておるのである。私が一一言うまでもなく、すでに世間周知の事実である。
日本人を破滅させるためにわれわれの
生活を破滅させるために、さらにここに大
資本家をめぐ
つての不正と腐敗とが横行するに至りましては、まつたくがまんのならないことと信じますが、
大藏大臣、また
安本長官も兼ねておられる
泉山君は、いかなる
考えを持
つておられるか、今後どうこれをやり直して行くか、この点が第二点である。
第三点は、かかる貿易または産業計画のために莫大な損失をこうむ
つておるのでありますが、この損失の補給金とし、また融資として莫大な金を使われておる。われわれの
考えておりますところでは、一箇年に大体、あらゆる融資やいろいろのものを込めまして、千七百億使
つておると推定されておるのである。かかる厖大な補給金と融資とが
大衆課税をも
つてやられ、その結果は、下の方の仕事ができないために、ここでは強制寄付が実行されておる。すなわち、六・三制の問題にしろ、その他土木工事の施行にしましても、税でとることができないために、皆強制寄付にせられているのである。
さらに、現在の税におきましては、実に不当
課税きわまるものでありまして、この点につきましては、すでに皆さんから御
質問のあつた
通りでありまして、私がこれ以上加えることは、よしたいと思う。しかしながら、ここに重大な点を
一つ指摘したい。すなわち更正
決定におきまして、全
予算の額から言いますれば、昨年に対しては一・九倍である。すなわち二倍に近いものでありますのに、実際に更正
決定で課されて來ますのは、最低で三倍、多いものは十五倍という、驚くべき更正
決定をしておる。これがいかに不当であるかは、もはやここにおいて論ずるまでもないと思います。さらにこれに対しまして、今度は二百億の自然増收を見積
つております。そうすれば、一層この比率は高まるに違いない。事実は、このために、もう中小商工業者も
農民も、その他の人々も、ほとんど今度こそはというので、けつをまく
つて闘
つておる。おそらくこの予定されているものは、とれないと思います。非常に反抗が強い。それであるのに、さらに二百億もこれに追加いたしますれば、今年の末から來年初めにかけましては、税闘争において非常な
事態が引起ると
考えるのである。
事実こういうことがあるのに、大
資本家や大企業に対しましては免税をやり、また減税を事実や
つておる。現に、この導入せられた外國資本に対しましては、
吉田総理が減税または免税をするということは、実際声明されておる
通りである。しかるに、
吉田総理の総合
所得税を見ますと、昨年は一万四千三百八十九円納めておられる。今年は八千八百九十七円でありまして、昨年に比しまして六千円以上少い。これは税務署の調べでありまして、決して別のものではない。一方は三倍も十五倍も上
つているのに、吉田首相が下
つているというのは、どういうことだ。大
資本家がいかに免税、減税をせられておるかということの
一つの大きな例証としても、これはぜひとも
考えて行かなければならないことであると信ずる。かくのごとくにすれば、人民の
生活はいかになります。人民の
生活は破壊せられ、民族は壊滅せざるを得ないのである。
その次に申しますのは、独占資本に対しては高價格である。
農民、漁民、中小商工業者の生産物に対してはいかに低價格であるかということを立証したいのである。これは、昭和九年から十一年を一といたしまして、二十三年——今年の七月は、銑鉄が四百六十二倍になり、石炭が三百十八倍である。硫安は二百六十倍である。しかるに、農産物はいかん。農産物は、わずかに六十一ないし九十二倍にしか過ぎない。
賃金はいかん。
賃金は、驚くなかれ、わずかに五十五倍である。これを見ましても、独占資本、大資本の生産物に対しては高價格であり、
農民、
労働者に対しては実に驚くべき低價格であるということが、はつきりしているのである。(「それをや
つたのは
芦田内閣だよ」と呼ぶ者あり)むろん
芦田内閣は罪がある。罪はあるが、
吉田内閣は、この結果をひつくり返そうとせずに、かえ
つて自由経済をも
つて、これを引上げようとしている、驚くべき事実があるから、私はこれを責めるのである。(「事実をあげよ」と呼ぶ者あり)事実を與えるであろう。
まず石炭について申しますれば、石炭は、これを質的にしました結果、下の方の中小企業は、全部壊滅せざるを得なくな
つておる。北海道におきましては四千五百カロリー以上でなければならない。ほかでは三千七百五十カロリー以上でなければいけない。しかるに、三井の三池
炭鉱のごときは実に七千カロリーの上質のものであるため、百八十三という價格で買い上げられる。すなはち、普通百に対して八十三だけ余計の値段で買い上げられるのである。こういうことは一体どうだ。これで自由競争をさせるならば、いよいよますます中小企業者は壊滅せざるを得ない。それは結局するところ投げ賣りせざるを得ない。從
つて、この價格は、独占資本は高額、中小企業家の方が低額にならざるを得ないのではないか。
さらに、眞空管につきましてもどうだ。このわくをはずした。はずすことに賛成したのは、東芝以下大
資本家である。これを組み立ててラジオにして賣る中小企業家
諸君がみな反対したのは何ゆえか。すなわち割当がなければ、この独占資本の引上げ價格に追随せざるを得ない。自分らの商賣は上つたりである。これが事実。
亞炭においてもそうだ。亞炭において、これを自由にしたらどうなる。亞炭は大
資本家が買い占める。これらが輸送もすべて支配したために、中小企業家は、全部亞炭は破滅したのである。(「違う」と呼ぶ者あり)違うのじやない。あげるならあげなさい。証拠をあげなさい。これは壊滅的である。(「机上の空論だ」と呼ぶ者あり)机上の空論ではない。さらに……(「違う違う」と呼ぶ者あり)そんなことはない。これはちやんと
新聞が
報告しておるのだから違わない。
さらに
諸君は、りんごを見よ。りんごは、これは自由販賣にしてからどうだ。すべて大きいやつらが買い占めた結果、かえ
つてこれら中小企業家は破滅。弘前のごときは、送れない企業家は、送れない商業家は、これはみな…。
〔
発言する者多し〕