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稻村順三君(続) しかしながら、私をして言わしめるならば、それならそれで論理が一貫しておらないのであります。なぜ論理が一貫しておらないかと申しますと、
吉田総理が率いておるところの
民主自由党、この
民主自由党の政綱の中に、賃金の安定という
言葉があります。賃金の安定とは、すなわちわれわれが常識を持
つて考えますれば、これは賃金の統制であります。実に賃金とは、労働力という商品の價格であります。この労働力の價格を統制して、他の商品はこれを統制しないというようなことは、論理が一貫しておらないと思うのでありまして、論理が一貫しているというふうに思
つている人がいるならば、まさに精神錯覚症の自由
経済論であると、私はかように断定して差支えないと思うのであります。
なお、統制を大幅に縮減すると申しておりますが、この大幅縮減がまたいろいろなからくりを含んでいるということを、われわれは見逃すことができないのあります。なぜかと申しますと、
民主自由党の
政策の中に
経済條件の変動によ
つて不必要と
なつた統制をやめる反面、主食、基礎
生産財に対する統制は強化するということが書いてあります。これは主食を除きますと、基礎
生産資材は、いわば主として肥料、鉄、
石炭、電氣の類であります。かようなものは
一つ残さず全部大
企業の掌握するところとな
つております。ことに、食糧を除くところの消費財はどうかと申しますと、今日大体において、中小
企業家がこの
生産に当
つてをるのであります。
しからば、われわれが今日中小
企業の
状態を
考えてみますと、單にこれは資材が不足であるとか資金が不足であるとかいうようなことによ
つて片づけられないものがある。すなわち、最近最も國内市場の大きいところの農民あるいは労働者の收入が減ずることによりまして、食糧以外の物に対する購買力はきわめて減退した。このために、部分的にはすでに
生産過剰の現象すら起きておるのであります。かような場合に、もしも無統制に統制を大幅に縮減したとするならば、この中小
企業というものの中に倒産が続々と出ることは明らかであります。(
拍手)そうして、この大
企業が
生産するところの
生産財の
生産は統制を強化する、しかし中小
企業というようなものが主にしているところの消費財は統制を撤廃するということになると、大産業は、公團という組織を通じて全部國家で買い上げて、ここには
生産過剰というものは起りません。そこで私は、この来るべき
経済の
混乱にあたりまして、大産業を保護し、中小工業を犠牲にするということが、この大幅縮減の中に盛り込まれているということを、断言してさしつかえないのであります。(
拍手)
その証拠を、私は
一つあげることがてきます。なぜかと申しますならば、諸君たちは生鮮食料品の價格の撤廃を叫んで来たのでありますが、さて今日、その統制はいかもに
緩和されたが、その結果、この蔬菜類がマル公價格を割
つて、蔬菜
生産に從事している農民が続々と倒産のうき目に会
つておるという事実を、諸君たちはこれを否認することができるか。(「それがよくなるんだよ」と呼ぶ者あり)それがよいことになるというあなた方の
答弁がありましたが、この
答弁によ
つて、あなた方自身の本質が明らかに現われておるのであります。小さなるものは犠牲にして、大きなものを助けるというあなた方の本質が、ここに明らかに出ておると思うのであります。
かように
考えますと、
吉田首相の
意味するところの自由
主義というものは、一外紙が言
つておるように、勤労大衆にとりましては飢餓の自由であり、中小商工業者に対しては倒産の自由であり、大
企業家にとりましては、
自分たちの利潤確保のための自由である、ブローカーにと
つては、やみと投機の自由であると、私は言いたいのであります。
とい
つて、私は今日の統制を必ずしも礼讃するものではありません。統制
経済が、ややともすると
社会主義と混同されておるような今日におきまして、私たちは
社会主義者だという名前をも
つて、必ずしも統制を一から十まで支持するものではありません。しかしながら、われわれ
社会主義者が統制
経済者だといわれたところの理由は、
戰爭中における
社会主義者のある者が、自分自身の裏切りを合理化するために、当時の統制
経済というものを
社会主義と言つたことによりて、皆が誤解しておるのであります。その
責任は、
社会主義全般にはないのであります。以上の統制
経済に関するところの
総理大臣の所見を伺いたいと思うのであります。
次に、
大藏大臣に対して
質問したいと思うのであります。私は、
大藏大臣が、新進なお
大藏大臣の職に登られたということは、相当の能力を持
つておるものとして期待しておるのでありますが、しかも
大藏大臣が、大藏省の職員に対して、本因坊と賭碁の大家との例をあげまして、奇想天外の手を打つということをおつしやつたそうであります。その奇想天外の石というのはどうかといえば、それは建設公債ということある。しかしながら、建設公債ということになれば、それはこれまでの
大藏大臣はだれでも
考えたことでありまして、これは奇想天外どころの騒ぎではない、これは凡想地上に氾濫するたぐいのものであります。從いまして、これが
経済十大
原則というものと、どうな
つておるかということにつきましては、これは
さきに
北村氏がすでに
質問したところでありますので、私はこれに触れません。但し、私がこれから
質問しようとすることは、賃金と
物價の
関係であります。これは非常に重要なる問題でありますので、何も私は奇想天外な
答弁を要求いたしません。きわめて平凡に、しかしながら科学的な、禪問答でないような御
答弁を願いたい、かように
考えております。
これまで、
企業家も
政治家も、口を開けば賃金と
物價の惡循環ということを言
つて來たのであります。現にわれわれが、ここで議論を聞いておりますと、幾たびか、そういうことが繰返されております。もちろん、各種の
企業を全部見ますと、この中には惡循環の見本のようなものもあるのであります。だが、先ほど申しました
通り、部分的には、すでに大衆購買力は減退して、
生産過剰の現象が見られます。極度に不足し、しかも生理的に最小限度に必要な商品を除くと、配給があ
つても買えないというような大衆の多いわが國の現状においては、すでにかような現象というようなものにのみ
——いわゆる賃金と
物價の惡循環というようなことにばかりにだわ
つておるわけには行かぬ段階に來ているのではないかと
考えられるのであります。これが
質問の第一であります。
さて、最近、
経済安定本部総裁の官房企画部
調査課という、
泉山大藏大臣が兼任しておられる機関から
発表されました
物價と賃金の推移という
調査書があるのであります。これによりますと、本年の六—八月の消費実効価格は、公定價格改訂の影響を受けまして、二十二年初めの三・二倍にな
つております。これに対し、名目賃金は五倍程度にな
つておりますけれ
ども、しかしながら、これが実質賃金ということになりますと、ぐんと減りまして、〇・七倍にしか上
つておらない。これは何が
ゆえかというと、
生産が三倍以上にふえたからであります。これから見ますと、賃金と
物價との
関係は、賃金よりも物価の方が急速に上が
つているという事実が、
はつきりと出ているのであります。なおダイヤモンドという雑誌によりますと、何でも單位
生産物價格の中の賃金が二割以下であれば採算がとれるということを、ちやんと書いてあるのであります。しかしながら、今日実質賃金と実効價格、さらに
生産量という三つの
條件を照し合せますと、むしろわれわれから
考えますと、賃金が比較的安くな
つております。
從つて、今日賃金に関する限りにおきましては、多少賃金が上がりましても、
物價改定という必要は毛頭ないという事実が、
政府の機関から
発表されているのであります。
政府機関の
調査の結論がそうだとすれば、特殊的部門を除けば、概して賃金と
物價との惡循環の段階というようなものは、ここに見出すことができないのでありますが、その点に関する感想を
大藏大臣からお伺いしたいのであります。
それから、私が
泉山大藏大臣に
お尋ねしたいことの第三の問題は、農業並びに小
企業の所得に関する問題であります。御承知のように、わが國の農業
企業は過小農経営であり、自分の労力を消費いたして、その代償に農産物を販賣した價格で
生活しているというのであります。すなわち、
生産費しか得ていないのであります。賃金とは労働力の價格であります。労働力の價格を構成するところの商品の價格なのであります。
從つて、生計費しか得ておらないということは、すなわち農業所得が勤労所得でありまして、決して
企業所得ではないということを
意味していると思うのであります。これは、自分自身が経営している小工業、町工場などにおいても同じことが言えると思うのであります。独立経営であり、自己の
責任で資材資金を投じて経営しているのだから、これはすなわち
企業であるというように、近代的
企業と同じような解釈をするとすれば、それは形式的な解釈でありまして、これは実質的な解釈にはな
つておらないと思うのであります。從いまして、われわれは、当然かような小
企業の所得というものは勤労所得と解すべきである。しかも勤労所得とするならば、基礎控除のほかにさらに二割五分を控除し、これに課税しなければならないと
考えるのであるが、この点に関する
泉山大藏大臣の御所見を伺いたいのであります。
また、特に農民に苦労させて、
國民食糧の確保に協力させようとしていろいろな施策をしておりますが、そのうちに、農民に最も大きな苦労をかけているものは、早場米の供出であります。この早場米の供出奨励金に対して、奨励金であるにもかかわらず、これに税金をかけるような措置をと
つてきたのでありまして、この点、われわれ農民の代表といたしまして絶対
反対を表明しているのでありますが、この点に関する
大藏大臣の御意見を伺いたいのであります。
さらに、同じような
意味合いにおきまして、今度の超過供出の問題であります。これは、今日の食糧事情から申しまして、とにかく需給計画の中に超過供出部分が見積られているのであります。
從つて、これはどうしても達成しなければならない問題であるにもかかわらず、この税金の問題が
はつきりしないために、超過供出が十分に進行しておらぬ。かような場合に、食糧問題を安定するためにも、この課税問題を急遽きめる必要がある。われわれの主張から申しますならば、この超過供出分に対しては課税すべからずというふうに
考えているのであるが、(
拍手)この点に関するところの
大藏大臣の所見をお伺いしたいのであります。
なお私は、
大藏大臣に最後に御注文しておきたいことがある。それは、
大藏大臣の
答弁を聞いておりますと、まことに禪問答で、どこをつかんでよいかわからない。わたしは、
大藏大臣が
戰爭中に三井合名の総務部長をなさ
つてお
つて、そうして池田成彬の意を受けてフアツシヨ團体に資金をばらまく係であつたということを聞いております。それだから、われわれに対する
答弁も、おそらくフアツシヨ團体に対すると同じような
氣持で、これを籠絡するような気持でなさ
つているのではないか、かように
考えられるのでありまして、かような
答弁は、まつぴらお断りする、かように言いたいのであります。
さらに私は、
周東農林大臣に御
質問したいのであります。私は、
周東農林大臣とは、ずつと昔と申しますか、昭和十五、六年ごろから、しばしば会
つているのであります。
周東農林大臣は、当時農林省の総務局長をや
つておられました。そうして、農林省内の花形役者であつたことを知
つております。当時、石黒大臣や井野次官とともに、厳寒のあの内原に一万七千の農村青年を集めまして、そうして食糧増産推進隊というものを組織しておられたのであります。その当時総務局長として、この組織の実際上の事務をと
つておられたのでありますが……。
〔発言する者多し〕