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1948-11-28 第3回国会 衆議院 法務委員会 第11号
公式Web版
会議録情報
0
昭和二十三年十一月二十八日(日曜日) 午後二時四十六分
開議
出席委員
委員長
高橋
英吉君
理事
鍛冶
良作君
理事
猪俣 浩三君
岡井藤志郎
君 佐瀬 昌三君
樋貝
詮三君 古島 義英君 井伊 誠一君 石井
繁丸
君
石川金次郎
君 榊原 千代君 森 三樹二君 荊木 一久君
北浦圭太郎
君
出席政府委員
法務廳事務官
野木
新一君
委員外
の
出席者
專 門 員 村 教三君 專 門 員 小木 貞一君 十一月二十八日
委員松木宏
君辞任につき、その補欠として亘四 郎君が議長の指名で
委員
に選任された。 ————————————— 本日の
会議
に付した
事件
刑事訴訟法施行法案
(
内閣提出
第一八号)
裁判所法
の一部を改正する等の
法律案
(
内閣提
出第一九号)
司法警察職員等指定應急措置法案
(
内閣提出
第 三一号) —————————————
高橋英吉
1
○
高橋
委員長
これより
会議
を開きます。
刑事訴訟法施行法案
、
裁判所法
の一部を改正する等の
法律案
、
司法警察職員等指定應急措置法案
、右三案を
一括議題
として審査を進めます。
石川金次郎
2
○
石川委員
刑事訴訟法施行法案
についてお伺いいたします。同法第
二條
に「第一回の
公判期日
が開かれた
事件
について」とありますが「第一回の
公判期日
が開かれた」という
意義
をお伺いしておきたいのであります。
野木新一
3
○
野木政府委員
第一回の
公判期日
が開かれた
事件
という
意味
でございますが、まず第一回の
公判期日
が開かれたということは、單に
公判期日
の
指定
があつたというだけでは足りない
趣旨
であります。すなわち現実にその
指定
せられた
公判期日
が到來いたしまして、当日
裁判官
、
檢察官
、その他
関係人
が
法廷
に列席いたしまして、具体的に
開廷
された、そういう
事件
のことであります。さればとい
つて
、その日に事案の内容にまで入
つて審理
が現実なされたということは必ずしも必要でない、そういうように解しております。そうして第一回
公判期日
が開かれたという
意味
は、これに照應いたします
裁判所法
の一部を改正する等の
法律案
第十
一條
第一項に「第
一條
中
裁判所法
第十六條、第二十四條及び第三十三條を改正する
規定
は、この
法律施行
前に第一審の第一回の
公判
が開かれた
刑事事件
の
訴訟
については適用しない。」とある。第一回の
公判
が開かれた
刑事事件
というのとまつたく同
趣旨
でございます。
石川金次郎
4
○
石川委員
第一回の
公判
が開かれたということの
同一
概念
でありますならば、何
ゆえ
にここにおいて「
期日
が開かれた
事件
」と別の
用語
を用いられたかをまずお聞きしたいのであります。同じ
法律
において、
同一
の
意義
のものを
二つ
の
言葉
で表現することは迷いを生ずるのでありまして、
同一
の
概念
でありながら何
ゆえ
これを使わなかつたか、特別の
意味
があ
つて
使わなかつたのかということをお伺いしたいのであります。
野木新一
5
○
野木政府委員
確かに御
指摘
のように、同じ
趣旨
を現わすためには同じ
用語
を使う方が適正であると存ぜられます。実はこの
二つ
の
法律案
が相連絡しつつ進みましたけれども、結局別々の人によ
つて
批判されて來ましたので、最後に至りまして
用語
の点において連絡の密接が欠けたために、多少
言葉
の相違ができましたけれども、
趣旨
としてはまつたく同じ
趣旨
のもとに起案を進めて來た次第であります。
石川金次郎
6
○
石川委員
同一
の
概念
でありますならば、いずれかの
法律
を同じ
用語
に改めるという御
意思
はないでしようか。
野木新一
7
○
野木政府委員
國会
が
最高立法機関
として、法典について
用語
を統一した方がよいという御意見で改められるという点につきましては、
政府
としても別に異議はない次第でございます。
石川金次郎
8
○
石川委員
今後
同一
の
概念
は
同一
の
用語
によ
つて
現わされるように希望しておきます。 そこで
期日
後開かれた
事件
というのでありますが、まず第一に聞きたいのでありますが、新しい
訴訟法
二百八十
二條
、「
公判期日
における取調は、
公判廷
でこれを行う。
公判廷
は、
裁判官
及び
裁判所書記
が列席し、且つ
檢察官
が出席してこれを開く。」それに附加して二百七十
一條
「
檢察官
は、まず、
起訴状
を朗読しなければならない。」こういう段階をとるのでありますが、そのいずれに到達いたしましたときに
期日
後開かれたか、もしくは
公判
が開かれたというのでありますか。二百八十
二條
の第二項が完成したときに
期日
後開かれた、もしくは
公判
が開かれたというのでありますか。それともなお一段と進んだ場合は、いかなる
状態
における進み方をいうかをお聞きしておきたい。
野木新一
9
○
野木政府委員
今後
同一
の
概念
を現わすためには、
同一
の
用語
を用いた方がよいという御
指摘
のことにつきましては、まことに同感でありまして、今後はその点は十分御
趣旨
に沿いまして、注意して行きたいと思います。 なお新
刑事訴訟法
の第二百八十
二條
「
公判廷
は、
裁判官
及び
裁判所書記
が列席し、且つ
檢察官
が出席してこれを開く。」それから二百九十
一條
の「
檢察官
は、まず、
起訴状
を朗読しなければならない。」というこの
関係
と、
刑事訴訟法施行法案
第
二條
の「第一回の
公判期日
が開かれた」という
関係
でございますが、第一回の
公判期日
が開かれたというためには、つき詰めた申しますと二百九十
一條
の
起訴状
の朗読というものは必ずしも必要ではないと解しております。
從つて
二百八十
二條
のように「
公判廷
は、
裁判官
及び
裁判所書記
が列席し、且つ
檢察官
が出席してこれを開く。」こういうことにおいて
公判廷
が構成され、かつ特殊の
事件
については、たとえば二百八十六條で「前三條に
規定
する場合の外、
被告人
が
公判期日
に出頭しないときは、
開廷
することはできない。」それから二百八十九條で「
死刑
又は
無期
若しくは長期三年を超える
懲役
若しくは
禁錮
にあたる
事件
を
審理
する場合には、
弁護人
がなければ
開廷
することはできない。」こういう場合にはさらに
被告人
なり
弁護人
が出て來なければ
開廷
することができないわけであります。この
開廷
ということは、一面
審理
を始めるという
趣旨
にも解されるわけでありますが、
公判廷
を開くとか
開廷
するという
言葉
でなくて「
公判期日
が開かれた」という
言葉
を使いましたのは、ある一定の
事件
について
裁判官
、
裁判所書記
、
檢察官
が
法廷
に出て、しかも必要な
関係人
が出廷いたしまして、その
事件
について具体的に
審理
を始めるという
状態
に達し、しかも
裁判所
がそれについて
審理
を始める
趣旨
を何らかの形によ
つて
現わした場合に、ここにおいて「第一回の
公判期日
が開かれた」そういうふうに解している次第であります。
石川金次郎
10
○
石川委員
なお明確にしておきますが、ここにおける「第一回の
公判期日
が開かれた」という
意味
は
現行法——旧法
ですが、
現行法
における
意味
だと存じます。そうだといたしますと、
現行法
の第何條の要件が揃つたときにこの
開廷期日
が開かれたと見るか。つまり
現行法
三百二十九條第二項にただ單に「
判事
、
檢事及裁判所書記列席シテ
之
ヲ開ク
」と
同一
の文句がありますが、そのときに開かれたと見るのか。あるいは開かれましたあと、
被告人
のその人違いなきを云々するという
規定
がありますが、それを終つたときと見るのか。單に
法廷
にその必要な人が入
つて來
たのを
開廷
されたと見るのか、お聞きしておきたい。
野木新一
11
○
野木政府委員
ただいま御質疑の点でありますが、第
二條
の「第一回の
公判期日
が開かれた
事件
」と申しますのは、
現行刑事訴訟法
の
規定
に從いまして、第一審における第一回の
公判期日
が開かれたという
趣旨
になりますことは御
指摘
の
通り
であります。
現行刑事訴訟法
におきましても第三百二十九條「
判事
、
檢事及裁判所書記列席シテ
之
ヲ開ク
」とございまして、さらに進みまして三百三十條に「
被告人公判期日ニ出頭セサルトキハ別段
ノ
規定アル
場合ヲ
除クノ外開廷スルコトヲ得ス
」それから三百三十四條に「
死刑
又
ハ無期
若
ハ短期
一年以上ノ
懲役
若
ハ禁錮ニ該ル事件ニ付テハ弁護人ナクシテ開廷スルコトヲ得ス
」こういう
條文
があるわけでありますが、この「第一回の
公判期日
が開かれた」という
意味
につきましては、まず三百二十九條の二項によ
つて
、
公判廷
は
判事
、
檢事
、
裁判所書記
が列席することが必要であることはもちろん、それから
被告人
が出頭することを要する
事件
につきましては、
被告人
も出頭し、それから
必要的弁護
の
事件
につきましては、
弁護人
も出頭して、そこで完全に当事者が集ま
つて
、それからその
事件
について
審理
を開こうという
裁判所
の何らかの
意思
がそこに
発現
せられた場合に、第一回の
公判期日
が具体的に開かれたということになるわけであります。これを形式的に申しますと、第一回の
公判期日
が開かれた以上は、
公判調書
というものが作成せられることになるわけでありまして、結局
開廷
と同時に
期日
の
延期
の
申請
があつたような場合、そして
期日
が
延期
せられたという場合にも、なおかつ「第一回の
公判期日
が開かれた」ということになるものと解しておる次第であります。
石川金次郎
12
○
石川委員
そうなりますと御
指摘
の三百三十條、三百三十三條、三百三十四條ですが、それらの
関係人
がそろ
つて
、何らかの
意思発現
があつたときとおつしやるのですが、第何條による
意思
の
発現
があつたときに
期日
が開いた、もしくは
公判
が
開廷
せられたとおつしやるのでしようか。
野木新一
13
○
野木政府委員
実際の問題といたしましては、大体
公判廷
に
関係人
が集まりまして、おそらく
裁判長
が
被告人
の
人定尋問
なりをして、これから
審理
を開始するというような
段取り
にな
つて
おります。その
段取り
に行きますれば、もう明らかに開始されたということが一番はつきりするわけであります。
石川金次郎
14
○
石川委員
先ほど公判調書
ができあがつたときというようにもおつしやつたのですが、單に
関係人
が
公判廷
に集まつたということそれ自体が
調書
として残りますかどうか。その
調書作成義務
がありますかどうか。あるならば
現行法
の何條によ
つて
あるかをお知らせ願いたいのであります。
野木新一
15
○
野木政府委員
公判調書
は第六十條に「
公判期日ニ於ケル訴訟手続ニ付テハ公判調書
ヲ
作ルヘシ
公判調書ニハ左
ノ
事項其
ノ他一切ノ
訴訟手続
ヲ
記載スヘシ
」とありまして、「
公判
ヲ為
シタル裁判所及年月日
判事
、
檢事及裁判所書記
ノ
官氏名並被告人
、代理人、
弁護人
、
輔佐人及通事
ノ
氏名
」云々、以下ずつと十三項までありますので、いやしくも実際の例といたしましては、
公判期日
が開かれるという場合には、それが第一回の
公判
になるわけでありまするから、第一回の
公判期日
の
調書
という
意味
合いにおきまして、実際の取扱いとしては必ず
調書
がつくられることになるわけであります。
石川金次郎
16
○
石川委員
だんだん明確にな
つて
参りましたが、
法廷
に
関係人
が集まつた、
被告人
、
弁護人
、
判事
、
檢事
が出廷した、そうして
現行法
の六十條一項、二項によ
つて
記載せられた
公判調書
ができたとき、その
事件
はいわゆる
公判期日
が開かれた
事件
であると承知してよろしゆございましようか。
野木新一
17
○
野木政府委員
大体御
趣旨
のようでよろしいと思います。実際問題となりますのは、たとえば
公判廷
で
期日
の
延期
の
申請
があ
つて
、
期日
が
延期
に
なつ
たような場合には問題になるのではないかと思います。
公判廷
内で
公判
を開かないで
期日
を変更するような場合には、もちろん
公判廷
が開かれていないのでありますから、問題にならないわけでありますが、すでに
裁判官
、
檢察官
、
裁判所書記
及び
関係人
が
法廷
に出て來まして、
裁判所
でその
事件
について
審理
を開始する旨宣言した後におきまして、今日は都合が
惡い
から
審理
を幾日の
期日
まで
延期
すると申し出て、その申出を
裁判所
がいれまして、次回
期日
を
指定
したような場合が一番問題になると思いますが、そういう場合でも第
二條
の適用によりましては、すでに第一回の
公判期日
が開かれたというように解して行きたいと思
つて
おります。またそういう
趣旨
で考えております。
石川金次郎
18
○
石川委員
次にお聞きしたいのでありますが、第三條に「その他の
事情
によりこれを
閲覽
させることが著しく困難なときは、
新法施行
後六箇月間に限り、その
閲覽
を許さないことができる。」という
規定
がありますが、著しき困難と予想せられました一つの例をお示し願いたい。
野木新一
19
○
野木政府委員
この
但書
を設けました
趣旨
は、
確定訴訟記録
の公開ということは新憲法、新
刑事訴訟法
などの精神によ
つて
非常に重大なことではありますが、何分今まで公開するような準備並びに仕組みにな
つて
おりませんので、一時にこれを公開いたしますと非常に混乱するおそれがありますので、
但書
に置きまして、経過を円滑ならしめようとした
趣旨
であります。そして「その他の
事情
」と申しますのはどういう
事情
があるかと申しますと、たとえばある檢察廳で非常に大きな
事件
を処理してお
つて
、
檢察事務官
の人員などは今全部そちらにとられているという場合、結局
人不足
などの
関係
で、一時十日なり半月間に
限つて閲覽
を許さないという場合も「その他の
事情
により」ということに入る場合ではないかと思
つて
おる次第であります。
石川金次郎
20
○
石川委員
第四條で一言お伺いしておきたいのでありますが、第四條の
但書
であります。「
新法施行
前に
旧法
及び
應急措置法
によ
つて
生じた
効力
を妨げない。」とい
つて
おるのであります。そこで
旧法
によ
つて
生じた
効力
と申しますのは、大体どういうものであるか、お聞きするのがむりでありますが、例をあげますと、
公訴
の
提起
があつた場合における
効果
もまたこれが
効力
を生ずる、こういう
意味
でありますか。
新法
及び
旧法
によ
つて
生じた大体における
効力
というものをお聞きしたいのであります。
野木新一
21
○
野木政府委員
御
指摘
の
公訴
を
提起
する、それによ
つて訴訟係属
が生じたり、あるいは
時効
が中断したりする、そういう
効力
はこの
但書
によ
つて
、依然としてあるものであります。そういう御
指摘
の
趣旨
に解してさしつかえないと存じておる次第であります。
石川金次郎
22
○
石川委員
そこで第
八條
に飛びますが、第
八條
の「第四條の
事件
で
新法施行
前に
公訴
の
提起
があつたものについては、
時効
は、
新法施行
の時からその
進行
を
停止
し、」こういうのでありますが、この
意味
をお伺いいたしたいのであります。
野木新一
23
○
野木政府委員
御承知のように
旧法
、すなわち
現行刑訴法
におきましては、
時効
は
公訴
の
提起
、その他
裁判所
にて中断するという
中断主義
をと
つて
おりましたのに対して、
新法
では、
時効
は
公訴
の
提起
のあつたときは、そのときから
時効
の
進行
が
停止
するという
停止主義
を
とつ
たのであります。それでこの
停止主義
を載せるために第
八條
の
規定
を置きました
趣旨
でありまして、第四條の
事件
で
新法施行
前に
公訴
の
提起
があつたものは、その
公訴
の
提起
のあつたときに一度
時効
が中断し、それから何らの
裁判所
の
処分
がなければ、またさらに
時効
は
進行
して來ておるわけでありますが、第
八條
の
規定
によりまして、その
時効
のすでに
進行
を開始したものは、
新法施行
のときから、すなわち明年一月一日からその
進行
を
停止
してしまう。すなわち
新法
の
時効
の制度に乘り
移つて
行く、そういう考えでございます。 〔
委員長退席
、
鍛冶委員長代理着席
〕
石川金次郎
24
○
石川委員
旧法
を見ますと御説明の
通り
であると思いますが、実際必要がございましようか。中断しておいた
時効
、それを
裁判所
は何らの
処分
も講じなかつた。それで
時効
の
効果
が発生したということも、これは観念上は想像できますけれども、そういうことがあり得るでしようか。
現行法
における第二百八十五條によ
つて
、それらの弊害がなかつたといたしますならば、こういう第
八條
の
停止
の
規定
を置く必要があつたかどうか、ひ
とつ
伺いたいのであります。
野木新一
25
○
野木政府委員
時効
の点と、そうして第九條の点につきましては、これは
新法
の全面的に乘り移らせた方がいいという議論が非常に強うございまして、その必要上こういうふうに
八條
、九條の
規定
を置いたわけであります。ことに
八條
におきましては、第一項
但書
において「
新法
第二百七十
一條
第二項の
規定
により
公訴
の
提起
がその
効力
を失つたときは、この限りでない。」とあります。これは第九條の第三項の
規定
などと相照應するものでありますが、すでに
旧法時代公訴
の
提起
がされてあつた
事件
でありましても、次の第九條の
規定
によりまして、その
起訴状
は
新法施行
の日から三箇月以内にその謄本を送達しなければいかぬ。そういう
主義
をとりました
関係
上、それらのつながりなどからいいましても、第
八條
のような
規定
が必要とな
つて來
たわけであります。
石川金次郎
26
○
石川委員
私の質問はこれだけにしておきまして、次に
移つて
よろしうございます。
鍛冶良作
27
○
鍛冶委員長代理
それでは本日はこれで散会いたします。 午後三時十七分散会