○林百郎君 本
請願の
趣旨並びに理由を申し上げます。この
住居法は次の三つの項目に最も重要な義を有しております。
その
一つは、各個人の住居が容易に明確に把握できることで、これはその住居が公民権や私権の権利義務を行使、遂行の所在として
國家、個人に欠くべからざるものであることは当然のことであります。また公的にも私的にも公機関によ
つて、住居を登録し、させることは
國家及び地方公共
團体の行政運忘上、実務上大きな利益を得ることにもなります。
その二つは、本法の利用價値であります。これを行政
運営面より、また個人の生活面より檢討してみますと、まず行政面で公簿と実際の個人住居が一致して一貫したものとなり、
從つて人口調査、配給台帳、選挙人名簿等の調査や帳簿の作製等、その他重要なる行政面に正確と簡便さを與える。これが個人生活の面においては行政手続上の諸労がなくなり、行政、公簿、生活の民主的一貫性が確立され、後述の寄留法と比較して常に生きた
法律となる。
その三つは、右記の諸事柄を具体的に解明して、本
法制定の
趣旨と理由を強調したいと思います。現在個人の身分
関係の登録である
戸籍法は完備しているが、しかし住居に対して立法的なものといえば寄留法令があるのみで、しかもこの寄留法は四囲の諸
事情の変化とともに多くの欠陷が生れ、現行、法では利用價値のいかんが疑問とな
つて來た。その一例として、九十日以上本籍外において一定の住所又は居所において、居住するを目的として定めたるもの云々と、これは本籍以外に居住する者で、九十日以上一定の場所に居住する目的を
もつた者でなければ適用されない等、さらに
運営面で、現行法に関することは
戸籍事務と同樣に監督しなければならないのに、これも万全を期す
状態にな
つていない。これは寄留法が利用價値に欠けていることを証明するものと思います。また現在の市町村における寄留
事務体系では、本籍外に居住している者の把握に困難があり、またあえてこれを調査しても、時日に大きなずれが生じて正確性が失われてしまう。これは換言すれば特別な調査のほかには、現在の
戸籍法、寄留法では個人の居住
状態は不明の点が多いということになり、また実際さうであると言えめのです。このようなことでは官公署の住居場所の照会にも
支障を來し、行政
事務一般、機構一般の
運営等に重大な影響を與えざるを得ないのです。
以上の事実に基いて、別記のごとく法文化した
住居法試案が制定された場合は、
國家、地方行政と
國民各個人の生活を一貫的に結び、複雜な
事務系統を整然と方向づけ、
國家立法の民主化を
國民と結びつける重要かつ有用な
法律となることを信じます。
次に
戸籍事務関係運営法の制定に関する
請願事項を申し上げます。
一、
戸籍事務並びに同良員の特殊性の強調、戸ベ
事務は市区町村に対して、
事務を
國家が委任したものであ
つて、これに携わる
吏員もまた職階的に他の
吏員とその趣を異にするものであります。また実務上においても、
戸籍事務の特殊性はまつたく他の比ではありません。すなわち委任された
戸籍事務は個人の身分に関する公証録であ
つて、民法の親族編の手続法である復雜対面的な
戸籍法及びこれに関連附随した
事務取扱い等はきわめて重要であるゆえに、当然その職に当る者に
法律的知識を必要とし、
從つて絶えざる努力と研究がなければなりません。ここに司法行政
事務の
一つである
戸籍関係事務が、他の一般行政
事務と異なり、自由裁断の許れない意義があります。
二は、
戸籍関係事務の全國を通じて一貫性でなければならない点及び当該
吏員の地位身分の問題であります。
戸籍事務はその性質上からも
國家司法行政
事務であることは理論の余地員ありませんが、実際
運営上の具体的な事柄では、地方によりしばしば取扱いその他が異なり、
國家地方行政面並びに個人の身分に重大な
支障を來す例もあります。この原因としては、
戸籍関係事務の全國的不統一、人員、知識の不備等があるといえども、さしあた
つて現実の問題として
吏員の身分地位の低下、ひいては該
事務の過重がその主要原因と言い得るのです。この原因の排除、地方自治公共
團体に委任された
戸籍関係事務の整備確立のため、その要点を列挙いたします。
第一は、
戸籍事務関係の経費の國庫補助でありますが、
戸籍関係事務は法令で
國家が市町村に委任した
事務であるところからして、これに要する経費は
國家で負担し、市町村に対して補助することであります。
二は、
戸籍吏員の身分保証と地位の安全確保であります。司法行政
事務の
一つであるから他の一般行政と異なり、
事務の性質上担当
吏員の職務から見て、
吏員の身分保証と地位の安全を期し、市町村長限りでみだりな任免、異動等を行わないようにすることとし、それに相当なる身分の保障と地位の安全とを與えて、能率をあげて
國民のため便宜をはかるようにし、親切丁寧にしてこれが貢献するようにすることであります。
三は
戸籍に関連する
事務の統合であります。
戸籍事務に関連せる
事務は、その性質上また
事務の処理上から、能率的に
運営を期する点からして、全
國民ひとしく適用される人に関する事項、また直接これに関連した
事務は、これを統合することであります。これが行政の簡素化と円滑、迅速な、確実な
運営ができ得るようになり、
國民に対しても経費と諸労と時間を軽減させることになると思います。
四は、
戸籍関係事務の機構の独立組織ということであります。右三項の特殊性、事由によ
つてこれが
運営上、組については地方自治行政機構の面において、その独立性を認めることが、職階的に、また行政の本旨に沿うことになると思います。
なおここに
國家司法行政と地方自治行政の関連を明記し、前者の独自性を主張いたしたいと思います。普通一般地方自治行政は、地方自治法に基いて
運営されているのでありまして、それぞれ地方自治体によ
つて多少異な
つているところもありますが、これに反し
戸籍事務関係は、
國民生活の基礎として全國一般に一貫して運用される通法で、当然地方ごとに異なるべき性質のものではありません。
地方公共
團体の行政はこの
運営及び組織を定めた地方自治法に從い、この中にある
戸籍関係事務は
戸籍法及びその他のこれを定めた法令によ
つて執行されるのでありますが、この要点に示された事項については、
運営上司法行政
事務の一貫性が完全にでき得ない結果にもなるようなことにまで及んで來やしないかと思われます。
ここできわめて重要な地位を占めるべき
戸籍關係
事務は前述の
趣旨の要点を
実施するために、地方自治体と並んで、
國家司法行政の市町村に委任されたこの種の
事務の
運営に關する
法律を定め、
戸籍關係
事務の主体性を確立しなければならないところであると考えます。
以上
請願の
趣旨を申し上げまして、
政府の御所見を伺います。