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日高政府委員 御質問を受けました第一の点でございますが、戰災を受けました
学校の復旧につきましては、資材を必要といたしますし、それが主として建築の材料等を手に入れなければならないというような観点から、
文部省の事務の分担の上から、実は
施設局でや
つておりますので、その詳しいことをただいま御返事するだけの用意がありませんから、これは別の機会に担当者から御返事申し上げたいと思います。
第二の点は
日本の
産業復興と
教育ということはお説の
通りでありまして、私どもも確かにその点を考慮しながら、
日本の
教育の
改善をはからなければならないということを平素から考えております。ただ
日本の、たとえば工業水準がどの程度容認され得るものかというような点につきましては、そのときどきによりましていろいろ見込み等が違いますので、全体の正確な計画を立てることは非常に困難であります。その点、私どもとしては非常に苦慮はいたしておりますけれども、そのときどきに
從つて、多少手加減をしなければならないというふうに考えております。ことに工業
方面については、そういうことを考えなければならないというふうに思
つております。しかし
一般に申しまして、
日本の
教育が初等
教育から中等
教育、高等、
大学の
教育に至るまで、生活と学問というものが遊離しがちであつたということは、これは事実として認めなければなりませんので、今後の
教育としては、生活と学問とをできるだけ結びつけなければならないというふうに考えております。
もう一つは、
お話にも出ましたように、
日本をほんとうに復興させるためには、私は
日本人がもつと眞劍に、勤労をいとわないような精神を、若い人たちに持
つてもらわなければならないというふうに考えております。こういう点では戰時中の惡い意味の勤労
教育でなしに、勤勉な、労をいとわないような人間をつくらなければならないというふうに、感じておる次第であります。御
承知のように小
学校から中学高、
高等学校にわたります教科
内容も、そういう点ではできるだけ社会に出て一人前の働きのできるように、職業
教育的な面については
相当力を入れておるのであります。それが十分効果を收めるまでには至
つておりませんが、方向としては健全な、力強い勤労階級を、多数に養わなければならないという考えから、職業
教育には今後も力を注いで行
くつもりであります。その中にたとえば
農業教育等におきましても、
教育というものはすべて
学校だけでされるような期待が、從來
日本においては多か
つたのでありまして、
学校と家庭との
関係というようなものに、できるだけ密接な連絡をつけまして、同じ職業
教育でありましても、アメリカ人のいわゆるホーム・プロテクト・メソツドというものを試みに採用して、そうして
学校で教えることが甲に帰
つて家の働きに直接に
影響のあるように、また家庭の親たちが
学校に対して、
産業の復興等について特に関心を持
つて結びついて來るような、そういう方法も考慮しなければならないということを考えまして、ただいまそういう
方面も研究中でありますが、すぐこれを実行するということにも多少の疑惧がございますので、試みとしては、近いうちにホーム・プロテクト・メソッドによる
教育もいたしたいというふうに考えております。
それから
お話にも出ましたように、
日本がこれから立
つて行くには学問と
技術というものを徹底的に
向上させて、それを身につけた、平和であ
つて勤勉をいとわない人間をつく
つて行かなければ、
日本は立ち得ないというように考えております。こういう点でも、学問や
技術というものを、今後の
日本としては極力進めるために、その点で東洋においてはもちろん、世界的な水準にも追いついて、追い抜くぐらいな意氣込みをも
つてやらなければならないというふうに、考えておるわけであります。
それから最後に
大学校についての御質問でございますが、これは、世間に傳えられておりますいわゆる
大学校と申しますものは、もちろん
文部省がつ
くつたものでないことだけは、はつきり申し上げることげできると思います。しかしただいま出ております案は一つの試案でありまして、
文部省もこれを論議してできるだけいい、理想的であ
つて実行可能な
大学校というようなものを、つくり上げたいと思
つておりますし、現在は主として
教育刷新委員会においてこれを研究中でございまして、
文部省がその研究に基いて独立の案を作成いたしたいというふうに考えております。そのほか
大学関係者、
大学学長の
会議とか、総長の
会議とか、あるいは校長の
会議等においても、示されました案についていろいろ論議中でございます。これは、私は特に文部委員の方々にはぜひ御了解をしておいていただきたいと思いますので、あとで詳しい原案の残したものがありますから、これを刷り物にでもして皆さんにひとつ読んでいただきたいと思います。実はまだ差上げるということについて了解は得ておらないのでありますが、私は見ていただいてもいいのではないかというふうに思います。少し不穏当であるかもしれませんけれども、私はことに文教委員の方には見ておいていただきたいつもりであります。何らかの処置で皆さんに原案の届くようにいたしたいと思います。趣意だけ先に申し上げますと、
大学校の構想は
大学の
目的、
設置、組織、教員の身分、行政、財政、学位等十数課目の廣範な
内容を有するものでありまして、最も論議されておる点は
大学の行政と財政であります。
大学行政機関の改革の目標は、
大学の自治の確立ということが第一点、第二点は中央集権的な権力を排除して、各
大学に行政権をできるだけ付與しよう。それと地方分権を行
つて、國民主権の原理に基いて、單に
大学の教授たちだけでなく、國民の意思を
大学行政にも反映させたい。これだけが
大学校の主要なねらいであると思
つております。
大学の行政機関といたしましては、監理委員会と学長と教授会、この三つが出ておりまして、監理委員会は
大学の最高の行政機関であ
つて、一々の
大学に監理委員会を置くことにな
つております。学長の任免、教授等その他職員の任免を行うものでありますが、学長については教授会が推薦権をもち、教授等につきましては教授会と学長の推薦がなければ、委員会は任命ができないことにな
つております。
一般の人事については委員会は学長を除いては拒否権を持つだけであ
つて、予算案その他
大学の
教育の
一般方針の決定権を持つものであります。教授会は
教育内容を決定する。入学、卒業の資格の決定の権能を持つわけであります。学長は委員会と教授会の決定を見た事項を執行する最高の責任者にな
つております。そのいわゆる監理委員会の構成と申しますものは、文部大臣が
國会の
承認を得て任命する者三名、知事が府縣会の
承認を得て任命する者三名、教授会の推薦による者が三名、
学校同窓会の推薦による者三名、学長は職務上当然なる。これで十三名になるわけであります。なお中央に諮問機関を置きまして、
大学教育の
一般方針、
大学に関する法律上の改正問題、
大学の配置、國際組織への参加等に関しまして、建議あるいは勧告をする機関にな
つております。委員は十五名からなることにな
つておりまして、
國立、公立
大学の長の互選による者三名、
私立大学長の互選による者三名、衆議院、参議院兩院の文部委員のうちからおのおの一名、これで八名でありますが、そのほかに文部大臣が
國会の
承認を得て任命する者七名、合計十五名、これが全体の
大学教育の
一般方針、法律上の問題とか、あるいは基準の問題とかいうものを取扱う諮問機関として示されておるものであります。これに対しまして
教育刷新委員会の大体の案は、一々の
大学にございます監理委員会というものを、
國立の
大学につにいては中央に一つにまとめてしまいたいという——決定機関としての監理委員会というものは、
國立のものについては中央にまとめてしまうという案を持
つておりまして、各
大学には、むしろ諮問機関として評議会というものを設けまして、地方の
要望を反映させるように組織にしたいというのが、
教育刷新委員会のこれに対する代案であります。
文部省はこの兩方の案を今討議中でありまして、
文部省の原案というものはまだできておりません。これらのことにつきましては、
日本の実情に即して、できるだけいい案をつくるために、極力
努力いたしたいというふうに考えております。
それからもう一つ特に申し上げておきたいと思いますのは、この
大学校の試案でございますが、この
大学校の試案というものは、決してまだ決定した案ではございませんので、論議のために
関係方面で示したものでありまして、これは決してアメリカの
理事会というものを直訳したものではないのであります。アメリカのいわゆる
大学の
理事会というものには、
学校当局がたくさん入るということはあり得ないし、また
國会との連絡のために文教委員のような人が入ることもなし、また文部大臣の任命したような
理事が入るということもない、こういう意味で今度示されました案は、決してアメリカに範があるわけではないのだ、またイギリスにあるわけでもないのだ。これはアメリカにある制度も、イギリスにある制度等をも考慮した、
日本の実情に即するものではないか。殊に委員の構成においては一方的な支配のないように、違つた要素がお互いに牽制し合
つて、独断や專行のできないようなものとして考えたんだという註釈がついております。これらの点では一部にアメリカの案をいきなり
日本に移して、
日本をアメリカ・ナイズしようというふうに考えているというような揣摩臆測が行われておりまして、多少誤解があるというふうに聞いておりますので、これらについては
関係方面も非常にこの点を残念に思
つているらしくて、
説明は
相当くどくその点に触れております。今申し上げましたように、私はこの問題は
相当今後の
日本の
大学行政、
從つてまた
大学教育及び研究というようなものに深い
関係がありますので、
相当徹底的に論議をしてきめなければならない問題だというふうに理解しております。今後いろいろまたお知惠も拜借し、お力も拜借しなければならないと思いますので、あらかじめお願いいたしておきたいと思います。
それからもう一つ
久保委員から御指摘のありましたような、いわゆる低
文化政策というようなものには、私は断然反対でありまして、
日本としては今後学問や
文化において國を立てる以外に道はないのでありますから、その目をふさぐようなことについては、私は身をも
つて抗爭するつもりであります。しかしこれはやはり
日本人全体の覚悟の上にかか
つていると思いますので、私は現在
日本に來ておりますアメリカの
教育関係者は、必ずしも低
文化政策というようなことは意図しておらない。ただ表面に出ております
大学の
目的等につきましては、やや職業
教育というようなところに重きが置かれておりまして、純粹の学問の研究や眞理の探究というような点においては、理想主義的な点が幾分少いように見えますので、多少の誤解が生ぜぬこともないかと思いますが、これをむしろアメリカの人たちの学問に期待する
一般的の態度が、非常にすなおに出ているだけにすぎないのではないかというふうに、了解いたしているのでありまして、必ずしもこの点をも
つて邪推をする必要はないのではないか、というふうに考えております。その点は修正の見込みは十分あると確信いたしております。
〔
委員長退席、松本(七)
委員長代理着席〕