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笹山證人 それで
市村さんから森さんがいよいよ
退任される決心をされた。辞表をお出しにな
つたということを伺いました。それは先ほど申し上げましたように森さんにお会いした一週間くらい
あとではなか
つたかと
記憶しておりますが、その間だ
つたと思います。十五日前後ではなか
つたかと思うのですが、
興銀の当時
理事をしておりました
栗栖君が見えて、
司令部から
昭和電工の後任
社長の人選を命ぜられて数名の
候補者を書いて出せという命令を受けたので、今
司令部へリストを届けて來た。そうしたらそのリストを受取
つた上で、さつそくこれを
持株会社整理委員会の方へも連絡して置けと言われたからということで、今
司令部の帰りに寄
つたのだという話で、三名の氏名を書いたリストを持
つて來たわけであります。そのころ
市村さんが
委員会へ見えたときに、森さんがいよいよ
退任されることになれば、
あとなかなか適当な
社長も社内に見当らないし、自分と中村常務とが専務に就任して、両專務を中心にして合議制でや
つて行きたいと
思つておるという
お話がありました。私もそれ以外になかなか方法もないだろうと思われるし、そういうことであなたもなかなかたいへんでしようが、そう行かれるより仕方がないでしようというような話をしてお
つたのであります。そうい
つた氣持のときでありましたので、
栗栖君が三名の新
社長の後任者のリストを持
つてきたときに、新しい
社長をさらに入れるという考えが
司令部にあることをそのときん初めて
承知したのでありますが、なかなか新しく
社長を入れると
言つても、はたしてこの三人の人も具体的に
折衝したときに
承認されるかどうか、相当困難な問題じやないかと思われるし、またよそから從來縁のなか
つた人を
社長に入れてもなかなか経営も容易ではないと思われるし、
司令部ではそういうことを考えておられるか知らないが、一應このところは合議制で行くという
会社の考えそのままに進んでいただいて、ただ経理の点を問題にされてお
つたわけでありますから、その
内容は格別大したことでもなか
つたようでありまするが、一應
司令部としては問題にしてお
つたことでもありまするし、また
復金から引続いて多くの融資がなされる
予定にな
つてお
つたときでもありますから、経理担当の常務重役または取締役、経理部長というような人を、だれか
復金等で適当な人を選定して一枚加わ
つてもらうというようなことで進む以外に、なかなか方法はないのではないかという話をそのときしたのであります。
栗栖君もそういうことで
司令部の方も了承してもらえるならばしごくけつこうだ、自分の方からも
司令部の方にさらに当
つて見ようが、君の方からも協力してくれないかというような話で、そのときは別れたのであります。それでリストをもら
つた報告を
司令部へすると同時に、合議制の話、経理担当重役を入れる程度というような話を
司令部の方へも
野田委員を通じてもら
つたのでありますけれ
ども、どうもなかなか納得してもらえなか
つた。そのままで数日間経過したと思いまするが、三月二十二日と私
記憶しておりますけれ
ども、二十二日の午後にバークレー・へンダーソン、メージヤー・
ザイビユラ氏が
委員会に直接や
つて参りまして、
野田委員と私
どもがその
部屋に呼ばれた。その席上新
社長を入れなければいかんという話が出たわけであります。私はそれまで考えてお
つた点を極力説明して、なかなか
財閥以外にまだ多数の人が
追放にかか
つてお
つて、その
追放にかか
つておらない人の中から適当な人を物色することは非常に困難だということを縷々述べて先方の考慮を求めたのでありますが、どうしても聞かれません。これはとにかくもわれわれの命令だ、どうしてもやらなければいかん、あれほどの大きい
会社で数億の金を使
つておるところに最高
責任者がいないということは好ましくない、どうしても新
社長を入れなければ承服できないという非常に強硬な話でありました。これは先方の考えも先方の立場で考えれば筋の通
つた話でもありますし、命令するからやれというところまで強く言われれば、立場上これをその上拒否するわけにもまいりません。それではできるだけひ
とつ努力してみよう、しかし
総会は二十八日に
迫つておりますので、二十八日の
総会までに新
社長を就任させろということは、時間的に非常にむりであるし、われわれも自信がない。それではひ
とつ総会は一、二週間延期させてもらいたい、その間極力努力してみましようということを申しましたが、
総会の延期は罷りならぬということで、これも
承知してもらえませんでした。それでとにかくできるかできないかわかりませんが、そう強く命ぜられた以上は、その線に沿
つてやれるだけのことをやらなければならぬと思いましたので、そうなれば
復金側は先に人選を命ぜられて
候補者を提案しておるわけでありますから、まずその線に沿
つて具体的に問題を進めてみるのが
順序だろうと思いまして、その日の帰りにすぐ
復金を訪ねました。
ちようど二宮君がまだ残
つておりましたので、
二宮君にその旨を話したのであります。
司令部の考えでどうしても新
社長を入れろということで、われわれは命令を受けた、こうなればぜひとも何とかその実現に努力しけなればならぬ、ついては君の方で前も
つて三人のリストが出ておるし、その線に沿
つてひ
とつその
候補者に具体的に
折衝してもらいたいということで、それを依頼してわかれたのであります。そのときに
候補者のリストの第一に載
つておりました
日野原君にまず
二宮君が
折衝したわけでありますが、
日野原君が就任の内諾を
復金並びに私の方に
報告に來たのが二十五日であ
つたように
記憶しております。大体
日野原君に交渉するまでの経過はただいま申し上げたような次第であります。