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1948-11-29 第3回国会 衆議院 農林委員会 第11号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十三年十一月二十九日(月曜日)     午前十一時二十二分開議  出席委員    委員長 坂本 實君    理事 田口助太郎君 理事 井上 良次君    理事 圖司 安正君 理事 寺本  齋君       佐々木秀世君    重富  卓君       八木 一郎君    山口六郎次君       菊池 重作君    清澤 俊英君       永井勝次郎君    成瀬喜五郎君       小林 運美君    寺島隆太郎君       飯田 義茂君   的場金右衞門君       松澤  一君  出席國務大臣         農 林 大 臣 周東 英雄君  出席政府委員         農林政務次官  伊藤 郷一君  委員外出席者         農林事務官   山添 利作君         農林事務官   田邊 勝正君         專  門  員 片山 徳次君         專  門  員 岩隈  博君 十一月二十七日  委員野原正勝君辞任につき、その補欠として木  村公平君が議長の指名で委員に選任された。     ————————————— 十一月二十八日  市町村農地委員会及び都道縣農地委員会の委  員の選挙に関する特例に関する法律案内閣提  出第三六号) の審査を本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した事件  市町村農地委員会及び都道縣農地委員会の委  員の選挙に関する特例に関する法律案内閣提  出第三六号)     —————————————
  2. 坂本實

    坂本委員長 ただいまより会議を開きます。  日程第一、市町村農地委員会及び都道縣農地委員会委員選挙に関する特例に関する法律案内閣提出第三六号を議題に供します。まず政府委員説明を求めます。
  3. 伊藤郷一

    伊藤政府委員 提案説明を申し上げます。農地改革は順調に進捗いたしまして、すでに農地買収も百八十万町歩、賣渡しも百五十万町歩に達し、予定通り本年末をもつて一段落いたすことになりました。農地改革の成功は、言うまでもなくポツダム宣言に基くわが国民主化基本方針を忠実に果したというばかりでなく、日本農業のがんと考えられていた農地制度を徹底的に改革して、農業経営を順当に発展させるための基礎をつくつた意味で、日本農業の将来に対しても大いなる意義を有するものでありまして、まことに喜びにたえないところであります。  さて農地改革の推進に懸命の努力を拂いました農地委員任期も、近く終了いたすことになりました。すなわち村の委員は本年十二月下旬に、縣の委員は、明年二月下旬に任期終了し、総選挙をいたすことになるのであります。ところが現行法地主自作小作という階層区分從つて新しく選挙人名簿作成するといたしますと、事務的に買収令書や賣渡通知書交付が遅れており、過渡期にありますために、所有権が旧地主にあるか新自作にあるかということについて、疑問の場合が少からずあるわけであります。さらにそれを押して新たに名簿作成いたしましても、農地改革後においては自作が八〇%ないし九〇%にも及び、地主小作がおのおの五%前後を占めるにすぎない状況となりますので、現在の地主三、自作二、小作五という階層別委員の定数が農村の実情に合わないことは当然であります。この二つの理由によつて本年は新たに選挙人名簿作成せず、單に補充選挙人名簿作成にとどめ、現在の選挙人名簿及び補充選挙人名簿をすえ置いて、旧階層によつて選挙をすることにいたしたいのであります。なおかかる措置は暫定的でありましてできるだけ早い機会農地委員会の構成を全面的に改めるために、農地調整法改正法律案國会に提出いたすつもりであります。從つて委員任期昭和二十五年三月三十一日までと短縮いたしたのであります。提案がおくれてまことに申訳ない次第でありますが、何卒御審議の上すみやかに可決あらんことをお願いいたします。
  4. 坂本實

    坂本委員長 以上政府提案理由説明伺つたのでありますが、これに関連いたします質疑を願う前に、この際農地改革進行状況につきまして、農地部長田邊勝正君より補足説明を求めます。
  5. 田邊勝正

    田邊説明員 農地改革買牧及び費渡しについての今日までの経過を報告いたします。  去年三月末に行われたのが第一回でありましてその後回を重ねること現在まで八回であります。それで最後のものが十万三日の買収でありまして、それまでの累計買牧地面積を申しますと、これが百七十九万八千六百十五町歩ということになつております。そのうちで田畑別を申し上げますると田がそのうち九十四万四千二百十六町歩、それから畑が六十八万二千三百八町歩となつております。それから所有別で申しますると、在村地主不在地主と二つありますが、在村地主の方から申しますとその買収せられた所有地の数は八十九万八千七百五十一町歩であります。それから不在地主所有地の数が七十二万七千七百七十三町歩ということになつております。それで賣り渡した今までの面積の約百八十万町歩の中で今日までに費渡したのは、これは期間は定めてありませんで、九月末日までの累計でありますが、その中で賣渡し面積が百五十一万三千五百四十町歩であります。大体割合を見ますると、八五%程度になします。
  6. 的場金右衞門

    的場委員 ちよつとお尋ねしますが、この法律はただ従来の階層によつて農地委員選挙をやりたいという趣旨のようでありますが、従來の階層というものは、さつきの説明にもありますように、もうすでに九〇%は自作になりまして、あとわずかなものが小作地主になるわけでありまして、小作といえどもほとんどなくなつて自作小作か、あるいは自作になるべき数であると思うのでありますが、そういうときにやはり従前の階層によつて選挙を行うということは、私ども考え方ではよろしくないと思う。なぜかと言いますと、今地主の持つていました土地小作農へ賣り渡されて、從來の小作階層というものは自作になり得た喜び誇りを感じておるのでありまして、それがみずから自作になつて今後自分土地として農業経営をりつぱにやつ行く。非常にそこに喜び誇りを感じておるのに、やはり小作という階層による選挙をさせるということは、精神上も非常におもしろくないと思うのであります。今後そういう自作とか、小作とか、地主とかいつたような感情をなくすることが、今後の農村経営の上にはたいへん都合よく行くのであつて、ただ地主土地小作に変つたということでもつて、村なり、部落なりが円満に運営されて行くためにも、地主小作という感情のなくなつたことによつて、村の自治もよくなつて行くのであつて、それが地主がなくなつたのに、いつまでも地主階層選挙をやる、小作がなくなつたの小作階層選挙をやるということは、いずれの面から考えてもいい結果をもたらさないと信ずるものであります。さような意味において何とかこの三階暦による選挙でなしに、別途の方法考えた方がよいと思うのであるが、農林大臣はこれに対してどういうお考えをお持ちなのであるか、大臣の御所見を承りたいのであります。
  7. 周東英雄

    周東國務大臣 お答えいたしたいと思います。御意見はまことにごもつともな点であります。できれば何か別の方法にということも考えられるのでありますが、さしあたつて十月一ぱいで終りますので、選挙人名簿というものを全部つくりかえますのも、なかなか敏速には行かないので、従つて一應この際におきましては旧來の名簿使つて、わずかにそれに対して補正をするという程度にして、補充選挙人名簿作成にとどめて、あとは従来の選挙人名簿使つて行こうということで、特にこの法律をお願いしたわけであります。從つてそういう関係からつくるのでありますから、おのずから任期も短かくいたしまして、昭和二十五年三月三十一日までの一箇年間にいたしまして、その一年間のうちに、おのずからすべての土地所再権の移轉その他が全部大体完成するでありましようから、その際に改めて新しい方法選挙した方が適当であろう。こういうふうに考えておるわけであります。
  8. 的場金右衞門

    的場委員 今大臣の御意見のごとくで場あるとすれば、ここに御提案になつておるような法律でなしに、今あります名簿を一本にして地主とか小作とか自作という感情の残らない選挙になす方法が私はあり得るのではないかと思うのであります。かような法律をつくつて、今までの名簿を利用するのならば、その階層の垣根をなくして選挙のできる方法考えられないのでありましようか、私どもはさような方法考えてもらいたいと思うのであります。
  9. 山添利作

    山添説明員 仰せの点は私どももいろいろくふうをいたしたのでありますが、何しろ仰せのような状況になりまして、村はすべて自作農が圧倒的に多いわけであります。從つて將來農地委員会選挙階層別でなくて、全村選挙になるべきであるという考えを持つております。しかしながらやはり農地委員会の仕事といたしましては、農地引上げの問題でありますとか、その他の農地関係を取扱います関係上、やはりそこに小作的な利益、あるいは地主的な利益を、それぞれある程度反映するところの機構を持たなければならないと思うのでありまして、従つて村選挙でありますけれども、おのずからそこにある委員小作的な利益も代表されており、地主的な利益も代表されておる、こういう新しい方法考えなければならぬと思つております。しかしながら当面の問題といたしましては、なかなかそれだけのことは全然今までに例のない選挙方法でありまして、案を得ておりませんと同時に、現在の過渡期におきましては、農地所有権が移りましたといいましても、これは事務的といいまするか、農地の賣渡し買収が、計画は完成されましても、まだその令書交付でありますとか、登記だとかいう点が遅れておりまして、いわば過渡期にあるわけであります。それらのことが非常に複雑化しております。従つて一年間は現行法によりまして、前階層による選挙を行う、そうして次の近い機会におきまして農地委員会を全面的に改める制度について、改正法の御審議を願いまして、それからにいたしたい、こういう考えをもつております。そういう意味でとりあえずここに今回改選をいたしまする委員任期は一年、こういうようにいたしておる事情であります。
  10. 井上良次

    井上(良)委員 ちよつとこの際伺いますが、まだ買收未済田畑はどれだけ残つておるか、それから將來さらに農地委員会を設けて、農地買牧関係するいろいろな紛争、の他を解決するために委員会を存続さそうとするのですが、その場合に一体紛争対象となるような予定される問題、それからその対象田畑というものは、およそどれだけある予定かということを伺いたい。
  11. 山添利作

    山添説明員 買收につきまして、特にこの十二月三十一日までに買收し得るような計画都道縣農地委員会できめるような費目をつくりまして、全部今年内に終るように努力をいたしております。しかし中には寸たとえば福井縣におきましては地震がございまして、書類がなくなつたということのために残るものもございますし、それから大きな都市における都市計画の区域内で、これを買収すべきや、あるいは買収をしたあとで、農民の方にただちに解放すべきや、あるいは政府において、その所有権を五箇年間留保すべきやというような地区も若干ございます。そのほか山間僻地等におきましては、趣旨不徹底というようなことのために、なお今後に少し買収対象となるべき農地が出て来ることも予想されます。しかしそれらの数字は、明確には申し上げることはできないのでありまして、ございましても、せいぜい一万町歩そこそこぐらいなものじやないかというふうな推測をいたしております。大体今年度内には終るけれども、例外的に来年以降に持ち越すものがある、こういう見方をいたしておるのであります。  それから將來いろいろ紛争等の問題についてでございますが、農地委員会任務といたしましては、これは永久的な問題といたしまして、小作関係の取扱いをいたしますと同時に、それ以外に廣い意味における農地管理と申しましようか、農地の、甲の農家から乙の農家への移轉等につきましても、農地委員会が承認するという形におきまして、ある程度の統制をいたすわけであります。こういう事柄は数量をもつて予測することは困難だと思います。そのほか交換分合の問題でありますとか、未墾地買收というような事柄は、これは長きにわたつて続くわけでありまして、そういうような事柄が今後における農地委員会の主たる任務である、かように考えております。
  12. 井上良次

    井上(良)委員 さような説明によりますと、全國一律に農地委員会という常設機関を設置して、処理する対象が非常に縮小されたことは、事実であります。それにやはり相当額國庫補助を出さなければならぬ委員会でありますから、この際政府行政整理その他いろいろ重要な問題を控えておるときでありますから、いつそのこと、この委員会は來るべき十一月末に選挙いたします農業調整委員会に本任務を委嘱して、農業調整委員会農地買收後の処理をするようにされたらどうか、その方が実際はいいではないかという氣もいたします。しかしこれは、次に質問いたします。問題があり、それと合せて考えなければならぬのでありますが、もしこの委員会を将来ずつとこのまま常置いたしますためには、少くとも政府は第二次農地改革でもつて、ひとまず農地改革は完了するから、これでもう打切る。現在みづから耕作せずに、小作さしております田畑買収もこのままで打切る。われわれ社会党の方面、革新的な農村指導面人々は、第三次農地改革をやる必要のあることをきわめて執拗に主張いたして來ておりますし、また農村民主化の現状から考えまして、どうしても第三次農地改革をやる必要が必至でありますが、政府ははたして第三次農地改革をやる意思を持つておるかどうかということを伺いたい。特にこの際伺わなければならぬのは、第二次農地改革によつて農業経営が非常にうまく行き、農業生産力が非常に高まるということではない、單に農地耕作者買收されたというだけであつて、実際は耕地整理行つて土地改良農業水利を施しまして、農地交換分合をやつて農地経営生産力の高揚に必要なる国家的対策を加えなければならぬので、ありまして、この面から考えましても、どうしても第三次農地改革をやる必要があると考えますが、これに対する農林大臣の御所見を伺つておきたいと思います。
  13. 周東英雄

    周東國務大臣 お答えいたします。井上さんのお話の第三次農地改革の持つ内容というものはわかりませんが、私どもも現在の第二次農地改革によつて行われる小作農家土地所有せしめて、健全なる自作自営農家をつくるというこの根本の方針については大賛成であり、今日までこれに対しで協力して來たのでありますが、この第二次農地改革の目途としておるところの自作自営農家が、土地所有せしめてできたということだけでは、完全な今後における農業経営遂行その他ができない、こう思うことについては同感であります。從つて一たび土地所有というものを自作農家に與えて、自作農地をつくつた後において、いかなる程度農地制度について考えるべきかということについては、私ども考えております。たとえばその農業経営の面において、集約的に、集中的に合理的にさせるための交換分合というものも、もちろん一つ考え方でありましよう。從つてその第三次農地改革の持つ意味内容つていろいろ考え方が違いますが、しかし私どもの第二次農地改革の目的としておる趣旨、眞に健全なる自作自営農家をつくつて日本農業をどつちに持つて行くかということに対して必要なる農地制度改革は、さらに考うべきものがあると思います。その意味において、一たび済んだ後においての今後の農地をどうするかということについては、さらに考え処置したいと思つております。
  14. 井上良次

    井上(良)委員 それではちよつと申し上げますが、第二次農地改革買収に漏れましたところの東北、北海道の三町未満、あるいはまた関東、関西方面の一町未満耕地、しかもその耕地が、みずから農業経営をするにあらずして、それを小作させておる場合、この小作地買収する必要があるかないかという問題であります。さらにその次は農地交換分合の問題があります。これらを含めました問題が起つて來ますが、現に第二次農地改革買収に漏れたところのこの小作地を、一体政府はどう処分しようとするのか、また土地交換分合に対する大臣としての方針を明らかにしてもらいたいと思います。
  15. 周東英雄

    周東國務大臣 土地交換分合ということは、農業経営上、合理的に経営を進める上において、考えてみなくてはならぬ問題だと思います心しかしあなたがおつしやるように、これはなかなか簡單に行くものではないのであります。土地の地方の問題、また今まで持つている家との距離の問題、また生産物共同加工経営の問題についていろいろ問題があると思う。しかし抽象的、理論的に言えば、交換分合ということは私はやるべき、だと思うけれども、これを実行に移す場合、相当考えないと、そう簡単に行くものではないと思う。私は理想的には、これはやるべきものであり、これを取上げて行くべきものであると思います。また耕作せざる地主を全部やめてしまうかどうかということのお尋ねであると思いますが、これはよほど愼重考えなければならぬと思う。たとえば今非常に苦心をして、あなた方が考えておる第二次農地改革遂行によつて、一たび小作農家自作自営農家なつたあかつきにおいても、これが一度働き手失つて小さい子供ばかりになつたというような場合に、ただちにそれを耕作せざる土地として取上げるという問題も、実際問題として考えなければならぬ。こういう面から考えまして、はたして地主というものを全部廃するのがいいのか悪いのかということを、愼重考え処置いたしたいと私ども考えております。
  16. 井上良次

    井上(良)委員 農林大臣考え方はちよつとおかしいと思うのです。少くともその農業経営という與えられた土地から一つ収穫を上げて、それで農業経営なり、農家生計を維持するというのが今日の物の考え方であつて土地所有によつて、それによる地代によつて生計を営むという時代は過ぎ去つたので、単なる名目的な土地所有によつては、もうとても地主としての生計は維持できないのであります。一町や三町の土地を持つてつて、それで今日の時代生計ができるということは成立たないのであります。その土地をやはり最高度に利用することによつて最高度経営を行うことによつて初めて農業経営が成立つ方向を、ひとつ引出して行かなければならないのであつて土地所有することによつてはとうてい今日生計は成立ちません。その考え方を私は一應伺わなければならぬ。あくまで大臣土地所有観念の上に立つて農地改革をやろうとするのでありますか、土地の合理的な経営行つて、それによつて農家全体及び農村全体の経済引上げようというのかどうかという問題が、農地改革基本であります。この観念がどつちにあるのかということによつて、非常にその結果がかわると考えますから、この点を明確にしておいていただきたいと思います。
  17. 周東英雄

    周東國務大臣 お答えをいたします。井上さんのお説によると、今度の農地改革それ自体においては、土地所有というものを認めざる趣旨に立つて農地改革のように伺いますが、第二次農地改革基本とするところは、土地所有を認めつつ、しかも自作自営農家をつくる。こういうところにその眼目があると私は考える。從つてその土地所有を認めつつ自作自営をさせ、合理的な経営を行わしめて農家経済を高めるという趣旨については毛頭異存ありません。しかしただいま申し上げたように、あなた方がせつかく勢力されてつくられた自作自営農家が一度働き手失つたというような場合に、ただちにこれは耕作せざる土地として取上げることがいいか悪いか、これは実際問題として堅実平和な農村をつくるという見地から愼重考えなければならぬ問題であります。昔から大きな土地を封建的に持つてつて小作人から搾取しておるというような地主の問題に対しては、従来私どもはいろいろいたして来ておる。そういう面を考えつつ、しかも実際面に即應して、せつかくでき上つた自作自営農家將來の問題を考えて最終的に対処して行くべき問題だと思います。
  18. 井上良次

    井上(良)委員 そこのところが非常に重要な点でありまして、私は決して土地所有を否定しておりません。ただ問題は、今日の時代においては、その土地自分耕作せずに他に小作させて、それによつて農家経済は営み得ないのであります。みずから耕作をして収穫物をよけい上げる方法を講じなければ、農業経営は成立たないのであります。だから私は第二次農地改革によつて買収漏れになりました一町未満、または三町未満小作地をこのまま認めさすことによつて日本農家として農村として成立つか、成立たないかという前提に立つております。だからこれを有効に買収するなり、あるいはまた共同経営方向に持つて行くなり、あるいは地主にみずから耕作させるなりの道を大いに講じなければいかぬというのです。その点に対する新しい手を打たなければならぬのじやないかというのがわれわれの一つの主張であります。この点に対する明確な御説明がないのであります。ただここで申し上げておきますが、土地所有者が生活に困つて、みずから耕作できないような非常な不遇な環境に入りました場合は、それは別個の法律的処置を講ずる何かによつて、それらの人々を助ける方法考えたらよいのであつて、それを自分がつくれないから小作をさすという場合、現行小作料ではたして大臣地主経営が成立つとお考えになつておりますか。金納一反当り七十五円では絶対に地主経営は成立ちません。そういう不合理的な状態をそのままにしておいて、それで土地のいわゆる所有権をそのまま認めて行こうなどという行き方は、矛盾もはなはだしい行き方であります。もし土地所有権によるところの収益を中心に考えますれば、ここにおいて小作料を大幅に引上げなければならぬ。引上げればそこに大きな問題が当然起つて來る。この点をやはり明確にしておかなければならぬ。われわれは少くとも自分耕作しないものは、やはり耕作できる人に最高度耕作させる方途を講ずることが、今日狭い土地を抱えて多数の人口を養わなければならぬわれわれとしては、國家的な要請としてそれをやらなければならぬことでありますから、その面においてわれわれは第三次農地改革重要性を認めているのであつて、この点に対する大臣のはつきりした意見を伺つているのであります。
  19. 周東英雄

    周東國務大臣 第三次農地改革という言葉の持つ意義についていろいろ議論があるかと私は思います。ただいまお話のような点、すべての点を包括的に考えて私どもは最善の処置を取りたいと思つておりますが、あなたの今お話の、土地は常に働く者のみに渡すという考え方、これは理論的な一つ考え方かもしれませんが、私ども農村建設のために、眞の農業者をつくるために、特別な場合においては、そういう場合もあり得ると考えます。今のお話を伺いまして非常に氣を強くしたのですが、井上君もまた現在やむを得ざる場合において小作させている、これが今の場合安過ぎるじやないかということについては私も賛成する。これは物償状況、インフレの状況のもとにおいて、すべての物が非常な倍率で上つている場合、今の小作料金納に表わされた形においては、社会的な合理性があるのか、ないのかという面を御指摘になつていると思います。そういう問題は眞劍考えたいと思つておりますが、井上さんもそういうふうに御指摘になつて、やるとすれば考えなければならぬじやないかという点については私も賛成であります。
  20. 井上良次

    井上(良)委員 大体大臣は第三次農地改革に対する明確な方針がまだ定つていない。第二次農地改革が一應完了した後に、次の方向政府として考えたい。但し地代の問題については現行地代は安いという前提に立つておりますが、現行地代が実際上、これはたれが見ても安いということは事実であります。ただここで問題は、第二次農地改革をこれで打切つて、第三次も第四次も、少くとも第二次農地改革によつて買收にならなかつた土地は、このまま所有権を認めて行くという立場に立ちますと、必然的にここに小作料引上げという問題が起つてきますが、この問題はあらゆる問題に影響してくる問題でありますから、われわれとしてはその点に対して十分檢討を加えなければなりません。われわれの方におきのましても、政府の第二次農地改革後における施策を持つて、十分の対策を講じて参らなければならぬと考えております。  なお、農地交換分合についての大臣の御意見は、私の考えているのと同じでありまして、われわれも交換分合が机上の計画通り行くとは考えておりません。これは非常にやつかいな問題でありまして、特に二毛作をやつている地帯におきましてはなかなか簡単に行かない。また耕地整理農業水利、その他農業経営全般等、総合的に考えなければならぬ問題でありますから、これはわが國の農業將來のあり方として、ぜひその方向に持つて行かなければならぬとわれわれも考えおりますけれども、この点に対しては相当われわれ積極的な検討を加えて、一日も早く農地交換分合を行い得るような態勢に、大臣としてもひとつ推し進めていただきたいと思います。なおこの問題に関連して——と言つては、はなはだおかしいのでありますけれども政府は今明日あたり追加予算をいよいよ本國会に出すそうでありますが、その追加予算のうちに本年の災害にあつた耕地の復旧予算は、およそどのくらいに見積られておるかということを、この際明確にお示しを願いたいと思います。
  21. 周東英雄

    周東國務大臣 災害復旧に対しましてはいろいろ案がありましたが、このたびの追加予算中には、大体六十億入つておるようであります。これは全部の災害復旧であります。その他の耕地関係、水産関係、山林関係の細別は、ただいまちよつと記憶しておりません。
  22. 松澤一

    ○松澤(一)委員 井上委員の第二次農地改革による保有面積の処分を今後どう考えるかというような御質問であつたと思いますが、その点に対して私は関連的にひとつ農林大臣にお伺いしたいと思うことは、今度の農地改革農村の民主化をどうお考えになつておるかということであります。
  23. 周東英雄

    周東國務大臣 今日まで行われて来た実績を顧みてみますと、ともかくも農地改革が目的としております小作農家に対して土地所有せしめて自作自営農家をつくり、そうして旧来のようなただ少数の人が多数の生地を所有して、地主として小作料を収納して生活して行くという行き方の改正に対しては、ある程度目的を達しておるものと考えます。
  24. 松澤一

    ○松澤(一)委員 井上委員農林大臣  の質疑應答を聞いていると、ただ農村が甲から乙へ土地所有権を移して、そうして農村の今後のいろいろのものが解決した、こうお思いの上に立つて  おるように承つたのですが、私は第二次農地改革の立法の精神というものは、農村から封建的な小作制度をとる、地主だとか小作だとかいう制度をとる、こういうことに根本があつたのでありますが、ときの事情でやむを得ざる点があつたために、その幾部分かが今日保有面積として残つているものだと今も考えております。從つて眞の農村の民主化をはかるには、農村から地主とか小作という言葉をとることが一番重大である。この言葉自体が結局農業経営に重大な影響を及ぼすことは言をまたないことでありまして、この点に対して地主小作という制度が現にまだ農村には遺憾ながら残つてしまつている。これに対して御見解を承つておきたい。
  25. 周東英雄

    周東國務大臣 新しい日本農村についての古い考え方を拂拭する上において、地主とか小作とかいう名前をなくすることが必要だというお話につきましては同感であります。今度の改革におきましては自作自営農家というものができるのであります。農村としては自作自営農家によつてほとんど全部が充たされると思います。そうなればそういう関係のものはおのずからなくなつて来るのではないかと思います。ただこの際に、先ほどから申しますように、どうしても自作自営農家なつたものが特殊な場合においてしばらくみずからつくれなくて、暫定的に一時これが残るということが、起るのではないか、その場合にどういうふう形で指導をして行くかということは、將來の問題としてやはり考えて行かなければならぬ問題であろうと思うのでありますから、そこを先ほどから申し上げておる。從つてこの際いかなる場合といえども、古い大地主という考え方で昔からあつたような形のものは、今後ともおそらくできても來ますまいし、残つても行くまい。ここに私ども一つの目的がある。そうしてどこまでも私は観念論的に考えたくない。地主とか何とかいうことを考えてはおらない。ただ眞の日本農村というものが、いかなる形に持つて行くかということが考えられることであり、ただいまお話の点もそこにあつたと思いますが、せつかく農地改革によつて平和な健全な農村をつくろうとしておつても、そこにあとにやはり妙なやり方で感情が対立するということになりますれば、これはいけないと思います。そういう面から私どもは今後処置して行きたいと考えております。
  26. 松澤一

    ○松澤(一)委員 今お話を聞いておると、農村から地主小作というものをとつてしまいたいと言う。これには同感だ。将來自営農家というものをつくつて行く。一体自営農家をつくるの、に、どういう構想を持つておられるか。現存農地改革が不徹底の農地改革であつて、そこに理論的の根拠もないのにかかわらず、とうとう二百万町歩巾、何十万町歩かを取除かねばならなかつたということは別にどこにも理論的根拠はありません。ただそうすることが、この際妥当だという程度のことでそうなつたのであります。従つて今日の農村関係から行きますと、どうしてもこの地主小作という制度をとらなければいかぬ。この制度をとる上に、地主土地が現在つくつている小作人に行くか行かぬかということが問題じやなくして、少くとも耕作できない土地所有しておるというような不合理があつてはいかぬ。また今日農村がみずから耕作する土地をみずから所有したいということは、ほんとうに農村に住む人のみ知る感情でありまして、こういう人間的感情を無視して今後の農地問題はありません。從つて今後の農地改革ということが保有面積が、どういう形で分配されるにいたしましても、農村から地主小作という名をとらねばならぬと思つている。また今日の農地改革は保有面積が残されたけれども地主は不満である。小作も不平不満である。なぜ地主も不平不満であるかというと、先ほどからるる井上委員が言われたように、今日の小作によつて生計が営めない。それが收入の目的にならない。收入の目的にならないものを、その他の方面で毛の抜けるほど要求いたしておりますところの農民にこれが解放でき得ないという法がない。所有していても何ら利益がない。またその土地現行法自分耕作地として取上げられるのかというと取上げられない。取上げることもできない。耕作することもできない。ただ所有しているというからの明文ばかりでもつて、そしてむしろ農村には地主小作という名前を残して、まだまだ封建的な制度を残して行くというところに、地主の面から見ても私は矛盾が生じておると思つている。また小作関係から行くと、今申し上げた通り、農民が自分耕作している土地自分所有するという念の強いことは、農林大臣かねて御承知の通りでありまして、一般的には解放されたのに何ゆえに自分だけ保有面積小作人として残つたか。こういうことを考えるときにに、今後の農村の民主化ということを大きく阻害いたしておるのであります。この点に対して私は農林大臣が少くとも分配の方法がどうであろうと、あるいは甲から乙に移るとか、乙から甲に移るとかいう問題に飛躍せずして、一應農村から地主あるいは小作、どつちでもよいからその名前をとるという方法考えてもらいたい。これに対してどういう御成案があるか。いやしくも今日の民主化の上に立ち、しかも農村の今後のあり方に対して重大な決意を持つて御就任なされた農林大臣に、まず私はこの点だけはひとつはつきり伺つておきたいと思うのであります。
  27. 周東英雄

    周東國務大臣 私も同感であります。今日の新しい日本農村としての農民ということとしては、土地耕作する農業者がみずから土地を持つという形に進めて行くのが一つの理念であり、目標であろうと思います。その線に沿つて農地改革が行われていると思うのです。ただそれは例外があると思うのです。というのは、先ほども申し上げた通り、常にそのことを強行いたしますと、実際には無理が起つてくるだろうと思います。そこで必ずしも全部耕作せざる農民が例外的にある。しかしそれは従来のような多数の廣い面積土地所有して小作させて、それから搾取するというようなそういうような観念地主であつてはならぬ。こういうことを考えております。しかも今後における農村の実体といたしましては、せつかくできた自作、自営農家が自己生活の向上とその農業経営の確保からいつても、どうしてもその農業経営については、他の面を大きくいろいろと並行的に考えて行かないと、土地所有しただけで、あるいは土地所有権移轉したというだけで、農村が完全に民主化され、完全に今後の農村が立ち行くものと考えておらない。むしろ今後の政策といたしましては、そういう面をいろいろと勘案しつつ、理想でありますところの自作、自営農家が成立つように農政が進められて行く。こういうことでなければならぬと私は考えているのでありまして、その間に土地交換分合なり、農業経営の協同的なものもできましようし、またある場合においては、協同組合を中心とする流通経済に入つてのいろいろな協同体も考えられます。そういうものをあわせ考えて初めて農村の民主化が行われ、農村経営の合理化が行われ、農家経営に確保ができる。かように私は考えております。
  28. 松澤一

    ○松澤(一)委員 ちよつと農林大臣ピントがはずれでいると思うのです。農林大臣は今度の農地解放で往年のような大きな地主がなくなつた。ごもつともである。大体表面から見て大きな地主はなくなりました。ところが日本が小さい農業経営だということも御存じだと思う。小さい縣では六反歩、大きい縣では一町歩という保有面積が、これまた一つ地主を構成いたしまして、少しもその限度においてはとられておりません。ただ一地方に行けば昔から大地主がどれだけという程度ははつきりいたしておりましたけれども、中小地主の多い日本におきましては、ほとんどその影をひそめておりません。ここが今後の日本農地改革の眼目で、むしろ第二次の農地改革などは一應ならしを打つたにすぎない。民自党はその政策の中で第三次農地改革反対だ。こういうことを言われているそうでありますが、それがほんとうかどうか、第一いつた農林大臣は今後の農業経営を協同組合的にやるとかどうとかと言うが、これも私は御質問申し上げておきたいと思うのです。今後の日本農業経営をこのままの土地制度において、そうして共同経営に進めて行くのか、あるいは共同作業程度農業経営考えて行くのか、今後日本農業経営は非常にむずかしくなつて参ります。このときになおかつまた一方では、たとえば六反歩にしても、一町歩にしても、そういう保有面積をもつ地主がいて、しかもその地主は同じ農村に住みながら、わずかの土地をつくることもしなかつたという、この地主の性格をよく見なければならぬと思つております。何ゆえに農村にいて五反歩や六反歩の土地を持つていて、今度の解放にもらつ外におかれ場て、おれのところは農地改革には関係がないという地主が残つたかということを考えなければならぬ。農村にいる地主自分土地を持ち、持つことに興味を持つて、長い間搾取の立場に立つた者がたくさん日本にあつたということが、今日の日本の奴隷制度を深めたゆえんであります。これに手がつかずしてただ一郡で一つ、一村で一つというような大きな地主のみの土地が解放されたからといつて、これて農村小作人が解放されていると思つたら早計であります。従つて私は少くも過去農村に住みながら、わずかの土地をつくることもせずして、小作料によつて生活をして來た階級は、きよう日では農村の脱落者であります。これを何で保護する理由があるか、所有権を持つているだけで土地がたつとくなつた。食糧がたつとくなつた。從つてその所有権を確保しておかなければどうなるかしれぬというような、今までの自分が社会に仕盡した仕事も考えずに、ただ農村の進展を阻害し、農村経営を阻害するような小さな地主がはびごつているということこそ、私は今後の農村農地開放場の重大なることだと思つております。この点に対して、今民自党では第三時農地改革は反対だと言うから、中小地主は残してこのままの農業経営体で行こうというお考えであると思わなければならない。またそういうことであつたから過去の日本農業経営というものをどういうふうな形に持つて行くか、一体共同作業程度に持つて行くのか、共同作業的な共同経営に持つて行つて、そうして日本農業経営をされて行くのか、また將來自由党は自由経済を提唱して、外國からどしどし安い食糧が來ればけつこうじやないか、こういうようなお考えを持つているとも聞いておりますが、そういうことで今日の日本の人口——いわゆる日本の民族が職事を放棄して、平和国家、文化國家を建設するという國が、外国に食糧を依存するような計画で、それでよいのかどうか、そういう点をひとつ抽象的でもよろしいから伺つておきたいと思います。
  29. 周東英雄

    周東國務大臣 お答えします。今のごく小さな地主が残つて、みずからも作らず小作料でも現在は食つて行けぬ宙ぶらりんな存在がある。これに対してはどうするかというお考えに対しましては、先ほど井上さんにお答えいたしましたように、過去の第三次農地改革後における日本農地制度としては、あらゆる面と関連して考えて行くべきだというお答えをいたしたことによつて御了承願いたいと思います。私どもは今後の日本農村につきまして、せつかく自作自営農家をつくつたとしても、非常に耕作反別というものは平均いたしまして過小であります。この過小農というものが中心となつて日本の今後の農村経営をして行くことについては、それは各面から考えなければならぬ。先ほどお話したような土地交換分合というようなことも一つ行き方でありますが、もつと根本的に言えば、これらの小さな自作自営農家所有面積を持つておる農家もが、ひとたび災害の発生した場合においては、従来のごとく地主に依存することもできない。これらに対してはどうするか、そういう問題については相当考えなければならぬでしようし、また今お話のあつたように、私どもは食糧は今後は外から全部依存して、どうでもよいというような考えは持つておりません。しかし少くともすべての食糧というものを、この小さな面積における日本農業だけで、自給自足して行こうとい考え方も、なかなか困難な事情がある。むしろ日本としては、生活の必需品の半分以上を占める工業生産品というものは、その原料の多くを外國に仰がなければならぬというような立場において考えるときに、これを獲得するについて、裏づけとなるべき輸出関係について考慮しなければならぬときに、農業の持つウエートというものはある程度大きいものがあるのであります。この点は一面にでき得る限り自給度を高めるために、適地に農作その他の食糧の生産をあげるということはもちろん考えなければなりませんが、それがために不適地にまでもむ、やみに食糧を植えさせることが、農家経営の上において正しいかどうかということはよほど考えなくちやならぬ。むしろ農家経営をあげるためには、適地適作ということを考えて、裏づけとなるものを生産することがよいこともありましよう。しかしそれらのことはすべて大きく日本農地で言えば、それらの牧野等のすべての土地というものについての総合的な利用計画というようなことを考える。その点においては土地の調査が行はれ、総合利用計画を立てられて、過小農形態にある日本の農法をどちらに持つて行くというようなことを、考えて行かなければいけないのではないかと思います。これらのものを全部含んで考えるときに、なるほど農地政策が立ち、農村が立つと考えているのでございまして、私たちはただ土地交換分合所有権の移動があれば、それによつてすべてが終れりとは考えておらぬこと、だけを申し上げておきます。
  30. 清澤俊英

    清澤委員 今の残された耕作地の地主保有地の開放の問題でありますが、大臣は大きな地主が大体開放せられておるから、こういう建前で農村の民主化はそうさしつかえがあるまい、それよりもむしろ表面は健全な農家経営という形で現わされておるけれども、それによつて近代農村化する過程をとれば民主化が達成できる、こういうような御答弁のように考えておりますが、農村の民主化は土地の開放とともに、農村における部落封建制の徹底的な排除でなければならぬ。それは新潟縣で申しますならば、市島であるとか白勢というような大きなものは、大体においてその経営内容は、もう一つ都市の産業資本家もしくは金融資本家の域に達しておりますから、農村の中には大きな力になつて封建制を発揮しておるように実は見えておるが、そう大したものは残つておらない。実際封建制の最も強く残つておるのは山間部であります。山間部のわずかな土地を有するものが一番残つてつて、一番そこに悪い点が残されておる。そういう者がわずかの土地を、先ほども松澤君、井上君の言われる通り、割にも合わない土地を持つてなぜがんばつておるかということは、旧來の封建制を維持して何らかの形において自己をそのわずかな農村の中にまだ存立さして行こうという大きな意図が動いておることであります。結局市島とか齋藤とかいう何百町歩地主というような大地主でありますならば、ほかにみずから生きる道を、轉換を求めることができるが、こういう小さなものは商人になることもできない、他に道を求めることができないから、どうしても昔の自分の封建制を何らかの形において残そうとしてがんばつておることは事実でありまして、その認識がなくて、大きなものを開放せられたからというお考え方であつたならば、これはとんでもない日本農村の解放における、民主化の障害に対する見解の大相運が農林大臣に来ておる、こう考えます。同時にひとり耕地のみでなく、山村においては山地主、こういう者が残つて、平場におけるところの地主さんは全部土地を開放して、ある意味から見ますならば生活上の窮迫をきわめ、從つてそこを切抜けるためにむりな封建制を発揮しておるということが見受けられるが、山間部においては悠々としてこの木材のインフレ下にやつてお訪れる。今日ここに薪炭の決議案が出、第一項において「薪炭價格の引上げ実施に伴い原木價格の不当なる騰貴を予想せられるが斯くては生産に悪影響を與うるをもつてこれが措置に遺憾なきを期すること」こうやつて農林の林産小委員会で第一番に取上げられるごとく、こういう不当利得を一面に持つておる。これは地主さん総体の上から見ても非常な不合理な存在である。いわんやこれが山林にいたつては、はなはだしい障害をもつておる。こういうことを考えますならば、今の封建制を打倒して参るということになりますならば、日本の山を中心にしました山村農家、と言いますのは山際の農村、それは日本ではほとんど現実の情勢でありまして、約八割くらいはそんなものではないかと思う。こういうことをほんとうに考えましたならば、第三次農地改革を徹底して、封建制の基本になる地主保有というものを、徹底的に改革して行くという考え方がなければならないと私は思う。從つて山林の開放等をあるいは個人收入に移すような開放にするか、あるいはこれを國家の管理にするかということを行つて、少くともこういう矛盾を排除して行かなかつたならば、ほんとうの完全な農村民主化考えられない。從つて、そういう面でかりに農業協同組合をつくつてみる、ほかの農村の振興を考えてみましたところで、そこに経済上の非常な優勢なものと劣勢なものが出て來る、こういうようなことで何かの仕儀でまた土地の兼併が行われるというような危険性を持つであろうし、経済上の附帯権力というものが一つの仕事をすることによつて、依然として農村に残るであろうということも十分われわれは現在見ておる。こういう点から言いますならば、私は先ほどから井上君、松澤君の言つておられる、こういう地主の保有農地に対する開放は、もう必然的に議論の余地はない、こう思つておるのでありますが、その点をもう一度はつきり土地だけを中心にして御意見を伺つておきたい。それから山林等に対してこれだけのものを残すことが、はたして日本農村民主化に対しますところの障害とならないと断言せられるかどうか、同時に山林等の開放もしくは管理替に対しまして、いかなる御意見をお持ちになつておるかということをお伺いしておきたいと思う。
  31. 周東英雄

    周東國務大臣 とり残された小さな地主の問題について再三のお尋ねでありますが、これに対しましては先ほどお答え申しました通り、第三次農地改革後における農地対策として、あらゆる面を考えてどうやつて行くかということについて愼重に考慮しておるということを申し上げるに止めておきます。それから山林についてのお尋ねでありますが、これは土地以上に私は国土保全、耕地保全または森林資源の保全という立場から、最も愼重考えなければならぬ点と思うのであります。この点については、必ずしも今の山林所有者を分割して小さなものにわけるということがよいとも私は考えません。どこまでもこれは民有地でありましても、國土の保全、しかも恒久的な國土の保全して、われわれはわれわれの後に来るもののために考えなければならぬ点であります。さなきだに荒れております山林の荒廃をそのままにしておくことは、日本の國土保全上心配の点であります。今後民有地について特に民有林の経営安定という立場と、それから國土の保善という土場から、ある程度は國がこれに援助しつつその植林、伐採等については、ある程度國が制約を加えるというような形にしつつも、長期に資金の要る森林経営について相当考えを持つて行かなければならぬと考えます。從つてこの山林の管理替とか、あるいは移轉という問題については、よほど愼重に取扱うべきであつて、むしろ現在の経営方法について、しつかりした安定した方法考えなければならぬと私は考えております。
  32. 成瀬喜五郎

    ○成瀬委員 さいぜんからの質疑應答によりまして、農林大臣農地改革に対して非常に御熱心であられるということについては、私は敬意を表しておるのでございます。但しこの際に一、二点お伺いしたいのは、第二次農地改革小作地の八割を開放することによりまして、農民を精神的な面においてまた同時に経済的な面においても、両方から解放し、眞に日本の民主化をはかるというところに意図があるのでございますが、またそれと同時に、食糧の増産という面におきましても大きなる期待を持つて来たのでございます。食糧の増産に対する期待は、もつぱら農民の増産意欲を高進せしめる精神的な面にあるのでございますが、さような点等も検討してみまする場合、過般の農民解放祭の行われました当時において、いろいろな意見がありましたが、大体数字上においてある程度の成功を見ておると考えておるのでございます。けれども足一たび農村の中に入つて見ますと、なかなか農村における第三次農地改革が不徹底であるという点を、各所に見出す次第でございまして、第三次農地改革を断行せよということは、平野農林大臣時代におきましても、すでに言明をいたしておつた次第でありますが、自由党の内閣になりましてからは、こういつたことに対するところの期待が非常にはずれて、もとの地主制度が復活されるものであるというようなことに考えられて、地方における地主勢力というものは、気分を通じていろいろの点におい農村の民主化に悪影響を與えておりますから、この際農林大臣は第三次農地開放を新たなる構想のもとに試みてみようという御答弁でございますが、私はその内容についてもう一つ具体的にお伺いしてみたいと考えておるのでございます。  松澤委員も言われて、おりましたように、農村の民主化はまず地主小作といつた考え方を拂拭清算することにあるのでございます。しかるに未だにそれが容易に清算されずに、ともすればわが党の内閣ができたのであるから、ここ五年、十年後においては元の地主勢力になるんだということが、車中においても放言されておるということは、これは自由党においてもはなはだ迷惑でなかろうかと思うのでありますけれども、從來からの性格から考えましても、そういうことによりましで、第二次農地改革あと始末が不徹底に終るということであつたならば、日本農村のために、国家再建のためにたいへん迷惑千万であると存ずる次第でございます。大体山間部の農村におきまして第二次農地改革が発表された際、その数字的な点から検討いたしまして、第二次農地改革などということは、山間農民に何ら利益するところはないというような意見も出ております。それは何であるかと申しますと、山間部の農村は大体平均反別が二反歩とか、あるいは三反程度の小農業経営でありまして、全國平均一町の地主保有面積を認めた際における末端の山村における恩典というものは、はなはだ薄いというので失望いたしましたが、第二次農地改革をいたしまして、さらに第三次農地改革を断行して、山村における農民といえども、この開放の恩典に浴するものであるというように、われわれは進んで來ましたが、さようなことを考える場合に、山村における農民に対しましては、どうしても零細地主を清算する方向に進んでもらわなくてはならないのでございまして、再三の御答弁の中には、新しい地主ができる場合、いわゆる耕作せざる場合におけるところの立場を考えて、若干の地主制度も認めて存続することが、かえつて何らかのそこに緩衝的な制度として認められていいのではないというようなことがございますが、われわれは新しい農業協同組合、いろいろな新しい方法をもちまして、そういう今までのような地主制度は完全になくしてしまうことにおきまして、新しい農村経営ができるものである。かように考えられますが、農村のいわゆる氣分的な面を全体として清算するために、今残存いたしておるところの地主保有面積を清算する意図があるかどうかという点をお伺いいたしたいのでございます。  さらに食糧増産におきましては、精神的な面からの増産はある程度成功いたしておりますけれども、しかしながら面積の面からするところの食糧増産がなされておりませんので、農地改革を通しまして、この方面に対する考え方をどういうふうに織込んで行かれるか、今のままでありましたならば、地方における富農の人たちが、ある程度面積の面においていわゆる余裕面積を持つておる。かように考える次第でありますのは、大体日本全國の耕地面積は、六百万町歩近いものであるということもとりさたされておりますけれどもう少くとも五百七、八十万町歩はあろう、こういうように考えておるにかかわらず、昨年の農業センサスによりますると、これが五百二万町歩である。こういうことを考えあわせまして、食糧増産、食糧供出の面においてはなはだ遺憾千万でありまするが、こういう面において、将来新しい農地改革方面に持つて行かれることができるかどうかお尋ねいたしたい。  なおもう一つは、農地委員のいわゆる予算上における問題でございます。大体三十八億程度の最少限度の希望を、全國農地委員大会等においても、農林当局にいろいろ折衝の結果、その数字をつかみ、その程度を期待いたしておつたのでございますけれども、追加予算におきましては、その一割、三億八千万円程度しか確保せられないということで、非常に失望いたしておりまするが、かようなことでは実際いかに農地改革に熱心であられる農林大臣といたしましても、経済的な予算面から、この方面が大きく障害となつて現われると思いますので、農林大臣農地改革のほんとうの眞意を理解いたしまして、この、予算面におけるところの努力を、大藏大臣に折衝を試みておるか、また今後においてもその覚悟をなされておるかどうかという点につきまての御意見を承つてみたいと思う次第でございます。さらにまた身分保障等におきましても、これは單なる書記というような建前からいたしまして、どうも非常に不安であるということを言われておりまするが、さような点につきまして、今までどういうような努力がなされて来ておられるか、現在のところ自作農の特別措置法が十二月末をもつて一應完了するというようなことになつておりますので、この農地改革農地調停法と表裏一体をなしておるところの自作農の特別措置法、これが一應打切りということになりますと、農地調整法それ自体も、何だかそれは打切りだというような印象を地方農村に與えておるということは、はなはだ遺憾千万でございますから、さような点が一点、農地委員等に対する身分、待遇上における立場において、非常に足らざる点がありますがために、両者の関係からいたしまして、農地改革はもう民自党内閣のもとにおいて打切るというような意見さえ出て來ておりますので、こういう方面に対する対策をいかに樹立されて行くかということをお伺いしてみたいと思うのであります。
  33. 周東英雄

    周東國務大臣 お答えします。第一番目の残存地主の問題でありますが、これはたびたび申しましたように、一番農地制度のがんとなつてつた地主の存在は、これは大部分取除かれまして、今回小さい地主の存在は民主化という点においてはあまり影響はないと思つております。しかしむしろそれでなくして、小さい地主が二反、三反持つて小作料等も現在の制度では立ち行かない、そういうものは残して置こうという御意見もあつたのであります。さような点からして、これは別な立場から考えてみたいと思つております。これと同じようなかつこうで、地主は放逐しようという観点でなくて、別の立場から考えてみる必要があるであろう、こう思つております。  それから第三の農業槽産と農地改革の問題です。これはちよつと御質問の趣旨がわかりかねましたが、せつかく土地を保有して自作農なつたけれども、これを中心として食糧増産をせしめるには、その持つておる土地の改良、あるいは生産に必要な肥料その他の農機具を適期・適正に配給するとか、農産物償格と工業生産品の償格の均衡を得せしめるとか、こういう面が処理せられない限りは、農地改革だけでは食糧増産の実はあがらないと思つております。それから農地委員会に対する予算の問題であります。  これは特に御心配の点であろうかと思います。追加予算を今明日に出すことになつておりますが、その中には私どもの方としては、ぜひとも農地委員会の専任職員その他の事務費は入れてもらうようにいたしております。大体中に入つておると考えております。
  34. 坂本實

    坂本委員長 この際暫時休憩いたしまして、午後引続いて質疑を継続いたします。    午後雲。時四十一分休憩      ————◇—————     午後三時十分開議
  35. 坂本實

    坂本委員長 休憩前に引続き再開いたします。井上良次君。
  36. 井上良次

    井上(良)委員 午前中質疑を行いまして、本案に対する政府側の意見も大体わかつたのでありますが、ただわれわれが一應法をつくる者として、これを通過さす者として考えなければならぬ点は、この提案理由にもあります通り、現在地主三、自作二、小作五という階級別委員の定数が、農村の実情に合わないことは当然である、という文句がありまして、これをこのまま認めて、古い選挙人名簿によつて、單に補充選挙人名簿をつくつて選挙をするということになると、農地改革はこの年末で大体その八、九十%は完了する。そうするとおれはもう地主でないのに地主の代表になつておらなければならぬ。おれは小作でないのに小作の代表になつておらなければならぬというような、変な結果が生れて参りまして、これではこの一年間の任務遂行する上に、ほんとうに農地委員としての熱意のある活動ができない結果を來すとわれわれは考えます。そこでわれわれ委員の間においていろいろ相談をいたしましたところによると、政府は至急に、現在の農村の実情に合う、いわゆる第二次農地改革進行に伴つて農村階層別の実情に合致する選挙人名簿をつくつて、それによつて選挙を行うというようにした方が、法の構成からも、また実際からも妥当であるという意見に大体一致いたしております。そういう方向にもし修正をしました場合、政府はこれに対してどういう処置をとられますか。一應この際伺つておきたいと思います。
  37. 山添利作

    山添説明員 國会は國の最高機関でありますから、その趣旨に従うまでであります。
  38. 重富卓

    ○重富委員 議事進行に関して。……大体質疑も終つたようでありますから、この際質疑を打切られんことを望みます。
  39. 坂本實

    坂本委員長 重冨君の動議に御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  40. 坂本實

    坂本委員長 御異議なしと認めます。さようとりはからいます。  本日はこれにて散会いたします。     午後三時十四分散会