○
景山参考人 私
参考人に
参つたのでありますが、元
逓信省の
役人としてでなしに、会社の
経営者の立場から申し上げたいと思う。
拜見いたしました
資料につきまして申し上げたいと思います。先ほど
有竹君も申されましたが、現在の
逓信省を
二つに
わけて、その上に
ミニスターというものを置く必要があるかどうかということであります。私は現在の
逓信省を
二つにお
わけになることには賛成します。そうしてお
わけになる以上は、やはり各省というものをお置きにならなければいけないと思います。もし省というものを置くことができないでお
わけになるなら、まだ現在のままの方がましだと思う。と申しますのは、か
つて運輸通信省というものがありまして、そのときに
逓信院という外局があ
つたように記憶しております。また
逓信院が
内閣に属してお
つたときもあります。その間におきまして、
通信事業の
経営者がどのくらい苦労したか、これは少しく
役人をやられた方はみなおわかりだと思いますが、
大臣のない
事業というものくらい
事業の運行を妨げるものはないのであります。ですから私がいただいたものにありますように、
二つに
わけてそれが
郵政省と
電氣通信省になるものとして御賛成する
わけであります。
なぜこれを
二つに
わけることに私が賛成するかと申しますと、現在
郵政だけの方から考えてみましても、二十万以上の
從業員を持
つておる一万
數千の
郵便局がある。それからこの調書によりますと、約一億の
保險の
加入者を持
つておる。それから一億
數千の
郵便貯金の
加入者がある。こういうような
仕事が一体それだけでも省としてや
つて行けるのかどうか。
民間の者としては、とてもそんなものでは
民間ではや
つて行けない。
郵政省だけでもむずかしい、半身不随になるおそれがある。これはだれでも
事業を経営した者はそう思う。しかも頂載いたしました
通信復興五箇年
計画というものを拜見いたしますと、この二ページのところに
郵便のことが書いてあるのですが、
昭和九年度における
状況を
目標にして、それを
昭和二十七年度に大体二割増でや
つて行こう。その
昭和九年に対する
目標ができ上るのはこれから四年
あとです。
昭和九年という年はどういう年であるかと申しますと、
逓信省としては、おそらく
大正に第一次
欧州戰爭直後から十數年來一番悪い
通信事業の
状態だ
つたのであります。ですから
通信事業特別会計をこしらえて何とか打開しなければならない。
昭和九年の
通信事業の
現状というものは、おそらく
大正の末期からかけて最も悪い時代であ
つたと思う。その
昭和九年の
状況を
目標にして、それがかろうじて
昭和二十七年にしかできない。そういうふうなことでは非常に困るのであります。先ほど
有竹君が言いましたように、
通信料金はだんだん上るばかりで、サービスはだんだん落ちる、とてもたま
つたものではないのであります。その
意味から考えまして、せめて
郵政だけでも
わけて、
昭和九年とは言いません。
昭和十三、四年程度までに持
つて行くように努力してもらわなければ、
わけてや
つて行くより方法はなかろう、こういう
意味で賛成する
わけであります。
それから大体今度の問題の要点が
電氣通信省というところにあるのであります。もともと
郵政と
電氣通信というものは
一緒にあるのがどうかと思われる。と申しますのは、古い沿革から
言つてもそうですが、
郵政というのは
駅逓寮から來ておる。それから電信というのは
工部省のものです。それを
一緒にして
通信省をこしらえた。
郵政の方は
人間がや
つて行く
仕事です。そうして世界的に
赤字が出る、これは
國家が補償するものであります。
人間を非常にたくさん使う、
赤字が出る。これは
一般の最低の
意思の
疎通機関ですから、これに対して
赤字が出て、國が補償する。これは世界中各國ほとんど同じです。ところが
電氣通信は
郵便と違いまして、
郵便のように片一方だけに
意思を傳達するのではなくして、同時にお互いの
意思の
交換をする。しかも同時に
交換するために、
日本のような長いところでは、いろいろな機械なり局なり、そういうものが同時に完全に連絡しなければできない。言葉をかえて申しますと、非常に多くの
設備がいる
わけであります。一度にたくさんの
設備資金を入れなければならない。その
設備資金というものは、これは
民間でも同じですが、金を借りてや
つて行けるものであります。そうしてその
設備によ
つてあが
つて來る
料金その他によ
つて改良をして行くとか、
借金を拂
つて行く。非常にたくさんの
設備資金がいる。しかしながらその
設備資金に対する
借金の支拂はもちろん、
從業員の給料のごときものも、これは
赤字ではやれるものではない。当然自給自足でやるべきものであ
つて、平素一時にたくさんいらぬが、常にたくさんの
人間を
使つて行つて赤字でや
つて行かざるを得ない。
本質の
郵政と、同じものでやるのは間違いであると思う。お
わけになるのがしかるべきであると思う。ことに
電氣通信ですが、ここに私の昔の友達がおられてはなはだ恐縮ですが、とにかく困
つたことなんです。拜見いたしますと、この三年の間に戰災をこうむ
つたものは直
つていない。私はけさ百五十人乗の
トレーラー・
バスに乗
つて來たんですが、
民間の
トレーラー・
バスは、戰前になか
つた百五十人乗の堂々たる
バスができておる。ところが
電話の方はどうかというと、まだ戰爭中のものは直
つていない。現在われわれのうちに
電話をつけていただいておりますが、こちらで
電話で話すときは
向うが通じない。
向うが話をするときはこちらが通じない。かりに
日本橋から
銀座にかけると、
銀座の五十七年番にかけると
お話中です。
向うでは話をしていない、こつちも話をしていない。ただその間を結ぶ線が足りないために
お話中だ。三べんかけるとよくて二度、大体二回に一度は話中です。それから悪くな
つたときに直してくださるかというと、最近は非常によく直してくださるが、直してもら
つたものがすぐ悪くなる、これが
現状なんです。そうしてこれを拜見しますと、
あと何年間のうちに約九十万をおこしらえになるという。私は
昭和十一年に
外國から帰
つて来ましたが、
アメリカなり、イギリス、フランス、
ドイツあたりで生活して來た者から考えますと、
日本の
電話というようなものは何と
言つていいのか、不便のはなはだしいものです。そのために
一般の
産業界がどれくらい不便をしておるか、
電話はかからない、でかけなければならぬ。でかけて
行つても間に合わない。
ほんとうを言えば、机の上で一時間で全部話することができるのを、一日も二日もかかる。こういうのが現在の
電話の
状態です。
從つてここに頂載したものに書いてありますように、五箇年間に約九十万とかおこしらえになる、これも
けつこうですが、これどころの騒ぎではなしに、戰爭でいたんだもので現在通じておるものが、
ほんとうにスムーズに話ができるようにするには、なみたいていのことではない。とてもあの
通信省ではや
つて行けない。
電氣通信省でもできれば、少しはその方に一生懸命になるのでよくなるのではないか。この
意味からい
つて、ぜひ
わけてもら
つてよくしてもらいたい。
有竹君が言いましたように、いつにな
つたらこれができるだろうというようなことでは困るのですが、まあ組織からこしらえて行かなければならぬのですから、そういうふうに直していただきたいと思います。
それから私個々の問題について二点ばかり考えておる点があるのです。
一つは
電氣通信省の案を拜見いたしまして、
機構の図を拜見いたのですが、これには
郵政省と違いまして総務長官というものができておるのであります。今日國民が一番困
つているのは何かというと、税金が高いことであります。それから会社の給料を上げられない。首切ることはしませんが、やめた
あとは絶対に入れないで、そうして給料でも何とか拂
つて行こうということになる。
役人をふやすということはよほど考えものです。しかしながら自分が会社を経営しておる立場から言いまして、この制度は置かれた方がいい。この制度はちよつと面白いと思う。と申しますのは、
民間でもたとえば毎日の
仕事というものは、われわれの方では全部専務なり常務なりがや
つておる
わけであります。そうして私としましてはどういうぐあいに会社を導いて行くかという点、つまり外部の情勢がどうな
つておるか、あるいは資材その他産業の
状態がどういうぐあいに進んで行くだろうか。それから
日本の財政なり金融なりがとういうぐあいにな
つて行くだろうかというようなことを、國内的にあるいは國際的に考えて行く。そうして平素の
仕事は全部常務にまかして行くというやり方であります。おそらく
電氣通信省では、需要省の動向とか、
一般の必要な資材に対する産業
状況、資金の調達、その他いろいろな点につきまして、これは大蔵省の
関係があるでしようが、こういうものについてはやはり次官がやるべきでありまして、また
法案を見ますと次官は電波廳と
航空保安廳を直接に監督して行くことにな
つているが、こういうことになりますと、どうしても平素の業務を調整して、総合して行くのには、一人の専門家を置かなければいけないと思うのであります。もつと卑近な例で申しますと、たとえば私の会社の
関係している
仕事につきましては、ずいぶん新聞、雜誌がたくさんあります。ところがそういう新聞、雜誌を丁寧に読むのは常務であります。そうしてここだけ必要だというところにマルをつけてまわして來る。私はそういうものよりむしろ外部の新聞を読まなければならない。外部の会合に出なければならない。そうしてどういうぐあいにこの
仕事を持
つて行くかという、一年先なり半期先なりのことを考えて指導して行かなければならない。それには今までみたいに、指導すべき次官が朝から晩まで、いつ
行つてもお客さんがあり、年がら年中遅くまで殘
つているのではばかになるばかりで、決していい考えは出ない。やはり外へ出て外部の人に十分接触して、ゆつくり考える時間を持たなければだめだと思います。これは新聞、雜誌に対する例ですが、例えば工場のことでもそうです。工場における常務というものは、工場の内部を全部地面を歩いて見ております。ところが私たちは決して工場内部を見て歩かない。むしろ高いところから自分の工場を見る。よその工場を見に行くにしても、われわれは同業者の方は見に行かない。それよりほかの工場を見に行く。それによ
つて参考になる点を探す。ことに
電氣通信関係が現在のような悪い
状態から抜け出て、何とかもう少し
ほんとうに國のためになるようにや
つてもらうためには、これくらいの人を置いていいと思うのであります。おそらく総務長官とかスタツフとい
つても、それに要する金はせいぜい知れたもので、一年間に幾ら使
つたつて數百万円は使いきれないと思うのであります。ところがもしもこの総務長官がよく
仕事を調整し、総合して
行つて、そうしてみんなが能率よく働けるようにしていただけば、かりに
電氣通信の方に二十万の
從業員がお
つて、その一割なら一割の能率が上れば、おそらく一年間に十億、二十億の金が浮くと思うのです。スタツフの方に使う金のごときは、もしもそのスタツフが
ほんとうに、ここに企図しておられるようにや
つてさえいただけば、それによ
つてあげる利益の何百分の一あるいは何千分の一にすぎない。その
意味において私は賛成しますが、どうかスタツフの方は十分に総合調整して、人が働きやすいように、効果のあるように働かすようにしてあげていただきたいと思います。
それから私は
電氣通信省のことについて、もう一点考えておりますのは、この案に賛成でないので困るのですが、この
電氣通信省設置法案と
郵政省設置法案と、両方ざつと目を通したのですが、そうしますと、
郵政省の
設置法案の三十三ページの第二十六條では、「
郵政業務の監察を行わせるため、
郵政省に
郵政監察官七百人以内を置く。」ということにな
つております。そうしてこの図解を拜見いたしますと、
郵政省には監察局という
一つの局があり、その下に三部ある。しかも地方においても大体これと同じようにや
つて行くような
趣旨にな
つております。ところが
電氣通信省設置法案の方を見ますと、十六ページの第九條、第十條でありますが、第九條に「
大臣官房においては」「監察を行うこと(総務長官官房において行うものを除く。)」第十條に「総務長官官房においては、総務長官の職責に属する事項に関し、左に掲げる事務をつかさどる。」として「監察を行うこと。」ということを書いてあります。
電氣通信省の方では監察を非常に軽く見ているのであります。それにつきまして「
通信省における
郵政業務の
機構改正について」というのをちようだいしたのですが、その第四ページを読んでみますと、一〇というところに「現在の監察組織では左の諸点に対する最低限度の要求すらも之を充たす事が出來ない。イ、
郵便物の窃盗、抜取その他
從業員による犯罪に対する責任の帰属を明にする事。ロ、人事
行政に対し効果的な統制を加える事。ハ、中間における運営乃至
行政機構の制肘を受けない方法で業務の実情及び欠陥をありの儘に
通信大臣の耳に入れる事。」こういうことができないと書いてありまして、この「ロ」の「人事
行政に対し効果的な統制を加える事。」と「ハ」の「中間における」云々を「
大臣の耳に入れる事。」これは
郵政だ
つて電政だ
つて同じだと思います。なるほど
郵便局の數は一万何千もあ
つて、電政に比べてずいぶん多いと思います。また
保險、貯金など金銭を扱うこともずいぶんあると思うのですが、しかし
電話の
料金というものも相当大きな額であります。ことに今日のように自働でがちやがちややるときに、はたしてそれだけの
料金を拂わなければならぬのかどうか。私たちの友人で
日本橋あたりに住んでおる者がしよつ中、通話よりたくさん
料金がかかることがあるというようなことを
言つているのでありますが、そういう
料金の点とか、また
電話を新たに
設備したり、それを移轉したり、修繕したりする場合、そういう場合におきましても、悲しいことですが、これは
從業員ではないと思いますけれども、いろいろなことを聞く
わけであります。またこれは最近あ
つたことで、新聞にもでかでかと出ておりましたから、当然言うていいと思うのですが、
東京中央電信局において電信による為替の詐欺があ
つたということであります。そういたしますと、
電氣通信の方におきましても、
料金の
関係なり、
電話の新たな架設とか、移轉とか、あるいは電信為替の詐欺の問題とか、またここで買いまする資材は莫大なもので、
郵政におきましては紙と布があればいいと思うのですが、こちらはそうは行かない、いろいろな器具機械を、たとえば
日本電機とか東芝あるいは住友、いろいろな会社からずいぶんのものを買
つているのであります。そういう物資調達ということもあるので、こういう方面のことを考えまして、かりにここに書いてある
料金、
電話の架設、移轉、その他電信為替の詐欺、詐欺ということはいけないかもしれませんが、それから資材器具等の調達に関する責任の帰属を明らかにするために、相当監察の必要があるじやないかと思うのであります。
郵政の方の監察は、なるほど多いし、金銭も取扱いますから一局、その下に三部置き、地方にも堂々たるものをお持ちになるのもいいでしようが、それに比べて電政の方があまりに少な過ぎる。電政における監察というものを、あまりに軽く見過ぎてはいはしないかと私は思
つております。その点につきましては、やはり利用者といたしましては、公正な取扱いを受けさしていただきたい。その
意味におきまして、監察制度というものを電政におきましてももう少し働かしてもら
つて、官房の一課なんかでや
つていないで、少くとも一部か一局くらいおこしらえにな
つたらどうか、こう思
つている
わけであります。
それからもう
一つ、
有竹さんのちよつとお触れにな
つた人事局の問題です。あの書簡によりまして今度
全逓に対して、これはその他
一般労働の問題がありますが、どういうぐあいにこれから
組合が認められて行くか存じませんが、今までの
状態でありますと、
政府の方として非常にたくさんやるべき
仕事があります。要求されない場合に、逆にどんどん
從業員のためにや
つてやらなければならぬのではないか、こう思うのであります。
それから
民間のことばかり申し上げて恐縮ですが、
民間の方から行きますと、人事
行政、
労務行政を扱うのは大概各社でも専門に近い——専門と言いませんでも、それに専心し得る業務地位を與えている。その
意味で
人事局があ
つてもいいのではないか。ことに労働
組合の行き方がいろいろかわ
つて來て、
政府の方で
從業員の福祉のために大いにやらなければならぬことが多いから、
人事局があ
つていいのではないかと思います。
もう
一つ最後に申し上げておきたいのは、これに附随して出ているのかどうか、私
参考人でありますから存じませんが、特別会計法を直さなければならぬのではないかと思います。もし今
國会に特別会計法が出て來ないといたしますれば、これは法のほかにいろいろこまかな手続がいるのでありましようから、できるだけ早い期間に
國会におかけにな
つて、法規をおきめになりませんと、間に合いかねると思います。今度出ておれば仕合せでありますが、出ていなければ、できるだけ早くお出しにならぬと困ると思います。これは蛇足でありますけれどもつけ加えておきます。私の
意見はこれだけであります。