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1948-11-13 第3回国会 衆議院 人事委員会労働委員会連合審査会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十三年十一月十三日(土曜日)     午前十時四十七分開議  出席委員   人事委員会    委員長 角田 幸吉君    理事 木村 公平君 理事 赤松  勇君    理事 玉井 祐吉君       淺利 三朗君    中野 武雄君       根本龍太郎君    菊川 忠雄君       島上善五郎君    前田 種男君       松澤 兼人君    米窪 滿亮君      生悦住貞太郎君    高橋 禎一君       最上 英子君    水野 實郎君       相馬 助治君    徳田 球一君   労働委員会    委員長 綱島 正興君    理事 尾崎 末吉君 理事 山下 榮二君    理事 川崎 秀二君 理事 中原 健次君       倉石 忠雄君    久保田鶴松君       辻井民之助君    村尾 薩男君       安平 鹿一君    山花 秀雄君       中曽根康弘君    大島 多藏君       木下  榮君    赤松 明勅君  出席國務大臣         内閣総理大臣  吉田  茂君         國 務 大 臣 殖田 俊吉君         労 働 大 臣 増田甲子七君  出席政府委員         内閣官房長官  佐藤 榮作君         内閣官房次官  橋本 龍伍君         臨時人事委員長 淺井  清君         臨時人事委員  山下 興家君         臨時人事委員  上野 陽一君         総理廳事務官  岡部 史郎君     ————————————— 本日の会議に付した事件  国家公務員法の一部を改正する法律内閣提出  第七号)     —————————————
  2. 角田幸吉

    角田委員長 これより人事委員会労働委員会連合審査会を開きます。  私が主たる委員会委員長でありますから、本連合審査会委員長の職務を行います。  ただいまより國家公務員法の一部を改正する法律案議題として質疑に入ります。お諮りいたします。発言者の順序につきましては、委員長に御一任を願いたいと思います。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 角田幸吉

  4. 木村公平

    木村(公)委員 政府委員にお尋ねいたしたいのでありますが、本年七月二十二日ダグラス・マツカーサーより内閣総理大臣にあてたる書簡に基きまして、國家公務員法が立希されたものであると私どもは仄俣をいたしておるのであります。しからばこの私どもが現に配付を受けました國会公務員法の原案は、前戸田内閣において立案されたものと私どもは解釈いたしておるのでありますが、政府におかれましては、前芦田内閣において立案されましたる國家公務員法と、現在われわれが審議をいたそうといたしまする國家公務員法との間に、何らかの変更がありましたるやいなや、まずお尋ねをいたしたいのであります。しかして万一変更がありました場合には、どの点が、いかように変更されているかということも、あわせてお尋ねいたしたいのであります。
  5. 淺井清

    ○淺井政府委員 お答えを申し上げます。ただいまここに議題となつております國家公務員法は、ほとんど全部前内閣から現内閣に、いわば引継がれました草案でございます。ただその後諸般の情勢によりまして若干変更をみたところもございますが、それは技術的な点を除きましては、おそらくは百二條政治的行為の制限の関するところだと思います。
  6. 木村公平

    木村(公)委員 ただいまの政府委員の御説明によりますれば、まさに審議を遂げんといたしまする國家公務員法案は、前芦田内閣において立案され、そのままこれが踏襲されたものであることは、ほぼ明らかになつたのであります。しかしてわれわれはこのダグラス・マツカーサー内閣総理大臣あて書簡をも勘案いたしまして、この法案こそはまさに超党派的に審議をいたさなければならないということを、今さらに考えざるを得ないのであります。しかして前内閣によつて立案されましたこの法案に対しましては、われわれは十分なる審議を遂げなければならぬのでありまするが、書簡の精神から参りまして、この法案審議の完了は、今や全國民のすこぶる注目をするとろであり、國会議員といたしましても、この審議の遅速ということは、まことに大きな関心を寄せざるを得ないところでありますから、私は同僚議員諸君にお願をいたしまして、この審議がすみやかに完了されんことを切に冒頭にお願いする次第であります。
  7. 角田幸吉

    角田委員長 それでは前田委員
  8. 前田種男

    前田(種)委員 私は最初に、委員会が開かれておりますので、至急に総理大臣出席を重ねて要求いたします。総理大臣出席されるまで、まず人事委員長にお尋ねいたしますが、本法改正は今木村委員質問お答えなつたように、前内閣から引継がれた改正案であることは、私たちはよく承知しております。しかし政府が出しましたものと、議会審議は別でありますから、議会といたしましては、この法案に対しては愼重に審議を進めて行きたいと考えます。またそれほど重要な問題でありますから、その意味において、木村委員が申されましたように、超党派的にわれわれは愼重審議を盡して、りつぱな成果を得るように、われわれ自身努力して行きたいという決心を持つておるものでございます。人事委員長にお尋ねいたします。  第一点は、第二條範囲の問題であります。現行法から申し上げますと、改正案は非常に縮小されております。この問題が一番重要な問題の第一点であるのでございます。この点につきまして本委員会としては、この第二條範囲の問題については、十分掘り下げて檢討をしたいと思いますが、それは後日に讓りまして、なぜ第二條範囲現行法からさらに縮小せなくてはならなかつたかという点について、詳細なる御答弁を願いたいと思います。
  9. 淺井清

    ○淺井政府委員 特別職範囲を縮小いたしましたことについての御質疑と拜聽いたしました。この特別職に從來入つておりました者には、いろいろ違つた種類のものがございますが、これを二つにわけますれば、大体は國務大臣その他いわゆる自由に政治的な任命を行うべき必要のあるものと存じます。これは今度の改正案におきましても若干の出入りがございますがゐ大体前とかわりはない範囲にとどまつておると思います。第二は現業廳公團の職員その他が特別職に入つていたわけでございますが、これが今度は一般職なつた。おそらく御質疑の御要点はこの辺にあるものと拜察するのであります。この点につきましては、いわばこの前に國家公務員法を制定いたしまする際には、この点についていろいろと問題がございまして、一應これを特別職範囲に入れたわれでございますが、このたび元帥の書簡にもございますように、勤労を公務にささげまする者と、私企業にささげます者との間における顯著なる区別ということになりまして、これを一つ國家公務員法にまとめる。そうしてなお勤労あり方によつて國家公務員法の適用を受けるに適しない形のものがありはしないかたとえば鉄道でございますとか、大藏現業でございますとか、このようなものは、公企業としてこれを國家公務員よりももつとそとに出していい、こういう趣旨書簡の中に見えておりますが、そういうところでこれを特別職から取除きました次第でございます。
  10. 前田種男

    前田(種)委員 委員長答弁に対する質問は、あとに重ねて私はいたしたいと思います。幸い総理大臣が見えましたので、時間を有効に使う意味におきまして、早速総理大臣質問したいと思います。  第一点は、吉田内閣労働政策根本方針をこの際明らかにしていただきたい。と申し上げますことは、本会議におきましてもいろいろ質問はございましたが、いまだ施政方針の演説もありません。今日の労働問題は國内の重要な問題でございますから、新内閣として労働政策大綱根本についていかなる抱負職見を持つておられるかということを、この審議冒頭において明確にここで指摘していただきたいということを、まず最初総理大臣に要望いたします。
  11. 吉田茂

    吉田國務大臣 お答えをいたします。吉田内閣といたしては、健全なる労働組合発達を促したい。この点については種々研究いたしておりまするが、詳細のことは労働大臣からお影えいたさせます。
  12. 増田甲子七

    増田國務大臣 前田さんの御質疑お答え申し上げます。吉田内閣労働政策性格いかんという御質問でございました。私はどの内閣においても、事労働政策に関する限り、本質的の相違があるべきものではないと思つております。すなわち今総理の言われたことく、健全なる労働運動馴致、健全なる組合運動確立というところへわれわれは邁進いたしまして、急速に経済復興を庶幾する、これはもういわゆる超党派的の國策でなくてはならぬと思つておる次第でございます。そこでそれだけでは少し抽象的に失するというような、あるいは御質問もあろうかと思いまして、さらに私は所管大臣でございますから、やや具体化して申し上げますが、終戰後におきましては、御承知のような種々経済的な惡條件のもとに、また思想的方面におきましても虚脱状態國民ひとしく陷つてつたというわけで、健全なる労働組合運動馴致という標準から照してみて、とかく遺憾な点が多々あつたことは、前田君も御同感であろうと思つております。しかしながら時日をけみするとともに、だんだん組合運動も健全なる方向へ向つて來ておる次第でございます。ことに去年の十月あたりからは、いわゆる民同というような運動もございまして、私ども労働組合というものは、組合法に明示された方向に向つて行かなければならぬ、こう思つております。すなわちそういう意味において超党派的の政策でなければならぬと思つておりますが、組合自体自主性を獲得する、あるいは主体性を獲得する、あるいは民主性を多いに発揮する、あるいは責任性確立、こういう方向へわれわれ吉田内閣といたしましては邁進いたしたい、こう存じております。なおこまかな点につきましては御質問に應じてお答え申し上げます。
  13. 前田種男

    前田(種)委員 総理大臣並びに労働大臣の一應の答弁がありましたが、重ねて質問いたします。私たち終戰後いち早く労働組合をつくつて日本民主化のためにほんとうの労働組合の役割を完全に果さなければならぬとして、今日まで自分の微力を盡して來ておるわけでございます。さらに終戰後において、マツカーサー司令官はいち早く労働組合の助成、援助あるいは自由なる運動を認めて來たのでございます。このよつてつて來理由というものは、日本労働組合の力において民主化しよう、あるいは敗戰後日本社会秩序を、労働組合の力において回復しよう、あるいは日本経済を、労働組合の力において急速に復興しようというような、各般の意図があつたことを認めておるわけでございます。それゆえにわれわれは敗戰後日本労働組合運動あり方というものは、戰前におけるところの労働組合運動あり方、あるいはマルクス主義的労働組合運動あり方ではいけないという信念を持つております。敗戰後日本現状というものはまさにただ單に階級的な問題ばかりではなくして、それ以上につぶれた日本をどうして再建するかというポイントが、労働組合の使命であることを固く確信しております。しかし過去三年間の労働組合運動実績の中におきましては、いかんせん一部の行き過ぎ労働組合運動のあつたことを、われわれは労働組合運動当事者として、責任者として、はなはだ遺憾に思つております。そのことがマツカーサー書簡の発せられる一つ理由をつくつたということを、重ねて私たち労働組合運動の今後の健全なる発達の上において、はなはだ遺憾に思つております。しかしこれは一部の行き過ぎだけの責任でなくして、敗戰後におけるところの日本社会秩序、あるいは政府当事者政治力の貧困、あるいは生活状態の困窮、あるいは就職口、職場におけるところの実際の事情等各般情勢が、われわれの意に満たないような一部の行き過ぎた傾向に行つたということを、われわれはまた認めるのでございます。また労働組合運動は二年や三年において完成されるものとは思つておりません。少くとも五年、十年、あるいは一世紀以上の長い年月を経て、労働組合運動の眞の目的が達成されると考えておるのでございます。そうした観点において、いろいろ過去三箇年の実情は見て來たのでございますが、特に吉田さんにお聞きしたいことは、日本國民の大半の者、特に勤労大衆立場労働組合立場からいえば、第一次吉田内閣はまさに反動内閣だ、反動政府だという印象があつたのでございます。それに対して吉田さんは、昨年の正月のあいさつの中にも、不逞やからというような言葉を使われたことが、必要以上に社会を刺戟したという経驗もあるのでございます。今回は一年数箇月の野党時会を経られまして、第二次吉田内閣が成立しておるのでございます。この間におけるところの社会の変化、情勢、また吉田さん自身実績の考え方におきましても、いろいろな経過があつたと思います。それゆえに新しい吉田内閣は、労働政策全般にわたつて、一体どういう新しい角度から日本再建に努力するという決意をもつておられるかということを、吉田さん自身に承りたいと考えます。先ほどの答弁は、ただ單に健全なる労働組合運動を希望するという程度でありましたが、これは組合運動あり方であります。政府労働政策をどういうふうにやつて行こうというこの大綱を明確にしていただきたいと考えます。これは労働組合が自主的にやる運動ならば、労働組合に任したらいいのでありますが、政府自身労働組合に対してどういうような指導、援助を與えようとするか、あるいは労働政策の重要な点をなすところの働く者の義務能率、これを改正法では強く要請しております。それと表裏一体をなすところの待遇問題等に対する労働政策を、一体どう考えるかということについて、総理大臣大身から明確なる方針を、この際委員会を通じて天下にはつきりしていただきたいと考えます。
  14. 吉田茂

    吉田國務大臣 お答えいたします。私が不逞やからと申したことについていろいろ誤解も生じ、諸君におかれても種々攻撃を集中せられますが、あのときの声明を、よくごらんくださつたならばよくわかると思いますが、必ずしも勤労大衆をもつて不逞やからと申したわけではないので、勤労大衆の背後に隠れて、政治的の目的をもつてこれを操從するやからありとすれば、これを不逞やからとするもので、勤労大衆そのもの不逞やからと申すのでは決してないのであります。でありますから、あの声明書——声明書でありましたか何でありましたか忘れましたが、それをよくごらんくださるならば、私の趣意は御了解願えると思います。それで今日の日本復興に残されたものは、勤労者労働階級が、眞に日本復興に助力する——というより協力する、あるいは眞に主体になつて日本復興をはかるという氣持になつて來なければ、日本復興はできない。私は勤労大衆愛國心に訴えて日本復興をはかる。これが残された唯一の日本復興の途であるということを確信いたすので、從つてこの問題については、ただいまお話の通り氣持はかわつておりませんが、さらによほど研究し、勉強いたしたいつもりでおります。今後は私の内閣といたしては、労働者生活の安定なり、あるいはまた生活保障なり、これは十分はかりたいと考えているので、またそのためにも健全なる、進歩的な組合ができるようにいたしたい、こう私は考えております。しさいのことは、具体的な方法については労働大臣より申し上げます。
  15. 前田種男

    前田(種)委員 重ねて総理大臣にお聞きいたします。もちろん労働組合が自主的に日本再建のために努力を盡すということは、言うまでもないことでございます。私が総理大臣に聞きたいと言つておりますことは、政府労働組合をどう助成し、指導し、あるいは労働政策に対して眞にはつらつた意氣をもつて労働大衆勤労意欲に燃えるような政策を、どういうふうに掲げて明るい希望を持たせるかというところの大綱を、吉田さんに示していただきたいということを質問しているわけでございます。さらに憲法第二十七條にありますところの「すべき國民は、勤労権利を有し、義務を負ふ」というこの條項は、ただ單に一行に保らないところの文章でありますが、この中に含まれておりますことは、義務権利とを明確にしております。義務権利を強く主張する反面においては、政府としては少くとも義務が全うできるところの待遇を、ベストを盡してその対策を立てなければならぬと私は考えます。改正案の中心をなしておりますところのものは、いろいろな意味から批判をされておりますが、私はあくまでも勤労大衆が、百パーセント能率を発揮できるような態勢を立ててもらいたいということを、私自身望んでおります。しかしそうするためには政府は万難を排しても、そういう態勢に導き得るところの待遇——これまたいろいろな難関はあろうと思いますが、あくまで具体的に示して、苦しい中からもこういう状態にするから、勤労大衆ベストを盡して日本再建のために努力してもらいたいという方針を、いち早く示さなくてはならぬと思います。この点について重ねて総理大臣の所況を承つておきたいと思います。
  16. 吉田茂

    吉田國務大臣 御趣旨はごもつともであります。のみならず同感であります。公務員法提出を急ぎ、またこの議了を急ぐことの趣旨はそこにあるのであつて公務員法によつてまず國家公務員地位を安全にし、保障をし、また地位保障によつて性格も十分明瞭にして、よつてつて他勤労大衆に及ぼしたいというような趣旨から、まずもつて國家公務員法の制定を急いでいるわけで、御趣旨には決して沿わないわけではなく、つとめて御趣旨に沿うように努めるつもりでおります。
  17. 前田種男

    前田(種)委員 今の問題はその程度にして、待遇問題に触れましたから、この際総理大臣の明確な回答を求めておきたい。問題は結局、給與問題に関するところの追加予算をどうされるかという点でございます。本法改正案は、御承知のように現行法を改惡しようとするところの改正案でございます。その原因がどこにあるかということは別にいたしまして、現行法を改惡しようとする今日の情勢、しかも改惡しようとするものを、一日も早く國会審議を終えてもらいたいということが、政府の熱望しておられるところでございます。それと切離すことのできないところの給與問題は、遅々として予算化してない。提案されるところまで行つていないという現状でございます。会期は今月一ぱいでありますが、そう長くはありません。その会期のうちで早くこの改正案を上げてもらいたいと熱望しているところの政府は、それと表裏一体をなすところの給與の増額の問題につきましては、遅々として進まないというこの現状では、本法審議の上においても非常な支障があると私は見ております。どうしてもこの臨時國会中には、追加予算案を出さなくてはならないという押し詰められたところに來ております。そういう関係にある今日、追加予算を含むところの給與ベースの引上げの問題について、総理大臣はどういう決意をもつておられるかという点を、この際明瞭にお聞きしたいと思います。
  18. 吉田茂

    吉田國務大臣 お答えいたします。給與の問題については政府は最も苦心をいたしております。まず第一生活安定基準をどこに置いたらいいか、その基準に基いて一般財政から考えてみて財源はどうするか。御承知通り日本の今日の財政は非常に窮屈になつてつて、あるいはごく極端なことを申せば、財源枯渇言つてもいいくらいな状態になつているのであります。この窮乏した國家財政のうちから新しく財源を見出す、あるいは新給與ベースを考え出すということについては、もしあなたが当局に立たれても必らず同じ考えを持たれると思いますが、決して容易なことではないのであります。ゆえ政府は提案は急いでおりますが、それについてはなお各方面とも連絡をとる必要があつて、ただちに提出する運びに行きませんが、なるべくすみやかに提出したいと、大藏大臣も、労働大臣も、その点については日夜苦労をいたしているということを、どうぞ御了承を願いたいと思います。
  19. 前田種男

    前田(種)委員 今のお言葉を聞きますと、國家財政が非常に枯渇している。非常に困難であることも私は知つております。しかし吉田総理大臣は、総理大臣であるとともに、民自党の総裁であります。民自党が過去一年数箇月の間野党でありましたが、民自党自身、枯渇している現実はよく知つておられるはずであります。にもかかわらず民自党は、今日の情勢において取引高税を全廃するという決議案を出そうとしている状態であります。財源が枯渇して非常に困つておる今日の現状において、追加予算が出せないという非常に苦しい状態におかれております。その反面に、党の政策に縛られておるという今日の現状です。これをどう打開するかということは、総理大臣の手腕にまつ以外はありません。今のお言葉を聞いておりますと、関係方面ともいろいろ打合せをしなければならぬということでありますが、私が今日までに知る範囲内におきましては、追加予算案に対しましては、まだ関係方面とも十分打合せるところの案すら、できていないということを聞いております。この眞意が那辺にあるかは別といたしまして、そういうことのために時間をとつておれば、この臨時國会会期は終つてしまうのでございます。そういう悠長なことは許されない。党の政党として強く言われることは当然で頭りますが、党から強く言われる政策と、この給與問題を解決して一日も早く追加予算を出すということと、どちらが重いか、私は総理大臣にもう一度承つておきたいと思います。それとともに過日人事委員会から内閣に勧告されましたところの六千三百七円という勧告案は、総理大臣はこれを妥当と認めておられるのか。これはむやみな案だと認めておられるのか。この点に対する総理大臣の見解を明らかにしていただきたいと考えます。
  20. 吉田茂

    吉田國務大臣 お答えいたします。私は六千何百円という給與が正しいか正しくないか、研究中であります。また私としてはなるべく給與は多い方にしたいと思う。また生活の安定を進めたいということは深く考えておりますが、これもまた一般財源との間の権衡を考えなければならぬので、その点について今当局はしきりに研究いたしております。またさきの話は、いまだ関係方面との間に何らの話がつかぬというのではなくて、話は進行中であるのであつて、進行していないのではないということを、どうぞよく御承知願いと思います。
  21. 前田種男

    前田(種)委員 この問題は重要でありますから、重ねて一点総理大臣決意を承つておきたいことは、会期が制約されております。そうしてこのままで行きますならば、もし臨時國会追加予算案が上程されずに行きますと、おそらく來年の春にならなければ追加予算審議はできないというような情勢も考えられます。そうなりますと三千七百円で、この夏から來年の春までやつて行くことができるかどうかという、実際問題を考えてみましたときに、どうしてもこの臨時國会中に追加予算案を出して成立せしめまして、官公吏生活の安定を確保してやらなければならぬということは、絶対條件であろうと私は考えます。しかもこれが議会に提案されましても、その審議期間というものが重要でありますから、一体何日ころまでに追加予算案提出する意思があるかどうか。何日までと明確にできなければ、およそ何日くらいの余裕の間には出す見当だという点を、はつきりしていただきたい。なぜ私がそういうことを申し上げるかというと、さきにも申し上げますように、会期は今月末をもつて終りでございます。それに十日も一週間もかかるということになりますと、審議する期間はありません。どうしても苦しい中からでも追加予算案を編成して、國会に提案しなければならない運命におかれておりますところの給與ベースの問題について、総理大臣は大体いつころまでに出す意思がある、それまでには最善の方法を盡しますという点についての、重ねての御答弁を願つておきたい。
  22. 吉田茂

    吉田國務大臣 お答えいたします。先ほど申す通りに各方面との間の連絡なり、一般財源との照し合せについて研究中でありますから、おつしやる通り何日までに出すということは明言できません。ただ言い得ることは、なるべく早く研究を切上げて提出したい。この希望以上に何日ということをおつしやられても、私として明言はできません。
  23. 前田種男

    前田(種)委員 そういたしますと、本臨時國会には、必ず追加予算案は出すということは御返事願えますか。
  24. 吉田茂

    吉田國務大臣 これは今日のところでは出したいという希望以上に申し上げることはできませんが、なるべく出す考えであります。
  25. 前田種男

    前田(種)委員 私は給與の問題をさらにあとで同僚委員質問すると思いますから、これくらいにいたします。  マツカーサー書簡が発せられたことにつきましては、世間では命令だ、勧告だ、あるいは單なる書簡だというような意見がいろいろ言われております。これは前内閣の引継ぎでありますが、吉田内閣はこれをどういうふうに考えるか。しかも考える根拠は一体どこにあるかということが第一点、第二点はマツカーサー書簡の内容は廣汎多岐にわたつております。この多岐にわたつている公務員法を非常に急いでおりますが、國鉄の問題、專賣の問題、逓信の企業問題、今申し上げました待遇改善の問題等々がございます。この問題は一括して今臨時國会中に全部通過せしめるところの決意があるかどうかという点を、はつきり総理大臣答弁を承つておきたいと考えます。
  26. 吉田茂

    吉田國務大臣 お答えいたします。マツカーサー書簡にするところのものは、命令なりや、いなや、勧告なりや、いなや、私は勧告なりと了解いたしておつたのでありますが、昨日もそういう質問があつたものでありますから、さらにマツカーサー書簡を再読してみましたが、これは要求を含んだ勧告というふうに考えた方が正しいのではないか。單なる勧告ではなく、要求も含んでいるというふうに了解すべきものだと私は考えます。それから次のお尋ねについては、すでに國会に上程する手続をとつているはずであります。
  27. 前田種男

    前田(種)委員 それからなお掘り下げて論議することはあとにいたします。さらに承りたい点は、吉田さんは外務大臣を兼務しておられます。それでありますから、総理大臣なり外務大臣の資格において見解をはつきりしていただきたいという点は、マツカーサー書簡の発せられたのは七月でありまして、それから今日まで数箇月の間に、連合各國の情勢も非常にかわつております。特にマツカーサー書簡をめぐるところの極東委員会におきましても、いろいろな話題に今日なつております。さらに過日の対日理事会におきましても、マツカーサー書簡をめぐつてロシヤ代表が反対することは、今さらここで取上げる必要はありません。しかしイギリス代表は、この問題の審議にあたりましてはマツカーサー書簡が行過ぎだ、行過ぎだというその内容につきましては、少くとも現業と非現業とを区別しなければならない。そうして團体協約権を與えなければならないということを強く指摘しておるのであります。さらに中國代表は同じく対日理事会のときにおきまして、但しこの際日本の反動分子が、これを機会に健全なる労働組合の発展を阻害するような行動に出ることに対して、十分警戒をする必要があるという強い警告を発言しておるのでございます。さらに過日のアメリカの大統領選挙と前後いたしまして、トルーマン大統領は、労働法規の問題について強い意思表示をしております。われわれは世界各國の中で、アメリカが一番民主主義的に発達しつつある國だというように認識いたしております。そのアメリカが、労働法規の惡法と言われておりましたところのタフト・ハートレー法の廃止をするという言明を、トルーマン大統領はいたしております。新大統領選挙後におけるところの労働長官は、労働法規の改正の骨子としてクローズド・シヨツプ制を採用しなければならぬという、強い意思表示をやつていることも外電が示しております。こういう情勢下におけるところの公務員法改正審議というものは、まさに重要であろうと思いますので、七月に発せられましたところのマツカーサー書簡と、その後の情勢の変化が、各方面に強く叫ばれておるこの情勢を、総理大臣はどういうふうに認識されるかという、総理大臣の認識の程度を明確にしていただきたいと考えます。
  28. 吉田茂

    吉田國務大臣 お答えをいたします。この点については昨日衆議院においてと思いますが、一應お答えをいたしておきましたが、タフト・ハートレー法案の運命のいかんにかかわらず、また対日理事会等において、どういう意見が交換されたか、私は詳細にまだ承知いたしておりませんが、とにかく日本政府としては、マツカーサー書簡に基いた勧告と申すか、命令と申すか、要求か、とにかくその書簡に基いて研究した結果、日本の今日の事態において、國家公務員法提出することが必要なりと考えて提出いたしたので、日本政府の独自の考えから提出いたしたものであります。
  29. 前田種男

    前田(種)委員 その点はさらにまた掘り下げて論議をしたいと思います。ただ一点、過日われわれがフーヴアー氏に会つたときにも、國会が十分権威をもつて審議することは忖度する、國会意思は十分忖度するということをはつきり言つております。私たちはその意味において國会國会の権限において、十分審議を進めて行きたいと考えます。  もう一点、最後に総理大臣にお聞きいたしまして、中曽根君が急いでおりますので、私は遠慮したいと思いますが、この改正法の骨子の一つにございますところの人事院の構成の問題です。これは今後の日本の官僚制度、あるいは政府機構の上において重要なものであると私は考えます。なるほど理想的に万般が行けば問題ではありませんが、美辞麗句をいかに並べましても、実際に運用の妙というものは発揮できるものではありませんし、能率が上るものではありません。改正案を見ますると、総理大臣の指揮監督下にもありませんし、しかも予算の編成の独立性をもつております。そうして廣汎なるところの陣容をもつてやりますところの人事院は、將來別の内閣ができたような感がすると私は考えます。これは今日のような政府機構の中においては、プラスマイナスいたしますならば、マイナスの面が相当多いのではないかと考えます。これもいろいろな点で制約を受けて、今日こうした改正案をここに提出されておりますが、実際は私は吉田さん自身が、この人事院の内容が、改正案のように、厖大になるということは今後弊害があることを、相当認めておられると考えます。この点について眞劍に、今日の憲法その他の法規と対照し、あるいは今後のあり方等についても十分檢討した上で、この問題をどう扱うかという点は非常な重点でありますので、この点については政府もほんとうに——ただ吉田内閣だけの政府ではありません。日本の今後において、この点は重要な問題でありますから、一体どうすることが日本のために非常にいいかということについて、私たちは掘り下げた意見をもつてはおりますが、この点に対するところの総理大臣の見解を承つて、私はもつと質問したいのでございますが、同僚に讓りまして質問を復保いたします。
  30. 吉田茂

    吉田國務大臣 この点についても昨日國会におかれて同じような質問があつたと思いまするが、この人事院法が行き過ぎで、いわゆる角を矯めて牛を殺すというようなことはないか。私はそれはないと思いまするが、しかしながらなおかくのごとき場合を避けるために、運用については十分注意いたすつもりであります。人事院法そのものの趣旨とするところは、決して惡くないと思います。また一に運用にあるのであつて、たとい法律構成がよくあつても、運用をあやまればどんなことになるかわからないので、運用の点については十分注意いたすつもりであります。
  31. 角田幸吉

    角田委員長 内閣総理大臣はただいま参議院の方で質問があるので、お出でを願いたいということでありますから、一應総理大臣は向うにいらしていただきまして……。
  32. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 五分間だけ……。
  33. 角田幸吉

    角田委員長 それでは簡單に願います。
  34. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 内閣総理大臣がお急ぎのようでありますから、私は簡單に二、三質問いたしたいと思います。  まず第一は先ほど木村君の質問に対して、何ですか政府答弁は、本改正案の原案をつくつたのは前内閣である。本内閣改正したのはごくわずかにすぎない。そういうような答弁がありまして、そのニユーアンスを聞いておると、この改正案提出責任や、草案をつくつた責任は前内閣にあるがごとき、現内閣責任を回避するような色彩の当動を私は感じたのであります。これははなはだ遺憾な言葉でありまして、少くとも一國の総理大臣あるいは内閣が、國会に対して行政責任を負つて法案提出する以上は、そのようなあいまいな責任では、断じて出してならぬと思うのであります。この点に対して私は総理大臣から、これは吉田内閣責任提出するのかどうか、責任の点を明確にお聞きしたい。
  35. 吉田茂

    吉田國務大臣 これはむろん吉田内閣責任において提出いたしたのであります。
  36. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 もう一点お聞きしたいと思います。吉理総理大臣は本会議の席上において、この法案審議を非常に急ぐということを懇請されておりました。われわれもこの状況はよくわかりますから、なるべくすみやかにこの法案を処理して御期待に沿うようにしたいと思つておりますが、最近の新聞によりますと、政府はこの法案の促進を急ぐためかどうかしりませんが、しきりに解散々々ということを称えておる。新聞の論調によると、あたかも國会に対して脅迫するような言動を感じておる。もしこれをやらなければ解散して絞首刑にするぞ、こういうような言動は私は感ずるのであります。これは少数党内閣である吉田内閣が、多数党に國会に対してこのような言動を吐くということは、私ははなはだ不可解にたえないのであります。私はこの憲法の解釈問題に関しては、これは今度の問題としては相当公務員法審議関係するところがあると思うのでありますが、昨日片山前首相並びに苫米地民主党総務会長が、ホイツトニー代將それ他を訪れて、憲法の解釈について意見を求めて來ました。その見解に対して吉田総理大臣はいかなる見解を有するか。つまり憲法第六十九條て第七條、その点に関して政府は有する解散権について、國会を離れてできるかどうか、その点を吉田総理大臣に明確に御答弁を願いたいと思います。
  37. 吉田茂

    吉田國務大臣 お答えいたします。私が新聞に政府の名においてでありますが、あるいは私の名においてか存じませんが、私は解散論については一言も触れておらないのであります。また公務員法審議のなるべく早くせられることを、現在の労働問題、公務員の官公労の運動等から考えてみて、なるべく早く審議を完了していただきたいという希望は述べましたが、解散をもつておどかしたことはかつてないと思います。この点は誤解のないような願います。
  38. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 その点はわかりましたが、憲法の解釈論について、吉田総理大臣の明確なる御答弁をお願いいたします。
  39. 吉田茂

    吉田國務大臣 解縮論については、なお政府は問題を留対いたしているのでありますが、片山君がどういう話を聞いて來られたか、実は私は承知いたしておりません。でありますから、お答えができないのであります。
  40. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 その國会がいつ解散されるか、あるいは政府だけで解散ができるのかという問題は、公務員法審議の上に、非常に重大な問題であろうと思うのであります。もし政府が総期に、独断で、憲法を侵してまでも解散するというようなことをやるならば、公務員法審議に、われわれは場合によつては相当考えなければならぬことも出てくるのであります。政府がどういう見解をもつているかということを聞いて、それによつてわれわれはこの審議の態度をきめなければならぬと思うのであります。総理大臣よりもつと明確に、所見を正直に披瀝していただきたいと思います。
  41. 吉田茂

    吉田國務大臣 お答をいたします。ただいま申した通りに、解散をもつて公務員法審議を脅迫したと申しますか、庄迫したと申しますか、そういうことはいたしておらないのであります。その審議は十分なさるがいい。解散論は別であります。
  42. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 解釈論に対して総理は一点を触れておらない。憲法六十九條の解釈論を示していただきたい。
  43. 吉田茂

    吉田國務大臣 それは問題外であります。公務員法をこの委員会審議しているのであつて、重要な関連があるとお言いになりますが、私は関連ないと思います。なぜかというと、公務員法審議するために解散をもつと脅迫いたしておらぬのでありますから、この公務員法と解散の問題は連絡がないものと、こう御承知を願います。
  44. 木村公平

    木村(公)委員 議事進行について一言申し上げたい。一つはただいま中曽根委員かりのお言葉の中にあつたのでありますが、本國家公務員法は、本年七月二十日のダグラス・マツカサー司令官から、内閣総理大臣に発せられたるところの書簡に基いて、前内閣によつて立案されたことは、これは政府委員答弁の通りであろうと、私は今なお確信しております。現内閣においてあらためて自己の責任において提案されることは当然で、これは言うまでもない。そんなことは今さら論議の要がないのでありまして、問題は、だれが立案したかということを、この場合において一應明らかにしておく必要があるのでありますが、これは政府委員から再び答弁の必要はありません。これを私は確認しなければならぬと思います。  さらに先ほど中曽根委員は、國家公務員法審議すべき本委員会において、何らこれと関係のあらざるところの憲法の解釈論を総理に要求しているのでありますが、かようなことはいたずらに審議の促進を妨害するだけであつて、断じてわれわれは反対せざるを得ない。すでにこの問題については、議院運営委員会において数日來活発なる論議が展開され、さらに本会議においてもこの問題は論議をされているのであります。國家公務員法を今まさに審議せんとするこの委員会において、何らこれに関係のあらざる、さような問題をここで論議することは、われわれは断じて反対であるということを表明せざるを得ないのであります。
  45. 尾崎末吉

    ○尾崎(末)委員 議事進行について……。中曽根君のさきに述べられた言葉の中に、憲法を侵して解散をやるということをはつきり述べられた。一体この解散ということが、現在行われている解散論がどうして憲法を侵しているという断定がでかるか、中曽根君は日本一の憲法学者であるかもしれない。しかしながら憲法を犯してと断ずることのできるほど、それほどの権威ある判定をどこからいたしましたか。これはけしからぬ問題であります。憲法を犯したということを断定するに至つては……、(発言する者多し)憲法を犯したということははつきり聞きとれました。この中曽根君の発言の取消しを希望いたします。それによつて……。
  46. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 私が総理大臣に申し上げた言葉の中で、ただいま議事進行についての言葉がありましたが、私が申し上げたのはこういう言葉であります。速記録を調べていただけばわかりますが、もし憲法を犯してまでも解散するならば——もしするならば、そういう言葉で申し上げておるのであります。断定しておるのではありません。それから私が憲法学者かどうかということは、これは私の身分を見ればわかることであつて、憲法学者ではない。私が聞きたいことは、先ほども申し上げましたように、國家公務員法審議と、憲法の解釈論というものは、密接な関係をもつておると思う。しかもその解散云々に関する見解も私は持つておる。私の見解は、大体においてきのう片山元首相がGHQの関係筋から聞いたことと大体同じことである。しかるに新聞に発表された政府の見解なるものは、これと反対の見解を持つておるので、私どもと反対の見解を持つておられるとすれば、すなわち憲法を犯したということになるのであります。これは國際的に認められておる解釈だと信じておる。その関係方面並びにわれわれが持つておる憲法の正しい解釈に対して、吉田総理大臣はいかがお考えになるか、この点だけをお答え願いたいと思います。
  47. 吉田茂

    吉田國務大臣 お答えいたします。私ははつきり申しが、憲法を犯して解散するようなことは断じていたしません。
  48. 前田種男

    前田(種)委員 もし吉田首相を参議院の委員会からの請求ならば、本委員会においてもらいたいと思います。本会議なら私たち讓歩してよいと思いますが……。
  49. 角田幸吉

    角田委員長 これは三日前から要求されておるので、政府委員の方から……。
  50. 前田種男

    前田(種)委員 よろしうございます。私は今総理大臣にちよつと承りましたがはつきりしませんので重ねて法務総裁にお聞きしたいのですが、人事院の権限の問題です。この問題はまことに重要であります。改正案の通りになりますと、政府と人事院との関係、さらに國会との関係等について、責任の所在、内閣総理大臣と人事院の総裁との関係、それから今日までの一切の國内法と照し合せて、相当矛盾があつたと私は考えます。しかもこれが絵に描いてあるような文章通りにうまく行きますならば、私は今日までの日本の行政法だとか、あるいは官吏の身分に関するところの規定、その他においても、これと大同小異のような文章につづられて來ますが、実際に今日の日本の官僚制度がうまく行かないということは、もちろん國民全体の教育の程度もありましよう。官吏機構の惡いところもありましよう。そういう惡いところがあるために、今日まで官僚の横暴を叫ばざるを得ない長い歴史をもつております。民主主義に名をかつて、今日人事委員会の構成が非常に拡大されることは結構のようでございますが、内閣機構との関係においては、今のような民度の程度においては、弊害が多くて益するところが少いとわれわれは見ます。しかも人事院に入つて参りますところの職員その他のいろいろな点を考えてみますると、はなはだ面白くない者が集まるという現状においては、ほんとうに人材を得ることにはならぬと私は考えます。しかもその上に予算の編成権も持つておることになつて参りますと、これは重要な問題でありますから、この点は私は法律のことについては知りません。しかし法務総裁としては、今日の現行法をいろんな角度から見て、はたして妥当であるかどうかという点は、先ほど申し上げますように、ただ吉田内閣だけの言い訳でなくして、日本の將來のために、この問題は根本的に一番いい方面改正する、持つて行くということにならなければ、おそらく日本の將來のために非常に不幸な結果になりはしないかと考えますので、この点については忌憚のない法務総裁の意見を、本委員会に明確にしておいてもらいたいと思います。
  51. 殖田俊吉

    ○殖田國務大臣 お答えいたします。ただいまの御議論はごもつともの点が多々あるように考えます。しかしながらこの人事院の性格は、なるべく嚴正独立の立場にある方がよろしい。これは從來の日本の行政の、人事に関する弊害にかんがみましてかように考えたわけであります。從つて独立性がかなり強く出ておるのであります。またマ元帥の書簡にも、人事院は準司法的機関とせよ、こういうことがあるのであります。これもごもつともな御意見でありまして、つまり人事の嚴正公平を期する。その方がかえつて行政の能率を高めるりつぱな行政ができる、という考えから、人事院に独立の権限を多く持たしたのであります。今日のところこれは必要なる立法であろうと考えるのであります。また憲法によりますれば、内閣に人事院に対する監督権もちやんと持つておりまするし、それから御承知のようにこの公務員法の規定の中でも、人事官の任命、懲戒というようなものもはつきり定めております。つまり人事院と申しますものは、かなり独立の色彩が強くはなつておりまするけれども國会國会を背景とする内閣の所轄のもとにあるのでありますから、その運営を十分氣をつけてやれば、ただいまのような御心配はなくてもすむのではないかと考えております。もしまたこれを実行いたしましていろんな問題が出て参りましたら、そのときにまた愼重に考えてしかるべきではないかと思うのであります。この独立の機関は從來の行政裁判所というような機関において、かなり強く現われておつたのであります。その点では前例のないことでもないと考えております。
  52. 前田種男

    前田(種)委員 今の答弁でございますが、マツカーサー元帥の書簡の中には、準司法的な云々の文章のあることも私はよく承知しております。しかし司令部の命令は、ただ單にこの書簡ばかりでないと思います。終戰後いろいろな角度から、命令なり支持、勧告がなされております。いろいろな角度から見て、司令部の意見を忖度しなければならぬと私は考えております。しかも元帥は、常に日本の実情を無視してやろうという点については、やつぱりそうむりなことはできないということも、いろいろな点で見たように私は記憶いたします。この書簡からとるところの改正案というものは、理想的に行きますならば非常にいいものだということはよくわかるのです。しかし日本現状において、今の官僚制度、あるいは今の官僚の常識、あるいは教養、日本國民の今日の民主的な訓練の過程においては、ここ数年の間においてかようなことにすることによつて、かえつて弊害が多いのじやないかということを私は指摘したいのです。必ず弊害が起きて來ます。これを高く理想を掲げて、このようにしようというこの目標は非常に結構です。しかし現実の問題としては、むしろ弊害があるということは、この通りに人事院が権限を拡張し、そして予算権も持つてつて來るということになると、必ずこれは独立した政府のような形をなすと私は考えます。今政府責任者として運用の妙をと言われますが、この法案が通過して実行されますと、その運用の妙は一にかかつて人事院の人事官の権限においてなされることであつて政府はそうくちばしを入れられないということになつてしまうのです。政府がそれをやることによつて運営の妙を発揮しようといたしましても、改正案の通りになつてしまいますと、あとはもう政府はそうくちばしを入れられないということになつて参るということを考えてみた場合に、なかなかそうは行かぬと私は考えます。もちろん憲法の七十二條か三條かにありますように、内閣総理大臣の指揮監督の権限があるとは申せ、そうしたこともつとめてやつてはならぬということになつております。しかも今日のようにこれから行きますと、一切の任免権その他の権限は人事委員会に握られてしまいまして、大臣といえども、その他の各廳の長官といえども、そうしたことは全然できなくなります。今のような官吏の素質の現状において、そういうことになつた結果を予想いたしました場合に、はたして縦の行政の命令がうまく行くかどうか。あるいは政府の事務が円滑に行くかどうかということを私は眞劍に考えてみたいのです。ここに労働大臣もおられますが、労働大臣は長い間官吏をされておられます。この点を考えてみた場合に、そうここに書いてあるようにうまくは行かぬと私は考える。しかも弊害が多くあるというように考えるのです。ここを一体どうするか。マツカーサー元帥の場簡もありますから、書簡とこの改正案を一体どうするかということは、本委員会が十分審議するところの重要なポイントであると私は考えます。しかもこの内容については十分檢討いたしまして、関係方面の了解も得るような方法がないかということを、各委員と十分熱心に檢討して行きたいと考えますが、私たちはその檢討をする資料にいたしたいと思います。その意味において法務総裁としては、もつとこの点について、とらわれない意見が、あるいはもつと虚心丹懷な意見があれば、重ねて承つておきたいと考えます。
  53. 殖田俊吉

    ○殖田國務大臣 お答えいたします。原則といたしましては、ただいま申し上げたような私の説明で御了解願いたいのでありますが、今の御心配の点は一にかかつて運用でありますから、これは人事官を選定いたしますときに、十分りつぱな人を選び、それは政府だけでなしに、國会の御承認を得て選ぶのでありますから、これにりつぱな人を選び、そしてまた片方に懲戒の権も持つておるのでありますので、私はそんなに御心配の点はそう多くはないと思う。それは非常に不都合な人事官が出て参りますれば、その通りでありますが、それは今のような方法によつて十分是正し得ると思うのであります。これに一にかかつて私は運用の問題であると考えております。法律をもつてどうこうというわけには私は行かないのじやないかと思うのであります。むろん法律でありますから、將來運用の成績にかんがみまして、國会が適当にお考えくださるならば、それはまたそのときのことであると考えます。
  54. 前田種男

    前田(種)委員 もちろん人事官の三名は國会の承認を得て選任することになつております。しかしこの三人が神様のような、りつぱな人物を選びましようとも決してうまく行くものではない。実際にこれがうまく行くということは、事務総長以下の人事に、ほんとうにりつぱな人を得るかどうかという点が、一つかかつております。これはすべて三人以外の重要なポステが、人事官において任命されるということになつております。ここにりつぱな人が得られるかどうかということを私は懸念いたすのでございます。しかしまたこういう関係におきまして、もつと國会とのつながりを考慮する必要があることを私は認めておりますから、改正案に対する審議の過程において、私は私の意見を申し上げたいと考えます。  もう一点、私が疑問を持ちます問題は、予算の編成権に対して、今回の六千三百七円の勧告案にいたしましても、一体大藏省の人事院との関係は、この改正案の通りでいいかどうか、この点につきましても、今のような状態においては、相当不都合な問題が考えられます。しかしそれは國会で最終的に決定したらいいじやないかということになりますが、國会に提案されるまでにおける権限は、大藏省と言いますか、政府と人事院との関係が、この改正案のような状態において不都合がないかどうかという点について、法務総裁の見解を承つておきたいと思います。
  55. 殖田俊吉

    ○殖田國務大臣 お答えいたします。御心配の点ごもつともではありますが、やはりこれも運用でありまして、りつぱな人事官に選びまして、決して御心配のないように運用してもらうよりほかないと思います。それは人事院の独立性を重んずる結果出て來ました問題でありまして、人事院の独立性を全うするためには、やはりこういう制度も設けられなければならぬことになつているのであります。それは一に運用の問題でありますから、実際の場合においてよく御監督願いたい、こう考えるほかありません。
  56. 前田種男

    前田(種)委員 この問題についてはこれ以上の質疑は後日に讓ります。  労働大臣に重ねて御質問いたしたい問題は、総理は先ほど給與問題について、はつきりしたことを申していないのであります。労働省の立場から、官公吏給與問題についてはせつぱ詰まつた問題であることは、労働大臣としても御承知であろうと考えます。さきにも私が一言触れましたように、本改正案現行法から申しますと、改惡です。これは勤労大衆立場からいえば明確に改惡です。この改正案は一日も早く國会の通過を望むという、非常な熱望を持つて政府は臨んでおります。それにもかかわらず給與問題は、遅々として追加予算化していないのでございます。この点については労働省は労働者のサービス省として、勤労大衆の輿望をになう主管廳として、給與問題についてはどの大臣よりも一番熱心に、追加予質問題に対して積極的な態度を示して、今國会追加予算が一日も早く提出されるように努力してもらいたいと考えます。この点についての労働大臣の今までの努力、今日の信念、どういうふうにして追加予算を出そうとしているかという点等について、意見を承つておきたいと考えます。
  57. 増田甲子七

    増田國務大臣 前田さんの御質問お答えいたします。御説の通り公務員もまた労働者でありまして、労働者経済地位の安定向上をはかり、労務條件の維持改善をはかるということが、すなわち労働政策の対象である、このことについては先ほども私申し上げた次第でございますが、しかし御承知の通り今度の改正法によりますと、人事院に公務員の身分なり、紀律なり、あるいは勤労條件なりの問題は、すべて移行するのでございまして、私といたしましては、今労働省から公務員のこれら労働政策の問題その他紀律の問題の、すべて向うへ嫁入りさせるというような、万感にこもごも至るという心持で見送つている次第でございます。また人事院に移りましても、公務員の勤労條件の維持改善ということをはかられる点については、政府といたしましてと同一以上の熱情を持たなければならぬと思つておりますが、その勤労條件一つである給與の改善、あるいは福祉の保護、利益の擁護というようなことについては、これまた熱意を傾倒いたさなくてはならぬと思つております。今回のマツカーサー書簡のうちにもその点に触れてあることは、前田君のお尋ねと全然同様でございまして、私といたしましては給與のことにつきましても、できるだけ早くこれを改善し、そうして予算の上に計上いたされたいという態度で、從來一生懸命に努力いたしております。この程度で御了承を願いたいと思う次第でございます。
  58. 前田種男

    前田(種)委員 どうも今労働大臣の話を聞いておりますと、公務員法改正案はもうすでに施行されておるような感があるのです。この改正案が施行されますならば、名実ともに人事院に移るのでありますが、現行法で行きますと、労働省にまだ相当の権限が残つておると思います。私はこの臨時國会中におけるところの、給與の問題をどうするかという問題について、労働相の責任のある決意を促したわけです。しかも何もかも人事院が一切やつているから、労働省ではわれ関せず、ということまでではありませんが、そういう印象を強く受けたのです。私ははなはだ心外だと思います。かりに人事院にある程度の権限が移つたといたしましても、少くとも勤労大衆給與の問題につきましては、ベストを盡すという役所は労働省以外にないのであります。その点に対する労働大臣の熱意、あるいは決意を、追加予算案國会に出すのについての、ほんとうの氣持を聞きたいというのであります。その点についてもう一ぺん労働大臣の積極的な態度も要望もします。またそれだけの心構で、ぜひとも一日も早く追加予算を出すように努力するという決意を、この委員会を通じて天下に発表するということは、これはただ單にわれわれ委員が聞くだけでなくして、全國の勤労大衆労働大臣のそういう決意を待つていると私は考えます。ぜひともその点については労働大臣の重ねての答弁を願つておきたい。  それからもう一つは、先ほど吉田さんの答弁した中で、マツカーサー書簡が七月に出まして、数箇月経ました今日、國際的にも非常な情勢の変化があるということを申し上げまして、総理大臣答弁が簡單にあつたのであります。私は國際的な問題は、今総理大臣がおりませんから掘り下げて申し上げませんが、國内的にも、あの書簡が出たときと今日は非常な相違が現われて來ておると思います。直接公務員法関係にあるところの官公労の中におきましても、いろいろな角度から批判檢討はされておりますが、反省の色濃いものもございます。その反省の色濃いものを、さらにけつからむちを打つて、そうして突き倒すようなことをすることが、國の労働政策の上からいつていいか惡いかという点を考えてみました場合に、どんなに弱い者でもやけくそにしてしまえば反撥が恐ろしいものでございます。反省の色濃い現状において、二百七十万の官公吏の團結権の問題、健全なる労働組合運動の問題をどうして今日善処するかということが、本委員会に課されたところの重要な役目でもありますし、また今日政局を担当するところの吉田内閣としても、最善の方策を盡さなくてはならない重要な使命だと考えます。書簡は一指もまげることはできないというものではございません。いろいろな國の今日の情勢、あるいは労働組合運動の見通し、官公労の労働組合運動の今後のあり方、あるいは今後の目安、いろいろな点を勘案いたしまして、今日官公労の團結権の問題、労働組合運動あり方については、どうしてもここで十分檢討する時期が今來ておると私は考えます。この時期に開かれておりますところの議会でありますから、この点については十分の檢討がなされなくてはならぬと思いますが、この点につきまして労働大臣の見解を、できるだけはつきりとひとつ示していただきたいと考えます。
  59. 増田甲子七

    増田國務大臣 官公労の給與の改善については熱意がないどころではなく、私は先ほど申しました通り、熱情に傾倒いたしまして、これが改善向上に努力いたしております。さよう御了承願います。  それから一般労働組合運動が健全なる方向に向つているこの際であるから、給與等について熱意を傾倒しない結果、自暴自棄的態度に陷れて労働運動を惡化せしめてはいけない。この御意見なり御質問もまことにごもつともでございまして、私も全然同感であることをお答え申し上げます。
  60. 前田種男

    前田(種)委員 私は重ねて質問しておきます。さき総理大臣に申し上げましたように、世界の情勢が変つておる。特にわれわれが勘考しなくてはならないアメリカの情勢は、惡法であつたタフト・ハートレー法を廃止すると大統領は声明しております。労働長官はクローズド・シヨツプ制を原則とするところの労働法規をつくろうと声明しております。こういうやさきにあつて日本においては公務員法改正が至上命令の形において今日出て來ております。しかし世界の情勢の変化と今日の実情とを考えてみまして、私は今も質問しましたように、今度の労働組合運動あり方につきましては、重要な時間的ずれもございますので、この点について本案の審議に対するところの労働大臣としては、新しい情勢をどの程度に了識しておられるか。あくまで七月のマツカーサー書簡そのままをくぎづけにして、依然として今日拔き差しならぬ、どうにもならぬと決意をしておられるのか。國会が自由な見地に立つて十分審議することについて、あるいは大臣として言えないかわかりませんが、労働省としてはむしろ日本情勢がこうあるべきだというような見解等がございますならば、この際重ねて伺つておきたいと考えます。
  61. 増田甲子七

    増田國務大臣 米國における政治上の客観情勢が変化したから、今回、われわれの提案した公務員法について、再檢討を加える余地があるかどうかという御質問に対してお答え申し上げます。私どもは先ほど首相の言われた通り、特殊の政治情勢下において、占領政策に協力いたしておる次第でございまして、マ教簡に含まれたあの法律的解釈は、要求を含む勧告でございまして、この御要求に対しましては、われわれの責任において善処いたした次第でございます。その善処の具体的現われが、すなわち公務員法改正でございまして、これはぜひ御通過を願つて、公務員の新しき地位の確保を期していただきたい。そうしていわゆる普通の労資対等の原理に立つ労働者とは地位が違うのでございまして、國民全体の奉仕者であり、またその國民を背景とする政府と公務員との関係は、いわゆる権力服從の関係に立つていることは、これまでも中曽根議員の言われた通りでございます。これらに対して一般労働組合法を適用することは、しかるべからずというふうにわれわれは考えております。しかしながらやはり労働運動立場から見ますと、同じく勤労者である。この勤労者の勤務條件の維持改善について、私は熱情を傾倒して努力しなくてはならぬと思つております。  それから一般労働組合について、日本労働組合は御承知の通りクローズド・シヨツプは許されておる次第でございまするから、この点御心配はいらないと存ずる次第でございます。
  62. 前田種男

    前田(種)委員 今の大臣の答弁を聞いておりますと、私は了解しかねる点もございます。今の答弁を聞いておりますと、さらに論議を進めて行かなければならぬと思います。私はこれは労働大臣なり、法務総裁なり、どちらから答弁されてもけつこうですが、今の御答弁に関連いたしまして、政令二百一号が憲法違反であるかどうであるかということが、本会議でも、あるいはああした政令が出た今日では、もう社会の問題になつております。この点につきまして吉田内閣はどういう見解を持つているか、明らかにしてもらいたい。  もう一つ改正案を見ますると、憲法の條項から見て行き過ぎな箇條があるのでございます。どこにその行き過ぎな箇條があるかと申し上げますと、私が申し上げるまでもなく、憲法第二十八條に勤労者の團結する権利及び團体交渉その他の團体行動をする権利は、これを保障する。と歴としてあるわけであります。この憲法上から申し上げますと改正法の内容は相当行き過ぎておるわけでございます。さらに政治活動の極端な制限の問題も、憲法の條項から見て非常な行き過ぎも見受けられます。こういう点等を考えて参りますと、そういう行き過ぎたことをしいて、はたして公務員の業務、あるいは行政事務とか、いろいろな問題がうまく行くかということになりますと、決してうまく行くものではないと私は考えます。このような行き過ぎをわれわれは認めておりますが、この行き過ぎに対して政府の見解を明らかにしていただきたいと考えます。
  63. 殖田俊吉

    ○殖田國務大臣 お答えいたします。まず政令二百一号の問題でございますが、この二百一号は勅令五百四十二号に基いて発せられておるものであります。この五百四十二号の効力につきましては、すでに最高裁判所が有効であるという判決を與えております。從つてこれに基きます政令二百一号また有効であると考えております。從つて憲法に違反するものではないと考えております。  それからただいまの行き過ぎの問題でありますが、なるほど御議論もつともの点が多々あると存じますが、政府におきましては十分檢討して、行き過ぎではない、この程度は必要であると考えております。
  64. 前田種男

    前田(種)委員 政府行き過ぎではないと考えておるということは、提案者としては当然であろうと思いますが、私は改正案行き過ぎだと考えますから、これは逐條審議のときに十分檢討したいと考えます。  次に私は先ほど人事委員長質問いたしました点を、もう一度明確にしておきたいと考えますのは、第二條範囲を非常に縮小した理由を申し述べられましたが、私はこの縮小した点が、憲法上から言つて行き過ぎ一つであると考えます。御承知のように今日公務員には、上は局長から下は雜役夫、あるいは山の中の林野局の人々、あるいは公團の者、あるいは市長久の吏員に至るまでくくつております。しかしこの書簡の中にも明確にありますことは、國鉄、專賣等が企業体を変更した場合は、公務員法の適用を受けないということをはつきりうたつております。今日そうした変更をしなくとも、地方公共團体の中においては、現に公共企業体になつておるものがたくさんあります。市電とか都電、その他いろいろなものが、すでに公共企業体としていわれております。そうしたものも全部十ぱ一からげで公務員なりという見解をとつて、非常に範囲を縮小しておりますがゐこの点はあくまで身分上から行きましても、民法上の雇用上の雇い人、それからもう一つのいわゆる官吏になるという身分の者とは、明確な相違があるわけです。今後そういうものを一本にしようというのがねらいの一つでございますが、私はあくまで労働者という対象に立つ者と、官吏という身分に置かれる人々との間においては、今後も相当のいろんな問題の相違があることを実際に認めます。またそういうことが日本現状においては非常にいいことも私は知つております。そういう見解等につきまして重ねてこの席上においと明確にしていただきたいと考えます。
  65. 淺井清

    ○淺井政府委員 御質疑の点まことにごもつともと存じます。特別職範囲を縮小いたしましたために、單純なる労務に從事する者等まで一本に公務員にまとめまして、公務員法の適用を受けることによりました点につきましての御質疑がございましたけれども、この國家公務員法等は御承知のごとく、ただ國家公務員を押えることだけが目的でございませんで、國家公務員をよく保護し、それを守るということも、あわせて意味しておる次第でございます。そこで單純なる労務者等も、これを上級の官吏などと区別いたしませんで、ひとしく國家の公務員としてこれを保護する、こういう立場から一本にまとめた次第でございます。但しそういうような下の、というと言葉は封建的でございますが、單純なる労務に從事する者等の勤労あり方が、デスクビジネスをやるような者と違うということもこれまた嚴然たる事実でございます。こういうふうな人々に対する関係におきましては適当の除外例を設ける、こういう道が開かれているわけであります。
  66. 前田種男

    前田(種)委員 それからさらに人事委員長質問しますが、本法を見ますると大部分のものが人事院規則にゆだねられております。これは第一國会、第二國会等におきましても、局部の改正すら國会の議を経なければできないほど、政府機構に対しては國会は愼重に扱つておるわけであります。しかも厖大な人事院の運営について、本法の大部分を人事院規則にゆだねて、しかも人事院規則というものは人事官において決定するということになつております。これは非常な弊害が起るものだと私考えますのでゐ人事院規則は少くとも國会の議を経なければ効力を発生しないという程度にしなければならぬ。そうして人事院規則を本法において修正して、大部分を本法に織り入れて、法律案として施行するという形をとらなければ、非常な弊害があると私は見受けるのです。この点に対する人事委員長の説明を願いたいと思います。
  67. 淺井清

    ○淺井政府委員 この点もまたまことにごもつともの御質問と存じます。ただ私どもの考えはこの人事行政がきわめて特殊性を持つておりまして、特に技術性を持つておりまするために、相当大きな部分がこの法律から離れましてこの人事院規則の方へ参つておることは御指摘の通りでございます。あまりに委任命令という形が大きいために、ただいまのような御懸念もあろうかと存じますけれども、私の見まするところは、ほとんど重要な点は法律自身がこれを押えておりまして、まかされたる範囲は廣うございますけれども、大体技術的方面にこれが集中されてございます。必ずしもそのようには行つておらない点もございまするが、しかしこれは先ほどから申しましたように、運営上において十分遺憾なきを期する覚悟でございます。
  68. 前田種男

    前田(種)委員 今の答弁では滿足しません。いろいろな特殊関係があるだけに危險性が伴います。それでどうしても人事委員会規則というものは國会の議を経なければ効力を発生しないようにと制限するか、あるいは法律化するかしなければ、弊害が多分にあることを私は強く指摘しておきます。いろいろ他の委員質問もあろうと思いますので、私の質問はこれでおきまして、さらに逐條審議その他の点について質問を留保して、適当の機会に再質問することにして一應打切ります。
  69. 角田幸吉

    角田委員長 それではこれで休憩にして、午後引続いて開くことにいたします。     午後零時二十分休憩      ————◇—————     午後二時二十一分開議
  70. 角田幸吉

    角田委員長 休憩前に引続き会議を開きます。
  71. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 一言質問いたします前にお願いをいたしたいのですが、ごらんのように民自党からだれも來ておりません。政府與党であるところから一人も來ていないという珍現象があります上に、関係大臣として最も密接な労働大臣、それから憲法上のことに関して責任を持つているところの法務総裁がいらつしやつていない。このお二方の出席を要求いたします。それまでは私は発言を待たせていただきます。
  72. 赤松勇

    赤松(勇)委員 昨日社会党から要求いたしておきましたが、御承知のように本委員会は非常に重大な法案がかかつておりますので、特にきよう総理大臣大藏大臣出席を要求しまして、本日はわが党の前田君から質問があつたのであります。午後引続きまして本会議まで質疑を続行して、法案審議を急ぎたいと思いまして、各委員がそれぞれ準備をして参つておるのでございますが、肝心の政府委員が全然顔を出さない。昨日は運営委員会におきましても佐藤官房長官に私は痛烈にこの点を指摘いたしまして、その責任を追究したのでございますが、こういうような状態では、実際問題といたしまして、本案を審議する上に非常に大きな支障を來すのでゐ私は動議を提出いたします。これは委員長を困らせるのではなく、むしろ委員会委員会の権威をもつて政府に要求するという建前から動議を出すのでございますが、委員出席を要求いたしました政府委員出席をしない限り、われわれは審議を進めることができないので、政府は本委員会にかかつている法案の重要性にかんがみて、一切の所用を排し、本委員会出席することを、委員会として要求する動議を提出いたしたいと思います。
  73. 木村公平

    木村(公)委員 これは赤松君にお願いなんだが、今途中で入つてはなはだ失礼だが、そんなむずかしいことを言わないで、もつともなんだ、ぼくもそう思つている。けしからぬことだと思つている。しかしながらいろいろ向うは向うの事情もあるだろうから、一人二人ただちに何とかして來てくれ、これは委員会の意向だと言うて、話ずくでやつたらどうかと思います。ここで委員会意思を決定するなどという、むつかしいことを言わないでやつていただきたい。
  74. 赤松勇

    赤松(勇)委員 平生の木村公平君に以合わず、きわめて妥協的な申し出がございましたが、実は昨日大村君と同じような氣持社会党の方から委員長に強く要求は出しておきました。しかしながらこの委員長の申し出に対して政府は十分誠意を持つてこたえていない。こういう事実にかんがみまして、この際委員長を補佐する意味で、私は委員会の総意をもつて政府に要求するという動議を撤回せず、ぜひこの動議をはかつていただきたい。
  75. 相馬助治

    ○相馬委員 私は赤松委員の提案に賛成します。決して木村委員のおつしやるように、政府に対していやがらせというのでなくて、本案がいかに重要かということはいまさら私が言うまでもなく、昨日も委員長に私がお願いいたしましたように、この前の國家公務員法審議のあのざまを考えてみても、最後のどたんばまで追い詰められてから、どうしても急に通すんだというようなていたらくでは、まことにもつて申訳がない。実質的に法案審議を進める上からも、また赤松委員が指摘したように、私ども委員長一人に責任を終わせるのでなくて、委員長がスムースに仕事ができるという意味で、あなたに同情というのでなくて、もつと大きな意味で、この案に私は賛成するものであります。意思決定を希望します。
  76. 角田幸吉

    角田委員長 それでは赤松君の動議に御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  77. 角田幸吉

    角田委員長 動議は成立いたしました。この取扱いは委員長から、決議のある旨をもつてただちに通告しておきます。
  78. 赤松勇

    赤松(勇)委員 政府委員出席があるまで暫時休憩を要求いたします。
  79. 角田幸吉

    角田委員長 それでは暫時休憩いたします。     午後二時二十九分休憩      ————◇—————     午後二時五十三分開議
  80. 角田幸吉

    角田委員長 休憩前に引続き会議を開きます。  本日はこれにて散会いたします。明後十五日午前十時より開会いたします。     午後二時五十四分散会