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岡部政府委員 本日は第二款懲戒、第八十二條以下につきまして、御説明申し上げることにいたします。懲戒の点でかわりましたのは、第一は、停職の期間が
現行法では一月以上一年以下となつておりますのを、最高限と一年と押えますが、その範囲内において
人事院規則で定めることとした点が一つと、それから停職者は今までは休職給と同じように俸給の三分の一を受けることになつておりましたのを、
停職期間中は給與け受けないことにした点であります。但しその例外といたしまして、たとえ
懲戒処分として停職を受けました者でも、これに異議を申立てまして、
人事院の決定によつてそれが取消しにあいました場合におきましては、その期間中給與の支拂を受ける。こういうことになつております。それから
懲戒権者は何人であるかと申しますと、これはもちろん原則として
任命権者でございますが、このたびの改正によりまして、
任命権者のみならず、
人事院も
懲戒処分を行うことができるということにしたのが、その著しい改正点でございます。これはたとえて申しますと、ある省の職員がサボタージユその他懲戒に該当するような行為をする。こういう場合におきましても、その省の
任命権者があえて
懲戒手続を行わないという場合におきまして、
人事院が積極的に発動いたしまして、第一段階といたしましては、これに
懲戒手続を行うことを請求いたしますが、それでもなお行わない場合におきましては、みずから
懲戒手続を進める。こういうことになるわけであります。第八十四條第二項に「この法律に規定された調査を経て」と申しますのは、八十九條ないし九十二條の手続が主となるものであるというように御了承願いたいと思います。
それから
從來懲戒と
刑事裁判との原則は、皆さん御承知の通り、その事件が
刑事裁判所に係属する間は
懲戒手続を進めないということが、從來の
官吏懲戒令がとつておる原則でございますし、
現行法におきましても、その方針をとつておつたわけでありますが、このたびの
改正案におきましては、その
懲戒手続と
刑事裁判の手続とを、同時に進めることにいたしたわけであります。これは
刑事裁判のいかんにかかわらず、
行政監督の見地からその手続を進めることができるようにしたわけであります。これらの規定を発動することになりますと、
官吏懲戒令はこれを廃止してよろしいかと存じますので、
官吏懲戒令を廃止する手続をこの法律の附則の十二條において規定した次第でございます。
次は保障の問題に入りまして、第九十二條において改正を見たのであります。九十二條におきましては、從來でありますと
人事委員会が調査した結果、この職権に属するものはみずからこれを実行いたしますが、その職権に属しないものはこれに対する意見を
内閣総理大臣に申出なければならないというように、規定せられておりましたのを、このたびは
人事院がみずから適当な処置を行う。その適当な処置の中には、もちろん不当なる処分を受けた職員の俸給に関する権利の回復をも含んでおるわけであります。このような行政上の処分に対する
人事院の決定は、これは
行政機関としては最終のものであります。そのために
人事院に特別の機構を設ける。いわゆる公正局という機構、あるいは
アメリカあたりの例によりますと、たとえばアツピール・ボードとか、そういうような一種の
裁判機関のような組織を、
人事院に設けるわけであります。公正局という名称もはなはだわが國には熟していない名前でありますが、御承知の英米法の
エクイテイーという観念を取入れたと申してよろしいかと思います。
エクイテイー、公共あるいは公平という観念を取入れた機関によりまして、この手続をする。内部的にはそういう方法、最終的には
人事院会議の決定によつてこれを行うわけであります。但しこの
人事院の決定の違法に関する問題につきまして、裁判所に出訴することを妨げないことは、第三條で申し上げた通りでありまして、この第三條は、いわば第九十二條の総論となるものと御了承いただきたいと思います。從いまして
行政機関は終身であつてはならないという憲法の規定に從うものと存じております。
次は
補償制度の研究に関する問題であります。これも昨日
徳田委員から
社会保險その他の
社会政策について御論議があつたわけでありますが、改正法の建前といたしましては、
人事院はその
社会保險の一種といたしましての
公務傷病に対する
補償制度の研究を行いまして、その成果を内閣に提出するとともに、その計画を実施しなければならないということになつております。さしあたり
國家公務員災害補償法案につきまして、できるだけ近い機会に御制定をいただくように、政府としては準備を進めておるような次第でございます。
次は服務の條項に参ります。服務に関しましては、問題になりますのは職員の團体に関する條項でございます。すなわちこれは第九十八條に規定してある問題でございまして、すでに十分御
研究済みの問題でございますが、少し詳細に御説明申し上げたいと存じます。この九十八條が規定しております規定の
根本精神と申しますのは、いろいろお立場によりまして御論議があろうかと存ずるのでありますが、要するに
國家公務員というものは、私企業の
労働者とは、その立場、性格を異にするものであるから、この
國家公務員を規定する法体系というものは、
一般私企業の
労働者を規定するいわゆる労働三法のうち外にあるべきものであるという根本的な立場に立つて設けられた規定でありまして、この法律の附則第十六條におきまして、陸に関する
労働法規、すなわち
労働組合法、
労働関係調整法及び
労働基準法をはずします。それから海に関する
労働法規としての
船員法をはずすわけでありまして、そのはずしたあとの処置といたしまして、
労働組合法及び
労働関係調整法、それから
船員法のこれに相当する部分にかわるものとして九十八條を規定したわけであります。從いまして九十八條は團結及び爭議に関することを規定しておるわけでありますが、
團結権に関しましては、当然憲法においても認められております
團結権は、だんだん御論議のありました一定の制限のもとにこれを認める。從いまして職員が團体を結成し、またはこれに加入する自由を認めまして、その團体の結成、または加入に関しましては、
オーブン・シヨツプ制をとるわけであります。しからばその團体はどういう権限をもつかと申しますと、
勤務條件に関し、及びその他社交的、
厚生的活動を含む適法な目的のため、当局と交渉することができる、というように規定しているわけでございます。ただ、しからばこの交渉はいわゆる
團体交渉権を意味するのかと申しますと、これに関しましてもいろいろ御論議があろうかと存じますが、
団體交渉権と申しますのは、申し上げるまでもなく
労働運動史上幾多の歴史的な努力の成果として得られたものでありまして、またそれが
労働法上取上げられている意味におきまして、一定の内容を有するものが、これが
團体交渉権でありまして、その
團体交渉権の内容といたしましては、いわゆる
團体協約、
労働法上において規定せられておる
労働協約を締結する権利を含むのが、いわゆる
團体交渉権というように考えられると思うのでありますが、そういう
團体協約権を有しないという意味におきまして、いわゆる
労働法上の
團体交渉権とはいうことが困難であると存ずる次第であります。
それから
團結権に関しまず例外といたしましては、現在すでに警察官、
消防職員、それから監獄に勤務する職員というものが、
労働組合法上においても、
労働組合の結成を禁止されておるわけであります。これも
國家公務員の特殊なる
現行法の建前において、
國家公務員としても特別なる
職務権限、すなわち国家の
治案維持、その他に当るという特別な
職務内容に基きまして、そういう面から
團結権の制限を受けているわけであります。そういう建前から、同じような意味におきまして、
警察職員、
消防職員、それから
海上保安廳において勤務する職員、すなわち海上の
警察職員、それから監獄に勤務する職員、これはやはり
勤務條件に関しまして当局と交渉する団体を結成し、またはこれに加入することができないこととした次第であります。但しこれらの職員といえども傳ら社交的な、あるいは厚生的な団体を結成する自由は、これを持つことは当然であると解釈しております。それから團体の結成にあたりましては、もちろん団結する権利を認めております以上、職員がこれらの団体を結成し、またはこれに加入する、あるいはその団体における正当な行為をしたことのために、不利な取扱いを受けてはならないことは当然でありまして、それは
労働組合法第十一條にもその精神はまつたく同じように現われておるわけであります。その
労働組合法第十一條と同一の精神を本條第三項に規定したわけであります。同時にまだすべて職員は
職員個人として尊重されなければならないという意味におきまして、職員の團体に属していないという理由で、当局と交渉する自由を否定されてはならないわけでありまして、その趣旨を本條の第二項の末端に規定したわけであります。すなわち「すベて職員は、職員の團体に属していないという理由で、不満を表明し又は意見を思し出る自由を否定されてはならない。」というのはこの趣旨でございます。なお第二項におきまして、「
人事院の定める手続に從い、」と書いたございますが、これは
人事院の規則においてその手続を定める予定になつております。
以上が
團結権を関する主たる実質的な規定でございます。
なお
從來法人格をもつている團体はこれをどうするのか、あるいは
職員團体――今度この九十八條によつて設立されます團体の
法人格はどうするのかという技術的な問題につきまして御説明申し上げます。まずタ一にはこの九十八條によつて認められる職員の團体はこれを法人とすることができるものといたしました。その法人はどういう性格を持つのかと申しますると、やはりこれは御法上の
公益法人としての
社團法人、または
財団法人そのものではないと解釈いたします。すなわちこの法律によりまして特に認められた一種の法人である。特別の法人であると解釈するよりほかないわけでありまするが、その性格におきましては、民法の
公益法人に近いものと考えまして、その手続に関しましては民法の
公益法人に関する規定、それからその
公益法人に関する非
訟事件手続法の規定等について、これを準用することとした次第であります。ただちこの
公益法人は
主務官廳の許可を得て法人となることができる、とありますので、
主務官廳が何に当るかということはいろいろ疑義がありまするので、これを
人事院と読みかえることにした次第でございます。それから
法人格を在する
労働組合が続きまして本條の
職員組合となる場合の
経過的手続に関しましては、この法律の附則第四條においてこれを規定したわけでございます。この法律の俗則第四條をごらんいただきますると「職員を主たる構成員とする
労働組合又は團体で、
國家公務員法附則第十六條の規定が適持される日において、現に存ずるものは、引き続き存続することができる。これらの團体はすべて投資の選挙及び
業務執行について
民主的手続を定め。その他その組織、目的、及び手続において、この法律の規定に從わなければならない。これらの團体は、
人事院の定める手続により、
人事院に登録しなければならない。」それで引続き存続しようとするならば、
人事院に登録していただかなければならぬわけでありまして、その
登録手続につきましては、やはり
人事院規則をもつて定めることになつております。その登録、それからそういう手続の詳細につきましては、この法律の公布と同時に
人事院規則でこれをきめる予定になつております。
次に爭議権の問題でございまするが、これはいわば政令第二百一号を受れまして、職員が廣い意味の
爭議行為「
同盟罷業、怠業その他の
爭議行為をなし又は政府の
活動能率を低下させる
怠業的行為をしてはならない。」職員がこれらの行為をしてはならないのみならず、また部外者をも含みまして「何人も、このような違法の行為を企て、又はその遂行を共謀し、そそのかし、若しくはあおつてはならない。戦と規定しておるわけであります。それでありますから本條に規定する「
爭議行為」と申しまするのは非常に廣い意味でありまして、業務の正常なる運営を阻害するものは、すべてこの中に含まれると解するわけであります。
次に「職員で
同盟罷業その他前項の規定に違反する行為をした者は、その行為の開始とともに、國に対し、法令に基いて保有する任命又は雇用上の権利をもつて、対抗することができない。」こう第六項に規定してございます。これの意味は要するにこれらの
爭議行為を開始するとともに、それらの規定に違反いたしまして、
爭議行為をいたしました職員は
任命香者から処分を受けましても、これに対しまして
身分保障その他の規定をもつて、これに対抗することができないという意味でございます。すなわち
爭議行為の開始とともに、当然にその職を失うのではないのでございまして、結局
任命権者の積極的な行為によりまして、その身分上の変動を受ける。当然には失うわけではないわけであります。その点におきまして、
タフト・ハートレー法の第三百五條とは、その趣きを異にしていると申すことができます。それと同時にまたしからば「権利をもつて対抗することができない。」とあるから、これはいかなる事由があつても泣き寢入りなのかと申しますると、そういう意味ではございませんので、結局たとえて申しますと、自分は
爭議行為を開始したという理由で免官の処分を受けたけれども、自分は病氣のために病院に入院していた。ここにまつたく事実の齟齬があるというようなことをもつて訴えることは、それは八十六條以下九十二條の規定によりまして、これを訴える権利は失わないわけでございます。
次は百條にまいりたいと存じます。百條におきましては、祕密を守る義務を詳細に規定いたしまして、要するに職員というものは、在職中及び退職後も職務上知ることのできた祕密を漏らしてはならない。それで「法令による証人、
鑑定人等となり、職務上の祕密に属する事項に発表するには、
所轄廳の長の許可を要する。」こういうような原則でありますが、このたびの
改正案におきましては、
人事院が調査または審理をする場合におきましては、この祕密を守る義務をこれに適用しない。すなわち何人といえども
人事院員調査または審査する場合におきましては、その普通の原則によりまして、祕密を守る義務を解除しまするためには、一定の許可を受ける必要があるわけでありまするが、許可を受ける必要がないということにいたしまして、これはいろいろ御論議があろうと思うのでありまするが、人事に関しますることは、きわめてその眞実度の高い表現を要求するというような建前から、こういうような規定が設けられたわけでございます。
次は職務に專念する義務について申し上げます。職務に專念する義務というのを、いろいろ分析いたしますと、いろいろな場合があろうかと思うのでありますが、要するに第一は、その勤務時間及び職務上の注意力のすべてを、その
職責遂行のために用いるべきものであつて、政府から一定の職務を與えられながらほかの仕事もすべきものではない。たとえて申しますると、一定のポストを與えられ、勝八の給與を受けながら
職員組合の事務に專從するなどということは、まつたく変態的なことでありまして、許さるべきではないというのがその原則であります。
もう一つの点は兼職の問題でございます。すべて職務というものは、すつかりその
職務内容がはつきりしておりまして、その責任が明確になつていなければならない。それをやたらに幾多の職を兼ねるということは、おのおのの職につきましてその責任の範囲を明確にしないのみならず、その職責の遂行をいい加減にしてしまうおそれがあるという意味におきまして、できるだけ原則といたしまして兼職をやめるというのが、その第二の点であります。
第三の点といたしましては、兼職を認める場合におきましても、その兼職から給與を受けてはならないということであります。これに対する例外はそれぞれございますが、その例外の第一といたしましては、兼職の場合においては、これは
人事院規則で定める場合において規定する。これが第一点であります。
人事院規則でどういう場合を定めるかと申しますると、これも近く制定する予定でございまするが、その原則を申しますると、結局兼職というものもそのやむを得ない場合、殊に法律または
人事院規則で特に規定する場合はこれを許そう、それから原則といたしましてパート・
タイムとパート・
タイムのものはさしつかえないから認めたい、それからパート・
タイムとフル・
タイムの仕事は、それはフル・
タイムの仕事に從事しておる者の
所轄廳の長が、そのパート・
タイムを兼ねさせることがフル・
タイムの仕事にさしつかえがないと認める場合においては、そのパート・
タイムを兼ねさせよう、こういうようなことをその骨子としたいと存じております。それの対する大きな例外といたしましては、いわゆる
非常災害の場合、これらの場合におきましては、
任命権者がそれ
非常災害の急に赴くために、そういう災害に対して職責を持つていない職員をも、その災害に克服するためにその業に從事させることができる、こういうようにいたしたわけであります。
それから先ほど申し上げました
組合活動をどうするかという問題につきましては、第三項がこれを規定しているわけでありまして、原則といたしましては、職員は政府から給與を受けながら、職員の團体のためにその事務を行い、または活動してはならないと規定しております。但し職員は
人事院によつて認められた、または
人事院規則が定めた條件または事情のもとにおきましては、第九十八條の規定によつて認められた行為、すなわち当局と交渉する行為が許されるわけであります。そのためにはやはり
人事院規則でこれを規定しなければならぬわけでありまして、その規定の方法に二通りあると存じます。第一は先ほどちよつと触れました
專從職員の問題、第二は
專從職員でなしに、
職員一般が随時その
團体活動を行う場合であります。たとえば團体の大会に出席するとか、あるいは代表に選ばれて当局と交渉するとか、こういうような場合であります。その第一の
專從職員の場合をどうするかということは、
目下考慮中でございますが、大体の骨子といたしましては、結局これに長期の休暇を與えまして、官廳の執務はこれをさせない。そしてこれに給與は一切支給しない建前であります。そのかわりまたこの休暇というものは、必ずしも動かすべからざる権利として規定するのではなしに、その
所轄廳の長が緊急の必要があると認める場合におきましては、これを常にその職務に引きもどすことができるように、またそれとは逆に、その
專從職員でなくなつた場合におきましては、何どきにても元の秋位にもど
つて仕事ができるように、元にもどることも保障する。そういうような方法において
人事院規則の制度を定めたいと存じております。
次の百二條のいわゆる
政治的行為の制限でありまして、これはまつたく職員の
政治的中立性を維持するということが主たる目的となつております。その理由といたしましては、
先般淺井委員長から御質問に対しましてお答えいたしました通り、從來嚴正中立であるべき
國家公務員が、いわば一種の
政治的勢力として進出し活動したことが、今日のようなわが國の状態に至らしめた一つの原因であるという、強い反省のもとに立つておるというようなことをお答えしておるのでありまするが、そういうことも一つの理由になつていようかと思うのであります。またもう一つの理由は、
國家公務員としての本質的な性格から、その中立性を確保しようという趣旨にも出ずるわけであります。そういう意味におきまして、第一は「職員は、公選による公職も
候補者となることができない。」というように改めたことであります。公選による公職の
候補者になることができないのでありまするから、その公職に在任することも原則としてできないわけであります。第二は、職員は政党その他の
政治的團体の役員となることができないのみならず、もしも
政治的顧問が役員という範囲外にありまするならば、その
政治的顧問にもなることができない。また
政治的顧問といわず、あるいは役員といわず、これらと同樣な役割を持つ構成員となることも禁止せられたわけであります。結局この規定の建前から申しますると、單なる党員としての活動以外は認められないということになるわけであります。すなわち党員といたしまして認められる行為のみができる、こういうことになろうかと存じます。それらの精神を受けまして、第一項に参りまして、從來の規定、すなわち政党または
政治的目的のために、寄附金その他の利益を求め、もしくは受領し、またはこれせあつせんするというような事柄にとどまらず、
選挙権の行使を除くほか、
政治的行為をしてはならない、こういうように規定したわけでありまして、その
政治的行為を
人業院規則で定める、いわば
人事院規則で定義をする
政治的行為をしてはならない。でありますからこの規定の書き方は、
人事院規則でこれをゆるめるとか、
人事院規則にその内容を讓つているというのではなくて、ただ
選挙権の行使を除くほか
政治的行為をしてはならない。その
政治的行為としてはならないということの定義、あるいは解釈の意味で、
人事院規則を制定する程度のものでありまして、
人事院規則というものがこの場合におきまして、いろいろこれをゆるめたり引締めたりする余裕は、ほとんどないというように私どもは考えているわけであります。ただ先ほど申し上げました「職員は、公選による公職の
候補者となることができない。」この建前を貫きますと、現在
中央地方を問わず、
國家公務員で公選による公職にある者は、全國で相当の数に上つているわけであります。その調査につきましてははなはだ不十分でありますが、御要求もございましたので取調べまして、本日お手元に資料として、一部分でございますが、差上げたわけであります。原則的に申しますと、これらの公職にある者はただちにこの
法律施行の日からその地位を失わなければならぬわけでありますが、これは
経過規定を設けまして、すなわちこの新しい法律の新しい附則の第二條におきまして、経過的な規定を設けて、これが緩和をはかつた次第であります。すなわち第一次
改正法律附則第二條によりますと「
國家公務員法百二條第二項の
改正規定施行の際、職員で現に公選による公職に在る者は、昭和二十四年一月一日前にその公職を退いて辞表の写及びその辞表受理され、且つ、その効力を生じたことを公に証明する書面を
人事院に送付しない限り、その日においてその官職を失うものとする。」こういうように規定しております。この期限をいつまで置くかということは、いろいろの問題で、できるだけ長い方が便宜かと思うのでありますが、いろいろな事情によりまして、結局最終的に二月一日までに必要な措置を了しなければならないということになつた次第でございます。
次に百三條につきましては、昨日御説明申し上げましたので御了承いただきたいと存じます。
百四條は、これは実質的な変化はございません。字句の修正にとどまることと、
人事院の許可を要することがつけ加わつただけであります。
第百五條も実質的な変化はございません。
次に恩給制度でございますが、恩給制度の改正と申しますのは、その基礎は、このたびは健全な保險数理を基礎として計画されなければならない、こういうように改めた次第であります。すなわち健全なる保險数理を基礎にすると申しますことは、きわめて專門的なことになるのでありますが、要するにこの恩給制度といたしましては、結局國庫及び恩給受給者から成る一つの資金が設けられることになるだろうと思います。この資金の運用によりまして赤字を出さないで行く、いわば恩給制度の独立採算制、これがこの健全な保險数理を基礎として計画されなければならないということ、一言で申しますればその趣旨になろうかと思います。しからば現在そのようなことが可能か。こう申しますと、現在の経済事情のもとにおきましては、そのようなことはなかなか困難だろうと存じます。從いましてこれは今後の研究にまたなければならぬわけであります。それまでは現在の恩給法がそのまま運用される、從つて現在の総理廳の恩給局が、現在の恩給制度の実施に、当分の間当るということになろうかと存じます。
次に罰則について御説明いたします。これは結局その特徴は、罰則の規定が強化されたことと、それからその條項が非常に拡充されたこととが、その特色をなすのでございます。その一々の條項につきまして御説明申し上げることはいかがかと思いますので、ほとんどこれを省略させていただきたいと存じます。御質問によりまして罰則の点は御答え申し上げたいと思います。
次に附則に参りまして、結局この附則の要点を申し上げますと、やはりこの法律というものは公布の日から施行されますが、
人事院に関するもの及び服務に関する規定に除いては逐次これを法律または
人事院規則、あるいは場合によりましては
人事院指令によりましてこれを施行して行く、こういう建前であります。それでありますから
人事院は、この法律が公布され、施行される日から成立することになるわけでございます。
それから改正法の附則の第十五條でございますが、これは先般お尋ねのございました通り、
人事院は、地方公共團体の人事機関が、この
國家公務員法の確立した原則によつて設置され、運営されるように協力し、技術的援助を與える、こういう規定でございます。
それから附則の第十六條は先ほど御説明申し上げました通り、労働関係法規をはずしたという意味におきまして重要な規定でございます。
それから先ほど一つ言い逃がしましたが、
労働組合法と
労働関係調整法をはずした措置だけを申し上げました。
労働基準法をはずしたあとはどうするか、この
労働基準法と申しますものは、やはり世界的なレベルにおいて日本の労働條件を規定しようという根本的な法規でありまして、その特定の條項を除きましては、もちろん
國家公務員にもこれを適用することが適切な條項が多いわけでありますから、この法律と矛盾しない範囲におきまして、この
労働基準法を準用する、こういう建前で行くわけであります。それが新しい附則の第三條の規定でございます。しかしながら、この
労働基準法をとりあえず準用して参りますが、
労働基準法をいつまでも準用していられないわけでありまして。取急いで、あるいは各方面の研究が済み次第、法律または
人事院規則におきまして、
國家公務員にふさわしい
勤務條件を規定する法律、すなわち根本的條項に関しましては法律、それから詳細なる事項に関しましては
人事院規則で、これを定めることになろうかと存ずるのであります。そのおもなる條項について申し上げますと、たとえば
労働基準法が規定しております條項の中、第三章賃金がございます。これはもちろん現在におきましても補充的に適用されておるだけであります。その賃金に関しましては、
國家公務員に関する限りは、給與準則すなわち給與法によつて規定されるわけであります。それから、労働時間、休憩、休日及び年次有給休暇等の條項は、もちろん、昨日も申し上げました通り、
勤務條件の根本に関する條項といたしまして、國会によつて議決していただく、これが二十八條の原則であります。これは近く法律として制定していただく予定になつております。安全及び衞生に関する事項でありますとか、技能者の賛成の問題でありますとか、こういうような問題は、詳細なる安全衞生規則というような技術的なものがございますので、必要に應じてこういうものは当分準用して行くということになろうかと思います。なお災害補償に関しましては、これは、先ほど申し上げました通り、
國家公務員災害補償法を近く制定していただく予定になつております。それで、それらの條項以外が準用されるということになるのでありますが、監督機関の職権に関する規定、すなわち
労働基準法によりますと、労働基準監督官を置いて、これを監督するということになつております。この労働基準監督官の制度は、國の工場事業場に対してはこれを準用しないという建前になつております。これにつきましては、先般公聽会におきましても末弘公述人から御意見がございまして、いろいろ論議のある点であります。その際、質問をすればこれは
人事院がやると言うだろうが、それじやできないだろう、ということを先まわりして公述人が申しておられたのでありますが、これに関しましては、やはりその根本的な基準につきましては、
人事院に設けられます基率局が、根本的な方針を立てまして、これが実施につきましては、やはり実際問題としては主として自己監督で行くことになると存じます。
それから最後に、政令二百一号は、
國家公務員に関する限りこの
法律施行と同時にその効力を失いまして、地方公務員に関する部面だけが残る。地方公務員に関しましては、やがて地方公務員に関する法律を制定していただくと同時に、これが終局的に廃止される。こういうことになるわけであります。
それから、先般申し上げましたが、國会及び裁判所の職員だけは、とりあえず三年間だけ一般職としておきまして、あとは、その基準が確立次第これを特別職に移すという方針でございます。
なお最後に、第十二條といたしまして、経過的な規定でいろいろな関係法令を廃止しております。すなわち、すでに高等試驗の行政科は本年から停止されておるのでありますが、司法科試驗もこれを今年限り廃止することにいたしまして、明年の判事、檢事、弁護士の資格試驗につきましては、新しい制度を間に合うようにつくる予定であります。それから、從來の高文の行政科試驗というものは廃止されまして、このような構想のもの、すなわち一度その資格を得れば、あとはもうその者の能力は試驗しないで幹部の資格を得られるというような制度は、今年ですでに廃止になつたわけでありまして、今後はすべてその昇任は、それにふさわしい試驗によつてやつて行くという建前になるわけであります。從つて來年の大学專門学校の卒業生の採用試驗というものは、新しい制度のもとにおきまして
人事院がこれを実施することになるわけでありますが、それは決して從來の各省の見習におけるように、これにうかつて採用された者に、幹部としての資格を認めるものではございません。これはまつたくその後の措置にまかされるわけであります。ただ試驗がうかつたからといつて、当然に今後幹部候補生になるというようなことは認められないわけであります。それから、一級官吏詮衡委員会官制でありますとか、二級事務官吏詮衡委員会官制であるとか、高等試驗委員及び普通試驗委員臨時措置法であるとか、これらの制度は、これら選考に関する事務は、從來内閣または法務廳においてこれを実施していたわけでありますが、これらの規定を廃止することによりまして、これらの選考事務は、一級、二級、三級という制度が存する限りは、この古い選考基準によるわけでありますが、今後は
人事院がこの選考事務に当る、こういうことにいたすわけであります。なお、この法律を制定していただく今日におきましては、本年度の司法科試驗はまだ終了しておりません。從つて本年の司法科試驗に関する限りは、この廃止していただくこれらの高等試驗令、高等試驗委員会というものは、本年一ぱいは存続するものとみなす、すなわち、本年一ぱいには、遅くとも司法科試驗はその事務を終了し得る、めどがついておりますので、本年一ぱいまでにはこれをやめることができますが、一應本年一ぱいまでは存続するものとみなしておるわけであります。
以上が大体の逐條の御説明でございます。時間の関係上端折りましたので、はなはだ不十分な点が多かつたことと存じますが、御了承いただきたいと思います。