○
岡部政府委員 昨日に続きまして第三章、
官職の基準について御
説明申し上げます。
その前に一言申し上げておきますが、昨日資料として御配付いたしました
政治的行為に関する
人事院規則試案は、これはまつたく
試案でございます。昨日までの
関係方面との折衝の経過に基く
中間案でございまして、いまだ
最終案ではございませんが、大体の
骨子をお示ししたものと御了承いただきたいと思います。これに関する御
説明は第百
二條の際に譲らせていただきたいと存じます。
昨日は第二十七條、二十
八條に関しましては比較的詳細に申し上げましたので、本日は二十九條から申し上げることにいたします。二十九條は
職階制に関する
規定でございまするが、これは主として技術的な
規定でございます。その
改正の
要点を申し上げますると、
現行法の
規定のもとにおきましては、
職階制に関する
計画は、この
法律の
実施前に
國会に提出してその
承認を得なければならない、というように
なつております。それでこの
法律の
実施前――
実施前と申しますと、今年の七月一日になるわけでございますが、その前にこの
職階制に関する
計画を
國会の御
承認を得なければならぬ、こういうわけでございまするが、根本的な
職階に関する
計画は、今鋭意
作成中でございまするので、とりあえずの
計画といたしましては、第二
國会において御審議、御
制定をいただきました新
給與実施法に関する
職階制をもちまして、とりあえずこの
職階制に関する
計画としていただいたわけでありまして、そのことは新
給與実施法の第一條にもうた
つてございますし、その
趣旨をまた重ねてこの
改正法の第五項におきましてうたつたわけでございます。すなわち「
政府職員の新
給與実施に関する
法律第十四條の
規定による
職務の
分類は、これを本條その他の
條項に
規定された
計画であ
つて、且つ、この
法律の要請するところに適合するものとみなし、その
改正が
人事院によ
つて勧告され、
國会によ
つて制定されるまで
効力をもつものとする。」ということにいたしました。今後
職階制に関しまして詳細なる
計画ができます場合におきましては、その
計画をやはり
國会に提出いたしまして、御
承認をいただくことに
なつておるわけでございます。なお
職階制は、
人事院におきまして最も重要な
仕事の
一つといたしまして、目下鋭意
研究中でございまするが、何しろ本格的な
職階制と申しますものは、いろいろ
職務の
分類、調査を
骨子といたしまするので、また相当の年月が要する見込みでございます。それでこれを全
官職にわたりまして全面的に施行するのはまだ相当な日にちがかかるのでございますが、一部分におきましても、それが
実施可能の場合におきましては、逐次これを
実施するという
建前におきまして、三十條第一項は、「
職階制は、
実施することができるものから、逐次これを
実施する。」というようにいたした次第でございます。
職階制につきましては、その程度の御
説明にとどめておきたいと存じます。
なお次は、任免の
根本規準でございます。
職員の
任用はこの
法律及び
人事院規則の定めるところによりまして、
受験成績、
勤務成績または
能力の
実証に基いてこれを行うわけでございます。その
能力の
実証と申しますのは、今後
能率の
標定制度を科学的に設けまして、それによ
つてや
つて行くことになるわけでございます。なお
職員の
免職は、
身分保障の
建前からも、
法律に定める
事由に基いてこれを行わなければならぬことは当然でございます。
法律に定める
事由は何かということにつきましては、後ほど申し上げることにいたします。
なお第三十四條に参りまするが、
現行法の
建前におきましては、この
法律の内部におきまして、それぞれ可能な
定義をするという
建前に
なつておりましたが、いろいろ専門的、技術的な
用語が多いわけでございまするので、その
用語の
定義であるとか、
説明であるとか、こういうものはすべて
人事院規則でこれを定めることにいたしまして、
人事院規則を統一して行うようにする
予定でございます。
なお第三十六條に参りまして、
採用方法について御
説明申し上げます。
職員の
採用は今後
原則といたしまして、すべて
公開の
競争試驗によるものでございまして、現在すでにこの
競争試驗によ
つている
官職も多いのでございまするが、すでに
高等試驗のうち、
行政科の
試驗は今年度から廃止されまして、今年度におきましては、
高等試驗のうち、
司法科試驗が残
つておるわけでございますが、その
司法科試驗も今年度限り廃止になりまして、
高等試驗の
制度は今度をも
つて終止されるわけであります。来年度からの新しい
大学、
専門学校の
卒業生の
各省への
採用試驗は、これはすべて
人事院が統一して行いまして、
人事院の
試驗に合格いたしましたものを
採用候補者名簿に登録いたしまして、これをその
要求に基き
各省に提示して、その
候補者を配属する、こういう
予定になります。なお判事、檢事、弁護士になるための
資格試驗、
現行法のもとにおきましては
司法修習生の
採用試驗というものは、これに関しましては明年のこれに必要な時期までに、新たな
試験制度が
採用され、それが新しい
法律をも
つて制定されることになる
予定に
なつております。なお
試驗方法もいろいろ科学的な
方法を用いまして、
從來とかわつた新しい科学的な
試驗方法が
採用されるわけでありますが、すべての
官職にわたりまして、すべて
試驗制度で行くということもきわめて困難な部面があるわけであります。ことに
競争試驗によることを適当としないもの、あるいは
指導力でありますとか、
統卒力とか、あるいは人格を主とするものとか、こういうものを一概に
試驗制度によることは不適当な
部門が多いわけであります。たとえて申しますると、
教員の
採用方法を
試驗によるというようなことは、これは不適当であります。それで主として
教員の
採用方法というものは、
選考によることになろうかと思います。またいろいろな
大学の
附密研究機関、
試驗機関、こういうところへの
採用も、
選考方法によることになろうと思います。またこの職につけるのにはこの人でなければならないというような
部門があるわけでございます。そういうものに対しましては、やはり
公開の
競争試驗によらずに、この
選考方法を活用する、こういうことになるわけでございます。しからばその
選考機関はどういうものを使うかと申しますと、それはいろいろ具体的にま
つて來ると思いますが、ことに
教員に関しましては、特來御
制定いただく
予定に
なつておりまする
教育公務員法などの構想といたしましても、たとえば
大学教授の
採用には、
大学教授会というようなものがその
選考機関として予想されておるわけであります。そういうふうに機械的にならずに、
実情に即してやるというような
意味が、この
選考機関の活用ということについて考えられるわけであります。なお
職員の
昇任に関しましても、
原則として、その
ポストより下の
ポストの者の間における
競争試驗によるのを
原則とするわけでありますが、場合によりましてはそれぞれその
ポストの
範囲を、適宜
実情に感じてこれを定めることができるわけでございます。なお
改正の
要点といたしましては、
受驗の
資格要件、
試驗の
内容――
試驗の
内容につきまして若干申し上げますが、
國家公務員の
採用試驗は、それぞれの
目的によ
つて異なる場合があり得るのでございますが、
学理に偏して、從いましてこれを受ける者が
試驗勉強に熱中する、そのために
職務をおろそかにするというようなことは、その本末を轉倒するわけでございまして、
國家公務員の
採用または
昇任試驗といたしましては、その
目的はどこまでも
職務遂行の
能力を有するかどうかを判定する、
職務において最も優秀なる
能力を示した者が、その
試驗において十分これをパスすることができる、具体的に申しますると、
学理に偏することなく、その実務において優秀な者が
昇任され、
採用されるというような
試驗方法を考えておるわけでございますが、その詳細につきましては時間の
関係上省略さしていただきたいと存じます。
採用試驗の告知につきましては、これは最も合理的な
方法で、
採用試驗を受けようとする者が漏れなく合理的に、その
受驗に必要な知識を得ることができるようにする
趣旨でございます。なお
名簿の
作成でございますとか、
採用候補者名簿の問題とか、
名簿の失効の問題とかいう技術的な面につきましては、
説明を省略さしていただきたいと存じます。
次に第四款、
任用が第五十
五條以下に
規定されてございます。
任命権の問題につきましては昨日やや詳細に御
説明申し上げました次第でございますが、もう一度簡單に申し上げますと、この
任命権に関する
規定が動き出しますのは、結局この
任命権制度の根拠と
なつている
制度が完備してから、実際に動き出すものであるというように御了承いただきたいと思います。それでありますからこの第五十
五條の
規定に矛盾するいろいろな
任命に関する法規も、この
法律が公布されると同時にその
効力を失うのではなくて、実際にこの五十
五條の
規定が動き出しますまでは、なお
從前の例によるわけでございます。でありますから、たとえば文部省の例をと
つてみますると、現在
教官のうち、
文部教官も
地方教官も、その
一級官は
内閣によ
つて任命される。二級官は
文部大臣によ
つて任命される。それから
地方教官の中で三級官は、
地方教育委員会によ
つて任命されるわけであります。そういう
制度は、この五十
五條が適用されるまではそのまま
從前の例によ
つて行く。それは昨年の
秋國家公務員法が
制定されましたとき、同時に
制定されました
法律第百二十一号によりまして、
國家公務員法の
規定が具体的に適用されるまでは、なお
從前の例によることに
なつておりますので当分
從前の例によ
つて行く、こういうようになります。この五十
五條の
規定がいつから適用されるかということは、これに必要なる
法律または
人事院規則が
制定されたときに、初めてこれが適用される、こういうことになるわけであります。
次は
採用候補者名簿による
採用の
方法について申し上げますが、今後
人事院が
採用試驗を行いまして
採用候補者名簿ができますと、それを
各省各聽からの
要求に應じまして、その
各省の
希望者に対しまして五倍、
原則といたしましては、
高点順に從いまして五倍の
候補者を提示することになるわけでございますが、現在のところこれを
原則通りに行うことは、いろいろの
事情において困難であろうということを考えまして、二十六年七月一日前におきましては、その倍数を
最小限度二倍でよろしいというように
規定しているわけであります。でありますから、
大藏省か
來年法科系統の
卒業生を三十人
採用したい、こう申し込んで参りました場合においては、六十人その
候補者名簿を
人事院から提示して、その六十人の
範囲内において
大藏省当局がその選択に
從つて採用し得る。しかしその
採用する
範囲は
人事院から提示を受けた六十人の
範囲でなければならない、こういうことになるわけでございます。
次に
條件附任用について申し上げます。今後
職員はすべて
條件附採用ということになります。
條件附採用と申しますのは、結局その
條件附採用期間におきましては、
身分の
保障がないわけでございます。その
條件附採用期間といたしましては、「六月を下らない
期間」と
規定されておりまして、その
期間を無事遂行したときに、正式の
職員となるわけでございます。
次に、
臨時的任用につきましては、格別の変更はございません。
次に
給與について申し上げることにいたします。申すまでもなく、
給與と、
給與支給の
原則はどこにあるかと申しますと、あくまでその
官職の
職務と
責任に應じてこれをなす。すなわち
同等の
職務に対しては
同等の
給與が支給されなければならない、イコール・ペイ・フオア・イコール・ワークというのが
國家公務員法貫く
給與に関するる
原則でありますが、現在のわが國の経済的、
社会的情勢を考えますときに、この
原則をそのまま適用することもきわめて困難なる
情勢にありますので、
現行法のもとにおきましても、その
趣旨はできるだけすみやかに可能な
範囲において達成せらるべきものではあるけれども、
現行制度に適当な考慮を拂わなければならないということを強くうた
つております。これは、いわばこの
能率給、
職務給の
原則に対しまして、
生活給の
原則をも
つてこれを調整したということが言い得ようかと思うのでございますが、この
改正案におきましては、そういうことはなお含みつつも、できるだけ
職務給、
能率給の
理想を高く掲げて、これが実現に邁進しなければならない、こういうことを強調した次第であります。但し現在の
事情のもとにおきましては、
生活給の
要素を無視してはならないことは申し上げるまでもないことでございまして、先般の
臨時人事委員会の
勧告におきまして、
勤務地手当を十分考慮いたし、かつ
家族手当につきましても
現行法の二百五十円を五倍の千二百五十円にするようにいたしましたのも、これは
生活給を考慮するという点に基いているわけであります。しかしこれはあくまで現状に即したものでありまして、かの
勧告案においても現われております
通り、このような
生活給的な
要素は、
將來なるべくすみやかに廃止せらるべきなのが
原則であるということをうた
つてある次第でございます。その
趣旨をこの六十
二條第二項は
理想として掲げておる次第でございます。
なお六十四條第二項は
俸給表に関しまして
表現を明確にした次第でございます。
なお六十
五條の第一項第五号に「
扶養家族の数」を
つけ加えましたのは、やはり
生活給を考え、
扶養家族をいかに扱うかということを
研究すべきものであるというような
意向がここにうかがわれるわけであります。たとえば
家族数によりまして、あるいは
家族の地位によりまして、すなわち妻と子供、あるいは
扶養家族そのものの数につきましても、そこに取扱いを異にする必要がある場合におきましては、そういうことも考慮するというのがこの
趣旨でございます。
なお六十六條、六十
八條、六十九條、七十條につきましては、特に御
説明申し上げることもなかろうかと存じます。
七十
二條につきましては、
勤務成績の優秀なものに対する
表彰、それから不良なものに対する
矯正方法についてでありますが、これは
從来内閣総理大臣にそれに関する案を提出することに
なつておりますのを、
人事院がみずから適当な措置を講ずる、
表彰なり
矯正をみずから行うことにいたした次第でございます。
七十
五條の
身分の
保障に関しましては、昨日御答弁申しと上げた
通りでございます。
次に七十七條の離職の問題、これは
現行法におきましては
彈劾に関する規程に
なつておりますが、この
彈劾に関しましては、昨日御
説明申し上げましたような
趣旨によりまして
改正いたした次第でございます。
次に七十
八條に参ります。これは
本人の意に反する降任または
免職の場合でございまして、「
職員が、左の各号の一に該当する場合においては、
人事院規則の定めるところにより、その意に反して、これを降任し、又は
免職することができる」と、ございまして、
從來の三つの場合のほかに「官制若しくは定員の改廃又は予算の減少により
廃職または過員を生じた場合」、これを
つけ加へたわけであります。これは
從來休職の
一つの理由とされていたわけでありますが、これを
免職の
一つの場合としております。
現行法の
建前におきましても
文官分限令におきましてはこれを
休職または免官の場合としているが、それと歩調を合せておるわけでございます。一号におきまして「
勤務実績が拳がらない場合」を「
勤務実績がよくない場合」とこう改めたのであります。これは
現行法のいくらか積極的な氣持を、少し消極的な
意味において
表現したかと思うのであります。
勤務実績がよくない場合という漠然たる
表現でありますが、これの
運用につきましては、今後は單に
上司の主観的な判断によらずに、
勤務成績の
評定ということを行いまして、これは
現行法の七十
二條をごらんいただきたいと思うのでありますが、その
本人のいろいろな面の
能力をはかるような、科学的な
評定制度を設けまして、それによ
つて何人も否定し得ないような、あるいは何人が見ても結局において動かし得ない客観的な
標準を、科学的な
評定制度によりまして、その
能力を現わして行きたい。そういう客観的な
標準によ
つてこういう処分を行うことが初めてできようかと思うのでございます。殊に、少し詳しくなろうかと思うのでございますが、
從來ややもいたしますと、
官吏の
責任の
所在が不明でありまして、よく
官吏が
責任をとらぬ。いろいろな失策をいたしましてもその
責任の
所在が常に不明確であるという御非難があるわけでございますが、今後この
職階制が
実施されまして、その
職務の
内容と
責任が、客観的にはつきりきめられまして、その
職務内容に基きまして、それに関する今申し上げました客観的な
評定制定ができますならば、初めてその
責任の
所在がはつきりするのではないかと考える次第でございます。
次に七十九條は
本人の意に反する
休職の場合を
規定してございます。これは「又は
人事院規則で定めるその他の場合」というのを
つけ加えたわけでございまして、要するに
人事院規則の
運用によりましてその全きを期するという
意味におきまして、こういう面におきましてもやはり
人事院が独立の
性格を持つことによりまして、こういうような
條項がその
運用に大過なきを期し得る、適切を期し得るということになろうかと存ずるのでございます。
次に
休職の効果でございますが、
現行法の下におきましては
休職の
期間は一年であるということに
なつておりますのを今後は
事情に應じてそれぞれ
休職の
期間は
人事院規則でこれを定めるということにいたしました。そうして
休職の
期間も、
休職の
事由、事故が消滅したときは当然に終了するという
建前をと
つているわけでございます。なお
休職中は
休職給として
現行法の下におきましては三分の一の
俸給を受けることに
なつているのでありますが、
改正法案におきましては、
給與準則、すなわち
給與に関する
法律でございますが、その
給與に関する
法律で、
休職給に関して別段の定めをしなければ、
休職者は
俸給を受けられないということになるわけでございます。