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大野説明員 厚生政務次官の答弁をということでありますが、私は事務的に
関係しておりますので、お答え申し上げます。ただいまの問題でございますが、
一般邦人はどうなるのかという問題でありますが、未
復員者給與法では、
一般邦人は対象にな
つておらず、旧來の軍人、軍属という身分を持
つた者だけに限られておるのであります。
一般邦人は未
復員者給與法の恩典にはあずからない、これが問題でございます。ただいまお述べになりました点は、この
一般邦人に関する問題であろうと思うのであります。今
海外にまだ残
つております
一般邦人のうち、いろいろ態樣がございますが、その間に軍人、軍属というような身分を持
つた者と区別をすることは
國民感情の上にぴ
つたりしないというのは、
一般邦人のうちシベリアに連れて行かれた者
たちであります。そのほかに、たとえば樺太から最近
帰つて参
つた者の中には、四十年からずつと樺太に定住して、そこで土着の農業を営んでいたというような
一般邦人もございます。それから
満州でずつと
仕事をしていて帰りが遅れていまだに彼の地に残
つておるというような者もあり、なお台湾にも残
つておる方もあり、最近の船で
引揚げて來る方もあるのでございます。これらのうちで終戰当時
満州で非常な混乱を重ねて、本來の旧軍人、軍属だけがシベリアに連れて行かれるはずのものでありましたのが、運惡くたまたまその土地にお
つて、年かつこうが
ちようど前の軍人、軍属と同じような、
ちよつと区別がつきかねて、軍人、軍属の中にまぜられて、それらとま
つたく同様な扱いを受けてシベリアに連れて行かれ、その後は
從來の軍人、軍属と同じような收容所に收容せられて、食事その他の
給與もすつから同じ待遇で今日まで來た、作業もちつともその間区別がない。そうして、今日
引揚げつつあるというその
一般の邦人の
方々も、これは一番ただいまの問題では、なぜ在來の軍人、軍属という身分を持
つた者との間に待遇が区別をせられるのであるか。これはまことに
國民感情として納得しかねるという問題に相なるわけでありまして、御説のごとく前からやかましく取上げられて來たものであるのであります。なおこの問題につきましては、前の
國会に御提出になりました
引揚対策審議会設置法、これに基きまして
引揚対策審議会が設置されたのでありますが、その審議会においても、この問題はいろいろ研究が重ねられておるのであります。一番むずかしいことは未
復員者給與法の軍人、軍属ということにな
つてしまうと、どうなるかという問題でございますが、
一般邦人は
一般邦人として、おそらく將來においては在外資産の問題、あるいは賠償の問題というようなことで、いろいろ取上げられる問題があるだろうと思うのであります。人によ
つてはどうもはたして軍属であ
つたか軍属でなか
つたかというようなことも、十分こちらではわかりかねる者もあるのであります。といいますのは、終戰の直前に應召したとか、あるいは軍属に
なつたというような者もあるのでありまして、そういう
方々については、十分な名簿も何もこちらにありませんので、結局上陸した際に、あなたは終戰時軍属の身分を持
つていたかどうか、どういうわけで
向うに連れて行かれたのであるかということなどを一々伺
つておるのであります。それによ
つて判断してお
つたというような点もあるのでありまして、なかなかそういう境に行きますと、非常に微妙な点もあるのであります。とにかく
一般邦人ということになると、將來の賠償とか在外資産の問題とかいうような場合に、いろいろまた特別の待遇が與えられるのではないかというふうにも考えられるのでありまして、初めは審議会の各メンバーの
方々も全部軍属とみなすべしというようにしたらどうか。もし軍属とみなすということになれば、結局
給與法の
改正というようなことも
一つの
方法として考えられるかもしれませんが、しやにむにそれで行
つたらどうかということであ
つたのであります。しかも
一般邦人の中でもいろいろ態樣がありますので、特にシベリアに連れて行かれた、ま
つたく軍人、軍属と間違えられて連れて行かれた方、そういう
方々はま
つたく軍人軍属とすることにしたらどうかというようなことで最初は進みましたけれ
ども、いろいろ研究の結果は、早急にそういうことにな
つて、はたして後日にまずい
立場になりはしないかとい
つたような考えも出て参りまして、現在その辺のことは愼重に研究を重ねておるような次第であります。ただ
一般の邦人が特に何も立ち上るための
援護の方途が與えられていないので、非常に損な
立場にあるということではいけませんので、それらの点については、でき得る限り
復員者と同様の待遇あるいはそれにかわる待遇というようなことも、
援護廳としては考えておるような次第であります。
いろいろな施策の中で、特に
一般邦人だけを主たる対象として考えておる方策はたくさんあるのでありまして、たとえば生業資金の貸付ということは、主たる対象としては
一般邦人ということにな
つておるのであります。それから應急家財の特別配給というようなことで、内地に
帰つて來た
あと世帶を持つ者に対して應急家財を配
つておりますが、これもやはり
一般邦人というような建前で進んでおるような
状態でありまして、かれこれあわせまして、特別に
一般邦人という身分を持
つた者が不利な
立場にあるというようなことがないように、氣をつけておるような次第でございます。