○佐伯
委員 私は
本法の根本性格につきまして、総括的に賛成しかねるものが非常に多いのでございますので、内容の事実に対しましては、御
質問を申し上ぐることを省略いたしまして、大体に
國有鉄道の
公共企業体を設立いたしまするゆえんのものは、少くとも能率を高めるという面と、それから
公共的性格、いわゆる
國民経済の利益を確保するという、この二つの面をどう調和するかということのために、こういう新しい
公共企業体が生れるものだと
考えられるのであります。ところが、この
法案を見ますると、どうも現在の國直営時代と何らかわ
つておらぬように私には
考えられます。しかしながらその点につきましては、第三十六條に、高能率に役立つような
公共企業体の会計を規律する
法律が制定、施行せらるようにうた
つてありまするので、少くとも本
法案をおつくりに
なつた趣意、
精神は、これによ
つて將來達成せられるものと
考えられるのであります。
〔
有田委員長退席、
佐々木(更)
委員長代理着席〕
でありまするから、本
法案はやはりまだ完成されたものでないというようなことが言い得るということは、大臣におかれましても十分に説明されておるようであります。ところで私は、この際ただ一言申し述べておきたいと思いますることは、この第三十六條の高能率の企業体と申しますると、どんなものがよいかということが問題にされておるのでありますが、私はかねて主唱いたしておりまするし、また今回
公共企業体の改正問題に対しまして、
政府に要請しております問題がございます。この際
政府に要請いたしておりまする、私の主唱する企業体と申しまするものは、
鉄道事業は
公共的性格を持
つておる反面、経済的自立性を持
つておる。
公共事業業が独立採算制をとるべく、商事的原則に基いて
運営せられねばならぬという反面と、
國家公共のために盡すという公益性との、二面を持
つておりまするので、この二面を調和する企業体、これが要請せられておると思うのであります。ところで國営とか、國有とかいうことにな
つて参りますると、前段のいわゆる
國家公共の性格というものが非常に勝ち過ぎまして、経済の自立性というものは第二義的に
考えられるのであります。これが今回の新しい企業体の生れ出た理由でありまするが、この二つのものを調和するということは、非常にむずかしいことであろうかと
考えます。特に
日本國民は、まだこの二つの面を分離するかのごとき認識力は非常に鈍い、
從つていずれか一方に偏しまして、國営になりますれば、経済の自立性格が失われまするし、また経済の独立採算制をとりますと、営利主義、いわゆる採算主義に走るようであります。この二面を調和するという今回の新しい
公共企業体の
発生ということは、実に
國有鉄道それ自体に非常な大きな意味を持
つておると
考えられまするので、私はこの二面を調和いたしまする案といたしまして、株式会社、いわゆる
國有鉄道の全財産を株式会社にいたしまして、それを
國家が全株を所有する、こういう
一つの企業者と、もう
一つはこれを
運営いたしまする
國家性格を持ちました公社を設立する。この二つのものが分離のようでありまする、これを調和して行くところの
一つの複式企業方式というものを確立することが、最もその
精神にかなあものである、かように
考えまして、年來、特に今回
公共企業体に改組するにあたりまして、
政府に提案をいたしておるのであるのであります。でありまするから、本員の提案しておりまする内容につきまして、
政府におかれまして將來御檢討をお願いしたいと
考えます。不幸にして本案は、私の提案をいささかも盛られておらぬように
考えまするので、
從つて私は本案に対して賛成する場合におきましては、四つの
條件を要求したいと
考えます。
第一は名称でありまして、第一條の名称に
日本國有鉄道とのみしてありまするが、これはやはり私は公法人であることを示すべきである。たとえば社とか廳とかを付加するほかに、
國有鉄道の所有と
経営の分離を明らかにするための文言をも付加いたしまして、名称を
日本鉄公社とか、あるいは
日本鉄道運営廳、こういうような名称にせられんことを希望するのであります。
それから第六條の法人税並びに所得税を免除するということは、これはこの際抹消してほしいと
考えます。
それから第四十三條の
鉄道経営上の損失並びに利益金処分に対しまして、
國有鉄道の
経営より生ずる利益金については、
政府の一般会計に納付する制度を改めまして、この利益金は運賃、料金の引下げ、あるいは設備の拡充ないし改善等によ
つて社会に還元するということに改められまして、その
反対給付でありまする損失金に対する
國家の交付金は、
日本國有鉄道自体の
経営において自弁するということに改正せられたいと思うのであります。
〔
佐々木(更)
委員長代理退席、
委員長着席〕
この理由といたしましては、將來高能率に改善をいたされる場合におけるところの独立採算制の基本問題を、この際確立しておいてもらいたい、かように
考えるがためであります。
なお最後に、第三十六條の「
公共企業体の会計を規律する
法律が制定施行されるまでは」こうな
つておるのでありまするが、これがま
つたく
本法制定の大眼目でありまするから、これをこのままにしておいたのでは、
本法制定の
精神が成立ちません。そこで私は思いますのに、最後の
本法の附則の第四項に、こういう意巳のことを一箇條設けられんことを希望するのであります。それは、
政府は
日本國有鉄道の会計及び財務に関して
鉄道事業の高能率化、自由化に役立つような
公共企業体の民主化制度を立案し、
本法第四章の改正
法律とともに、
本法成立後の通常
國会にこれを提出しなければならない。この一箇條を附則の第四に設けられんことを望むのであります。
本法は思いまするに、
國家公務員法の改正ということで主眼であ
つて、これに伴う一時的便法かと
考えられるのでありまして、どうしても
公共企業体といたしまする
國有鉄道の分離の大
精神、いわゆるこの性格なるものは、追
つて審議せられるものと
考えますので、これを具体的に
政府当局が責任を持
つていただくがために、以上第一條の名称を、
國家的性格と経済の自立性格とをつけ加えた名称にこの際に確立しておくことが第一、第六條におきましても、法人税並びに所得税というがごとく当然自立経済が負うべきものは、この際に
法律案の上からこれを抹消し、それから損益の
関係におきましては、利益金は
國家に納付するというがごとく性格ではなくして、当然社会に還元する
一つの方法といたしまして、運賃、料金の引下げ、あるいは設備の拡充、改善をはかる。これらは企業体をいよいよ強めまして、そうして
國家にその利益を還元しておるのでありまして、いたずらに一般会計に利益を還元いたしますることは、企業体を弱める原因である。こういう問題はこの際のやはり大きなものでありますから、断然確立しておくの必要があると
考えるのであります。最後に、附則の第四に加えますことは、要するに
本法は、大臣の説明によりますと、ま
つたく完成されたものではないのであるという御提案の
趣旨に基きまして、
本法成立後の通常
國会に御提案なされたるということが確立いたしておりますならば、まさに会期も切迫しておりまする今日におきまして、多少の弱点がありましても、私はこれに賛成するのであります。かような大
法案をわずか一週間や十日で審議することは、私は責任を持てませんので、私の賛成の意見といたしましては、以上四つの
條項を
條件といたしまして、
本法の成立を承認するものであります。