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證人(
入江俊郎君) 新らしい
行政機構の
改革につきましては、本當ならば、
憲法施行と同時にこれを行うべきであ
つたと思うのでありますが、それがなかなかむずかしい問題というので、一應御
承知の
行政官廳法が暫定法として作られて一年を経過し、いよいよここに
行政機構を
憲法の趣旨に
從つて抜本的に改正しようという時期に際會したと
考えるのであります。私はこの
行政機構の
改革につきましては、三つの指導
原理を自分だけで
考えておりますが、
一つは
行政機構は民主的でなければならんという點であります。この
行政機権が民主的でなければならんということは、即ち
行政機構が結局
行政運榮を極めて民主的にし、一般の
國民の一人々々に體しまして、迅速、周到親切なるサービスをすることができるように
機構を作るという意味であります。
それから第二には、
行政機構は
能率的でなければならない、これは特に説明を要しないと思います。
それから第三には、
行政機構は合理的であることを要する。即ち複雑な
行政事務をできるだけ系統に即しまして、分類し、文化との苟合とをうまく調和させまして、そして合理的に
組織するということが必要であると思うのであります。こうい
つた指導
原理に
從つて行政機構を改正するときに最も大切なことは、
行政機構がそういう指導
原理を本當に
具體的に實現しておるということが必要なのであ
つて、單にお題目であ
つて、観念的に作るということであ
つては意味をなさんと
考えております。今日この
行政組織に関する
法律として、
國家行政組織法が問題にな
つておりますが、
國家行政組織法だけでは、今私が申しましたような
行政機構の抜本的の改正ということの全貌は分らないのでありまして、この
法律はこの
一條にもありますように、
組織の
基準を定めるというのでありますから、
基準法でありましよう。これと相伴
つて、例えば何々省
設置法とか、或いは何々
行政廳
設置法とかいうふうなものが恐らく出るでありますしようけれ
ども、それらのものと相俟
つて、ここに初めて今日最も
國民の要望し、國會
方面でも重大な關心を持
つておる
行政機構の敗軍がその姿を現わして来るのであると
考えております。又今申しましたこの
國家行政組織法及び各
行政機構設置法という、その
法律に基いて制定せられる委任
命令である政令の
内容というふうなものもこれに重大なる意味を持
つて参りまして、それらが一體として
連絡をして、初めて私共が
行政機構が如何にあるべきかということを判断し得るのであろうと思うのであります。今日はまだ
行政組織法、この基本法だけしか我々の前に提示されておりませんので、これ以外のものについては、これを知る由がないと思うのであります。私共がこれらを判断するときに、今申しましたこの
法律と相伴
つて制定せられる
行政官廳設置法、若しくはそれに基くところの政令等の
内容についても、十分の考慮を拂いながら、この
法律を
考えて行く必要があるということを先ず第一に
考えております。勿論相關的な問題でありますけれ
ども、何も一遍にそれを決めるということは困難でありますから、できるに
從つて段々と議決をし、又制定していいと思いますけれ
ども、そういう内面的の有機的
連絡のあるということは十分
考えて行きたいというふうに
考えておるのであります。
それから又、これらの
法律を作りますにつきまして、何よりも必要なのは、やはりできるだけ民意を反映した段階においてこの
行政組織が拔本的に改正せられて行くということが必要なのであ
つて、これは當然のことでありますけれ
ども、時に今日
行政組織に關する法制をいじるときには、それらの點についての考慮を拂
つて行く必要があるように思うのであります。それで、そうい
つた心持でこの與えられました
國家行政組織法を
考えて見ますというと、私は大體三つの
方面から
考えて見たいと思うのでありますけれ
ども、
一つは、これが基本法として
規定されたに射しまして、どうも、もう少しこういう點も基本法へは入れたらいいじやないかという點を、先ず第一に
考えて見たいと思います。
それから第二番目には、この
法律とそれからして
各省の
設置法、更にこれらに基く政令との間における
規定事項の
分配というふうなことについて
考えて見たいと思います。
それから第三には、
國家行政組織法、問題にな
つておるこの法文の中で、やや不明瞭であるというふうな點について申上げて見たいと思うております。
第一の、この
組織法としてこの中にあ
つて欲しいと思うものは、外の
證人の方とも重複するかも知れませんが、先ず最初私は第三條におきまして、
行政機関として府、省、
委員會及び廳ということを書いてありますけれ
ども、これらについての性格が
一つも分らないのであります。實際において、役人をや
つた人、私共はその一人でありますけれ
ども、實は分らないことはないのでありますけれ
ども、併しこれはむしろ私が、過去の経驗を基にして想像をし、その想像をし、その想像が大體肯繁に當
つておるということで分るのであ
つて、これが
組織法としての體制の上から申しますというと、こういう
組織を置くのだからというからには、何が府であり、省であり、
委員會であり、廳であるかということについては、大まかな定義、性格を現わすということは當然あるべきことだと思います。その他の
委員會と院及び廳は外局だということは、分ります。これは第三條の五項にありますから分りますれけれ
ども、併し
委員會というのは、一體どういうものなのか、こういうことにな
つて參りますと、先きの方へ持
つて行
つて審議會とか、或いは
協議會というようなのが八條に書いてあ
つて、その下に括弧してあ
つて三條の
委員會を除くというふうな意味のことが書いてありますけれ
ども、それらから逆算して
考えますと、何か執行
機關たる
委員會であるというような意味らしく思うのであります。併しこれは必ずしもはつきりいたしません。又院と廳とに分けましたけれ
ども、一體外局でありながら院と廳とに分けたのかということになると、皆目分らないのであります。更に又、本文の
規定についても同様の感があるので、こういう點はやはり
國民が直接
関係を持つところの
行政官廳の根本
組織でありますから、どういう一體指導
原理でこういう府とか或いは省とか、
委員會、院、廳が置かれたかくらいは何か分る方法はないものでありましようか。これはやはり
法律上の必要事項であるように先ず
考えるのであります。
それから第二には、
行政組織につきまして、先程も
お話が出ましたが、横の
連絡の
規定、こうい
つたものについて、もう少し考慮を拂
つて貰いたいような氣がする。系統的なことはこれで分りますけれ
ども、もう少し横の
連絡等についても考慮を拂いたいような氣がしております。勿論
内閣法というものが別にあ
つて、
内閣というようなものを
組織して
行政を統一するというふうな
規定は別にあるようでありますけれ
ども、
内閣まで持ち出さないで、
各省の間におけるいろいろ
連絡方法というものがある。これは
組織法自體のものでないかも知れんけれ
ども、一體
組織というものは、運榮というものを離れて
考えられないのだと思うのでありまして、最少限そういうふうの意味のものが欲しいと
考えるのであります。それから尚、局とか課とかいうふうなものがどれくらいの人間でできるかということは、これは政令に委任されておりまして、大體それで宜しいと思いますけれ
ども、私は最近司令部あたりの各部局の様子を見まするというと、あちらの方には課というもの、課に似たものはありますけれ
ども、課員というものは殆んどいなく、大體課長か係長かというふうな人が相手になる。その下にせいぜい一人の補助者があ
つて、あとはタイピストとい
つたふうなことで、どんどん
事務を處理しておる。
日本の
地方官廳というものは、そういう點、課員が随分澤山いるというふうな感じを抱くのであります。こういう點に
行政組織自體の中に書くべきものではないかも知れませんが、そういう點が
行政組織を本當に合理化して行くという面において重要な
一つの事項であると
考えて、単純な
行政整理というふうな面を離れまして、やはり
行政機構をよくして行くという面から考慮したいというふうに
考えております。まあ、この
法律としてこういうふうなことを
規定して頂きたいと
考えるのは以上申上げましたような数點であります。
第二に、この
法律では或る事項を、これを
法律に委任と申しますか、
設置法に委せ、或る事項は政令に委任しておりますが、大體において私は政令に委任した事項については宣ろうと思いますけれ
ども、私はどう
考えましても、第七條の第三項にありまするところの、
各省若くは府等におきますところの内局の
組織について、全部これを政令に委任しておるという點に、どうも割切れない點を感ずるのであります。恐らくこれは
各省大臣の
權限を
法律で決めれば、あとはそれを實行して行く
行政の段階であるから、むしろこれに
各省に委せるというのが本當であると、こういうふうな心持でできだのではないかと思いますが、併しながら本来、
各省大臣の
權限を分けましても、その
權限がどういうふうにして働いて行くか、つまり働きの面というものを全然
考えないで、
各省大臣に
權限を
分配するというだけでは、私は本當の
組織法と言えないように
考えるのであります。恐らく若し、この
法律を施行しまするというと、先ずこの
組織法が運用されまして、その次に何々省
設置法とでもいうのができるのでありましようが、その何々省
設置法の中では、恐らく何々
大臣は何々に關する事項を所掌するというだけで以て、あとは何を書くのか、少しは書くこともありますが、外局のことがありますから、それらを書くでありましようけれ
ども、それだけで終
つてしまうと思うのであります。そうして内局の分課規程だとか、所掌事項等は皆政令で決めるということになりますけれ
ども、これはどうも
各省設置法の建前から申しましても、
組織と権限というものに
行政機構の根本の建前であ
つて、誰でも
組織權限ということは言うのであ
つて、
權限に伴う最少限度といいますか、最も必要な限度の
組織は、やはり
法律で決めるべきものではないかということを
考えるのであります。もういうふうな理論的な面を離れまして、もう
一つの面から申しますと、今日ぐらい
行政機構を抜本的にいじらなければならない時期はないと思うのであります。それにつきましては、無論
行政部局においてそれを
考えるということは、相當の効果もあるのでありましようけれ
ども、やはり、これは
行政を受ける側の
國民一般の立場からして、そういうふうなことで
考えて行くという面も是非欲しいように
考えるのであります。
各省がどういうふうな局に分れるかということは、それだけを取り上げて見ますというと、一般の
國民は大して關心を持たないかも知れませんが、併しそういうふうなことについて、
法律でこれを決める、國會において論議をする
機會のあるということは、結局、それによ
つて各省大臣の
權限の執行を合理化する元にもなり、又それらの點について、
國民の名において國會がこれを決めて行くということにもなるのであ
つて、そういう點から申しましても必要であるように
考えるのであります。これらの點につきましてはいろいろな
意見が對立し得るものと
考えますから、必ずしも私の言う點が唯一の
意見ではないと思いますが、私の率直な
意見を申上げますれば、さようなわけであります。
これについては昨年勞働省
設置の場合に、
参議院において大分議論がありまして、經過を経たことは記憶に新なところでありますが、私は、せめて、あの常時の勞働省の
權限くらいの
程度のものは當然
行政組織法としてはあるべきものではなかろうかというふうに
考える。これは、まあ實際において今いろいろな準備をしておる
行政部局の側から申しますと、いろいろな點において事情もあるかも知れませんが、今日率直に申上げれば、そういう感じを抱いておるということを御参考に申上げて置きます。
尚これも餘談でありますが、從前は官制というものは天皇の大權とされてお
つて、勅令で決めたのでありますが、そのときでも
各省の局の局の
設置、
廃止というようなことは、一々樞密院へ持
つて行
つてかけたというこで、單純に
行政部局の
權限に委されておらなかうた。勿論樞密院というのは
官僚の松山みたいなものでありますけれ
ども、勿論
政府とは特別な
地位にあ
つて、極密院に持
つて行くということになると、
政府でも随分愼重にいろいろな
方面を
考えて合理的にして行くというふうなことにな
つたので、今日のように
行政機構をとにかく根本的にやり變えなければならんというときには、私自身は
官僚出身でありますけれ
ども、
官僚だけの手に委せて置くということだけでは、何だか割り切れないような氣がするということを、率直に申上げてみたいと思います。
最後に、本法の中でどうも分りにくいと思います點は、府というものを置くことに第三條でな
つておりますが、第
五條を見ますと、府というのは総理府と法務府の
二つにな
つておりますが、この
二つ以外に置けるのか置けないのか。恐らくこれは
法律で決めれば置けるのでありましようが、それらの點もはつきりいたしません。
それから本部というのも、先程申上げましたように性格の分らない外に、まあ總理
大臣を以て長とする、こういうものでありますが、これは、まあ総理府の外局のようなものにして置いて、
法律の定めるとこるによ
つて省に關する
規定を準用することができるというふうな、この三條の四項の
規定の裏から、そうい
つたようなことになる
程度で宜いのでないかという氣もしますけれ
ども、これは、まあ本部というものの性格如何によ
つては又反對の
意見が出るかも知れません。
それからもう
一つ、十七條で次官の
規定がございますが、これは「
大臣不在の場合その
職務を代行する」とあるのですけれ
ども、この
職務の代行という趣旨がよく分りません。「不在の場合」というのですから
大臣が故障があるというふうな場合、これは
内閣法で外の
大臣が代行することにな
つておりますけれ
ども、そういう場合でない場合でやりたいのだと思いますが、旅行でもした場合のことだと思う。そういう場合に
大臣の
職務を代行すると申しますと、これはどういう趣旨か、私は誤解しておるかも知れませんけれ
ども、
命令の制定權もあるし、又閣議に出る
權限もあるのでありましようか。それらの點がはつきりいたしません。若しもそうであるとするならば、少し行き過ぎでないか。曾て明治時代の次官が
大臣の代理をする
規定を置いたことがありましたけれ
ども、そのときでも特に例外を置きまして、閣議に列席し若しくは
命令を制定する
權限は代行できないという
規定を置いた例があるのでありますが、これは
一つの問題でなかろうかと
考えております。
もう
一つ申しますと、二十
二條に公團の
規定がありまして、公園を
行政機構の中に入れるということ、これは至極實體に合うことで、宜いと思いますけれ
ども、これも實は公国とは何ぞやということを
考えますと、一向この二十
二條では分りません。これが
國家行政組織法の基本であるというならば、公国というものは先ず大體こういうものであるということがあ
つて、それから二十
二條が始まるのでにないかと思いますけれ
ども、そこがどうもはつきりしないという點は、初めに申上げた點と通ずると思いますが、二十
二條では公園の
設置、廢止だけを
法律で決めるとな
つておりますけれ
ども、公團の所掌事項とか
權限というものは何戸決めるのであるか。前の
行政機關については一々
設置、廢止の場合に、特に所掌事項、
權限ということを
法律で決めるように書いてありますけれ
ども、公團についてはそれがないので、これはどういう趣旨か。恐らく同じ趣旨かと思いますけれ
ども、
規定の點に些か不揃いの感じを持つのであります。極めて簡単でありましたけれ
ども、私の
考えを申上げて御参考に供した次第であります。