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1948-05-26 第2回国会 両院 決算委員会合同審査会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十三年五月二十六日(水曜日)     午後一時四十三分開會     —————————————  委員氏名   衆議院    委員長 松原 一彦君    理事 竹谷源太郎君 理事 冨田  照君    理事 久保 猛夫君       泉山 三六君    大山  司君       長尾 達生君    中山 マサ君       樋貝 詮三君    平井 義一君       松本 一郎君    宮幡  靖君       花月 純誠君    片島  港君       河合 義一君    高津 正道君       玉井 祐吉君    辻井民之助君       戸叶 里子君    田中源三郎君       中曽根康弘君    後藤 悦治君       田中 健吉君    早川  崇君       木村  榮君   参議院    委員長 下條 康麿君    理事 太田 敏兄君 理事 西山 龜七君    理事 山下 義信君       岩崎正三郎君    堀  眞琴君       吉川末次郎君    今泉 政喜君       北村 一男君    中川 幸平君       田方  進君    竹中 七郎君       谷口弥三郎君    平野善治郎君       深川タマヱ君    小野  哲君       駒井 藤平君    鈴木 憲一君       伊達源一郎君    帆足  計君       山崎  恒君    兼岩 傳一君       千田  正君    小川 友三君       西田 天香君  出席委員    委員長 松原 一彦君    理事 冨田  照君 理事 久保 猛夫君       河合 義一君    高津 正道君       中曽根康弘君    後藤 悦治君       木村  榮君   参議院    委員長 下條 康麿君    理事 太田 敏兄君 理事 西山 龜七君    理事 山下 義信君       岩崎正三郎君    堀  眞琴君       吉川末次郎君    中川 幸平君       谷口弥三郎君    小野  哲君       伊達源一郎君    千田  正君       小川 友三君    西田 天香君  出席政府委員         総理廳事務官         (行政調査部総         務部長)    前田 克己君  委員外出席者         (證人)         早稻田大學教授 吉村  正君         朝日新聞論説委         員       西島 芳二君         毎日新聞論説委         員       池松 文雄君         神奈川縣知事  内山岩太郎君         元法制局長官  入江 俊郎君         全國官廳榮働組         合文化委員   高橋 眞照君     ————————————— 本日の會議に付した事件國家行政組織法案     —————————————
  2. 下條康麿

    會長下條康麿君) それでは只今から決算委員會合同審査會を開きます。  先般衆議院決算委員長から、國家行政組織法案は極めて重要な法案でありまするが故に、合同審査會におきまして有力な證人意見を聽取する必要があるという御発言がありました。参議院においても全く同様に考えまして、合同審査會を開くことになつたのであります。合同審査會長は、衆議院委員長と御相談しまして、私が推されることになりました。證人両院とも委員長にお任せになつたのでありますが、両院委員長が相談いたしました結果、學者として早稻田大學教授土呂正君、それから官廳方面としては神奈川縣知事内山岩太郎君、元官吏として、又軍港的立場もありますが、入江俊郎君、新聞方面意見としては朝日毎日新聞論説委員西島芳二君、池松文雄君、尚、官廳労組の方の関係意見も聽く必要があると思いまして、全國官廳勞働組合文化部長高橋眞照君、こういうことに決めました。この段御了承願います。  それでは證人に順次ここにおいで願いまして、意見を述べて頂くことにいたします。證人順序はいろいろの證人の時間の都合等がありまして、早く帰りたいという人がありますし、その他いろいろの都合で、第一に吉村教授、二番目が神奈川縣知事内山岩太郎君、三番目が朝日西島君、四番が官廳勞組高橋君、五番目が毎日の池松君、最後が入江俊郎君、こういうことに取決めたいと思いますから、この段御承知おきを願います。それから時間は一人二十分程度にして頂きたいと思います。  それでは只今から順序に従いまして、吉村早稲田大學教授の發言を求めます。     〔總員起立證人は次のように宣誓行なつた。〕    宣誓書  良心從つて眞実を述べ、何事もかくさず、又何事もつけ加えないことを誓います。         證人 吉村  正
  3. 吉村正

    證人吉村正君) この國家行政組織法を一讀いたしまして、私の感じた二三の點を率直に申上げて見たいと思います。まず第一に私はこの法案名前實費とが伴つておらんような氣がいたすのであります。と申しますのは、この法案の第二條にもありますように、行政組織というからには、行政機關の全體が系統的に構成され、且つその行政機關のおのおのについての權限分配職務を、つまりちやんと割當てられて、初めてこの行政組織というものが全體として考えられるのであります。ところが、この法案によりますと、まず第一に行政機關設置でありますが、これは第三條によりますと、「國の行政機關組織は、この法律でこれを定めるものとする。」と書いてあります。併しながら又その第二項においては、「府、省、委員會、院及び廳とし、その設置及び廃止は、別に法律の定めるところによる。」とあり、又更に第六項において「第二項及び第三項の行政機關として置かれるものは、別表にこれを掲げる。」とあり、その別表はどうしてできるかと申しますと、第二十六條によりますと、これは、「第三條及び第二十二條規定に基く法律がすべて制定された後に、整備の上附加されるものとする。こういう工合にありまして、行政機關設置ということが別表には附加されますが、この法律にあらざる別の法律に上つて作られるようになつているように考えられるのであります。それからその所管事務權限分配でございますが、これは第二條ちやんと「國家行政組織は、内閣統轄の下に、明確な範囲所掌事務權限を有する行政機關の全體によつて、系統的に構成されなければならない。」とありますのに拘わらず、第四條にありますように、「前條の行政機關所掌事務範囲及び權限に、別に法律でこれを定める。」となつておりまして、至くこの法律案においては觸れておらないのであります。從つてこれは、これを以て行政組織法というのは、甚だ名前内容と一致しておらんように思うのでありまして、若しこれに強いて、この法案名前を付けるとするならば、行政機關組織基準法國家行政機關組織基準法とでもすべきものではないかと、かように私は考えるのであります。これで以て行政組織だということは、國民の方から見まして、どうも甚だ工合が悪い。これでは行政機構そのものではない、こういう工合に感ずるのであります。若しそういう私の考えが正當であると認められるといたしますならば、この名前を改めましてそうして第一條というものを書き直しまして、「この法律は、内閣統轄の下において、國の行政事務能率的な遂行を図るに必要な國家行政組織を整えるために、行政機關組織基準を定めることを目的とする。」こういう工合にしなければならんのでありまして、行政組織そのもの作つた法律と、こう考えることができないというのが私の第一の考えであります。  第二には、この法案は第一條にもございますように、行政事務能率を上げるということをその目的としておると思うのであります。行政組織能率を上げるためには、行政健闘の職能というものの重複を省き、その上に行政機關職務というものの統合、インテグレーシヨンというものが行われなければならないというのであります。それが從來行われておらないために、非常な繁文縟體を来し、能率が低下するという工合になつてつたのであります。各官廳割據主義でありますというと、非常に困りますので、そういう點から申しまして、分離することは行政事務がだんだん複雑になりますから、ますます官廳の數が従来に比しまして多くなつて参りますから、多くなつて参りますものは、全體に統合されなければならん、集中ではなく統合されなければならんと思うのであります。そういうような原理に関する規定が、ここに盛られておらないように思うのでありまして、行政機関組織基準といたしましても、その點は不備ではないかと、こういうふうに私は感ずるのであります。これは、つまり行政機関所管事務權限というものに全然觸れておらなくて、それを別の法律に委せておる結果から来ることでもあろうかと思います。これが第二點であります。  第三點につきましては、この法案では行政機關上下連絡についての基準に、示されておるのでありますが、行政機關相互間の横の關係についての基準が全然示されていないと思うのであります。現在の我が國の行政組織は、御承知のようにプロシャ式行政組織によつておるのでありまして、これは上の命令を下に傳えるということに都合よくできております。従つて上下関係が明確に示されておるところに特徴がありますが、併し横の関係が全然ないということが特徴でありまして、それが同時に缺陷でもありまして、このために行政事務能率がどのくらい阻害されていたか、又國民の方から見まして、そのために非常に時間の浪費、その他の無駄、それから非常な困難に直面して来たと思うのであります。例えば文部省と厚生省との間に、両方に關係する事柄でありまして、これが意見が違う、厚生省大藏省との間に意見違つて全然一致點を見出すことができないというような問題であります。そういう問題につきましては、何かここに連絡をする、横の関係に附する原理原則を、苛くも基準である以上は、明確にして置く必要があるのであります。このことができなければ、從來行政組織におけるところの根本缺陥救つて、そうして行政事務能率を上げ、國民の生活にサービスをするという建前から行きまして、圓滑行政事務運營ということを圓ることはできないのではないか、こういう具合に私は考えるのであります。  以上總括的に、大體三點を申上げた次第でありまして、細かい點についても多少あるかと思いますが、いろいろ證人の方がおいでになるからお話があることだろうと存ずるのであります。要するに約めて申しますと、どうも行政組織というのは、こういうものではないと私は思うのであります。機關權限分配が、全然認められておらなければ、行政組織ではない。これは行政組織を作る一つ基準を示すものである。こういう具合な初めからの立法者のお考えであるならば、名前もそういう具合に改むべきである。それにいても、今申しましたような二つの點について、根本的な日本の今までの行政組織に関する缺陷を救うための原則を、ここに打立てる必要があるように考えるのであります。以上誠に簡単でありますが、私の意見を申上げました。
  4. 下條康麿

    會長下條康麿君) 次は内山神奈川縣知事にお願いします。     〔総員起立證人は次のように宣誓行なつた〕    宣誓書  良心從つて眞理を選べ何事もかくさず、又、何事もつけ加えないことを誓います。         證人 内山岩太郎
  5. 内山岩太郎

    證人内山岩太郎君) 本日お呼出しを頂きまして、實は早々参つたのでありますけれども、一昨日電話で招集を受けましたので、内容が極めて不明瞭でありましたが、毎日忙しく時間を使つておりまする私に取りましては、今日のお呼出し内容が、只今議會に参りまして漸くはつきりした程度であります。尚又内務省が解體されました後におきましては、こういう法案などにつきましては、なかなか研究が遂げられておりませんし、又こういう法案が出ておるということも、我々は確かに知り得ないのであります。從つて全く用意なしにお伺いしたと言つても差支えないのであります。従つて皆様のように、この道のそれぞれの専門の知識を持たれる方々の前で、何かしら私が思い付きのようなことを申上げることは、むしろ差控えべきではないかと考えております。併しながら折角参つたことでもありまするし、一、一この中で申上げたいこともないではないのでありまして、甚だ卑見でありまして如何と思いまするけれども、御清聽をお願いしたいと思います。  その一つは、第九條の問題でありまするが、「第三條の各行政機關には、その所掌事務を分掌させる必要がある場合においては、法律の定めるところにより、地方支分部局を置くことができる。」こう書いてありますが、大變結構なことであります。すでにこういうことが法文化されているように承知しておりますが、現在私ども地方知事は、一昨日でありまするが全國の知事と全國の縣會議長と、それから市の代表町村會代表が一堂に集まりまして、地方にある中央出先機關整理して欲しいという極めて強い運動を展開することになりまして、相當激烈な決意をしたわけであります。それというのは、昨年の春新憲法が公布實施されました前後におきまして、非常に澤山の出先機関地方に出て参つたわけであります。從來知事中央綜合的代表機關ということで政治行なつておりまして、相當の成績を擧げておつたに拘わらず、今度公選によつて知事ができまして、而も憲法によつて特に地方分權が立派に文字の上に現われた。又その精神においてやらなければならんということになつているに拘わらず、凡そこれとは反對のことが續續として現われて参りまして、一昨日の決議におきましても、十七の出先機關を擧げているのであります。これは廃止又は地方に移譲しろということを決議したのであります。それは何十かある中の十七でありまして、又その中どれを先にするかということも問題になりましようが、とにかく十七の機關、それが殆んど各省出先機關でありまして、殆んど各省一つ二つ三つ、或いは多いのは四つも五つもの機関地方に持つているのであります。こういう事態は誠に困つた事態でありまして、この組織法によりまして第九條の規定ができますことは誠に結構なことであります。併しながら同時に私どもは現實問題として、既に法律によらないでできているところの幾多の出先機關を、何とかしてこれは整理して欲しいというのでありますので、この機會を利用いたしまして、一つ皆さんに懇願申上げまして、どうかこれを現實に實施してほしい、何とか法律によつて、例えばかくかくの行政出先機關はこの法律公布以後は廃止するというような法案を、一つ皆様の間から御提出願えれば、至極、仕合せと考えます。大變この機會を使いまして失禮でありますが、第九條についてはそういう考えを待つております。尚又今後におきましても、この法律によればと書いてありまして、この法律も現在は、ややもすると、その法律案が非常に暗默の中に審議されるような方向に向つておりまして、地方においてはこれが分らないのであります。例えば地方出先機關が今度できるのだというので、この機構法律審議が行われているに拘わらず、その内容が何であるかということは地方に洩れて來ないために、それで蓋を開けて見れば、何だこんなものができたのかということになりまして、その及ぼすところの結果は我々が双手を擧げて反對する、反對しなければならんような事態が、蓋を開けて初めて出て來るというような結果になりはせんかということを恐れるのであります。この點につきましては、どうか両院の議員の方々におかれましても、それとなく地方知事或いはその他の機關にお示しを願いたいと私は考えているのであります。大體今度内務省が解體されまして、いろいろな方面に分離してしまつた結果に、地方自治體とそれを綜合する機關が何にもないために、その點は必ず今後欠陷が出て來ると思つております。私どもはその中央において全國の知事その他の協議會というようなものも結成いたしまして、そこで、できるだけ中央仕事を、空氣地方連絡するというような方向に進んでおりますけれども、これとても、どこまでも政府、或いは議會外の問題でありまして、なかなか要領は掴みにくいと思います。何れにいたしましても皆さんの御協力を得なければ、本當に中央地方の連結はむずかしいのであります。その點は十分に皆様のお骨折を願いたいと思います。  その次に十五條と十六條でありますが、十五條地方知事に封ずる制裁のことでありまして、これは大變に結構なことであります。地方知事地方分權とか、或いは郷土意識に驅られて、或いは選擧民に迎合して、そうして勝手なことをするという場合には、中央として制裁を加えなければならんということがありまするから、これは至極結構なことだと思います。併しながらその次の十六條におきまして、今度反對に、中央出先機関に對して何かしたという場合が書いてあります。そういう場合に、地方ではこれは大變だ、地方自治に非常に反するものだというような規定或いは規則が中央で作られた場合に、地方でそれを受取つて、これは怪しからんと思つても、それはただ怪しからんということを総理大臣に申し出ることができるというだけで、法文には、この場合において、その申出を理由があると認めるときは、内閣組理大臣は、関係大臣に對し、必要なる指示をなし、その他適當な措置を講じなければならない。」それから第二項には、「前項の規定による申出は、關係各大臣命令示達その他の行為効力影響を及ぼすものではない。」と書いてあります。十五條において、知事を裁判に訴えて罷免するというような事件は、そう度々起るものではないと思います。それと同時に、この十六條の問題も、そう度々知事がぎやーぎやー言うことも起るまいと思います。餘程の事態でなければこういう問題は起つて來ないと思います。こういうふうに單に内閣総理大臣が報告を受けて、それが理由があると認められた時に、一方的に何だか分らない指示をする。その申出は關係各大臣命令示達その他の行為効力影響を及ぼすものでないということが書いてあります。こうなりますと、知事は幾ら決議しても何にもならないということでありまして、この點について知事會議あたりで、仕方が、ないから知事は皆辞職してしまつたらどうかというようなことまで言つております。從つて今のところは、知事が何とか抗議したところが、陳情みたいなことになつてしまつて、何ら効果がないのであります。そういうわけで、何かしつかりした寄り場がなければ困るではないか、昔ならば内務大臣というものがありまして、内務大臣はこれが正しいと思えばどこまでも閣議で主張し、内務大臣そのものの辞職ということにもなるのでありますが、現在におきましては、内閣官房長官がいろいろ仕事の面倒を見て下さるようでありますが、内閣官房長官皆さん承知通り八百屋さんでありまして、非常に忙しい方であります。そこへむずかしい地方自治の問題を持ち込んでもなかなか身が入らないのであります。入らないのは當り前だと思います。然らば誰が責任を取つてそうした方面をやつておるかというと、その下に自治課というものがやつておるのであります。この自治課長が現在の日本政治機構においてどのくらいの地位にあるかということは、すでに皆さん承知通りでありまして、これでは、どうにもならんと言つても差支えない、從つてこれは非常に我々として困る問題であります。これを擔當する者が、一自治課長でありまして、そうしてその上に立つ人は忙しい八百屋さんである官房長官であるというようなことでありましては、私は日本自治を本當にやつて行く上において非常に欠陷がある、こういうふうに考えております。幸いに只今財政委員會というようなものができまして、財政方面においては相當の力のものができております。又警察方面においては公安委員というものがありまして適當なものができております。それに今度は選擧についても選擧委員という、立派な力のものができております。にも拘わらず公選知事の問題について何んら適當な處置が取られておらないということは、誠に造憾のことだと思うのであります。私はこの第十六條に關連いたしまして、何か有力な委員會、何か内閣の外からこれを批判する、例えば知事に對して裁判所が批判するというような権限がありますが、この十六條に對して内閣に對して強く発言をなし得る第三者のあることを私は望ましく思います。大變つまらぬことを申上げまして皆さんの御清聽を煩わしましたが、私はこれで終ります。
  6. 下條康麿

    會長下條康麿君) 第三番として朝日新聞西島君。     〔總員起立證人は次のように宣誓行なつた〕    宣誓書  良心従つて眞實を述べ、何事もかくさず、又、何事もつけ加えないことを誓います。        證人 西島 芳二
  7. 西島芳二

    證人西島芳二君) 私は一介の新聞記者でありまして、別段行政法エキスパートでも何でもないのであります。この國家行政組織法案具體的内容の検討につきましては、先程も吉村さんからいろいろお話があり、又後に入江さんのようなエキスパートがおられますので、その方に讓りまして、私は一新聞記者としまして、國家行政組織法案審議を期として、官僚行政機構改革とかいう問題について、平生感じておりまする感想を二、三申述べて、御参考に供したいと思うのでございます。私の言わんと欲するところは、二、三日前でありましたが、朝日の紙上に「行政インフレの傾向を戒む」という社説があり、又本日も出先機關整理の眼目」という社説がありまして、それによつて大體盡きておるのであります。併しながら尚極めて大雑把な感想でありまするが、二、三申述べて責を塞ぎたいと思うのであります。  その第一點として、我々が平生から感じておりまするのは、官僚行政機構改革官紀粛正という問題であります。凡そ歴代内閣におきまして、行政機構改革とか、官紀粛正、綱紀の刷新というような問題を、政綱政策一つとして探り上げなかつた内閣一つもありませんし、これを各政黨政策に見ましても、この問題を入れておらないものは殆んどないと思うのであります。然るにその結果はどうであるかと申しますると、未だ曽てどの内閣も、この目的を充したことはないのであります。假に政黨なり政府なりが厖大なる官僚機構の中に手を入れようとしまするならば、この機構はみずから攻勢的防禦の態勢をとりまして、何とかして自己の地位温存のために圖ろうとするものでありまして、一度外部の第三者が、この官僚のラビリンスの中に入りますと、遂にその出口を見失つてしまう。ミイラ取りが逆にミイラになつてしまうというのが今までの通例であります。昨年片山内閣ができましたときに、我々にこの内閣は、せめて歴代内閣のできなかつた民主的な官僚制度の確立とか、官界刷新をやつて呉れるだろうと期待したのでありましたが、官界刷新大綱とか、行政監察委員會を持つというようなお膳立をやつただけで、何一つこの官界機構の中にメスを入れることができなかつたように思うのであります。この現内閣ができまする直前の三黨政策協定におきましても、相變らず行政機構改革とか、行政整理とか、行政監察制度の強化とか、官公吏道刷新、粛在だとかいうような合言葉がありまして、そうしてその結果、政府行政機構改革審議會設置し、その手始めとしまして、この國家行政組織法案とか、或いは各省設置法案とかいうものを練り、今日ここに提出されておるのでありまするけれども、私は何よりも先ず今日の官公吏道刷新を断行しなければ、如何に機構改革を行おうが、各省各局組織替えを行おうが、それは單に形の上の改革に過ぎなくして、目指すところの官界の一新、眞に民主的な国民の奉仕者たるべき官公吏を作り上げる目的に、到底到達さりないということを指摘したいと思います。終戰後我が官界の腐敗堕落というものは、今日いろいろな形において表面に現われております。明治以降の我が國の官僚制度の中に、何か美點があつたと若ししまするならば、それにドイツのビューロークラシーに範を取つた、極めて厳正公平なる官僚氣質、純眞無垢な官僚気質というものを養成したことでないかと私は思うのであります。又今日と雖もこの傳統が一部の省、一部の役人の中に残存しておるものと私に信ずるのであります。併しながら不幸にして今日我々の見聞するところの或る者な、免れて恥のない徒輩が官界の上層部にも下層部にも、バチルスのごとく彌漫しておるということであります。これは終戰後、自暴自棄になつた軍人が、その傳統的な純潔を失い、民間の闇ブローカーと結託して軍需物資を構流ししたということから、凡そ利權のまつわる官職にある者にこの弊風が感染して、そうして而も悪事をなしても尚、罰せられないというようなことになりますると、洩れ勝ちに役得を競うというようなことになつて来るのであります。その實例はここに擧げるまでもないのであります。で、こういうような腐敗がほびこりますと、眞面目に役所の仕事をするのが、馬鹿らしくなる。何かぼろい儲けはないかというような氣持になるのでありまして、若しこういう風潮が官界全體にはびこるといたしまするならば、幾ら機構改革をやりましても、民主的な官僚組織なんというものは絶対にでき上らないと思うのであります。官界刷新なんということは掛撃だけでありまして、その目的達成は百年河清を待つがごとしと言つてもいいのであります。で、機構だけ整備ししても、中味が腐つておりまするならば、いわゆる佛作つて魂入れずという例えと同じでありまして、我々はこの際、第一に、こういうような官界の腐敗を一掃して貰いたのであります。  成る程検察當局もありますし、伊能運輸次官の収容というような、大物の検擧が官界刷新の契機とはなるのでありましようが、併しこれはたまたま氷山の頂きが水面に姿を現わした程度でありまして、底に横わる大きな根つこを根絶することは、まだできておらないのであります。  最近衆議院の不當財産取引調査委員會で政界の腐敗を暴露し、これに對應しまして政治腐敗防止法というようなものを制定しようとしております。これは勿論それ自對結構でありますが、更にこれと竝行して、官界の腐敗防止法というような立法措置を講ずる必要がないであろうか。刑法の涜職罪とか或いは官廳服務紀律というようなものがありまするが、これだけでは十分にその目的を達しておらないとするならば、何らかの方法を講じてびしびしと適用して行く必要があるのではないか、若し各省各局にわだかまる惡徳官僚を摘發し、淘汰することができまするならば、恐らくむずかしい行政整理のような問題も緒に付くのじやないかと思うのであります。今度の改革案によりますると、行政調査部が行政管理院に昇格しまして、監察委員會機構も擴大吸収しようとしておりますし、又安本の機構では、経済査察廳が獨立しまして、經濟査察の實を擧げようとしております。これらの行政監察機構を強化し、これに或る程度の執行權を與え、以て官僚組織の中に大きなメスをいれるということが必要でありまして、この機構改革と並行しまして、何らかの官界刷新方策を講じて頂くように要望したいのであります。  尚次に行政機構改革の根本法となるべき國家行政組織法内容に關連いたしまして、二、三要望いたしたいのでありまするが、三業政策協定におきましては、行政機構の民主化とか能率化を徹底するということを謳つてありまするが、今度のこの組織法によると、行政機構改革が果してこの目的に適應しておるものであるかどうかという量について、私に多大の疑問なしとしないのであります。組織法案を見ますと、官僚機構をますます擴大せしめ、複雑ならしめ、屋上屋を架する體の厖大な組織を打立て、これを法律を以て合理化しようとしておるのではないかという疑問を持つのであります。國の行政機構として府、省、院、廳、委員會という五種類を法定しまして、この基準に立つてわれわれの官廳機構を殆んど軒並に昇格せしめ、これを擴大せしめようとしておるのではないかと思うのであります。成る程終戦後生れました種々雑多な官廳機構に體しての基準を設けまして、その組織相互間の權限を確立し、合理化するということは結構であります。整然たる秩序に組織立てるということは結構でありまするが、その結果、各省、各局が火事泥式に先を事つて自己の、縄張りをこの際擴張しようと競争するに至るならば、今回の行政機構改革は、止め度もなき官廳機構の擴大強化の傾向に拍車をかける結果に終つてしまうのであります。勿論、今日國家行政の機能は、極度に分化しておりまして、おのおのその機能に對應する組織を必要といたしましよう。私は民主政治の下で官僚政の必要を否定するものではありません。併し官僚行政というものは、國會や地方議會で決定しました最高意思をできるだけ忠實に實行に移すという執行機關の役目を果すという意味において、その必要を認めるものでありまして、必要以上にその縄張りを擴張し、官僚自體の獨斷專行によつて、獨裁的な、或いは獨善的な行政を行うことを認めるものではないのであります。飽くまで立法府に忠實な官僚行政を認める點に、その存在理由を認めておるものであります。若し官僚機構そのものが今日のように野放圖に複雑化し、厖大化して行くならば、それは國家や地方財政上の見地から言つて、多くの困難を招來するばかりでなく、官僚機構自體がややもすればその權限を濫用し、獨斷專行的な行政を行うようになります。而もこの厖大な機構に對しまして外部からの監察の目が届かなくなる。官僚組織を制度化しようと試みて、逆に官僚組減そのものに大きな力を與えてしまう。立法府と雖も、險察廳と雖も、これに手を觸れることができなくなるのであります。若しこうなれば、民主化された今日、我が國に恐るべく肥大せる官僚国家としての形體のみを残存することになりはしないかということを恐れるのであります。從いまして、私はこの際、行政機構改革に當りましては、できるだけ不用に歸した機構は思い切つて廢止して、眞に必要と認めた機構のみを充實するという原則を嚴格に適用して、各省設置法案を檢討して頂きたいと思うのであります。官僚の非能率化と言います。が、それは非能率仕事をやるように官廳自體ができ上つておるのであります。ドレーパー米陸軍次官が来朝した際に、逸早く日本官廳機構の非能率を指摘されたのは當然でありまして、どうか國會におかれましても、各省設置法案審議に當りまして、こういう點において十分に看視の目を張つて頂きたいと希望する次第であります。  尚二三要望したいことがありますが、時間もありまするので割愛いたしまして、私の證言を終ります。
  8. 下條康麿

    會長下條康麿君) 實は全國官廳勞働組合の高橋君にお願いいたします。(總員起立證人は次のように宣誓行なつた〕     宣誓書  良心從つて眞實を述べ、何事もかくさす、又、何事もつけ加えないことを誓います。          證人 高橋 眞照
  9. 高橋眞照

    證人高橋眞照君) 私は官廳勞働組合を代表いたしまして、國家行政組織法審議に當りまして、意見を述べさして頂きたいと思います。  先程の各證人方々も申しておりましたけれど、このような重要なる一法案の制定に當りまして、十分に國民がこれを目に通す機會が與えられておらないのであります。事實、私たちの身分、處遇、あらゆる勞働條件につきまして、その重要な規正をなしますこのような法案にいたしましても、これに目を觸れることのできた期間というものは、僅々一兩日でございます。かくのごとく、かかる重要なる法案が隠密裡に作られて行きますることは、實は甚だ殘念に思つております。事實ここにお集まりの兩院の各議員の方々によりまして愼重御審議を頂きます参考に、證人として私共をお呼び頂いて、ここに愼重なる御審議を頂くということに想成つておると存じまするけれども、併しながら選ばれた各選良の方々ではございまするけれども、やはり十分に御審議する期間というものが必要であろうかと思いますが、證人にいたしましても、これを審議する期間が甚だ僅少であつたということを、先ず最初に申上げざるを得ないのであります。そこで最も我々の勤勞條件に關係の深いこの法案につきましての原案を通讃さして頂きましたことによりまして、これから若干の意見を申上げたいと思います。  先ず最初の名稱の問題につきまして、吉村教授から、内容とこの名稱とは相違があるのではないかという點と、それから原則的に見て、これは上下関係規定については、相當の程度規定されておるけれども、横の関係、それから、それを統合する點については、極めて不十分であるという御意見の御開陳がございましたが、これに誠に同感でございます。第一條におきまして、この法律目的が掲げられております。第二條におきまして、内閣統轄したところの系統的な組織、構成について書かれております。併しながら吉村教授も指摘されましたように、この運榮につきまして、その基準が全然書かれておりません。第一條の「もつて國の行政事務能率的な遂行のために必要な」云々というふういたしまして、これは行政事務能率的な運榮をするためだというふうにございまするけれども、當然運榮という……第三條において運榮の基準を論ずべきであろうと思います。そこで、その「國の行政事務能率的な遂行」ということも、確かに一つの運榮上の原理であろうと思いますけれども、より大きな問題として、民主的なる運榮が望ましいことは、これは曽ての官僚機構によるところの不幸なる事態に追い込まれたこの帝國主義的な官僚機構を打破するためには、どうしても民主的なる官僚機構を打ち立てなければならないのであります。當然この點につきまして、より詳細なる議論が盡されなければならないと思うのであります。尚、特にこれに官廳勞組の一人といたしまして、我々の権利の保障と申しますか、憲法第二十八條によつて保障せられておりますところの團體交渉の權利等につきましても、この縦の関係——上下の關係の規定と言いまして、その存在が稀薄になるようでは甚だ遺憾である。これは國民の一人としての官廳従業員の権利の侵害に相成ると思いますので、當然この第三條の中の運榮の中に、その一項を挿入して頂きたいと思うのであります。以下は各逐條につきまして申述べさせて頂きたいと思います。  行政機闘の設置、廢止、所掌事務等に関する規定は三條と四條に述べられております。ここに府、省、委員會、院及び廳」というような行政機関の名稱がございますが、これはただ羅列されたに過ぎません。當然この間の關係というものが明瞭にされてなければならないと思います。このような羅列の形をそのまま承認されるといたしますねらば、從来のような、而も政令で定める事項が非常に多いので厖大なる官廳機構を作り上げて、一方におきましては行政整理をすると言いながら、實際には厖大なる官廳機構が再び醸成される虞れがある。で、當然この府であるとか、或いは省であるとか、こういつた名稱は、その官廳の或る一つの量によつて決められておるのかどうかこれは分りませんけれども、こういつた點の量質共に、何故こういう名稱を使い、その名稱間の關係はどうなるかという點が不明瞭であると思います。特に委員會というものが行政組織一つとして設けられますが、委員會はこれは民主的な委員によつて先ず運榮されて、その事務機構がそれぞれ各機關事務機構と同じような機構を用いるようになつておりますが、このために、例えば勞働委員會のごときものまで、官廳の下部機構といたしまして民主的な運榮を阻害する虞れがあるのではないかという意味で、この委員會におきますところ、その他各機関の關係を十分に明瞭にして、民主的な、委員會官僚化を防ぐ必要があると思います。  次に行政機關の長でございますが、その長の中で特に法務総裁に關してのみその他位に最もふさわしいものというふうに規定しておることは、却つて各省大臣その他の長の責任者というものの地位が曖昧になる慮れがあるので、却つてこういうものはない方がよいのではないかというふうに思われる次第であります。  それから次は内部部局及び機関についてでございますけれども、ここで、それぞれ内部に置かれますところの部局の名稱と種類を統一してございます。従来は大體官房望、局、部、課まででございましたが、新らしく係、それから必要に應じては班というものを設けるというふうになつておりまして、非常に細かく規定されております。これは當然我々の今日の給與關係において非常に低位な給與になります。その上に職階給というものを附け加えまして、成る差額を附けて参ります。これを完全にこれで規定してしまうことに相成りますので、而も當然從來関係におきまして、こういう規定ができますると自然に無理をしてでもこういうものを作つてしまう。自然、運榮に委さるべきものは餘り規定する必要がないのではないかという點であります。  それから次は行政機關の長の權限でございまするが、如何にも行政機關の長として、職員の區分についてこれを統督するというのは尤ものようでございまするけれども、これによりまして、勞働關係法規によりまして守られておるところの官廳職員組合の対等關係というものは、全部上下關係に置き換えられてしまいます。この點に関しまするところの権利につきまして、何らかの言及がなされて然るべきではないかと思います。  次に先程内山さんが言われましたように、第十五條、十六條において、それぞれの大臣と、それから地方公共團體の長との闘係におきまして、規定されておりまするけれども、この規定に上りますると、それぞれの大臣が、自分の委せた仕事について、どうも不適當な處置をしておると認めたときには、すべてこれについて處置をするというようになつております。この認めるという認定の問題でございますが、これにつきましては、より明確に、當然國の機關としての道府縣知事權限に属する事務の管理若しくは執行が、法令の規定に違反するというふうに、はつきりして置かないと、何でも認められてしまう慮れがあります。そこで地方自治の本旨に反する虞れがありますので、この點につきまして十分なる討議をして頂きたいと思います。で、十五條におきまして、地方自治體の長との關係においては、細かく規定されておるのに拘らず、十六條におきまして、各大臣の負う責任につきましては、極めて緩慢なる規定がされております。例えば「内閣大臣は、關係各大臣に體し、必要な指示をなし、その他適當な措置を講じなければならない。」若しも、どうもやつておることが地方の自民のためにならないということがあつて、その理由を具して、十分にそれが納得されるにも拘わらず、ただ適當指示をなして、或いは通常な措置をなせばいいということになつて、極めてこれはルーズであります。そこで當然これはそれぞれ義務を負う規定を入れるべきではないかと思います。尚、第二項の「前項の規定による申出は、關係各大臣命令示達その他の行為の努力に影響を及ぼすものではない。」というふうにありまして、非常にこれは主務大臣權限を擁護しておりますが、かかる規定は必要としないのではないかというふうに思われる次第でございます。  それから次に行政機關の職の規定でございますが、特に我々の側から申しますならば、すべての長がここで決められてしまいます。そこで、これは職階制度に對しまして、今日の段階におきまして官廳がまだ十分に民主化されていない段階、官廳職員の給與が極めて不十分なる状態におきまして、すべてこういう一つの特權的な地位というものが確立されてしまう虞れがありますのでこういう地位はできるだけ少い方が宜しいというふうに考えるのでございます。  荷、全體を通しまして、政令で決めたならば、或いは法律で委任されたならば、ずべてそれぞれの機關の長がその縦の關係において、すべて事を處理し得るような規定を認めるようになつております。ただその場合に、豫算上の措置については、これは國會の承認を受けるようになつておりまするが、これでは十分に從來のような誤まれる官僚的な行政機構を、新らしい民主的な行政機構に振替えることにはならないと思います。そこで、こういつた事項は、すべて法律事項にして頂きたい。従来の政令或いは法律によつて委任された事項は、それぞれ命令を發することができるというような規定がこれは各所に散見しておりますけれども、この點につきましては、何とぞ法律事項にして頂きまして、すべての國會議員によつて十分なる審議を盡す機會を持つことが必要であろうと思います。以上極めて不十分でございまするけれども、與えられた研究の機會が極めて乏しかつたという理由によりまして、甚だ杜撰な見解でございますが、見解を申し述べまして、今日のお呼立ての責を塞ぎたいと思います。以上で終ります。
  10. 下條康麿

    會長下條康麿君) 次は毎日新聞の池松文雄君にお願いします。   〔總員起立證人は次のように宜誓を行なつた〕    宣誓書  良心従つて眞實を述べ、何事もかくさず、又、何事もつけ加えないことを誓います。         證人 池松 文雄
  11. 池松文雄

    證人池松文雄君) この法律を拜見いたしまして全般的に感じますことは、自然に行われておる事態を何でも法律の枠に嵌めるんじやないかといつたような印象を受けるんでありますが、なければなくて済むべきことが、法律にこれから何でもなつて行くのじやないかといつたような感じ、行政機構整理改革が非常に言われておるときに、行政機構が非常に擴張され、官僚化の傾向が強くなるのではないかというような感じ、或いは行政が簡素化されるというよりも寧ろ複雑化して行くというような面が感ずるのであります。それから組織法と言われますから非常に根本的なところだけかと思いますと、非常に細かいところがあり、根本的なところで拔けているところがあるように感ぜられまして、どうも法律の私たち素人から見まして、體系的にうまくでき上つた法律ではないような感じがするのであります。それと法律や政令に委ねられる範囲が甚だ廣くて、この法律だけ見てはちつとも分らない。骨だけも分らないような點があるんではないかと思います。先程から述べられました證人方々意見に大分重複する所があるかと思いますが、第二條の明確なる範囲所掌事務と、それから系統的に構成されねばならんという系統ということと、その明確にするというようなことが述べられておるんでありますが、この法案を見まして、その明確になつたところも、ならないところも非常にありますし、それから系統的な構成ということもこれでは分らないように思うのでありますが、こういう點は如何なものでありましようか。  それから、この法案を見ますと、總理府、法務府という名前だけが出ておりまして、各省名前が出ていないのでありますが、総理府……この點も私達から見ますと、後の方を見て行きますと、秘書官の役目でありますとか、或いは官等などという細かいところも出ているのでありまして、そういう點から申しましても、各省名前が別の法律で述べられるというよりも、この中に入つて各省名前くらいは入つていいのではないかというふうに考えます。  それから府と省と委員會、院、廳、本部とかいろいろな機構が述べられているのでありますが、後の方に多少その外廓はわかる條章があるのでありますが、府や省や委員會、院、廳、本部などの成る程度の定義と申しますかこの法案を見れば、どのくらいの大きさのものが府でどのくらいのものが院であり或いは省であり、廳であるということがわかるような……これも素人の議論であるかも知れませんが、あつた方がいいと思うのであります。  それから我々の観念から見ますと、委員會というのに従来臨時的なものが多かつたように思うのでありますが、この頃、委員會でも大分恒久的な委員會もできたのでありましようが、その委員會が省と院との間にできているようであります。アメリカなんかの例から見まして、大統領に所属する恒久的な委員會、ああいう行き方で行かれるのかも分りませんのですが、行かれるつもりかとも思われるのでありますが、日本のはとにかく委員會の運榮というのは、まだこういう省と院の間に置かれるような恒久的なものじやないのじやないかという感を持つのでありますが、委員會別表のもの、本文も別上表になつているようでありますが、別表のもの、これにつきましても、もう少し詳しい定義と申しますか、何かが必要じやないかと思います。それから先程これも出ておりましたが、法務府だけが総理府と共に別に扱われまして、そうして法務大臣が最もふさわしいものでなくちやならんということになつておりますが、これに恐らく法律を知つていなければならんという含みかとも思われるのでありますが、どうも少しそうすると外の大臣はふさわしくなくてもいいような感じもいたしますし、何かこの點は外の部分とそぐわないような感じがいたします。法律や政令でできる範囲が非常に多いのでありますが、第八條の審議官とか協議會或いは試驗所、研究所などというのがそうでありますし、それから二十條にあります各機關の職の種類や定員なども政令に讓られておりますが、政令や法律にあまり澤山のものが譲られることはどうかと我々は考えるのであります。  これも先きの論者が言つておられましたですが、出先機關整理が問題になつております時に、第九條の規定でございますが、これも、もう少し何か嚴格な制限か何かこの規定の中に設けられなければいけないのではないかと思います。  それから十六條の二項の點も、これで見まして何か知らん前項の、十六條の一項などと比較いたしまして、何か矛盾があるような感じがいたします。  それから、これは私先程控室でちよつと伺つてつたのでありますが、この制度によりますと、次官というのがまるで變つてしまうのでありましようか、次官は政策、これは私たちが疑問に思う點でありますが、政策企實だけをやるようで、政務をやつて事務をやらないようになつておるのでありますけれども、この點につきましても、次官が別のものになつてしまうような、印象だけを受けるのでありますが、もう少し何かはつきりしたところがあつてよいのではないかと思われるのであります。極めて要點だけを申上げますと、以上のようなことでございます。
  12. 下條康麿

    會長下條康麿君) それでは最後に入江俊郎君、     〔總員起立證人は次のように宣誓行なつた〕    宣誓書  良心從つて眞實を述べ、何事もかくさず、又、何事もつけ加えないことを誓います。         證人 入江 俊郎
  13. 入江俊郎

    證人入江俊郎君) 新らしい行政機構改革につきましては、本當ならば、憲法施行と同時にこれを行うべきであつたと思うのでありますが、それがなかなかむずかしい問題というので、一應御承知行政官廳法が暫定法として作られて一年を経過し、いよいよここに行政機構憲法の趣旨に從つて抜本的に改正しようという時期に際會したと考えるのであります。私はこの行政機構改革につきましては、三つの指導原理を自分だけで考えておりますが、一つ行政機構は民主的でなければならんという點であります。この行政機権が民主的でなければならんということは、即ち行政機構が結局行政運榮を極めて民主的にし、一般の國民の一人々々に體しまして、迅速、周到親切なるサービスをすることができるように機構を作るという意味であります。  それから第二には、行政機構能率的でなければならない、これは特に説明を要しないと思います。  それから第三には、行政機構は合理的であることを要する。即ち複雑な行政事務をできるだけ系統に即しまして、分類し、文化との苟合とをうまく調和させまして、そして合理的に組織するということが必要であると思うのであります。こういつた指導原理從つて行政機構を改正するときに最も大切なことは、行政機構がそういう指導原理を本當に具體的に實現しておるということが必要なのであつて、單にお題目であつて、観念的に作るということであつては意味をなさんと考えております。今日この行政組織に関する法律として、國家行政組織法が問題になつておりますが、國家行政組織法だけでは、今私が申しましたような行政機構の抜本的の改正ということの全貌は分らないのでありまして、この法律はこの一條にもありますように、組織基準を定めるというのでありますから、基準法でありましよう。これと相伴つて、例えば何々省設置法とか、或いは何々行政設置法とかいうふうなものが恐らく出るでありますしようけれども、それらのものと相俟つて、ここに初めて今日最も國民の要望し、國會方面でも重大な關心を持つておる行政機構の敗軍がその姿を現わして来るのであると考えております。又今申しましたこの國家行政組織法及び各行政機構設置法という、その法律に基いて制定せられる委任命令である政令の内容というふうなものもこれに重大なる意味を持つて参りまして、それらが一體として連絡をして、初めて私共が行政機構が如何にあるべきかということを判断し得るのであろうと思うのであります。今日はまだ行政組織法、この基本法だけしか我々の前に提示されておりませんので、これ以外のものについては、これを知る由がないと思うのであります。私共がこれらを判断するときに、今申しましたこの法律と相伴つて制定せられる行政官廳設置法、若しくはそれに基くところの政令等の内容についても、十分の考慮を拂いながら、この法律考えて行く必要があるということを先ず第一に考えております。勿論相關的な問題でありますけれども、何も一遍にそれを決めるということは困難でありますから、できるに從つて段々と議決をし、又制定していいと思いますけれども、そういう内面的の有機的連絡のあるということは十分考えて行きたいというふうに考えておるのであります。  それから又、これらの法律を作りますにつきまして、何よりも必要なのは、やはりできるだけ民意を反映した段階においてこの行政組織が拔本的に改正せられて行くということが必要なのであつて、これは當然のことでありますけれども、時に今日行政組織に關する法制をいじるときには、それらの點についての考慮を拂つて行く必要があるように思うのであります。それで、そういつた心持でこの與えられました國家行政組織法考えて見ますというと、私は大體三つの方面から考えて見たいと思うのでありますけれども一つは、これが基本法として規定されたに射しまして、どうも、もう少しこういう點も基本法へは入れたらいいじやないかという點を、先ず第一に考えて見たいと思います。  それから第二番目には、この法律とそれからして各省設置法、更にこれらに基く政令との間における規定事項の分配というふうなことについて考えて見たいと思います。  それから第三には、國家行政組織法、問題になつておるこの法文の中で、やや不明瞭であるというふうな點について申上げて見たいと思うております。  第一の、この組織法としてこの中にあつて欲しいと思うものは、外の證人の方とも重複するかも知れませんが、先ず最初私は第三條におきまして、行政機関として府、省、委員會及び廳ということを書いてありますけれども、これらについての性格が一つも分らないのであります。實際において、役人をやつた人、私共はその一人でありますけれども、實は分らないことはないのでありますけれども、併しこれはむしろ私が、過去の経驗を基にして想像をし、その想像をし、その想像が大體肯繁に當つておるということで分るのであつて、これが組織法としての體制の上から申しますというと、こういう組織を置くのだからというからには、何が府であり、省であり、委員會であり、廳であるかということについては、大まかな定義、性格を現わすということは當然あるべきことだと思います。その他の委員會と院及び廳は外局だということは、分ります。これは第三條の五項にありますから分りますれけれども、併し委員會というのは、一體どういうものなのか、こういうことになつて參りますと、先きの方へ持つてつて審議會とか、或いは協議會というようなのが八條に書いてあつて、その下に括弧してあつて三條の委員會を除くというふうな意味のことが書いてありますけれども、それらから逆算して考えますと、何か執行機關たる委員會であるというような意味らしく思うのであります。併しこれは必ずしもはつきりいたしません。又院と廳とに分けましたけれども、一體外局でありながら院と廳とに分けたのかということになると、皆目分らないのであります。更に又、本文の規定についても同様の感があるので、こういう點はやはり國民が直接関係を持つところの行政官廳の根本組織でありますから、どういう一體指導原理でこういう府とか或いは省とか、委員會、院、廳が置かれたかくらいは何か分る方法はないものでありましようか。これはやはり法律上の必要事項であるように先ず考えるのであります。  それから第二には、行政組織につきまして、先程もお話が出ましたが、横の連絡規定、こういつたものについて、もう少し考慮を拂つて貰いたいような氣がする。系統的なことはこれで分りますけれども、もう少し横の連絡等についても考慮を拂いたいような氣がしております。勿論内閣法というものが別にあつて内閣というようなものを組織して行政を統一するというふうな規定は別にあるようでありますけれども内閣まで持ち出さないで、各省の間におけるいろいろ連絡方法というものがある。これは組織法自體のものでないかも知れんけれども、一體組織というものは、運榮というものを離れて考えられないのだと思うのでありまして、最少限そういうふうの意味のものが欲しいと考えるのであります。それから尚、局とか課とかいうふうなものがどれくらいの人間でできるかということは、これは政令に委任されておりまして、大體それで宜しいと思いますけれども、私は最近司令部あたりの各部局の様子を見まするというと、あちらの方には課というもの、課に似たものはありますけれども、課員というものは殆んどいなく、大體課長か係長かというふうな人が相手になる。その下にせいぜい一人の補助者があつて、あとはタイピストといつたふうなことで、どんどん事務を處理しておる。日本地方官廳というものは、そういう點、課員が随分澤山いるというふうな感じを抱くのであります。こういう點に行政組織自體の中に書くべきものではないかも知れませんが、そういう點が行政組織を本當に合理化して行くという面において重要な一つの事項であると考えて、単純な行政整理というふうな面を離れまして、やはり行政機構をよくして行くという面から考慮したいというふうに考えております。まあ、この法律としてこういうふうなことを規定して頂きたいと考えるのは以上申上げましたような数點であります。  第二に、この法律では或る事項を、これを法律に委任と申しますか、設置法に委せ、或る事項は政令に委任しておりますが、大體において私は政令に委任した事項については宣ろうと思いますけれども、私はどう考えましても、第七條の第三項にありまするところの、各省若くは府等におきますところの内局の組織について、全部これを政令に委任しておるという點に、どうも割切れない點を感ずるのであります。恐らくこれは各省大臣權限法律で決めれば、あとはそれを實行して行く行政の段階であるから、むしろこれに各省に委せるというのが本當であると、こういうふうな心持でできだのではないかと思いますが、併しながら本来、各省大臣權限を分けましても、その權限がどういうふうにして働いて行くか、つまり働きの面というものを全然考えないで、各省大臣權限分配するというだけでは、私は本當の組織法と言えないように考えるのであります。恐らく若し、この法律を施行しまするというと、先ずこの組織法が運用されまして、その次に何々省設置法とでもいうのができるのでありましようが、その何々省設置法の中では、恐らく何々大臣は何々に關する事項を所掌するというだけで以て、あとは何を書くのか、少しは書くこともありますが、外局のことがありますから、それらを書くでありましようけれども、それだけで終つてしまうと思うのであります。そうして内局の分課規程だとか、所掌事項等は皆政令で決めるということになりますけれども、これはどうも各省設置法の建前から申しましても、組織と権限というものに行政機構の根本の建前であつて、誰でも組織權限ということは言うのであつて權限に伴う最少限度といいますか、最も必要な限度の組織は、やはり法律で決めるべきものではないかということを考えるのであります。もういうふうな理論的な面を離れまして、もう一つの面から申しますと、今日ぐらい行政機構を抜本的にいじらなければならない時期はないと思うのであります。それにつきましては、無論行政部局においてそれを考えるということは、相當の効果もあるのでありましようけれども、やはり、これは行政を受ける側の國民一般の立場からして、そういうふうなことで考えて行くという面も是非欲しいように考えるのであります。各省がどういうふうな局に分れるかということは、それだけを取り上げて見ますというと、一般の國民は大して關心を持たないかも知れませんが、併しそういうふうなことについて、法律でこれを決める、國會において論議をする機會のあるということは、結局、それによつて各省大臣權限の執行を合理化する元にもなり、又それらの點について、國民の名において國會がこれを決めて行くということにもなるのであつて、そういう點から申しましても必要であるように考えるのであります。これらの點につきましてはいろいろな意見が對立し得るものと考えますから、必ずしも私の言う點が唯一の意見ではないと思いますが、私の率直な意見を申上げますれば、さようなわけであります。  これについては昨年勞働省設置の場合に、参議院において大分議論がありまして、經過を経たことは記憶に新なところでありますが、私は、せめて、あの常時の勞働省の權限くらいの程度のものは當然行政組織法としてはあるべきものではなかろうかというふうに考える。これは、まあ實際において今いろいろな準備をしておる行政部局の側から申しますと、いろいろな點において事情もあるかも知れませんが、今日率直に申上げれば、そういう感じを抱いておるということを御参考に申上げて置きます。  尚これも餘談でありますが、從前は官制というものは天皇の大權とされておつて、勅令で決めたのでありますが、そのときでも各省の局の局の設置廃止というようなことは、一々樞密院へ持つてつてかけたというこで、單純に行政部局の權限に委されておらなかうた。勿論樞密院というのは官僚の松山みたいなものでありますけれども、勿論政府とは特別な地位にあつて、極密院に持つて行くということになると、政府でも随分愼重にいろいろな方面考えて合理的にして行くというふうなことになつたので、今日のように行政機構をとにかく根本的にやり變えなければならんというときには、私自身は官僚出身でありますけれども官僚だけの手に委せて置くということだけでは、何だか割り切れないような氣がするということを、率直に申上げてみたいと思います。  最後に、本法の中でどうも分りにくいと思います點は、府というものを置くことに第三條でなつておりますが、第五條を見ますと、府というのは総理府と法務府の二つになつておりますが、この二つ以外に置けるのか置けないのか。恐らくこれは法律で決めれば置けるのでありましようが、それらの點もはつきりいたしません。  それから本部というのも、先程申上げましたように性格の分らない外に、まあ總理大臣を以て長とする、こういうものでありますが、これは、まあ総理府の外局のようなものにして置いて、法律の定めるとこるによつて省に關する規定を準用することができるというふうな、この三條の四項の規定の裏から、そういつたようなことになる程度で宜いのでないかという氣もしますけれども、これは、まあ本部というものの性格如何によつては又反對の意見が出るかも知れません。  それからもう一つ、十七條で次官の規定がございますが、これは「大臣不在の場合その職務を代行する」とあるのですけれども、この職務の代行という趣旨がよく分りません。「不在の場合」というのですから大臣が故障があるというふうな場合、これは内閣法で外の大臣が代行することになつておりますけれども、そういう場合でない場合でやりたいのだと思いますが、旅行でもした場合のことだと思う。そういう場合に大臣職務を代行すると申しますと、これはどういう趣旨か、私は誤解しておるかも知れませんけれども命令の制定權もあるし、又閣議に出る權限もあるのでありましようか。それらの點がはつきりいたしません。若しもそうであるとするならば、少し行き過ぎでないか。曾て明治時代の次官が大臣の代理をする規定を置いたことがありましたけれども、そのときでも特に例外を置きまして、閣議に列席し若しくは命令を制定する權限は代行できないという規定を置いた例があるのでありますが、これは一つの問題でなかろうかと考えております。  もう一つ申しますと、二十二條に公團の規定がありまして、公園を行政機構の中に入れるということ、これは至極實體に合うことで、宜いと思いますけれども、これも實は公国とは何ぞやということを考えますと、一向この二十二條では分りません。これが國家行政組織法の基本であるというならば、公国というものは先ず大體こういうものであるということがあつて、それから二十二條が始まるのでにないかと思いますけれども、そこがどうもはつきりしないという點は、初めに申上げた點と通ずると思いますが、二十二條では公園の設置、廢止だけを法律で決めるとなつておりますけれども、公團の所掌事項とか權限というものは何戸決めるのであるか。前の行政機關については一々設置、廢止の場合に、特に所掌事項、權限ということを法律で決めるように書いてありますけれども、公團についてはそれがないので、これはどういう趣旨か。恐らく同じ趣旨かと思いますけれども規定の點に些か不揃いの感じを持つのであります。極めて簡単でありましたけれども、私の考えを申上げて御参考に供した次第であります。
  14. 下條康麿

    會長下條康麿君) 證人の發言が終りましたが、この際證人がまだおられますから、何か御質問がありますれば、御質問なすつては如何かと思います。別段御質問、その他御發言もなければ……。
  15. 高津正道

    高津正道君 今神奈川縣知事の御意見の中に、今日来て初めて内容が分つたという方があり、それから二日間ぐらいの餘祐はあつたという方があり、事務當局の方でもつと早く傳える方法はなかつたのでしようか。
  16. 下條康麿

    會長下條康麿君) 合同審査會證人の御意見を伺うことは二十一日に伺つたのであります。それから極めて再速にやつた積りなんですが、大體こういうような結果になつております。
  17. 高津正道

    高津正道君 それからもう一つ伺いますが、國家公務員法とか或いは行政組織法とか、アメリカの行政機構はどうなつておけかという資料を證人の方にお渡しになつたのですか。
  18. 下條康麿

    會長下條康麿君) 行政組織法案は全部お渡ししました。他のいろいろの資料は委員の敷しかないものですから、御要求によつて御覧に入れた程度です。それでは合同審査會はこれで終ります。     午後三時十二分散會