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1948-06-21 第2回国会 参議院 労働委員会 第11号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十三年六月二十一日(月曜日)    午前十時四十六分開会   —————————————   本日の会議に付した事件 ○職業安定法の一部を改正する法律案  (内閣送付)   —————————————
  2. 原虎一

    委員長原虎一君) お待たせいたしました。只今から委員会を開催いたします。本日は「職業安定法の一部を改正する法律案」の予備審査を続けることにいたします。政府委員も出席しておりますから御質疑を願います。
  3. 山田節男

    山田節男君 この職業安定法案修正四十九條に関する問題でありますが、ここに姫井委員修正案も出ておりますが、実は前回欠席いたしましたので、質問が或いは重複するかも知れませんが、若しそうでしたならば御返答は速記によつて伺うことにいたします。  この労働ボス排撃、この趣旨は、四十九條の第二項になるべき條項で、いわゆる立入調査ということで可なり徹底しておりますが、ここで問題になるのは、御存じのように今日日本占領軍政下におきまして、占領軍に可なり多数の日傭労働者を使用されております。そうしてその中でいわゆる直傭、LRと申しますか、政府直傭の日傭労働者におきましては職業安定所、或いは労働安定所を通じてやりますので、この四十九條の第二項に入つておる文句で可なり徹底するのではないかと思いますが、占領軍の使用しておる労務の中には、いわゆるPDと称しまして、請負業というものがございます。これはPD関係職業につきましては、たとえ日本のこの法律によりまして証明書を持つておる官吏が、その工場事業場へ臨檢、即ち立入調査をするということは、これは事実上許されないことであります。そういつたような事実でありまするが、このPD関係労務供給につきましては、これは從來我々は労働ボス的な存在をしばしば見ていたのであります。労働組合としましても、このボス排撃ということについては協力をいたしておりまするが、このPD、即ち請負契約によつてつておる事業の中の労働ボス存在というものは、なかなか現在としてはむずかしいのでありますが、そういう方面檢査は、この條文によつてでき得るという何かの自信があるのかどうか、この点を一つ所管大臣にお伺いしたいのであります。
  4. 加藤勘十

    國務大臣加藤勘十君) 只今お尋ねになりました進駐軍関係の勞務者の問題につきましては、お言葉のように、PD関係労務者もありまするが、それは全部公共職業安定所でやることになつておりまして、労務供給に関する分は、嚴重に禁止されております。労務賃金支拂いであるとか、そういう点については調達廳でやつておりまするが、供給は全部公共安定所でやつておりまして、PD関係労務供給に亙るようなことは、現在においてはやられていないわけであります。
  5. 山田節男

    山田節男君 今の大臣のお言葉でありますが、現に鶴見、それから芝浦、殊に鶴見がその点において、私はしばしばそれを耳にしておるのでありますが、これは労働省においても基準監督局、或いは職業安定所をして、当然これは調査されたことの結果、そういう御回答だろうと思うのでありますが、尚この点につきましては、今調査をいたしておりますから、その調査の結果を以ちまして、労働大臣に重ねて、今日ここへ到着しておりませんので、そういう御回答ならば、私の方の調査の事実を以て、更にこの問題について御回答を求めることにいたします。
  6. 加藤勘十

    國務大臣加藤勘十君) 若しそういう事実がございますれば、事実をお示し願いますれば、直ちに禁止することにいたします。原則としても、又できるだけ実情調査をいたしまして、そういうことのないように努めておりまするし、若し事実がありますれば直ちに止めさせることになつておりまして、これは調達廳とも密接な連繋の下にやつておるわけでございますから、どうぞ事実を一つお示し願えれば非常に幸いだと思います。
  7. 山田節男

    山田節男君 そうして今後この労働ボスを芟除するために、たとえPD関係職業であれ、今日におきましても日本人は立入禁止であります。併し渉外労務関係官吏、或いは労働基準局のそういう監督官吏はこれはこの労働ボス立入調査のために許されることになつておるのでありますか。
  8. 加藤勘十

    國務大臣加藤勘十君) それでは、一つそれは説明員から説明いたさせましよう。
  9. 原虎一

    委員長原虎一君) 説明員で御異議ございませんか。
  10. 山田節男

    山田節男君 外に適任者がなければよろしうございます。
  11. 原虎一

    委員長原虎一君) それでは説明員をして説明することを許可いたします。
  12. 川崎義雄

    説明員川崎義雄君) 只今進駐軍関係PD仕事供給事業について、御質問がありました。これについてどういうような措置を取つておるかということでございますが、御承知通りPD請負仕事はそれは調達廳の方から仕事が出て來るわけでありまして、日本政府が取扱つております。そういうような意味からやはり政府禁止しておる以上、政府仕事でありましても、請負事業は、その実態上、供給事業と類似しておりますので、同じような方針禁止措置に及んでおります。ただ問題がありますのは、これは部隊関係におきましては、いろいろな点で立入困難というような向きがあるのであります。そういうことの点につきましては、私の方の実施の面に立つておる我々としましても、司令部の方の申上げまして、こういうような措置については調査困難だということを申して來たわけであります。そうしましたらこの趣旨はやはり部隊と雖も、禁止措置の方向に行かなければならんということはよく承知しておる、そういう意味において司令部の方でも、部隊方面に通じて一層協力するというように申しております。尚現場PDのそうした調査につきましては、調達廳、それから私の方の監督官と協力して現にやつておるのであります。
  13. 山田節男

    山田節男君 今のGHQなり第八軍が、府縣に駐在する調達廳渉外労務関係への立入りをする、職業安定所員、その他の監督官をして入れしむるようにGHQとして、或いは第八軍として指令を出すということは、それは確約いたしましたか。
  14. 川崎義雄

    説明員川崎義雄君) 第八軍の方の樣子はまだ存じておりませんが、この趣旨関係部隊の方に到達するように、司令部の方ではこの禁止措置方針を通しておるようでございます。
  15. 山田節男

    山田節男君 ちよつと速記を止めて下さい。
  16. 原虎一

    委員長原虎一君) 速記を止めて。    〔速記中止
  17. 原虎一

    委員長原虎一君) それでは速記を始めて……。
  18. 姫井伊介

    姫井伊介君 第四十四條につきまして、この前もちよつとお尋ねいたしましたが、これを罰則適用上二段に分けて、労働者を使用した者に対する罰則科罰を幾らか軽くするということは適当ではないかと思いますが、これに対する御意見を先ず承ります。
  19. 加藤勘十

    國務大臣加藤勘十君) 姫井さんの御意見は一應御尤もとは存じまするが、第四十四條の修正が今度行われることにつきましては、先般私なりその他なりから説明いたしましたところによつて御了承願えたここと思いまするが、要は罰則適用についての修正の御意見かと承りましたが、御承知のようにこの罰則が全体として非常に軽いのでありまして、一年以下若しくは一万円以下の罰金というような状態で、私は他のこうした類以法律政令等に比較しますれば、非常に軽いと思います。從つてこれを更に軽くしまして、供給業者においては体刑を以て臨み、供給を受けた人に対しては單なる罰金刑だけで臨むということになりますると、一万円程度罰金ならば、今日においては何ら苦痛ではないのでありまして、從つて若し罰則差等を設けるならば、前段の処罰規定がもつと重きを以て臨まれるということになれば、おのずから別でありまするが、この程度処罰でありますれば、私はむしろ双方に課することによつて……、要するに我々は刑罰を課するということが目的では勿論なし、又刑罰に触れる人を求めるというのが目的ではないのでありまして、そういう刑罰存在することによつて一般を警戒せしめて、そういう事柄自体を犯さしめないようにするということが目的でありまするので、そういう点から見ましても、若し眞に正しい意味においての労力の供給を受けようとされるならば、どういう重い罰則があつても少しも差支がないわけであります。若し法を犯してやろうという意図があれば、初めて軽い処罰は何でもないということになるわけでありまして、そういういろいろな点から勘案いたしまして、現在政府の立場といたしましては、この程度のことを自由刑罰金刑と二つに区別するという意思は今のところ持つておらんわけであります。他のいろいろな類似法規規定を見ましても、大抵こういう場合には両罰規定を設けておるのでありまして、飲食営業緊急措置令なんかにつきましても、これはなるほど差を設けてはおりますが、営業した者は三年以下、又罰金刑は五万円以下と重きを以て臨んでおりますので、その営業飲食物の提供を受けた者は、一年以下の懲役又は一万円以下の罰金というように、やはり体刑自由刑を以て臨んでおるわけであります。そういう点から見ましても、この労務供給の点について、供給を受けた者が單なる軽度の罰金刑だけで行くということでは、却つて法趣旨を徹底せしめないことになる虞れがありまするので、現在のところそういうような区別して適用を設けるということについては、考えていないわけであります。
  20. 姫井伊介

    姫井伊介君 次に第四十九号についてでありますが、これもこの前ちよつと触れましたことでありますが、第四十九條許可を受けて職業紹介事業その他供給事業を行うのでありますから、事業又は業務に関する報告をさせる、更にその事業場又は事務所に臨檢して、帳簿書類その他の物件を檢査させるということができ得るのでありますが、悪質の労働供給ボスにおきましては、そういうふうな事業場などは無論持たない、隠れてやるのであります。或いは自分のただ居室において、適当なことをやつているかも知れません。そういたしますと、事業の場その他の施設に臨むとか、或いは帳簿書類の提出を求めるといいましても、それはできないことなんで、そういうふうな設備をしてまで、隠れた供給事業をやるとは思われないのであります。又使用者ということも、基準法使用者の定義によります使用者と考え合せまして、ここにおける使用者は、やはりその中に隠れたる違反者を含めておるとは考えられないのであります。ここにはつきりした観念が浮び上りませんから、隠れたるそうしたボスも見出すという点から言いますならば、やはりこの法律を犯して労働供給事業を行う疑いのある者に対しましても、この調査を行い質問する必要があるのではないか。この辺の関係お尋ねいたします。
  21. 加藤勘十

    國務大臣加藤勘十君) 只今姫井さんの御意見應御尤もでありまするが、政府はそういう点を十分考慮いたしておりまして、この四十九條規定によつて、これは勿論許可を受けた場合のことでありまするけれども、当然そういう疑わしい場合がありまするときには、事業場事務所について尋ねるという権限を持つようにしたいという点でありまして、表から見て疑う余地がない、全然労務供給の何ら内容を持つておらんという場合にまで立入るということはないのでありまして、当然いろいろな労働者について見たり、事業場について見たりして、疑わしいと思われる場合にその事業場なり、事務所なりについて尋ねるのでありまするから、それは姫井さんの御修正の御意見のように変えなくとも当然でき得ることでありまするから、強いてこの点はそういう規定を文字として示さなくてもいいのではないかと、このように考えております。
  22. 齋藤邦吉

    政府委員齋藤邦吉君) 私からもちよつて字句につきまして簡單に御説明申上げます。普通私共が工場事業場その他の施設と、こういうふうに申しまするときには、その他の施設と申しますのは事実を行なつておるところ、又は事務を行なつておるところといつたふうに廣く、勿論個人の家庭は入つておりません事業を行い、或いは又事務を行うというものをその他の施設というふうに包含せしめるようにいたしております。お尋ねのようにそう立派な事務所もない、自分の家で采配を振つておるというものについてはどうかというお尋ねでありますが、そういう場合におきましてもそういう私の申しまする事業を行い、事務を行うと申しますものは立派な部屋を持つておるとか、立派な建物を持つておるといつたようなことでなしに、現にそういう采配を振つて労務供給しておるといつたふうな施設がありますれば、そのところが結局その他の施設というふうに含むものだと、現にその事業を行なつておるところでありますから、そういうところは当然含むものだと、こういうふうに解釈いたしております。  尚労働者供給事業を行なつておるのかどうか、非常に疑わしい場合を調べまするときには、工場事業場に行きまして、働いておる労働者に対しまして、あなたはどこから賃金を貰つておりますか、会社から直接貰つておりますか、あなたはどういう組に属しておりますか、私はこういう親方から賃金を貰つておりますという答えでありますれば、その親方は今どこにおりますか、親方事務所を持つておりませんと言つても、家はあるでしよう、その家はいわゆるその他の施設ということになりますので、結局親方がその現場におらなくても、労働者を通じて結局親方施設というものが発見できるとかように考えております。從いましてその施設に参りまして立入調査をして行くということができるのではないかと、かように考えております。從いまして工場事業場その他の施設という施設の中には立派な店舗を張つていようがいまいが、現に労働者供給事業を行なつておるそういうところを施設というふうに考えております。以上法律字句につきまして御説明申上げます。
  23. 堀末治

    堀末治君 私丁度前回のこの法案説明のありましたときにはちよつと時間を遅らしましてよく大臣なり或いは局長の御意見を承わりませんでしたが、先般來いわゆる労働法改正という問題は労働組合でやかましく取上げられておるのであります。彼らのいう労働三法とはこの職業安定法は違いましようけれども、政府はすべての法規施行後日が淺いから当分改正しない、できるだけ運用でやつて行くとこういつた意見を始終承わつております。どうも又よくよくのことであればともかくも、仰せの通り施行後日も淺いことでありますし、日本労働運動なども頗る末熟なときでございますから、できるだけ労働者諸君を刺戟することのないように運用よろしきを得て行くということがいいことであろう、私はかように考えておるのでありまするが、この職業安定法は昨年の十二月一日に漸く施行されて、まだ半年経つか経たないか、かようなのであります。而も改正する部分は極く小部分でありまして、私共もこの法案制定には携わつたのでありましたが、もともとどうもこういう問題には頗る経験が淺い、たまたま二、三の労働安定所も見せて貰つたようなものの、極く淺い知識でこの法案を審議した。從つてその法案の審議の途中においても何遍も直され、どちらが直したということもなく、何遍も出た原案が次から次へと改正せられて行つて漸くでき上つたというような経過を持つておる法案でありますから、政府もできるだけ運用の面でやるのだということであれは、今僅かのこれだけの改正などせずに済むのではないか、もう少し運用してどうしてもいかないということであつたならば、そのときに全面的に実情に照して改正するということが起きてくるのではないかと、実はかように思います。  而もこの第四十四條の改正によつて罰金刑或いは体刑の問題が生れて、姫井さんから修正案が出ておりますが、私もどちらかと申せば深い研究はいたしておりませんが、氣持の上から、どうしてもこれを改正しなければならないというのなら、姫井さんの御意見に大体賛成する者でありますが、併し今の又大臣の御答弁によれば、他の法律に比べて一年の体刑、一万円の罰金刑は非常に低い、こういうことであれば、それも他の法律の権衡をとる上において改正する必要もあるのではないかと思います。從つてこの度はどれだけの事情があつて、これだけのことを改正しようとするのか、それは労働者供給事業を行う者から供給される労働者使つてはならないという程度のものでありますので、このくらいのことならば私共は今施行後間もないこの法律をこうして改正に及ぶ必要もない。  尚又今の行政廳云々という二項のごときも今の御説明によつてこれは当然できることなんである。もとより去年の暮労働省のできたときには、労働省という官廳はいわゆるサーヴィス官廳で、監督官廳ではないということを米窪大臣からたびたび聞かされたのでありますが、これらも或る程度監督官廳の性格に移つて行くという形ですが、これは或る程度いたし方ない、当然やらなければならんと思いますけれども、これらのことはいわゆる監督官廳運用の面において考うべきではないか。私かように思う者でありまして、できればこの度はこの改正をなさらずに、もう少し運用俟つて、そうして或いは全面的に恐らく改正するところがあるのじやないか。こないだもこの委員が各種の労働施設を見に行つたのでありますけれども、私はそのときも遺憾ながら同行することができなかつたので、非常に知識がないのであります。併し恐らくこういうような法律は本当に実情に照していかなければならないので、まだ本当の日本実情にこの法律が合つておるかどうかということに対しては、幾多の疑問があるだろうと実はかように思うのであります。從つて私いわゆる当分法規はいじらないという根本方針に基いて、この法律もやはり労働法の一部でありますかり、全部撤回なさつて、いずれ全面的に研究して改正するときにじつくり改正する。從つて一年の体刑が低ければこれを三年にするのもよろしい、又一万円が安ければ五万円、十万円でもよろしい、実はかように思う者でありますから、そういうふうになさることを私希望いたします。
  24. 山田節男

    山田節男君 今の堀委員質問に関連してでありますが、これも私は言つたと思いますが、ただ私は大体堀君の言われるやたらに改正すべきものではないと、併しながら労働ボス存在ということは、これは民主化の建前、或いはこの占領軍のいわゆる民主化の政策からいつても、至急にそういうものは排除してはどうかということも一理あろうと思いますが、その前にこういう修正案を出す前に、今の職業安定法の六十四條のいわゆる罰則によりますると、この四十四條の規定に違反した者は一万円以下の罰金だということでありますが、今日或いは將來におきまする貨幣價値の激減ということは十分予想されるのでありまして、昨年ここでこの法案を審議した際に、その一万円以下という貨幣價値は、今日と、或いはこの年末と、更に來年の三月になりますと、この一万円というものは実に僅かな金であります。この第四十九條の第二項というようなことをいじくるよりも、この一万円以下という罰則を、むしろ根本的に考えるべきではないか。現に職業安定所或いは労働基準監督署におきまして相当のボス調査、或いはその排除ということに努力しておりますけれども、いろいろな事情があつて恐らくなかなかできない。それでむしろこの第四十九條の第二項という問題よりも、六十四條の罰則で、これはいわゆる違法に労働供給する者は罰金をも心に予期してやつておるのであります。その労働ボスは一万や五万の金というものは実に小さい價額の金であります。これには不幸にして体刑というものが入つていない。勞働の基本権ということから考えましても、この日本の封権的な制度一つの残滓であるところのボス制度排撃するためには、体刑すらこれを曲げるべきではない。そういう意味から見て、むしろ罰則規定を強化拡充すべきである。第四十九條を新らしく強化しようというような目的は、ただ立入調査といいますけれども、現在の臨檢捜査によつて十分これは目的が達し得るのである。これは末節の問題である。それはこの違法な労働供給業者は二万や三万の金は罰金では零細な金だ、そこに私は思いをいたして、むしろ罰金刑、或いは体刑ということを考えることが、極めて簡單に今の修正目的を達し得るのではないか。これが私の意見と希望でありますが、併せて労働大臣の御回答をお願いいたします。
  25. 加藤勘十

    國務大臣加藤勘十君) 只今堀さん、並びに山田さんから御意見をお述べになりましたが、成るほど基本的には労働法規の一環をなすものであることに相違ありませんが、併し職業安定法であるとか、或いは労働者災害補償保險法であるとかいうようなものは、その本質から行きまして、これは完全な取締法規というよりはサービス法規であるということは間違いないのでありまして、労働者権利義務本質的に規定した労働組合法等とは、おのずから性質が違つておるということは今更申上げるまでもない点であつて、それから本來のことは余りなぶらんで運営でやつてつたらいいじやないかという堀さんの御意見でありますが、今山田さんからお述べになりましたように、できるだけやはり日本民主化進行を阻害するような事実が明白だつた場合には、そういう障碍の事実を取除くということは是非共なされ得なければならん点でありまして、成るほど法律制定されてからまだ僅か半年そこそこでありまして、その運営又実際の面において完全にこれで拂拭されておらんという憾みは十分あります。ありますが、そういうことが具体的に分りまして、而もほんの簡單に法の修正によつて、そういう事実を取除くことの便宜が得られるということが明らかでありまするならば、それを変えるということは決して労働者基本的権利を侵すというのではなく、むしろ労働者権利を擁護して、そうして日本民主化推進に役立たしめる、こういう点から四十四條の修正案が出ておるわけでありまして、その修正案修正本質供給をするということは禁止されておるが、そういう違法な供給に基く労務を需要するという側がそのままになつておるという点だけを修正するのでありまして、これは決して労働者の基本的なものを侵すのでなく、むしろ逆に労働者の基本的な保護をするということと同時に、日本民主化推進に役立たしめる、こういう点からの改正意図であります。  それから四十九條の点でありますが、これは今山田さんがおつしやいましたが、現行法でも十分に事業場その他に臨んで質問等を行うことができるじやないかと、こういう御意見でありましたが、四十九條規定は、御承知のように労働大臣許可を得て職業紹介仕事をやつておるそのものの事業場事務所その他の施設に臨んで調査をするということができるのでありまして、そうでない場合には何ら権限はないのであります。從つて現在の実情を述べますると、安定所の職員がどうも疑わしいと思うことを見出しましても、直接それを尋ねる権限は何もありません。從つて一々監督署に報告して、監督署監督官の動きを求めなければ尋ねることすらできん状態でありまして、もとより職業安定法の精神から行きまして、他の法律規定されてあるような訊問檢査というような嚴めしいものではなくして、その現場々々についてそういうふうな場合にこれを尋ねる、尋ねてそして実態がなくなることがいいのでありますから、実態をなくするように努めたい、こういう意味でありまして、それ以上に何ら他意あるのではないのであります。  又罰則は、財産権から行けば一万円ぐらいの罰金は殆んど問題でない、こういう御意見でありまして成るほど貨幣價値がインフレーシヨンの進行下において減退しておるということもとよりでありまするけれども、こういう條項貨幣價値が一遍下つたから直ちにこれに應じてスライどするように法律條文を変えて、一万円としたものが、一万円の値打がなくなつたから三万円とする、五万矢とする、そう軽々しく修正すべきでないのではないか、こう考えるわけでありまして、そういう点から成るほど、一万円とするという、この法律制定当時における一万円という財産刑内容は、今日においてすでに一万円の値打を持つておらんことも事実でありまするけれども、強いてこれを一々貨幣價値が低下したからというので変えるというのでは、非常に煩わしいばかりでなく、法の権威の上から行きましても、大体今例え先郵便貯金にしても、今預かつたやつがもう三年経つて何も値打がなくなつてしまつたから、又その内容を変えなければならんということになつたならば、これはとんでもないことになつてしまうわけでありますから、法律規定法律規定として嚴守さるべき必要があると思うわけでありまして、ただその場合、自由刑が加わつておりまするので、その自由刑も亦これをそう軽々しく、一遍決めたものを余程の……、これこそ私は余程のことのない限りは、余りなぶるべきものではないのではないかと、こういうふうに考えております。從つて現在の一年以下の懲役又は一万円以下の罰金ということは、今直ちこれを変えるという意思は政府としても考えておりませんので、ただ供給された側において無責任に放置されて置くということを改めて、供給した人と同じようにこの程度罰則規定を設けて置くことが却つや法を遵守せしめる所以ではないか、こういうふうに考えられる点からこういうふうな修正案を出したような次第でありますから、この点は御了承を願いたいと思います。
  26. 山田節男

    山田節男君 今の労働大臣のお考ば勿論私の分るのでありますが、いわゆる労働ボスの慣行としまして、人の上行をはねて中間搾取をやつたり、不当利得をするといつたことは、基準法の第六條にも書いてあるように、いわゆる中間搾取の廃止ということがこの労働基本権を保護する非常に重要な問題であります。この労働ボスが違反を敢てしているということは、例えば一日二百円の手当の日傭労働者の一日当りに対しまして四十円、或いは三十円というような頭をはねて、若し十日でも二十日でもこれをやるとすれば一万円や二万円の金は大したものではない。こういう実情を認識した上で大臣はそういうことをおつしやるのかどうか。私の申上げるのはそういう事実に立脚して、それでは折角の労働の基本権を保護する、或いはこの日本に残つている封建的な残滓の最後の現れというものを、殲滅するためにはどうもその点では徹底しないように思いますが、この点を重ねて労働大臣お尋ねしたいと思います。
  27. 加藤勘十

    國務大臣加藤勘十君) 今山田さんがおつしやつたような点につきましては、一年という重刑が科せられておるわけでありまして、勿論その法の適用は裁判所の認定によるのであるから何ともま巌れませんけれども、立法の建前といたしましては、意識して犯しておるというふうな悪質の場合においては、当然重刑を以て臨まれるんではないか、殊に更にもう一歩悪質な場合におきましては、或いは若干でもそこに暴行を用いるとか、脅迫を用いるとかいうような場合がありますれば、それは六十三條の規定でありまして、この方は更に重く、一年以上十年以下と相当重い刑罰で臨んでおりまして、それは罰金刑においても二千円以上三万円以下、こういうふうに規定しているわけでありまして、勿論我々は先程も申しますように、法を犯す者のないことを最大の目標としておるわけでありますから、従つてどんな重い刑罰規定しても、法を犯す者さえなければいいではないか、こういう御意見も成り立つかとも存じまするが、併しおのずからそれぞれ軽重は罪の実態に應してあるわけでありまして、この労務供給に關する今ま章の状態を見ますると、成る程先程の請負と類似の脱法的な方法によつてつておる者もあります。ありますが、先般政府委員から説明しました通り、この半年間の成績といたしましては、とにかく七千入以上の業者を廃止せしむることができ、二十万以上の労働者をその制縛の下から解放することができておるわけでありまして、尚殆んど休みなくこの点については保護の手を延ばしておりまして、実態が分り次第そういうことをなくするように努めておる状況でありまして、これは時間の経過と共に私は順次成績を挙げて行くのであろうと、こう考えておりますので、それこれを勘案いたしまして、現在程度処罰規定差支ないではないか、こういうように考えておるわけであるます。
  28. 山田節男

    山田節男君 そういう今の大臣の御答弁でありますが、それでは現行法四十九條によつて職業安定所の監督、或いは更に基準監督署でも含めてよろしうございますが、職業安定法の実施以來今日に至るまで四十條の違反件数がどのくらいあつたか、できればその地方、科した体刑乃至罰金刑内容、そういうものをお示しを願いたい。
  29. 加藤勘十

    國務大臣加藤勘十君) それは只今申しまする通り、法律ができた、今日できたから、明日から直ぐその法律適用して、処罰するのが目的ではなくして、そういう事態をなくするのが目的でありますから、従つて今申しまするように、この半年の間に七千人以上の業者をして廃めざしておるわけであります。これのいうことに聞かないで更にその同じ人間が潜つてつたというような場合に、初めてつまり処罰乃至告発されるわけでありまして、現在までのところはそういう今までのボス、中間搾取をやつてつた七千人以上の業者が廃業しているわけであります。それから七千何百人かの業者の下に、今まで労務供給の対象となつてつた、二十一万何千人という労働者がその制縛の下から解放されて、そのくらいの人々の大部分は直傭労働者になつておるのであります。事業場の本当の雇主に直接雇われることになりまして、中間の手を離れて直接事業者に雇われない人々は、その大部分公共安定所に登録しまして、公共安定所を通じて雇われておるわけでありまして、この間に中間搾取を同じ人間が継続してやつておるという形は現在のところないわけであります。ただそれ以外に、一遍形式上は廃めたけれども、又潜つて別なことでやつておるという疑いが尚あるから、そういう者をできるだけそうさせないようにするために、一つ実際の状態調査する権限を與えて貰いたいというのが四十九條改正案であります。
  30. 堀末治

    堀末治君 私も丁度山田さんと同じことをお尋ねしたいと思つておりましたが、実はさつきも申しました通り、最初この説明を承わりませんから、最初にその御説明はあつたものとは思うのでありますが、今承われば七千人のつまり業者を整理し、二十一万幾人かの労働者をそれから解放した、こういうことでございますが、今ここでこの改正をせなければならないようになつた事実が大分沢山湧いておるのでございますか。
  31. 齋藤邦吉

    政府委員齋藤邦吉君) 労働者供給事業によりまして、供給事業は御承知の通り因習の古いものがありまして、いろいろな形において実は潜つてまだまだおります。御承知のように労働者供給事業という名称を使つてつておるものは、或いはなくなつておるかと思いますが、いろいろな形において労働者供給事業行つておる者は、実に多いと存じます。私共の方の大体の計算で勘定をいたして見まするというと、恐らく解放された者を含めまして百万人以上は労働者供給事業に使用されるところの労働者であろうかと想像をいたしておるわけでございます。そこで私共の方といたしましては、司令部方面におきましても非常に御協力を願つておりまして、司令部の方において独自に全國各府縣に亘りまして監察をいたしておりますので、尚司令部の協力を得まして私共が各府縣に出向きまして、目下労働者供給事業調査いたしておるわけでございます。  そういたしますると、一番行つて困りますところの問題は、工場事業場に立入る権限がないわけでございます。もともと私共の職業安定行政は、本当に安定所で人を世話をするサービスが問題でありまして、工場に入つて行くということは私共の邪道でございますが、この労働民主化のために、どうしてもレーバー・ボスを切らなければならんということでありますれば、止むを得ず工場に入る必要があるのでございますが、私共の方の安定法におきましては、工場事業場その他の場所に入るという権限一つもございません。それでは入ろうとするときにはどうするかと申しますると、いわゆる労働基準監督官のお世話を願つて、そちらで調べて頂くということになります。ところが労働基準法の建前から申しますると、向うは中間搾取という点から入るわけでございます。私の方は勿論労働者供給事業の多くは中間搾取になりますことが多いのでありますが、法の概念といたしましては、私の方は労働者供給するのが狙いであり。労働基準法は中間搾取を調べに行くというのが狙いでありまして、労働者供給事業をする者を労働基準法によつて調べに行くことも実はできないわけであります。安定法といたしましては現在のところ官廳に入ることはできない、これが第一点でございます。  それからもう一点、会社、工場におきましては、労働者供給事業は違法であるということを知りながら、この方を使うことが便利であり、而も経費が掛らんといつたようなことで、どういたしましても事業主の方では労働者供給事業の方から提供されまする労働者を使うことを止めようなしないのでございます。現に私共神奈川その他の、……具体的に今工場の名前を申しませんけれども、親方に言いますると、親方は、それじや罰せられることは止めましようとこう申しましても、会社の方ではいやまあそう申しましても会社の方としては罰則を受けないのだから何とか潜つて行こうじやないかということでありますから、依然としてレーバー・ボス禁止ができないということでございます。私共の方といたしましては先般來司法当局とも打合せまして、六月の二十日から全國一齊に亘りましてレーバー・ボスの徹底的な一掃運動をやろうということをいたしております。もうこの法律施行されましてすでに半歳、それからレーバー・ボスの図止が三月から行われましたので、それ以來数ケ月啓蒙宣傳に盡しておるのでありますが、依然として悪質の者が潜つておる場合におきましては、大体七月中には断乎檢察当局において檢察をしなければならないというふうに檢察当局の方でも目下言うておるような次第でございまして、レーバー・ボス仕事はもう済んだというようなことでなしに、実はもつともつとあるのだ、そこでこういう問題が起りまして、今回の改正案を御審議願うということに相成つた次第でございます。
  32. 山田節男

    山田節男君 先程の、大臣に御質問申上げた点でありますが、御返答がありませんから更にお願いいたしますが、この職業安定法の六十三條乃至六十四條、殊に六十四條の規則違反としての罰則件数はいくらあつたか。それから更に基準法の第六條による中間搾取の罰則について基準局長が幸いお見えになつておりますから、この中間搾取の方面から又基準法の下においてどれ程に違反者が出るか、これを併せて御説明を願いたいと思います。
  33. 加藤勘十

    國務大臣加藤勘十君) 六十四條の違反によつて処罰された件数はまだございません。
  34. 江口見登留

    政府委員(江口見登留君) 労働基準法の第六條関係違反者も今日のところまだ決定されたものはございません。一つ送局しようか、しまいかというような事件があつたように記憶しております。基準法全般を通じましてまだ基準法上の処罰を取つた者はございません。ただ職業安定法と同じように、指導的に出ておりまして、指導によつていろいろな違反類似事項を説諭によつて、或いは戒告によつて改めさした事例はこれはもう何千件となくございます。
  35. 齋藤邦吉

    政府委員齋藤邦吉君) 罰則関係のことにつきまして御説明申しますと、基準法の第六條で中間搾取の問題でございますが、第六條関係罰則というものは、一年以下の懲役又は一万円以下の罰金ということになつておりまして、中間搾取の問題になると労働者供給事業の安定法の第六十四條の罰則と同じでございます。尚労働者供給事業のうちにおきましても、暴行、脅迫、監禁、或いは公衆通徳上有害な業務に就かせる目的労働者供給事業を行うといつた者につきましては、先程大臣からお話がありましたように、第六十三條で一年以上十年以下の懲役ということになつております。これは基準法の方もいわゆる暴行、脅行、監禁による強制労働とありますが、これも一年以上十年以下ということで歩調を合せしておるような次第でございます。
  36. 深川タマヱ

    ○深川タマヱ君 いろいろな方々からの御意見を承わりましたが、労働の民主化の場合の労働者供給事業を全廃するために、過去何ケ月の間政府は一生懸命努力なさいました経檢上、どうしても今後も取締規定を作つて貰わなければ所期の目的を貫徹することができないと思うのでありますから、私達はこれを通過さしてよいと存じます。殊に百万人以上の労働者の人達が未だに以て労働ボスの下で搾取されているということを聞きますと、働く人の味方である私達としては放任できないことだと存じます。殊に罰則規定の大体の政府の御説明を承わりますと、このまま私は通過さしてよいとこう考えます。
  37. 原虎一

    委員長原虎一君) まだ討論に入つておりませんから、質問中でありますから……。
  38. 深川タマヱ

    ○深川タマヱ君 討論には入つておりません……。
  39. 姫井伊介

    姫井伊介君 法の第五條の五項は「供給契約に基いて」とはつきり書いてあります。それから施行規則の四條には、契約の形式が請負契約であつても、中を取りまして、法の「第五條第五項の規定による労働者供給事業を行う者」、こういうふうになつております。そういたしますと、ともかくも請負契約であつても、又は「供給契約に基いて」ということが基本になるわけなんでありますが、今いわゆるレーバー・ボスはこういうふうな契約をものにしていない。どうしてもそこは疑わしいものという点が出て來るわけであります。労働供給供給契約に基きというこの点なんでありますが、今申しましたようにそういう契約をやらないで隠れてやる者、それに対する言い現わし方というものがなけらねばならないと思うのでありますが、この点どうなのでございますか。
  40. 加藤勘十

    國務大臣加藤勘十君) 只今姫井さんのお示しになりました、第五條の末項にありまする「労働者供給とは、供給契約に基いて労働者を他人に使用させる」、契約に基いて供給するということであるからして、作業請負等の形で労働者供給する場合には、労務供給の契約ができておらんではないか、だから疑わしいという事項が入つた方がいいではないかという御趣旨のようでありましたが、もうその作業請負でも実際にはそうでなくして、労務供給する内容を持つておるのでありまするから、もし実態それ自身が一個の供給契約になるわけでありまして、一々契約文を取交わして、或いは正面から契約の形式を履まなければ契約が成立たんというのではなくして、作業請負の形式で実際に労務供給する、その供給することそれ自身がすでに契約を意味しておるものであると思いますから、而もその賃金の支拂なり、その他の具体的條件を見てこの点は明白であるわけでありまして、私は必ずしも疑わしい、こういうことが入らんでも、契約それ自身は、契約という形式文書等による形式がなくとも、言葉だけでも実際の行爲そのものが契約供給をやつておる、が、すでに供給契約が実際に成立つておる、こういうことに十分解釈されると思いまするので、この点はこれでいいのじやないか、このように考えます。
  41. 姫井伊介

    姫井伊介君 その実質的に供給契約は成立つておるということは、内面的な隱れたる事実であり、その隱れたる事実を調べ上げるためにこの調査が行われるのでありますが、その隱れたる事実を突き止めるためには、疑わしいものに手をつけなければ、はつきりしたものは、もう当然法の規定上表面からは抹殺されて、できないことであるにも拘わらず、内面的にあるから、そこに疑わしいということの事実によつて調査をして、その眞爲を突き止めるのでありますから、表面には内面的な事実は現われていないのです。だからどうしても疑わしいものに手をつけなければ、調査の方法がないのじやないですか……。
  42. 加藤勘十

    國務大臣加藤勘十君) その点実際問題といたしまして、普通工場で多勢働いておる状態を見て、ここに疑わしいことがあるかどうかということを一々穿鑿することは、非常に困難だと思います。併しながら何しろ大勢の人が公然と働いておるのでありまするから、そこにいろいろな、例えばちよつとした不祥事件が起つたとか、何かそういう事故が起つたような場合に、その人が直接の労務関係を結んでおれば、当然それらの負担は、法律上の義務は、その事業主が負担することは明白でありますから問題はないですが、そのときに形式が、例えば作業請負の形式を持つてつても、実際において労務を提供しておる場合に、直接雇傭契約が成立つておりませんと、その法律上の責任は事業主にはないのであります。從つてその請負業者が負担をしなければならん、そのときにろくな負担をしない、こういうことになります。そういう何らかの事故があり、或いは状況の判断によつてそれと思われる場合に、その現場についていろいろ関係者に事柄を尋ねる、こういうのでありまするから、從つて初めから疑わしい場合、どういうことを規定しておるからできるとか、規定してないからできないとかいうことじやなくて、その事業場に入つて尋ねるという権限さえありますれば、容易に尋ねられるわけなんでありまして、從つてこの点は私は労務契約を眞正面から形式上いたしておらんでも、口先だけでやつてつて、事実お言葉の通り隱れてやるのでありまするから、外部から見てもなかなか分らんと思います。又そこにそういう中間搾取を受けておる労務者が、正式に安定所に報告するとか何とかという場合ならば、はつきり分りますけれども、そうでなければ、実際においてなかなか分らんと思います。けれども多勢の現場の中で働いておるから、若し友達同士で話をすれば直ぐ分ることでありまするし、又今申しますように、何か一つ事故が起つたような場合には、直ちに明白になるわけでありますが、そういう場合においても、安定所としては現在のところでは、その現場について事情を尋ねることができん、こういう不便があるという点でありますから、私は政府修正案差支ないじやないかと思いまするので、この点御了承願いたいと思います。
  43. 姫井伊介

    姫井伊介君 ちよつと諄いようですけれども、事実が認定されるならばそれを調査するという点に、何だかはつきりしない点が出て來ます。それから法律は申すまでもなく民主化して、誰が見ても直ぐぴんと理解されなければならない、ただ法文上とか法理上とか、そんな理屈は私は存じませんが、誰が見ても直ぐああこうだなということが分るような、親切な法文で書き表わさなければならんといたしまするならば、私はこれだけの法文ではどうも納得のできない点があるのでございます。これ以上は申上げません。
  44. 齋藤邦吉

    政府委員齋藤邦吉君) 簡單工場事業場に参りまして、レーバー・ボスが行われておるかどうかということを調査するときのやり方をちよつと御説明申上げます。先ず第一に工場事業場に参りまして、あなたのところでは、そういう労務供給事業のような組はどういうのがあるかということを聞きます。そうするとこういう組があるということを言いますと、結局その組に所属する労働者にその話を聞いて來る。大体親方の下のフオアマンみたいな者がそこにおりますので、そこでいろいろ話を聞く、それから更にあなた方はどういう仕事をやつておりますかと、結局仕事内容が問題になりますので、そういうことを調べて行く、こういうやり方でございます。工場事業場ではそういう組のものにつきましては、賃金は一括して親方に渡しますけれども、その課のものは会社で賃金台帳を備えてございますから、賃金台帳に載つておるもの以外の労務者は、これは請負契約、いわゆる組に属するということがはつきり分りますから、そこの組に行きまして、あなたの組はどういう仕事をやつておるかということを調べて行く。從つて今度の四十九條の第二項に入りましたように、第一番に調べるのは、工場事業場に行きまして帳簿書類を見るということ、第二番目には、どこかで働いておる労働者に話を聞く、結局話を聞くことによつて、成る程ここに労務供給事業が行われ、その親方がどこかにおる、その親方のところへ行つて話を聞く、こういう順序で行くので、第四十九條の第二項の文字で、固執するようでありますが、大体調べができる、かように考えておる次第でございます。
  45. 山田節男

    山田節男君 今の問題ですが、中間搾取の排除の調査ですね、今安定局長の言われたのと対比して、基準監督署では、どういう特徴がありますか。
  46. 江口見登留

    政府委員(江口見登留君) 先程職業安定局長からお答えしたと思いますが、我々の方では、中間搾取が行われていないかどうかを調べるのであります。安定局関係の機関では、労務供給事業が行われておるかどうかということを調べます。大体、中には一致して來る場合があろうかと思いますが、観点が違うわけであります。從來は、今のような改正案でない場合は、監督署がそういう頼みを受けて、そういう心持で、中間搾取はないか、それから引つかけて供給事業が行われていないかどうかというところへ入つて行つて調べて來る、ちよつと隔靴掻痒の感があつたということが言えると思います。
  47. 山田節男

    山田節男君 そうすると、今の職業安定法による労務供給事業の側と、今度これは監督官廰が監督権を強化される一つの手段と思いますが、そうすると労働基準法の第六條の実施監督というのは、中間搾取を排除する、結論においてはやはりそこまで行かなければならない。これはもう当然基準法によつて基準監督官はそこまでやり得るものと私は了解しております。そうすると、ただ見方が、供給事業を見るのと、それから中間搾取を監督するというけれども、これは盾の二面であつて、それがために供給事業方面と、それから中間搾取の事実を排除するのと、これは文句の上ではそういうことは区別できるけれども、実際の行政上において、むしろ私は職業安定法、或いは基準法によつて一つの実施者に対して二方面から適用されるような法律を作るということは、立法技術においてもまずい点がある。殊に同じ労働省の中において、労働基準局職業安定局との職権の交錯を來す。これは從來我々が見ておつても、実にレーバー・ボスに対する政府のやり方は生ぬるい。私は北海道、中部、九州を見ましたけれども、現に基準監督署のごときは、資本家から金を貰つてつておるというようなのがあつて、末端が実に鈍いのであります。  そういうようないろいろな労務状態を勘案して見ますると、職業安定所は元來サービス法だというので、更にそれが四十九條の第二項によつてそのサービス機関であるところの趣旨に悖るものではありませんけれども、監督権を強化するという目的に外ならない。そうするとこの労働基準法と重複するのではないか。若しこれは労働大臣なり、或いは基準監督局長或いは安定局長がこれに対して行政の交錯を來たさない、いわゆる権限の衝突を來たさないということが保証できるかどうか、これについて政府委員からお願いいたしたいと思います。
  48. 加藤勘十

    國務大臣加藤勘十君) 只今詳細に山田さんからお話がありましたが、法の建前が全く違うのであります。勿論基本的には日本労働者の労働條件を保護するということ、日本民主化推進せしめるために役立たしめようという基本的の点においては同じでありますが、立法の精神にしましても、法の運用にしましても、これはおのずから範疇が違うのでありまして、この点において私は両者の権限上の混淆というようなことは絶対に起らないという建前を強く申上げることができます。それから今日まで基準法の事項について、若しくはボスの排除の問題について実際に末端機関が緩慢である、こういう御不滿が述べられましたが、その点は私共も十分承知しておる点であります。併しながら先程來申しましたる通り、法が制定されまして直ちにこれが刑罰を目標とする法律ではないのでありまして、そういう実態をなくするということが目的の法でありまするから、過渡的にその法の内容を周知徹底せしむるということを、それから説諭等によつてそういう実態を改善せしめて行くということ、こういう事柄に相当時間を費やして、その後にそれでも尚且つ悪意の場合があつたときにこの処罰規定適用されると、こういうように今日まで進んで來ておるわけでありまして、今日までのところそういう末端機関において手ぬるい、直ちに起訴して、告発してしまえばいいじやないかと、こういう御意見があるかと思いますが、ときによればそういうことの方がいい場合もあることを私共も知らないではありませんが、併しながら法律適用趣旨としましては今申しますように、先ず最初の中は或る程度時間的にその法を周知徹底せしめて、こういう法の精神に反しないように改善して行くという建前から來ておるために、手ぬるいというような感じを與えたことがあると思いますが、その点は今後の法の運用によりまして、十分この法の精神が活かされて行くようにするつもりであります。重ねて安定法の所期するところは、飽くまでもそういう中間搾取という基準法の建前から來る監督面と、それからそうではなくして中間労務供給ということ、これは安定所を通してやれば中間搾取されることもおのずからなくなるわけでありまするから、内容においては一致する点がありますけれども、その現場においての法律適用においては今申しましたように、範疇がおのずから異なつておりますから両者の権限上の混淆は來たさない、この点はもう私今までの経驗から、安定所と基準局との関係から行きましてもそういう点はないとこう思いますから……。
  49. 堀末治

    堀末治君 ちよつと……。
  50. 原虎一

    委員長原虎一君) ちよつとお待ち下さい。今の問題の関連ですか。
  51. 堀末治

    堀末治君 今山田さんが申し出た御意見は実は私も今申したいと思つたところであります。幸い山田さんが大変私共と違つて詳しい御意見を述べられました。大臣も今それに対して御答弁になつたのであります。併し私は先程労働基準局長からの御答弁で、いわゆる今の基準法だけでは隔靴掻痒の感があるとこういうふうに思うのでありますが、私は先程申上げましたように、どうしても安定法は徹頭徹尾サービス法だから、このサービス法の中に聊かなりとも監督署臭、官僚臭のようなものを入れない方がいいと私はこう考えておるのであります。大臣の御答弁がございましたけれども、私はこういう監督はでき得ることならば、基準監督署の方でして、安定所の方では事実があつたならば直ぐ基準局に訴えて監督署は監督するという建前から、嚴重なやり方をするということを飽くまでも希望するのであります。これだけを申上げまして、だんだん時間もないようでありますから、一つ緊急問題としてお許し願いたいと思います。
  52. 原虎一

    委員長原虎一君) 緊急問題とすると、今日今の審議は、職業安定法をやつておりますが、一應質問を打切つてよろしうございますか。
  53. 堀末治

    堀末治君 結構です。
  54. 原虎一

    委員長原虎一君) 他に御質問ございませんか。そうしますと今日はこの質問を打切りましてよろしうございますね。今堀さんから何か緊急に労働大臣質問したいと言つておられますが、続けてよろしうございますか。
  55. 山田節男

    山田節男君 打切りという言葉は。
  56. 原虎一

    委員長原虎一君) 今日の質問を打切るのです。では堀さんの緊急の質問があるようでありますが、よろしうございますか、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  57. 原虎一

    委員長原虎一君) それではどうぞ堀委員
  58. 堀末治

    堀末治君 それでは極く短い時間でなんですが、実は今日の毎日新聞に出た問題であります。或いは大臣も御覧になつたと思いますが、あのいわゆる東急のストが解決になつたについて、いわゆる乘客が被つたそのストの損害は一体どちらが持つべきかという問題であります。ここに会社側と中労委と今の東急の闘爭委員長と三人の意見がそれぞれ載つておるのであります。それに対して法務廰の見解として経営者に責任がある、まあこういうふうに法務廰の民事局の平賀事務官談として、こういう場合は経営者に責任がある、こういうふうにはつきり言うておるのでありますが、大臣もさようにこれはお考えでございますか。なかなか非常に大きい重大な各方面に影響のある問題だと思いますが、大臣の御意見一つ承りたいと思います。
  59. 加藤勘十

    國務大臣加藤勘十君) 私は労働爭議による損害が発生した場合には、まだこの毎日新聞を実は見ておりませんが、原則として経営者側の負担すべきものである。こういう点においては、法務廰はどういう見解を下しておるか知りませんが、これは労働組合制定のときに、又英國あたりの労働組合運動の経驗から行きましても、労働爭議によつてつた損害を或る時代には労働組合側に負担せしめた時代があつたのでございます。併しそういうことが結局労働者をして絶望状態に陷れて、そんなくらいならいつそのこと、やけくそになつて工場を破壊してしまへというような、いわゆる労働運動闇黒時代というものを生み出したことがあるのです。そういう点から英國におきましても、これは爭議をすることは望ましいことではないが、爭議が起らないようにするということが望ましいのではないか。労働者が爭議をするということは、労働組合側が経済的の負担を経営者に與えるというそのことが唯一の武器なのでありまして、ただ爭議をやることそれ自身は何も武器ではないのであります。それから大きな損害を與えるから資本家においても、これは爭議はたまらないという点で、爭議がおのずから考えられるわけでありますが、損害賠償を労働者の方に負担させるということになると、資本家は何らの痛痒を感じないわけでありまして、そういう点で労働者の方に爭議による損害賠償負担の責任というものが免除されるようになりました。  こういう立法上の沿革を持つておりまして、日本においても最初労働組合法が労働法制審議会において審議されまするときに、資本家側の代表者の諸君がそのことを主張されたのであります。  最初の草案の中には当時労働組合側から松岡君や西尾君が出ておりましたが、少数で敗れまして、そうして資本家側の意見が多数を占めて、そうしてそういう草案になつたのであります。けれどもこれについては後に、私共もあとからこのことを知り、更に西尾君等も当時議会に議席を持つておりまして、いろいろその当時はまだ進駐軍が進駐して間もないときでありましたけれども、労働課長と烈しい折衝をいたしました結果、成る程そのことは却つて日本民主化を阻害するし、労働者の正常な團体運動を抑圧することになるからいけないということで、そういう点が日本労働組合法の規定の上からも取り除かれたわけであります。  そういう点から労働爭議による経済上の損害が起つた場合に、その負担はこれは当然経営者が負担すべきものである。これはもう私は間違いない点であると思います。この内容は私よく存じませんが……。
  60. 原虎一

    委員長原虎一君) ちよつと速記を止めて。    〔速記中止
  61. 原虎一

    委員長原虎一君) それでは速記を始めて。
  62. 加藤勘十

    國務大臣加藤勘十君) 私ストライキ一般から起る経済上の損害と思つておりましたので……。これは私はまあその定期、バスの所有者の方にはお氣の毒だけれども、だからと言つてこれを会社がすぐ割引いて、二日分返すとか、組合側で二日分負担するとかということは、これは事実上不可能なことであるし、結局これは過誤としてその利用者に我慢をして頂く以外にはないのじやないか、いずれに責任があるということに拘わらず、要するにそういう不幸な社会現象であるというように一つ常識的に見たいとこう思います。
  63. 堀末治

    堀末治君 私の言葉の足りないところを正して頂きまして結構でございますが、併し法務廳では経営者の責任だということをはつきり平賀事務官という人が謳つておるのであります。これは明らかに、要するに法務廳としてそういう見解を発表されるということになると、非常に大きい問題になると思いますから、いずれ法務廳の方にも当委員会として聞いて見なければなりませんし、大臣としてもよく法務廳やなんかの御意見に対して打合せの上、はつきりとして御見解を一度お聞かせを願いたいと思います。
  64. 加藤勘十

    國務大臣加藤勘十君) ちよつと新聞で拾い読をしただけでありますので、どういう法的見解の根拠に基いて、そういう解釈を下されたかくよ知りませんが、いずれ專門家が專門的な法律的解釈をしようと思いますけれども、今申す通りに……その前に末弘さんの御意見が出ておるようでありますが、末弘さんがどういうことを言つておられますか、よく存じませんが、私の労働組合の長い間の関係者の一人としての見解によればですな。こういう場合、普通の汽車の乘車券を買つた者が、或いは鉄道の故障によつて行かれなかつたというような場合は、拂戻し等……今でも急行が二時間以上遅れたならば、急行券を拂戻するというようなこともありますが、これは必ずしも経営上の事故ではないのであつて從つてこれは私は單にどちらの……これは私の常識的な解釈ですよ。
  65. 堀末治

    堀末治君 結構でございます。
  66. 加藤勘十

    國務大臣加藤勘十君) こういう場合においては、いずれに責任があるという法律上の嚴格な意味は知りませんけれども、社会的通念として、こういう場合においては、非常にバス利用者にはお氣毒であるが、我慢をして頂いて、今後はこういうことは十分考慮して、できるだけ爭議ということの、殊にこういう公共的性質を持つた事業の爭議ということが、できるだけ起らないように、お互いに注意して努めることにしたいと思います。尚法務廳については、正式にならば、何かあなたの方から法務総裁でもお呼びになつて意見をお聞きになつても結構だと思いますけれども、大体こういう常識的な……
  67. 堀末治

    堀末治君 いずれ当委員会でも聞いて見ましよう。大分重大な問題でございますから……
  68. 原虎一

    委員長原虎一君) それでは本日はこれを以て閉会いたします。    午後零時十六分散会  出席者は左の通り。    委員長     原  虎一君    理事      堀  末治君    委員            天田 勝正君            山田 節男君            川村 松助君            平岡 市三君            紅露 みつ君            深川タマヱ君            奥 むめお君            竹下 豐次君            早川 愼一君            姫井 伊介君            松井 道夫君   國務大臣    労 働 大 臣 加藤 勘十君   政府委員    労働事務官    (職業安定局    長)      齋藤 邦吉君    労働事務官    (労働基準局    長)      江口見登留君   説明員    労働事務官    (職業安定局雇    用安定課長)  川崎 義雄君