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1948-06-23 第2回国会 参議院 予算委員会 第37号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十三年六月二十三日(水曜日)    午後一時二十八分開会   —————————————   本日の会議に付した事件昭和二十三年度一般会計予算内閣  送付) ○昭和二十三年度特別会計予算内閣  送付)   —————————————
  2. 櫻内辰郎

    ○委員長(櫻内辰郎君) 只今より開会いたします。前回に引続き質疑を行います。池田恒雄君。
  3. 池田恒雄

    池田恒雄君 大藏大臣に対しましてちよつとお伺いいたします。第一にお伺いしたいのは、終戰処理費賠償施設費、この問題であります。この二つ予算を含めますと一千五百億を超えるのでございますから、それは全体の予算の上における比重は極めて大きいのであります。從つて又この費用性格から申しまして、財政インフレーションに與うる影響も大きいものだ、こういうふうに考えるのであります。ところが、この終戰処理費賠償施設費と、それからもう一つ公共事業費、これも相当厖大予算でありますが、この三つ厖大なる予算が、他の予算というものはすべて部、款、項、目、というようなものについて予算案に出ているのでありますが、この三つ予算につきましては何にもないのであります。ただずんべら棒に終戰処理費としてこの厖大なる金額を揚出しておるのであります。私はこういう性格の金をこういう形で出すということは、非常に危險なことである、こういうふうに考えるのでありまして、これらは外の予算と同じよう支出内容を明らかにしまして、そして責任所在を明瞭にして出すべきものじやないかと、こう思うのです。その点先ず第一に御説明願いたいと思うのであります。
  4. 北村徳太郎

    國務大臣北村徳太郎君) お答え申上げます。終戰処理費自体性格から考えまして、只今ような現わし方は誠に止むを得ないと思うのでありますが、この点につきましては、勿論決算を明らかにいたしまして、決算委員会の方において十分な檢討を願つておるような次第でありますが、さようにご了承願いたいと思います。  それから公共事業費につきましては、これは前書に大体の内訳を申上げるようにいたしまして、そういう書類を添えておると存じます。これによつて公共事業費大体の用途というものを御説明申上げておるのでございまするが、これ亦公共事業費性質に鑑みまして、多少の彈力性を持たないとやりにくいことがあるというような点からいえば、この本來の公共事業費性質からこういう現し方をいたしておるのでありまして、勿論これは決算委員会等において十分結果については御檢討願い、尚又説明申上げるような場合には十分御質問に應じて詳しく御説明申上げる、こういうふうにいたしておる次第でございます。
  5. 池田恒雄

    池田恒雄君 この事業費性格からして、責任所在を明らかにすべきものだと思うのであります。終戰処理費につきましても、勿論どういう内容かということにつきましては、大雑把には資料がこちらに出ているのであります。つまりその内容を見ますと、最も多く使われておるのは住宅及び宿舎新築費兵舎工事費一般工事費道路費維持管理費というよう内容が、資料の中に現れておるのであります。從つて資料としてはそういうふうに出て來てはおりますが、併しこれは一体どこが誰にどういうふうに支出するかということについては何らの定めがないのでございます。こういうふうでは私は非常に支出がルーズになると思う。且つ只今私が費目を申上げました通り住宅兵舎一般工事道路或いは維持管理、こういうのがこの終戰処理費の大部分を占めているということになるのでありますが、一括してこれを言うならば、土木建築費なんです。土木建築費というものは、これはもう予算の上で一番危險性のある費用であり、放漫に支出される危險性のある金なんです。それをこういうふうな形で支出して行くということは、各官廳における予算放漫支出となつてまづかろうと思う。でありますから、私はこの点も支出方法とか責任というものを明らかにすべきものだと、こういうふうに考えます。終戰処理費はこういう性格なるが故に明らかにすべきものだと、こういうふうに思うのです。
  6. 北村徳太郎

    國務大臣北村徳太郎君) 終戰処理費につきましては、これは実は関係方面よりの指示がありまして、この現し方をするように命ぜられておるのであります。それで一般の款項目に從うことはしない、こういうことに命ぜられておるのであります。それからその内容の使途でございますが、これはご承知通り調達廳において全般的な調査を法に基いて非常に嚴格にやりまして、それから別途建設院においては又技術的な調査をいたします。それから大藏省大藏省会計の面から檢査監督をいたします。三段構えの非常に嚴重な監査と申しますか、審査監査をやつておるわけであります。それがために実は時間が掛かりまして、外部では支拂が遅れるではないかというような非難も相当あるのでありますが、これは或る点止むを得ないと思つておるのであります。このことは当初極めて簡單方法で向こうからPDなどが出て工事をやつたことから來るいろいろな誤解もあつたと思いますし、又只今指摘になつたようなこともなかつたとは言えない。多少弊害はあつたと思うが、それらのことから段々これは形を整えて参りまして、調達廳を経由しなければならん、調達廳において一般的な審査を十分やる。そうして苟くも契約については審査を経た上でやるということと、それから次に建設院において技術的な監査をやる。これは技術的に可能であるかどうか。無理があるかないか。大藏省は又大藏省の立場で経理的な監督監査を十分にやる。こういうようにいたしまして、おのおの三つ檢査が終わらなければその一部の金も拂わないというよう方式でやつておりますので、只今のところは当初の終戦直後のようなことは全然一掃されたと考えておるのであります。さように御了承をお願いいたします。
  7. 池田恒雄

    池田恒雄君 私は別に終戰処理費につきまして、世間の誤解を受けるような問題があつたかどうかということは知らないのです。全然そういうことは知つておりません。ただ私は過去の土木事業費というようなものの取扱の経驗から、こういう土木費というものは非常に危險を孕んでおるものだ。これは又大藏大臣も多年政界におられた方で、土木費というものについて從來どういう問題が起つて來たか、こういうことは御存じであろうと思うのであります。私共も土木費については、各地方土木課なんかで大分疑獄事件やなんか起しまして、そうして費用の放漫なことが地方議会においても指摘されたこともあるのでありまして、私は併し現在の終戰処理費公共事業費においてそういうことが起つておるとか何とか言うのではありません。こういう性質の金はそういう危險性があるものだ、過去の経驗からそう言うのであります。そうであるとすれば、私はこういう費用予算において、……決算においてこうするというのでは遅いと思うのであります。決算ではもうすでに問題が過ぎてしまつてからでありますから、予算において責任官廳なら官廳を明瞭にすべきもんじやないか。その点はこれは明瞭にされていないわけであります。  もう一つお伺いしたいのは、これらの工事請負制度でやつておるのか。政府が直営でやつておるのか。只今大藏大臣の話では、出來高拂ようお話でしたが、出來高拂でおやりになつておるのかどうか。この三つを一應お尋ねいたします。
  8. 北村徳太郎

    國務大臣北村徳太郎君) 私の只今御答弁いたしましたのは、御指摘のこの土木に関する費用が、ややもするといろいろルーズになつたりすることがある。從いまして申上げたのは、主として終戰処理費の使い方の土木関係の問題であります。土木関係の問題については只今申上げたよう方法で、三段構えで技術的にそういうところに、或いは経理的に審査監査等をいたしておる、こういうことを申上げたのであります。それから終戰処理費土木関係仕事は、只今のところ調達廳責任官廳になつております。勿論大藏省責任の一半は負うておることは勿論ありますが、これは第一次的に調達廳契約をする、こういうことになつております。契約は大体入札方式にやつておるんでないかと思うのでありますが、詳しいことはちよつと只今私御答弁申上げかねます。
  9. 池田恒雄

    池田恒雄君 出來高拂かどうかという問題ですが……。
  10. 北村徳太郎

    國務大臣北村徳太郎君) これはまあ只今申上げたよう檢査を経まして、そうしてそれに基いて出來高に対して或る割合を内拂いするということもやつております。
  11. 池田恒雄

    池田恒雄君 出來高拂だということになりますと、ちよつと私が今までこれについて見聞しておるところとは多少違つて來ようなんですが、私はこういう仕事出來高拂が正当ではないかと考えております。ところが仮渡金があるというようなことを聞いております。これは公共事業費の開墾に関する費用は大体今まで仮渡、前渡金という形で仕事がやられておつたようです。これは事業を進行するために非常にいい一面があるのでありますが、ところがこういうことをやると、一面の弊害は、請負者が余り資本や資材を持たないで政府予算に食い下つて請負つて行くというよう弊害が生れて、そこに役人と請負師その間にやはり余り明朗ならざることも起るというようなことも懸念されておつたようなわけであります。ところが最近公共事業費開拓等に関するものは出來高拂にするというよう制度に、農林省当局が切換えられたということを私は伺つておるのであります。でありまするから、こういう事業はやはり出來高拂で十分なる監督檢査をやつて、然る後に金を支拂うというよう方法を採るべきではないかと思うのでありますが、終戰処理費の中にはその前渡金をやつておるものもある。これは公共事業費前渡金があつたわけです。そういうことを聞いておるのですが……。
  12. 北村徳太郎

    國務大臣北村徳太郎君) 終戰処理費関しましては只今前拂をやつておりません。出來高拂方式を採つております。
  13. 池田恒雄

    池田恒雄君 そうすると、出來高拂ということになりますれば、事業ができ上りまして、その事業決算でございますね、それに対する予算との間でどのくらいの金の開きがありますか。
  14. 北村徳太郎

    國務大臣北村徳太郎君) それは只今ちよつと資料がございませんから、資料を整えて御答弁申上げた方がよろしいかと思います。
  15. 池田恒雄

    池田恒雄君 それならはこの問題は後で資料を整えて頂きたいと思います。というのはつまり私はその出來高拂で行きましても、仮拂で行きましても、予算事業決算との間の開き、これは終戰処理費というのは、今年初めての費用じやなくて、終戰以来、ずつと使つておりますから、すでに実績ができておると思います。その実績ができておりますれば、その実績に應じまして、との終戰処理費考えなければならないと思います。そうしていろいろな関係から考慮しますと、終戰処理費は私は相当削減ができると思うのであります。そういう点もありますから、資料は相当詳しくお願いいたしたいと思います。それでは終戰処理費の問題はこれで止めます。この終戰処理費につきましては、それと食つ付いて賠償施設処理費公共事業費についても同じよう考えを私持つております。その点もお含み置き願いたいと思います。  それからこれは簡單に御説明願つて結構なんでございますが、價格調整費であります。これは私は分科会に参りましてから詳しくお伺いいたしますから、大藏大臣から一言お伺いして置けば結構なんでございますが、價格調整費というのは昨日あたりいろいろ新聞なんかで見ますと、石炭なんかでああいうものに対してお拂いになるようなふうに私承知しておるのでありますが、ああいう重要企業といいますか、ああいうものの独立採算ということは一体できないものでございましようか。盛んに物價を上げて参りまして、物價補正をやりながら、尚且つこういう方面に、こういう價格調整費ようなものを莫大に支出して行くということは、これは今後國民としてはえらいことだと思うのでございますが、それで一應大臣の御方針を承つて置きたいと思います。
  16. 北村徳太郎

    國務大臣北村徳太郎君) 只今現状では、重要な産業について若し全部價格補正をいたしますと月百億くらいの金が必要なのであります。從つて年間千億くらいの金が必要であります。かようなことは日本の現在の財政力からして到底やるべきことでもございませんし、やれもしない、さればといつて企業の毎月百億くらい出る赤字をそのまま放置したのでは、いつまで経つても経済安定を見ることはできません。そこで政府考え方といたしましては、この基本物價をたびたび上げることを阻みながら、財政力を以て阻みながら、一面において大きな財政負担にならんというよう程度で、言い換えますれば、財政力の有する範囲において、一方において基本的な物價を引上げないというよう方針で、物價全体影響することを財政力で以て抑えるというよう方針を立てることは、今のよう段階において必要である、かよう考えまして、今回の予算では大体五百十五億を以て價格の調整に充てる、それが妥当かどうかいろいろ疑問もあると思いますが、大体そういうよう考え方をいたしたのであります。これは即ち財政とそれから物價との総合的な考え方で、國民経済全体に及ぼす影響等考えて、先ずこの辺が妥当であるというところを五百十五億と押えたわけであります。それで問題は、尚企業赤字を出せばいつでも國が保護して注ぎ込んで行つていいかということになるわけでありますが、これは赤字の出るということの原因の中には、政府價格政策物價政策ために犠牲になつておる、と言つては少し語弊があるかも知れませんけれども、政府物價政策ため赤字が出るという部分と、然らざる部分があるのであります。企業自体に内包しておる弱体性と申しますか、雇傭関係現存人数割合にそれ程生産が上つておらないとか、或いは企業内部において改善すべきものにして未だ改善されていないものがあるとか、いろいろの点があると思うのでございまして、從つて赤字が出ることは、これ全部政府物價政策ためだけであるというよう考え方は、これはしちやならん。從つて企業をどう整備するかという問題が残るのでありますが、この問題については、おのずから別になると思うのでありますけれども、問題を孕んでおるということは事実でございまして、以上の点を考えまして、先ず只今のところ、一面において企業整理を要するものは整理をして貰う、これは促進する。ただ問題は企業再建整備などが終了いたしておりませんし、その他経済力集中排除等についてもその指定が十分まだ決まつたわけではございませんし、從つて企業整備は促進の過程においてちよつと進行がしにくい点もあるというような点もございますので、甚だ急速に行きかねておりますが、決してそれを無視しておるわけではございません。そういうような点もございますが、漸次財政負担を軽くするように持つて行かなければなりませんが、財政負担を軽くするような、物價が上らないようにするにはどうするかということはむつかしい問題でありますが、そういう線に副つて政府は努力して行きたい。さよう考える次第であります。
  17. 池田恒雄

    池田恒雄君 價格補正等特別補充費というのが新らしく出ておりますね。これは新らしい費目なんでございますが、これも何とか一つ……。
  18. 北村徳太郎

    國務大臣北村徳太郎君) これは実は卒直に申しますと、予算の編成を急いだものですから、今回すベてのものについては、物件費人件費の改訂を行いまして予算に織込んだのであります。ところが全体の雑件というものが五千件もある。これは一々について算定いたしまして、これには幾ら幾らと全部出しますと、相当な日数を要しますので、それがため價格の補正に充てるような一種の調節の費目を設けまして、今回に限つてそういうことで御承認を願おうということで、各部門毎にそれだけのものを出した。出したのはどういう根拠で出したのかと言われますと、これは相当根拠を持つておりましたので、その根拠については、若し御質問がございますならば政府委員からお答え申上げてよろしいのでありますけれども、お尋ね費目はそういう費目でございます。價格を調節するために掲げた、こういう費用でございます。
  19. 池田恒雄

    池田恒雄君 それではこれは又分科会のときでも細かいことをお伺いするようにいたしたいと思います。それから私のお伺いしたいのは、特殊物件特別会計でありますね。それから國有林御料林なんというのがあるわけでございますね、特別財産では……。そういうものと國庫関係でございますね、これをお伺いいたしたいと思います。特殊物件特別会計というものと、それから國有林から収入のとか、御料林ようなああいう山林からの収入、こういうものと國庫財政との関係をどういうふうにお考えになつておりますか。
  20. 河野通一

    政府委員河野通一君) 代つて答え申上げます。特殊物件と申されましたのは恐らく不正物資等処理特別会計のことじやないかと思いますが、これは從來特殊物件としていろいろ処理いたしておりましたものを、会計内容を明らかにいたしますために特別の会計計を今般設置をいたしたわけであります。これは不正保有物資等特別措置特別会計、正確に申しますとこういう名前でありますが、一言にして申上げますると、不正保有物資等というものの中には、いわゆる不正保有物資過剰物資二つあるわけであります。それでこれらの不正のものでありますとか、或いは必要程度以上のものを持つております者につきましては、すべてこれを政府が買上げる。一定の不正物資につきましては、それを取得いたしました当時の價格で買上げる。そうしてそれを、何と申しますか、この賣却をする当時におけるのマル公價格で賣る、こういうこともいたすわけであります。從いましてこれは必ず経費その他を差引きましても利益が出て参るわけであります。この利益金は、買いまするために発行いたしまする公債等の償還に充てまする金額を差引きまして、残金は一般会計に繰入れる、こういうことに相成つております。  それから國有林野でありますが、これは國有林野特別会計法ができておるわけでありまして、現在の経営の状況におきましては、一般山林等について、御承知ようになかなか一方に経費が非常に高い。而も一方におきまして木材價格は相当低く抑えられておるというよう関係で、造林その他のために要します金が非常に掛かつております。從いまして一般民有林につきましては、御承知よう造林補助として半額の補助が出ておるわけでありますが、そういう補助もございません。從いまして國有林としては今利益を挙げるよう状態になつておりません。從いまして利益があれば一般会計に繰入れることになるのでありますけれども、現存のところでは非常に苦しい収支をやつておりまして、むしろ借入金を或る程度仰いでおる、こういうふうな状況になつておりますので、一般会計に繰入れるということは只今のところ起つておりません。
  21. 池田恒雄

    池田恒雄君 私はその國有林収入一般余計に繰入れる程に至つていないというのは、どうもこれは困ると思うのです。今はやはり山というものは相当儲けるものでございますから、これは相当大藏省の腹に入つていると思うのですが、入らんというのは余程これは大藏省として考えて貰わなければならん。若し入つていないとすれば林野局や営林署は何をやつておるか。それは大藏省として相当考えて貰わなければならんことだと思うのです。今は山を持つておる人が一番暮し向きがいいのでございますから、政府つて厖大な山を持つてつて一般会計に一銭も入らんという、そんな馬鹿なことはないと思います。これは一番重大な問題ですから考えて貰わなければならんと思います。殊に木材價格がどうこうと言いますが、日本木材の中で國有林野から出る木材というものは決して少くないと思うのです。厖大木材が出ると思うのです。そんなに木材價格が安くていいというなら東京都内公價で家がじやんじやん建つて行く筈だが、建つておらん。大体國民政府がああいう財産を持つておるから政府は困らんだろうと思つておるわけです。早い話が……。そこをよく考えて貰わなければならんと思います。  それから特殊物件ですが、これは私終戰後において陸海軍が持つてつたいろいろな財産というのは、恐らく大藏省の方の所管になつたものだと考えるのでございますが、それは相当厖大な数だと思う。ところが予算面に現われて來る数字は非常に僅少なんです。恐らくはこれくらいの予算飛打場一つ二つで出て來ると思います。どうしてあれだけ厖大飛行場軍施設を押えておつて、こういうふうに出て來ないのか、これは私は疑問なんですが、その点を一つ明らかにして頂きたい。
  22. 北村徳太郎

    國務大臣北村徳太郎君) 只今お尋ねの点は、先の不正物資若しくは過剰物資のこと以外に、元の軍施設等がそのままになつている、或いはそういうものについての収入が少いのじやないか、こういうことについてのお尋ねであると思うのでありますが、これは実は戰災都市などで利用のできるものは、先ず一應なくなつた学校等に、そういう公共的な或いは教育的な施設ために利用することを許しておる。それで一時使用を許すというような形で拂下ということまで行かずに、とにかく学校が焼けてないのだ、そういうものに先ず利用させるというようなことでやつておりますので、こういうものから相当な収益的なものが入るという段階には入り難いものが相当多い。それからその他のものにつきましても、公共の福祉のために使わせるという公共性の厚いものに優先的に使用を許しておりますので、從つてこれが相当収益を挙げるというようなことにはなり難い、かようなことになつております。それから早く賣拂いまして財源としたいという考えはあるのでありますけれども、これは只今のところなかなかどうもそう潤沢に金があるわけでもなく、拂下の希望の者があつても、調べてみると財力において欠くるところがあるというようなこと等がありまして、処分がなかなか困難であるとか、一方維持管理にも相当金が掛かるし、段々悪くなつて行くのじやないかというような点もございますので、私共はこれを最も有効に処分いたしたい、かよう考えておるのでありますが、そのことが余り捗つていない。これが現われたところで金額的に多くないじやないかという御質問であると思います。今日これについて法律案只今出して御審議を願うことになつておると思うのでありますが、特殊なものについては時價の二割まで下げてよろしい、大体は時價主義でこれを処分する、こういうふうになつておるのであります。この二割等についてもいろいろ議論があるようでありますが、一應学校とかその他公共用のものについては二割まで引いてよろしいということを法律について決めるということで、法律案の御審議を願つておるのでありますが、そういうふうな方法も講じております。併し二割を引けば今日のいわゆる時價で戰災の学校が直ちに飛付いて入手し得るかということになると、実際問題としては非常に困ることがあるのでありまして、なおこれらの点については十分考慮を要すると思つておりますが、現状は今申したよう現状で、從つて収入が非常に少いじやないかということはおつしやる通りでありますが、私はこれを拂下げることによつて教育文化等に貢献し得るよう方法で処分いたしたい、かよう考える次第であります。
  23. 池田恒雄

    池田恒雄君 この軍の物資ですが、軍の物資のうち、建物なんか只今お話よう学校やなんかに使うということは非常に適切だと思うし、且つそういう要望を出しておる町村なんかもあるのでありますが、ところが、アルコールというのは大藏大臣は余り御存じないかも知れませんが、これは私達兵隊の経験から申しますと、アルコールというのは飛行場に山のようにある。ドラム罐に入つたやつ、これは戰爭中の甘藷、馬鈴薯が殆んどアルコール原料に廻つておる、あの数字から申しましても、どのくらいのアルコールがあつたかということも推測できると思うのです。それからああいう飛行基地やなんかの状態から推算しましても、アルコールの量なんか分ると思いますが、そういうアルコールをどこに含んでおるか、こういうところに私は難問を持つております。ところが、いつか私或る地方を歩いていたとき、アルコールが報奨用の酒に廻つて來たなんてことがあつた。それぞれから報奨用の酒の中にどう見ても明瞭にアルコールが入つておる、こういう噂が出たりしておるわけです。こうなると我々もアルコールの行方というものに対して相当疑惑を持つのです。あのアルコールというものは少くとも昭和十六年から十九年に至る間の日本の甘露、馬鈴薯の生産量の九割くらいだと思つております。あの頃どなたも甘露、馬鈴薯は配給を殆んど受けておらなかつた甘露、馬鈴薯は殆んど食料じやなかつたのです。皆アルコール原料です。厖大アルコール日本の國内にあつた。その行方が終戰後明瞭じやないのです。大藏大臣はこれを明瞭に知つておるでしよう。話を聞けば分かると思います。それから被服類、被服類というのは各基地部隊で一定の装備というのがある。三着なら三着、その外に戰闘なら戰闘のために用意されておるものがその部隊に入る。何人に対して幾らというのは陸軍でも海軍でも実にきちんと決つておる。それだけのものは軍服でも軍靴でも地下足袋でもあるわけです。同時に食料もそこにある筈です。殊に食料は米もある筈です。それから罐詰や何かああいう保存食料、これは大藏大臣はそういうことは知らんかも知れませんが、罐詰というものの中には、稲荷ずしとかお汁粉、お赤飯、こういうものまできちんと罐詰になつて、そうして一定の動員に必要なだけはあるわけです。そういうものが一体どこに行つたか、これはちつとも明らかになつていない。ただ我々がどこに行つたかというよりも、これは見覚えのある品物だというものがブラック・マーケツトなどに折々見られる。こういうものについて政府はもつとはつきりと掴んで、そうしてこれは國家財政の中に持ち出して來るべきものじやないかと思うのです。とにかく戰争中はあれだけ世界を相手にする戰争を日本が計画したのですから、日本國民が一年くらい税金を拂わんで食えるだけの軍物資があつた筈ですが、これで大藏大臣はこの際収入が少いなんということは言わずに済む筈ですから、十分考えてお出ででありましよう
  24. 北村徳太郎

    國務大臣北村徳太郎君) 非常に御尤もな御意見だと思います。今のお話しの点について、私にははつきり分からん点もあるのであります。けれども、終戰直後の復員風景というものがよく漫画に描かれたぐらいで、前うしろに非常に大な物を背負い込んで軍隊から帰つたというような人があつて、これは当時軍で帰る人に思いやりかどうか知りませんが、毛布なんかに食料の罐詰幾ら、鍋釜まで担いで帰るというような、そういうことによつて、これは正しい処分の仕方でないと無論思いますが、さよう方法によつて非常に数多くの復員者がそれぞれ持つて帰られたというようなものも、私は全体を総合すると少なからぬ分量ではないかと思うのであります。それからもう一つは、今日いわゆる引退藏物資の問題が非常に大きく取上げられて、國民牒報制を採つて、第三者の牒報に俟つというようなことで、報奨でもやるというくらいになつておる。それでそういう点において、まあ鵜の目鷹の目でそういうものを國民全体が眼を光らしておる、そういうときでありますから、今まででも可なり出たと思いますが、今後も随分出るのじやないかと思う。これは政府も努力しなければいけませんが、政府仕事というよりも、全國民が十分に眼を光らして頂いて、どこかにありそうなものだということで検察当局も非常に活動されておりますから、段々在りかが分つて來るのじやないか。中に消えてなくなつたものもございましようけれども、これも只今お話がございましたが、十分このことには関心を持つておりますし、そういうものがどんどん出て來れば、これはもう食料の放出においても、繊維品の配給においても、非常に長い間我々は飢えておるのでありますから、そういう物が配給にもなりましようし、我々の消費生活の上にも相当な裏付けをなすことになるかも知れんと思います。又財源になるわけでありますから、大藏当局といたしましても、これは今後も尚十分に注意を拂つてつて行きたいと、かように存ずる次第であります。
  25. 池田恒雄

    池田恒雄君 幾ら質問を続けても仕様がないですが、大藏大臣は復員風景というものについて御存じでないようです。復員風景で大藏大臣は沢山物を持つて來たとおつしやいますが、あれは個人装備です。個人装備というのは一個の兵隊が持つておる装備です。個人装備、これは普通一定の服装と、それから兵隊でも行李一つは持つています。将校は三つくらいある。これが個人装備であつて、軍の倉庫の中のものではない。それは軍の思いやりとか何とかいうのではなくて、あの連中が当然持つて來るものなのです。これはちつとも不思議じやない。個人装備はどこでもある、個人が持つておる品物です。汽車に乗るときでも、船に乗るときでも、普通の兵隊は行李一個を持つておる。復員風景というのは世間の人は驚いて見たでしようが、あれは人間にくつ付いている品物です。人間にくつ付いていない主計科なら主計科の持つておるものは、それに何倍する品物が用意されておる。これがないと戰争はできない。それがどこへ打つたかと私は聞くわけです。飯盒の中の米を待つて来たということを私は聞くわけじやない。倉庫の中にあるもの、それを私は伺つておるのでありますが、それはまあよろしうございますが、今日はこれだけのことを申上げて、少し復員風景を再検討して頂くことにしなければならんと思うのです。  それは切上げまして、今度は煙草の問題、それから農業所得税についてお伺いして置きたいのでありますが、政府が今度煙草の値上げをするということになつたわけです。ところが、昨年政府が「新生」を作つて四十円にして賣つて、そうして儲けて、それで財政の足しにする、こういうお考えでおやりになつたようですが、実際はあれは失敗じやなかつたかと思うのです。失敗であるからこそ、あとで「新生」を二十円に引下げて賣られたのじやないかと思うのです。ところが、その間を見ますというと、「新生」を四十円にしましたときは実は闇煙草が跳梁した。ところが北村大藏大臣の極めて賢明な方法によつて二十円に大胆にお下げになりましたところが、闇煙草は殆んど大都市面では終熄したといつてよい程なくつてしまつた。実にこの点では大藏大臣の功績大なるものがあると十分敬意 を表するのやありますが、再び大藏大臣は煙草の値上げをやる。私はこういうことをやると又大藏大臣は闇に追つ掛けられると思うのです。これは明らかなことじやないかと思います。そうして大藏大臣は煙草の値上げによつて九百億くらいの金を儲けよう、こういうわけなんですが、ところが、予定が外れて六百億くらいになるのじやないかと思うのです。若し「新生」の失敗を繰返して本年度の煙草収入が六百億くらいにしかならないとすれば、むしろ上げない方がよいと思う。上げなくても六百億くらいの収入はあるだろうと思う。同時に私は闇煙草をもう少し抑えるためには、前に「新生」を値下げされたと同じような工合に、大衆向けの煙草をもつと多く、安い價格でお賣りにならなければならないのじやないか、そうでないと、儲けようと思つた煙草が結局賣れなくて、そうして闇煙草の方に行つて大藏大臣のところに入る金は闇屋さんの方に入つてしまう。こういうことになりはせんかと思うのですが、やはり上げた方が儲かるというお考えなんですか。
  26. 北村徳太郎

    國務大臣北村徳太郎君) 「新生」はお話通り結果から見て確かに失敗でありました。それがために値下げをした、こういうわけなのであります。それで安くて供給量が増せば闇はなくなる、これは当然でありまして、從つてどうして供給量を増すかということが大きな問題になると思うのであります。ところが、御承知通り今、日本財政を支えておるものは何かと申しますと、税と專賣益金である。專賣益金とは何であるかといえば煙草なのです。税と煙草で日本財政の大事なところを支えておる。こういう恰好になつておる。從つてそれ程大事なものならば、もう少し供給量を増したらどうかということが問題になつて來る。ですから物の値段を高くせずして、量の方で多くのものを賣つたらどうだ、こういうことになると思うのですが、これは一方の葉煙草を栽培するためには、食糧を増産すべき重要な田地田畑がそれに充てられるというような点がございますので、おのずから制約がある。現在は大体五万町歩くらいを限度としておると思うのでありますが、これ以上になりますと、食糧政策とどうも矛盾を來すというような点に止むを得ざる制約を持つておる。その範囲でこれをやらなければなりませんので、一面供給量を増すということになりますと、比較的安い優秀な葉煙草をどこからか見付けて輸入するという手が一つある。そのよう方面につきましても関係方面に相談をしたこともあるのであります。只今これは実現が困難でありまして、思うように参りません。それで今の現状では、闇煙草が出るということは、結局その耕作されておる葉煙草が流れるのである。その他もあるかも知れませんが、葉煙草が流れるということが闇煙草の原因である。それで余りこれはどうも賢明な方法でないかも知れませんが、今までやつたことがある方法で、葉煙草の闇に流れるのを防止する方法として、從來は目方で行つたのですけれども、葉の枚数を数える、そうしてそれをちやんと帳面につけて、耕作者のこの田畑では結局何枚できるというようなことまで、葉数登録と申しておりますが、葉つぱの数を数えて、これを登録するというよう方法を今度採りまして、それで横流れを大体防止できるのじやないかというよう考えておるのであります。さよう方法で、今までは多分一割ぐらいが煙草の場合流れておつたのじやないか、それにいろいろ手を加えて、私設專賣局というな言葉で呼ばれるようにまでなつてつたが、今度はそういうことで防止するという方法を講じたい。かよう考えておるのでありまして、從つて將來は十分量を増して、そうして供給量を多くして、値段の方は安くするというよう一般方針、これはそういう方針で行きたいと思いますが、差当り今回は品物一つ毎に開きを十円ぐらいにして、これならばやれるというようなことで、多年そのことを扱つて参りました者がいろいろ額をあつめて協議したのでありますが、これならやれるというので、現存予算に上つております額は大体確保し得るというような自信を持つておるのであります。
  27. 池田恒雄

    池田恒雄君 十円上げると、結局闇が五割追つ掛けるということになる。「新生」は二十円に下げたのですが、下げたままの方がもつと大藏省の懐ろはよくなると思うのですがね。闇煙草を一枚ずつ数えて抑えるというのですが、これはそんなことをやつた人件費がたまらない。三千七百円ずつその連中にやつたら、大藏省の連中は痩せますわ。一枚ずつ数えるのでしよう、大変です、これは。それはできないことだと思うのですね。それから闇煙草は一割ぐらい畑から流れているという見方は、大体共通しておる見方だと思うのですが、これは決して優秀品じやありませんから、その私設專賣局で出て來たものは都会へは向かないのです。都会に闇煙草があるとすれば、それ以外のところから出るのじやないかと我々はむしろ考えておる。その一割は或る程度畑から流れる、そうでない方面からも流れると言うと、我々は大藏大臣のお膝元を疑いたくなる。そういうものは相当ありやせんかと思う。そういうものが煙草の値上げをすればする程出て來ると、こういうことになるのです。だから値上けして、一方において大藏大臣は自分の膝元から闇煙草を流すような結果になりやせんかということになるわけですね。それから生産を殖やすというようなことによつて、いろいろ安い煙草を増配して行くというのが、一般方針だとおつしやいますがね、生産量は——面積はうんと殖えております。昔から比べたら、もう比較にならない程煙草の作付反別は殖えておるだろうと思う。にも拘わらず、ああいうふうにぐつと生産量が減つておるというのは、肥料がないためではないかと思う。むしろ大藏省は煙草で儲けるために食糧を生産すべき産地を圧迫しておる。そうして煙草は或る品物よりは利益がいい場合もある。そういうようなことで圧迫しておるのじやないか。その点は大藏省自身が煙草の葉つぱばかり数えるのじやなく、もう少し他の枚数も数え、肥料ならば肥料というものをどうこうするということを考えなければならないと思う。あのまま行つたら、殊に煙草を高くして、煙草をどんどん値上げして行つて、そうして農家に煙草の作付を煽つて行くと、むしろ煙草のために外の作物が圧迫される、こういうことになるのです。それは煙草を闇で賣る余地があるからということにもなる。だからこの点は、ただ枚数ばかり数えるというんじやまずかろう、肥料問題なんか解決して行つて、煙草の作付面積を縮小することを考えなければならん。このことは私先日或る雹害地帯に参りましたところが、雹が降つて煙草が目茶苦茶にやられた。これは農業そのものから申しますと、この煙草を全部賣拂つて、別のものを植えた方がいいのです。土地の利用からいうと……。そういうふうになる。ところが、農家の方じやそれをやつておらん。どうしてやつておらんかというと、大藏省の方が数えに來るまで待つておらなければならん。そうして大藏省の人が数えに來るまで待つておらなければならんということになると、次の作物が時期が遅れてやれなくなる。そうすると大藏省は煙草の生産に関する限りは、本当に食糧生産と衝突して、煙草の増産にはならないのではないかと思う。且つそういうことをやると、幾ら枚数を数えたつて、闇煙草が畑から流れるところの一つの非常にいいことになるんじやないかと思うので、肥料問題なんかについて、どういうふうに対策されておるんですかね。それからもう一つ雹害、なんかになつた場合、どうしてああいうふうに、煙草さえ採れればいい、又様芽を出して來て何とかなるだろうというような態度で置くものですかね。ああいうところは非常に迷惑なことだろうと思う。
  28. 北村徳太郎

    國務大臣北村徳太郎君) 今の御質問、前に申上げましたように、私は食糧政策の観点から、煙草の耕作というものは、如何に政府財政上の必要があつても、おのずから制約されるとい うことは申上げた通りでありまして、そのことをいつでも見ながら、食糧政策の上に影響を與えない限りにおいて、日本においてどれだけ煙草の耕作ができるかということの制約を受けてやつておるのでありまして、どんなに殖えても五万町歩以上は困難である、こういうふうに考えておるのであります。從つて限られた耕作面積で増産するということになれば、お話のごとく肥料の問題になるわけであります。幸いに最近肥料の増産ができておるようでありますから、これは恐らく……主食程じやないかも知れませんけれども、主食に割当てるものに次いで相当な割当を受けるんじやないか、かよう考えておりますから、只今お話しのような意味で若干の増産が期待できる、かよう考えております。それから枚数のことは、まあ枚数ばかりでやるわけじやないのでありますけれども、今までこれを無視しておつたので、それがために相当横流れがあつたので、これはこれとして暫くやつて見たい、これからの横流れを防ぐためには、一つの必要な手段である。かよう考えておるのであります。それから全体として供給量を増すということは、どうしてもやらなければならんことでありますけれども、只今申上げた制約がありますから、その範囲において政府專賣としての煙草の収益を挙げたい、こういう考え方をしておるのでありまして、闇の問題につきましては、これは全國煙草の耕作者並びに煙草の小賣業者は非常に数多いものでございますが、これらの人々が幸いに闇撲滅への非常に力強い團結をして頂きまして、各地それぞれそういう人達が非常に協力して呉れまして、これが漸次成績を挙げておりますので、この耕作者並びに小賣人團体に対して、そういう自発的な闇撲滅運動が將來一層効果を挙げるであろう、それと政府が少し頑張りまして、そういうものをなくするために努力するということによつて、今よりは確かに改善される、こういうことを信じておるわけであります。
  29. 池田恒雄

    池田恒雄君 配給煙草を増すということはできないのですか。
  30. 北村徳太郎

    國務大臣北村徳太郎君) 只今考えておりますことは、増す場合には、これから配給煙草は増したい。配給煙草は増すようにいたしたい、これはさよう考えております。
  31. 島村軍次

    ○島村軍次君 大藏大臣にお伺いする前に、一應委員長を通じて政府当局に希望を申上げたいと思います。予算審議に当りましては、財政法第二十八條の規定によつて資料を提出することになつておりますが、その資料が極めて不十分でありまして、予算審議をする場合における参考資料が極めて不十分でありますから、委員長からこれらの問題が断片的に出て來ることを止めて、大体一括して、そうして分り易く提出されるよう方法を、委員長から特に政府当局へ嚴談をお願いしたい。これは大藏省に最も関係の深い事項でありますので、若しそれに関して大藏大臣に何か只今御意見がありましたら一應承つて置きたい。  続いて行政整理の問題につきまして、先般來数回に亘つて論議が戰わされましたが、私は大藏省で提出されておりまする資料によつて見まするというと、各省別の人員と、前年度予算に比して、予算定員表を見ますると、漸次増加する傾向になつております。例えば前年度の予算の総定員数が一般会計において四十二万幾らであつたものが、二十四年の三月の予定は四十七万幾ら、こういう数字になつております。これに関しましては、先般來同僚議員からの質問に対する答弁は、行政整理をする前の定員のような御答弁があつたのでありますが、然らば四十二万七百二十四人に対して、整理すべき人員が幾らである、而して今度の増員すべき定員がどうである、こういうはつきりした数字資料として提供さるべきものであると思うのであります。これはただ一面、一部分を提示されたに過ぎないと思うのであります。そういう関係がどういうふうになつておりますか。尚特別会計に対する資料は出ておりません。又一般会計中においても事業費に計上されておる数字も相当あると思うのでありまして、でき得るならば、……、でき得るならばではありません。予算審議上行政整理の問題は極めて重要な問題で、國会において取上げられておるこの際でありまするから、予算面に現われましたる現在の数と、そうしてそれから行政整理をすべき各省別及び事業別の人員、そうして將來増加すべきものは各種目別にどう、こういうことをはつきり示さるべきものであると思うのであります。尚特別会計においても同様でありまして、本日参議院の本会議において決議になりました出先官廳整理等に関しましても、政府の提出した資料が不十分であるのみならず、総理大臣の御説明は極めて簡単過ぎて要領を得ないと思うのであります。これは別問題でありますが、只今の行政整理に対する大体の見込み及びその資料等について一應大藏大臣の御所見を承つて見たい。
  32. 北村徳太郎

    國務大臣北村徳太郎君) 先ず第一に最初にお話の出ておりました資料の点でありますが、これはまあ大変遅れて相済まんのでありますけれども、只今印刷能力を大いに発揮させまして、非常に急がしておるのでありますが、まだ全体といたしますと非常に数が多いものでありますから、印刷ができない、こういう状態なのであります。できるだけ早く完全な資料を提出いたしまして御審議を煩わしたい、かように思つております。  それから行政整理のことでありますが、只今提出いたしております人員の予算定員表等は、これは全然行政整理を予想せざる現実の表でありまして、從つて現状のままで行くことを前提とした表でございます。これをどう整理するかという問題は、行政機構全般に亘る行政整理ということを考えなければなりませんので、これに対するまだ具体案を提出するところまで参つておりませんが、一應現在の事実を数に現わしてお手許に出したのであります。ただかような場合に行政機構の整理というものができ上つて、行政機構を変えて、その結果人員が幾ら減るかということをやつておりましたのでは、予算には到底間に合わないというので、先ず財政の面から仮に一應人件費の一割を天引きするということを、大藏当局としてはさような処置をとりまして、人件比一割を引いた、本当の行政処理は何もそういうことで無論できると思つておりませんし、又片山内閣時代に現在の予算定員の二割五分を減少するというようなことを一應閣議で決めたのでございますけれども、これも二割五分を機械的に決めるよりは、もう少しやはり機構そのものを刷新して能率化するよう方面考えなければならんというようなことで、さような機械的な考え方でなく、もつと根本的に考え直そうじやないかということから、行政機構改革審議会にお諮りいたしまして、いろいろ御檢討願つております。その中に結果の分つたものもございますし、今結果の現われて來ないものもあるのでありますが、そういうものを基礎にいたしまして極めて具体的な行政改革案を出したい、かようなことで只今そういう審議を進めて頂いておるわけであります。これはやはり余り遠くないうちに、相当具体的な資料を以てお諮りいたすことができると思うのでありますが、さような実情にあることを一つ御了承願いたいと思います。  それから人員のことでございますが、これは当然國家財政の見地から申しましても相当な財政的な圧縮をしなければなりませんので、從つて人件費においてもこれを十分減らすよう方法をとらなければならんということはお説の通りでありまして、渉外関係とか或いは新たな梅上保安の問題とか、その他経済秩序確立のために必要な人員というような、段々かような時代的な一つ関係を持つてつて來たものもあり、全体として見るというと、誠に矛盾した結果が現われておるのでありまして、この点は削るべきものは削り、止むを得ずこれをやることが必要と思うものは、殖やすべきものは殖やすというような体制で、前に考えた何でもかでも二割五分減らそうというよう考え方は変えて、全体の能率を考えつつ人減らしをしたい、こういうよう方針で進めておるのでありますけれども、只今具体的資料を以て御答弁申上げるところまで参りかねておるという点を御了承願いたいと思います。ただ私共といたしましては、どうしても今いろいろ御審議願いつつある相当軽からざる租税の負担國民に願い、その他いろいろの点から考えまして、財政を圧縮しなければならんということは非常に痛感いたしておるのでありまして、從つて行政整理に対しても財政圧縮の観点から申しまして、これは是非相当なところを圧縮いたしたい、かよう考えておる次第であります。
  33. 島村軍次

    ○島村軍次君 財政法二十八條の規定による資料の提出は、会期は最早一週間でありますが、今印刷中ということでありますが、間に合わないと思います。この点に対して大藏大臣はどうお考えになつておりますか、重ねてお伺いいたします。
  34. 東條猛猪

    政府委員(東條猛猪君) 財政法第二十八條の規定によります附属書類は非常に廣汎に亘つておるのでありますが、その大部分は今議会中に是非提出申上げたい、又それによつて審議願わなければならんと思いまして、目下鋭意督促中でございます。そのうち予定経費要求書は印刷いたしました暁、相当厖大な数量に相成るのでありますが、この分につきましては誠に恐縮でございまするが、場合によりましては、会期中に間に合わないかも知れません。かように思う次第であけます。
  35. 島村軍次

    ○島村軍次君 事務的の経過はそれで分りましたが、然らば資料の整わない場合におきましては、國会として資料の提出なくして審議をするということは不可能ではないかと思いますが、そういう場合においては、予算審議ができないという結果に陷る場合における大藏大臣責任はどうお考えになつておりますか。一應承りたいと思います。
  36. 北村徳太郎

    國務大臣北村徳太郎君) これは只今政府委員から申上げましたような事情でございまして、成るべく早く出さねば相成らんというので、日夜非常に督励をいたしておりますけれども、浩瀚なものでありまして、現在の印刷能力を以てしてはなかなか思うように参りませんので甚だ残念に存じております。ただこの委員会その他において、資料として私共が十分に御覽頂けるようなものの原本は持つておるのでありまして、從つて質問に應じて御説明申上げる、或いは一般的な細かいところについて御説明申上げることはできるのでありますけれども、お手許に一々届けるというところまで相成りかねる点は只今申上げた通りで、印刷能力等の関係で、殊に非常に会期が迫つて予算を提出するということになつたものでありますから、この点は甚だ遺憾に存じておる次第でございます。ただこの提出すべき資料の、何といいますか、原本は私共の手許にございますので、これに基いて御説明は如何ようにもいたしますし、又御審議を願うに必要なるこの御説明等はもとより十分いたすつもりでおりまして、成るだけ早く提出はいたしますが、暫く御猶予を願いたい、かように思う次第であります。
  37. 島村軍次

    ○島村軍次君 責任程度が明らかになりませんけれども、この問題に対する質問は一應これで打切ります。  次に、只今御答弁になりました行政整理に関します人員の問題でありますが、この表を見ますと、一般会計だけについても五万人増加するということになつている。ところが、この五万人の人間の増加の、只今一例としてお話になりました、いろいろの仕事に対する人員増加のその内訳は、これは予算審議の上に極めて重要な事項としての関係を待つものでありまするので、この費目別の細別を御提出をお願いいたしたいと思います。尚、同様に特別会計においても、さようにお願いいたしたいと思います。尚この総予算三千九百億の中ですね、本年度の予算を通覽いたしますというと、政府の今回の施政方針演説なり、大藏大臣財政演説によりますと、堂々とこのインフレ防止に関する説明があつたのでありまするけれども、而してその内容は、一に生産増強に係つておるということを示されております。併し果してこの予算の中に、どれだけの生産増強の予算が計上されておるか。私は先般の公聽会等から見ましても、極めて微々たるものであつて、殆んど人件費というものに追われておるというような感じがいたしますが、全体の三千九百億のうち、いわゆる事業費及び一般経費を通じて、人件的性質を有するものが幾らありますか、パーセンテージにおいても、分ればお知らせを願いたい。
  38. 北村徳太郎

    國務大臣北村徳太郎君) これは、実は今の財政の編成、予算の編成の方針から申しまして、この予算の中に生産性のあるものは幾らということは、計算して出すことはやや困難であります。と申しますのは、これは文部省の経費の中にも、それから商工省、農林省の経費の中にも、その経費自体の中に含む産業への働き掛けというものが相当あるのでありまして、これを拾い出して合計いたしますと、大体生産性がどれくらいということは分ると思いますけれども、見方によりまして、例えば價格調整費も、これは日本の生産増強への一つの大きな働きであるというような見方もできるのでありまして、かよう財政力を以てして、企業赤字をカバーしながら、生産増強への一歩を進ませるというような点から申しますと、五百十五億の價格調整費は、これはやはり生産増強への一歩であるという観点に立つこともできると思います。公共事業費につきましても、これは農業の再生産への一つの準備である点が非常に多い。戰災、災害等によつて壊された生産破壊の回復を意図するものが相当沢山あるから、これらの中にも、生産性のあるもの、そう目すべきものが相当あると考えるのであります。さようなことは観点によつて考え方が違つて参るのでありますけれども、公共事業費だけについても、前予算、昨年は六%何がしであつたが、今回は一一%強になつておるということも、又これはいろいろの意味において、生産性のものが殖えておるということが言えると思うのでありますし、大体政府の行政費というものは、これはどこの國でも御承知通り人件費が可なりの部分を占めるということ、これは中央政府の止むを得ざる一つ方法でありますが、その人件費が、人間の活動は種々の方面から生産への働き掛けをしておるということから、生産性の費用であるということも言い得ると思います。人件費であるから消耗費であるという考え方もできないので、從つて政府の現わした予算において、一体どれだけの比率が生産性の費用であるか、そのパーセンテージはなかなか困難であると思いますが、私共は予算の全体を通じてこれを動かしながら、又全体の人員の働きを通じて、成るべく生産性へ動かすようにしながら、こういうことによつて生産増強への道を辿りたいと考えております。
  39. 島村軍次

    ○島村軍次君 お説教は有難うございました。こういうことは私もよく存じております。私のお聞きいたしたいのは、大体の概数が、三千九百億の中で人件費に相当すべきものが幾らと、そうしてこの中で、本年度新たに増員をする、行政費の増額すべき見込のものが、概数において幾らということを、いずれ大藏当局においてお調べになつていることと思いますが、その点をお聞きいたしたいと思います。尚附加えて大藏大臣にお伺いいたしたいと存じますのは、本予算数字で拝見いたしますと、一例を採つて考えて見ますれば、終戰処理費は約一千億、これらの費用は來年度におきましては凡そどの程度の節減をなし得るか。或いは又價格調整費において、仮にインフレの安定が或る程度まで政府の予定されている通りであるとするならば、どういうふうな程度になるのか。或いは又この農地改革費のごときものは、これは当然本年度において完了すべきものと思うのであります。少くとも國の財政におきましては、平時においては財政計画というものがなければならないと思います。このインフレ下におきましては財政計画がなかなか立ちにくいことはよく存じておりますが、凡そ來年度において不要額として予想し得るものが幾ら、何%ぐらい、又継続的に増額すべきものが凡そ幾らぐらいという、概数的な数字も、これは当然この予算編成の時分にはお考えになつてつたことと思うのであります。その点に対して御所見が承つて見たいと思うのであります。何となれば、これを申上げるということは、只今申上げましたことと関連を持つわけでありまして、本年度のこの財政演説において強調されました生産増強というものは、災害復旧は、それは考え方によれば生産増強の一部であろうと思うのでありますが、さような意味ではなくして、これを食糧の一割増産について考えて見ましても、政府はこの一割増産に対して一件どれだけの予算面において施策を、大藏大臣のいわゆる生産増強に費したということは殆んど出ていない。我々農村の関係から申しますると、農林省頼むに足らず、大藏省大藏大臣にしてやられたというようなことさえ聞くのであります。で、口に政府は食糧の問題と衣料の問題と住宅の問題とが解決すれば……、我々もそう思つております。そのうちで食糧の問題が一番重要な問題だと思うのでありますが、食糧増産に関する施設は殆んどここのちに現われていない。一割増産は何によつてやるかというようなことを突つ込みますというと、予算上に現われた数量は殆んど出ていないと申上げて差支ないと思うのであります。そこで本年度において終熄すべきもの及び來年度において増嵩すべきものと凡その見込みが立つた上で、そして本年度の予算編成をし、而も生産増強にどういう重点を置いてこれを計画すべきかということが当然出て來ねばならんと思うのでありますが、その点に対する御説明を煩わしたいと思うのであります。
  40. 北村徳太郎

    國務大臣北村徳太郎君) 御尤もな御質問でありますが、大体今日のようなインフレ下にありましては、年間を通じて予算を或る見通しの下に作るということは非常に困難であつて、まあややもすれば狂いを生じやすいというような点は、私共痛感しておるのであります。從いましてこのこと自体が相当困難な仕事であると思うのでありますが、併し一應これで年間の予算を編成いたしまして、これでやつて行けるというよう一つ自信の下に御審議を願つたのでありますが、さてその内訳の中で終戰処理費は來年はどうなるかというような第一に御質問であつたと思うのでありますが、これは実は特に終戰処理費というものがなかなか私共だけで策定をいたしておることでございませんだけに、來年度は減るか殖えるかということはここでちよつと申上げにくい。我々としてはこれが段々まあ減るということに期待を掛けておりますし、又今までの傾向から申しますると、新らしい設営が減りまして維持管理費の占める部分が殖えておる、かような傾向を來年も迫るであろう、かような傾向が一層顯著になるだろう、そういう期待を持つておるのであります。全体としてということに相成りますと、これはなかなか難しい問題でございまして、ここで恣に私共の推測だけで申上げても、これは的確な点に触れにくい点も、あると思うのであります。それで問題はつまり現下のインフレーシヨンがその速度を緩めて、どの程度緩慢化し得るかということと、それから來る生産への一つ増強というものがどういうふうになつて來るかということが、來るべき年への見込みの一つの大きな因子になる、かよう考えるわけでありますが、これらにつきましては、先頃財政について所見を申しました際に申述べましたので、これは時間をとることを惧れますが故に、それで一應御了承願いたいと思うのであります。  なおいろいろ話が出ておりましたのでありますが、今までのところ止むを得ず、乏しい資材と乏しい資金を以て、非常に超重点的な傾斜生産等を行なつてつたのであります。これは当分止むを得ないと思いますけれども、漸次日本の経済機構が或る一角、他の一角と次第に回復して参りますというと、さような無理をすることなしに、関連産業、予備生産というようなものが漸次充実して参りますと、傾斜生産というような犠牲の多いよう方法がなくなつて來て、そのことから割合に早く生産が回復するのではないか。今は一割の生産を増すために外で可なりな犠牲を拂つておるというような傾斜生産方式を採つておるのでありますけれども、これがおのずからこの傾斜度が変つて來て、全般的になつて來ると、速度がやや早くなつて來る、そういう期待を持ちまして、例えば、お話が出ておりましたけれども、食糧は大事である、從つて日本のインフレーシヨンの非常に大きな原因をなしておるものは食糧でありますが、これも前途の見通しといたしまして本日発表になりましたような事情もございまして、端境期もこれで十分乗切れるというような安心ができるようになつて参りましたし、その他それらのことから漸次我々の消費材の供給量というものが増して來る傾向がある。これによつて割合に心理的には安心が與えられて、次第にさような面から賃金物價等の悪循環を断ち切る方向への望みが持てる、この際努力次第だ、かよう考えを持つておるわけであります。これらのこと基本といたしまして、インフレーシヨンの緩慢化ということを考えて参り、又今の増産が漸次具体化して参りますと、これに基いて少し樂になつて來るんじやないかという観点から、物價の上昇線を押えることが或る点までできる。こういうふうに考えておるのでございますけれども、さて來年度はどういうもので、どれくらい減るかというような、非常に具体的な御質問になりますと、只今十分お答えを申上げる資料はございませんので、残念ながらこれは他の機会に一つさして頂きたい、こう存ずる次第でございます。
  41. 島村軍次

    ○島村軍次君 不用額、來年度で減額すべき予定では示さないということでありましたが、それは更に細かい問題をお聞きするとき保留したいと思うのでありますけれども、この予算説明にあります中に、農地改革費の点に対しては大藏大臣にどう考えておりますか。それからなお地方警察費の國庫負担が暫定的な措置が採られておりますが、これは將來に対しては相当減額するものと認められるのでありますが、その点に対して凡そどの程度……。それから同胞引揚費の費用は、この説明によりますと、本年度末中には完了するものとしての計算であるようでありますから、こういうものは本年度限りにおいて大部分費用がなくなる、つまり來年度においては相当の数字が不用額として、或いは又來年度予算編成に当つては、これらの数字一つ数字として予算編成に浮び上つて來る、こう解してよいかどうか。それから大藏省預金部の方への政府事業再建費という立派な名目でありますが、大藏省預金部は國民の零細なる資金を集めて、これを地方へ運用しておる。その利息の収入に対しての、これを取扱う人件費が不足するために、年度内において四十五億七千九百万円の歳入欠陷が出るとありますが、大藏省は一面においては貯蓄の奨励を大凡目標をお立てになつて從つて預金部の方の収入は相当入るべきものと思うのでありますが、これらに対してはどういうお見通しをお持ちになつておりますか。要するに結局繰入金をなくして済むような時期は近い中に來るものと認められるのでありますが、これに対する御所見はどうか。
  42. 北村徳太郎

    國務大臣北村徳太郎君) 第一点の農地改革等の費用のことでありますが、これは今やつておることが完了いたしますと、一應大体これで終るのではないか、かよう考えておりますので、來年度は恐らく非常に減るのではないか、こういう見通しを持つております。それからその他の分につきましては、これは可なり細かい事務的な点が多いようでございますから、勝手ながら政府委員より答弁させたいと思います。
  43. 東條猛猪

    政府委員(東條猛猪君) お尋ねの第二点は、地方警察費國庫負担金の点だと思いますが、御承知ように國家地 方警察と自治体警察に分れておりまして、本年度の予算に計上いたしておりますのは、本年の六月までの暫定的な経費でございまして、七月以降は地方の自治体警察の費用地方の方で賄い、その財源は別途分與税その他の方法によつて供給いたすのであります。國の予算といたしましては、從いまして明年度におきましては、ここにございます地方警察費國庫負担金という形式では出て参らない、かように御了承願いたいと思います。  それから預金部の問題でございます。仰せの通り大藏省といたしましては、貯蓄の増強を十分いろいろ努力しておりまして、この貯蓄の増強が所期の成果を収めますれば、運用資金も相当殖えて参ります。又一面現在の預金部の運用の利廻りが、相当多額の國債等を持つておる関係上、利廻りは相当低いのであります。これらの点を何とか改善をいたして参りたい。これに携つております職員の、これは御承知ように郵便関係の方でこの事務はやつておりますが、その能率を挙げて貰うこと等も十分逓信省とも相談いたしておりますが、人件費の増嵩は止むを得ないということになつておりまして、四十五億の厖大な繰入超過となつております。これは今後の貯蓄の増加、今申しました労務の経費の削減、能率の高揚、又運用資産の利廻りの増嵩等を図りまして、この預金部の収支の改善をして、何とか一般会計負担を軽からしめたいというふうに、実は只今鋭意研究中でございます。本年度といたしましては、ここに計上いたしました程度の金は止むを得ませんし、又或る程度明年度におきましても、現在いろいろ考えておりますことが実を結びませんと、相当額の一般会計からの繰入は現在の情勢としては止むを得ないのではないかと、かように存じております。
  44. 岡本愛祐

    ○岡本愛祐君 只今島村委員から警察費のことにつきまして御質問があつたのであります。それに関連しまして、大藏大臣がおられますから、大藏大臣の御所見を承つて置きたいと思います。それは一昨日野溝國務大臣質問をいたしたのでありますが、その際野溝國務大臣からはよう答弁がおできにならなかつたのであります。それで大藏大臣に御答弁を願うということに委員長に申上げて置いたのであります。それはこの地方財政、二十三年度におきまして千九百九十四億にも上る地方財政、これは地方分権、地方の民主化を促進せしめる上におきまして、地方財政の基礎を速かに確立しなければならない、これは当然なことでありまして、それで政府においても彈力性のある地方財源を付與いたしまして、地方財政の基礎を一日も早く確立させることに努力するというふうなことが、この予算の説明にも出ておるのであります。ところが、本年度の地方財政の問題に関しまして、地方財政委員会におきまして、大藏省地方から出ております市の代表の神戸委員、府縣の代表の安井委員、町村の代表の生田委員、この三委員と意見が合いません。それで三委員は皆辞任をしたのであります。五人の中で三委員が、地方から出ております三委員が辞任をしまして、残るは野溝國務大臣と、それから衆議院議員から出ている委員の方と二人になつてしまつたのであります。しかのみならず、本会議では野溝國務大臣が答弁に当りまして、この地方財政の確立について暗に大藏当局の無理解を非難いたしたような口吻でお話がありました。又野溝國務大臣のこの委員会の説明におきましても、まだ十分には地方財政の基礎は確立してはおりませんということをはつきり一昨日御答弁をなすつたのであります。そこでそうなりますと、只今問題になりました警察費の問題が出て参るのであります。これは御承知通り警察法の附則の第八條に「市町村警察に要する費用は、地方自治財政が、確立される時まで、政令の定めるところにより國庫及び都道府縣がこれを負担する。」と明らかに規定されているのであります。これは法律が、つまり國会が地方財政負担を思いまして、地方財政負担を少しでも軽くする意味におきまして、地方財政に彈力性ある財源ができますまでは、つまり地方財政の基礎が確立いたしますまでは、從前通りこの自治体警察についても國庫から補助をするということを國会が決めたのであります。ところが、その責任に当ります野溝國務大臣からは、まだ地方財政の基礎は確立しておらないということをこの席上において明らかに御答弁なすつた。それでは法律違反になるじやないか。今申されたように六月十五日以前の地方自治体の経費地方警察の経費しかこの予算には盛られてない。六月十六日からの地方自治体警察の予算というものは全然見ていないということになりますと、地方財政の基礎が確立されない以上は、やはり從前通り國庫が負担をしなければならない。そういうふうに法律が命じてありますのに、政府はその法律を破つて、この予算にその費用を計上されてないということになるのであります。これは消防についても同様であります。消防についても同じような條文が消防組織法、これも第一國会で議決を見た法律でありますが、消防組織法第三十二條に同様のことがございます。地方財政の基礎が確立するまでは、自治体消防の費用というものは、從前通り國庫が負担しなければならないということを命じてあるのであります。これに対してこの予算におきまして、六月十六日以降の九ケ月半の経費を計上されなかつた理由をお伺いします。
  45. 北村徳太郎

    國務大臣北村徳太郎君) お答えいたします。大体この國家財政地方財政との調和ということは、実は今の財政全体の窮乏の中で誠にむずかしい問題でございまして、我々が中央において健全財政と申しながら、地方が健全財政でないならば、これは健全財政がそこから破綻するときでもございますし、中央の健全性と地方の健全性とが併せ実行されるということをいつも狙いとして行かなければならぬということは基本的な方針でございます。ただ問題は新しい制度が随分沢山できましたことと、これに対する財政力との調整というものが、更にこれは相当重要な問題として考えられなければならぬ点であつたかと思うのであります。例えば六・三制が今のところで経費その他のことから随分地方の方に大きな負担になつている。それがために父兄は負担に堪えんと言わなければならん。或いは市町村長の中で、そういうことを理由にしてお辞めになつた方もあつたように聞いているのでありますが、やらねばならぬことであつて、而も財政力とうまく調和がとりにくいというような問題が多々起つておるのでありますが、これはたまたま新しい制度を実行しなければならないときに、たまたま又財政の非常に窮乏なときであつたという矛盾が多くのことに起つて現われているのだろうと思う。私共といたしましては、地方財政を決して地方地方で勝手にやれというよう考えは毛頭持つておりませんし、当然我々の負担し得る限りは地方財政ために努力をし、又必要なものをこちらの方から出すというようなことはやらなければならんと考えているのでありまして、今回も間に合いませんでしたために、後から補正的な手続をとることを決定いたしておりますけれども、入場税を地方に移譲するということも実行したいと考え只今手続をしているのであります。かような点もあるのでございまして、ただ國民全体の——今日もここでも問題になつたかと思うのでありますが、全体の立場から、例えば地方負担と中央の負担とが総合された場合に非常に重い負担になる。かようなことをどこで一体調節するのかという問題が現にあつた。それからこれは今のところ地方財政委員会そのものの中にも、まだ出発当初でありまして、尚熟せざる部分があるのじやないかと考えるのでありますが、歳入の欠陷については、これは中央の責任で、これだけは中央で負担するということになつている。歳出の調整についてはいわゆる地方の自主性ということがございまして、その点に日本全体の関連性というものをうまく持つて、全視野から眺めて行くということは大変困難になつている。これらの点は今後いろいろ御相談をいたしまして、漸次改善をいたさんければならんと考えているのでありまして、何と申しましても財政の窮乏している中でいろいろ無理をやつている。又地方においても中央以上にお困りになつているという点は分るのでありまして、個々の場合に、或いは金融的な操作によつて一應の地方の急場をお凌ぎになるようなことも数多やつたこともあるのでありまして、先程問題になりました預金部の資金のこともこれは原則として地方に還元するというようなことでやつておりまして、今後も勿論地方に還元する、中央でこれを使うというよりも地方に還元するというよう方法で、地方の金融の途に貢献をいたしたいと存じておりまするし、その他、地方ために今後尚独立の財源として地方に確保すべきものについては、これは漸次地方ために必要な手続をとるということも考えているのでありまして、只今お話の出ました警察費或いは消防費等につきましては、これは一應今年度はこの程度でやつて貰えるものと、かよう考えを以て今回の予算には計上いたさなかつたのでありますが、消防費並びに警察費の欠陷だけではなくして、現在地方には相当大きな欠陷を持つている。中央の持つているのと同じ欠陷を持つている。これらの点に総合的に研究しなければならん点が相当多いのでありまして、今後これは地方財政委員会等と一層密接な関係を持ちまして檢討したい。中央が地方に対してお手傳えができる限度は、一体どういうところまで持つて行けるかというようなことを十分檢討したい。これは私は單なる法律問題でなく、実際問題として地方財政の前途を考え、又中央の財政の現下の実情等と睨み合せまして御檢討願わなければならんと思います。只今具体的に出ました問題につきましては、これは私は卒直に申上げて、御指摘なつた法文などは讀んでおりませんでしたので、これについては尚十分檢討しました上でお答えを申上げます。
  46. 島村軍次

    ○島村軍次君 私も地方財政に関連してお尋ねをいたしたいのであります。只今岡本議員の御質問の点は省略いたしますが、ここで併せて承つて置きたいと思いますのは、この間野溝國務大臣の説明によりますと、地方の税制改革の結果、事業税の新設が行われるようでありますが、これに対して或いは前回にどなたからか御質疑があつたかと思いますけれども、事業税の新設の限界と、それからの免税点をどういう点に置くかということは、これは無論地方税になるのでありましようけれども、大体の枠を、地方及び國を通じての税制体系から申しまして方針をお立てになるであろうと思いますが、その点に対して伺つてみたいと思います。  それから序でに、大藏大臣が御出席中に是非伺つて置きたいと考えますのは、今農林省が考えておりまする農林金融の問題で、復金のごときものを作るか、或いは中金のようなものに行わしめるかということは、これは至急に解決すべきものと思います。本会議中において、大藏省としてもこの問題を積極的に取上げて解決する熱意が欲しいと思います。この見通し並びに大藏大臣の御所見を併せて承りたいと思う。  それからいま一つは專賣については煙草はいつも問題になりますが、塩も大きな重要な問題があるのであります。ご承知通り戰時中大藏省の慫慂によつて多数の自給製塩をやつてつた。ところが、最近になりまして、この自給製塩は專業製塩に轉換せしめる。その結果、整備計画を立てて自給製塩を大部分整理して行く、こういうようなお考えの下に委員会をお作りになつておられます。その委員会は設立後数ケ月間も開かれておりまするが、大藏省でその委員会の審議を経られることはいいのでありますが、事業経営者は毎日その結果を首を長くして待つております。然るにこの委員会は遅々として進まない。而もこれは大藏省行つて聞きますと、委員会に委せておるのだということで、とんと運ばないのであります。一面におきましては赤字を以てこれを補つて、整備計画が如何になるかということに対しては、自給製塩業者は非常な犠牲を拂つておるわけであります。設立当時は大藏省から補助を出されておつたが、それを途中で打切られて最初の予定の八割というものを五割程度しか出さなかつたのであります。こういうような情勢でありますが、今後のこの自給製塩に対する処置と、それか尚自給製塩業者の中には農業会のごとく八月十四日の解散を控えておるものが四十ケ所ばかりあります。これは解散までに整備計画を立てないというと、結局その資産なり施設なり赤字なりをどこに持つて行くかということが問題でありまして、これを引継ぐ協同組合としましても、この債権債務の関係が、大藏省の整備計画がはつきりしないと赤字が増すばかりになりまして、これはひとり農業会の関係ばかりでなく、自給製塩業者には相当企業的にやつておるものが多いのであります。この問題に対する大臣のお考えはどうであるかという点。  それから第一封鎖の解除はいつ頃おやりになる御予定であるかということ、それから予算の説明書にありまする國民金融公團という仮称の、政府出資の内訳がありますが、これに対しては何ら説明が施されていないと思うのでありますが、どういうものでありますか。  それからもう一つは、國債費の中で「金融機関の再建整備法の規定により政府補償の支拂いに当てるための交付公債の債額二百三十四億七千三百二十七万八千円」と記載されてありますが、最初予定されました百億円の予定が、この二百三十四億の数字に当嵌まるのであるかどうか。併せて御説明をお願いいたしたいと思います。
  47. 北村徳太郎

    國務大臣北村徳太郎君) お答え申上げます。順序が変るかも知れませんが、第二に御質問のございました農業についての一種の復興金融金庫的な金融施設をしたらばということで、さようなご要望があつたのでございますが、これについてどういうふうに考えておるかというお尋ねであつたと思うのであります。農村金融の問題は、実は非常に重大なる問題でございまして、私共の考えといたしましては、考え方が四つあります。一つはお説のような復興金融金庫の農村部門のような、つまりあれの小さいといいますか、農林復興金融金庫的なものの考え方である。いま一つは現にございます農林中央金庫の活動を促すよう方法をとつて、それで農村金融を充実させる、從つてこの場合には恐らく政府補償というよう方法を講じなければならんと思うのであります。第二には政府補償による農林中央金庫の活動というようなことが一つ、それからいま一つは現在の復興金融金庫のように、農林関係の特別な枠を設けるという考え一つであります。この三つ方法についていろいろとまあ研究をいたしまして、具体案を立ててそれぞれ関係方面に当つたのでありまするが、残念ながら第一のものは絶対にいかんということでこれは問題にならん。第二の政府補償についても、この際特に政府補償による方法は避けねばならないというようなことになり第三の復興金融金庫に特別の枠を設ける、私共の考えでは差当つての應急の措置として二十億ぐらい先ず設けて、漸次これを拡大する方法をやつて行きたいというような具体案を立てたのでありますが、これも率直に申しましてうまく行きそうもありません。そこで最後に考えておることは、特別会計を設けて、そういう方法によつて政府責任において農村金融ということを取扱うというより外に手がございませんが、只今この方法によつて、四つと申しました中の最後のものでありますが、この方法によつて先方と相談を進めております。その外にどうもでき上りそうな案がない、こういうよう考えておるのであります。  それから國民金融公團のことについてのお尋ねがございました、これは順序はちよつと違いますが、お許し願いたいと思います。これは只今までございました庶民金融金庫と恩給金庫、この二つのものはいずれもこの際多少整備をしなければなりませんので、この機会に二つのものを整備して一つにいたしまして、そうしていわゆる庶民金庫、極く零細な金融のことに興らせる、かよう考え二つのものを吸収すると申しますか、或いは合併すると申しますか、二つのものを廃止して新たに國民金融公團的なものを作りたい。これは公團となりますか、金庫となりますか、まだ折衝を重ねておりますので分りませんが、私共は金庫の方がいいと思いますけれども、これは関係方面の意向がございまして、目下折衝を続けておる程度でございます。事柄自体については大体よろしいのでありますけれども、名前について、名前の及ぼす將來の影響が多少ございますので、金庫で行きたいと思つておりますが、この点がまだ少しはつきりいたしておりません。  それから順序が変つて恐縮でありますが、交付公債のことでありますが、この交付公債は交付公債の中で百六十三億が金融機関等への補償でございます。その他は交付公債として出すものの他の部分でございます。さよう御了承願いたいと思います。  それから封鎖預金の解除の時期については、これはまだはつきり申上げることはできません。金融機関再建整備が一應終了して、増資も大体順調に行つておるようでありますが、これらのものが一應終了したところで、成るべく早く封鎖を解除したい。その時につきましてはちよつとまだはつきり申上げることはできませんけれども、これは余り先ではございません。近いうちに解除ができると思つておりますが、その時日を具体的に申上げますことはもう暫くお待ち願いたいと思います。  それから塩につきましては、御指摘になりました委員会はやつておるのであります。最近も開きましたのでありますが、尚そのこと及びその他の点につきましては、これは政府委員より御答弁申上げることにいたしたいと思います。
  48. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 ちよつと関連して、……。農業金融の点についていろいろなる方式をお考えになり、そうして最後に特別会計で以て何とか措置して行きたい、こういうお話でございます。そこでお伺いしたいことは、この特別会計方法による農業金融の方式は、この予算が成立するまでにそれを実現する方途を持つておられるのかどうか。  それから先程の第二の方式、復金の中に先ず二十億ぐらいの枠を設ける、こういうお話でございましたが、この特別会計の場合におけるその金額も、大体そのくらいと了承してよろしいかどうか、その点をお伺いいたしたいと思います。
  49. 北村徳太郎

    國務大臣北村徳太郎君) 御質問の第一点は、これは会期中に出すかということでありますが、これは是非そうしたいと思つて関係方面只今折衝いたしております。  それから金額はどのくらいかということでございますが、これについては相当意見があるようでございまして、まだこのことを申上げるところへ参つておりませんのでございます。
  50. 島村軍次

    ○島村軍次君 そこで地方財政に関連の持つ事業税の点を併せて大藏大臣に御説明を願いたいと思うのであります。
  51. 櫻内辰郎

    ○委員長(櫻内辰郎君) 先つきの御質問で残つておる点を政府委員から……。
  52. 東條猛猪

    政府委員(東條猛猪君) 交付公債の利子につきましては、内容につきましてはお話通りでございます。金融機関に対する交付公債の利子として、そこに金額が上つておると思います。尚今回交付公債として交付を予定しておりまするのは、金融機関に対する交付公債の外に、保險会社とか或いは旧産業設備営團或いは國民更生金庫、いろいろの関係がございますが、金融機関に対する交付公債の関係お話通りに、第一封鎖預金の関係におきまして交付いたします公債の利子をそこに計上いたしてございます。  それから塩の問題ですが、直接担当いたしておりまする專賣局方面政府委員が参つておりませんので、詳細なことは、恐縮でございますが、よう申上げられませんが、時々会議に出席いたしまして承知いたしておるところを申上げますると、この自給製塩の問題等は、御指摘ように過去のいきさつの問題がありますが、又いろいろ戰時中の指導方針関係もございまして、專賣局といたしましても、いろいろその取扱いには実は苦慮いたしておりますので、從いまして今後どういう方向に措置の方針を持つて参るかということは專賣局の官衙のみならず、民間の方々の御意見をも十分に拜承いたしまして、実はいろいろ慎重に協議をいたしております。問題が問題で、極めて困難でありまするだけに、具体的な結論を出すことが相当時間が掛かつておりまして、御指摘ように、この間いろいろ不都合も生じておるかと存じまするが、折角只今委員会といたしまして、実地に見学に出て参りましたり、実地の調査もいたしまするし、又いろいろ議論も闘わしておりまするので、遠からず結論を得ることになると思います。尚詳細、具体的のことにつきましては、專賣局方面政府委員から、別の席上におきまして——分科会その他におきまして御説明するようにいたしたいと思つております。
  53. 島村軍次

    ○島村軍次君 只今の塩の問題については、この際特に大藏大臣に希望を申上げて置きたいと思います。今のような進行状態でありまして、只今政府委員の御答弁にもありましたように、言葉尻を掴まえるわけではありませんが、その委員会にときどき御出席の程度でありまして、專賣当局は、この問題には非常に熱心な態度をとつておられまするが、結局問題は政府自身がこれを勧めてやらして、補助金を出した、而もその補助金は途中で打切つたと、こういう情勢なのであります。初め奬めてやられたときは、要する專賣法の範囲において、自分のものを自分で作るという自給のものに対してのみ、或いは平釜式をやり、或いは電氣製塩式をやるということでやらしたわけです。ところが、それが、それが途中で事業休止を命ぜられたのでありまして、これを金融の措置からいいますというと、私は政府が補填すべき筋合のものだと思うのであります。委員会においては從來の專業製塩の関係がありまして、なかなかこの補償の問題等についても態度がはつきりせないのみらず、又自給製塩に対しては極めて冷淡なる態度をおとりになつておるというのが現状であります。そこでこの問題は、相当長い期間を以て、整備計画の機関が……委員会が、早く作られたわけでありますが、遅々として進まんという現状から鑑みまして、至急にこの問題の解決をすると同時に、補償に対しては、大藏大臣御存じないようでありますから、一つ具体的にこの問題を取上げて御研究されるようにお願いいたしたいと思うのであります。尚この問題につきまして、政府当局は分科会等において、或いは又この最後の予算会等において、決定前に大凡政府方針が、今の問題に対しての政府方針が、この委員会において発表し得る程度に至りますれば、私はこの自給製塩業者に対して非常に喜びとそうして安心感を與えると思いまするので、特にこの点を、でき得ればそういう ことで、早く委員会において御発表を願うようにお願い申上げて置きたいと思います。
  54. 岡本愛祐

    ○岡本愛祐君 先程警察費のことについて御答弁を頂きましたが、この地方財政の基礎がまだ確立していないということについては、大藏大臣もそうお認めのように私は拜承しました。次に、そこでこの点は野溝國務大臣と食違いはないということがはつきりいたしましたが、そうなりますと、只今私挙げました警察法並びに消防組織法によりまして、この六月十六日以降の自治体警察、消防費等について國庫から補助を以前お出しならなければならないのでありまして、その額は六十億八千万円になると思います。これはこの予算に洩れておるのであります。これはお調べになれば直ぐ分るのでありますが、洩れておるのでありますから、これは速かに何か適当の御処置をおとりにならなければならないと信じます。その点数をもう一度念を押して置きます。それからこの委員会で岡田君、木村君、中西君等から三千七百九十一円の合理性につきまして徹底的な御議論がありましたが、私共その議論を拜聽いたしておりまして、成る程これは議員側の言われることが尤もであるというふうに痛感をいたしておるのであります。加藤労働大臣が昨日ここへ來られまして、いろいろ答弁をなさいましたが、どうも加藤労働大臣と大藏大臣との御答弁には大きな食違いがある、根本的の食違いがあるように思うのであります。これは大藏大臣はしばしばこの席上で、突発事項が起らない限りは追加予算は出さないということを強調しておられます。ところが、加藤労働大臣は、ここに私も御答弁を書いて置いたのでありますが、政府はやれることかどうかは知らない。それは議論はあるであろうが、物資の増量を確保することに努力はする、実質賃金によつてこの形式賃金の足らないところを補うつもりだ、まだ発表されてないが、いずれ確定的な物資の裏付けをするというように計らうつもりだ、そうしてまあ赤字をなくするのだ、こう一應は言つておられます。併しこの三千七百九十一円ベースという額は、今年の三月までの確実な数字によつたのではあるが、四月以後は推定である、これははつきり言つておられます。それでこれは推定であるが、止むを得ない、單なる架空なものではない、これは推定なんだ、こう言つておられます。それからこの三千七百九十一円が誤つておると断定することはまだできないが、私の見解によれば、この数字の正しさが、具体的に正しくないということが現われたときには、政府は考慮しなければならんということは、はつきり言つておられるのであります。この点は木村議員が衝かれまして、その数字の間違つておることはもうはつきりしておるじやないか、その四月の全國工業平均賃金というものがもうはつきりしておる。それは三千六百七十円である。それで政府の推定の五月の賃金、それが三千四百七十円ともうすでに食違つておるじやないか。そうすると、この三千七百九十一円という数字は間違つておることはもう分り切つているじやないか。で、加藤労働大臣が言われるように、数字が間違つておるとすれば、具体的にそういうことが証明せられたときには、政府は大いに考慮しなければならん。つまり予算の組替えか、或いはその他の処置をしなければならん。予算の組替えということまでは言われませんでしたが、政府は考慮しなければならんということを、はつきり言われておるのであります。こういうふうに閣内におきまして、すでに責任ある二大臣の答弁が違つておるということでは、予算審議は、我々審議する上におきまして甚だ困難になつて参るのでありまして、この点について大藏大臣の御所見を承りたい。
  55. 北村徳太郎

    國務大臣北村徳太郎君) 初めのお言葉でございましたが、自治体警察、それから消防費の件は前に申述べましたように答弁を留保さして頂きたいと思います。十分研究をいたしまして御答弁いたします。  それから第二点の賃金ベースの問題であります。これは予算を編成いたしますときに私共の入手し得た材料は、全國鉱工業平均の三月の賃金でございまして、これに物價の趨勢その他から趨勢値を出しまして、それにいろいろ二段三段の修正を加えて結局得た数字が三千七百九十一円であります。それで趨勢値と現実に現われた四月の全國鉱工業平均賃金に違いを生じたということは、我々といたしましては予想しないわけではなかつたのでありまして、一應或る所、或る時間の点を押えて、それから趨勢値を出して見るということは、予算を編成する場合にはこれは止むを得ない方法である。ただその後この新しい統計が出まして、それによつて趨勢値に現れた数と狂いがあつたということはこれは認めなければならんと思います。そういうことの起つて來たこの事実は御指摘通りだと思います。まだ私それは見ておりませんけれども、そういうことでありますから、これはその通りだと思います。ただ初めに申上げましたように、今のように不安定な経済の状態において、年間を通じて予算を編成するということの困難であるということはこの一事を以て見ても分るように、非常に動搖期にあるのでありますから困難である、そこで見通しについてどの程度に確実であるかないかということは、的確な統計的数字を押えるときには、やはり趨勢値を算出しなければならんということになりますので、その趨勢値を押えて行つた場合に、現実にその次に來る事実或いは物價との何でどう狂うかという問題だけが残された、こういうよう考えております。そこでこの趨勢をどういうふうに眺めるかということが大きな問題でありますけれども、この点につきまして、私一つの希望でありますが、日本としても今のような不安定な状態は安定しなければならん。これは皆が安定感を持つということは心理的に大きなものでありまして、今までは随分インフレの進行速度というものは相当な速度を持つてつたけれども、これからは安定に向うのだという氣持を持つと同時に、又全國の労働者各位がそういうような氣持を持つと同時に、協力して日本再建のためにこの際一つ踏ん張つてやろうじやないかという氣持を持つて頂くということが非常に大事な因子になる。それと共に私共としては三千七百九十一円にしたこの名目賃金が、実質的に保持できるかどうかということは、これは今後主として消費財の供給が円滑に行くか行かないかということに係つて來ると思うのであります。三千七百九十一円を算定いたしましたときには、特に勤労者の家計における七五%が自由物資或いは闇を含むと申してもよろしうございますが、闇を含む自由物資、非配給物資であつて、残りの二五%が配給物資である。かように算定いたしておるのであります。但しこれを量の面から考えますと、量の面においては非配給物資が三五%で、正常ルートの物が量において六五%、かような事実を押えて、それらのことも加えて三千七百九十一円を算出いたしたのであります。今後三千七百九十一円という名目賃金がどの程度実質的裏付けとして、実質的に維持できるかどうかということが後に残る問題でございまして、かような点においては私は現在よりも消費財の供給がよくなるということを大体信じておるのであります。これはお前が勝手に信じて不都合だと言われるかも知れませんけれども、現実の発表等によりまして、端境期ももう心配がそうないというような発表を受けておりますし、それから生産がやや上昇線を辿つておる、こういうふうな事実もございますし、その他内外の諸情勢等見まして、何としても今安定に向わしたい、又安定に向う希望が持てる、かような観点に立ちまして、無理と知りながら年間を通じた予算を編成いたしまして、今後三千七百九十一円が実質的に保持できる、こういう観点に立つておりますので、從つて非常に突発的のものが起らない限り、この予算で更に追加のことを御審議願うことには相成らん、かように思つておるわけであります。  それから加藤労働大臣とお前の言うことと違うじやないかという御指摘でございますが、これは必ずしも全部違つておるわけでなく、加藤君は三千七百九十一円という資料も動搖を來し、或いは実質的裏付けについて確保できないということになれば、これは自信がなくなるじやないか、こういう意味であつたと思います。その点が多少表現に違いがあつたかと思いますが、予算を編成いたしまして財政責任者として御審議願う私の立場から申しますと、以上申上げたよう考えを持つておる、これは卒直に披瀝いたしまして御批判を仰ぎたい、こう思つておる次第であります。
  56. 岡本愛祐

    ○岡本愛祐君 御説明でございましたが、どうも納得が行きません。納得が行かない方が悪いのだとおつしやればそれまででありますが、どうも只今つた生計費に占める交通費の割合というのですが、交通費のみならず、外のものも書いてございますが、東京における総収入を一〇〇%としまして、そうして食費が六七%、被服費が九%、光熱費が五%、住居費が四%、交通費が一%になつております。交通費も今度上げざるを得ないだろうと思いますが、一番大きいパーセンテージになつております食費、これはどれくらいに上るのか、農林大臣ははつきりおつしやいませんけれども、主食物の上り方は七〇%以上であるように私共は印象付けられている、確かに八〇%ぐらいになるのじやないかという印象を受けておるのであります。又光熱費、ここにございまするが、今日の発表にありますように三倍になつてしまう。住居費もこれは地方税の関係で必ず家賃は上つて参ります。それは宅地が九倍に上り、それから家屋税が六倍に上るのであります。それから見ますれば家賃は当然上らなければならない。そういうふうなことになつて参りますと、この倍数がまあ九倍や六倍というようなのはともかくとしまして、とてもこの生活必需物資並びに生活に要します生計費、これの値上がりは倍ぐらいにもなるんじやないかというような計算になるのじやないかと思います。それで政府はこの所得税の減免点を引上げてそれでカバーする、又今おつしやいましたように生活必需物資の供給を多くする、消費財の供給をもつと多くするのだ、それでカバーするのだと、こうおつしやるのでありますけれども、若しも今申しましたような食違いを所得税の減免点の引上げによつてカバーするというようなお考えならば、所得税の減免点を引上げたことは無意味になる。これは十分よく認識頂かなければならん。所得税の減免点をその中へ勘定に入れますことは所得税の減免点を引上げたつて何にもならんということになるのでありますから、この点は甚だ私は矛盾しておると思うのであります。尚生活必需物資も今申しましたような七〇%以上に上廻るということになれば、これは多く供給されたつて、その二千九百二十一円の七〇%増は四千九百六十何円ということになるのでありますから、三千七百九十一円とは非常な違いなんであります。この点はどうしても私には分らないのであります。この点が分るようにもう一度御説明願いたい。
  57. 北村徳太郎

    國務大臣北村徳太郎君) 元來これは内部のなんでございますが、物價賃金の関係を専門にいたしておりますのは、物價廳及び安本でございますので、その方から専門の資料を以て具体的に御説明を申上げた方がよいのじやないかと思います。私は只今申上げたように、一つの基礎の上に立ちまして、これでやつて行ける、こういうことを申上げたのでございますが、これ以上御説明申上げることは困難でありますので、安本或いは物價廳から参りまして御説明いたしたいと思います。かよう考えるのであります。
  58. 岡本愛祐

    ○岡本愛祐君 これは実は資料の御提出を中西君から要求されまして、私共待つておるのでありますけれども、外の資料は出ておるのでありますが、これはなかなか出て参りません。それで予算の察議ができかねるのであります。これは速かに出して頂きたい。これは委員長にもお願いいたして置きます。  それからこの問題は外の方から尚御追及があるかも知れませんが、私はそれだけにして置きまして、次に私が伺いたいことは、何故特別会計におきまして、殊に官業経営におきまして、大赤字を出しておりながら、人件費一般会計は一五%方を節約をすると言われながら、特別会計人件費は何故手をお触れにならないのか、お伺いいたします。
  59. 北村徳太郎

    國務大臣北村徳太郎君) 行政整理は根本的にしなければならんということについては、先程來申上げておつたのでありますが、行政部門について、一應財政の面から人件費の一割五分引で予算を立てましたが、行政整理の全般は直ぐに間に合いませんので、後廻しになつたような次第であります。官業につきましては、これは別個の考え方がございまして、單に人件費を一割五分切るということでなく、純粋の意味においての独立採算制をやらなければならん、これは必然的にやらなければならんのでございまして、從つてこの際一割五分を人件費において減少すればよいということではなくて、非常に大幅に運賃等の値上げもいたすものでございますから、この場合に、例えば國鉄、逓信事業が、事業自身に内包するいろいろな弱点等をこの際抉り出して、これに根本的な改善を加えて、実質的な独立採算制を維持する方向へ持つて行かなければならん、かよう考え、而も亦かよう考えがございますから、全部を運賃或いは逓信料金の負担に掛けてはならん、一般会計に或る部分は吸収いたしておりますけれども、さよう方法を講じましたので、これはもつと鋭く一般の行政経費以上のいろいろな点において改善をしなければならん、こういうことを考えておりますので、この際單に一割五分引くということは、却つてやらずに、純粋なる独立採算制に急がせるという方向をとりたい、かよう考えを持つた次第でございます。
  60. 岡本愛祐

    ○岡本愛祐君 その点につきまして運輸大臣に先頃質問をいたしたのであります。運輸大臣は本会議において、独立採算制を無視するような御言明がありまして、それは怪しからんじやないかということを追及し、又それじやいつになつたら独立採算制がとれるような方向に持つて行けるのか、五ケ年計画とどういう関連をその独立採算制が持つておるのかという御質問をしたのでありますけれども、さつぱり御答弁が分らないのであります。それで「のれん」に腕押しだということで追及を止めたのでありますが、今大藏大臣の御答弁によりますと、大藏当局の意向というものは分りました。私はこの特別会計こそ人件費なり又物件費なり、或いは節約の余地が大いにあると私は思うのであります。これは先程池田君から御議論が出ました國有林野の経営につきまして、私は昨日農林大臣に質問をいたしまして、赤字が出ることは不思議だと思わないかということを質問いたし、私の意見を述べて置いたのでありますが、そういう点から考えましても、これは大いに官業経営については考えて頂かなければならないのであります。政府の思い切つた粛正によりまして必ずや私は赤字は消える、國民の大事な財産を預かつておりながら、これは自分達だけの財産ような観念でやつてつてはたまらん。國民から預かつた貴重な財産であり、又國民の生活費に密接な関係を持つ公物でありますから、公のものでありますから、これは國有國営であるだけの立派な成績を現わして頂かなければならん。それには大きなメスを加えまして、出血しても仕方がありませんから、本当に合理的な経営にすることが大切である。ただ赤字を出しておるから三倍半に運賃を上げる、四倍に通信料金を上げるというのじや國民がたまらないのであります。この点大藏当局にも、今後とも大いなる勇断を振われんことを希望いたします。  それから昨日申上げたのですが、余りに旅費が多過ぎやしないか。大藏当局の査定といいますか、それが多過ぎやしないかと思うのであります。早い話が、國有林野事業におきまして、これは林野経営なんというものは、殆んど從業員の賃銀であります。その賃銀が四十三億ということになつておる。これは恐らく実人員にしまして十万人近い人を私は使つてるのじやないかと思います。これは勿論臨時の人を入れましてでありますが、それがその十分の一に当る四億五千万円以上の旅費を職員だけで使つているということは甚だ多くはないか。四億五千万円といいますと、これは俸給給料、それに当る。それと殆んど同じ額であります。これはたまたまこの予算書に國有林野の方が旅費まで書いてあるので氣が付いたのでありまして、こういうことが外の特別会計にもあるでありましようが、又それが延いて一般会計にもあるのじやないかと私は思うのでありますが、この旅費が正当に使われておればいいのでありますが、山へ行く、國有林野でいいますれば、山林経営のために山に行く旅費は少くて、会議とか、何とかいうことで出張をします旅費が非常に多く使われておるというように見受けるのであります。それから又、特別会計会計規則が非常に複雑しておる。それがために人手が三倍も要るように感じておる。こういう点について大藏大臣はどういうようにお感じになつておるか。又特別会計に対しまする先程私が申しました勇断を振つて頂きたいということに対しての御所見を承りたいと思います。
  61. 北村徳太郎

    國務大臣北村徳太郎君) 只今お尋ねの件は、私は卒直に申しますと、極めて同感であります。同じよう考えております。特に特別会計に属する諸般の改善というものは急速にやらねばならん、こういうふうに感じておるのでございまして、尚國有林野等につきましても御指摘がございましたが、こういう方面のことは私どうも全然分りませんけれども、その途の権威者たる岡本さんからお話を承わりまして、これ亦改善すべき点は十分改善をする、かように思う次第であります。
  62. 石坂豊一

    ○石坂豊一君 大藏大臣只今お急ぎのようなことでありますけれども、只今の岡本君からの質疑に対して是非補充をして置かなければならん。大藏大臣予算に対してもう追加する必要がない。こう御言明になつているのでありまして、私共又その確信を大分買つてつたのであります。ところが、昨日に至りまして突如として價格補正の発表がありました。これによつて見ますと、予算において物價七割ということが確実に決まつてしまつたように思う。ところで、私はいろいろの方面から御意見を承わりたいのでありますけれども、かくなりまするというと、我々はこの予算に対して殆んど審議の余地がないことになる。予算は何がためにあるかと申しますと、國家が仕事をして行くのでありますが、この予算によつて國家というものが一番大なる消費者として臨んで行くのでありますから、消費者價格がここに決まつて行くということになります。それについては、我々は何の意見も持つことはできなくなる。公定價格というものを天下に発表して、これによつてすべての行動をするということになりますと、我我はここに審議する余地がなくなる。況んやこの発表なさつたものの中には、甲、乙二種になつて、運賃と通信料の上らない場合には甲、上つた場合には乙、その上るのは予算に見積つてあるところの、政府の見積るところの三倍及び四倍ということになつておるのでありまするが、これは與党三派の修正の案もすでにそれは認めておらんのであります。殊に我々の党派においては、それと余程隔つたものになるのであります。どういうことの議決になるか知らんけれども、政府案の通りにならんことは明瞭である。けれども、一旦これを発表なさるというと、たとえ内輪のことで修正されましても、公に認めるところの國民價格というものは、この大きく高く見積つたものに帰着して行くということは、経済の原則に私は從つて行くものではないかと思うのです。そうしますと、ここに二つの問題が起つて來る。國民が非常な課税の負担を負う以外において、消費者に盡くしこれが轉嫁されるのでありますから、大なる負担がここに激増することになつて、今折角論議されておる三千七百円ベースなんかは、立どころに壊れてしまうということになりやしないか。そうなつて忽ち勤労者階級と政府、或いは、又経営者等の間に非常な摩擦が起るという端緒を開くことになるのであります。誠にこれは憂うべきことの種を播いたと私共は考えるのであります。それでいつのときかこれは発表しなければならん問題でありましようが、予算審議して予算の決まつた後にこれを決めたつて、少しも遅しとせん話で、又もう一歩遡つて予算の発表前にでもなさるなら、又それも一つ方法であります。予算審議中において、我々は朝から晩まで國務大臣と、その見込みについて質問應答を重ねておるこの際において、これを発表なさるということは、そこに重大なる理由もあるでありましようけれども、政府としてこの点をお考えにならなかつたものであるかどうか。その点は私共どうもまだ腑に落ちない。而して更にその波及するところはどこに行くかといいますと、全國民に対して波及するのみならず、又地方の自治團体全部に及びます。地方財政は今一千九百何十億か、約二千億に近いのでありますが、これはそう確実なものではないのです。地方から陳情に來るものを見ますというと、決して政府の見込まれておりまする物價七割、又給金は三千七百円ベースというようなものを眼中に入れておるのでないのであつて、いわゆる六・三制の問題によつて増加するもの、警察制度の変更によつて増加するもの、或いは又災害復旧等において、今年度において是非とも支出しなければならない自然増というものが一千三十億くらい加つて、今日の財政を見積つている。これに今政府のやりました物價賃金の増を見積りましたならば、これは必ず全國津々浦々に波及しまして、國民が相当な要求をして出て來るに相違ない。これに対することを考えますと、政府ひとり健全財政と威張つて見ても、足許の地方がもうぐらついて來ることになりますから、是非とも補正予算というものが必要になつて來ると思う。ここにおいて私は、大藏大臣はこの追加予算も必要じやない、又今の公定價格の発表は予ねて見積つたものであるからして、別にこれによつて政府予算全体に対して拘束せられる必要がないというお考えであるか、それを伺いたい。
  63. 北村徳太郎

    國務大臣北村徳太郎君) 御尤もな御質問と思うのでありますが、大体私共は予算を立てます場合に、全体の物價政策等と考え合せまして、この引上げを行うものは六月十五日に引上げが行われるものとして一應の計算の基礎を置いたのであります。それで三千七百九十一円というベースもこれを決めますというと、これは直ちにそれが一つの水準になります。三千七百九十一円の水準はやはり政府において引上げることを計算に入れたものであり、或いは先程ちよつと岡本さんの御指摘がありましたが、それは尚別といたしまして、勤労所得税の引下げは引下げとして行う。その時期は大体この六月十五日というところを押えて、そこで上がるものは上がつて行くというような計算を一應立てまして、編成に当りましたのであります。さような観点から、これか延びますと予算に多少狂いが來る。そこで物價の改訂というものを一体いつするかという問題が当然起つて來るわけでありますが、この際補正的な予算の改訂を行いまして、この予算を守る、というと少し語弊がありますけれども、この予算はそういう観点に立つておる予算であるから、この予算に狂いを來してはどうも全体に非常な狂いが來るから、そこでこの際二段構えの補正をいたしまして、鉄道運賃並びに逓信料金等が若し可決された場合には、そのときにはこの二段構えでそれが自然に修正される、こういうよう構え方で、一應の物價の補正というものを発表いたしました。これは安本の方でやつたのでありますが、発表いたしたわけでありまして、この予算全体がさような仕組になつてつたという点が、只今指摘の、これを発表しなければならん、かような観点に立つたわけであります。  尚これは岡本さんにも留保しておるのでありますが、三千七百九十一円のベースの問題と共に、物價全体に関することは物價廳が資料を持つておりますので、只今お話の中にもございましたが、今回の補正についてもこれは資料を以て少し詳細に御説明申上げる必要があると思いますので、その点は物價廳から成るべく近い機会に参りまして、資料を以て丁寧に御説明申上げたい、かよう考えております。
  64. 石坂豊一

    ○石坂豊一君 只今最後に申されました、物價廳から説明するということでありましたが、実は昨日物價廳から或る程度まで懇切なる説明を伺つたのであります。政府においていろいろ調べておられることは分つておりますが、併し私共はそういう補正のことを申上げておるのではない。今予算に対する議会の空氣というものは、これは政府においても大抵お分りでしようが、この予算を延び延びにするという空氣は少しもない。現に歳入におきましても、取引高税のごときは、これは各派盡くこれを認めるということがないように私は観測されます。外のことは分りませんが、これについてはもう衆議院及び我が参議院におきましても、悪税なりとしてこれは絶対に私は通らぬものとして断言してもよろしいのです。それから又歳出におきましても亦特別会計におきまして、今申しました通り、運賃であるとか通信料のごときも、これも何がしかの修正が施されるに違いない。そうすると、どうしてもこれは修正されることが眼の前に下つておる。ここにおいて政府が今暫く放つて置くと、これは大変なことになる。現在の物価情勢はこれ以上の遷延を許さないのであるということは、これは放つて置くと議会が議案を修正するかも知れない、それじやいかんから、今これを出して手も足も出ないようにして突つ張つて行くという遠謀から出発しておるものでないかとも思われる。そうなつて來ると、これは容易ならざる、発表されて我々はこれによつて一つ手かせ、足かせを一層加えられた、束縛を受けたというように解釈しても仕方がない。併し我々はそんなことで束縛を受ける立場の者でないけれども、そういうふうになつて見える。而してこれを発表なさつた結果というものは経済界を刺激いたしまして、物は上つて來る。品物を出してはいかんというので、これを引締めて出さないものも起つて來ましようし、先を見起していろいろな工作が行われるのでありますが、必らずしもここに書いてあるものだけがこれによつて規制されるものではないので、幾多の消費物資というものはこれによつて非常に刺激を受けて行く。これはもう大変國民の生活を脅すところの一つの発表かと、こう考えるのであります。そういうふうになつて來ると、私共はこの予算に対する審議については、私は考えなければならんことが起つて來る。それで私はこの重大なる場面に遭遇いたしまして、大藏大臣並びに総理大臣にも聴こうと思つておりましたが、総理大臣は來られませんですから、大藏大臣に伺いたいのです。それでどうもこの発表につきましては、まあ昨日安本長官も事情を打明けられまして、一應は諒としないわけではありませんけれども、その発表するに当りまして、現在の通りのものを発表するならともかくも、嫌がるものを通過するものと認めてそれを出しておる。乙價格に織込んで出しておる。こういうことに至つては実に政府の措置は我々は了解できない。この点に対して又何か政府において、これは止むを得ない事情があつたと仰せられるならば、これは一應伺つて置きたいと思います。
  65. 北村徳太郎

    國務大臣北村徳太郎君) 政府がこの物價を操作いたしますことは、勿論國会の審議権をどうするというようなことはあるべきことでもございませんし、さようなことは毛頭ないのでありまして、従つて予算を通させるという陰謀じやないかというようお話もございましたけれども、さようなことは断じてございません。ただ予算を構成しております價格というものがございますので、凡そ予算を編成いたしますときには、或る價格を抑えて行かなければならないのでございまして、これは申上げるまでもないのでありまするが、その予算の中に、予算を構成しております物價について、若しも予算が通るならばという條件を附けて、一度の考慮を廻らして、そうして物件費人件費を織込まなければならないことは、この予算を編成する以上止むを得ない方法と思います。従つてこれが通つたならばこういうふうになるというよう物價の操作をするということも、この場合止むを得ないことでございまして、このことが決して國会の審議権云々と結び付くというようなことは筆毛頭考えていないのであります。ただこの場合に若しこの時間の経過が、例えば軽減すべき所得税は割合に早いときから起算される、支拂うべき賃金はそれは割合に早いときから起算される、そうして歳入になるべきものが後に残るというようなことが起るというと、非常に食違いを來す、さようなことになつては、これは誰が処置いたしますにしても非常に困難な問題に逢着いたしますので、いろいろ考慮いたしました結果、この予算というものがすでにこういう物價の構成に成立つておるというようなことから、一應の補正をして置かなければならんというようなことをいたしましたに過ぎんのでありまして、その点はどうかさように御了承願いたいと思うのであります。勿論この審議権等に何ら係わりのあることではございませんし、御自由に御審議を願わなければならないのでありますけれども、政府といたしましては一應さような処置を採りました次第であります。
  66. 中西功

    ○中西功君 ちよつと石坂さんの御質問に関連して大藏大臣に聴きますが、やはり價格補正の措置についての中で、現在の物價情勢はこれ以上遷延を許さないということを先つき大藏大臣は説明されて、この補正は延びると狂いが來る可能性がある、こういうふうに言われたのであります。その狂いが來るというのは、勿論明らかにこの予算に狂いが來るということなのでありますが、一体具体的にどんな狂いが來るのか、それがもつとはつきりさせられなければいけないと思います。ところが実際には、この予算の組立て方と物價の問題では、先にも申されました通り一般物價は七〇%というようなところで押える、更に闇は六月以降絶対に上らない、こういうふうな想定に立つのであります。そういう想定に立つておる予算なんでありますが、そういう予算が実際に延びると、この物價の補正が延びると、予算の基本的なこういう仮定が動いてしまうというのは私達には絶対に理解できない。勿論私達は六月以降闇が絶対に上らないというよう政府の想定それ自身が間違つておると思う。だからこういう上に立つた予算は、これは架空な数字であつて、実際のものではない、こう思うのです。だけれども、政府自身は非常に強氣に六月以降闇は絶対に上らない予想に立つて予算はできておる。それならば一体狂いようがないと思う。予算そのものは、だのに延びると非常に狂いが來るというのは、それ自身もう自分自身が仮定しておることを、実際には自分自身が否定しておるということから私は起つて來ると思う。だから実際これは別の、そういう今説明されたような理由ではない、別の理由であるか、それから自分らが想定しておることが如何に非現実的なことであるかということの実証の以外にはないと思う。その故に予算案全体はそういうふうに非現実的であると思うのですが、最も端的な例を引きますと、食糧管理特別資金会計におきましては、新米價を明かに想定してここに収支が組んである。ところが私達今まで政府に追及しても、まだ米價は決まつておりません。然るに食糧管理特別資金会計に明かに三千三百八十円という基準で組んである。ところが、それならばいい。これは大体において一應二倍になる。二倍に近いと思うのですが、併し実際に三千七百円ベースの場合におきましては、それが米價はまだ分らないから言えませんとか何んとか言つて逃げておる。併し一方にちやんとそういう予算で収支が組んである。更にこの予算全体に食糧証券として七百億円の発行限度が認めるように要請されておる。併しそれは旧米價であつて新米價でない。新米價格であれば千二百億ということを政府委員がはつきり言つておる。こういうふうに全体が全くつじつまが合わない。これは一例なんです。ところが、一方には新米價で組んである。併し新米價はここで追及しても言わない。併し或るところでは旧米價格で組んである。七百億円の数字は旧米價格、食糧管理特別会計のあの収支計算は新米價、そうして三千七百円ベースのときには米價格は言わない。こんな調子なんです。だからこれは問題が起ると思う。こういうことだから時期が延びれば、これは狂いがますますはつきりして來る。現に四月の労働統計が出ただけでこの三千七百円ベースというものは基礎がないのだということは一般に染み渡つておる。行政が発表してしま えばどうにもならないということから、これは急いでおるということは事実である。ですから、そういう点私今石坂氏の質問に関連して述べたのでありますが、先つきも、三千七百円の話がありましたが、そういうふうな政府が予定しておる基礎数字が間違つておるということが若し明瞭になつた場合に、一体大藏大臣はどういう処置をとられるのか、飽くまでもそれで突つ張つて行かれるつもりなのか、その点を私ははつきり聴きたい。
  67. 北村徳太郎

    國務大臣北村徳太郎君) この点につきましては、先程から度々申上げておりますのでダブると思いますが、予算を編成いたしまする場合には、或る事実を押えて、それから先を見通しを付けなければ、これは将來の予算でございますから、どうしても止むを得ない方法である。具体的な会計的な事実になつたときには、それは過去のことなんでありますから、この点は先程來申上げておる通りでありまして、それで今日のような経済の安定をしていないときに年間の予算を立てるということ自体が非常に困難であるということは、これ亦申上げておる通りであります。我々は我々が予算を組みましたときに入手し得た一番新らしい材料は、三月の全國平均の鉱工業の平均賃金であります。これは鉱工業の平均賃金でありまして、これを基礎といたしましてそれから先は一應四月、五月はどうなるかという趨勢値を出して、この趨勢値を出したものと、それから事実起つて來た統計の資料との間に、食違いがあるいうことを御指摘になるのでありますが、これは御尤もでありますが、これ趨勢値を出した、その趨勢値が現実に必ず後に起つて來て、具体的な統計と一致して來るとは思つておりません。けれども、これは長い目で見なければならん。結局のところ見通しとして、この年間物價の趨勢がどうなるか、或いは賃金の趨勢が従つてどうなるかというふうなことを考えなければならんのでありますから、その点がすでに違うじやないかと言われても違う点は起つて來る、更に又逆な点も起つて來るだろうと思うのでありまして、このことについては私は、予算というものが或る点は或る事実を押えて、それに立脚するけれども、その先は趨勢を考え、趨勢値を算出して、それに基いて一應の計算を立てるということは止むを得ないのである。それじや将來の見通しはどうかということになれば、これは先程から申上げている通りでありまして、私といたしましては、これは消費財の供給両が増す傾向がある。生産が増す傾向がある。経済は全体として安定すべき一つの方向に向つておる。かようなことを段々考えて参りますと、これでやつて行けると、こういう考え方を持つておるということを申上げたのであります。私はさよう考えておるのであります。
  68. 木村禧八郎

    ○木村禧八郎君 大藏大臣ちよつとお尋ねしたいのですが、今回昭和二十三年六月二十二日の物價應の発表に係る價格補正の実施について、この中の第二の点です。「統制額(甲)は、昭和二十三年六月二十三日から、逐次これを実施し、」云々とありますが、逐次これを実施するということは、具体的にはどういうことなんでしようか。例えば價格差補給金はこれによつて支拂う、そういうことを意味するのでありましようか。この点ちよつとお伺いいたします。統制額(甲)は今度いわゆる運賃を上げないで二十三日から実施する價格でございますね。これを逐次実施する。運賃を上げないものと想定して、引上げる價格でございますね。統制額(甲)と申しますか、その場合逐次これを実施するということになりますと、これはこれに基いて今の予算案に計上されておる價格差補給金ですね。あれはこれに基いて支拂うことになるのでしようか。その点を伺います。
  69. 北村徳太郎

    國務大臣北村徳太郎君) その点は、もう少し研究をして御答弁したいと思うのです。私まだこれを十分見ておりませんので、これは又物價應長官から……。
  70. 木村禧八郎

    ○木村禧八郎君 これは價格の点ではないのです。價格の点ではないのでありまして、ここで……。それじやもう一つ。今回の措置は財政法第三條の精神に反しないかどうか、その点どうでしようか。
  71. 北村徳太郎

    國務大臣北村徳太郎君) これは、前段の御質問の点はその通りでありまして、これに基いて行うということに相成ると思います。それから財政法の点は、これはそれがございますから、実施については國会における審議の結果により別に云々ということを定めまして、國会の御審議を経なければならんという建前をとつて從つて甲、乙、かよう考えております。
  72. 木村禧八郎

    ○木村禧八郎君 價格差補給金は、今度のこの措置に基いて支拂うということになつておりますが、價格差補給金に関する予算は、まだ我々承認していない筈なんです。目下審議中なんですが、それはどういう関係になるのでしようか。予算がまだ通つていないのに、價格差補給金を支拂つてよいものでしようか。
  73. 北村徳太郎

    國務大臣北村徳太郎君) これはまあその予算を立てます場合には、若しもこの予算が通つたらばという想定において、價格を立てておるのであります。勿論予算の決定を待つてから後でないと実行はできません。併し政府一つの案として、政府方針としてはこういう方向で行きたいと、そう考えております。
  74. 木村禧八郎

    ○木村禧八郎君 そうしますと、これに基いて價格差補給金は現実には支拂わないのですか。ただこれは案であるという御答弁でしたが、それではこの措置をされた御趣旨がどうも通らないのじやないでしようか。
  75. 北村徳太郎

    國務大臣北村徳太郎君) 價格差補給金をこの金額によつて、こういう割合によつて拂うということはこれの通りであります。但しこれが実行は予算が通過いたしましたらば、それに基いて実行する。かような意味であります。
  76. 木村禧八郎

    ○木村禧八郎君 昨日安本長官からのお話では、早くこういうものを作つて措置しないと企業赤字で困るし、このまま放つて置けないということは、具体的にいえばもう價格差補給金のことだと思うのです。これは今まで金融で賄つてつたけれども、そういう金融措置だけでやつておるのでは、どうもやり切れない。そこで早くこういう措置をして價格は幾ら上げ、その差額は補給金で拂う。そういう措置を早く講ずる必要があるので、こういう應急措置を講ぜられたと思うのですが、若しか予算案が通らなければ、価格差補給金は現実に出ないということになる、この趣旨と多少反して來るのじやないかと思うのです。
  77. 北村徳太郎

    國務大臣北村徳太郎君) 予算としては、予算に計上しておるものが通過しない限りは手が付けられませんから、これは勿論そうなると思います。それで今日までやつておるのは、只今お話がございましたように、金融等の措置で赤字金融をやつておるわけでありまして、その点をその上継続しては困る、こういう点はあるのでございます。予算が通らなければ予算支出はできない。但し今日まで暫定予算等の措置によつてその一部分のものが使用できるものがあると思います。それはすでに支拂つておると思います。
  78. 櫻内辰郎

    ○委員長(櫻内辰郎君) 大藏大臣に対する御質疑は次回にお願いすることにいたしまして、総理大臣に対する御質疑を願いたいと思います。小野光洋君。
  79. 小野光洋

    ○小野光洋君 二十三年度の本予算の提出が今日に延びまして、暫定予算を重ねること三ヶ月になつておるのであります。この本予算の提出の遅延にはいろいろ理由もありましようし、連立内閣の首班して首相の御苦心も我々想像できるのであります。併し従來暫定予算の度ごとに、今度は今度はと言つて到頭三ケ月にもなる今日、この月中に果してこの予算が通るかどうか、これも予測し難いよう状況にある。下手をまごつくと、又七月分も暫定予算を出さなければならないのじやないかというような情勢に相成つておるのであります。而も又その折角遅れても出された予算が與党各派におきましても相当の修正意見があり、このままでは通さないという情勢が、先程來数次各委員から述べられた通りであります。かようなことは総理大臣といたしましては相当御苦心を重ねたことだろうと思いますが、如何なるところに、さような結果に、現実に、立至つておるという原因があるかということは、我々も國民に対して明示しなければならない責任があるのであります。そこで総理大臣といたしまして、かような事態に立至つたことについての卒直なる原因についての表明をして頂きたいと思います。このことを先ず第一にお伺いいたしたいと思います。
  80. 芦田均

    國務大臣(芦田均君) 只今お尋ねのかような事態に立至つた事情というのは、予算の遅れたということですか。
  81. 小野光洋

    ○小野光洋君 そうです。
  82. 芦田均

    國務大臣(芦田均君) これは予算審議の本会議において民自党の寺尾君から御質疑がありました。そのときに詳細に答えた筈であります。それ以外に特に附加えて申上げる事情はありません。終戰以来吉田内閣にしても片山内閣にしても、それぞれ本予算なり追加予算は組んだのであります。そのときにもいろいろな事情がありまして、吉田内閣においても十二月に出さなければならない予算を、三月にならなけれ出さなかつた事情と同じ事情であります。
  83. 小野光洋

    ○小野光洋君 遅れた事情と、もう一つ予算が本予算についての審議状況を見ますというと、與党各派からも必然的にそこに修正という結果を見なければならないよう審議の情勢になつております。これに対しまする首相の御意見を伺いたい。
  84. 芦田均

    國務大臣(芦田均君) 政府といたしましては、國会の審議が非常に混み合つている際でありますけれども、この予算が更に来月にならなければ審議が終了しないというのであつては、我が國の経済界に予想以上の波紋を與えることを憂えております。できるだけ本月中に御審議を願いたいという期待の下に、只今のところ來月分の暫定予算は用意いたしておりません。
  85. 小野光洋

    ○小野光洋君 本会議の質問に対しましても、首相は政府責任考えなければならない程度の修正意見が多数を占めるようなときならば、そのときは考慮するというお話でありましたが、現在運賃の修正につきましても、與党三派の修正意見は、概括的にこれは二倍半、或いは又通信料におきましては三倍くらいな程度に修正するというような意見のようでありますが、かような意見に対しましては、政府はこの程度ならまだ政府責任を負うというには至らないとお考えになつているかどうか、その点をお伺いいたしたい。
  86. 芦田均

    國務大臣(芦田均君) 予算の修正が政府に対する不信任の意味を含むものであれば、金額の多少を問わず、政府はこれを政治問題として考慮することが当然の責任であると思います。併しながら数字の問題が單に便宜の点で、三倍半が二倍になるというような單に財政の出し入れの便宜であるというのであれば、政治的責任を考慮する必要がない、かよう考える。
  87. 小野光洋

    ○小野光洋君 これはどうも甚だ了解いたし難い御答弁のように思いますが、予算数字であります。数字の上に政府責任を持つところに意味があるのではないかと思います。予算数字はこれはただ便宜で定められたもので、出し入れは適当にしても政府責任は負わんと、さように解してもよろしいのですか。
  88. 芦田均

    國務大臣(芦田均君) ヨーロツパやアメリカの立憲政治の運用を御覧になるとお分りになる通り、その予算修正が政府不信任の意味を伴うときには、その予算案に信任投票を掛けるのであります。この予算の修正が政府に対する信任であるか、不信任であるかを決めるというのが慣例であります。我が國におきましては不信任案を出す例はありますが、信任案を出すということはありません。併しながら予算数字を取換えるということはどこにもある。アメリカの例でもトルーマンのアドミニストレーシヨンでありながら民主党の議員が共和党の議員と一緒になつて予算の修正をやつている。これは政府不信任の意味ではないから少しも問題は起らない。それでありますから数字を変えたらそれが政府不信任の意味だということは日本においても例はありません。旧憲法の下においても予算の修正を通したことがある。予算の修正は政府案より千万円でも二千万円でも違つたらそれは政府の信任を問うという慣例は我が國にありません。(「片山内閣のときにあつたぞ」と呼ぶ者あり)そういう意味からいたしまして、予算数字が少しでも違つたらそれが政府の不信任だという解釈はいたさない。
  89. 小野光洋

    ○小野光洋君 予算数字政府の直接不信任、信任という関係はない、責任をとるとらないという意味と違うというお話でありますが、併し政府の政策というものは予算を通じてこれは具体化するものであります。その他の問題はこれは抽象的な解釈でどうでもなるのでありますがところが、厳正に政策を批判する場合におきましては、予算数字を通じて批判するのであります。予算を通じて批判する場合に、予算の大綱に相当ひびが入るような修正がありました場合には、当然それは單なる数字の修正であるというふうに考えることはできないと思います。併しこれは結局水掛論になるのではないかと思います。結局はどの程度まで、何百億修正された場合には責任をとるか、とらないかということになるのでありまして、これは政府の主観に委すより仕方がないということになつてしまうのであります。これは私共甚だ予算審議の建前から遺憾と存ずる次第であります。  次に日本の現在の人口というものは、引揚者或いは海外同胞の引揚げ或いはその他によりまして相当急激な増加を示しております。なお又自然の繁殖の上におきましても相当人口の増加を見ておるのであります。これは世界の情勢から考えましても、世界が日本に対して如何なる見方をしておるか、かように人口増加の甚しい國民に対して一種の世界の恐怖と考えておる点もあるやに考えられるのであります。そこつ日本の将來の國際的地位というものを安定させる上におきましても、この人口問題に如何に取扱うかということは、極めて重大だと思うのであります。そこで総理大臣は、現在日本の人口が引揚げとかその他特殊事情でなく、自然に増加して行くところの趨勢に対しまして、如何なる処置をとらんとする御方針か伺いたいと思うのであります。
  90. 芦田均

    國務大臣(芦田均君) 只今お話通り、我が國の人口問題は民族の前途に横わる重大な問題であることについては全然同感であります。人口問題の専門家の意見が若し信用すべきものであるとするならば、大体我が國の人口は満州事変以前から増加率が減少の傾向になつておる。終戰後一時変態的な出生率の増加を見ておりますが、これは戰後における各國共通の現象でありまして、昨年、今年のごとき人口増加が果して長く続くかどうかは極めて疑のある問題とされておる。一口で申しますと、我が國の人口の増加は遠からず停止の状態に入るというのが専門家の多数の意見のよう承知しております。然らば差当つての人口増加の問題をどうするか。これは極く大筋を申しますれば、移民によつて部分の解決を図る、或いは人口制限によつて増加を防ぐ、若しくは國内産業を工業化して余つた労力を輸出貿易に向けて輸入品に変えるという方法によるとか、更に國内の資源を開発して食糧なり地下資源の増産を図る、大体そういう方法以外に人口問題の対策はないと考えております。併しながら移民はまだ平和の状態に立至らない今日の日本として、これを受入れるべき相手國が躊躇することは当然のことでありまして、平和條約締結後に至らなければ、日本移民を受入れるべき國々と話合いをすることは困難であります。人口制限の問題はいろいろ論じられますが、併し我が國の現状においては、特に例外を除いて、というのは優生学的の見地から、人口制限を行うごとき立法は暫く別として、普通一般の人々に対して産兒制限の方法を立法的に取上げることは必ずしも適切ではない。が、今日のごとき社会的、経済的不安の状況 が続くとするならば、國民の一部においては、政府の措置を俟たず、或いは産兒制限のごとき実際手段が行われることが植えて來る傾向を計算に入れて置かなければならんかと思います。その他我が國の余剰労働力を金に換えて輸出するとか、或いは国内資源の開発等の問題は、特に私から申上げる必要のない問題でありますから省略いたします。大体こういう線で人口問題に対処して行きたいと考えておる次第であります。
  91. 小野光洋

    ○小野光洋君 尚戰時中、或いは戰争以前においてもそうでありますが、日本人の海外に進出しておつた当時、残しました日系人というものは相当数に上つておるように窺われるのであります。特に戰時中大陸に出動しておりました軍或いは軍関係の民間人の残したところの日系兒童というものは相当数あるやに承わります。すでに成長した者はともかく、戰時中の者は丁度今の浮浪兒のよう状態になつておる者が相当数を数えられるということであり当ます。この数は、これは資料を持つておりませんのでよく分りませんが、当時華中或いは華北あたりにいた者の大凡想定した数によりますというと、数千を数えるということであります。これらが大陸におきまして、或いは常に彼の地において行われておる人買とかその他相当苦境にありまして、これらの子供が大きくなつた場合には、今日のよう状況に放置されておりますというと、日華の将來における親善を相当阻害し、或いは南方におきましても同様に母國日本に対する怨嗟の的になるのではないかと思うのであります。そこでこれらの南方或いは大陸におけるところの日系孤兒の処理について、外務大臣としての芦田総理は如何に処置されようとしておるか、或いは如何なる手を打とうと曾て試みたことがあるかということを伺いたいと思います。
  92. 芦田均

    國務大臣(芦田均君) 只今指摘の問題についてはまだ十分に調査をする材料がありません。その方面にどれくらいな日系兒童が存在しておるかということについても、政府は正確に知ることができないのであります。従つて差当りこれに対して手を打つことができるという確信を持つておりません。平和条約等が締結されまして、自由にこれらの調査ができる時代になりましたならば、何らかの方法を採らなけりやなるまいと考えております。
  93. 小野光洋

    ○小野光洋君 この問題につきまして平和条約が締結されるまで手が付けられないというのは一應の理由でありまして、御尤もと思いますが、併し存外同胞の現在引揚促進運動がありますように、日系孤兒の救済運動というものを急速に起こして、國際的な援助を得ましたならば、何とかなるのではないかと思います。ただ平和条約が締結されて、自由に彼の地と往復ができるまで待たなければならんという理由はないと思います。さような冷いことが結局将來における親善関係の阻止にもなり、又我々同胞が彼の地においてなした行動に対する当然の責任を負わなければならない人道的な立場からも、見逃すことができないことと思います。進んで総理は、そういう点について平和条約が締結されて自由に行けるまで待つておれというようなことでなく、これは現在海外同胞特別委員会が國会内にもありまして、それも相当な成果を挙げておるというようなことに鑑みましても、この問題についてももう少し熱心に処理方針を樹立せられることをお願いいたしたいと思うのであります。  尚現在問題になつております行政整理のことでありますが、行政整理の大体の方向は大体能率を如何に増進させるかということと、それから官吏がやらなければならない仕事をできるだけ少くするということが必要だと思います。現在の統制がますます強化せられて行くというような面から考えますというと、官吏はいろいろな方面に必要になり、ただ地方自治体に任せて置いては相成らんということから、勢い出先に各中央官廳の出店を持たなきやならんということにも勢いなつております。かような点に考えましても、能率増進の根本的な立直し方をするということが必要だと思います。それから又一面におきましてはできるだけ統制を解除して、官吏が直接やらなければならない仕事を少くするということも必要ではないかと思います。かような点につきまして首相の採られておる現在の御方針を伺いたいと思う次第であります。
  94. 芦田均

    國務大臣(芦田均君) 只今行政能率の向上のためにいろいろ御者見なり御質問がありましたが、最近において行政部門に多数の人間を必要とする一番大きな理由は、言うまでもなく統制であります。政府の役人みずからが國民の経済生活に種々の干渉を行わざるを得ない事情が、一番大きな理由であることは申すまでもありません。もう一つの理由は終戰以來の我が國の置かれておる環境、例えば行政官廳或いはその他これに準ずべき機構において、渉外事務のために必要とする人員だけでも容易な数じやありません。そうして更に終戰後における交通機関の混乱、或いは或る場合には労働意欲の低下したことが著しく能率を害しておる。これも黙過すべからざる要素であると思う。そういつた各般の條件の下に官吏の執務能率を向上せしめるためには、種々の改革を必要とするのでありまして、これを一律に何割減というふうな数字で切詰めることは困難とする事情が多々あるやに思います。従つてこの点は目下行政調査部において進行しておる行政の整理調整、行政機構の改革、それから一面においては吏道の刷新、これに加うるに交通機関、食糧事情、その他の生活條件の改善を俟つて初めて理想のごとき改革が行われ得ると考えるのであります。政府としては事情の許す場合、常にこの方向に向つて努力をいたしております。併し容易に理想とする点に到達し得ないことは誠に残念に思つておる点であります。
  95. 小野光洋

    ○小野光洋君 現在計上せられておる予算の中におきましても價格調整費が五百十億円、及びこれの整理事務の取扱費が六十九億円というふうに計上せられております。かよう費用は自由経済におきましては全く一切無用な費用であります。一足飛びに自由経済に相成るということは不可能なことでありましようが、少くとかよう費目を全体の予算の中から五百七十九億円も計上しなければならんという事態は一日も早く解消しなければならんと思うのであります。かようなことから勢い行政整理も不可能になるというふうに相成るのではないかと思うのであります。そこで予算編成の場合におきましても、これらの費目の取扱いについてどの程度慎重に扱われたか、その点についてお伺いをいたします。
  96. 芦田均

    國務大臣(芦田均君) 價格調整費の五百億以上に上る金額の取扱いについて、予算編成のときにどのくらい慎重に取扱つたかというお尋ねでありますが、極く素直に申しますと、この價格調整費を交付したり、或いはこれを整理しますのは、それぞれの所管大臣がやつております。それをどういう程度に詳細にやつたかは私自身余り深く心得えておりませんが、必要とあれば所管大臣より答弁させますが、ざつくばらんに申せば、そういう点まで私はよく承知しておりません。尚後刻それぞれの所管の方からお答えをすることにいたします。
  97. 小野光洋

    ○小野光洋君 この統制の解除ということについて、大臣はこの予算の本年度内において、この予算の実施中におきましても、できるだけ解除の方針をとつておるかどうか、或いは又それについて解除の方策についての、どの程度までやつて行きたいと思うかというような点について、御方針を伺うわけにはいかないでしようか。
  98. 芦田均

    國務大臣(芦田均君) 統制経済の問題については、共産主義とか、社会主義とか、或いは資本主義経済という立場によつて、それぞれの見解はあります。併しながら、現在の政府は、三党政策協定の基礎に立つてすべての経済政策を立案いたしておるのであります。三党政策協定とはどういうことを狙つた政策であるか。社会主義的な根本イデオロギーに基く政策は暫く棚上げをする、社会主義政策を全部棚上げするというわけではありませんが、同時に今日の事態の必要に應じて、従來の純粋の自由主義経済政策はある程度統制経済に移行せざるを得ない。それを狙つてできておるのが三党政策協定であります。従つて政府としては必要な部面は統制を維持することは止む得ない。併し必要でない統制を強いててやろうとは考へておりません。その点は共産主義の経済理論とは著しく違うのであります。従つて今日現に存在しておる統制と雖もすでに必要がないと思われる統制は、できるだけ外して行きたいと増えておるのでありまして、最近に亜炭の統制を外したのもその例であり、又鮮魚についても近く高級鮮魚の流制はこれを外すことになつております。尚必要に應じてその他の品目についても、流通秩序の確立のためにいろいろ研究いたしております。尤も民主党自体の政策としては、現在の三党協定政策の立場を離れて見本來の経済政策は資本主義政党の立場に立つておるのであつて、その終局の目的が自由企業である点について、民主党の政策は今日と雖も変つておりません。但し経済危機を乗切るために必要な部分はいわゆる資本主義を基本とする経済政策と雖も、或る程度これを修正して行かなければならん。こういうのが私共の立場であります。
  99. 左藤義詮

    ○左藤義詮君 久し振りに総理がお見えになりましたので、関連いたしまして、只今予算が遅れたことは、吉田内閣にも、片山内閣にもあるとおつしやいましたが、私はそういう事情以上に政府の拠つてつておられる與党が必らずしも性格的にも政策その他の面において完全に一致していない。それが野党的な言葉を使いますれば、それは政権を早く持つために無理な政策協定をやられた。十分な肚からの協定ができていなかつたということが、私は予算の遅れた頼も大きな原因だと思うのでありまして、軍事公債の問題一つについても、委員会を開いたり、二重の答申をしていろいろ揉みに揉んで、やつとああいう中途半端な案ができたのであります。そういう点に私は現内閣の非常な致命的な問題がある。それが段々響いて参りまして、いろいろ問題があつて、形式的にも議会には眼をつぶつてやつと予算が提出せられた。その予算が今日まで我々が審議して参りました際において、政府の立つておられる與党三派の中に、これを修正しようということが起つておるのであつて、私共参議院で予備審査をしておる立場から申しましすれば、昨日決まりましたか、今日決まりましたか、與党三流の修正案ができた。そのときに私達は一つ新らしい予算案を頂いたわけでありまして、相当大幅の修正のようでありまして、さよういたしますれば、政府として最善と信ぜられたかもしれませんが、例えば國民の最も苦痛であるところの運賃にいたしましても三倍半にせられた。ところが、いろいろ努力してみるというと、二倍で済む、二倍半で済む。一般会計から繰入れると申しますが、それも相当他の方面から研究してみるというと、もつとよい途があつた。又特別会計それ自身にも、もつと引締めて行けばもつとあると思いますが、今度の三派案で引締めて行けばまだまだ節約する余地があつた。さような努力を拂わずに政府はただ卒然として予算を出された。あれだけの時間を掛けながら不完全な予算を出ておる。こういうことに対する私は責任は、特に大藏大臣或いは特別会計を主管しておられる関係大臣はお負いになるべきものと思います。國会が自主的に直したから、不信任案を作つていないから、それで頬冠りをするのだということは、私は政治的な責任を解するものでないと思うのでありますが、かような点について一つ総理の所見を伺いたい。
  100. 芦田均

    國務大臣(芦田均君) 只今の御質問の点は、左藤君がここへお入りになる前に小野君からお尋ねがあつてお答えしたのと同じ問題でありますが、各國の例を見ましても、政府の出した予算を國会が修正することは、どこの國にもあります。併し政府の出した予算が國会で手を付けられたから、それで政府が引責したということは稀な例でありまして、若し政府に政治的責任を負わせようというならば、國会はいつでも不信任案をお出しになる権能をお持ちになつておる。そういう不信任案が出れば、政府としては不信任案が通るか通らないかによつて、明白に進退を決することができる。それだけの権限を國会は十分にお持ちになつておるのであるから、予算数字が多少動いたということが、直ぐに政府に対する信任と直接関係のある問題とは考えておりません。
  101. 左藤義詮

    ○左藤義詮君 信任・不信任を問題にしておるのではございませんで、政府が揉みに揉んでお出しになつた、大変遅れて國会にも國民にも迷惑を掛けてお出しになつ予算が、尚修正の余地がある、即ち今日から見れば國会、而も政府の與党さえも承認し得ないような不完全な予算であつた、かようなことをおお認めになるかどうか。それに対する責任をどういうふうにおとりになるか。その点を申上げておるのであります。
  102. 芦田均

    國務大臣(芦田均君) 不完全であるかどうかということは、開会が御判定になる。政府は完全なりとて出しておるのであります。それを不完全なりという御批判は國会が下されるというのに過ぎない。自分みずからそういう批判を下して出しておる予算ではありません。
  103. 左藤義詮

    ○左藤義詮君 非常に遅れた予算、而も提出されましてから相当予備審査を、思うように大臣がお出にならないのを無期にお願いしてぼつぼつやつて來たのでありますが、それが今日に至りまして、政府の與党から非常に大幅の修正をされる、私共からいたしますれば、昨日今日になつて、或いは明日になつて、やつと我々参議院として、チェック・アンド・バランスの立場から生れて初めて直面したわけでありますが、この與党修正案を政府が拒否なさつて、どこまでも原案を支持なされば別でありまするが、若しこれを傳えるごとく政府がお呑みになるとしまするならば、私共は今日明日から新しい予算に取組まなければならないわけであります。さようにいたしますと、本日は二十三日、衆議院でこの修正案について、野党も立場もございますからいろいろ審議をせられ、それを分科会に掛けられ、それが通つて、そうして参議院に参る。私は参議院にも相当審議の期間を頂きたいと思うのであります。予備審査ということにもいろいろ問題があると思いますが、原案通りでありますれば、予備審査というものも幾分私は緩やかに見ていいと思いますが、今日明日になつて全く生れ変つた予算が、衆議院を二十九日に通つて、参議院が時計を止めて三十日にやるということでは、我々しては責任を果すことができないと思うのであります。総理は七月の暫定予算をお出しにならない御決心のようでありますが、そうすると三派で修正いたしました更正予算と申しますか、その予算を、政府は與党に多数をお持ちになるのでありますから、衆議院をいつ頃通過するお見込みであるか、参議院にはどれだけ、只今のところ審議期間を予定になつておりますか。政府の御信念、御誠意を伺いたいと思います。
  104. 芦田均

    國務大臣(芦田均君) 衆議院の審議は、衆議院独自の見解で行われるのでありまして、政府の力は、衆議院の審議期日を長短いずれにも変えることはできないのであります。ただ予算委員長その他の人々から話に聞いておる程度の予定によりますと、明日、明後日ぐらい分科会を開いて、あと一日、各党の態度を決める日を見込んで、その次の日に本会議に報告するというようなプログラムを以て臨まれておるということでありますが、併し政府はそれに対して何ら彼れこれ申すべき立場にはおりません。私の知つておる限り、そういう聞込みがあるという程度の話に過ぎないのであります。
  105. 左藤義詮

    ○左藤義詮君 立法と行政を峻別した非常に冷たいお話でありますが、私はこの危機を乗切つて行く政府といたしましては、與党に十分な連絡を持ち、十分な根拠を持つて、初めて強い政治力があるのでありまして、第三党はありまするが、とにかく民主党の総裁であられ、三派の水も漏らさぬ緊密な協定を元にしてやつておられるならば、さような冷たい、國会のことは國会でやるのだから俺は知らんという言い方は、私は余りにも冷酷過ぎると思うのでございます。政治的にもつと熱を以て三派の上にしつかり立つた政府でありまするならば、私は相当そこには確信をお持ちでなくちやならない。殊に暫定予算をお出しにならないということは、六月三十日には遮二無二この予算を通す、どんなに修正されても、不信任が伴わない限りは、頬冠りして是非とも通すということでなければ、暫定予算をお出しにならないという確信が立たないと思います。さよういたしますれば、今明日にやつと決定いたしましたその大幅修正の新らしい案が、只今おつしやつたように、プログラム通りに行く確信を政府はお持ちになつておるかどうか。國会のことだから聞き及んでおるという程度では、余りに政府としては冷た過ぎる、政治に対する信念がなさ過ぎると思うのであります。殊に私共参議院といたしましては、こういう面貌を新たにして來た案でありますれば、十分私共は審査の期間を頂いて責任を果したいと思うのであります。そういう点につきまして、お聞込み程度しか実際ないならば止むを得ません。そういう熱のない政府ならば仕方がございませんが、若し民主主義の政府の首班として、國会に多数の基盤をお持ちになる政党総裁が作つておる政府の首班として、もう少しはつきりその点に信念を打込んで、予算に対する態度を御示し頂きたいと思うのであります。國会のすることだからどうでもいい、國会のすることだからただ聞込み程度ということでは、私は余りにも冷たい御態度に了承いたすのでありますが、これは私共の主観的な観測かも知れませんが、私は只今のプログラム通りに仮に参りましたとしても、参議院としては十分の審査期間がない、この前、印刷等の御理由もございましたが、非常に大幅の修正案が出れば、それに対して十分な資料を整えて頂いて、それを新しい氣持で取組んで審議をいたさなければならない。さようにいたしますると、もうあと僅か一週間で参議院を通り、参議院に十分の審議期間をお與え下さるかどうか、國会のことだから勝手にやるということでなく、ここまで押詰められて参りました参議院が、審議責任を果し得るように、政府として御善処頂きたいと思うのであります。その点につきまして総理の御所信を伺つて置きたいと思います。
  106. 芦田均

    國務大臣(芦田均君) 精々左藤君の御希望のように善処いたします。
  107. 石坂豊一

    ○石坂豊一君 只今の左藤君との質疑應答につきまして、総理大臣に一應確かめて置かなければならんことがあるのでありますが、実は私は芦田君に余り質疑するつもりはなかつたので、予算の本質を頼つて大藏大臣にでも一つ問うつもりだつたのですが、この予算に対しては、言葉は甚だつづめて申上げますから心持と合わんかも知れませんけれども、完全な予算と思つて出しておる、こういうことでありますが、それならばこれに対してちよつとでも修正を加えられるというと、大なる責任を感じなければならんことになる。ここは艱難の場合、敗戰國の現状として、如何に考えてもこれは完全なものと思わんけれども、最善を盡して出した予算であるとおつしやるならば、我々は聞える。完全なる予算で少しも落度がないのである。併しながら議会は議会の権限で直せ、少しもこつちはそれに関連せぬ、況んや予算を修正したから内閣を辞めたりするような例がないとおつしやるけれども、現にあなたの前の片山内閣は二・八の支出に行詰つて遂に辞めてしまつた。こんな覿面な眼前の例がある。それを遠き米國とか英國の例を取つておつしやるけれども、我々はそんな遠いところを取らずに、道は近きにあり、而もこれを遠きに求めておるような感がある。(笑声)芦田さんのために言うならば、最善を盡したけれども、どうなりと直して呉れ、こうおつしやるなら、我々は襟度の廣いのに感服するけれども、これは一番に良いのだ、お前らが何とか言うのならお前らの勝手だ、こうおつしやつては面白くない。況んや芦田氏は我々の面前で、どうも一生懸命盡したけれども、完全なものでないからどうなりと直して呉れと言われた言責がある。半ば全開の席であつたから、これを公開と言つてもいいのだけれども、私は徳義上これを公開としたくなかつたのだけれども、あなたみずから適当に一つつて呉れとおつしやつた。そういうつもりなら、我々は如何にこれは與党三派で直しても、これに少しも責任を感ぜられる必要はないけれども、そうでない完全無欠なものであるとおつしやるなら、数々は立直らなければならん。(笑声)どういうわけかというと、先般來ここで聞いておつた軍高利拂の修正、これは実に芦田さんから良心に背いた提案でると言われたからして、我々はこれは一つ芦田君の氣持になつて修正しなければならんかと思つておる。そういうことであるから、左藤君も言いましたが、そう蹴つ放すような答弁をしないで、あなたも衆議院議員だから、國会議員のつもりで、我々と同じ考えで、もう少し柔かに受け應えなさつたらどうです。そうでもせんと、芦田氏はとても冷たい人である、議場で詭弁な弄する……昔原敬という人は如何にも詭弁を弄するという人であつたけれども、一たび親しくなるというと親切なよい人であつた。私は芦田さんもそうだと思つておる。親しくなれば非常によい人であるが、一たびそこへ出ると非常に冷たいということである。冷たい答弁なさる。日に日にそういうことが増長して來る。(笑声)而してこれに対して今のこの予算案が完全無欠だとおつしやるが、その一つの例として、軍公利拂のごときはこれを否決された場合にどうなさるか。その点をお聞きしたい。
  108. 芦田均

    國務大臣(芦田均君) 只今石坂先輩よりいろいろ訓戒を受けました。今のお話の中には多少の行違いもあるかと思います。私はこの予算が完全無欠であるから少しも修正を受附けないという氣持は持つておりません。そのことは現に本日午後衆議院の予算総会においても、同じよう質問に対して、我々はどこまでも國家機関として最高の地位にある國会の意志を尊重するのあるから、國会多数の意向が定まるならば、政府は謹んでこれに従いますと言つて來た。でありますから、その態度は参議院に対しても同一であることを申上げても少しも自分の氣持を偽つているのではないのであります。石坂さんの話の仕方も少し誇張してお話なつたと思うのでありますが、(笑声)最後にお尋ねになりました軍次公賣の利子の打切は、まあいろいろお話通り徹底しない点もありましよう。併し大体衆議院は通ると思います。この際参議院に廻つて來ましたら、どうか余り固くならないで、止む得ないものとして(笑声)御承認を願いたけと、かように思います。
  109. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 総理がお見えになりましたので、予算審議につきまして政府の態度について一つお伺いしたい。実は本予算におきまして重大な要素となつておりますのは、物價の改訂と貸金の問題とであります。この予算審議するに当りまして、国会側よりいたしまして物價並びに賃金に関するいろいろなる統計その他の資料を要求しておつたのであります。然るに、これに対しまして政府の方では、賃金の統計につきましては今日に至るまで未だ出しておりません。又物價の改訂の点につきましては、安本長官或いは大藏大臣等にいろいろ御発表を願うように申上げたのでありますが、これ亦関係方面との折衝その他の関係があつて発表できないということで、我々はこれらの数字を與えられずして審議して参つたのであります。然るに昨日物價改訂につきましての政府からの御発表があつたのであります。この物價改訂についての御発表は、予算審議しております國会に対して発表せられませず、直ちに新聞社に対して発表せられておるのであります。私共はこの政府の態度というものは極めて遺憾であると考えるのであります。國会が開かれておらないときでございましたならば、そういう方法も亦止むを得ないことでありましようが、國会が開かれておつて、國会が予算審議しておるときに、先ず國会が要求しておりますところの資料を出す、國会が要求しておりますものでございますから、先ず國会に発表すべきだ、或いは同時に発表すべきに拘わりませず、そのことを行わない。私共は昨日夕刊を見て初めて知つたわけであり、政府の発表の物價改訂に関する書類は本日ここに配布されておるという状態なのでありまして、これは政府が國会を軽視しておる、こう考えざるを得ないのであります。今後かよう方法を以て臨まれるということになりますれば、私共といたしましては、この新憲法下における國会の予算審議に対しまして、政府は未だ旧來の頭を以て臨んでおるとしか考えられないのであります。この点につきましては今後かくのごときことがないようにお願いしたいのでありますが、政府はその点についてどう御考えになるか、御所信を承わります。
  110. 芦田均

    國務大臣(芦田均君) お答えいたします。物價改訂及び賃金水準に関する統計その他参考資料の提出を求めておつたに拘わらず、いろいろな事情で今日まで出して來なかつた、そうして物價改訂の一部分は國会に報告される依然に新聞に発表してしまつた、これは誠に國会を軽視しておる政府の態度と判断せられるというお話でありましたが、そういう気持は毛頭なかつたのであります。或いは発表をする手続に何か手違いがあつたことでありましよう。又書類を請求されておつて提出しなかつたものがあつたとするならば、これは何らか特殊の事情があつてそうなつたのじやないかと思います。結果においてさような始末になつたことは政府としては遺憾に存じますが、尚その辺の事情は詳細取調べまして他の機会にお答えしたいと思います。
  111. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 次にお伺いいたしますことは、本日大体與党三派間における予算の修正についての意見が纏まる方向に向つておるように聞いておるのであります。恐らくこれは近く修正案が與党間において纏まることと思うのでありますが、これが纏まりました場合、この修正せられましたる予算が議会を通過いたしまして、施行されるに当りましては、大藏省当局その他各関係官廳の協力がなければなかなか施行できないのであります。大藏省におきましては、先に出されました大藏省として最善と考えられますところの案が可なり大幅の修正を受けるということになりますと、大藏省といたしましては、或いは他の官廳といたしましても、一つの面目の問題があることと思われる。又修正案が極めて短い間に成立いたしましたために、技術的に或いは少々無理な点もあるというような点がありましで施行の困難な面があるのでありますが、そういう場合におきまして、大藏省或いはその他の関係官廳は、本修正案に、修正されました予算につきまして十分に協力するかどうか、そうして又これは当然せられなければならんと思うのでありますが、その点につきまして、政府は確信を持つてこれを各省の官吏をしてやらしめ得るかどうか、その点について確たる方針を示して頂きたいと思うのであります。
  112. 芦田均

    國務大臣(芦田均君) 只今予算の執行について各省間の協力を必要とする旨の御意見がありました。全くその通りであります。併し従來の例で見ましても、予算の執行について各省の間に激しい相剋があつたという事実は案外少いのでありまして、今回の予算も、國会を通過してこれを公布いたしました暁には、必ず政府の各省が相協力し、一致してその万全なる施行に当ることと確信いたしております。尚先程來頻りに與党三派の修正案を取上げて御質問がありましたが、率直に申しますと、国会内の政党と雖も、これを正式に修正案として出すためにはいろいろ了解を経べき筋があります。その辺の話がまだ進行いたしておりませんようですから、果して修正案が通るのか、或いはどういう形で通ることになるのか、只今までのところでは一向見当がついておりません。従つて予算委員会における御審議においても、政府原案を基礎にして御審議を願いたい、かよう考えておるわけであります。
  113. 中西功

    ○中西功君 総理に簡単に御質問したいと思います。一つの点は、実は三千七百円ベースのこの算定の仕方や、或るは又実際の生活とこの賃金水準との関係につきまして、私達は可なり眞剣な審議をしたわけでありますが、いろいろ各大臣の立場におきまして、その回答が多少食違つておる、その上に実は先つき言われたよう資料提出の問題も絡みまして、我々としては可なり不満を持つておりますが、実は三千七百円の問題についての資料は、私今日たまたま衆議院で予算委員会に出されておるのを見ましたが、それはもう相当可なり前に出されたということを聞きました。併しそれが参議院には來ていない、あれ程何回か何回か我々が要求しておるのに、あの初歩的なものでさへ來ていないということを聞いては、私実にびつくりしたのであります。そういうふうな状態で参議院の審議がなされておる、又なされて來たということを、私は首相としてはつきりして貰わなければいけないと思います。ところで、各大臣の答弁が食違つておるという点は、これはここの予算委員会の各委員として可なり多くの人が認めておるところであります。尚この問題については、我々はもつとはつきりと問題を突止めなければならんと考えておりますが、差当り若し安本がこの度策定いたしました三千七百円というものの数字が、政府自身が行なつ方法、或いは統計、そうしたものによつてこれが一應間違いであるということが明確になりました場合に、首相の意向としては一應編成した以上はそのままで行くと、こういうふうな気持なのか、それともやはりそういう政府自身が行なつたものに間違いがあり差違があるとすれば、それは直すという態度において何らかの善処をする氣なのか、その点を一つお聞きしたいと思うのであります。序でに申しますが、実はこの予算書全体は、先つきも私がちよつと申しましたように、あちこちにおいて矛盾がある、はつきり政府自身の意見を聞いても矛盾がある、違つておる、数字が違つてつたり何とかしておる。そういう点が実に多々あるのです。そういう点も首相としては、一應これはもう編成替をすることは困難だからといつて、それを押切つて行かれるつもりであるかどうか。そういう点をお聞きしたいと思います。
  114. 芦田均

    國務大臣(芦田均君) 給與水準の三千七百円を将來維持できないときにどうするかという御質問が第一点であつたと思います。私は給與水準を算出するむずかしい方式等を自分で心得ていないものですから、事務当局、所管大臣から聞いたのを薄ら覚えに承知しておる程度でありまして、詳細なことは、重大問題でありますから、所管の大臣からお聞きを願つた方がよろしいと思います。併し私の今考えておることは、成程勤労階級に対する給與は今日のような社会状態、経済条件から見て、三千七百円では相当苦しいだろうと想像ができるのであります。然らばどの程度まで出せるかということになると、これも國家の現状として十分な手当はできない。そこで一月、二月頃の賃金を基礎にして、その実質賃金に相当するものを掴んで、それを三千七百円という標準において符合するものと考えておるのであります。苦しいではあろうが、何とかこの給與水準で当分我慢をして貰いたいという意味において、これを出しておるのでありまして、若しそれがどうしても維持できなかつたらどうするか、そのときには又何とか考えなくちやならんといふ程度に、莫たる考え方でこの案を出しておるわけであります。
  115. 中西功

    ○中西功君 もう少し具体的にお聞きいたしますが、今まで大藏大臣は、先つき首相が答弁されたようには答えなかつたと思うのであります。この三千七百円ベースでは安本当局として十分根拠がある、こういうふうなものとして出しておる。自分は勿論それは所管外だから安本当局に聴いて貰いたいが、ともかくもこれを根拠あるものだというふうにして出して來ておるのである。ですからこれはこのまま維持して行く。更にそれを維持するためにいろいろな諸政策万般を講ずる。ともかくもこれを年間のものとして、自分達は一應考えてここに來ておる、こういうふうな意味なんであります。でありますから、追加予算や補正予算というものは出さないということをはつきり明言されております。ところが、加藤労働大臣の昨日の答弁は、政府が最初策定したときにおいては、推定をいろいろ使つておる。けれども一應根拠あるとして作り上げた。最初のその策定の根拠が崩れたということになれば、これは考えなければならない。だからこれはそのための措置を講じなければならない。先の首相のお話では、これが維持できるかできないかということのように問題を持つて行かれておりますが、そうじやないのです。問題はこの三千七百円ベースを、今日この予算の上におけるものをして我々は考え質問しているわけなんでありまして、加藤労働大臣としましては、若しその根拠が、政府が一應推定したのでありますが、併しその推定をしたけれども、その推定は飽くまでも推定であつて、実際に若しそれがいろいろの事情で壊されておるということになれば、これはそれを十分考慮しなければいかん、こういうふうな答弁なんであります。ここに私達といたしましては非常に大きな点で食違いがあると思つております。この点ですね、首相としてどうお考えになつておるか。又閣議やそうしたところでどういうふうに御決定をなされておるのか、それをお聴きしたいと思う。
  116. 芦田均

    國務大臣(芦田均君) 先程私が答えたことは、根拠なしに三千七百円を決めておるという印象を與えたらしいですが、そうではないのであります。三千七百円の給與を決めるには根拠がある。科学的な方法によつてつたことには間違いありません。そこでこの線を守つて行くのに、果して十分の根底があるか、守れるのかといろんな議論があります。丁度利根川の堤防のようなもので、造る者達は切れないと思つてつておる。それならば、切れたらどうするかというと、そのときは、切れませんと言つた人間も、切れると言つた人間も、相当の手当をすることは当然のことなんです。そういうふうに意見は分れておるのだが、切れたときには、意見はぴしやつと合う、だからそう御心配にならなくても何とかやつて行ける。(拍手)
  117. 中西功

    ○中西功君 僕はそんな簡単な根拠の問題ではないと思つている。恐らく首相は具体的な数字を挙げないから、問題の所在がどこにあるかということが分らないのだろうと思う。で、この三千七百円ベースについては、そんなに簡單にやつて行けますというふうな軽い問題でなくして、少くとも六百万の労働者が食うか食われるかというわけじやない。食うか食えないかの問題なんです。実際に笑い事じやないのですよ。眞剣なんです。これは又國民の本当の生活水準を決めて行く問題である。そういうふうな大きな問題で、それがどう決まるかということは大変な問題です。これは或いはこのまま通つてつた後、このことに関して非常に大きな政治的な或いは経済的な問題が起つて來る。起つて來たときに或いは分るかも知れないが、決してそういうような簡単なことじやない。ところで、私の言つておるのは、政府は三千七百円ベースを根拠があるものとして作つた、それがですよ、そういう実際の統計が三月において推定したのです。ところが、四月、五月の実際に出て來た統計は、その推定とは多少の食違いどころでなくて、遙かに違つておるという問題があるのです。そうなりますと、推定が如何に違つてつたかということになる。又そういうふうな違つた推定をしたというところに問題がある。ですから、そういう推定が実際現に壊れておる、壊れておるのです。壊れておるのをこれを押切つて、これを根拠があるものだと言つて、押切つて行くだけの心臓で以てやつて行くのか、やつて行かなないのかということを聞いておる。恐らくこれは多くの労働者が異口同音に政府に向つて聞くだろうと思う。そういうふうな意味なんです。政府が若し本当に自分が公正な態度で正しい政治をやつて行こうとするならば、自分の言つておることが壊れておるのならば十分改めるべきだと思うのですが、それを頬冠りして行くつもりなのかどうかということを私は聞いておるのです。
  118. 芦田均

    國務大臣(芦田均君) いろいろ御意見がありましたが、私共は三千七百円の基礎がすでに壊れておるという見解には同意することが困難であります。この線を以て正しい拾興水準であるという理論の上に立つてこの予算を編成いたしたのであります。併しその細かいいろいろな計数等につきましては私は余り深く承知しておりません。所管の適当の者から返事をさせることにいたします。
  119. 奥むめお

    ○奥むめお君 私前の予算、今度の予算全体に対しまして、婦人団体や婦人会から、陳情團の訪問を受けまして、應接に暇がないというふうな立場にあるのでありますが、総理大臣が施政方針演説のときに、インフレを阻止するために一生懸命にその方針で強力な政策をするということをおつしやつて頂いたときも、私は具体的にどういうことをやつて下さるかということを伺つたんですが、そのときの御答弁も非常に抽象的であつたし、不満足だつたのですが、今にして考えると、こういうふうにこの物價を値上げすることと、それから新らしい税金を拵えて、税金を沢山取立てることと、それからまだ実施されない前から破綻が明らかなように人々が考えておるこの三千七百円ベースを、とにかく押切るということで、これがインフレ阻止の、首相のおつしやつた第一段階つたのか知らん、こういうふうに考えざるを得ないのでありますが、如何なんでございましようか。それを教えて頂きたいと思います。
  120. 芦田均

    國務大臣(芦田均君) 今何の予算及び物價改訂は、只今お話通りであります。インフレの高進を防ぐために、こういう方法を採つたのであります。奥さんのよく御存じ通り、今日の重要産業、石炭にしても肥料にしても、その他の物にしても、これを低い價格で抑えておいては、赤字になつて、誰も石炭を掘る者がありません。何人も鉄を造る者はないのであります。銅を掘る者もおりません。それですから、物の値段を生産費の償う程度まで上げてやらなければ、物が出なくなる。そこで生産費を償うよう止むを得ず價格を上げます、價格を上げれば、生活費が高くなる、給與水準も従つて高くならざるを得ない、だが、それらの物價騰貴も見込んで、或いは給與水準が上ることを見込んで、税金も殖やさざるを得ないというのであります。ところが、物價と賃金と、すべての物の値段が同じように平均して上るならば、これは定價表に零が一つ殖えるか或いは零が二つ附くかで、これがすべて均衡を保つて高くなつて行くというならば、観念の上でそれが高くなつたというだけで、国民生活はちつとも圧迫を感じないで済む。これはお分りの通りであります。それでありますから、物價が何倍に上つたとか、税金や汽車質や賃金が上つたと言いますが、一番心配することは物價と賃金とが、そうして物價相互が凸凹になつておるということであります。賃金も物價も百倍になつたとて事実均衝を保つて上るのではちつとも驚くに足りない。それであるから汽車賃も上る、俸給も上る、その外の物價も上るというと一見非常に恐しいように聞えますけれども、それほど恐しいものではない。又そういうことを平均して均衡を保つよう物價の改訂を行い、給與水準及び賃金等の関係を改め、かくして今日のインフレ対策としては、この程度方法を採る外に途はない。かよう考え予算を編成いたしたわけであります。
  121. 奥むめお

    ○奥むめお君 まあ物價と給與との不釣合いということはもう幾度か皆さんから論じ盡くされておることでございますから、私ここでそのために時間をとろうとは思いませんけれども、実際今日では人々はびつくり予算なんて言いまして、発表される度毎にびつくりするばかりである。それは大衆に余り大きな犠牲を負わしておる。これはもう実際に大衆を犠牲にして國家の財政のつじつまを合せておるというより外はないということは、これも議論の余地のないことだと思う。殊にインフレの問題から言いましたら、この点で政府としてはインフレを阻止するだけの努力をしておると見えるならばとにかくといたしまして、第一に火の手を挙げるのは政府みずからであつて、煙草なんかは随分沢山の収入を当てにしておる。まあそういうふうな、酒なんかもそうですし、政府が先ず値上げの、非常な飛切りの値上げの見本を示して、右へ倣えを強制しておる。そういうふうなことは國民としては実際今度の内閣は一体何をするだろうというふうに、皆大変自分達の生活の前途に対して非常な絶望的な暗い気持を持つておるのでございます。やつと闇値が落ち付いた。それは國民に購賣力がないのですから闇値が上るという理由もありませんが、闇値が落ち付いたというところに、政府みずからが物價の値上げをする、官営でやつておる物の値を先に上げるものですから、又ここで非常な生活費の窮乏ということになつて來ておるわけでございますけれども、いずれ三党政策協定で、三党の間で修正予算の案が出るそうでございますけれども、私といたしましては、消費者殊に零細な國民の消費生活というものに非常に影響を與える、そういう問題をもつと物價廰あたりなんかも眞剣に考えて貰わなくちや困るということを申上げて置きたいと思います。昨日も行われましたこの物價改訂、あれを見ましても、汽車賃は議会に審議権を與えられておるのですから、議会も新聞も問題にしておりますけれども、審議権の與えられていない木炭や電気、塩なんというようなものがびつくりするようにぽかつと大幅に引上げられておる。これは汽車に乗る人は一年に何遍乗るかということは勘定しますと直ぐ分るのですけれども、日々なくてならない物が非常に大きく上つておる。これと賃金ベースとの釣合いがとれて行かんということは著しい申告な社会問題になると思うのでございます。是非こういう点については今の内閣自体の根本的な出発点というものをずつと考えて項かなければならない問題が多いと思うのでございます。で、御質問申上げることは大藏大臣に譲るべきものだと思いますけれども、私の希望としてお願いを申上げます。
  122. 池田恒雄

    池田恒雄君 私は総理大臣に対する質問は、大分前にもちよつと内閣の方の方に申し上げてあるのですが、三つに分けて御質問申上げますから、そういうふうに分けて御答弁を願います。  第一にお伺いしたいのは、多分十七日か十八日の委員会だつたと思います。木下委員が、何かこの予算は資本家的であるというようなことを言われた。首相は資本家的であると言われることは心外だ。まあ颯爽たる理由を述べて、私は非常に嬉しかつたのでありますが、その約四、五日間本委員会で本予算審議を行なつて來たのでありますが、その経過において、資本家的でないということは言い切れないものが相当あると、こういうふうに私は考えたのであります。第一に取り上げられた問題は、健全財政というものは収支が符合することだというふうなことが政府委員の方から時々説明があつたのですが、その委員会の質疑應答の中では、収支が相償うというのじやなくて、予算國民経済との均衡がとれていなければならない。こういうことが大体取上げられて來ておると思うのであります。そういうふうに國民経済予算との均衡が健全財政にとつて重大要件だというと、その点で今度の予算は非常に疑わしいということになるのじやないかと想います。更にここ四五日の審議の経過として明らかになつて來ておることは、この予算昭和二十二年度における二千何百億かの予算ですね。この予算を膨らました予算ですね。三千九百九十億という数に膨らました。單にこういうふうにしか見られないのですね。若干その大きく膨らまして、更にその中に将來膨らむべき新らしい因子を政府が加えておる、こういうふうに受取れるわけです。これは十七にちあたりの公聴会、あの公聴会を開かれたとき、公聴会に公述に参りました各公述人が、それぞれ指摘して行つた点であると、こういうふうに思うのです。それで大体そういうことが明らかになりました。そうしますと、私はこの予算は、政府は盛んに健全財政じやというようなことを言うておりますが、昭和二十二年度の予算、あの予算をただ膨らましただけで、而もあの予算の中で、政府は十一月黒字政策というものを採つたのですが、これは何にもならなかつたのです。そういうことが二十三年度予算でも行われるのかというようなことなら、これをどうしようという努力をしておらないということになるのですね。又先頃の予算審議の経過では、國民の所得計算について、非常に疑問がある。これは国民所得を何か客観的に計算して見たのでなくて、政府予算が四千億という工合にしてしまつて、そうしてその四千億に都合よく国民所得を逆算して行つた。国家財政の中に国民所得という数字をぶら下げておる。私はこれは非常なインチキなやり方であると思います。更に十九日だつたと思いますが、この十九日も、大藏省の主税局長がやつて來て、生産は幾らか増大しておる。併し國民の購賣力は減つておると言う。生産力が増大しておるのに、國民購賣力が減つておるということでは、我々としてはおかしいことだとしか感じないのですね。こういうところへ以て來まして、最近非常に一般労働階級の購賣力が低下しておるという点から見て、困つておるのだと思う。こういうふうに困つておるというのに、恰かも國民は國家の厖大財政を背負う力があるというように、國民の所得を政府が捏造しておるということになりはせんかと思う。更に国民所得が低下しおるということは、十九日の委員会であつたかに、木村、中西、岡田の諸氏がいろいろ質問されて、政府委員からそれぞれ答弁があつた筈であります。この計算のし方については、何か安本の役人さんが、あれはあつちの領域だ、こつちの領域だといつて、そこのところをうろうろしていたのでありまして、大体そのときも質疑應答の経過から、國民の生活はぐんと下つておるということが明らかだつたと思うんです。それから昨日は加藤労働大臣が参りまして、中西、木村委員との間でいろいろな質疑應答があつたんです。これは賃金問題を中心にしていろいろ議論をやりましたが、ここでもどうも國民所得というやつはそう殖えておらない。同じく昨日は物價廰の次長と安本長官がここへ來て岡田、木村両氏の質問に答えられておる。ここではやはり物價がどんどん上つて來ておるということを中心として、一般國民の生活は向上していないということが明らかにされておつたところです。そういうものに対して、とにかく物價はやたらに上る、それから税金は上るというようなふうに見えるのです。すると、こういう大衆の負担を基礎とするところの財政を押付けるということはやはり資本家的だ、こういうふうに言わなければならないのじやないか、こう思うのです。それから昨日は今後の改訂した物價を新聞に発表したわけなんですが、これは先程岡田委員とそちらのどなたかが質問なさつた。それに対して大藏大臣や何かが御答弁にもなつたのでありますが、これは考えようによると、政府がこの予算を國会に対して押付ける、こういう工合に見られた。これはますます以て資本家的である、というよりももつと専制資本家的、独裁的な傾向がある、こういうふうに見なければならないのじやないか。こういうふうに私は考えるのであります。でありまして、大分前に、総理大臣が本会議やこの委員会でお話なさつたことと、その後の審議の経過では大分違いがあるのでございます。その点をこの際総理大臣から一應御意見を承つて置きたいと思います。
  123. 芦田均

    國務大臣(芦田均君) 予算というものが健全であるためには、國の健全な経済的基盤の上に立たなければならないということは只今指摘通りであります。従つて國の経済力の伴わない予算の編成は不健全である。これもその通りであります。さりながら長い戰爭をして、政府も個人身みんな貧乏しておる。或る意味においては破産の前宵にある日本が、平時のごとき意味における健全財政が組めるか。私は組めるものではないと思う。今、我々は破産の前宵にある。税金と雖も殆んど担税力の頂点に達しておる。而も國家は各方面とも思切つて支出しなければならん部門が多い。あの大戰にこれ程負けて、これ程貧乏した日本が、平時のような意味において健全財政の組めるものではないと、私は信じております。だが併し、数字の上から見ても、又公債に財源を求めない点からいつても、一つの健全財政と言えるでしよう。今まで財政学者の言つたような健全財政ではないかも知れないが、併しこれは日本の今日の國情がそれを許さない。私はその間に立つて、これくらいならばインフレーションを抑えて、一應のつじつまを合せてやつて行けると思つておる。従つて去年の予算と比べて今年の予算に著しく新規なものがないと言われるが、それはその通りで、この苦しい世帯でそう思切つた金を出して事業ができるものではない。止むを得ずこの程度は止めざるを得ない、こういうことなんです。資本主義的だとおつしやるが、一体今日の日本に資本家というものがどれ程残つておるか。立派な洋服を着て、街を歩いて紳士らしい顔をしておるが、あれは昨日の紳士階級の残滓が残つておるだけだ。みんな労働階級に落ちておる。だから日本國民の大多数は皆勤労階級です。その勤労階級が自分の財力に應じて税を出すという決心をしなければ、日本の復興はできないのだ。僅かな俸給給與を貰つておるが、それでも日本國民としてその一部分を割いて喜んで税を出すとの決心をしなければ日本の経済再建はできないのだ。どこを探しても、我が國にはイギリスやアメリカに見るごとき厖大な担税力を持つておる人間は住んでいない。日本にはそんな階級はないのですよ。好むと好まざるとを問わず何かの臍繰りを税金として出さなければならんというのが今日の日本の姿なんです。だから資本家的と言われるが、一体資本家というものが日本のどこにある。僅かな闇商人以外に資本家らしい者は居らんじやないか。事業をやつて赤字です。月給取にあつては食うか食わないかでやつておる。それが今日の姿なんです。それであるから、どうもこの予算が資本家的の予算だと言われる意味がはつきり私には分りかねる。そういう意味において作つた予算でありますから、随分無理もしておりましよう。併し戰争に敗けた日本の姿がそのまま予算に現われておるものと見る外に考えようはないと思つております。
  124. 島村軍次

    ○島村軍次君 只今奥むめおさんの質問に対する首相の答弁に対しまして、はつきりして置かなければならない問題がありますので、一つ明確な御答弁を得たいと思います。それは物價と賃金との関係は並行的に例を一つ付ければという、いわゆる事例をお取りになりましたが、農産物價に対してはいわゆるパリテイ計算という方法を採つておる。そうして政府は急いで六月十五日には重要産業の價格改訂を是非やらねば生産が減退すると、こうおつしやつた。そのために六月二十一日ですか、昨日御発表になつた。然るに米價に対しては今生産過程にあるのです。而も昨年の米價は千八百円ベース時代に決めたので供出をやつたのである。それに対して價格差の問題がある。同時に更に今後の米價に対しては一体どういう方法でやるのか。先に首相のお話なつた、諄々としてお諭しになりましたようなお言葉が、農産物價に対するお考えが、一体どうお考えになつておるのか。一應お伺いしてみたいと思います。
  125. 芦田均

    國務大臣(芦田均君) 極めて率直にお答えをいたします。昨年の秋から三月頃に掛けて供出した供米の價格は、昨年度に決めた價格で農家が米を賣渡した。そうしてこの出來秋まで何とかそれで食い繋ぎをして行かなければならん。その中途において物價がどんどん上つて来た。だから去年賣渡した米の相場も後から物價の上昇に準じて追加拂をしてやるのが本当ではないかという議論は或る程度まで筋の通る議論である。ところが、物價が上つた、従つて農産物の収穫に必要とする種々の経費も高くなつて来る。そこで農家はこの秋の収穫を得るまでに再生産のために随分高い費用が掛かる。併しその再生産の費用はどの米價に負担させるかというと、それは来るべき収穫米に生産に必要とした價格負担させるのが適当だと、こういう議論も立つ。政府が常に打ち合せをしなければならん筋においては、前の議論はどうしても納得しない。そこで政府としては政策をとる上において相当の困難があるという事情を御了承願いたいと思います。
  126. 島村軍次

    ○島村軍次君 然らば、米價のパリテイ計算による発表はいつ頃の予定でありますか。
  127. 芦田均

    國務大臣(芦田均君) 早場米を穫入れる時までには発表いたします。
  128. 島村軍次

    ○島村軍次君 そうなりますと、只今お話になりました点と矛盾を来す結果になると思うのです。農家に対する御同情の点はよく分りますが、一面においては他の物價を急いで決定して、そうして農家の米價に対する價格なり麦の價格に対しては、中間というか、暫定價格というのを先に御発表になつた。而して米價に対しては早場米の決定の時に発表する、そういうことになりますれば、一應は只今御説明のようなことも分りますが、これは逆に考えるというと、農家は不安のまま再生産に從事しなければならん。生産の増強に専念することが困難な状態になるという結果になると思いますので、それに対して首相のお考えはどうですか。
  129. 芦田均

    國務大臣(芦田均君) ちよつと私の答えが訳解を與えたようですが、早場米の取入れまでにという意味は、その時に発表するという意味ではありません。或いはずつと早く発表するかも知れませんが、どんなに遅くも早場米を取入れる時までには発表する計画になつております。案外早く発表することができるかも知れません。
  130. 島村軍次

    ○島村軍次君 他の物價に対して非常に御急ぎになり、而して農産物價に対し、而も米價格に対しては、同時に或いは進んで早く御発表にならなかつた理由を承りたい。経過なり理由を……。
  131. 芦田均

    國務大臣(芦田均君) 米は収穫の始まるときでなければ、米價を決めても事実行われないのであります。それまでは使うことができません。供出の始まつたときに初めて新米價が生きて来る。併しその他の物價は毎日々々取引がありますから、やはり必要な品物は成るべく早く公定價格を決めて、その取引が円滑に行われるようにしなければ却つて生産は減退する。こういう見地から必要なものはどんどん発表したわけです。
  132. 島村軍次

    ○島村軍次君 然らば、農産物價に対しては只今お話ように毎日の消費でないので、生産のときに初めて決めたらいいという議論は、結局米價の決定をしてから後に價格のどんどん上つて行く場合におきましては、先程首相のお話になつたように、これに対して補給をするという前提がなければ只今の議論は成立たないと思います。併しその前提行為は、政府がその筋の了解を得られないということになりますというと、これは只今の議論が全く片手落になると思います。さように解していいのでありますか。この点を御説明願います。
  133. 芦田均

    國務大臣(芦田均君) ちよつと今お尋ねの趣意がはつきり私に理解できなかつたのでありますが、もう一度おつしやつて頂きます。
  134. 島村軍次

    ○島村軍次君 発表した物價は今定めねば生産が減退するというお話であります。米價は取れる前で発表すれば消費がないからそれでいい、こういうお話であります。そういうふうな説明を承つたのでありますが、然らば再生産のために早く発表されるということが米價に対してもとりたい、これは別の考え方でとりたいというのが先程申上げた私の希望であります。而して今後物價水準というものが、いわゆる、パリテイ計算によりますと、昭和九年から十一年までの間の基準を以て、而して本年度における物價を想定してパリテイ計算というものを出した。そこで、ここでお挙げになりました七割の物價というものと三千七百円ベースというものを決めた。そのフアクターが米價というものに加わらなければならん、そういうことになりますと、この秋に生産すべきときに、そのものが継続して行くのであるとすればいいのでありますが、併し先程申上げましたように、昨年の米價は千八百円のベースの数字のときに決められた、その差額が今日までそのまま放置されたということに対しては一應理由が分るのでありますが、三千七百円を決め、而して七割の増加を決めた後において、生産が行われるまでの間に價格を決定されたときにおいては、その後の物價変動ができた場合においては、いわゆる補給金というものを出さねばならんという理論的な結論が出ますが、それに対してはどう考えられるかということであります。
  135. 芦田均

    國務大臣(芦田均君) その議論がどうしても通らないのであります。向側には……。
  136. 島村軍次

    ○島村軍次君 通らないということは、総理大臣みずからが理論的にかくあるべしということの主張をお持ちになり、且つその議論が正論であるとするならば、もつと首相はこの問題に対して熱心に而も堂々とその筋に交渉されるというのが第一要件であり、且つ又それに対しては責任を以て、内閣責任において主張されるという御決意があつて欲しいと思うのでありますが、その点は如何ですか。
  137. 芦田均

    國務大臣(芦田均君) 不幸にして日本現状は決意だけでは通らないことがときどきありまして誠に遺憾だと考えております。
  138. 島村軍次

    ○島村軍次君 簡単にお答えになりましたことに対しては必ずしも納得は参りません。併し時間の関係もありますから一應これで私の質問を打切ることにいたします。
  139. 姫井伊介

    ○姫井伊介君 賃金なり物價を適当に処理されることは当然でしようが、それのみによつて今日最も基本的に重要である生産の増強ができるとは考えられないのであります。然るにこの生産増強に対する施策というものが足りないのじやないか。その生産増強は申すまでもなく経営者なり労働者、技術者が一体となつて働かなければならない。然るに現在の状況を見ますると、とかく対立的な摩擦が続けられている。この点に対してどうしても少し適当な施策が講ぜられないものか。紛争処理機関なぞの或いは平和協約といつたようなことも考えられておりますが、それにすらまだ反対の意見もあるのであります。私は先つき首相が言われましたように、今月資本家というものはないのだ、私はそうあつて欲しいと思うのであります。無論資本は必要でありますけれども、資本家的力が産業に大きな重点を持つことはこれは許されない。それならは当然人間同士が働き合わなければならん。経営協議会はお座なりになつて行きます。生産管理には又摩擦が起きます。そこで経営と生産とを抱き合したる一つの協議会が作られなければならないのではないか。私はそれを事業協議会と称するのであります。即ち経営者と労働者側とが対等の地位に立ちまして、会社における経理関係も何もすべてを公開して、明らかにして、こういう経営状態だと、これが偽りなく公表されるならば、働く人達も自分の仕事場における状況が分りまするならば、それならばこうしよう言つて、そこに蹶起勇躍して、生産向上に手を携えて臨ることができるであろうと思います。そこまで政治的の施策を講ぜられまして、二つのものを対立関係に置かないで、抱き合して行くという眞実籠めたる、親心の籠つた施策というものをお考えになりませんかどうか。その点が一つ。  いま一つは、予算面で見ますると、生産方面のものにつきましては相当考慮されておりますが、その物を作り出す人の部面におきましては、誠に予算的計上が貧弱だと思うのであけます。例えば教育方面におきましても然り。本当に生産を上げなければならないということは、これはもう絶対条件でありますが、それならば先ず人を作る。物を作る前に人を作らなければならない。首相は厚生事業につきましては非常によく御理解なすつていらつしやるということを承つております。教育が國民に均霑されなければならないと同時に、國民の健康亦國民齊しくその恵みを受けなければならない。然るに今日の国民健康保険なぞの状態は、御承知通りなんであります。又児童福祉法なぞができまして、立派な法律はできましたが、この児童に対するところの予算などというものは誠に貧弱極まる。これでどうして立派な第二の國民が育成されて行きましようか。これも予算面における大きな資金を要するのではございません。僅かに一億か二億かの金があれば相当立派な施設ができるに拘わらず、これまで十分に組まれていない。而もこれは厚生省なり大藏省関係に置かれている。大藏省の言い分もございましようが、そこを首相といたしましては大所から御覧になりまして、この厚生事業も必要なることをお認めになりまするならば、この大きな予算の中で何とか工夫は付くのであります。付け得る。そういう点につきまして各省の、單に自分の分野を守つての対抗的立場を、首相が高い地位から、眞に國家の再建に必要なる部面に対しましては、物と共に人に対するところの経費について十分の御考慮が煩したいと思うのでありますが、この点をお尋ねいたします。以上二点。
  140. 芦田均

    國務大臣(芦田均君) 労働爭議が頻発することは、日本の今日の立場において殊に遺憾とすべき問題であることは只今お話通りであります。この爭議を政府の施策によつて経営者と労働者とが互いに協力する態勢に持つて行く必奨がある。どういう施策をとつたという御質問であります。我が國の労働組合は極めて浅い歴史しか持つておりません。併し諸外國の労働運動に古き歴史を持つている國におきましても、労働爭議の円満なる解決が必ずしも政府の施策によつて直ちに解消するものでないことは、恐らく歴史によつて承知のことと思うのでありまして我々の立場からいえば、眞の民主主義の國家は常に官憲の法律若しくは行政的の処分によつてのみ問題が解決するという行き方であつてはならない。国民各自がその職域における責任を自覚して民族全体の福祉の上からその行動に規律あるべきである。そういう点から再出発するに非ずんば我が國の民主化は達成し得られないものであつて、事ある毎に政府がこれに干渉し、官憲の威力を用いて問題を解決するという行き方は、近代の趣向に逆行するものである。かよう考えて、政府としては、労働爭議等の解決についてはできる限り労働組合法の精神に則つて、これに必要なる労働委員会その他の調停機関に俟つて、経営と労働とが均等の立場において互いに平和的な解決をとることに多分の期待を置いている次第であります。  それから第二の点につきましては一々御尤もなことばかりであります。仮に各省の行わなければならない事業予算に提出せしめたならば、恐らく約一兆くらいの予算を請求したことと思います。物價改訂を見込まない予算でさえも八千億以上の各省の歳出予算が出ておつたのであります。それを物價改訂を行つて尚且つ四千億以内に圧縮したのであります。何ものをか犠牲にせざるを得ない始末であつた。無論教育も必要であります。兒童福祉法も必要であるが、明日の食事に困つている者があり、梅雨の雨さえも防ぎ切れないで洪水の脅威におののいている場所もある。勢い事の緩急を計つてこの予算を組まざるを得なかつたのであります。そういう点をどうかよく御了承願いたいと思います。
  141. 姫井伊介

    ○姫井伊介君 第一の点についてでありますが、國民の自覚に俟ち、組合の健全なる発達によらなければならないというお言葉ではございましたが、私はそれは政治常識であつて、政治哲学というものではないのではないか、その自覚を促し、健全な発達を促すためにこそ、そこに教育試作というものがあるわけなんであります。ただ自然に委して仕方がない、自然の趨勢によらなければならないとするならば、私は政府というものは甚だ貧しいものではないか、そういう点から考えまして、根本的に我が國を建て直すためには、やはり教育或いは社会的の方面にも十分の意を注がなければならないことは当然のことなんであります。又労働組合のみならず、経営者側におきましても、何らかの施策を講じなければならない。それは政治力を以て強圧するとか何とかいう、そういうふうなふるいやり方ではないのであります。眞に國民の立場に立つて、手を繋ぎ合して、一軒の家が破産に瀕して倒れんとする場合には、一家挙つて働き合わなければ食えないのであります。食えないから働けないということよりも、働けないから食える方法を講じなければならない。私どもはここに鶏が先か卵が先かという循環論法を弄ばんとする者ではありません。社会の現状からいたしまして今日の程度まで社会が進化してきた以上は、どうしてもやはり働くことを第一にしなければならん。食わなければ働けないということは重要でありますけれども、第二義的に考えなければ、インフレ防止、國家再建の踏切りはつかないと思うのであります。その点につきましても、先に申しましたように單に自然の趨勢に委すということでなくして、組合自体の健全発達を促し、基本的の方策として、やはり國民全体に対する教育というものをもう少し普及徹底を図らなければならない。その点につきましては予算関係は御承知通りなんであります。私はそういう意味で申し上げたことを附加えておきます。
  142. 岡本愛祐

    ○岡本愛祐君 総理がお見えになつておりますので、今姫井君の御質問に関連しまして一点だけ総理の御意見を伺いたいと思います。私は今度の予算の基準になつております賃金のベースは、三千七百九十一円というベースは、物價の七割値上げ、殊に生活必需品、消費財の平均値値上げに対しまして甚だ不当に安いと思うのであります。これは予算の基礎としても、もつとお上げにならなければいけなかつたのではないかということを、素直に私は総理に申し上げて置きたいと思います。そこで今お尋ねしますことは。私は三千七百九十一円では安いということは確信いたしておりますが、今までの労働爭議の在り方を見ておりますと、重要産業が消して利潤を生んでいない、赤字赤字を重ねておるという状況におきまして、そこの労働組合が要求するものも、非常に低い賃金でありましたときに、その要求は尤もなことでございまして、これは総理がおつしやいましたように、成るべく政府が干渉をしないので、中労委の最低に俟たなければならないのは当然でありますが、その甚だ高い賃金を貰つておる会社が又事業体が、それよりまだ高い要求をいたすのであります。そうしますと、それが通つて来る、こうなりますと、外の眞面目に労働爭議も起きないで、日本の國の建直し、生産の増強に一生懸命に励んでおります労働者も馬鹿々々しくなつて、これは爭議をやらなければ損だ、やれば得だということになりまして、そういう甚だ高い賃金を貰つておりますところが又要求を出してもつと高くなるというようなことが、延いて労働爭議を頻発させる。又そのために、低かつた賃金が正当なところに納まるところはよろしうございますが、そうでなくて、だんだん高い賃金になつて行く。そうすると、これは一波万波を呼んで、物價の方にも非常に響いて来るということになるのであります。その点については、政府はどういうふうにお考えになつておりますか。イギリスなんかでは、私どもは海外のことは疎いので、よく存じませんが、不当な高い賃金値上げについてはストツプを出しておるというようなことを新聞で読んでおります。こういうことに対しまして、総理大臣の御所見を伺つて置きたいと思います。
  143. 芦田均

    國務大臣(芦田均君) 岡本君のご指摘ような場合は、今日までしばしば見られたのでありますが、一面において、事業経営者が極めて勇氣に乏しい。良心的でなかつたという要素も、かのような傾向に拍車をかけておると思われるのでありまして、例えば株式会社の経営を委任されておる重役はその株主の利益擁護のために、みすみす赤字を出すに決まつた賃金を支拂うべき立場にはいらない。これは私共の常識であります。然るに過去終戰以來の今日の傾向を見ると、資本の利益は毛頭もこれを擁護する勇気を持たない者が、一方組合側の賃金要求に押されて、みすみす赤字であり、会社の基礎を危うくすると知りながらも、高い賃金の要求をして來たというごとき現象が、幾たびか現れたように思います。そういつたような経営者の下にある事業が、健全な発達をしないことは当然であります。そこに先ほど私がお答えした、経営者も労働者も共に、その職場にあつて責任を自覚することが根本だと申した理由が潜んでおるのでありまして、むろん必要な場合には、政府は、賃金の釘附とか或いは統制とかいう方法を採つておる國もあります。併しながらその方策は、共に法律を遵守するという一つの健全な習慣の上において初めて維持されることでありまして、その根本の要素の乏しい國においては、政府の立法の規則も割合に威力はない。どうしたらばこの問題を解決することができるかという非常なこんな状況が我々の前に横たわつておるのであります。従つて只今政府としては、この賃金統制問題をどうするかという点を至急研究しておるところでありまして、遠からざるうちに何らかの案を求めたいと折角努力いたしておるところであります。
  144. 岡本愛祐

    ○岡本愛祐君 この問題は、國民といたしまして甚だ重要な、最も関心の深い問題でございます。一例を申し上げますと二千九百二十円ベースになりまして早々の話でございましたが大正八年に東京帝國大学を卒業しました技術者それが官廳に入りまして、そうして三十年の今日に至るまで孜々として勤めて参りました。今局長にもなつておるような人であります。その人の俸給並びにその外の手当と、その息子が昨年九月に私立大学の経済部を卒業いたしまして、これが或る会社に就職したのであります。ところが三十年孜々として勤めて來た官吏の俸給よりも、その自分の子供が大学をでて直ぐ就職したその初任給の方が手取が多いのであります。こういう不合理なことが出て來ておるのであります。これは今私が申しました、何とかしてこれは賃金の決め方におきましても政府が干渉しなくて、うまく行けばいいのでありますけれども、これは國民が皆塗炭に苦しみをしておる非常の場合でありますから、その点をよく政府考えておられまして、何らかの措置をとられないと、これは國民として非常に割り切れないことになるのであります。その会社が実は儲かつておる会社ではなくて、赤字だらけで、今度の物價改訂によりまして、三倍もそこでやつております仕事價格が上がつて來る、そういうことになつておるのでありますが、これが又そういうふうに上がつたから、今度はそれに輪を掛けて賃金要求をするということになりますことは、甚だどうも外の國民にとりましても迷惑であり、又一般の孜々として働いておる労働者諸君にとりまして甚だ心外なことになつて來ると考えます。この点を総理大臣はよく考えられまして善処されんことを要望いたしますと共に、今度の物價改定に当たつてこういうご用意がありますかどうか伺いたいと思います。
  145. 芦田均

    國務大臣(芦田均君) 安定本部の中に会社を監査する部門がありまして、その会社の賃金が果たして堅実なる基礎の上に立つておるか等の問題を監査しておるのでありますが、若し会社側から要求があります場合には、適当の人間を派遣しまして、監査することにいたしておるのであります。併し根本は会社の経営者が堅実なる経営振を発揮しない限り、事業の前途は非常に困難でありまして、政府においても十分の施策をしたいと思いますが、それと同時に又労働組合も経営者もその全体の福祉のために健実なる会社の事業を守り立てて行くという決意をすることが根本の問題であると考えておる次第であります。
  146. 櫻内辰郎

    ○委員長(櫻内辰郎君) お諮りいたします。ご通告による質疑は大体において終了いたしました。つきましては明日から分科会において槇重に細目に亘つて審議を願いまして、更に引き続き委員総会を開いて総括質疑に移りたいと存じます。御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  147. 櫻内辰郎

    ○委員長(櫻内辰郎君) 異議ないと認めます。それでは本日はこれにて散会いたします。    午後六時二四分  出席者は左の通り。    委員長     櫻内 辰郎君    理事            木村禧八郎君            西川 昌夫君            岡本 愛祐君            中西  功君    委員            岡田 宗司君            カニエ邦彦君            木下 源吾君            村尾 重雄君            石坂 豊一君            小野 光洋君            左藤 義詮君            大島 定吉君            寺尾  豊君            深水 六郎君            入交 太藏君            油井賢太郎君            小畑 哲夫君            鈴木 順一君            田口政五郎君            飯田精太郎君            江熊 哲翁君            岡部  常君            奥 むめお君            河野 正夫君            島津 忠彦君            島村 軍次君            高田  寛君            姫井 伊介君            渡邊 甚吉君            池田 恒雄君            藤田 芳雄君   國務大臣    内閣総理大臣    外 務 大 臣 芦田  均君    大 藏 大 臣 北村徳太郎君   政府委員    大藏事務官    (主計局第一部    長)      東條 猛猪君    大藏事務官    (主計局第二部    長)      河野 通一君