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政府委員(野田信夫君) 私、
物價廳次長であります。今回
物價を補正いたしましていよいよ実効をしなければならないことに相成りまして、今日発表いたす次第であります。それでどうして今回の補正が必要に
なつたかということを申上げますと、すでに御承知の
通り、現在
政府の
予算を健全化しなければならんという点と、それから又民間におきましても各企業がその
赤字財政を健全化しなければならない必要に迫まられておりまして、すでに一刻もこのままで放
つておきますことは、あらゆる生産、流通を阻害しまして、弊害がもはやこれ以上放置することを許されないような情勢にな
つて來たのであります。それで今回の補正は、
政府並びに民間の從來の
赤字を、結局において消費者の負担にして頂くということがどうしても必要にな
つて來た。つまり昨年の七月に設定いたしました現行の
價格体系が相当その後のインフレの増進を抑制して來た効果はあるのでありますが、併しインフレはそれにも拘らず、徐々ではありまするが、やはり進行を続けて参りまして、それが積り積
つて現在
政府並びに企業における莫大な
赤字にな
つて集積して來ておるのであります。これをこのまま放
つて置きますると、
政府も財政的に破綻いたしますし、又企業も同様に
賃金の支拂その他にも事を欠くというような
状況が迫
つて参りましたので、どうしもこの際これを
價格改定によ
つて補わなければ相成らんということに
なつたわけであります。
それで今回の補正の大体の
方式を簡單に申上げますと、概ね昨年の七月体系の場合と同じような
方式を踏襲いたしまして、重要な
基礎生産資材につきましては、昨年は
基準年次の六十五倍のところで消費者
價格を押えまして、生産者
價格がそれを超過いたしまする
部分につきまして、
價格補正金を國庫から出してお
つたわけであります。今回も同様の処置を採りまして、ただ
物價の
値上りが非常に大きくなりましたので、昨年六十五倍で留めておきました消費者
價格も、これを概ね今回は百十倍の線まで引上げるという大体の
方針で作業をいたして参
つた次第であります。併し一方
予算の
関係から、
補給金の枠が当初の我々の予想よりも減りました
関係上、安定帯を百十倍に揃えるということは不可能に相成
つたわけであります。品物によりまして必ずしも百十倍を守り得なか
つた物も出て來たわけであります。例えば電氣鍋その他の軽金属類におきましては、現行の約十割の引上げを必要にする。勿論製鍋用の銑鉄のごときはもつと低い率で済ませておるのであります。又肥料におきましても、春肥のごときは從來
通り價格を据置くというような措置も採
つております。概ね約百十倍
程度、つまり現行
價格から申せば、約七割の引上げということで済ませることにしておるわけであります。
〔委員長退席、理事木村禧八郎君委員長席に着く〕
それから
價格の
決定方式はやはり七月体系のときと同様に、製造品につきましては原價
計算主義によりますし、農産物につきましてはいわゆるパリテイ
計算をいたしておるわけであります。又
賃金水準は、昨年の千八百
円ベースから今回は三千七百
円ベースに引上げ、そうして各産業におけるいわゆる産業別の
平均賃金の開き方は、やはり七月体系において千八百
円ベースを産業別に開きましたのと同様の方法によりまして、今度は三千七百
円ベースを産業別に開いて、そうして産業別の
平均賃金を算出いたしたわけであります。但し今回は過去一
年間の
賃金の上昇傾向が産業ごとに非常な違いを見せて参りましたし、而もその上昇率が非常に大きくありましたので、單純に三千七百円を産業別に開いた
賃金の水準を遥かに上廻る産業が出て参
つたのであります。
〔理事長木村禧八郎君退席、委員長着席〕
從いまして、これらの産業につきましては、その産業がそれらの高い
賃金でなければ勞働者の供給に事を欠く虞があるというような産業につきまして、一方他産業との
賃金水準の均衡というようなものも考えまして、
現実に支拂
つておる
賃金に近い
賃金を織込むという措置を採
つた次第であります。
今回の
價格の決め方は、以上申しましたように、七月体系と大体似た
方針を踏襲しておるのでありますが、この
價格を今後維持するということにつきましては、やはり
政府が全体としましてこれの
基礎付けをいたすような措置を強力に採らなければ維持困難であると考えるのであります。それで一方には
勤労者の
実質賃金の維持を図りまするために、勤労
所得税の軽減、その他の処置をとりまして、できるだけ
実質賃金の維持を図るというような措置をと
つて参ろうと思
つておる次第であります。
それで今回の
價格の補正で特に注意いたしましたのは、
價格の重要な要素でありまする運賃、通信料金その他が目下國会で審議中のことに属しまするので、これの取扱いにつきましてはとくに愼重を期しまして、二種類の
價格を同時に発表いたしました。運賃、通信料金を現行のままに据置いた
價格を以て出発いたすのであります。それを甲統制額といたしまして、併しそれと同時に今
政府の原案でありまする運賃三・五倍、通信料金四倍という、これで仮に
計算いたしました
價格を統制額乙といたしまして、同時に発表いたしました。併し効力を生じまするのは、先程申しました運賃を据置いた統制額甲で出発いたしまして、國会において運賃、通信料金等が御
決定に相成りますのを見まして、その御
決定に
從つて更に統制額乙、つまり乙統制額を
決定して、長官の命で告示するというふうな措置をとることにいたしたわけであります。それではなぜそういう厄介なことをしたかと申しますると、若し統制額甲、つまり運賃その他を据置いたままの
價格だけで出発いたしますると、
一つの思惑が生じまして、近いうちに更に
價格がもう一遍引上げられるという思惑が生じまして、取引、生産、流通その他がやはり非常な
影響を受ける、つまりすでにその傾向があ
つて困
つておりまするのでありますが、それで又
價格を早く
改訂しなければならない
一つの理由にな
つておるのでありますが、その同じ原因がやはり消えないで存続するということ虞れておるのであります。それでまだ御審議は済みませんけれども、借りに
政府原案のように三・五倍と四倍でできるとしても、この
程度にしか
價格は上らないという一應の限界点を示しまして、それによ
つて多くの思惑を食い止めようという
一つの考慮の結果、そういう措置をとらざるを得なくな
つたのであります。この点につきましては御審議中の件を予定いたしたような結果に相成
つたことは非常に申訳ないと存じまするけれども、そういたしませんと、取引その他が思惑的に行われるということを虞れた結果、そういう措置をとらざるを得なくな
つたのであります。
それで大体主な
物資につきまして、そういう方向で補正いたしました結果を申上げますると、石炭につきましては、これはこの前の体系以來特定産業、重要産業でありますが、特定産業を指定してありまして、その特定産業向けの石炭に対しましては、七月体系ではトン六百円を消費者
價格といたしてお
つたのであります。それを今回は千円まで引上げたのであります。それでその引上げ率は甲統制額においては……、これは甲、乙もなく、結局消費者
價格は千円と一本になりまするので、甲乙の区別なく、倍率は一・六七倍にな
つておるわけであります。それからその他の一般の消費者向けの石炭は、運賃据置きの場合は二・六三倍、それから運賃を引上げると仮定いたしました場合は二・七七倍になるわけであります。電氣料金はこれは電燈、電熱器とも三倍となりまして、これは甲乙の区別はありません。鉄鍋におきましては、生産者
價格において甲が一・九三倍、乙が一・九五倍、消費者
價格はこれは安定帯
物資でありますから一本でありまして、甲乙に区別なく一・六九倍、こんなふうにな
つております。それで今回先ず
最初に決めました
物資は、
只今お話したような主要の
基礎的の
物資の外に、トラツク運賃、荷牛車運賃、小運送料金、機帆船運賃、港湾作業料というような料金
関係のものも含んでおるのであります。安定帯
物資のうち非鉄金属が
関係方面との折衝に少し手間取りましたので、同時に
決定ができませんので、数日遅れることに相成るかと存じますが、それと段々原材料
方面から次第に製品
方面に
價格を
改訂して行きまして、この前のように余り長く掛からずに、できる限り短期間に改定を終ろうということに
努力をいたすつもりであります。
それからもう
一つ申上げて置きたいことは、今回の補正を機会といたしまして、大体において需給の均衡がとれたような品物、又は一般大衆の
生活費にさしたる
影響がないと思われるようなもの、そういうような
物資につきましては、できる限り
公定價格から除いて行きたいという考えで、目下その品目の選択をいたしておる次第であります。簡單でありますが……。