運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1948-06-18 第2回国会 参議院 予算委員会 第33号 公式Web版

  1. 会議録情報

    公聽会 ———————————————— 昭和二十三年六月十八日(金曜日)    午前十時二十分開会   —————————————   本日の会議に付した事件 ○昭和二十三年度一般会計予算内閣  送付) ○昭和二十三年度特別会計予算内閣  送付)   —————————————
  2. 櫻内辰郎

    委員長櫻内辰郎君) 只今より昭和二十三年度予算について公聽会を開会いたします。この際公述人の方に申上げたいと存じます。本日は御多忙の中を当予算委員会のためにお繰合せを頂きまして、公述をしで頂きますことを衷心より御礼を申上げる次第でございます。最初に株式会社守隨商店社長東京商工会議所会頭守隨彦太郎君の公述をお願いいたします。
  3. 守隨彦太郎

    公述人守隨彦太郎君) 只今御紹介になりました私が東京商工会議所会頭守隨彦太郎であります。本日参議院の公聽会公述人としてお招きに預りまして、予算に関する中小企業方面の意向を代表して申上げたいと存ずるのであります。  本年度予算でありますが、どうも一般國民として、この予算を編成するに当つて、どうも政府が確固たる信念を持つて予算の編成に当つたというようなことが、どうも國民の間にそういうふうな考えが薄らいでおる。例えばどうも予算收支均衡を形式的に得るために、通信料金値上げ運賃値上げ、その他生活物資の大幅な値上げをして、こうして予算を編成した。これは決して我々として健全財政じやないというような、何かそこに國民として納得のできないようなことが考えられるのでございますが、併し問題は要するに國民経済にとつてこれは適当な收支であるかどうかということが第一の問題であるのでありますが、併しこの予算終戰の直後頃には二百八十九億、その次は三百、それから一千二百億、今度は四千億というような高額であつて國民経済を圧迫しておるというようなことはどうも考えられるのでありますが、更にまあ一般会計收支均衡は得ておりますが、必要な支出金融面に轉嫁しておる。結局通貨の膨脹の原因をなしておる、いわばインフレを又強くするのではないかということが考えられるのでありますが、根本的には財政の大きさが問題であつて、これをできるだけ緊縮することに努力しなければならない。まあ戰爭に伴う止むを得ざる経費は別として、その他の方面で更に徹底的な節約を図るべきである。こう考えておるのであります。  租税につきましては、もうすでに現行税率はいわば極限に達しておる。そのため租税の逋脱が行われるというような結果になるのであります。であるから、まあ或る税種はむしろ税率を下げ、又課税範囲整理して重点的に確実に租税收入を挙げる方法得策である。  政府におきましては、これまでの採つて來方針が、高率課税によつて税收入を挙げるというようなふうに見受けるのでありますが、私らの見るところでは、却つて逆効果を來たすのではないか。例えば今の物品税でありますが、最高八〇%も取つておる。そのために却つて脱税を多くして、予定の税收入を挙げないというようなこと、それから今度所得税法人税も多少軽減されておるのでありますが、併し法人税のごとき、私らはこの間会議所においても余程この問題について調査研究しておるのでありますが、更に私は大幅の引下げをしたらどうか。これは今の殊に超過所得というようなものは、この際廃して貰つて、そうすることは取りも直さず企業者の今のような税率では経費の濫費が行われて、そうして却つてこのためにインフレを促進するというような、いわば反対の逆な結果が生まれるのではないか。私はそういう考えから却つてこの税率をもう少し低くして、そうして廣く税を課すれば、却つて確実な税收入が得られる。その方が私は賢明なやり方であると、こう考えておるのであります。それで一般に現在のような経済の混乱し、且つ徴税機構が薄弱である際に、新たに税を設けて行くことは非常に有害無益である。然るに拘わらず從來から惡税と定評のある取引高税を新設される。而も昨日の公聽会でもやはりこの取引高税について反対の御意見が出たようでありますが、この取引高税は絶対に反対である。これは本税は本質的において担税力を應ぜざる不公平な課税であります。而もそれは取引の各段が階段毎に課税される。百分の一の低率ではありますが、相当高率な累積負担となつて物價騰貴に直接の影響を及ぼすものでありまして、会議所調査課におきまして、いろいろこの取引高税の段階を調査いたしました結果、生活必需品の問題を取上げて見まして、石鹸のごときは生産者から消費者に渡りますまでに最大取引階段が十四階も階段を経る。つまりこれは税率は百分の一でしようから、一割四分でありますが、それに累積されますから相当の額になるのではないか。それから鍋でありますとか、書籍でありまするとか、書籍のごときもやはり同様十三階も最大取引階段を持つております。鍋あたりも九階、十階、それから、ガラス製品あたりも七階、万年筆も五階、それから電球のような物も四、五階段、お茶のごとき階段はちよつと見当がつかないのでありますが、その最大階段が四階の階段を経るというようなことにありますので、又この課税経済活動能率を更に一層低下せしめる、特に我々中小企業に対して不利な條件をば釀成するのみならず、終戰以來混乱したる、先程申しました経済情勢、薄弱な徴税機構の下においては、適正な徴税は期し難い。脱税を誘発して正当な営業者を圧迫する。そうして流通秩序の確立に対して著しい障害を惹起させるものである。現在の租税課率はすでに先程も申上げましたように極限に達しておるということ。むしろ税種によつては、税率を引下げ、課税範囲整理して、税源の涵養を図ると共に、課税対象を的確に捕捉して、公正に課税することによつて税收入の増産を期するのが得策であるのであります。現下の経済情勢及び徴税力考えるならば、この新税を設けることは徒らに國民経済を混乱せしめて、害が多くして益の少いものと言わざるを得ないと思うのであります。政府はこの大衆課税のこの非難の多い新税を企図するのは、まあ財政收支均衡から、保持に苦慮されて止むを得ないとするのでありますが、その財源として考えたものと察せられるのでありますが、この点については現行税制の運用を改善して、租税收入を確保することであると思うのであります。重ねて申上げますが、この賣上税に対しては、全國の商工業者、まあ殊に中小企業者は全くこれは惡税だと言つて、この取引高税には絶対反対をしているようなことであります。  その次に考えられますることは、特に本年度予算に当つて、先ず第一に行政機構及び行政事務を再檢討して頂いて、戰後に縮小されましたる経済基盤と、変化せる経済情勢とに適應するように、徹底的にこれを合理化するよう、行財政整理を断行すべきであるに拘わらず、この方面において政府の見るべき努力の拂おれていないのは甚だ遺憾であると考えるのであります。この只今行政面縮小整理によつて経費節約すべきでありますが、この行政機構及び行政事務を再檢討して、できるだけ簡素化能率を図ることでありますが、御承知通りその一端として我々の考えておりますることは、統制價格の大幅な整理であります。御承知通り統制價格が七十六万種類とかあると聞いておりますが、その公定價格を設けておる中には、遙かに行政力の限界を超えて有名無実、又は有害な統制となつておるものもあるのでありますが、統制が必要あり、且つ可能である限度内において、これを大幅に整理することが肝要であると思うのであります。生産資材でありまするとか、生活必需物資のような、重点的に統制を残しまして、後は只今申上げた大幅にそれを整理をすると、そうして行財政整理政府においても調査中であるということは聞いておりますが、私らの考えでは今度いわゆる行政財政整理というものは今申上げたように政府の方でも何か調査中であるというお考えがあるようでありますが、これは是非國会で独自の見地で一つこの國費節約調査委員会でも拵えて頂いて、そうして廣く民間学識経驗者も入れて、そうして徹底的に調査立案して頂いて政府において強力にこれを促進せしめて頂きたいというような考えを持つております。  それからその他の政府の今取引高税等撤廃によつて税收入財源として考えておりますことは、政府においてもやはりこれは國民と同じように荀生活をして貰うのだ。そうして官業の一部の拂下げをして貰いたい。電話事業拂下げでありますとか、又戰時中國有として私鉄の買上げたものであるとかいうようなものに対しては、これを一部官業側から民間拂下げることによつて財源の埋め合せをする。それから特殊物資例えば煙草でありまするとか、砂糖であるとかいうようなものについて、一つ特殊物資の輸入を懇請しまして、この賣渡方法について特別の考慮を加える、消費税のような形で浮動購買力を吸收する、まあ一面においては政府財源に充てるというようなことをしたらどうかというようなことを考えておるようなわけであります。大体今日公聽会に出まして、中小企業方面考えておりますことを、まあ以上申上げたような次第でありますが、ただ國民は多年その軍國主義の政策によつて重い負担を課せられて、終戰によつてほつと一息ついたというような間もなく、今回のような重税を課せられておる、重税予算に上つておるというようなことでありますので、只今申上げたような一面、政府においても行政整理をして、そうしていわば卒先垂範をして民間企業もこれに依つて、そうして今日いわば外資の導入の受入態勢輸出貿易の再開もやはりこれによらなければならんのじやないかということで、特にこの行政整理の問題を今日ここに申上げるような次第であります。私の申上げることはこれを以て終りにいたします。
  4. 櫻内辰郎

    委員長櫻内辰郎君) 御質疑はございませんか。
  5. 波多野鼎

    波多野鼎君 只今私鉄電話事業の一部拂下というようなことをおつしやいましたですが、このことはいろいろの方面で問題になつておると思いますが、拂下價格の問題ですな。これはどんなふうにお考えになつておられるのですか。
  6. 守隨彦太郎

    公述人守隨彦太郎君) どうもこれはやはり現行價格ですな、なんと言いますか、実体資産というようなこと、これは両者間において話合わねばならんじやないか、つまり今の政府が買上当時の價格でこれを拂下げるというようなことは、やはり政府財源に関係することでありますので、やはり経営者拂下者と……やはり企業でありますから、その企業利潤を得なければ折角拂下げても拂下げられる方もつまり経営ができんというようなことではならんから、その方は業者において話合つて、そうして適正價格拂下げるということを考えております。
  7. 波多野鼎

    波多野鼎君 もう一つ拂下の問題で、拂下を受ける側が一体資金を調達する見込があるのですか、これは非常に抽象的な話なのですが。
  8. 守隨彦太郎

    公述人守隨彦太郎君) 恐らく今日いろいろ民間の方で、先般も何ですか高速度の自動車を京濱間にやるというようなこともやはり外資の援助を得てやるというようなこともありますから、恐らくこういつたものを政府方針はつきり決まれば民間の方の企業者もいろいろ外資と睨み合せてそういつたようなことを考えてやられるのじやないか、そう考えております。
  9. 櫻内辰郎

    委員長櫻内辰郎君) 次は教職員組合中央執行委員長荒木正三郎君にお願いいたします。
  10. 荒木正三郎

    公述人荒木正三郎君) それでは本年度予算案について所見を申上げたいと思います。  先ず私は勤労階級立場に立つてこの予算案を檢聞いたしたいと、かように考えておるのであります。初めに結論的にこれを申上げますと、この予算案勤労階級犠牲負担において組立てられたものであると考えて、全面的に反対をする者であります。今日本が直面しておるインフレを克服して経済再建を図るためには、勤労階級生活を確保することが根本條件であると思うのであります。この観点に立つて予算案を見ますとき、先ず鉄道運賃を三倍半に引上げ通信料金を四倍にし、吏に一般物價を七割程度引上げると、こういうのでありますが、これは戰前の物價に比して約百十倍になるということであります。今の物價高においてさえ我々の生活危機に瀕しておるのでありますが、更に物價引上げられては國民大衆生活は破綻の外ないのであります。又この鉄道運賃通信料物價大幅引上はますますインフレを助長して、勤労階級インフレ犠牲を一方的に負担することになるのであります。この物價改訂について政府は、重要企業赤字を克服するために物價引上げるのである、こう言つておるわけであります。又この赤字が出て來たのは賃金が高いからである、こう説明しておるのであります。そこで賃金を抑えなければならない、物價引上げ賃金を抑えなければ赤字を克服することができない、こう言うのであります。而も尚この物價引上によつて赤字が十分に埋らないので、價絡調整補給金というものを出して國家がこれを補償する、こういうふうに考えておるわけであります。これは全く資本家を擁護するために物價引上げ、尚不足の分は國家予算で補つて行く、一方國民大衆負担はこれによつてますます加重され、そうして生活がどんどん苦しくなつて行くのであります。而も國民生活がどんなに苦しくなつても仕方がないというような考え方に我々は受取るのであります。こういうふうな勤労階級を無視した考えには我々は絶対に反対であります。この物價改訂に対しては賃金を三千七百円ベースに抑えようというのでありますが、どうも我々には三千七百円の算出の基礎がよく分らないのであります。即ち鉄道運賃は三・五倍、通信料は四倍、物價は七割上げる。それに対して賃金の方は二千九百二十円をそのまま据置いて、五百円の撥ね返りと税の増加二百円を見込んで三千七百円だと言う。即ち二千九百円に対して撥ね返りの五百円は約一割五分に当るわけですが、物價一般的に非常に大幅に引上げて置いて、賃金を一割五分増に抑えようとしておる。こういう算定の基礎には非常に曖昧なものがあつて、どうしても納得し得ないのであります。これは明らかに実質賃金低下である。これは政府が意識的に実質賃金低下を図つておると言うことができると思うのであります。即ち資本家には手厚い保護を加え、労働者には残酷な鞭を以て酬い、これで以てインフレを克服し、経済再建を図ろう、こういう一貫した考え方であるように我々は受取るのであります。この傾向は予算全体の支出の面においても、或いは歳入の面においても、はつきりと現われておると思うのであります。私はそういう方面の專門家でありませんので、詳しいことは申上げられませんけれども、極く常識的に見ましても今度新らしく新設された取引高税、これは結局廻り廻つて最後大衆負担になる。いわゆる大衆負担取引高税を新らしく設けておるというようなこと、それから資本家に対しては、その所得税を見ましても法人税を軽減する、或いは高額所得者に対しては今までよりもずつと税率を低くする、こういうふうにして一方では大衆負担になるような税を新設し、或いは増徴し、一方においてはそういつたような資本家階級の利益を図つておる。こういうことが言い得られるのであります。つまり政府物價引上げ、そうして賃金を抑え、税金は大衆に重く資本家に軽いこういうふうに我々は考えるのであります。政府勤労階級生活権を確保するために、大衆を泣かせるような税を止めて、労働者赤字を少くするために、誠意があるならば眞の意味における祖國再建考えるならば、勤労所得税撤廃乃至最低生活を保障するまでに税は止めるべきである、資本家に対する思いやりを國民の九〇%を占める勤労階級になすべきである、全くこういう考えがなしに大衆犠牲においてこの予算が組まれておると初めに申したのはそういう意味であります。我々は更によく政府が言う闇利得者に対する徴税がむずかしいということをしばしば言うわけでありますが、これらに対しても増加財産税を取るなりして、適切なる財源を見付けるようになすべきである、かようなことをなさないで労働者に対する重い負担を掛けるというこの予算に流れておる一貫したそういう考え方に対して、私共は反対せざるを得ないのであります。一般的な事柄については以上を以て終りたいと思うのでありますが、私は教育者立場から特にこの教育予算に関する件について、少し詳細に申上げたいとかように思うのであります。  今度の予算を見ますと、六・三制の予算として約四十七億円ばかり組まれておるわけですが、その追加予算として四月に組まれた六億円余りを差引きますと、本年度における六・三予算つまり新制中学建設費は四十一億に過ぎないのであります。このことは我々といたしましても、非常に重大なる問題として、從來ともしばしば議会を通じ、いろいろの方面を通じて、この増額に対して、意見を述べて來たのでありまするが、政府從來教育優先とか、或いは教育尊重とかいう言葉を以て教育に非常に深い関心があるかのように言つておるのでありまするが、ところが予算的措置に至りますと、誠にその誠意が疑われるのでありまして、僅かに四十一億の予算を以てしては到底新制中学建設費は賄い得ないのであります。このことは今皆さんの方へお配りをいたしました表について少しく説明をいたしたいとかように考えるのでございます。表の作り方が少しまずいのでちよつと分りにくい点があるかと思うのでありますが、要点になるようなところを申上げたいと思うのであります。  昭和二十三年度新制中学建設費予算はどういうふうに算定したのであるかということを示しておるわけでありますが、たの方は予算経過政府予算を出すまでに予算を作るのにどういう基礎に基いてこの予算を作つておるかということを示したのでありますが、初めに今年度新制中学生徒数は幾ら殖えるか、いわゆる自然増加であります。これを生徒数約百万とこれは政府見積つたのであります。これに対して必要な教室は二万二千七百七十九教室、これに必要な予算は約九十八億、それから二部授業、借教室を一部解消する、そのために約三千六百六十三教室要る。この予算が十五億である。合計いたしますと、二万六千四百四十二教室建設する。その予算が百十四億である。ところがこれでは予算が多いというので、もう少し二部授業を強化しようというので、二部授業を強化いたしまして、四千三百六教室を止めた、差引二万二千百三十六教室新制中学のために建設しよう、この予算が九十五億四千八百万円、ところが最後の決定といたしまして、議会に提案せられたものは、更にこれより差引かれまして、一万九千八百三十七教室分予算が組まれたのであります。これが八十二億でありまして、國庫負担分は四十一億になつておるのであります。これに対しまして、右の方は教員組合が実際に調査をいたしまして、そこから算定いたしましたとき、どういうふうになるかということを示したものであります。先ず本年度において、新制中学生徒が幾ら殖えたか、約百三十三万であります。これは文部省調査と、約三十万の開きがあるわけであります。これはどうしてできて來たかと申しますと、文部省昭和十四年の人口調査から推定いたしまして、昭和二十二年の増加を算出したのであります。その結果百万と出て來た。ところが日教組においては昨年來五ケ月に亘りまして、全國調査をいたしまして、それは別の表にお配りしてありますが、その一部は別の表をお配りしてありますが、これは実態調査に基いて百三十三万ということが出たのであります。この自然増加生徒を收容するに必要な教室数は、三万三千六百十四教室文部省は一教室に四十七人を收容するとして計算しておりますが、我々の方は四十人、これは教育基本法において四十人が適当であると認められたその数であります。この予算が百三十八億幾らあるわけであります。尚建築費一坪当り一万一千八百十円という文部省のその建築費をそのままここに当嵌めて計算をしたものであります。次に、二部授業教室解消分としては、一万七千一百十四教室が要るわけであります。これも実態調査によつてこの数が出て來たのであります。文部省は三千六百六十三教室言つておりますが、これは一部を解消するという数であります。この予算が約七十億、次に仮借用教室、これは小学校から主として教室を借りておるわけです。この教室は非常に莫大な数に上つておりまして、四万一千六百五十二教室になつておるのであります。小学校新制中学教室を貸して、その不足分は二部授業をやつておるのであります。これは全國的に小学校はこれの教室に大体匹敵する分を二部授業をやつておるわけであります。いわゆる小学校中学教室を貸して、そうして二部授業をやつておるという現状であります。その教室が四万一千六百五十二であります。この予算は百七十二億、即ち本年度において新らしく一年に入学する生徒と、二部授業や借教室を解消し、そうして小学校から借りている教室を返す場合には、約九万二千三百八十教室という数が必要なわけであります。これは勿論、普通教室だけでありまして、特別教室など一切を含んでおらないので、授業をするのに最小限度必要であるところの普通教室のみについて考えましても、九万二千三百八十教室要るわけであります。大体これを生徒数を見ますと、三百六十七万という生徒数教室が現在ないわけであります。新制中学の総生徒数は、私共の調査では大体四百四五十万であります。その内三百六十万が教室がない、こういう実態であります。政府は成る程そういうことは、それだけの教室が必要である、又これが予算は三百八十億必要である。併し全体の予算から見て、そういう費用は出せないというのが政府の言い分でありますが、教育を優先し、日本文化國家を建設し、日本再建を図るという政府誠意があるならば、四十一億を以てしては、到底甚だしくそれは僅少である。このことに政府も思いを致さなければならないと私共思うのであります。これは全く文教費に対する、教育費に対する政府誠意のない私は態度であると思うのであります。このために教育は非常に今困難なる状態であります。私共は、もつと簡潔に言うならば、教育崩壞危機寸前にあると言うも過言ではないと思うのであります。このことは四、五日前の毎日新聞の輿論調査にもはつきり出ておつたのであります。あの調査の際に、八〇%以上の人が六・三制の教育運営は困難である、その困難なる理由は、学校教室がない、教員が足らないということを挙げておるのであります。又先般の全國町村長会議決議におきましても、六・三制義務制教育全額國庫負担にして貰いたい。こういう決議があつたわけであります。これは何を物語つておるかということは申上げるまでもないことでありまして、これは地方における教育負担が非常に過重であるということ、それから予算的措置がなされていないために、強制寄附の形で教育費一般大衆から徴收されておるという事実を物語つておると私は思うのであります。即ち強制寄附の形において、これは全國的に行われておるのでありますが、的確な数字は分らないのでありますが、一人当り東京都においては大体三千円から五千円、こういう寄付がいろいろの形で行われておる。これは全國的に行われておる。或いは宝籤とか、そういうものによつて大衆負担になつておる。これに非常に困惑した地方の声として、どうしても國家予算において、その教育費を大幅に賄つて貰いたいという決議となつて現われて來たものと、私は考えるのであります。つまり教育財政が確立していないために、國家或いは地方、或いは直接大衆負担というものが非常に入り乱れて、そうこに教育の非常な支障を來しておる原因があると思うのであります。そのためにどうしても教育財政を確立して、その予算の責任の所在を明確にしなければならん。そうして國家は今尚我が國の現状より見て、更に國家負担分増加しなければならない実情にあると私は考えるのであります。ところが予算を見ますときに、その六・三制予算は公共事業費の一部として繰入れられておるのであります。政府のこの説明を見ますと、公共事業費は國の直轄又は補助によつて施行する河川、道路、砂防、港湾、開拓等の土木工事、所定の営繕工事を主体とし、それに失業救済のために実施する云々とあります。即ち教育というものは、長年に亘る年度計画を立てて、その計画の下に遂行されなければならない、國家においても重要なる政策の中に入ると私は思うのであります。又入らなければならないと考えるのでありますが、その予算が公共事業費として、こういつた土木費の中に繰入れられておるということに対しては、私共甚だ了解に苦しむところであります。そのために常にこの公共事業費の枠内で操作せられるために、昨年度においてもすでに御承知のように、突発的な水害とか、何かあると、予定してあつた六・三予算というものが削られるという結果になつて、こういう一貫性を持つた予算を立てなければならない教育費が、そのときの情勢によつて政治的に考えられて、流用せられるということがあるわけでありまして、私は教育財政確立の先ず第一歩は、公共事業費から教育費を切り離して、この六・三制の予算を別個に立てなければならないと考える者であります。尚これのみによつては不十分でありまして、更にこの國家財政全体より見まして、教育財政はつきりと優先的に確保するような予算上の措置が行われることを私共切望して止まない次第であります。  非常に纏まらない意見を申上げましたが、全般的に言つて予算勤労階級犠牲負担の上に立つた予算編成であるという点において、この予算案に対しては、全面的に反対であります。以上を以て終りといたします。(拍手)
  11. 櫻内辰郎

    委員長櫻内辰郎君) 御質疑はございませんか。  次は、著述家であられまする高野清八郎君にお願いいたします。
  12. 高野清八郎

    公述人(高野清八郎君) 本年度予算は三千九百九十億という天文学的の数字を示したものでありまして、これをこのまま実行して行けばもう日本は破局であります。日本國民は正に虐殺せられるの外はないのであります。それを数字的に詳しく議論をする計画でありましたが、先般予算委員長閣下より予算綱要を送つて頂きまして、これは大変いい資料を提供せられました。我々民間の人は極く粗末な新聞以外何の知識も得ることができないのであります。ところがその予算綱要を拜見いたしまして、私は実に大なる建設的の議論を組織することができましたので、その案を本日持つて参りました。これは直ぐやつて貰わなければならない。速記録のできるのを待つていられないと思います。でありますからその案を持つて参りまして、極く大雑把な計算でありますけれども、骨子を現わしましてそれを予算委員長閣下に差上げて置くつもりであります。  で、この財政健全財政というようなことを盛んに宣傳しておるのでありますが、これは以ての外の話でありまして、これ程不健全な危險な財政というものはないのであります。健全財政ということは、ただ只今、今日のこの予算收支の辻褄を合せたということを以て恐ろしく得意になつて健全財政と称するのでありますが、それは本日だけのことである。もう明日から物價は騰貴して行くのでありますから、この予算が通過しましてこれを実施して行く内には、恐らく一ケ月以内の内にこの予算を追加するようになる。昨年のごときは半歳経たないうちに倍額の追加予算を出した。この予算の項目を仔細に点檢して見ますというと、全部悉く挙げて物價騰貴を誘発するものならざるなしであります。だからこれを実施して行く場合には、二、三ケ月に至る間に莫大な追加予算が出ることは明らかであります。つまり辻褄を合せるだけで健全財政と言えるのは二、三ケ月のことである。予算は一年間のものを明年三月三十一日まで完全に実行するものでなければ健全財政とは断じて言うことはできない。こういう不健全なものを拵えて國民を欺き、國民がその日暮しの貧乏をするということは誠に誠意なき政治家の極であると、私は断言せざるを得ないのであります。一体財政の、予算編成の方針に反する。すでに昨年占領軍司令官から財政に関する指令を與えられておる。それによつて日本の政治をして、行くべきものである。然るにそういうことはかの……名前を挙げては惡いかも知れませんが、とにかく甚だ不明瞭な、不熱心な、不徹底な日本内閣のために全然これを無視してやつておる。その昨年の指令というものはどういうことを一体指令されたかと申しますると、長い指令でありまするが、その終いの方にこう書いてあります。「今や財政の支配権は一般國民の手に入つた。日本が直面しておる危險はインフレにあるが、インフレの根本原因政府がこのインフレによつて財政を賄い、それに基く厖大な購買力が存在しておることにある。從つて第一に予算を縮小して紙幣の発行を最小限度に止めなければならん。通貨インフレ財政を賄うは政治的には容易な解決法であるが、結局破滅を招く。」こういうことを言われておりながら依然として厖大な予算を編成しておる。この予算が……五月二十八日の指令である。ところが六月一日にできた片山内閣というものは二十二年度予算に丁度倍額するところの厖大な追加予算を出した。そうして物價は或る種のものは半年間に十倍に増額さした。大体今日の世界の趨勢といたしまして、又日本の当面しておる焦眉の大問題といたしましては、財政整理、節減するということは第一の要件であります。全世界皆これに努力しておる。それからその財政整理縮減することに当つて日本のごとき最も痛切にこれを感ずるのは物價の引下げであります。物價を今日のままにして覆いてはどうしても財政整理縮小することはできん。財政整理縮小はできず、物價の引下げができないならば、このインフレをどうしても抑えることはできない。日本も破局に陷るに決まつておる。現に昨年の二月、フランスの総理大臣ラマデイエ氏が、物價が上るから賃金を上げる、賃金が上つたから物價が上つて物價が上つたから賃金というような、これをやるようになつたら、その國は破滅の前夜だと言うのです。だからフラン人などは絶対に賃金を上げない。こういう……これはあとで時間がありまするならばできる限りそれを御参考に申上げて履きたいが、そういう方針でやつて來ておる。又日本でも、もう一つドレーパー次官の六ケ條の指令というものがある。これを出した新聞もあり、出さない新聞もあるということです。一体日本人は占領軍の指導を受けて行かなければならんという義務のある國でありながら、非常に鈍感で感じが鈍い、そうして政治に冷淡だ、不見識だ。それだからどんなに尊い、立派な指令が與えられても、政治の上に実現することはできません。何という不見識な國民でありますか、政治でありますか、そのドレーパー次官がアメリカに帰りまして、本年五月二十日どういう指令を日本のため與えたかと申しますと、「日本政府はできるだけ早く財政均衡を図るべきである。」この均衡ということは、この本年度予算の今日だけ辻褄を合わすということでは駄目だ。二、三ケ月後には崩れてしまう、そういうふうなことでは駄目だ。健全財政とは一年間ずつと実行のできる均衡予算でなければならん。健全な均衡を図ることが必要だ。第二には「そのためには國庫の支出を減らすことが肝要である」、これが第二。第三に「総司会部は日本における米軍の占領費を減らすように引続き努力しなければならん。」第四は「統制物價はできるだけ速かに生産費と関連させて、國庫補助金はできるだけ中止すべきである。」これは日本財政に対して痛棒を食らわしたのであります。日本の本年度予算を見ると……去年からそうでありますが、日本財政の特質として、誠に不正の目的によつて作られた予算と見えまして、非常に不純のことが多い。第一不当の補助金が沢山あるということは何事ですか。要するに財政の全般を通じて見るところは、物價の騰貴によるためにこれだけ國費が殖え、三千九百九十億というような莫大の経費が何によるかというと、昨年に比べて何程の仕事もしておらん、するのではない、例えば現在問題になつております終戰処理費です。この終戰処理費というものは去年の本予算では僅かに二百五十億だけだ。それを本年は何のためにこういうことをしたか知らんが、款項に分けてありますけれども、終戰処理に関する経費は全部で一千六十億になつておる。昨年は二百五十億であつたものが一年経たない内にそれが四倍になるとは何か、即ち物價の騰貴である。これは物價騰貴のためにこういう弊害ができるのでありまするから、物價の引下げをするということは実に日本財政の爛額焦眉の急務であります。然らば如何にすれば物價の引下げができるか。ここで私の案というのは、即ちそれであります。私は先ずこういう案を作つて來た。これは直ちに実行して貰いたい。  これを先ず委員長に差上げて置きまして、これを時間のある限り申上げたいと思うのでありますが、この予算綱要を見まするというと、所得税を軽減しまして七百三十六億という金を浮かばせるというのであります。これは実に無用のことである。大体日本所得税ほど軽いのは世界のどこにもない。イギリスなどは高額所得になりますると、九七・五というものを納税しておる。アメリカでも夫婦に子供二人、これは標準家庭になつております。それで控除をして二千五百ドルの收入ある者は九十五ドルの税金を納めておる。一万ドルの所得ある者は千八百六十二ドル税金を納めておる。五百万ドルの收入ある者は四百二十七万五千ドルの税金を納めておる。丁度八五%になつておる。然るに日本のこの度の高額所得ではこれを八〇%に引下げておる。敗戰國のこの四苦八苦しておる國民が、何故に所得税をそんなに引下げる必要があるか。これは実に如何なる階級に迎合するつもりか知らんけれども、実に有害無益の計画であつて、この所得税改正を止めねばならん、止めてその七百三十六億の金をどうするかと言いますと、私はここに書いてあるように廃減税を実行すべし。つまり政治をするには今の日本では一挙手一投足、即ち國民生活を樂にすることと、物價の騰貴を抑えること。この二大眼目をいつでも忘れてはならんのです。でありまするから、この七百三十六億を投じまして、物價の騰貴を誘発するところの税金を廃止するのです。先ず第一は増加所得税五億円、法人税百三十億円、特別法人税が五千四百万円、清涼飲料税が十六億四千七百万円、砂糖消費税三億六千二百万円、物品税が百七十五億八百万円、通行税が三十四億八千九百万円、入場税が九十四億八百万円、有償証券移轉税が一億四千百万円、これだけを合計しまして四百六十二億九百万円です。七百三十六億の金が浮いておるというのだから、これだけの税金を廃止してもまだ二百七十三億円です。それで同じく物價の騰貴を誘発する物の中に最もひどいのは酒税です。この酒の税金を今年は四百五十七億円を取ろうというのです。それを半額に減らして二百三十億をそれに充てる。それでも尚七百三十六億の中、四十三億は残る。その四十三億で以てこれだけやりますと、この消費税物品税法人税、通行税、こういうようなものを廃止すれば、必ず物價の騰貴は抑えられます。物價引下げとまでは行かないかも知れないが、物價の騰貴を抑えることができる。物價の騰貴を抑えることができるのでありますから、この予算の中に五百十五億というような價格調整費、そういうものは殆んど全部削ることができる、全部というわけにも行かないかも知れませんけれども、予算に書いてある通りに從いましても、今後の値上りに備えたものは四百三十六億ある、それは当然削つてよろしい、値は上らんのです。四百三十六億だけ先ず削つてそれを前の残つた四十二億に加えますと、合計四百七十八億になります。四百七十八億円は即ち本年度の煙草の賣上げ代金九百四十三億の半額以上に当ります。これで倍の値段に引上げるという煙草を半額にするのでありますから、これで又この方の物價の騰貴は抑えることができる。大体この酒や煙草というものは生活必需品でないのだから、重い税金を課けてもよいということになつておる。学理上においても実際においても、それはもう一般の通念になつておりますけれども、日本の酒と煙草は余りにその税金というものがひどいので、非常に弊害が起る。この大なる弊害というものをどうしでも防がなくちやならない。酒の税金のごときは終戰の年には十六億円であつたものです。それが今日は四百五十億になつたというのでありますから、丁度二十八倍です。三年間に税金が二十八倍だの三十倍だのということになれば、それは如何なる種類のものであつても、物價の騰貴を誘発するところの恐るべき勢力であるに相違ない。又満洲事件の始まりました翌年の昭和七年の酒税を見ますと、一億七千七百万円であつた。それを本年度の酒税の予算に比較いたしますれば二百五十倍だ。二百五十倍、そういう乱暴な殖やし方をするのでありますから、社会に非常な弊害が起る。例えば酒の密造のごときものは、これはもう実に驚くべきものでありまして、大体その方面の消息通の話を聞きましても、全國五百万の農家のうち一戸平均二升ずつの「どぶろく」を作るといたしましても、一千万石の米が消耗されるというのであります。これはもう確かにその事実はある、そういうように社会に幾多の弊害を起すのでありまして、又これは必需品ではないが、多数國民の需要するものでありまするから、酒と煙草というものは物價の騰貴を誘発する最も恐るべき原動力であります。でありまして、今日は日本も、もうこれだけの……戰時中から今日までに二百五十倍も上げたし、戰爭が終つてから二年間に三十倍に近い増税をした。この頃は毎年々々二回、三回酒の税金を上げておる。酒と煙草は如何に奢侈品、嗜好品であるとしても、そういうことをやられて堪まるものではない。弊害の極致です。これを馬鹿の一つ覚えのように奢侈品だからといつて社会の弊害も何も顧みずそういうことをやるということは、実に愚の骨頂です。だから酒の税金、煙草の税金は断じて引下げなければならん。半額にしなければならん。酒や煙草の消費税を引下げますならば、立派に日本物價の騰貴を抑えることができます。  それからもう一つは、これは特別会計のことでありまして、余り数字の議論をする必要もございませんが、とにかくこうやつて來まして残るところは鉄道の料金、郵便の料金の値上げ、これは六百億か七百億の金であります。これも物價の騰貴を根本として割出した数字でありまして、物價がこれ以上上らんということならば、この値上げをする必要はない。先ず差向きの穴埋めはどうするかといえば、終戰処理費、即ち昨年は二百五十億であつた。これは本年は一千六十億になつておる。それから公共事業費、これが又実に恐ろしいもので、如何に土建業者に多くの金を拂わなくちやならんものがということを痛切に感ずるのでありますが、本年の公共事業費は四百二十億、昨年の追加予算まで入れて昨年の公共事業費は百四十億であつた、それを一年間に三倍にした。何でそれ程必要があるのか私は知りませんが、とにかく物價の騰貴のためにそうなつたということは爭われない事実である。若し物價が上らないならば、この四百二十億の公共事業費も少くも三分の一は削除することはできる。終戰処理費の一千六十億も三分の一以上は整理することはできる。その外に予算の計上に、いや煙草補正特別補給金とか何とかいうものがありまして、悉く物價の騰貴を前提とした経費です。こういうものの大部分はいずれも削除することができるのでありまするから、鉄道及び郵便料金値上の六百億や七百億ぐらいの金を浮かすことは易々たるものであります。これは是非とも実行しなければならん。私はいろいろの税金を九つも廃止せよと言う。酒の税も半額にせよ、煙草の税も半額にせよ、鉄道、郵便料金の値上を止めてよろしいというような沢山の金の要ることを申しますけれども、これがために政府は一文半銭の財源の調達を要しません。痛くも痒くもないことである。ただそういう頭の置き方さえ変えればそれでいい。それでもうこれだけの経費の節減かできる。これだけの民力の休養はできる。これだけの物價の抑圧をすることができる。余りに日本の政治家の諸君は智慧がなさ過ぎる。財政のことは分らなさ過ぎる。こういう立派な案が痛くも痒くもない、一文半銭も要らないのに、七百何十億という税金を減らし、九つに上るところの……日本租税は十七種あります、その品の九つまで廃止してしまうのでありますから、これによつて税務署の役人樣の経費は半額以下で済む筈です。もうそれで行政整理ができる。とにかく日本では行政整理行政整理と言うと、何だかそこの役人を必要でも辞めさせなければならんように考えるから、非常に困難を感ずる。行政を行政だけで整理しようということは、それはできないことである。すべて財政に関連を持つたわけでありまして、國家の政治の根抵は即ち財政にあるのです。財政整理をしなければ行政整理は断じてできないのであります。で、私が今申しまするように、税金の十七種あるものを半分以上の税金を廃止せしめるならば、それで税務署の経費は浮んで來る。大体ドールトン藏相は昨年議会で演説しましたように、新らしい税を設けても、それがために経費を要するならば、その税金は失敗である。日本などは、日本の大藏大臣樣のおやりになることは、昨年などは非常に、前年に六倍、七倍するところの重税を課して、國民負担力では拂えないようにわざわざさせたり、一万四千人の税務官吏を増員し、九十何ケ所の税務署を創設して、そうして猛烈な苛斂誅求をやる。そんなことをやることは國長いじめに過ぎない。丁度帝政時代のフランスが拠金の十分の一乃至三分の一しか國庫の收入はなかつた時分であります。官吏が腐敗横暴を極めればそういうものである。日本現状は丁度革命以前の帝政フランスの財政に彷彿たるものがあります。こんな役人万能の行政費ばかり嵩んで國民を苦しめることばかりに力を入れるというような劣等の財政策の政治は、近代のどこの國の政治にも見ることはできないのであります。  まだいろいろ申上げなければならんことがありまするが、簡單に結論をいたします。それで、どこの國の実例も少しは見なければならん。イギリスなどはどういうことをやつたかと申しますると、先ず國費を減す点において、財政整理の点におきまして、この戰爭は終りました当時は六十億六千三百万ポンドの予算でありましたのを、その翌年は五十四億ポンドに減らし、その翌年は三十八億ポンドに減らし、本年は三十一億八千万ポンドに減らした。その外に議会で可決せられて七月一日から行われる明年度予算は二十九億七千六百万ポンドかになる。とにかく三十億を割つた。終戰の時の半額以下に減らしたのです。それのみならず戰爭の終つた翌年できた予算は、労働党内閣多年の公約によりまして三億三千万ポンドという減税をした。今度大藏大臣が迭つてクリツブス藏相によつて又減税をしました。それはつまり物價引下のためでありまして、この私が今物品税や入場税を全廃せよということを言つたと同じ論法です。その趣旨によりまして興行税、劇場、サーカス、スポーツの入場税は一シルリング以下のものは無税、一シルリング以上の入場料を取る所では、その税金を半額にする。又購買税、物品税のごときものは、或る種類のものは五〇%から三三%に引下げた。それから最高一二五%のものは一〇〇%に引下げた。すべてこのように消費税を約二割五分平均引下げまして、それでイギリスは一〇%の物價引下げをやるというのです。大体イギリスは戰爭以來今日まで賃金値上げということを絶対にしないのであります。で、本年の春議会賃金釘付け政策というものを提出いたしまして、賃金を上げない。こういうように税金を減じて実質賃金を殖やすのであるから、賃金を上げないということを労働党政府議会で可決したのであります。そうすると英國の労働組合、七百五十万の労働組合の代表者はロンドンで大会を開きまして、この政府賃金釘付け政策はよいか惡いかということを表決に付した。そうすると賞金釘付け政策がよろしいと賛成しました者は、五百四十二万一千、反対した者は二百三万二千です。それで賃金を上げないということを英國の労働組合が可決しておるのです。健全なる政治をする國の財政というものは、社会の現象というものは、この通り立派なものである。日本などのざまは何事です。大体……もう一つフランスは最もインフレの激しい國でありますから、最も物價の引下げに力を盡しております。それで昨年の一月の二日、ブルム内閣によりまして物價の引下げを断行した。続いて一月の末にできたラマデイエ内閣によつて物價の二割五分引下げを断行した。それでゼネストが全面的に行われましたが、又それにも拘わらず、三月二日に又三割五分の物價の引下げをしました。そこで労働攻勢が激しくなりました。その時分共産党も入閣しておつて援助しましたけれども、あのコミンフオルムができて攪乱を始めて來ると、共産党は内閣を脱退して、それからこの内乱暴動を指導して來た。そこでいよいよラマデイエ内閣ももう堪らなくなりまして、十一月末に辞めました。そうするとシユーマンという人は、そういう大英断をした人で、田舎の弁護士でありましたが、それが大藏大臣になりましてからのやり方は、非常にフランス人に信用を高めたものと見えまして、大した有名でもない人が内閣を組織することになつた。その華々しい仕事の仕方を日本の政治家諸君の御参考に供したいと思うのです。シューマンという人は、大統領から内閣組織の大命を拜受しましたのは十二月二十二日の朝です。これは今の日本とも違いまして、四派です。四派の連合内閣を組織したのでありますが、二十二日の朝大命を受けますと、その翌日の二十三日の晩にはもう組閣を完了しておるのであります。それから四日、五日、六日と三日間閣議で案を練りまして、いよいよ激しい労働攻勢、内乱の必然の形勢になつたから、この労働攻勢を乘切らなければならんというので、二十七日には労働團体に交渉した。交渉したけれども、それは断乎として撥ね付けられた。それで仕方がないからいよいよやるということになつて、翌日は先ず……元來フランスには人間が三人集まると、その中の一人は共産党だというのです。それ程共産党の旺盛なところでありますから、それがストライキを指導するということになれば、これは容易ならんことでありますから、そこで先ず警察の中にも沢山の共産党がいるのだから、それを経費節減の名によつて警察の警部級の者六十六人、巡査、刑事二千人、それだけの者を二十七日に免職した。それから三十八日には八万人の軍隊を召集しまして、その数日前に召集した十万の軍隊と共に、十八万の軍隊を政府は握つたのであります。それは二十八日。そうして準備が成ります。と、翌二十九日、議会にフランス防衛法という労働攻勢を乘切る法律案を出した。その法律はどういうことを書いたものであるかというと、爭議をした者は六ケ月以上五ケ年以下の懲役に処し、一千フラン以上五万フランの罰金を科す。爭議をやれというお話をした者でも、爭議を煽動する演説をした者でも、爭議をやれというビラを貼つた者でも、プラカードを立てた者でも、看板を立てた者でも、皆同じで、若し不法の家宅侵入をしたり、暴行をしたりした者はその罪を倍加する、こういう法律であります。それでシユーマン内閣は、この案を以て労働團体に交渉した。こういう案を作つた。とにかくそれを二十九日に下院へ出しますと、下院は夜晩くまで議論をしたが、共産党は千百八十八人挙つて反対しましたけれども、結局それは一日で下院を通過して、翌三十日上院に送つた。上院も朝から晩まで非常に大議論をしたけれども、結局それを承認して可決して、即日この法律を実施したのです。それでシユーマン首相は、労働総同盟の代表に向つて言うのには、諸君の要求する賃金値上げは絶対拒絶する。賃金は上げない。又爭議中の賃金は拂わん。併しながら諸君が潔よく職場に復帰して、その職務に從事して、ストライキを止めるということであれば、諸君の爭議中の生活費何程かはおれが出す。こういう交渉をしたのです。それを肯かなければ、今の六ケ月以上五ケ年以下の懲役です。そうするとさすがの労働総同盟も動搖して來て、先ず共産党系でないもの百何十万は分離して、そうして遂にフランスの大内乱を起すところの爭議は解決したのです。そうして昨年十一月三十日に、この労働攻勢を乘り切つて行くと、本年の三月十一日になりますと、又賃金抑制法を内閣議会に出しまして、一月十五日の物價を以て、今後物價引上げてはならない。今度は物價釘付け政策です。それはいろいろ議案がありましたが、結局期限を附けた。いつまでもというのでは面白くないから、本年十二月までこの物資を絶対に釘付けする。こういうことになりまして、議会は共産党とド・ゴールの右翼の反動團体を除く外は、百八十八対三百三十四票という多数を以て議会を通過しておる。こうして飽くまでも賃金を上げないで、物價を抑制しておる。それから一面又そういうことをやると同時に、詳しいことは分りませんけれども、本年の四月一日からは日用必需物資と食料品等に対しまして、八%から一八%の物價の引下げを断行した。もうフランスは数回それを実行しておる。それでたびたびの激しい労働攻勢に対して、或る場合には負けて、多少手当というようなものを増額したことはありますけれども、賃金引上げんという方針は断乎として動かんのです。アメリカにも盛んなる労働攻勢がありますけれども、これは戰後の好景氣で非常に資本家が利潤が多くなつて來た。これは商工省が非常に精密な統計を発表するのでありますから、労働者はそれを見ておる。これはひどいじやないか、我々の賃金は一向上つておらんのに、資本家だけ毎年どんどん利益が上る、そんなに沢山儲けるなら、少しこつちへ寄越せ。これはアメリカの爭議で、日本の爭議とは全然正反対の現象です。そうすると大きな製鉄会社のごときは、その要求をぽんと蹴つてしまつた。賃金値上げは相成らん、その代りこつちは製品の値段を下げる。一ケ年一千万ドルの利益を犠牲に供して、製品の値下げをした。これでよろしいだろうか。賃金値上げはしない。各國は皆こういうように生活の安定をして、賃金引上げを抑えておるのであります。然るに日本はどうか。政府みずから進んで、鉄道運賃を三倍にする、郵便料金を四倍にする。財政のごときでも、去年は二百五十億であつた終戰処理費が、今年は一千六十億。去年百四十億であつた公共事業費が、今年は四百二十億。そういうべらぼうなことばかりして、政府みずからインフレを奨励して行くような、こういう劣等不法の政治をする國は、世界のどこにもございません。諸君政治に携わる者は、特にこのことを御了承せられたい。こんな馬鹿な政治をして一日の安きを偸むということは、それはもう参議院も衆議院も、断じて国民のものではないのであります。國会無用なりと断言せざるを得ないのであります。この予算をこのまま丸呑みにするようなことがありまするならば、それは由々しき大事件であります。私は時間があれば、こういうことを何程でも申上げたい。沢山豊富な資料を持つております。著書も書いて、この参議院の図書館に寄贈してありますから、御覧を願えば幸いでありまするが、それは今から言えば聊か古い。併し今の新らしい財政についても、私はもつともつと深刻な意見を持つておりまするが、要するに、政府みずからインフレを挑発するようなことをする、そういう劣等な政治をするものは、どこにもない。  最後に、申し遅れましたが、もう一つ物價騰貴を抑制する條件、それは金融を引き締めるということである。この間イタリアの大統領に当選した人は、あれはやはり銀行屋さんでありまして、昨年の六月大藏大臣になつて、僅かに一年足らずの大臣在職でありましたけれども、さすがに経済界のことに精通しております。大藏大臣に就任すると、先ず賃金の抑制、物價の抑制、それから銀行の貸出し制限というものに全力を挙げて、それでマーシヤル、プランの受入れ態勢を作つたのであります。日本でもこのままでは、絶対にアメリカは安心して日本の援助をいたしません。できるものではないのであります。然るに何事か。復金の貸出しは本年は九百億だという。これはみんな貨幣に轉化して來るのであります。復金の金をこのまま使つたら、紙幣は一千億殖えるのであります。財政の支拂は去年に比べると、二千億殖えて、これで三千億、大雜把な計算でありますが、今二千三百億の紙幣が出ておる。それに三千億加えると五千億になる。そういうことになりましたら、それはもう乱脈破壞の極ではないか。そういう政治をしておるのであります。況んやこれは私が今指摘したごとくに、物價騰貴の費用ばかりであるのでありますから、この予算を実行して行けば、物價はどんどん上つて、恐らく半年経たんうちに、倍の予算を要求することは当然である。そうすれば、五千億に又二千億、三千億も殖えて、七千億、八千億にも紙幣が殖える。日本は破局の第一歩に踏込んでしまつたのでありますから、ここで大なる轉回をしなければ、これはもう日本の壞滅を防ぐことは絶対に不可能なのであります。芦田総理大臣は、何かこの復金の貸出しの金で儲けたとか、賄賂を取つたとかいうようなことを盛んに言われておりますが、大臣が賄賂を取つたとか取らんとかいうことは、それは財政計画に関係のないことだから、我々の論ずべきことではないけれども、とにかくこういう不当な貸出しをするということは、これは財界攪乱であり、日本経済的破滅である。この復金の金九百億、この補償をするために、予算にも百八十億という予算を要求しておりますが、これこそ実に無用有害の金でありまするから、この金は断じて削除して貰わんければならん。それを削除して、それを鉄道運賃引上げや、郵便料の値上げに充当せよということが、私の今予算委員長閣下に提出した書類の案である。これくらいの明白なこと、これは痛くも痒くもないことで、少し頭を働かせば、この通り立派な政治ができるのでありますから、是非諸君はこれを断行して下さらんことを切にお願いいたします。
  13. 櫻内辰郎

    委員長櫻内辰郎君) 有難うございました。それでは午後一時から再開することにいたしまして休憩いたします。    午前十一時四十九分休憩    —————・—————    午後一時四十一分開会
  14. 櫻内辰郎

    委員長櫻内辰郎君) 只今より開会いたします。公述人の方々に御挨拶を申上げます。当予算委員会のために、公述御多忙の中をお繰合せ頂きまして公述を願いますことは、衷心より感謝に堪えない次第であります。ここに厚く御礼を申上げます。産別労働組合幹事、山田有三君の公述を願います。
  15. 山田有三

    公述人(山田有三君) 私は労働組合を代表いたしまして、この予算問題を申上げますために、基本的に現在の労働者を第一線とする小市民及び農民の利益というものが根本になつておりますので、その点を御了承願つてお聽きを願いたいと思います。  本年度一般会計及び特別会計の全般を一應見ますと、果して企図されておるような根本條件が貫ぬけるかどうかということが、先ず非常に疑問に我々は考えるのであります。即ち基本的なものとして、物價を大体七割程度を引上げる。又賃金ベースが三千七百円を程度と想定されてこの予算が組まれておるのであります。併しながら歳入面を見ますと、先ず租税の問題又はこれに附随する所得税、それから間接税、そういうようなものを考えますと、この七割程度というものが果して実現できるか。それから三千七百円ベースが果して実現できるかと申しますと、非常にこの点は、我々労働者としては不安で、しようがないのであります。從いましてこれから申上げますことも、理屈とか何とかいうことではありませんで、我々労働者が実際に現在日本の置かれておる状態を、すでに御承知かも知れませんが、尚更にこの点を御認識頂いて、この予算の審議に当つて頂きたいと、かように考えるわけであります。即ち物價の七割にいたしましても、実際に我々が聞いておりますところによりますと、基本的な物價の改訂、基本的な物資について申上げますと、例えば電力が二・六、塩が二・六五、木炭が二・四三倍、薪が二・三八七倍、又風呂賃のごときが二・五倍、醤油が二・五、味噌が二・五倍、かように構想されておるように聞いておるのであります。かような点から考えましても、七割程度の物價の値上りということは言えないのではないか。半面におきまして、下るものもあるという話であります。例えば写眞機とか蓄音器とか、そういうものが下るので、平均すれば七割程度になると、かようなお話でありますが、我々労働者及び小市民というものは、かように今度下ると企図されておるものは殆んど使わないのでありまして、只今申しましたような我々の生活必需品考えるならば、そのおのおのはすでに二倍以上、二倍半以上の値上りが構想されております。これに尚歳入面におきます今度の新税であります取引高税、この取引高税というものも、一度の取引において物價の一%の課税をいたすようになつておりますが、これが撥ね返りというものは、我々は過去の間接税についても見られたものでありますけれども、これを考えますと、恐らく普通の物資については三回の取引と申しますが、大体五回ぐらいになるのではないか、そうすれば、これは恐らく四%から五%のものになる。尚その道の玄人の方にお聞きいたしますと、少くとも一割ぐらいのものになるだろう。こういうものが財源として求められることは、現在のような苦しい日本として考えられるのは一應我々も納得できるのでありますが、併しかような新税考えられるということは、考えられる立場において、非常に我々としては安易な立場を取られているように思うのであります。即ち從來我々が闇所得者、新興所得者に対する税金を徴收することによつて、そうして我々の勤労所得税その他を緩和する。かように言つておるのでありますが、政府はこれに対して、現在の税務機構、税務機関が非常に弱体化しておるから、新税というようなものはなかなか考えられないし、実際に行われ難い。かように言つておられるようでありますが、今度の予算には、ここに新らしく取引高税という新らしいものが出ておるのであります。実際問題といたしまして、闇所得税者その他新興所得者に課税するということは、非常に困難だと言われております。併しながらたとえそれが困難であろうとも、眞劍にその手段を考えて頂かなければならないのではないかと思います。殊に新興所得者に対する課税は、取る手段がないというよりも、現在のような一般の社会機構から申しますと、こういうような新興所得者というものが官僚との結び付きによりまして、脱税という方向へ行つておる。こういうものを考えなくては、こういう闇所得者への課税はできないのではないか、そういうことが仮にどうしても不可能であるというのならば、今の大衆がどのようなところに追い込まれておるか。闇所得者から税金が取れないからといつて、これを放置すれば、現在よりもますますこの富の分配というものは不公平なものになるのではないでしようか。殊に國民所得が一兆九千億、大体二兆になるのでありますが、そのうち勤労者の所得はその半額にも満たない。そうすればその大体半額というものは無税に葬むられておると、こういうことが言えるのではないかとかように考えるわけであります。  尚歳出について申上げますと、歳出の價格調整費というのが出ておりますが、これらの調整費についても、果して基本的に、例えば石炭なら石炭というものの價格が三千二百円になるというと、それが、そういうような價格が適正であるかというこれが余程愼重に取扱つて貰わなくてはならないのではないかと思います。それは現在決定される場合においては、いわゆる業者側のいろいろな申請材料によりまして、その物價が決められて行く傾向があるので、果してそれが本当に適正であるか、或いはそこに幾らかの膨らましと申しますか、余裕があるのではないか、例えば石炭について、トン当り仮に二百円乃至三百円の膨らましが若しあるとするならば、これはあらゆる物價に膨らましの影響を及ぼすものであります。これらがもう一度根本的に再檢討されなければならないのではないかと考えます。尚公共事業費その他教育に関する費用、歳出でありますが、この面についても各担当より提出されたものよりも相当削られております。この削られておることも、一應一つの大きな枠内にある予算としては、いずれかを削らなくてはならないということは分りますが、現在置かれておる日本経済状態から言いまして、かようなものをできるだけ多くし、そうしてこの社会政策的な面に相当の費用を出さなければ、到底日本再建は成り立たないのではないか、かように考えるわけであります。  尚特別会計につきまして、鉄道及び通信費の問題でありますが、鉄道の現在の赤字の約八割は、これは石炭によるものだというように我々は聞いております。殊に今度の予想される運賃値上については、一方におきまして貨物の運賃の引上率と、旅客に対する引上率と相当の違いがありまして、旅客運賃に対して相当のウエートがあります。貨物運賃を上げることは、いろいろな意味において物價に影響するからというような建前を取つておられるようでありますが、これを現在のように旅客運賃に主力を置かれますと、たとえ貨物の運賃の引上率が少いといたしましても、他の一般物價はこの高く上つたものに從うのが、これが経済の法則であるというように考えますので、意図されたように物價を或る程度抑えようという意図が実際には不可能になつて來るのではないか、かように考えるわけであります。又旅客運賃にいたしましても、その九割九分までは三等運賃であります。そういうことを考えれば、これも鉄道の独立採算制ではなくて、実際には大衆課税である。かように考えるわけであります。從いましてこれが勤労者に及ぼす影響は相当強いものと、かように考えて差支えないと思います。  かように、この予算案を見ますならば、我々労働者といたしましては、現に三千七百円ベースでは不可能であるという実態調査におきまして、全官においてはすでに政府と交渉いたしまして、五千二百円の要求をいたしております。こういうようなことは五千二百円というのが正しいとか正しくないかでなくて、現実に只今生活の苦境に追い込まれて行つておるという実態をそこに現わしておるものでありまして、かような点から考えまして、本予算が若し通過いたしまして、実施されるとなるならば、先程申しました七割程度の物價値上げ又三千七百円ベースというものは結局において実施されない、そうなれば明らかに厖大な追加予算が出て來るのは必須であります。これは勿論歳入に関係のあるものでありますが、財源といたしまして具体的にどういうものが要るかということは、我々労働組合に関係いたしておる者といたしまして、具体的なものは持つておりません。併しながら皆さんもお考え下さるならばいろいろなことが考えられるのではないかと思います。例えば企業再建整備法その他におきまして、現在の各企業の持つております資産、殊にその不動産等については、從來價格帳簿で評價されております。現在のようなインフレに対しましてこの評價替はされておらないのであります。こういう評價替をいたしますならば、これが少くとも数百万円の財源になるのではないか、これは私個人の考えでありますが、もつと本当に勤労大衆が困つておるということをお考え下さるならば、いろいろな手が打てるのではないか、かように考えるわけであります。尚今度の予算につきまして、勤労所得税基礎控除額が大幅に引上げられたということを申されておるようでありますが、我々といたしましては一方に物價が二倍以上に上り、そうして賃金が三千七百円ベースに抑えられる、かような観点から考えますならば、勤労所得税の控除額がこの予算において組まれておるような引上げ方だけでは、実際に我々勤労者の所得というものは実質賃金において低下される、かような次第になるのであります。でこういうように労働者が現実に追い込まれておるならば、資本家は労働攻勢ということを言われますが、こういうように資本家労働者を追い込めば、我々といたしましては攻勢せざるを得ないのであります。即ち富の不均衡から來ますこの社会的な矛盾を通じまして、全勤労者は黙つておれない、どうしても自分の生活を守るために労働攻勢と申しますか、これに出でざるを得ない、かような事態になつておるのであります。かような意味合いから我々といたしましては本予算の実施には全面的に反対せざるを得ない状態でございます。かような種々の立場を御了解下さいまして、本当に日本國民再建を背負わされております我々労働者、勤労者一般立場を御了解下さいまして、本予算通過の反対に御協力願いたい、かように考える次第であります。簡單でありますが、私の公述をこれを以て終らして頂きます。
  16. 櫻内辰郎

    委員長櫻内辰郎君) 御質疑はございませんか……。次は農業会の方で八島敏君の公述を願います。
  17. 八島敏

    公述人(八島敏君) 只今委員長より御指名になりました八島でありますが、私はただ一農村から來て、ただ四百戸足らずの農村から來て、專門的な学問も受けておるわけではないし、今度の予算に対してどうという批判はできませんが、ただ農村の農民は如何なる意見を持つているか、大体それを綜合して意見を申上げて見たいと思います。  最初特別会計の運賃値上げに関して、この運賃値上げに関して價格調整費を五百十五億にし、これが藏相の話では五百十五億円でも足りず、千何億かの金がなくては到底やれないという話でありますが、この鉄道、通信特別会計の不足金を一般会計で負担して公價の引上げを緩和しようということは、我々も考えられるのでありますが、併しこの巨額の負担をして、鉄道運賃を三・五倍、通信料金を四倍に引上げようとしておりますが、これで政府の予想する通り公價は七割程度に止めるかどうかは、大きな疑問であると思うのであります。昨年の七月の物價改訂の時ですら、闇物價は七月に一二%、八月には六%の値上りであり、今度のように運賃料金の値上率が一般物價の値上率の数倍に上るときは、当然闇物價の激しい上昇とさえなることであり、殊に食糧端境期であるときに際して、食糧を中心とする生活必需物資の闇上昇は期して待つべきものであると思うのであります。而して生活費の撥ね返りは政府の予想するよりずつと大幅になることと思うのであります。又昨年の物價改訂のとき、米石千八百円になり、前の米價五百五十円の差額を農家に返すよう要望するも、その要望は通らず、今度の物價改訂に際しても、月割にして返すよう要望しておりますが、農民はこの端境期に際して賣る物とてはなく、ただ買う物だけが高くて、到底この現在の農村の状況は、農業会の貯金でも枯渇状態にあるのであります。日本の農村のインフレは食糧事情の惡化によつてもたらされるものであり、而して今やインフレは下火になり、食糧事情も好調になれば、謳歌できるのも時間の問題でありましようが、納税と季節的関係によつて農村も極端な金詰りにあるのであります。而して現在は金の貴い時代となつております。それでこの金の貴い時代が來たと歎いておるのであります。併しながらこの現在の金詰りが解消しても、嚴正な供出割当、加重される租税、闇賣範囲の縮小によつて、過去におけるがごとく農村では好況に酔うことは到底許されないのであります。それで政府でもこの農村の資金不足を打開しようとして、農業手形制度を実施しておりましたが、この農業手形制度は、農民は食糧一割増産を叫び、少き金を工面して肥料を購入し、農業手形による恩恵は期待の程でなかつたのであります。かような農村の資金欠乏は、單に税金が多いからではないと思うのであります。もつと深い理由は供出制度とそれに伴う農産物の公定價格が、一つの根本原因となつているのであると思います。供出は義務であり、原則として自家保有分を残して、他はすべて供出しなければならず、その買上價格が他の工業生産物や統制外の商品と比較して著しく安いため、農業経営は赤字とならざるを得ないのであります。それで現在事前割当をやつておりますが、我々はこの事前割当も相当期待しておつたのでありますが、農林省は科学的にこれを調査すると思つたのでありますが、末端においてはその期待は薄いのであります。このような問題からしても、農業経営は現在赤字となり、現在の農村の金融状況は毎月貯金の低下となつておるのであります。  以上の問題にても、農民はこの予算に対して相当の意見を持つておられるのであります。併しながらこの運賃等の値上等の財源をどこから見出すかは、我々は到底そのあれを見出すことができないのでありますが、併し我々が一番先に注目されるのは、歳出の面の補助的経費が幾分か多いのでなかろうかと考えられるのであります。併しこの問題は國家財政國民経済との関係が問題になることと思うのでありますが、併しそれらの補助的経費、例えば價格調整費、物資、物價調整事務取扱費、地方分與税分與金、これら價格調整費はインフレ過程において、企業國民生活の安定に費そうとするものに外ならないことで、経済が安定すれば当然減少することであると思うのであります。そうしてこの歳出の多いのも過渡的現象であると思いますが、併し幾分かこれらの補助的支出を削減して頂けばよいのでないかと考えるのであります。  又我々農村青年として、今度定時制高校の問題が取上げられておりますが、我々勤労青年のため幾分なりとも歳出を見て下さつたことは、我々農村青年として感謝に堪えないのでありますが、その補助金歳出は一分校が平均八千百七円程度でありますが、現在農村青年はどういうような状態にあるか。終戰前の抑圧によつて、それが終戰後になつて自分の支柱を失つて、惡の道に迷つておるのが大部分であり、又建設的方面に行く者もありますが、後者の例は如何にも少いのであります。而してこれを見離せば、この予算面に関連している食糧問題に関連しても、日本再建の基盤をなす青年の行末を考えさせられるのであります。この点今少し考えて下さいまして、我々農村青年のため生き甲斐のある、働き甲斐のある生活のできますように、そうして現在叫んでおります食糧一割増産のためにも、是非このこの定時制高校の問題を取上げて下さることをお願いする者であります。  以上簡單でありますが、現在の農村の意見を綜合しまして、簡單に御意見を申上げます。
  18. 櫻内辰郎

    委員長櫻内辰郎君) 御質疑はございませんか。次は、著述家であられまする渡辺多惠子さんにお願いいたします。
  19. 渡邊多惠子

    公述人(渡邊多惠子君) 私は國民の一人といたしまして、戰爭中の軍閥内閣でさえも期日までには間に合せた本予算案を、三ケ月以上も遅れて事実上國会の予算審議権を無視するような出し方をされたこの本予算に対して、最初から全面的な不満を持つ者でございますが、更にこの予算の内容につきましては、次の二つの根本的な理由によりまして、反対いたす者でございます。  第一には、本予算は私共の昨年度における実に苦しかつたあの生活、即ち二十二年度における生活水準を遥かに引下げるところの性質を持つておることであります。それは重視の圧迫もさることながら、厖大な歳出を通じて來るところの生活費への圧迫が最も決定的な問題であると思います。この点と、それから第二には、本予算國民生活安定に直接役立たない支出が非常に多いのでございますが、問題の補給金によつて基礎産業が多少復興いたしましたとしても、一体それによつて生産されるものは誰に役立つかということでございます。この点は極めて重要な点で、國際的な監視を受けております我が國の予算と我が國の経済にとつては、特に我々が考えなければならない点だと思います。御承知のように、極東委員会に加盟しております諸國は、非常な疑いを持つて日本経済復興を眺めております。又世界の各國は日本予算に対して可なりの疑惑を持つて臨んでおるということを特に御警告申上げたいと思います。それはなぜかと申しますと、日本の産業の復興が日本國民を仕合せにするためのものではなくて、再びその産業の復興がアジアの平和を乱すような手段となるということが恐れられておるということであります。それは國民生活を低くして置いて、國民生活に関係なく基礎産業が発達されるとすれば、これは一体誰が使うのか。何のために使うのかという疑いを國民は持ち、又世界各國が眺めるということは当然のことだろうと思います。若しこの考えを以て進むならば、ポツダム宣言の趣旨に背き、平和と民主主義が損われるという虞れがあるという点であります。  以上の二つの点、即ち國民生活が破壞されるという点と、平和と民主主義が脅威に暴されるという、この二つの重要な理由によつて、私は未曾有の厖大予算反対いたす者でございます。この二つの点について更に申上げますと、たびたびこれまでここで述べられた方々も、恐らく一人残らず触れられたと思いますが、三千七百円の平均賃金水準と、それから今回の予算支出とが、果して両立し得るものであるかどうかという点でございます。三千七百円の平均賃金は御承知通り政府側から一方的に押し付けられたものでございますが、三千七百円の算定の根拠については、まだ私共を納得させる程政府側から説明されておりません。只今のところは昨年の十一月頃から本年の三月頃までの賃金実績を基礎にいたしまして、その間における物價のトレンドによつて六月まで延ばし、そうしてこれに物價の値上り、それからその外の撥ね返りを多少考慮したと言われておりますけれども、実績について見ますると、すでに三千七百円は本年四月頃の生活賃金実績、これは理論生計費とか、或いは最低賃金とかいうような、かくありたいという形における貸金ではなくて、実際に拂われた賃金の実績が三千七百円を突破しておる。すでに統計的にこれが崩れておるということであります。又私共の家計の実際から申しましても、三千七百円というのは、これが若し昨年度の家計であつたといたしましても、非常に苦しいものでございまして、況してこれが本年における家計標準にはなりません。これは家計に実際携わつておる人は誰でも分つておることでございます。で若し三千七百円というものを飽くまでも貫こう、或いは三千七百円を四千円に引上げようというこの程度で問題を解決しようと、本氣で政府側が考えるとすれば、予算は少くとも昨年度予算の幅よりも著しく引下げることが必要である。そうでなければ賃金物價予算のバランスは取れないということになります。政府側ではこの賃金物價予算の同時バランスとか、いろいろなむずかしいことを言つて計算しておられるようでございますが、その示された数字によりましても、昨年度國民所得に対して予算純計は一九%或いは二〇%であると言われておるのに対し、本年度においては二五%から二八%に上昇すると言われております。もとよりこのような國民所得計算、或いは國民経済バランス計算というような、最近経本でやられているような計算に対して、私は大した信頼を持つている者ではありませんし、このような数字はそのときの政府の都合で如何ようにでも計算できるものでありまして、私共としてはそれよりもむしろ生活の……昨年度において私達が実際に生活して来たのでありますけれども、この経驗を通じてのバランスを先ず考えて見たいと思います。それで昨年のあれ程の予算であれ程の物價で、そうしてどれ程の賃金が果してバランスが取れたものであるか。つまりバランスが取れるということは根本的に私達が生活できたということであります。ですからこの國民経済バランス計算とか、國民所得バランスの計算とかいうものよりも、実際に昨年における経驗によるバランスを先ず根本的に考えて見る。これが最も実効のあるやり方ではないかと思います。そういたしますと、三千七百円の賃金が維持されるためには……昨年の予算の純計が四千億近くだつたかと思いますが、その下においても三千七百円では、私達は、若し一家を支えて行くとすれば、食べるだけで一ぱいでありまして、とても子供の教育費などは出て來ないのであります。ですから少くとも三千七百円というものが維持されるためには、昨年度予算の幅よりももつと今年度においては下げられていなければならない。而もその内容については不生産的な支出を止あて、國民生活を豊かにすることに何の関係もないような支出は止めて、このことによつて物價を引下げる。つまり昨年度よりも予算の幅が縮まり、物價も低くなるという條件の下においてでなければ、三千七百円ということは私共の家計実績から絶対に貫き得ないことであろうということでございます。で、若し政府が三千七百円を一方に置いて、而も今日のような厖大予算を暴力的に強行しようとするならば、その結果はどういうことになるかと申しますと、第一に、これもこれまでたびたび言われたように、これは私共勤労者は生きなければならない。生きるために必然的にこれに対する反撃を以て、よく好意的でない立場から労働攻勢と呼ばれている力が盛り上るということは、これは内的な必然性であつて、どうしても避けることができない力であると言わなければならない。で、又三千七百円を、一方に置いて今日のような厖大支出をするということは、厖大支出は、それに伴つて不可避的に一部に國民所得を形成するわけでありますから、そこに必ず一方に厖大な闇利得者が発生するということになります。闇利得者は今日一般民衆の憎惡の対象になつておりまして、これから沢山取れということが盛んに言われることでありますが、私共としては先ず闇利得者を発生させるような財政そのものに、根本的に反対しなければならない。で、勤労者の生活水準を低く置いて、予算支出が厖大であるということは、必ず他面予算支出されるものは必ず誰かの所得になりますから、それだけ闇利得者が殖える。國民共に三千七百円であるという場合よりも、一方に非常な闇利得者があるということはそれからの撥ね返りによる國民生活の重圧は、更に重加するという点であります。このような生活擁護の立場から、この予算の総額に対して絶対に反対する者であります。政府の方でも必ずしも三千七百円に自信がおありにならないらしく、これに対しまして、クレヂツトによつてすべて外國から生活必需物資を多量に入れて、そのことによつて三千七百円に対する物的な裏付けをするというようなことが言われおりますけれども、今日の國際情勢からして果して政府の希望するような生活必需物資が來るか、どうかということについては、決して確言することのできないことでざいます。こういう不安定な、確定することのできないようなことを基礎にして國民生活の幅を決めるというようなことに対しては、私共としては絶対に承服できないところでございますし、又仮に政府の希望通り生活必需物資が入つて來たといたしましても、昨年度の経驗を通じて私共は分つておりますように、貿易資金特別会計の赤字は非常に大きい。これは今日における國際貿易の特質から來るのでございましようけれども、当然その國内物價よりも高い物價で買入れることになりますからそれだけが結局貿易資金特別会計の赤字となつて國民生活に重圧を加えるということになります。入つて來ることに対する信頼が持てないのと、入つて來た結果が只で入つて來るのではない。お金の機構、金融機構というものにどういう影響を與えるということについては、國民として決して安心感を持つことは、これはできないのであります。  それからもう一つ、その次の平和と民主主義を脅やかすという問題につきましては、本予算案は成立までの間に一番政府部内において揉まれた問題は、補給金の問題であるということは、当時の新聞で私共承知いたしておるのでございますが、この基礎産業、その他の産業の保護、その利潤保障に重点が置かれるということ、而も一方に三千七百円に現われたように即ち國民生活水準が低いということ、これはどんな結果をもたらすか。折角政府が保護して参る、仮に復興して來たといたしましても、その生産物は誰をお客さんにして賣るつもりなのかということになりますと、日本の資本主義が、今日過去の日本の資本主義の歴史を考えて見ましても、政府の極めて手厚い保護によつて財閥が育成され、その財閥は日本の重要な基礎産業を握つておりました。そうして國内生活は非常に貧乏であり、農村は窮迫しておるですから國内にお客さんを求めることはできない。從つてこれが近隣植民地を掠奪するの原動力になり、又延いては軍國主義を誘発するところの力になり、このことはついこの間の生々しい戰爭が何によつて惹き起されたかということを反省する者に取つて極めて大切な問題だと思います。從つて財政を通じて資本を育成するというようなやり方に対しては私共は全く反対いたします。それは國民生済水準を向上させることによつて國民生活水準が向上させられることによつて、それに適應して産業が伸びて來なければ本当の健全なものにはならない。又そういうふうに導く財政でなければ健全な財政とは言えないと考えます。今回の予算のごとき、露骨な國民生活とバランスしないような特殊産業、その他の擁護は、不可避的に平和と民主主義を脅やかすという憂えをもたらすものでございます。この補給金問題と共に物價政策も亦同じような線を以て押進められて行く。生活必需物資の高騰ということは、私共の生活に直接響くことでありますから決して好ましいことではありませんが、今回の物價改訂の構想を見ますと、生活必需物資の改訂よりは眞つ先にやられておるのは、生産手段、生産財の物價改訂でありまして、この面において大資本家が非常に有利な立場を確保して、傾斜生産は物價の面にも傾斜をさせて來ております。從つてこのために中小工業者の受ける打撃は非常に大きいことと思います。それは原料は眞つ先に高くなつて來る。製品はそれ程抑えられて高くできない。これは國民生活を脅やかすという名の下に抑えられてしまうということになりますと、中小工業者はますます窮地に陷つて行く。そうして先程農民の代表の方からお話になりましたように、農民も亦同じように米價は低い。外の物價とバランスの取れないような米價に苦しまなければならんということになります。このように國民を苦しめ、中小工業者を苦しめ、農民を苦しめるような産業育成の方法が、如何に、最初に申上げましたように國際的な疑惑を以て見られるかということについては、くれぐれも私共は考えて置かなければならない点だと思います。  で、この予算の内容などについてはすでにいろいろな意見があつたと思いますから、極く全般的なことだけについて申上げたのでございますけれども、最後に今日のような時代において予算の編成に当つて下さいます方々が、必ず見失つて頂きたくないと思うのは、今日の生産復興は先ず人間のためにあるのであつて、人間が生産のためにあるのではない。つまり生産能率の問題といたしましても、又マーケツトの問題といたしましても、大衆生活の安定と向上がなければ生産の復興はできない。この点から今度の予算の審議に当つて頂きたいと存じます。非常に簡單でございますが、私の希望を述べさして頂きます。
  20. 櫻内辰郎

    委員長櫻内辰郎君) 御質疑はございませんか。次は東京商工会議所專務理事吉坂俊藏君。
  21. 吉坂俊藏

    公述人(吉坂俊藏君) 私は健全財政ということについての疑いと、それから行政整理の必要と官業拂下の問題、この三点について申述べたいと存じます。  私は昨年までは健全財政ということをそのままに受け容れておつたのでありますが、最近一年間の経緯を見まして、又二十三年度予算を見まして、そこに疑いを生じて参つたのであります。一体收支均衡を得ておるということだけで、それで健全財政ということが言えるのでありましようかどうか。過大予算も過小予算と同じようにやはり不健全なのではないか。只今渡辺多惠子さんが國民生活とバランスしないような厖大な予算に対しては反対であると申されたのであります。私も同樣に感ずるのでありますが、國力に比べて過大である予算は、たとえ辻褄が合つてつても、それは不健全な財政ではないかと思うのであります。申すまでもなく日本は戰爭のために疲弊困憊いたしております。國土は半分になつております。非常に大きな大手術を受けた半病人であるわけであります。むしろ輸血が必要な状態にあるわけであります。成る程人口は殖えておりますけれども、殖えた人口の中には例えば六百万人の引揚者があるのである。又一千万人というものは罹災者であります。家を燒かれ、財産を燒かれたところの一千万人という、殆んどカナダ全体の人口にも当るような数がいわゆる戰災者であるわけであります。こういうような國家において一体健全財政なんということがあり得るのであるかということに、私は根本的な疑いを最近持つて來たのであります。強いて予算の辻褄を合せようとするために、この大手術を受けた病人に無理をさせる。無理をさせるために折角快復をしかけたものが又病氣が重くなつて、そのために現在まで発熱をしておるような状態ではないのかと、こんな感じがするのであります。予算の中に鉄道とか通信の特別会計がございますが、この方面でもバランスを取ることができないで、借入金を以て賄うことを認めておるのであります。日本全体の状態が國鉄や、或いは通信とどれだけ違うのか。やはり同じことじやないか。借入金を以て賄わなければできないのじやないか、こういうようなことを感じるのであります。そうして又借入金を以て賄つた方が健全財政ではないかと思うのであります。ただここでちよつと申上げますが、私は長期の公債には反対であります。私は八年の間中央金庫の理事長をいたして金の融通をいたしておりましたが、短期の融通の方が有効であります。金を借りる場合でも金を借りておりますというと、返すために一生懸命勉強をいたすのであります。却つてその方が能率が上るのであります。辻褄が合つたと言うても、お金を持つておればやはり無駄使いをするというようなことになるのではなかろうか。つまり健全財政というのは、逆説的でありますが、却つて不健全なことで、むしろ借入金政策によつた方が健全なのではないか。それで政府に対しても短期借入というようなものを認めて行く。今地方廳は短期借入でやつておりますが、ああいうようなものを中央政府でも認めてやつた方がいいのではないか、こういうことを感ずるのであります。  それから租税の問題でございますが、租税の問題につきましては、私はもう限界点に達しておると思うのであります。收税吏の方から見ますれば、百姓はどこまでも搾れると、こういうふうに思うのが、これは人情であります。だから政府当局の方から見れば、まだどつかに隠し財源があるのだろうというようなことで行かれると思いますけれども、実際はもうぎりぎりのところに来ておると思うのであります。考えても見ますというと、租税收入は十年前の昭和十三年には二十億でありました。それが今日は二千六百三十億ということに飛躍いたしておるのであります。一般会計歳入の中に占める租税收入の割合というものは六五・九一%にも上つておるわけであります。租税負担昭和十四年には一人当り五十円でありましたものが、昨年度は二千三百七十九円になり、本年は四千五百六十円に上つております。これは先程も申しました一千万人の罹災者であるとか、或いは六百万入の引揚民も皆入れてのことであります。ヘンリー・ジヨージのような土地の單税を元にいたしますれば、國土というものは半分になつておるのでありますから、國土の負担から言えばもつと大きくなつておるというように言わなければならんのじやないかと思うのであります。國民所得に対する予算の割合は昭和十四年には九%に止まつております。それが二十二年度には一九%になり、二十三年度予算では二一%に上つておるのです。日本で今までにないところの高率を示しておるわけであります。それで若しも國民所得が政府が計算いたしておるような一兆九千なんぼが若しなかつたということになりますれば、その割合は更に一層高率になるということになります。一体戰爭の後には民力を休養させなければならん。これは熊沢蕃山が申しております。戰後というものは、丁度大病をしたあとのようなものである。大病人は大病の後では朝鮮にんじんをとるべきであるのと同じように、戰後には休養を與えなければならんと言つておりますが、正にその通りであると思うのであります。イギリスでは一人当り租税負担額は昭和二十年には六五・〇八ポンドでありましたが、二十一年は六三・七九ポンドに下げております。更に二十二年には六二・一四ボンドに下げております。アメリカにおきましても同じで、二十年には一人当り二九一ドルでありましたものを、三十一年には二六九ドル二五に下げております。更に二十二年にはそれを二六三ドル〇五に下げておるのであります。ところが日本ではこの逆でありまして、戰後において民力の休養を與えないで、却つて負担を増す。先程渡辺多惠子さんがお話なさいましたような状態になつておるのは、甚だ残念に思うのであります。  行政整理の点にいたしましても、今度の予算で各省の人件費を一割五分節約するというのでございまして、その節約よりも行政膨脹の方が遥かに大きい比率を示しておるのであります。昔恩田木工という人がありまして、その人の記事は日暮硯の中に詳しく書いてあるのであります。私は今日の政府当局者に対して、恩田木工のようになつて下さいということを求めるのは或いは無理であるかも知れませんが、併しながら松平樂翁公が曾て寛政の改革をいたされまして、政費を非常に節約し、そうして予算につきましては一年間の最小限度を出さして、例えば追加というようなことは絶対に許さなかつた。一方において租税を免じて、面して物價を引下げるごとにおいて成功せられた。こういうようなことについて、少しく想いを起されることを希望する次第であるのであります。私はよい新聞を作るためには記事のカツトをしなければならんということを聞いております。又よい映画を作るためにはフイルムのカツトをしなければならんということを聞いております。よい予算を作るためにもできるだけカツトをしなければならんのではないかと思うのであります。この点について、國会の皆さんには是非とも予算をよく御審議下さいまして、思い切つてカツトをして立派な予算をお作り下さることを希望して止まない次第でございます。第一次大戰後の英國では御承知通りに国費節約委員会というものができたのでありますが、どこか日本でも一つ國会に國費節約委員会というようなものを設けて、至急に案を得て政府一つ実行を迫つて頂きたいと思うのであります。この行政整理というようなことは政府にやることを求めましても、これは又求める方が無理だと思うのであります。政府ではできない仕事であります。これはどうしても國会のようなととろ、又民間の知識経驗ある者を集めまして委員会を作つて、これで政府にこれを要求しなければならないのではないかと思うのであります。  又同時に税制についても整理をすることを一つ求めて頂きたいと思います。できるだけ税の種類を少くして、そうして少数の税務官吏ででも徴收ができるように、これが簡易化をするというようにして頂きたいと思うのであります。今民間では殆んど警察官を前門の虎、税務官吏を後門の狼のように思うておるのでありますが、そういうような状態から解放するためにも是非ともこういう点をやつて頂きたいと思うのであります。  行政整理の点につきましては簡單に要点を申上げますというと、第一現在では実施官廳に対しまして企画官廳が多過ぎると思うのであります。もう終戰後すでに三年になるのでありますから、経済安定本部だとか、或いは物價廳というようなところはもう縮小時代に入つていいのであろうと思うのであります。それでそういうような企画の事務について必要があるならば、民間学識経驗者を以て組織する審議機関を拵えまして、これに移してもいいのではないかと思うのであります。もう一つは、統制官廳が現在日本では多過ぎると思うのであります。戰時に引続くこの統制が解除されることに、これに伴つて不必要になるものはどんどんと省いて行かなければならんと思うのであります。今中央の出先官憲と地方廳とがいろいろ重複をいたしておるのであります。各省の地方出張所のごときものは、統制がなくなれば、又解除されれば、それに從つてこれを廃めて行かなければならんのではないかと思うのであります。貿易の方にいたしまして、も、今貿易廳と多数の貿易会團ができておるのでありますが、近く貿易も段々と民間貿易に移されて参るのであります。この官吏貿易が縮小され、民間貿易の方に移るに從つて貿易廳や公團というものも縮小が可能になつて來ると思うのであります。昨年貿易が再開されましたときに、この時流に便乘いたしまして、各地に貿易官とか、或いは貿易課というものを拵えておりましたが、今日では殆んど持て余しのような状態になつておるのであります。こういうような現実の情勢も見て、それぞれ整理すべきものは整理して行つていいのではないかと思うのであります。多数の準官廳でありますところの公團ができておるのであります。これに対する政府の出資、或いは融資というものは相当のものであろうと思うのでありますが、これなんかはできるだけ早い時期に本來の業者の手に返すのが至当であると思うのであります。  政府出資から由しまするというと、いわゆる復金が重大な役割を務めておりまして、いわゆる復金インフレという諺すらすでに生れているのであります。ところがこの復金が果して中小企業方面においてどれだけの任務を盡しておるかというようなことになりますると、極めて問題になると思うのであります。  今日中小企業者は、大体三十万か四十万、精々五十万の金に詰つておるのでありますが、そういうところに向つて復金は融資ができません。又復金の今日の少数の入手では到底そこまで手が届くとは思えません。復金は從つて企業本位にどうしてもならざるを得ないと思うのであります。大企業では御承知通りにお金がだぶ付いておるところが沢山あるのであります。殆んど人件費にこれを食われておるというような状態になつております。その金はどこから出るかというと、結局日本銀行が八二%を融通いたしておるのであります。何故日本銀行が復金を通じて融通をしなければならないか。むしろ日本銀行から直接出た方がいいのじやないか。復金というような制度は、果して必要であるのかどうか。復金は、アメリカの制度と同じように、むしろ保証事務だけをやりまして、そうして融資の方は民間銀行に讓る、そうしてその親銀行としては日本銀行がこれに当るというような制度になりますれば、インフレを避け、又健全財政にするというようなこともでき得るのではないか、こんなことも考えられるのであります。それから現在は國鉄その他人員の分布の樣子を見ますと、これは住宅の関係或いは食糧の関係もあるのでありましようが、或る地方に偏在している、一方では非常に人手が余り一方では人手が足りないというような状態が、各方面に見られるのであります。こういう点につきましては、イギリス或いはチエコ、或いはノルウエー等では最近労働移動の法制を作りまして、そうして或いは住宅、食糧、給與等の便宜を與えて、それぞれ労働移動をやつておるのでありますが、日本におきましても、配置轉換ということを容易にすることを考えていいのではなかろうかと思う。こういつた面におきまして、財政整理、行政の整理、税制の整理、これを行い、他方では事務の改善、生活の改善、消費節約能率増進、こういうような運動を起すべきものであろうと考えるのであります。  今日日本財政について、癌となつておるものがあると思うのであります。その癌は、申すまでもなく國鉄の問題と通信事業の赤字であります。鉄道が三倍半、通信料金が四倍今度引上げられることになりますが、それによつても尚且つ鉄道には百億の赤字が残り、通信には五十億の赤字が残るのであります。一体いつになつたならば、國鉄も通信事業の赤字も解消されるでありましようか、今日の予算というものは全く姑息な予算ではないか、根本的なメスというものは、ちつとも加えられておらないのではないかと思うのであります。安本で拵えました復興計画試案というものがございますが、その五年後の状態を見ましても、この五年後に回復するということは、國鉄みずからむずかしいということを告白しておるのであります。料金の値上げというものは、決して根本的の解決策とは思わないのであります。私は根本的の解決策は、この鉄道なり、或いは通信事業の一部を民間拂下げて、これを民営に移すということが、唯一の解決方法であると信ずる者であります。鉄道の歴史を申上げますと、御承知通り明治五年に京濱間十八マイルが開通いたしまして、明治七年に阪神間が開通し、明治十年に京阪間が敷設され、そうして明治二十二年に至つて東海道の本線ができ上りました。これは皆國営であります。民営は明治十四年に日本鉄道会社ができまして、この日本鉄道会社は、第一回において非常な立派な営業成績を收めまして、一割以上の純益を收めたのであります。これが刺戟いたしまして、十七年には阪堺鉄道ができまして、それから引続いて山陽鉄道ができまして、甲武鉄道ができまして、関西鉄道ができまして、九州鉄道等、いろいろな大中の会社ができたのであります。それで明治二十二年東海道本線の國鉄ができました時に、國有鉄道の総延長マイル数は五百五十一マイルでありましたが、十二年も遅れて発達いたしました民営の鉄道は、これを超過いたしまして、六百七十一マイルに上つておるのであります。これを見ましても、民営の方が國営よりも、官営よりも普及において、発達において効果がいいということを知ることができるのであります。それがたまたま明治三十九年、日露戰爭の後でありますが、國有鉄道法ができまして、そうしてこれのできることにつきまして、商工会議所でたびたび建議をしてこれを要求したのでありますが、その國有になつた理由は、主なる理由は申すまでもなく國防であります。そしてもう一つ外資の導入を、外資の入ることを防ぐことにあつたのであります。その当時まだ外人の株主は一人もなかつたのであります。併しながら民営にして置くというと、この私鉄の方には外國人の資金が入つて來るであろう。若し外國人の資金が入つて來ると面倒臭いことになる。今は條約改正の前だ、できるだけ早く國有に移しまして、そうして外國人が日本の鉄道に手を染めないようにするのがよい。こういうようなことで國有に移されたわけであります。今日とは全く正反対の事情にあつたことを知るのであります。今日では外資導入によらなければならないのであります。この方法によつてもよろしく又よらざるを得ないような状態にあり、そして外資の導入のためには、民営の方が便利であるということを申すことができるのであります。又再び日本鉄道とか、山陽鉄道とかいうような時代に還すべきではないかと思うのであります。私鉄と國鉄の状態を比較いたしましても、私鉄の状態と雖も決して樂ではございませんけれども、併し國鉄よりはよいのであります。收支勘定もよければ、サービスもよろしいのであります。又一マイル当りの人員も國鉄の中分で以てこれをやつておるのであります。デモクラシイの時代は即ち民営の時代であります。民営が時代精神に合つておるのであります。最も能率を発揮することができると思うのであります。  通信事業にしても同樣であります。これは戰前と雖も、例えば電話などは、日本では御承知通り権利が附いております。世界中、日本のようにこの権利が附いて、そうして電話の架設の後れておるところはないのであります。私はスイツツルに暫くおつたのでありますが、五十フラン拂いまして申込みますと明くる日には電話が通じてお話ができるのであります。アメリカでは三ケ月分を前納するというと、その日の中に、二、三時間の中に電話が付くという状態であります。アメリカでは全部電話は民営であります。市内電話も市外電話も皆民営であります。電信も民営であります。民営を認めておる國はアメリカの外沢山あるのであります。又民営と國営と両方行なつておるところもあるのであります。電信や電話というものは郵便と違いまして、労力によるよりも技術設備による面が多いことは申すまでもありません。特にこの日新月歩の設備、優秀な機械設備を尊ぶのであります。これを今日財政難に当面いたしておりまする日本政府に求めることは、これは不可能ではないかと思うのであります。過去においても財政政策のために永久的な、建設的の改善というものはいつも後れておるのであります。当分の間少くとも政府にこれを期待するということはできないのではないかと思うのであります。そうして現在では通信の仕事は郵便とそれから電信、電話、又貯金、保險というような仕事が皆一緒に合同されておるのでありますが、実際上におきましては、貯金事務のために郵便が食われ、郵便事務のために通信が食われ、或いは電話が食われておるような状態になつておるのであります。これを分けてやるということが、電話だけでも早く回復するということが、結局は郵便の回復をも早めることになり、貯金事務をも又整備させるというようなことになつて来るのではないかと思うのであります。今回國会を通りました電話公債法は、只今電話加入者によつて反対を受けておるのでありますが、これを若し電話を、若し会社組織にいたしますならば、三万六千円の公債を買う代りに、これを出資金といたしまして、或いは株券を買う、三万六千円以上の出費をする人は非常に多いのではなかろうかと思うのであり、又電話もこの大、中、小、各都市ごとにこれを設けて、会社を設けてもよいのかとも思います。三十万或いは五十万の加入者があるならば、相当に会社としては経営できるのじやないかと思います。少くとも市内電話、私は目黒に住んでおりますが、目黒に住んで尚この電話をつけることができなくて困つておりますが、少くとも目黒電話会社を拵えても、これだけでもやつて行けるのではないかと思うのであります。そうして電話については外資導入の可能性も、もうすでに現実化しております。一方國家において必要があるならば、二十年か三十年経つた後に國営に移すかも知れないということを條件にしてもいいと思うのです。この際官業と相並んで少しでも補充的な民営の電話事業ということを認めるべきではないか、この民営が赤字克服の方法であり、これが日本財政の癌を取るものであり、又日本再建の途であると固く信ずる者であります。御参考に供する次第であります。(拍手)
  22. 櫻内辰郎

    委員長櫻内辰郎君) 御質疑はございませんか、ございませんようですから、次は労働問題研究所の專務理事小田島禎治朗君にお願いたします。
  23. 小田島禎治郎

    公述人(小田島禎治郎君) 私がこれから申上げますことは、私自身財政に関する限り全く素人でありますから、我がままな卑見として御批判を願いたいと思うのであります。  私考えますときに、租税の本質というのは、納税義務者も或る程度の得心が行つて、これでよしというところで納める。ここに税としての本質があるのではないか。これだけ必要であるからというので納税義務者の実態考えずして、必要なだけを税金に廻わす、税金を賦課するというようなことは、これは公の税というよりもむしろ搾取といつた方がよいじやないか、こういうふうに考えるのであります。本年度予算は御承知のごとく四千億というような誠に厖大なものでございまして、これを御編成になる当局の御苦心はよく分るのでありまするが、ただその内容、性格等拜見するときに、上手に数字をお並べになつて辻褄を合せてはおるが、併し誠に偏狭な杜撰なものではないかというような考えを持つのであります。この程度ただ計数の辻褄を合せる、いわゆる算盤上の勘定であつたならば、敢えて財政的に大きな見識を持つておる大政治家の批判を俟たなくとも、恐らく村役場の收入役さん程度の方でも御編成ができるのではないか、こういうふうに甚だ失礼な言い分でありますけれども考えるのであります。本年度予算を拜見いたしますると、租税において二千六百三十億、專賣益金が九百四十三億、地方税千八十五億、合計四千六百六十億という数字を示しておるのでありますが、これを國民一人当り負担を見まするときに、実に五千九百六十七円、六千円に垂んとする負担でございまして、私共今日の日常生活は、腹八分食うことさえできないというような状態でありますときに、おしなべて子供も年寄も六千円に近いというような厖大な負担が果して可能なのであるか、第一この点において、私は皆さんの御批判を得たいのであります。昨年の公聽会におきましても、私一番憂慮されることは、國民所得の査定でないか、申上げるまでもなく、國民所得が課税対象の根元をなすものでありますから、この査定に誤まりがあつたならば、杜撰なところがあつたならば、その影響するところは非常に大きい、こういうふうに申上げたのでありまするが、本年度予算を拜見しましても、同じようなことを申上げなければならんことを、甚だ遺憾とする者であります。本年度におきましては、御承知のごとく一兆九千億が國民の所得であると、こういうふうに計上されてあるのでありまするが、この間までは安本の御調査によると一兆四千億程度に止まるであろうというようなお見込のように聞いておつたのでありますが、幾日も経たないのに五千億も増加したということは、一体この原因はいずれにあるか、私は了解に苦しむものであります。昨年度は御承知のように國民所得を九千億に押さえまして、そうしてこれを基準に税の対象となつて課税されたのでありますが、昨年度において、私聞くところによりますると、大藏省の内部において、甲局と乙局との間に、この調査に非常な行違いを見た、総額の計数に大きな見込み違いがあつた。そうして結局一致した結論に達しなかつたというようなことを聞いておるのでありまするが、これが完全に國民の所得の実態を捕捉し得ない結果でありまして、いざ徴税となりまして、前年度予算は税制が布かれて以來、曾て前例を見ないという程税の滯納がございまして、恐らく年度が変りました今日においても、尚相当の未整理の額が残されておりはしないかと思うのであります。この影響するところは、自然に予算の円滑なる運営を阻止して、財政の根本計画に重大なる狂いを來たしまして、延いて日本財政というものは、單に対内的にばかりでなく、外國に向つても信用を落しやしないか、北村藏相は外資導入について非常に樂観的な態度をとつておるのでありますが、こういうような事実も、私は受入れ態勢を整える上に大きな邪魔をしていやしないかという考えを持つ者であります。私はこの間岩手縣の方に旅行したのでありますが、あの縣は御承知のように、昨年大きな水害を被むつておるのであります。それで水害の復旧工事を成るべく農村の閑散な時期において解決しようというので、知事初め縣当局は、雪解けを待たずして災害復旧を急いだのでありまするが、或る程度進行して、ここに働く人々が賃金を受取つた。それは知事振出しの小切手でありますから、安心して地方銀行へ行つたところが、これは不渡である。それで現場で働く多くの地元民は憤慨して縣廳に押し寄せた。知事はこれに対してどういうかと思うと、これは決して空小切手ではない。縣が惡いのじやなくて、國が惡いのだ。災害復旧工事の國庫補助金は、とうに來るという指令が來ておるので、これをつまり私の方では裏付けに、これを見込んで発行したのであるから、これはひとり縣の罪ではない。國の罪であるといつて、一時逃れの口実であつたかも知れませんけれども、非常に地元で働く人が迷惑したという実例を知つておるのであります。かくのごときも、私はやはり税收の完璧を期し得なかつたというところに、大きな原因があるのじやないかと思うのであります。  それで本年の國民所得の一兆九千億という数字は、果してどういうところに根拠を置いたのであるか分りませんが、國民所得というのは、確実な推算は事実困難でありまするが、つまり予算編成上のの技術的彈力性は持つておる。だから相当の含みを持たせて計上しても構わないというような、氣休めな、と言つては甚だ失礼かも知れませんが、樂観的な態度で、これを確実な根拠なくして計上しておるのじやないか。こういうことを先ず第一番に心配するのであります。若し私の想像が不幸にして当るようなことがありましたならば、同じく前年の轍を踏みまして、非常なる財政計画に支障を來して、予算の運営に大きな邪魔を伴うと思いまして、ここに大きな不安を感ずる者であります。  次に、予算面に現われておりまする物價改訂についてでありまするが、公價引上げは七割以内、闇物價は三・六割、全体として物價改訂のふくらみを五割に抑えておるようであります。問題は、果してこの程度で物價が釘付けにできるかどうか。それだけの事実自信を持つてお組みになつ予算であるかどうかということに、一つの疑問を持つ者であります。國鉄運賃通信料金が大幅に政府みずからの手で値上げを策されておる。一般公價の値上率よりも何倍かの大幅であるということは、爭われん事実であります。又生産の根本基底が前年度と大差がない、この現実と照し合せまして、今度新らしく改訂された物價体制が、果してこれは適正なるものであるかどうか。これに対しましても、私は大きな不安を持つのであります。物價の五割ふくらみで抑えようとすることが、恰かもがつちりと骨組のできない所に急いで建築をしたようなもので、結局は砂上の樓閣と同じように、一波万波の押寄せて来る場合にはわけもなく崩れてしまう危險性を孕んでおる。これについて、私は参議院の予算に御関係のある諸公に対して、十分なる御檢討をお願いしたいと思うのであります。先程公述人の方からも申されたようでありまするが、政府は昨年あたりから赤字財政予算面から追放して、健全財政を取つておるということを御自慢そうに申されておるのでありまするが、健全財政というのは、國民経済の正常な循環を前提とした場合には可能な問題でありましようけれども、今日のように、國民経済が摩擦し、混乱しておるという時代に、果して健全財政というものを編めるのであるかどうか。これは前の公述人の方もおつしやつておりまするが、私も同感でございまして、ただ健全財政というのは、要するに予算に対する國民の支持、國会の協力を得る上に非常に便宜なように作成したものでありまするけれども、その根底においては、何ら健全性はなくして、單に計数を上手に合せておるというに過ぎないと思うのであります。それから御承知のように、本年度予算は大変手続が遅れまして、四、五、六月は暫定予算で行なつておるのでありまするが、漸く今月初めに予算案を衆議院に提出しまして、十五日までに鉄道運賃並びに通信料金値上げ承認の計らいをして欲しいというようなことを、大藏大臣が國会に向つて希望しておるのでありまするが、これは誠に國会の権威を無視したやり方である。私共は在民、つまり主権が我々國民の手に移つて、そうしてそれによつて構成されたところの國会に対しては、あらゆる角度から絶大な信用を拂つておる。そうして國会の議員諸公も亦あらゆる点で國民の支持に應えようという努力を拂つておると信ずるのであります。然るに政府は徒らに、予算を早く審議して、これに協賛を與えて欲しいというような注文は、これは國会を無視し、國会の権能を蔑視した態度でないかと思うのであります。僅か一週間や、五日の間に國鉄運賃値上げとか、通信料金値上げというような重要な問題を審議せいというようなことは、これは愼重審議に非ずして鵜呑みにせよというような注文で、甚だ今の政府のやり方が面白くないと、こう私は考えておるのであります。  もう一つ申上げたいことは、衆議院などの例を見ますというと、政府の提案が遅るるために我々の審議時間が、期間が遅れるのである、こういうように、この予算、法律案の審議に対して、その大部分の責任を政府当局に轉嫁しておるように考えられて仕方ないのでありまするが、申すまでもなく、現在の國会は、各專門的な常設委員会の機関が備つておるのでありますから、私は、政府の手を待つばかりでなく、國会自体がそれぞれ各世の中の重要な問題になつておるものに対しては、然るべき持ち駒を持つておることが当然でないかと思うのであります。政府予算を見て、それから初めて審議に掛かろうというよりは、先ず國会自体も一つの案をここに持つて、そうして相照らしてその最善を取るような仕組みが本当でないか。今日のように、ただ政府の提案を待つて、それによつて國会が審議するのだということであれば、これは明治憲法時代の國会の形態と何ら変らない、こういうように考えます。  私は最後に、今まで申上げたことは総括的なことを申上げたのでありまするが、最後に申上げて皆さんの御協力を仰ぎたいと思うのは、本年度から新税として設定されますところの電氣、瓦斯税でありますが、税収を上げるという目的から、この税には免税点を設けないで、一概に料金の一割を課税する案のようであります。私は瓦斯は別問題でありますけれども、電燈は免税点を設けて欲しい、かように希望するのでありまするが、私共は殆んど日常生活が税によつて縛られておる、ここに電氣や瓦斯にまで税金を課けられるということになれば、残るのは水だけでないか、お仕舞にはやはり水道税なんというものが來やしないかという不安を持つのでありますが、電燈はどんな細民でありましても、どんな家庭におきましても、一燈や二燈は必要なのでありますが、大衆課税を避けたいという建前で、予算を御編成になつた御当局は、この点を無視して、何でも一律に税金を課けようとすることはどうかと思うのでありまして、私は少くも二燈くらいまでは免税してやれ、そうして三燈以上から一律、つまり料金の一割というようなことをせずして、光燭その他について按配して課税した方が適当でないか、こういうふうに考えるのでありますが、これも一つ是非参議院において御考慮をお願いしたいと思うのであります。  その次に、通信料金の問題でありますが、これを大幅に、今現行率から一躍四倍にするということについては甚だ不満なのでありますけれども、あれもいけない、これもいけないということになりますと、予算財源というものを失うのでありますから、一歩讓つてこれに賛成するといたしますが、その中でも、三種郵便物の認可を受けておるところの郵便物に対する特例を設けて欲しいと思う次第であります。現在三種郵便の認可を受けておりますところの新聞、雜誌等は百グラムまでは五十銭の料金になつておるのでありますが、これは一躍四倍の二円に値上げする原案でございます。申すまでもなく、三種郵便の認可を受けておるという郵便物は、雜誌であるとか、或いは新聞であるんでありますが、仮にこの新聞の例を取つて見ますというと、新聞の公定價は一ケ月二十五円である。この一ケ月二十五円の公定價の新聞を郵送するのに六十円の税金を掛けるというようなことは、これはどうも非常に本末を誤まつてはいやしないか、殊に新聞というようなものは都会居住者よりもむしろ地方に多いのでありまして、若しこれを強行するようなことがあつたならば、知らず識らずの間に地方文化の発展を阻害することになりはしないか。三種郵便物の料金のごときは、仮にこれを中止いたしましても予算の大勢に関係する程重要な額ではありませんと思いますから、この点を是非御考慮に入れて御審議をお願いできれば結構だと思います。私共は先程も申上げましたように、現在の國会に対しては自分達の國会である、國民の國会であるというような極めて親しみを持つた眺め方をしているのでありますが、併し参議院はよく存じませんが、衆議院の例を見まするというと、予算の審議、或いは重要法律案の審議などというものは、お考えに置かないというわけではありませんが、果して眞劍な態度を以ておやりになるお気持があるのか、総理大臣の御重任であられるところの民主党の総裁は、補欠選挙應援のために、公の名に藉りて地方に御出張になつておる。或いは各党の領袖は議会開会中で職場を離れるということが容易でないのに拘わらず、競爭的に地方に出て遊説に夢中になつておられる。こんなことは果して國民の支持を受けるに可能なものと考えておやりになつているかどうか、勿論政党政治でありまするから、常に國民に親しく接触して、そうして御自分の党の政策なり主義なりを國民に徹底するということは、それは極めて結構なことでありまするけれども、今日のように、すでに暫定予算國民は非常に迷惑をしている、或いは外の法律案も七十案も山積している。これが果して議会の開会中に審議が盡されるであろうかどうかという重大な時代において、こういう態度をお取りになるということは、私共國民といたしましては、決してこれに御同意しかねるのであります。この間も新聞にもあります通り、マツカーサー元帥が本國陸軍省の正式な招請を断わつた。それは政治的誤解を避けるためであるというようなお話になつておるのでありまするが、私は衆議院の諸公に対しても、マ元帥のごとき政治的良心、その人格なり、度量なりを持つて欲しい、こう希つておるのであります。  甚だ詰らないことを申上げまして、私の申上げますことはこれだけであります。
  24. 櫻内辰郎

    委員長櫻内辰郎君) 御質疑はございませんか。
  25. 石坂豊一

    ○石坂豊一君 ちよつと質疑ではありませんが、お話のことについて申上げて置きたいのでありますが、予算の審議に対して政府の提出の遅れることは政府としてしようがないが、議会政府がたとえ出そうと出すまいと、民主主義時代であるからして、議会みずから歳計予算について檢討した方がいいじやないかというようなお話があつたようにちよつと耳に來たのでありますが、これは現在の機構として、ちよつと外の法律案は、これは自分で立法することもできましようけれども、予算に関する限りは行政部から出すのを待たなければならん。そのために遅れて來ている場合にはやはり議会が先走つて審議するわけには参りませんから、その点について衆議院も審査の時間が短かいということを不満に思うであろうが、参議院においても亦然りである。参議院のごときは先走つて予備審査をして、衆議院から廻つて來ない中に審査をしておるようなわけであります。それを國民諸君に誤解のないようにして置かないと、そんな民主主義議会において予算が出ないからと言つて、だだを起す必要はないじやないかと思われる。我々誠に迷惑である。これはできない相談である。而して只今のお話の中にもありましたが、今日法律の審議、予算の審議は、議会はむしろ政府当局が、説明の人を派遣することが遅かつたり、或いは又大臣及び政府委員の出席が両院共通しておるために、体が二つないために両方同時には出られん。又政府も実際に慣れん点もありましようが、米國流になかなか行きにくい、そういう点はもどかしくお思いでしようが、藉すに時を以て、すべて切り換つた議会制度の運営を暫く見ておつて頂かなければならんと思います。
  26. 小田島禎治郎

    公述人(小田島禎治郎君) そういう意味で申上げたのではありません。例えば國鉄の運賃に対しましても大幅に値上げされるということについて、その倍率などは分つております。例えば與党であるところの衆議院の社会党でも或いは民主党でもお分りになつておる。それなのに案が出てから、改めて又今度は政務調査会なんかに掛けてやるというようなことはどうかと思う。これは十分分つていることについては政調会なりで審議して、そうして正式に提案に向つて審議を進めることが本当ではないかと思います。参議院自体が、或いは衆議院自体が予算を編成して、そうして向うの案を比較してどうだというような意味ではないのであります。大体分つておる問題に対しては……。
  27. 石坂豊一

    ○石坂豊一君 つまり一般財政について檢討した方がいいじやないか、こういう意味ならばそれは受取れます。
  28. 小田島禎治郎

    公述人(小田島禎治郎君) そういう意味であります。
  29. 櫻内辰郎

    委員長櫻内辰郎君) それではこれにて公聽会は終了いたしました。散会をいたします。    午後三時二十八分散会  出席者は左の通り。    委員長     櫻内 辰郎君    理事            西川 昌夫君            岡本 愛祐君            中西  功君    委員            カニエ邦彦君            木下 源吾君            波多野 鼎君            石坂 豊一君            左藤 義詮君            寺尾  豊君            深水 六郎君            入交 太藏君            木内 四郎君            小畑 哲夫君            江熊 哲翁君            岡部  常君            川上 嘉市君            河野 正夫君            島津 忠彦君            島村 軍次君            姫井 伊介君            池田 恒雄君            藤田 芳雄君   公述人    株式会社守髓商    店社長     守隨彦太郎君    産別労働組合幹    事       山田 有三君    教職員組合中央    執行委員長   荒木正三郎君    著  述  家 高野清八郎君    宮城縣大張村農    業会書記    八島  敏君    著  述  家 渡邊多惠子君    東京商工会議所    專務理事    吉坂 俊藏君    労働問題研究所    專務理事   小田島禎治郎君