○塚本重藏君
只今議題となりました四つの
法律案について、厚生
委員会におきまする
審議の
経過並びにその結果について御
報告を申上げます。
先ず健康
保險法の一部を
改正する
法律案について
説明します。本
法案は去る六月の二十五
日本委員会に本付託と相成りまして、二十五日及び二十六日の両日に亘
つて審議いたしました。先ず
法案の
提出の
理由並びにその
改正の要点を申上げますと、健康
保險法におきましては、從來被
保險者の権利義務に関する
規定等であ
つて、
法律事項と認められる重要な
事項に関して、政令に委任した
事項が極めて多か
つたのでありますが、最近の立法の趨勢に鑑みまして、これらの
規定を
法律に
規定いたしますると共に、概ね次の点に関しましても実体的な
改正を図
つた次第であります。先ず被
保險者の標準報酬に関しましては、現在は最高五千百円の第十七級までと定めてあるのでありますが、最近におきまする賃金の上昇に鑑みまして、更に十級を追加いたしまして、その最高を八千百円といたした次第であります。次に被
保險者の資格に関しまして、今般國、都道
府縣及び市町村等に使用せられる公務員についても、健康
保險の被
保險者とするようにいたしたのであります。併し、公務員の中、國家公務員によ
つて組織されておりまする共済組合に対しては、健康
保險事業の実質的代行を認めることにいたしたのであります。次に健康
保險の
保險医等は、その同意を得て都道
府縣知事がこれを指定することにいたしたのであります。次に
保險料に関しましては、
政府の管掌する健康
保險については千分の四十とし、特別の場合には主務大臣が健康
保險委員会の
意見を聞いて、その一割の範囲内で変更し得ることとし、健康
保險組合の場合には、千分の三十乃至千分の八十の範囲内で
決定して、主務大臣の認可を受けることにいたしておるのであります。以上がこの度の
改正の主なる点であります。
委員会におきましては、
愼重審議熱心な
質疑が行われたのでありますが、その中主な点を一二申上げますと。
第一に、健康
保險は
事業主、被
保險者、
政府の三位一体であるが、國庫の負担がどれ程にな
つておるか。この
質問に対しまして、
政府管掌の場合は
事業主と被
保險者と折半負担であるが、國庫は被
保險者一人につき十二円を負担している。組合管掌についても概ね折半負担であるが、
事業主の負担の割合が多いのが通例とな
つている。
第二に、
國民健康
保險に関する國庫補助金と、健康
保險に対する國庫負担金との割合はどういう
状況であるか。これに対する答えといたしまして、
國民健康
保險は主として農、山、漁村を対象とし、健康
保險は工場、鉱山等の職場を対象としている社会
保險であるから 両者の均衡が取れていることが望ましい。そこで健康
保險の國庫負担金も
國民健康
保險に同調いたしまして、一人
当り十二円としておるのである。次に、積立金の
状況は如何。收支に余剰があれば
保險料率を引下げるべきであるが、
政府の所見如何。この
質問に対しまして、健康
保險は厚生年金とは違
つて短期
保險であるので、それ程多額の積立金はない。現在ある積立金は、國債又は
大藏省預金部に預金されておるのである。戰時中は
保險給付費は余るような傾向であ
つたが、最近はその逆な
状態にある。次にそういう
状況であるならば、この改定による今後の收支の見通しは如何。この
質問に対しまして、今回の
改正によ
つて標準報酬料率共に引上げられているから、今後格別な物價騰貴の変動のない限りは、收支相償う見込みである。次に、国家公務員についても特別な取扱いを止めて、この際健康
保險の被
保險者とし、健康
保險一本にしてはどうかとの
質問に対し、御説には同感であるが、現在はその沿革的な事情や厚生年金、恩給等長期
保險制度との
関係もあるので、取敢えず被
保險者とはするが、
保險料の徴收や
保險給付は行わないことにした。將來社会保障制度が確立されるべきであると思うので、その前提的な
意味でかくのごとき
改正に止めた次第である。
かような答弁がありまして、
質疑を終りまして、
討論を省略して、原案通り可決すべきものと
決定いたした次第であります。
次に
温泉法案について御
報告申上げます。
本
法案は、去る六月の二十五
日本委員会に本審査付託となり、同月の二十六日及び二十八日の両日に亘
つて審議いたしたのであります。
先ず
政府委員より提案
理由及び
法案の
内容について
説明がありました。その概況を申上げますと、我が國は世界に冠たる温泉國でありまして、古來温泉は
國民の保養又は療養に廣く利用せられて参
つたのでありますが、温泉地の発達に偉い、或いは濫掘とか、或いは温泉に関する権利
関係が復雜を極め、各種の紛爭を起す等、いろいろの問題が出て参
つたのであります。これらの問題を処理いたしまするために、從來都道
府縣令を以て温泉に対する
取締りを行な
つて参
つたのでありますが、新
憲法の施行により、昨年末これら都道
府縣令はその効力を失うことにな
つたのであります。よ
つてこの際、從來の都道
府縣令の
内容とするところを基礎といたしまして、これに若干拡充をいたしまして、温泉の保護とその利用の適正化に遺憾なきを期するために、ここにこの
法案を
提出せられたのであります。
次に本
法案の
内容を御紹介申上げますと、この
法律案は全部で三十ケ條でありまして、先ず総則におきましては、この
法律の
目的と温泉の定義を
規定しておるのであります。即ちこの
法律の
目的といたしましては、温泉を保護すると共に、その利用の適正を図りまして、公共の福祉の増進に寄與することにあるのであります。温泉の定義といたしましては、地中から湧出する温水又はガスで一定の温度を有するか又は一定の成分を含有しておるものを温泉と称することにいたしたのであります。次に第二章におきましては、温泉源を保護するために必要な
事項を
規定しておるのであります。第三章におきまして、温泉の利用の適正を
図つて公共の福祉の増進に寄よせしむるに必要な
規定を設けております。次に第四章におきましては、行政処分を民主的にするために、温泉
審議会に対する諮問と公開による聽聞に関する
規定をいたしております。尚最後に附則におきましては、施行期日とその
経過規定を設けておるのであります。
以上が
本案の
内容の
大要でありますが、次に本
法案について
委員会における
質疑の主なるもの一二だけを申上げますと、第一に、本
法案の第五條によ
つて許可を取消したものが、公益に必要ある場合の再許可をどうするのであるか。これに対して、公益に必要あるものについては最初から許可を取消すなどというようなことはあり得ないから、その事例はないと思うとの答弁がありました。次に、温泉利用者に健康者と疾病者とがあるが、両者が同一のものを利用するのは衛生上不適当であるが、これについて何か
取締りをする方法はないか。これに対しましては、
政府といたしましてはその部面については公衆浴場法によ
つて取締つて行くつもりであるとの答弁がありました。次に、温泉熱を工業用等に利用する場合にはどうするのであるかとの
質問に対し、これは
地方商工局長と
協議をしてその万全を期して行くつもりである。次に本法は温泉そのものを保護しておるようであるが、公共福祉の増進に寄與する点が明確でないではないか、この点について次の四つのことを明らかにすべきである。即ち第一、温泉利用の適正と公共福祉の増進に関する対策はどうであるか。第二に、温泉源の保護よりむしろ温泉営業者を保護する結果となりはしないか。第三に、温泉療養者が眞に療養のため利用できない
実情にあるがどう思うが。第四に、温泉が権利のように取扱われておる
現状では、独占的な傾向になるので、許可には十分考慮する必要があるが如何。右の
質問に対しまして、温泉対策は從來主として警察命令によ
つて來たのであるが、今後は單に
取締だけではなく、積極的に利用増進を
図つて行くつもりである。第二点は、温泉源の保護を第一に考えておる。即ち濫掘を防止すると共に、その利用の適正を考慮しておる。温泉の既得権者についても、公共の福祉のために必要であるときは、採取を制限し、調整する等の途を図るのである。第三の点は、療養のための温泉利用についても、学問的研究の成果と相俟
つて対策を講じて行くつもりである。第四点は、温泉が権利として取扱われておるのは否めない事実であるが、慣習その他
地方的な事情もあるので、今物権として温泉権を設定することは適当でないので、今後の研究に俟ちたい。温泉法施行前の取扱については、附則によ
つてこれを処理するつもりであるという答弁がありました。
かくて六月二十八日の
委員会におきまして
質疑を打切り、
討論を省略して原案通り可決すべきものと全
会一致を以て
決定いたした次第であります。
次にへい
獣処理場等に関する
法律案について御
報告申上げます。從來へい獸処理場の衞生
取締りは、各都道
府縣令によ
つて行われて來たのでありますが、
昭和二十二年
法律第七十二号、
日本國憲法施行の際、現に効力を有する命令の
規定の効力等に関する
法律の
規定によりまして、これらの都道
府縣令はその効力を失うに至り、且つ各都道
府縣令による
取締りを以ていたしましては、その取縛りの対象、方法等が一定していないため、
取締の徹底と指導の適正等を十分行うことが困難であり、公衆衞生上遺憾の点がありましたので、この際統一的な基準を定めまして、これらの衞生
取締を徹底化するため、この
法律案を
提出せられたのであります。
本
法案につきましては、六月の二十七日
委員会において
審議いたしたのであります。今
質疑の主なるものを一二申上げますと、本法の
規定するところの獸畜以外の犬、猫のごとき小動物に対する衞生
取締りは
規定してないが、それはどうか。それは軽犯罪法によ
つて取締ることに委して行くつもりである。その次に、それであるならば、動物園の動物、象、獅子、虎、熊等については本法は適用されないのか。これらのものは特殊のものであるから本法は適用されない。この点は指導面において
取締つて行くつもりであるとの答弁がありました。次に、牛馬等一頭を收容し、又は飼育するものにもこの
法律は適用せられるかとの
質問に対しまして、これは同樣にこの
法律の適用を受けるのであるとの答弁がありました。その他数点の
質疑がありました後、
質疑を終りまして、
討論を省略して原案通り可決すべきものと
決定いたした次第であります。
最後に、あん摩、はり、きゆう、
柔道整復等営業法に関する
特例案について御
説明申上げます。この
特例案は本院
小林勝馬君の
提出になるものでありまして、先ず
本案提出者の
小林勝馬君より提案
理由の
説明がありました。その概要を申上げますと、あんま、はり、きゆう、
柔道整復等営業法の施行
準備期間は僅かに十日間であ
つたために、各
府縣におきましては、従前の法令によ
つて受験資格を有する者に対する措置として、急遽その資格試験を行な
つたのでありますが、遠隔の地にお
つてその施行を知らず、又は病氣その他の事故のために受験し得なか
つた者が
相当数に達しておる、同等の能力と経驗を有しながら受驗の機会を失
つたために、同法附則第十七條の
経過規定による救済に浴せず、そのために今後の
生計の道に迷
つておる者があることは、公平の原理にも悖り、又本人達に取
つても誠に同情すべきものがあるので、この
法案を
提出したのである。
本案施行の日において、学歴経驗等の條件を満たしておる者で受驗資格のある者に限
つて、今一度試驗を施行し、合格した者に対しては、同営業法附則第十七條と同樣の救済の途を開く必要があるとの
説明があ
つたわけであります。尚
政府当局より、施行
準備期間を十日間としたのは、短期間であ
つたことは認めるが、余り多数の者はないと思
つていたので、その措置を考慮いたさなか
つたのであるが、そのような
実情にあるならば、
本案提出に何らの異存はないのであるとの
意見が表明せられました。
本案は二條と附則より成り、その
内容も極めて簡單であり、且つ又
本案提出も妥当なものでありますので、厚生
委員会におきましては、
質疑、
討論を省略いたしまして、原案通り可決すべきものと
決定いたした次第であります。以上
報告を終ります。(
拍手)