○佐々木良作君 電力復興問題に関する
調査の
報告をいたします。最初
調査の
経過を
簡單に
報告いたしますが、電氣
委員会は
昭和二十二年、昭年の十二月十日に電力復興並びに開発に関する施策の樹立に資し、以て現下の
経済復興並びに民生安定に寄與する
目的を以ちまして、電力復興問題に関する基本
調査を行うことを
決定し、
議長の承認を得て直ちにこの
調査に着手した次第であります。以後現在まで他の付託事件の
審議と並行いたしまして、本
調査を進めましたが、本年の三月三十一日、右
調査を完了いたしまして、四月七日附を以て多数
意見者の署名を附して
議長宛
調査報告書を
提出した次第であります。その後現在まで約二ヶ月半に亘る日数を、印刷にとりましたために
報告が遅れた次第でありますが、やつとでき上りましたので今日
報告さして頂くわけであります。
内容は
報告書にあります
通りでありまして、皆さんのお手許にこういう電力復興問題に関する
調査報告書と、それから同様の
報告書の別表とが各文書函に配付してありますから御覧を頂きたいと思います。約百頁、全部で十三章からなり、統計数字は統計表として約八十頁を附加してありますから御覽願いたいと思います。
尚実際上本
調査の一部をなしますところの電力不足の原因に関しましては、第一回
國会におきまして電力復興問題の第一回
調査報告書を
提出しておきましたから、その
内容は御
承知の
通りであります。尚本
調査は現在電氣関係で最も問題にな
つておりますところの、電氣事業の再編成に関する問題につきましては、直接の
調査対象にいたしませんでしたが、本
調査自体が電氣事業の過去及び現状についての基本
調査であり、將來の施策樹立に資することを
目的としておる関係上、再編成問題を判断するに必要なる基本的な諸問題は、殆ど網羅されております。この点を附加えておきたいと思います。
内容に関してでありますが、時間の制約もありますので、極めて
簡單に
調査の結果と、その要点だけを御
報告しておきたいと思います。
最初に、第一は現在の電力設備の
状態でありますが、詳しいことはこの中に全部細かく
記載してありますから御覽願いたいと思います。大ざつぱに申しますと、電力の設備は最大電力で六百三十万キロ、常時といいます一番少いときで二百七十万キロでありまして、火力が三百九十五万キロ約四百万キロでございます。水力と火力の比重は水力が約六八%とな
つております。七、三の割合でありますが、ちなみに申しますが、アメリカにおきましてはちようどその逆にな
つておるのでありまして、火力約七〇%、水力が三〇%、こういう見当にな
つております。その設備水力六百三十万キロ、並びに、火力の三百九十五万キロ、全部が動いて電氣にな
つておるのでありますが、この電氣にな
つておる
状態は、この設備が動いてどれだけの電氣をどのように配給されたかということは、この統計表の中に詳しく入
つておりますから御覽願いたいと思いますが、ただ附加えておきたいことは最近の電氣事情から申しまして、この設備が非常に現在劣悪な
状態にな
つておる。発電の能力が低下しておるということでございます。最近の特に一番大きな原因は山林の濫伐による蓄水力の減退でありますが、これは特に七月八月の夏季、ちようど今頃ですが、夏の水の足りない時期及び、九月十月の秋の豊水期と称せられる時分に一番顯著に現われております。將來非常に大きな問題として國土計画その他におきまして、お考えを頂かなければならない問題がここにあると考えます。
尚次の問題は設備が非常に老朽化しておりまして、同時に補修が不完全であるために事故が非常に頻発し、能力が低下しておるという現状であります。ちなみに申上げますが、昨年、二十二年の猪苗代の十万キロというのが停電しておつた事実も御
承知の
通りであります。
なおここでちよつと申上げて置きだいと思いまするのは、発電機の事故が統計で一番多くな
つておりますのは、発電所を作りましてからの
経過年数が十九年乃至二十年この近所が一番多くな
つておるわけであります。ところが現在ある水力の発電所におきましては、特に日発関係の水力発電、大体日発が殆ど七、八〇%の水力発電所を持
つております。この七、八〇%持
つておる水力発電所の個数にして五三%、出力にして三五%、これはすでに二十年以上の建設の
経過年数を経ておる発電所であります。火力におきましては個数にして五〇%、出力にして約四〇%が二十年を
経過しております。発電所の耐用年限と申しますか、減價償却の対象になる年数は綜合的に、一つ一つ違いますのではつきりと申上げられませんが、平均しまして大体二十年から二十五年であります。二十年から二十五年が大体平均の発電所の壽命と見なければならない際におきまして、個数にして五〇%程度、出力にして三、四〇%程度がすでに二十年間も
経過している発電所であることを篤と御
承知を願いたいと考えます。將来の電氣事業の問題として非常に大きな問題を投げかけておると考えます。
尚出力の低下している直接の原因につきましては、特に火力の場合におきましては火力用の石炭の絶対量の不足と炭質の低下がありますが、これにつきましてはいろいろ問題が出ております。例を挙げますと、昨年の一番ひどい
状態の場合に、火力の発電所の能力といいますか、設備の能力は百十万キロ以上あつたわけであります。それにも拘わらず、実際に出ましたのは五十万キロ乃至六十万キロであります。それは石炭の絶対量の不足及び炭質の低下が直接の原因にな
つておる。非常に設備の問題がやかましくな
つておりますけれども、いざという場合の、冬の一番渇水の場合におきましては、昨年の例から見ましても、約その設備の半分しか運轉ができなかつたという
状態を御
承知置きを願いたいと思います。カロリーの低下も同樣でありまして、カロリー低下から昨年の場合に約四十万キロくらいの出力の低下を來しておつたというふうに感じられるわけであります、今年も恐らく同樣の
状態が起ろうと思
つておりますから、その点もこの
調査報告書から
内容をキヤツチされまして十分な御注意をお願いしたいと考えます。
更に配電設備も同樣の原因によりまして非常に能力が低下しておりますが、これは特に送電損失、いわゆるロスの増加、非常にロスを多くし、同時に事故の停電であるとか、電圧の低下等の、いわゆるサービスを非常に惡くし、同時に感電と出火等の原因にな
つていることを御注意願いたいと思います。
二番目には電力の需給の問題でありますが、これもこの
報告書に詳しく書いてありますから、このポイントを一つ十分に御
承知願いたいと思います。それは現在の電力不足ということは、全エネルギー源の絶対量の不足が今のところ電力だけで以て殆んど補われておるという実情であ
つて、従
つて電力としましては、生産が非常に殖えているにも拘わらず、いわゆる電力不足ということにな
つていることを御
承知置きを願いたいと思います。これがいわゆる電力制限の原因になり、そうして生産力を減退せしめ、民生を不安ならしめている。非常に大きな電力不安の原因とな
つている次第でありまして、この電力制限の影響につきましても詳しく述べてありますから、御
承知置きを願いたいと思います。この綜合エネルギー対策の必要な点につきましては、第一回
國会におきますところの電力危機突破の決議の中心点的な
内容と
なつたものでありますが、ここに重ねてこの問題を提起しまして、
報告の一つの一番大きな要素として皆さんの御参考に供したいと考える次第であります。特に附加えて置きますが、電力不足というのは、常に
從來電力の生産面からだけが非常に大きく取上げられておるわけでありますが、この問題を現在考える場合には、電力の需要面からも十分に考えなければならんという問題を提起しているということを御
承知置きを願いたいと思います。
次に経営
状態でありますが、経営が非常に惡くな
つていることは外の事業と同樣でありますが、特に資金と料金の問題につきまして、経営
状態が惡くなるという問題ではなくて、これが直接に電力供給を惡くしている原因にな
つていることを御
承知置きを願いたいと思います。資金の調逹難が一つの非常に大きな問題であり、もう一つは電力料金の相対的な低廉が一つの大きい原因にな
つているわけでありますが、要するに金がうまく廻らないために、あらゆる常時の運轉資金が料金との関連でうまく廻らないために、電力の供給力に非常に大きな支障を來しつつあるということを
報告されておりますから、御覽置きを願いたいと思います。外資の問題にも触れてありますから、時節柄ちよつと御覽置きを願いたいと考えるのであります。
ちよつとここに述べて置きますが、電力建設の問題が非常にやかましくな
つておりますが、料金の問題と関連してちよつと附加えますのは、水力の建設、水力一キロワツトの建設費は
昭和六年の時は二百九十六円、ざつと三百円單位。この指数を百といたしますと、二十二年には三万六千円、指数にして一万二千百というふうな数字にな
つております。これは料金問題及び資金面から考えられまして、將來の建設の上に現在のインフレ
状態が與えつつある影響をお察し頂く点において重要かと思います。この
通り資料も載
つておりますから御
承知置きを願いたいと思います。
第八章以下は説明を省略したいと思いますが、最近労働問題がやかましくなりました場合に、粗雑になりました
施設について、第八章の從業員の項については、現在電氣労働者の現状を
報告いたしまして、電力供給の上に考慮さるべき諸点を明らかにしております。又農事電化、鉄道電化の問題及び自家用及び特殊発電所の問題につきましては、問題の所在点のスケツチをするに止めました。
更に十二章、十三章においては、我が國現在の電力、特に水力ですが、電力のあらゆる面からの建設能力をスケツチしてありますから、電力対策の樹立の参考に供して頂きたいと考えておる次第でありますが、特にその結論を
簡單に申上げますと、
一般國民の
経済的の問題を別といたしますれば、電力建設の一番大きいネツクにな
つておりますのは、恐らくセメントとなるであろう、そうして年間の現在の工事能力、工事能力と申しますのは、発電機の生産能力から、土木工事能力すべてを含めたそういう生産が全部かか
つております。そういう綜合工事能力全部を含めまして、大体年間に最大限が四十万キロワット、これが現在の
状態における最大の開発の能力の限界であると考えます。未開発が現在まだ千四百万と言われておりますが、その点も考慮して頂きまして十分のお考え置きを願いたいと思います。
以上極めて
簡單にこの問題の
調査報告をなしたわけでありますが、特にこの
調査報吉書の
内容を十分に一つ御
承知置きを願
つて、現在の電力問題に深い関心を持
つて頂きたいと特にお願いする次第であります。電力問題は目下再編成問題を繞
つて非常に大きな政治問題となりつつありますが、この再編成問題が恐らく解決の付かないうちに、又必ず昨年と同樣の電力危機が押寄せて來ること、これを私はここに断言することができるような氣がする次第であります。電力危機の到來と、更に今被さ
つている電力の再編成の問題、これらを引つ括めまして、電力の諸問題、産業の再建と民生安定の鍵である電力問題の解決を、衷心からこの議場に私お願いするわけでありますが、この電力問題の解決の延びております一番大きな原因と私考えますのは、問題の中心点、問題の所在点が、
國会議員の皆樣におそらく十分に理解されていない、或いは重要度が十分に理解されていない、この点が一番大きな原因のように思います。私の言い過ぎであつたらお許しを願いたいと思いますが、そういう氣がするわけであります。本
報告書は現在の電力問題の所在点を殆んど網羅しております。同時にその対策のこれはサジエスト程度でありますが、殆んど十分にサジエストしてあります。どうかこの
内容を、問題の所在点を御覽になり、その対策のサジエストを受取られまして、本問題の解決に
國会が非常に大きな足踏みを一歩踏み出して頂きたいというのが、私共の
調査をいたしました結果と、その結果に基く大きな希望であり、期待であるわけであります。
非常に
簡單で要を得なかつたかと思うのでありますが、
内容はこの
報告書を熟読玩味されることに讓りまして
報告を終りたいと思います。(
拍手)