○栗山良夫君 二十三年度の
予算の不健全性に対しましては、すでに
同僚議員諸君によ
つて鋭く指摘せられた
通りであります。
國民大衆はこの不健全性が示すところの、
物價の
改訂から中間安定へと貫かれておりますところの、我が
國経済安定の構想が、結局
インフレの高進による大衆生活の破滅を
意味しておるものとして、一大恐怖感に襲われておるのであります。若しこの
予算がこのまま決定されましようか、今まで馬鹿を見て参りました
正直者の生きる権利を主張する声と行動とは、
〔
議長退席、副
議長着席〕
必ずや
日本國内に溢れ一大社会不安を醸成するであろうと予断せざるを得ないのであります。私はかかる
予算の提出を心から悲しみますると共に、この憂慮すべき事態を回避するための
努力といたしまして、若干の
所信を加えて総理並びに
関係大臣に
質問いたしたいのであります。
先ず
予算と
物價、
賃金の関係であります。安本長官、
加藤労働大臣を中心として御
質問をいたしたいと思います。
政府は今回の
物價改定の
目的は月百億に上るところの
赤字を消すにあるといたしております。而して
赤字のすべての
責任を
賃金の引上げに転嫁しておる。併し
赤字の生れましたのは
賃金の引上げによるのではなく、
政府資金の放出による人為的な
インフレの当然の結果なんであります。
賃金は
物價の後追いをしておる、この根本的な問題を解明することなくして、
赤字の全部の原因をば
賃金に転嫁するがごときは、我々の断じて容認し得ないところであります。
政府は今も尚
赤字の原因は
賃金の上昇にありと家宅お信じにな
つておるかどうか、この点を先ず明らかにせられたいのであります。
次に
政府が
赤字を消すための手段として、
物價の引上げを行うことによりまして、直接勤労階級の
負担を避け得るとせられるならば、過ちも甚だしいのであります。最終的には当然に労働者へ再転嫁せられまして、実質
賃金の切り下げとなり、再び
賃金の引上げをなさざるを得なくなるのであります。かくて
賃金の引上げが、
物價を吊上げ、
赤字を生ずるという
政府の理論は大きな矛盾に逢着るするわけであります。結局
物價を上げて
赤字を消すということは、
賃金を切下げて
赤字を消すということではないでありましようか、明快な御見解の表明を願いたいのであります。
次に先日
中西議員の三千七百円ベースの不合理を指摘するところの
質問に答えて、
加藤労働大臣は三千七百円は
予算編成の基準に使用したのである。
只今も
油井君の
質問にそう答えられた。全官公労組とは別途に
交渉協定をいたしたいと述べられたのであります。そうして團体
交渉に應ずる用意のあることを示された。然るに北村
大蔵大臣、或いは昨日
芦田首相みずから
追加予算は必要としない。予備金等で十分に支弁できる、こういうことを今度の
國家予算の
追加予算必要論に対して答弁せられておるのであります。三千七百円と全官公労組が、
國鉄が計算いたしましたところの実体生計費を基準としたところの五千二百円の要求の金額とは甚だしい相違があるのであります。
只今加藤労働大臣は理論生計費と言われましたが、五千二百円は
國鉄が計算した実態生計費であります。到底予備金等で支出できるようなものではないのであります。
予算を増額しない限り
政府は團体
交渉には應じないということを、
意思表示せられたものと断ぜざるを得ないのであります。重大な両
大臣の答弁の食違いであろうと思うのであります。併し本日
加藤労働大臣の回答は、昨日の回答と若干相違しておるように、私は見受けるのであります。加藤、北村両
大臣のいずれが本当であるか、明快なる
言葉を承わりたい。要すれば
芦田首相の
言葉を承わりたいのであります。
更に
質問の第二点は、
予算收支の見積りの不健全性についてであります。支出を過少とし、
收入を過大に見積ることは、
予算を最も不健全ならしめるところのものであります。併しこの方針が激しい形で盛り込まれておりまするのが、今度の
予算であります。すでに
同僚議員から各部門に亙
つて指摘せられましたとおりでございます。私は見積りの不健全性という点から一貫して批判をしてみたいのであります。
第一は、今回の
物價の
改訂で、その引上げを七割に果して止め得るかどうかという問題であります。私共の推定では、九割乃至十割
程度でなければ安定しない。闇値は三・六%を遥かに追越す、殊に主食の実効價格の如きは、大幅に引上げることになると確信いたしております。かくして支出は不可避的に多額の膨張を
來するのではないか、
政府の
所信を伺いたいのであります。
第二は
賃金水準三千七百円が
予算編成の基準とな
つておりまするが、全官公労組は、本日実態生計費を基礎といたしましたところの合理的な科学的新給與を
政府に要求する筈であります。強権を以て團体
交渉を抑圧しない限り、当然に三千七百円ペースの崩壊は必至であると断ぜざるを得ないのであります。従
つて三千七百円ベースこそ過少見積りの正にチヤムピオンなりと言わざるを得ないのであります。
政府はこれをどのように処理するつもりであるかお伺いいたしたいのであります。
第三は價格調整費及び復金融資の問題であります。復金融資が政略に利用されてお
つたのではないか、價格調整金が重点産業の故を以て放漫に放出されておるのではないか、
國民の疑惑は極めて大きいのであります。具さに運営の実態を
商工大臣に伺いたい。これらは
國民の骨血を放出するものであり、又
インフレ激化の温床でもありまするが故に、更に一段とこれらの企業の経理監査を嚴しくして、且つ企業の徹底的社会化と民主的合理化を進めなければならんと思うのでありまするが、これに対する
政府の具体的対策を承わりたいのであります。
第四は、租税であります。二千六百億の租税は、ざつと見積りまして、昨年の二倍、而も
インフレ及び闇利得の捕捉が困難であるといたしまするならば、
正直者に向いまして、昨年以上の苛酷な税金が強いられることは必至であります。租税能力を超えたところのこの不当課税は刻底尋常一様の手段では徴収し得ないでありましよう。昨年上半期一八%の不成績を取返すために、
國民の囂々たる非難を押しまして強権的手段に訴えて完納せしめたではありませんか。
政府はこの収入不足をどうする予定か、昨年のごとくに或いはそれ以上に嚴しい手段を以ちまして徴税するつもりであるか、具体的な
方法を承わりたいのであります。
第五は
取引高税であります。これは需要者轉嫁の課税でありますが故に、若しこれを忠実に行いまするならば、需要者が極めて迷惑することは当然でありまするけれども、中小企業者自体もその全所得をガラス箱の中に入れて公開することになるのであります。恐らく中小企業はあらゆる手段を講じてその脱税に狂奔するでありましよう。
政府はこれが徹底的防止策をどのようにせんとしておるか、具体策を伺いたいのであります。又この
取引高税を徹底的に実行いたしまするとするならば、中小企業者は勤労階級と全く同じ
状態に置かれまして、所得は全部棚上げとなるのであります。従
つて勤労階級並みの税の
基礎控除をする途を開く用意を持
つておられるかどうか、これを伺いたいのであります。
第六は専賣益金、
鉄道通信の収入は過大見積りではないかということであります、目標収入を得る自信があるかどうかということであります。今度の
大幅値上げは
反対でありまするが、それとは別個の問題であります。昨年度においてすら煙草収入は百二十億円の未達でありました。今度の官業の大幅のこの
値上げは、実に常識を逸脱したところの計画であり、
國民の
負担限度を大きく切り離されておるのでありまして、
國民大衆のますます窮迫するところの生計費は、到底この
大幅値上げに追随して行くわけにはいかないのであります。
以上述べましたところによりまして、私は
收支の見積りに合理性を持たないところのこの
予算は、必ず失敗であると
考えるのであります。従
つてこの
予算を成功させるためには、結局強権を
裏附といたしまして、三千七百円及び新
物價を維持し、又税を確保するより外に途はないと思うのであります。三千七百円の非科学性を衝くところの全官公労組の合理的な要求から本
予算を守るためには、必然的に
國家権力の発動を覚悟しなければならんと思うのであります。
政府は理論に敗れても、極左運動として、‥‥先程
運輸大臣も
油井君の説も同様である。この膨湃たる
反対運動を極左運動として、抱くまでもこのような強行措置を以て臨む
考えかどうか。私はこの問題を繞
つて憂うべき社会不安、労働不安の
発生を予感するが故に、その場合の
責任を今から明らか
にして置く必要を痛感する。従
つて敢て
首相の不動の
決意を伺いたいのであります。
質問の第三は、中間安定論の性格であります。中間安定は
國民大衆の生活を実質的に安定させるところに根本がなければなりません。私の持つ資料によりますと、個人支拂所得のうち勤労所得の閉める比率は、
昭和五年に五四%、
昭和二十一年二九%と大幅に低下いたしております。
只今は
インフレの高進で更に低下しておるでありましよう。米国では前者六四%、後者七二%と却
つて上昇いたしております。ここに大衆が生活苦を叫び、生活の安定を要求する根本
理由があるのであります。
國民生活の安定は結局所得の公平化からはじめられなければならないのであります。
政府はこの問題をどのように
考え、どのように具体化せんとする用意を持
つておられますか。又
政府はこの
國民大衆の生活安定、所得の公平化の要求に対しまして、労働運動の抑圧による実質
賃金の切下げ、不適正價格による農産物の強制的な供出、金融の引締め、又無差別的、強権的徴税を以てする中小
商工業者への圧迫を強行せんとしておる。
政府の主張する中間安定とは、結局
國民大衆を犠牲とする金融資本及び大産業優先の安定策と断ぜざるを得ないのであります。
政府が
経済再建の美名の下に行わんとする
物價の引上と税の取立てこそ、正に
國民大衆を
インフレの坩堝に押込め、その生活を破壊に導くものであると言わざるを得ないのであります。それ故にこそ
政府は
國民大衆の
反対を恐れ、これを押えるために強権を用意しなければならないのではないか。このような苛酷政治の下におきまして
國民総力の結集が可能と
考えられますか。
日本経済の
再建できるとお
考えになりますか。
首相の
所信を伺いたいのであります。私の申上げたことは決して労働階級だけのものではない。農民も中小
商工業者も全部含めての問題であります。
質問の第四は國土復興に関する問題であります。全國の河川は三万、うち昨年の台風で痛手を受けておりまするものは、直轄河川四十、その他三千に及んでおるのであります。然るにその復旧費は昨年度は五十億に圧縮、本年度は僅かに百億足らずが計上されておるのに過ぎません。長期天氣予報は本年も台風來の公算高きを傳えております。
國民は罹災、非罹災の区別を問わず、満身創痍の河川を抱きまして非常な不安に駆られておるのであります。備えなきところ必ず水魔は猛り狂うのであります。災害前の一銭惜みは災害後の百銭の失費を以てしても尚償い得ないのであります。台風期を控えまして、
政府の反省を要求すると共に、
政府の対策を伺いたいのであります。治山治水は民生安定の大本であり、
日本再建の基本であります。然るにこの重大なる治山治水の行政は、水力発電は商工省に、山林砂防、灌漑、開拓は農林省に、河川改修は建設院にと分散し、建設力の集結或いは計画の一元性を阻害いたしております。住宅、水道、港湾の行政亦然り。第一國会において片山
首相は、この旧弊を打破するために総合建設省の設置を公約されました。然るに片山
内閣の継続たる
芦田内閣は、この建設省の設置計画に当り、建設院に加える僅かに
運輸建設本部の吸收を以て局面を糊塗せんとしておるのであります。かくのごときは院議の無視であり、公約に対する裏切りであり、國土
再建に対するサボタージュであると断言せざるを得ないのであります。
芦田首相の明快なる答弁を要求いたします。
最後に私は社会党出身
閣僚であるところの西尾
國務大臣の
所信を伺いたいのであります。二十三年度
予算は、すでに徴底的な批判がなされたことく、
勤労大衆の生活を
インフレと租税の重圧によ
つて破滅させんとする誠に恐るべきものであります。我々が
日本社会党に好意を寄せて参りましたのは、糟糠の妻として、世話女房として、反動政治の切盛りを期待したからであります。我々はそのような社会党の公約を信頼したからであります。かくのごとき大衆虐待
予算に
断乎反対願えると期待したからであります。社会党内にもこの
考えの
議員が少なくないことを銘記させられまして、この
予算に賛成されたところの
理由を明らかにせられたいのであります。社会党は今は発展か自滅かの重大岐路に立
つておる。このときに当り、
勤労大衆の党として、従来の態度を今直ちに一擲し、直ちにその
政策の実行に取掛かる用意ありや。或いは又民主党にその節を賣り、
國民大衆にも完全に賣り、自滅する覚悟であるかどうか、敢て明快なる答弁を西尾
國務大臣に要求するのであります。以上を以て私の
質問を終ります。(
拍手)
〔
國務大臣芦田均君
登壇、
拍手〕