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1948-06-04 第2回国会 参議院 本会議 第43号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十三年六月四日(金曜日)    午前十時三十八分開議     ━━━━━━━━━━━━━  議事日程 第四十一号   昭和二十三年六月四日    午前十時開議  第一 輸送力増強に関する決議案板谷順助君外三名発議)(委員会審査省略要求事件)  第二 電波物理研究所電氣試驗所に統合する法律案内閣提出)(委員長報告)  第三 高等試驗委員及び普通試驗委員臨時措置法案内閣提出衆議院送付)(委員長報告)     ━━━━━━━━━━━━━
  2. 松平恒雄

    議長松平恒雄君) 諸般の報告は御異議がなければ朗読を省略いたします。      ——————————
  3. 松平恒雄

    議長松平恒雄君) これより本日の会議を開きます。この際お諮りいたすことがございます。五月三十一日門屋盛一君より國土計画委員を、池田七郎兵衞君より鉱工業委員を、植竹晴彦君より運輸及び交通委員を、おのおの理由を附して辞任の申出がございました。許可することに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 松平恒雄

    議長松平恒雄君) 御異議ないと認めます。つきましてはその補欠として仲子隆君を國土計画委員運輸及び交通委員に、奧主一郎君を鉱工業委員に氏名いたします。      ——————————
  5. 松平恒雄

    議長松平恒雄君) 日程第一、輸送力増強に関する決議案板谷順助君外三名発議)(委員会審査省略要求事件)本件は発議者板谷順助君外三名の要求通り委員会審査を省略し、直ちに本案審議に入ることに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  6. 松平恒雄

    議長松平恒雄君) 御異議ないとみとめます。よつてこれにより発議者に対し趣旨説明の発言を許します。板谷順助君。    〔板谷順助登壇拍手
  7. 板谷順助

    板谷順助君 私は諸君の御賛成を得まして、輸送力増強に関する決議案を提出いたしたいと存じます。  申上げるまでもなく、如何に政府日本復興を叫びましても、生産増強が非常な隘路になつておることは御承知通りであります。この問題を打開せざる限りは日本再建は不可能と存じまするので、運輸交通委員会におきましては、数次に亘り調査研究をいたしましたる結果、これに対するところの成案を得ましたので、ここに諸君に御披露いたしたいと存じます。先ず第一に決議案案文を朗読いたします。    輸送力増強に関する決議   我が國現下輸送状況を見るに、鉄道船舶自動車等交通機関は著しく弱体にして、施設荒廃し、能率は減退し、加うるに綜合的運営に欠け、我が國経済復興最大隘路と化し、國民はこの現状に対し甚だ不満を感じている。政府はこの事実を深く省察し、急速に運輸制度整備をはかり、物資割当資金融通に特段の考慮をはらう等により、極力輸送力緊急増強確保し、以て本年度食糧石炭その他重要物資生産配分に支障なきを期さねばならない。交通從業員も亦その職責の重大なるを深く認識し、作業能率増進努力することが必要である。   更に又交通機能確保は、將來平和日本建設基盤となるべきものであるから、経済復興の諸計画に即應し、交通機関綜合再建計画を速かに確立し、生産増強國民生活確保國民文化水準向上に遺憾なきを期すべきである。   政府において、速かに右に関する方針及び施策の大綱を今会期中に本院に報告せられんことを要求する。   右決議する。 これが案文であります。  これよりこの上程案に対する内容説明をいたします。  運輸交通整備生産増強國民生活改善のために絶対必要條件であることは申すまでもありません。我が國は終戰後すでに三年を経過いたしまして、アメリカの援助及び國民努力によりまして、食糧石炭紡織等次第に回復に向つて参りましたが、交通機関のみは復興が遅れておりまして、経済再建最大隘路となつていることは諸君もご承知通りで、誠に遺憾に堪えない次第であります。  今運輸交通現状を見まするに、先ず國有鉄道にありましては、昭和十一年には機関車が四千輛、貨車が七万輛ありましたが、二十二年におきましては機関車は五割増加いたして六千輛となり、貨車は四割増加いたして十万輛となつております。又從業員の数は、十一年には二十二万七千人でありましたのが、二十二年十二月には六十一万二千人となり、二倍半以上に達しております。このように車輛從業員も大幅に増加しているにも拘わらず、輸送量は、十一年が九千七百万トンであつたのに対し、二十二年は一億一千二百万トンで、僅かに一割五分を増加したに過ぎません。然らば、どうしてこのように國鉄輸送力が延びないかと申しまするに、第一には能率が非常に低下をいたしました。一例を挙げまするならば、貨車運用効率は、十一年が三七%でありましたが、二十二年には二〇%に落ちております。第二に、車輛の数は増していても、保修が不完全であつたため、修繕車が著しく増加し、それだけ眠つておる。十一年に比較いたしますと、修繕車の数は、機関車が三倍、貨車が四倍になつております。第三には、石炭品質が著しく低下をいたしておりまして、十分に列車を走らせることができないことが主なる原因であります。只今のところ、駅におけるところ滯貨は三百万トンを超えておりまして、背後地滯貨を計算して見ますると、実に千五百トン以上を推算されておるのであります。本年度貨物輸送要請は一億九千万トンでありますが、輸送計画は一億三千万トンにしか過ぎません。恐らくはこの一億三千万トンも、現状のままでは果して完遂ができるかどうか疑われておるのであります。滯貨はますます増加する一方であります。経済危機突破の重要な時期にありまして、このような國鉄現状は誠に寒心に堪えざる次第であります。又、一面旅客輸送につきましては、私が申上げませんでも諸君はすでにご承知通り、十一年には十億六千万の人員輸送し、二十二年には三倍の三十四億二千万の人員輸送しております。ところが、列車のキロは、二十二年は却つて半分に減じておるのでありまするから、その混雑の度合は約六倍となり、全國に亘り交通地獄を現出いたしました。特に懸念いたしますることは、都市近郊の通勤の状況でありまして、殺人的混雜のため、通勤者勤労意欲を減殺され、これが生産に及ぼす悪影響は恐るべきがあると存ずるのであります。  このように、貨物輸送におきましても、旅客輸送におきましても混乱いたしまするその間隙に乘じ、從業員の側においても、或いは利用者の側におきましても、不正事故の絶え間がなく、荷物の拔取や、すり、どろぼうは日常の茶飯事でありまして、或いは貨車ぐるみ盗んだり、社内の集團強盗殺人事件まで頻々と起り、國民は全く安心して國鉄を利用することができない有樣であります。又地方鉄道におきましてもほぼ同樣の状況であります。  次に海運現状を見ますと、戰前には大体六百万総トンの船腹を保有したのでありまするが、現在は僅かに百二三十万程度でありまして、而もその大部分は戰時標準型の能率の悪い粗製濫造船でありまして、輸送能率戰前の三分の一程度に落ちております。その原因は、第一に船の出來が悪い、保修機能が不十分のため、故障による休眠船舶が多いことであります。次に海陸綜合輸送計画が悪いため、港頭にストツクが多く、且つ港頭設備荒廃をいたしておりまして、荷役に手間取り、從來一万トン積みが二三日で満船できましたのが、現在では二週間以上要して非常に稼行率を落しておるのであります。鉄道自動車が沿線に三百万トンの滯貨を抱いて輸送力不足に汲々としておりまするにも拘わりませず、海運が僅かな船舶で、而もその輸送力を余ましておるということは、如何に鉄道自動車船舶の連繋が悪いかという証拠でありまして、一國の輸送を預かる責任者はこの点大いに反省しなければならんと思うのであります。(拍手海運國内物資輸送についてもさることながら、海外貿易関係において最も重大な使命を有しておるのであります。我が國がこの狭い國土厖大な人口を抱え、食糧工業資源に苦しみつつ國民生活を維持して行くには、どうしても海外貿易に依存せねばならんことは言うまでもありません。又我が國は輸入超過國でありまして、昭和五年乃至九年頃は、海運貿易外収入といたしまして、常にその当時金として一億円以上の収入を挙げておつたのであります。かように海運は我が國の経済的、地理的特異性から見て、経済再建、民生の安定上その復興が絶対必要条件であるにも拘わらず、遅々として回復しておらないことは誠に寒心に堪えないものがあるのであります。今にして海運復興を強力に実行しなければ、國民生活の窮乏に拍車を掛け、経済再建に重大なる悪影響を與えることを衷心より案ずるものであります。  次に自動車でありまするが、自動車運輸事業の最も活発であつたところ昭和十五年におきましては、トラツクが六万輛、輸送実績が二億四千万トンでありましたが、二十二年度におきましては九万輛に増加したにも拘わらず、輸送却つて二億トンに減少しております。又バスは、十五年には二万三千輛を有して十八億七千万人を輸送しておつたのでありますが、二十二年度の統計はまだ分りませんが、二十一年度は一万二千輛に激減し、僅かに八億一千万人を輸送したに過ぎません。自動車トラツクバスを通じて老朽車が多く、修理機能が悪い上に、タイヤ、チユーブの不足燃料行詰まり等から休眠車が多く、その稼働率トラツクは七割、バス至つては僅かに五割にしか過ぎません。タイヤ燃料入手状況を申上げますると、タイヤ所要量の二四%、ガソリンは四五%、代燃用の木炭は三三%、薪は四四%という有樣であります。これでは自動車が動かないのは当然であります。二十三年度における自動車輸送料の要請は、貨物が二億六千万トン、旅客が十九億人という厖大な数でありまして、現状のままでは到底これが完遂を期することはできません。自動車國民生活に最も深い関連を有し、一國文化水準の尺度であるのみならず、自動車工業は我が國に残されたる唯一ともいうべき綜合工業でありまして、これが発達するか否かは、我が國が近代工業に追随し得られるか否かという重要なる鍵ともなるべきものでありまするから、何とかして自動車事業向上を図らねばならんと思うのであります。  以上各種交通機関現状を申上げましたが、全般を通じて先ず第一に能率が極めて低下しているということが看取できるのであります。能率を挙げるにはいろいろの方策があると思いますが、最も重要なことは労需物資充足の問題、食糧加配の問題であります。安本長官もおいでになつておりますからよくお聽き下さい。(拍手交通從業員危險作業が多く、筋肉労働も苛烈でありますから、労需物資食糧が欠けていては、到底能率を挙げて作業することは不可能であります。(拍手政府運輸石炭電力と同等の最重点産業に指定したのは、運輸重要性を強く認識した故であろうと思うのでありますが、いざ物資割当配分となりますと、石炭電力に比較して遙かに悪い。亜炭業製鉄業よりも悪いのであります。國鉄船舶は、石炭に比較いたしまして、一人当り作業衣は二分の一、軍手は三分の一、地下足袋は五分の一、石鹸は十分の一にも満たない程度であります。食糧加配につきましても、石炭より三、四割方悪くなつているとのことであります。自動車部門は乙種又は丙種でありますから、尚更割当が悪い。労需物資食糧が余りにも不足していては、勤労意欲低下能率の落ちるのも当然であります。輸送産業基盤であるとすれば、交通部門に対する労需物資食糧配分について眞劍に考慮しなければならんと思うのであります。又他方交通從業員もその職責の重大なることを自覚し非合法的争議を避け、作業を高め、國民の信頼に應えねばならんことは申すまでもありません。  次に輸送力増強に必要なことは修理機能の強化であります。鉄道車輛自動車船舶も、その新造には多大の資金、資材と時日を要するのでありまするかから、先ず以て現在の休眠している車輛船舶を急速に修理し、稼働させなければなりません。それには修理資材充足と必要な資金融通を與える必要があります。特に自動車工業造船工業とはその育成に努めることが肝腎であります。  第三には燃料の問題の解決であります。燃料交通機関の生命でありまするから、品質低下や数量の不足は直ちに輸送能力に影響するのであります。併しながら我が國の燃料資源至つて貧弱でありまするから、交通機関の側におきましても燃料節約方法代用燃料の使用や切換等眞劍研究せねばなりません。  第四には施設整備であります。交通機関は全て戰時中の酷使と戰禍のため荒廃の極に達しておりますから、將來我が國産業経済基盤となるべき交通機能根本的再建計画を速かに定め、車輛船舶建造鉄道線路自動車道路等の改修が産業回復貿易の振興に遅れないように努めることが必要であります。根本的再建計画を定めるには鉄道自動車は原産地より港湾への輸送に重点を置き、海運はこれを消費地港湾輸送する、又海外よりの輸入原料品海運によつて各地港湾に分散輸送し、鉄道自動車でこれを消費地輸送する、いわゆる綜合輸送体制を採ることが肝要であると思うのであります。これには港湾施設を強化すること、特に倉庫の設備の充実が必要であります。  最後に交通機関の再整備関連をいたして申上げたいことは、交通の全分野に亘り監督、運営等の諸制度の嚴密な再検討を行い、その簡素合理化を果敢に実行することであります。(拍手)二三の例を挙げますれば、國有鉄道運営能率的に切替えること、鉄道公安官制度を拡大強化して國民交通保安を維持すること、道路運送事業の全分野に亘り秩序ある自由競爭の余地を拡げること、道路運送行政道路行政との一元化を図ること等が、制度の改正として急務中の事項と考えるのであります。  特に海運におきましては、第一に経営者運営意欲を刺戟し、從業員勤労意欲向上せしむるために、船舶運航体制根本的改編を加えることが必要であります。第二に船舶建造技術世界的水準向上せしめるために、造船技術研究機関整備充実を図り、且つ造船技術最高権威としての審議機関を設置する。第三に、船員の素質を向上するために教育養成施設内容を充実し、併せて船舶運航技術研究機関を設置すること等が、海運再建の基本となるべき方策であります。  以上はお手許に配布をいたしました理由書中に挙げたところでありまするが、輸送力増強の諸方策中、特に必要と思われる諸項目の説明をいたしたのでありますが、政府はあらゆる角度より研究をし、運輸交通改善向上に有効適切なる方策を取上げ、強力にこれを推進し、以て國民の切実なる要望に應えることを強く要望するものであります。  以上をもちまして大体本案に対するところ説明を終りましたが、この際特に附言をいたしますことは、交通從業員諸君の心構えであります。日本復興のためには交通再建されなければならない。その交通再建には從事員諸君努力に俟つことが多大であるのであります。從事員諸君はその重責を深く反省をして、作業能率増進、サービスの向上に最善の努力を傾け、交通機関がすべての國民に愛され、親しまれるものになるように努力せられんことを切に望んで止まないのであります。(拍手)  以上が本案に対する説明であります。どうか満場一致諸君の御賛成あらんことを切に希望いたします。(拍手)  尚、この決議案が本院を通過いたしましたならば、総理大臣運輸大臣安本長官の所信と決意をお伺いいたしたいと存じます。(拍手
  8. 松平恒雄

    議長松平恒雄君) 討論の通告がございます。小泉秀吉君。    〔小泉秀吉登壇拍手
  9. 小泉秀吉

    小泉秀吉君 私は日本社会党を代表いたしまして本決議案に全面的の賛意を表する者であります。(拍手交通運輸日本経済復興の鍵であり、現状のままで推移すれば、復興隘路となる虞れあることは識者の憂うるところでありますが、私は主として海運の観点からこの問題を考察してみたいと思います。  昨年來日本の実情を詳細に調査いたしましたストライク團並びドレーパー團調査報告によりますれば、日本経済復興海運復興を前提とすることが明らかにされております。然るに我が國の一般の人々は海事に関する関心が甚だしく薄いのは、返す返すも遺憾なことであります。國民関心の薄いのが反映いたしまして、海運に対する政府施策は誠に貧弱であり、その結果終戰後三年を通過せんとする今日におきましても、海運再建の歩みは遅々たるもので、この有樣では戰前世界第三位の海運國たることを誇つた面影は更になく、貿易が再開された曉において、國際場裡に乘り出しましても劣敗者となることは火を見るよりも明らかであります。併し海運再建は一日の急を要するのでありまして、戰前日本海運國として列強に伍し得た原因は多々ありましようが、私の見るところでは、その最も重要なるものとして、海運業者の旺盛なる企業心と、優秀なる造船技術と、勤勉且つ技術優秀なる船員を保つていたことにあると存ずるのであります。諸外國が、戰時中に精神的にも技術的にも向上の実を挙げて参つたのに、我が國においては却つて著しく低下をしておりまして、只今挙げました日本海運の強みは、今や誠に情ない状態になつておるのであります。この精神的、技術的低下世界水準にまで引上げるのには、何といたしましても、先ず第一に現在の運航体制の革新であります。戰時施設の残骸である船舶運営会そのままの制度の下におきましては、運航意欲増強も、從業員勤労意欲をも向上させることは期待できません。一例を挙げますれば、この三四月の頃に小樽、室蘭及び三池港における、石炭積取船一百余艘の港内における滯泊日数は、一艘平均十日乃至十七日を要したとのことでございます。これでは船員が航海中の労苦をも厭わず、艘の運航能率を高めようと努力精進いたしましても、僅々三四千トンの積荷のために、一ケ月の三分の一乃至半ケ月も碇着させるようなことでは、折角の労働意欲も消沈してしもうのではないでしようか。このように非能率的な船舶運航の例は尚幾らでもあるのであります。然るにかの厖大なる機構に対しまして、國庫は毎月三億七千万円の莫大な支出を負担しておりまするが、大体一百万トン足らずの稼働船腹で、月額九十万トンの物資と、十五万トンの油と、五万八千人の帰還者輸送するに過ぎない現状であります。これが船舶運営会の姿であります。私共は戰後海運復興のために政府が速かに、かかる機構根本的改革を行うべきことを期待したのでありまするが、昨年に至りまして漸くその改組を論議されたのでありまするが、更に國民の納得するような根本的改革を断行することもなく、單なる政令によりまして、戰時海運管理令を延長実施しておる現状は、誠に不可解に存ずる次第であります。政府は速かに運航体系根本的に改革すべきであると存じます。  第二には、戰時中低下した造船技術向上であります。現在のような貧弱な技術研究内容では、世界水準はもとより、戰前の我が國の技術水準回復することすら覚束ない次第でありまするから、技術研究機関のごとき、その成果を挙げるまでに相当の期間を要する事業に対しまして、今日直ちに何らかの方策を講ずべきであろうと存じます。  第三には、船員素質向上であります。戰時中に急速に養成せられました船員の再教育は、昨年から開始されておりまするが、現在のような不徹底なものでは到底お話にならないのであります。政府はこの際、再教育のために思い切つた措置を講ずべきであります。尚新船員技術教育については、形式的には整つた外観を呈しておりますが、その施設内容は誠に貧弱なもので、殊に運航技術研究のごときは、我が國においては何らの施設がなく、今後海運人として、我が船員海外に進出するようになりましたならば、そのために大きな障害を生ずるのではないかと恐れる者であります。政府は目前の輸送増強を図ることは勿論でありまするが、少しく遠き將來を見まして、海運政策根本に触れる問題を十二分に検討檢討して頂きたいのであります。私は、この意味におきまして、本決議案が、政府に対して要望するところは極めて妥当であり、又機宜を得たものと信じまして、全面的に賛意を表する者であります。
  10. 松平恒雄

    議長松平恒雄君) 中野重治君。    〔中野重治登壇拍手
  11. 中野重治

    中野重治君 日本共産党は、この決議案の主旨に賛成するものであります。そこで問題を具体的に我々は解決しなければならんと思いまするが、輸送力増強ということについても、そのための現実的な方法手続を我々が見出さなければ、百の説法も屁一つということになるほどであります。そこでどこにこのための現実的な方法手続が見出されるか、これは人間の中に見出される。板谷委員長がその説明の結びで、特に力を入れて輸送仕事に直接当つておるところ日本労働者階級に強く呼び掛けられたことは、私共が喜びとするところであります。若し運輸交通に直接携わつておる人々が、自分達の肩に掛かつておる責任を自覚してこれを妥当に解決する方向へ進んでおるのでなければ、この問題の具体的な解決は非常に困難になること、我々が言うまでもないと思います。(「その通り」と呼ぶ者あり)それでは現在日本運輸交通関係労働者は、この問題でどういう態度を示しておるか。我々は日本交通運輸関係労働者は、その責任を自覚して、これを労働者の合法的な力、運動によつて正しく解決しようとするところへ、明かに踏み出しておるということを見ることができて非常に心強く思う者であります。その一つを我々は今度の國鉄労働組合奈良における大会動きに明らかに見ることがでてきると思います。日本政府独立採算制というふうな言葉において、日本運輸交通の中心的な場面であるところ鉄道において、仕事を官僚を通して資本家的に経営して來ておる。そのために樣々の悪い問題が出て來ております。それだから労働者に対する対策においても、必然的にそれが政府側からする組合運動に対する分裂政策切り崩し政策、低賃金の上からの押し付け、こういうこととなつて現れておる。そこで政府側からの低賃金の押し付け、組合運動に対する分裂政策、これに労働組合が敗けておる限りは、自分達の低賃金から來る生活問題の処理を、輸送力増強方向においては処理することができない。單純に言えば、食えないからして仕事を休んで闇買いに出掛けなければならない。汽車を動かすべき人々が、汽車を動かすという仕事自分の全力を注ぐことができない。そこでその人々が自己の生活の維持、この問題の解決をそのまま輸送力増強方向において解決しようとするとき初めて輸送力増強の問題が現実的に解決される。この方向へ行くわけであります。今度の奈良大会日本輸送問題の根本場面において、政府側からの低賃金政策組合運動に対する分裂政策が成功しなかつた。國鉄労働組合政府側からのいろいろのこういう策動を排除して一本となつて、四月五月における手取り五千百円、この問題を政府と闘つて獲得しようという方向へ明らかに踏み出している。そしてこの点で政府側が今まで相当の手段を講じて、全官公労組國鉄労組とが同調し一体となつて闘うことの間へ楔を打込んで、これを分裂さして來たのであつた。けれども、この政府側策動が、今度の國鉄大会では労働者階級の力によつて下から遮蔽された。この点において國鉄動き政府の意のままに引摺ろうとした政府の意図は、完全に打破られた。ここを通して日本労働者階級は、交通運輸の面において特に明らかに自分達の苦しい生活の合法的な打開を、輸送力そのものと結び合せて、その中へ、その方向において解決しようとして來ている。これを我々は非常に力強く思い、この動きを全面的に支持して、この方向政府が闘うごとく政府を督励監視する。これをどうしても我我はやらなければならんと考えます。この意味において、かくのごとき問題を具体的に取扱うことによつて、この決議案の趣旨を実現したい。これが日本共産党のこの決議案の趣旨に賛成する理由であります。(拍手
  12. 松平恒雄

    議長松平恒雄君) 高橋啓君。    〔高橋啓君登壇拍手
  13. 高橋啓

    ○高橋啓君 私は民主党を代表いたしまして、本案に賛成いたすものであります。この本案國民の要望をそのまま現わしたものでありまして、先程提案者が説明されました通り、あらゆる部門の振興は輸送力増強に懸かつておるのであります。現在の輸送力の貧困は、いろいろ隘路があるでありましようが、これに対して全く打開の途がないというのではありません。私はこの打開の方途につきまして二三点を指摘いたしまして、御参考に供したいと思うのであります。  第一に、現在お滯貨の一掃の問題でありますがこれが生産資材である場合には、國民生活安定に不断の圧迫となつておるのでございます。これを何とかしなければ民心の安定は得られないのでありまして、私はこれを一日も早くこの一掃をしなければならないと思うのであります。併しながら外の影響を考えずに、この滯貨一掃のみに力を注ぐ時には、いろいろ計画の蹉跌を來すのでありまして、どこまでも創意工夫によつて新らしい外の力をここに産み出すということが必要であろうと思うのであります。大体滯貨根本理由といたしまして、私は輸送計画と、それから輸送を必要とする生産計画とのマツチが、うまく行つておらない、こう考えております。私はここに木材の例を以て申上げますが、今年度の配給計画は七千万石であります。併しながら輸送計画におきましては、汽車において千五百八十万トン、船において八百万トン、これでは二割五分の輸送力不足であります。初めからこれはそれだけの石数、即ち千五百万石からの石数が滯貨することに決つておるのであります。このようなことは何とかして調和を取つて初めから計画を立てることが必要であると思います。もう一つは、今日貨車が非常に少い、その場合に軽積みをやつているということであります。昔は満積みとか過積みといつて罰金を取つたのでありますが、今日は満トンを積んでおる貨車が少い。若しこれに対して満トンを積むならば、私は二割の輸送力増強することができると考えておるのであります。どうしてもこれにはいろいろ今日の制度も変えなければならん。今までに丸通が一駅一店主義において独占的な扱いをした傾向がある。そこでどうしてもそのサービスが余りよくない。これをです、何とかこの制度を変えまして、最もよい方法に考えて行かなければならん。併しながらこれを昔のように全く復原いたしまして、曾つてのごとく自由に営業者をして営業を行わしめるというには、大きな公益的な関係並びに失業問題について考えなければならないのであるが、これは少くとも早急にこの制度を改めなければ、この満トンを積むとか或いはサービス面において、欠くるところが生ずると考えるのであります。  次には手続の簡素化であります。今指定生産資材の取扱いにつきましていろいろな切符がありますが、木材の場合で申しますと、甚だしいのは十一回も切符を切り直さなければならない。折角一車で積んで來た荷物を卸して、それをトラツクに積み移すとか、三台か四台に移す、その場合に一々切符を分割して取らなければならない。何百何千という駅に一々出張官がおつて、その取扱官吏がおつて、円滑にやつて呉れればいいけれども、そんなことは不可能であります。そのような不必要な手続を排して、これを簡素化する、直ちに輸送が行なわれるような方法を設けなければならない。このような方法で新らしい力を産み出して、この滯貨を一掃する必要があると思うのであります。  もう一つは、輸送力の新らしい途を見つけるということであります。日本には到る処川が流れておりますが、川のいわゆる流路の活用によつて輸送できる面が沢山あります。これは少しの手を加えて、例えば適当なところにダムを設けるとか、そのようなことをいたせば、余り資材を要せずしてこの方面の活用ができるのであります。このダムの建設も今後電源としてこれを活用するとか、或いは用水の調和を図るとか、いろいろその他の部門との綜合計画において、余り資材や予算を要せずしてできることが沢山あるのでありまして、この点に対しても政府は考慮を必要とすると思うのであります。  最後に、先程提案者から特に力を入れて言われたのでありますが、この現場の意欲の高揚の問題であります。これについてちよつと私は申上げたいと思うのでありますが、少くともこの問題を解決するためには、一部々々の問題が解決しても駄目であるから、一連の関係においてお互に連帶責任である。そのような考え方からあらゆる問題に対して意欲を持ち、熱意をもつてやるんでなければです。やる当局がそこに熱意がなければ、どんなに制度や方法がよくてもこれは絶対にうまく行きません。  そこで現場の人達、或いはその関係する人達がお互いの責任であるという考え方で本当に日本建設のために熱意を持つのでなければ、僕はこれはできないと考えるのであります。この一言を副えまして私の賛成の意見といたします。(拍手
  14. 松平恒雄

    議長松平恒雄君) 村上義一君。    〔村上義一君登壇拍手
  15. 村上義一

    ○村上義一君 只今上程されておりまする決議案に対しまして私も双手を挙げて賛成するものであります。  その第一の理由は、本決議案経済復興五ケ年計画の第一年たる本年におきまして、生産増強に即應して輸送力を緊急に増強することが必要である。又それには輸送能率向上することが最も必要であると本案に指摘されておる点であります。現在我が國では御承知通りインフレの危機に陷つておる。その根本原因生産不足にあることは多言を要しないところでありまするが、然るにも拘わらず國内の貨物の停頓、即ち滯貨は一千八百万トンにも及んでおるのであります。仮に一千トン二万円としますれば、実に三千六百億円の貴重なる生産貨財が輸送力不足のために徒らに休眠しておるのであります。今生産増強を叫ぶとしますれば、どうしてこれ等の滯貨を先ず以て活用する方策を実行しないのか、了解に苦しむ次第であります。私は本決議案関連しまして、國鉄が沿線滯貨一掃運動を強力に展開されるよう提唱するものであります。それに即應して、絶対に必要な労需物資食糧や修繕資材等を必ず供給して、運動完遂を実現せしめるように、綜合企画官廳で推進せらることを強く要望するものであります。(拍手)  賛成の第二の理由は、本決議案が平和日本再建のため、交通機関根本整備を図る必要のあることを指摘しておる点であります。我が國は経済復興し、國民生活を維持するためには、生産増強貿易の振興に対しまして國民挙げての努力を拂わなければならないことは申上げるまでもありませんが、さりながら長年酷使に酷使を続け、又戰爭の災禍を受けた鉄道船舶自動車等が、よしや能率を挙げ得たとしましても、根本的な施設の復旧増強を図らなければ國力回復に追いついて行けない、否むしろ交通施設の弱体、輸送力の貧困が平和日本再建の最大障害傷害なることが極めて明瞭であると確信するのであります。ここで私は特に陸上交通施設改善一つといたしまして、道路改良を強く要望いたしたいのであります。日本に道路なしということは、多くの外國人からよく聞かされる言葉でありまして、自動車が通る道路で舗装されているものの率を府縣別に観察して見ますと、東京都ではさすがに六〇%ありますが、神奈川、大阪等におきましては二〇%の程度でありまして、五%以下の府縣が実に三十四を数える次第であります。道路改良計画は今まで再三立てられたのでありますが、常にその一貫性を欠きまして、又責任当局者はこれに対して熱意がなかつたために、いつも計画は途中で立消えになつてしまつたのであります。我が國の最重要道路でありまする東海道に今日尚江戸幕府時代のままの部分があるということは皆さんも御承知通りでありまして、鉄道に比較して二倍以上の貨物輸送を課せられておりまする自動車輸送力発達を期するためには、私は是非共特別会計の下に、しつかりした道路改修計画を立てて、國の大きな方針としてその実現を期することが必要である、特にこの点を要望いたしたいのであります。(拍手)  賛成の第三の理由は、本決議案が陸海綜合輸送の確立を要求しておるという点であります。我が國の物理的関係から見まして、鉄道自動車港湾を中心として貨物を集散し、海運港湾港湾とをつなぐ輸送をするということが、最も能率的な方法であるのであります。然るにこれがうまく行つておらない。陸は陸、海は海で勝手な輸送をしておると申しても決して過言ではないと思うのでありまして、少しもそこに綜合性がない。そのために陸運では滯貨の山を抱えている。海運では、なけなしの輸送力を空費しているのが現状であるのであります。陸海輸送の連繋さえ十分につくならば、私は現状おいても、もつともつと輸送力向上することを、固く信ずるものであります。從いまして陸海綜合輸送を確実に企画する機関、又現地にあつて、この綜合輸送を強力に推進する機関を、設けることを特に政府に要望する次第であります。  最後に申上げたい点は、交通機関根本再建には、どうしても資金資材について米國の好意ある援助を受けなければできないという点であります。例えば國鉄の復旧にいたしましても、亦電化をどうするか。自動車やその部品の製造、ガソリンや重油の輸入、これらをどうするか。又船舶の新造や傭船をどうするか。若しこれらについて米國の好意ある援助を懇請するとしますれば、先ず以て自ら我々は反省して、その受入態勢を整えることが先決問題であると信ずるのでありまして、果して現在これができておりましようか。私は現状を見まして、國鉄でも亦自動車業界でも海運界でも格段なる合理化を図らなければ、他國の援助を懇請する資格なしと断言せざるを得ないのであります。(拍手)  幸いに本決議案を契機としまして、当局が各交通機関、特に國鉄海運界の機構制度運営等につきまして、眞劍に、又迅速にその合理化を断行されんことを要望して止まないものであります。(拍手)  以上簡單ながら所見の一端を申上げまして、緑風会を代表して本決議案に衷心より賛意を表する次第であります。(拍手
  16. 松平恒雄

    議長松平恒雄君) 星野直樹君。    〔星野直樹君登壇拍手
  17. 星野芳樹

    ○星野芳樹君 私は無所属懇談会を代表いたしまして、この決議案に対して誠に時機を得たものとして賛成の意を表する者であります。  誠に輸送力産業復興の根幹であり、産業復興が成るか成らないかは、偏にこの輸送力に係つておることは明らかであります。急を要する工業施設や復旧を要する都会の住宅の建設、これが遅々として進まないその原因は、すべて輸送力不足に係つておるといつても誤りがないと思うのであります。この故に輸送力の強化は、すべての再建の鍵であります。この点は何人にも異議はないと思いますが、問題は、如何にしたらば輸送力が本当に増強できるかということであります。輸送力増強するために、輸送施設の改良のための資材を豊富に供給しなければならないことも明らかであります。いや、この資材の供給状態が現状のようでは、輸送力増強はおろか、輸送力の減退も免れない状態であります。更に本当のところをいえば、むしろ鉄道の枕木やレールの取換えをせねばならないのに、戰爭でこれがなかなか行われなかつたために、そのまま放置すれば、輸送力の破壊的危機もいつ勃発するか分らないという状態であると思うのであります。さて併し資材充足するためには、又輸送力増強されねばならないということになります。かくて我我の待望する結果を得るために原因を追求して行くと、又元の結果に帰つてしまう。輸送力増強するためには、先ず輸送力増強せねばならんということになつて解決が見出せないのであります。  又輸送力の増大を図るために、我々が特に強調したいのは、輸送労務者の給與の改善がぜひ必要だということであります。併し給與の改善を、今回政府が採ろうとしているような運賃値上げというようなことによつて賄うというごときは、又これがインフレを助長し、給與改善を無意義なものとして、相変らず労務者は新鮮な労働力と頭脳力を蓄積するに足る生活をなし得ないことになる。又これがいたちごつこになる結果に終ると思うのであります。然らばどうしたらこのいたちごつこを解決することができるか。これは結局インフレを克服するための拔本塞源的な手を打つことによつてのみ解決ができると私共は考えています。(「その通り」と呼ぶ者あり)而もそのインフレを克服するためには産業復興をしなければならない。産業復興するためには輸送力増強しなければならないという論理を繰返していては、又元に還つてしまつて、何らの解決にも達し得ない。インフレを克服するには金融面から手を打たなければならない。そうして闇利得者を徹底的に追及すること、これが唯一の方法であると、この主張は無所属懇談会の同志と共に主張し來つておるものであります。これをなし得て初めて綜合的、計画輸送力の強化も日程に上せ得るのであります。(拍手)  故に本決議案において、政府に対してこの輸送力増強についての施策の大綱を急速に本院に報告することを要求しておりますが、これに対する政府の回答が、このインフレの根本的克服の強力手段に触れず、ただ輸送増強のための近い原因だけを羅列した、見せ掛けだけの机上プランであつたならば、私共は、政府は本議案をまじめに実行する意思はないものと断定して誤りないものと思うのであります。この点よく安本長官に聽いて頂きたいと思います。(拍手)  繰返して申しますが、この輸送力増強の問題を、それだけ切離して解決せんとしても決して解決し得ない。経済復興全般を麻痺させておるインフレと闇の横行を、金融の面より手を打つことによつて解決して、以て勤労者の生活を安定せしめ、これによつて産業一般の復興と相共に、その最も重点施策として、輸送力の強化の方策を遂行するのが解決の途だと信ずる者であります。  然るに、再び触れますが、今回政府のなさんとする運賃値上げのごときは全く近視眼的方法であります。それは鉄道経営という狹い枠から考えますれば、給與を増強するためには、又復旧の資材を得るためには、運賃を大幅に値上げしなければならないという結論になるのですが、それではその運賃値上げが又インフレを挑発して、期待した給與改善にも資材確保にも実際的にはならないことになつてしまうのであります。この鉄道経営という挾い枠を離れて、政治的に解決法を求めるこの運賃値上げのごとき、結局勤労大衆、更に困窮庶民の負担になるような方法を絶対に避けねばならないと思う者であります。  要するに、私共は輸送力増強決議案に満腔の賛意を表明すると共に、インフレ克服と結び着いたる根本的なる対策を政府に要望する者であります。(拍手
  18. 松平恒雄

    議長松平恒雄君) これにて討論の通告者は終りました。討論は終局したものと認めます。これにより本案の採決をいたします。本案決議案に賛成の諸君の起立を請います。    〔総員起立〕
  19. 松平恒雄

    議長松平恒雄君) 総員起立と認めます。よつて決議案は全会一致を以て可決せられました。    〔拍手起る〕
  20. 松平恒雄

    議長松平恒雄君) 只今の決議に対して芦田総理大臣、岡田運輸大臣、栗栖國務大臣より発言を求められました。芦田総理大臣。    〔國務大臣芦田均君登壇拍手
  21. 芦田均

    ○國務大臣(芦田均君) 只今御採決になりました輸送力増強に関する決議案の趣旨並びに提案者の詳細なる趣旨の弁明を拜聽いたしまして、政府におきましても全然同感であります。交通機関の発達は、その國文化の高低を測る物差とも言うべきものでありまして、輸送力増強なくして、我が國経済再建はあり得ないことは、各位の特に御主張になつておる通りであります。そうして輸送につきましても、すでに政府は今後の運用について種々具体的問題を研究いたしております。主管大臣より、近き期日にそれぞれ國会に報告いたすことを考えております。  御承知通り昭和十四五年の頃かと思いますが、当時政府の主管の者が立てた計画によりましても、昭和二十年に至つて東京、下関の幹線鉄道が、すでに需要量の輸送を行うには不足であるという結論に達しておつたのであります。爾來戰爭のため改良事業は一切これを放棄せざるを得ないことになり、また戰爭のために相当の惨害を受け、而も多年に亘つて酷使されたる國鉄でありますから、終戰後至つて輸送力が著しく減退いたしましたことは、必ずしも不思議ではなかつたのであります。今日輸送力増強のために、各般の施設を行おうといたしまして、先ず最初にぶつかつている難関は、申すまでもなくすでに鉄道資材が老朽その極に達した。これを補修するためには、資材の問題であるとか、石炭素質低下の問題であるとか、これに加うるに能率低下の問題であるとか、各種の複雜なる原因のために、政府の期待するごとき輸送力を発揮し得ないことは誠に遺憾であると考えております。  海運につきましても、御指摘になりました通り、我が國のごとく四面環海の國において、現在のごとき船舶量を以てして所詮國民生活に必要な輸送に当り得ないことも、これは明白なる事実であります。不幸にして、船舶については連合國に対する賠償問題がまだ決定いたしておりません。又平和回復後において我が國が幾許の船舶を保有し得るか、如何なる形の船舶の保有をなし得るかというごとき根本の問題が未決定に残つておるという事情もあります。又造船用の資材が極端に欠乏しておるという事情もあり、急速に船舶建造することに困難なる場面に当面いたしておることは諸君の御承知通りであります。その一時の急を凌ぐために、連合國より一時傭船を許可せられることについては、すでにドレーパー氏來朝当時から、切々連合國に事情を説いて、その好意的な考慮を求めておるのでありますが、今日のところまだ問題は解決いたしていない状況であります。  自動車及び道路の問題につきましても、政府は幾多焦慮いたして今日に至つたのでありますが、資材の問題、或いは予算に伴う財源の困難等によつて十分にその目的を貫徹することができないというのが現状であります。  最後に輸送力増強に伴う能率の問題につきましては、勤労者諸君交通関係諸君の協力を得るにあらずんば、その目的を達し難いことは申すまでもありません。今日までのところ、無論能率増進のために必要なる食糧並びに物資の配給を重点的に行うことが必要であることはよく承知しております。如何せん、今日の日本においては、食糧その他必需品の絶対数が不足しておるという関係から、政府希望の通りに配給を増加することができなかつたのでありますが、それにしても我々日本國民再建に対する熱情と責任感の上に立つて、共に輸送力増強を図ることが今日の急務であると考えております。言葉を換えて申せば、我々日本國民の愛國心に愬えて、日本民族の將來のために、その責任感と同時に、子孫に対する我々の義務を痛感いたしたい。その心掛によつて物心両面に亘る輸送力増強努力完遂されるものと考えておる次第であります。  本日御採決になりました決議の趣意は、政府において十分にその趣意を体して、今後万全の力を致したいと考えておる次第であります。(拍手
  22. 松平恒雄

    議長松平恒雄君) 岡田運輸大臣。    〔國務大臣岡田勢一君登壇拍手
  23. 岡田勢一

    ○國務大臣(岡田勢一君) 只今輸送力増強に関する決議案が議決されまして、私といたしましても、本決議案に対しましてここに深甚の謝意と敬意を表します次第であります。同時に又、私らの責任の重大なことを痛感いたしますものであります。  現在鉄道自動車船舶のいずれの分野におきましても、輸送力が甚だしく不足いたしまして、それが生産増強國民生活向上隘路を形成いたしておりますということは正に御指摘の通りでありまして、政府といたしましても、輸送力増強なくしては生産増強なく、日本復興はあり得ないということは、皆樣方の御意見に全く同感でございます。  この観点からいたしまして、輸送力増強の長期計画を立案中でありますが、差当り本年度生産計画に即應いたしまして、鉄道一億三千万トン、自動車二億六千万トン、船舶四千七百万トン、合計四億三千七百万トンの輸送力を発揮するように予定しておるのでありますが、遺憾ながら今日の現在の國力を以ていたしましては、この目標達成にも多大の困難が伴うということを否定することができないと考えられるのでございます。  只今提案者並びに討論者の方々から御説明になりました各項目は、いずれも海陸に亘る輸送力復興並びに國鉄海運、陸運の再建に必要なる、貴重なる御意見であると存じます。特に私達は、國鉄を初め海上並びに陸運、その他輸送事業一般に奉仕いたしまする從業員が、愛される從業員となるべきであるという御意見に対しましては、全く感銘する次第でありまして、私といたしましても、今後さような方向に向かつてできるだけ善処し、指導をいたして参りたいと存じます次第であります。政府といたしましては、勿論今後更に一段の努力を拂いまして、輸送力の強化に、眞劍に積極的に挺身いたしますつもりでございますが、各位におかれましても、本決議に関する諸方策が速かに充足されますように、よろしくこの上とも一層の御支援、御協力をお願いいたします。同時に又尚一層のご鞭撻を希望いたします次第でございます。私らはこの御決議の趣旨に基きまして、只今いろいろお述べになりました各項目につきまして、細心の檢討を加えまして、今後努力いたしますと同時に、本決議案に附随して御要求になりました輸送力増強に関する政府施策の大綱につきましては、政府におきましては更に愼重に檢討を加えまして、本國会中、成るべく速かなる機会におきまして御報告を申上げたいと存ずる次第でございます。以上簡単でございますが御挨拶申上げます。(拍手
  24. 松平恒雄

    議長松平恒雄君) 栗栖國務大臣。    〔國務大臣栗栖赳夫君登壇拍手
  25. 栗栖赳夫

    ○國務大臣(栗栖赳夫君) 只今輸送力増強に関する後決議がございましたのでございますが、経済復興のこれは一つの大きな鍵でございまして、本決議の趣意には全く賛成いたしておるものでございます。いずれ安本所管の事項その他につきましては、改めて本会議に御報告申上げる次第でございますが、提案及び賛成の方々の御言動にも十分感銘するところがございますので、ここに取敢えず所管の一端を申述べてお答えしたいと思うのであります。  政府は差当りこの輸送力増強確保につきましては、只今運輸大臣より申上げましたように、措置を決めこれを強く進めておるのであります。我々政府といたしましては、更に傭船或いは重油その他の物資の輸入についても、好意ある連合國の援助の懇請を続けておるような次第であります。尚この外過般長期経済復興計画委員会を設けて発足いたしましたが、この中におきましても小委員会或いは部会におきまして輸送力増強に関する施策等について御立案を願い、更にこれを全体的に綜合的に計画を考えまして、そうして速かにこれを実行し、本格的な経済復興に資したいと思うような次第でございます。  次に、労需物資の配給についていろいろ御要求があつたのであります。只今政府といたしましては、尚配給物資の増産については相当制限があり、又これらの物資を輸入するについても同樣制約を受けておりますが、政府輸送力増強に邁進せられるところの從業者の方々の熱意あるところに應ずべく、更に労需物資の増配確保については努力を続け、増産と輸入に努めておるような次第であります。又炭鉱、製鉄業等緊要産業に從事する者に対する配給との均衡についてもお話がございました。これも引続き配給物資の増加確保の促進をいたしまして、均衡調整を速かに確保いたしたいと考える次第でございます。簡單でございますが、お答えいたします。(拍手)      ——————————
  26. 松平恒雄

    議長松平恒雄君) この際日程第二、電波物理研究所を電氣試験所に統合する法律案内閣提出)、日程第三、高等試驗委員及び普通試驗委員臨時措置法案内閣提出、衆議院送付)を一括して議題とすることに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  27. 松平恒雄

    議長松平恒雄君) 御異議ないと認めます。決算委員長下條康麿君。    〔下條康麿君登壇拍手
  28. 下條康麿

    ○下條康麿君 只今上程になりました二案につきまして委員会審議状況を御報告申上げます。先ず電波物理研究所電氣試驗所に統合する法律案について御説明申上げます。  この法案は、電氣通信研究の一元化を図るために、現在文部省所管の電波物理研究所を逓信省所管の電氣試驗所に統合することにしたいというのであります。簡單な法案でありまして別段異議はないのでありますが、ただ現在國家行政組織法を中心とする行政機構改革が問題になつておりまして、これら行政機構改革の全般的問題を檢討した上でこの法案を審議した方がいいという意見があつたのであります。併しながら今申した電氣通信に関する研究一元化ということは、行政機構の整理統合の見地からいたしましても妥当なものでありますし、又文部省と逓信省の両省に跨る権限の移動でありますので、これは現在の法制におきましても当然法律事項であると考えまして、一應一般行政機構の改革問題と切り離しまして、本案審議を進めることになつたのであります。別に何ら修正等もなく、全会一致原案通り可決を見たのであります。  高等試驗委員及び普通試驗委員臨時措置法案について申述べます。  実は近く國家公務員法が七月一日から実施されるのでありまして、それに伴いまして、この試驗に関する制度根本的に改革される筈でありますが、諸般の都合でまだ準備が整つておりませんので、暫く現在の高等試驗並びに普通試驗の制度を継続したいということであります。尚今申しました國家行政組織法の制度がありますというと、この委員会は法律を以て決めることになつておりますので、それらの点も加味しまして、暫定的にこの制度を法律を以て延長しようという案であります。別に支障のないものと認めまして、これ亦全会一致を以て可決を見たのであります。この段御報告を申上げます。
  29. 松平恒雄

    議長松平恒雄君) 別に御発言もなければ、これより両案の採決をいたします。両案全部を問題に供します。両案に賛成の諸君の起立を請います。    〔総員起立〕
  30. 松平恒雄

    議長松平恒雄君) 総員起立と認めます。よつて両案は全会一致を以て可決せられました。      ——————————
  31. 松平恒雄

    議長松平恒雄君) 報告をいたさせます。    〔寺光参事朗読〕 本日委員長から左の報告書を提出した。  中小企業廳設置法案、修正議決、報告書      ——————————
  32. 松平恒雄

    議長松平恒雄君) この際日程に追加して、中小企業廳設置法案(内閣提出、衆議院送付)を議題とすることに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  33. 松平恒雄

    議長松平恒雄君) 御異議ないと認めます。先ず委員長の報告を求めます。決算委員長下條康麿君。    〔下條康麿君登壇拍手
  34. 下條康麿

    ○下條康麿君 只今議題となりました中小企業廳設置法案につきまして、委員会審議状況を御報告いたします。  我が國の現状におきまして、この中小企業というものが非常に重大であり、而もこの発展がいろいろの事情に阻まれて困難を來していることは明白な事実でありまして、國民経済の発展上誠に遺憾とするところであります。而してこの方面の行政事務は現在商工省の一課、生活物資局の中の振興課という一課において取扱われているのでありまして、これではこの方面の発展向上に資するに甚だ支障があるのでありまして、この際一躍この局を拡大いたしまして、商工省の外局として中小企業廳を新設しようとするのがこの法案の趣意であります。で、中小企業廳には長官官房の外に、振興局と指導局というものを置きまして、中小企業に関する諸般の情報を集めるとか、或いは中小企業者の経営状況審査して、その発展に協力しようとするのであります。  この法案は決算委員会に付託せられたのでありまするが、愼重を期するために商業委員会並びに鉱工業委員会と連合委員会を開いたのでありまして、更にその連合委員会におきましては、小委員会を設けまして愼重審議をしたのであります。これは審議に非常に長い時間がかかりまして、実は本日ここでこの案が議決せられませんと、憲法第五十九條第四項の規定によりまして、衆議院においてこの案を参議院が否決したものとみなし得る場合の一つの例であります。それ程時間がかかつたのであります。政府説明を聽取した後に民間人の声を聽くために、四月三十日には、東京商工会議所の専務理事を初め五人の証人の登院を求めましていろいろ意見を聽取したのであります。審議の過程におきましていろいろ問題になつた点がありまするが、極めて主なる点につきまして二三御紹介したいと存じます。  まず中小企業の範囲はどうであるかという質疑に対しまして、政府の答弁では、この範囲を法律で限定することは適当でないから、業種別にそれぞれの実情に即して適当な処置をするというような答弁であつたのであります。亦資材割当資金融通等の権限を持たないで、單に企業者の協力機関であるというような役所ができましても、余り有力な活動ができないのではないかというような質問がありましたのに対しまして、政府はたとい資材等の裏附がなくても、いわゆる業者に対する協力機関、或いは業者のためにするところの代弁機関として、十分存在の意義があるのであるという答弁であつたのであります。又業者のための協力機関、或いは業者のための代弁機関であるというならば、徒らに行政事務を煩瑣にするにすぎないのではないかというような質疑に対しまして、決して徒らに行政官廳の窓口を廣くするだけではなく、中小企業者の希望実現のために活動する有益な官廳を作るものであるというような答えであつたのであります。  尚農林省や厚生省所管に属する中小企業との関係に関して、政府の答えは関係各廳との間に連絡委員会を設けまして、円滑なる運営を期するつもりである。尚衆議院におきまして、この法案第三條中に修正を加えまして、「中央及び地方の行政廳の協力を求め、綜合的に処置する」としたのも、即ちこの意味であるというような答弁であつたのであります。以上の外、いろいろ問題があつたのでありまするが、それは速記録に讓りたいと思います。  最後に、討論に入りましたところ、修正案の提出があつたのであります。修正案を朗読いたします。   第三條第一項第二号を次のように改める。   二 中小企業者の申請に基いて、その経営状況審査し、必要な指示をし、その発展に協力すること。   同條第二項を次のように改める。   中小企業廳は、中小企業に関係ある問題又は國会に提出される政府議案につき、予め、意見を徴せられ、又意見を提出することができる。   第四條中「指導局」を「協力局」に改める。   第五條第一項を次のように改める。   中小企業廳の事務を行うため、中小企業廳に百人以内の職員を置く。   同條第二項を次のように改める。   前項の職員の中少くとも三分の一は、中小企業に関し学識経験ある者の中から、これを命ずる。  かような修正案が提出せられたのであります。その修正案の極く簡單な理由を申上げます。第一項は、從來官憲がややもすれば権力を以て業者に臨むような態度があつたのでありますが、今回はさようなことではなく、むしろ業者に協力するという意味を附けたのであります。第二の点は、この原案によりますというと、中小企業廳は國会におきまして、國会議員の提案するものにつきましても意見が述べられるようになつておりまするが、これを政府議案について意見が述べられるというように、その権限を明らかにしたのであります。第三の点は、「指導局」を「協力局」、これは先程申したように、いわゆる官憲の権力による指導でなくて、協力する立場を明らかにしたものであります。それから第四の点は、從來かような官廳ができますと、逐次職員の増加がありまして厖大になりますから、職員の限界を決めまして、百人以内の職員を置く、こういうふうに職員の定員を定めたのであります。それから第五の点は、職員の一部は少くとも三分の一とはつきり民間人を採用する範囲を決めたのであります。この修正案に対しましては、多数を以てこれを認めたのであります。  尚この修正案に賛成の意見を述べられる場合におきまして、かような意見の開陳があつたのであります。即ち行政組織法の提案されておる今日、ばらばらな中小企業廳その他の法案が出ておりまするが、かようなものは一括して順序よく統制して、纏めて審議すべきものであると思うけれども、この際現下の中小企業に対する振興の必要を認めまして、特に賛成をするというような御意見の御開陳がありました。  尚この原案の採決に移りましたところが、この案に対しましては現在の業界の事情並びにその振興の方途を図る上におきまして、この内容やこの規模では事実に適合しない、その所要の目的を達成することができない、而も現在行政整理をする今日、かような案の提出が適当でないから、この案には反対するというような御意見の開陳がありました。採決に入りまして、修正案が可決せられ、修正を除きました原案につきまして採決いたしましたところ、これ又原案通り採決決定されたのであります。本案は修正を以て可決を見たのであります。この段御報告をして置きます。(拍手
  35. 松平恒雄

    議長松平恒雄君) 本案に対し討論の通告がございます。一松政二君。    〔一松政二君登壇拍手
  36. 一松政二

    ○一松政二君 私は只今上程されましたる中小企業廳設置法案の修正案にも、原案にも反対する者であります。(拍手)只今その反対する理由を簡単に申述べまして、皆さんの御審議の御参考に供したいと存ずる次第であります。  元來中小企業の振興問題につきましては、私は個人としても、或いは私は商業委員長の資格においても、重大なる関心を持ちまして、これが振興を希いまするために、合同審査会にも、或いはその後の小委員会にも列席いたしまして、終始皆さんの御意見を承わり、又政府当局との質疑應答につきましても傾聽いたしたのでありますけれども、本案の実現によりまして、中小企業の振興を期し得るというよりも、むしろ窓口が二つ殖えまして、そうしてて中小企業者の最も不得手とするところ報告なり、或いは届出、或いはその他の命令というようなものを求められる危険の方が多くありまして、そうして却つて得をするよりも、中小企業を阻害する面の方が多くはないかということを心配する者であります。本案に賛成せられる諸君におかれましても、まあ中小企業の代弁者として有力な代弁者であるから、或いはないよりはおいた方が宜いであろう、或いは又この設置法案に反対するというと、何だか自分が、中小企業者の利益に対して何ら考慮するところがない。或いはそういう曲解を恐れまして、政治的にまあ通すことに賛成した方が賢明であろうというような程度の御意見があつたやに私は想像するのであります。私の諸君に考えて頂きたいことは、実はここにあります。今日口を開けば中小企業、中小企業と言われまするが、その中小企業の本質的なものは、実に複雜多岐でありまして、これが一朝一夕に解決し得るというものではなく、單に大きな役所を拵えたら、これが樂になるとか、或いはこの問題が非常に有利に展開するというそんな生やさしいものではないのであります。で先程も委員長から報告のあつた通り資金資材について何ら権限を持たないところの、こういう中小企業廳を拵えても、何にもならないという説の出てくるのは、そういうところからであります。  今日中小企業で最も問題になつておりますところのものは、いわゆる金融の困難であります。第二番目には税金の過重な負担でもあります。この二点につきまして、この中小企業廳は單に斡旋をする、或いは陳情の手引きをしてやるというだけでありまして、而も商工省の外局である中小企業廳は、いろいろ運営については綜合的にやるということを言いますけれども、農林省、或いは大蔵省、或いは厚生省の所管するところの外局においては、そういう世話をやかれると、これこそ如実に窓口が二つになるのであります。中小企業を振興せしめるという目的に副わざることおびただしいのであります。中小企業を振興せしめる根本問題の第一は、政府が余計な世話をやくことでなく、むしろ反対に業者自身に自由に活動せしめる機会を多くすることであります。即ち一日も早く経済活動の自由の範囲を拡げてやる、むしろ撤廃にこれを持つて行くことを、一日も早く努力するということが一番であります。第二番目には、大企業、いわゆる重点産業という政府経済政策を改める必要があるのであります。今日はすべて資金にしても、資材にしても、殆んど大企業が独占いたしまして、口に中小企業の振興を唱えまするけれども、その施策はすべて中小企業の犠牲において営まれておるといつても、敢て過言ではないと思うのであります。(「それだからやるんだ」と呼ぶ者あり)第三は、いわゆる先程も申しました税金の軽減でありまするし、第四には、敗戰の結果、この窮乏に陷つた日本に適当するような労働法規の改正が、私は必要であると信ずるのであります。今日商工省において、中小企業関係に從事する人は殆ど指を屈する程もないのであります。そういう状態で、ありまして、根本に申上げました、この四つのことを放つて置きましては、如何なる役所を設けましても、中小企業の振興にはなり得ない。從つて私は商工大臣みずから責任を持つて、中小企業の根本問題であるところの、今四つの問題の解決渾身の努力を傾注せられ、この法案に盛つてあるような保護助長のいろいろな施策は、これを商工省の内局におきまして、そうして必要な人員を漸次配置する方途を求むればそれで足りると、私は固く信ずるものであります。  以上は、中小企業振興対策としての立場から、本法案の不必要なるゆえんを述べたのでありまするが、更に先程委員長からも報告がありました通りに、今日我が國の財政は崩壊の一歩手前でありますし、中央地方を通じまして、人件費の過重に拔いておるのであります。而もこれに從事するところの官公職員諸君は、いずれも飢餓線上にあるとして、給與の改善を叫び続けておることは、皆さんご承知通りであります。我が國の財政の建直しに当たつて行政整理の必要を否定する者は一人もないであろうと信ずるものであります。我々はこの際思い切つて行政整理を行なうと共に、必要最小限度におけるところの官公職員は、十分満足のできる給與を支給すべきであると確信するものであります。(拍手)この見地から、新たに厖大にして、而も無力なるところの商工省の中小企業廳の外局設置に反対するものでありまして、殊に考えて頂きたいことは、新設するということは、いとやさしいことであります。而も一旦かくのごとき外局が新設された曉に、これを一度廃止しようと決意をいたしましても、なかなか簡單に廃止ができないということは、皆樣十分御承知のことと思うのであります。尚私は本法案には百人ということを限定してある、故に左程厖大なものではないと言うかも知れませんが、今日中小企業は大体において各大中都市に集中されておるのでありまして、これらの中大都市におきましては、すでに市の商工課においていろいろな方面に親切な面倒を見ておるのが非常に沢山あるのでありまして、先般も六大都市が、本法案が衆議院の商業委員会にかかつた関係上、衆議院の商業委員会と参議院の商業委員会に、わざわざ横浜我々を連れて行かれまして、そうしてその場においてあらゆる中小企業に対する希望と陳情を受けたのであります。その中にはいわゆる今度中小企業廳ができるというと、我々は今一生懸命やつておる。今まで府縣の当局は殆ど顧みていなかつた。然るに商工省でこういう外局を造るということになつて、そうして都道府縣が綜合的にやるということになつたために、今までなかつた各府縣廳に改めて中小企業課というものを設けて、そうして人を募集しておる。かくのごときは自分達と重複するし又一つ余計なところができるのであるから、むしろこの際府縣にそういうものを設けることは止めて欲しいという陳情であつたのであります。ところが事実はさようではありませんで、必ず都道府縣にそういうものの新設を見ることと信じますので、中央にそういうものができると同時に、各都道府縣にそういうものができることによつてその数は莫大なものに上り、その経費もなかなか生やさしいものではないと思うのであります。そういう行政整理を必要とするという見地から、この際そういうものはやるべきでない、むしろ内局にして、そうして責任は商工大臣みずから堂々と取れ、そうして必要な人員は内局の中に必要の程度に應じて充実して行けばよろしいというのが私の主張する眼点なんであります。どうか諸君におかれましても、何卒安易なる妥協に終ることなく、眞に憂國の観念から本案に反対する私の説明を諒といたされまして、そうして私の説にご賛同あらんことを切望する次第であります。以上を以ちまして、私の討論を終る次第であります。(拍手
  37. 松平恒雄

    議長松平恒雄君) これにて討論の通告者は終了いたしました。討論は終局したものと認めます。  これより本案の採決をいたします。本案全部を問題に供します。委員長の報告は修正議決報告でございます。委員長報告通り修正採決することに賛成の諸君の起立を請います。(「反対」、「大反対」と呼ぶ者あり)    〔起立者多数〕
  38. 松平恒雄

    議長松平恒雄君) 過半数と認めます。よつて本案委員会修正通り議決されました。(拍手)これにて本日の議事日程は全部議了いたしましたが、尚この際お諮りすることがございます。本日大藏大臣より財政に関して発言したい旨の通告に接しました。この大藏大臣の演説を聽くため、午後三時まで休憩したいと存じます。御異議ございません。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  39. 松平恒雄

    議長松平恒雄君) 御異議ないと認めます。午後三時まで休憩いたします。    午後零時三十三分休憩      ——————————    午後三時十六分開議
  40. 松平恒雄

    議長松平恒雄君) 休憩前に引続きこれより会議を開きます。
  41. 寺尾豊

    ○寺尾豊君 本員はこの際昭和二十三年度予算の提出の時期に関しまして、政府に対し緊急質問をいたしたいと存じます。右動議を提出いたします。
  42. 鈴木直人

    ○鈴木直人君 只今の寺尾君の動議に賛成いたします。
  43. 松平恒雄

    議長松平恒雄君) 寺尾豊君の緊急質問の動議に賛成の諸君の起立を請います。    〔起立者多数〕
  44. 松平恒雄

    議長松平恒雄君) 過半数と認めます。寺尾豊君。    〔寺尾豊君登壇拍手
  45. 寺尾豊

    ○寺尾豊君 芦田内閣成立すでに四ケ月、その政策を中外に示し、國家再建基盤を明らかにすべき昭和二十三年度予算は、今日に至るも未だその提出を見ないのであります。我々國会は國民と共にこのことを深く遺憾とするものであります。二十三年度予算案提出に関しましては、過般会期延長の問題と関連をいたしまして、本院におきましては五月五日議院運営委員会におきまして苫米地官房長官から、又衆議院におきましては五月六日、芦田首相御みずから本会議におきまして次の三條件を公約せられましたることは、すでに各位の御存知の通りであります。即ち一、二十三年度予算案は遅くとも必ず五月二十日までに提出すること。一、法律案は六月十日までに全部提出を終了すること。一、会期は六月二十日以上は絶対に延期せぬことの三つでありました。而もこれを確認いたしまするために、本院議長はわざわざ右三條件を覚書といたしまして、政府に手交し、政府又これをしかと了承をしたのでございます。(「その通り」と呼ぶ者あり)然るところ、今日に至りましても未だその予算案の提出を見ざることは、何という……政府としての責任はこれを許すことができないと考えると共に、本院に対して何らの一言の挨拶もないということは、我が國会を政府みずから侮辱するものであると私は断じて、敢えて差支がないと思うのであります。(拍手)この点に対して芦田首相は如何なる責任をお感じになるか。この参議院並びに衆議院との公約に対して首相みずからがその責任に対する後答弁をお願いしたい。  次に、本日北村大藏大臣から説明をされるというのは、予算のいわゆる大綱であつて、絶対に予算案そのものではない。即ち便宜的に予算というものが一日も早くこれを決定しなければならないということは我々もこれを了承することができる。かかる意味合においてその大綱を説明をせんとするものでありまするから、敢えて我々はこれに対して拒むものではありません。併しながら、次の我々が待望している、國民と共に待望するところの二十三年度の本予算、正式なる本予算というものが果していつ何時提出されるかということをお尋ね申上げたい。これは本院並びに衆議院が政府と公約をいたしましたることと関連をいたしまして、極めて重大なる問題であるがために、本予算の提出の時日、これをしかと御答弁を願いたいと思うと共に、たとえ本予算を提出をいたしましたといたしましても、その審議に当りましては、公聽会或いは分科会等の関係もありましよう。又嘗ての慣例からいたしましても少くも三週間は要するのであります。先に約束をいたしました、絶対に延期をいたさないと約束をいたしました時日は六月二十二日であります。恐らく本予算の提出は六月の十日或いはその以後になるのではないか。然らば、それから三週間を要するといたしますならば、会期の延長を必要とするのではないかということから考えて、政府の先の本院との約束も亦極めて重大なる責任があると私は考えるのであります。これに対して芦田首相は如何なる御見解と如何なる御方針とをお持ちになるか。明快なる御答弁を願いたいと思うのであります。  今一つは、政府は今次予算の提出の遅れたることを、関係方面並びにその筋の審査の遅延その他種々の問題に藉口して、その理由を盛んに吹聽しているかのごとき感があるように考えるのでありまするが、少くも責任政府として徒らにその筋、関係方面ということのみに藉口してその責任を逃るるがごときは、極めて卑劣なる行爲であると断ぜざるを得ないのであります。(拍手)これに対する首相のお考え、並びに今後の日本政治のあり方に対しても、尚かくのごとき理由を反復するか、しないか。これらについての首相の明快なる御答弁を願いたいと思うのであります。  更に私は本予算が遅延をしたところのものに、政府は種々の理由は附けておりますけれども、そのイデオロギーの違つた、その主義政策の違つたところの政党の寄合において政権を担当をしておることに起因することではないか。この点において芦田首相に御答弁並びにご反省を願いたいのであります。思いまするに、最近における諸般の情勢は、日本再建のあり方について、今までのような兄弟相食む、相爭いをしておるとか、乃至はイデオロギーの違つたところの政党政派が共に政権を担当しておるといつたようなことを許さない時期に突入をしておるものではないか。即ち本予算を繞りまして物價改訂に関連いたしまして、今や國民生活というものは最悪の事態に突入をしておると申上げても過言ではないのであります。このときにおいては、政治家たる者、國家再建の大乘的見地よりして、世界に流るるところの二大思潮、そのいずれを選ぶかというところの最後の段階に來ておると私は絶対に信ずる者であります。この点に対して芦田総理大臣が徒らに党議を無視し、恋々たる政権慾を満たさんがために、常に國民生活に違反するところの妥協的なる政治を行わんとするに対して、強力なる反省を促したいと思うのであります。(拍手)この点に関しますところの芦田首相の御答弁を願いたいと思う。  要するに、本予算の提出というものが遅れたということは、一に日本の現在におけるところの政治のあり方がその原因であるのでないかと深く憂うるがために、ここに一大決意の下に、大乘的見地に立ちて、眞に國家國民生活の安定を基礎といたしまして、日本産業基盤に対して、強力なる画期的なる歴史的なる政治を行うところの義務が芦田首相に掛けられておるということを考えまして、一段と芦田首相の奮起を促したいと思うのであります。  以上極めて簡單ながら芦田首相の御答弁をお願い申上げたいと思います。(拍手
  46. 松平恒雄

    議長松平恒雄君) 芦田総理大臣。    〔國務大臣芦田均君登壇拍手
  47. 芦田均

    ○國務大臣(芦田均君) お答えいたします。二十三年度の本予算編成につきましては、極力政府閣僚並びに事務当局努力をいたしまして、先般運営委員会でお話をいたしました予定の期日、即ち五月中旬には一切の書類を添えて國会に提出する計画を立てまして努力をいたしたのでありますが、率直に申しますと、五月の十日には政府の予算の大綱が決定いたしたのであります。然るところ、諸般の事情のためにその計画通りに進行し得ない事情が起りまして、(「その事情は何だ」と呼ぶ者あり)最近二十六七日頃に印刷を終わつて、でき得るならば、この大綱によつて國会の予算予備審査をお願いいたしたいという希望を持つて、先日來種々國会の了解を求めて参つたのであります。かように予算編成の後提出の期日が遅れましたことにつきましては、政府として誠に遺憾に存じております。併しながら目下予算書を印刷中でありまして、多分間違いなく本月八日に予算書の明細な印刷物を國会に提出し得ると思います。衆議院が通過いたしましたならば、直ちに参議院にこれを提出する予定でおります。尚只今の御質問の中に、かように予算の編成が遅れたのは、連立内閣の結果ではないかという御意見と共に質問がありましたが、現在の政府は政策協定を結んだその大綱の上に政策を運営いたしているのでありまして、今回の予算も一に三党政策協定の線に沿つて編成をいたしたのでありますから、すでに政策協定よつて了解ができている問題については、特に本予算編成の前後に予算編成を遅らせるがごとき事情は何らなかつたのでありまして、かような事情は毛頭存在いたさなかつたということを御了承願います。尚予算提出の期日が非常に遅れるその理由を、政府は他に責任を轉嫁せんとするごとき言葉を常に使つておるという御意見でありましたが、参衆両院のこの壇上においてしばしば申上げたごとく、政治の全責任政府がとるのでありまして、これを他に轉嫁せんとするがごとき意向は毛頭抱いておりません。  尚今後そういう所信を以て進むかというお尋ねでありました。政府としては、若し國会の了解が得られるならば、六月末日頃まで國会に今期の延長をお願いして、その期日までに本予算の審議を終了することにしたい。という理由は、今回の予算は通常の、平時の予算とは違いまして、物價改訂に伴う諸般の問題を伴つておるのであります。從つて給與水準の改訂もできる限り早い時期に行わなければなりません。又今日まで暫定予算を三回も提出いたしました関係上、六・三制にいたしましても、或いは又災害の復旧工事にしましても可なり事業の着手が遅れておるのであります。これ以上本予算の通過が遅れる場合には、延いて國内経済に及ぼす影響は可なり甚大であることを憂慮いたしております関係上、参議院においても、希くは諸般の事情をご考察の上、本月末までに本予算の審議を議了せられんことを切に希望しておるわけであります。以上簡單にお答えいたします。(拍手)      ——————————
  48. 松平恒雄

    議長松平恒雄君) 大藏大臣より発言を求められております。北村大藏大臣。    〔國務大臣北村徳太郎君登壇拍手
  49. 北村徳太郎

    ○國務大臣(北村徳太郎君) 「われわれは漠然と希望し、明確に恐怖している。」と或る詩人は申しましたが、今まで私共は明確な恐怖はありましても、安定への希望は極めて漠然としたものしかあり得なかつたのでございます。併し、今や耐乏と苦闘のうちに、漸く生存から生活への十字路に辿り着こうといたしておるのでございます。この重大なる時期に際会いたしまして、昭和二十三年度予算案の編成に当りまして第一の努力は、予算と物價との相互均衡をとるという一点に注がれたのでございます。このことたるや、重大にして而も極めて困難な問題でございますため、これに相当時日を要しまして、遂に予算に関しましては暫定予算の御審議を煩わすこと数回に及び、この程ようやく成案を得るに至りましたのでございますが、尚事務上の都合で予算案として正式に提出いたしますことは、先程総理大臣より申述べました通り若干遅れる見込でございますので、この際大綱につきまして一應御説明を申上げると共に、現下の財政金融政策につきまして所信申述べたいと存じております。  先ず予算編成の基礎となつております重要なる二三につきまして御説明申上げたいのであります。  第一には、物價及び賃銀と予算との関係でございます。昨年七月物價改訂後、賃銀と実効價格との上昇線は相当弱まつたとは申しますものの尚継続いたしております。このため特に官業と基礎産業とは今尚採算割れを來し、これがため鉄道通信両特別会計の運営収支における赤字、又石炭、鉄鋼、肥料等いわゆる安定帶物資に対する價格調整補給金等実質上の財政負担と見られるものは、最近月額百億円に達する状況になつておるのでございます。かような財政及び金融上の負担を引続き持続いたしますことは、インフレーシヨンの前途に重大な暗影を投ずるのみならず、企業の見地から見ましても、かような重要産業の基礎を不健全なまま放置いたしますことはできないのでございますから、ここにこれらの價格の改訂を行いまして、企業の運営を正常化することが必要と相成つたのでございます。併しながら、賃銀物價の循環的高騰を遮断するためには、この際價格補正の程度をできる限り低位に止める必要がございますので、從つて政府は財政負担は極めて困難の際ではございますけれども、財政負担において物價騰貴の波及を抑制し、健全財政を堅持しながら、物價と賃銀との安定を図り生産の正常化へも効果あらしめるようにしたいと、かような点に努力をいたした次第であります。即ち一般会計においては五百十五億円の價格調整補給金を支出いたしまして、公定価格の著しい上昇を緩和することといたし、鉄道通信両特別会計に対しましては、一般会計から百三十億円の運営収支不足金の繰入を行いまして、かくいたしまして鉄道運賃の値上りは通行税を含めて現行料率の三・五倍、通信料金の値上りは現行料率の四倍に止めることといたしたのでございます。賃銀につきましては、右の價格補正を斟酌いたしまして、現在における一般勤労者の実質賃銀を確保せしめることといたし、これがために所得税について大幅の軽減を行う等の措置を講じたのでございます。  第二の点は、健全財政の原則を、一般会計のみならず特別会計及び地方財政を通じて貫徹したという点でございます。財政の健全性とは、申すまでもなく一般会計のみならず、特別会計、地方財政を通じた財政全体として、その収支の均衡、適合を図るということであるべきことは勿論であるからでございます。このことは物價と賃銀との騰貴を抑制しつつ、而もこれによる國民負担の増大をできるだけ避けねばならない情勢の下におきましては極めて困難でございます。予算の編成に当り最も苦心いたしました点はこの点に存するのでございます。結局各特別会計におきましても、地方財政におきましても、運営上の収支について概ね赤字を出さずに済ますという見通しのつきましたことは、財政の健全化のために喜びとするところでございます。尤も資本的支出に属するものにつきましては、その経費の性質上公債又は借入金によることといたしたものもございます。これは資本勘定としても当然の措置であると、考えておるからでございます。  次に第三は國民経済との関連でございます。財政の健全化のためには、財政収支が均衡を得るのみならず、更に財政の規模が國民経済全体に適應することが必要でございます。國民経済力の綜号的指標たる國民所得を見まするに、昭和二十三年度は大凡そ一兆九千億程度と概算せられておるのであります。これに対しまして一般会計の歳出三千九百九十三億円余は二一%に当り、前年度の一八%に比し多少増率になつております。本年度國民所得は実質的に見て昨年度に比し相当増額するがごときことは期待できますが、我が國における経済実力が未だ極めて貧困であることに省りみますれば、この負担は勿論相当の重圧と思います。併し経済の安定、國の復興、その他我が國のなすべきところは極めて多いのでございますから、我々は新らしい日本建設のためには、この負担をも敢えて甘受しなければならないと思うのでございまして、國民各位におかれましても、この点について御理解と御辛抱を願わなければならないと存じておるのであります。  第四に行政管理に関する点でございますが、國内経済体勢を整備いたしまして、外貨の導入を容易ならしめ、我が國の経済復興するためには、経済部門と密接な関係を有しますところの行政部門を先ず能率化する必要があることは申すまでもございません。この目的を達するため、政府は行政事務の整理再編成と、機構簡素合理化を行うことといたし、只今着々具体案を檢討作成中でございますので、この際先ず予算の上において取敢えず一般会計の人件費の一割五分に相当する額を節約することといたしまして、行政整理の実施を先ず財政の面から促進することといたした次第であります。  以上のような観点に立つて作成された予算の概要は、大体歳入歳出共に三千九百九十三億円余でございまして、歳入は租税及び印紙収入二千六百三十二億円余、專賣益金九百四十三億円余、その他の官業及び官有財産収入七十二億円余、雜収入三百三十六億円余、前年度剰余金八億円余でございます。歳出は終戰処理費及び賠償施設処理費千六億円、價格調整費五百十五億円、鉄道通信行政監督費繰入二十億円余、鉄道業務収支差額繰入九十億円、通信業務収支差額繰入四十億円、船舶運営会補助四十億円、地方分與税分與金四百四十九億円余、公共事業費四百二十五億円、政府出資百八十九億円余、その他千二百十八億円余でございます。  この内容については近く予算案として正式のものを提出する際詳細に御説明申上げることにいたしたいのでございますが、概要につきまして簡單に申述べますれば、歳出のうち人件費につきましては三千七百円ベース、物件費につきましては公定價格は概ね七割程度の騰貴を前提として積算いたしております。次に終戰処理費及び賠償施設処理費につきましては、最近の実情に今後の騰貴率を勘案して計上したのでございますが、事業量としては前年度に比べまして若干減少するものと考えております。價格調整費につきましては係る分七十五億円、今後における石炭、鉄、肥料、その他重要物資の販賣價格の急騰を抑制いたしますために必要な調整費四百四十億円を計上したのであります。鉄道、通信両特別会計の業務勘定に対する赤字の補填及び船舶運営会への補助は、いずれもさきに申述べました價格補正の方針に則りまして現行料率に比べまして、鉄道運賃は通行税を含めて三・五倍、通信料金は四倍、海上運賃は三倍の線にこれを抑制いたしまして、現状におきまして実行可能な合理化を断行して、尚不足する分を一般会計から繰入れることといたしたのでございます。鉄道通信の行政監督費繰入は、両特別会計に属していた行政又は監督の性質を有する経費をこの際一般会計の負担に移しましてこれら企業特別会計の独立採算制を徹底せしめることといたした次第でございます。地方分與金は地方財政の状況に顧みまして、赤字借入を避けしめるため必要な金額を地方公共團体に分與することといたしたのであります。公共事業費につきましては、昨年における災害その他の事情を勘案いたしまして、前年度に比し若干事業量の増加を見込み、これに價格補正による單價の増嵩を加えて計上いたしました。政府出資につきましては、復興金融金庫に対し、本年度において民間保有に属する分工金融債券の償還に必要な金額百八十億円と、その他に対するものを目途として、政府出資と合わせまして、合計百八十九億円を計上いたしました次第であります。  以上の歳出を概観いたしまするに、終戰処理費、実質上の價格調整費及び地方分與税分與金のみですでに歳出総額の五三%を占め、爾余の経費を以て戰災復旧、教育文化、保健衞生、産業経済等々施策の万端を実行せねばならんことは、物價騰貴の点を考え合せまして、財政の困難を如実に示しておるものであり、この大きな國民的苦悩について十分の御理解を願いたいと存ずる次第であります。  次に歳入につきまして御説明申上げます。以上に述べた巨額の経費を如何にして賄うかにつきましては、健全財政の原則から、財源のすべてを普通歳入によることといたしました。その大宗たる租税と專賣収入につきまして、それぞれ所要の措置を講ずると共に、その他の収入につきましても、物價等の状況に顧みまして、できる限りの努力を盡すことといたしました。專賣収入につきましては、すでに法律案を提出いたしましたが、租税についても数日中に法律案を以て御審議を煩わすつもりでございますが、その大要は次の通りでございます。  先ず租税につきましては、最近における賃銀、物價等経済諸情勢の推移に即應して國民の租税負担を調整、合理化するとともに、財政需要に対應いたしまして、収入確保することを目標として税制の全般に亘り改正を加えることといたしました。即ち租税の中枢たる所得税について、所得の変動、課税の実情等に照しまして、財政事情の許す限り負担を軽減するために、基礎控除、扶養控除及び勤労控除を相当程度引上げるとともに、税率を大幅に引下げることにいたしましたことでございます。價格の補正が勤労所得者に加える重圧に対しまして、税の減額によつてこれを緩和しようと努力いたした次第であります。又法人税につきましては、産業の振興、外貨の導入等に資する見地から、超過所得の税率を引下げ、外國法人を本邦法人なみに取扱う等の法人負担の軽減を図りました。これは勤労者の税負担の軽減と相俟ちまして、生産活動促進に役立たせるような方途を取つた次第であります。  次に物價の変動に即應いたしまして、間接税中從量課税の酒税等につきまして、相当の増徴を行うことといたしております。更に経済情勢の変動に則應いたしまして、所得税及び法人税の減収の一部を補填して、租税収入確保し、財政の基礎を堅実ならしめますために、今回新たに取引高税を創設いたしまして、各取引段階に対し、百分の一程度の課税を行うことといたしました。  今次の予算に計上いたしました租税及び印紙収入の総額は二千六百余億円に上り、租税は総歳入の三分の二を占め、決定的に重要となつておるのでございます。而もすでに國民生活が一般に相当窮迫いたしております実情に顧みまするならば、中央地方を通ずる國民の租税負担は決して軽くはないのでございまするが、租税収入確保が、財政収入の均衡を得るために不可欠の前提でございますから、この際全國民各位に対し、租税の完納につき一段の忍苦協力の程を切望する次第であります。政府といたしましても、國民所得の分布状況の変動が激しい現状におきまして、租税負担の公正を図りつつ、租税収入確保するため、徴税機構整備強化、税務の運営方法を刷新改善すること等、又特に大口利得者への課税の充実努力いたしまして、負担の適正を図るとともに、國民の納税に対する認識の普及徹底に一層の努力をいたす所存であります。    〔議長退席、副議長着席〕  次に專賣益金は九百四十三億円余でありまして、煙草專賣においては、國民生活との調和を図りつつ、財政需要の増大に即應するよう、新に自由販賣品を発賣するとともに、生産数量を増加することといたしました。又從來の定價を、最近の物價情勢に應じて引上げた次第でございます。  以上、租税及び專賣益金の外、價格補正に伴う價格差益納付金百八十八億円余と官有財産収入、財産税等収入金特別会計の受入金等、その他の普通歳入合計二百二十一億円余を計上いたしておるのであります。  以上、昭和二十三年度財政の大要について御説明申上げましたが、この機会に最近における財政経済情勢につきまして、政府の所信を申述べたいと存じます。  まず中央財政でございますが、悪性インフレーションの根源が、財政収支の不均衡に端を発することは周知の通りでありまして、健全財政はインフレーション克服のための第一の要請でございます。この意味におきまして、昭和二十二年度予算も、収支の均衡を標榜して編成され、昨年秋における予算補正に際しましても、財政需要の著しい増嵩を、すべて租税と專賣益金とを中心とする普通歳入で賄つて参りましたのでございます。然るに支出済額と収入済額との間に生ずる時間的なズレのため、昨年末におきましては、支出は千八百十五円余で、予算額の五五%に当るのでありますが、これに反して収入は五百七億円余で、予算額の二三・八%に止まり、収入は支出の約半分を満たすに過ぎない状況であります。このために財政収支の破綻が深刻に憂慮されたのでございます。その後幸にして國会を中心とする納税國民運動と、税務職員のひたむきな努力とは、國民の深い理解と相俟つて、一月以降顯著な成績を挙げ、四月末日までに、予算額千三百五十億円余を若干上廻る程度の税収を確保し得たのでありまして昭和二十二年度は、かくのごとくいたしまして、辛くも収支の均衡を保持することができました。融資規制と相俟つて、通貨の増勢は著しく抑制せられました。インフレーションの進行を阻止するのに、多大な寄與するところが少くなかつたのでございます。即ち昨年末二千百九十億円を超えました日本銀行券発行高は、その後今日に至るまで二千二百億円を上下いたしまして、物資の騰勢も鈍化を示しております。併しながら年度の途中における収入と支出との時間的ズレは、通貨増発の原因と相成りますので、本年度は予算の実行上、その時期的調整を図りまして、通貨の増発を結果することがあいよう、万全を期する決意でございます。  次に地方財政でございますが、健全財政の必要は、地方財政においても中央の財政と何ら異るところはないのでございます。而も地方財政の窮状は、國の財政における以上のものがあるのでございます。これは六・三制の経費或いは災害土木費、又自治警察の費用等々のため、歳出がいよいよ増大いたしまして、本年度は大凡そ二千億円になんなんとするに拘わりませず、その財源は大部分を地方分與税分與金、國の歳出に依存しておりまして、独立財源が貧弱なことによるのでございますが、政府はかねてから國の財政と地方財政との吻合調整の方途につきまして、鋭意研究を重ねて参りました。國費と地方費との負担区分を明確適正にすると共に、実情に即した地方税制の確立を図るため、事業税の創設、或いは入場税の地方移讓等を考慮いたしまして、別途、地方財政法及び地方税法の一部を改正する法律案を近く提出いたすつもりであります。  次に当面の金融問題につきまして、政府施策の大要を申述べたいと存じます。元來、通貨増発の原因の一半は、産業資金の需要の増大にあるのでございますから、通貨面からするインフレーション対策は、財政面と金融面との双方に亘つて行わなければなりません。政府は、財政面における健全財政主義の原則を堅持しておるのでございます。このために、昨年三月以來金融機関資金融通準則が施行され、金融機関からの貸出は、原則としてその蓄積資金を以て賄い、又いわゆる赤字金融をなさしめない方針を取りまして、信用面からする通貨膨脹を極力抑制して参つたのでございます。而して融資につきましては、経済の安定、産業復興生産増強というような見地から見まして、産業各般に亘りまして緊急度に應ずる順位を決定いたしまして、資金が当面必要な方面に、重点的に融資せられるよう規制しておるのであります。かくて過去一年余の実績は、通貨増発抑制上、相当の効果を挙げたものと存じております。  併しながら、最近におきまする徴税成績の著しい向上政府支拂の引締め等のため、一部の産業におきましては、事業資金の逼迫が訴えられ、近く行なわれる價格の補正によつて、この傾向はますますその度を加えるのではないかと懸念されておるようであります。我が國経済再建上必要な事業に対し價格補正等に伴いまして、運轉資金設備資金の正常な需要の増加による適正な資金を供給することは、生産を続行し、経済の正常な循環を確保するゆえんであると考えられますので、政府はインフレーション防圧のため、健全財政と相並んで、健全金融の原則は飽くまでも堅持しつつ、而もその運用に当りましては、実情に即して、でき得るかぎり生産増強するため、効果的な施策を取る所存でございます。すでに正規の配給物資貿易物資等の生産配給に必要な資金の供給を円滑ならしめるため、公團認証手形、配給手形、貿易手形制度を創設いたしております。又農村金融対策といたしましては、肥料、農機具、農藥等の購入代金等に対しまして、農業生産資金の供給の手段として、農業手形制度を創設いたしまして、その効果を挙げつつある次第でございます。  尚資金需要の根本的な原因が企業自体に内在する不健全性に由來するものであるならば、企業自体に立入つて健全化を行わなければなりません。さようしなければ、実質的な健全金融は成立たないのでございまして、國の企業や行政面における行政整理に並行いたしまして、民間企業についても整備合理化を図らなければならないと考えております。  金融について特に注目いたすべきことは、いわゆる復金融資であります。復興金融公庫は、我が國産業復興再建に必要な資金で、一般金融機関から融資することが困難な資金融通に当つておるのでございますが、その額は昭和二十二年中の全金融機関の貸出総額中約三分の一を占め、且つ融資先の性質上相当の赤字金融をも行なつております。而もその必要とする資金復興金融債券によつて賄われておりますが、その大部分が日本銀行の引受によつておりますので、一部には、いわゆる復金インフレの非難さえも聞くのでございますが、石炭、鉄鋼、肥料、電力等、緊急産業への資金供給は一刻もゆるがせにできない現況に顧みまして、止むを得ぬことと存じます。政府復興金融債券につきましては、できるだけ市場消化に努めますると共に、融資の改修及び使途の監査等につきましては、一段の工夫を重ねたい所存でございます。尚復興金融金庫は第五回の増資を計画中でございまして、近くこれに必要な法律案を提出いたす筈になつております。尚從來、企業はその必要とする專業資金の大部分を金融機関からの融資に求めて來たのでございますが、通貨の膨脹を避け、健全な民主的経済を確立いたすためには、今後所要資金は極力これを増資、拂込等の安定した自己資本に求めるよう、漸次切替えて行く必要を感じておるのであります。このためには、申すまでもなく、國民の証券投資に対する関心を高め、廣く國民の間に有價証券の分布を図ることが必要でございますし、從つて先に施行されました証券取引法の適切な運用等には今後一段と努力を続けたい、証券の民主化のために一層の努力を傾けて、証券の民主化、即ち安定した自己資本によつて企業が賄われる方途へ我々の努力を傾けたいと存じておる次第でございます。  以上財政資金産業資金とに亘り、資金の需要面について申述べたのでございますが、かくいたしまして放出されました通貨が直ちに還流いたしまして、これらの資金需要を満すことができれば、通貨の増発は起らない筈でございますから、今のところ必ずしもそれが還流の速度が早くないのであります。從つて資金需要に対應する貯蓄が不足な点にも亦通貨増発の一因が存するわけでございます。貯蓄増強につきましては、すでに一昨年秋以來の救國貯蓄運動が末端まで滲透いたしまして、すでに相当顯著な成績を挙げております。徴税成績の急上昇にも拘わらず、今年一月は百七十九億円、二月は九十五億円、三月は二百一億円と順調に進展して参つたのでありますが、四月には約四十億円と著しい減少を見ました点に鑑みまして、インフレーシヨン抑制のためには一層國民蓄積の増強要請されますので、本年は貯蓄目標額を三千億円とし、これが達成のため更に一段と努力をいたしたいと存じております。貯蓄増強方策としましては、先ず第一に通貨への信頼感を増すことが必要でございます。然るに今尚巷間或いは新円の再封鎖をするのではないかというような風説がございますが、政府は断じてかようなことはいたしません。通貨の信用を害するがごときことは絶対いたしませんつもりであります。尚進んで貯蓄組合の結成を促進いたしまして、貯蓄慣習を喚起し、郵便貯金を初め貯蓄成績による資金の地方還元を図り、更に郵便局に吸収いたします資金をして、できるだけ地方に還元いたしまして、地方の産業並びに財政のために使つておるのでありますが、今後も一層その地方への還元を図る等、諸般の施策を実施いたす所存でございますから、各位の一層の御協力を切望する次第でございます。  尚外資導入の点から見ましても、特に必要なことは、この際信用組織の確立であると思うのでございます。御承知通り、銀行、信託会社、保險会社等の金融機関は、一昨年來再建整備努力いたして参りまして、三月末日を以て最終処理を完了いたしました。即ち新旧勘定を合併いたしまして、いわゆる戰時補償の打切等に伴いまして生じました不良資産の清算をやつたのでございますが、更に近くそれぞれ大増資をいたしまして、企業組織の強化に努め、諸外國に劣らぬ資本構成を有する金融機関として再出発をすることに相成つておるのでございます。  外資導入と日本経済の見透し等について、一言更に申述べることをお許しを願いたいのでありますが、財政金融当面の情勢は、以上申上げました通りでございますが、終戰後第四年目の今年に入つてからの諸般の情勢は、全般的に見まして次第に好轉しつつあるものと申すことができると思うのであります。即ち納税成績の目ざましい向上を主軸として、通貨は殆んど安定的状態にあり、又物資面におきましても、供米は昨年に比べまして遙かに早く完遂されております。各方面において國民各位のひたむきな経済復興への努力は、今や漸く歩一歩とその実を結び始めたのでございます。  併しながらこのような國民努力にも拘わらず、脚下の現実を顧みまするとき、戰爭の惨禍は余りにも大きく、鉱工業生産は未だ昭和五年乃至九年の四三%に止まり、食糧その他の生活必需物資生産は七千八百万の國民の最低必要量を到底満し得ないのでございます。この基本的な欠陷が解決されない限り、経済の終局的な安定は期し得られません。そうしてこの解決は、すでに脆弱となつた國内経済基盤だけでは到底望み得べくもないのであります。ここに國際経済との関連において、即ち外資の援助と貿易の振興によつて初めて可能となつて参るのでございます。事実今日までの我が國経済は、いわゆる緊急援助費等、米國政府の予算支出による外資の援助によつて崩壊を免れて來たのでございますが、併しながら今後進んで経済復興を図るためには、政府による援助のみならず、いわゆる民間外資の導入をも図る必要があることは言うまでもありません。然るに我が國経済現状は、インフレーシヨン下にありまして、労働不安は去らず、企業の基礎は未だ整備されておらん等、民間投資にとつて採算の見通しが困難でございますし、その安全性と利潤性とを確保するには、尚甚だ未だしであります。又経済が不安定なため、爲替レートも未だ決定せられませず、國内價格は國際價格水準と遊離いたしました凸凹のままに放任されておる状態でございます。而も相当能率な経営が行われておる國内経済の状態が、貿易の振興に対して重大な妨げとなつておるのでございます。併し幸いにして緊急援助費等、相当巨額に上る米國政府の外資援助が傳えられ、ドレパー使節團の報告書を通じて、賠償の緩和、外資援助その他の日本経済的自立に対する深い関心が明らかとなり、又食糧事情が世界的に好轉しつつあると等を考え合せますとき、我々の前途に大きな光明が射しそめて來たことを認めることができると思うのであります。政府といたしましては、この機会を捉えて、國内的にもこれに即應いたしまして、再建のための施策を実施し、先ずインフレーションの進行速度をできる限り緩慢化して、外資の援助を支柱とする一應の中間的安定を実現しまして、これを本格的安定への踏台といたしまして、非能率な我が國経済を漸次国際水準に近づけ、以て爲替レートの決定、民間外資の本格的導入、貿易の振興を実現いたしたいと考えておる次第でございます。  ドレーパー使節團の報告書にも明らかな通り、この場合、綜合対策の中最も重要なことは、健全財政の確立でございます。それは單に形式的な収支均衡に止まらず、収支の時期的調整を図り、又中央、地方を通じて一貫した健全財政でなければなりません。更に金融画における健全金融と相表裏いたしまして、財政の赤字を金融面に轉嫁するごときことのない、実質的な収支の均衡を目途としなければ相成りません。これと同時に、主食その他生活必需物の供給確保を裏附けとする実質賃銀の安定によりまして、家計の赤字を克服し、又企業については、金融、資材の両面から、経営の合理化、能率化を図ることによりまして、その赤字を解消せしめるよう、不断の努力が続けられなければならないと存じております。  先に述べましたように、終戰以來の國民の尊い努力は、今や漸く効果を現わし始め、而も國際情勢の好轉が期待されるこの時こそ、我が國経済再建に又とない好機であると存じます。今こそ我々は経済安定の目標に向つて昂然と頭を擡げつつ、國内の協力態勢を整えて起ち上らなければならんと思うのであります。「われ山に向いて目を上ぐ、わが扶けはいずこより來るや」と昔イスラエルの詩人が叫びましたが、誰に頼るよりも、先ず私共は目を上げて、世界的視野に立ちつつ、みずからを助けねばなりません。我が國民経済再建は、我が國民自身の努力によつて初めて実現されるのでありまして、外國の援助のみに依存して、みずから最善を盡さないような安易なる態度では、國民経済再建のため絶対に必要な外資の導入すら期待し得なくなり、遂には國民経済を再び不安のどん底に陷らしめ、民族自立の希望は遂に達成することができずに終るでありましよう。連合國、殊に米國の好意に應える意味におきましても、我々國民はこの機会に昂然と起ち上り、一致協力して苦しきに堪えつつ、経済再建の一途に努力を傾注いたさねばならないと思うのであります。かくて國民各位の再建への意欲と、不拔の勇氣と、撓まざる努力とによりまして、不安と恐怖は一掃され、明確に前途を望みつつ、歩一歩、経済の安定がもたらされることのあまり遠くないことを私は信じて疑わない次第であります。  以上概要を申述べまして、予算案に関しては御審議を進められんことを切に願う次第でございます。(拍手
  50. 松本治一郎

    ○副議長(松本治一郎君) 次会の議事日程は決定次第広報を以て御通知いたします。本日はこれにて散会いたします。    午後四時十三分散会