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1948-04-30 第2回国会 参議院 本会議 第35号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十三年四月三十日(金曜日)    午後四時十四分開議     ━━━━━━━━━━━━━  議事日程 第三十三号   昭和二十三年四月三十日    午後三時開議  第一 自由討議(前会の続)     ━━━━━━━━━━━━━
  2. 松平恒雄

    議長松平恒雄君) 諸般の報告は御異議がなければ朗読を省略いたします。      ——————————
  3. 松平恒雄

    議長松平恒雄君) これより本日の会議を開きます。お諮りいたすことがございます。本日、森下政一君より予算委員を、下條恭兵君より財政及び金融委員を、それぞれ理由を附して辞任の申出でがございました。許可することに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 松平恒雄

    議長松平恒雄君) 御異議ないと認めます。つきましては、その補欠として、小泉秀吉君を予算委員に、伊藤修君を財政及び金融委員に指名いたします。      ——————————
  5. 松平恒雄

    議長松平恒雄君) この際日程に追加して、軽犯罪法内閣提出衆議院送付)を議題とすることに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  6. 松平恒雄

    議長松平恒雄君) 御異議ないと認めます。尚本案につきましては小数意見報告書が提出されております。先ず委員長報告を求めます。司法委員長伊藤修君。    〔伊藤修登壇拍手
  7. 伊藤修

    伊藤修君 只今上程になりました法案につきまして、委員会審議の経過並びに結果について御報告申上げます。  この法案は、御承知通り、明治四十一年現行刑法と同時に施行されましたところ警察犯處罰令に代るべき法案として提案せられた次第であります。日本警察制度の上におきまして、この旧法たる警察犯処罰令及び違警罪即決例というものが、警察国家としての弊害を多々残して参つたのでありまして、從つて憲法の施行に当りましては、この法律を一日も早く改正するり要があるために、この法案提案せられた次第であります。旧法は、明後日を以て廃止になります。故にこの法案は少くとも明日までに成立しなかつたならば、いわゆる警察犯処罰令乃至それに代るべき法律というものは存在しなくなる次第であります。故に司法委員会といたしましては、この法案に対しまして、過去におけるところ沿革並びに現情勢に鑑みまして、委員会は七回、懇談会を一回、公聴会を二日開きまして、正に慎重審議、この法案審議に当つて次第であります。  この法律内容と申しましては、非常に内容が平易に書かれておる、口語体を以て平易に書かれておるということが先ず一つの特長であり、第二には、警察犯処罰令という、警察という文字を嫌いまして、いわゆる軽、犯罪であると、刑法上における軽犯という意味ではなくして、より以上軽い犯罪であるという意味合から、軽犯罪法という国民に最も親しみ易い名称を附したという点に特長があるのであります。  又この法案内容におきまして、過去の警察犯処罰令におきましては、五十八個の処罰條項を認めておりましたのを、この軽犯罪法において採入れましたのは三十四個であります。うち五個は新設せられたものであります。又新設同様としてここに掲げられたものは三個ある次第であります。從つてその余の過去の警察犯処罰令において規定せられておつたところ犯罪事項は総てこの法案から除かれておるのであります。併しこれは單にこれを不問に附する、罪として成立しないという意味ではないのでありまして、御承知通り淫行爲に対しましては、近く法律案として單独法が提案せらるる運びになつておりますから、これはその法案に譲り、又衛生食品というような事項に対しましては、これに対するところ法案がすでに成立しておりますから、この法案において処理されておりますから、これも亦この軽犯罪法から除かれておる次第であります。又は虚偽の流説をした者、こういうような者に対しましては、新憲法下におけるところの言論の自由というところと多少疑義を生ずるので、さような意味からこれを除かれておる。かようにいたしまして、又道路関係、いわゆる交通関係に関する事項は、道路法に譲られておるというようにいたしまして、ここに旧法とその内容を異にしておる部分は、いずれも他の法律を以て賄い得るという観点からいたしまして、本法案内容は三十四に縮められておる次第であります。かような次第でありまして、この法案特長は、新らしい日本文化国を建設するために、国民生活に卑近なるところの道義を基底として規定せられておるというところに、この法案の根本の趣旨があるのであります。さような意味合からいたしまして、法律に規定するところの刑罰は、拘留又は科料と、いずれも併科することになつておるのであります。面して拘留科料に対しましては、刑法上におきまして、執行猶予制度が認められないのでありますが、本法におきましては免除することができるということを明らかにいたした次第であります。いわゆる執行猶予よりい歩進んだところの処置をも取り得ることといたしたのであります。何となれば、その対象となるところの事実は極めて軽微なもりでありますから、間違つてこの罪に触れる場合におきまして、その事情を斟酌いたしまして、執行摘予に値するような場合においては、これを免除することができるという量定を置いたのであります。要するに旧法の場合におきましては、各罪目ごとにその刑期を異にしておりましたが、例えば一日乃至十日間とか、或いは二十日間の拘留にするとかいうことにいたしておりましたが、本法においては、一律に三十四個の罪状に対して、一ケ月未満の拘留に処するということになつておるのであります。この量刑は裁判官の認定に委ねた次第であります。かようにいたしまして、新らしい制度意味におきまして、過去のごとき警察署違警罪即決という手段を行わせずいたしまして、すべてこれを裁判所にこの審判を委ねた次第でありますから、この法律の上におきましては、従つて刑期範囲も非常に擴められておる次第であります。大体以上申上げましたことが、本法案内容のあらましである次第でございます。  委員会におきましては、つとにこの法案労働運動農民運動、その他大衆運動にこれを利用せられる虞れがある、この点に論点が集中されておつた次第であります。成る程過去の警察犯処罰令というものは、御承知通り警察のすべてがこれを以て活動しておつたと断言しても憚からない状態にありたのであります。幾多犠牲者が挙げられておつたのであります。又犯罪捜査の上におきましても、御承知通り毎日検束を繰返して、そうして三十日なり、五十日なり、長きは百日に亘つておる。警察に、この法律を適用しまして捜査を継続しておつたというような事態が久しく続き、今日に至つた次第であります。さような沿革に徴し、この法律がたまたまここに提案せられることは、今日の社会情勢に照し合せまして、これが治安維持法に代るべき法案として、いわゆる代案として、これが提案せられたのではないかというような疑い、若しくは疑義あり、さような心配があるために問題はその点に集中されまして、論議せられました次第でございます。(「その通り」と呼ぶ者あり)故に委員会におきましても愼重にこれを取扱う上において、公聽会を開きまして、これが國民の輿論に問うたのであります。公聽会の結果は、皆さんにおいて御承知通り、全國から各地域、各年齢、各職業を勘案いたしまして、平均に十名を取りまして、これが公述をお願いをいたした次第であります。而してその賛否は各五名ずつにこれを採用いたしたのでありますが、公聽会の結果は、これが一名の本案賛成者で、九名の反対という結果に現われたのであります。その中には相当聽くべき意見が多々ありまして、委員会におきましては、これらの意見を勿論参酌いたしまして論議を重ねた次第であります。その他法案の各條に対するところの御質疑が多々ありました。殊に二十一号でありますが、動物に対する虐待の罪でありますが、旧法におきましては、虐待する行爲、即ち虐待の事実を、感情を法益といたして、これを処罰さしておつたのでありますが、この度は動物愛護という観点からいたしまして、動物それ自体が法益対象になりまして、苟しくも動物に対して人の目のふるるところであると否とに拘わらず、これに対し、酷使若しくは食糧を與えない場合におきましては、罪が成立するという條項が設けられた点におきまして質疑は繰返えされました。これに対しましては、政府は少くとも文化國家として立つて行く日本といたしましては、動物愛護の念をこの法案に盛り込んで、而して日本國民が、動物に対してもかくばかり愛護の念を持つておるということを表示することは、今後におけるところ日本國民の行き方として、正によいことであるというので、かような法條が設けられたというような趣旨の御答弁があつた次第であります。その他各條に亘りまして詳細なる質疑應答がありましたが、これはいずれも速記録に譲ることをお許しを願いたいと存じます。  かく質疑を終了いたしまして討論に入りました。然るに討論におきましては、先ず小川委員から修正案提案されました。これは後で小川委員から少数意見としてお述べになることと存じますから、その修正條項並びに理由は、ここに御報告申上げることを省略さして頂きたいと思うのであります。次に星野委員から修正案提案されました。これに対しましても、次に少数意見として、星野委員から詳細にその内容並びに理由の御説明があることと存じますから、私の報告は省略さして頂きたいと思うのであります。次に松村委員から修正案提案されました。即ち衆議院において修正せられましたところの、即ち第四條を次のように改める。「何人もこの法律を濫用して、國民基的人権を侵害してはならない。」と、こういうふうに改めるというのであります。衆議院院においては、御承知通りこの法律が先程申しましたごとく、他の目的に、即ち労働運動大衆運動農民運動等の阻止のために、彈圧のために利用せられることを禁止するために、少くとも抑制するために第四條というものを起しまして、そしてそこに、この法律は他の目的使つてはならないということを明らかにしたのであります。凡そ他目的というては、その範囲においてこれをどの目的であるか、何を指すかということが、少くとも後日においてこれを運用する者に対しては明確でないというので、むしろその他の目的に使用することを禁止するという趣旨は、即ち憲法においていうところ基本的人権を害する盧れのある行爲である。であるから、それを率直に基本人権云々を改めた方がよいのではないかという、こういうような御趣旨で、尚十分長い御説明がありましたが、これは速記録に譲らして頂きたいと思うのであります。  次に中村議員より修正案が提出されまして、即ち衆議院修正を改めまして、本法見出しの次に「平和文化國家國民としての日常生活における規律に違反する軽微な罪を定める目的をもつて、ここに軽犯罪法を制定する。その適用にあたつては、國民の権利を不当に侵害してはならない。その本来の目的を越えて、犯罪捜査のために濫用し、又は労働運動その他國民基本的人権を護るための合法運動を妨げてはならない。」と、こういう文字見出しの次に入れる。即ち見出しと第一條の間に入れると、こういう修正案が提出された次第であります。これは第四條に、衆議院において修正せられました文字が「他の目的」と書いてあつて、その他の目的は先程申しましたごとく何を指すかということが明確でない。故にここに例示的に、即ち労働運動とか、農民運動とか、そういう例示的の意味において、犯罪捜査又は労働運動、こういうものを例示して、そして基本人権を害してはならない。こういうふうに明らかにした方が國民も納得する。又この法を運用する者もこの法の目的、法の運用の範囲というものが明らかになる。少くとも現在の完全ならざるところ警察官素質程度においては、さような親切心があつていいのではないかと、かような趣旨において提案された次第であります。これに対しましては、後に提案者より少数意見として御説明があると存じますから、私の報告といたしましては、この程度にいたしておきます。  以上の修正案に対しまして採決をいたしましたところ小川議員提案修正案少数否決と決定いたしました。又星野議員修正案少数否決と決定いたしました。松村議員修正案もこれ亦少数否決と決定いたした次第であります。次に中村議員提案に係るところ修正案少数否決せられました次第であります。以上修正案はいずれも否決となりまして、原案に対しまして改めて採決をいたしましたところ原案通り可決すべきものと決定いたした次第であります。以上委員会報告を終ります。(拍手
  8. 松平恒雄

    議長松平恒雄君) 少数意見者から報告することを求められております。報告時間は五分間に制限いたします。小川友三君。    〔小川友三登壇
  9. 小川友三

    小川友三君 薮医者の処方箋みたような手落ちの多いこの軽犯罪法案に対しまして、眞向から小川友三反対をしておりますが、その反対した條項につきまして御説明申し上げます。  第一條の第四号の修正すべき條項は、住所不定であるというので、今までは警察犯処罰令によつて住所の不定でない確定しておる者をどんどん引つ張つたのは事実でありまして、委員長報告通り百日も或いは一年も二年も五年承引つ張られた者が沢山あるのでありまして、そうした悪用の範囲を狭ばめるために、木議員は「何人もが証明し得ない」住所不定の者、と加えなければならんということを主張したのでございます。又第一條の第九号でございますが、「相当の注意をしないで、」という一番末尾に、この法案は全部が都会地に向く法案であります。農村においてはこれに向かない。農村の宅地の前の所有者が木を植えて、松とか杉とか大きな木を植えて、そうして増産の邪魔になるようなことをやつても、これは処分しないという法律でありまして、正に藪医者処方箋であると結論付けておるのでありまして、反対をいたしております。又第一條の十四号でございますが、「公務員制止をきかずに、人声、樂器、ラジオなどの音を異常に大きく出して靜穏を害し近隣に迷惑をかけた者」、これは処罰する。これでは國会議員候補者演説をする、街頭演説することは動きが取れなくなつてしまいまして、一警察官から、國会議員街頭立候補演説或いは議会報告演説を、それをやつちやいかんと言われた場合に、我々議員は「ああそうでございますか。」「軽犯罪法はあなた方が作つた法律であるから引つ込みなさい」と言われて、赤つ恥をかいて引つ込んでしまう。そういう藪医者処方箋ていたらくの法律反対するということで、小川友三戰つて來ておる次第であります。又第一條の三十一号でございますが、「他人の業務に対して悪戯などでこれを妨害した者」の下に「又は電熱器制限外の使用により、トランスを焼失させ、停電にいたらせ、附近に迷惑をかけた者」を加える。トランスはなかなかありませんから一週間も十日間も停電が直らない。そういう不便をしておるのに、それをやつた、自分だけが電熱を余分に使つた者は、軽犯罪法処分しなくちやいかんという建前から、実はこの修正案を提出しまして敢鬪いたしたような次第であります。この法案の第一條の四号が増産をしなくちやならない、國策に副いまして鬪つておりますところの、増産勤労大衆諸君に弾圧を加えて行く最も適当な法律案であるということは、公聽会司法常任委員会で開きまして、熱心に檢討した結果、相当これは悪用される。國会議員として小川友三は、勤労大衆が多いのだ、この勤労大衆の不自由を防ぐために敢鬪しようとして、この修正案を提出しましたような次第であります。(「小川友三赤いぞ」と呼ぶ者あり)赤くとも黒くとも、そんな色にはかまわない。國民大衆を救う、最大多数の最大幸福を図るのは國会議員としての大使使であると固く信じまして、私は黄色いかも知れない、黄色人種だから、鬪爭をいたしている次第でありますので、志正しければ弑虐も不可なし、一千万人と雖も我往かんという大氣魂を持つ國会議員でありたい。かような氣持で本案に全面的に反対をいたします。(拍手
  10. 松平恒雄

    議長松平恒雄君) 星野芳樹君。    〔星野芳樹登壇拍手
  11. 星野芳樹

    星野芳樹君 先程の委員長報告にもありましたように、この法案警察犯処罰令に代るものであります。そうして警察犯処罰令幾多のこの労働運動農民運動、いやその他人権を護る運動一般人民人権擁護の立場を侵害して來たということは事實であります。そのために外部において、この軽犯罪法案に対する非常な反対機運が多かつたのでありまして、その疑いは、これを再び労働運動農民運動等にも適用するのではないかというのでありまして、ところ政府委員答弁は、これには適用しないということを再々言明せられたのであります。更に中村委員からは、特に労働運動その他國民基本的人権を護るための合法運動を妨げてはならないという、前文を入れることが提案されて、それが通過しそうな空氣にあつたのであります。それで先ずこれがそういうものに適用されたないものであるということは認めましたが、併し本案を読んで見ますと、非常に不備な点が多いのであります。一例を申上げますと、第一号に、「人が住んでおらず、且つ、看守していない邸宅、建物又は船舶の内に正当な理由がなくてひそんでいた者」と、こういう者を拘留に処するとなつております。現在引揚者に家がないのに、人が住んでおらず、看守していない邸宅というのがある。こういうものを放つて置く方が処罰されないで、ここに入つていてはいけない。それから第二号には、正当な理由なくして刄物鉄棒等を持つてはいかん。正当なる理由なくということのみあつて刄物には規定が何もないのであります。ですから正当の理由と認めれば持つてもいいと非常に矛盾したものであります。  第四号は、住居不定の項でありますが、これが従來濫用されたということは幾多の例があるので、政府委員もその悪例を認めておるのでありますが、それについていろいろな但書を附けたのでありますが、それにしても甚だ不明確で、「職業に就く意思を有せず」意思を何を以て判断するかということも分らない。  それから第六号、第七号のごときは、刑法第二百六十一條、第百二十四條などで取締つてあり、それを運用すれば十分なのに、更にこういう法案を作られるのは、目的は奈辺にあるか、疑わざるを得ないものがあります。  更に第十四号は、公務員制止をきかずに、大きい声を出してはいけない。公務員制止をきかずというので、公務員に全く権限を持たしておる。警察國家的な色彩が甚だ激しいのであります。  その他数え上げますれば、非常に不備な点があるのでありまするが、先程言つたように、政府委員も、これを大衆運動には適用しない。そうして中村委員提案が可決されそうな空氣でありましたので、これは率直に社会安寧を保つものと認めて通すとしましても、その被害を除くために、これを拘留処分に処すことを除きたいことを提案した所以であります。何故と言いますと、現在地方の刑務所を視察して参りましたが、過剰拘禁で、定員の三倍ぐらい人が入つております。そうして入りきれないので、警察留置場に委託しておるのもあるわけです。更にこの軽犯罪法拘留などするということは全く不可能であり、そうして重犯罪処分が疎かになるという結果にもなると思われるのであります。それ故にこの拘留を除くということを提案したのであります。  更に第三條に、「第一條の罪を教唆し、又は幇助した者は、正犯に準ずる。」というのがあるのであります。これは刑法第六十四條に、拘留科料等の軽い罪に対しては、教唆幇助罪は適用しないというのがあるのであります。而もこれは特に幇助教唆にも、準ずると規定したのであります。元來こういう軽い犯罪に対しては、刑法のこの教唆幇助というのは通用しないのが当然適当だと思われるのであります。而も特にこれを入れた、その目的がどこにあるかと疑われるのであります。そういう意味でこれを除く。これは拘留が最も問題になるのですから、更に第一條の罪の被疑者に対しては拘留状を発することができない。これは拘留処分にしないでも、拘留状だけで十日間の拘留をされるのがありますので、これを防ぐ意味でこういうのを入れる、こういうことを提案した次第なのであります。  ところ委員会の結果は、私の修正案も否定されましたし、又公聽会、に一回も出席されなかつた議員達が出席されて、法理論のみを述べられて、(「そうだそうだ」と呼ぶ者あり)法律は形式のみならず、社会を如何に安寧に保つべきかということを考慮されないで、中村案までも否定されたのであります。それ故に、私の提案も一層の必要を感じてここに修正動議を出したのでありますが、これが否決されたから、原案には断じて反対する次第であります。(拍手
  12. 松平恒雄

    議長松平恒雄君) 本案に対し討論通告がございます。中野重治君。    〔中野重治登壇拍手
  13. 中野重治

    中野重治君 日本共産党はかかる堕落した法案には賛成することができない。我々にとつて何が大事であるか、これは基本的人権であることは言うまでもない。日本人民は、この基本的人権を、あの大きな戰爭の犠牲を通して保障するまでに至つたのである。このことを我々は少しも忘れてはならない。この大きな犠牲拂つて己れの基本的人権を保障されるところまで我々が漕ぎ着けることができた結果、何が生じたか。人民から奪われていた生産物が、物質と精神との両面にわたつて発かれ始めた。支配官僚腐敗が、下から正され始めた。そこで如何にして旧支配権力自己の破滅を救い、又その犯罪を発かれずに済ますことができるか。彼等はそのために何によつて訴えたらよいか。彼等が災來訴えて來たところ治安維持法には廃止されており、更に最近まで値かに訴えて來ておるところ警察犯罪罰令は、廃止されざるを得ないところに来ておる。そこで彼等は、道徳仮面に訴えるという程までに堕落したのである。即ち外ならん道徳に、自己犯罪を守ろうとして訴えたのである。ここにこの法案の狡猾さ、それにも拘わらんごまかせん腐敗が見て取られる。このことは、この法案を発案した当事者がすでに認めておる。多くの重罪犯すら取締まれん現在の警察の質と量とによつて、ここに列べられておるような軽犯罪を取締り得ないことは、この参議院の労働委員会懇談会で、法務廳檢務局長自身が認めておる。即ち彼等にとつては、そういうことはもはや問題でない。問題は、ここで牙を剥かなければ己れが破滅するということである。そこで牙を道徳的に剥いたのが、この法案であると、こう我々は明らかに断定せざるを得ない。ケーベルがこういう意味のことを言つている。「人が常に道徳的に語り得るためには、その人は如何程までに道徳的に堕落していなければならんであろう!」感嘆符を付けて書いておる。これが即ちこの法案である。この法案が通過したならば、それによつて何がもたらされるか、それは、國に満ちたる犯罪腐敗とを正して行こうとする日本人民の下からの組織的行動に対する支配権力側からの一齊襲撃である。この襲撃が成功したならばどうなるか。國の腐敗は、一層進み、國に満ちておる犯罪は一層大きく充満して来る。日本共産党は、日本國民生活がこれ以上腐敗し、日本の國に満ちた満ちた犯罪がこれ以上大きくなることを黙つて見ておることは絶対にできない。我々はその意味で、かかる仮面に隠れた、それ自身犯罪的へ、法案眞向から反対するものである。(拍手
  14. 松平恒雄

    議長松平恒雄君) これにて本案に対する討論通告者は終りました。本案に対しまして中村正雄君より、成規賛成者を得て修正案が提出されております。この際、修正案についてその説明を求めます。中村正雄君。    〔中村正雄登壇拍手
  15. 中村正雄

    中村正雄君 (「しつかりやれ」)と呼ぶ者あり私は只今上程になつております軽犯罪法案に対しまして修正案を提出いたします。一應修正案を読み上げて見ます。  見出しの次に、前文として次のように加える。平和文化國家國民としての日常生活における規律に違反する軽微な罪を定める目的をもつて、ここに軽犯罪法を制定する。その適用にあたつては、國民の権利を不当に侵害してはならない。その本来の目的を越えて、犯罪捜査のために濫用し、又は労働活動その他國民基本的人権を譲るための合法運動を妨げてはならない。  第四條 削除  以下提案理由の御説明をいたします。政府提出原案に対しまして、衆議院院におきまして第四條を追加いたしております。その衆議院送付案によりますと、第四條といたしまして、「この法律の適用にあたつては、國民の権利利を不当に侵害しないように留意し、その本来の目的を逸脱して他の目的のためにこれを濫用するようなことがあつてはならない。」と、かように修正いたしております。但しこの衆議院送付原案によりまする第四條によりましてしても、その本来の目的が何であるか、又他の目的が何であるかという点かはつきりいたしておりません。従いまして、私は第四條を削除いたしまして、前文にこの法制定の理由を關明にすると共に、その運用の指針を明らかにいたしまし、國民の誤解を避けたいと、かように考えて修正案を提出いたしたわけであります。  もともとこの法案が國会に提案されるに及びまして、國民の各方面から、本法案に対しましての反対乃至は修正意見が私達司法委員の手許に山積いたしておりますことは、皆さん御承知通りであります。と申しますのは、先程委員長報告にもありましたように、本法案警察犯罪処罰令の身代わりの法案であるという点におきまして、過去における警察犯処罰令が即決例と相俟ちまして、不当に國民の権利を侵害しておつたという関係から、過去におけるこの性弊害を再び繰り返す愚をさけたいために、國民からかような声が挙つておるものと考えられます。(「そうだ」と呼ぶものあり)勿論警察制度は御承知のように改正になりました。又違警罪即決例も改正になりました。又今問題になつておりますところ労働運動なり、或いは農民運動、或いは選挙運動、宗教運動等々の國民大衆運動に対しましても、その社会通念上考えまして、その範囲内のものであるならば本法案が適用にならないということは、これは論理上明らかであります。又労働組合法によつて見ましても、その第一條によりまして刑法第三十五條が適用になります関係上、この本法案の適用外であるということは一應考えられます。併しながら私達が考えますのは、理論的に國民の権利を侵害しないようにできておる法律であつても、実際の状態がやはり國民の権利を侵害するような懸念がある場合は、これを除去しなくてはいけないという点を考えなければいけないと思うのであります。(拍手)(「インチキ法律」と呼ぶ者あり)勿論今までの警察犯処罰令でありますと、この処分警察署長の即決処分によつて行うことになつております。併しこの正式な裁判にかけられた場合は、無論私達の信頼する裁判官は公平な眼を以て裁判するのでありましようが、裁判にかかるまでのこの檢挙、これにつきまし我々は考えなければいけない。特にこの法案を見ますと、三十四個の法の中で殆んどが、「正当な理由がなくて」とか、或いは「みだりに」とか、こういう言葉を使つております。いわゆる正当な理由があるかないか、濫りにであるかどうかということの認定は、やはり警察官の認定にかかつております。而も、この認定が良いか悪いかということは、これは正規な裁判にかかつた場合、初めて判定されるものでありまして、それまでのいわゆる警察署における四十八時間、検察廳二時間の拘留という、この七十二時間の拘留ということは、これは当然警察官の判定如何によつて成り立つわけであります。又殆んど本法の罪が現行犯であります関係上、これは何人と雖も逮捕することができる。無論拘留科料に係る罪につきましては、沢山の制限がありますけれども、或いは住所不定と判定し、或いは逃亡の虞れありと判定した場合は、直ちに正規の逮捕状なくして逮捕できるわけであります。而も現在の情勢が、国民の考えが、この立案した政府の人、或いは審議しました私達のようにこれに精遇しておれば勿論でありますが、さつき申しましたように、やはり警察犯罪罰令の身代りであるということ、或いは又現在のこれを取締る警察官自体の素質その他から考えまして、この濫用虞れなしとはしない現状にあります。こういう関係から、衆議院修正におきましては不満足でありますので、第四條を削除いたしまして、前文に法の制定の趣旨を明らかにし、その運用の指針を示すという改正案を出したわけであります。皆様方の御賛成をお願いいたします。(拍手
  16. 松平恒雄

    議長松平恒雄君) これより採決に入ります。先ず中村正雄君提出の修正案を問題に供します。    〔起立者少数
  17. 松平恒雄

    議長松平恒雄君) 起立者少数と認めます。よつて修正案否決せられました。    〔「異議あり」「記名投票を以て決定せよ」「賛成」と呼ぶ者あり、(拍手)「無用」「動機は成立しておる、議長採決」と呼ぶ者あり、その他発言する者多し〕
  18. 松平恒雄

    議長松平恒雄君) 記名投票り要求には出席者を要します。    〔「五分の一ある、直ちに採決せよ」と呼ぶ者多し〕
  19. 松平恒雄

    議長松平恒雄君) 記名投要を要求することに賛成の諸君は起立を願います。    〔起立者……〕    〔「五分の一あり」「正確に勘定せよ」とよぶ者あり、その他発言する者多し〕
  20. 松平恒雄

    議長松平恒雄君) 五分の一に達しません。(拍手)これより本案全部を即ち衆議院送付案について採決いたします。本案全部を問題に供します。委員長報告の諸君の起立を請います。    〔起立者多数〕    〔「これも五分の一ないぞ」と呼ぶ者あり〕
  21. 松平恒雄

    議長松平恒雄君) 過半数と認めます。よつて本案は可決せられました。(拍手)      ——————————
  22. 松平恒雄

    議長松平恒雄君) この際日程に追加して、國家行政組織法施行までの暫定措置に関する法律案内閣提出衆議院送付)を議題とすることに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  23. 松平恒雄

    議長松平恒雄君) 御異議ないと認めます。先ず委員長報告を求めます。決算委員長下條康麿君。    〔下條康麿君登壇拍手
  24. 下條康麿

    ○下條康麿君 只今議題に上りました國家行政組織法施行までの暫定措置に関する法律案につきまして、委員会の経過並びに結果を御報告いたしたいと思います。  この法律案は現行の行政官憲法が明後日即ち五月二日限りで効力を失いますので、而してこれに代るべき行政組織に関する根本法がまだ提案の運びに至つておりませんので、暫くその築きとして行政官憲法五月三十一日まで延期して置きたいということを意味するものであります。同様の事情が経済安定本部等につきましても安定本部等につきましてもやはり有効期間を五月三十一日まで延期したいというのであります。  決算委員会におきましては、この法案が行政機構改革に関連いたしまして、いろいろの角度から論議せられたのであります。取分け今この法律案に掲げてあるような各般の法律が、いずれも規定が明白に期限を指定しておるにも拘わらず、今日までそれに代る代案ができませんということにつきましては、措置甚だ当を得ておらんというような意見が強かつたのであります。この点につきましては、政府から、実はやはり代案を作る目的を以て努力しておつたけれども、遂にそれができませんために、止むを得ずかような暫定措置を執ることになつたのである。以上が答弁であつたのであります。  尚現行法令の有効期間を五月三十一日まで一ケ月間延長いたすのでありますが、それではこの一月間に、果して行政組織に関する根本的の法令、並びにこれを関連する各官廳の関係法規が提案されて実施に至ることができるかどうかという点について、相当疑問を持つた質問があつたのであります。で、これに対しては、政府は無論これまでには作つて提案をし、その実態を見るようにいたしたいというように述べておるのであります。  かような点の外に、この法案の附則の第二項に、行政官廳の職員の定員は政令ででこれを決めるということが書かれてあるのであります。この点につきましては、たとえ暫定的措置とは申しながら、新憲法の下、かような各官廳における定員のごときものは、これを法律を以て定むべきものではないかというような意見がありまして、これに対しましても、近く提案さるべき國家行政組織法案審議につきましては、是非さような点については十分檢討して貰いたいというような意見が述べられたのであります。  その外、この法案の中に、題名の國家行政組織法ということが書いてありまするが、かような法律はまだ制定せられておりませんのであります。この点につきましては、先頃海上保安廳法案審議の場合におきまして、未だ制定しておらないような法律の題名を法案の中に掲げることは適当でないという考えに基きまして、すでにその海上保安廳法案の場合におきまして修正を見ておるのであります。同じような理由によりまして、この国家行政組織法という、まだ制定せられておりません法律の名前を掲げることにつきましては、穏当でないという見解をこの委員会で述べたのでありますが、この考えが衆議院の方に反映しまして、衆議院においてこの点については修正を加えまして、國家行政組織に関する法令云と、こういうふうに改めて参つたのであります。近來政府提案法律案中に、往々このような誤りがありますことは誠に遺憾に思うところでありまして、これにつきましては、將來眞重にして貰いたいというような意見を述べて置いたのであります。  かような経過を以ちまして、委員会におきましては、衆議院修正通り全会一致を以て可決せられたのであります。この段御報告を終ります。(拍手
  25. 松平恒雄

    議長松平恒雄君) 別に御発言もなければ……    〔小川友三君「緊急動議、参議院規則第百三十七條によりまして、五分の一……」と述ぶ〕    〔「進行々々」と呼ぶ者あり、その他発言する者多し〕
  26. 松平恒雄

    議長松平恒雄君) 別に御発言もなければこれより本案採決をいたします。本案全部を問題に供します。本案に賛成の諸君の起立を願います。    〔起立者多数〕
  27. 松平恒雄

    議長松平恒雄君) 過半数と認めます。(拍手)よつて本案は可決せられました。暫時休憩をいたします。    午後五時九分休憩      ——————————    午後六時二十四分開議
  28. 松平恒雄

    議長松平恒雄君) 休憩前に引続きこれより会議を開きます。本日はこれにて延会いたしたいと存じます。御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  29. 松平恒雄

    議長松平恒雄君) 御異議ないと認めます。次会は明五月一日午前十時より開会いたします。議事日程は決定次第公報を以て御通知いたします。本日はこれにて散会いたします。    午後六時二十五分散会