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油井賢太郎君 私は與えられました極めて短い時間の間におきまして、
國会も、亦
國民も
政府も一年間実に五百億円になんなんとする
一大損害が年々生じておることに関し、極めて
関心が薄いという点を指摘いたしまして、
一大反省を促したいと存ずるのであります。今回成立いたしましたところの
芦田内閣が、その劈頭におきまして、日本の再建は外資の導入によるところの
生産増強にありということを絶叫いたしておるのであります。而も世界各國は今回のこの
内閣に対し
終戰後における如何なる
内閣よりも大きな期待を以て見ておるのでありますが、この
内閣組織されまして大臣がここで先ず
施政方針の演説を行い、更に
参衆両院におきまして各
議員よりそれぞれの
発言が
謝つたのでありますが、私が冒頭に述べましたところの、一年間実に五百億円にもなんなんとするような、その大きな問題を取上げた
議員がなかつたということは極めて残念千万に堪えないのであります。これは
皆様方すでに御
承知の
火災の件でございますが、
火災の発生というものは実に一年間約一万五千件、その
損害が公表によりますと百十億円となつておるのであります。併しながら
官廳の発表いたしておりますところの約百十億円の計算は極めて内輪でありまして、インフレの進行中の今日、実際にそれの復活を見ます場合においては、二倍或いは三倍になんなんとするところの額が要求されておるのであります。而も表面に現われないところの
種々の
損害、或いは貴重なる
消防團員の動員その他の労力の
消費等を見まする場合に望ましては、四百億乃至五百億の
損失をみすみす煙にしておるということがはつきりと現われておるのであります。今日
内閣の
命取りが、
歴代内閣の
命取りが
予算にありというようなことが言われております。而もこの
議会におきましても例の
軍事公債利拂問題が、恐らく今回の
内閣に取つて致命的な問題となりはしないかというような話がぼつぼつあるのでありますが、この額を見ましても、僅かに一年間三十六億円、而も
種々の観点からいたしまして、実際の問題になります
金額は、僅かに十数億円に過ぎないのであります。それだけの
金額を以ていたしましても、
政府も
國民も、
議会も挙げて大問題といたしておるにも拘わらず、我々
日常生活におきまして、常に現われますところの
火災に対する
関心が極めて薄いということは、甚だ残念なる点であります。
皆様、この
一大損失を生ずる
火災が、
官公廳の大きな建物が相当昨年多く燒けておるというようなことは、甚だ以て官紀の怠慢と言わなければならないところでありまして、而も
政府みずからが或いは
大藏省を燒いたり、又
総理廳を燒失したりいたしました
関係上か知れませんが、
國民に対しましてこの
火災の予防、或いは
火災の処理というものに対し、何等見るべき手を打つておらないということが、甚だこれ亦遺憾に堪えないのでであります。
國会議員といたしましての
立場から、いろいろ取上げる問題も多々あるのでございますが、我が國におきまして
天変地異が常に多く、而もその
損害たるや実に莫大なものに上つておるということが現われておるのでありますが、
火災は
天変地異でもありません。又我々
日常生活に、ほんのちよつとした
注意で以てこれを予防することができ得るものであります。その
火災防止につきまして、我々
國会議員といたしましては、あらゆる
立場より、あらゆる場合におきまして廣く
國民に呼びかけ、又
政府に
一大反省を促すべきであると思います。皆さんも御
承知のように、我が國におきまして、現在
消防團員は約二百万人おるのでありますが、各
府縣とも
予算の
関係上、一回出勤いたしますれば僅かに五円か六円、精々十円ぐらいの支給しかいたしておらないという実情であります。而も眞面目なあの努力、勤勉なるところの
消防團員に対して、
政府は一体何を保障いたしておるものでありましようか。必要なところの資材、器具、又は
消防に使うところの地下足袋、或いは
被服等の
配給等も実に寥々たるものであります。我が
福島縣等におきまして先般
火事がございましたとき、
草鞋がけで出動した
消防夫を見たときには、私は唖然たら
ざるを得なかつたのであります。かような
状態でありまして、立派な
消防の精神を発揮したるところの実績を挙げ得ることは甚だ困難であると思うのであります。この際我々
國会議員といたしましても、あの二百万人の
團体、
敗戰後に許されましたるところの一番大きな
團体の
消防團に対して、心から協力をすべきは当然であると思うのであります。(
拍手)
若し
天災地変のごとく、この
火災が一年間に、先程申しました一万五千件、或いは山林におきまして千数百件、その
燒矢面積が実に五千万坪になんなんとするようなこういう大き事故が、五日か十日の内に若し
襲つて來たといたしたならばどういう結果を招卒するでありましようか。国民は恐らくは恐れ、戰き悲痛のどん底に陷るのが当然であると思うのであります。我々
國民といたしまして、毎日のように
火事が出るということで慢性になつておるのであります。併しながらこれが一ぺんに他の
天災地変のごとく出た場合に、どういう
混乱状態に陥るかということを考えますとき、実に慄然たら
ざるを得ないのであります。よろしく
政府も
國民も、亦我々
國会議員も、あらゆる場合におきまして、
國民に対し、この
火災の
防止ということを
眞劔に考えるように努めるべきが我々の責務であると存じまして、極めて僅かな時間でございましたが、
皆様方に対しまして
注意を喚起する次第でございます。(
拍手)