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國務大臣(岡田勢一君)
高田君の御
質問に対しましてお答えいたします。
第一に
観光事業の発展のために
輸送施設の
改善をどういうふうに
考えておるかという御
質問でございます。
高田君の仰せられました通り、
外貨獲得の重要なる一部面といたしましても、
運輸省といたしましては、この
観光事業なるものを非常に重要視しておるのであります。つきましては近く
アメリカの二大
航空会社及び
汽船会社の企画によりまして、相次いで本邦を訪れることにな
つております
アメリカ人の訪日
観光客の接遇上からいたしましても、或る程度の
外客輸送施設は急速に
整備せなければならないのでありまして、
國有鉄道におきましては、取敢えず現有施設の傳用改修によりまして緊急の需要に應じまする一方、近き將來における外人
観光客の來訪に備えまして、過般優等車増備五ヶ年
計画というものを樹立いたしまして、五年間に優等車約七百八十輛を建造することにいたしておる次第であります。勿論これは
資金資材の面から多大の掣肘を受けざるを得ないのでありまして、來年度
計画には遺憾ながら計上をいたしておりませんが、
関係方面の了解と協力を得まして、できるだけ速かにその実現を期したいと
考えております次第であります。
尚かかる
鉄道輸送施設の
整備と並行いたしまして、
外客の
誘致上重要な
港湾及び観光船の
整備につきましても目下研究中でありまして、
差当り明二十三年度におきましては、別府、宮島等四遊覧港の緊急
整備を図るために、その所要予算の確保につきまして、
関係市町と
只今種々折衝中であります。又
自動車につきましても、優秀な
車輛を提供する必要がありまして、そのためには、
外國産の優秀車の
輸入に俟つことが最も適切であると
考えられますので、目下商工省と連絡しまして、
関係筋の了解を得まして、或る程度の乗用車の
輸入を実現いたすべく
努力をしておるのであります。次に
ホテルにつきましては、これが
観光施設の
根幹をなしております
関係もありまして、当省といたしましてもその
整備に腐心いたしておるのであります。
最近における
ホテルの動向を見ますと、
戰前におきましては全國に亘
つて百十二を数えたのでありますが、戰時中に或いは戰災を被り、又は轉廃業いたしました結果、終戰時には僅かに七十二に減
つておりました。その後新設乃至復業しましたものを含めましても、僅かに八十四ヶ所にしか過ぎないのであります。而もその多くは特殊用務に当てられておりますので、來るべき日における
外客來訪の動向を
考え合せまするとき、その
整備は急速を要することにな
つておるのであります。かような
情勢に鑑みまして、当省におきましては、各
方面の意向をも参酌いたしました上、過般全國
ホテル整備計画案というものを策定いたしまして、十ケ年六次に亘りまして、全國に百三十五の
ホテルを
建設すべく
努力を傾けることといたしました次第であります。そういたしましてその内特に緊急
整備を要する全國の十一
ホテルにつきましては、公有地に國家の経費を以てこれを
建設いたしまして、
民間業者をして経営せしめる建前の下に、その所要予算額九億二千万円を明二十三年度の
一般会計に計上するよう、
建設院を通じまして
経済安定本部に要請中であります。尚
ホテルにつきましては、固定資本に極めて多額を要する
関係もありまして、特に外資の導入により緊急設備を図るべく、所要の調査研究を進めております次第であります。又他方、
ホテル事業の健全且つ急速なる発達を図るために、
ホテル事業の保護育成を主眼といたしました法案の作成についても、目下鋭意
努力中でございます。
次に海陸
輸送力の増強の
具体的方策如何という御
質問でございますが、
高田さんの言われましたごとく、
輸送力の
不足が今日
生産経済の
復興の最大の
隘路をなしておるといふ御
意見は、全くそれは私も同感でありますし、これ亦否まれない事実でございます。
國有鉄道の
関係におきましては、
昭和二十二年度における
貨物輸送は、
資材の
不足による施設、
車輛の老朽荒廃、及び労需用
物資の
不足、並びに從事員の
生活不安の問題、更にその間に発生いたしました水害、雪害等のいろいろの悪条件に禍いいたされまして、年間の
輸送量推定は約一億一千万トンでありまして、当初の
計画に対しまして九四パーセント程度の成績しか挙げておらない
状態にな
つております。本年度におきましても、これらの悪条件の緩和排除はなかなか容易ではございません。このままでは年間に一億一千五百万トン以上の
輸送量を確保いたしますことはなかなか困難であると言えるのであります。そういたしましてこの程度の
輸送力では国家
経済の
再建計画に重大な齟齬を來しますことは明らかであります。それで万難を排しまして年間一億三千万トンを
輸送いたしますことを
目標といたしまして諸種の
計画を樹立して、この
目標達成のためには
鉄道輸送を
石炭の
生産と同様に最重点産業として取扱うことを実行に移しまして、強力に各般の措置を実施するつもりであります。即ち一、諸施設の
整備充実を図り、特に
輸送用の通信設備の
機能回復及び
運轉用諸施設の
整備強化に努める。二、從事員の
生活の安定、労需用
物資の確保、職場の整理を図り、積極的に働き得る態勢を醸成する。三、所要の
資材、
石炭、電力の確保を図る。四、
石炭、鉱石等大量
貨物の
海運への轉移に努める。五、荷役、小運送力の
整備強化を図る。六、
輸送力の合理化及び経営の能率化に努める。こういうことを、今後におきまして実行に移して参る
考えであります。
それから次に、御指摘になりました旅客
輸送の問題でありますが、最近の旅客
輸送は誠に不十分なものでありまして、
高田君の御指摘になられましたような大変な迷惑を
國民におかけしておりますことは、誠に恐縮をいたしております。最近の旅客
輸送は、
戰前に比しまして約量が四倍にな
つておるのでありますが、
旅客列車の
運轉キロ数は、
戰前に比較いたしまして、僅かに五七パーセントにしか過ぎないのであります。その結果先に申上げましたように、各線の混雑が甚だしくなりまして、誠に御迷惑をかけております。
只今の
國情では
貨物輸送に重点を置かなければならないことは当然でありますが、このような旅客
輸送の姿では、
経済社会
活動に必要な
國民の動きが不均衡に抑えられておると言わなければならんのでありまして、何とかいたしまして、少しでも
旅客列車を増すように
努力いたしまして、
國民の
生産生活活動を円滑ならしめたいと
考えております次第であります。それから
自動車産業進展のためにも、あらゆる
隘路條件を克服いたしまして、諸般の施設を講じなければならないと
考えております。
燃料及びタイヤその他の諸
資材の健保につきましては、先ず極力國内で解決を図りますと共に、一方
輸入の量の増大を
只今懇請することに
努力をしております。これらの諾
方策の実現を期しまして、五ヶ年
計画を立てた次第であります。國家産業の
再建を急速に実現いたしたいと思
つておる次第であります。御指摘になりましたように、五ヶ年後に三十万輛ということでは少ないと私も
考えておりまして、この点はできるだけ大量の
車輛の
増加を実現をいたしたいと
考えておる次第であります。
その次に
海運の方でございますが
高田さんの御指摘になりましたように、
船舶の
修繕料が誠に高價に
なつおりますことは事実でありまして、大体
昭和十年頃に比較いたしまして、その値上力率は九十乃至九十五倍にな
つておるのであります。又労賃はこの間約七十倍に高騰を示しておりますにも拘わりませず、その造船所におきまする能率は甚だしく低下をしております。そこへ持
つて参りまして、鋼材或いは副
資材等の公定價格が高くな
つておりまする上に、誠に今日
資材の
獲得が困難な
状態とな
つておりまして、このために造船所におきましても、現在のような高い
修繕料を
請求せざるを得ない止むを得ない
状態にな
つておりますことは、誠に不幸でございます。それがために
海運業者の今日の経営が誠に困難に陷
つておりますのは、何とかいたしてこれを好轉せしめなければならんと
考えております。この
修繕料の低下ということにつきまして、運営会などにおきましては、最近に入札制を採用いたし、又
船舶公團におきましては、過般制定されました法律第百七十一号によるマル公及び標準賃金計算の励行による規正を図
つておりますわけであります。同時に又集中排除法及び
再建整備法によりまする企業の健全な合理化を行わしめまして、間接費の切下げを図りますと共に、或いは船價の審査
委員会を設けましてその審査に当らしめる等、
各種の
方策を講じております次第であります。
それから
燃料につきましては、これ亦誠に不自由でありまして、御承知の通り、
石炭が
海運に廻りますもの途切れがちでありまして、それがために船を無
意味に繋船させております事実が頻繁であります。これらも
石炭の増産が進んで参りますと同時に、増産が予定の通りにできません場合におきましても、運輸当局といたしましては、この
輸送の
隘路を打開いたしますために、汽船の
石炭の優先的配給を、
関係方面に対しまして強く懇請をいたしております次第であります。それから
港湾作業料、いわゆる荷役賃が高過ぎるということでありますが、
一般物價に比較いたしますと、決して
只今港湾荷役料のみが高いと言うことではないのでありまして即ち
昭和八年を一〇〇といたしますると、
一般物價におきましては九一四八という数字が出ますのでありますが、これに対しまして
港湾作業料におきましては、四五六九ということにな
つております。むしろ
港湾荷役料の方が他に比較して安いという
現状にな
つております。
次に
海運の恒久的の
復興対策如何というお尋ねに対しましては、
只今日本の
海運は、御指摘になりましたごとく、
戰前の約五分の一に
船舶が減少しておりまして、全く壊滅的打撃を蒙
つておりますわけであります。
只今重量トン数にいたしまして約百三十万トンの
船舶が運行をいたしておりますが、かようなことでは、御指摘のごとく、
日本の重要
生産を
復興いたしまする任務を達成することができないのでありまして、これは急速に新造船の建造、それから沈没船の引揚、
修繕ということを國内的に大いに
努力をいたしたいと
考えておりますが、最近新聞に現われておりまするストライク報告書を見て見まするとき、我々の
海運及び陸運の
輸送事業に対しまして、大きな曙光を望み得るというこが言えると思うのであります。承わるところによりますると、
アメリカにおきましては、戰時中に造られました汽船が余りまして、相当に繋船が殖えて來つつあるということを承わ
つております。今後私共といたしましても
関係各所と相談をいたしまして、これらの過剰船腹の大量借入れを実現いたしますと同時に、
燃料におきましても重油の轉入を大量に懇請をいたしまして、そうして急速に
海上輸送力の増強を図りたいと
考えております次第であります。かたがた似ちまして、何とかいたしまして、困難なる
現状を
高田さんを初め皆さん方の有力な御協力、御支援を受けまして、そうしてこの今日の
生産、
経済の
復興を急速に刺戟いたしますような
輸送力の増強、並びに
輸送力の完全なる
長期計画を確立したいと、鋭意
努力中でございます。以上お答え申上げます。(
拍手)