運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1948-03-25 第2回国会 参議院 本会議 第23号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十三年三月二十五日(木曜日)    午前十時四十一分開議     ━━━━━━━━━━━━━  議事日程 第二十一号   昭和二十三年三月二十五日    午前十時開議  第一 國務大臣演説に関する件(第五日)      —————・—————
  2. 松本治一郎

    ○副議長(松本治一郎君) これより本日の会議を開きます。日程第一、國務大臣演説に関する件(第五日)、昨日に引続き順次質疑を許します。中野重治君。    〔中野重治登壇拍手
  3. 中野重治

    中野重治君 日本共産党國会議員團の我々は、内閣総理大臣施政方針演説を注意深く聽いたものである。(拍手)そうしてあの演説を、個人としての芦田君に対しても、盥廻しでできた政府首班としての総理大臣に対しても、誠に似合つた演説であつたと認めるものである。日本新聞は、あれを無氣力と批評しておる。又内容貧弱と批評しておる。併し我々はこの種の批評に必ずしも與するものではない。何故かならば、我々はあれを表面は無氣力内容貧弱を裝つているけれども、独占資本人民攻撃においては氣力充満している。又日本民主主義建設に対しては、豊富な破壞的内容を持つたものと認めるからである。我々は單純な問いを幾つか出して、総理大臣その他の曖昧でない答え要求したいと思う。  第一は、政策協定の問題である。明らかなように、この政府社会党民主党その他によつて成立つている抱合せ内閣である。この抱合せの問題については、我々は片山内閣以來悩まされている。何故かと言えば、いわゆる抱合せにおいては、抱いたものと抱かれたものとの関係が曖昧になつて、(笑声)果ては位置が顛倒さえして、すべて買手に損の掛かるようにそれが組立てられているためである。ピース一箱に新生が一本つくならば、我々は必ずしも悩まない。ピースを買いに來て、新生を買いに來たかのような氣持になる。その上ピースを押し付けられたと感じるような状態に突き落されるために我々は悩むのである。芦田総理大臣は、「日本再建の道」というこのパンレツトの中で、民主党党総裁の肩書で、こう書いている。「石炭國家管理実行は、我が党立党以來政策実行し、國民に対する公約を果したものである、……この法案のいずれの箇條を見ても、社会主義政策潜在すらない、終始一貫民主党の主張を実行したものである。」こう書いてある。そこで我々は石炭國管案問題でいきまいた時の社会党、特に水谷商工大臣言葉を思い出すことができる。若し芦田総裁のこの言葉が本当であるならば、社会党は、社会主義政策潜在すらない民主党本來の政策を、社会党の面目にかけて実行したのであるか、民主党立党以來公約をば、社会主義政策実行という名前で果したのであるか。第三次農地改革はやるけれども、やらんと協定しておる。軍事公債利拂いは停止するけれども、停止をしないと協定している。このことは本來協定できない水と油とが、人民に対する独占資本攻撃のためには、すべてを捨てて、これに仕えたという以外に何か解釈の余地があるかどうか、何を中心に、具体的に如何に政策を協定したのかということについて、総理大臣の明らかな答えをお願いしたい。  第二は、外國資本輸入の問題、正確に言えば、その受入態勢の問題である。十九日の記者團会見で、内閣総理大臣三つの点に触れて、それは施政方針演説に総括されて反映されておるが、そこで外人は不動産を持てないとか、鉱山開発ができないとか、國内諸法律改正を考慮せねばなるまい、特に労働不安で、日本投資しても算盤に合わんということでは、外資が入り難いと言つておる。この問題である。それならば総理大臣は、一、かくのごとき外國人不動産を持たせるようにする肚であるか。二、外國人鉱山開発権を與えるようにする肚であるか。(「そこだ」と呼ぶ者あり)三、爭議その他のいわゆる労働不安は、働く者が生命を繋ごうとするために生じておるということを労働大臣言つてる現在、外國資本家は、日本労働者階級がこれ以上生活を切下げられ、默つて飢餓線以下に突き落されることによつて、その投資欲をそそられるような人面獸心の徒であると考えておるのか。この三点について総理大臣の答を聽きたい。第一点については、我々は特に日本の農民と共に、第二点については、特に鉱山労働者と共に、第三については、全労働人民と共に答えが明瞭であることを要求するものである。  更に続けて、次の点に答えて頂きたい。日本は近い過去に、中國に資本を入れ、中國に土地を所有し、中國の鉱山開発経営したことがある。それによつて、中國の勤労人民を極めて低い生活に引き落し、これを侮蔑して満州苦力と呼んだことがある。この侮蔑された曾ての満州苦心状態と、総理大臣もくろみ通りに、外國人による日本土地所有鉱山開発資本輸入が実現した以後における日本人民状態とは、どう違うか。違うとすれば、その違うということは何によつて保障されるか、この二点について答えて頂きたい。すべて五点であります。  第三は、総理大臣演説に呼應して生じた事業家金融資本家の動きの問題である。首相演説が喚び起こした金融資本家陣営からの意味深い山彦の問題である。首相演説した同じ日の二十日、経團連合会長石川一郎、全國銀行協会連合会長佐藤喜一郎の二人は、一、外國資本輸入のために労資の鬪爭を止めねばならん。二、株式の五割以上を外國資本に委ねることを避けてはならん。三、外國資本家「カリフオルニヤに投資するのと同じ氣持日本投資するのである」という意見を発表しておる。この意見総理大臣演説との間には、相関関係が認められるのみならず、因果関係さえも認められるかのようである。そこで我々は、総理大臣はこの意見賛成であるか反対であるか、特に日本に対する外國からの投資アメリカ合衆國内の一州に対する國内投資と同樣と見ておる意見賛成であるか、反対であるかをお尋ねする。株式問題については商工大臣にお答を願いたい。我々がこの問題を重要視するのは旧自由党総裁吉田茂君が曾てオーストラリヤの新聞記者に向つて資本主義國による日本永久管理を望むという意味のことを語つたことがある。又この参議院でも、一人の議員がこれに似た意見自由討議で述べたからである。総理大臣経團連会長等意見賛成反対か、若し反対であるならば、これと鬪う用意があるかどうか、はつきりさして貰いたい。  第四は、労働法規改正乃至改惡の問題である。これについてはすでに多くの問答が出ておるけれども、ここで本題に入る前に、私は昨日のことをちよつとお尋ねして置きたい。労働大臣は問題があつて見えていないようであるが、昨日ここで、(「見えておる」と呼ぶ者あり)見えておりますか、法規改正は行わない、運用によつてその目的を果したいという意味言葉に対して、栗山君の質問が出て、「運用によつて云々に関する問いが出たのであるが、これに対して労働大臣運用によつて云々とは言わない、されば栗山君の聽き違であろうということを言つておる。ところで参議院二十二日の板谷順助君に対する答は速記録にこう載つておる。「從つて現在の諸法規の問題は、これをどのように手を著けなくても、運用の面におきまして十分に力を注いで参りますれば、こうしたことを防ぐ上に効果を生ずるのではないかと考えます」。して見ると労働大臣の舌は中一日置いて二枚になつたのかちよつとお聽きしたい。  本論に入りますが、民主自由党板谷君への答えでも、民主党川崎君の、法規改正せよ、労働委員会法を作れという言葉に対する答えでも、法規改正する意思はない、運用によつて目的を果したいと労働大臣は事実答えておるのであるが、この答え法規改惡せよという資本家側要求に対してそうまではせずとも、運用一つ改惡したと同じ効き目が出るのでございますからと言つておるわけである。取りも直さず実地改惡である。これは事実であつて、現に政府官公廳労働者への給與支拂において、政府の押し付けたものを丸呑みにしたものと、せぬものとの間に明らかに差別を付けておる。石炭非常増産対策要綱によつても、労働組合が從属的な團体協約を、屈從的な團体協約を結んだ会社に資金を廻し、積極的な協約を結んだ会社には拒絶して廻わさぬように実地にやつておる。これ明らかに労働組合の自主的な活動に対する内政干渉であり、労働法規に対する法規違反である。詰り政府運用法規違法によつて民主党川崎君の露骨な資本家的要求を十分上廻つた実績を上げておるのである。表面法規を改めないで実績予定通りに上げておる。ここに、初めは毛嫌いするかのように見せていた民主党が、労働運動三十年だとか、左派だとか言われる加藤君を拾い上げた理由があるのである。労働活動に対する内政干渉労働法規違反運用による現実の法規改惡、これらを労働大臣は認めるか、認めぬか、認めぬとせば、その理由説明加藤労働大臣にお尋ねし、次いで民主党代表として苫米地長官にお尋ねしたいと思う。  第五は、軽犯罪法及び國家地方警察特別常備訓練部隊の問題である。軽犯罪法には、御承知のように、立小便、街路に唾を吐くことの取締項目などがあるが、これが問題である。今日我々はしばしば警官が立小便をするのを見掛けている。けれども、これを咎めようとは我々は考えない。(笑声)たとい法務廳総裁が同じことをしても必ずしも咎めんであろう思う。何故かと言えば、それはそのことの止むを得ん客観的事情が確認されるからである。このことこそ大事なのである。我々の前に出ている軽犯罪法は諸外國のそれとは全く違つている。取締の基準が全く当の警察官自身主観的判断に委ねられている。即ち警察官による人権蹂躙のための全條件が與えられているのである。これは人権蹂躙專門の道具であつたところのあの警察犯処罰令のそのままの身替りである。ただ爪が染めてあるだけである。警察犯処罰令について私が鈴木総裁に説明する必要はここではない。(「立小便はどうしてもいかん」と呼ぶ者あり)決つた家に永年住み、定まつた職業に眞面目に從つていた者が、住所不定などという官憲の認定一つで捕えられ、そのまま留置所に入られ、拷問され、そのまま治安維持法へ送り込まれ、時には死にさえ到らされた実例は無数であり、その種の一つについては私自身一友人のために、弁護士であつた鈴木総裁、あなたにお世話を願つたことがある。(拍手警察犯処罰令法令そのもの犯罪であつたのである。それ自身犯罪である法令に紅漿つけて二度の勤めをさせることを我々は許そうとは思わない。そこで鈴木総裁にお尋ねしたい。軽犯罪法案を全く引き込めることによつて犯罪的な警察犯処罰令を眞に葬ろうとする誠意はないか、これが一つ。爪が赤いだけの新警察犯処罰令は、これによつて大衆運動を前以て彈圧して置かぬ限り重犯罪、特に大口隠匿大口闇大口脱税などを取締らざるを得なくなることを惧れてのものではないか、これが二つ。労働組合運動に触れるつもりはない。懸念もあらばその旨條項とすることに反対でないとの答えが昨日すでにありましたが、それは國会の多数が組合運動大衆運動隠匿、闇などの関係から、そのような條項を入れることに反対だという見込の上に立つて國会への責任轉嫁ではなかろうか、これが三つ。若しそうでないとすれば、労組運動大衆運動に無関係であるということを冒頭において改められたものとして出し直すことこそ、発案者責任ある態度とは考えられぬか、(拍手)これが四つである。  次に、常備訓練部隊については、簡單に「國家非常事態に備えて」ということが言われておるが、この「國家非常事態とは具体的に何を指しているか、「常時交替で特別訓練」を行うというが、その「特別訓練」とは具体的にはどういう訓練であるか、又この特別部隊はどういう裝備を特つか、この部隊裝備並びに行動は、立小便……立小便は惡いです。私もそのことは認めます。立小便、唾吐きなどは対象とすると思わんが、労組運動街頭示威行進、その他の大衆運動とどういう関係を持つか、これについて苫米地長官のお答えを聽き、且つこの問題はさつきの問題に絡まつておりますから輕犯罪法の問題とも関係があり、労組運動との関係において加藤労働大臣の考えをお聽きしたいと思う。  第六は教育問題、簡單に言えば、総理大臣教育については片山内閣方針を堅持すると言つた、あの問題である。総理大臣はこの堅持すると言つた方針を全く改める氣組みをお持ちでなかろうか。(「そうだ」と呼ぶ者あり)なぜならば、片山内閣日本教育を全く破壞して來たからである。(「そうだそうだ」と呼ぶ者あり)教師に対する残虐な待遇のために、教師の数は恐ろしい程度まで減つている。將來の資格ある教師師範学校入学志望者を激減させている。中学校のうち独立の校舎を持つものを一五%にまで減らしている。森戸文部大臣が特に重要視すると、この前言つたところの、そうして、そうするのが言葉として尤もであると我々も考えるところの、あの勤労青少年のための定時制高等学校は、数百万人に対して二十万人分だけを目標としている。而もこの二十万人分は四月一日から開放する筈であるのに、その予算措置がまだ全く取られていない状態を暴露しているのである。憲法の言葉はここで反古にされている。全日制、即ち普通の高等学校へ行けんところの、貧しい、働きつつある青少年は、全く学校教育から完全に閉め出されている。即ち教育について階級的差別を極めて露骨にして來ているのである。大学專門学校生は、一方インフレ、運賃、その他のために、退学、休学に追い込まれている。曾て学問上の労作の意味で使われておつたアルバイトという言葉が、今は衣食生活そのものを続けるための肉体労働意味する言葉となつている。而もこの労働から得られるところの報酬は、一般労働者に対する低賃金のために、それよりも更に低く釘附けられておる。それから学者專門家は全く虐待されておつて、それぞれの学界に対する保護はなくなつたか、或いは切下げられている。領域によつて研究歴史の杜絶が生じている。專門学者が、その專門の報告を学界の雑誌に載せるためには、それによつて原稿料を手に入れることができる代りに、逆に手数料を出さねばならんことになつている。それから集中排除法の実施によつて、三百以上の研究所、研究機関が滅ぼされそうになつている。これは日本産業再建のための技術的基礎を滅ぼさせ、その結果、技術輸入というような社会党のいかさまの政策にすら口実を與えるまでに立至つている。  六・三制は一部に反対者を生む程までに、殆んど亡骸となつて横わるに至つた学校のための寄附は強制されておつて、例えば新潟市、又鳥取縣西伯郡富増村などにおいては、何月何日限り納付せらるべしという命令の形で役場からそれが割当られて來ておる。そうして責任者はこれらすべてについて、予算が乏しいということ一つで言いわけをして來ている。而も彼等は一握りの新國民に與えた税なし五千万円の一時金の中、その三千万円を、乏しいという文部省予算から削るという乱暴を敢てしたのである。これは削つた金額が勿論問題であるけれども、金額如何に拘わらず、事柄自身民主主義革命そのものに対する冒涜である。私はここでこれ以上言うつもりはない。総理大臣片山内閣教育方針を堅持する代りに、これを破壞して正道に戻すつもりはないか、(拍手文部大臣も亦そうするつもりはないか、大蔵大臣も亦特に予算の面でそうするつもりはないか、これをお聽きしたい。  第七は國の民主化のための極東裁判及び追放の問題である。極東裁判は御承知のように終わりに近ずきつつある。ところがここに、東條その他によつて衞戰論が現われている。バターンにおける死の行進ビルマ戰線における俘虜の虐待、これは不可抗力であつたと言う。虐待した者が不可抗力によつて弱いものを虐待したのであると、こういう議論が現われておる。戰争に勝つた者が負けた者を裁くのは理不盡であると、こういう意見が現われておる。そうしてこれらがある程度日本國民の同意を得ているかのごとき有樣を呈して、その結果この裁判に注目している諸外國人々にシヨツクを與えている。このことは逆に言えば、負けたのだからこうなつた、勝つていたならば、こうではなかつたろうという侵略主義への逆戻りコースを心理的に用意している。一方すでに処刑された者について見ると、ここに連絡調整中央事務局第三部戰争裁判課から提出された材料がありますが、アメリカ、イギリス、オーストラリア、フランス、中國、フイリツピン、オランダ、ソ同盟、こういう中央における分を除いて、ただ横浜裁判のみについて見ても、すでに死刑が四十八、無期の重労働が三十二、それから有期の重労働は合計五千百六十四年となつている。然るにこの極東裁判意味とその経過とは、國民に隠されている。これを処刑された人の家族について見れば、この人々は何となく被害者という感じを持たされている。諸外國における軍事裁判の結果と照し合せて、ここで、この極東裁判意味経過とを学校の網の目をも通して、全人民的な組織的啓蒙に移し入れる用意政府にあるかどうか、これを総理大臣及び文部大臣にお聽きしたい。  追放の問題が又同樣である。この追放の問題というのは、林、平野のいざこざとか、そういうことだけではなくて、何故追放されねばならなかつたか、何故追放せねばならんか、その結果、その行方を全國民に徹底させることである。これは、これを今までやつていないために、一方では追放をやりはしたが、これは虎を野に放すという結果になつておる。追放された者は、闇の世界では有資格者として迎えられている。この実例は沢山ある。これをやることは、この追放の問題を徹底させることは、これを大衆的に明らかにすることは、実を言えば追放された人々を眞に民主的に更正させるための正しい手引でもある。政府はこのことを裁判の問題と結び付けて大衆的に実施するつもりがあるかどうか。これをお聽きしたい。ポツダム宣言には、御承知のように、日本國民を欺き、これに世界征服に出る過ちを犯させた者の権力及び勢力を永久に取り除くということがありますが、ポツダム宣言はどこの学校にも貼られていない。然るに小学校のあるものには、例えばあの名高いブラツク・ドラゴンというあの黒龍会頭山満の書、その他これに類するものが今日尚額になつて揚げられておる。文部大臣はこのことを御承知であるか御承知でないか。御承知であるとすればそのことについて、知らんとすれば知らんことについて、どういう責任を負われるかお聽きしたい。(拍手)  次に、最後に引揚者の問題について、簡單に小さな問題をお聽きしたいと思う。これは引揚者の問題については、引揚を待ち焦がれている、困つている家族、それから引揚げては來たが、困つている状態、それから、こういう間に立つて、これを商買にしている人々、即ち引揚の問題をやかましく言つてはおるけれども、引揚が完了してしまえば自分商買が上つたりになるという人物が方々にある。こういうすべてを含めて基本的な問題が未解決のまま残されておるのであるけれども私がここで言うのは、その一部分としての問題である。一つは、引揚げて來た人々が着いた港で非常に理不盡な取調べを受けている。又場合によつては、留められてさえいるという話を聞くのであるが、これは事実であるかどうか、事実であれば、何のためにそれがなされておるか、これを止める用意があるかないか、この問題が一つ。それからもう一つは、在外胞引揚促進國協議会から共産党方々にも申し入れがありましたが、その人々要求の中に、自分たちの肉親がまだ引揚げて來ないで、その安否が氣遣われる。これを何とか安心を與えて貰う手筈を講ずるように努力して欲しいといふ意見があります。誠に尤もであると思う。そこでへ在外同胞の内、ソヴイエト同盟に滯在しておる者が数十万人ある。ここからいろいろな問題が起きておる。この問題には私は触れないけれども、金も使わず、骨も折らずに、少くとも一つ安心を與えることのできる手だてがある。それは、モスクワ放送が毎日日本語で、息子から、或いは兄弟から、何縣何郡何村何番地の何々さん、自分父おさん、兄さん、兄弟が、近い内に帰るから云々と傳えている。これが今日まで日本放送局によつて中継されていない。これは税金も掛らなければ、何にも掛らない。機械のように、スイツチをひねれば、待ち構えている親たちに聞えるのであるけれども、そのことがなされていない。政府は、これは政府の仕事でないけれども、日本放送協会に、この毎日の放送を中継して、そうしてラジオのいろいろな條件について極めて不利な状態にある日本全國の親たち兄弟のために中継をするよう、放送局に勧めるつもりがあるかないか、このことをお聽きしたい。(拍手)  以上簡單に私の質問を終わります。これの答えによつて私共は、この内閣が身体と魂とを賭けて云々というようなことが、どういう中味のものであるかを判断したいと思う。(拍手)    〔國務大臣芦田均登壇
  4. 芦田均

    國務大臣芦田均君) 中野重治君の質疑にお答えいたします。  三党政策協定は、ああでもないこうでもないという政策を並べたもので、あれではどうにも始末が付かないじやないかという意味の御結論であつたと思います。御承知通り、我が國政界の現状においては、主義政策を同じうする一つ政党議会の多数を制することができないのでありますから、その政党單独内閣を作るというよりも、むしろ勢い連立内閣政府を組織する外に行く道はないわけであります。(拍手)そういう場合に、どういう主義政策を持つた新らして政府ができ上るか。無論政党によつては、共産主義でなくては國が救えないという行き方もありましよう。或いは自由経済学説が最も適当だと考える政党もありましよう。併し我我の目前に控えておるこの経済的危機を突破するに当つて、一々各政党基本イデオロギーを論究して、甲論乙駁する時間はないと私共考えておる。從つて政府は、差当つてこの経済危機を突破するための対策の中で最も適切であり、緊急であるものを纏めて、これを以て連立内閣基本政策とする以外に行く道はないと私は信じておるのであります。そういう意味においてでき上つたのが三党政策協定でありますから、無論社会主義の一貫した政策でもないと批判せられ、或いは又修正資本主義の徹底した政策でないという批判もありましよう。批判のあることは予め覚悟いたしておりますが、只今申上げたような趣意において政策ができ上つたものと我々は考えておりますので、さよう御了承を願いたいと思います。  次に外資導入に当つて外國人にも不動産所有権を認め、鉱山開発権を認めるのかという質問でありました。この問題は、絶対に鉱山開発権を廣く開放するとか、如何なる場合にも不動産所有権を認めるとかいう、その主義上の一貫した政策を立てるよりもです。必要な場合には、或る程度不動産所有を許す場合もあり、又必要によつて鉱山開発権を認めることもあり得ると思うのです。その具体的の件については、遠からず國会の審議を求めるために法律案として提出する意向でありますが、只今具体的のことを申上げることは差控えて置きます。  その次に、石川一郎佐藤喜一郎両氏が、外資導入株式の開放、その他について意見を発表しておる。それが政府政策と頗る関連を持つように見えるが、政府方針はそれに一致しておるかどうかというお尋ねでありました。私は不幸にしてその意見を今日までまだ新聞で読んでおりません。果してこの両氏がどういう意見を発表せられたかについて承知していないのでありますから、これに批判を加えることはできないのでありますが、恐らく政府政策の中で、日本國内の各方面から賛成意見もありましよう。反対意見もありましよう。これについて一々議会で、政府は誰それの意見賛成であるが、誰の意見には反対であるというようなことを申上げる立場にいないのでありまして、できるならば、日本國民の多数が政府のこの政策に共鳴せられることを、我々としては熱望しておる次第であります。  警察の問題について、特別訓練隊を作つておるか。作るということであるが、これは何のために作るかというお話でありました。この問題はまだ具体的に何ら申上げる程度に至つていないのでありましてかような問題が具体化した場合には、必ず議会にご報告を申上げようと考えております。  引揚者の問題について、海外から本國に到着した時に、引揚者に対していろいろ取調べをしておるようだが、あれは止めたらよかろう、或いは止める意思があるかというお尋ねであります。御承知通り海外から引揚げて、來る多数の同胞について、一應その引揚者の身分、或いは海外に抑留せられるに至つたその経過等について取調べをすることは、これは必ずしもその人のために不利益を図ろうとか、警察的な眼で取調べをするという意味ではありません。政府としては、多数の引揚人々の身分、或いはその抑留されるに至つた径路を一應調べて置くことが、政府当然の義務なりとして調べるものでありまして、これを以て特高警察が眼を光らして無用の取調べをした時代と同じような意味の取調べと御解釈になることは、必ずしも当つていないと感じております。  次に極東軍事裁判の意義、並びに追放の問題について、政府はどれ程の宣傳を國民にしておるかという質問であります。無論軍事裁判は占領軍が占領下において行なつておる特別の裁判でありまして、日本政府としてはこの裁判に関與すべき限りではありません。併しながらすでに日々のラジオにおいて、或いは新聞紙において、極東軍事裁判経過は詳細に報道せられておるのでありますから、恐らく國内の多くの問題に比べてどの事件よりも國民の間に廣く周知せられておると私は感じておる。追放の問題については、政府は該当、非該当の場合、これを官報に告示し、新聞紙も多くの氏名を掲げてこれを報道いたしておるのでありまして、國民が全然知らない間にかくのごとき決定があつたとは考えておりません。  尚教育その他の部門に関し、過去の誤まつた日本の歩み方について、青少年を始め、成人教育においてもこれを十分是正するごとき方法を取ることは、無論必要なことと感じております。  尚昨日の会議において、私は止むを得ない差支のために本会議において質疑にお答えすることができなかつたことを甚だ遺憾に存じますが、栗山君及び島村君の御質問に対してこの機会に回答をいたして置きたいと思います。  栗山君の質問の第一は、政府國民の総力を結集すると言つておるに拘わらず、社会党の党首片山君、國民協同党の委員長三木君を入閣させることができなかつたのは、一層内閣を弱体にするものであつて國民の総力結集の極意に副わないではないかという御質疑であつたように伺います。両君が内閣に入られることは、私の見解によれば極めて望ましいことであつたと考えまして、極力入閣方を懇請したのであります。併し両君の考え方は、むしろみずから内閣に入らないで、党に留まつて議会運営のために協力することが、一層内閣を強固ならしむる所以であるという固い信念の下に固辞されたのでありまして、この御両者の御見解は或る意味において道理のあることとも考えた次第であります。栗山君は更に、民主党は左派を切れと言つて置きながら、今度左派が入つたではないか、それは一体政治的に見てどういう間違つた考えからそういうことをしたかという質疑であります。この点については、すでに数日前、本議場において自由党の御質問に私より答弁をいたしました。それ以上附加えることはありませんから、速記録によつて御了承願います。  島村君の御質疑は、修正資本主義と勤労尊重、社会連帶、國民協同の理念との関連如何、こういう質疑であります。この問題は詳しく考えを申上げると際限のないことであります。又この席上において学者の学理論を私から申述べることは甚だ当を得ないと存じますが、併し修正資本主義の考え方については相当各方面の質疑もあり。又世間必ずしもこれを十分に了解してはいないと考えますから、極く短時間を拜借して、一通りの考え方をお答えいたして置きたいと思います。(拍手)  御承知通り二十世紀以來二つの大戰争が行われた。この戰争は近代文明の根柢に遡る一つの革命とも言うべきものであつたと思う。二回に亘る世界対戰の本質ほどういうことであるか。それは十九世紀において支配的であつた三つの観念、即ち自由主義的な民主主義と、民族自決主義と、自由経済学説とに対する革命とも言ふべき一つの危機であつた。この変革に伴つて生れて來た新しい考え方は、どういう形において行われたか。無論一面においては、ソヴイエト連邦を生んだ共産主義、或いは國際連盟を生んだ國際協調主義、いろいろありましよう。併し経済的に現われた新らしい思想としては、十九世紀の資本主義的な経済組織の発展に伴つて生れて來た富の支配力、この富の支配力を抑制して、貧富の懸隔、不平等を矯正する。そうして又産業に從事するそのすべてに平等の立場を與えて、その協力によつて社会経済の運営を図ろうということが、世界大戰後に現われた経済的の新らしい一つの思想であると思うのです。これを敷衍して申しますならば、個人の福祉ということを社会全体の問題として考える。経済活動目的は、單に量的なる富ということではなくて、質的の人類の福祉というものが活動目的である。生産者本位の考え方から消費者の地位を尊重するという思想に傾いて來ておる。それが今日の新らしき民主主義の内容であると考えるのであります。そういう考え方を基礎にして、修正資本主義と勤労尊重主義との関係、社金連帶思想、國民協同の理念、一脈相通ずる一つの基礎からでき上つておる考え方であると私共は信じておる次第であります。これだけお答えをして私の回答といたします。    〔國務大臣水谷長三郎君登壇
  5. 水谷長三郎

    國務大臣(水谷長三郎君) 中野議員の外資導入に関する御質問にお答えいたします。  外資導入につきましては、基本的には政府政府、若しくはその斡旋による外資導入を要請いたしますと、日本経済の回復速度を早め、且つ國際的協調の線に沿い得るためには、外國よりの民間外資導入も亦望ましいところであると考えております。外資導入の一般的な原則は、我が國経済の現状に鑑みまして、外資導入が直接物資の輸入を伴うものであることが望ましいのでございまして、その物資輸入の順位は、我が國経済再建計画に基く緊要度に應じまして決定されるべきものであると考えております。将來國際経済交流に参加するに当りまして、負担は必ずこれを返済する建前を堅持いたしまして、國際信用を回復するため、合理的な返済計画に照しまして、その質及び量につき選択したいと考えております。更に導入を希望する外資は、日本の生産力復興に寄與すべき緊要事業の生産設備、及び技術、資材、原料、動力用資材の輸入目的とするものを優先させ、消費財の生産を目的とする生産資材の輸入は、生産品の大部分が再び輸出されるものを優先的に考えたいと思つております。更に、從いまして國内企業体制の再編成が未だ完了せないに際しまして、株式、生産施設等の大口買入によりまして、我が國産業の支配を結果するがごときもの、投機的な目的を有すると認められるようなもの、日本におきまして差当り設備技術等に関して援助を要しない産業部面に対するもの、この際不可欠でない消費物資の國内向け供給、國内市場のみを目標とする事業活動に関するもの等は、原則として外資導入を望ましくないものと考えている次第でございます。政府は以上のような方針を以ちまして外資導入に対処せんとしているのでございまして、これによりまして日本経済の再建を促進し、國内労働者により多くの就職の機会を與えんとするものでありまして、労働者階級を餓死線上に追込み、又は日本民族を奴隷的立場に置くがごときことは、政府としては嚴に戒心すべきものであると考えている次第であります。(拍手)    〔國務大臣加藤勘十君登壇
  6. 加藤勘十

    國務大臣加藤勘十君) 只今の中野君の御質問にお答えをいたします。その前に、昨日の私の栗山君の質疑に対する言葉を捉えて、何か私が二枚舌を使つたというような意味のことを言われましたが、昨日もお聽きの通り栗山君の質疑の要点は、先日板谷君にお答えいたしました私の言葉の中に、運用によつて改惡するがごとき意味のことが聽き取られたが、そうかという点にありましたので、そういう改惡する意思はないという立場からお答えしたのであつて、若しも私の答弁の中に改惡意味するがごときことが聽き取られたとするならば、それは栗山君の聽き違いである。はつきりこう申上げたのでありまして、それ以外に何もありません。(「全体が改惡だよ」と呼ぶ者あり)  それから労働法規改惡はやらないと言つておるが、例えば、この議会を通過した政府職員に対する俸給等に関する法律案のごときは、実質的に改惡意味するものではないか、こういう御質問のようでありましたが、これは全く今度の臨時給與を支拂うについての手続き上の事柄を規定したものに過ぎないのでありまして、断じて労働者の権利を抑制したり、或いは労働者の待遇を改惡したりするという意味のものは含まれておりません。このことは予算委員会なり財政金融委員会なりにおいて十分御説明申上げたことによつて御了承を願いたいと存じます。(拍手)  又軽犯罪法の問題につきまして、昨日本議場における鈴木法務総裁の答弁の中に、この法律労働運動には適用しないという答弁があり、更にそうした意味のことを附加える必要があれば附加えてもいいと答えておるが、それならばむしろ法案を作成し直して出したならばどうか、こういう御趣旨のようでありましたが、私はこの点に対し、こうした種類の法律が過去において社会運動に、例えば暴力行爲取締令というようなものが立法の当時においては社会運動等に用いられないという説明が加えられたにも拘わらず、一たび法律となつた場合にはこれが適用を受けた具体的な実例を知つておりますから、(拍手)こうした問題は、これが暴力行爲取締令などとは本質的に違つた性質のものであることは言うまでもありませんけれども、苟くも労働運動等に適用される虞れがありとするならば、そういう虞れをなくすることを明白にする必要があるということは、かねがね主張しておる点であります。從つて鈴木総裁が昨日本議場において答弁されましたる通り、そうしたことが明白になるならば、殊更に作成し直す必要はないと考えております。(拍手)    〔國務大臣苫米地義三君登壇拍手
  7. 苫米地義三

    國務大臣(苫米地義三君) 労働法規改正問題につきましては、主管大臣たる加藤労働大臣の答弁と全く同樣でございます。又軽犯罪法につきましては、昨日鈴木総裁並びに只今加藤労働大臣からお答えを申上げたものと同じでございまするから、私の答弁をこれで終ります。(拍手)    〔國務大臣鈴木義男君登壇
  8. 鈴木義男

    國務大臣(鈴木義男君) 中野君の御質問にお答えをいたします。  労働運動に從事せられた諸君並びに共産党の諸君などは、余の警察犯処罰令等の惡用によつて酷い目にお遭いになつておられるために、新らしい時代になつても尚不必要な幻影に怖えておられる嫌いがありはしないかと思うのであります。(「失言々々」と呼ぶ者あり)旧憲法時代は御承知のように、基本的人権の保障というものはなかつたのであります。從つてああいう法律の濫用が行われたのでありまして、その事実は私の最もよく存じておるところであります。故に今日以後断じてかくのごときことのないことを祈るものでありまして、新憲法施行後は御承知のごとく、基本的人権を侵害することは直ちに涜職罪であります。從つてそういう事実がありまするならば、いつでも法務廳には人権擁護局というものがありまするから、ここに御通告になりまするならば、直ちに機宜の処置を採るのでありまするし、上程せられておる人身保護法というようなものもあり、いわゆる盥廻しというようなことは、今日以後断じて行い得ないものであるということを御了承願いたいのであります。從つて特別の規定を必要としないのでありまするが、それでも尚安心ができないというならば、必要がないが念のため書き添えてもよかろうということを申上げたのでありまして、軽犯罪法はいわば我々の卑近な日常生活の道徳律に違反する行爲の取締を規定したものでありまして別に労働組合運動乃至大衆運動の鎮圧というようなことを夢想だもしておらないのであります。又そういう目的のために利用されるというようなことは考えられないのであります。労働組合運動につきましては御承知のように労組合法第一條第二項の規定がありまして、正当な限界内の行爲は罪とならないことを明記してありまするので、仮にそういう行爲が形式上軽犯罪法の罰條に該当するようなことがありましても、決して犯罪を構成しないのであります。又その他の大衆運動につきましても、そこに社会通念上おのずから正当視せられる範囲がある筈でありまして、その範囲内のものは特に別段の明文がありませんでも、当然違法性を欠くわけでありまするから、これ又処罰されることはないのであります。而も大切な点はこれらの犯罪の成否、罪になるかならんかということの判断は、從來のように警察署長が即決処分でやるというようなことは許されないのでありまして、必ず裁判所において、簡易裁判所においてこれを決するのでありまするから、その濫用の懸念ということも万ないと信ずるのであります。そうして昨日も申上げましたように、軽犯罪法のような罰則法規世界各國いずれの國にも殆んど例外なくあるのでありまして、我が國においても最小限度においてあすこに規定した程度の社会秩序を紊すものを取締る規定はどうしても必要である、こう考えまして提案をいたした次第でありまして、労働運動等がこれによつて彈圧されるようなことは毛頭もないということを、よく一つ御了承を願いたいのであります。  追放の問題につきまして、追放の意義を明らかにし、又追放せられたる者の行爲等を十分に取締るべきではないかという御趣旨の御質問がありましたが、それはその通りでありまして、十分その点につきましては追放の意義を國民に理解せしむることに努力し、同時に追放せられたる者が不当に政治等に影響を與うるがごとき活動をせざるように、法務廳特別審査局におきまし嚴重に監視いたしておる次第であります。(拍手)    〔國務大臣森戸辰男君登壇
  9. 森戸辰男

    國務大臣(森戸辰男君) 中野君の御質問にお答えいたします。  第一の点は、芦田内閣片山内閣教育方針を堅持しておるか、片山内閣教育施策は教育破壞したのではないか、これを改むべきではないかという意味の御質問でありました。片山内閣当時から、この度も文教の任にありまする私といたしまして、総理も勿論同意見でございますが、私共は片山内閣より探り來つた教育方針を堅持いたしたいと存じております。それは教育の基本になつておりまする刷新の中心は、教育方針を根本的に変革いたしたのでありまして、この点在來の教育教育勅語によつてつたものを、新憲法の精神に基くものといたしたという点であります。実際の制度の上には教育民主化を徹底いたしたのであります。教育民主化は、一つ教育権の独立であります。一つ教育の地方分権であります。他の一つ教育の機会均等であります。教育の機会均等の面は学校教育法に盛られた六・三の制度によつて実現されつつあるのでありまして、この大綱は吉田内閣以來むしろ日本政府國民と連合國に公約いたした教育方針でありまして、私共は現内閣又これを堅持し、徹底いたさなければならんと存じております。恐らく教育破壞ということをおつしやられた理由は、教育の経済面においていろいろ不十分なところがあつて教育が十分に行われる障害になつておる部面があるのではないか、という御趣旨と私は存じます。この点につきましては多くの遺憾の点もあるのでございまするが、むしろ教育を破壞したものは戰争の與えた物質的な惨禍と精神的な荒廃と、時代の変革における思想の混乱とが、今日の教育を幾多の面において破壞しつつあるのでありますが、片山内閣又現内閣の採ろうとしておる教育政策は、この精神的物質的な逆條件の下に、如何にして日本教育を徹底し、擁護して行こうかという任務を持つておるのでありまして、むしろ私は教育を破壞しておるのではなくして、外的の條件から破壞しつつあるところの教育を、窮乏の日本國民と、そうして資源の許す力を集めて守つて行く、育てて行くという任務を持つておると思いますので、この点私は前内閣以來の教育政策を徹底いたすことが任務であると存じております。  それから続いて定時制高等学校の問題で、これは働く青年のための教育は、義務教育に続く高等学校が本年四月から行われるが、これを十分にやらなければならんという御趣旨で私も誠に賛成でございます。從來は國民学校を出ますと、二割内外の者しかしの学校に行かれなかつた、今度もそういうことになることは遺憾でございますので、こういう人に勉強できる機会を制度としても與えて行きたいと思つておるのが定時制高等学校でございまして、この学校予算にも考えられておるのでありますが、その数字等はやや誤解があるようであります。私共の考えておりまするところでは、一郡、一市又は区に一校ずつ本校を設け、又三つの分校を置くことによりまして、本校は約八百五十、分校は二千四百くらいを目当にいたしております。生徒の数は大体六十一万くらい、先生の数二万五千ということを目当といたしまして、それに近いものが実現されるように努力いたしておるのであります。尚これらの外に、これらの普通の全日制学校でも夜学を開いて、晝働いて夜勉強できるように、今度は中学に止まりますが、高等学校にも通信教授の途も開きたいと存じております。  次には学徒の生活の困窮のお話でございまして、誠に私共も同感でございまして、文部省の昨年の六月に調べたところによりますと、大学高專その他で約一割七分の学徒が就職をしておる。又一割八分の学徒は就職を希望しておるが就職ができなかつたという報告を得ております。殊に大学では就職をしておる者が三割、就職を求めて得ない者が五割一分というので、八割が就職を希望し又は就職をしておるという状態にありますので、或いは今日では学徒の半分くらいが何らかの形で働いて学資を得なければならんような状態にあるのではないかと思われるのであります。私共も中野君と一緒に大きな関心を持つておるのであります。この点では、育英会の費用を増しまして、これらの人々に学資を貸與いたし、又学徒援護の部局がございますが、この方でも一層の努力をいたし、又学生、学校の側でも自治会等の仕方で、この窮状にある高等の学校の生徒が何とかして学業を終えることができるように、皆さんと共に努力いたしたいと存じております。  尚学者並びに專門家の生活が非常に惡くて、新らしい日本では技術科学の発展が大切なのに、これが邪魔になつておるではないかという御質問であります。これも誠に御同感であります。大学の先生の給料も誠に僅かでありまして、十分にその生活をすら支えることができないような事情の方々もあり、これで十分な研究をして頂くことについては、誠にお氣の毒に存じておるのであります。又私の研究所におきましても、インフレの結果、持つておる資金がその價値が減じまして、十分に研究ができないという所もあり、又営利会社関係の研究所におきましては、ご指摘のように集中排除の影響を蒙むるところも少くないという事態でありまして、私共は新らしい日本の文化國家を目指すという建前からも、何とかしてこれらの学者專門家、研究所が立つて行けるようにいろいろと心配をいたしておるのでありますが、他面、日本の財政の事情が十分にその要求を充たして差上げることができないことを遺憾といたしますけれども、併し研究所その他の学術の補助と、又大学その他の教授の研究費等についても考慮を拂いまして、この窮乏の日本が許す限りの科学技術の擁護に力を注ぎたいと存じております。  尚六・三制の問願についての御質問がございました。これも誠に御同感でありまして、日本國民生活を切詰めても六・三制を完遂したいという熱意を以て、國家と地方と、先生と生徒と父兄とが協力いたしてやつておるので、私共、父兄の方々からの御協力も仰がなければならんと存じております。けれども他面、不当に多額なものを強制的な寄附というような形で行われることは、義務教育の面から言つて極めて遺憾なことであると存じておりまして、私共はそういうことにならないようにと、しばしば通達をいたしておるのであります。ご指摘のようなことがありまするならば、更に注意を加えて行きたいと存じております。  尚東京裁判並びに追放についてのことは、総理並びに鈴木法務廳総裁からお答えをいたしたのでありまするが、教育関係いたします者といたしましても誠に御同感でありまして、私共はポツダム宣言の精神に從つて、軍國主義と極端な國家主義の思想を学校並びに一般の社会におきましても一掃いたさなければならず、これに代えて私共は平和主義と民主主義國民の間に徹底いたさなければならんのでありまして、この方向に全力を盡しておるのであります。尚学校ポツダム宣言その他が記されていないという御注意がありましたが、これは日本の新教育の根本をなしまするもの教育基本法でございまして、教育基本法は実はポツダム宣言に基いており、新らしい憲法を以てその精神といたしておりますので、日本教育自身が実はポツダム宣言の精神を取入れた平和主義と民主主義に基いたことを基本といたすのでありまして、実はこれらの條項を一々学校に掲げないでも、学校そのものが、新らしい制度そのものがこれに基いておることを御了承願いたいと思うのであります。(拍手)尚地方によつて遺憾なものが掲げてあるというようなお話もありましたが、私はそれは存じておりません。併しよしんば片々なるものがありましても、新らしい日本教育の大きな流れは、これらの片々たるものを押し流して、新らしい教育に進んで行くことを私は確信しておる次第でございます。(拍手)    〔國務大臣北村徳太郎君登壇拍手
  10. 北村徳太郎

    國務大臣(北村徳太郎君) 中野議員にお答え申上げます。  教育に関する基本的な考え方並びに態度につきましては、只今文部大臣の答弁の通りでありまして、私も教育に対しては同樣の考えを持つております。この教育と財政との関係でございまするが、これは何と申しましても、教育を尊重し、或いは文化を愛好すると申しましても、今の日本において、甚だしい窮乏と、矛盾とそれからそれによる苦悶とが実は集約的に日本財政の上に現われておる、こういう現状であるということは、これは一應御理解を願いまして、かかる條件の下において、なし得る限りのことを教育のためにいたしたい、かように考えておる次第であります。(拍手
  11. 松本治一郎

    ○副議長(松本治一郎君) 奥むめお君。    〔栗山良夫君発言の許可を求む〕
  12. 松本治一郎

    ○副議長(松本治一郎君) 奥むめお君。    〔奥むめお君登壇拍手
  13. 奥むめお

    ○奥むめお君 もうすでにそれぞれの立場から御質問の出た後でございますので、私は重点的に、國民の中でも特に婦人として聽きたい問題を取上げたいと思うのでございます。  第一には経済安定の具体策についてでありますが、政府が述べられましたインフレ対策は、今までもとの内閣でもこれを取上げて來ておるので、いわば一つの公式に過ぎないのであります。果してどれだけ有効な具体性を持つておるかどうか。今日國中に高まつておりますあの労働攻勢の火の手もインフレ対策、つまり経済安定の強力な実行なしには、解決がされないと思われるのでありますが、それにしましても政府は、本当にこれならば大丈夫だ、経済の安定、延いては國民生活の安定、生産の増進ができるという確乎たる具体的な政策をここにお示しを願いたいのであります。私共は経済問題につきましては、ほんの素人の一家庭婦人に過ぎませんけれども、この素人の私共さえも今日の國家の経済、産業界の情勢は憂えられることが沢山あるのでございます。中でも政府の厖大な支出がインフレを促進して、世間では財政インフレと言うておるくらいであります。現に去年の一月から今年の二月までの、政府日本銀行からする貸上金と日銀手持の証券は、凡そ同期間の日銀券発行増加高と比べますと、同じような数字を示しておるのであります。これは私共國民が現在食う物も買うことができない、中学校や女学校に上つておる子供も学校を止めさせるくらいにして、又学校では教科書やノートにも不自由しておるという、この窮乏の中で、國家財政だけが相変らずの予算編成方針を続けまして、そしてその歳入といいましたならば、その大部分を國民の税金によらなければならない。歳出面に根本的な大鉈を揮おうとしていない。こういうことを考えましても、行政整理は緊急に行わなければならんということを痛感するのであります。又物價と賃金收入の釣合というものが欠けております。こういう問題も私共に取りましては、今日の場合、経済の安定方策というものを立てることが、一番の根本問題だと考えられるのであります。幾度新給與水準が高められましても、それは所詮インフレ克服にはならず、インフレは繰返し促進する結果になるばかりだと思われます。総理は資本の蓄積を唱えておられるのでありますけれど、今日のように貨幣價値を信ずることができないような状態にある時に、國民安心して貯金をすることができるでしようか。この貨幣價値を安定させるということが第一の急務であると思いますが、それにつけても、今こそ安定價値計算制スライド制の急速な実施を考えて見る時じやないかと私は考える。併し昨二十二日の衆議院の本会議に淺沼稻次郎氏がこの問題について御質問になりましたが、経済安定本部長官は、今の日本状態ではこの制度は実現困難な点がある。或いは不適当と思うので採用する考えはないと答弁しておられるのであります。私はどの点が実現困難であるか、何故日本にこれが今不適当なのかということを具体的にお示しを願いたいのであります。  第二に、主として消費者の立場から政府に伺いたいのであります。先ず魚、野菜等の生鮮食料品、炭、薪その他現実に非常に不自由をしておるのをどう見られるか、実情を無視した役人の統制の不手際が、あらゆる方面に禍いをいたしまして、私たちの台所にはさつぱり物が廻つておらないのであります。長官は、生鮮食料品の現行統制を改正するということを言明しておられますが、何をどのように改正するおつもりかを伺いたい。燃料の不足は、今日では殆んど生活を脅かすところまで來ておるのでありますけれども、せめて山元に滯貨されておるものを、私共の台所まで廻して貰う必要が大変痛感されるのでありますが、それも輸送の陸路だけではなしに、統制の枠が妨げておると聞いておるのであります。纖維品に至りましては、商工省の発表にも拘わらず年度未に近い今日にも、尚殆んど配給らしい配給を受けていないのでありますけれども、その一面に、先頃片山内閣の命取りとなつたところの、あの〇・八ケ月分の給與の財源に取上げられた輸出メリヤス・シヤツの千八百万着という、あの大量のローズ物を出してあるのであります。これを政府はどう責任を取ろうとしておられるか、そんなものがあるのだつたら、何故國民にこの不自由をさせておるのか、そのシヤッは、今どこに置かれておるのか、又最近砂糖の代替配給が行われまして、三日分の砂糖でありますが、これは主食に代賛して配給された砂糖を以て國民に腹の足しにこれを食べよと、こう解釈するより外ないのですけれども、或いはこれを闇で賣つて米を買つて食べろというのであるか、(拍手)どちらにしても、絶対に反対であります。今後尚砂糖がどの程度輸入が見込まれておるのか、又主婦は今後いつまで主食代替の砂糖を受取らなければならないのか、この見通しを聽きたいと思います。人工栄養兒のミルクの問題でありますが、乳のない赤ちやん一人が、配給量の人工栄養を貰つておるとしても、尚不足なるものを買うためには、闇買いをするためには、一ケ月に二千円は要るというのであります。一ケ月二千円を一人の赤ちやんのために出すことのできる家庭なんというものは極めて稀れであるとするならば、その多くの赤ちやんはどんな栄養を取つておるか、ストライキもできないし、デモをすることもできない赤ちやんのために問うのは私たちの責任であります。(拍手政府はこの人工栄養兒の食糧に対しまして、如可なる將來の見通しと、そうして現状にあるかということを伺わなければならないのであります。こういう問題を輸入関係とか、或いは放出関係とかに言い遁れをして無責任答えられるということを、私はここで予めお断りして置きたいと思うのであります。  尚二十四日の答弁で大藏大臣は、多くの困窮者を救うために社会保障制度の制定によつて、こういうことを言われております。勿論藏相のお言葉のように、我が國の國家財政の許す範囲でという制限が附くことは言うまでもないでありましようが、聞くところによりますと、社会保障制度というのは非常に財源を食いまするところから、当分実現の見込は薄いというのであります。若しこれの実現が延びるといたしましたならば、それに代る急速の手を打つて、沢山の困窮者、不幸な人々を救う途を図ることは、憲法第二十五條で國民の健康にして文化的な最低生活を保障すると明らかにしております。國家の立場を考えましても責任があると言わねばなりません。今生活保護費を見ますと、五人家族一ケ月の保護費が千五百円というのであります。誰が千五百円で五人の家族生活安定できると信じますか。絶対にそれはできていない。ほんの言いわけだけの生活保護費になつておるのであります。若くして夫を失つて、まだ頑是ない子供を抱えて働きにくいいわゆる未亡人も決して少くないのでありますが、これらの者も保護することなしにはその生計を立てることができないのでありますけれども、婦人のための職業補導所というものは今まだ取るに足らない状態に置かれてあるので、どうしても保護費を増額しなければ生活は成立たないのであります。(拍手)  又社会事業の諾施設に対しまして考えますのに、戰災で失われたものもまだ半分は復旧をされていない有樣であります。これらに対しまして施設費を大幅に引上げて補助するということがなかつたならば、急いで復旧させるということができないのであります。又多くの社会事業家が訴えておりますように、現在救護を受けなければならない人や、又子供を預かつて貰わなければ働けない人や、或いはいろいろな不幸な事情で社会的な公の保護機関を利用せざるを得ない人が非常に多い今日、その施設に働いて献身的に日夜苦労いたしております職員たちが、どんなに薄給で過労の中に置かれておるかということは誠に酷いものがあるのであります。これらに対しまして、その過労と薄給を救うて、この人たちの生活の上にも、國民に保障されておるところの文化とそして幸福な明るい生活を保障するためには、社会事業施設に対する事務費の大幅値上げということも当然起つて来るのであります。(「同感」と呼ぶ者あり)(拍手)私共は生活保護費の大幅値上げと、又これを渡しますときの保護手続の迅速化、簡素化ということを痛感するのでありますが、これらに対する対策を伺いたい。  最後に対長官は地域及び職域に生活協同組合の積極的な活動を助成すると言われました。生活費の切下げのために、又闇撲滅のために、又流通秩序の民主的な形成のためにも、生活協同組合を政府の立場から、殊に経済安定本部長官の立場から取上げて頂いたことは、感謝に堪えないところであります。前の長官の発表を見ましても、闇買いが八割、マル公買いが二割という生活のやり繰りは、今も尚続いておるのでありまして、長い間の笥生活國民はもう殆ど賣るべき皮さえも失つておる。この中で主婦は枯渇した購買力とやり繰りに疲れ果てておるのであります。今のようなままでいますならば、女の生活は、民法の改正も、婦人参政権も、文化も、教育も、それどころではないというより外なく、勢い家庭の崩壞ということはこれは避けられないところとなるのであります。私共はこの家庭生活の荒廃という問題につきましては、打つちやられております可哀想な子供の問題を母親の立場から大いに取止げなければならないと思うのでありますが、時間の関係から今日は主として消費生活の面から申上げたいと思うのであります。一日も早く、失われた婦人の生活を返せという家庭婦人の叫びは、生活協同組合に通ずるものにしなければならないのであります。  配給の登録を集めますために、魚屋は一票について五十円渡した。衣料の登録を集めますために一票について人絹の風呂敷を一枚渡した。こんなことがいろいろ傳えられ、パンの組合に渡されたズルチンや、バターがパンの中には入れられないで、裏から横え流されてしまつたという、新時代の商人道のモラルを捨てて顧みない不徳義な人がいつまでも絶えないのは、誠に残念なことでありますけれども、(拍手)併し商業者と雖も惡い人ばかりあるのではなく、中には非常に立派な、又親切な人も少くないのであります。これらが生活協同組合の発展に伴いまして必然生活を脅かされるかも知れない。脅かされるに至るであろうと言わねばなりません。又生活協同組合運動が起つて参りましたならば、必ず業者の側から反対運動が起ると見なければならないのでありますが、これらに対して長官は如何なる対策を以て、どうやつていらつしやるつもりか伺いたい。(「安本長官どうした」と呼ぶ者あり)敗戰後の生活の不安と物資不足をみずからの組織で救うために、今全國的に生活協同組合は澤山結成されつつありますけれども、何分にもまだ法的根拠を持つていないものですから、事業をやつて行きます上にも金融の面にも差支える所が非常に多いのであります。ただに我々の生活に欠くことのできない食べ物や着物類の協同購入や配給をするばかりでなく、生活協同組合は今日では私共の生活物資、文化資材、又託兒所とか、共同炊事場とか、娯樂場とか、或いは協同作業場とか、いろいろこの生活万般に関係のあるものを持つて行こうとして、又現にそれをやつておるのでありますから、政府の強力な援助と法的根拠を持たないことには、この仕事は発展することができないのであります。  第三に、海外引揚同胞と戰災者援護の急速実施の問題についてであります。総理はこの問題について眞心を傾けて努めると約束されて下さいました。一千万を超えるところの人々がどんなに深い感謝の中に政府の施策を待つておりますことか。せめて一つでもよいから一日も早く再起の途を図つてつて頂かなければなりません。海外からの引揚者、帰還者、戰災者は、いわば測らざる運命から、その身一つに最も大きな不幸を受取つたところの殉国の犠牲者ともいうべき人たちであります。この人たちのために何よりも先ず家を用意し、衣食を用意し、働く仕事を與え、土地を保障し、そしてこの人たちの再起の途を手傳うということは、これは國の任務であります。殊に海外から引揚げて来た人たちは、能力を持ち、働く意欲、勤労意欲の旺盛なものを持つておるのであります。この能力と勤労意欲を立派に役立たせるような方途を講ずることは、引揚促進に最善を盡されておりまするところの連合軍当局に対して、日本の國としてのなすべき一つの義務でもあると言わねばなりません。(拍手)尚シベリヤには七十万の同胞か終戦三年後の今日も還れないでいるのであります。彼等は今何をしているか、何を考えているだろうか、私達はこのことは心から離れることができないのでございますが、ポツダム宣言には「日本國軍隊は完全に武装を解除せられたる後、各自の家庭に復帰し平和的かつ生産的の生活を営むの機会を得せしめらるべし」と書かれているのであります。対日理事会のシーボルト議長はこの問題について、アメリカ政府は一ケ月の予定があれば十七万人を、ニケ月あれば二十六万人を、半期の予告があれば最後の一人までも全部引揚げさせるための船を用意することができるというこの感激的な言葉を発表されたと傳えられているのであります。たとえ現在の日本が進駐軍の管理下に置かれまして、自由なる発言が許されていないにいたしましても、なされるままに待つ外に何とか縋る快はないものでしようか、(拍手)人道の名において、正義の光りの下にこの肉親の腸のそこから挙げられているところの血の叫びを、引揚促進の要求を、世界の良心に向つて愬えることが許されないのでありましようか。(拍手)私は総理であり、外相であるところの芦田さんに、この問題について日本の母として率直なる御返答を伺いたいのであります。  最後に、第三次世界大戦が今後若しも起るようなことがあつた時に、日本の立場ほどうあるのであるかという問題であります。すでに我が國はポツダム宣言受諾によりまして無防備の國となつております。然るにヨーロツパを見ましても、アジアを見ましても、世界の国際情勢は誠に険悪の度を加えておりまして、勢いの趨くところ、いつ第三次世界大戦の勃発を見ないと言い切ることが誰ができるか。私共はその不安に戦いているのであります。若しそういうふうな日が來ました時に、世界の地理上から考えまして、日本の置かれております地位は非常に危い焦点の一つに立つていると言わなければなりません。こうした場合に直面して、果して我が日本が憲法に言明しましたように、はつきりと平和と正義を標榜して、あの憲法の法文通りに戦禍の外に立ち得るのでありますかどうか。單なる仮定に対する仮定の質問といたしましては、余りにも現実に近い緊迫感に迫られているのであります。総理は平和と自由と正義の支配する世界の建設に不断の努力をすると言つていられますが、現に如何なる努力をしていられるか、又今後如何なる方途の努力をして下さるのですか。又その時に及んで、第三次世界戦争の危険が日本の國にも迫りました時に、我々としまして、又日本の國として、取るべき立場と態度、國民としての心構えは如何にあるべきかということについて、胸襟を開いてお答えを願いたいのであります。このことは万民り齋しく聴かんと欲するところであると信じますから、私は率直にお伺いする次第であります。現に今日ラジオや新聞の報ずるUPの通信は、確実なる筋の情報として、芦田首相がドレーパー次官に対して、アメリカ日本を極東における共産党の拡大に対する防壁として再建する計画に、全面的に協力することを約束したと報じておるのであります。非常に重大な時期が來ておることを我々は感ぜざるを得ないのであります。(拍手責任のある御答弁をお願いする次第であります。(拍手)    〔國務大臣水谷長三郎君登壇拍手
  14. 水谷長三郎

    國務大臣(水谷長三郎君) 奧議員の私に対しまする御質問にお答えいたします。  第一点は、輸出向けメリヤス。シヤツの内千八百万着のローズ物があるが、これに関する政府責任如何という御質問でございますが、輸出向けメリヤス製品はGHQの指示に従いまして製造したものでございまして、相当の在庫品はあることはありますが、決して輸出不適格品というわけではございません。併し今直ちに輸出の見込も付いていないものがありますので、政府といたしましては、その一部約百五十万ダースを国内向けに放出いたしまして、国民衣料の不足緩和に充てるよう、目下GHQに懇請中でございます。近く許可あり次第配給する予定になつております。  更に、綿花及び羊毛の輸入並びに國内向け割当の見通しの問題でございますが、昭和二十一年六月米綿輸入が開始せられましてから今日まで、米綿約百三十万俵、インド綿十七万俵、エヂプト綿三千帳の輸入があつたのであります。この内今まで消化せられました数量は約百十六万俵程でございまして、昨年の六月以前は消化量の僅か二割を國内用に放せられたのでございますが、國内用の需要は極めて大きいので、GHQに懇請いたしまして、七月以降は三割を放出いたしている次第でございます。國内向け放出の中でも、漁網その他の生産用資材、進駐軍用等にも相当大量の需要がありますので、衣料方面に使用せられますのはその四割弱でございます。羊毛は昨年六月豪州から七千四百八十一俵の輸入があつたのでございますが、全部輸出用に充当いたしまして、國内向けは全然放出せられなかつたのでございます。次いで昨年十二月から本月までに南米羊毛が千二百七十六俵輸入せられまして、その中、僅か百七十五俵がフエルト用として國内に放出せられたのでございます。今後の見通しにつきましては、綿花、羊毛いずれも目下関係方面と協議中でございまして、輸入数量は確定しておりませんが、米綿、インド綿、エヂプト綿等月当り七万乃至八万俵は可能であると考えております。羊毛は相当量の輸入を申請中でございますが、今のところ、はつきりした見通しは困難でございます。  更に、今年度におきまする繊維製品の配給の経過及び今後の見通しについてお答えいたします。本年庭におきまする衣料品の配給計画は人口一人当り、平均一・八ポンドでございますが、この内から供米報奨用、炭鉱その他の労務者用作業衣、引揚民用衣料、寝具学生生徒の学童服、妊産婦、乳幼児用品、要援護者用、災害救援用等につきましては特別配給をしており、一般家庭用につきましては一人当り手拭又はタオル一本、靴下又は足袋一足、縫糸十匁、補修布〇・八ヤードの外、十二点の自由選択によつて買う繊維製品が割当られておる程度でございますが、繊維製品は大部分を輸出せねばならない現状におきしましては、誠に止む得ない実情であることは御了承願いたいと思います。これらの繊維製品の配給につきましては、昨年九月に配給機構の改変を行いまして、消費者は特殊衣料切符及び普通衣料切符一般家庭用によつて購入することとなつておりまして、販売業者は卸商及び小賣店いずれも登鎌制度を、採用いたしまして、その流通過程を規定することになりましたために、配給は一時停滞を来したのでございますが、これら配給機構の整備、衣料切符の交付、卸商、小賣店に対する購入割当、商業手形制度による金融処置等、諸般の準備もできましたので、昨年末から順次配給をし、現出各府縣とも配給に努力中でございます。  今後の見通しにつきましては、昭和二十三年度の計画は安定本部を中心に立案中でございまして、只今のところ未決定でありますので、明確なる数量は申上げられないことを遺憾とするのでございますが、原綿、原毛等の輸入も順調にできるものと期待しておりまして、輸入資金の見通しも付いて乗ております。極力増産に努め、輸出の増進に努めますと共に、国内衣料につきましても増加するよう努力いたしておるのでございますが故に、急速に大量の増加はできないにいたしましても、本年度に比べまして成る程度の増加ができる見込でございます。(拍手)    〔國務大臣芦田均登壇拍手
  15. 芦田均

    國務大臣芦田均君) 只今奥議員より各種の問題について御意見の発表があり、御質疑がありました。どれもこれも御尤もなことばかりであります。政府として御了承を願いたいことは、今日の日本は、政府の財政も、個人の台所も、戦敗の結果として窮乏のどん底に陥つておることは御承知通りであります。必要な施設は山ほどありますが、誰がその経費を支拂うかという点に至つて何時も行き詰りを感じておることは、恐らく御了解下さることと思います。インフレの克服の具体的政策はいろいろ細かいこともありましよう。併しインフレーシヨンという病気は、この前の世界太戦以後随分多数の國がかかつた病気でありまして、この病気をどうすれば治療できるかということも、今日はすでに経済学者の間に定説がございますから、日本に最も適切にして有効な方法をどの点に置くか、どこに重点を置いて克服するかという問題が残つておることと思います。これらの問題につきましては、いずれ予算委員会或いは財政委員会等において詳細な具体計画をお話申上げることが適切かと存じておる次第であります。  安定價値計算制をどうして採用しないかというお話でございましたが、御存じの通り、物償のの変動が今日のように急激し浮動しておる際、安定價値計算方法を採用することについても政府は蹣著をいたしておる次第であります。そういう際に、奧議員のお説のごとく、今日のインフレーシヨンは財政インフレで、国家の支拂が急激に増加した。そういう際に行政整理を行わないという手はないじやないかという御意見も至極御尤でありまして、政府はこれらの問題について只今折角研究をいたしておるのでありまして、行政調査部等においても成る一定の案は準備をいたしております。  次に海外同胞の引揚、殊にソ連地区からの同胞の引揚の問題を促進するようにという御意見は、政府においても至極同感でありまして、一両日前の本会議においても一慶お答えをした通り、連合國側の熱心なる今日までの努力に顧みても、この際一層の協力を願うように絶えず盡力いたしておる次第であります。  最後に、今日世界が再び大戦争に引き込まれようとする危険に当面して、日本は武器を持たない。身に寸鉄を帯びずしてこの世界の動乱の前に立つておる。如何にして我が國の平和安全を期待し得るかという点についての御質疑でありました。お話の通りに、我々は新憲法によつて一切の軍備を撤廃し、又一切の戦争を否認して、世界に平和国家の建設を宣言いたしたのであります。現在のところ我が國が戦争に巻き込まれるという危機が迫つておるとは私は感じておりません。併しながら我々の平和世界の建設は單に日本の國の安全ばかりを念頭に置いているのではない。人類恒久の平和は、我々の理想として最も尊い理想である。願わくば世界の民族が協力して世界平和の維持に努力する時期の來ることを期待して止まないのでありますから、今日においてもこの絶対平和の新年と理想とを世界の民族に強く呼びかけるということが、当然我々のなすべき途であり、その理想を達成するゆえんであると考えておる次第であります。  尚、新聞電報を御引用になつてお話になりました点は、外電の内についての具体的の説明を申上げる意向ではありませんが、そこに出ております文字は、我々の間に用いられたことがない言葉であるということを一言申述べて御了承を得たいと思います。(「そんなことは答弁にならん」と呼ぶ者あり)    〔国務大臣北村徳太郎君登壇
  16. 北村徳太郎

    國務大臣(北村徳太郎君) 奥議員の私に対する御質問にお答え申上げたいと思うのであります。  極めて切実な御質問でございまして、恐らくこれは数千万の日本の主婦の声を代表しておると思うのであります。私は今誠に切々たるお話を伺いまして、私共財政のことに興ります者が、今伺つたような背後に多数の家庭消費婦人の苦悩があることを十分認識いたしまして、今後予算に対処いたしたい。こういう感じをお話を伺いながらいたしたのであります。何を措いてもインフレ問題について、このことが最も重要な大きな問題であるとお取上げになりましたことも極めて同感でございまして、賃金物價の悪循環もこれに原因いたしておりますし、生活苦というものの恐らく最大の原因は、現在のインフレーシヨンによつておるということでごいまして、この点については又極めて同感でございます。併し日本のインフレーシヨンはドイツあたりのインフレーシヨンと違いまして、即ち爲替マルクの資本が海外に逃魅したというような金融的なインフレーシヨンと違いまして、現有の段階においては私はやはりこれはいうまでもなく、インフレーシヨンは金と物とのアンバランスでございますけれども、過大な購買力というものが一方にあつて、物が余りは少いとうことから来たものでございまして、現在においてはこの購買力の過大性というものが、非常に物價が今日騰りましたから、この過大性の購買力というものは封鎖されておる今日の段階においては、通貨の増発に対して非常に留意しなければならんことは勿論でありますけれども、又別段の意味において、何を措いても増産に非常に力を入れなければならん。これはむしろ通貨と物とのアンバランスというよりも、今の段階においてはそのことは勿論でございますけれども、むしろ非常に多数の人口と、それから極めて過少の物との関係においてインフレが進行してれる。それでありますからいろいろの面に困難なことがございましても、暫く目を瞑つて物を造る、物を殖やすということでなければならん。なぜ流通秩序は破壊せられておるか、これを流通秩序だけを取直そうといたしましても、物が出なければ仕様がないのだ。從つて我々は先ずこの増産への力を非常に結集しなければならんと考えるのでございまして、それでございますから、多少の弊害がありましても、傾斜生産方式を採つておる。重要な根幹産業に対しましては、他産業多少犠牲にしても、これは目を瞑つて、石炭或は電力或はその他の重要肥料等については傾斜生産方式を採つておる。傾斜生産は申すまでもなくその蔭には地産業を特性にいたしております。それでも敢えて尚増産をしなければならん。先ず根幹的のものの増産から漸次増産をいたしまして、今のこの窮乏経済、欠乏経済への一つの根本的、な治療はその点にあるというような念を持つて、インフレーシヨンの根本的な考え方は、そういうインフレーシヨンの実態を把握することから來る、かように私共は考えておるのでございます。かような観点から健全財政主義を非常にやかましく言つておるのでありますが、このことは健全財政主義と申しましても、ここで申上げるまでもないと存じますけれども、国民経済そのものが健全でないのに、財政だけが健全であり得ない、これは理の当然でありまして、從つて国家経済と国民所得と産業資金との循環度、或いはその割合等がこれが極めて権衡の取れた状態になるように全体の舵を取つて行かなければならん。それが取り得ない矛盾と非常に大きな悩みがあるのでございますけれども、万難を排してそういう線に沿つて行きたい。国家経済が國民所得を吸収する、そうして産業資金が撒布せられる、産業資金がこの同軸によつて国民所得となる。この循環の適度性というものがこれが本当に好い按配に廻るように、今の壊された秩序を元へ戻して行くという点に力点を置いで懸命の努力をいたしたいと、私はかように考えておるのでございます。只今細かいことを申上げることは恐入りますから申上げませんが、終戦後二ケ年半の通貨の膨脹と、それから物價の度合、殊に物價と申しましても、先ほど奥さんが御指摘になりましたように、我々は公だけでは生活していない。これは現実の問題であります。從つて闇物價というものを無視するわけに行かないのでありますが、日本銀行の闇物價指数によりますと、終戦後二ケ年半に通貨は五・三倍になつておる、闇物價は五・五倍、昨年中の通貨の増しました量と闇物價とを調べて見ますと、やはり通貨の方は二・二倍、闇物價は二・一倍、これでいいとは決して申せませんけれども、インフレは進行しながらも、非常に病的な非常に悪い方向へ行つていないということだけは、一慶そういうふうな観点から抑えられるのじやないか、かように考えておるのでございます。それで健全財政において、先程御指摘のように今のような状態では、財政支出を慎しむということが、一番大事な問題でありますから、財政支出の面から破綻を生じてはならんから、赤字財政などをやつて通貨の膨脹をさせるようなことがあつてはなりませんから、これは極力それを締めまして、そうして均衡の取れた財政を計り、均衡財政、これを堅持したいと考えて出るのでありますが、併しそうは言うものの、御存じの通りに昨年末の税収は思うように取れない。それから当てにした専賣収入もその通り行かない。そうなりますとその間の時間のずれがありまして、歳出をしなければならん。収入の当てにしたむのは入つて來ない。ここで止むを得ず借金ができる。從つて通貨は一悪膨脹いたしましたけれども、今年一月以来、これは皆さんの御協力によりまして、非常に重い負担であるにも拘わらず、税収が割合に順調に参りまし。それから専賣収入もやや順調に参りましたことによつて、今年一月以來はこの通貨の増発をうんと抑えて、割合抑えられた状態になつておる。従つて財政の面だけでいわゆる健全財政を取りましても、只今申上げましたような金融を圧迫する、金融面からはみ出す。こういうことになると産業を圧迫する。私の申上げました生産を増してやらなければならん面に資金は流れない。こういう面から、この方面にも十分の注意をいたしまして、あなたの御意見に副うように今後の予算の編成をいたしたい。何分先申しますように、非常にこれは窮之の、そうしてもう財源が枯濁しておる中でやらなければならんものが沢山ある。なかんずく相当終戦処理費を賄つてを行かなければばらん誠に苦しい事情が起つておりますから、その点につきましては、今後皆さんの十分なる御智慧を借り、御協力によりまして、お話のような趣旨に持つて行き、たいと、かように考えておる次第でございます。  それから安定價値計算のことにつきましては、総理よりお話があり、又安定本長官よりもお話がございましたが、私はこれはあ研究したいと思つております。安本長官にももう少し諮りまして研究したい。或いは委員でも挙げて研究したい。勿論これが絶対的の根本療法とは思いませんが、一つ対症療法として……私だけの考えではございますけれども、日本で困難であるということは、統計がまだどうも安定價値計算の材料にする程の統計がないという一つの悪条件がございます。さような点からと、或いは安定價値と通貨の問題等と合せて考えなければならん点がございますので、これは安本長官は当分やらないという意見でございましたが、尚協議をいたしまして、重要な問題でございますから、できれば委員で拵えて研究するというように、一方的の意見でありますが、さように考えておる次第でございます。  それから尚、生活協同組合についていろいろご意見がごさいましたが、極めて同感でございます。これはやはりやるベきであると存じておりますので、今度は多分政府案として皆さんに御審議を願うことになるのではないか、こういうふうに考へておりますが、そういう場合には大いに御協力願いたいと存じます。私へのお尋ねの点はインフレーシヨンに関する点だけであつたかと思いまうので、一度御答弁申上げて置きます。(拍手)    〔国務大臣永江一夫君登壇拍手
  17. 永江一夫

    ○国務大臣(永江一夫君) お答えいたします。非常に切実な御質疑でございまして、薪炭、砂糖、乳幼児の牛乳、その他の生鮮食料品につきましては、十分に今後質疑になりました方向において、私から責任のあるところの御答弁が満足に行くようにできないことを非常に残念に考える次第であります。  一第の薪炭につきましても、先程御意見の中にありましたように、政府責任回避をするような答弁をしないようにということでございますけれども、一應はなぜ薪炭が家庭用として廻らないかということにつきまして、お聽き取り願つて置きたいと思います。すでに御承知のように本年度におきましても、薪炭の増産についていろいろな計画をいたして、これを実施中であります。併し元来薪炭につきましては、戦争以前には全然需要のなかつた面に、国内の薪炭の生産の過半の数量が使われておることは御承知だと思います。即ちいわゆるガソリンの代りに木炭自動車が走るというこの形から御覧になりましても、実は戦争前の需要として皆無でありましたところの輸送用或いは塩を作りまする製塩用等に、清算されました薪炭の過半の数量が使われてしまうのでありまして、家庭用にこれを廻すということが日本の現在の経済上から非常に困難であります。從つてそこに大きな穴があるのでありますから、これを埋めまするためには政府はいろいろ苦労してるのであります。併し最も簡単にこれを埋め合せできまするものは、ガソリンを輸入するとか、或いは塩を多量に輸入して参りますれば、この清算されまし薪炭が家庭に廻つて来るということになるのであります。併しこの輸入につきましても、今の日本の現状においては十分でないことも御承知だと思います。尚お尋ねの中にはございませんでしたけれども、從つて家庭用の薪炭、燃料の補給のために、政府といたしましては煉炭を考えておりまして、戦前百数十万トンの生産に上つたところの煉炭に着目いたしまして、これが生産の回復に努力をしたのでございます。御承知のようにこの増産のためには、原料無煙炭と電力の増配に努めまして、二十二年度には五十五万トンの実績を挙げたのでございまして、二十三年度には更に七十八万トン豆炭の増産を行いまして、家庭費料の一助にいたしたい、かように考えておるのであります。尚御指摘のありましたように、この薪炭の配給について生産地に山積しておるものを需要地に適宜廻すことについての御意見御尤もだと思います。政府におきましては、これらの配給機構の改正につきましても今その具体策を考究中であります。  尚、第二の砂糖についてのお話でございますが、砂糖はいわゆる連合軍の好意ある食糧の放出の一環として私共はこれ頂いておるのでありまして、この砂糖を主食の代替にするということについては各方面か御意見がございます。併しこれ亦御承知のように、この放出物資はいわゆる連合軍の占領費によつて賄われておるものでございまするから、私共かたこれについて徹底的に意見を強く発表するということは今日差控えなければならない点でありまするが、併し私共としては、農林当局としましても、関係方面にできるだけ砂糖の放出がありました際においても、の砂糖は主食と代替でないように、主食として年に約百八十八万トンの不足量を見込んでおりまするから、この百八十八万トンの中には、砂糖をできるだけ入れて頂かないように懇請をいたしてわろ次第でございまして、これ亦御了承を願つて置きたいと思います。併しながら又一方におきましては、農村に対しまし自家保有米との交換の意味を以ちまして砂糖の放出をいたしまして、それによつて米の供出をより多く図りまして、都市配給面の質的向上を期したいというようなことも考えておりまするので、砂糖の主食代替についていろいろ御不平の点があると存じまするが、右様の次第を御了承願つて置きたいと思います。  第三の乳幼児用の食糧といたしましての牛乳についてでございますが、これ亦御承知のように飼料が不足しておるということが一番大きな事情で、生産がこのために非常に困難を極めておるのでございまするが、政府といたしましては今御指摘のありましたような点を考慮いたしまして、乳幼児用の食糧の重要性に鑑みまして、極力これが配給の確保に努力いたしておるのでございまして、従前一人一日当り一合五勺でありましたもの、昨年十月以降に二合五勺にこれを上げて配給する計画を立てまして、年間需要量牛乳に換算いたしまして八十二万三千石を、飲用牛乳、煉粉乳、脱脂粉乳等によつて充足するように、これが生産の完遂に関しまして飼料その他生要資材の確保に努めて、この計画を完全に実施いたしたいと考えておりまするから、御了承願いたいと存じます。  尚、生鮮食料品の配給につきましては、経済安定本部の長官に御質問がございましけれど、私からも一言この機会にお答えを申上げいと思います。生鮮食品につきましては、その基本の方針はすでに御承知のように、統制並びにリンク方式を尚強化して行く方針には変りはございません。ただこれについての配給方法については各方面から御意見がありまするので、これは適切な方法に漸次改善を具体的にいたして行きたいという考えでございまするが、ただこの際附加て御承知置きを願いたいことは、蔬菜或いは鮮魚等につきましても、それの増産或いは増収の基本となりますところの裏附けしまする物資については、政府はできるだけ多くこれを具体化するために、その施策を行なつているわけでありまして、例えて申しますると、水産に関しまする油であるとか、或いは魚網等につきましても、今年はかなりこれを増配する計画を立てております。又蔬菜類に関しましても肥料の増配等を完全に行いたいと思いまして、これらの物資の裏附けによりまして、延いては食料品の増加を求めまして、これを先程申しましたような統制並びにリンク方式の強化によつて、できるだけ合理的な配給を強化いたしたい。かように考えている次第でございます。(拍手)    〔国務大臣竹田儀一君登壇拍手
  18. 竹田儀一

    ○国務大臣(竹田儀一君) 奥議員の私に関する御質疑は大体四点であつたと思います。  乳幼児のミルクに関して御熱心なる御質疑を頂いたことを感謝いたします。この問題につきましてはすでに農林大臣よりお答えがありましたから、敢て蛇足を加えません。四月一日より児童福祉法が実施されるのでありまして、その実施と相伴つて農林省ともよく協議をいたしまして、でき得る限り御意見に副いたいと思います。  生活保護法による生活補助のために支出する費用の基準額千三百円が僅少に失するではないかという御質疑であつと思いますが、遺憾ながら、新初價体系の設定では改訂することは種々の事情から見て国難かと考えます。当分はその運用に面におきまして保護の適正を図りたいと存ずるのでありまして、新物價体系の設定の時に必ず適当の考慮を拂いたいと思つております。  社会保障制度につきましては厚生省の社会保健制度調査において調査中でありましたが、昨年十月その結論を得て、極めて総合的なる制度案の答弁があつたのであります。この制度は、お話の通り憲法第二十五條の趣旨にに鑑み、健康にして文化的な國民の最低生活を保障する廣汎な制度でありまして、既存の保険制度並びに我が國経済及び我が閥財政の情勢と睨み合せて、目下その具体化を図つているのであります。これを完全に実施いたしますことは、奥議員お話の通り相当多額の費用を要するのでありまして、一挙にこれの完璧を期することはなかなか至難であると思います。連合軍当局におかせられても、昨年末この問題について調査中でありまして、私といたしましては、でき得る限り早い機会において我が國のあらゆる客観情勢の許し得る範囲内において、その実現を図りたいと思います。  生活協同組合法のことについて御質疑があつたのでありますが、政府におきましては、生活物資の配給機構を確立し、國民の消費経済の安定改善を図ると共に、日常生活の文化的向上を期する目的の下に、國民の自主的な組織として生活協同組合の健全な発展を期待し、又育成助長に努めておるのでございます。申すまでもなく生活協同組合は現在におきましては、産業組合法によつて設立されておるのでありますが、今日の経済情勢に即しまして生活協同組合の特色に應じた新らしい生活協同組合法を制定いたしますことは、今日輿論になつておるとも考えますので、これもでき得る限り速かなる機会に生活協同組合法の実現を期したいと思つております。  尚最後に、海外引揚者、戦災者の方々の援護について御熱心なる御質疑があつたのでありますが、申すまでもなく民生安定の上において最も緊要なことでありまして、政府といたしまして、経戦以來その具体的方策を樹立いたしまして実施に努力をして來たのであります。即ち一昨年生活保護法、児童福祉法、未復員者給與法の制定、或いは社会保険制度の整備拡充、國立医療機関の充実等、いろいろとこれが具体的方策の実施に努力を拂つておるのでありますが、今後とも御意見を尊重いたしまして、万遺憾なきを期したいと思つています。更に未だ引揚げておらない者の促進について、熱涙溢るる御質疑があつたのでありますが、これは総理よりすでに御答弁になつておりますけれども復員局並びに引揚援護院に関連を持ち、又私自身衆参両院議員の大多数を以て組織されておりまする同胞救援議員連盟の理事長として、深き関心を持つておるのであります。尚七十数万の未だ引揚げざる人々が、海外の地に一日千秋の思いで日本の空を眺めて帰りたいと念願しておることは、お話の通りであります。又國内におりまする数百万の家族人々が、今日帰るか明日帰るかと、汽笛の声を聞く度にその帰りを待ちわびておることも亦事実であります。私共微力ではありますけれども、総理と共に連合軍に飽くまでも懇請いたしまして、今年の冬は絶対に彼の地で越させないという信念を持ちまして、飽くまでも引揚の促進に努力をいたしたいと思います。(拍手
  19. 松本治一郎

    ○副議長(松本治一郎君) 栗栖國務大臣関係方面に行かれておりますので、次会に答弁せられる趣きであります。本日はこれにて延会いたしたいと存じます。御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  20. 松本治一郎

    ○副議長(松本治一郎君) 御異議ないと認めます。明日は午前十時より開会いたします。議事日程は決定次第公報を以て御通知いたします。本日はこれにて散会いたします。    午後一時六分散会