○島村軍次君 時局極めて重大なる折柄、この難局打開のために芦田首班がこれを担当されましたことに対しましては、一應諒といたすところであります。併しながら先般行われました施政
演説を拜聽し、且つその後の
答弁を拝聴いたしますと、必ずしも我々はこれに全面的の賛意を表することのできないことを誠に遺憾とするところであります。我々は参議院の
性格の
立場からも、亦
國民大衆が今聽かんとしておるその点から考えましても、ここに重要なる点に対して私は極めて率直なる
総理大臣の
答弁を得たいと思うのであります。要は政策本位に、政策の実現を如何に期するかということにかかるのでありまして、これに対しましては、少くとも大なる氣魄と勇猛心を以て果敢に
実行に移されんことを希望いたすのであります。その見地に立ちまするときに、
民主党の首班であります
芦田首相は、今回の
施政方針演説において、最高目標として、
中道の途を歩み、且つ社会連帯、
國民協同の理念というような問題をお話にな
つておりまするが、皆さんの御承知の通りに一面には保守の大同
團結が唱えられ、一面には社会主義的な政党との間におきまして修正資本主義を唱えられましたる
民主党首班は、果してこの修正資本主義の理念を如何に考えておられまするか。又
中道であり或いは社会連帯であるという、こういう問題に対するはつきりした
首相のお考え振りを
國民大衆に周知せしめることは、現
内閣が当然なさねばならん責務であると共に、又現在の政局から考えましても、私はこれを大胆率直に、而も実践
方策に対して確乎たる御
答弁を得たいと思うのであります。かかる副長の下に、私は今日まで
首相に対しまする
質問のなかつた点を主体とし、且つ
農村問題を中心といたしまして、
関係大臣の所見を伺いたいと思うのであります。
先ず第一に、
農村金融に関する問題からお尋ねを申上げたいと思うのでありまするが、
インフレの克服といい、又資本の蓄積といい、これは今日の時局から言えば、当然我々が大いに
主張し、且つその具体的の対策が直ちに
実行に移されなければならんことは、当然と言わねばなりません。ところが本年の初頭にマツカーサー元帥の発表されました通りに、日本の民主的基礎は設計はでき上つた。併しこれを本当に基礎工事を行い、住宅を建てて、そうして我々の住み好い
再建日本を形造るためには相当の努力を要することは、これ亦当然と言わねばなりません。こういう見地に立ちますと、我々は今芽生えんとしその設計をまさに基礎工事に移さんとするその矢先におきまして、
農村はその芽生えを刈り取られるような現状にあることは我々は深く
認識し、そうしてその実態を把握せなければ、今日の
政治の明朗を期し、且つその
政治を推進して行くことは、決してできないことであることを痛感するのであります。即ち
農村には一時非常な
資金が擁され、新円の六割は
農村にあつた時代は昔の夢でありまして、今日
所得税の計算の基点から考えましても、
所得総額の僅かに一割六分が
農村に課せられております。私はむしろ現在の新円の大部分は
農村の箪笥の底から出まして、そうしていわゆる闇ブローカー、或いは中小都市、又は第三國人等の方々に多数が保有されているということを考えざるを得ないと思うのであります。私の郷里の某村の一例以て考えて見ましても、或いは藺草を作り、或いは果樹を作り、或いは菜を作る特定の土地を除きましては、
農村の金は今回の
所得税の更正
決定によ
つて殆んど吸収されてしまつたのであります。一月早々申告によ
つて納められましたる
農村の
所得税納税者は、三月の更正
決定に戰
つておりまして、これがために新聞紙上の報ずるところを御覧の通りに、現に税務署にはこれからの更正
決定、或いは減額の申請その他悲痛なる態度を以て続々と陳情をし、場合によ
つては腕力沙汰にも及ばんとする
傾向のあることは、疾くに
大藏大臣の御承知の通りであります。これは一体何を意味するか、又
一つの例を取
つて申上げて見ますれば、某村におきましては、この負担に堪え得る者は全
農村の中の三分の一であ
つて、後の三分の二の者は勿論現金を、あらゆる現金の引出しを行い、且つ多年
農村團体であつた農業会、これらに貯金をしておりまする数十万円の貯金は、一度に支拂われたばかりでなく、牛を賣り、家具を賣り……数万円を一時に取上げたという喜びは途端の間であ
つて、そうして再び牛を賣らなければならんという悲惨な状態にあるところが少くないと思うのであります。この
原因は第三者から見まするというと、
農村は食えるのであるから、それで良い、こういう感じをお持ちにな
つているかも知れません。併し事実芽生えんとするこの
農村が、正にその芽生えを切り取られるということは、この一例を以ても証明できることを篤と当局者は
認識せなければならんと思うのであります。即ち
農村の
資金は、ここに
生産増強を唱え、或いは
農村工業を唱えられる先輩各位の各種の御議論に対して、いろいろ
答弁はありましたけれども、先ず
農村の
資金問題より解決せんければ、到底その目的を達成することができないことをここに断ぜざるを得ないのであります。殊に先頃から計画されましたるいわゆる
責任生産、
責任供出の制度は一〇〇%の供出に対して世間は、今年はよく
農村が應じたものである。又
総理大臣は先般の
演説において、
農村に非常に感謝をされております。併しその裏は決してさような甘い考えではないのであ
つて、自分の耕作したすべての米を供出し、僅かに数日若しくは数十日の間食う米しかないというような農家も中にはあるのであります。勿論これはこの割当の不公平その他もあると思うのでありまするが、日々粒々辛苦の上で作り上げましたるこの米を、供出後におきましては直ちに還元米を高い銭を出して買わなければならんという悲惨の状態も少くないことを篤と御了解の上で、私は
農村政策に対してまして……その実態は私の説明を待つまでもなく、
生産それ自身は分散されて
生産しております。田と田の一々は隣の田であ
つても土質は違うのである。同じ田の中でも、高い所と低い所とでは余程その土質を異にしておる。こういうふうな状態でいわゆる千差万別の中にある。この実態を把握せなければ、決して机上の空論を以ては
農村政策は論ずることはでき ないことを重ねて申上げたいと思うのであります。
先ずかような見地から考えまして、
農村の
金融問題は正に八方塞がりの感じのあることを、
大藏大臣或いは
安本長官、
農林大臣は篤と銘記されまして、そうしてこれに対する積極果敢なる政策をこの際
是非共実現されなければならんと思うのであります。こういう見地から先ず私は
農村金融に対しまして、いわゆる
資金の裏附けを如何に考えておられますか。具体的の建設意見を申上げますというと、今日は復興金庫がありまして、重要なる産業の
設備には
資金をお出しにな
つております。併し
農村工業の
設備をしより、或いは又農具の
設備をしようといたしましても、決してそれに対する
資金は供給されておりません。而して多年
農村金融に力を注ぎましたこの農業会は、協同
組合への轉換のために
資金は枯渇して、各地方の農業会は非常に
資金難に陷
つておるこの際であります。その場合には復金の機能を十分に発揮するということでなくして、
農村の
実情に應じたるいわゆる農業復共金庫のごとき制度を設けることが私は当然でなければならんと思うのでありまするが、而もそれは
設備でなくして、以上のような現在再
生産に必要なる即ち一割増産なら一割増産に対するその裏附けをすべき
資材に対して、直ちにそれが回轉し得るような施策がなければならんと思うのであります。昨日
農林大臣は、一割増産のために鉄材一万八千トン、その他前年の二倍の
資材を提供するということを発表されております。併しながらそれに対して農具は御承知の通りに、戦前においては六万トンを要しており、現に昨年は僅かに八千トンの割当であつたものが、三四千トンばかりの配給しかないのであります。数量それ自身が非常に少いばかりでなく、この農具
生産のためには百五十億円の
資金を要するのであります。その
資金は勿論業者自身の持つところも相当あると思うのでありまするが、一割増産の
立場から、果してこの裏附けである
資金を如何にして調達するかということに対しては、これは
大藏大臣或いは
安本乃至は
農林大臣が非常な
熱意と、
一つの建設的な施策を用いなければ、到底それが一割増産はおろか、決してその目的を達成することはできないことを特に申上げまして、農業
金融に対し、この際
政府の所見が奈辺にあるかということに対する御
答弁を煩わしたいと思うのであります。
第二には、
金融問題に関連を持ちまして、先に行われましたる農業協同
組合法施行に伴う農業團体の整理に伴いまして、本年の三月限りにいわゆる新旧勘定を合併するの
方策を大蔵省は立てられ、且つ最終処理の
方策としまして、從來の市町村農業会の持
つておりました
金融債券、即ち興業銀行債券或いは北海道拓殖債券その他の
金融債券は、
政府の指示によ
つて、地方
長官の認可を経て、
金融機関の
再建整備法による最終処理場を完了しておるのであります。又只今申上げました整備に関する法律によ
つて、すでに二月の十四日までにそれぞれ農業会は解散準備総会をいたしまして、それに会員三分の二以上の出席を求めまして、そうして明らかにこれを発表いたしておるのであります。即ち資産の状況、その他事業報告を示して、
金融債券は旧勘定でなくして新勘定としての
措置を講じておつたのであります。問題はこれらの善悪の問題よりは、即ち
政府がかくのごとき
措置を採らして置いて、而して最近になりまして、
金融債券の旧勘定移換は止むを得ないことであるというような態度をお探りにな
つておりますために、
農村は、農業会自身の資産に影響があるということは勿論でありまするが、
農村の
資金は、御案内の通りに、季節的収入が多くありまして、米の収入のあつた時にいわゆる振替貯金によ
つてそれを集め、木炭の
生産をした時に振替によ
つて貯金をし、その零細なる
資金が集ま
つて僅かな余裕金を集めたものが、ここに全額にいたしましては僅かでありまするが、極めて零細なる
資金の集まりであるという
関係から、即ちこれを若し
政府の
責任でないといたしまするならば、これは由々しき問題が起ることを……農民自身が今日ではすでに各地の農業会へ参ります。とか、或いは縣廳へ押しかけておる現状を御覧になりまするときに、果して
政府がこれに対して如何なる
措置を講ぜらるる
用意がありまするか。聞くところによりますと、市街地信用
組合等におきましては、これを適当なる
措置を講ぜられることが行われておりますし、又銀行その他におきましては、農業会と違いまして、まだいわゆる最終処理
決定が未完了であるし、且つ又團体整備による財産目録に事業報告書を提出して承認を経たという一面におきましては、農民に公約をいたしておるということがない場合におきましては、これは又おのずから情勢が異なるのでありまするが、この際全國農民の
立場におきまして、これらの点を
政府自身は
熱意を以て行わなければ、私はこの際申上げたいことでありまするが、やがて芽生えんとする
農村の現状が非常に憂慮すべき状況であるということを前提に置きまするならば、この問題は金額にいたしましても、事件そのものは軽微のようであ
つて極めて重大な問題であるということをこの際申上げ、
國民の前にはつきりした当局の御
答弁を得たいと思うのであります。
農村課税に関する問題は、先程
金融の際に申上げたのでありまするが、この際、課税問題に関しまして次の諸点に対する
大藏大臣の御所見を伺
つて見たいと思うのであります。第一は、欠点とされておりまする画一反別
所得ということを改められる御
意思があるかどうか。第二は、課税標準を決めるに当りまして、農業の特質であるところの自家消費部分を除くことが適当と思うが、これに対する所見がどうであるか。第三は今回
農村は一齊に協同
組合ができることにな
つておりまするが、協同
組合において計算をいたしまして、自発的に振替制度を採用することが、徴税の点から行きましても、亦
資金の流通面から行きましても、動かすことなくして直ちに行うことができるのでありまして、これは極めて適切なる制度と思うのでありまするが、それに対する所見はどうであるか。又第四には、販賣収入が御承知のように非常に分れておるのでありますから、季節的に來るのでありますから、分納制度を認めまして、農産物の販賣収入の翌月くらいに納付する分納制度に対する所見如何。第五には、委員会の制度を昨日御
答弁に
なつたのでおりまするが、諮問機関だと称せられております。私は最後の
決定を税務署長がやることに対する異議を申上げるのではないのでありまするが、少くともこの委員会制度は、従來のごときお坐なりのものでなくして、今少し民主的に、権威のある、即ち一町村少くとも一人以上の委員を選んで、そうして
政府への申告と同時に審査をし、更にこれに対する税務当局の意見を加えたものを委員会に移して、
決定前において委員会の審議を経て
決定する、こういう制度に改めることが当然でなければならんと思うのであります。昨日は極めて簡明に諮問機関を置くという
答弁がありましたけれども、以上の五点に対しまして御
答弁を得たいと思います。尚、土地利用税、又は農業税創設が新聞紙上に現われておりまするが、これに対する御所見知何。
最後に数項ありますけれども、協同
組合に対する育成
方針について伺
つて見たいと思います。今後の
農村のために作られましたる協同
組合は、もはや理屈を以てこれを彼これ論ずるところでなくして、如何にして我が國の
再建に役立たしめるかということが確乎たる
方針でなければならんと思うのであります。元來が農業協同
組合は自由の原則を建前といたしておるのでありまするから、今日の統制経済の鉄則の点とは相一致しない点もあると思うのであります。そこで
生産の協同
組合だと称せられる農業協同
組合が、今後積極的にこれを活躍……いわゆる
農村の恐慌に今から備えるためには、相当の協同
組合に対する育成が十分でなければならんと思うのであります。農林省の既往における
予算面は、明治時代からの保護政策によ
つてのいわゆる補助金、奨励金は、相当大幅に削除されております。併し少くとも協同
組合法を
農村振興の機関とするならば、これに対して大幅な
予算を計上し、且つその具体的問題をはつきりと示さなければならんことを痛感いたすのであります。これに対する
農林大臣の所見如何。同時に農業協同
組合の技術の在り方に対しましては、民間技術を採用し、從來の官廰技術を脱却して、いわゆるサービス・ステーシヨンとしての目的を十分に達成するような技術水準を作らなければならんと思うのでありまするが、これに対して農林省の農業技術の在り方、及び水準向上に対する具体的
方針を承わりたいと思うのであります。更にこれに関連をいたしまして、
農村の協同
組合は将来
農村における配給機構といたしまして、必需物資に対しては
是非共これを協同
組合をして行わせることが、
農村の
実情に適すると深く確信いたすのであります。
政府は
生活協同
組合との関連を如何に考えておりまするか。まだ
生活協同
組合法は
制定されておりません。併し先の
農林大臣平野氏は、
農村においては
生活協同
組合即農業協同
組合だという
答弁を明らかにされております。恐らくこの点に対しては
商工大臣は御同感であろうと思うのでありまするが、これに対する所見と、及び農具、石油、その他に対する配給機構を農業協同
組合に行わせることに対する
政府の所見を質したいと思うのであります。以上時間が参りましたので私の
質問を終ることにいたします。(
拍手)
〔
國務大臣北村徳太郎君登壇〕