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島清君 時間も遅くな
つておりまするが、
暫らくの
間皆様に御
清聽を煩わしたいと存ずるのであります。
全くの
自由討議でございまして、何を申上げてもよろしいことにな
つておりますので、いろいろ申上げたいこともあるのでありまするが、併し私は今回の
総理大臣の
指名に当りまして、院内に
もさようでございまするが、特に
院外におきましては、我々
國会議員が
如何にも
総理指名に当りまして
闇取引をや
つておるかのごとき
空氣がございまするので、この際
憲政の
常道とは何ぞやというような問題につきまして五分間ばかり問題の探求をして見たいと考えておるのであります。
片山内閣が退陣いたしますると、
野党でありまするところの
自由党に
政権が行くべきではないかという、即ち称して
憲政の
常道論というものが
展開をされたのでありまするが、私はこの
憲政の
常道なるところの
言葉の
歴史的な意味につきまして少し触れて見たいと思うのでございまするが、この
言葉の
歴史は大正の初め、
日本の
政党が相当に
発展をして参りまして、
政友会、
民政党がそれぞれ
國政を担当するまでに
発展をして参
つたのでございまするが、遺憾ながら
封建的勢力がこの
政党に
政権を委ねることを拒んだのでございます。そこにおきまして
憲法の
條章に基きまして、
政権を担当するまでに
発展をして参りましたるところの
政党に
政治は委ねるべきであるという護憲の、
憲法擁護の
建前からして、
憲政の
常道論が
展開をされて参
つておることは、すでに満堂の
諸君が御
承知の
通りであります。かような
歴史的言葉を持
つておりますところのその
言葉を、直ちに今日持
つて來て、その
小党分立時代に当て嵌めようとするのが即ち
憲政常道論のようでございまするが、然らば百歩を譲りまして、それが正しいものと仮定をいたしましても、然らば
片山内閣時代におきまして
野党の一党でありましたるところの
自由党が、果して純粹なるところの
野党であつたかと申しまするるならば、よしんば百歩を讓りましても私は純粹なるところの
野党でなかつたと申上げたいのであります。なぜなれば
片山内閣成立に当りまして
自由党は
指名を
片山哲君に投じておるのであります。更に
連立内閣に当りましては四
党政策協定を締結いたしまして、その四
党政策協定の枠の中に
片山連立内閣があくせくしてお
つたのが、即ち
連立内閣の
眞相であります。ところが数ヵ月経ちましてから、
自由党は勝手に
野党宣言をや
つたのでございまするけれども、併しながら純粹にこの四
党政策協定が
破棄されましたのは
社会党の第三回
最高会議におきまするところの、党の大会によ
つて、初めて純粹なるところの四
党政策協定が
破棄に相成
つておるのであります。
自分たちは四
党政策協定を結んで置きながら、お前
たちは
連立内閣の枠の中から一歩も出てはいかんぞよというような、がんじ絡めにして置きながら、
手前たちの方は勝手でござんすと言
つて見たところで、世間は通用いたしません。併し
社会党が四
党政策協定破棄を宣言いたしましてからは純粹なるところの
野党であると認めて差支えないのでございまするが、然らば純粹なるところの
野党になりましてから、
自由党は
如何なるところの
政策を提げまして
片山連立内閣の
攻撃に当つかと申上げまするならば、
皆様も御
承知の
通り、何ら
政策らしいものを提げまして
連立内閣の
攻撃をしていないのであります。ただ私
たちが、
野党が
片山内閣の
攻撃に利用いたしましたるところの
衆議院本
会議における行動を見まする場合に、ただ
西尾さんに対しまして
不信任案を上程して否決されている事実であります。これは
憲法の
條章からいたしまするならば、おかしいのであります。何故ならば、
衆議院も
片山氏を
内閣総理大臣に
指名をしておるのであります。その
総理大臣の
任命によりまして、
西尾さんが
國義大臣にな
つておるのでありまするからして、
衆議院の本
会議の席上におきまして、
不信任案を提出するということは、これはどうもおかしい話である。それですら否決をされておるのであります。ところがです。そういつた
政策らしいものを持
つて來まして
連立内閣を
攻撃しないで、
人身攻撃に当るような即ち的外れの
不信任案を上程いたしましてすら、それすら敗れておる。こういつたような
実情の下にありましたるところの
自由党が、
野党であつたから直ちに向うの方に
政権を委ねなければならんという、これが即ちそうしないことが
憲法を蹂躙し、これが
闇取引であるというような
議論が
院外にあるようでございまするが、私
たちは、その
議論に対しましては承服をいたし兼ねますると同時に、こういう
議論こそ私は
俗論であると、かように考えておるのであります。(
拍手)
本院におきまして
総理大臣の
指名におきまするところのあの
議決振りは、今更私が声を大にいたしまして申上げるまでもないのでございまするが、併しながら遺憾なことには、先日
如何にも我々のこの
議決を無視いたしまして、一部の方々が院の総意を代表しておるかのごとくに放言しておらるることは、私は非常なこの
院外の
俗論と迎合いたしまして、
如何にもこの
國会議員の一部の人々が
院外の
勢力に左右されておるかのごとき感を與えまして、頗る遺憾であると考えておるのであります。(「その
通り」、「もつとはつきり言え」「
自分も分らないだろう」「
盥廻しとはこれ
如何」「猿の
尻笑い」と呼ぶ者あり)しつかりやれというお
言葉もありまして、
盥廻しという
言葉もございますので、それに回答を與えなければならないのでございますが、しつかりやれという
言葉に対しまして感謝を申上げたいのであります。併しながら私の
登壇いたしましたのは、
自分の思いますことをたらふく申上げたいためでありまして、ポイントを外れて申上げることは
皆様方に御迷惑になろうかと存じまして、それはただ激励の
言葉として感謝いたしまして拝聽いたして置くのでありますが、
盥廻しという
言葉に対しましては、これは一矢を酬いなければならないと存ずるのであります。ベルも鳴りましたので、時間も沢山ございませんので申上げられないのを遺憾に思うのでありますが、
盥廻しとは何ぞや、
盥廻しではない、即ち今日の
段階におきまして
野党が
政策を提げまして
攻撃して、その
政策の行詰りで
片山連立内閣が桂冠いたしておるのでありますならば、これは
盥廻しという
言葉も当て嵌まるかも存じませんのでありますが、併しながら今日よしんば
自由党の方に
政権を委ねましても、
自由党は
少数党でございますから
衆議院を解散する以外にはないのでございます。
衆議院を解散いたしましたところの曉、果して
自由党の
少数党の方方があの
衆議院に絶対多数を得られるかと申上げますならば、これは得られないということは三歳の童子すら心得ておるのでございます。然らば
自由党内閣を我々が
作つた場合に、吉田さんに
指名投票を行いました場合に、私
たちは單なるところの時間を空費することになるのであります。(「分つた分つた」と呼ぶ者あり)従いまして今日
憲法に基きまして
民主主義政治を打樹てて行かなければならない私
たちは、現
段階におきまして、とにかく
國会を中心にいたしまして、そうして
総理指名に当ることは、これは
國会並びに
憲法に基づきますところの立派な
行爲であることは、私は断言して憚らないのであります。時間がございませんのでこの程度で失礼さして頂きます。長い間御辛抱下さいましたことにつきまして厚く厚く感謝いたします。(
拍手)