○
中西功君 前
國会において
復興金融金庫の三百億の
増資が問題になりました時は、我が党は、この
金庫が極めて非民主的に
運営され、その
貸出に多くの問題があり、徒らに私
企業を救済するのみで、
生産復興の
実績はなく、その
融資が
インフレを助長するものであることを
十分知つていたわけでありますが、
重要産業が
行詰まり、労賃の支拂いにさえ
行詰まりを感じておる、或いは又
労働組合側の
賃上げ要求をそうした
理由で拒絶しておるというふうな
事態を慎重に考慮いたしまして、
不満ながらも一
應栗栖蔵相並びに大蔵省の
政府委員が、
原則として
債券を
市中消化いたしますと約束いたしておりましたので、
賛成的態度を取つた次第であります。又更に我々といたしましても、
日本の
需要産業を
復興することは焦眉の急であり、荒廃したこの
産業を起こすためには、
國家的な
資金によ
つて長期の
投資をせねばならないということもよく存じておる次第でありますが、併し半年間の
片山内閣のこの問題或いは又
生産復興全般に対する
態度、特に昨年末のあの年末
融資の無謀と言おうか、無
責任と言おうか、放漫極まる
態度を見ました時に、我々は
苟くも勤労者の代表といたしまして、断乎としてこの
インフレ焦土政策に
反対せなければならないという
責任を痛感したのであります。
皆さん、
政府は
健全財政ということをいやというほど約束して置きながら、あの八百億の年末の
政府支拂いは一体何事でありましようか。又
復金債券の
市中消化を
原則とすると
言つて置きながら、全く
反対に
日銀引受を事実上
原則としておるのであります。而して又
政府は曾て
マル公の
大幅改訂をいたしました時に、これは各
企業の
赤字をなくして、今後
赤字融資に終結するというふうなことのないようにしたいということを非常に大きな
理由としたのでありますが、それも亦完全に失敗したのでありまして、
復金は依然として
赤字融資に終始して、
生産復興には殆んど役立たない。
反対に
一つの
インフレの管とな
つて、全く
インフレ金庫と化しておるというふうなことは、我々だけの見解ではなくて、多くの識者が素直に認められておる点であります。これは当
財政金融委員会におきましても強く指摘され、そのために先に
委員長の
報告の
通り全員一致を以ちまして小
委員会を設置し、今後十分
調査することにな
つておる次第であります。このことの中に、一應
賛成された方々も内心においては非常な
不満を持
つておられるということを十分に示しておると思うのであります。
それ故に、私が敢えてここに出て
少数意見を述べるまでもないごとくでありますが、併しこの問題は、現下の問題といたしまして極めて重大であります。今
衆議院では三十数億円の財源のために解散を賭けて戰
つております。併し問題の
性質からいたしますれば、私はその三十数億円よりもこの百五十億の方が遙かに大きいと思うのであります。何故に
衆議院が
簡單にこの問題を通して、そうして三十数億の問題だけで非常に問題を紛糾さしておるのか、私には了解できませんが、併しそれはとも
かくといたしまして、私は
日本の
國民がこの
復金問題の
重大性をもつと注目し、更に小
委員会の活動と相
俟つて一刻も早くこの問題の徹底的な解決を心から希求いたしますが故に、敢えてこの
少数意見を述べる次第であります。
第一の問題は、
復金自体の現在の
根本的欠陥は果たしてどこにあるかという問題であります。これは大別して四つの問題があると思います。その
一つは、
復金債券の
市中消化が殆んどなくて、主として
日銀引受とな
つておるという点でありますが、この点については多言を要しないと思います。第二は
貸付先或いは
貸付方法において、極めて非常な無
責任さが支配しておる。実際に借りておる
資本家はその金を
貰つたつもりでおるのであります。而も
貸付る方も、ただ
資本家側から要求されるままに
融資しておるという
状態であります。
國家の金だからというので殆んど
責任を感じないという
現状であります。而も先にも問題になりましたように、
追放財界人が中間に立
つて斡旋していたり、縁故に絡む
貸出しがあるということは、廣く世間で専ら噂しております。更に第三は、この結果
資金の
回轉効率は殆んどゼロと
言つてもいい程であります。我々に渡された資料の中で、純然たる
延滞は三億二千万円とな
つておりますが、これは統計的なごまかしであります。その証拠には、別の
融資残高表を見ますれば、九十日の手形で出される
運轉資金は、三年ぐらいの
期限にな
つておる
設備資金と殆んど同じように
増加して、十二月末現在では二百五十七億円に達しておる
状態であります。要するにただ書換で実に無
責任にその日を暮らして來ておるという
状態であります。私はここで特に強調したいのは、この
復金の金は
國民の金である。それは
重要産業を
復興するという重大な
責任を持つた金であります。決して個人が利殖のために勝手に
投資をするものとは非常に違うのであります。これ程
責任ある金なるが故に、この
融資こそ最も慎重に最大の効率を挙げるように使用されなければなららいのであります。然るにこの
復金を動かしておる
人々の
考え方は、全くこれと逆であります。
國民の金であるが故に、或いは
國家の金であるが故に、多少利益がなくともどさくさに
使つても構わないという
考え方で
運営しておるのであります。
私的銀行であり、或いは
市中銀行ならば決してこういうふうな
営業は一日もできない筈であります。ここに今日の
復金の根本問題が横たわ
つておると思います。更に、第四の問題といたしましては、以上のような問題と、こういうふうな
事態を直接惹き起こす
原因でありますが、これは
木村委員の
希望意見もありましたように、この
復興金融委員会自体が非常に非民主的に、はつきり言えば大
資本家本意に作られているということでありまして、これは沢山私が申すまでもないことであります。
次に、それではもう
一つの問題といたしましては、以上のような
欠陥の
復金の
金融が続けられて行く、又続けられて來た今日、どういうことが起こ
つているかという問題であります。又どういうことが起こるかという問題であります。この第一は、
経営の
不健全性をそのまま放置し、或いは看過して、或いは客観的に見ますれば、大
資本家の
生産サボを看過しているということにな
つておるのであります。今、
日本の
重要産業殆んど大
資本家の手中にあります。彼らはこの
重要産業に名を借り、思うままに
國家資金を
使つておりますが、
政府は彼等の言うままに
融資をし、その尻ぬぐいばかりをしておるのであります。而もあのような、御存じのようにあの
石炭國管という問題、あれは
資本家にそう不利じやないのであります。あのような
國管に対してさえあれ程
反対する
資本家、この
融資を如何に本当に使用しているかということに対しましては、
政府も或いは
國民も殆んど知り得ないという
状態なんであります。
從つてその
経営は、ただ
補助金稼ぎの不健全極まるものにな
つておるのであります。例えば
石炭金融といたしまして六十億の
運轉資金が出されておりますが、これはすべて事実上
赤字融資であります。而もこの
石炭会社が尚十億の税金を
滞納をしております。
政府はこの
滞納金まで、名目はとも
かくも結局
融資によ
つて救済するのでありまして、こんな放埒な、放漫な
経営が一体許されるのであろうかということが問題なんであります。而してこの
石炭産業には、全体として百四十億の
融資があります、
復金融資がありますが、その上に、殆んどこれと同額に近い
價格差補償金も今まで我々は支出して來ております。一体さような
厖大な
資金の高によりまして、
石炭は一体どれだけ増産されたか、確かに年末にこれが多少は増産されたことも事実であります。併しこれは主として
労働強化或いは稼働時間の延長によ
つて得られたもので、特に
労働者側の
熱意によ
つて得られたものでありまして、
経営者側に
熱意のないことは、もう
新聞紙面において
外人側が非常に正しく指摘しておるところであります。この点は
石炭以外の
重要産業におきましても殆んど同様であります。正にこれらの部門におきまして、あれ程
厖大な
融資があるのにも拘わらず、実は減産しておる
状態であります。
かくて
現状のままではこの
融資は殆んど
生産復興には役立
つていないということを結論せざるを得ないのであります。更に
復金が私的な
銀行或いは
市中銀行の
興隆繁栄に非常に役立
つておるということを指摘する必要があると思います。これは
興銀が
復金の
代理店業務を営みつつ大いに儲けておること、この
一つだけを見ましても非常にはつきりしております。例えば大阪では、
復金自体の直接
貸しは二〇%以下であります。それに反しまして、
興銀の
代理店貸しが七〇%以上であります。
かくて
興銀は良いお得意は
自分の
営業にし、その粕を
復金になすり附けておると言うことができるのであります。
興銀はもともと
閉鎖機関になるべき
性質のものであり、戰時中のあの
厖大な
不良貸しのために倒産すべきものであります。それが今日はどうでありましようか、三倍の
増資を計画して非常に繁栄しつつあり、
重要工業会社の
特管人と
なつたり、
産業に対して支配をますます強化しております。こういうことができましたのは、殆んどこれは
復金におぶさ
つてできたのであります。このことは單に
復金に限らず、他の
市中銀行というものは大
なり小なり同じであります。この
銀行資本は
企業整備を通じて
産業に介入し、
貸出を極度に引締めたり、いろいろのことをや
つておりますが、同時に
赤字の
融資は、
赤字的のものは大体に
復金に肩替りして、そうして
自分の債権を鞏固にして、その力によ
つて産業を支配し、或る場合には
労働者の
大量首切り、或いは
労働組合の
無力化を強要しておる。これは
日銀総裁なんかの講演を聽いてもはつきりしておるのであります。そういうふうな力を與えておるのは誰か、結局これは
復金だということにならざるを得ないのであります。この点では最近
復金当局が
経営者とぐるにな
つて労働組合の
無力化のためにいろいろ
貸出方針をや
つておるということは、これは実際我々現実によく知
つております。当面して知
つております。こういうふうに
復金自体は、これは
國民の金でありますが、この
國民の金を、而も反民主的に使用するというに
至つては全く言語道断だと思うのであります。こういうような結果、実際には
復金は今や全く
インフレ金庫にな
つておるというようなことになるのでありますが、併し、ここで重要なことは、一方多少
復金は
インフレを生ずることがあ
つても、
重要産業を或る程度
復興すれば、一應それでいいじやないかという考えもあります。或いは又、
インフレの
進行の
限度と
生産を
復興する
限度と、プラスかマイナスかを考えて見ようという
考え方もあります。併し私がここで強調いたしたいのはその点なんでありますが、即ちこの
復金が
インフレを助長するというのは、單に
日銀の
引受けにのみよ
つておるということだけでなくて、その
融資が殆んど積極的に
生産に使われていないと共に、非
生産的である。その結果として、それが
インフレにな
つて行くというこの
関係であります。丁度これは腹をこわした人間に、どんどんとに
かく無茶苦茶に飯を食わすようなものでありまして、腹がこわれた以上は、ただ素通りして下痢を増すだけであります。現在の
復金の
融資がこれであります。でありますから、若し眞に
生産的にその
資金が使用されるならば、たとえ当初は多少それが
過大信用でありましても、それは正規の
生産循環に入
つて行き、
インフレを惹き起こさないのであります。少々過大ではありましても、
生産に本当に正しく使用されるならば、それはたとえ
日銀引受でも大したことはないのであります。ところが腹をこわしている。そういうふうなところに注がれて行くために、それはますます
インフレになる。そのまま下
つて行くという
状態なのであります。この点極めて重要な事実だと思うのであります。
これを要するに、今の
復金は全く
インフレ金庫であるということ我々は結論し、而もそれは決して
生産に役立たない。客観的に大
資本家の
生産サボを誘発しておるということが結論できるのであります。では何故に
復金がこういうことになるか、これは決して
復金自体だけの問題ではなく、又
復金自体だけでは解決できない問題だと思います。これを
簡單に列挙いたしますれば、第一はもともと
インフレが発展しておる、その結果であります。これは詳しく申しません。もともと
インフレが発展しておる結果であります。第二は、
私的銀行が
重要産業の
復興に何らの能力のない
状態にある。或る
人々は今日
市中銀行が
重要産業への
長期融資をし得ないことを当然のことのように
思つて、而もすべて
復金にその
事業を負担させている。当然のことのようにこれは思われておりますが、実際はそうではないのであります。
市中銀行がそういう無力な、
意味のない存在にな
つておる。而も
預金はすべて
市中銀行に集まる。
復金には集まらない。
復金には
預金がないのであります。
從つてそういうふうな
機構上の矛盾から、ただ
復金の
増資の場合には
日銀引受け、或いは
政府出資によ
つて行かざるを得ないというふうな
状態にな
つております。これを詳しく申したいのでありますが、時間もないようでありますので、これは省略いたしますが、結論として申しますれば、現在の
機構から見ますと大
銀行も、或いは大
経営者も、寄
つてたか
つて復金を喰い潰しているというふうな恰好にな
つて、而もその
資金をおのおの
自分たち勝手な目的のために
使つている。これが今、
日本の
金融機構の最も根本的な
欠陥の
一つだと思うのであります。第三は、いうまでもなく
重要産業が巨大な
資本によ
つて握られてお
つて、それについて十分な管理がなされていないということであります。こういうような
原因、こういう
日本の
金融機構、或いは全体としての
インフレの発展、こういうことが、いわば
復金の
融資をしてそういうふうに腹下しをさしておる
原因だと思うのであります。
で、こういう点から考えると、我々は
インフレを即時克服しなければならぬというふうな場合に、
金融財政の徹底的な改革とか、或いは
重要産業の徹底的な統制とか、或いは國有國営とかいう問題を
提出せざるを得ないのであります。同時にそのことが又
復金を徹底的に改革し、そういう改革の一環として
復金の改革があるのだと思うのであります。
最後に私は
一つ今度の
政府の百五十億の出資、これについて少し申しますれば、これは二ケ月で百五十億であります。以前三百億の時には少くとも数ヶ月のものでありましたが、この度は二ヶ月間で百五十億を使うのであります。而もその処理
方針或いはその編成
方針は詳しく申しませんが、非常に放漫であります。三百億円必要なのだが、いろいろな事情で百五十億円にいたしました。四月には是非又や
つて頂きます。こういうような説明でありまして、確乎たる一定の
方針というものが
一つもないのであります。我々としては若し本当にそれが
生産的に使われ、而も
復金の
資金がこれだけ要る。そういう場合には三百億であろうと、七百億であろうと、それに要るものは出さなければならないと思います。併しそういうふうな点では全然見通しがないのであります。たださきに私が申しましたように、
資金を焦げ付かせ、下痢をさせるというふうなことだけでありまして、今のところこの当面の
政府の出資に対する
方針は、全く無
責任、無
方針だと思うのであります。特に私が少し邪推をいたしますれば、曾
石炭國営問題の時、民主党がその施行期日を四月一日になるように必死に頑張
つたのでありますが、その時に頑張つたことと、そうしてこのような
融資がどんどんなされて行くということとの間に、必然的な
関係がないかどうか、(「ノーノー」と呼ぶ者あり)これは現下の問題として政治的な問題となり得ると思うのであります。
以上私は今日の
復金問題について、我々が
反対せざるを得ない
理由を述べたのでありますが、結論として今のままでは
増資は却
つて悪く作用するという断定を下すのであります。ただこの場合少なくも木村議員が言われたように、
復興金融委員会の民主化或いは人民化くらいはできるものでありまして、これは
簡單にできるのであります。これくらいをやらなければ本当にすべて腹下しになる。そう思うが故に私たちは
反対するのであります。
最後に、一言私はこの私の発言が近い将來にでき上がる小
委員会において、急速に
復金の徹底的な改革ができ上がるにおいて、且つは又廣汎なる一億の
國民が、これらの問題にもつと注意を集中して行くという点において、何らかの寄與あらんことを切望して、この私の少数
報告を終わる次第であります。